戦争と日本宗教の軋轢の彼方へ――『東アジアの終戦記念日』

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「宗教の社会貢献活動」研究プロジェクト第5回研究会
2007,7,29 大正大学
戦争と日本宗教の軋轢の彼方へ
―『東アジアの終戦記念日』
(ちくま新書 2007,7)より
濱田陽(帝京大学)
1宗教の社会貢献活動と社会状況をめぐる四類型
「宗教の社会貢献活動と社会状況」観念図
社会の状態
安定的社会
宗教と社会の関係
適応・受容
Ⅰ宗教の社会貢献活動(狭義)
葛藤
Ⅱ「カルト」「宗教的過激主義」
「非常時」社会1
Ⅲ国策協力
Ⅳ社会批判
Ⅱとの関係における問い(櫻井)
・宗教の社会問題に取り組む活動が評価されるための、社会的・文化的条件は何か?
・閉鎖的にならずに社会に開かれていくための、宗教側の条件は何か?
Ⅲ、Ⅳとの関係における問い(濱田による追加)
・ⅢやⅣあるいはⅢとⅣの狭間で揺れる事例について、社会貢献活動の意義を見出す基準
をどこに置くべきか?「非常時」社会における、宗教の社会貢献活動とは何か?
国家が十分果たし得ない宗教の教育・社会福祉的機能への期待 ⇒Ⅲ
ex.賀川豊彦と満州基督教開拓村
・何を対象とした、どの領域における活動を宗教の社会貢献活動と呼ぶのか?
・戦中の国策協力は、宗教の社会貢献活動に入るのか?
アメリカなどの戦勝国と日本との違いは?
⇒20世紀米国の社会関係資本(Social Capital)を活性化させた原因は、皮肉にも戦争!
「まとめよう。二〇世紀後半の三分の一を通じた米国における市民参加の低下はその多く
が、著しく市民的な世代が、コミュニティ生活への組み込まれ方の少ない数世代(その子
や孫)によって置き換わったことに起因する。この急激な世代的不連続性の説明を探る中
で、過去数十年間の市民参加のダイナミックスは、世紀半ばの世界的激変が影響した社会
慣習と価値観によって部分的には形成されたという結論に筆者は至った。しかし、市民参
加の再興という目標に向かって、世界戦争が必要で賞賛に値する手段であるというのが筆
者の主張なのではない。
」
[パットナム 337 頁]
*「戦争の倫理的等価物」
(ウィリアム・ジェイムズの言)の必要性を示唆
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戦中の日本社会に限定せず、同時期のアメリカ、現在の北朝鮮、イラクなど事例によっ
て異なる。宗教による社会への内在的批判が相対的に困難となる。
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2拙稿「戦争と日本宗教の軋轢の彼方へ」 *ⅢからⅠへの事例が関連
「英霊」顕彰・戦没者慰霊・平和祈願に関わる宗教の教育・社会福祉的機能
1超教派の宗教新聞『中外日報』
『中外日報』というメディアの意義(戦前戦後を連続し日本宗教界の一縮図を記録)
メディアに取り上げられた日本宗教界を分析する方法(利点・限界)
2「終戦」認識では内向きだった日本の宗教界
日本の宗教界にとって八月一五日はただ一度だけ一致行動がとれた「記念日」
『中外日報』創刊者の玉音体験
3お盆から「終戦記念日」を再考する
「戦没者追悼期間」という発想
文化としてのお盆の意義の捉え直し
3拙稿の結論から得られる本研究プロジェクトへの知見
・一国内で各宗各派が社会貢献活動において協力・連携する上での留意事項
地球環境問題、東アジアの平和構築、格差社会の克服等への取り組みについて
⇒日本の場合、
(象徴)天皇というファクターを最終的には無視できない
⇒日本における各宗各派連携の難しさ(天皇・国家を超える発想はどこまで可能で有効
か? 国家、天皇による活動に対し、宗教の社会貢献活動をどう位置づけるべきか、また、
この三者の活動関係をどう考えるべきか?)
⇒社会貢献活動における国家の枠にとどまらない国際規模の(とくに東アジアの)宗教
間の協力・連携の重要さ
・メディアの役割
宗教の社会貢献活動を伝えるメディアの功罪(社会に広く伝える、視点の限定)
超教派宗教新聞に求められるもの(国際性、一般メディア・宗派紙との接点を形成)
・戦前からの連続性の中で、宗教の社会貢献活動について分析する史的視野が必要
⇒貧民救済、労働運動、普選運動、震災救援、農民運動、生協運動、平和活動等に関わっ
た賀川豊彦の事例を取り上げ、各宗各派の社会貢献活動との影響関係をキリスト教内に限
定せず調査する
文献
加山久夫(編集責任)『満州基督教開拓村と賀川豊彦−改訂版−』㈶雲柱社・賀川豊彦記念松沢資料館、2007.
パットナム、ロバート・D『孤独なボウリング 米国コミュニティの崩壊と再生』柴内康文訳、柏書房、2006(2000).
ユルゲンスマイヤー、マーク『グローバル時代の宗教とテロリズム』古賀林幸・櫻井元雄訳、明石書店、2003
(2000,2003).
米沢和一郎編『人物書誌体系 37 賀川豊彦Ⅱ』日外アソシエーツ、2006.