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世界貿易機関(WTO) - Clydebank Asbestos Group

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PL-1-01 Barry Castleman
セッション1: アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
世界貿易機関(WTO)における貿易紛争がアスベス
ト禁止に向けた世界的努力に及ぼした影響
バリー・キャッスルマン
環境コンサルタント[アメリカ]
抄録:
1995年に世界貿易機関(WTO)が設立されたことにより、各国レベルでのアスベスト禁止が個別に
問われるだけでなく、集合的に世界規模で議論する場が作りだされた。アスベスト繊維の世界屈指の
輸出国であるカナダは、国レベルのアスベスト禁止がヨーロッパ中に広がり、アジアや南米諸国でも
提起されるようになってきたことに対して、この 貿易の世界法廷 に提訴するリスクをとることを決心し
た。
世界貿易機関は、貿易が何よりも優先される場であることから、カナダにとって理想的な討論の場
であるはずであったが、世紀の変わり目において、カナダや残されたアスベスト産業にとってかなりの
危険を与えることでもあった。
公衆の健康を守る立場を完全に正当化し、アスベスト禁止は国際的な貿易協定に違反しないとし
たWTOの裁定は、世界中のアスベスト禁止に向けた努力にとって青信号となり、いまや世界中いたる
ところで、ますます多くの国々がアスベストを禁止するようになっている。
本論文は、活動家、科学者、労働組合運動家、公衆衛生関係者たちが、国連組織を操作しようと
いうアスベスト利害関係者による試みを打ち破った世界規模での闘いの分析である。シアトルからジ
ュネーブへ、そして第三世界へと、それは、世界中の人々がひとつの仮想ネットワークに関わるように
なった、また、現代のひとつのモデルたりうる、公衆衛生の闘いを描く叙事詩である。
Pl-1-02 Claudio Bianchi
セッション1: アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
中皮腫の地理学:概観
クラウディオ・ビアンチ
イタリア対がん協会・環境がん研究センター[イタリア]
抄録:
中皮腫の地理学における根本的問題として、データの不足があげられる。中皮腫の発症率、中皮
腫による死亡率についての信頼できるデータは、世界の人口の約15%について得られているに過ぎ
ない。とりわけ、アスベストの主要な生産・消費国の大部分においては、中皮腫の疫学はほとんど知ら
れていない。データが得られる地域においては、中皮腫の発症率に著しいばらつきがみられる。過去
数十年間、工業化された様々な諸国では、中皮腫の発症率は着実に増加し、オーストラリア、ベルギ
ー、イギリスで最高の数値に達している。これらの諸国においては、年間の大雑把な発症率は百万人
あたり30人である。これとは対極的に、チュニジアやモロッコでは、百万人あたりの発症率はおよそ0.6
から0.7人ほどと報告されている。日本は、ここ数年間、中皮腫死亡率の著しい増加を示している。こ
れら全ての国において、腹膜に対し胸膜の中皮腫の割合が高いことが観察されている。発症率は、
女性よりも男性において顕著に高く、職種は一つにとどまらず実に多様である。いくつかの業腫(例え
ば、海運、非アスベスト繊維産業)は、最近になってようやく、中皮腫のリスクがある職種として認知さ
れてきた。国レベルでは、異なる地域間で幅広いばらつきが認められる。以上のような特色は、アスベ
ストの使用における多様性によるものと、おおかた説明できるかもしれない。潜伏期間(アスベストへ
の初回曝露から中皮腫の診断に至るまでの期間)は、これまでに報告されてきたり、一般に認識され
ているよりも、かなり長い。大規模な調査において、平均潜伏期間は約50年であった。アスベスト曝露
の強度と潜伏期間の長さとの間には、相反する関係が観察されている。将来の中皮腫流行の傾向を
予測するうえでは、一般的な潜伏期間は20∼30年よりも長いことが考慮されなければならない。1970
年代の世界的なアスベストの大量消費の結果としての中皮腫発生の波は、まだ現われてはいない。
PL-1-03 Takehiko Murayama
セッション1: アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
アスベスト関連疾患の流行
村山武彦
早稲田大学理工学部(複合領域)[日本]
抄録:
アスベストは、過去に広く使用され、社会に浸透した経緯がある。現在でも過去に使用したものが
残存しており、今後の処理法によっては、これからも汚染機会が生じる可能性は否定できない。さらに、
長い潜伏期間があることから、今後リスクの増加が懸念される。実際、アスベスト固有の疾病である中
皮腫は増加傾向にあり、今後のリスクを定量的に予測することは一つの課題となってきた。
これまで実施されてきた予測手法では、疫学調査に基づく高濃度曝露における量−反応関係から
リスクを推定することが多かった。しかし、中皮腫の死亡データが蓄積されてきたことから、過去の死
亡数の推移に基づく将来予測を行った事例もみられるようになっている。
そこで、本報告では、アスベストによるリスクの将来予測を行った結果を紹介する。過去のトレンドか
ら推定される結果によれば、男性の中皮腫に限っても、2000年から40年間に約10万人が罹患すると
推定される。また、典型的な一般環境中のアスベスト濃度を前提とすると、職業性や特殊な環境によ
る曝露以外で発生する中皮腫は、全体の1割程度であると考えられる。
PL-1-04 Sophia Kisting
セッション1: アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
南アフリカにおけるアスベスト関連疾患の負担と賠
償請求の闘い
ソフィア・キスティング
ケープタウン大学公衆衛生・家庭医学校労働・環境衛生部[南アフリカ][参加できず]
代理報告:フレッド・ゴーナ(全国鉱山労働組合議会担当オフィサー[南アフリカ])
抄録:
南アフリカにおけるアスベスト採掘は1895年に始まり、2001年まで続けられた。世界のアスベスト市
場の縮小は、1978年以降の生産量減少をもたらした。全国鉱山労働組合(NUM)は、高レベルの曝
露と疾患について憂慮し、多数のアスベスト鉱山における監視プログラムを監査する取り組みを組織
した。
職業と治療の履歴、胸部X線写真と肺活量などをスクリーニングした。胸部X線写真は、国際労働
機関(ILO)のじん肺の標準分類を用いて読影された。肺機能検査は、米国胸部医学会(ATS)の基
準にしたがって分類された。クロシドライトやアモサイト、クリソタイル鉱山の2,000人以上の労働者の記
録が、8年以上かけてレビューされた。解雇された労働者における、アスベスト関連疾患(ARD)の有
病率は、21∼39%(クロシドライト鉱山)、26∼36%(クリソタイル鉱山)、そして一つのアモサイト鉱山で
37%の範囲に及んだ。また、運輸、建設、アスベスト・セメント、自動車、エネルギー、織物、廃棄物処
理といった産業においても、労働者がアスベストに曝露した。さらに、広範囲に及ぶ環境汚染によっ
て、地域住民もまたアスベストにさらされてきた。
アスベストに曝露した労働者と周辺地域社会におけるアスベスト関連疾患の罹患者の割合が明ら
かになり、南アフリカ国民会議において、環境・観光局(DAET)が主催して、議会のアスベスト・サミッ
トが開かれた(1998年)。主要な関係者全てが参加し、アスベスト(疾患)の流行に対処するための具
体的な勧告がなされた。環境・観光局は、最近、議会において、アスベストの使用は禁止され、また、
現時点で入手可能な代替品がない製品については、3年から5年の期間をかけて、段階的に禁止さ
れることになるだろうと発表した。
労働組合と市民団体は、訴訟と同様に、アパルトヘイトが残したアスベストの不正な遺産、貧困、不
平等、そして病気の重荷に立ち向かうための試みにおいて、重要な役割を果たしてきた。
今後の課題としては、アスベスト・サミットの勧告をさらに実施していくということ、アスベスト被害者へ
の医療サービスの提供についての対応モデルを確立すること、影響を被った各個人の生活の質に関
する指標(教育、技能レベル、雇用可能性、所得、社会保障、保健)を向上させること、地域社会の参
加を伴った、持続可能な開発プログラム、環境回復や予防措置のための十分な資金提供と資源の配
分などが含まれる。
PL-1-05 Domyung Paek
セッション1: アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
韓国のアスベストに対する戦略
ペク・トンミョン(白道明)
ソウル大学保健大学院産業保健学[韓国]
抄録:
韓国における人口一人当たり年間アスベスト消費量は、1992年に2.2kg/人・年であった。これは
2001年には0.5kg/人/年に減少したが、なお他の多くの開発途上諸国よりも高い水準にある。1960代
後半以降、アスベストが広く使用されるようになってから30年後、1993年に、19年間働いた後に中皮
腫と診断されたアスベスト織物労働者の事例が、アスベストにに関連した健康影響の初めてのケース
として認定された。その後、数件の肺がんが、アスベスト曝露による補償事例として報告されている。こ
れらの事例の注目すべき特徴のひとつは、そのほとんどが、アスベスト鉱山やアスベスト(製品)製造
ではなく、アスベスト(製品)の使用により曝露したことである。働いていた職場におけるアスベスト曝露
状況(濃度)がかつて測定されたことがある者は、ごくわずかであり、将来のアスベスト疾患発生の可
能性に関しては予想がつかない。
本論文では、韓国において持続するであろうアスベスト問題を戦略的アプローチで扱うなかで、技
術的、管理的及び社会文化的介入ポイントという、3つの可能性のある介入ポイントを提案する。この
戦略において、最も重要な根本的原則は、データの収集と評価、意思決定のプロセスにおいて、意
見表明や参加の機会を与えることによって、当事者や関係者のエンパワーメントを可能にするというこ
とである。韓国では、これまでこうした戦略はわずかしか実行されてこなかった。従来の戦略のほとん
どは、公式の作業環境測定や職場健康診断プログラム(のデータ)の利用を含んだもので、意味のあ
る結果をもたらさないことも少なくなかった。関係者の要求に基づいて上記のようなプログラムが用い
られた場合にのみ、問題を確認することができるだろう。
韓国では、アスベストがなお使用されており、アスベスト禁止に関する議論はなされていない。韓国
におけるアスベストの最終的禁止に向けた課題のひとつは、声なき被災者たちに、自らの物語を語れ
るようにすることであろう。
PL-1-07 Nguy Ngoc Toan
セッション1: アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
ベトナムにおけるアスベスト・セメント屋根材製造工場の環境汚染
の現状とその労働者への健康リスク
レ・ヴァンティン、グイ・ゴックトアン、グェン・ザコン
国立労働保護研究所(NILP)[ベトナム]
抄録:
本論文は、ベトナムにおける35のアスベスト・セメント(AC)屋根材製造工場の調査結果を紹介する
ものであり、環境汚染の現実の状況を示す数値、汚染を引き起こす理由、これら工場内の労働者た
ちの健康及び作業関連疾患の状態、及びこれらの工場における労働者の健康を守るために汚染を
最小化し、その影響を制限するための提案からなる。
PL-1-08 Somkiat Siriruttanapruk
セッション1: アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
アスベストの地球的健康影響:タイの経験
ソムキャット・スリルタンナプラク
タイ政府公衆衛省生疾病管理局労働環境保健部研究開発課[タイ]
抄録:
タイでは、30年以上にわたってアスベストが輸入されてきた。国内にはアスベスト鉱山が存在しない
ため、ロシア、カナダ、ブラジルなど数か国から、アスベスト製品を製造する目的で輸入されているだ
けである。現在、クリソタイルとアモサイトのみが使用を許されている。タイ税関の資料によれば、原料
アスベストの輸入量は、1987年の90,700トンから、2002年には181,348トン(5,400万米ドル相当)に増
加した。そのほとんど(90%)は、セメント製品、すなわち屋根用タイルやセメント・パイプの製造に使わ
れている。2004年には、1,900人の労働者を有する16のアスベスト使用工場が、工業省産業労働部に
登録されている。これらの企業のほとんど(16のうち13)が、タイ中央部にある。2000年以降、環境モニ
タリングが定期的に行われている。そのデータによれば、測定された試料のほとんどが、基準値(2繊
維/cc)を超えていた。
タイではこれまで、労災補償基金に、石綿肺また他のアスベスト関連疾患が報告されたことは一度
もない。しかし、ごくわずかの胸膜肥厚の事例(701件中13件)が、1件の研究で報告されている。2003
年に行われた最新の調査では、ハイリスク労働者の29%(140人中41人)に胸部レントゲン検査で異
常所見がみられた。石綿肺または他のアスベスト関連疾患が報告または発見されたことは一度もない
が、これらの疾患の予防と抑制は非常に重要である。現在、少なくとも3つの政府機関(工業省、労働
省、公衆衛生省)が、アスベストの管理において主要な役割を有している。これらの政府機関は、リス
クの高い集団のアスベスト曝露を低減するために、協力してアスベストの管理措置を設定し、発展さ
せていかなければならない。
PL-1-09 Tushar Kant Joshi
セッション1: アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
インド・南アジアにおけるアスベストをめぐる議論
TKジョシ1、MAアンサリ2、ブーバ・アトパル3
1 所長・プロジェクト・ディレクター、2 研究助手、3 インダストリアル・ハイジニスト
ロクナヤク病院労働・環境保健センター[インド]
抄録:
はじめに
先進経済諸国におけるアスベストの使用は1980年頃から減少しているが、南アジア地域ではその
使用が強引に促進されてきている。インドは、世界第9位の生産国で、また、世界第6位の使用国でも
あり、アスベスト製品を製造する14の大企業と600以上の小規模企業がある。インドで採掘されるアス
ベストの約89%は、ニューデリー近郊のラジャスタン州で産出されている。インド産アスベストには、南
部のアンドラプラデシュ州で産出されるクリソタイル、ラジャスタン州のトレモライト、カルナタカ州のア
ンソフィライトなどがある。
最近の状況
中央公害防止委員会(CPCB)は、その汚染の可能性に基づき、アスベスト関連施設、アスベスト使
用装置をレッド・カテゴリーに分類してきた。CPCBが委託した最近の研究によれば、インドの未組織
の部門におけるアスベストのレベルが18.2f/ccであることが明らかになった。最低平均値は2f/ccで、
最も厳しい制限値0.1f/cc―この値であっても1,000人中5人に肺がん、1,000人中2人に石綿肺を引き
起こす可能性がある―をはるかに上回っていた。安全衛生対策の驚くべき欠如が、このいまわしい状
況を倍加させている。
インドは、70%のクリソタイルをカナダから得ている。カナダは、ニューデリーにあるアスベスト情報
センターがクリソタイル・アスベストの使用を宣伝するのを、援助してきた。アスベスト・セメント製品製
造業者たちは、2002年に、クリソタイルの使用は安全であると主張して電撃的キャンペーンを開始し、
WHOもILOもどちらも管理使用を提唱していると断言した。同センターは、インドにおける、クリソタイ
ル使用の結果として発症した中皮腫のいかなる事例をも否定する。ILOによれば、西ヨーロッパ、スカ
ンジナビア、北アメリカ、日本、オーストラリアだけで、毎年2万件のアスベスト関連肺がんと1万件の中
皮腫が発症しているが、開発途上国では曝露のリスクははるかに高いとしている。それらの国々では、
したがってアスベストは時限爆弾であり、今後20∼30年のあいだにおけるアスベスト関連の疾患や死
亡の爆発的な増加を引き起こす準備をしているように思われる。
結論および提案
インドでは、中皮腫の中央登録システムもなく、この疾患を正しく診断できる訓練された病理学者も
少なく、労働安全衛生対策、とりわけアスベスト曝露についての労働衛生アセスメントもないため、前
途多難である。予防原則を適用して、オーストラリアやヨーロッパで実施されているように、全ての種類
のアスベストの使用を禁止すれば、職場やコミュニティで数百万の労働者・住民を守ることができる可
能性がある。インド規格協会(Bureau of Indian Standards)がかなり厳しい規格を提案しているが、イン
ドでそれに匹敵する安全衛生基準が確立されるには何十年かかるだろう。
PL-1-10 Noor Jehan
セッション1: アスベストの地球的健康影響:緊急の行動の必要性
アスベスト・リスク: パキスタンにおける職業的び傍
職業的保健状況
ノア・ジーハン1、アーシャド・アーマッド2、シド・ハミドゥラ2
1 ペシャワール大学環境科学部[パキスタン]
2 ペシャワール大学地質学NCE[パキスタン]
抄録:
アスベストが多種多様に使用されているために、環境的、職業的、及び傍職業的なアスベスト粉じ
ん曝露の源が存在することは、世界中で、とりわけアジアでの今日の生活における共通の現象である。
パキスタンでは、吸入される可能性のあるアスベスト粉じんの原因である数千の発生源があるが、そ
れらには採掘、老朽船の解撤、精製、ふるい分け、粉砕、研削、そして製造部門及び機能特性に基
づく様々な製品の取り扱いが含まれる。空気中の浮遊アスベスト繊維への曝露は、職業的及び傍職
業的呼吸器疾患の分野において、大きな関心事であり続けている。この致死的なアスベスト繊維につ
いて、広範囲に及ぶ研究が行われ、健康に対する悪影響についてよく知られているのにもかかわら
ず、今なおパキスタン政府の環境保護局や保健局によって、十分に認識され、管理されているとはい
えない。
本論文において著者らは、大気中のアスベスト粉じんがパキスタンの職業的及び傍職業的グルー
プに及ぼす、定量的及び定性的な健康へのハザーズとリスクの程度を示す。様々な性質のサンプル
が収集され、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡及びX線回析技術を用いて、パキスタンの異なる場所
における屋内及び屋外の大気中に存在するアスベスト繊維のタイプ、濃度及びサイズを確認するた
めに、分析が行われた。分析データは、アスベスト繊維の濃度が、全てのサンプルにおいて、許容曝
露限界の数百倍であることを明らかにしている。それとは別に、数百人にもおよぶアスベスト採鉱や産
業労働者や、それぞれの調査単位の近郊に住む女性や子どもたちがインタビューを受け、アスベスト
と健康への影響の関連性を確認するためのフォローアップ調査も実施された。様々な肺の病気にか
かっている患者のほとんど90%が、大気中のアスベスト繊維に、人生のどこかで、ある時に曝露してい
たことが分かった。
キーワード:アスベスト、肺疾病、職業的及び傍職業的健康
PL-2-01 Stephen Levin
セッション2: 環境曝露・危機管理・リスクコミュニケーション
世界貿易センター応答者にみられた健康影響
ステファン・レービン1、ロビン・ハーヴァード1、ジャクリーン・モーリン
1
、アンドリュー・トッド1、レヴェッカ・スミス1,3、グエン・スクルート1,2、ク
レイグ・カイツ1,3,4、ポール・ランスベルギス1
1 マウントサイナイ医科大学地域・予防医学部アーヴィングJセリコフ労働・環境医学センター世界貿
易センター労働者・ボランティア医学スクリーニングプログラム[アメリカ]
2 マウントサイナイ医科大学医学医学部胸部・臨床医学科[アメリカ]
3 マウントサイナイ医科大学精神医学部[アメリカ]
4 ニューヨーク市災害精神医学支援[アメリカ]
抄録:
世界貿易センター(WTC)災害現場またはその周辺で救援・復旧活動に従事した、労働者とボラン
ティアは潜在的に以下のものに曝露した。
1) 粉砕されたセメントやガラス、アスベスト、ファイバー・グラス、その他の吸入可能性物質、それよ
り大きめの粒子状物質(その多くは強いアルカリ性)、鉛その他の重金属、PCB類、ジベンゾフラ
ン類、揮発性有機物質、その他、燃焼製品などの、一定範囲の環境中の毒性物質
2) 心理的トラウマ
3) 火災、ビル倒壊、破片の落下、騒音、高温などの物理的ハザーズ
9/11WTC災害に対応した労働者やボランティアたちが職業性の疾病にかかっている証拠が早期
に得られたため、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、WTC労働者及びボランティアの医学的スク
リンーニング・プログラムに対して資金を提供した。このプログラムの主な目標は、WTC応答者たちに
対して、11,000件を超える無料の標準化された検査を提供するためのプログラムを、速やかに策定、
実施することであった。
最初の500人の参加者のうち250人の調査記録について、さかのぼったレビューが行われた。88%
が、少なくともひとつのWTCに関連する上気道症状を訴え、78%が現場にいる間に、少なくともひと
つWTC関連の肺の症状を経験したと報告した。2001年9月11日から10か月以上経過した後も、73%
に上気道症状または異常な鼻の症状、またはその双方の症状を有していた。さらに、57%の人に、肺
の症状か肺機能の低下、またはその双方の症状が見られた。52%は、さらに詳しい検査を必要とする
精神的症状を訴え、21%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)と一致する症状を報告した。健康への影
響に関する最新のデータを発表する予定である。
ニューヨーク市保健局及び有毒物質疾病登録機関による2001年12月の調査では、13%の住宅の
粉じんサンプル中に重量で1%以上のアスベストが含まれていた。他の表面付着粉じんのサンプルか
らは重量で4%のアスベストが検出された。人間の健康に対する将来のリスクに関するこれらのデータ
の意味するところと、公衆衛生政策について論じる。
PL-2-02 Atsushi Terazono
セッション2: 環境曝露・危機管理・リスクコミュニケーション
阪神・淡路大震災における建築物解体に伴うアスベ
スト飛散
寺園淳1、酒井伸一1、高月紘2
1 独立行政法人国立環境研究所社会環境システム研究領域・循環型社会形成推進・廃棄物研究
センター[日本]
2 京都大学[日本]
抄録:
1995年に生じた阪神・淡路大震災では、地震発生後に被災地の広範囲で一般環境大気中のアス
ベスト濃度が上昇した。この原因を探るために、被災した建築物の解体に伴うアスベスト飛散につい
て、実測を含めて実態を調査し、拡散モデルを用いて飛散の影響を検討した。
まず、自治体の協力を得て、吹き付けアスベスト使用状況を詳細に調査し、S造建造物での多くの
使用事例や吹き付けアスベスト原則禁止後も使用されていた事例などを明らかにした。また、一般環
境濃度上昇の原因として、吹き付けアスベストの除去、除去後の解体、ならびに非除去解体の現場
におけるアスベスト飛散をそれぞれ調べたが、周囲に最も飛散し影響が懸念されたのは、非除去解
体であった。
さらに、被災地の推定アスベスト蓄積量および飛散量から、プルーム・パフ(plune-puff)モデルを用
いて、環境庁モニタリングの各測定点におけるアスベスト濃度上昇の寄与を試算した。その結果、ア
スベスト濃度の試算値と実測値の間には弱い正の相関関係がみられ、試算から実測値のオーダーを
ほぼ説明できることが示唆されたとともに、アスベスト飛散現場から周辺環境への濃度推定に役立つ
情報が提供された。最後に、非除去解体によるアスベストの飛散を避けるために、法規制とともに除
去費用の負担軽減措置などの必要性を示す。
PL-2-03 Chowdhury Repon
セッション2: 環境曝露・危機管理・リスクコミュニケーション
バングラディシュにおける船舶解撤をめぐるアスベス
ト問題
チャウドリー・レーポン
バングラディシュ労働安全衛生環境財団[バングラディシュ]
抄録:
バングラディシュは、20年以上にわたって廃船解撤ビジネスを積極的に行っているアジア諸国のう
ちのひとつである。チッタゴン市シタクンダ(Shitakundha)にある船舶の墓場は、バングラディシュで唯
一の 鉄鉱山 である。バングラディシュは、年間180∼250隻の中古船舶をスクラップ用に購入してい
る。現在、稼動中の船舶解撤ヤードの数は30あり、約30,000人の労働者が直接雇用され、さらに約
50,000人が間接的に雇用されている。
シタクンダ地域に船舶解撤産業が根付いた主な理由は、この地域の海と砂浜が船舶解撤に適して
いること、人的資源や設備への投資が安上がりであること、(再)圧延工場向けの安い再生原料として
の需要が高いこと、安い労働力が得られること、事業に関連する法の実施が緩いこと、世間の厳しい
目から隔離されていること、及び、政府機関の監視体制が弱いこと、などである。実際、シタクンダの
船舶解撤ヤードは、ヤード/会社の所有者独自のルールによって運営されている。
船舶解撤ヤードでの作業は、ほとんどが労働集約的で、100%契約ベースである。正規の労使関
係もないし、雇用保障や社会保障の制度もない。解撤ヤード労働者の98%は、読み書きができず、
事前訓練を受けておらず、100%が未組織労働者である。労働災害、傷害、死亡が、きわめて頻繁に
起こり、それが当たり前になっている。
船舶解撤産業における労働者の健康に関するデータや報告書は、この地域におけるものだけでな
く、バングラディッシュ全体のものも存在しない。このことは、この地域における船舶解撤労働者たちの
健康を調査する体系的な構造が、過去にも現在も存在していないということを示している。
労働者たちは、船舶解撤ヤードで採用されている下記に示すような従来の作業方法により、潜在
的に危険な影響を受けている。
―防護なしの溶断(目や皮膚の傷害)
―重量物の挙上(擦過傷、裂傷、腰痛)
―騒音(難聴)
また、下記のような危険物質にも曝されている。
―アスベスト
―化学物質(PCB、PCV、PAH(多環芳香族炭化水素)、有機スズ化合物)
―重金属
―ヒューム(粉じん、ヒューム/ガス、ダイオキシン類、イソシアン酸塩、硫黄、など)
アスベスト含有物質(ACM)は、熱系統の断熱材や素材の表面に使われている可能性がある。アス
ベスト含有物質が劣化したり、かき乱されると、非常に細かい繊維となって長期間、空気中に浮遊し、
労働者や機器の運転者、あるいは解撤ヤード附近に住む人々が吸引する可能性がある。最も危険な
アスベスト繊維は、非常に細かくて目に見えない。いったん吸引されると、その繊維は肺の中に留まり
蓄積する。アスベスト繊維を高レベルで吸入すると、肺がん、中皮腫(胸膜及び腹膜のがん)、及び石
綿肺(不可逆性の肺の損傷で死に至ることがある)のリスクを増大させる。肺がんと中皮腫のリスクは、
曝露の程度によって増大する。これらの疾病の症状は、曝露後、多くの年月が経過するまで現われな
い。アスベスト関連疾病患者の多くは、仕事に伴って職場で高濃度のアスベストに曝露していた。
廃船から除去されたアスベストは、バングラディシュではまだ、必ずしも危険な廃棄物として規制さ
れていない。実際、バングラディシュやその他の諸国では、アスベストは手で粉砕して回収され、再利
用のために再生される。
アスベスト使用による潜在的な健康への悪影響に対し、最低限の厳しい予防措置が強制的にとら
れることが必要である。これらの措置には、アスベストの危険な影響、船体からアスベストを除去する
場合の作業者保護、アスベストの再利用の禁止、アスベスト廃棄の安全確保、及び、解体場からアス
ベストが再び市場に持ち込まれることを防ぐことなどに関する、船舶解撤ヤードにおける労働者の教
育、能力構築訓練、及び注意の喚起が含まれる。
さらに、この問題に関する、強力な行動志向型の、アジアにおける国及び国際的なキャンペーン・
ネットワークまたは連合を築き上げることが重要である。
PL-2-04 Thambyappa Jeyabalan
セッション2: 環境曝露・危機管理・リスクコミュニケーション
マレーシアにおけるアスベスト問題に対する消費者の取り組み
サンビャッパ・ジャヤバラン
ペナン消費者協会[マレーシア]
抄録:
ペナン消費者協会(CAP)は2001年5月1日に、マレーシア政府に対し、アスベストの禁止を求める
書簡を提出した。同時にCAPは、政府の関連部局、労働組合、政治家等に働きかけるために、バリ
ー・キャッスルマン博士とT.K.ジョシ博士を招へいした。
マレーシア労働安全衛生局(DOSH)は、2002年2月22日に会議を開催し、そこには24名の代表者
たちが参加した。これらは、政府関連部局、労働組合、消費者団体、及びアスベスト製品の製造に関
わる様々な産業からの代表者たちであった。
この会議において、アスベスト禁止に関し、ほぼ完全に合意に達したが、唯一つの反対者は貿易
上の問題及び近隣諸国との競争力を危惧したマレーシア製造業連合会であった。
DOSH局長は、この国はまだアスベスト禁止の準備ができておらず、禁止を実現する前にもっと情
報が必要であると示唆してこの会議を締めくくった。
CAPはさらに書簡を出して、この問題を追求し、アスベストの管理使用を検討しているというDOSH
の回答を引き出した。また、DOSHは、この件に関する会議にわれわれCAPを招へいした。
国全体としての一般的な感じは、アスベストは禁止されるべきとするものである。これに関して、われ
われは各分野から署名を集め、アスベスト禁止の実施を求めて、新たな書簡をマレーシア首相に提
出しようと考えている。
地域社会の行動
家のアスベスト屋根材の解体を止めるための地域社会の活動を示す写真付報告書
PL-2-05 Robert Jones
セッション2: 環境曝露・危機管理・リスクコミュニケーション
アスベストの山影に暮らす(南アフリカにおけるアスベストによる環
境汚染のリスクに基づいた浄化戦略の必要性)
ロバート・ジョーンズ
ローデス大学環境科学学部[南アフリカ]
抄録:
南アフリカでは、1893年から2001年までアスベスト採掘が行われ、その結果、国土の広い範囲が永
久的に危険な状態になった。合計で数千平方キロメートルに及ぶ地域が、現在、かつてのアスベスト
鉱山操業の直接の帰結としての、管理が不適切であったアスベスト廃棄物によって、ひどく環境が汚
染されている。先進国においてすら、アスベスト繊維で汚染された地域での、土壌浄化の許容できる
レベルをいかに決定するかに関して、かなりの混乱がある。人間の健康を守るために、明確な土壌改
善基準が必要である。このことは、土壌中の残留アスベスト濃度と浮遊繊維との関係が明確にされて
初めて決定することができる。
本論文は、リスクに基づいた改善行動戦略(RCBA)が、安全かつ持続可能な復元のレベルをつく
るために必要であることを提案する。さらに、現状のやり方とは違って、復元作業は、元鉱山の操業の
跡地だけではなく、鉱山からの管理されないアスベスト繊維の飛散や鉱山廃棄物の不適切な投棄が
汚染の原因であると報告される周辺地域にまで拡大されるべきである。浄化戦略は、公共の場、住居、
庭、歩道、遊び場、学校、道路などの、曝露を最も招きやすそうな場所を目標にすべきである。最新
の文献は、南アフリカにおけるアスベスト土壌汚染の復元(のための)しきい値は、とりわけ人間に曝
露の危険を及ぼす地域では、数桁引き下げられるべきであることを示唆している。しかし、最も必要と
されることは、総合的な評価と浄化戦略、及びそれを実施するための資金確保である。土壌浄化のし
きい値を引き下げることで、疑いなく数百、おそらくは数千の場所が、現在のリストに加えられることに
なるだろう。南アフリカ政府が鉱山会社によって放置された汚染を浄化する責任を受け入れたので、
その作業はまさに今着手されたばかりである。
PL-2-06 Iwao Uchiyama
セッション2: 環境曝露・危機管理・リスクコミュニケーション
リスクコミュニケーション―保育園児童曝露事件の事
例研究
内山巌雄
京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻[日本]
抄録:
日本は吹き付けアスベストの使用はすでに禁止されているが、既存の建物の改修や建て替えの際
の環境中への飛散が心配されている。飛散防止ガイドラインが公表されているが、守られない例も多
い。1999年7月に東京都の区立S保育園の拡張工事の際に不適切な工事管理のために、園児がアス
ベストに曝露されるという事態が発生した。
当初は父母の間で健康被害に関する不安と情報不足のための混乱と怒りが大きかったが、事件発
生約40日後にリスク評価及び建築衛生の専門家を仲介者として園児保護者とのコミュニケーションが
開始された。その後健康対策等検討委員会が組織され、その委員には保護者から推薦のあった専
門家、NPO代表も加わった。アスベストの健康リスクは、工事を再現して曝露量を推計し、最もリスクが
高く推定されるモデルを用いた結果、生涯発がんリスクが10-5(10万人に1人)を越える園児が認めら
れたため、曝露した園児全てを生涯にわたって観察していくべきと結論し、保護者代表を加えた新た
な委員会が発足した。検討会は全て公開とし、父母からのヒアリング、中間報告のパブリックコメントを
行うなど、地方自治体としては新しい試みがなされたが、結論を出すまでに時間がかかったこと、父母
に対する心理相談のようなサポート体制が十分取れなかったことが反省点である。また園児が成長し
たときにどのようにこの事態を本人に説明していくかなどの問題点が残っている。
PL-2-07 Seiji Ikejiri
セッション2: 環境曝露・危機管理・リスクコミュニケーション
学校に残る吹き付けアスベスト問題をめぐるリスクコミ
ュニケーションの教訓
池尻成二
東京・練馬区議会議員[日本]
抄録:
東京都練馬区には103校の区立小中学校があり、約6万人が就学している。2003年から2004年に
かけて、この区立小中学校で延べ5万㎡を超える吹付けアスベスト等の存在が明るみに出た。この数
字は、面積だけで見れば、吹き付けアスベストが全国的に大きな社会問題になる中でいっせい調査
が行われた1987年の数字に匹敵する。
当時、練馬区は他の自治体に比しても精力的にアスベスト除去に取り組み、その後、区の施設管
理担当セクション、教育委員会を含む学校関係者、区民の間では、「アスベスト問題は終わった」とい
う認識が広まっていた。そうした中で、今回、練馬区は二つの大きな宿題を背負いながら対策をとるこ
とを迫られた。
一つは、なぜ、これだけ多くの吹き付けアスベストが残されてしまったのかということ。もう一つは、ア
スベスト曝露の可能性という事態の中で、子どもたち、保護者、教職員、区民とどう向かい合うのか。
いわゆるリスクコミュニケーションをどう進めるかということである。
後者に関して、練馬区の対応は、いくつかの貴重な教訓を残した。それは
① 区みずからが実は情報と知識を十分に持ちえていなかったという事実。その背景にあった、国
の対応と環境アスベスト対策の立ち遅れ
② 隠すのではなく、伝えることの中から、問題解決を図ろうとする姿勢への決断
③ 一般環境中のアスベスト暴露に関するリスク評価のための方法、技術、情報の不備
などである。
PL-2-08 Yuji Natori
セッション2: 環境曝露・危機管理・リスクコミュニケーション
吹き付けアスベストのある店舗での勤務が原因で発
症したと考えられる悪性胸膜中皮腫の1例
名取雄司1、仲尾豊樹2、片岡明彦3、酒井潔4、熊谷信二5、中野孝司6
1 ひらの亀戸ひまわり診療所[日本]
2 東京労働安全衛生センター[日本]
3 関西労働者安全センター[日本]
4 名古屋市衛生研究所[日本]
5 大阪府公衆衛生研究所[日本]
6 兵庫医科大学[日本]
抄録:
【目的】
悪性胸膜中皮腫の原因として、アスベストによる職業性曝露、家族曝露、環境曝露等が知られてい
る。私たちは今回吹き付けアスベストのある店舗で長年勤務していたことによる発症が考えられる1例
を経験したので報告する。
【症例】
70歳 男性
既往歴:1970年∼糖尿病
【現病歴】
2001年11月右胸水を認め、2002年6月兵庫医大で胸腔鏡実施。胸水ヒアルロン酸値は596mg/l、
免疫染色の結果はcalretinin(+)、AE1/AE3(+)、EMA(+)、CEA(-)、BerEP4(-))で、悪性胸膜中皮
腫上皮型T1a.N0と診断された。現在まで化学療法を施行している。胸部X-P及び胸部CTで胸膜肥
厚斑や石綿肺所見を認めず、聴診でfine crackleは聴取しなかった。
【アスベスト曝露歴】
<家族曝露> 5人兄弟の3番目で祖父母・父母・兄弟・子供にアスベスト曝露職歴なし
<自宅居住地> 大阪市近郊の農家で生誕、大阪府東部4か所で居住。住居に吹き付けアスベスト
はなく、近隣にアスベスト工場はない。1982年から現在の自宅は幹線道路から50mであった。
<職業歴と曝露> 1949∼1950年農業、1950∼1966年製紙用金網製造会社(青銅の線を織機で織
る工場)織工。1966∼1969年喫茶店経営。1969年∼2002年私鉄駅高架下文具店店長。職歴で直接
のアスベスト作業は認められないが、金網会社では隣の伸線工場の焼鈍炉にアスベストがあり年2回
隣の工場で補修作業があった。文具店は1階が店舗で2階が倉庫で、倉庫の壁に吹き付けアスベスト
が認められた。8時に文具店を開け21時に帰宅するが、1日4∼5回納品を置きに2階に上がり、1日30
回1分程度は倉庫の商品を取りに行く。月1∼2回和箒で20∼30分掃除を、年1回2∼3時間倉庫の掃
除を、約30年間行ってきた。
【測定結果】
2階倉庫の吹き付け材には、クロシドライトが25%含まれていた。大気汚染防止法環境庁告示第93
号の方法に準じた光学顕微鏡の測定で、文具店2階の静穏時濃度は1.02∼4.2f/L、2階に荷物搬入
時の濃度は14.0f/L、2階に荷物搬入と清掃時の濃度は136.5f/Lで、文具店1階は0.34∼1.13f/L、文
具店外の大気中の濃度は定量下限値以下であった。文具店と同じ市内の幹線道路に近い自宅濃度
も定量下限値以下で、定量下限値は0.15∼0.4f/Lであった。
【考察】
吹き付けアスベストのある文具店のアスベスト濃度は大気と比し高く、文具店で勤務した事が悪性
胸膜中皮腫の発症の主な原因と考えられた。このことは、吹き付けアスベストのある部屋での滞在自
体が悪性胸膜中皮腫の原因となることを示唆している。吹き付けアスベストのある部屋での作業や、
部屋自体が管理人室や休憩室等になっている場合もあり、今後、ビル等での吹き付けアスベストの十
分な管理が必要である。
PL-3-01 Yuji Natori
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
アスベスト被災者・相談・支援の活動
名取雄司、永倉冬史、植草和則、平野敏夫、飯田勝泰、内田正子
中皮腫・じん肺・アスベストセンター[日本]
抄録:
<日本のアスベスト被災者・家族によるパネルについて>
本セッション冒頭では、日本で石綿による様々な被害にあった方の声を伝えたいと思います。また、
様々な支え合いがあったことで力づけられたことを、お伝えしたいと思います。最初に悪性中皮腫や
アスベスト関連の医療・労災・環境相談を受けている、中皮腫・じん肺・アスベストセンターから被災者
支援の活動を紹介します。次に、2004年2月、悪性中皮腫や石綿肺がんの被災者本人と家族の会と
して、日本で初めて結成された中皮腫・アスベスト関連疾患・患者と家族の会の事務局から、活動と
今後の抱負を語ります。その後に、中皮腫・アスベスト関連疾患・患者と家族の会の世話人と事務局
の6人の方から、本人及びご家族の話をします。最後に、1999年7月文京区の保育園改築工事で、0
歳から5歳の児童が、保育中に吹き付け石綿の曝露を受けました。アスベスト疾患の今後のリスクを感
じつつ、過ごしている保護者が報告します。
1987年に結成された石綿対策全国連絡会議は、石綿(アスベスト)に関する国の政策を変更するこ
とが主な目的として、活動を続けてきました。しかし、石綿対策全国連には常勤の専従職員はいなか
ったため、全国の被災者を救済することはできない状況でした。
中皮腫・じん肺・アスベストセンターは、石綿対策全国連に加盟している団体や個人の多くが参加
して2003年9月に結成されました。中皮腫・じん肺・アスベストセンターはひとりですが常勤職員がおり、
全国からの被災者の医療や労災補償の相談に応じることが主な目的の一つです。今年2月に結成さ
れた中皮種・アスベスト疾患・患者と家族の会の事務局もまた、中皮種・じん肺・アスベストセンターが
おこなっています。
2003年9月から∼2004年8月に、中皮腫・じん肺・アスベストセンターでお受けした電話相談は、全
国の北海道から鹿児島まで325件でした。吹き付け石綿や石綿建材の飛散と防止策のご相談が約3
分の1、石綿を吸入した方の健康診断や石綿肺のご相談が約3分の1、悪性中皮腫や石綿関連肺が
んのご相談が約3分の1です。
悪性中皮腫及び石綿関連肺がんの方のご相談は、総数で113件でした。医療相談を希望された方
が36名いらっしゃり、労災補償のご相談を希望された方は77名でした。労災補償のご相談を希望され
た77名のうち、既に15名の方が労災(業務上疾患)に認定され、22名は現在申請審査中で、17名の
方が申請の準備を行っています。残る23名の方の中には、相談を継続した中で病理診断が中皮腫
及び肺がんと異なっていたことが判明した方、諸関係を考え労災申請を途中で中止された方、および
環境曝露と思われる方々です。この環境曝露の相談が増加しており、調査及び対応が始まっていま
す。
PL-3-02 Kazunori Uekusa
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の活動
植草和則
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会[日本]
抄録:
会の概要
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会は、胸膜や腹膜にできる悪性腫瘍である悪性中皮腫、石
綿(アスベスト)による肺がん、良性石綿胸水及び、びまん性胸膜肥厚等の石綿(アスベスト)関連疾患
に罹った患者と家族の集まりです。多くの仲間が全国各地で孤立しながら闘病を続けてきましたが、
2002年4月より交流を深め、2004年2月7日に患者と家族の会として正式に発足致しました。8月15日
現在、全国の44人の正会員と31人の賛助会員が会の活動を支えています。
患者さんの容体など
アスベスト関連疾患の患者さんはその症状ひとつをとっても一様ではなく、個人差の大きいことが
特色です。発症後、数年間闘病生活を送り続けている方もあれば、残念ながら半年ほどでお亡くなり
になる方もおられます。
治療方法も様々です。手術の場合、肺の一方を全部摘出された方から、胸膜を一部摘出するにと
どまっている方まで多様です。抗がん剤も、1クールから数クールまで症状の進展により回数にばらつ
きがあります。民間療法(健康食品を含めて)となると、さらに多様になります。服用量により高額な出
費となることも少なくありません。治療の場は、病院への入院・通院・緩和ケア・自宅静養と選択肢は
広くなっています。
患者さんの年齢は低くなりつつあり、30代後半から40代前半の方もおられます。アスベスト吸引原
因の大半は建設業など職業によるものですが、非職業性の家庭内や環境での曝露も増えつつありま
す。
会の活動
電話による治療や労災申請の相談を行っている他、会報などの送付やホームページでの情報を
提供しています。また、関東・東海・関西などにおいて年数回の交流会が始まっています。
また、非会員の方も含めてアンケート調査を行い、その結果に基づき厚生労働省へ 中皮腫・石綿
(アスベスト)肺がんの健康対策の充実に関する要望書 を提出し、8月4日に回答をいただきました。
主な項目は、1)健康管理体制全般について、2)悪性中皮腫の診断とその後の不安について、3)悪
性中皮腫の治療について、4)医療費の負担について、5)労災補償について、6)既存アスベスト対策
について、です。全体的には、当たり障りのない回答に終始し、省としてどのように取り組んでゆくの
か明確な返答はありませんでした。患者さん方は真夏の影響もあり多数欠席されましたが、代わりに
ご家族やご遺族が真摯に質問をされていました。
PL-3-03 Rinzo Uno
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
造船アスベスト肺の私の苦しみ
宇野林蔵
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会[日本]
抄録:
横須賀の宇野といいます。横須賀は東京から約50キロ南で東京湾の入口にあります。住友重機造
船所に1951年に入社して、ガス切断や船体の取付工として37年間勤めました。また10年間は修理船
やアメリカ軍の艦船を担当し、そこでもアスベストの取り外しをすることがありました。修理船は期間が
短いため粉じんの中で残業しました。新造船では、船の引渡し間近になると船主から改正工事の注
文が出るので、防熱用のアスベストを自分で取り外すしかありませんでした。防じんマスクの支給は
1978年頃からでした。
今から20年前、先輩のじん肺患者を見て、全国じん肺患者同盟や労働組合の力を借りて被災者の
会を作ったことを思い出します。当時私は50歳の現役で、役員として会に貢献しました。退職後に石
綿肺と認定されたのが12年前です。その前後から咳と痰が非常に多くなり、いつもカバンにティッシュ
ペーパーとビニール袋を入れていました。毎年会員が中皮腫や肺がんで5人くらい亡くなっています。
日本ではじん肺患者が今でも1万7千人を超えています。
私は夜中に発作を4回起こします。咳と咳の合間がなく、咳止めの薬や水が飲めません。寝床で正
座をして頭を布団に埋めて、ティッシュペーパーを顔のそばに置いて、妻に背中をさすってもらいま
す。もがき苦しんでいるので、妻に「救急車を呼ぼうか」と聞かれても返事ができません。2時間位経っ
て咳が少なくなるまで、妻は私を見守るしかないのです。とても生きた心地はしません。妻もオロオロ
するばかりです。自分だけの苦しみだけではなく、家族にも迷惑をかけています。
電車に乗っていても軽い発作として咳が出ますが、周りの人がコソコソと自分から遠ざかってしまう
こともあります。その時は本当に情けなくなります。
横須賀の医師に相談して薬を変えたりしました。3年前からは吸入薬を使用しています。このような
苦しみは子供や孫には味わって欲しくないと思います。日本でも一刻も早くアスベストの使用を禁止
して欲しいです。何事においても対応が遅いのは日本人の悪いところです。政府の怠慢としか私には
思えません。病気の潜伏期間が30年・40年と長く、しかも裁判には時間がかかります。裁判をする必
要の無い補償制度を作って欲しいと考えています。
これ以上人間を殺さないで下さい。アスベストにより中皮腫や肺がんで友人が次々と亡くなってゆき
ます。私も時限爆弾を抱えていることを一時も忘れることはできません。
PL-3-04 Tokuo Kato (presented by Katsuyasu Iida)
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
病と闘いながら
加藤徳雄
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会[日本][故人]
代理報告:飯田勝泰(東京労働安全衛生センター[日本])
抄録:
悪性胸膜中皮腫を発症してから2年が経ちました。その間、病気の進みぐあいとともに私の心は
様々に揺れ動いてきました。初めて 中皮腫 の名前を耳にした時は、ただ混乱するのみでした。まも
なく、根本的な治療方法が無いことを聞かされた後は、頭の中が真っ白になり眠れない日々が続きま
した。まさに、混乱に追い討ちをかけられたような状態でした。
私は40年ほど前にボイラー製造会社で溶接の仕事をしていました。病気の原因は当時吸い込んだ
アスベストです。自分には落ち度がないのにこんな病気にかかってしまい、有効な治療法がないまま
死んでゆくのがなんとも悔やまれてなりません。
中皮腫についての情報が少なく、何を誰と相談してよいのかもわかりませんでした。そんなある日、
TVニュースでアスベストの相談窓口を知り連絡してみたところ、労災を申請できそうであることがわか
りました。以後、担当の方々のご協力により半年を経て労災認定されました。通知は簡単なものでした
が、安堵感に包まれました。
これまで、抗がん剤を使用し、幾度と無く入退院を繰り返してきました。発症以来、病気が徐々に進
行しているのが身をもってわかります。一刻も早く有効な薬を使いたいです。患者として当然の願いで
す。
私は、過去、アスベストが危険なものであることを知らずに吸い込みました。しかし、今は、発がん性
物質であることがわかっているのです。もう、これ以上自分のような患者を増やしたくはありません。こ
れがもう一つの私の願いです。
PL-3-05 Fumitoshi Saito
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
石綿関連肺がん―患者の立場から
斉藤文利
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会[日本]
抄録:
私、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の世話人をしております、斉藤文利(66歳)と申しま
す。35年前より住宅や店舗、工場などの電気配線、照明器具の取り付け工事を仕事としてきました。
その間、作業現場でアスベスト入りの耐火材・壁材・天井材・床材などを扱うに当たり、粉じんが舞う中、
マスクもせずに仕事をしていました。
今もなお、アスベストを知らずに無防備に仕事をしている人が多いと聞きます。アスベストは30代・
40代と年齢が上がるにつれて患者が多く発生しているようです。今後も患者の数が増えてゆくことが
予想されます。
では、患者の一人として今までの経過をお話したいと思います。1998年4月、胸のレントゲンに影が
写り、検査の結果肺がんと診断されました。6月に右肺の摘出手術を受けました。現在も気温・湿度の
関係で、呼吸が乱れたり咳が出たり手術後の傷が痛んだりします。しばらく通院を続けていましたが、
2002年10月に健康保険組合のレセプト聞き取り調査のため、ひまわり診療所の医師と保健婦さんの
訪問を受けました。今までの仕事や作業経過などを話すと、アスベストによる肺がんの可能性があると
言われました。
アスベストという言葉をその時初めて聞きました。また、何も知らずに毎日粉じんの中で仕事をして
きたことに驚きました。以前、摘出した肺の一部を借りて検査するとアスベストが検出されました。早速、
労災の手続きを始めましたが、わからないことが多かったので東京労働安全衛生センターの方の協
力を得て、2003年4月に認定されました。
その後、2004年2月にアスベストで苦しんでいる患者と遺族を世話人として会を設立しました。同じ
ように苦しんでいる皆さんの問題や悩みを気楽に話せるような会にしていきたいと思っています。私も
アスベストという言葉を知らずに、無知に過ごしてきた内の一人です。アスベスト被害者に対して、「診
断・治療・家族のケア」また「補償」について全国的な対策や相談に応じられるような会になるべく努力
していきたいです。
PL-3-06 Kaeko Omori
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
悪性胸膜中皮腫―夫を失って―
大森華恵子
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会[日本]
抄録:
東京の隣の埼玉から来ました大森です。夫の國男は、東京電力の下請け会社に18年勤務し、変
電所内の整備点検や清掃などの仕事をしていました。ある日、近くの病院で「末期の肺がんで余命3
か月」と宣告を受けて、この時は夫以上に自分が落ち込んでしまいましたが、私の強い希望で転院し
て再検査したところ、担当の医師に、アスベストが原因の悪性胸膜中皮腫と診断されがんの上の病気
であること、アスベストという聞いたこともないものが原因であることにびっくりしました。
肺に水が溜まるのを防ぐ治療をすることになりましたが、組織検査をする必要があり、転院しました。
病名が確定されたら元の病院にもどる予定でしたが、主治医から勧められ、手術を受けることになりま
した。
術後の体調は思わしくありませんでした。窓が開いていたら飛び降りて死にたいと言ったこともあり
ました。手術後約2か月で退院できる話もありましたが、結局、嘔吐したものが気管につまり、肺炎を併
発して、平成10年3月26日に亡くなりました。
個人で労災申請しましたが、事業所証明を会社から出してもらえませんでした。長女が国会図書館
に3日通って東京労働安全衛生センターを知り、協力をお願いし、マウントサイナイ医大病理の鈴木
康之亮先生の鑑定結果を提出してさえも、認定まで2年かかりました。
労災認定後、東京電力に、変電所の改善・NPOによる変電所内の環境測定・マスクの義務づけ等
をお願いしましたが、変電所内は徐々に改善しますが、マスクは義務づけられないとのことでした。ア
スベストの恐ろしさも知らされず、マスクさえも与えられず、病気になり亡くなってさえも、東京電力・夫
の会社ともども謝罪の言葉もありませんでした。
定年になったら二人で日本を旅して回ろうと話し合っていました。夢と希望を奪う権利が誰にあるの
でしょうか。私は、夫が亡くなったなどと思っていません。国と企業に殺されたと思っています。
アスベストの恐ろしさを理解し、アスベストのない世界になるよう、私の体験を話し伝えて行きたい、
また、家族の会で共に支えあい、少しでも心が救われればと思っています。
PL-3-07 Mie Saito
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
悪性腹膜中皮腫―父を看取った経験から―
斉藤美恵
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会[日本]
抄録:
「必ず元気になるから、応援して下さいね。それが励みですから。」
元気だけがとりえの父でしたので、入院中はとても心細かったようです。毎日のように家族の誰かし
らに、こんな携帯電話のメールを送ってきていました。家族の誰もが治るとは思っていないことを知っ
ており、父一人が治るつもりでいたことは、私たち家族にとっては大きな葛藤となっていましたが、父の
怖がりな性格を知っている私たちにとっては、最善の方法だと思うより仕方ありませんでした。
いよいよ状態が悪くなってから、父は病院から自宅に戻ってきました。退院する数日前から意味不
明の言動を繰り返すようになり、ついに私たち家族が24時間側にいて看護するときが来たことを悟りま
した。そして、家族全員で退院することを決めたのです。自宅に戻った父は、驚くほど落ち着きを取り
戻しました。静かに会話を交わすことも可能になりました。数日が静かに穏やかに流れていきました。
ずっとこんな日が続いていくかもしれないとさえ思えました。
その日、普段とは何か違う雰囲気を漂わせていた父は、夕方から激しく腹痛を訴え始めました。麻
薬(座薬)で痛みを取りながら、私は家族と親戚一同に召集をかけました。皆が集まる間に、父の痛み
は波が引くように治まっていきました。落ち着きを取り戻したひと時、私と妹は両親に、二人が若かっ
た頃の思い出話をせがみました。どこで出会ってデートにはどこへ行ったのか。結婚を決めたのは…。
結婚して私たちが生まれたときどんな気持ちがしたのか…。妹が、「私をこの世に誕生させてくれてあ
りがとう」と感謝の言葉を述べた時、父はにっこりと微笑みました。痛みが引いてからの数時間、私たち
は家族の思い出をゆっくりと振り返ることができ、至福のひと時を過ごすことができました。そして、話
が終わりかけたとき、父の呼吸があえぐように変化し始めました。私たちは皆、手や足など思い思いの
場所を手にとり、繰り返し「ありがとう」と声を掛けました。また生まれ変わっても、私たちが家族でいら
れることを願いながら…。私たちもそのうち追いかけて行くから、少しの間待っていて下さいと伝えなが
ら…。その瞬間は、寂しいというよりはむしろ幸せな時として、今、私の心の中に刻まれています。人
生の最期を家族に囲まれながら、自宅で迎えることができた父には、長い間嘘をついてしまったけれ
ど、勘弁してもらえるのではないかと思っています。
突然の腹水とともに始まった、父と私たちの闘病生活でした。最初は、「中皮腫」「アスベスト」など
分からないことばかりで、戸惑うことのほうが多かった私たちでしたが、なかなかのチームワークを発揮
できる素敵な家族だったことが分かりました。そして、こんな家族を作ってくれたのは、もちろん父のお
かげだと思います。大切な父を奪ったアスベストを、私たちは決して許せません。でも、今の私たちに
できることは、父のように苦しむ人が一人でも少なくなるように活動していくことだけです。父と私たち
の静かな闘いは、地道に続いていくと思っています。
PL-3-08 Kazuko Furukawa
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
石綿関連肺がん―夫を失って―
古川和子
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会[日本]
抄録:
私は、大阪に住んでいます。夫が死んで3年半が過ぎました。最初にアスベストが病気の原因だと
聞いても、その意味をよく理解することが出来ませんでした。夫は、若いころから発電所の中で配管等
の溶接を行っていて、アスベストを吸い込み、その数十年後に肺がんで死にました。
夫の死後遺された私は、この病気になった方達のために労災認定のお手伝いをするようになりまし
た。そして、認定のお手伝いだけではなくて、この苦しみを共有する仲間として、患者や家族の方た
ちと接しています。夫が病気で苦しんだ時に心を救ってくださったのは、医療関係者の方や、周囲の
人たちの暖かい励ましでした。そして今度は私が、不幸にしてこの病気になった人たちの手助けをす
ることが、夫への供養であると信じて活動を行っています。
若いころから真っ黒になって働いてきた労働者たちが、人生の円熟期を迎えようとしていたら突然
に発病する。仕事をしたがために病気になった。被害者や家族の方たちの苦しみは、このような理不
尽さから余計に絶望感と怒りが込み上げてくるのです。私の毎日の活動においては、辛いこともありま
す。最初は電話での相談から始まって、徐々に親しくなり、信頼関係が生まれてきたころに、悲しい別
れを経験したことも少なくありません。
夫もそうでしたが、病気になった方たちの多くは、「なぜ、こんな病気に」「アスベストが発ガン物質
だと解って、国や会社は我々に使わせたのならば悔しい。許せない」といいます。「体をもとに戻してく
れ」と訴えながら亡くなった方もいます。生きるということは誰でもが平等に与えられた権利です。その
権利をむしり取り、平然と利益のみを追求してきた企業と、今でもなおそれを黙認している国は、一日
も早く被害の実情を認めて、救済の措置を行うべきです。そのためにも、私は一人でも多くの方の声
を聞き、その苦しみを社会に訴えてゆきます。
PL-3-09 Anonym
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
区立S保育園園児の石綿曝露災害における保護者活動とエンパワ
ーメント
匿名
S保育園保護者[日本]
抄録:
1999年夏、区立S保育園の園舎改築工事中、2週間にわたり吹き付けを含む石綿が飛散し、0から5
歳までの園児100名強が暴露した。再三にわたる保護者の問合せに対して石綿の存在を隠し続けた
末に保育中に工事を決行した結果であった。隙間だらけの間仕切りごしの保育室では粉じんと石綿
が飛散したが、区職員は黙認した上、園児の避難を怠った。事件発覚以来、保護者は父母会や新し
く設立したNGOを通して、工事の中止、園児の避難、事件の解明、健康対策実施を求めて活動を行
ってきた。
保護者活動におけるエンパワーメント
① 保護者の参加―情報の共有、心配や怒りの共感とカタルシス、活動の多様性
② 専門家―専門的知識や助言、保護者団体活動の潤滑油的働き
③ 第三者からの共感と支援
④ 技術・環境・効率性―インターネット、活動中の保育の提供、基盤となる保護者会・名簿、短時間
で効率よく
保護者活動の阻害因子
①
②
③
④
子供への有害性
育児との両立における困難性
石綿への無知あるいは過度の恐怖
家族・職場・周囲の無理解
S保育園の改修工事における石綿暴露とその後の経緯
1999年
4月21日
4月
7月5日
7月7日
7月8日
7月9日
保護者会にて園長が工事実施について報告
保護者からの再三の石綿有無の問い合わせに、区は「天井に存在するが、天井はいじら
ない」
工事開始
天井仕上げ材撤去。むき出しの石綿を保護者が発見
既存の壁、仕上げ材撤去
調乳室、浴室のフレキシブルボード撤去
7月10日
7月14日
7月15日
7月17日
7月19日
7月21日
7月28日
既存コンクリートブロック壁撤去。柱部分の吹付け石綿とブロック粉じんが飛散
保護者会
間仕切りの隙間に目張り、軽量鉄骨壁下地の組み立て:合計17か所の吹付け石綿除去
父母会で石綿への不安が取り上げられる
父母の問合せで事件発覚、工事中止となる
0、1歳児の部屋を1階に変更、保護者の要望で石綿濃度分析実施
保護者会、区は吹付け石綿飛散に事実を隠蔽
保護者の要望―石綿露出状態の改善、代替地への避難、専門家の介入、石綿完全除
去又は全面建替え
8月18日 吹き付け石綿除去が新聞報道される
8月20日 保護者説明会、新聞報道を受け、吹き付け石綿除去について謝罪
8月23日 0歳児、1歳児を他保育園へ避難、2歳児以上も1階のみで保育
9月8日
専門家による説明会
10月25日 第1回健康対策等検討委員会開催
11月∼翌5月 代替保育園へ移転
2000年6月 新園舎に戻り保育再開
2001年6月 保護者が健康アンケート実施
2002年
3月10,11日 中間報告(案)保護者説明会
2003年
8月29,30日 最終報告(案)保護者説明会
2004年
3月7,9日 石綿健康対策等説明会
4月9日
第1回石綿健康対策等専門委員会
PL-3-10 Annie Thebaud-Mony
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
フランスにおける被災者・家族のエンパワーメント
アニー・デボモニ
国立衛生医学研究所(INSERM)現代社会公衆衛生問題研究所(CRESP)[フラ
ンス]
抄録:
数十年間、フランス社会は、中皮腫やその他のアスベスト関連疾病の流行の渦中にいることに少し
も気がつかずに過ごしてきた。アスベスト産業界の戦略は、アスベスト製造とその使用による健康への
影響を、人々から隠しておくことであった。産業界は、この疑問戦略をすすめるにあたって専門家―
科学者、医者、弁護士―たちに助けられてきた。しかし、それは、アスベスト曝露の被災者らによる強
力な社会運動が現われて、この流行の事実が明らかにされるまでのことだった。フランスは、1997年
にアスベストの全ての製造及び使用を禁止した。
フランスにおけるアスベスト曝露被災者の社会的運動は、1990年代のアスベスト政策の展開に重
要な役割を果たした。実際、アスベスト被災者擁護全国会(ANDEVA)は、25以上の地方または地域
のグループの活動をコーディネートしている。アスベスト曝露被災者たちは、1995年以前にはアスベ
スト関連疾病の補償をほとんど受けていなかったが、それ以降、フランスは、アスベスト補償請求、民
事裁判での裁決、最終的には雇用者の過失の認定に関し、目覚しい進展をみた。
本論文は、フランスにおける2つの地方の被災者団体の戦略を特にとりあげる。ひとつは、フランス
のアスベスト被災者の正義のために20年以上も闘ってきた、もともとは女性からなる、最初の労働者
団体である。彼女たちは、個人の補償についてのみならず、彼女たちが働いていた織物工場の最終
的な雇用者に対して刑事訴訟を起こす手段もとりながら活動を続けてきた。もうひとつは、中皮腫で死
亡したあるひとりの被災者の家族が主導者となって、汚染された場所の責任ある管理を求めて集団で
闘った歴史である。
PL-3-11 Fernanda Giannasi
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
発展途上国におけるアスベスト被災者の状況と
取り組み:ブラジル―ABREA
フェルナンダ・ギアナージ
労働安全衛生監督官、アスベスト曝露者協会[ブラジル]
抄録:
スライド1―ブラジルのアスベスト被災者の状況と活動
スライド2―われわれは1995年にアスベスト曝露者協会(ABREA)を産業都市、大サンパウロにある
産業都市に設立した。それは私のアスベストの活動に対する懲罰として、私が労働省における私の監
督区域から横暴にも異動させられた時のことであった。ブラジル政府は、その時点ではオザスコの全
てのアスベスト工場は既に閉鎖されていたので、私の活動を中止できると考えていた。アスベスト工場
は社会的圧力や抵抗のない他の場所に移されていた。
スライド3―当初のわれわれの目的は、1939年∼1993年までブラジルで最大のアスベスト工場を保
有していたスイス系のエターニット社(スライド4及び5)で働いたことがあり、医療検査を受けなくてはな
らない人々を見つけることであった。
スライド6―ABREAの他の目標はこのスライド中に示されているように、アスベスト関連疾病を目に
みえるようにすること、医療検査と積極的な患者の発掘、補償、アスベスト・リスクの情報提供、アスベ
スト禁止、そして環境的に破壊された地域の修復である。
スライド7―ABREAが設立されるまではブラジルにはアスベスト関連疾病公式な統計はなかった。
医学文献によって1990年から1998年までの間に100以下の症例が報告されていたに過ぎない。われ
われが探し出した最初の1,200名のもと従業員のうち、60%の人々がアスベスト関連疾病に罹患して
いた。
スライド8―ABREAはブラジルにおけるアスベスト関連疾病を社会的に目に見えるものとするために
アスベストに曝露した人々の情報を整備した。サンゴバンの元従業員の、あるグループから作成した
データシートを例に示す。175のデータシートの中から私はセバスチョの情報を選んだものである。彼
は昨年10月に死亡したこのグループのリーダーであるが、皆さんは21日の閉会式における授賞式に
おいて、この被災者のことをもっと知ることとなるだろう。
最近、保健省は、アスベスト曝露労働者の国としての登録を整備するために全国で
DATASUS/VIGIAMIANTOと称する疫学調査プログラムを展開している。それは単に疾病の登録だ
けではなく、フォローすべき全ての曝露労働者を含んでいる。われわれが期待する非常に野心的なこ
のプロジェクトは成功するであろう。彼らは情報を構築するために、われわれにデータの照会をしてき
ている。オザスコのモデルは他の地域にも波及している。われわれはすでに3州で活動的な6団体を
有している。
1. オザスコ(エターニット社元従業員 )
2. サンパウロ(サーモイド社自動車部品工場元従業員)
3. サンカエタノドスル(サンゴバン/ブラジル元従業員)
4. リオデジャネイロ(ジョーンズ・マンビル/アスベリト/ティーディット元従業員+エターニット元従
業員)
5. バイア―アベア―シモエス・フィルホス(エターニット元従業員)
6. バイア―アベア―ポコエス(サマ/サンゴバン元アスベスト鉱山労働者)(スライド10, 11, 12, 13,
14)
サンゴバンが1939年から1967年までクリソタイル・アスベストを採鉱した鉱山のあるバイア州ポコエス
では、被災者たちはまた、環境的にそして社会的災害として破壊された700ヘクタールの土地を糾弾
し、修復するよう求めている。(スライド15、16、17、18、19)
スライド23―補償のための闘い
フランス系サンゴバンの関連会社であるエターニットとブラジリットに対する500件の訴訟の後に、彼
らは1996年に法廷外和解として1,300米ドルから5,000米ドル及び医療介護支援を申し出た。
バイア州では、彼らは貧しい人々のアスベスト関連疾病に対する補償として時計と帽子を贈った。
(スライド24)
ABREAメンバーが排除されるという状況の下で、約1,500人の元エターニット従業員はこれらの哀
れな見返りを受け入れた。エターニットは今日でもアスベスト鉱山を所有し、世界で第5位の生産高を
上げている。エアターニットは合計2,500人の被災者がいることを公式に認めている。
ABREAと告発者は4年間、この法廷外和解を改善するために取り組んだ後、2,500人の被災者を代
表して公式の法的措置として訴訟を起こした。遅くて堕落したわが国の司法制度にあってわれわれが
驚いたことには、今年の8月に裁判所はエターニットに対して2,500人全ての被災者を補償するように
との判決を下した。(スライド25)
1) 被害レベルに応じたクラスⅠ(0.5最小給与)からクラスⅤ(4.0最小給与)の生涯年金―1.0最小給
与は月額約90米ドルである。
2) 被害レベルに応じたクラスⅠからクラスⅤにわたる50∼300最小給与の"精神的苦痛"補償
3) 支払い方法の保証。支払い対象として考慮されるべき有効時期は被災者が疾病を知った時。
4) 診断の後、アスベスト曝露した人々が受ける医療介護
われわれはこの判決でエターニットは1億6,000万ドルの出費となると見積っており、被災者たちは
1996年以来、会社が申し出ていた金額の10倍の補償金を得ることになる。
その他のABREAの活動
1.
2.
3.
4.
5.
アスベストは既に3つの州で禁止された。(リオデジャネイロ、リオグランデドスル、ペルナンンブコ)
2つ州の法律が最高裁で違憲であると差し戻された。
15の州がアスベスト禁止の法案を採択した。
70以上の法案が下院で審議待ちである。
全国で公聴会が開催される予定である。
PL-3-12 Roch Lanthier
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
ケベック州のアスベスト鉱山地帯の環境保全
ロッシュ・ランシェール
ケベック・アスベスト被災者協会(AVAQ)[カナダ]
抄録:
A) AVAQ について
B) 環境保全
1) 環境の状況
2) 空気のサンプリング
3) 汚染管理
C) 環境と社会経済的観点での地域再生
A) ケベック・アスベスト被災者協会(AVAQ)は、アスベスト被災者とその家族を、医療、法律、環境、
及び個人のレベルで支援するために創設された。また、メディアを通じて地域の人々に状況を知らせ
るとともに、他の団体との連携を深めることも目指している。AVAQは、アスベストの真に安全な使用法
が見つかるまで、そしてそれが使用される全ての場所に適用されるまで、アスベストの使用と製造を国
際的に停止することを提案する。
B-1) カナダにおける最も重要なアスベスト鉱山地帯は、ケベック州セットフォードマインズ市及び
その周辺にある。約40km×3kmの地域に、古くから、そして現在も採掘されているクリソタイル鉱山か
ら出る鉱滓の堆積場が30か所以上ある。土壌検査をするとこれらの鉱滓には10%のクリソタイルが含
まれている。多くの住宅がこの鉱滓堆積場の非常に近くに建設されており、時には100m以内であるこ
ともある。鉱滓は広く造園用として使用されている。この地域の女性は、中皮腫の罹患が世界で最も
高く、それは第2位の2倍にも達する。
B-2) AVAQはこの状況を非常に心配し、アスベスト繊維の濃度を評価するために、鉱滓堆積場周
辺の家の屋内空気のサンプリングを行った。鉱滓堆積場から1km以内にある26軒の家から28のサン
プルが採集された。これらの中で、15サンプルのアスベスト繊維濃度がアスベスト・ハザード緊急対策
法(AHERA)の基準を超えていた。この基準はアメリカおいて学校及び公共の建物に適用されている。
この濃度に達すると浄化措置がとられる。
B-3) これらの鉱滓が引き起こす汚染を管理するために、違うアプローチが考慮されている。4つの
主要な観点が考慮されなくてはならない。土壌の安定化処理、土壌の除去処理、土地の浄化、再緑
化である。
C) これらの土地の適切な再生には巨額の資金と技術的資源を必要とするので、この地域全体的
な再生に関し、環境と社会経済的観点に基づいて構想を練られなければならない。個人及び産業の
投資を魅力あるものとするために、収益を生む高付加価値プロジェクトに目を注ぐべきである。同じよ
うな状況で展開された他のプロジェクトが非常にうまく行くことを既に証明している。
PL-3-13 James Fite
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
世界の公衆衛生に対するアスベスト被災者の貢献
ジェームズ・フィット
白い肺協会(WLC))[アメリカ]
抄録:
アスベスト曝露によって被災した人々は、その存在や危険性について知らずに、アスベストの周り
で生活したり、働いていた人々である。補償と正義に対する要求を通じて、これらの人々が自らのグ
ループをつくり出すことが、この公衆衛生の課題を世界中の社会に知らしめる駆動力となっている。
著者は、アスベスト被害者によってなされた世界の公衆衛生に対する12例を超える貢献をリストに
して示す。アスベストは、社会全体へのコストが知られていなければ、使用する上で非常に安い製品
である。
社会的コストの全てが分かったときに、アスベストは使用する上で非常に高価な製品となる。アスベ
スト被害者は、隠されてきた社会的コストを多くの異なった方法で示してきた。したがって、一般公衆
及びとりわけ公衆衛生や環境保健関連当局からの支援を受けるに値する。
PL-3-14 Lorraine Kember
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
『私に寄り添って:介護者からみたがん』の著者として
ローライン・ケンバー
『私に寄り添って:介護者からみたがん』著者[オーストラリア]
抄録:
私の名前はローライン・ケンバーです。私は、37年間連れ添った夫を、胸膜中皮腫で、2001年12月
に失いました。
まだ小さな子どもの頃、私の夫はアスベスト鉱山の町ウイットヌームで7か月間、暮らしました。45年
後、彼は、胸膜中皮腫と診断され、余命は3∼9か月であると言われました。彼は2年間、生き延びまし
た。私は、他の人たちに強さと勇気を与えたいという願いをもって、彼の末期の病を通じての私たちの
経験について一冊の本にしました。その本は『私に寄り添って( Lean on Me )』といって、タイトルは、
夫ががんの宣告を受けたすぐ後に、夫のために書いた詩からつけました。
日記からの抜粋、詩、議論、そして自己洞察―私の本は、夫ががんの宣告を受けたことで私が経
験した荒涼とした心と絶望感、そして彼の命を救うために奇跡を捜し求めたことを描いています。それ
は、彼は死ぬということを受け入れること、そのために私が経験した悲嘆、そして、彼が死ぬことを止め
ることはできないけれども、彼が生きることを助けることはできる―と悟るようになって、私が強くなった
ことについて述べています。彼の病状の進行及び彼の苦痛と症状への対処について、私が集めた知
識により、彼の生活の質は著しく向上しました。その証拠に、ブライアンは2年間生き延び、活発で機
敏で、がんの宣告後18か月まで車を運転し、死の3日前まではベッドに伏すこともありませんでした。
私は介護をしている皆さんと共に、彼らが愛する人々の生活の質を大きく向上することができる方
法について議論したいと思います。苦痛を和らげ症状に対処することの重要さを理解することを通じ
て、私の体験から、知識の中に安らぎがあるということ、そして、あなたが何かを変えることができるとい
うことを示したいと思います。
私の話は、愛する人を失うことへ恐れや悲しみ、痛みの緩和、疼痛管理、症状のコントロール、緩
和ケアの分野にわたるでしょう。
PL-3-15 Gopal Krishna
セッション3: 被災者・家族のエンパワーメント
インドにおけるアスベスト被災者の窮状
ゴパール・クリシュナ
アスベスト禁止インド(BANI)、 トキシック・リンク[インド]
抄録:
はじめに
先進国ではアスベストの製造と使用が徹底的に削減されているが、インドでは、アスベストの管理
使用は絶対的に安全であるとされて、アスベストの製造と使用が見境なく促進されている。インドには、
10万人以上のアスベスト被災者がいる。この脅威は、インドがアスベストの管理使用を可能なものとし
て取り入れようとして、不幸にもそれがうまくいっていないために生じている。
被災者の現状
アスベスト関連被災者がそのように大勢いるにもかかわらず、アスベストが使用されているところで
はどこでも、法律に従う義務がある被害者たちの補償を求める裁判があるということは、驚くべきことで
ある。労働者の疾病は、診断されないままか、あるいはされてもその医療報告書は抑制され、アスベス
トの使用を促進する人たちは無傷で逃れたままでいる。
一般の人々及び特にアスベスト産業労働者の無知のために、アスベスト関連の疾患は急速に広ま
っている。調査研究調査により判明してきたことは:
① 労働者のほとんどが石綿肺、中皮腫、肺がんなどのアスベスト関連疾患に罹患している。
② 健康記録が長年、保管されてこなかった。
③ たとえ労働者がこれらの疾患に罹患していることがわかっても、わずかばかりの補償金を与えら
れて解雇されるか、健康人であるかのように健康記録を改ざんされた。
結論と勧告
政府や裁判所は、最高裁判所の次のような命令に従って、アスベスト製品の製造者に10万人全て
の労働者の過去30年間の医療記録を作成するように求めるべきである。すなわち、各労働者の健康
記録は雇用開始後最低40年、または退職または停職後15年のどちらか長い方の期間、保持され、ま
た保管され続けなければならないという命令である。
職業的危険性から労働者の健康を守るという任務を与えられた労働組合の支援を得て、政治的ま
たは政策的介入という手段に訴えるべきである。
求められているのは、人をアスベストに曝すということは人権を侵害することであるという意味を持つ、
司法的または行政的命令である。
刑法と不法行為法のもとで法的責任が問われる必要があり、アスベストを禁止した諸国及びこの殺
人繊維に関するWTO裁定の両方の主張を用いて、カナダからのアスベスト輸入を即刻禁止する必要
がある。
PL-4-01 Yasunosuke Suzuki
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
ヒトの悪性中皮腫168例の肺及び中皮組織における
アスベスト繊維の分析
鈴木康之亮、スティ−ブン・R・ユエン、リチャード・アシュレー
マウントサイナイ医科大学[アメリカ]
抄録:
ヒトの悪性中皮腫の誘発に関係するアスベスト繊維を同定し特徴づけるために、ヒトの悪性中皮腫
168症例(男性164症例、女性4症例;胸膜156症例、腹膜12症例;確実なものまたは疑いの強いもの;
解剖または生検試料、を含む)から採取した肺及び中皮組織から検出されたアスベスト繊維のタイプ、
数及びサイズを調べた。
被験者の職歴は多岐にわたり、アスベスト保温工、配管工、電気工、造船所労働者、板金工、海軍
勤務労働者、発電所労働者、ボイラー工、ブレーキ・ライニング機械工、消防士、アスベスト労働者の
家族、などを含む。組織試料採取については、バルク組織消化処理または組織灰化処理、もしくはそ
の両方が用いられた。高解像度分析用電子顕微鏡がアスベスト繊維を特定するために用いられた。
結果は以下のとおりである。
① アスベスト繊維は、これらのケースの肺及び中皮組織のほとんど全てに存在した。これらの組織
中の繊維の平均数は、一般的集団に見られるよりはるかに多かった。
② 肺組織中で最も多かったアスベスト繊維のタイプは、クリソタイルと角閃石の混合物、角閃石の
み、また場合によってはクリソタイルのみのいずれかであった。中皮組織で最も多かったアスベ
スト繊維は、クリソタイルであった。このような肺及び中皮組織で見られるアスベスト・タイプの相
違は、クリソタイル繊維が、肺から中皮組織へ透過的に移動する強い特性を持っていることによ
って引き起こされることが示唆された。
③ いくつかのケースでは、肺及び中皮組織の両方から検出されたアスベストは、クリソタイルのみ
であった。
④ これらの組織中の繊維の大部分は、短く(長さ5μm以下)、細かった(太さ0.25μm以下)。
ヒトの悪性中皮腫を誘発するアスベスト繊維のタイプを決定するために、肺及び中皮組織の両方が
調査されなければならず、また、短く細いアスベスト繊維を、この腫瘍の誘発に寄与する繊維タイプの
リストに含まれなければならないことが結論づけられた。
PL-4-02 Kouki Inai
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
日本における中皮腫―その病理学的特徴
井内康輝、武島幸男、櫛谷 桂
広島大学大学院医歯薬学総合研究科病理学、石綿・中皮腫研究会[日本]
抄録:
日本においては最近10年、中皮腫の頻度の急速な増加があることが指摘されている。2003年、中
皮腫の診断と治療に関する研究班が組織され、日本における中皮腫の発生と診断に関する総合的
な調査が行なわれた。日本病理学会認定の病理専門医へのアンケート調査によって、1995年から
2002年の間に病理学的に診断された854例の情報が116施設から集められた。これらの例の解析結
果としては、男性/女性比は634(77.3%)/186(22.7%)である。腫瘍の部位は、胸膜651例(77.4%)、
腹膜111例(13.2%)、心膜24例(2.9%)、精巣鞘膜5例(0.6%)、部位不明あるいは決定不能50例
(5.9%)である。診断に用いられた材料は、剖検211例(25.1%)、手術231例(27.5%)、針生検202例
(24.0%)、VATS生検143例(17.0%)、開胸生検106例(12.6%)である(複数回答あり)。組織型は、
上皮型403例(47.9%)、肉腫型153例(18.2%)、二相型180例(21.4%)に分けられる。免疫組織化学
的染色の実施率は、cytokeratin 76.7%、EMA 52.5%、calretininn 42.7%であり、陽性例の割合は
cytokeratin 92.5%、EMA 74.5%、calretinin 79.7%である。854例中130例については各施設から組
織ブロックが提供され、診断と組織型を研究グループで確認して、免疫組織化学的染色を新しい情
報をもとに行った。この研究の成果を基盤にして、中皮腫の診断に有用な免疫組織化学的染色の組
み合わせを提示できると思われる。
PL-4-03 Kenzo Hiroshima
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
悪性胸膜中皮腫切除例の臨床病理学的検討
廣島健三1、伊豫田明2、渋谷潔2、由佐俊和3、藤澤武彦2、中谷行
雄1
1 千葉大学大学院医学研究院基礎病理学[日本]
2 千葉大学大学院医学研究院胸部外科学[日本]
3 千葉労災病院呼吸器外科[日本]
抄録:
われわれの施設における悪性胸膜中皮腫手術例を臨床病理学的に検討した。1995年から2003年
までに、悪性胸膜中皮腫に対して胸膜肺全摘術を行った9例を対象とした。年齢は41-69歳、全例男
性であった。アスベスト曝露歴を4例に認めた。病期はII期5例、III期4例であった。術前の胸水のヒア
ルロン酸は大半の症例で上昇していた。組織型は上皮型1例、肉腫型5例、二相型3例であった。PAS
染色、Alcian Blue染色は、上皮型、二相型はいずれも陽性で、肉腫型は1例が陽性であった。免疫
染色の結果を上皮成分と非上皮成分に分けて検討した。上皮成分はcytokeratin AE1/AE3、EMA、
HBME1に全例陽性であった。Vimentin、calretininは一部の症例で陽性であった。一方、非上皮成分
はvimentin、calretininが全例陽性で、cytokeratin AE1/AE3は一部の症例で陽性、EMA、HBME1は
全例陰性であった。D2-40は上皮成分、非上皮成分ともに一部の症例に染色された。術後の予後は、
生存例が5例、死亡例が4例であり、2年生存率は44%であった。悪性胸膜中皮腫の病理診断には、
各種の抗体を用いた免疫染色による診断、特にcalretininが陽性であることが役立つ。悪性胸膜中皮
腫は予後不良の疾患であるが、手術により長期生存が期待できる症例もある。
PL-4-04 Kazuhiko Takabe
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
悪性中皮腫における上皮成長因子受容体遺伝子
変異のPCR/SSCP+heteroduplex法による検討
高部和彦1、三浦溥太郎2
1 土浦協同病院呼吸器内科[日本]
2 横須賀共済病院呼吸器内科[日本]
抄録:
【目的】
上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤であるgefitinibは進行非小細胞肺癌の分
子標的治療薬として適応となっているが、最近、gefitinibの有効例においてEGFR遺伝子のexon19、
21に高頻度に変異を認めたとする報告があり注目されている(Lynchら、NEJM 2004;350)。悪性胸膜
中皮腫(中皮腫)においても免疫組織染色により高頻度にEGFRの発現が見られgefitinibの有用性が
期待されており、今回、中皮腫におけるEGFR遺伝子の変異の有無をPCR-SSCP法により検討した。
【方法】
中皮腫腫瘍組織からDNAを抽出し、EGFR遺伝子のexon19(141bp)、exon21(198bp)をPCR法によ
り増幅し、SSCP法により変異bandの有無を検索した。また、肺腺癌切除例14例で同様の検討を行っ
た。
【結果】
中皮腫は11例で、全例男性、平均年齢は69歳(43∼87歳)、上皮型3例、二相型5例、肉腫型3例
であった。EGFR遺伝子の変異は、肺腺癌では4例(29%)(exon19、21、各2例)に認めたが、中皮腫
では1例も認めなかった。
【考察】
肺腺癌による検討からPCR-SSCP法によりEGFR遺伝子変異のスクリーニングが可能と考えられる。
中皮腫例では変異は認めなかったが、組織型による差異も考えられ、症例を増やして検討する必要
があると考えられた。
PL-4-05 Takemi Otsuki
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
HTLV-1不死化ヒト多クローン性T細胞株(MT-2)
のアスベスト(クリソタイルB)抵抗亜株の細胞特性
大槻剛巳
川崎医科大学衛生学部[日本]
抄録:
HTLV-1不死化ヒトポリクローナルT細胞株、T-2を用いて、ヒトリンパ球に対するsilicateの長期曝露
の細胞生物学的影響の評価を行うために、低濃度のchrysotile-Bに半年以上曝露を続けた。短期高
濃度培養で出現するアポトーシス、サイトカインの産生、いくつかの遺伝子の変化が認められ、総括し
て報告する。
PL-4-06 Tamako Nishiike
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
アスベスト及びその代替繊維の刺激により惹き起こされる酸化スト
レス―マクロファージにおけるニトロソチオール及びグルタチオンレ
ベルの変化
西池珠子、西村泰光、和田安彦、井口弘
兵庫医科大学衛生学[日本]
抄録:
肺胞マクロファージはアスベスト等の貪食により刺激を受け、O2-、・OH等の活性酸素種(ROS)、
NOやその反応生成物等の活性窒素種(RNS)を多量に産生する。様々なROS,RNSの増加が持続的
に起こることが肺の慢性炎症の一因となり、さらにはじん肺の発症や発がんに関与すると考えられて
いる。一方、NOは細胞内抗酸化物質である還元型グルタチオン(GSH)や種々のタンパク質の遊離
SH基と容易に反応してニトロソグルタチオン(GS-NO)をはじめとする種々のニトロソチオール(RSNO)を形成し、細胞機能の変化に関係すると言われているが、アスベスト関連疾患におけるRS-NO
形成の影響は明らかでない。そこで今回は培養細胞を用いてアスベスト等の繊維物質によるRS-NO
の増加を調べた。
マクロファージ系細胞RAW264.7及びJ774をUICCのクリソタイルB(CH)とクロシドライト(CR)、
JFMRAのグラスウール(GW)、ロックウール(RW)、セラミックファイバー(RF1)と共に培養したところ、
全ての繊維物質によりNO、RS-NOの増加が、またCH、CR、GWによりGSHの減少が見られた。細胞
内の最大のSH基供給源はGSHであることから、増加したRS-NOの多くはGS-NOであると考えられる。
このことは、アスベスト等に曝露されたマクロファージはROS、RNSの生成だけでなく、細胞内GSHの
減少によっても酸化ストレスを受けることを示唆する。また動物実験でも同様の結果を得ており、RSNOの増加は慢性炎症につながる酸化ストレスの指標として期待される。
PL-4-07 Yasumitsu Nishimura
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
アスベスト曝露による肺胞マクロファージの機能変化:TGF-β産生、
アポトーシスおよび多核巨細胞形成
西村泰光、西池珠子、和田安彦、井口弘
兵庫医科大学衛生学[日本]
抄録:
【目的】
石綿肺では、炎症反応を誘導し且つTGF-β産生能を持つ肺胞マクロファージ(AM)が肺線維化
惹起に重要であると考えられる。本研究では、Wistar系雄ラットを用いてchrysotile B(CH)の気管内
注入およびAM培養時のCH暴露を行い、AMのTGF-β産生能、アポトーシス、多核巨細胞形成つい
て調べた。
【結果】
CH 4mg注入5日後、BALF中には、TGF-β1濃度、annexin(Anx) +PI- の初期アポトーシス細胞、
Anx+PI+の後期アポトーシス細胞、およびDNA断片化細胞が有意に増加し、MGC形成も観察された。
また、CH注入群AMは培養5日後に有意に高いTGF-β1産生量を示した。この結果と一致して、対照
群AMは10g/ml CHとの培養でより高いTGF-β1産生能を示し、産生量はCH注入群AMと同程度で
あった。しかし、アポトーシスは誘導されなかった。一方、50g/ml CHでは顕著にアポトーシスが誘導
され、Anx+PI-細胞、Anx+PI+細胞、DNA断片化細胞と順に増加した。気管内注入実験の結果と対照的
に、CHおよび誘導されたアポトーシス細胞はAM培養時のMGC形成を直接誘導しなかった。
【考察】
肺上皮細胞や線維芽細胞との相互作用の有無に関わらず、CH暴露後AMは自律的にTGF-β1
産生能を亢進できること、またCH暴露後のAMにおけるアポトーシスの誘導とTGF-β1産生能亢進は
互いに独立した反応であり、誘導はCH用量に依存することが示された。これらAMにおける機能変化
の早期抑制は、肺繊維化の抑止に対し重要であると思われる。
PL-4-08 Gunnar Hillerdal
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
アスベスト関連疾患の臨床診断
グンナー・ヒラーダル
カロリンスカ大学病院胸部医学部[スウェーデン]
抄録:
どのような疾患がアスベスト曝露に関連するか
主な所見と疾患は、胸郭内にある:肺自体か胸膜。どちらの部位ともに良・悪性疾患がある。良性
胸膜疾患には、胸膜肥厚斑(プラーク)、良性石綿胸水(胸膜炎)、び慢性胸膜肥厚(線維症);肺で
は石綿肺がある。悪性疾患には、肺の気管支がんと悪性胸膜中皮腫がある。
胸膜病変
胸膜肥厚斑(プラーク)
胸膜肥厚班(プラーク)は、個々に分かれた、隆起した不透明の明るい円形の病変である。壁側胸
膜に特徴的に発生、即ち胸壁の内側に発生し、肺を侵さない。結果として症状はなく、胸部X線での
み診断される。小さなプラークは診断困難で、過少及び過剰診断がともに非常に多い。呼吸困難や
痛み等のどんな症状も胸膜肥厚斑(プラーク)に帰すべきでないが、他の原因検索はすべきである。
曝露後30年以上たつまでは、胸膜肥厚斑(プラーク)はまず見られない。
良性石綿胸水
胸水は、アスベストの吸入によって発生しうる;早期に発現し、通常は浸出性である。まれには数か
月から数年持続する。同じ側や反対側に再発があり、突然発病しうる。大量なこともあるが、1リットル
以上はまれである。しばしば無症状で、X線所見で驚かされる。浸出液はしばしば出血性で、漿液性
や繊維性のこともある。好酸球を含むこともある。通常はリンパ球を認める。時にびまん性の胸膜肥厚
や円形の空洞が残るが、しばしば痕跡を残さずに消失する。
良性石綿胸水の診断には、以下の三つの基準を満たすことが必要である。
① アスベストへの曝露
② 特に悪性の他の疾患の除外
③ 悪性中皮腫の除外のために少なくとも2年間の経過の観察
びまん性胸膜肥厚
胸膜肥厚斑(プラーク)とのレントゲン上の違い、胸膜肥厚斑(プラーク)は、肺実質に対して明瞭な
境界を示す。びまん性胸膜肥厚の臓側病変は、より肺実質と混合したびまん性の変化を示す。CTで
特にはっきりするが、経験をつめば標準のレントゲン写真でもわかる。繊維束、 カラスの足、crows
feet サインが発生し、肺実質に達し、時間がたつと繊維組織によるしめつけで、気管支の変形が起
こる。気管支が曲がって閉塞し、抹消の無気肺が起こる。いわゆる「円形無気肺」で、アスベストに曝
露した患者に今日非常にしばしば見られる。び慢性の胸膜の繊維化は、肺の圧迫をおこし、肺機能
の低下も起こり得る。
胸部レントゲンとCTが典型的に円形無気肺を示唆し、かつ気管支鏡が正常なら、胸部レントゲン
だけの経過観察でよい。もし不確実なら、針生検を行う。
中皮腫
もっとも普通の初発症状は、呼吸困難と胸痛である。まれには、発熱、咳、全身倦怠を示す。レント
ゲン上、胸水が通常見られる。浸出液は血性のこともあるが、大多数は漿液性で、10から20%は胸
水がない。病気の進行とともに胸水はふつう減少し消失する。浸出液が少なく胸膜肥厚斑がわずか
だと、肺塞栓や非特異的な胸膜炎が最初は疑われる。遅かれ早かれ腫瘍浸潤で強い痛みがおこり、
強力な鎮痛剤が必要になる。侵された胸郭は縮み呼吸しても動かなくなる。CTを全て行うべきだが、
疑いは常に胸膜生検によって確定されるべきである。いくつかの症例では診断は困難で、大きく生検
しても遅れることがある。治療は不幸なことに困難である。非常に早期の症例は外科手術ができ、つ
いで放射線及び/または化学療法を行う;手術の不可能例では、現在明らかな効果を示す化学療法
の体制がいくつかある。ゆえに診断はとても重要である。
肺実質病変
石綿肺(アスベストーシス)
石綿肺の用語は、石綿曝露による実質の繊維化に限定すべきである。もちろん真の石綿肺と同時
に起こり得るが、胸膜の病変だけでは石綿肺ではない。
症状と徴候
主要症状は呼吸困難(息切れ)である。これは、ほかの心肺疾患でも普通の非特異的症状である。
早期の徴候は特に肺底部の毛髪性ラ音だが、石綿肺に特異的ではない。指の湾曲も起こり得るが、
実際にはまれで、見られるのは3分の1以下である。
レントゲン所見
曝露が知れていて明らかな胸膜病変、つまり胸膜肥厚斑や広範な胸膜肥厚がある瀰漫性の不整
型間質性陰影があれば、診断は容易である。早期にはレントゲンでは見るのが不可能か困難なので、
過剰及び過少診断が起こり得る。交絡要因として、小不整影をきわめて高頻度に起こす喫煙がある。
とくに高分解能技術によるCTは、通常の胸部X線より早期に石綿肺を発見できる。
肺機能
古典的所見は、肺繊維症と同じで拘束性疾患である。はっきりしたレントゲン変化がなくても、石綿
に関連した肺の異常が起こる証拠がある。
臨床診断
石綿肺の診断のためには、以下の所見をもたなければならない:
① 信頼できる曝露歴
② 曝露と診断の間の適切な時間
③ 肺繊維症に合致するX線所見
④ 拘束性肺機能
⑤ 肺底部の吸気ラ音(必須ではない)
石綿に曝露していてもほかの型の肺繊維症が起こり得ることに注意すべきである;肺繊維症のある
ものは治療可能なので、重症例では確診のために肺生検が推奨される。
肺がん
石綿による肺がんは他のものと違いはない。検査、治療も同じようにすべき。患者にとって(補償な
ど)経済的に大切なので石綿の曝露を明らかにすることが重要である。
私たちは、石綿に曝露した人をいかに経過観察すべきか? その健康診断の目的は何か?
科学的、補償的な目的で曝露と関連する疾患を発見することや、更なる罹患率、死亡率の上昇を
防ぐために疾患の徴候を発見することである。健康診断はまた、法的要因や心理的原因(調査される
人や医師が安心する;しかしこれは医学的な利点がなければ理由にはならない)にもよる。
(患者、医師、社会にとって)これらの目的のうち一番大切なのは、医学的なそれである。現在、早
期発見で治癒できるのは肺がんだけである。ゆえに、一定期間でCTをすべきと主張する人がいるが、
コストベネフィットが証明されない限り、推奨できない。
PL-4-09 Bruce Robinson
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
中皮腫の新しい治療方法と血液検査を用いた早期
発見
ブルース・ロビンソン
ウエスターン・オーストラリア大学パース校医学部[オーストラリア]
抄録:
近年まで、悪性中皮腫(MM)の効果的な治療法はなかった。2つの新しい化学療法、gemcitabinecisplatinumとemetrexed-cisplatinumの双方は、30%を超える奏効率を示している。われわれは、生存
率を高めるためにこれらの治療法に関し、どのようにして外科手術と免疫療法を統合することができる
かを確定するために、先端的な分子的及び細胞的アプローチをとっている。
マウスの中皮腫は人間の腫瘍に似ている。このような動物のがんモデルは少なく,代表的なものの
ひとつである。それゆえ,これによる前臨床試験は行う価値がある。最終的に抗腫瘍細胞毒活性は減
少するとともに腫瘍は形成されたが、Allo MHCクラスⅠトランスフェクション(移入)は拒絶され、B7-1ト
ランスフェクション(移入)は際立って悪性中皮腫(MM)の成長を遅らせた。このデータから,中皮腫の
サイトカイン遺伝子療法は、外科的切除による腫瘍量減少療法を併用することで、最も効果的になる
ことが示唆される。
動物における腫瘍減少に成功したことに基づく、ヒトIL-2遺伝子を発現する組みかえ痘疹ウィルス
(VV)を用いての胸膜中皮腫の第一相臨床試験。
VV-IL-2 mRNAは注射後3∼6日で一連の腫瘍生検中に検出されたが、一様に8日目までに減衰
した。抗VV IgG抗体量はVV-IL-2 mRNAの発現とは全く関係がなかった。GMCSFとともに注射され
た自家組織腫瘍溶解物は、中皮腫患者の約25%にDTHの変化を誘発し、Western blot反応で検出
できるまでになった。
真の改善には、早期診断方法が必要である。Mesothelin族たんぱく質(SMRP)の可溶性成分は、
80%以上の中皮腫患者の血清中で上昇した。重要なことは、SMRPの顕著な上昇は、悪性中皮腫
(MM)の発症に先立つ数年前に検出することができるということである。したがって、血清中のSMRP
の検出は、MMの診断に有用であり、疾病の早期兆候であり、リスクのある個々人をスクリーニングす
るのに役に立つかもしれない。
PL-4-10 Shigeru Miyata
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
悪性胸膜中皮腫に対するイロノテカンをベースにし
た化学療法
宮田茂、中野孝司、村上亜紀、延山誠一、奥窪琢、飯田慎一郎、
栗林康造、三宅光富、中村仁
兵庫医科大学総合内科呼吸器・RCU科[日本]
抄録:
悪性胸膜中皮腫の発生率はアスベスト使用量の増加に伴って上昇してきた。悪性胸膜中皮腫は
死に至る可能性が高い、著しく治療抵抗性の強い腫瘍である。いろいろな第II相、第III相試験が過去
20年間に行われてきたが、奏効率は0-48%で、50%生存期間は7-15か月と短かった。イリノテカン
(CPT-11)は強力なトポイソメラーゼ1阻害剤で、前臨床試験において中皮腫に対する確かな殺細胞
活性が認められている。CPT-11の経静脈的投与は胸水へのCPT-11とより活性が強いSN-38の適切
な分布を作り、胸腔内の中皮腫細胞との接触を可能にする。CPT-11は単剤(125mg/m2)では悪性胸
膜中皮腫の患者に対してほとんど活性を持たないが、シスプラチン(CDDP)との併用では26%
(CPT-11:60mg/m2)と24%(50mg/m2)の奏効率を示し、CDDPとマイトマイシンCとの併用では41%
(100mg/m2)の奏効率を示した。しかし高用量のCPT-11(190-200mg/m2)はドセタキセルとの併用で
活性を持たず、ジェムシタビンとの併用では奏効率14.2%であった。CPT-11は悪性胸膜中皮腫に対
して明らかに有用な薬剤であり、他の薬剤との併用療法のさらなる臨床試験を行う価値がある。悪性
胸膜中皮腫の患者に対するCPT-11をベースにした治療について議論したい。
PL-4-11 Antti Tossavainen
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
アスベスト関連疾患のためのヘルシンキ・クライテリ
ア
アンティ・トサバイネン
フィンランド労働衛生研究所(FIOH)産業衛生・毒物学部門[フィンランド]
抄録:
アスベスト、石綿肺及びがんに関する国際専門家会議が、1997年1月20∼22日にヘルシンキで開
催されたが、その目的は、肺と胸膜の病変について討議し、それらの診断とアスベストの属性に関す
る最新の基準について合意することであった。参加グループは、会議の報告書を ヘルシンキ・クライ
テリア (Scand J Work Environ Health 1997; 23:311-316) と名付けることを決めた。
アスベスト関連疾患の臨床診断は、患者の詳細な問診とアスベスト曝露に関する職業上のデータ、
徴候と症状、放射線医学的及び呼吸機能所見、及び、細胞学的、組織学的、その他実験室での研
究に基づくものである。石綿肺は、一般的に、相対的に高い曝露レベルに関連する。
小陰影(ILO grade 1/0)の放射線による検出は通常、石綿肺の初期段階であると見なされる。
呼吸機能検査及び呼吸器系症状の評価においては、喫煙の影響を考慮しなくてはならない。石
綿肺の組織学的診断には、かなり膨らんだ肺組織中における、びまん性間質性肺繊維症(diffuse
interstitial fibrosis)及びアスベスト小体、または被覆されていないアスベスト繊維の存在を確認するこ
とが必要である。職場、家庭及び自然環境での低レベル曝露も胸膜肥厚斑(プラーク)を発症する可
能性があるが、びまん性胸膜肥厚については、曝露は高レベルであることが必要とみられる。
中皮腫については、職業上の短期間又は低レベルの曝露履歴で十分であると見なすべきである。
バックグランド範囲を超える肺内アスベスト繊維数、X線所見、又は細胞病理学的証拠も胸膜また
は腹膜中皮腫とアスベスト曝露を関連づける。喫煙は中皮腫へのリスクに影響を与えない。
肺がんの全ての主要な組織学的タイプは、アスベストに関連付けることができる。臨床的徴候と症
状は、個々の症例がアスベストに起因するかどうか決定する上で、なんら重要な価値を持たない。1年
間の高濃度曝露(アスベスト製品の製造、アスベスト吹き付け、断熱工事、古いビルの解体工事)、ま
たは、5年から10年の中程度の曝露(建設、造船)によって、肺がんのリスクが2倍、あるいはそれ以上
に増大する可能性がある。最初の曝露から最低10年の潜伏期間が必要である。25繊維・年の累積的
曝露量は肺がんのリスクを2倍にすると推定されていた。石綿肺の存在は重度の曝露の証拠であり、
石綿肺がある場合には、肺がんに対する何らかのリスクが加わることによって、アスベスト曝露だけに
よる場合よりも肺がんのリスクを増加させる。肺乾燥重量1グラム中における200万(>5µm)または500
万(>1µm)の角閃石繊維(amphibole fibres)の繊維レベルの残存が2倍の肺がんリスクと関係する。こ
のレベルは肺乾燥重量1グラム当たり5,000∼15,000アスベスト小体、または気管支肺胞洗浄液1ミリリ
ットル当たり5∼15のアスベスト小体に匹敵する。喫煙はアスベスト曝露が寄与する肺がんのリスクを減
少させるものではない。
PL-4-12 Hirotaro Miura
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
アスベスト曝露に関連したびまん性胸膜肥厚
三浦溥太郎
横須賀共済病院[日本]
抄録:
【はじめに】
びまん性胸膜肥厚は臓側胸膜を含む広範な胸膜の線維化を来す疾患で、石綿曝露もその原因の
一つとしてあげられる。石綿による肺実質の線維化である石綿肺(じん肺)が胸膜に進展した結果生
じることもあるが、肺病変が軽微であるか認められないことも多い。
【目的と対象】
石綿によるびまん性胸膜肥厚の頻度と呼吸機能障害の程度を明らかにするために、石綿健康管
理手帳による2001∼2004年の健診受診者を対象とし、病歴、胸部写真、CT(HRCTを含む)、肺機能
検査を調べた。対象者の胸部写真は全てじん肺所見が軽微(標準写真の1/0以下)で、ほぼ全てに
明白な胸膜プラークが認められた。石綿曝露以外に胸膜病変の原因が無く、胸部写真とCTが同時
期に撮られ、胸部写真から過去3年以内の肺機能検査がある被検者は93名であった。
【結果】
93名中8名(9%)に胸部写真でびまん性胸膜肥厚が認められ、いずれもCTにて臓側胸膜病変が
確認された。8名の%肺活量は平均65.0%(範囲47.1-96.7%)、1秒率は平均80.7%(範囲61.195.2%)であった。そのうち2名の%肺活量は60%未満であった。
【結論】
明らかな石綿曝露歴はあるが、明らかなじん肺所見に乏しい受診者の9%にびまん性胸膜肥厚が
見られ、拘束性障害の傾向が認められた。その1/4は著しい肺機能障害を呈していた。じん肺所見が
乏しくても、 びまん性胸膜肥厚により著しい肺機能低下を来すことがあるので、厳重な経過観察が必
要である。
PL-4-13 Narufumi Suganuma
セッション4: 医学的側面: アスベスト関連疾患の診断・治療等
ILO2000レントゲン写真を用いた中皮腫と良性胸膜炎の鑑別
日下幸則、菅沼成文
福井大学医学部国際社会医学講座環境保健学領域[日本]
抄録:
ILO2000年版国際じん肺レントゲン写真分類は、新たに悪性胸膜中皮腫瘍を表わすシンボルも加
え、登場した。なおかつ、決定的なことは、び慢性か局在性かの、胸膜肥厚の基準が改定され、その
文章表現、標準フィルムそのものも、差し替えられたことである。したがって、これらの改正点が、増加
する悪性胸膜中皮腫の診断、検出、描出に、役立っていることを実証する必要がある。われわれは、
付加シンボルのひとつである、悪性胸膜中皮腫の標準フィルム候補を、いくつかの症例から選び出し
た。そして、それが教育、訓練により、タイ、ベトナム、インド、日本の放射線科医、呼吸器科医に、そ
れと認識されるかを調べたので、その結果を報告する。
PL-5-01 Bob Ruers
セッション5: アスベスト被害に対する補償
環境曝露・家庭内曝露事例に対する補償
ボブ・ルアーズ
前オランダ上院議員、オランダ・アスベスト協会設立メンバー、弁護士[オランダ]
抄録:
1960年代以前に、アスベストによる病気は典型的な職業病であると認識されていた。しかし、ワグナ
ーらが、南アフリカのケープ州における中皮腫患者のかなり部分が、何ら職業的なアスベスト曝露を
受けていなかったことを示す研究結果を出版したとき、この認識は劇的に変化した。彼らは、幼少時
をアスベストの鉱山の近くで過ごしたり、鉱山のボタ山で遊んだりした男性や女性と同様に、主婦、召
使い、牧師、農夫、事務員の中皮腫患者に遭遇した。
第二次世界大戦後、アスベストの生産と消費は著しく増加した。アスベストは、主にセメント製品とし
て百をはるかにこす製品に使用されてきた。この広範囲な使用の結果は、今はっきりと現われてはじ
めている。私たちが膨大な数の被災者と相対しているだけではなく、莫大な量のアスベスト・セメントの
廃棄物は、さらなる被災者を生み出しながら、環境へ、とりわけアスベスト産業に近接した地域へもぐ
り込む道をみつけだしてきた。
補償を受けるために、アスベスト被災者は、長い道のりをたどらなければならない。訴訟を起こすに
は経費と時間の両方がかかる。とりわけ非職業性曝露の被災者の場合はそうである。しばしば、彼ら
は、曝露源の特定と法的因果関係を立証するうえで、大きな困難につきあたる。長い潜伏期間もまた
不利に作用する。
1990年まで、世界のアスベスト・セメント産業は、わずかひと握りの多国籍企業が所有していた。こ
れらの多国籍企業は、自分たちの製品の有害な結果を無視している。彼らは、とりわけ第三世界が関
連する場合には、いかなる責任をも、負うことを拒んでいる。したがって、もっとも大切なことは、世界
中のアスベストの被災者とその組織が、互いに支えあい、情報交換し合うことである。そうすることによ
ってのみ、すべてのアスベスト被災者は、どこに住んでいようとも、損害への十分な補償を得ることが
できるのである。
PL-5-02 Sugio Furuya
セッション5: アスベスト被害に対する補償
アスベスト関連疾患の労災補償: 国際比較
古谷杉郎
石綿対策全国連絡会議・全国労働安全衛生センター連絡会議[日本]
抄録:
各国の補償制度は、その国の歴史的、社会的及びその他の背景を反映して実に多種多様である。
筆者は、それがその国の人権意識のレベルをはかる指標のひとつになるのではないかと考えている。
また、アスベスト被災者とその家族に対する正義を実現することは、われわれすべてにとっての共通
の課題だろう。
日本では、アスベスト訴訟事例はきわめて稀れである。補償を受けている事例のほとんどが、労働
者のケースであり、国が運営する労働者災害補償保険制度からの給付のみを受けている。
わが国の法定の職業病リストには、石綿肺(じん肺の一種として)、アスベスト関連肺がん及び中皮
腫が含まれている。最近、良性石綿胸水及びびまん性胸膜肥厚も、ケース・バイ・ケースで補償が受
けられるようになった。アスベスト関連疾患の被災者は、(100%の)療養・(労働できない場合は平均
賃金の80%の)休業給付を、死ぬ(か当該疾患が治る)まで、期間制限なしに、受けることができる。
被災者が死亡した後は、その者に扶養されていた遺族は、年金として遺族給付を受けられることにな
ろう。アスベストに曝露した業務から離職または退職した後にアスベスト疾患に罹患した場合であって
も、被災者は補償給付を受けることができる。また、使用者が保険料を支払っていなかった場合であ
っても、労働者は補償給付を受けることができる。にもかかわらず、日本における、補償を受ける資格
がある者に対する補償を受けた者の比率は、毎年わずか数パーセントにとどまっているものと推測さ
れている。
過小報告、過小補償及び過小診断は、すべての国に共通した問題であろう。加えて、アスベスト関
連がんの多くが離職後または退職後に発症するにも関わらず、多くの開発途上国においては、離・退
職後に発症した場合には労災補償が受けられない。このことが、それら諸国のアスベスト関連がんの
実情をみえにくいものにしている理由のひとつだろう。
筆者は、今後の研究に資するために、いくつかの国におけるアスベスト被災者に対する労災補償
の初歩的な比較を提示したいと考えている。
PL-5-03 Akira Morita
セッション5: アスベスト被害に対する補償
日本におけるアスベスト関連訴訟の概観
森田明
弁護士、神奈川大学法科大学院[日本]
抄録:
日本におけるアスベスト訴訟は、まず、1970年代から80年代にかけてアスベスト製品製造や吹き付
け作業に従事して石綿肺に罹患した労働者がアスベスト・メーカーや関連企業を被告に提訴したもの
がある。集団訴訟として長野地裁の対平和石綿訴訟、個別訴訟としては日本アスベストなどを被告と
したものがあった。いずれも和解で解決している。
1988年に、横須賀住友石綿じん肺訴訟が提訴された。これは、初の造船労働者による集団的なア
スベスト訴訟であり、アスベスト製品の使用現場での被害について、メーカーではなく造船会社の責
任を問うたものである。その後、四国電力を被告として火力発電所の労働者が訴えた事件、横須賀米
軍基地で艦船修理等に携わった労働者が使用者としての国を訴えた訴訟、三菱長崎造船所の労働
者の訴訟、などが引き続き起こった。
最近では、これら造船現場で再び訴訟が提起されると共に、保育園における石綿撤去をめぐる事
件なども起きており、全国的に急激な増加とはいえないものの、多様な訴訟が展開しつつある。
PL-5-04 Satomi Ushijima
セッション5: アスベスト被害に対する補償
保育園児童曝露事件損害賠償請求事件
牛島聡美
弁護士、牛島聡美法律事務所[日本]
抄録:
この裁判例は、アスベスト曝露被害者が未発病の段階で、加害者による損害賠償的な和解金支払
いが認められた世界的に画期的ケースである。
1999年7月、文京区の公立保育園の建物の改修工事が行われた。この際、区は養生などの措置を
取らずに、吹き付けアスベストを大量に飛散させ、保育中だった児童らに多量のアスベストを曝露させ
た。
2003年1月、アスベストに環境曝露した未発病の児童とその保護者らが、加害者である文京区と施
工会社に謝罪と損害賠償(経済的損害や慰謝料)を請求する訴訟をおこした。
裁判では、①約20日ほどの作業で、一般の人の生涯リスクと同程度のリスクの上昇があったこと、②
故意または重過失と言いうるずさんな態様であったこと(設計図書にアスベストの商品名が記載されて
いたこと、建物の建設年次から当然アスベストが使われていたことが推定されたこと、保護者等が再三
にわたって警告をしたにもかかわらず、養生措置をしない予算しかつけなかったこと)が明らかになっ
た。
裁判所は、未発病の場合でも、生涯リスクが高まり、将来の健康診断を受ける必要が生じたことは
現に生じた損害であることを重視して、原告等の意向を汲む全面的解決のための和解を勧めた。
2004年4月の和解概要は次のとおりである。①区が原告を含む全児童と全保護者らに対する謝罪
をし、②区らによる原告となった児童・保護者等に対する和解金を支払い(総額300万円。そのうちに
は、児童1人当たり10万円の見舞金も含まれていた。)、③健康対策のための健康診断や、万一発病
した際の治療費の支払いについても区が原則として負担する、④公共の建物からのアスベストの除
去を早期に進めるとともに、民間の建築物の解体・改修の際に、行政としてアスベストの存否や施行
方法についての指導を積極的に行う。
なお、和解後の現在、原告とならなかった児童・保護者等と文京区との間でも、和解内容を考慮し
つつ、全児童に対する見舞金支払いを含む、協定、又は、条例の策定を検討している。
この裁判が、今後、日本でピークを迎えるアスベスト含有建築物の解体・改築にあたって、養生など
の措置に費用をかけることの方が、経済的にも社会的信用の面でも見合うという考えを根付かせ、ア
スベスト飛散を未然に防止することにつながることを望む。
PL-5-05 Tim Hammond
セッション5: アスベスト被害に対する補償
オーストラリアにおけるアスベスト訴訟:過去の傾向と今後の方向
ティム・ハモンド
弁護士、スレーター&ゴードン法律事務所[オーストラリア]
抄録:
1950年代から70年代にかけて、アスベストの人口一人当たりの使用量が世界で最も多かったのは、
オーストラリアだった。現在、わが国は人口に対する中皮腫発生率が最も高い国となっている。毎年
500人以上のオーストラリア人が中皮腫に罹患している。2020年までに、最大1万8千人がこの病で亡
くなるとの予測がある。
この国家的流行病で忘れることができないのは、ウイットヌーム(ウェスターン・オーストラリア州)の
悲惨な遺産である。クロシドライト鉱石がウイットヌームで初めて採掘されたのは、1938年であった。こ
の鉱山は、1967年に至るまで採鉱を続けていたが、その間2万人の男性・女性そして子供たちが町に
住み、鉱山で働き、道路の上に敷きつめられた掘り出されたアスベストの鉱さいのなかで遊んでいた
と考えられている。ウイットヌームはまさしく、オーストラリアの短い歴史のなかで最悪の産業災害であ
る。
スレーター&ゴードン法律事務所は、アスベストの被災者のためにこの20年以上活動しているが、
中皮腫やアスベスト吸引による肺がんの被害者に対して、損害賠償を認める評決を勝ち取ったオー
ストラリアでの最初の法律事務所だった。それ以来、多くの賠償請求訴訟が起こされ、アスベストの生
産者・供給者・職場で被雇用者をアスベストに曝露させた雇用者を含む被告たちに勝訴してきた。
最初の何件かの画期的な訴訟は1980年代に争われ、アスベスト関連疾患の患者のための法廷闘
争は今日も続いている。伝統的に賠償請求は、被告の過失に対して提訴されるが、時を経るにつれ
て訴訟の場面では異なる要求が起こってきている。
私たちは、現在、「第四の波」と言われるアスベスト被災者の訴訟代理人を勤めているが、これらの
被災者は、事務的な仕事や、学校または家で、アスベストに曝露した人たちである。現在提訴されて
いるこれらの訴訟の法律的な要求とあいまって、政府が、過失に対してコモンローに基づく訴訟を起
こすアスベスト被害者の権利を制限する法的な改革に乗り出すかどうか、不透明感が強まってきてい
る。
PL-5-06 John O'Meally
セッション5: アスベスト被害に対する補償
ニュー・サウス・ウェールズにおけるアスベスト訴訟
ジョン・ローレンス・オミーリー
判事、ニュー・サウス・ウェールズ粉じん疾患裁判所[オーストラリア]
抄録:
アスベストは、オーストラリア中で広範に採掘され使用されている。その結果、オーストラリアにおけ
るアスベスト疾患の発生率は世界で最も多い。ニュー・サウス・ウェールズ州(オーストラリア連邦の中
で最も人口が多い州)におけるアスベスト裁判の増加に対応するために、州議会は、1989年に粉じん
疾患裁判所を設立し、粉じん関連の条件下で受けた危害に対する申し立てを聴聞し裁定する管轄
権を賦与した。付保責任、不当行為請求あるいは(複数の)不法行為責任者間の寄与割合を裁定す
ることに関して、ニュー・サウス・ウェールズ州最高裁判所と同等の管轄権を持つ。ニュー・サウス・ウェ
ールズ議会は、申請が迅速に処理され終結されるように、実質的かつ手続的な規定を制定した。この
裁判所及びその運営の基礎となっている法令の実際と手続について論じる。
PL-5-07 Alexander Lacson
セッション5: アスベスト被害に対する補償
フィリピンの訴訟:スービック海軍基地でアメリカ海軍に置き去られ
たアスベスト被害者たち
アレクサンダー・ラクソン
弁護士、スービック・アスベスト肺被害者協会、基地汚染除去対策市民会議[フィリピン]
抄録:
I.
フィリピンのアメリカ海軍とスービック海軍基地についての簡単な歴史
• アメリカ海軍は、スペインがアメリカにフィリピンを譲渡した後、1900年にフィリピンを去って以来、
スービック海軍基地を占領し使用してきた。
• アメリカは、3万人を超える海兵隊や海軍の兵士たちを配備し、スービックを西大西洋における第
7艦隊の基地として開発した。
• アメリカは、スービックに、船舶修理施設、潜水艦施設、訓練施設、射撃場などを建造した。
• 5万人以上ものフィリピン労働者が、これらの施設で働くために、アメリカ政府によって雇用された。
II.
1992年、スービック海軍基地におけるアメリカ海軍の撤収
• 1992年に、フィリピン上院がアメリカ海軍、空軍のフィリピン駐留を延長するための条約を拒否し
たため、アメリカ海軍はスービック海軍基地から撤収した。
• それ以降、スービックやそれ以外の船舶改修施設で雇用されていた千人以上ものフィリピン労働
者が、カリフォルニアのアメリカの裁判所に、補償を求めるためにアスベスト裁判を提起した。
III. アメリカ裁判所におけるアスベスト裁判の提起
• ハリソン&デガルモ法律事務所(のちにヴッセ&ヤネツ法律事務所に代わる)のジェフリー・ハリソ
ンと称する一人のアメリカの弁護士が、アスベスト肺の被害者たちが訴訟を提起する手助けをす
ることを申し出た。
• フィリピン人被害者らは、アメリカのジェフリー・ハリソン弁護士と顧問契約を結んだ。それによりフ
ィリピン人被害者らは、和解交渉と和解金の受領を含め、アメリカで彼らのために訴訟手続きを行
うための、全面的、包括的な権限をハリソンに与えることになった。
• ハリソンは、できる限り大勢のフィリピン人被害者を募り、すべての人から書類を集め、顧問契約
にサインさせた。
• ハリソンは被害者たちの健康診断を行うために、フィリピン肺センターの一人のフィリピン人医師
を使い、彼に報酬を支払った。
IV. アメリカの弁護士を使うという問題
• 不幸にも、アメリカ人弁護士たちは、被害者たちを欺き、騙した。彼らは、アスベスト企業から被害
者らに支払われる和解金について、適切に説明をしなかった。
• アスベスト被害者によれば、被害者に訴えられていた68のアスベスト企業のうち、たった5から7の
企業のみが和解金を支払ったとハリソンは言った。
• 何人かの被害者は、訴訟の10年後、500ドルだけを受け取った。2,000ドルを受け取った被害者も
いた。一方、5,000ドル以上を受け取った被害者は非常にわずかしかいなかった。
• 2000年9月、スービック・アスベスト被害者協会(SAVA)の担当者が、私たちに、アメリカの弁護士、
ジェフリー・ハリソンに対抗するための法律面における支援を求めてきた。
• 私たちは、ジェフリー・ハリソンと彼の法律事務所に対して、あらゆる点における完全な説明を求
めたが、彼らは拒否した。
V.
アメリカで新たな弁護士を雇う試み
• 私たちはジェフリー・ハリソンと彼の法律事務所を追求するため、アメリカにおいて何人かの弁護
士と法律事務所を雇おうとした。しかし、彼らはすべて10万ドルの頭金か承諾費を要求したため、
私たちの試みは失敗に終わった。スービック・アスベスト被害者協会にはそのような資金はない。
• 元証券取引審議会会長でもある、一人のフィリピン上議議員が被害者を支援している。
VI. 現在の状況
• 今もなお、私たちは、成功報酬で私たちの訴訟を引き受けてくれるアメリカの弁護士を探してい
る。
• 現在、アメリカの二人の弁護士と交渉中である。
VII. まとめ
PL-5-08 Linda Waldman
セッション5: アスベスト被害に対する補償
アスベストとマネー:南アフリカのアスベスト訴訟原告
の立場から
リンダ・ウォルドマン
サセックス大学開発学研究所[イギリス]
抄録:
本発表は、南アフリカ共和国グリカタウンの住民が、過去30年にわたり、どのようにアスベスト被害
に対する補償を受け、またその補償をどのように捉えてきたかを調査したものである。グリカタウンの住
民の多くは、ノーザーン・ケープ州にあるケープ社のアスベスト鉱山で働いていた。そして、その結果、
様々なアスベスト関連疾患に苦しめられている。
鉱山で働いてきた人々は、南アフリカの職業病医療局(Medical Bureau of Occupational Disease)
に対する補償請求を行ってきたが、最近では、ケープ社に対する国際的な集団訴訟の原告としても
請求を行っている。環境曝露の経験しかなしに、アスベスト関連疾患に苦しんでいる人々は、補償の
選択肢がほとんどなく、国の給付金に頼らざるを得ない。しかし、これを獲得するのは困難である。
本発表では、グリカタウンの住民が、アスベスト関連疾患に対するこれら様々な補償をどのように考
えているかについて検討する。とくに、家族や親類縁者のアスベスト関連疾患に対する見方を通して、
この疾患の影響を調査し、アスベスト疾患についての文化的な面からの説明に焦点を当てている。ま
た、こうした補償がされる社会経済的背景についても検討を加える。
PL-5-09 Richard Meeran
セッション5: アスベスト被害に対する補償
国境を超えたアスベスト訴訟:ケープ訴訟事件
リチャード・ミーラン
弁護士、スレーター&ゴードン法律事務所[オーストラリア][参加できず・論文
提出]
抄録:
われわれの判例に基づく法制度では、一つの訴訟での判決は、全く異なる主題の訴訟の結果に
直接影響を与えることがあり得る。このことは国境を越えたアスベスト訴訟やその他の係争で示されて
きた。
南アフリカのアスベスト被災者によるケープ社に対する訴訟は、イギリスの法体系の下で苦難の末
に判決を勝ち取るまで6年かかった。この画期的な訴訟は危害を受けた南アフリカ人たちが、イギリス
の会社によって引き起こされた職業的及び環境的アスベスト曝露に対する補償を得ることを可能にし
た。
この訴訟とその反響について検証する。
PL-6-01 Anders Englund
セッション6: 既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄
建設部門におけるアスベスト・リスクの予防
アンダース・エングルンド
ウメ大学公衆衛生臨床医学部労働医学科[スウェーデン].
抄録:
スウェーデンでは、アスベスト使用の中止後30年経過した現在でもなお、男性の胸膜中皮腫が年
間100症例ほど起きており、そのうち、20∼25%は建設労働者である。胸膜中皮腫の過剰な発症は、
過去に行われたアスベスト含有製品の設置において相当のアスベスト曝露があったことを示す、いく
つかの建設部門にみられる。過去10年間、連続して発症例が減少した後、以前に設置されたアスベ
スト含有製品の除去作業において曝露が生じたグループのなかで、再び増加している。スウェーデン
では、アスベストによる悪性疾患の年間男性死亡数は、死亡労働災害よりも2∼3倍多く、このことは労
働災害がより多い建設分野にも当てはまる。
10∼20年、早い国々もあるが、EU加盟国の中のある国々はつい最近になって、アスベスト含有建
材の禁止を実行した。今後生じる既存の建物の修繕や解体時におけるアスベスト曝露を防ぐために、
ヨーロッパ中で調和のとれた取り組みが行われている。最近、様々な管理上及び技術的な取り組み
が整理され、2003年ドイツのドレスデンで開催された全ヨーロッパ会議で発表された。さらなる法的な
改善がEUレベルで準備中である。
アジア諸国は、今日、主要なアスベスト輸入国であり、使用国であるが、アスベストをまだ使用して
いる全ての国々で輸入されているアスベストの大部分は、広い意味で建材である。建設現場では、現
場が移動することのない工場におけるような隙のない安全手順がとられることはないだろう。したがっ
て、これらの国々における建設労働者に関するアスベストが引き起こした疾患についてのデータがな
いからといって、彼らのリスクがスウェーデンのサーヴェイランス・プログラムによって発見されるものよ
りも低いと信ずる理由はない。アジア諸国が、アスベストの使用終結に関するドレスデン宣言の勧告
に従うべき強い理由がここにある。
PL-6-02 Max Lopacki
セッション6: 既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄
アスベスト管理・作業者のトレーニングと能力に関する国際的最低
基準
マックス・ロパッキ
国立アスベスト訓練認証機構(NATAS)[イギリス][参加できず]
抄録:
建物・店舗・船などに使用されているアスベストの管理者・作業者また除去者の訓練について世界
中には多様な解釈と基準がある。ある国々は最低限の基準を定義し、法制化し、政策化することにた
けている。一方、その他の国々ではアスベスト作業者の保護の法制化は存在せず、また、アスベスト
作業の訓練という発想すらないのである。
訓練の必要性が定義されかつ強化されている国々においても、訓練を必要とする人は誰か、訓練
には何が必要なのか、訓練の頻度はどうするかという訓練の定義についてはまだ大きな相違がある。
この相違は、最近、ヨーロッパ連合(EU)が資金を提供し、イギリス安全衛生庁(HSE)の一部である
安全衛生研究所によって行われた調査プロジェクトが、EU加盟国における訓練活動を確認し、EU加
盟国全体でアスベスト作業者の訓練を標準化することを目指したことによって注目された。新興まもな
い状況から十分に成熟した段階まで、アスベスト除去の市場が多様な様相にあるアメリカ、アジア、オ
ーストラリア、その他の地域を考慮すると、この相違はさらに拡大する。
この論文は、(著者の知る限り)世界中の様々な基準を考察することを目的とし、そのうえで、「はた
してアスベスト管理者や作業者の訓練と資格の最低限の国際基準を定義ができるのか?」を問うもの
である。
PL-6-03 Heinz Kropiunik
セッション6: 既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄
ウィーン・インターナショナル・センターにおけるアス
ベスト管理計画
ハインツ・クロピュニック
アエタス建築設計事務所[オーストリア]
抄録:
ウイーン国際センター(VIC)は、ニューヨークやジュネーブとともに国連機関の本部のある3つの拠
点のひとつである。センターには7つの建物があり、床の総面積は約34万平方メートルで4千人ほどが
勤務している。国連は、このセンターを所有者であるオーストリア政府から99年間借りている。
VICの建設された1973年から79年までの時期、アスベストは世界中の建築分野で広く使用された。
1971年から76年までのオーストリア政府の統計数値によれば、原料アスベストの生産量は、年間最大
約3万5千トンにまで達した。
そのうちの約9割が、直接または間接に建設部門へ投入された。このセンターでもアスベストは、吹
き付け材やパネル、ロープなどの耐火材として使用された。
1997年にVICにおけるアスベストに関する状況について、この問題についてのリスクアセスメントも
含めた概観調査がなされた。アスベストが職員へ実際に危険をおよぼしているとは判断されなかった
が、ビルの建築年数からいずれ一回目の改修が見込まれるので、オーストリア政府は、VICにおける
アスベストの完全除去のための管理計画を策定する決定をした。
VICのアスベスト管理計画の最初の原案は2000年に完成した。結果は、アスベストの包括的な登録、
建物が機能し続けている間にすべてのアスベストを撤去するプロジェクト全体のための物資の調達・
管理の諸々に関する徹底的な実行可能性の検討、及び最後に通常のフロアーのひとつにおける試
験的な除去、であった。
アスベスト管理計画を完成させる詳細な作業は2001年に始まった。アスベスト除去作業の第一段
階のための入札手続においては、確実な設備管理の必要性からいくつかの除去試験を実行せねば
ならなかった。主要な作業の第一段階の開始は、2004年の終わりに予定されている。全体のプロジェ
クトは2009年末までに終了させなければならない。
PL-6-04 Susana Muhlmann
セッション6: 既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄
ケース・スタディ:元カセロス刑務所―アルゼンチン
初のアスベスト除去プロジェクト
スザーナ・ミュールマン
建築士、ブエノスアイレス市アスベスト除去手順・法的側面アドバイザー[アルゼンチン]
抄録:
1999年、ブエノスアイレス市当局は、小さな工場もある市内の住宅地域にあり、国立小児科病院か
らわずか1ブロックしか離れていないところにある、21階建コンクリート構造のカセロス刑務所の使用を
廃止し、これを取り壊すことを決定した。
2000年からこの建物は空き家になり、1年かけて解体することが計画されたが、現在もまだ進行中で
ある。
2001年に、陸軍の一部門であり爆発物を専門に扱う技術砲兵隊がこの刑務所を爆破することを委
託されたが、解体着手の直前にドイツ人の専門家とともに行った保健省の検査官による調査によって、
地下室にアスベストが発見されたため、市当局はこの大規模な爆破をとり止めた。
それ以来、市当局の環境政策として、適用できる国内基準はないけれども、アスベストを安全な手
順で撤去するということが決定された。
基本的な法的枠組みと新たな文書化に取り組むこと、アスベスト取り扱い手順を全ての関係者(当
局職員から近隣者まで)に一度ならず説明すること、陸軍の生物、化学及び原子力事故の専門分隊
に訓練を施すこと、多様な分野の専門家を招聘すること、先例のないこのようなプロジェクトの費用を
見積もることなどが必要であった。
このプロジェクトを実現するために、2年以上の歳月と、民間と軍、公的及び私的組織の有機的連
携、国内及び国際的なアドバイザーたちの広範な共同作業が必要であった。
本発表の目的は、ブエノスアイレス市当局が、関連する全ての機関と個人とともに、国際的な専門
家からの計り知れない貴重な支援を得て、一歩一歩、外国の基準をアルゼンチンの現実に合わせな
がら、いかに全ての安全に関する措置と手順を満たし、国内の基準を開発するために法的及び技術
的背景を確立しながら、大規模なアスベスト撤去プロジェクトを展開することができたかを示すことにあ
る。
私は、国際的なアスベスト・コミュニティの仲間や協力者の皆さんと共にこの経験を共有できれば光
栄です。
PL-6-05 Andy White
セッション6: 既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄
アスベスト: 新たな戦略と共同行動―スコットランドの
地方の経験
アンディ・ホワイト
ウエスト・ダンバートン市議会[イギリス]
抄録:
本論文には、2つのテーマがある。
1. スコットランドのかつての造船の町に関するアスベスト関連疾患の影響を論ずること
2. 地方政府の役割を検証し、アスベスト問題に対処するためになされるべき取り組みを考察すること
本論文の目的は、国際的な規模で直面している諸課題、及びひとつの地方の状況の中で機能し
ている解決策を提供するような議論を促すために、クライドバンク地域(訳注:スコットランド南西部のク
ライド川に臨む町)の経験と、スコットランド地方当局協定(COSLA)のアスベストに対する取り組みを
示すことにある。
安全衛生庁の統計
イギリスにおける中皮腫による死亡率についての安全衛生庁(HSE)による入手可能な最新の国家
統計を地理的に分析した。この報告書では、イギリスで中皮腫死亡率が最も高い地域はウェスト・ダン
バートンシャーであり、標準化死亡率(SMR)で平均の6倍を超えていることを示している。男性におい
て最も高い中皮腫の死亡率を示したのは、造船所や港、船舶の修理工場の周囲に住む人々であっ
た。
クライドバンク
ほとんど百年の間、クライドバンクの町は、産業の中心地で造船所と機械工業で有名であった。こ
の産業が遺したものは、誰も望まなかったアスベストの遺産であった。本論文では、ウェスト・ダイバー
トンシャー州クライドバンクの地域社会が直面している、アスベスト問題の大きさについて概説する。こ
れらの問題に対して、地域で開発された現実的な戦略について論じる。同様な戦略を、イギリスの他
の地域で、さらには国際的に、適用することができるのかどうかという点を中心に論じる。
スコットランド地方当局の協定
さらに地方政府の役割を検証し、アスベスト問題に対処するためになされた取り組みについて考察
する。ウェスト・ダンバートンシャー州議会は、スコットランド地方当局協定(COSLA))を通じて、スコッ
トランドの他の全ての地方当局とともに、アスベストの問題を提起してきた。この協定は、スコットランド
の地方政府の共同の利益を推進するものである。COSL報告書は、アスベスト作業部会によって提起
された主要な問題点の概要を、彼らによる重要な勧告とともに載せている。報告書全文のコピーは、
ウェブサイトhttp://www.cosla.gov.uk/のExecutive Groupsのページから入手できる。
アスベストに関するCOSLA作業部会
作業部会を設置した理由は、スコットランドにおけるアスベストの遺産を管理する上で、地方当局に
よる、首尾一貫したアプローチと共通の利益を追求する必要があったことである。
作業部会に託されたこと
1. スコットランドにおけるアスベスト使用がもたらした健康問題、社会・経済への影響、及び、アスベス
ト使用によっり生じた諸問題に取り組むうえでの地方当局の関与について検討すること
2. これまでの計画の見直しを行い、アスベストに関連する事柄についての地方当局の最良の実践例
を検討すること
3. 医療が必要な事例やアスベストにかかわる社会的及び経済的負担を、スコットランド(安全衛生)庁
及び(または)その他の関連機関からの外部財源によって賄えるようにすること
討議の論点
イギリスにおけるアスベスト問題に対処するために、資金が裏づけられた、包括的な長期的戦略の
必要性に関する議論を出発点として、COSLA報告書を議論する。これには、アスベスト・キャンペー
ン・グループや政府の全てのレベル、労働組合、医療専門家、その他の機関を巻き込んだ、多方面
からのアプローチを展開したクライドバンクの経験が含まれる。
COSLA報告書は、スコットランドの展望からではあるが、多くのアスベスト問題についてある程度詳
細に検証した。現在、イギリス、ヨーロッパ、そしてより広い国際舞台で、多くの重要な取り組みが行わ
れている。すでに重要な地域で達成されているかもしれない成功を最大限にするために、共同の作
業と経験の共有が、多くの問題の改善に結び付けていくことができるかもしれない。これらには、中皮
腫研究、福利厚生、民事訴訟、保健行政、一定の範囲での財源問題、及び学校のアスベスト問題が
ある。このことにより、われわれは、世界中に広がった、あらゆる面におけるアスベスト(問題)の流行に、
効果的に対処するために求められる長期的な戦略に、近づくことができる。
PL-6-06 Andy Oberta
セッション6: 既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄
既存アスベスト・セメント製品の修理と保守に関する
新しい規格
アンディ・オバータ
環境コンサルタント、ASTMインターナショナル・アスベスト管理作業グループ[アメリカ]
抄録:
既存アスベスト・セメント製品の保守、改修、修理のためのASTM規格が、世界最大の自主規格の
作成団体であるASTMインターナショナル(http://www.astm.org/)によって開発されつつある。
この規格は、すでに建物に使われている屋根、外壁、ダクト、配管その他の建材に使われているア
スベスト・セメント製品を取り扱うための基礎的な理論と詳細な手順を提供するものである。それは、日
常的な保守、修理、小規模な改修の際の穿孔、切断、破壊、やすりがけなど、粉じんと浮遊アスベスト
繊維を生じさせるような作業を対象としている。石けん水、やすりがけ用クリームや同類の物質を用い
ての湿式法による粉じんや繊維の飛散防止が強調されている。4つの付録が、地下配管、埋設ダクト、
穿孔、及びパネル撤去をカバーし、さらにその他の作業や建材をカバーする付録も用意される予定
である。この規格は、新たなアスベスト・セメント製品の使用を促すものではない。いくつかの手順は大
規模な除去作業にも適用されるかもしれないが、大規模な除去作業を目的とはしていない。
この手順は、先進国ととともに、発展途上国で使われることが想定されているため、手工具、手に入
りやすい機器や資材が特に用いられている。呼吸防護装置の着用が要求されるような繊維を飛散さ
せる可能性を最小にするために、電動工具は、なるべく使用しないように促している。
この規格は、労働者や地域の人たちの保健プログラムに責任をもつ政府機関やNGOとともに、建
設や保守業務の責任を有する監督者や管理者によって使用されることを想定している。この規格は、
アスベスト法令を検討中の国々に対して、有用な指針を提供するものである。ASTMインターナショナ
ルは、それぞれの国における規格(標準化)団体と調整しながら、この規格を利用しようとする国にお
いて、規格の使い方についてのトレーニングを提供するつもりである。
(オバータ氏はASTMインターナショナル・アスベスト管理タスクグループの議長である。ASTM:米国
試験材料協会。ポスター抄録(PS-20)も参照されたい。)
PL-6-07 Mardel Knight
セッション6: 既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄
アメリカ・メリーランド州における学校、産業および環境のアスベスト
管理プログラム
マーデル・ナイト
メリーランド州政府環境局[アメリカ]
抄録:
アメリカ・メリーランド州は、アスベスト使用の長い歴史がある。メリーランド州では、アスベストは、40
年前まで採掘されており、鉱滓は道路舗装に使われていた。より高濃度の曝露は、建材として使われ
ていた数千トンのアスベストによるものであり、また、メリーランド州ボルチモアにある製鉄所や造船所
での使用によるものであった。数千人のメリーランドの人々が、アスベスト曝露のために死亡し、病気
になった。
メリーランド州は30年間、アスベストを規制してきたが、1980年代中ごろになって、非常に厳しい認
可、訓練、監督、廃棄物管理規制を制度化した。また、メリーランド州環境部(MDE)のプログラムが、
学校における全てのアスベスト建材を厳格に特定し、規制する、 アスベスト危険緊急措置法
(AHERA) を監督している。現在では、この計画は全ての建物への適用に拡張されている。
本発表では、州がアスベスト含有物質の作業、確認、除去または所有を行う全ての人々に適用す
る行政管理上の詳細について述べる。
PL-6-08 Shigeharu Nakachi
セッション6: 既存アスベストの把握・管理・除去・廃棄
PRTRデータから見た日本のアスベスト使用状況と環
境中への排出量
中地重晴
環境監視研究所・有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)[日本]
抄録:
2001年4月から日本において、PRTR制度が施行されている。それに伴って、有害化学物質の事業
場から環境中への排出量や廃棄物としての移動量が国に届け出られるようになった。また、国は届出
対象外の事業場や家庭、移動体などからの排出量を推計している。これらのPRTRデータを集計して、
国が公表するようになった。現在、2001年度と2002年度のデータが公表されている。この公表された
PRTRデータをもとに、日本におけるアスベストの使用状況と環境汚染について報告する。
日本は、本年10月からアスベストの使用を原則禁止するが、数年前から、EUなど諸外国のアスベ
スト使用が禁止されていく中で、事業者の方でアスベスト使用の使用を控える傾向が顕著になり、20
年前には20万トンを超えていたアスベストの使用量が数年前には10万トンを切るようになった。この数
年の間に数万トンまで使用量が減少している。
PRTRデータでは、2002年度一年間で、廃棄物としての移動量が10業種から約3,167トンと報告され
ており、広範囲にアスベストが使用されていることがわかる。また、鉄道からの排出量が約3トンと推計
されている。ブレーキパッドに使用されたものであるが、自動車など同様に使用されているはずのアス
ベスト製品については、確たる統計がないとして推計されていない。国が発表している以上に環境中
へのアスベストの排出量は多いと考えられる。
PL-7-01 Kazuko Ouchi
セッション7: アスベスト・リスクのない世界: 明日への戦略
アスベストの管理使用から主要なアスベスト製品の
禁止へ―日本のプロセス:2002年6月∼2004年10
月
大内加寿子
アスベスト問題について考える会[日本]
抄録:
長い間、日本は世界有数のアスベスト消費国であったが、多くの人はその事実を知らなかった。大
勢の潜在的被害者が生み出される中で、社会に植えつけられた間違った認識が、この問題の重要性
を隠し続けてきた。このような反省に立って、日本におけるアスベスト禁止のプロセスを確認する。
2002年6月28日、坂口厚生労働大臣は、国民の安全、社会経済にとってやむを得ない製品を除き、
原則としてアスベストの使用等を禁止する方向で検討を進めると発表した。
同年12月、代替化の困難なアスベスト製品の範囲を絞り込むため、非公開の「石綿の代替化等検
討委員会」が設置された。翌2003年4月報告書が提出されたが、そこで示されていたのは、全面禁止
ではなく部分禁止の方向だった。
同年5月にWTO(世界貿易機関)の通報が行われ、それに対する正式な意見は提出されなかった。
その直前、カナダからの意見聴取が行われていた。国民の意見募集は、わずか数行の漠然とした概
要しか示されない提案に基づいて行われた。
2003年10月、労働安全衛生法施行令が改正され、アスベストを重量の1%を超えて含有する、スレ
ートや摩擦材を含む10種類の製品の製造、輸入、使用等の禁止が決まった。
2004年10月1日に同施行令は施行されるが、それ以降も、クリソタイル繊維の輸出入等は日本では
依然として合法である。禁止された10種類以外のアスベスト製品や、10種類の製品であっても1%以
下の含有率の製品の製造、使用等は禁止されない。さらに、施行前に輸入、製造された製品は、改
正施行令の適用を受けず、10月1日以降も合法的に譲渡、提供、使用等が認められている。
PL-7-02 Laurent Vogel
セッション7: アスベスト・リスクのない世界: 明日への戦略
アスベスト全面禁止後の欧州連合(EU)における状
況
ローラン・ボーゲル
ヨーロッパ労連(ETUC)[ベルギー]
抄録:
欧州連合がすでにアスベストの新たな使用を禁止することを決定した現在でも、アスベストに対す
る労働組合の闘いが終わったわけではない。健康に対するアスベストに関連する影響は、今後長期
間にわたり、大きな問題をもたらすであろう。
アスベスト使用に関する共同体指令の改定は、EU諸国において、よりよい法的枠組みを創り出した。
2003年3月27日の指令は、一定の前進を示した。実際、それは輸出を意図したアスベストを含有する
原料または製品の製造を継続することを禁じている。その他の積極的な点は、曝露限界を0.1繊維
/cm3に引き下げたこと及び指令の適用範囲を拡大したことである。
しかし、この指令には欠陥もある。とくに:
・ 改定指令は自営業者を適用対象としていない。
・ アスベストが使用されている建物や設備の解体作業全て、及びアスベスト除去作業すべてが、適
切な基準の下に認可された会社によって実施されることを確保にすべきである。
しかし、とりわけ問題と思われるのは、採用された規制措置を効果的に遵守させることである。
今後も取り組まなければならない重大な問題のうち、次のことが議論されるであろう。
・ アスベストが使用されている建築物の公的登録制度の創設
・ アスベスト関連疾病の認定の改善
・ 欧州企業の第三国における活動の監視及びアスベスト含有廃棄物の第三国への輸出禁止
・ 個人用保護具市場のサーヴェイランス
アスベストの悲劇は残念ながら、毎年多くの人々を殺している莫大な数の他の化学物質が存在す
る限りにおいて、ひとつの典型である。欧州の化学物質政策に関し欧州委員会が提案したREACH
(化学物質の登録、評価、認可制度)をめぐって現在行われている議論も、アスベスト災害を引き起こ
しているのとまさに同じ構造が、労働者の健康、住民及び環境に深刻な脅威を及ぼし続けているとい
うことを明らかにしている。
さらに詳しい情報と関連ドキュメントはhttp://tutb.etuc.org/fr/を参照のこと。
PL-7-03 Arthur Frank
セッション7: アスベスト・リスクのない世界: 明日への戦略
中国におけるアスベスト使用の研究
アーサー・フランク
ドレクセル大学公衆衛生学[アメリカ]
抄録:
中国は、アスベストの主要な生産国であり、消費国であり続けている。アスベストの採掘に加えて、
様々なアスベスト製品を製造し続けており、それらの多くは世界中に輸出されている。多くの女性を含
む住民に与えるアスベストの影響調査など、いくつかの重要な調査研究に取り組むべき機会が訪れ
ている。使用されているほとんどのアスベストはクリソタイルであり、ファイバー・タイプの問題もある。ま
た、潜在的に労働者に影響を与える労働現場に集積されてきた中国の医療体制と健康管理の現状
から、調査の実施にはかなりの困難も存在している。それにもかかわらず、健康問題に関するデータ
は蓄積されてきており、それらを紹介する。アメリカと中国の研究者たちの共同作業によりこのことが可
能となった。このような共同作業がどのように実施されたのかについても検証する。公衆衛生機関及
び労働者に対する教育の役割についても議論する。
PL-7-04 Dang Dinh Tri
セッション7: アスベスト・リスクのない世界: 明日への戦略
ベトナムにおける非アスベスト繊維セメント屋根材への代替物質使
用の可能性
レ・バンティン、ダン・ディンティ、グェン・ザコン、グェン・ティンフォン
国立労働保護研究所(NILP)[ベトナム]
抄録:
本論文は、ベトナムにおける過去10年間のアスベストの代替物質のための実験とその発見及び非
アスベスト繊維セメント屋根材の製造のための技術研究の過程を紹介する。それは、より軽い成分を
製造するために、そして日本や中国から導入した湿式成形技術により、最適な材料配合割合をもっ
たPVAセメント屋根材製造における技術プロセスを確立するために、セメント、ポリマー、無機、有機
繊維などを結びつけた物質を用いながら、ベトナムで入手可能なジュート、ココナツ、バガス(訳注:サ
トウキビの絞りかす)などの植物繊維を用いることからはじめられた。
結論として、本論文では、ベトナムにおいて将来、アスベスト・セメント屋根材の代替品となるPVAセ
メント屋根材の製造のためのいくつかを提案をする。
PL-7-05 Ken Takahashi
セッション7: アスベスト・リスクのない世界: 明日への戦略
アジア地域におけるアスベスト関連疾患の拡大を止
めるためのイニシアティブ
高橋謙
産業医科大学産業生態科学研究所環境疫学研究室[日本]
抄録:
アジア全域の特徴は経済発展の速さと世界人口に占める割合の大きさによって語られる場合が多
い。もう一つ見落とせない特徴は、域内の多様性である。すなわち発展の度合い、社会人口学的、歴
史的、政治的・文化的側面はすべて多様である。石綿関連疾患の問題は、これらすべての側面に関
係するばかりか、国際化の波が状況をいっそう複雑にしている。本報告の目的は2002年に産業医科
大学で開催した「アジア諸国のための石綿シンポジウム」の成果を踏まえ、アジア的視点を確立する
ことにある。
アジア域内で石綿消費のトレンドは好対照を示している。先進国では消費が漸減する一方、途上
国では確実に増加している。ほとんどの国でクロシドライトの使用が禁止される一方、アモサイトの使
用が禁止されていない国もある。クリソタイルについて実質的な使用禁止を達成したのはシンガポー
ルと日本(最近)の二か国に限られる。公式には他の国で石綿禁止は俎上にない。中国は相変わら
ず世界で最大の石綿消費国かつ生産国である。石綿関連疾患については、石綿肺症を公式に職業
病の一つとして認めている国がほとんどだが、過小診断と過小報告の問題は途上国に共通している。
中皮腫は(疾病としてはもちろん職業病としてはなおさら)過小診断が深刻で、発生や死亡に関する
統計を備えている国はほんの一部に過ぎない。石綿関連肺がんについての状況は底知れないと言
える。
アジアでは石綿関連疾患の流行が始まったばかりと捉えるべきである。しかしながら、石綿輸出企
業はアジア地域の急速な経済発展によって高まる需要に便乗しようとする傾向がある。それゆえ、ア
ジア地域での石綿関連疾患の拡大を防ぐには、慎重かつ正当な協力が必要である。アクションプラン
の原案を提示することで、漸進的な議論を喚起し、広く社会に受け入れられることを目指す。
PL-7-06 Sanjiv Pandita
セッション7: アスベスト・リスクのない世界: 明日への戦略
アジアにおけるアスベスト禁止:労災被災者の権利
のためのアジア・ネットワーク(ANROAV)のキャンペ
ーンと戦略
サンジ・パンディタ
アジア・モニター・リソース・センター(AMRC)/労働災害被災者の権利のためのアジア・ネットワーク
(ANROAV)[香港]
抄録:
アスベストは、疑いなく人を死に追いやる危険性がある物質であると認識されており、主要先進国
はすでにアスベストを禁止するか、もしくは、その使用を制限してきている。裏返して言えば、このこと
が、アスベスト製品製造企業のほとんどが、開発途上国において、このきわめて有害な物質の使用を
促進させる結果になっている。アジアは、今やアスベストの巨大市場となっている。中国とインドは、ア
ジアの二大アスベスト消費国である。サウジアラビアは、アジアで唯一アスベストを全面禁止している
国である。一方、アスベスト製品製造企業の業界団体は、クリソタイル(白石綿)は管理された状態で
使用すれば安全であるとしきりに宣伝している。労働者の安全には最小限の支出しかしないことがす
でにわかっているアジアの労働現場で、「管理された」状態を作り出すことができると考えるのは大胆
にすぎよう。職業病についての報告システムがほとんどないため、アジアでアスベスト関連疾患にかか
っている労働者が何人いるかはまったく分からない。労働災害被災者の権利のためのアジア・ネットワ
ーク(ANROAV)は、労災職業病被災者グループ、労働組合、労働関係のNGO、アジアにおける労
働安全衛生の諸権利獲得をめざして活動している労働運動活動家などが集まる、ユニークな連合体
である。アジアの14か国以上の国からメンバーが集まっている。本報告では、アジアにおけるアスベス
ト問題の重大性について概説する。それとともに、アジアの様々な国々のアスベスト業界団体による、
アスベスト使用禁止に対する強力な反対、および多くの国々の主流メディアによるアスベストの使用
支持についても概説する。アスベスト禁止の障害のひとつとして、多くの国々がアスベストの輸入品に、
他のより安全な代替物よりも低い差別的関税率をかけていることについての分析を行っている。また、
アジアにおける「アスベストのない職場」の実現に向けて、ANROAVが開始したキャンペーンについて
検討する。さらに、アジアにおけるアスベストの禁止及び被災者への補償を目標に据えた、アジア・レ
ベルの可能な戦略について洞察を加える。本報告は、ANROAVメンバーの豊富な経験及びアジア
全域のアスベスト被災者の何人かについてのケーススタディに基づいている。
PL-7-07 Fiona Murie
セッション7: アスベスト・リスクのない世界: 明日への戦略
地球規模のアスベスト禁止に向けた労働組合のキャンペーン
フィオーナ・マリー
国際建設木産労働組合連盟(IFBWW)[スイス]
抄録:
2000年9月にブラジルのオザスコ市で開催された世界アスベスト会議に参加した労働組合は、下記
に示す明確なキャンペーン活動の要点を提案した。その間、ICFTU(国際自由労連)は、アスベスト
禁止に向けた世界規模の取り組みを強化することを表明し、国際労働機関(ILO)と世界保健機関
(WHO)及び国際労働組合(グローバル・ユニオン)の間で、アスベストについて話し合う円卓会議を
2004年9月に開催する考えをまとめた。この会議は、オザスコ会議後の4年間で達成されたことについ
て調査し、組合活動における取り組みを強化するためのイニシアティブを特に強調するものである。
アスベスト禁止:労働組合は、地球規模でアスベストを禁止するための国際的なイニシアティブの
一環として、アスベスト禁止について各国政府に働きかける。
労働者の保護:労働組合は、労働によってアスベストに曝露する可能性のある労働者を保護する
ために、最低基準としてのILO第162号条約を適用するように、各国政府に働きかける。
注意の喚起:労働組合は、アスベストに曝されることの危険性と疾患を防ぐための手段について、
労働者と一般市民を教育するための国際的な取り組みを幅広く展開する。
代替品:労働組合は、人体の健康と環境にとってより危険性の少ないアスベストに代わる代替品を
捜し求める。
情報交換:アスベストの代替品を生産し、使用している国の労働組合は、これらの情報を普及させ
る。
公正移行:アスベスト禁止の導入によって労働者が解雇された場合には、労働組合はその影響を
受けた労働者と彼らの地域社会の所得、雇用、そして福祉が保護されるように政府に働きかける。
訴訟:労働組合は、司法システムを通じて、その怠慢によってアスベスト被害を引き起こした雇用主
の責任を追及する。
補償:労働組合は、アスベスト関連疾患によって苦しむ労働者のために、適切かつ迅速な補償を
求める。
治療:労働組合は、アスベスト関連疾患の被災者が、医療、支援サービス及び情報に確実にアク
セスできるようにキャンペーンを行う。
PL-7-08 Laurie Kazan-Allen
セッション7: アスベスト・リスクのない世界: 明日への戦略
アスベストのない世界に向けて!
ローリー・カザンアレン
アスベスト禁止国際書記局(IBAS)コーディネーター[イギリス]
抄録:
アスベストへの曝露は、衰弱し死に至る広い範囲の疾病と関連があるにもかかわらず、カナダ、ロシ
アそしてジンバブエの利害関係者たちは、アスベストは 管理された条件下で安全に 使用することが
できると主張し続けている。2003年、カナダは、クリソタイル(白アスベスト)を有害化学物質に関する
国際貿易制限リストに含めようとする国連の提案に反対する画策を行った。2004年6月6日、カナダ政
府は、2004年9月に開催される国際貿易における有害化学物質及び駆除剤の事前の情報に基づく
同意(PIC)手続の適用に関する、法的拘束力を有する国際協定書のための政府間交渉委員会にお
いて、クリソタイルをリストに加えることを阻止することを再確認し宣言した。
長年にわたる世界のアスベスト生産者の共謀にもかかわらず、アスベスト被災者と公衆衛生活動家
は長年の産業界の支配を打ち破り、40か国以上でアスベスト使用の禁止又は使用の厳しい制限とい
う成果を得ることに成功した。残念ながら、アスベストの消費はある国々で終わっても、他の国々では
増加している。先進諸国から発展途上諸国への 殺人粉じん の移転を防ぐために、アスベストの危
険性の周知を図るための継続した活動を行うことが必要である。世界保健機関(WHO)、国際労働機
関(ILO)、国連、欧州連合、国際自由労連、世界銀行などの国際的機関との共同作業を行うことが、
100年に及んだアスベストによる死に終止符を打つための地球規模の取り組みを最大限に強化する
だろう。
WS-A-01 Jesper Christensen
ワークショップA: アジア・ネットワーク: 目標と行動
OHSEI(アジア労働者労働安全衛生環境研究所)とアスベスト
ジェスファー・クリステンセン
アジア労働者安全衛生環境研究所(OHSEI)[タイ][参加できず・論文提出]
抄録:
アジア労働者安全衛生環境研究所(OHSEI)は、2000年2月に設立され、バンコクを拠点としている。
OHSEIは、アジアにおける国際労働組合のための労働安全衛生と環境に関する機関である。
加入団体
・
・
・
・
・
・
・
国際自由労連アジア・太平洋地域組織(ICFTU-APRO)
教育インターナショナル(EI)
国際建設木産労連(IFBWW)
国際金属労連(IMF)
際繊維被服皮革労連(ITGLWF)
国際公務労連(PSI)
ユニオン・ネットワーク・インターナショナル(UNI)
使命
・ アジア全体の労働者の労働条件を改善すること
・ 環境にやさしい持続可能な産業を促進すること
主な活動
・
・
・
・
・
アジア全体の労働安全衛生に関する訓練と調査研究
地域における労働組合、研究者、NGOのための、年一度のテーマを決めた会議の開催
ウェブサイト(http://www.Ohseinstitute.org)での知識の普及とニュースレターの発行
労働安全衛生と環境のための活動の支えとなる活発なネットワークの開発と維持
資金調達
OHSEIとアスベスト
労働安全衛生と環境に関する国際労働組合の機関として、OHSEIは労働組合に、アスベストをど
のように取り扱うかについて指導する重要な役割を担っている。OHSEIとしては、指摘しなければなら
ない二つの問題がある。それは、組合がどのようにしてアスベスト禁止のために結集して闘っていくこ
とができるのかということ、そして、労働者がアスベストを安全に扱うための作業訓練を受けていること
を、組合がいかにして確認することができるのかという二つの問題である。
OHSEIは次のことに努める
・ アジアにおける様々な労働組合のアスベスト禁止のための取り組みを調査し、その結果を
OHSEIのウェブサイトに掲載すること
・ 成功したキャンペーンについてのカタログを製作すること
・ アスベスト取り扱う際の安全な作業のための技術情報を提供すること
・ 訓練プログラムと作業マニュアルを作成すること
・ 労働者に作業に伴うリスクと危険性についての情報を提供するためのキャンペーンをどのように
実施するかという点について、組合に向けたガイドラインを作成すること
WS-A-02 Madhukar Pandhe
ワークショップA: アジア・ネットワーク: 目標と行動
アスベスト禁止における労働組合の役割
マドゥカー・カシナス・パンディー
インド労働組合センター[インド]
抄録:
「安全なアスベストほど安全なものはない」とは、ICEM(国際化学エネルギー鉱山一般労連)が発
行するパンフレットの警句である。
ILO第162号条約の採択にも関わらず、アスベストやアスベスト含有物質の禁止や流通に関する指
導の進展は、世界において、特に発展途上国において、遅々としたものである。
世界中で行われている強力なアスベストのロビー活動は、誤った情報を伝えており、いくつかの国
では政策決定者にまで影響を及ぼしている。このことは、一般市民に混乱を与えており、それはこの
恐ろしい物質の危険な影響についての十分な情報が不足していることに起因している。
⎯ 国ごとに、ILOにより提示されたアスベストの使用についてさらなる検討を加えている。
⎯ EUによるアスベストの使用禁止は、アスベスト生産者(南アフリカ、ロシア、カナダ)による発展
途上国の市場調査という結果をもたらした。職業上の危険性に関しての十分な科学情報が入
手可能であるが、多くの国々では、政府による行動がないまま、(アスベストの使用が)衰えるこ
とのない状況が持続している。
⎯ 労働組合による介入の必要が、アスベスト使用を禁止するための世界的なキャンペーンを強化
するために最も重要である。インドでは全ての労働組合がそれを要求しているが、アスベストに
関するILO条約の批准に向けたインド政府による前向きな歩みは見られない。
⎯ 労働組合は、労働者と市民の間に注意を促すために、主要な任務のひとつとして、キャンペー
ンに参加すべきである。そうすることによって、キャンペーンの勢いも増すのである。
⎯ そのようなキャンペーンが効果的であるときには、いつも良い結果が得られてきた。
⎯ インドでは、アスベストは加圧・非加圧両製品の製造に広く使用されている。
上下水道に使われる超高圧管、自動車、重機、原子力発電所、火力発電所などで使用される、パ
ッキング材、ブレーキ・ライニング、ジョイントなど。消費量の合計は10万トンで、その5分の1は国内で
生産されていると推定されている。
職業病の被災者が事実上保護されず、社会復帰もできないような地域では、労働組合の活動を強
化する必要がある。国際的な学術研究は、被害者の適切な社会復帰のために、利用されるべきであ
る。
アスベストの禁止によって職を失った労働者に対しては、効果的な社会的救済策が与えられるべき
である。生計を立てるための、代わりとなる職を与えられることが政府によって保証されないかぎりは、
労働者は貧困と尻込みれからキャンペーンを支援しないかもしれない。したがって、社会復帰政策に
向けて、労働組合が果たす役割を強化する必要がある。
アスベスト代替品の使用については、アスベスト消費者間で、発展、そして浸透させるべきである。
したがって、そのような商品のキャンペーンを行うべきである。
発がん物質及び人造鉱物繊維に関するILO条約の役割も強化すべきである。
アスベストの全面禁止を速やかに達成する。労働組合は、このひどく悪質な物質の被害者となった
労働者と消費者を完全に保護するために努力する。
主要な労働組合は、全ての生活範囲におけるアスベストの販売と使用の完全禁止に向けて、労働
組合活動家の間に注意を喚起する。
WS-A-03 Kan Hong Chan
ワークショップA: アジア・ネットワーク: 目標と行動
香港におけるアスベスト問題
チャン・カンホン(陳康錦)
労工傷亡権益会(ARIAV)[香港]
抄録:
香港では、1980年代以降、アスベストの使用及び取り扱いは厳格に規制され、大気汚染防止令に
よって、より危険なタイプのアスベストの輸入及び販売が1996年5月から禁止されている。同令は、ア
スベスト粉じんを飛散させる可能性のある作業に対する規制も提供している。
じん肺(珪肺及び石綿肺を含む)に対する補償制度は、1981年からスタートした。珪肺または石綿
肺とあ断された労働者は、確実に補償を受けることができる。厳格な規制と補償制度によって、石綿
(肺)事例の過少報告が生ずる理由はないと考えられる。以下は、珪肺及び石綿肺に関する新規件
数である。
香港における1994-2001年の新規認定件数
(じん肺補償基金理事会資料による)
年
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
珪肺件数
314
191
110
118
104
137
105
122
石綿肺件数
7
9
9
7
5
15
11
9
WS-A-04 Kuang-Wan Ho
ワークショップA: アジア・ネットワーク: 目標と行動
台湾におけるアスベスト問題の現状
ホ・クアンワン(賀光卍)
台湾工作傷害受害人協会(TAVOI)[台湾]
抄録:
1980年代に、アスベスト産業のために、たくさんのアメリカ人労働者が腹膜のがんやアスベスト肺、
肺がんに罹った。アメリカ政府はアスベストに対する曝露基準をより厳しく改正し、そのことは、アスベ
スト製造会社が開発途上国への工場進出の道を探る結果をもたらした。当時、台湾にはアスベスト製
造に対する規制は何もなかったため、数多くのアスベスト製造工場がアメリカから移転してきた。それ
によって、工場や周辺への環境汚染だけでなく、労働者や周辺の居住者の健康に深刻な危害が及
ぶにいたった。1990年代に向かい、台湾がアスベスト工場の操業や管理に関する規制を改正したた
め、大多数のアスベスト工場は中国本土やベトナム、タイなどの他の場所に移っていった。しかし、ア
スベストは依然として多くの工場で違法に使用され続け、さらに、建材の原料にアスベストの使用をや
めさせるための禁止は全く行われなかった。多くの労働者ですら、毎日彼らが扱っているものがいか
に危険なものであるかということを知っていない。
アスベストはすでに確実にアスベスト肺という病気の原因になるということが確認されており、アスベ
ストは台湾で広く使用されているものの、現在の台湾における認定者はほとんどわずかにすぎない。
職業的な疾患ですらも、医師はなぜ彼が、20年以上もの間、アスベスト肺の症例にあたるという診断
が下されなかったのかということを疑問に感じている。
理由は何か? 私たちは次の点について討議したい。
1. 台湾におけるアスベスト産業の現状と労働者の置かれている状況
2. 現在のアスベストに関する行政の政策と法規制
3. 現在の職業病に対する医療サービス体制
WS-B-01 Toshio Hirano
ワークショップB: 建設とアスベスト
建設労働者におけるアスベスト関連の医学的所見
と予防教育
平野敏夫1、名取雄司1、島津真理1、仲尾豊樹2
1 亀戸ひまわり診療所[日本]
2 東京労働安全衛生センター[日本]
抄録:
包括的な産業衛生と健康プログラムは、労働災害と職業性疾患を予防し、関連疾患を早期発見し、
被災者による労災補償の援助を行い、特に一人親方や小企業における予防手段の教育のために始
められた。労働組合、提携する建設国保組合、ひまわり診療所、東京労働安全衛生センターは、
1996年に共同計画を開始した。全建総連東京都連は、東京で15万人の建設労働者、主に木製建築
物の小規模現場や大規模現場の下請として働く一人親方や小企業を組織している組合である。最初
の活動は、建設現場の共同巡視と建設労動者の健康診断であった。一例としては、職業性呼吸器疾
患の発見のために、日本の厚生労働省のじん肺標準写真によって毎年6,000名の建設労働者のX線
写真を読影してきた。その結果、全体の13%に0/1の小陰影と胸膜肥厚斑を認め、0.6%に1/0の小
陰影を認めた(表1)。
2000年、私たちは職業性呼吸器疾患を予防するための教育プログラムを開始した。胸部X線写真
で異常のあった対象者に、私たちは職業性呼吸器疾患の予防と作業環境の改善のためのワークショ
ップを行った。ワークショップは2002年から毎年20回開催されている。総粉じんとアスベスト濃度の測
定に関する知識と同様に様々な仕事の写真やビデオで構成される新しい教育材料を作成した。ワー
クショップは粉じんとアスベストによるリスクの認識を高め、粉じん作業の作業動作を変更するために
有効であることが証明された。顕著な例を、表2にしめした。労働者は、壁を切断する際に局所排気装
置や個人保護具を着用し、作業中の粉じん濃度は極めて減少した。
表1 2000-2002年のじん肺健康診断の結果
表2 粉じん作業の認識と実践の教育効果
ES-B-02 Kyoichi Yamada
ワークショップB: 建設とアスベスト
東京建設業国民健康保険組合でのじん肺関連レセプトチェックに
ついて
山田恭市
東京建設業国民健康保険組合
抄録:
日本の医療保険制度は、企業等に雇用されているものの加入する「被用者保険」(加入者数
6,867万人)、公務員等が加入する「共済組合」(加入者数1,001万人)、自営業者が加入する「市町村
国保」(被保険者数 4,337万人)、そして、同業同種のものが作っている国保組合(被保険者数 425
万人)があります。
東京建設業国民健康保険組合(以下「東建国保」と略)は、建設従事者を組織する7つの建設労働
組合が協同で1970年7月に結成しました。加入者数は5月末日で組合員15,646人、被保険者数は
34,740人となっています。
東建国保では、1994年から診療報酬明細書(以下、「レセプト」と略)のレセプトチェックを行ってい
ますが、その目的は、建設に従事していた仲間は誰でもアスベスト含有材を使用していたこと、また、
その粉じんでの曝露があり、誰でもじん肺の被害者になる可能性があり、国保業務を通じてじん肺に
なった組合員を労災保険による休業補償等で救護・救済すること。また、アスベスト被害についての
啓蒙運動と位置づけ取り組んできました。
レセプトチェックは、1994年1月から実施しています。毎月一回、東建国保の職員が31,000枚のレ
セプトから8種類の疾病(①肺がん・疑いを含む、②珪肺、③じん肺、④肺腺維症、⑤中皮腫、⑥肺結
核、⑦アスベスト肺、⑧胸膜肥厚斑)のものを抽出し、東建国保の委託医療機関に送り、医師の判断
を受けます。
医師は、その病名・作業との因果関係により○
A 、A、B、Cの4点にランク付けを行います。その中で、
特に作業との因果関係が強く、過去の職歴や労災保険の加入状況の調査が必要と思われる仲間を
○
A として東建国保より本人・所属組合に報告します。
また、1990年からは○
A ランクの当事者を委託医療機関の保健婦と所属労働組合の職員が訪問し、
じん肺について冊子を用いて説明、過去の職歴や労災保険の加入状況の聞き取りを行っています。
また、委託医療機関である「ひらの亀戸ひまわり診療所」での診察も勧めています。
これらを通じて、2000年から、50名を超える○
A の患者を訪問し、9件の労災認定(休業補償給付や
遺族補償)を勝ち取ってきました。
今後の課題、これまで一定の成果を上げてきましたが、労災保険(特別加入)に加入しておらず労
災申請ができなかった仲間が少なくありません。今後、労災保険(特別加入)への加入を強く押し進
める活動を、東建国保構成各労働組合と進めていく必要があると思われます。
WS-B-03 Morimitsu Watanabe
ワークショップB: 建設とアスベスト
全建総連東京都連合会のじん肺・アスベスト対策の
取り組み
渡邊守光、堀井晶
全国建設労働組合総連合東京都連合会安全対策委員会[日本]
抄録:
全国建設労働組合総連合東京都連合会は、建設・住宅産業にたずさわる大工・左官などの建設
労働者・一人親方等の職能別労働組合で、現在、都内の15組合・約14万3千人で組織されています。
全建総連東京都連のじん肺・アスベスト関連疾病の労災認定を求める取り組みでは、健診時のレ
ントゲン写真を専門医に再読影してもらったり、組合が創設した建設国民健康保険組合のレセプトチ
ェックなどを通じて、職業病の可能性の高いと思われる組合員を探し出し、労災認定へとつなげてい
ます。
また、労災認定による事後的な補償・救済と併せて、粉じん・アスベストを発生させる建設現場その
ものを改善させていくことも重要と考えています。粉じん・アスベスト対策がほとんど取られていないの
が日本の建設現場(解体工事・改修工事を含めて)の実態であり、大手ゼネコン・住宅企業に対して
現場の実情も突きつけながら、改善を図るよう強く要求しています。
また、この間、建設労働者自らの手で、自らの働く現場の改善を追求していくために「組合員参加
型の現場改善運動」を提起し、「現場改善キット」などの道具を作成して、多くの組合員の現場改善運
動への参加を促してきました。この運動を広げていくことで、建設現場の安全面での改善にとどまらず、
衛生・環境対策面での改善や、その結果としての生産性向上にもつなげていくことを目標としていま
す。
WS-B-04 Kazuya Miyake
ワークショップB: 建設とアスベスト
東京土建のじん肺アスベスト対策の取り組み
三宅一也
東京土建一般労働組合[日本]
抄録:
はじめに(東京土建の説明と併せて)
東京土建では、2002年1月から現在までに、32人の労災認定を勝ち取り、71人の申請準備をして
います。認定をうけた32人のうちアスベストによる発症は、「中皮腫3人」「肺がん6人」「石綿肺5人」の
14人で44%を占めています。今後も、このアスベストによる被災の傾向は強まってくると思われます。
1. 4つの方法によるじん肺・アスベストの職業病の掘り起こし
①国保のレセプト調査、②支部の健診を通じた再読影、③本・支部のじん肺健診、④土建共済へ
の申請、以上の4つの方法で、掘り起こしをしています。
1) 土建国保のレセプト調査
通院分は毎年4月のレセプトから行ないます。点検は、「結核、肺気腫、じん肺、間質性肺炎、慢性
気管支炎、胸膜炎、肺腺維症、アスベスト肺、けい肺、気管支拡張症、喘息性気管支炎」等の呼吸器
系の疾患を中心に拾い出します。アンケートを送り、職歴などを回答してもらう。
アンケートの回答を見てもらい、区分を分けます。区分はAランク(職業病の可能性が高い)、Bラン
ク(経過観察)、Cランク(職業病の可能性低い)に分けて、Aランクの中から特に緊急性の高いものを
特Aランクにします。入院レセプトからの調査は毎月行なっています。毎月1,100∼1,200通来る中から、
「肺がん、中皮腫系を中心に、肺気腫、肺炎」等をひろいだします。
2) 再読影の取り組み
現在一般健診は約2万2千人が受診していますが、その受診者のレントゲンの再読影にも取り組ん
でいます。まだまだ少ない数ですが、昨年は3千人の再読影を行なっています。
3) 本・支部のじん肺検診の取り組み
じん肺検診は、本部と一部の支部(昨年は5支部)で実施している「じん肺単独検診」と一般検診と
セットで行なっている「セット検診」を行なっています。
じん肺検診は、総数で約4,200人が受診をしています。
4) 共済制度からの取り組み
2. 対象者へ専門医への受診を呼びかけ、労災認定に進める取り組み
この中で出てきた人たちに、国保から手紙を出すだけではなく、各支部の役員・書記局で直接本
人へ、専門医への受診を呼びかける取り組みを行っています。
3. ばく露予防とアスベスト禁止の取り組み
WS-B-05 Naoki Toyama
ワークショップB: 建設とアスベスト
参加型アプローチによる建設現場での安全衛生活動
外山尚紀1、名取雄司2
1 東京労働安全衛生センター[日本]
2 亀戸ひまわり診療所[日本]
抄録:
日本では輸入された石綿の9割以上が建材として利用され、その大部分が現存している。それら建
材を使用した建物の解体、改築に従事する建設労働者は、アスベスト曝露の高リスク集団であり、今
後も長期的なリスク管理が求められる。建設業で働く労働者、一人親方と小零細事業主を組織してい
る労働組合では、参加型手法を取り入れた新たなアプローチにより、石綿リスクの管理を含めた包括
的な安全衛生改善活動を実施した。
組合の地方本部に改善委員会が建設労働者によって組織された。その中で参加型活動手法(ア
クションチェックリストによるリスクアセスメント、グループワーク、対策志向アプローチ)を応用して、小
建設現場へ改善活動を広げるための基本的なトレーニングコースを作成し、参加の労働組合で実施
することが合意された。1)リスクプロファイルの同定、2)アクションチェックリストの作成、3)チェックリスト
を使用した現場見学と改善事例収集、4)基本トレーニングコースの開発とトレーニング教材の出版、
5)支部組合へのトレーニング活動の拡大、というステップを経て、建設労働者による独自の安全衛生
活動が展開された。
この活動を開始し促進するためには、1)労働者の自主的活動をサポートすること、2)良い事例の
収集と水平展開、3)労働組合のネットワーク、4)簡素で効果的な教材、が効果的と思われた。
WS-B-06 Eiji Shibata
ワークショップB: 建設とアスベスト
建設業従事者の石綿曝露、健康影響及び死因に関する調査研究
柴田英治1、久保田均2、孫健3、酒井潔4、毛利一平2、久永直見2、小林章雄1
1 愛知医科大学医学部衛生学講座[日本]
2 独立行政法人 産業医学総合研究所[日本]
3 カナダ医療経済研究所[カナダ]
4 名古屋市衛生研究所[日本]
抄録:
われわれは建設国民健康保険組合の組合員本人に対して、建設労働に関わる石綿曝露に関する
各種の調査を行うとともに、発生した健康障害に対して精査、療養を進める活動を行ってきた。その
活動の概要と調査結果について報告する。
1) 石綿含有建材加工時の石綿曝露
石綿含有の可能性のある建材を収集し、分析電子顕微鏡で石綿含有の有無について調べた。収
集した23個の建材のうち、17個からクリソタイル、またはアモサイトが検出された。また、石綿含有建材
を電動丸鋸で切断する際に、作業者呼吸域で100本/cm3を超えうることがわかった。
2) 石綿含有建材の使用状況に関する調査
質問紙調査により、7,411人(回収率79.3%)から回答があり、石綿粉じんの吸入が「よくある」「時々
ある」がそれぞれ13.7%、26.4%を占めた。職種では大工、建材別では石綿スレートでその頻度が高
いことがわかった。
3) 胸部X線写真による無機粉じんの健康影響に関する調査
1988年から定期健康診断の際に撮影される胸部X線写真上、石綿関連所見を認めた受診者に対
して問診、精査・受診の勧奨、保健指導などを実施した。
4) 死因に関する疫学調査
1973∼1993年の間に1年以上在籍した組合員17,667人の死亡に関する資料を用いて所在県の人
口と比較し、死因の特徴を調べた。全体の標準化死亡比は、気管・気管支・肺のがん、不慮の事故・
有害作用で高い傾向を認めた。
WS-B-07Jerzy Dyczek
ワークショップB: 建設とアスベスト
アスベスト・セメント(AC)屋根材の表面及びアスベス
ト飛散リスクのアセスメント
ジェルジー・ディクゼック
クラクフ鉱山・冶金工科大学建材工学部[ポーランド]
抄録:
アスベスト・セメント屋根板材の多くの試料が、小さな村、異なる町、及び産業中心地の建物の屋根
から採取された。
試料の表面は、走査型電子顕微鏡で観察された。表面の腐蝕は、大気汚染に依存し、産業中心
地のアスベスト・セメント屋根板材がより早く腐蝕し、いくつかの小さな町のアスベスト屋根材が最も腐
蝕が少なかった。この観察結果は、アスベスト・セメント板の破損は、アスベスト繊維を飛散する深刻な
リスクをもたらし、破損したアスベスト・セメント板の新たな表面には多数のアスベスト繊維突き出してお
り、部分的に損傷や機械的影響があれば吸入可能性のある繊維を生成する可能性があることを示し
ている。
WS-B-08 Susana Muhlmann
ワークショップB: 建設とアスベスト
「白い敵」を突きとめる:建物の既存アスベストを把
握するための簡単な手引き
スザーナ・ミュールマン
建築士、ブエノスアイレス市アスベスト除去手順・法的側面アドバイザー[アル
ゼンチン]
抄録:
古代ギリシャの時代から、アスベストは、魔法の物質であると見なされてきた。それは見つけやすい
鉱物であり、取り出しやすく、断熱材や防音材、耐火材として完璧で、人間の寿命を超える耐久性が
ある。
アスベストの持つ全ての特性を同時に備える物質は他にないので、人間が住む非常に多くの構造
物の中で何世紀もの間使われてきたのは理由のあることである。
しかし、時が経ち、科学によりアスベストは人間の健康にとって魔法というよりは危険な物質であるこ
とがわかった。
このことが、われわれのように、医師、弁護士、建設業者、専門家、建築家、行政担当者、そしてア
スベスト被災者、その他が、この重要な問題の解決を求めて会議に次ぐ会議に参加する理由である。
それにもかかわらず、その間にも、建物には、多くの人々が永久に接触するアスベストが、どこに使
われているのかの手がかりもなく使われ続けてきた。
情報を持つことが、環境における目に見える、目に見えない、または隠れた敵から適切に身を守る
ための重要な第一歩である。一歩一歩、毎日毎日、一緒に働きながら、われわれ全てにとって価値あ
る健康という自然の賜物に、少しずつ近づいていかなくてはならない。
このワークショップの目的は、われわれの身のまわりの既存アスベストについて、それはどのように
見えるのか、それはどこで見つけることができるのか、そして何をすればよいのかについて簡単な指
針を与えることである。
仮想の建物のスケッチを追いながら、用途や使用状況によって異なる手触りや色、そして形状をど
のようにして見分けるか学びながら、隠れているアスベストのありかを突き止める仮想の調査を行う。
WS-C-01 Hiroo Morita
ワークショップC: 労働組合のイニシアティブ
地域労働運動からのアスベストに対する取り組み
森田洋郎
全日本自治団体労働組合(自治労)/自治労横須賀市職員労働組合[日本]
抄録:
横須賀においては、いわゆる旧総評系労組の集合体である地区労働組合協議会が存在する。全
造船、全駐労、日教組、自治労などにおいて組織され、地域課題について取り組みを行う。1988年に
提訴された横須賀住友石綿じん肺訴訟は、労働組合主導で集団的に初めて提訴した労働災害訴訟
としての提起であった。地区労働組合協議会はその役目として関係者とともに、被告会社のみならず
地域運動として市役所、労働基準監督署、裁判所等への対策を開始し、広く地域に訴えかけを行っ
た。その後、横須賀米軍基地における提訴が全駐労からなされるなど、裁判も広がりを見せている。
今後も地域への取り組みとしてアスベストの存在と危険性や、被災者救済の活動を続けていく必要が
ある。なによりもこの取り組みを通して、私たちの労働組合がアスベスト問題を学んだ。
横須賀市においては、1987年当時、学校施設等でのアスベストの除去対策があった。私たちもこ
の当時は、国からの指示にもとづいた除去ということに疑問を抱かずに、その対策を見守っていた。し
かし最近になり、当時の国の対策が、アスベスト含有率が5%未満のものには何ら対策を講じないとい
う偽りがあったことが判明した。そこで現在、含有率5%未満のアスベスト調査を横須賀市全ての公共
施設において、当局の調査と平行し、組合員による職場点検活動を行っている。また、PCB(ポリ塩化
ビフェニル)入りコンデンサの放置による組合員の被災も最近発生し、こうした危険物質に対するずさ
んな管理が明らかになっている。これらのことは、そこで働く労働者の被災問題のみならず、公共施
設という性格からも、犯罪行為と言わざるを得ない。私たちの労働組合には、アスベスト犯罪を調査し
公表する責任がある。
WS-C-02 Masaaki Sato
ワークショップC: 労働組合のイニシアティブ
建設労働者へのアスベスト曝露防止と労災補償
佐藤正明
全国建設労働組合総連合(全建総連)[日本]
抄録:
全建総連は、「住まい」の建築に携わる建設労働者・職人を中心に「居住地ごとに個人加盟」の組
織として、全国の県単位に53組合、70万人の日本で最大の産業別労働組合です。かつてアスベスト
が「奇跡の鉱物」ともてはやされ、あらゆる建材に使用されてきました。その危険性を認識せず、吹き
付け作業や含有建材の加工等で、多くの建設労働者が石綿に曝露し、苦しみながら原因も分からず
に亡くなられた多くの仲間がいます。
全建総連は、1985年頃からアスベスト問題に取り組み、1986年のILO第72回総会での採択・勧告
を契機として、1988年には「全建総連アスベスト対策委員会」を立ち上げ、組合員教育や健康調査、
国や自治体の関係機関への要請、専門医の協力による調査・研究など、広く努力を重ねてきました。
運動を集約し2冊の小冊子発行(1988∼)、「静かなる時限爆弾」ビデオ作成(2002年)をすすめ、
2004年10月からの建材5品目を含む10製品の原則禁止が実現しました。
しかし、建材から石綿が排除されたわけではないこと、モルタル混和材や一部塗料への混入や、家
屋やビル解体工事などでの飛散も対策は不十分です。「病気発症はこれから」という現実、労災補償
のたたかいも課題です。現状を改善するため、関係労働組合や市民団体、専門医とも協力して、アス
ベスト全面禁止と健康障害防止にむけて闘います。
WS-C-03 Kinya Mizuguchi
ワークショップC: 労働組合のイニシアティブ
労働組合の社会的責任が問われたアスベスト問題
水口欣也
全日本造船機械労働組合(全造船)[日本]
抄録:
1982年5月8日、読売新聞は「5年で39人死んでいた」との見出しで、横須賀に所在する米海軍基
地や民間造船所で働いていた労働者が、アスベストによる肺がんで次つぎと亡くなっていることを報じ
た。私たちは現地に、住友重機械で働く造船労働者組織=追浜浦賀分会(以下、浦賀分会)を擁し、
多くの退職者を「浦賀退職者の会」として組織化していた。しかしその報道で事実が明らかにされるま
で、私たちはアスベストの恐怖や、その物質が多くの仲間を死に追いやっている現実を知ることはな
かった。
記事は、私たち全造船機械の安全衛生闘争に大きな反省を迫るものであった。「安全衛生は企業
の責任」とばかりに、十分な取り組みを行わずに来たのではないか、そのことが多くの被災者を発生さ
せたのではないか、との反省は、全造船機械中央本部と、浦賀分会を突き動かさずにはおかなかっ
た。浦賀分会は、ただちに「対策委員会」を設置し、関係団体と連携して集団検診や被災者の組織化
に着手した。また、企業に対して「アスベストの使用禁止」を要求。さらに、被災者の「損害賠償請求訴
訟」に積極的に関与し、労使交渉を重視する中で、判決を待たずに解決を果たす原動力としての機
能を担った。
全造船機械中央本部も、政策要求の中で「アスベスト全面使用禁止」を掲げ、労働省(当時)や運
輸省(同)、造船事業者団体へ働きかけを強めるとともに、全国の分会に「アスベストを職場から排除」
するよう『指示』を発し続けてきた。その結果、現時点の調査では、傘下全造船所でアスベストは使用
されていない。
ここ数年、いくつかの傘下分会で、退職後であってもアスベストによる疾病やじん肺に罹患した場
合の「補償制度」を実現させてきた。制度の実現は、被災者の救済に向け大きな意義を持つものであ
る。そして、企業責任の明確化をはかるものでもある。
今、「造船労働者のアスベスト被害を許して来たのは誰か」と問われれば、私たちは「全造船機械で
もある」と答えずにはいられない。もちろん、指揮・命令権の元で作業に従事させてきた企業や、安全
性の確認すらせず、長期にわたってアスベストの使用を認めてきた国の責任が最も重いのは当然で
ある。しかし私たちは、この想いを継続させなければ、組合員と、組合員であった人々への、労働組
合としての責任が全うできないと考えている。
WS-C-04 Hiroshi Watanabe
ワークショップC: 労働組合のイニシアティブ
水道管布設工事における新たなアスベスト被害拡大
の防止並びに職員・退職者等のアスベスト曝露に関
する健康影響調査について
渡邊洋
全日本水道労働組合(全水道)/東京水道労働組合(東水労)[日本]
抄録:
東京都水道局では、高度成長下の1957年頃以降のおよそ10年間、区部で約980kmこの他に多摩
地区の市町営水道が約2,500km)の石綿管を布設した。1985年頃までに撤去工事はほぼ完了したが、
現在なお多摩を中心に残存管が数十km存在する。当局職員は、一部の直営作業を除き、間近での
監督立会業務に従事してきた。1987年以降は局から防塵対策等が指示されているが、実際は必ずし
も守られなかった。
東水労は、2002年末に、「新たなアスベスト被害拡大の防止並びに職員・退職者等のアスベスト曝
露に関する健康影響調査要求書」を提出した。水道局は、①今後の撤去工事の進め方について、局
として調査を行い最善の方法をとること、②「アスベスト曝露による悪性中皮腫の早期発見・健康診断
実施等について」、一次検診:問診・職歴調査、胸部X線直接撮影、二次検診:肺機能検査、CTスキ
ャン外の実施を回答した。
水道局は、2003年10月、石綿管切断の模擬実験を実施した。組合は、実験が過去の作業実態を
できるだけ忠実に再現するよう要求した。実験結果によれば、工法によっては、粉じん濃度等で高い
数値を示し、作業後速やかに大気中に拡散することも明らかになった。ただし、過去の被害状況の推
定は行われていない。
今後は、作業実態の特定のための組合独自の調査体制の確立に向けて、調査員の養成などの取
り組みが必要である。また、実現した健康診断の受診率が低いことから、組合員に対するアスベスト問
題への適切な啓蒙活動が求められている。
WS-C-05 Satohiro Konya
ワークショップC: 労働組合のイニシアティブ
アスベスト被害補償制度の取り組み
紺谷智弘
全駐留軍労働組合(全駐労)[日本]
抄録:
1996年6月の新聞報道において、奈良県立医科大学の車谷典男先生らが行った「造船労働に伴う
アスベスト曝露作業者の死亡状況に関する歴史的コホート研究」の調査結果が発表された。内容は、
「在日米海軍横須賀基地のアスベスト取り扱い職場で働いた人の肺がん死亡率は通常の人の3倍に
のぼり、じん肺や気管支炎にもなりやすい」というものであった。
この報道がきっかけとなって、全駐労は、神奈川労災職業病センターの協力を得て、当時の現地
雇用主であった神奈川県に強く働きかけ、県は1997年から3年かけて13,353人の元従業員への健康
管理手帳の周知事業を実施した。
一方で、労災の上積み補償をめぐっては、3次にわたる石綿じん肺裁判の支援を通じて、補償を求
めてきた。第1次の裁判は、2002年10月に原告側全面勝利の判決が下りたことから、全駐労は、防衛
施設庁に対して、「石綿じん肺被災者の早期解決と労務管理・労働安全衛生に関する雇用主の責任
体制確立の申し入れ」を行い、安全対策は基地管理権の範疇ではすまされない問題であることを強く
指摘した。
これに対して施設庁は、「今回の判決は重く受け止めている。今後は第2次訴訟やじん肺の潜在的
な罹患者もトータルで考えるならば、他のじん肺裁判の請求事例や同種の裁判に対する行政の労使
における疾病の対応など、全体を考慮して具体策を明らかにしたい」と回答している。
WS-C-06 Yasunari Fujimoto
ワークショップC: 労働組合のイニシアティブ
県立高校施設におけるアスベスト問題
藤本泰成
日本教職員組合(日教組)/神奈川県高等学校教職員組合[日本]
抄録:
神奈川の県立学校では、46校51施設において(体育館および格技場)、アスベスト・フェルト材(石
綿フェルト被覆折版屋根:商品名フェルトンR-30)が使用されています。これは、波形に折られた鉄板
に、厚さ10mmの石綿フェルトを張ったものです。成分は石綿(クリソタイル)85%以上、ケイ酸ソーダ
15%以下(いずれも成分比)となっています。ケイ酸ソーダは、石綿をバインドするために混入されて
いますが、経年劣化によってその役目を果たさなくなり、石綿フェルトが剥がれてくるような状態になり
ます。神奈川県教育委員会は、目視調査やその結果問題とあるとした施設に関しては、アスベスト飛
散調査を行っていますが、アスベスト・フェルト材の特徴から、飛散が問題になるような数値を記録す
ることはありません。しかし、アスベスト・フェルト材が鉄板から剥がれて、生徒の活動中に落下すること
があり、生徒の健康にはきわめて問題がある状況です。現在の神奈川県は、全国状況と同様に厳し
い財政状況にあり、私たちの望むアスベスト・フェルト材の全面撤去は実現していません。そのような
中で、吹き付けひる石またはパーライトの存在が、78施設121箇所で確認されました。現在、アスベス
トの混入を調査しているところです。 このように、教育施設のアスベスト問題は、今のところ、私たちの
要求にもかかわらず放置されている状況にあります。その現状について報告します。
WS-D-01 Naoya Endo
ワークショップD: アスベスト訴訟
ジョンズ・マンビル社に対する補償請求
遠藤直哉
弁護士、桐蔭横浜大学法学部[日本]
抄録:
報告者は、1983年に米国におけるジョンズ・マンビル社を中心とする大量のアスベスト訴訟の実態
を調査し、1984年日本で社会科学系では初めて、米国においてアスベスト訴訟が歴史上最大のPL
訴訟となっている実態を報告し、これを元に日本においても将来大きな被害が発生するとの警告を発
表した(ワシントン州立大学ロースクール修士論文「米国のアスベスト集団訴訟と日本における予測」、
労災職業病管理「アスベスト」215頁、総合労働研究所発行・初版1984年・改訂版1992年)。
1982年、米国ではジョンズ・マンビル社は、1990年、米国倒産法第11章の申請をした。米国の被
害者弁護団が来日し、ジョンズ・マンビル社に対する補償請求を行うよう依頼された。
そこで、1990年以降、報告者と弁護士森田明らは日本全国の被害者約50名の代理人となり、米国
弁護士事務所を通じ、申請を行った。残念ながら下記のとおり申請が認められたに止まった。
合計15名 総額 35,561ドル
WS-D-02 Takeshi Furukawa
ワークショップD: アスベスト訴訟
米海軍横須賀基地石綿じん肺訴訟について
古川武志
弁護士、古川武志法律事務所[日本]
抄録:
横須賀市は、東京湾の入口に位置し、明治維新後から海軍の重要な基地と海軍工廠がおかれて
いた。1945年の敗戦後、この基地と海軍工廠は米海軍が接収し、日米安保条約により、今日まで、米
海軍第7艦隊が使用している。
1945年の敗戦後、米海軍は、この横須賀基地に艦船修理廠を置き、航空母艦、潜水艦等様々な
艦船の改修、修理に使用した。特に、朝鮮戦争、ベトナム戦争時には、修理作業は繁忙を極めた。
軍用艦は、被弾の際の防火のため、艦内にアスベストを多用しているが、米海軍は日本人従業員
の健康問題に関心が低く、基地の日本人従業員は1980年頃までアスベストの危険性を全く知らされ
ず、防護措置をとらないままアスベスト製品の取付、除去作業に従事した。
1980年から基地内でようやく大規模に行われるようになった法定のじん肺検診で、基地の日本人
従業員の石綿じん肺罹患の問題が明るみに出た。
1999年7月、患者単位で12名の元基地従業員が、雇用主である日本政府を相手に地方裁判所に
提訴し、2002年10月に全員勝訴した。しかし、日本政府は、患者単位3名の原告につき10年の消滅
時効の完成を理由に控訴し、高等裁判所、最高裁判所は、原告敗訴の判決を下した。現在、地方裁
判所に患者単位22名の第2次訴訟、患者単位11名の第3次訴訟が係属している。
WS-D-03 Kazuzo Nomura
ワークショップD: アスベスト訴訟
横須賀・造船働者のじん肺・アスベスト訴訟
野村和造
弁護士、神奈川総合法律事務所[日本]
抄録:
[住友重機石綿じん肺第1次訴訟]
横須賀の造船所(住友重機械株式会社)において長年働いてきた元従業員8名は、1988年夏、同
社に対して、損害賠償訴訟を提起した。原告らは、石綿粉じん等の粉じんに曝露され続けてきた結果、
じん肺に罹患し、肺がん、中皮腫罹患の危険におかれていると主張し、会社はこれを争った。裁判は
約8年8か月に及んだが、1997年春、和解成立(なお、その後1名が肺がん、1名が胸膜中皮腫で死亡
している)。
この和解を受け、会社と労働組合間で、退職者に対するじん肺・アスベスト関連疾患に関し、上積
み補償協定が締結された。これは、造船会社では初めてのことであり、その後、他の造船会社もこれ
に続いて上積み補償協定を結ぶようになった。
[第2次訴訟の提起]
2003年夏、住友石綿じん肺第2次訴訟が提起され、現在、横浜地方裁判所横須賀支部に係属中
である。
原告は、じん肺に罹患した元従業員11名と、胸膜中皮腫で死亡した元従業員の遺族。会社は、前
記協定の補償対象者にあたらないとし補償を拒んでいた。原告らは、自らの救済だけではなく、より
広範な退職者の救済を認める新協定の締結を目指している。
WS-D-04 Tetsuro Ota
ワークショップD: アスベスト訴訟
弁護団と原告団が車の両輪となった裁判闘争
太田哲郎
三菱長崎造船じん肺訴訟第一次原告団[日本]
抄録:
私たちの裁判は1998年12月25日から始まり、2002年6月7日、被告側と話し合いによる和解で解決
しました。まず、患者原告77名、遺族44名に対して、解決金総額12憶8000万円を支払うというもので
す。つぎに被告に謝罪の意思を明確にさせたことと、今後じん肺発生防止に、被告が鋭意努力するこ
とを和解文書に盛り込みました。
解決まで3年5か月の日数を要しましたが、実は提訴以前15年間の長い期間をかけて様々な取り組
みが行われました。患者会を結成し、会員相互の親睦と交流を図ったり、労働組合は、粉じん職場の
環境改善要求で、会社と交渉を積み重ねていきました。そして、提訴前の1997年に、私たちは、原告
団の母体である「三菱重工にじん肺補償を求める会」を結成して、会社と補償要求を中心に交渉を行
ってきましたが、結果として、話が折り合わず決裂しました。火山活動に例えるならば、提訴以前、マ
グマがすでに地下鳴動を続けていたということです。
裁判における被告側のもくろみは、医学論争を挑み、裁判を長期化させることでした。そのために
原告全員に対して、CTによる鑑定申し立て、場合によっては管理区分の公的認定申請を再度行うと
いう、現行制度を無視した暴挙に出ました。しかし、被告の必死の抵抗もむなしく、2001年9月15日、
長崎地方裁判所は、「CTによる鑑定申し立てを却下し、職権による和解勧告」を言い渡し、事態は急
転直下、解決の方向に進んだのです。
解決後原告団は解散しましたが、新たに「じん肺根絶三菱長船の会」を結成し、「じん肺根絶の闘
いは人権を守る闘いである」ことを胸に刻み、現在活動を続けているところです。
WS-D-05 Akio Shiraishi
ワークショップD: アスベスト訴訟
日本で初めての火力発電所職員の悪性中皮腫
白石昭夫
NPO法人愛媛労働安全衛生センター[日本]
抄録:
696:1 そして 11,871:1
これら数字は、1991年アメリカ連邦裁判所での発電所集団訴訟件数と、日本における発電所訴訟
件数の比率であり、原告人数の比率である。
この数字から読み取れることは、日本の被災が少ないことではない。日本におけるアスベスト被災
に対する認識の遅れや、被災者救済への取り組みの遅れである。
それ故、このケースは、日本におけるアスベスト被災に対する様々な問題を提起している。
なぜ、労災保険制度による補償の請求ではなく、裁判として行われたのか?
なぜ、企業はアスベスト被災を認めようとしなかったのか?
なぜ、発電所労働者の被災例が少ないのか?
アスベストの有害性は周知の事実であり、職業病としての認定基準が示され、被災者への補償制
度も確立している。大学病院など専門的な病院では悪性中皮腫などの診断がなされ、死体解剖や学
会への報告がなされている。しかし、労災保険補償請求制度が知らされず、請求権の時効により裁判
を求めざるを得なかった。
日本独自の下請けや孫受け会社の制度は、劣悪な作業を下請けさせ、労働災害や職業病を社外
に放り出している。このケースは、まさに正社員に起きたアスベスト被災であり、全国の発電所に関係
する重要な裁判であった。
WS-D-06 Hiroko Murakami
ワークショップD: アスベスト訴訟
アスベスト家庭曝露災害損害賠償請求事件
村上博子
全労協全国一般東京労働組合日本エタニットパイプ分会[日本]
抄録:
2004年3月25日、東京地裁で敗訴しました。提訴より3年3か月目の結果です。地裁は、証人を一人
も立てない会社の主張を容れ、中皮腫の病名を認めず、仮にそうだとしたところで被害は予見不可能
であると判断しました。現在控訴審係属中です。この先、仮に敗訴が確定するようなことになると、中
皮腫の病理標本は永久標本として200年後も残りますが、このことをどうするのでしょうか。おりしもの、
この世界アスベスト東京会議で考えていただきたいのです。当該併存少数労働組合はこの訴訟を支
援しつつ、できるだけ波及効果の大きな解決を図りたいところです。どれだけの人が、闇から闇に葬り
去られてきたことでしょうか。日本で初めてのアスベスト公害裁判(=労働者でない・一番身近な家族
の)として、アスベストの特質からしておこるべくしておこった裁判なのであり、これで最後であってほし
いものです。私たちは、その有害性をまったく知らされずにアスベストを取り扱わされてきました。そし
て多くのアスベスト労災を出しました。資本の緊急の引き上げによるアスベスト管製造中止で、多くの
整理解雇者を出し企業内労働組合は解散の事態となり、闘う力は大きくそがれました。殺人のあると
ころ、職業病療養中解雇、労災申請代理人組合攻撃、活動抹殺の二重の労働基準法違反、不当労
働行為がありました。多くの闘いを教えていただき、ご支援をお願いするしだいです。
WS-D-07 Ryo Matsuda
ワークショップD: アスベスト訴訟
中皮腫で死亡したホテル・ボイラーマンの事例
松田竜
弁護士、小寺・松田法律事務所[日本]
抄録:
1. 事案の概要
(1)被害者の業務内容
被害者は、昭和38年に被告会社に入社し、平成14年4月に死去するまでの間、ホテルの機械室及
びボイラー室内等において、設備係の業務に従事してきた。
同ホテルの設備係の職員は、ホテルにおいて使用する湯を供給し、暖房をするために、地下ボイラ
ー室内に設置されたボイラーを稼働させる業務に従事したほか、以下のような石綿関連業務に従事
した。
ボイラーの燃焼室のフランジ部分に使用されていた石綿入りのパッキンの交換作業に従事した。上
記パッキンの交換作業は、パッキンの石綿を切って巻き付けたり取り付けたりする作業であった。パッ
キンの石綿は、板状材とひも状材があった。板状材は切って叩いて作業した。ひも状材は、ほどくだ
けで飛散した。
また、設備係の職員は、吊り天井の裏側(天井裏)に潜り込み、配管の修理点検の業務に従事した。
天井裏の部分には石綿が吹き付けられており、剥離した石綿が天井裏に落下している状況であった。
また、天井裏のスペースは、狭いところではダクトの隙間が40cm程度しかない部分があり、吹き付け
石綿に体が触れざるを得なかった。体が触れた部分は、石綿が剥離し、粉じんが舞った。
ホテルのボイラー室の壁面には、腰の高さより上部には、全面に石綿が吹き付けられていた。設備
係の職員は、年に1∼2回、フランジのガスケット交換の作業に従事した。この作業の際は、高圧ヘッ
ダーの裏側に入って作業をする必要があった。高圧ヘッダーの裏側は、石綿の吹き付けられた壁面
との隙間が30∼40cmしかなく、設備係の職員の作業服で擦れ、剥離した石綿の粉じんが舞った。
設備係の職員は、毎月1回は、ボイラー室内の掃き掃除を行っていたが、床に落ちた石綿の粉じん
が舞った。
ホテルの機械室ボイラー室の吸排気は、機械室内に設置してあるボイラーの吸気のため、3階の屋上
から空気を取り入れ、地下にあるファンを回して、機械室内に空気を取り入れていたが、排気設備は
設けられていなかった。
同ホテルの機械室ボイラー室の壁に吹き付けられた石綿の吹き付け面は、表面が劣化しており、
触れると石綿の繊維が飛散するような状態であった。
被害者は、平成13年4月頃から体調が悪化し、同年6月21日に石綿が原因である「悪性胸膜中皮
腫」の診断を受け、平成14年4月に、悪性胸膜中皮腫により死亡した。
なお、被害者は、ホテルの石綿粉じんの飛散する中で稼働したことにより、悪性胸膜中皮腫を発症
したものとして、労災認定を受けている。
(2)同ホテルにおける従業員の安全管理態勢
同ホテルの設備係の職員は、上記のような石綿関連業務を行っていたにもかかわらず、同ホテル
においては、①粉じんが作業現場に滞留することのないような排気設備を設けず、②防じんマスク等
の支給も行わないばかりか、石綿粉じんの危険性に関する何らの教育も行わず、③散水や噴霧の指
導監督も行わず、④昭和55年までは、衛生管理者も置かず、健康診断も実施せず、昭和55年頃から
夜間勤務者の健康診断が行われるようになった後も、石綿による健康被害に留意した健康診断を行
わず、健康診断の結果についても従業員に詳細説明することもなく、⑤札幌ロイヤルホテルに吹き付
けられた石綿の表面が劣化した後も完全除去を行わなかった。
2. 提訴の目的
本件事故発生後、被害者の遺族が、ホテルに対し、被害者がホテルの職場環境に起因して悪性
胸膜中皮腫に罹患し死亡した事実につき、ホテルの責任を認め、遺族に対し謝罪し、今後の同種事
故の発生防止策をとるよう申し入れたにもかかわらず、ホテルが責任を認めず、遺族に対する謝罪を
も拒否したため、訴訟を通じて、ホテルの安全管理上の義務違反に基づく法的責任を明らかにするこ
とを目的として、本訴提起に至った。
3. 訴訟提起後のホテルの対応
石綿作業の内容等の基本的な事実関係から、ホテル業務と被害者の悪性中皮腫発症の因果関係
の有無、ホテルの従業員の安全管理上の義務等法的責任に至るまで、全面的に争っている。
4. 訴訟経過
平成16年8月27日に第1回口頭弁論、同年10月15日に第2回口頭弁論が行われた。
WS-E-01 Noor Jehan
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
女性の健康と環境曝露/パキスタン・ノースウエスト
フロンティア州マルダン地区サライ・キリにおける中
古船舶からのアスベスト・リスク
ノア・ジーハン1、ファジア・ラザ2、モハメンド・ナシルカーン3
1 ペシャワール大学環境科学部[パキスタン]
2 カイバー技術病院、ペシャワール[パキスタン]
3 統合研究開発機構[パキスタン]
抄録:
女性の生存は、持続可能な計画と管理に密接に関連している。女性は一番最初に防御されるべき
ものである。女性はしばしば、傍職業的曝露によって引き起こされる環境リスクに最も脆弱である。女
性に対する環境的な攻撃によって取り返しのつかないダメージが生じることを示す強い証拠がある。
女性の傍職業的曝露の強さはまだ正当に認識されておらず、広い範囲で特性がわかっていない。総
じてパキスタンにおいては、とくにノースウェストフロンティア州では、この問題に関する当局の措置と
人々の認識が十分ではない。
この研究の間、マルダン地区ダギ・キリにあるアスベスト板裁断工場が事例研究として選ばれた。ダ
ギ・キリの裁断工場から及び近隣の村サライ・キリから、2つの大気サンプルが、裁断工場及び近隣で
の空気中に浮遊するアスベスト繊維のレベルを測定するために収集された。X線回析(XRD)、偏光
顕微鏡、及び、走査電子顕微鏡が定量的及び定性的分析を行うために使用された。その結果、空気
中の浮遊アスベスト繊維濃度は、サライ・キリの方が裁断工場より高いことがわかった。曝露限界は、
国際的に許容されている空気中の浮遊アスベスト粉じん曝露限界より1,000倍高かったが、そのことは
これらのアスベスト繊維が裁断工場から生じて、近隣に移動していることを証明している。
これらのサンプルの結果を確認した後、アスベストの近くに住んでいる女性と子ども、とくに女性とそ
の地域に浮遊するアスベスト繊維が及ぼす潜在的なリスクとの関係を見出すために詳細な調査が実
施された。2世帯でほとんど一人の割合で、女性が肺がんを含む様々な肺の病気に罹っていることが
判明した。
キーワード:女性、健康リスク、アスベスト
WS-E-02 Sophia Kisting
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
クリソタイルに曝露した南アフリカ鉱山解雇労働者
におけるアスベスト関連疾病の過剰発生が意味す
るもの
ソフィア・キスティング、モハメド・ジーブハイ
ケープタウン大学公衆衛生・家庭医学校労働・環境衛生部[南アフリカ][参加できず]
抄録:
南アフリカにおけるクリソタイル・アスベストの採掘は、20世紀初頭から行われた。最大規模の鉱山
と精製工場をもつアフリカン・クリソタイル・アスベスト社(ACA)は、1937年に操業を始め、2002年に閉
山した。
1975年から1992年までの南アフリカにおけるクリソタイルの生産は、年平均10万トンにおよび(ACA
の生産量はそのうちの90%以上を占める)、2000年には2万トン近くまで減少した。1960年代と70年代
にACAに雇用されていた労働者の数は、最大時に2,000人から2,600人であった。1990年代になると
その数は徐々に減少し、2000年までに250人ほどに削減された。1977年から1995年までにACAによっ
て報告された年平均のアスベスト繊維の計測数は、1977年(2.5繊維/ml)、1979年(2繊維/ml)、1983
年(1.21繊維/ml)を除き、1mlあたり1繊維を下回っていた。
南アフリカ全国鉱山労働者組合(NUM)は、産業医療従事者に対して、ACA鉱山における労働者
の健康診断プログラムの調査を行うように求めた。医療記録、胸部レントゲン検査、肺の機能検査に
ついての一連の審査が、解雇された労働者がスワジランドやジンバブエ等の近隣諸国を含む本国に
送還されるのに先立って実施された。
1995年から2000年までの間、1,200人以上ものACAのアスベスト鉱山労働者の医療記録や胸部レ
ントゲン検査、肺機能検査結果が、アスベスト関連疾患について評価された。異なる評価に対するア
スベスト関連疾患(ILO分類で1/0以上*訳注)の有病率は、21%から36%だった。
この結果は、他の調査で、南アフリカ、イースターン・ケープ州 (22∼37%)や隣接するボスワナ(26
∼31%)からの移民労働者に、じん肺(主に珪肺で肺結核を併発している)の有病率が高いとの調査
結果に相当するものである。
これらの調査結果は、記録にあるような低レベルの曝露にもかかわらず、クリソタイル・アスベストに
よる疾病の大規模な発生の危険性があることを示唆しており、労働組合が解雇労働者に対する出国
時の健康診断を行うように求めることの重要性が強まっている。
この中で得られた情報は、以下の点に寄与した。
・ クリソタイル・アスベストによる健康リスクに基づいたアスベストの曝露基準の改定
・ 新しいアスベスト規則に、医学的サーベイランスを含めること
・ 労働組合との交渉による解雇労働者についての協定に元労働者に対する医学的サーベイラン
スを含めること
・ アスベストに曝露した労働者と地域の人々における民事訴訟への機運を高めたこと
* 訳注:ILO score >= 1/0 ILOが定めた肺のレントゲン写真の読影のための分類。0/-, 0/0, 0/1,
1/0, 1/1, 1/2, 2/1, 2/2, 2/3, 3/2, 3/3, 3/+の12段階に分類され、じん肺等の診断の基準とされ
ている。
WS-E-03 Carlo Mamo
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
クリソタイル・アスベスト織物労働者の歴史的コホートにおける中皮
腫の発症
カルロ・マーモ1、ギウセペ・コスタ2
1 トリノ・ピエモンテ地区疫学ユニット、グルグリアスコ[イタリア]
2 トリノ大学医学部公衆衛生部[イタリア]
抄録:
【序と目的】
角閃石の混ざらないクリソタイル・アスベストだけの曝露が肺がん、中皮腫、非悪性疾病を引き起こ
すかどうかという問題について、1900∼1986年まで操業を行っていたイタリア最大のアスベスト織物工
場の所在地グルグリアスコで歴史的コホート調査が行われた。
【方法】
調査対象コホートは、クリソタイルのみに曝露した1,653人のアスベスト織物工場労働者からなる。
生死の状況は郵送によるフォローアップによって確かめられた。死因は、国家死亡登録の記録によっ
て確かめられた。標準化死亡率(SMR)は、(健康労働者効果と社会階層による交絡要因を減らす目
的で)トリノの労働人口の死亡率を対照として用いて計算され、年齢と出生地域による調整が行われ
た。観察期間は、1981年1月1日∼1995年12月31日までであった。
【結果】
全体の死亡率は男性(SMR=212, 観察死亡者数 119名)、女性(SMR=265, 観察死亡者数 84名
で、明らかに男女ともに過剰であった。がん死亡率も明らかに過剰であった(男性 SMR=194、女性
SMR=261)。統計的に有意な過剰死亡率が胸膜中皮腫(男性 SMR=3,322、女性 SMR=13,248)、
肺がん(男性 SMR=302、女性 SMR=523)で観察された。過剰死亡率が認められるがんの他の部位
は、喉頭、胃、すい臓、及び脳であった。
過剰死亡率は、石綿肺(男性 SMR=12,797、女性 SMR=3,124)、虚血性心疾患(男性 SMR=
139、女性SMR=164)、脳血管疾患(男性 SMR=159、女性 SMR=173)が推定された。雇用期間の
長さ及び雇用年の分析により、死亡率と、雇用期間の長さと腫瘍の潜伏期間との間に関連性があるこ
とが示された。
【結論】
これらの結果は、角閃石の汚染は無視できる程度である、純粋なクリソタイル・アスベストへ大量に
曝露した労働者には、肺がんと悪性中皮腫を引き起こすということを確認した。さらにこの結果は、前
回の調査における、他の部位のがん(特に喉頭と胃)と非悪性疾病(虚血性心疾患と脳血管疾患)に
対し、病因学からみたアスベスト曝露の果たす役割と一致することを示している。
WS-E-04 Neonila Szeszenia-Dabrowska
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
環境ハザーズとしてのアスベスト―シチュチン地域
の事例
ネオニーラ・スゼスゼニア-ダブロウスカ
ノファー労働医学研究所[ポーランド]
抄録:
本論文は、アスベスト・セメント工場附近のアスベスト汚染地域住民における中皮腫発症率及び特
定原因別死亡率を示す。
1959年にポーランドの南東部の農村地域に、アスベスト・セメント工場が建てられた。クリソタイル・
アスベスト以外に、クロシドライトが1985年まで、主に圧力管製造に用いられた。この青石綿は、加工
処理されたアスベストの年平均重量15%を占めていた。
アスベスト製造が始まるや否や、加工過程で生じる廃棄物が、地元の村落で利用可能になることが
判明した。30年以上、あらゆる種類のアスベスト(管や板を磨く際に生じる湿った汚泥と乾燥した物の
両方)の廃棄物が、道路、小道、農場、運動場の舗装のため、あるいは建築材料として利用された。こ
のことは、アスベスト汚染源を地域中に拡大するとともに、肉眼でも見える青石綿を大量に含んだアス
ベスト廃棄物が、いたるところにあるという状況をもたらした。汚染地域は、約12,000ヘクタールで、
14,000人の人口を有している。
本プロジェクトは、コホート・スタディとすべてのがんの疫学的観察を合わせたものであった。1987年
から2004年までに、スツクズシン地区で58人の胸膜中皮腫が記録された。中皮腫のリスクは、ポーラ
ンド一般人口と比較して125倍高かった。スツクズシン地区の一般死亡率とアスベスト関連疾患の死
亡率は、アスベストのない近隣地区の死亡率と比較されている。調査対象者は、1975年から2002年ま
でに、最低3年間住んでいた人々からなっていた。
生態学的な危険がおよんでいるこの地域住民の健康状態を考慮すると、環境改善と健康への影
響を防ぐための早急な総合的対策が必要である。
WS-E-05 Hitoshi Kubota
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
鉄骨工の肺がん死亡率はなぜ高いか?
久保田均1、孫 健2、久永直見1、毛利一平1、柴田英治3
1 独立行政法人 産業医学総合研究所[日本]
2 保健経済研究所[カナダ]
3 愛知医科大学医学部[日本]
抄録:
石綿などの有害因子への曝露が建設業従事者の健康に及ぼす影響を評価するため、われわれは
某県建設国民健保組合員について疫学調査を行ってきた。その結果、日本人男性と比較した肺が
んの標準化死亡比が、鉄骨工では2.88(95%信頼区間1.44-5.15)と、有意に高いことが判明した。ま
た、同じ集団における胸部X線写真上の胸膜肥厚所見の調査では、全体の有所見率2.1%に対し、
鉄骨工のそれは9.3%と高いことも分かった。
今回は、それらの背景を探るべく実施した質問紙郵送調査の結果を報告する。調査対象は、鉄骨
工とその関連職種の溶接工、鉄筋工である。質問内容は、 石綿等の有害物曝露を伴う作業18種の
経験、 喫煙歴等である。調査対象1,021名中452名(44.3%)が回答したが、完全な回答は398名で、
その内訳は鉄骨作業経験者202名(溶接経験も併せ持つと答えた人を含む)、溶接工142名、鉄筋工
54名であった。3群を比べると、鉄骨作業経験者では、建物解体、スレート板使用、断熱材取付・除去、
吹き付け石綿建物での作業、ケイ酸カルシウム板使用等の経験率が、他群より有意に高かった。喫
煙率(過去+現在)は、70∼87%と高かった。
今回の調査結果と、われわれの疫学調査で、溶接工には肺がん死亡の有意な増加を認めていな
いことを併せ考えると、鉄骨工では、高い石綿関連作業経験者率が、肺がん増加に関係していること
が疑われた。
WS-E-06 Yuichi Ishikawa
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
日本人一般集団における肺癌患者の肺内アスベス
ト濃度の年代による変化
石川雄一1、佐藤之俊1、高田礼子2、神山宣彦3
1 (財)癌研究会癌研究所病理部[日本]
2 聖マリアンナ医科大学[日本]
3 産業医学総合研究所[日本]
抄録:
一般の日本人における肺がんの急速な増加の原因を調査するために、肺の中のアスベスト濃度の
年代による変化を分析した。肺中のアスベスト沈着に関し、原発性肺がん(1950年代に8症例、1970
年代に47症例、1990年代に53症例)について検証した。また、1970年代における原発性肺がん及び
転移肺腺がんの肺中のアスベスト濃度の比較を行った。平均アスベスト小体濃度(AB)(肺(乾)1グラ
ム中のアスベスト小体数)は、1950年代に559、1970年代に1,842、1990年代に353であった。1970年
代における原発性肺がんの平均アスベスト小体濃度(AB)は男性では2,050(48人)であり、転移がん
の703(18人)より、有意に高かったが、女性においては有意差は見られなかった。1970年代の原発性
肺がんにおける統計的に有意な濃度の増加が注目される。しかし、日本における肺がんの頻度は
1950年代から1990年代まで増加し続けているので、アスベスト曝露は、最近の肺がん増加の主要な
原因であるようには見えない。
WS-E-07 Zulmiar Yanri
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
クリソタイル・アスベストは発展途上諸国において安全で健康か?
ズルミアー・ヤンリ
インドネシア共和国労働・移住省労働衛生監督局[インドネシア]
抄録:
インドネシアは世界で4番目に人口が多い国である(2002年の人口は2億千6百万人)。大きな人口
を抱える開発途上国のため、インドネシアは有害化学物質の潜在的な市場となり、有害な化学産業
の移転場所ともなっている。クリソタイル・アスベストは、インドネシアで今もなお、建築材料(屋根材、
シーリング材、平板、コーン・ブロック)や断熱材、ブレーキライニングやブレーキパッド等のブレーキ
装置等、多くの製品に使用されており、年間60トン以上が消費されている(FICMA, 2004)。これまでの
ところ、インドネシア政府はクロシドライトの使用のみを禁止し、クリソタイルだけは輸入を認めている
(2001年政令第74号、石綿を使用する労働者の労働安全衛生に関する1985年労働大臣規則第3号)。
2001年から2003年までのクリソタイルの総輸入量はわずかに減少しているが、2004年には増加する
可能性がある(FICMA, 2004)。
インドネシアにおけるアスベスト関連の疾患の報告や調査では、疾患の原因としてアスベストの種
類による違いが認められていない(Indonesian NOSHC, Yunus F)。他方、多くのクリソタイル・アスベス
トの研究では、クリソタイルは、他の種類のアスベストに比べてより低い生体内残留性を示し、そのた
めにより低い毒性を持つとされている。クリソタイルの使用が労働者や環境にとって安全で健康に害
がないといえるかどうかは、まだ争いがあるところである。
2004年9月にジュネーブで開催されたロッテルダム条約に関する国連環境計画(UNEP)と国連食
糧農業機関(FAO)の最近の会合では、クリソタイルを事前の情報に基づく同意(PIC)が必要な物質
に含めることが、クリソタイルの健康と環境に与える影響に関するデータが不十分であったため、そし
てより重要なこととしては、「使用のための経済的な理由」によって延期された。会合では、さらに、経
済や貿易上の理由は、有害な化学物質をPICに含めることに関して正当化されない理由であることが
示された。このため、インドネシアは、世界的なイニシアティブを通じて、アスベストによってもたらされ
るリスクや、開発途上国にそれを持ち込むことに対して、一致団結した積極的な行動に参加すること
を心待ちにしている。
WS-E-08 Wisanti Laohaudomchok
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
タイのアスベスト製造業における健康への危険性評価のための研
究プロジェクト
ヴィラデジュクリエングクライ・チッティマ、イキツァルン・プリーバヌム、ラオハウデムコッ
ク・ウィサンチ、コングデュアイカエウ・ナロング
労働保護福祉局労働安全衛生センター(NICE)[タイ]
抄録:
アスベストはヒトに対する発がん性が確認された物質に分類されているため、この有害物質の使用
量は減少を続けてきた。タイにおいて、工業用の目的でアスベストを輸入したり入手したりすることは、
以前にもまして厳しく管理されるようになってきている。しかし、まだかなりの数の製造業でアスベスト
が使用されていた。特に、中小規模の製造業では、明らかに健康に危害を及ぼす労働環境が認めら
れた。このような状況下で、実効性のある防護対策を提示するために、この問題に関する健康への危
険性の評価が確定される必要性がある。
この研究プロジェクトは、労働安全衛生センター(NICE)の、1999年から2001年までの主要な取り組
みとして行われた。調査と作業環境の評価は11の異なる製造業において実施された。製造業は、ブ
レーキパッド、クラッチ、屋根用タイル、セメント管と他の製品の4つのグループに分類された。すべて、
飛散しやすい形でアスベストが使用されていた。作業環境の大気のサンプリングは、アスベストに曝
露している労働者の場所で行われた。計測数は合計107であった。作業環境のサンプルの分析は、
コンピュータによるアスベスト分析システム(アスベストの繊維数とサイズを計測するため、位相差顕微
鏡と付属ソフトが備え付けられている)を用いて行われた。
全体的には、空気中のアスベスト濃度の範囲は、0.01f/ccから43.31f/ccであった(平均では
5.45f/cc)。107の計測結果の中で、39のサンプル(36.45%)が基準値を上回っていた。ブレーキ製造
業、クラッチ製造業、セメント製品製造業での平均アスベスト濃度は、それぞれ、6.93f/cc、1.45f/cc、
0.81f/ccであった。影響を与える可能性のある要因について議論されるとともに、実効性のある防護
対策、管理対策が提示された。
WS-E-09 Hiroshi Udo
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
製鉄所におけるアスベスト対策について
宇土博
広島文教女子大学人間科学部[日本]
抄録:
製鉄業では、溶銑、溶鋼などを扱う高熱作業が多く、耐熱材・断熱材としてのアスベストの使用が
多い。これまで、製鉄所におけるアスベストの問題が取り上げられたことはないが、早期からアスベスト
対策が取り組まれた事例について報告する。
製鉄所におけるアスベストの使用には以下のものがある。
①高炉、転炉、圧延、②熱風炉、③製鋼造塊定盤、④発電所ボイラー、④起重機ブレーキライニン
グ。
石綿対策は、1977年に製鋼造塊定盤での石綿エアー清掃による発じんが問題となり、これをロック
ウールへの変更を契機に石綿対策が取り組まれてきた。
1978年、全社の作業環境管理要領が改訂され、石綿の環境管理基準が強化され、0.2線維/cm3以
下に設定された。
1982年、横須賀共済病院による造船所での石綿肺がんの報告が行われ、さらに石綿対策が強化
された。
1983年、石綿取り扱い要領を制定し、新規設備の石綿使用を禁止。同年、高炉の垂れ幕集塵での
石綿使用がガラス繊維に変更された。
1988年、所内設備の石綿実態調査を行い、サンプリング調査を開始した。
1990年、石綿分析結果189件中、161件(85.2%)が石綿と判明。同年、起重機のブレーキライニン
グ(40∼50%の石綿含有)のノンアスベスト化を開始。同年、旧海軍工廠、民間造船所従事者の悪性
中皮腫の報告。関係課に対して1992年5月までに既存設備の石綿の完全撤去が要請された。
同年、全従業員を対象に間接X-pによる胸膜肥厚の調査。在籍者2,689名中の有所見者IIIa 16名、
IIIb 11名、およびIV 21名(総計48名:1.79%)(アスカグレン、スサモジイ等の分類)が認められ、以
降、追跡調査を行っている。
現在までのところ、対象者からの石綿腫瘍の発症は認められていない。現在、代替品のない既存
設備やブレーキライニングの一部に石綿が残っているが、概ね撤去が完了しており、さらに完全な撤
去が図られている。石綿健康障害の予防のため、製鉄業全体での取り組みが要請されている。
WS-E-10 Tao Li
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
中国におけるアスベスト使用と健康影響の現状
リー・タオ(李涛)、リ・デホン(李徳鴻)
中国疾病予防控制中心職業衛生与中毒控制所[中国]
抄録:
中国はアスベストを生産・使用している世界の主要国である。おおざっぱな統計によれば、アスベ
ストの総埋蔵量は、クリソタイルが約1,000万トン、クロシドライトが45,000トンで、鉱山は主に四川省、
新疆省、河南省、遼寧省にある。1996年に、クリソタイルの産出量は約45万トン、アスベスト含有製品
の生産量は約39万トンであった。約1万人の労働者がアスベストに曝露している。ある疫学調査によ
れば、2003年末(まで)における石綿肺の(累積)罹患者数は6,984件で、すでに約800件が死亡して
いた。 石綿肺患者の約51%、アスベストに曝露した労働者の15%に胸膜肥厚斑が見られる。アスベ
スト曝露に関連した肺がんの登録件数は119件であったが、石綿肺患者78名の剖検の結果では、21
名に肺がんの合併がみられている。中皮腫の発症率は相対的に低かった。いずれにしても、われわ
れは、アスベストの使用を低減する方策を講じてきている。2003年10月以降、自動車産業におけるア
スベストの摩擦材への使用は全面的に禁止されている。
WS-E-11 Hermano Castro
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
ブラジルのアスベスト使用地域における労働者の総合的な健康診
断システムの導入
ヒルマーノ・アルブクエルク・デ・カストロ、カイロ・ハンダッド・ノベロ、フェルナンダ・ギア
ナージ、バンダ・ダクリ、マリア・ブランディーナ・マルケス・ドス・サントス、カティア・レイ
ス・デ・ソーザ
CESTEH/ENSP/FIOCRUZ合同プロジェクト(オズワルド・クルツ財団)[ブラジル][参加できず・論文
提出]
抄録:
【序】
アスベスト粉じんへの職業的及び環境的曝露は、アスベスト肺、肺がん、胸膜中皮腫及び胸膜疾
患などの疾病と関係がある。作業条件及び健康影響に関する全国調査によれば、アスベストに関連
する疾病症例が増加している。ブラジルでは約50,000人の労働者がアスベストに直接、曝露している
と推定される。
この国において有効な規範によれば、アスベストに曝露した労働者は、アスベスト曝露の終了後少
なくとも30年間は会社による支援をうけるべき立場にある。
臨床的、放射線医学及び呼吸機能とともに、疾病を明確にするために、ブラジルでアスベストに曝
露した人々の数を把握するために、環境と疫学的調査システムの構築が必要である。それはまた、ブ
ラジルでアスベストを使用していた会社の数を把握することも意図されている。
【目的】
(ブラジルにおいて)アスベストに曝露した労働者の生活の質の改善を可能にする活動を模索しつ
つ、社会的、環境的及び疫学的側面を把握することを目的に、ブラジルにおけるアスベストに曝露さ
れた労働者の健康診断の統合的なシステムを構築すること。
【方法】
保健省と連結したオンラインシステムが使用される。そのシステムは個人の曝露及び診療情報から
なる。最小の作業チームの定義、検査方法の精度と作業環境の監督方法の設定、関連知識と従業
員の参加の強調、及び教育プロセスの開発。
【結果】
現在までに11州のうち5州が、地域ごとにアスベストに曝露した人々を台帳に登録し始めた。診療
及び職業情報を備えた約2,000人が登録されている。
【結論】
アスベストを公衆衛生問題として理解することの重要性が強調されている。アスベストの禁止と共に、
環境への影響を最小にし、曝露した労働者の健康状態をフォローするために、効果的な健康診断が
続いておこなわれねばならない。
健診システムの構築によって、ブラジル保健省とユニーク・ヘルス・システム(Unique Health
System)が、アスベストが使用されていたいくつかの生産過程に、健康的かつ環境的プロセスを導入
することを可能とするであろう。
WS-E-12 Zhang Xing
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
アスベスト糸の手紡ぎ女性労働者における悪性腫瘍による死亡調
査
シャン・ツァン1、トン−ダ・サン2、ナン−フェン・シ2、森永謙二3
1 浙江省医学学校・衛生研究所[中国][参加できず・論文提出]
2 浙江省慈渓市公衆衛生疫病予防センター[中国]
3 産業医学総合研究所・有害性評価研究部[日本]
抄録:
【はじめに】
慈渓市は繊維産業で有名である。市では1960年代にアスベスト加工産業が発達し、90年代の初め
に衰えた。アスベスト加工の方法は手紡ぎであり、女性労働者により各家庭で行われた。約3万人の
女性労働者が直にアスベストに暴露し、一方10万人以上の近親者が間接的に曝露した。
【目的】
アスベスト糸の手紡ぎ女性労働者の胸膜肥厚斑・アスベスト肺の広がりと悪性腫瘍の発生状況を
推測する。
【方法】
女性労働者の悪性腫瘍による死亡者数は、後ろ向きコホート研究によって調査され、また、生命表
による観察群の曝露人・年数に基づき算出された。標準化死亡比(SMR)、相対リスク(RR)、寄与リス
ク(AR)、それぞれの95%信頼区間(Cls)は年代を特定した現地の女性人口の平均死亡率に基づき
計算された。
1960年から1980年まで最低一年間アスベスト糸の手紡ぎに従事した、合計5,681人の労働者が調
査され、そのうち795人は胸部レントゲン検査を受診した。
【結果】
この5,681人の内、様々な要因による858人の死が判明した。死の特定原因の割合の分析によると、
ガン(24.83%)が死因の第一原因で、肺がんが(40.85%)と最も多く発症していた。全てのガンの標
準化死亡比(1.35)と肺がんの標準化死亡比(3.88)は対照群に比べ明らかに高かった。
【結論】
アスベスト糸の手紡ぎ女性労働者に肺がんが相当数多いことは、アンフィボール仮説からは裏付
けられないようだが、手紡ぎにより飛散したアスベスト繊維に関係しているであろうことが、この結果か
ら見て取れる。
WS-E-13 Reza Gholamnia
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
アスベスト代替品も危険か?
レザ・ゴーラムニア1、S・B・モルタザビ2、ハッサン・アシリアン2、アリカバニン2、ヤーヤ・
ラゾウルザデー1
1 ウロミナ医科大学[イラン][参加できず・論文提出]
2 タービアット・モダレス大学[イラン]
抄録:
【はじめに】
アスベストの病原性は明確なので、人間は、化学的に同等な特性を持ち病原性がないか少なく危
険性も少ないアスベスト代替品があればよいと考えてきた。合成ガラス繊維は断熱や遮音が要求され
る様々な製品でのアスベストの重要な代替品である。用途が多いので、製造や輸送、取り扱いに直接
かかわる作業者やその他の人々の曝露の度合いは重要である。実際、繊維状の形態、顕微鏡レベ
ルでの形状、用途、産業上大量に使用されていることなどの点でアスベストと類似しているため、人造
繊維は、アスベストのように健康に影響を及ぼすかもしれないという懸念を引き起こす。ファイバーへ
の職業的な曝露は皮膚の炎症と呼吸器系疾患に関連する。この研究のひとつの目的はロックウー
ル・ファイバーへの職業的曝露を測定し呼吸量と呼吸能力を調査することである。
【器具及び方法】
職場における空気中浮遊物質の測定の標準的方法は位相差顕微鏡によるNIOSH (米国国立労
働安全衛生研究所)Method 7,400である。この方法では、サンプルは25mmセルロース・エステル・フ
ィルター上に採取される。このフィルターは透明化処理がなされた後に、ウォルトン−ベッケット計数
線を使用し、位相差照明により400∼450倍に拡大して顕微鏡で分析される。計数法Bを用いて、長さ
と幅の比が5:1で直径が3μmより小さい及び長さが5μmより大きい繊維のみが計数される。肺活量と
努力性肺活量テストのために肺機能テストがP.F.T.肺活量計を用いて実施される。検査対象グルー
プと比較対象グループに調査票による呼吸器系調査が行われる。この場合、事務職員と製造作業員
がそれぞれ検査対象グループと比較対象グループに選ばれる。呼吸器系調査票は双方のグループ
が記入する。努力性肺活量と肺活量検査が実施される。
【結果及び論考】
ファイバー計数の結果は作業者が呼吸する場所によって異なることを示した。8時間加重平均曝露
及び実際の曝露はそれぞれ0.51及び0.7ファイバー/ccであった。職業的曝露は米国産業衛生専門
家会議による時間加重平均の許容濃度を超えず、相関に関するテストでは職業的曝露レベルとの顕
著な差異は認められなかった(有意水準0.001未満)。
超過勤務のために、職業的曝露は高く、T-テストは職業暴露限界(occupational exposure limits)と
顕著な差異を示した((p=0.001))。結果として、グループ内で平均肺活量、努力性肺活量、努力性
肺活量1秒量に顕著な差異があることが示されたが、標準範囲に顕著な差異があった(P<0.001))。
われわれの研究では、ロックウール・ファイバーは呼吸量と呼吸能力にあまり影響は与えないことを示
している。しかし、この事実にもかかわらず、せき、痰のような呼吸器系症状はファイバーの吸入により
引き起こされる。以前の研究が今回の我々の所見を確認している。実際、ロックウール・ファイバーの
吸入による症状は、せき、痰、ぜい鳴、息切れを伴う。相関テストは、喫煙と、痰(r=0.29, P=0.006)、
せき(r=0.25, P=0.02)などの呼吸器系症状との顕著な関連性を示した。
キーワード:ロックウール、ファイバー計数、呼吸量と呼吸能力、肺気量測定法
WS-E-14 Carolina Mensi
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
ロンバルディア中皮腫登録(イタリア北部)3年間の調査結果
キャロリーナ・メンシ1,2、L・リボルディ1,2、G・リボルタ1,2、S・バッチェティ1、D・コンソニ1、
AC・ペサトリ1、G・チアピーノ1,2
1 ミラノ大学産業衛生学[イタリア][参加できず・論文提出]
2 ロンバルディア州中皮腫登録[イタリア]
抄録:
【はじめに】
ロンバルディア州中皮腫登録(LMR)は、国の法律に基づき国家中皮腫登録所の地域運営センタ
ー(ROC)として2000年に活動を開始した。この登録所は、2000年1月1日以来、イタリア北部のロンバ
ルディア地域に住む人々に発症した胸膜、腹膜、心外膜、精巣鞘膜の悪性中皮腫(MM)に関する全
ての新たな症例を収集している。
【目的】
この地域の悪性中皮腫の発生率を推定すること、アスベスト曝露を定義すること、未知の汚染源を
特定すること
【方法】
毎年、約300の疑わしい症例が病院の選ばれた部門(病理学、呼吸器内科、外科、腫瘍科)から積
極的に報告されている。それぞれの症例の診断は、イタリア中皮腫登録ガイドラインに従った臨床記
録を検証することで確認されている。中皮腫と確認された症例については、アスベスト曝露を確かめ
るために標準化された質問が患者又はその近親者に実施される。
【結果】
2000 年 か ら 2003 年 の 間 の 697 症 例 が 現 在 ま で に 評 価 さ れ て い る 。 そ の 診 断 結 果 は 、 確 実
(certain):416症例(60%)、ほぼ確実(probable):78症例(11%)、可能性あり(possible):40症例
(6%)である。160症例(23%)については、中皮腫の診断は確認されなかった。臨床的に確実性の高
い(確実+ほぼ確実)悪性中皮腫(MM)の494症例(男性338人、女性156人)について、その年齢の
中央値は68歳(範囲は35∼96才)であり、最も発症が多い(発症例の94%)部位は胸膜であった。ア
スベストに対する職業的曝露は症例の60%に見られた。最も重大な曝露は、建築業、金属製造業、
機械製造業、及び保守管理業であった。意外にも、非アスベスト織物工場で高い割合の中皮種の症
例が見出された。悪性胸膜中皮腫の年齢標準化発症率は、男性及び女性がそれぞれ3.8/100.000
(人口10万人に対して3.8人)[95%信頼区間:3.1∼4.4]及び1.4/100.000(人口10万人に対して1.4
人)[95%信頼区間:1.1∼1.7]であった。
【結論】
悪性中皮腫(MM)の発症率はイタリアで最高であった。予想されていなかった高いリスクが非アス
ベスト織物作業者に見られた。
WS-E-15 Sverre Langard
ワークショップE: 疫学・公衆衛生・予防
中皮腫発生減少の見込みを予測するための曝露情報とノルディッ
ク諸国の発症データの活用
スベレ・ランガード
リクスホスピタレ大学病院労働・環境医学センター[ノルウェー][参加できず]
抄録:
ノルウェー及びその近隣諸国では、断熱のためのアスベスト使用は、1970年代後半から1980年代
初期に最小限に削減された。このような使用の減少は、アスベスト曝露が健康へ及ぼす悪影響につ
いての全体的な情報をひろく労働者に知らしめることになった。労働者への情報の提供に加えて、ア
スベストを取り扱う場合の個人防護の導入、さらに1980年代初期のアスベスト使用禁止が加わった。
アスベスト繊維への最初の曝露から腫瘍ができるまでの、中皮腫が進展する期間に依存するが、
発症の減少が見られるのは、アスベスト曝露が中断してから20年から45年経過した後と予測される。
全ての北欧諸国には、過去40∼60年にわたる全ての新たながん症例に関する情報を含むがん登
録制度がある。したがって、これらの登録における中皮腫の発症率は、ノルウェーや他の北欧諸国で
約25年前から実施されている、労働者のアスベスト曝露の中断の長期的な影響を観察するのに利用
することができるかもしれない。北欧諸国におけるアスベスト曝露が中断してから約25年経過したが、
中皮腫発症率は減少していないように見え、この減少しないことについての可能性ある説明について
議論する。また、期待される減少の予測も試みる。
WS-F-01 John Flanagan
ワークショップF: 被災者・支援組織
被災者が被災者を支援する
ジョン・フラナガン
マージーサイド・アスベスト被災者支援グループ(リバプール)[イギリス]
抄録:
イギリスのアスベスト被災者支援グループ(AVSG)は、被災者自身によって設立され、いくつかは
労働衛生に関する団体からの助力を受けている。われわれは、しばしば被害者が診断を受けた後、
家族以外に接触する最初の人になる。
当初の面談
われわれは、完全に無料かつ秘密厳守で、被災者が国の給付金のための複雑な申請書を作成す
る手伝いをしている。アスベスト関連疾患(ARD)の重症者に対しては、患者の自宅で彼らの家族の立
会いの下に面談を行う。
国の給付金制度(社会保障)と政府の補償制度
われわれは、労災給付(中皮腫被災者に対しては120英ポンド/週(訳注:約25,000円/週))と政府
の補償一時金(56歳で15,598英ポンド(訳注:約320万円)、75歳で9,161英ポンド(約190万円)、37歳
から77歳までスライド方式)に対する申請を支援している。政府の補償制度は、元の雇用主に対する
補償を請求することができない人々のためのものである。
多くの支援団体にはまた、被災者たちが請求することのできる可能性のある、他の様々な国の給付
に関する資格のあるアドバイザーを擁している。
われわれはまた、元の雇用者に対する民事の人身傷害による損害賠償請求訴訟に、アスベスト関
連疾病を専門とする弁護士を紹介する手伝いもしている。
個人的な援助と支援
アスベスト被災者支援グループ(AVSG)は、問題に関して話をすることだけを望む人々に対しても、
援助と支援を行っている。われわれはしばしば、中皮腫であると告知されて家族が打ちのめされたと
きの、心の支えとなる。われわれは、医学的問題について助言できる専門の看護士たちと直接のコン
タクトをもっている。
われわれは、被災者を援助するために現行の法律を改正するための議会の委員会の一員である。
われわれは1999年以来、いくつかの成果を上げてきている。
われわれは、被災者を援助するために、国と地方の問題を取り上げてキャンペーンを展開している。
WS-F-02 Michele Olivia Hax Fite
ワークショップF: 被災者・支援組織
アスベスト疾患が患者・家族にもたらす心理・社会
的影響
ミシェル・オリヴィア・ハックス・フィット
白い肺協会(WLA)[アメリカ]
抄録:
被災者とその家族に及ぼすアスベスト疾患の心理社会的影響は、アスベスト曝露の悲劇を映し出
す。アメリカでは、医療予算が大幅に削減され、行政的及び司法的手段を通じての給付もあてにでき
ないので、アスベスト被災者らは、常に精神面でもそして肉体面でも、権利を剥奪され続けている。ア
スベスト疾患の道筋を図示することは難しい。
被災者の健康と社会及び家族生活の一員としての役目を果たす能力は、振り子のように高く低く
揺れ動く。日常生活動作(ADL)能力が予測できないことは、被災者とその家族に大きなストレスを引
き起こす。このストレスは、アスベストによって引き起こされる精神的及び肉体的健康の問題を悪化さ
せる。生き残る技術を得るためには、被災者のアドヴォカシー団体を基礎とした、チームによるアプロ
ーチが必要である。
WS-F-03 Kyla Sentes
ワークショップF: 被災者・支援組織
イヤー・オブ・アスベスト禁止カナダ(BAC)
カイル・センテス
アスベスト禁止カナダ(BAC)[カナダ]
抄録:
2003年には、アスベストの生産、使用、輸出の禁止に取り組む全国的な組織、アスベスト禁止カナ
ダ(BAC)が、新たに創設された。このことは、カナダにおける被災者や活動家の顕著な業績を表すも
のではあるが、まだこの先の道のりは長いものである。カナダにおけるアスベストの政治経済学は複雑
であり、アスベスト擁護派は、連邦・州の両レベルで堅固に周囲を固めている。したがって、BACの戦
略がより効果的なものとなるためには、カナダにおけるアスベスト産業の地域化、ケベック民族主義、
労働運動の内部の分断、賠償制度の州ごとにおける相違、そして活動の調整など、無数の問題に対
処していかなくてはならない。しかし、このような障害があるにも関わらず、一般の人々からの反応は
大変積極的であり、世界規模でのアスベスト禁止に向けた勢いは強い。
WS-F-04 Gregory Deleuil
ワークショップF: 被災者・支援組織
西オーストラリアにおけるアスベスト疾患の医学的診断と法医学的
診断の対立
グレゴリー・デリュール
オーストラリア・アスベスト疾患協会(ADSA)医学アドバイザー[オーストラリア][参加できず]
抄録:
アスベスト疾患の明確な診断も、司法の場で評価されるときには、明瞭でなくなるかもしれない。
ウエスターン・オーストラリア(州)労働者(災害)補償法は、補償を受けることのできるアスベスト疾
患、すなわち、中皮腫、肺がん、石綿肺などの要件について、きわめて厳格(限定的)である。
胸膜疾患は、この法の下では補償されない。しかし、複雑な慣習法の下での救済は可能であろう
が、うまく成功しそうにはない。
ここでの議論は、利害の対立するシステムにおいて、従来とは異なる疾患によって訴訟を提起する
原告が直面する問題を描き出す。
WS-F-05 Raghunath Manavar and Mangabhai Patel
ワークショップF: 被災者・支援組織
正義のための闘い:インド・グジャラートにおけるアスベスト被災者
の事例報告
ラグナス・カサルジ・マンバール1、マンガブハイ・ナサブハイ・パテル2
1 労働安全衛生協会[インド]
2 アスベスト肺患者(グジャラート州アヘンダバード)[インド]]
抄録:
この論文では、特にインド西部にあるグジャラート州の事例をあげ、インドにおけるアスベスト被災
者の闘いについて報告する。また特に、今、この会議に出席している被災者マンガブハイさんのこと
について述べる。この報告書では、インドでは貧しく職のない人々がいかに危険な産業で働かざるを
得ない状況にあるかについて考察する。また、アスベストに関連する病気の認定を得るための苦闘と
被災者が補償を得るための闘いについても考察する。また適切な診断を得られないために、したがっ
て補償を得られない労働者の困難な状況についても光をあてる。また、この報告書では、われわれの
組織である労働安全衛生協会(OHSA)が実施しているインドの他の州でのアスベスト関連疾患の広
がりに関する調査の取り組み及びインドにおけるアスベストの完全禁止のための運動について焦点を
あてる。
アスベスト肺患者であるマンガブハイさんは、1965年以来、アヘンダバード発電所のボイラー部門
で働いた。彼はその発電所で臨時雇いの労働者として働いており、正式に雇用されたのは1980年の
ことであった。マンガブハイさんは、1990年代初期に呼吸に異常を感じるようになり、その後、すぐに
働くことが非常に困難な状況となった。会社は 2、3年に一度、労働者の健康診断を行ってきたが、彼
にはどこにも異常がないとした。彼は私のところにやって来て、体の不調について訴えた。私はインド
産業毒物研究センターを退職し、消費者教育研究センター(CERC)の仕事をしていた労働安全衛生
問題の専門家クラーケ博士の助言を求めた。われわれは、同じ病気を抱えている8人の労働者を見
出し、CERCの弁護士、ラテ・ラニ・アドバニ氏がグジャラート高等裁判所に提訴した。同裁判所は、ア
ヘンダバードにある国立職業衛生研究所に労働者を調べるよう指示した。2人の労働者は調査を受
ける前に死亡し、マンガブハイさんを含む他の2人は、アスベスト肺であると診断された。マンガブハイ
さんは一時補償金として、わずか10,000ルピー(約218米ドル、約24,000円)を得ただけであり、現在、
最終判決を待っている。
WS-F-06 Munehiro Yasumoto
ワークショップF: 被災者・支援組織
横須賀におけるじん肺・石綿疾患問題の取り組み
−被災者・支援組織の運動をもとに−
安元宗弘
横須賀じん肺被災者の会・横須賀中央診療所[日本]
抄録:
横須賀におけるじん肺・石綿疾患の取り組みは、1982年5月、横須賀共済病院の三浦医師が「基
地、造船関係で石綿肺がんが多発」していることが新聞で発表されたことがきっかけとなり、開始され
た。
全造船浦賀分会、神奈川労災職業病センター、神奈川県勤労者医療生活協同組合・港町診療所
は、この問題に着目し、浦賀分会の退職者で組織している「浦賀退職者の会」の協力を得て、死亡者
の追跡調査や「じん肺と石綿肺についてのアンケート」を聞き取りにより実施、健診希望者に対しては、
港町診療所で行い、神奈川労災職業病センターが協力し、必要に応じてじん肺の管理区分申請を
行った。
1984年11月、横浜にある港町診所が協力し、浦賀退職者の会の「じん肺・石綿肺自主健診」が実
施され、その後、対象者を米海軍横須賀基地の退職者へも広げ、1990年まで毎年1回、11月に行わ
れた。健診活動等通じて、労災認定が勝ち取られ、労災補償を受けた被災者が中心になり、横須賀
じん肺被災者の会が1985年11月に結成された。1988年7月、住友重機の退職者8名が原告となり「横
須賀石綿じん肺訴訟」が提訴された。そして、1989年9月には、じん肺・石綿疾患の患者の治療や健
康管理を地元横須賀で行えるようにと、神奈川県勤労者医療生協の第2診療所の横須賀中央診療
所が開所。
1982年から89年にかけて、被災者・支援組織の体制がほぼ、整備され、その後の運動の基礎を
作ったといえるだろう。横須賀のじん肺問題は、造船所のじん肺が中心となったため、常に、石綿の
問題がセットで課題になつたため、横須賀の運動は、常に石綿問題にも取り組むことになり、また、時
には石綿問題を全国に発信する役割も果たして来た。
WS-F-07 Shigeji Tsukahara
ワークショップF: 被災者・支援組織
三菱長崎造船所の石綿被害と患者会活動
塚原繁次
三菱長崎造船じん肺患者会[日本]
抄録:
1983年に三菱長崎造船じん肺患者会を結成以来、20年間の活動を積み上げてきた。
現役労働者と退職者および下請け労働者から構成される会は、発足時20名余であったが、現在
100名をこえている。
三菱長崎造船じん肺訴訟は、第1陣が3年5か月をもって和解解決。その後、第2陣も提訴している。
じん肺患者会はそのいずれの原告を生み出す母体となった。
双方の原告の中の多数に、石綿小体が認められている。肺がんを併発して亡くなる人が続いてい
るが、レントゲン写真や解剖所見に石綿が確かめられた結果、じん肺管理2の非合併症だった人が労
災認定になった例、また、企業病院の主治医が見誤った石綿肺がんを、自主・随時検診運動を支え
る医師と医療機関の努力により、審査請求し、労災認定を実現できた例、などがある。
じん肺患者会が依拠してきた労働組合は、全造船機械三菱長崎造船分会であった。双方が連携
してじん肺被害者への企業補償要求や粉じん対策の改善を求め、じん肺をなくすための企業姿勢を
問いかけ、ねばり強く追求してきた。その中で過去の石綿使用の状況も確認された。独自に、じん肺
被害者のうち石綿に対する認識をさぐるアンケートもおこなってきた。
じん肺訴訟による賠償で石綿被害者も部分的には救済されているものの、奪われた命はかえらな
い。悲しみは償えない。
じん肺・石綿被害者はまだ多数の人が訴訟も労災も叶わず、救済の手が差しのべられるときを待っ
ている。その現実を正確にとらえて活動していくエネエルギーを本国際会議の皆さんから得たい。
WS-F-08 Fernanda Giannasi
ワークショップF: 被災者・支援組織
ブラジルのアスベスト・マフィアに対抗して:最後の闘い
フェルナンダ・ギアナージ
労働安全衛生監督官、アスベスト曝露者協会[ブラジル]
抄録:
スライド1―はじめに
スライド2―エターニト社は2004年8月、2,500人の被災者に対して、以下の支払い(約1億6,000万US
ドル)を命じる判決を受けた。①損害の程度により、1級―胸膜プラークを含む―(0.5最低全国賃金)
から4級(4最低全国賃金)―1.0最低賃金は月約90USドル―の年金、②損害の程度により1級から4級
―50∼300最低賃金の「慰謝料」、③支払いに当たって考慮されるべき日付(時効)は、被災者がその
疾病について知った日、④判決のもとでアスベスト曝露者が受ける治療費。
この判決に対して、エターニトはブラジル・アスベスト研究所(カナダ・アスベスト研究所の地方支部)
の支援を受けながら、大金(130万USドルの経費)をはたいたキャンペーンを開始した。
スライド3―素早い反応―2004年10月7日 攻撃的なメディア・キャンペーン。次のようなスローガンを
掲げた。
スライド4、5、6―「これらの真実は二面性を持ってはいない:ブラジルのアスベストは2万人の雇用を
生み出している。」
スライド7―「真実は以下のとおり:ブラジルにおけるアスベストの生産と利用は、ILOの規則/条約を
尊重している。クリソタイル・アスベスト―生命を尊重し、ブラジルの開発に貢献している」
スライド8―「真実はただひとつ:クリソタイル・アスベストはブラジルの人々の住居の安上がりな解決
策である」
ブラジルのクリソタイル・アスベストは、ヨーロッパやアメリカとは種類も使用方法も異なっており、国家
にとっての最も重要な鉱物のひとつである。
スライド9―われわれの応答―2004年10月11日 CONARに対する告発。ABREAは、「虚偽広告」で
あり、消費者を誤らさせようとしているとして、ブラジル広告規制委員会に対して告発した。
スライド10―戦争
z 2004年10月25日―CONARは、ラジオ、テレビ、新聞、雑誌、屋外での広告を停止させる。
z 2004年10月26日―クリソタイル研究所は、不服申し立て。
z 2004年10月27日―CONARは決定を変更せず。
z 2004年10月28日―クリソタイル研究所は、緊急事項として民事裁判所に提訴。
z 2004年10月29日―民事裁判所は、訴えを認めず、禁止を維持。
z 2004年11月5日―クリソタイル研究所は、そのスローガンをイメージ・キャンペーンに転換。
z 2004年11月10日―雑誌やテレビで特集を組む新たなプロパガンダ。
スライド11―「ブラジルにおけるクリソタイル・アスベストの責任ある使用のためのブラジル・クリソタイ
ル研究所の技術と情報」
スライド12―裁判と判決―2004年11月18日 ABREAの弁護士Dr. Shigueru SumidaからのFAX。フェ
ルナンダ:「われわれは勝った。全員一致の決定。クリソタイル研究所は明確に禁じられる」。「彼らは
助言者を束ねてCONARの決定を覆すためにやってきたが、ひとりの裁判官も彼らの見解を受け入れ
なかった」。「ここでしばらく休んで、われわれにも時間を与えてほしい。東京を楽しんでほしい。休息
をとるよう努力して、素晴らしい日本文化を知ってほしい」。
スライド13―もうひとつの闘い:彼らの闘いであって…われわれのではない…。元同盟者で、いまや
反対側??? サンゴバン×エターニト???…これはブラジルで最も重要な新聞のひとつに掲載さ
れたもので、次のように言っている。「マスメディアとして:アスベストに対してNOと言うべきである」
スライド14―ABREAのその他の取り組み
1) アスベストは既に3つの州で禁止された。(リオデジャネイロ、リオグランデドスル、ペルナンンブ
コ)
2) 2つ州の法律が最高裁で違憲であると差し戻された。
3) 15の州がアスベスト禁止の法案を採択した。
4) 70以上の法案が下院で審議待ちである。
5) 全国で公聴会が開催される予定である。
スライド15―世界的行動の提案。
われわれは、アスベスト被災者を代表して、医師たちに対して、非悪性のアスベスト関連疾患に関し
て「良性」または「曝露指標」という概念を使わないという医学的コンセンサスを要求する。
スライド16―世界的行動の提案。
われわれは、アスベスト被災者を代表して、すべてのアスベスト禁止の同盟者たちに対して、ブラジ
ルのヴァリグ航空に抗議の手紙を書くよう要請する。イギリス、デンマーク、オランダ、ドイツ、イタリア、
スペイン、ポルトガル、日本、フランス、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、南アフリカ等のすでにアスベ
スト禁止を決定した国へのフライトの国際線機内誌(2004年11/12月号)に、アスベストを擁護する広
告を載せていることに抗議してほしい。
WS-G-01 Takehiko Murayama
ワークショップG: 多国籍企業・海外移転
日本のアスベスト関連企業の海外進出の状況
村山武彦
早稲田大学理工学部(複合領域)[日本]
抄録:
日本におけるアスベストの規制が強化され、原則禁止が適用されるにいたり、アスベスト関連企業
は日本以外の国に活動の場を求める可能性が高まると考えられる。特に、地理的に近く日本ほど規
制が進展していないアジア地域への進出は、十分に懸念されるところである。
報告者は、10年ほど前にアスベスト関連企業の海外進出状況を調査したが、その後の状況を追加
調査し、特にアジア地域における進出企業の概要をまとめるとともに、過去との比較を通じて、経年的
な変化についても言及する。
WS-G-02 Barry Castleman
ワークショップG: 多国籍企業・海外移転
地球規模でのアスベスト製品の廃絶
バリー・キャッスルマン
環境コンサルタント[アメリカ]
抄録:
1970年代にヨーロッパ及び北米各国においてアスベスト・ハザーズを規制する国レベルでの努力
が進展するにつれて、同一の多国籍企業が所有する、地球の異なる場所にある同種の工場間で、防
護措置の不均衡がみられるようになってきた。アスベスト企業は、ハザーズの輸出、安全、衛生、環境
保護における「二重基準(ダブル・スタンダード)」に関して、非難された。当時、アスベスト産業はその
ピークにあり、年間の世界のアスベスト使用量は500万トンを超えていた。この産業は、世界中にアス
ベスト鉱山とアスベスト製品工場を所有するいくつかの多国籍企業によって支配されていた。人々の
注意と関心、規制、そしてアスベスト被災者に対する補償責任が増大するにつれて、巨大アスベスト
企業は、代替製品の開発を迫られ、また、いくつかは破産した。しかし今日でもなお、例えば自動車
産業のように、アスベスト製品が使用されている別の産業において二重基準への関心が高まっている。
アスベストの使用を根絶させ、既存アスベスト建材によるハザーズをコントロールする行動規範(codes
of practice)を開発するための国際協力、その国際協力の実行を検証するNGOの取り組み、につい
て議論する。
WS-G-03 Annie Thebaud-Mony
ワークショップG: 多国籍企業・海外移転
労働者に反する多国籍企業:フランスとブラジルに
おけるサンゴバンの戦略
アニー・デボモニ
国立衛生医学研究所(INSERM)現代社会公衆衛生問題研究所(CRESP)
[フランス]
抄録:
フランスのアスベスト採掘量は、フランスにおけるアスベスト全消費量の20%を超えたことはなかっ
た。1952年にクエイラス(メイリエス鉱山)で閉山され、1962年にはコース(コース・ケープ鉱山)で閉山
された。1962年から、アスベストがフランスで禁止された1997年まで、全てのアスベストはケベック、ロ
シア、南アフリカから輸入されていた。フランスのアスベスト産業は2つの多国籍企業、サンゴバン(特
に子会社であるエべリット)とエタニット(ベルギー・グループ、現在のエテックス)によって支配されて
いた。フランスではサンゴバンは、その子会社ワナー・ルソフィによって断熱用吹き付けアスベストを専
門としてきた。サンゴバンのもうひとつの子会社エべリット、及びエタニット・ベルギーは、アスベスト・セ
メント市場における2つの主要な会社である。
サンゴバンはエタニット・スイスと提携して、ブラジルの鉱山を探鉱することで、世界第3位のアスベ
スト生産企業となった。フランスでは1997年にアスベストが禁止になったにもかかわらず、1960年代以
来、今日までサンゴバン&エタニットの子会社SAMAは、ブラジルの鉱山ゴイアスで探鉱している。ブ
ラジルのアスベスト・セメント市場は、サンゴバン・ブラジリット及びエタニット・スイスのブラジルにおけ
る子会社によって支配されてきた。
サンゴバンの経営者たちは、ブラジルでアスベスト採鉱を始めた時に、アスベストの健康への悪影
響を完全に知っていた。しかし、この企業は常に二重規範(ダブル・スタンダード)の戦略をとってきた。
この論文では、この企業の2か国における3つの主要な局面:アスベスト市場の支配、アスベストの
健康影響についての情報支配、そして正義を求める被災者の集団訴訟に対する対応、についての
戦略を比較する。
WS-G-04 Bob Ruers
ワークショップG: 多国籍企業・海外移転
国際的アスベスト・カルテル
ボブ・ルアーズ
前オランダ上院議員、オランダ・アスベスト協会創設者、弁護士[オランダ]
抄録:
物語は1900年、オーストリア人事業家、ハチェックがアスベスト・セメント製造技術を開発した時に始
まった。彼はその製造法をエタニットと呼んだ。3年もしないうちに、正確には1903年に、彼はエタニッ
トの特許権をフランス、イタリア、スイスなどの会社に譲り渡した。他の国々の多くの会社もすぐにその
あとを追った。1950年までに、世界中の200を超えるアスベスト・セメント工場が、ハチェック式によるア
スベスト・セメントの製造をしていた。
1920年に、アーネスト・シュミットハイニーというスイスの事業家がスイスのエタニット製造工場を引き
継いだ。シュミットハイニーは、すでにスイスのセメント産業に積極的にかかわっていたが、ベルギー
のセメント産業に事業を拡大し、ベルギーのエンセムス・グループ所有のエタニット製造工場と協力関
係を結んだ。
シュミットハイニーが、ヨーロッパの他のエタニット社やアメリカのジョーンズ・マンビル社と提携して、
ドイツのエタニット社を設立したのは1928年のことだった。1年後、彼は、国際的アスベスト・セメント会
社「SAIAC」を設立した。世界中から集まった、これらの協力関係にあるアスベスト・セメント会社が目
指したものは、広範囲にわたる企業活動だった。彼らは、宣伝のための経験やアイデアをやり取りし、
特許権を交換し、共同で原料の購入にあたった。SAIACは、それに加えて、技術上の知識を交換し、
共同研究や、いわゆる「中立国」における新会社の設立、輸出のための組織づくり、原料を入手する
ことを相互に保証し合うなどの業務を行った。さらに、SAIACの共同出資に加わった会社は、価格や
市場に関する協定にも踏み出した。ヨーロッパにあるエタニット社だけでなく、イギリスのアスベスト会
社であるターナー&ニューウォール社やケープ社、アメリカのジョンズ・マンビル社もSAIACに加わっ
た。1929年の年報の中で、ターナー&ニューウォール社は、SAIACを満足げに「ミニュチュア国際連
盟」と呼んだ。
1969年にベルギーのエタニット社は、ジョーンズ・マンビル社とターナー&ニューウォール社と共同
で、ルクセンブルグにTEAMという名の新しい会社を設立した。その会社の目的は、世界中に新たな
アスベスト・セメント会社を作ることだった。TEAMは、いくつかをあげると、パキスタン、インドネシア、
日本、中国、ナイジェリア、セネガルなどに進出した。はじめに、ベルギーのエタニット社はルクセンブ
ルグを本拠とする同社の8%の株式しか所有していなかったが、この数値は、1989年まで右上がりで
増加を続け、ベルギーのエタニット社が株式の86%を占めるまでになった。さらに、ベルギーのエタニ
ット社が、インド最大のアスベスト・セメント製造会社であった、エベレスト・インダストリー社の50%の株
式を取得して、ターナー&ニューウォール社から買収したのも1989年だった。それによって、ベルギ
ーのエタニット社は、世界で最大のアスベスト・セメント製造会社となったのである。
WS-H-01 Claudio Bianchi
ワークショップH: 造船とアスベスト
アスベストと造船所
クラウディオ・ビアンチ、トマソ・ビアンチ
イタリア対がん協会・環境がん研究センター[イタリア]
抄録:
1) 19世紀終わりの20年間以来、様々なタイプのアスベストへの曝露が造船所で起きた。20世紀に
なると、とくに造船産業が盛んな国々においては、深刻な問題となった。20世紀前半には、イギリスが
アメリカとともに、二度の世界大戦を通じて海軍戦艦の集中的な建造があり、最も重要な造船国であ
った。20世紀後半は、日本と、その後、韓国において、著しい造船業の隆盛がみられた。これら主要
な造船国とは別に、様々な国々で、とくにヨーロッパにおいて、重要な造船事業が見られた。
2) 造船所におけるアスベスト曝露の特徴は、解剖による研究に基づいて再構築されるかもしれな
い。造船所で働く全ての人々が、アスベスト曝露に関連していた。曝露の程度には大きな変動があっ
た。イタリアのモンファルコン(Monfalcone)の造船所で実施された諸調査では、造船所で働く労働者
のうち、80∼90%に胸膜プラークが観察された。プラークのサイズは様々で、小さいものが21.2%、中
程度のものが33.1%、大きなものが32.4%であった。アスベスト小体は、35%に通常の肺切片で観察
された。肺の化学的消化後のアスベスト小体の検出では、78.6%に肺組織乾燥重量1グラムあたり
1,000個以上、49.1%に10,000個以上のアスベスト小体が認められた。クリソタイルと角閃石が、造船
労働者の肺、リンパ節及び胸膜で検出された。
3) 悪性中皮腫の地理的分布は、造船業が行われていた場所を正確に反映していた。中皮腫の発
症率が最も高いのは、造船所地域であると報告されている。この数十年間で多くの国々の造船所に
おいて、アスベストへ曝露はなくなるか削減された。しかし、クロシドライトを含む様々なタイプのアスベ
ストへの曝露は、数年前まで多くの造船所に存在していた。このことは、造船労働者に高い中皮腫発
症率が、今後数十年間においても観察されるであろうことを示唆している。
WS-H-02 James Fite
ワークショップH: 造船とアスベスト
アメリカの造船所:大量アスベスト曝露と疾患の歴史
ジェームズ・フィット
白い肺協会(WLA)[アメリカ]
抄録:
アメリカ合衆国は、かつて外洋船舶建造の世界の指導的センターであった。1920年代から1980年
代に、20を超す主要な造船所が数十万人の労働者を雇用していた。船舶建造においては、主として、
鉄鋼とアスベストというふたつの物質が利用された。
戦時中からの莫大な補助金や防衛予算によって、造船所は、もっとも管理が行き届き、工業的操
業が行われていた産業のひとつであったとはいえ、アスベスト曝露が広範囲に及ぶ部署の労働者に
とって致死的であったことが証明された。著者は、このアスベスト曝露による人的コストを見積もり、ま
た、船舶建造における将来の有害物曝露を予防する手段を提案する。
WS-H-03 Andy White
ワークショップH: 造船とアスベスト
造船の町の直面している課題
アンディ・ホワイト
ウエスト・ダンバートン市議会[イギリス]
抄録:
本論文は、造船の街が直面しているアスベストに起因する諸問題を検証する。アスベスト問題に関
する諸機関間(共同)アプローチの価値及びより広範な協力関係の問題についても論じる。様々なレ
ベルにおける、影響を受けた諸グループ間の共同の取り組みと経験の共有が、多数の重要な課題領
域において役に立つであろう。国際的なアスベストの流行、なかんずく影響を受けた造船所を抱える
地域社会に必要とされる、長期的戦略に近づけるような議論を期待したい。地域の環境、社会の安全、
アスベスト被災者とその家族・介護者に対する支援、に高い価値が与えられるべきである。このことは、
最高レベルにおける政治的介入及び多数の主要な国際機関による支援を必要とする。
WS-H-04 Naohiko Inase
ワークショップH: 造船とアスベスト
三浦半島における造船労働者の中皮腫
稲瀬直彦、三浦溥太郎
横須賀共済病院内科[日本]
抄録:
【背景】
中皮腫患者の多くは長年にわたる石綿曝露を伴う職業歴を有している。三浦半島に位置する横須
賀市は100年以上にわたる「造船の町」としての歴史があり、また中皮腫発症頻度の高いことで知られ
ている。
【目的】
当施設で経験した胸膜中皮腫患者のうち造船労働者の占める割合と、これらの労働者の石綿曝
露を具体的に調査するために診療記録を参照した。
【対象】
1991年から2003年まで当院に入院した胸膜中皮腫患者38名(男31名、女性7名)で年齢は30から
86歳であった。病理組織による分類では上皮型24名、二相型8名、肉腫型6名であった。
【結果】
石綿曝露に関して職業曝露を34名に、傍職業性家族内曝露(夫が造船所に勤務)を2名の女性に
認めたが、2名については石綿曝露が明らかでなかった。石綿の職業曝露を受けた34名の内訳は、
27名(79%)が造船所勤務であり、4名(12%)が建設・解体に、3名(9%)が車両製造・修理に従事し
ていた。胸膜中皮腫を発症した27名の造船労働者の潜伏期間(最初の曝露から発症まで)は24-70
年(平均46年)であり、建設・解体群(平均潜伏期間32年)や車両製造・修理群(平均潜伏期間34年)
と比較して長い傾向を認めた。また、この造船労働者における石綿曝露期間は6-43年(平均26年)で
あった。
【結論】
胸膜中皮腫を発症した造船労働者においては、他の職業において石綿曝露を受けた患者と比較
して潜伏期間が長い傾向にあることが示された。
WS-H-05 Meiro Haruta
ワークショップH: 造船とアスベスト
A造船所における胸部レントゲン所見および石綿関
連疾患
春田明郎、名取雄司
横須賀中央診療所[日本]
抄録:
当診療所を14年間に受診したA造船所退職者男性519名について、胸部レントゲン所見では、66
名(12.7%)に第1型以上の粒状影を認め、第1型以上の不整形陰影はほぼ全ての職種の496名
(95.6%)に認められた。また320名(61.7%)に石綿による胸膜病変が認められた。観察期間以後の
受診者についても、不整形陰影が多くの者に認められる傾向が続いている。
また、じん肺管理区分2以上に決定を受けた者が118名(22.7%)あり、42名(8.1%)が合併症ある
いは管理4であるため労災認定を受けていた。21名(4.0%)が肺がん、胸膜中皮腫、呼吸不全により
死亡した。
WS-H-06 Michitaka Hayashi
ワークショップH: 造船とアスベスト
横須賀における被災者の掘り起こしの取り組み
林充孝
じん肺アスベスト被災者救済基金事務局長[日本]
抄録:
横須賀における石綿被害が顕在化したのは、1982年5月、読売新聞夕刊のトップ記事で、「横須賀
共済病院の三浦医師を中心とした研究チームが、基地・造船関係で石綿肺がんが多発し、過去5年
間で39人死んでいたという研究結果」が報道されことによる。
この秋以降、全造船機械労組浦賀分会、神奈川労災職業病センター、神奈川県勤労者医療生協
港町診療所の三者は、住友重機浦賀造船所の退職者によって構成されていた「浦賀退職者の会」の
協力を得て、死亡者の追跡調査やアンケート調査を実施し、息切れ、咳・痰などの自覚症状の訴えが
異常に多く、翌年から希望者の検診を行うとともに、じん肺管理区分申請や、労災申請を開始した。
1984年からは、米海軍横須賀基地退職者の検診も開始し、労災申請手続きを行うようになり、じん
肺や石綿被害の「要療養患者」が急激に増加した。1985年11月には「横須賀地区じん肺被災者の
会」が結成され、被害の掘り起こしが自主的に行われるようになった。
1986年、米空母ミッドウェーの大改修工事が米海軍横須賀基地で行われたが、この工事により発
生した大量の石綿廃棄物が、公道上に投棄されていることが発覚し、発がん物質である石綿のずさ
んな管理が明らかになり、大きな社会的問題となった。
1988年7月に、住友重機械工業株式会社を相手に、石綿肺の被害を受けた退職者8名が損害賠
償を求めて裁判所に提訴した。この裁判は、被告会社の悪辣ないやがらせと裁判引き延ばしによっ
て長期化したが、9年後の1997年3月に和解が成立し解決し、同時に今後住友重機械の退職者が被
害を受けたとき、補償金を支払う労使協定が取り交わされた。この勝利を受けて7月に、無料電話相
談「じん肺・石綿健康被害ホットライン」を実施したところ、横須賀市内を中心に100件を越す相談が寄
せられた。
この間1995年7月、住友重機退職者で肺がんにより死亡した遺族が提訴した損害賠償裁判も、
1997年10月に和解が成立、解決した。そこで、裁判を支援してきた労働組合や、支援団体、被災者
組織により「じん肺アスベスト被災者救済基金」を結成し、今日までの運動を引き継ぎ、被災者の掘り
起こしや被災者支援の活動が開始された。
毎年7月に行われる電話相談「じん肺・石綿健康被害ホットライン」には、毎年多くの相談がよせら
れ、今年の7月に行われた第8回ホットラインまでに500件を上回る相談がよせられ、多くの労災認定を
実現してきている。
1999年7月、米海軍横須賀基地退職者及び遺族16名が、雇用者である国を相手に「第1次米海軍
横須賀基地石綿じん肺損害賠償請求」を裁判所に提訴。つづいて2002年5月、被災者22名が「第2
次の損害賠償請求」を、2003年7月には、退職者及び遺族15名が「第3次の損害賠償請求」を提訴し
た。
第1次訴訟は、2002年10月横浜地裁横須賀支部から、全員救済の画期的判決が出されたが、東
京高裁では、原告5名が10年の時効により逆転敗訴し、残念ながら最高裁もそれを容認し確定した。
第2次訴訟は現在和解協議が進行している。
また、2003年7月、住友重機のじん肺に被災した退職者及び遺族14名が、会社を相手に第2次損
害賠償請求を提訴している。
横須賀における掘り起こしはかなり進んでいると思われる。しかし、今年の電話相談でも100件を越
える相談が寄せられた。京浜工業地帯や全国各地の造船労働者の被害の掘り起こしは、まだまだこ
れからという思いが強い。
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