水系合成における裸の金属ナノ粒子の量産化(連続合成法の開発)

水系合成における裸の金属ナノ粒子の量産化(連続合成法の開発)
Mass production of naked-metal nanoparticles in aqueous media
研究分野
キーワード
コロイド・界面化学、ナノ粒子
日本語 金属ナノ粒子
超音波
量産化
界面活性剤
還元剤
English
Ultrasound
Mass production
Surfactant
Reductant
進捗状況
研究者
Metal nanoparticles
◆シーズ
◆特許
◇新製品
氏名: 酒井俊郎
◇分析/解析
学部:工学部
研
究
概
◇調査
◇その他
学科:物質工学科
要
ナノスケールの金属微粒子(金属ナノ粒子)は、バルクにはない特異的な物理的特性を発現することから、
近年工学的・学術的に盛んに研究されている。その金属ナノ粒子の代表的な湿式合成法は、有機溶媒を媒
体とした逆ミセル法である。しかし、近年の環境調和(CO2 削減やリサイクル、排水、廃棄物処理など)や
生体安全性の観点から、有機溶媒から水を媒体とした金属ナノ粒子の合成技術の開発が必須となってき
た。一般に、水系での金属ナノ粒子の合成では、界面活性剤に代表されるような水溶性保護剤を水に溶解
して、出発源となる金属塩を溶解させ、還元剤の添加により、金属イオンから金ナノ粒子を析出させると
いうものである。このような金属ナノ粒子は、ナノテクノロジーの発展に伴い、産業レベルでの製造が行
われるようになり、溶媒処理、副生成物の処理などの排水、廃棄物処理などが大きな課題となってきた。
また、医療用材料(例えば、MRI, CT などのイメージング材料、検出センサーなど)や抗菌材料として使
用されるようになり、人間の生活に身近な材料となってきたため、生体安全性の確保が一層重要な課題と
なってきた。
そこで、本研究では、金属ナノ粒子の水系合成において、一般に使用されている界面活性剤(代表例;
セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB))や金属イオンを還元するための還元剤(ホウ素化水素ナ
トリウムなど)を一切使用しない金属ナノ粒子(裸の金属ナノ粒子)合成法の開発に取り組んできた。そ
の結果、“超音波還元法”により、還元剤を使用することなく、金属塩水溶液から裸の金属ナノ粒子を合
成することに成功した。例えば、
塩化金酸水溶液に高周波数超音
波(950 kHz)を照射すると、数十
ナノメートル径の裸の金ナノ粒
子が形成され調製条件を適宜設
定すると、界面活性剤などの保
護剤が存在しなくても、安定に分散することを見出した。さらに、調製温度を調節することにより、球状
の裸の金ナノ粒子を選択的に合成することにも成功した(挿入図;裸の金ナノ粒子の TEM 像:40℃以下
では球状粒子、三角形・六角形板状粒子が混在、50℃以上で球状粒子が選択的に形成)。超音波還元法を
利用した金属ナノ粒子の合成に関する研究は、これまで報告されているが、還元剤、界面活性剤を一切使
用せずに金ナノ粒子を合成し、サイズ・形状を制御した例はない。
そこで、本研究では、本実験系を産業ベースに導くため、裸の金ナノ粒子“連続合成法”の開発を行い、
裸の金ナノ粒子の“量産化”を目指す。本技術の開発は、金ナノ粒子のみならず、他種金属においても裸
の金属ナノ粒子を合成する技術としての発展が期待される。
事業化までのプロセスチャート
ステップ 1:超音波を利用した裸の金ナノ粒子の連続合成法の設計(マイクロリアクターなどを模倣)
ステップ 2:連続合成装置の開発(共同研究)
ステップ 3:大量生産のためのスケールアップ(共同研究)
関係する大学企業等
東京理科大学、株式会社新光化学工業所
関連する特許
特願:2007-225243,“界面活性剤および還元剤無添加系金属微粒子の調製”
関連する論文
Sakai et al., Colloids Surf. A 2009, 347(1-3), 18-26.