中国知的財産権法に対する全体的な観点の第二部分及び2009

第二期
X
第四辑
2010年6月
知的財産権に関する法律—
現状と方向性(二) .. 2-3
2009年度十大知的財産権侵害事
件................................... 3-5
X
中国知的財産権速報 .................
.................................. 2、4&5
X
中 国
知的財産権速報
項目
‰
知的財産権に関する法律——現状と方向性(二)
中国では知的財産権に関する立法と改正が立て続けに行われ、知的財産権の保護が強化さ
れつつある。著作権の行政立法により違法行為の対象が拡大し、3つの新たな行政処罰が追加さ
れた。さらに、デジタル媒体およびその他のストレージ媒体の管理を強化した。『独占禁止法』
の関連規則は更に完備されている。例えば、「企業集中」の申請基準と関連市場の画定基準など
が明確にされた。また、税関総署は新知的財産保護条例を公布し、当事者に協議による権利侵害
紛争の解決を奨励し、税関、権利者ならびに貨物発送人・受取人の権利義務のバランスがとれる
ようにしている。本稿では、引き続き中国の知的財産権の立法に関する進展とその影響について
詳細に探求する。
彭凱、Zach Wortham
‰
2009年度十大知的財産権侵害事件
最高人民法院は2009年中国法院知的財産権十大事件を発表した。知財侵害で過去最高の賠
償額を命じた事件であるマイクロソフト著作権侵害者に対する刑事処罰の事件、BMWのアパレル
会社への商標権侵害を訴えた勝訴事件などである。本稿では、十大事件の判決と中国知的財産権
保護に与える影響を詳細に説明する。
彭凱、Margalit Faden
ニュース速報
最高人民法院、中国知的財産権状況白書を公布
EXECUTIVE EDITOR:
MR. WANG JING
SENIOR EDITOR:
MR. PENG KAI
EDITOR AND DESIGN:
MR. ZACH WORTHAM
2010年4月20日に、最高人民法院は『中国法院における知的財産権の司法保護の状況』白書
を公布した。これは、最高人民法院が初めて年度別の保護状況という形で公布する中国知的財
産権保護状況である。白書には中国法院の2009年度知的財産権司法保護状況がまとめられてお
り、30年来の知的財産権の保護活動を簡単に振り返っている。1985年~2009年、全国の法院は知
的財産権民事第一審事件16.6408万件、知的財産権行政第一審事件6,387件を審理・終了した。
1997年~2009年、知的財産権刑事第一審事件1.4509万件を審理・終了した。うち、2009年、特
許事件4,422件、商標事件6,906件、著作権事件15,302件、技術契約事件747件、不正当競争事件
1,282件。中でも海外関連の知的財産権民事第一審事件については1,361件を受理し、前年同期と
比べ19.49%増加となっている。また、中国全土で法院の知的財産権民事第一審事件の調停によ
る訴訟取り下げ率は平均50%以上に達した。この他、最高人民法院は知的財産権民事事件297件
を受理し、390件を審理・終了した。中国全土の地方人民法院の知的財産権民事事件第一審の終
了率は81.73%(2008年)から85.04%(2009年)に上昇した。上訴率は49.32%(2008年)から
48.82%(2009年)に減少した。再審率は0.44%(2008年)から0.33%(2009年)に減少した。
(白書の中国語版全文:http://www.court.gov.cn/zscq/znss/201004/
1
The China IP Legal Bulletin is produced by Wang Jing & Co.
知的財産権にする法律
————現状と方向性(二)
『独占禁止法』の関連規則の制定状
況は、次の通りである。
著作権法
国家版権局が制定した新『著作権行政処
罰実施弁法』が2009年6月15日より実施
されている。新弁法では行政処罰を科す
違法行為が追加されており、また、「警
告」、「権利侵害製品の没収」ならびに
「権利侵害製品が組み込まれている設備
の没収」等3項目の新たな行政処罰を追加
している。また、権利侵害者の住所、権
利侵害行為を実施したネットワークサー
バー等の設備の所在地、および権利侵害
を実施したホームページ届出登録地の著
作権行政管理部門に、情報ネットワーク
配信権の権利侵害に対して行政処罰案件
の管轄権を与えている。
新聞出版総署が制定した『複製管理弁
法』が2009年8月1日より実施され、光
ディスク、テープ、磁気ディスク、その
他ストレージ媒体の複製経営活動に適用
される。当該弁法は複製経営活動を行う
企業の設立、複製のための生産設備なら
びに複製経営活動に対する管理を強化
し、また違法行為に対する行政処罰措置
を規定している。
中国著作権法第二次改正版は2010年4月1
日より実施されている。今回の改正は2条
のみが改正されただけで、著作権および
保護に対する実質的な改正はない。
独占禁止法
2008年8月1日より実施されている
『独占禁止法』が注目されている。国務
院は独占禁止法の実施後、独占禁止委員
会を設立しており、その職責は競争政策
の研究、立案、および独占禁止業務の組
織、調整、指導等である。具体的な行政
法執行機関は次の通りである。商務部
は、「企業集中」つまり会社合併行為に
対する独占禁止審査を担当する。国家発
展および改革委員会は、「価格カルテル
行為」の取締りを担当する。国家工商総
局は、独占協定、市場支配的地位ならび
に行政権限の濫用による競争の排除・制
限行為に対する独占禁止の法執行を担当
する。
2
■ 2008年8月1日に公布、実施された
『国務院の企業集中届出基準に関する規
定』は、 集中に加わった企業の前年度に
おける世界中の合計売上高が100億人民元
を超えた場合、あるいは中国国内での総売
上高が20億人民元を超え、かつその中の2
つ以上の企業の中国国内売上高が4億人民
元を超えた場合、事前に国務院商務主管部
門に届出なければならない、届出ない場合
は企業集中を実施してはならないと規定し
ている。
■ 国務院独占禁止委員会が2009年5
月24日に公布した『関連市場の画定につい
ての指針』では、関連市場を画定する基本
根拠、関連市場を画定する方法と考慮すべ
き要素、ならびに仮定的独占者テストの構
想と関連注意事項の三つの方面について明
確に規定している。
■ 国家工商総局が2009年7月1日に公
布、実施した『工商行政管理機関の独占協
定、市場支配地位濫用案件の手続きに関す
る規定』および『工商行政管理機関の行政
権力の濫用による競争排除、競争制限の行
為を取り締まる手続きに関する規定』の2
つの規定は、独占行為、行政権力を濫用し
ての競争排除、競争制限行為に対する告
発、ならびに取締りと懲罰等の行政手続に
対して詳細に規定している。
■ 今後公布される予定のその他の関
連規則は次の通りである。
商務部独占禁止局が起草する『企業
集中届出暫定弁法』、『企業集中審査暫定
弁法』、『法に従った届出のない企業集中
の調査処理に関する暫定弁法』、『届出基
準を満たさないが独占の疑いのある企業集
中の調査処理に関する暫定弁法』、『届出
基準を満たさないが独占の疑いのある企業
集中の証拠収集に関する暫定弁法』。国家
発展および改革委員会が起草する『価格カ
ルテル禁止行政法執行手続』、『価格カル
テル禁止規定』。国家工商行政管理総局が
起草する『市場支配的地位の濫用行為禁止
関連規定』、『工商行政管理機関独占禁止
案件の管轄に関する規定』、『工商行政管
理機関独占案件の授権に関する規定』等。
中国
知的財産権
速報
国務院国有資産監督管理委員
会、『中央企業商業秘密保護暫定
規定』を公布
国務院国有資産監督管理委員会(以下
「国資委」という)による『中央企業商業
秘密保護暫定規定』が3月25日から公布・
実施さている。これは中国初の商業機密保
持に関する部門規章である。企業の戦略計
画から財務情報まで多くの情報を商業機密
として定め、また、中央企業(国資委直属
の企業)の経営情報と技術情報において国
家機密とされた部分は、法律規定に従い国
家機密として保護することが規定された。
中央企業の商業機密保持に重要な法的根拠
を与え、中核となる経営情報と技術情報の
安全を確保するため、中央企業の従業員、
機密に携わる中核スタッフ、関係者は競業
制限協議および機密保持協議を締結するよ
う規定した。
マイクロソフト、中国での知的 財
産権保護を展開
マイクロソフト中国は、インターネ
ットカフェのチェーン店である東莞動感網
絡通訊有限公司(以下「通訊公司」とい
う)をインターネットカフェにおいて5000
個のWindows XPのコピーソフトが使用され
ているとして起訴し、158万人民元の損害
賠償を請求した。裁判は近日開廷する。マ
イクロソフト中国はインターネットカフェ
が費用納付後に使用登録すれば、Windows
XPのコピーソフトの使用を認めると発表し
たが、仮に、200台のパソコンを所有する
中規模のインターネットカフェなら、85万
人民元の費用を支払わなければならない。
本判決はインターネットカフェのビジネス
モデルに大きな影響を与える恐れがあると
業界は判断している。 また、マイクロソフト中国は中国の
僻地に対し、正規版のソフトウェアを展開
する計画である。マイクロソフト中国は4
月に雲南省政府とインターネット提携プロ
ジェクト協議を結び、昆明にある200軒の
インターネットカフェに正規版のソフトウ
ェアを提供し、さらに現地の3000名のリス
トラ労働者を対象としたオンライン研修の
開催を予定している。
知的財産権に関する法律
————現状と方向性(二)
税関の知的財産権保護
税関における知的財産権に関する法執
行を更に強化するため、税関総署は2009
年3月3日に新『知的財産権税関保護条例
実施弁法』を公布し、2009年7月1日より
実施している。新たに実施された弁法
は、知的財産権の私権の立場から、申請
による保護制度を改善し、知的財産権の
受動的保護の性格を強調している。ま
た、当事者が協議を通じて権利侵害紛争
を解決することを奨励し、税関の法執行
コストを節約している。税関、権利者な
らびに貨物発送人・受取人の権利義務の
バランスがさらにとられている。
新『知的財産権税関保護条例』が2010
年3月24日に国務院より公布され、4月1
日から施行されている。ただし、保護の
強化に関する実質的な改正はない。
注意すべきその他知的財産権の関連新法
に『「特許に係る国家標準制の制定及び
改定についての管理規定」に関する意見
募集稿』を公布している。国家標準に係
る特許技術に対して、参与者は直ちに公
表し、撤回不可の特許実施に関し、書面
による許諾を提出しなければならない。
提出しない場合、本標準の草案は公布さ
れないこととなる。上記規定が正式に実
施された場合、企業の標準戦略に大きな
影響を及ぼすこととなる。
まとめ
本文に列挙した法律は過去2年間に公
布された中国知的財産権関連法律の一部
にすぎない。周知のとおり、中国知的財
産権保護の最大の問題は、現行の法律で
はなく、法律メカニズムの構築が未完成
で、知的財産権という概念にまだ馴染ん
でおらず、国家による知的財産権の権益
保護の位置付けが低い国において、いか
に知的財産権を行使するかということに
科技部、国家発展改革委員会、財政 ある。そのため、我々は、中国の知的財
部は2009年10月に『2009年自主創新製品 産権の立法に着目すると同時に、これら
の国家認定業務の展開に関する通知』を の法律が、どのように迅速かつ有効に執
公布している。各省、自治区、直轄市の
行され、知的財産権の発展と保護の可能
関連組織は、製品の認定申請、予備審査
および推薦業務を行うよう要求した。こ な安全な環境がいかに構築されていくか
れは、『国家自主創新製品目録』が近い ということに着目しなければならない。
将来公布される可能性が高いことを意味 境来发展和支持知识产权。
する。目録に組み込まれた製品は、政府
調達の審査で優位に立つことができる。
彭凱、Zach Wortham
国家標準化管理委員会は2009年11月
2009年度十大知的財産権
侵害事件
2009年度十大知的財産権
侵害事件
最高人民法院は4月21日に2009年度中国
法院十大知的財産権侵害事件を公布した。内
訳は、民事事件8件、行政事件1件、刑事事件1
件である。普遍性のある法律適用における従
来の問題を解釈した案件以外、社会的に注目
度の高い案件が選定されている。
1.正泰vs.シュナイダー
特許権侵害訴訟事件)
(「小型ブレーカ」
2007年9月、浙江省温州市中級人民法院は本
件の第一審判決を下した。被告の天津シュナ
イダー社が原告の正泰集団の実用新型特許権
を侵害したとして、権利侵害行為の即時停止
と3.348億人民元の賠償を命じた。本件は「中
国知的財産権権利侵害賠償金額No.1」と言わ
れている。シュナイダーは、浙江省高級人民
法院に上訴したものの、最後的に原告との調
停に合意し、1.575億人民元の賠償金を支払っ
た。
た。番茄花園の運営者である孫顕忠には3年
半の懲役と罰金100万人民元が命じられた。
成都共軟のマーケティングマネージャーの張
天平、番茄花園のコピーソフトウェアの開発
と制作に関わった梁焯勇には、それぞれ2年
の懲役と罰金10万人民元が命じられた。本件
は、中国国内初のコピーソフトウェアのイン
ターネットダウンロードが知的財産権犯罪と
して取り上げられた刑事事件である、中国が
刑事司法保護を通して大規模なインターネッ
ト上のソフトウェアコピー行為を阻止した、
社会的注目度の高い事件となった。本件は、
中国国内のコピー行為に警鐘を鳴らと同時
に、中国の司法が国内外の著作権者に対して
2.「番茄花園」の海賊版事件
公平で知的財産権犯罪に対して厳しい態度を
成都共軟網絡科技(有)、孫顕忠、張天平、 採ることを示した。
洪磊、梁焯勇に、マイクロソフト社のソフト
ウェアのコピーおよびそれを他人に提供した 3.武漢晶源の「煙気脱硫」方法特許侵害事件
罪に対し著作権侵害罪に相当する刑罰が言い
武漢晶源が日本富士化水工業と華陽電業を
渡された。うち、番茄花園ウェブサイト責任
者の洪磊には3年半の懲役と罰金100万人民元 相手取り、自社の発明特許権を侵害したとし
が命じられた。番茄花園に技術支援する成都 て訴えた本件は、第一審および第二審ともに
共軟網絡科技(有)には約877万人民元の罰金 被告の権利侵害成立の判決を下した。特許権
と違法所得約292万人民元の没収が命じられ 侵害事件では被告に権利侵害行為の即時停止
中国知的財産権権利侵害事件中、過去最高
額の賠償額が命じられた事件として知られて
いる本件が2009年度十大知的財産権侵害事件
に選ばれた。本件は知的財産権の市場競争に
おける価値の高さを示している。長い間、中
国企業は自社のイノベーションを怠り、物真
似の加工に走っていた。外国企業との知財訴
訟においては、ほとんど被告の立場に立たさ
れ、また、敗訴率も非常に高かった。本件
は、中国企業が徐々に成熟し、知的財産権を
利用して外国企業と紛争する方法を学んでい
ることを示す事件となった。
3
2009年度十大知的財産権
侵害事件
する典型的な事件である。現在、中国の企業名
称の登記と商標登録は別の行政部門が担当して
いるため、本件のように商号と他社の登録商標
が混在する状況が発生する可能性がある。権利
抵触を解決するため、最高人民法院の司法解釈
では、他人の登録商標と同一あるいは類似した
文字を企業の商号として、同一または類似商品
に際立たせて使用し、公衆を誤認させる恐れの
ある場合、登録商標侵害行為に当たると規定し
た。本件では、被告の企業名称は現地工商部門
本件は、権利侵害停止の代わりに権利侵害者 で登録され、合法的に取得したものであるが、
にロイヤリティーを支払うよう命じた初の判例 権利侵害と認定され、商号の変更が命じられ
であり、特許権者に合理的なロイヤリティーを た。
支払うことで、権利侵害者が特許技術を継続使
用できるようにしたもので、特許の裁定許諾に 6.「魯綿」商標と不正当競争事件
近い。法的根拠はないが、最高法院による本判
1999年に「魯綿」の商標登録を済ませた原告
決により、特別な事情がある場合、知的財産権
権利者と社会公衆との利益の均衡を考慮して判 の山東魯綿実業有限公司は、鄄城県魯綿工芸品
有限責任公司が生産し、済寧礼之邦家紡有限公
決が下されることが示された。
司により販売されているベッド用品に「魯綿」
4.黄金仮日vs.携程( 航空券予約不正競争訴訟 の文字が目立つように使用されているのを発見
したため、両社を商標権侵害で起訴した。山東
事件)
省高級人民法院は第二審で、「魯綿」は1999年
被告の携程公司は民間旅客機航空券販売代理 に原告が商標を登録する前にすでに山東の民芸
資格を取得せずに「携程トラベルサイト」で航 品に用いられていた通用名称であるため、被告
空券の販売代理を行っていることは違法経営行 の行為は商標を正当に利用した行為であり、商
為に属し、かつ虚偽宣伝を構成しているという 標権侵害と不正競争には当たらない旨の判決を
原告の主張に対し、最高人民法院は、被告が実 下した。
際に航空券販売代理業務に従事したか否かの判
本件は地域の特産に使用されている名称に対
断基準を航空券を発行したか否かに置き、予
約、発送、代金受取などの業務に従事する経営 する判断基準を示すものとなった。通用名称化
者を販売代理者と見なすことはできないと判断 された商標は普及性と規範性を備えていなけれ
した。携程公司のインターネットでの航空券予 ばならない。地域性を持つ商品の名称に対し
約サービス提供という新しいビジネスモデルの て、普及性を判断する場合、生産地域と関係者
合法性が認められ、ビジネスモデルのイノベー の知名度を基準とし、全国規模での普及性を基
準にしてはならない。規範性を判断する場合、
ションを保護した。
公衆の一般認識が明確であるか否かが基準とな
本件は、違法経営と民事権利の侵害との関 る。法院は、通用名称を理由に商標登録を抹消
係、虚偽宣伝行為の構成要素および具体的な判 する権利を持たないが、商標権利者に対し、他
断基準、多重訴訟の構成要素などの法律適用問 者の通用名称の使用を禁止する権利がないと判
題を明確にした。法院は、経営者が経営資格を 決することができる。
備えるか否かの合法性に係る判断は、法院が受
理するべき民事訴訟の範囲内になく、工商行政 7.「道道通」ナビゲーションマップ著作権侵害
管理機関により審査・監督されるべきであるこ 事件
とを明らかにした。
原告の北京長地万方公司は、自社で作成した
「道道通」ナビゲーションマップが、凱立徳公
5.「呉良材」商標権侵害と不当競争事件
司などにより盗作されたとして、著作権侵害で
原告の上海三聯公司は、「呉良材」登録商標 起訴を行った。被告は、原告の地図は行政部門
の権利者であり、「呉良材」ブランドの眼鏡は の許可を得ずに出版されているため、著作権の
長江デルタ地区で非常に高い知名度を誇ってお 保護を受けられないと主張した。広東省高級人
り、「中国の老舗」、「馳名商標」(日本の著 民法院は第二審で、原告の地図の発行は行政の
名商標に相当)の認定を受けている。ところ 審査手続きを経ていないが、それは出版物が行
が、蘇州呉良材眼鏡公司が、自社の製品とサー 政部門の関連監督規定に違反しているか否かの
ビスに「呉良材」、「蘇州呉良材」の文字を際 問題であり、そもそも独創性のある著作物は法
立たせて使用していた。法院は、被告が原告の 的保護が受けられるため、二つの問題に衝突は
「呉良材」商標の知名度が高いことを知った上 ないと判決した。さらに、地理情報のスクリー
で意図的に原告のブランドにタダ乗りをし、消 ニング、選定、表示に独創性があるため、ナビ
費者を誤認混同させたとして、商標権侵害およ ゲーションマップは地図著作物として保護され
び不正競争のかどで、被告に侵害行為の停止、 るべきであると判決が下された。
商号の変更、賠償金の支払いを命じた。
本件は、地図の出版に対する行政審査と著作
本件は、登録商標と企業商号の権利抵触に関 権保護の関係、電子地図の盗作認定、賠償金額
を命じるのが通常であるが、権利侵害品がすで
に華陽電業の発電所に取付けられており、さら
に運行している状況に鑑み、権利侵害の停止を
命じた場合、公益に直接大きな影響を与えるこ
とになるとして、法院は両被告に5000万人民元
の賠償金支払いのみを命じた(華陽電業に権利
侵害の停止は命じられていない)。また、特許
権終了まで原告にロイヤリティーを支払い続け
るよう命じた。
4
中国
知的財産権
速報
蘇州恒久、「専利疑惑」で創業ボード上場
無期限延期
3月19日創業ボード(中国版ナスダッ
ク)に上場予定の蘇州恒久広電科技股份有
限公司(以下「蘇州恒久」という)は、株
式募集説明書中の5件の「核心特許」が失
効したため、上場停止を命じらた。同社は
初の創業ボード上場に失敗した企業となっ
た。蘇州恒久の5件の「核心特許」は実用
新案1件と意匠権4件であり、上記5件の特
許はすべて特許年金を支払っていないため
に失効したと報道された。特許技術を拠り
所と自称するハイテク企業が上場の際に特
許技術を一件も持たないという状況に驚き
を隠せない。
朗科社、「優盤」登録商標取消
国家工商行政管理総局商標評審委員
会が2002年10月に朗科社の第1509740号
「優盤」商標登録の取消申請を受理して以
来、7年後の今年4月、「優盤」を商品の通
用名称と認定し、朗科社の「優盤」の商標
登録取消の裁定を下した。
中国商務部独占禁止局、米製薬会
社ファイザー社(Pfizer)に豚マイコ
プラズマ性肺炎ワクチンの中国事
業の売却を要求
世界最大手の製薬会社であるファイ
ザー社(Pfizer)は中国での豚マイコプラズ
マ性肺炎ワクチン事業をハルビン製薬集団
に売却した。非公式の情報によると、売却
額は5000万米ドルである。独占禁止局の
役人によると、ファイザー社はワイス社
(Wyeth)買収後、中国国内における豚マ
イコプラズマ性肺炎ワクチンの市場シェア
の半分を占めることとなるため、ファイザ
ー社の680億米ドルでのワイス社買収に対
する独占禁止審査で、中国商務部はワイス
社を買収する場合の条件として、ファイザ
ー社に中国での豚マイコプラズマ性肺炎ワ
クチン事業の売却を求めたとのことであ
る。これは中国商務部が2008年8月に独占
禁止法を実施して以来初めて外資企業によ
る集中条件をもって中国本土の事業売却を
要求した事例である。
2009年度十大知的財産権
侵害事件
の確定などに、指針をもたらした点で意義が 件に関連する法律の整備が期待されるが、特 判に行政最終判断権があり、当時すでに終局
ある。
に商業機密事件は特殊であるため、他の民事 的に裁定された係争商標に対して、2001年に
事件の証拠規則と異なる規則を確立すべきで 改正された商標法の新規定を理由に、すでに
8.江漢石油「コーンビット」商業機密事件
ある。
裁定された事件を再び審判開始することはで
江漢石油股份有限公司の元シニア・エンジ
きない。
ニアの幸発芳は、2001年に天津立林鉆頭有限 9.「采楽」商標権取消行政訴訟
公司に転職し、技術部長に就任した。後に江
強生公司(「ジョンソン&ジョンソン社」)
10.宝馬(BMW)vs. 世紀宝馬 著名商標
漢 石油は幸発 芳 が 天 津 立 林に 「 コ ー ン ビ ッ は、1998年と2000年の2回に渡り、商標評審委 訴訟事件
ト」の技術機密を違法に漏洩したとして、公 員会に仏山聖芳公司の「采楽CAILE」登録商
世界的に有名な自動車メーカーである
安に通報した。その結果、幸発芳には商業機 標の取消を申請したが共に棄却された。2002 BMW社が世紀宝馬服装有限公司などを商標専
密侵害罪で懲役6年と罰金5万人民元の刑事判 年、強生公司は3回目の当該登録商標取消を 用権侵害および不正当競争のかどで起訴し
決が下された。その後、江漢石油は天津立林 申請した。2005年、商標評審委員会は「采 た。世紀宝馬社は類似した商標をアパレル製
と幸発芳を共同被告として商業機密侵害で民 楽」商標の登録取消を裁定し、その後の行政 品に使用しているが、法院は、「宝馬」を著
事訴訟を提起した。第一審は江漢石油が勝訴 訴訟でも取消し決定を支持する旨の判決が下 名商標と認定し、原告の著名商標の市場での
し、両被告の権利侵害行為の停止と天津立林 された。しかし最高人民法院が再審の判決を 名声にタダ乗りをし、不当な利益を獲得した
による1000万人民元の賠償金の支払いを命じ 下し、原審と商標評審委員会の決定を棄却し として、被告に商標権侵害の判決を下した。
た。上訴審で、三者は調停協議に応じ、天津 て、当該登録商標の有効性を認めた。
また、原告の商標の知名度が高いことを知り
立林は江漢石油に1700万人民元を支払うこと
最高人民法院の判決が商標審判に「一事 ながら、被告は当該文字を自社の商号として
となった。
不再理」の原則を適用たのは明白である。改 登記し、商業目的で使用したため、不正競争
人員の流動が活発になるにつれ、「転職」に 正商標法発効前に行政終局裁定が下された商 に当たると判決を下した。本件は有名国外企
より引き起こされる商業機密侵害事件が増加 標係争に対する遡及効の有無、商標審判請求 業の著名商標と商号保護に関 する典型的な
する一途にある。。この種の事件では、いか に提出された新事実、新証拠、新事由の認定 判例である。この他、世紀宝馬社がその
にして権利侵害の証拠を収集するかが最大の についてなどの問題点に対し、本件は、改正 商標を利用して得た利益の計算は困難で
ポイントとなる。本件の成功要因は、まず刑 後商標法の正確な理解と適用、法による適切
あるため、法院は最高賠償金である50万
事事件として立件し、公安の力を借り有力な な商標係争案件処理を行うに当たり重要な指
人民元の支払いを被告に命じている。ま
証拠を集め、そこで得られた証拠を再び民事 針を示した。最高人民法院は以下の判決理由
た、本件の被告の従業員が、個人の銀行
訴訟で使ったところにある。中国の知的財産 を提示している。:強生公司による2回に及ぶ
権民事訴訟では、法院による証拠に対する要 審判請求では改正前の商標法の関連規定が引 口座を会社のために提供したとして、共
求が厳しく、権利侵害の証拠を提出する責任 用されており、当時主張可能であった関連法 同侵害者と認定された。これは、従業員
は完全に原告にあるが、必要な証拠収集手段 律事由と法的根拠が全て出尽くされていた。 が会社の侵害行為を知りながら協力した
が欠如している。権利侵害の事実と賠償に関 商標評審委員会は2回の終局裁定後、馳名商標 場合、会社と共同侵害を構成し、連帯賠
する証拠の収集が困難である場合、原告は行 (著名商標)を主な理由とした審判請求を再 償責任を負うことを示している。
政機関あるいは司法機関の力を借りて証拠を び受理し、裁定した。これは「一事不再理」
収集することができる。今後、知的財産権事 の原則に反する。改正前の商標法では商標審
彭凱、Margalit Faden
中国知的財産
権速報
知的財産権税関保護条例の改正
改正後の『中華人民共和国知的財産権
税関保護条例』を2010年4月1日より施行して
いる。新条例では、以下が改正されている。
①個人により携帯又は郵送をもって持ち込ま
れた権利侵害貨物が自用のための合理的数量
を超えている場合、没収の他に処罰が課され
る。②輸入された偽物商標の権利侵害に当た
る特徴を取り除けない場合、税関はこれを廃
棄しなければならない。③安易に商標を取り
除いて貨物を競売にかけてはならない。④知
的財産権権利者は保護の申請を撤回すること
ができる。⑤知的財産権権利者が法律規定に
基づいた税関登録の変更または抹消手続きを
行っておらず、第三者の合法的な輸出入に深
刻な影響を与えた場合、あるいは税関の法執
行に深刻な影響を与えた場合、税関総署は、
利害関係者の申し立てにより、または職権に
よりその税関登録を取消すことができる。
最高人民法院、商標授権・権利確定に関す
る行政事件についての指導的意見を公布
最高人民法院は2010年4月25日、『商標権
の付与・権利確定に関する行政事件の審理にお
ける若干問題についての意見』を公布した。商
標の顕著性の審査判断、馳名商標(著名商標)
の保護、代理人又は代表者による抜け駆け登
録、商品の類似および商標の類似の判断、既存
の権利の保護、登録商標が継続して3年間使用
されなかった場合の審査判断などに関する商標
権付与・権利確定の司法審査についての指導的
意見が出され、関連法律問題を明確にし、司法
基準の統一を図ることになった。
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