9 フラッシュ蒸気 第 9 章 フラッシュ蒸気 9-1 フラッシュ蒸気とは フラッシュ蒸気とは、圧力が降下した時に高温ドレンが再蒸発してできた蒸気に与えられた名 称である。普通の蒸気となんら違いはなく、生成の過程を説明するのに便利であるためにこの 名称が使われる。 フラッシュ蒸気を、漏れている生蒸気と区別することは難しい。フラッシュ蒸気は、多量の高 圧ドレンから一気に発生しない限り、雲のようになるか緩やかに渦を巻く傾向をもつ。生蒸気が 多量に漏れると、高圧ラインから現れるジェット流を形成するが、漏れ量が少ないと、 ちょうどフラ ッシュ蒸気のような蒸気のささやきが聞かれるだけである。少量の漏れとフラッシュ蒸気の違い をはっきりさせるためには、一緒に出て来るドレンをチェックする。生蒸気の漏れは、通常ごく少 量のドレンを伴うが、 フラッシュ蒸気の場合、多量のドレンを伴う。 (図 9. 1) フラッシュ蒸気は、正常に作動しているトラップの出口側でみられる少量の蒸気として発生 する。この蒸気の発生を抑える方法は2つある。第一に、高温ドレンは大気圧まで圧力を落とさ ずにボイラへ回収することが可能である。これによってエネルギーが節約され、背圧が考慮され ていれば、 プロセスにもほとんど影響を与えない。 図 9.1 高圧 高圧 低圧 低圧 フラッシュ蒸気 生蒸気 生蒸気 ドレン フラッシュ蒸気の発生 高圧 生蒸気の 多量漏れ 低圧 蒸気の噴射 生蒸気 生蒸気の 少量の漏れ ドレン無し 123 第 9 章 フラッシュ蒸気 第二の方法は、相当な量が冷却されるまでドレンを装置内に封じ込めておくことである。一般 に、温調型のトラップを用いることで行われる。 (図 9.2) これらのトラップは排水に蒸気が見当 たらないので、 もっとも効率的であると言う誤った認識をされている。 しかし、最大の熱交換をさ せるためにドレンを装置内に滞留させるということは、運転効率を落とすということを意味するか もしれない。 ドレンの滞留は、 また腐食を早めたり、 ウォーターハンマの原因になったりする。 図 9.2 ドレンが滞留し冷却 フロートタイプの スチームトラップ 温調トラップ フラッシュ蒸気 フラッシュ蒸気は 存在しない 124
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