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Title
先天性表皮水疱症をモデルとしたケラチン分子機能の変異
遺伝子解析による研究( はしがき )
Author(s)
市來, 善郎
Report No.
平成15年度-平成16年度年度科学研究費補助金 (基盤研究
(C)(2) 課題番号15591172) 研究成果報告書
Issue Date
2004
Type
研究報告書
Version
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/758
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
研究の概要
要旨
本研究は、遊走性環状紅斑随伴性単純型先天性表皮水痘症をモデルにしてケラチニ
ックス街域の機能を解明することを目的とした。我々は、これまでに本症の3例でケモ
遺伝子変異(1649delG)を報告した。今回この欠失変異により延長したK5
C斉
ペプチドに対するポリクローナル抗体(m40)を用いた免疫ブロツティングおよ
色で患者皮膚に変異K5蛋白が存在することを確認した。また変異K5の培養ケラ
のトランスフェクションでは、Wild
type(W¶に比べ変異K5遺伝子を導入した審
凝集塊が多い傾向があったが有意差はなかったことから、この変異はケラチン線潮
な影響を与えないことが示唆された。今後さらに、本症の環状紅斑という特異な臨
部の変異との関係を明らかにすることが、ケラチン分子の非αヘリックス街域の機
がると期待される。
材料と方法
[症例]臨床所見の概略は以下の通りである。出生直後より四肢に水痘を繰り返し生
月頃から大腿、体幹などに、緊満性の水痘を辺緑に伴い中央には褐色まだらな色素
遊走性または卿犬に拡大する紅斑を認めた。病理組織は表皮基底細胞内に裂隙を讃
は有麻細胞においてデスモゾーーム、ケラチン線推の減少および麻融解を認めたがト
トの凝集塊は見られなかった。患者末梢血のgenomicDNAの分析ではKW14に
なかったが、KT5のexon9にヘテロの1649delGの欠失変異を認めた。
[免疫ブロツティングおよび免疫組織学的検討]患者皮膚から蛋白を抽出し、オ
ミドゲルで泳動後、ナイロンメンプレンにトランスファーし以下の抗体を用いて角
ングした。また患者皮膚の凍結切片を用いて、同様の抗体で染色した。抗K5抗1
Vision,Fremont,CA,USA)、抗K5抗体(RCKlO2,Sanbio,Uden,NU、抗K14
I_abVision,Fremont,CA,USA)。またKW5の1649delG変異は、フレームシ;
過ごし変異を起こしK5のV2ドメイン以下に正常より35個長い変異アミノ酸鎖壱
考えられたので、延長したK5のC末のポリペプチド(CSSHVLSFSGE)毒
しポリクローナル抗体を作成、アフィニテイカラムで精製し使用した(m40)。
[トランスフェクションによる変異K5蛋白の発現]患者末梢血DNAから変卦
exon9をPCRで増幅し、北海道大学安川先生から供与されたKW5cDNAにラ1
者皮膚、正常皮膚ともに約50KDのバンドを認めた。抗変異K5抗体(m40)
抽出蛋白に約50KDのバンドを認めたが、培養正常皮膚ケラチノサイト抽出劉
認めなかった。)mコ40による免疫染色では患者皮膚で表皮基底層から有麻層下層(
所見を認めたが、正常皮膚では同部に陽性所見を認めなかった。
[トランスフェクション]変異K5およびwildtype(WⅥK5を導入したN
DJM-1は抗FLAG抗体で細胞質に導入蛋白の発現が確認された。変異K5,椚Kj
てもケラチン凝集塊が認められ、NHEKでは同等に、HaCaT,DJMNlでは変異K∈
見られたが有意差はなかった。DJM-1へのトランスフェクション後にantiFIAG.
染色すると、WT変異ともに導入蛋白とK14の局在が一致し、変異K5もK14.
-を形成できることが確認された。
考察
遊走性環状紅斑随伴性単純型先天性表皮水痘症の患者皮膚で、変異K5蛋白の発召
的に確認された。さらにこの変異K5蛋白がケラチンフィラメントネットワーク刃
な影響を及ぼすかをトランスフェクションで検討したところ変異K5、WT間でう
の数に有意差はなかった。これは患者病変部の電顕像でトノフィラメントの異常携
なかった結果と一致する。またK14との二重染色では、K14と導入蛋白の局在がもケラチンヘテロダイマ一に組み込まれていることが確認された。これらの結果手:
ケラチン線推形成には大きく影響しないことを示唆している。EBSは皮疹の分布づ
から、主としてWeber-Cockayne型、K6bner型、Dowling-Meara型の3型にう
最も重症型のDM型ではケラチンフィラメント構築に関係するαヘリックス構造¢
れた領域に遺伝子変異が集中し、一方軽症のWC型ではαヘリックス構造の1B,2Aを、
に多く見られる。今回の検討でこれまでに報告の殆どないV2の変異がケラチンフ
成には影響しないことが示された。また自験例においてケラチンフィラメント構葦
ヘリックスの変異ではなく、尾部に延長を伴う変異を認めたことと、緊満性の水殖
遊走性または環状に拡大する紅斑とその内側に色素沈着を来すというこれまでに覇
て特異な臨床像とを関係づけると極めて興味深い。ケラチン5分子の同じ非αヘリ
域である頭部のHlドメインに変異を認めるmottledpigmentationtypeでも小彩
を示す点は、紅斑移動後に色素沈着を残している自験例と共通しており、この点にも草
本症例の病態を解明することが、ケラチン分子の非αヘリックス構造街域の機能を
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