WHITE PAPER CA のインフラストラクチャ管理ソリューションが引き出す

WHITE PAPER
CA のインフラストラクチャ管理ソリューションが引き出す
IT の潜在価値
Sponsored by: CA
入谷 光浩
July 2009
IDC Japan(株)〒 102-0073 東京都千代田区九段北 1-13-5 Tel 03-3556-4761 Fax: 03-3556-4771 www.idcjapan.co.jp
IDC の見解
企業の IT インフラは肥大化、複雑化が進み、運用管理の効率が低下している。この
ような状況は、IT インフラに多くのダウンタイムを引き起こし、多大な損失とリス
クをもたらすことになるであろう。企業は、最適なインフラストラクチャ管理ソリ
ューションを導入し、効率的な運用管理を行うことで、ダウンタイムを削減し、IT
資産の ROI(Return on Investment:投資対効果)を最大化することが必要であると
IDC では考える。
本ホワイトペーパーの重要なポイントを以下に示す。
企業の IT 管理者は、IT インフラの管理に対する負担が増しており、それに伴い
運用管理コストも増大している。
効率的な IT インフラの管理を行うためにはダウンタイムの削減が必要不可欠と
なるが、現状多くの企業において十分な対策がなされていない。
ダウンタイムの削減を実現するためには、IT インフラ全体の可視化とプロアク
ティブな監視を行い、問題が発生した場合の原因特定と影響に対する分析を迅
速化することが必須である。
近年のシステム/ネットワーク管理ソフトウェア市場の動向において、パフォ
ーマンス管理などダウンタイムの削減を意識したソフトウェアへの投資が増加
しつつある。
CA eHealth の評価すべき点は、障害やパフォーマンスの低下を監視するだけでは
なく、管理者が IT インフラをプロアクティブに運用できる点にある。
CA SPECTRUM はインテリジェンスな IT インフラの運用を実現し、高度な分析
機能やサービス管理機能によってダウンタイムコストを削減し、IT インフラの
ROI の向上を図ることができる。
CA の EITM(Enterprise IT Management)ビジョンに基づく統合的なソリューショ
ンは、全社レベルでの最適化を実現し、IT の潜在価値を引き出す可能性を有し
ている。
国内企業における IT インフラストラクチャの
実態と課題
企業のビジネスはますますスピードと変化が求められており、IT はそれに対応する
ための重要な役割を担っている。企業のさまざまな業務が IT 化され、経営活動は IT
システムに強く依存するようになっている。これまでに企業は IT システムを支える
IT インフラを積極的に構築してきた。そのような中、IT のテクノロジーは大きく変
化し、メインフレームからオープン化へと時代は移り変わり、集中型から分散型の
IT インフラを形成するようになっていった。企業内のサーバーやストレージ、ネッ
トワーク機器は増大し、それらのハードウェア上では多種多様なアプリケーション
が稼働し、それらを結ぶネットワークは複雑な構成となっていった。また、急速に
導入が進んでいる仮想化技術によって、物理環境と仮想環境が混在した IT インフラ
となり、さらに複雑さを増す傾向も出始めている。その結果として、多くの企業の
IT インフラは肥大化、複雑化という問題を抱えてしまった。IT 管理者にとって、こ
うした IT インフラが抱える問題が深刻化している。
このような問題を抱えた IT インフラを運用し続けることは、企業にとって大きなリ
スクを与えることになる。たとえば、IT インフラで最も恐れなければならないのは
予期せぬシステムダウンである。IT インフラ上で提供されている IT サービスが突然
ストップしたことによる損失は計り知れないものがある。新聞の一面記事となって、
社会から大きな非難を浴びるケースも少なくない。時には経営者が責任を取ること
もある。このような場合で最も多くそして深刻なことは、「すぐに原因が分からな
い」という点である。したがって、問題を迅速に解決することができず、被害は拡
大の一途をたどることになる。結局、このような状況を招いたのは、肥大化、複雑
化した IT インフラをそのまま放置していたことにある。どの箇所で、どのプロセス
で、どのような問題が発生したかを把握できず、すべての対応が後手に回り、結果
として大きな損失を生むことになってしまう。
次節から、IDC の調査データを基に IT インフラの運用で抱えている問題について考
察していく。
負担増す IT インフラの運用管理
IDC では 2009 年 3 月に、国内企業(または組織)の IT 管理者に対して「インフラス
トラクチャソフトウェア/ミドルウェアに関する利用実態調査」を実施した。Figure
1 は、その調査の中から「運用管理に関する負担の増減傾向」について、1,000 人以上
の従業員を有する企業 358 社について集計した結果である。回答企業の業種は、金融、
製造、流通、サービス、官公庁/自治体、教育など多岐に渡っている。
Figure 1 は、自社の IT システムの運用管理に対する負担の度合いが年々どのように変
化しているかについて質問した結果である。その結果、「非常に増加している」が
15.4%、「増加している」が 43.3%となり、増加に対する回答が 58.7%という結果と
なった。反対に「減少している」が 8.1%、「非常に減少している」が 2.0%と、減少
に対する回答は 10.1%に留まっている。IT 管理者にとって、IT インフラの運用管理
に対する負担が年々重くのしかかっていることは明らかである。
2
#201353
©2009 IDC Japan
FIGURE 1
運用管理に対する負担の増減傾向
分からない (4.5%)
非常に減少している
(2.0%)
非常に増加している
(15.4%)
減少している
(8.1%)
変わらない (26.8%)
増加している
(43.3%)
n=358
Note: 従業員数 1,000 人以上の企業または組織を対象。
Source: IDC Japan, July 2009
深刻化する運用管理コストの問題
Figure 2 は、運用管理においてどのような問題を抱えているかについて質問した結果
である。最も回答が多かったのは「運用管理にかかるコストが大きい」で 39.7%とな
った。2008 年 9 月の米リーマン・ブラザーズの破綻から始まった世界的な金融危機に
よって、国内の経済情勢は悪化し企業の業績に大きな打撃を与えている。それに伴
い企業の設備投資は縮小に動き、IT に対する投資も例外ではない。IT 管理者は経営
層からの IT コスト削減要求が強まっている状況にあり、特に調査結果で示されてい
る運用管理コストの削減は最も解決しなければならない優先課題の 1 つとなっている。
運用管理コストが増大している背景には、IT インフラの管理に対する効率性の低下
があると考えられる。Figure 2 において、運用管理者の人員不足が 32.7%で 2 番目に
多い問題として挙がっているが、これは肥大化していく IT インフラの管理について
いけていないという現状がうかがえる。本来であれば運用管理ソフトウェアによっ
て自動化を図るべきであるが、自動化ができていないという問題も 25.7%で同じく上
位に挙がっている。この結果から明らかなことは、多くの企業で効率的な管理が実
現できておらず、その結果がコストに跳ね返ってしまっている点である。言い換え
ると、運用管理コストの削減を実現するためには、IT インフラ管理の自動化と最適
化を図ることが必要となってくる。
©2009 IDC Japan
#201353
3
FIGURE 2
運用管理で抱えている問題
運用管理にかかるコストが大きい
39.7
運用管理を担当する人員が不足している
32.7
運用プロセスが標準化されていない
27.9
運用管理の自動化ができていない
25.7
障害の原因特定や影響分析が迅速にできない
24.6
内部統制への対応ができていない
24.6
システムの全体構成が把握できていない
23.7
運用管理ソフトウェアを効果的に使えていない
22.3
運用ミスが多くなっている
18.7
サービスレベルが安定していない
18.2
事業継続性への対応ができていない
18.2
グリーンITに対する運用管理での対応ができていない
16.8
仮想化した環境の管理が難しい
12.0
分からない
3.9
0
10
20
30
40
50
(%)
n = 358
Notes:
• 複数回答。
• 従業員数 1,000 人以上の企業または組織を対象。
Source: IDC Japan, July 2009
不十分なダウンタイム削減対策
企業は IT の活用によって、インターネットによる 24 時間 365 日のサービス提供が可
能となり、国や地域を越えてビジネスを展開できるようになった。それを支えてい
る IT システムは常時稼働が求められ、いったん停止してしまうと大きな損失が発生
する。サービスの収益が減少することは言うまでもないが、顧客や株主、ビジネス
パートナーなどステークスホルダーからの信頼も失ってしなうことになりかねない。
特に企業にとって計り知れない損失を出すことにもつながってしまう。
IT 管理者を悩ませている大きな問題が、システムや IT サービスが停止している時間、
すなわちダウンタイムの増加である。先に述べたように、システムのダウンタイム
が多くなればなるほど、その間の損失額も膨らんでいくことになる。すなわち、IT
を基盤とした現在の企業ビジネスでは、ダウンタイムが企業の利益に直接影響を及
ぼしているといえる。IT 管理者はダウンタイムの削減を図り、企業のビジネス機会
を最大化することが求められるようになっている。
4
#201353
©2009 IDC Japan
ダウンタイムには、システムのメンテナンスなどによって IT 管理者が計画的に起こ
すものと、突発的な障害によって計画外に起こるものとがある。言うまでもないが、
大きな損失を生むのは後者であり、ダウンタイムを削減するためには突発的に発生
するシステム障害への対応が極めて重要であり、かつ難しい。Figure 2 の運用管理で
抱えている問題において、「障害の原因特定や影響分析が迅速にできない」という
回答が 24.6%となっていることからも分かるように、現状では障害への対策が十分に
行われているとは言えない状況にある。
運用管理コストの削減は非常に難しい課題であり、どの部分のコストを削減してい
くか、IT 管理者にとって壮大なテーマである。ダウンタイムを減らすことは、運用
管理コスト削減の中で大きな役割を果たすと IDC では考えている。ダウンタイムを
削減するためには、IT インフラの自動化と最適化を図り、可用性を向上させること
が必要不可欠となるからである。すなわちこれは、前述した運用管理コストを削減
するための手段と何ら変わりはないものである。
次章では、肥大化、複雑化した IT インフラに対し、ダウンタイムの削減という課題
を解決するための最適なソリューションについて、現状の運用管理市場の動向を交
えながら考察していく。
課題解決に向けた IT インフラストラクチャ管理
ダウンタイムの削減に必要なソリューション
Figure 3 は、IT 管理者に対し、現状において対策が必要な運用管理の課題について調
査した結果である。ここでは対策を優先する課題を 5 つまで回答している。この調査
結果から注目すべきポイントは、回答率が 43.0%で 2 番目に回答が多い「システム全
体の可視化」、そして回答率が 38.5%となった「障害の原因特定/影響分析の迅速
化」である。両者はダウンタイムの削減のために、特に重要なポイントとなる。こ
れらが上位の回答に挙がっているということは、多くの企業がダウンタイムの削減
を見据えて検討しているということが考えられる。この 2 点について、詳細に分析し
ていく。
©2009 IDC Japan
#201353
5
FIGURE 3
対策が必要な運用管理の課題
運用管理スキルの向上/人材育成
49.2
システム全体の可視化
43.0
運用管理人員の削減/再配置
40.2
サービスレベルの向上
39.4
障害の原因特定/
影響分析の迅速化
38.5
37.2
ID/アクセス管理
ソフトウェアによる運用の自動化
33.8
ログの管理/監査証跡
33.0
自社の業務知識に対する理解
33.0
事業継続性の強化
30.7
他部門(開発部門や業務部門)との連携
28.5
ガイドラインやフレームワークに基づいた
運用プロセスの標準化
26.0
仮想環境の管理
21.8
グリーンITへの対応
21.8
アウトソース/マネージド
サービスの利用
21.2
その他
2.8
0
10
20
30
(%)
40
50
60
n = 358
Notes:
• 優先課題 5 つを回答。
• 従業員数 1,000 人以上の企業または組織を対象。
Source: IDC Japan, July 2009
IT インフラ全体の可視化と監視
多くの企業は、ハードウェアやアプリケーションが増殖し IT インフラが複雑になり、
全体の構成の把握がより難しくなっている。ダウンタイムの削減を実現するために
は、まずシステム全体の可視化を行うことが基本となる。これによって、障害が発
生している箇所の迅速な把握が実現できるようになる。また、事前にパフォーマン
スが劣化している箇所を特定しておくことで、障害を未然に防ぐこともできる。
可視化を行っていくに当たり、いくつか重要となるポイントを以下に示す。
さまざまなベンダーのサーバーやネットワーク機器、アプリケーションの情報
とそれらの構成を一元的に可視化できること。
仮想化技術の導入が急速に進んでいる。仮想環境と物理環境が混在したインフ
ラの構成について、2 つの環境を切り分けながら一元的に管理できること。
6
#201353
©2009 IDC Japan
発生した障害、今後障害に発展する可能性があるパフォーマンスの劣化を早期
に検知し、IT 管理者に素早く通知できること。
IT 管理の実担当者だけではなく、上層部などにも理解できるレポーティングが
できること。これによって、意思決定の迅速化を図ることができる。
障害の原因特定/影響分析
ダウンタイムの削減で特に重要なのは、障害が発生してから復旧までの時間をいか
に短縮するかということである。この時間に比例して企業の損失額は増加していく
ことになる。まずは素早く障害の原因を突き止め、すぐに復旧作業に移ることが求
められる。そして、障害による影響がどこまで及ぶか、どのサービスに、どの顧客
に影響が出るかを分析し、それに向けた対策を実施することで 2 次的、3 次的な損害
を最小限に食い止めることができる。
障害の原因特定/影響分析を行っていくに当たり、いくつか重要となるポイントを
以下に示す。
障害の原因と影響を正確に、かつ根拠のある分析ができること。分析力がなけ
ればダウンタイムを削減することは不可能であり、非常に重要な要素である。
さまざまなベンダーのサーバーやネットワーク機器、アプリケーションに対す
る影響の分析ができること。
障害の内容や影響を分析した結果を、素早く分かりやすい形で IT 管理者に示す
こと。
IT システムだけでなく、サービスや顧客に対する影響を把握できること。
国内システム/ネットワーク管理ソフトウェア市場の変化
こうした IT インフラストラクチャ管理ソリューションを実現するためには、システ
ム/ネットワーク管理ソフトウェアを導入することが必須となってくる。ソフトウ
ェアを活用して自動化を行い、Figure 3 でも示されている最大の課題、「管理者のス
キル不足」をカバーしていくことで運用管理の効率化を図っていかなくては、課題
を解決することは困難であろう。
国内のシステム/ネットワーク管理ソフトウェア市場は、2007 年に 2,606 億円で前年
比成長率 11.7%となり、2008 年は景気後退の影響を受けながらも 2,774 億円で前年比
成長率 6.4%になったと IDC では推定している。市場は着実に成長を続けているとい
える。Figure 4 は、システム/ネットワーク管理ソフトウェア市場を構成している管
理機能別市場の前年比売上額成長率を 2006 年から 2013 年まで示したものである。
2007 年からパフォーマンス管理ソフトウェアと変更/構成管理ソフトウェアの市場
成長率が他の管理機能に比べて高くなっていることが分かる。パフォーマンス管理
ソフトウェアには、障害の監視と分析、ハードウェアやアプリケーションのパフォ
ーマンス監視、サービスレベル管理などが含まれている。また、変更/構成管理ソ
フトウェアにはシステムを可視化する構成管理や IT 資産管理が含まれている。
景気後退の影響を受け、全体的に 2009 年以降の成長率は鈍化する傾向にある。その
ような中にあって、パフォーマンス管理ソフトウェアと変更/構成管理ソフトウェ
アがジョブスケジューリングやイベントオートメーションに比べて高い成長率を維
持するということは、ユーザー企業の限られた投資予算の中で、特に重点的に投資
するソフトウェアとして見られていると考えられる。
©2009 IDC Japan
#201353
7
国内のシステム/ネットワーク管理ソフトウェア市場は、従来ジョブスケジューリ
ングツールやイベントオートメーションツールが主力であった。しかし、近年では
ダウンタイムの削減に対する意識が強まってきており、パフォーマンス管理ソフト
ウェアと変更/構成管理ソフトウェアに対する投資が多くなってきている傾向が顕
著となっている。
IDC では、国内システム/ネットワーク管理ソフトウェア市場において、今後もこの
ような傾向が続くとみており、2009 年以降も他の管理機能市場よりも高い成長を予
測している。現在、IT インフラに対する管理は転換期を迎えており、ダウンタイム
の削減という課題を解決するために、国内でも多くの企業が本格的に動き始めたと
いえる。
FIGURE 4
国内システム/ネットワーク管理ソフトウェア市場 管理機能別前年比売
上額成長率予測、2006 年~2013 年
16
14
12
(%)
10
8
6
4
2
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
パフォーマンス管理
変更/構成管理
ジョブスケジューリング
イベントオートメーション
Source: IDC Japan, July 2009
8
#201353
©2009 IDC Japan
CA がもたらすインフラストラクチャ管理ソリューシ
ョンの価値
世界有数のシステム管理ソフトウェアのリーディングカンパ
ニー
CA はシステム管理ソフトウェアの有力ベンダーとして世界のソフトウェア市場を牽
引してきた。メインフレームからオープン系システム、サーバーからクライアント、
さまざまなベンダーのハードウェアやソフトウェア製品など、企業のあらゆる IT イ
ンフラを統合的に管理できる数少ないベンダーの 1 つである。IDC では、2008 年 9 月
に発表したレポートの中(注 1)で、100 社以上参入している 2007 年の世界システム
管理ソフトウェア市場において、CA が 4 位にランキングされていることを報告して
いる。
CA は 2005 年に新たなビジョン EITM(Enterprise IT Management)を発表した。これ
は、企業全体の IT 管理を統合し簡略化することで、IT 資産を効率的に使い業績の向
上に直結させるものである。この EITM に従って、これまでに新たに 26 の新バージ
ョンのソフトウェアが開発され、85 を超える製品のリリースを行っている。また、
これまでに 10 億ドル以上の戦略的買収を実施し、製品ポートフォリオの強化と拡大
に努めている。
IDC が 2008 年 12 月に発表したホワイトペーパー(注 2)において、CA の EITM ソリ
ューションを導入している企業 8 社は、3 年間の平均 ROI(投資対効果)で 433%を
達成したと報告されている。このように EITM はすでに実績を上げており、企業に大
きな価値をもたらしている。
(注 1)『Worldwide System Management Software 2007 Vendor Shares (IDC #214288, September
2008) 』
(注 2)『Improving IT Economics and Gaining Business Value with CA’s Enterprise IT Management
Software: An ROI Study (IDC #214817, November 2008) 』
Lean IT:IT の潜在価値を引き出す、スリムな IT へ
2008 年の金融危機以降、ビジネス環境は非常に厳しい時を迎えている。企業はこの
環境を生き抜くため、コストの削減によって経営改善を図ると同時に、顧客の満足
度を上げ競争力を強化しなければならない。すなわち IT 投資(コスト)削減とサー
ビスレベルの向上という、一見矛盾した課題を同時に解決していくことが求められ
ている。CA はこうした状況にある多くの企業に対して、Lean IT を提案している。
Lean(リーン)は「引き締まった」「ぜい肉がない」という意味で使われる。Lean
IT は、さまざまな理由からぜい肉がついてしまった、すなわち肥大化、複雑化して
しまった企業の IT 資源をスリム化し、筋肉質な IT にしようとするものである。
Lean を使った言葉としては、トヨタ自動車を始めとする日本の自動車産業の生産方
式を米国のマサチューセッツ工科大学が研究して体系化したリーン生産方式が知ら
れている。より多くのことを少ない資源で達成するため、徹底的に無駄を排除し、
全体最適を追求した生産方式である。これは企業の IT にとっては、まさに今直面し
ている課題を解決するために必要とされている考え方ではないだろうか。Lean IT は
このような考え方を取り入れ、さまざまな理由からぜい肉がついてしまった既存の
プロセスや IT 資源をスリム化(無駄を排除)し、全社規模での最適化を図るもので
ある。CA はこの Lean IT ソリューションを展開することで、企業がこの厳しい環境
©2009 IDC Japan
#201353
9
の中を勝ち抜き、次の成長シナリオに向けて IT の潜在価値を引き出そうとしている。
この Lean IT は EITM のソリューションによって実現されるものである。
Lean IT の全体像を Figure 5 に示す。インフラストラクチャ管理を筆頭に、大きく 6 つ
の分類で構成されている CA のソフトウェア製品群が、顧客(お客様)、事業、IT
(の活用)、インフラストラクチャに向け、価値の最大化とコストの最小化を実現
していく。これによって、企業は IT の ROI を最大限に引き出すことが可能となる。
FIGURE 5
CA が提案する Lean IT
お客様
インフラストラクチャ
Operations
運用管理
Network
ネットワーク
メインフレーム 2.0
セキュリティ マネジメント
インフラストラクチャ マネジメント
インフラストラクチャ マネジメント
CIO
IT部門長、CIO
PMO
プロジェクトマネジメントオフィス PMO
CISO
技術サポート
Support
戦略的ソーシング
Strategic Sourcing
プロジェクト&ポートフォリオ マネジメント
IT
サービス マネジメント
事業
Executives
経営
Staff
社員
Compliance
コンプライアンス
アプリケーションパフォーマンス マネジメント
潜在価値
スリム化
Source: CA, 2009
Lean IT におけるインフラストラクチャ管理は、これまで本レポートで述べてきた IT
インフラの課題を解決するためのソリューションとなる。これは、IT インフラに関
連するダウンタイムの削減を図ることでコストを最小限に抑え、顧客に対する満足
度を最大限にするものである。IDC によるホワイトペーパー(注 2)によれば、CA
の EITM ソリューションを導入した 8 社のうち 6 社がインフラストラクチャ管理ソリ
ューションを導入しており、以下に示すような多くの効果が報告されている。
10
#201353
©2009 IDC Japan
サービスレベルの向上、サービスデリバリーコストの低減、システムの可用性
の向上によって、ダウンタイムが 30%削減された。
トラブルシュートのスピードが向上し、インフラストラクチャ障害からの平均
復旧時間が 20%短縮した。
サービスレベルの低下を検出し、障害発生を予測できるようになったため、効
果的な事前対策を講じることができるようになった結果、ヘルプデスクのコー
ル数が 40%減少した。
帯域幅のキャパシティやネットワークのトポロジーを正確に把握することが可
能となった結果、帯域幅とネットワークに関連するコストが 50%削減された。
IT インフラを診断する CA eHealth
イ ン フ ラ ス ト ラ ク チ ャ 管 理 ソ リ ュ ー シ ョ ン を 構 成 す る 重 要 な 製 品 で あ る 「 CA
eHealth」と「CA SPECTRUM」について、詳細に考察する。
CA eHealth は IT インフラを構成するサーバー、ネットワーク機器、アプリケーショ
ンのパフォーマンスと障害を統合的に監視するソフトウェアである。その名の通り、
人間が定期的に健康診断を受け健康状態を良好に保つのと同じく、IT インフラを健
康診断し常に最適な状態を維持するためのソフトウェアと考えてよい。現状の悪い
箇所と、今後悪くなりそうな箇所を特定し、健康診断書のようなレポーティングを
受けることができる。
CA eHealth の特徴を以下に示す。
障害箇所特定の迅速化:CA eHealth は、インフラで発生した障害および今後障害
に発展する可能性があるパフォーマンスの低下を早期に検知し、その内容を管
理者へ自動通知する。管理者は、発生したシステムに関するレポーティングを
確認し、迅速に原因究明を行い、ダウンタイムを削減することが可能となる。
高度な閾値管理:CA eHealth では、柔軟な閾値管理を実現できる。日々の運用を
学習し閾値の上限と下限を動的に変動させ、普段と異なる動きをした場合を瞬
時に把握することが可能となる。したがって、単純に閾値を超えたらアラート
を出すのではなく、通常と異なる状態を管理者にアラート通知することが可能
となる。
投資効果の最適化:CA eHealth の重要な特徴の 1 つとして、キャパシティプラン
ニング機能がある。これは過去のビジネス要件に基づくシステムリソースの利
用状況を元に将来のビジネス要件を考慮し、各リソースの増設が必要な時期を
予測するというような、システムリソースのキャパシティプランニングを実現
する。これによって、管理者はサービスレベルを低下させることなく、将来の
最適な投資をすることができる。
容易な診断:CA eHealth では、さまざまな分析レポートを簡単に作成することが
でき、報告書作成にかかる手間などを軽減できる。また、ドリルダウンレポー
トによって関連レポートを追跡していくことで、問題の把握がしやすい。また、
さまざまな角度から分析を行うことで、普段は気づかない潜在的な問題にも気
づくことができるという利点もある。
スケーラビリティ:CA eHealth で監視できる規模は、数デバイスから数万デバイ
スにも及び、グローバルに展開する企業に十分対応できる。サポートするデバ
イスは 1,000 種類以上となっており、さらに、新たなデバイスをサポートするた
めのデバイス認定を随時実施している。
©2009 IDC Japan
#201353
11
このように CA eHealth は多くの特徴があるが、最も評価すべき点としては、障害や
パフォーマンスの低下を知らせるだけではなく、それに対して管理者がどのように
対処すべきかの判断を高度な分析やレポーティングでサポートしている点にある。
管理者のプロアクティブな対応こそが、ダウンタイムの削減に大きな効果をもたら
すと IDC では考えている。
高度な分析力で問題を解決する CA SPECTRUM
CA SPECTRUM はインフラの問題を検出し、その根本原因分析やインパクト分析を自
動的に行い、修正措置を提示するインテリジェントなソフトウェアである。特許を
取得している高度な分析能力が、インフラのプロアクティブな管理を可能にしてい
る。サーバーだけでなく、ネットワークのレイヤー2 およびレイヤー3 の管理をサポ
ートし、さらには LAN、WAN、無線/有線、物理/仮想ネットワーク、これらによ
って提供されるテクノロジーと、VPN、QoS などの IP サービスが含まれる。
CA SPECTRUM の特徴を以下に示す。
視覚的な障害把握:CA SPECTRUM では、直感的な Java ベースの UI(ユーザー
インターフェース)によって、1 画面で L2、L3 レベルでのトポロジーマップが
示され、障害箇所を視覚的に把握できる。さらに、ネットワーク機器やサーバ
ーなど各コンポーネントの詳細情報もワンクリックで表示できる。これによっ
て管理者は複雑なネットワーク構成を即座に理解することが可能となる。
高度な分析力:CA SPECTRUM は特許取得技術である高度な根本原因分析機能を
備えている。さまざまなネットワーク要素およびテクノロジーの関連性をモデ
リングし、問題の帰納的で根拠のある分析を実現する。管理者には、発生した
問題の現象、推定される原因、推奨される対策が示され、スムーズに復旧作業
に移ることができる。
IT 資産の把握:CA SPECTRUM は資産レポートで所有している IT 資産を把握す
ることができる。ここでは、サーバーやルーターなど機器種別に分類して表示
される。また、機器のファームウェアのバージョンを確認することができ、フ
ァームウェアのバージョンアップやセキュリティ対策の検討に利用できる。
構成情報の管理:CA SPECTRUM はネットワーク機器の構成情報の管理を行い、
構成情報の監視と履歴管理を行うことができる。これによって、ネットワーク
で障害の原因となりやすい、構成情報の変更による障害を即時に把握し、対応
を行うことができる。
障害の影響度を把握:CA SPECTRUM では、インフラの状況を IT サービスとし
て捉え、顧客、ビジネスサービス、SLA の視点で、IT サービスの稼働実績をダ
ッシュボードで示すことができる。これによって、問題が発生した場合のビジ
ネスへの影響を、管理者だけではなく経営層もすぐに把握することが可能とな
る。
テクノロジーへの追従: CA SPECTRUM は VLAN、VPN、QoS、マルチキャスト、
MPLS などの管理、また、IPv6 をサポートしており、日々進化するテクノロジー
へ追従している。これによって、企業は新たなビジネスの実現やサービスレベ
ルの向上のために新たなテクノロジーを導入し、さらに、インフラ管理者はそ
のテクノロジーの管理が可能となる。
スケーラビリティ:CA SPECTRUM で監視できる規模は、数デバイスから数千デ
バイスに及び、さらに分散構成によって、数十万デバイスの監視が可能である。
グローバルに展開する企業に十分対応できる。サポートするデバイスは 1,000 種
12
#201353
©2009 IDC Japan
類以上となっており、さらに、新たなデバイスをサポートするためのデバイス
認定を随時実施している。
CA eHealth との連携:CA SPECTRUM は CA eHealth とのシームレスな連携によ
って、インフラの PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルでの管理を実現し、さ
らなるインフラのダウンタイムの削減、可用性の向上を可能とする。
以上のような CA SPECTRUM の多くの特徴を総合すると、インフラの可視化や障害
を知らせるだけではなく、高度な分析機能やサービス管理機能によって、企業にイ
ンテリジェンスな IT インフラの運用をもたらすことができるといえる。これによっ
て、ダウンタイムや運用のコストを大幅に削減し、IT インフラの高い ROI を実現で
きるようになるであろう。
CA がもたらす価値
CA は IT インフラそのものの管理だけではなく、IT インフラを活用したサービス、
さらにその先にある顧客を含め、企業全体を統合的に管理しビジネスの向上に直結
させるソフトウェア製品を提供している。これによって、企業は全社レベルでの最
適化を実現し、IT の潜在価値を引き出すことができると IDC では考えている。本レ
ポートで考察した CA eHealth と CA SPECTRUM は、まさにそれらを代表する製品で
あるといえるだろう。
CA が提供するさまざまなソリューションは、これまで培ってきた豊富な IT 管理ソリ
ューションの実績とノウハウに裏付けされている。以下に CA の優位性を挙げる。
豊富な実績:CA はソフトウェアベンダーとして長い歴史を持ち、日本を含め世
界中に多くの顧客を持つ。世界で 150 か所以上の拠点を持ち、1 万 4,500 人以上
の CA スタッフと多くのパートナーが顧客をサポートしている。顧客の多くが大
規模でミッションクリティカルなデータセンターを運用しており、高い技術と
厳しい要求下での実績が豊富である。
強力な製品ポートフォリオ:CA は IT インフラ管理を始め、アプリケーション管
理、データベース管理、サービス管理、プロジェクト/ポートフォリオ管理、
ストレージ管理、セキュリティ管理など、さまざまな管理分野に対して製品を
提供しており、それぞれ高いシェアを保有している。
マルチベンダー/プラットフォーム対応:IBM や HP、富士通など大手の IT 管
理ソフトウェアベンダーがサーバー製品やストレージ製品を自社で保有してい
る中にあって、CA は独立系ベンダーとして、マルチベンダー、マルチプラット
フォームを基本としている。したがって、さまざまなベンダーの IT 資産を統合
的に管理することを可能とし、IBM メインフレームから Windows クライアント
まで柔軟に対応できる。
EITM の提唱によって新たな挑戦に歩み出している CA は、今後も企業に多くの価値
をもたらしていくであろう。
©2009 IDC Japan
#201353
13
結論
本レポートの結びとして、国内のインフラストラクチャ管理ソリューションビジネ
スにおける CA のビジネス機会と課題、ならびにユーザー企業への提言を示す。
CA のビジネス機会と課題
ビジネス機会
ユーザー調査結果や国内のシステム/ネットワーク管理市場動向を見ても分か
るように、国内のユーザー企業はパフォーマンス管理を意識しダウンタイムの
削減に向けた取り組みを始めている。CA のインフラストラクチャ管理ソリュー
ションは、この市場の流れとユーザーのニーズに合致しており、今後のビジネ
スの大きな成長が期待できる。
現在インフラ管理で多くの問題を抱えているユーザーは、大規模なデータセン
ターを保有している企業において特に多い。これまでにメインフレーム向けの
ビジネスで多くの実績を持つ CA は、大規模ユーザーに対する十分なサポート力
とコンサルティング力が備わっており、今後多くの顧客から信頼を獲得するこ
とができると考えられる。
課題
プロジェクトが大型化する傾向にあるインフラストラクチャ管理ソリューショ
ンを導入する際は、ユーザー企業に対して事前アセスメントが重要となる。特
にコスト要求が厳しい景気後退期には、導入後の ROI を明確に提示することが
重要となる。CA には、IT 管理者だけではなく、導入の意思決定者となる経営層
が理解しやすい計画とその効果を示すことが求められる。そのためには、自社
のコンサルティング力とビジネスパートナーとの連携を強化していくことが必
要である。
ユーザー企業への提言
多くの IT 管理者には、肥大化、複雑化した IT インフラの運用管理に対する負担が重
くのしかかっている。このような状況は企業にとって大きなリスクであり、今後多
大な損失が生まれる可能性がある。それは IT だけに留まらず、IT で生み出されてい
るサービス、その先にある顧客に対して影響が出てしまい、企業の信頼を損なって
しまうと言っても過言ではない。その一方で、厳しい経済情勢の中にあって IT イン
フラを刷新できるような環境にはなく、運用管理を含めてさらなるコストの削減が
迫られている。
このような課題を解決するために、企業は現在所有している IT インフラをより効率
的に管理することが重要となる。そのためには最適なインフラストラクチャ管理ソ
リューションの選択と活用が有効であると IDC では考える。以下に提言を示す。
ビジネスへの影響を可視化:ビジネスの基盤となる IT インフラを正確に把握で
きていないと、ビジネスへ影響を及ぼすミッションクリティカルな障害への迅
速な対応や判断ができない。まずは全体の構成を簡略的に捉え、現在どの箇所
に問題があるか、もしくは今後問題になりそうな箇所を常に把握しておくこと
が重要である。すなわち、IT 管理者は IT インフラの健康状態を常にチェックし、
健康状態を保っておかなければならない。
14
#201353
©2009 IDC Japan
投資効果の最適化:ROI の向上を図るためには、将来のビジネス環境の変化に合
わせ、IT インフラに対して常に最適な投資を行っていく必要がある。そのため
には、キャパシティの予測の精度を上げていかなければならない。
多角的な分析:発生した問題に対してさまざまな角度から分析を行うことで、
表面的には把握できない潜在的な問題や 2 次的、3 次的な問題を発見し、未然に
防ぐことで、ビジネス機会を常に最大化しておくことが必要である。
©2009 IDC Japan
#201353
15
Copyright Notice
本レポートは、IDC の製品として提供されています。本レポートおよびサービスの詳
細は、IDC Japan 株式会社セールス(Tel:03-3556-4761、[email protected])まで
お問い合わせ下さい。また、本書に掲載される「Source: IDC Japan」および「Source:
IDC」と出典の明示された Figure や Table の著作権は IDC が留保します。
Copyright 2009 IDC Japan 無断複製を禁じます。
16
#201353
©2009 IDC Japan