教程解説ビデオNO10「ベーシックパラレルターンを再検証」解説

教程解説ビデオNO10「ベーシックパラレルターンを再検証」解説
全国技術教育局長
荻原正治
ステージⅠ「基本的な動きを学ぶ段階」
1
滑り出す前の基本姿勢のチェック
滑り出す前の基本姿勢はベーシックパラレルターンの身体の使い方につながるのでしっか
りチェックしてスタートする習慣をつけましょう。
これまでの指導法では、姿勢から入る方法は運動の静止化に繋がるという理由で運動重
視の考え方が一般的になっていましたが、今回発表した基本姿勢は正しい動きをするため
に必要な姿勢という考え方で取り入れました。
足首
足首はスキーに近い個所なので足首が緩んでいては正確なポジションの確保やしっかりし
たエッジングはできません。
足首の緊張は必要以上に緊張する必要はなく、片脚立ちで引き上げた方の足首を緩めると
スキーのトップが下がりますが、スキーを雪面と平行にする程度の緊張を保つようにここ
ろがけ、スピードや斜度の変化があったときやバランスを崩しそうになったときはそれに
対応した緊張を加えて対処します。
スネの前傾は足首の緊張の結果作られるもので膝を前に押し出して作るものではありませ
ん。膝を前に押し出すと膝が爪先より前に出て膝を痛める原因になります。
また、足首の緊張が緩みスネが起き椅子に腰掛けたような後傾姿勢で踏ん張ると、膝前十
字靭帯を切るリスクが高くなるのでくれぐれも足首の緊張を緩めないように心がけてくだ
さい。
ノーマルスキー時代の技術は膝を前傾させ拇指球荷重で踵の捻り押し出しをしてターンを
しましたが、カービングスキーの回転性能を生かすにはスキーをたわませることが求めら
れます。
そのためにはスキーのトップとテールに力が掛かるようにする必要があります。
膝を前に出し過ぎるとテールが軽くなりテールがずれやすくなるので注意してください。
トレーニングとして足首を緊張させスネの前傾角度を保ってのスクワットはスキーに必要
な基本的な屈伸運動の強化になるので日常的なトレーニングメニューとして実践してくだ
さい。このストレッチでも肩の位置をつま先の前に保って上下動できるようにしてくださ
い。
足首を緊張させると足指は反らせるのが自然ですが、前荷重になると前のめりにならない
よう足指を曲げてこらえる動きになります。
足指を反らす、曲げるに係わらず足首の適度な緊張を保つことはポジションの確保及び効
果的なエッジングをするために不可欠です。
2
体幹
足元がチェックできたら次は体幹です。その方法としてお腹を凹ませてみましょう。お腹
を凹ませる動作はドローインといって、体幹をしっかりさせるだけでなく、最近ではダイ
エット体操としても話題になっています。
体幹をしっかりさせるには、腹筋だけでなくお尻の筋肉を緊張させることも大切です。ド
ローインと併せてお尻にえくぼができるように緊張させてください。
お尻のえくぼは足を後ろに蹴り上げるとできます。言い換えると、腰が前に出ているこ
とがえくぼをつくる条件です。
お尻を後ろに引くか腰を落とすとお尻のえくぼは消えてしまいますが、脚の伸展運動の
際、お尻にえくぼができるようにすると腰を前に出すことができます。
このように腹筋とお尻周りを緊張させると体幹がしっかりして、滑走中及び切り替え時に
崩れにくい体勢を保つことができます。
3
首回り
体幹をしっかりさせることと合わせて、胸を開くことは姿勢を良くすることに繋がります。
現代人は机に向かうとき胸を閉じて背中を丸めた姿勢になりやすいので、時々胸を開いて
姿勢を正すようにしましょう。スキーでも胸を閉じ背中をまるめて腰が引けた姿勢で両腕
を前に出して前後のバランスを保とうとするスキーヤーを多く見かけます。
背中が丸まり下を向いた姿勢は腰が引けた姿勢につながり、必要以上にスキーを回し込む
動作になるだけでなく、股関節の可動範囲を狭くし身体の動きを阻害する誤った姿勢です。
これに対し、今回推奨している姿勢は、体幹をしっかりさせ胸を開くことで、重量挙げで
肩にバーベルを担いでも耐えられるしっかりした姿勢であり、バランスの保持がしやすく
機敏な動作もできる姿勢です。
アゴを前に出すようにして顔を起こすと、首回りの緊張解け頭が肩の上にストンと据え置
かれたように首回りがリラックスした状態を作ることができます。
スキーはバランスのスポーツですから、頭が肩の上に座り、目線が前後左右に傾かない状
態を保てることが大切です。
また、胸を開いてアゴを出すようにすることでターン前半、スキーと一緒に重心を落とす
ことが容易になります。
反対にアゴを引いて顔が下を向いた状態では重心が山側に残り、重心を落としにくくなる
のでテールを振ってスキーを回してしまう動きにつながりやすくなります。
そして、顔を起こして遠くを見ることで視野が広くなり恐怖心も緩和されます。
4
前傾姿勢
滑る際は、足首、体幹、首回りのチェックポイントを保って前傾します。前傾は両肩を両
スキーのトゥピースの真上に置いて、この位置を保って滑ることを心がけましょう。
この前傾姿勢は股関節から曲げる動作となります。そして、胸を広げ、顔を起こすこと
で腹筋と背筋の緊張を伴います。
往々にして、切り替えの際、胸が起きて真上に立ち上がってしまうケースが見られますが
トウピースの真上の位置を外さないように立ち上がることで上体の遅れにならず、常にス
キーのセンターに荷重した雪面を捉えた状態で次のターンに入ることができます。
前傾姿勢の極限の姿勢でもあるクローチングフォームでも肩の位置は変わりません。
肩の位置は足首、体幹、首回りの基本姿勢ができていることが条件です、肩の位置だけ合
わせようとしても頭を下に向けると姿勢が崩れてしまいます。
前傾姿勢を作る際は、膝を胸に近づけるとできる股関節の皺の部分で物が挟めるようにし
て前傾します。背中が丸まっていると物を挟むことはできません。
上体が起きて重心が遅れる場合は足首だけでなく、股関節の皺の部分の緊張が緩んでいる
こともあるので足首の緊張と併せて股関節の緊張は大切です。
ということで、適切な前傾ポジションは足首を緊張させ、体幹をしっかりさせ、胸を開
いて顔を起こして遠くを見て、股関節の緊張を保って前傾するというチェックポイントは
連動したものであることを理解してください。
5
外足開きだしターン
(1) 直滑降両脚開きだし
ベーシックパラレルターンの導入技術です。直滑降のニの字からハの字にすることで制動
が掛かります。直滑降とハの字ではポジションが変わります。
(2) 直滑降~両脚開きだし(連続)
直滑降~両脚の開き出しは直滑降からハの字の開き出しは容易ですが、ハの字の開き出し
から直滑降に入る際はポジションを前に移動することでスキーが二の字に揃います。
そのためにはハの字の開き出しで足場を確保して前に出ることです。
前に出るポジションが合うと映像の滑りのように雪面を捉えた立ち上がりができます。
前に出る動作は頭から前に出ると腰が後ろに残ってしまうので、基本姿勢をしっかりとっ
て肩の位置をキープして腰が前に出るようにすることが大切です。
この直滑降~両足開きだし(連続)は連続ターンの基本的な運動要素が凝縮されている
大切な基本練習種目です。
(3)直滑降を再チェック
直滑降は低速から高速まで、前後のポジション調整が必要です。直滑降の良いポジション
は滑りながら運動ができることです。滑走中にジャンプを入れるなどして運動できる良い
ポジションを身につけてください。
片脚の直滑降の練習の意図は、スキーの中央がくびれたカービングスキーは少しでも角付
けがされると簡単に回るようにできていることを確認できることと、正しい直滑降のポジ
ションを確認してもらうためです。
この直滑降姿勢は足裏から体軸の傾きを作るベースとなります。
6
外脚開きだし山回り
直滑降のスタンスから片側だけハの字に開き出したスタンスにして真下に滑ると、左右の
雪面抵抗の差から山回りとなります。
これがスキーの回転性能で回る基本の動作です。自らスキーを回さなくてもスキーが回る
ことを体験できる基本的な回転方法です。
ノーマルスキー時代の技術である外スキーに乗り込んでスキーを回す動作とは違うので注
意してください。
外スキーに乗り込む方法では、外スキーのエッジが緩んでしまうためスキーを横ずれさせ
てのバランス保持は容易ですが、横ずれを止めてスキーの回転性能を発揮したターンはで
きません。
外スキーのテールを多めに開き出して腰からスキーを遠ざけることで自然なエッジング
ができます。
このエッジングを緩めないように外傾を強め外スキーに荷重するとスキーがたわみ、ス
キーの回転性能でターンすることができます。
7
外脚開きだしターンの基本姿勢の確認
外足を開き出しても滑り出す前の基本姿勢同様、両肩を両スキーのトゥピースの真上に置
くことは変わりません。
そして内脚は基本的には直滑降なので内腰は内スキーの真上にあります。外脚の開き出し
は内腰の位置をキープして行います。
ということで、外脚を開き出す際は、腰が外側について行かないように注意しましょう。
腰が外側に移動してしまうと外スキーの角付けが緩むだけでなく、内スキーのインエッジ
が立ってしまい、結果的にプルークのスタンスになってしまいます。
8
ステージⅠの外脚開き出しターン
外脚を開き出すためには内脚荷重で、内脚を支点にすることで外スキーの開き出しができ
ます。しかし、外スキーに乗り込んでしまうと外スキーをそれ以上開き出すことはできな
くなります。
外スキーに乗り込んだ状態で角付けをするには膝を内側に入れることになりますが、この
方法は外力に負けやすいのでお勧めできません。
やむを得ず、膝を内側に入れる角付けをする場合は腰も内側に入れて外力に対して対抗で
きる体勢をとってください。しかし、膝を曲げての角付けは外脚が伸ばされている状態よ
り外力に対する強度は低くなります。
ということで、ターンゾーンでは内脚を軸脚にして内脚をたたみ込み、外脚を伸ばして外
力に耐えられる姿勢をとり、切り替え時には次のターンの内スキーとなる外(谷)スキー
に荷重移動して、伸脚の状態で足裏から切り替えて次のターンポジションに入る技術を目
標にしてください。
9
ターンとターンのつなぎ目に直線に近い斜滑降を入れた外脚開きだしターン
ターンとターンのつなぎ目に直線に近い斜滑降にすることの目的①はターンを終えるとい
うことです。つまり、外スキーを開き出すことで内傾角が作られターンができますが、こ
の状態を続けると山回りして止まってしまうので、体軸の傾きを戻して斜滑降に入ります。
続いて、ターン後半は踵荷重になりやすいので前に出て斜滑降の良い位置まで移動します。
このときの斜滑降は滑り出す前の基本姿勢を思い出してください。
ターンのつなぎ目では最初は斜滑降が長くなっても良いから、この基本姿勢に戻ってから
次のターン内側へ重心を移動させます。
この傾きを戻し、前に出る動作が不足していると、次のターンポジションにうまく入れま
せん。
切り替え時、直線に近い斜滑降を長く取ってスキーを縦方向に滑らせて切り替えてから次
のターンに入る練習はやり過ぎることはないといえるほど大事な練習です。
そして、切り替えの要領が理解できたら斜滑降の切り替え距離を短くしてもできるように
していきます。
今回の映像では切り替えを分りやすくするために分解して「傾きを戻して」
「前に出て」
「次
のターン内側に入る」としていますが、これを一連の運動として運動を止めずにできるよ
うにしていきましょう。
10 ターン構成図
連続ターンは図のとおり、ターンゾーンと切り替えゾーンに分けられます。切り替えゾー
ンではスキーを回さないことが谷回りターンにつながります。
実際のシュプールでも切り替えゾーンではスキーを回していないことが分ると思います。
今回の解説ビデオで切り替えゾーンという新たな名称が出てきて、教程の理論が変わっ
たように受け取る方がおられるかもしれませんが、ベーシックパラレルターンの導入技術
である「直滑降~両脚開きだし(連続)」の開き出しの部分がターンゾーン、直滑降の部分
が切り替えゾーンに該当します。
次の、外脚開きだしターンでは一旦斜め方向の直滑降(斜滑降)を入れて切り替え、次
の外脚を開き出しターンに入るというように、もともとやってきている技術に名称をつけ
ただけで技術が変わったわけではありません。
(10)切り替えゾーン前後の動き
切り替えゾーンの動きを分解すると、①ターン後半の傾きを戻して直線に近い斜滑降に入
る②遅れたポジションを前に移動し遅れを取り戻す③次のターン内側に重心を移動しター
ンポジションに入る。という動きになります。
① のターン後半の傾きを戻すことはターンを終わらせるということです。
ということは、フォールラインに対して斜滑降の角度をフォールラインに近い浅い
角度に取るか、フォールラインを横切る深い角度にとるかで浅回りから深回りまで
ターンの深さが決まります。
ターンを終わらせる際は、身体が遅れる原因になるので体幹をしっかりさせて傾き
を戻します。
② の前に出る動作は、ターン後半の崩れた姿勢を整え、踵よりになったポジションを
取り戻すことですが、できるだけ真っ直ぐ立って、腰の位置を高くして体軸を棒状
に近い姿勢(伸ばしきってしまうと伸ばし過ぎです。)にすることが大切です。
前に出るつもりで真上に立ち上がって肩がトゥピースの真上から後ろに外れてしまう
ケースや、頭や腕を前に出す行為は結局腰が後ろに残るか、腰が浮いてしまうので注意
しましょう。
初級者の場合であれば、ターンの質は問わなくて良いので、プルークスタンスであっても、
ターン後半お尻が落ちた姿勢や身体を腰でスキーを回し過ぎる動きがあっても、ターンを
終えて平行スタンスの斜滑降には入れれば、ターンを終了できた証明となります。また、
斜滑降に入れることは、スキーの向きと身体の向きを合わせることでもあります。その斜
滑降の中で高い姿勢が作れれば、ポジションを整えることになり、容易に次のターンに入
ることができます。
初級者の場合は肩の位置がトゥピースの真上でなくても、次のターンに入る前に高い姿勢
に戻せれば次のターンに入りやすくなるのでOKとしましょう。
同じく、初級者が急斜面を滑る場合はプルークのスタンスで良いから、しっかり深回りを
させ、斜滑降の角度を緩く取り斜滑降の距離を十分長く取ることで、転ばず、止まらず安
全に滑り下ろすことができます。
これらの説明で理解してもらいたいのは、初級者にパラレルターンを習得してもらうには
ターンはハの字、切り替えは二の字で滑らせることがパラレルターンへの近道という考え
方でこのカリキュラムは構成されているということです。
今回は切り替えゾーンの動作を、傾きを戻し、前に出て、次のターン内側に入るというよ
うに3つの動作に分析して解説してありますが、傾きを戻す動作と前に出る操作は同時に
できる動作です。
導入技術の直滑降から両脚開き出し(連続)で、前に出る動作をすることでスキーが自然
に揃う練習をしてきていますが、この動作はターン後半から直線に近い斜滑降に入る動作
と共通するものです。
ということで傾きを戻して、前に出るという本来は一つの動作を前に出ることができない
レベルのスキーヤーの場合は二つの動作として分解して理解してもらうための表現である
ことを理解しておいてください。
そして、この次のターン内側に入るタイミングは傾きを戻して、前に出てスキーが直線的
に進むことが確認できたらすかさず足裏を返して角付けを切り替え、次のターン内側に入
ります。
とは言うものの、今回分解した傾きを戻して、前に出て、次のターンポジションに入る3
つの動作のうち最も不足しているのが前に出る動作です。
前に出る際は、肩をトゥピースの真上にした滑り出す前の基本姿勢に戻します。
この高い姿勢で肩の位置がトゥピースの真上の位置が確保できていれば、それ以上前に出
る必要はありません。雪面を捉えた状態で次のターン内側に重心移動して次のターンに入
ることができます。
前に出る動作は高い姿勢でも低い姿勢でも切り替えゾーンでの重心移動ができれば問題あ
りませんが、低い姿勢になるほど重心位置の確保が難しくなるので、先ずは高い姿勢でポ
ジション確保する技術を身につけましょう。
勘違いしがちなのが、前に出るというと上体や頭を前に出してしまうことです。前に出
ることは、重心をスキーのテール寄りからセンターに戻すことですから、それには腰を前
に出すという意識を持つことが大切です。
切り替えゾーンで重心を前に戻せない状態で、次のターン内側に重心を入れる行為は、
スキーの回し込みや内倒転倒につながります。
③ 次のターン内側に入るには足裏から角付けを切り替えて、重心をターン内側に移動
することです。
重心をターン内側に入れる際、頭や内肩から入らないようにしましょう。アゴと胸を谷側
に出すと重心をターン内側に入れやすくなります。
もう一つの方法としてストックを谷側に突こうとすることで、重心を谷側に移動する方法
もあります。その際、ストックを突く位置は足元や前に突くと重心が山側に残りやすくな
るので、なるべく真下の遠くへ突きに行くように心がけましょう。
初級者にはターンはハの字、切り替えは二の字で滑らせることがパラレルターンの近道だ
ということは先ほど説明しましたが、スキーを回す方法は、最初はハの字でも、徐々にス
ピードが増して滑れるようになると内スキーが邪魔になってきます。
この段階まで到達できたら内スキーを直滑降、外スキーはハの字の片開きプルークのスタ
ンスに変えるよう教えてあげると良いでしょう。
この片開きプルークのスタンスは、スピードが増しても並行のスタンスに近くなってもこ
のスタンスを保つことが高速ターンでも方向性の定まった、両脚で雪面を捉えた滑りにつ
ながるので安易に平行スタンスでターンをしないようにしましょう。
平行スタンスを心がけてターンをすると、結果的にスキーの前後差が大きくなったり、ス
キーの先が開いたシェーレン状のスタンスになってしまうので注意しましょう。
初級者から上級者まで大切なことは、切り替えゾーンで重心が遅れたまま次のターンに入
らせないことです。そのためには直線に近い斜滑降を長く取って良いから、腰高の高い姿
勢をとらせることです。
高い姿勢をとることができればスキーは平行に揃い、パラレルのスタンスで切り替える技
術を習得することができます。
(11)
ステージⅠの外脚開き出しターン
ターン後半開き出した外スキーの真上に乗り込むように重心移動して、直線に近い斜滑に
入り、前に出て、次のターン内側に入り次の外スキーを開き出す動きを、動作を区切
るのではなく一つの動きとして行って連続ターンで滑ります。
ポイントはターンを終える動作と前に出る動作を確実に行って、スキーを縦方向に滑らせ
てから次のターン内側に入ることです。
この動作が不十分だと、重心の入れ替えが不十分となりスキーを回してしまうことにつな
がります。
ターンを終える動作から前に出てターン内側に入る動作は体幹をしっかりさせてエッジの
同時切り替えができるようにします。
切り替え時に踏みかえる動作は重心が山側に残っている場合、傾きを戻し重心を次の
ターン内側に入れるためのリカバリー動作として使われます。ターン切り替え時に踏
み換え操作が現れる場合は、重心が山側に残っていると判断してください。
なお、同じ踏み替え動作でも重心とエッジの切り替えが済んでからの外スキーの捉え
はインエッジでしっかり捉えることができます。
ステージⅡ
スキーの回転性能を生かす段階
(1) 直滑降~両脚開きだし
両スキーの開き出しを大きく積極的に行うことでスキーのたわみが引き出されることを先
ず体験してみましょう。
大きく開き出すことで、スキーがたわみスキーの横ずれも止まり前に出てスキーが揃うと
きスキーの推進力を感じられるでしょう。
(2) 外脚開きだし山回り
内スキーを後ろに引くように内脚をたたみ込み、外スキーを斜め前に外脚を伸ばして押し
出す動作ができると外脚の内傾角が深まり、その結果、外スキーは横ずれせずにスキーの
回転性能で回転し、その結果スキーのトップが山側を向いて止まることができます。
つまり、角付けを強めてスキーをたわませてスキーの回転性能で回るためには、体軸の傾
きを大きくすることですが、そのためには外スキーをできるだけ遠くに出すことですが、
内脚がたたみこめないとそれができません。
ということで滑走面がターン外側から見える角付けをする鍵は内脚が握っているといえま
す。
外脚開きだしというと、動作の意識が外脚を押し出すことになりやすいですが、ステージ
Ⅱでは内脚をたたみ込むことで外スキーのエッジングができ外スキーをたわませることが
できると理解してください。
(3) 内脚のたたみ込み方
スピードが増すと外スキーの開き出しをしなくても体軸の傾きを作れるようになりますが、
内脚が邪魔になってくるので、内脚をたたみ込んで内傾角を深くし外足荷重ができるよう
にします。
内脚をたたみ込む要領は内膝をミゾオチに近づけて行います。
外スキーを開き出す際、外腰がついて行ってしまうと内膝はミゾオチから外れてしまいま
す。逆のケースで内膝が内側に入りすぎると外スキーの捉えが甘くなってしまいます。
上体を前のめりになるようにミゾオチを内膝に近付ける動作は上体をあおることになりバ
ランスを崩しやすいだけでなく腰を痛める危険があります。
ということで、内膝をミゾオチに近付ける動作は腹筋が使われます。
内脚を踏ん張りすぎて内脚がたたみ込めないケースも見られますが、内膝をたたみ込むた
めには内脚を緩めることです。しかし、脚をたたみ込んだ状態から、いつでも立ち上がれ
る体勢であることが大切です。
同じように見える内膝をたたみ込む姿勢でも、腰から落としてしまうと後傾姿勢になり直
ぐには立ち上がれなくなるので注意してください。
脚を最大限曲げた極限の姿勢でも内膝をミゾオチから外さないでください。
内膝をミゾオチに近づけた位置が内脚荷重でも外スキーが捉えられる位置です。
内膝をミゾオチに近づけた姿勢はスピードが増して内スキーも角付けされたとき両スキー
をたわませることができる安定ポジションが確保できる姿勢です。
(4) 足裏切り替えターン
足裏切り替えは、スキーに最も近い足裏を動かして、角付けを切り替えて重心移動して滑
る技術です。
足裏の角付けは足首の緊張を伴うと共に、脚を突っ張る動作になり、体幹しっかりさせて
滑る技術に繋がります。
これに比較して膝で角付けをする動作は、脚を曲げる動作につながり重心移動を伴わない
角付けになりやすく、外腰が外側に出て外力に弱いフォームになるので注意しましょう。
(5) 足裏の切り替えに骨盤の傾きを加える
足裏の切り替えと合わせて外腰を下げ、内腰を吊り上げる動作を同調させます。
悪い動きとして内倒すると内肩が下がり、外腰が上がり腰でスキーを回す動きになってし
まいますが、外腰を下げ、内腰を吊り上げることで外足の捉えができ、内脚はたたみ込み
がしやすくなり外スキーを捉えて重心をターン内側に入れることができます。
この腰の傾きは股関節が硬いと上手くできないので日常的に股関節を柔軟に動かせるよう
にトレーニングする必要があります。
股関節を柔軟に保つことはスキー技術の向上ならびにスキー寿命を延ばすだけでなく、健
康寿命を延ばすことにもつながるので、日常的に股関節の可動範囲を広げるようトレーニ
ングすることを推奨します。
足裏の切り替えに合わせて、骨盤の傾きを加えると、肩の傾きも同調することになります。
その結果、身体全体が弓なりのフォームとなります。
この弓なりのフォームの切り替えができると、体側のストレッチのように腰高で横への重
心移動要素の動きになるので、腰が後ろに引ける要因がなくなり、体幹をしっかり保った
切り替えができます。
特に、切り替え時に腰落ちのフォームになりやすい人には効果的なのでぜひ試して滑りを
変えてください。
この足裏切り替えの弓なりのフォームは、既にお尻にえくぼができた状態になっている
ので、これ以上前に出る行為は不要です。
切り替えゾーンで切り替えを終了できると、切り替え直後から雪面を捉えた谷回りターン
が可能になります。
切り替えゾーンで切り替えを終了できないと、スキーを回す動作となりターン前半の雪面
の捉えが甘くなり谷回りターンができないか、ターン前半の雪面の捉えが遅れることにな
ります。
切り替え直後から雪面を捉えたターンができると切れがありながらコントロール性の高い
ターンができます。
このようなベーシックパラレルターンを身につけるために忘れてならないことは重心移動
の運動を止めないことです。
今回の映像では切り替えゾーンでの運動を分りやすくするため、傾きを戻して、前に出て、
次のターン内側に入るというように動作を分解して説明してみましたが、この動作を一つ
の流れのある動作として運動を繋ぐことであり、切り替えゾーンだけでなくターンゾーン
も含めて運動を止めないことが大切です。
今回の映像は切り替えゾーンにスポットを当てた内容でターンゾーンについては余り触れ
ませんでしたが、ターンゾーンでは内脚をたたみ込む動作と併せて外脚を伸ばしてスキー
をたわませ外力に耐えられるフォームを作る必要があります。
また、内スキーを引き、外スキーを斜め前に出すスキーの逆前後差を作る動作も必要にな
ります。
また、導入段階では内スキーは直滑降ということで角付けは不要でしたが、スピードが増
すと体軸が傾き、内スキーも外スキーと同じように角付けされ、両スキーもたわんでター
ンできるようになります。
急な斜面を滑る場合は、体軸の傾きの可動範囲を大きく速く正確に切り替えて次のターン
に入ることが求められます。
従って、緩斜面ではできても急斜面や高速ターン、規制されたコースではできなくなるの
が普通ですが、これらの条件を克服するには大きく、速く、正確に切り替えゾーンを短く
した重心移動ができるように練習することが課題です。先ずは緩斜面でこの技術の要領を
頭だけでなく身体で理解することから始め、急斜面や高速ターン、小回りターン、規制さ
れたコース、深雪、悪雪、コブといった様々な応用シチュエーションで使えるように練習
を積んでください。