2015/4/8 東京都新宿区本塩町 22-8 TEL: 03-5919-9341(直通) URL:http://www.tdb.co.jp/ 特別企画 アパレル関連業者の倒産動向調査 アパレル小売、円安と消費低迷の板ばさみで悪化 ~年明け以降は卸・小売とも軟調~ はじめに 2014 年度における全体の倒産件数は 8 年ぶりに 1 万件を下回った。その一方で、アパレル関連業者にとっ ては、昨年 4 月の消費増税に伴う消費低迷や 10 月末のサプライズ金融緩和以降に急激に進んだ円安など、 不安定な経営環境が続く。本格的な消費の回復が遅れるなか、 “不要不急”であるアパレル関連商品の販売 動向や関連企業の倒産動向に与える影響が注目されている。 そうした状況を踏まえて、帝国データバンクは、2014 年度のアパレル関連業者の倒産動向(※)について、 調査・分析した。 ※ 負債額 1000 万円以上、法的整理のみを対象。 ※ 「男子服卸」「婦人・子供服卸」「下着類卸」「男子服小売」「婦人・子供服小売」を調査対象とし、卸と小売に分けて分析を行っ た(かばんや靴、アクセサリーなどの服飾雑貨を扱う業者は含まない)。 調査結果(概要) 1. 2014 年度のアパレル関連業者の倒産件数は、前年度比 0.7%増の 292 件となり、4 年ぶりに増加。 2. 卸・小売別でみると、卸売業者が前年度比 15.2%減の 128 件となった一方で、小売業者が同 18.0% 増の 164 件と増加に転じた。 3. 負債総額は前年度比 11.6%増の 505 億 5000 万円と 2 年連続で増加したものの、ピーク時の半分以 下の水準にとどまり、小売業で小規模倒産が目立つ。 倒産件数と負債総額の推移 (件) (百万円) 400 140,000 337 336 350 300 326 315 306 296 268 292 290 120,000 100,000 250 80,000 200 60,000 150 100 40,000 50 20,000 0 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 度 14 年 20 20 13 年 12 年 度 度 度 20 11 年 度 件数 20 10 年 20 09 年 度 度 20 08 年 度 20 07 年 20 20 06 年 度 0 負債総額 1 2015/4/8 アパレル関連業者の倒産動向調査 ~倒産件数は 4 年ぶりに増加~ 1. 倒産件数・負債総額動向 件数 前年度比(%) 2014 年度のアパレル関連業者の倒産件数は前年度比 0.7%増の 292 件で、4 年ぶりに前年度を上回った。 2008年度 一方、負債総額は同 11.6%増の 505 億 5000 万円となり、 2009年度 2010年度 2 年連続で前年度を上回る結果となった。ただ、近年のピー 2011年度 クとなった 2009 年度(1297 億 8600 万円)の半分以下の水 2012年度 準にとどまっている。 2014年度 2. 卸・小売別倒産件数動向 268 336 337 315 326 306 296 290 292 2006年度 2007年度 2013年度 負債総額 (百万円) 8.1 69,164 25.4 63,906 0.3 108,417 ▲ 6.5 129,786 3.5 73,561 ▲ 6.1 66,385 ▲ 3.3 34,311 ▲ 2.0 45,290 0.7 50,550 前年度比(%) 20.9 ▲ 7.6 69.7 19.7 ▲ 43.3 ▲ 9.8 ▲ 48.3 32.0 11.6 ~アパレル小売で増加に転じる~ 卸・小売別に見ると、卸売業者は前年度比 15.2%減の 128 件となった一方で、小売業者では同 18.0% 増の 164 件と増加に転じた。 昨年 10 月の金融緩和以降進んだ円安により、東南アジアなどを中心とした海外生産の比率が高いア パレル業者のコストが上昇している。一方で、総務省が発表する家計調査報告によると、2 月の消費支 出は前年同月比で実質 2.9%減少するなど消費回復の動きは広がっていない。このうち、 「被服および履 物」への支出は前年同月比で 6 カ月ぶりの実質増加となったが、消費増税以降はおおむねマイナスが続 いていきた。そうしたなか、特にショッピングセンター(SC)や量販店などのアパレル小売では価格 転嫁しづらい状況となっており、円安によるコスト増との板ばさみとなっている。 卸・小売別倒産件数推移 卸売業 4年 度 20 1 3年 度 2年 度 20 1 20 1 1年 度 20 1 20 1 0年 度 9年 度 20 0 8年 度 20 0 7年 度 20 0 20 0 6年 度 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 小売業 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 卸売業 前年度比(%) 小売業 前年度比(%) ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 137 5.4 131 11.0 153 11.7 183 39.7 159 3.9 178 ▲ 2.7 151 ▲ 5.0 164 ▲ 7.9 152 152 128 151 128 0.7 0.0 ▲ 15.8 18.0 ▲ 15.2 174 154 168 139 164 6.1 ▲ 11.5 9.1 ▲ 17.3 18.0 2 2015/4/8 アパレル関連業者の倒産動向調査 3. 月別の倒産件数推移 ~小売業で年明け以降の増加目立つ~ アパレル関連業者の倒産件数の推移を月別に見ると、特に小売業において、昨年 4 月の消費増税以降 はコンスタントに月 10 件以上の倒産が発生している。 また、年明け 1 月以降の倒産の急増が目立つ。昨年 10 月の金融緩和以降は急速に円安が進んだが、倒 産件数は景気に対して 3 カ月~6 カ月の遅効性があるといわれており、円安によるコスト増が年明け以 降の倒産件数を押し上げた可能性がある。 卸売業 20 15 10 5 5月 7月 9月 20 11月 15 年 1月 3月 5月 7月 9月 20 11月 15 年 1月 3月 3月 20 11月 14 年 1月 9月 7月 5月 3月 20 13 年 1月 0 小売業 20 15 10 5 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 3月 7月 5月 3月 9月 1 20 1月 14 年 1月 20 13 年 1月 0 3 2015/4/8 アパレル関連業者の倒産動向調査 4. 負債規模別の倒産件数 ~小売で小規模倒産の構成比高い傾向~ 負債規模別の推移を見ると、卸売業者では「1 億-5 億円未満」の倒産の構成比が約 3 割と比較的高い のに対して、小売業者では「1000 万-5000 万円未満」の小規模な倒産の構成比が 60%以上となった。 小売業者では、倒産企業の約 8 割が負債額 1 億円に満たない小規模倒産であることがわかる。 卸売業 2011年度 1000万-5000万円未満 5000万-1億円未満 1億-5億円未満 5億-10億円未満 10億-50億円未満 50億-100億円未満 100億円以上 合 計 71 27 42 6 4 2 152 構成比(%) 46.7 17.8 27.6 3.9 2.6 1.3 100.0 2012年度 構成比(%) 64 19 34 6 5 128 50.0 14.8 26.6 4.7 3.9 100.0 2013年度 52 35 54 5 5 151 構成比(%) 34.4 23.2 35.8 3.3 3.3 100.0 2014年度 65 13 36 6 8 128 構成比(%) 50.8 10.2 28.1 4.7 6.3 100.0 小売業 2011年度 1000万-5000万円未満 5000万-1億円未満 1億-5億円未満 5億-10億円未満 10億-50億円未満 50億-100億円未満 100億円以上 合 計 5. 主な倒産事例 100 21 25 5 2 1 154 構成比(%) 64.9 13.6 16.2 3.2 1.3 0.6 100.0 2012年度 構成比(%) 111 25 29 2 1 168 66.1 14.9 17.3 1.2 0.6 100.0 2013年度 87 24 21 3 4 139 構成比(%) 62.6 17.3 15.1 2.2 2.9 100.0 2014年度 100 32 27 1 3 1 164 構成比(%) 61.0 19.5 16.5 0.6 1.8 0.6 100.0 ~3 年ぶりに負債 50 億円超の倒産発生~ 2014 年度のアパレル関連業者の主な 卸売業 企業コード 倒産を見ると、卸売業者でもっとも負債 989904658 額が大きかったのは(株)アウトバーン 987053814 620137912 で、次いでその関係会社の佐倉興産(株) 530239735 988213117 だった。以下、円安の影響で破産となっ た(株)クリスタルフインテックと続い た。 また、小売業者では、 (株)オルケスが もっとも大きく、負債は約 63 億 4500 万 円。2011 年度以来 3 年ぶりに負債 50 億円 商 号 ㈱アウトバーン 佐倉興産㈱ ㈱クリスタルフインテック ㈱エフエルエス ㈱テット・オム(旧商号) 負 債 (百万円) 3,176 3,152 2,200 1,770 1,364 態 様 破産 破産 破産 破産 民事再生 所在地 東京都 東京都 広島県 兵庫県 東京都 小売業 企業コード 450007913 220012739 984598524 983933330 440013640 商 号 ㈱オルケス ㈱きようしん ㈱ブーフーウー(旧商号) ㈱ラブラドールリトリーバー ブレイクスルー㈱ 負 債 (百万円) 6,345 2,824 1,880 1,144 570 態 様 民事再生 民事再生 民事再生 破産 破産 所在地 東京都 群馬県 東京都 東京都 東京都 を超える倒産が発生した。このほか、 (株)ブーフーウーや(株)ラブラドールリトリーバーなど、有名 ブランドを展開する小売業者の倒産も目立った。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 4 2015/4/8 アパレル関連業者の倒産動向調査 6. 今後の見通し ~消費回復の動向が今後のポイントに~ 2014 年度の全体の倒産件数は 9044 件と 8 年ぶりに 1 万件を下回った。そうしたなかで、アパレル関 連業者の倒産件数は微増ながら 4 年ぶりに増加に転じている。 アパレル卸売業者は前年度比で減少しているものの、同小売業者の倒産が増加しているという現状は、 アパレル業者のおかれた市場環境を示唆していると言える。昨年 10 月末以降の急激な円安に伴い、仕 入れコストが増加しているなかで、個人消費に本格的な回復の動きが乏しく、SCや量販店などで価格 転嫁が難しい状況となっていることが、アパレル小売の倒産につながっている可能性がある。倒産した 主なアパレル小売業者の倒産の要因を見ると、 「個人消費の低迷」 「競合激化」 「価格競争」 「商品の低価 格化」といったキーワードが目立つ。 食品においては、4 月以降メーカーによる値上げの動きが見られるなど、円安による原材料価格上昇 分の転嫁が進んでいる業界もある。事実、スーパーマーケットの 2014 年度の倒産件数は前年度比 41.5% 減の 38 件と大幅に減少しているなど、比較的価格転嫁がしやすい環境にあるとみられる。そうした意 味では、徐々に回復の兆しを見せはじめている個人消費の恩恵は、アパレル業界にまで及んでいない。 つまり、消費回復の趨勢が今後のアパレル小売の倒産動向を左右すると言える。2017 年 4 月には消費 税の再増税が予定されており、アパレル業界の倒産動向を見るうえで、今後は為替の動向も含めて、個 人消費にも注目していく必要がある。 【内容に関する問い合わせ先】 (株)帝国データバンク 東京支社情報部 担当:山口 亮 TEL 03-5919-9341 FAX 03-5919-9348 当レポートの著作権は(株)帝国データバンクに帰属します。 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法の範囲内 でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 5
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