平成25年度 1. 海外行政視察団視察報告書 視察日程 平成25年9月25日(水) ~ 10月3日(木) 2.視察先及び視察内容 (1)ドイツ:シュトゥットガルト市 都市計画制度・景観整備事情について (2)ドイツ:南ヘッセン州カルベン職業教育所 障がい者雇用への取り組みについて (3)イタリア:ブレシア市 A2A 社廃棄物発電・排熱利用プラント 代替エネルギーへの取り組みについて (4)フランス:サンモール市 公立老人ホームレジダンス・アベイ 高齢化社会における高齢者の自立支援策について (5)フランス:クレテイユ市 家族手当金庫 少子化防止対策について 3.参 加 者 団 4. 長 上田 信博 副 団 長 伊藤 竹夫 相 談 役 油田 清 平良 清忠 団 會津 素子 福島 浩一 伊橋 利保 佐久間一彦 湯浅 雅明 神﨑 利一 員 視察の概要 (1)都市計画制度・景観整備事情について シュトゥットガルト市環境部気象課 9月26日(木)午後1時~ 視察テーマ:都市計画制度・景観整備事情について シュトゥットガルト市は、三方を丘に囲まれた盆地であり、気象的に 2 つの問題を抱えて いる。1 つは気温が高いことでもう 1 つは、空気の循環が悪いことである。さらに市周辺地 域は、風が弱い地域でもあり、市内の風力も微弱である。およそ市内中心部の平均的な風速 は 1m/秒で 1 時間に 3.6 ㎞である。 風が弱いという事は、環境汚染物質を流す速度が遅くなり、何も手を施さなければ大気汚 染物質を滞留させることにつながってしまう。そのようなことから、シュトゥットガルト市 はドイツ国内で唯一、気象課という課を設けており、75 年の歴史がある。気象課では、気象 に関する事の他に空気の純化や交通騒音の関係まで担当しており、とりわけ空気の流れやヒ ートアイランドの問題について調査分析し、それを都市計画にどう組み入れていくかという ことに注力している。そして、都市計画についての会議においては、環境面の専門家として 気象や空気の通り道(風の道)等について提案を行っている。 ○「風の道」計画 1980 年代に風向や風速などを詳細に調査し、市街地を 取り囲む丘陵からの風(空気)を市街地に途切れなく導 入させるために、風の道を位置付け、緑地のネットワー クや建物形態の配慮といった「風の道」計画を策定する 事となった。自然の冷気流を用いて、都市の大気汚染物 質をすみやかに吹き飛ばそうというものであると同時に日射による舗装面の蓄熱や人口排熱 で熱くなった都市を冷やそうという目的をもっている。 「風の道」計画は緑地のネットワーク を基本としており、土地利用計画に位置付けられている。この土地利用計画を基本に、丘陵 部から市街地へ風が流れ込むように法的拘束力を有する地区詳細計画によって高さ等の建物 形態や配置に規制がかけられている。風の道計画がどのように実証されたのかについては、 長期にわたる風測定を行った。その測定についても、日中と夜に測定を行い風量や方向につ いて調査した。その結果、風は日中・夜に関わらず南西の方角から流れてくること、夜は日 中に比べて風の勢いがはるかに増すことが判明した。建築物が少ない斜面の上の方は夜、空 気が冷やされる。冷たい空気は重いため町の中を流れてゆく。それによって地域の風になり 熱に影響を与えることになる。そのため、都市計画の中では、そういった空気の通り道にな る地域にはなるべく建物は建てないようにする努力をしてスムーズに風が流れるように配慮 している。 他方、異なった方法として、ガスを使った研究も行っている。使用するガスは、通常大気 中には含まれていないもので、当然毒性がないものを使用する。シュツットガルト市で使用 するガスは、「SF6」というものであり、夜間に空気中に加えている。それを市内各所で測定 できるように設置しており、その測定地点にガスが到達したか、どれくらいの量かというこ とを調査している。この 2 つの方法で、空気がきちんと町の中を流れているかどうかという ことが実証できる。これは、都市計画に関係する重要なポイントであり、空気の流れがある 地点には建築物は建てずに、建築物の無い地点には建築物を建てても良いということになる。 ヒートアイランド対策については、飛行機を使用した検査を行っている。これは、遠赤外 線を使い飛行機の中から町の表面温度を測定しているもので、都市の中心部はかなり温度が 上昇しているという結果が出ている。市内中心部のヒートアイランドを解決するため、都市 計画の担当者は市内のどの箇所がどの程度温度が上昇しているかを把握していなければなら ない。そこで、シュツットガルト市では、 「風の道」の維持・保全を行うために、 「気候分析 2 図」と「計画のためのアドバイスマップ」の 2 つの地図を作成している。気候分析図は 1/25000 程度の図面で対象地域内、十数地点の気温や風など様々な気候要素の図化、土地利用や人口 密度、大気汚染負荷発生量など各種の基本的空間情報の図化、数値計算や風洞実験による現 象の再現という 3 つのプロセスを経て収集された情報を統合し、局地的な気候に与える影響 により地域をゾーニングし、図化している。この気候分析図をもとに、都市計画、開発を行 なう際に都市気候からみた配慮事項を図化したものがア ドバイスマップであり、これにより空気の流れを示し、こ の流れが維持されるような土地利用計画や、気候保全機能 が高く保全すべき緑地等が示されている。そして、地区詳 細計画を立案する際には、このマップを参照することが決 められている。これらのことによって建築計画が出される 場合には、以前にあった建物よりもはるかに温度・気象を 考慮に入れたものでなければ許可されないという事になっている。 ヒートアイランド対策の有効な手段としては、都市の緑化がある。中でも屋上緑化がかな り進んでおり、市庁舎の屋上も緑化されている。市内を走る路面電車の路線も緑化しており、 また、駐車場についても緑化している。出来るだけたくさんのグリーン地帯を市内に増やす ことが大事なことであり、アスファルトにしているのと比較してかなり温度が下がっている という結果が出ている。シュトゥットガルト市では、屋外の駐車場は必ず全て緑化状態にし ないといけないと決定しており、家を建てる際の建築許可証にもそれが明記されている。 都市の緑化については、街路樹も重要な役割を果たしている。シュトゥットガルト市では、 約 3 万本もの街路樹が道路に沿って植えられており、ヒートアイランド対策の他に、都市の 景観形成にも役立っている。グリーン地帯は気象には重要な部分であり、市内の約 25%がグ リーン地帯となっている。 市の中心部からグリーン地帯が大きく U 字の形に広がっているグリーン U と呼ばれる帯状 の緑地帯がある。これは、中央駅からネッカー川までの約 3km と、そこからカーブを描いて 川から 2.5km ほど戻ってくるラインで、ドイツ鉄道の路線に沿った線形の公園が河川と市街 地を繋ぐように設計されている。1928 年にヘルマン・マッテルン教授によって提案された、 「U 字型グリーンネットワーク構想」の一部であり、水系と市街地を線形の公園によってつ なげることで、市街地の中でも豊かな生態系がはぐくまれる環境の整備を意図している。そ れらのグリーン地帯は、多様な生物相が生息するビオトープとして位置づけられており、1993 年に「IGA 国際庭園博」がシュトゥットガルト市で開催された際に完成した。その後、その 会場を恒久的に都市緑地として確保しているものである。 ≪主な質疑≫ 問:気象課が誕生した 75 年前の平均気温と比べて現在の平均気温はどれほど上昇しているか。 答:平均で 2 度ほど高くなっており、かなりの上昇と言える。 3 問:風の速度が遅いという事だが、これは温暖化するほど早くなるのではないかと思うがそ の点はどうなっているか。 答:温暖化によって風速が早くなってはいない。これについては、周辺地域との温度差が大 きくなれば風速が増すと思うが、現状で周辺都市との温度差があまりないためではない かと考えている。 問:75 年前と比較して、平均で気温が 2 度上昇しているとのことだが、それは、これまで様々 な調査に基づいた取り組みを行ってきた結果であり、もし何の対策も講じてこなかった としたらどのようになっていたと考えるか。 答:温度について何度上昇していた等の数値的なことについて正確なことは言えないが、確 実に言えることは、今よりも市内の空気の汚染が深刻化していたであろうということで ある。 問:グリーン U については、1928 年の U 字型グリーンネットワーク構想に基づいた再開発な のか。 答:1928 年当時はあくまでも目標であり、実際は 1993 年に国際庭園博覧会がシュトゥット ガルト市で開催された際に完成したものである。 【議員所感】 (議員) 大都市の中心部などでは、道路舗装や建築物の増加、冷 暖房などの人口的な熱の増加によって地表面における熱 の収支が変化し、都市中心部の気温が郊外に比べて高くな るヒートアイランド現象が観測されている。 風の道は、建物の配置を工夫するなど都市計画を見直して、風の通り道となるパークウェ イや小公園について、100mの幅を確保するよう整備が進められ、公園から駅までの 8 ㎞にお よぶグリーン地帯には風を誘導する通り道をつくったり、線路や駐車場などもグリーンベル ト化するなど、ドイツ特有の厳しい地区詳細計画を駆使して気流系の制御が行われ、ヒート アイランド現象に代表される都市中心部での気象上昇を緩和するとともに、地球温暖化や大 気汚染などの環境対策を実現している。 日本では、風の道に関する研究・調査は多くなされているものの、都市計画の中に風の道 を明確に位置付けた上で実施し、その効果が報告されている事例はないものと思われる。 この計画には、様々な分野の協力が不可欠であり、広い見地での分析検討が必要なことが 理解できる。 シュトゥットガルト市の「風の道をつくる」という明確な目的を設定し、土地利用計画と 地区詳細計画という二段階の計画によって、実質的な土地利用と建築行為に対し詳細な規則 を定めている事例は、参考にすべき点であった。 4 (2)障がい者雇用への取り組みについて 南ヘッセン州カルベン職業教育所(bbw) 9月27日(金)午前10時~ 視察テーマ:障がい者雇用への取り組みについて 入所している青少年は、様々な種類・程度の障がいを持っており、身体に障がいのある子 どもだけを受け入れて教育する特殊学校で基本的な勉強をしているにもかかわらず、職業を 身につける能力が足りない、職業を得ることが出来ないといった青少年がほとんどである。 ドイツでは、そういった職業教育が必要と思われる青少年に対し、国の方から個人に対して コンタクトを取り、本人と両親の合意の上でテストが行われる。 テストは身体的なものと精神面のものがあり、その結果によって職業訓練がすぐ必要か、 職業訓練のための準備からスタートする必要があるかといったことが決められる。結果は 3 段階に分かれていて、第 1 段階目と判定されると、教育の専門家とワンツーマンで経済関係 の基礎知識を身につける。第 2 段階目は、1 つの協力会社を定めて、そこに本人を送り実習 がなされる。実習期間中は最初から担当となる協力員が 1 人付き、いろいろと相談しながら サポートしていく。第 3 段階目は、最も障がい度が高い青少年に対して行われる職業教育で あり、本人にとって何が最も適した職業分野か、またどのようにすればその人の出来ること を広げられるかを考えながら施設に住まわせて 24 時間一緒に協力をして本人の障がいの程 度に合わせた教育を進めていく段階となっている。第 3 段階目となった青少年たちは、3 年 間職業教育所に住んで生活し、職業教育を受ける。そのため 3 つの段階の中で最も費用がか かる場でもある。費用については、3 年間の間に一人当たり約 13 万ユーロかかり、これらの 費用は、国の労働省から支出されている。その第 3 段 階目の場所の一つが、この南ヘッセン州カルベン職業 教育所であり、同様の障がい者援助機関がドイツ全体 で 52 ヵ所に存在している。そして 52 ヵ所ある職業教 育所もそれぞれ重点を置くポイントが異なっている。 職員の仕事の一番重要な点は、青少年に対しての職 業準備という分野であり、約 11 ヵ月間を要する。そ の間に本人が何に向いているのか、何をしたいのかと いうことを引き出すことが大きな目的である。11 ヵ月間の間に行われることは、初めの 6 ヵ 月間は基礎教育を受けさせ、その後、施設の職員が、30 種類もの職業を提示してすべてトラ イさせ、その過程で、興味を示した点や理解力、信頼性やチームワーク適性を見る。そして、 職員がパートタイムの世話をしている会社や一般の協力会社を回って生徒の実習の場所及び 実習後雇ってもらえるかどうかの可能性を調べる。11 ヵ月が経ったときに職員はその間の結 果をまとめて国へ報告し、本人にも希望する職業等を聞く。その上で希望する職への適正が 5 あるということならば、職員はその方向に進めるようサポートしていく。しかし、11 ヵ月の 職業教育を経てもなお一定のレベルに満たないと判断された場合は、職業準備の教育期間が 延長されることになる。 11 ヵ月間の準備期間が終わったのち、本人がセールスマンを希望した場合は、セールスマ ンとしての教育を 2 年間受け始めることになる。その際に、当施設から教育担当として 1 人、 職業訓練学校の教師が 1 人、精神面からサポートする精神病関係の専門医が 1 人ついて、3 人一組で本人をバックアップしていく。この 3 人組を「リハチーム」と呼んでいる。この 2 年間の間に、一つの協力会社で職業実習をすることが加わる。実習期間については、最も短 いもので 2~3 週間程度、長いものでは 12 ヶ月続くものもある。実習期間中の住居はリハチ ームで探して確保している。 期間中に実習すべきカリキュラムは当初からしっか りと決められていて、実習に当たって契約を結ぶ際に、 受け入れた青少年に対して会社として何を教えられる かを提示してもらい、内容に問題がなければ契約が成立 して実習がスタートするという流れである。期間内に契 約違反があれば直ちに契約解除となり他の協力会社を 探すことになる。リハチームは常に協力会社と連絡を取り、実習する青少年と協力会社の仕 事の関係がうまくいくよう協力し、実習期間が終了した際に、本人の理解度や実習態度、協 調性等に問題がなければ、その会社で就職させてもらえないかを打診することになる。 実習期間が終わり、会社が生徒を受け入れるとなった際に障がい者援助機関から受け入れ た会社に対して助成金が支給される。支給される助成金は 6 ヵ月間本人に支払われる給料の 50%が基本であるが、受け入れられた青少年の障がい度によって金額は変動する。この 6 ヵ 月間という機関は、会社側がその人が仕事に耐えうるか判断するための期間であると考えて いる。 ≪主な質疑≫ 問:11 ヵ月の訓練の中で、本人の希望する職と専門員の目から見た適正というのはどちらを 優先しているか。 答:最終的には専門分野の人間が本人の希望と合わせながら決定している。 問:実習訓練期間中、協力会社に対して国からの助成はあるのか。 答:実習生の時には協力会社に対して助成金は支給されない。ドイツの場合は、国から当教 育訓練所のような施設に助成金が出ており、我々が協力会社に受け入れを依頼した際に、 受け入れを行うか否かは会社側の判断で、強制でないためである。 問:協力会社の掘り起しについて、協力会社をどのように見つけているのか。 答:教育している立場の人間が情報を集め、電話や直接訪問といった直接交渉で協力しても らえるかどうか決めている。また、商工会議所や手工業会議所の協力も受けている。さ 6 らに、ドイツでは色々な都市で職業分野別の展示会(メッセ)が開かれており、その都 度出店会社と話をしたり、これまでの 30 年もの間の協力会社の情報を持っているため情 報収集のためのネットワークとして活用している。 問:施設の入所率はどのくらいか。 答: 現在入所者は 450 人ほどおり、 200 人ほどの職員で対応しており仕事は十分できている。 希望としては 1,000 人くらいまでは収容したいが、専門の職員が少ないという事があり、 また、国の労働省にも予算があり、収容できる数は限られている。 問:精神障がいの方に対してのアプローチの仕方は、本人に対してか家庭に対してか。 答: 父兄との相談は最も大事であり、日を決めて両親と相談する父兄会というものを行って いる。しかし一番来てもらいたい方の父兄ほど来てくれないというのが現実であり、来 てくれない父兄の意見を聞くと、そういう教育は信頼していない、または興味がない、 既に諦めている、といった感じを受けるものが多い。 問:障がいを持っている方の受入数は。 答:今年はこれまでに 140 名受け入れた(うち全くの新規は 40 名) 。しかし、労働省の障が い者援助関連の年間予算が少ない年はもっと少ない数になる。 問:3 年間で就職が叶わなかった場合、滞在期間、居住についてはどこまで許されているか。 答:3 年間というのは当施設にいられる最長の期間で、3 年以内に就職先を見つけるというの が最終目的となっている。もし、3 年間で就職がかなわなかった場合は家へ帰らざるを 得ない。 【議員所感】 (議員) 広々とした施設には、宿泊所、訓練所、図書コーナー、食堂、ボーリング場、ダンスフロ ア等々、何でも揃っていて、建物内は明るく、敷地内は緑に溢れ、居心地の良い空間でした。 日本では施設の規模を小さくして、一般家庭に近づけようとする取り組みが少しずつ進ん でいます。小規模化には賛成ですが、bbw のように入所者にとって心身健やかに過ごすため の環境が揃っていれば、規模を大きくすることにより様々な可能性も増えるのだということ を知りました。 子どもたちは精神障がいをもっていたり、教育程度が低いまたは遅いという理由で bbw を 利用しています。彼らの精神的状況は、ほぼ家庭に要因があると思われるので、家族へのサ ポートについて質問したところ、 「父母を対象とした相談日を設けているが、スタッフが参加 を望む父母ほど参加してくれない、bbw をまだ信用していないのだろう。 」とおっしゃってい ました。ドイツの福祉現場でも日本と同様の課題を抱えているようです。 驚いたのは、bbw から実に多くの子どもたちが就職しているということです。子どもたち は 2,3 週間から 1 年間、企業や病院等で実習し、うまくいけばそのまま就職となります。国 の機関からは、企業に対して青少年への報酬分の 50%が助成されます。しかし、助成される 7 期間は半年間のみ。半年以降は何も助成されません。bbw の長年の努力が社会的な信頼を深 めたのだと感心すると共に、精神的な課題を抱える子どもたちを理解しサポートしようとす るドイツ人の温かさを感じました。しかし、この施設で生活できるのは、例え就職先が見つ からなくても 3 年間と決まっています。子どもたちの様子を見たところ、障がいの程度は重 くはないようです。施設を出た後の子どもや、障がいの程度が重い子どもへのサポートにつ いて気になりましたが、時間に限りがあり質問することができませんでした。施設の方に「障 がい者」をどのように捉えているのか尋ねると、 「彼らと過ごす中で彼らの持つ様々な力に驚 かされると同時に、彼らが社会で生活するにはどうしても支援が必要だと思う。 」とおっしゃ っていました。私自身も授産施設で働いていた頃、多くの障がい者がもつ鋭い感性や能力が 生かせる場はないものかと考えていました。日本には施設利用者のアート的才能を伸ばそう としたり、様々な手作業を請け負って収入に結びつけようとする施設はありますが、職を得 るまでの腕前になってもらうには圧倒的にスタッフが不足しています。bbw では一人の子ど もにつき 3 人のスタッフが担当となり、彼らのスキルアップと精神的ケアや就職活動を徹底 サポートしているそうですが、スタッフ不足の課題は、例えば地域のボランティアに協力し て頂くことでカバーできないでしょうか。 精神障がいに限らず、様々な施設へボランティアが入るようになれば、障がいへの理解が 広がり、障がい者のある人もない人も皆が同じ社会で生活できるようになるのではないか、 と bbw の開かれた施設を視察して感じました。 (議員) 当施設は、ドイツの南ヘッセン州に位置し、周辺地域の知的障がいを持った青少年の職業 訓練施設として 1889 年に創立された。施設に係る費用は国の労働省からの補助金で賄われて おり、450 名の訓練生と、彼らを指導する先生方 200 名で運営され、小学生以降の身体・知 的障害を持った青少年たちが職業訓練をしていた。 この施設は、障がい者に職業の差別をなくすための資格や社会のニーズに応えるための職 業訓練を実施し、自尊心を養うことで個々の能力の掘り起こしや就労の機会を与えることを 目的としている。そして、社会的な生活能力を欠く若い青少年にプロ的な仕事を身につけさ せるための総合的な職業訓練及びマーケング指導を行なっている。 訓練内容は 30 種類の分野に分かれ、ハウスキーピング、ランドリー、キッチンケーリング、 木材加工、金属加工、塗装、縫製、ガーデニング、農業、花木の栽培、などがあり、職種の 適正を見るため本人、保護者と専門の医師との面接を行い、11 ヵ月に渡り色々な職種に挑戦 させた後、本人にあった職種を本人・先生方との判断で導き出させる。青少年たちは敷地内 のアパートと敷地外近隣のアパートに住み込みとなり 3 年間の実習の後、協力企業に雇って 貰うシステムになっている。また、研修終了後は自宅に戻るシステムとなっている。 協力企業の掘り起こしについては、長年の地道な広報活動や見本市等のプレゼンにて数多 くの企業が協力企業となっている。この施設の運営経費は、国の補助金で賄われていておお 8 よそ1人当たり年間 13 万ユーロの経費を要するが全額国の経費で賄われており、障がい者を 雇い入れる企業にも採用が決まった段階で給与の半額が補助されるシステムになっている。 障がいのあるの青少年の職業訓練施設を視察したが、日本のように重度から軽度までの障 がい者支援施設はまだ完備されてなく重度については、家庭での支援施策が講じられている。 比較的軽度の障がい者の社会進出の支援施策としては、障がい者の段階別の職業支援が公的 に日本でも必要と考える。 (3)代替エネルギーへの取り組みについて ブレシア廃棄物発電・排熱利用プラント(A2A社) 9月30日(月)午前9時~ 視察テーマ:代替エネルギーへの取り組みについて ブレシア廃棄物発電・排熱利用プラントは、1998 年から稼働しているプラントで、ブレシ ア市のごみ処理計画の一部として建設された。 ごみを可能な限りきれいに処理して、出来るだけエネルギーを作るという事が主な目的で ある。 都市の公道には「紙」、 「プラスチック」 、 「ガラス・缶」 、「台所ごみ等のオーガニック系ご み」、 「それ以外のごみ」を分けたごみ箱があるが、このプラントには「それ以外のごみ」し か運ばれて来ない。 「紙」 、 「プラスチック」 、 「ガラス・缶」 、 「台所ごみ等のオーガニック系ご み」はそれぞれ専門の処理施設がありそこに運ばれて処理される。 このプラントは、リサイクル不可能な残留廃棄物を燃焼させることにより、環境に配慮し た電力や地域暖房などの熱源を生産している点に特徴がある。また、3 つの燃焼ラインで構 成されており、その内の 2 つは 1998 年から稼働してい るが残りの一つは 2004 年に稼働した。 もう一つの特徴として、プラントは全てがダブルにな っており、1 つが故障しても停止するという事はない。 この施設の敷地面積は 16 万㎡あり、その内の約 4 万 ㎡が建物施設となっている。火格子は約 100 ㎡あり、年 間に燃焼できるごみの量は 80 万トンである。エネルギ ー生産について、電気よりも熱の方が生産効率が良く、 生産量については、電気は 600 ギガワットまで発電でき、熱は 800 ギガワットまで発熱する 能力がある。2012 年には 73 万 6 千トンのごみを処理し、電力は 587 ギガワットを発電、熱 9 は 785 ギガワットを発熱した。このため、40 万トンの 二酸化炭素同等の発生を防ぐことができ、節約できた エネルギーは 15 万 tep である。 生産された熱エネルギーは、遠距離暖房という形で ブレシア市に配られる。 真冬は、80%以上の効率を達成する。住宅の暖房が 無ければこの効率は達成不可能である。 また、廃棄物の環境汚染を防ぐための汚染度測定がある。これは、ろ過の手前とろ過の後 にあり、ろ過の前はどの程度のものが出るかという予測がなされ、後では実際に出たものが 測定される。 施設で許されている汚染レベルはイタリア国家の許容レベルより厳しくなっており、実際 に出された残渣物の汚染度も施設で許容されているレベルの上限には達しないため、優秀な レベルにあるといえる。 ○ A2A社 A2A 社は、イタリア最大の民間公共事業会社で電力 大手。従業員数約 8,500 人。 AEM Spa Milano と ASM Spa Brescia が合併して 2008 年 1 月に設立された。その後、AMSA、Ecodeco の 2 つ の環境企業を買収。電力の生産・販売・供給、ガスの 販売・供給、地域暖房ネットワークを介した熱の生 産・販売・供給、廃棄物管理などを行う。 およそ 300 万トンの廃棄物を扱うイタリア国内の環 境セクターにおけるリーダー的企業で、顧客数・売り上げにおいて、イタリアの旧公営企業 の中で第一位、地域暖房分野においても第一位、電気容量及び販売量において第二位、ガス 販売において第三位という地位を占める。 ブレシア廃棄物発電・排熱利用プラントは、A2A 社が所有するごみ処理施設で、1998 年に 建設された。有効なリサイクルが出来ない廃棄物から、電力と熱エネルギーを作り出す。 プラントは、3 つの燃焼ユニットで構成されており、その内の 1 つは最先端テクノロジー によるバイオマス燃焼ユニットになっている。また、周囲の景観や環境に調和するようデザ インにもこだわって建設された。2006 年にはコロンビア大学から世界一のプラントであると 評価され賞を受けている。 ≪主な質疑≫ 問:発電量は常時どの程度か。 答:3 つあるラインの内、120 日程度はいずれか一つがメンテナンスに入ることから 80 メガ 10 ワットが 50 メガワット程度になる。そのため、1 年間の内 120 日くらいは 50 メガワッ トを発電し、残りの 240 日は 80 メガワットを発電しているということである。 問:火格子から出たごみや、ろ過された残りのごみの処分はどうしているのか。 答:火格子から出たものは専門会社に売り、その専門会社はセメントの生産に使っているよ うである。また、ろ過後の汚染物資や粒子などは、活性止めをした後に、ドイツの深い 溝山の底に砂の代わりとして埋められるようである。 問:最終処分の検査はどうしているのか。 答:常時、先方からの証明書を要求してロッドごとにどのようになったかを確認している。 問:日本では、このような施設を作るとなると住民から反対の声が上がるが、その点につい てはどうであったか。 答:ここでも同様に反対の声は上がった。当プラントは 20 年前に着想したが、当時はごみ処 理の問題があり、民間団体や市民の代表者等と会合を開き話し合った結果、理解を得て 設計に至った。現在でも日曜日に市民への説明会を行っている。 そこでは、当施設の目的や役割、特長や運営状態に加えてこの施設が無かったら出され るごみをどうするのか、当施設が環境に配慮し、市民の健康増進にも役立っていること を繰り返し説明している。 【議員所感】 (議員) イタリアのブレシア市にある、廃棄物発電・熱利用プラントを有する電力大手A2A社を視 察しました。A2A 社は、有効的なリサイクル方法が確立していない廃棄物を焼却することに より得られる、電力と熱エネルギーを作り出すことを目的に、AEM Spa Milano 社と ASM Spa Brescia 社が合併して、2008 年 1 月に設立された企業で電力の生産・販売・供給、ガスの販 売・供給、地域暖房ネットワークを介した熱の生産・販売・供給、廃棄物管理などを行って います。 プラントは、周囲の景観や環境に調和するようにデザインにもこだわって建設されており、 同時に、環境への対応として、建設費の約 50%を燃焼ガス浄化システムや環境保護に関わる 設備に投資を行っているとのことでした。 日本国内においては、1990 年代以降、バイオマスは二酸化炭素削減(地球温暖化対策) 、 循環型社会の構築などの取り組みを通じて脚光を浴び、旧来の薪や炭などの利用に加え、バ イオマスエタノール、バイオディーゼルなど各種のバイオマス燃料の利用も拡大しています。 そもそも高度成長期以前の日本では、落葉や糞尿を肥料として利用していたほか、里山か ら得られる薪炭がエネルギーとして活用されてきました。 石油起源の資材、燃料などへの置換により、顧みられることが少なくなりましたが、近年、 廃棄物処理コストの高騰などから高度利用を模索する地方自治体が増えてきており、環境保 護団体が注目しています。また RPS 法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特 11 別措置法)施行に伴い、各電力会社では火力発電所での石炭と間伐材等との混焼が進められ ており、実証試験の段階から本格実施へと移行しています。 2002 年(平成 14 年)12 月には、循環型社会を目指す長期戦略「バイオマス・ニッポン総 合戦略」を閣議決定し農林水産業からの畜産廃棄物、木材や藁、工芸作物などの有機物から のエネルギーや生分解性プラスチックなどの生産、食品産業から発生する廃棄物、副産物の 活用を進めており、「バイオマスタウン」等の構想があります。しかし、2003 年度から 2008 年度までに 214 事業が実施されているものの、効果があると判断されたのは全体の 16%の 35 事業であり、総務省は事業改善を求めています。 2011 年 3 月には総務省の報告書においてこれまでの政策の評価が行われ、バイオマス関連 施設の約 7 割が赤字であるなど、厳しい状況にあることが指摘されており、特に林地残材の 98%、食品廃棄物や農作物非食用部の 70%以上が活用されていないなどの課題が指摘されて おり、関係各省に対して利用促進の勧告が行われています。 成田市においては、老朽化したクリーンセンター焼却施設に変わる新たな施設として、富 里市との共同事業により「成田富里いずみ清掃工場」を整備し、平成 24 年 10 月から供用を 開始しています。 成田富里いずみ清掃工場の余熱利用については、高圧蒸気を利用し、蒸気タービン発電機 により、最大 3,000 キロワットアワーを発電しており、ここで発電された電力は、清掃工場 内において 2,400 キロワットアワーを使用し、その余剰電力は電力会社に売電されています。 また、清掃工場から発生する余熱を利用した、温浴施設を建設する計画もあります。 この施設は、温水プールの他、露天風呂や多目的広場、遊歩道などを合わせて整備し、高 齢者や障がいのある方、その付添いの方の利用に配慮されたものになる予定です。 この付帯施設で使用するエネルギーについては、基本的に蒸気タービンで使用した後の低 圧蒸気を活用し、場外に一定量の熱を供給する計画となっています。当然その周辺の環境を 最大限生かし配置計画されたものであるが、施設の維持管理については、一考の余地がある ように思います。 しかし、一番大事なことは、焼却ごみを排出していることの意識を常に持たなければいけ ないことだと思いました。 (4)高齢化社会における高齢者の自立支援策について 公立老人ホームレジダンス・アベイ 10月1日(火)午前10時~ 視察テーマ:高齢化社会における高齢者の自立支援策について フランスには 3 つのタイプの老人ホームがある。1 つ目は、公共の施設。2 つ目は、各種団 12 体が一緒になって行っているもの。3 つ目は、民間が運営するものである。 公立老人ホームレジダンス・アベイはその名のとおり公立の施設であり、1969 年に施設の所 在するサン=モール市を初めとする 4 つの市町村が合同で建設した。その後 2000 年に施設の 大改修がなされ現在に至っている。 施設への入居は、60 歳以上から可能だが、60 歳で入居する方はほとんどおらず、入居者の 平均年齢は 85~87 歳位である。また、施設で生活する入居者の収容可能数は 209 人である。 現在は、介護が必要な方やそれほど必要のない方等、様々な高齢者が入居しており、その内 の 46 人がアルツハイマー病を抱えている。アルツハイマー病を抱えている方はその症状の重 さによって生活する階を異ならせるなど、常に入居者に目を配れるよう工夫している。 この老人ホームでは、入居者が当施設を自分の家だと思って活動的でいられる場でなければ いけないという哲学を持っている。そのため、入居時は、入居申込者自身が入居を望まない 限り受け入れを認めていない。また、入居者に対しては 2、3 ヵ月に一度本人の意見を聞く場 を設けている。 また、開かれた施設を理念としているため一般人の出入りも自由となっている。 入居者個人の部屋の広さは 23 ㎡であり、部屋の入り口には個人名の入った表札があり郵便受 けも個人ごとにある。また、入居時は部屋には家具等全くない状態であるため、入居者に自 身の使用していたものを持ち込んでもらうようにしている。そして、自分の家または部屋と して認識してもらうため、部屋の中の装飾やデコレーションは自由に行えるようになってい る。 施設内では、クラブ活動が毎日行えるようになっており、種類はフローラルアートやアー チェリー、映画等数多くのものがある。そのためのスタッフが 5 名おり準備作業を行ったり 指導員として参加している。また、施設では入居者や部外の一般人も対象に様々なサービス を提供しており、美容院や一時保育所、簡易スポーツジム、シアターなどがある。このうち の一時保育所については、一般の方のためというだけでなく、入居者と一時保育所に通う小 さな子どもたちとのふれ合いや交流を持たせるという施設側の考えが反映されている。 さらに医療ケア付きの施設であるため、医師や看護師、介護士、作業療法士が常駐し、入居 者専用の薬局等がある。入居者は、医師の中から自身のコーディネーターとしての役割を果 たすホームドクターを決めており気軽に相談できるようになっている。しかし、医療ケア付 きということを感じさせないように医師等は常時白衣を着ておらず、必要な場合は使い捨て の上着を着て対応している。 入居者は、一度この施設に入ると、最期までいられるため要介護度が高くなっても施設で 生活することが可能である。 施設の料金は、入居者一人当たり一日およそ 80 ユーロであり、内訳は 3 つに分かれ、住居、 ケア、介護となっている。1 ヵ月に換算すると約 2,800 ユーロである。 この料金は県が定めており、パリ近郊の他の施設と比較すると当施設は安い方である。 一方、施設の支出の 70%は職員の給与となっており、10 人の入居者に付き 7 人のスタッフが いる。また、フランスにおいて年金額はそれほどもらえないため、収入の少ない入居者には 社会保護として不足分について財政的な援助がある。 13 ≪主な質疑≫ 問:施設の入居率は 100%か。 答:ほぼ 100%である。 問:同様の施設が沢山あるのか。 答:県内に 3 つほどあるが、先駆的なものに該当するため沢山はない。 問:医療ケア付き施設というのを感じられないようにしているということだが理由は。 答:当施設は病院ではなく、あくまでも入居者にとっての自宅であるということを理念とし ており、医師が白衣を見せて入居者が暗い気持ちにならないように配慮しているためで ある。 問:日本では介護士等への待遇が悪く離職率が高いが、その点はどうか。 答:当施設内に介護士の職業訓練センターがあり、この施設で研修を行うなどよく知っても らっているため雇用しやすく離職も少ない環境にある。 問:施設入居時に一時金等の費用が発生するか。 答:公共の施設であるため一時金等は発生しない。 問:施設入居時に困窮して困っている人を優先的に入れるということは行っているか。 答:当施設を合同で建設した 4 つの市町村が部屋の権利を持っており、例えば入居者が亡く なった場合は、その亡くなった方が以前住んでいた市町村が次の入居者の決定権を持つ ことになっている。 問:待機をしている人はどのくらいいるか。 答:4 つの市でそれぞれ待機者がおり、詳細な数字は分からないが、毎週 10~15 件ほど入居 希望者の申込書を見ているため沢山いることは間違いない。 【議員所感】 (議員) フランスでは、公共、団体、民間が経営する施設があるが、当施設は公共の施設で 1969 年に 4 つの市町が合同で運営するに至り、①高齢者の自立生活能力を推進すること、②外部 に開放された施設であること、③内部の活性化を図ること、の 3 つの経営哲学をもって運営 されている施設である。 施設内を案内していただくと、入居者の個室のほか、食堂、 売店などもあり利用されている。生き生き保育所も兼ねて、外 部の子供を入所させているので、親が施設に来所し、入居者と 接する機会が多いなど特徴的である。また、美容室やスポーツ ジムもあり入居者のほか、外部の人も利用できる。そして 200 人が座れるシアターもあり、ショーなどが 1 ヶ月に 2 回程度開 催されていて、ここも外部の人が利用可能である。 入居者の個室は 23 ㎡で何もなく自分で飾りつけることが出来る。表札をつけ郵便受けもあ 14 り自宅という意識を持たせる。施設内には入居者のかかりつけ医師がおり、いつでも相談で きるなど当施設に入居したら最期までという方が多い。 施設には 60 歳から入居できるが、自分でこの施設を理解し、自分の家庭だと思って入居 したいと思わなければ入所させないとのこと。現在入居者は 209 人おり、その平均年齢は 85 ~87 歳で、費用は 1 人 1 日当たり 80 ユーロがかかるという。費用は住居、ケア、介護に充 てられている。また、運営費の 10%が職員の給与に充てられ、10 人の入居者に 7 人のスタッ フが介護に当たっているとのこと。介護士については、訓練センターが近くにあり当施設に 就職しやすい環境となっている。そして、施設入居待機者については、出資した各市町間の 持ち分に応じて部屋の割り当てが決まるため多いとのことである。 フランスでも日本と同じように、高齢者人口の増加について類似性がみられます。働ける 年齢層や労働人口の減少が続いており、働いた年数と、退職後の年数がほぼ同じというよう になってきています。日本では 2000 年に介護保険が導入されたが、今後はそれだけでは十分 ではなく、本当に困っている人達のための施設が必要とされます。そういった点からも、も っと施設の充実を考えていかなければなりません。 (5)少子化防止対策について クレテイユ家族手当金庫 10月1日(火)午後2時~ 視察テーマ:少子化防止対策について フランスの家族政策については、家族手当等の経済的支援が中心となっていたが、1990 年 代以降、保育サービスの充実へとシフトし、その後さらに出産・子育てと就業に関して幅広 い選択ができるような両立支援の環境整備を強める方向で政策が進められている。これは、 フランスでは子どもを持つかどうかは女性が決定権を持っているのではないかと考えたこと に起因している。1970 年頃までは、女性は家で仕事をするものだという考え方があったが、 70 年代後半から「自立したい、子供をもっても働き続けたい」という希望が増え、このこと を踏まえて、女性の選択した道を尊重し、それに沿った政策を進めていくという方向に政策 を転換した。 現在、約 64%の夫婦が共働きで、3 歳以下の子どもを 1 人以上持っている。そして、1 人 の子持ち女性の約 70%は仕事を持っている。しかし、子が 3 人以上になると、仕事と育児を 両立して行う人は 30%以下に下がってしまう傾向がみられる。この結果を踏まえて、親の支 援を行うため、保育援助という政策を進めてきている。 15 保育援助について、フランスでは 3 歳から 6 歳の子どもはほぼ全てが保育学校に通ってお り、保育に多様性が見られるのは 3 歳未満の子どもである。3 歳未満の子どもの保育サービ スは、大きく分けて、保育所をはじめとする施設における保育と、認定保育ママ等による在 宅における保育とがある。伝統的には認定保育ママによる保育の方がフランスの保育援助の 主流となっている。 認定保育ママは、県政府により認定される保育サービスの提供者で、一定の職業教育を受 けることが義務付けられている。主に市町村が運営する家庭保育所に雇用される場合と、親 と直接雇用契約を締結し報酬を受けて保育する場合とがあり、親と直接雇用契約を結ぶ場合 は、認定保育ママの家庭に子どもたちを連れて行き両親が働いている間、預かってもらうと いう形を取っている。そして、認定保育ママ 1 人につき 4 人まで子どもを預かれる。 認定保育ママになろうとする者については、その住居や個人の能力が一定のレベルに達して いるか、職業訓練を受けているか等、厳しい検査をして選定している。そのための認定保育 ママの中継地というものを用意しており、レベルアップにつなげている。 集団保育と認定保育ママを比較すると、フランス人は集団保育を好む傾向にあるが、集団 保育はコストがかかる。クレテイユ市では、幼児保育に年 2 億 5 千万ユーロを支出している。 一方、認定保育ママの方は行政への負担は少ないが、両親の方に負担がかかってくる。こ のため、両方がうまく調和してやっていくことが望ましい。 また、集団保育については、10 年ほど前から保育に携わる民間の機関が参入しており、大変 積極的に活動している。この民間会社は、幅広い支援プランを立てて、親向けにサービスを 提供し、採算も上げている。これらの民間会社の集団保育はうまくいっており、行政が計画 して 2 年かかるものを低コストで且つ半年ほどで実施してしまう。また、子どもの幸福を第 一に考えて支援サービスをするという家族手当金庫の政策目標にも合致しているため、そう いった会社が新たに参入する際は、経済的援助を行っている。 母親の学歴と就業の継続との関係については、学歴が低いほど子どもが出来ると仕事を辞 めてしまう傾向があり、そういう方は子どもが成長した後に再び職に就こうとしても難しく、 一生失業者になってしまう場合が多い。そのため、近年では、子供が出来てもすぐ職を失わ ないよう、また出産後はなるべく早期に仕事に復帰してもらえるような政策をとっていくこ とが重要である、という考え方が出てきている。 ≪主な質疑≫ 問:64%の夫婦が共働きという事であったが、この割合の中には正式に婚姻している夫婦以 外も含まれるのか。 答:含まれている。フランスの社会保険制度では、結婚・非婚を区別しておらず、共に住ん でいて子供がおり家族としての体裁があれば夫婦・カップルを問わないとしている。 問:保育ママのレベルを厳しくチェックするということだが、あまり厳しいと申込者や採用 者が少なくなってしまうと思うが、どの程度の検査を行うのか。 16 答:特別な資格や証明書といったものは必要なく、県の担当部局や医師等から職業教育を受 けたり、保育ママ中継地において保育士から教育を受けるということである。 問:日本でいう看護師の資格といったものについてはどの程度まで教育を受けるのか。 答:衛生的な環境をどう整えるかや、幼児の体調管理、教育の面での最低限の知識について 教育を受ける。 問:産前産後休暇及び育児休暇の取得期間はどのくらいか。 答:出産予定日の 6 週間前から出産後 8 週間まで取得できるが、医師が出産にリスクがある と診断した場合は出産予定日の 8 週間前から出産後 8 週間まで取得できる。 しかし、実際は出産予定日の 8 週間前から出産後 8 週間まで取得する女性の方が多くな っており一般化している。また、パートナーも出産後に 2 週間まで休暇を取得すること が出来る。このパートナーの休暇については、フランスでは同性婚も認められているた め、養子をもらった場合でも取得が可能となっている。 育児休暇については、最長で 3 年間取得できるが、休暇取得中の給料は支払われない。 問:集団保育と保育ママは親の希望で選択が可能なのか。 答:両親が選択するというのが前提となっているが、現実的には空きがあればという事にな っている。 問:待機児童については、集団保育及び保育ママ制度を活用して、100%受け入れることが可 能となっているのか。 答:数字的には約 50%のカバー率となっている。 問:全く両親のいない子はどうしているのか。 答:公共の施設で預かっているが、最終的に引き取り手がいなければ、おじやおば等も含め たメンバーで会議を開き、養子に出すといった決定をしている。また、フランス国内に 養子の引取り手が現れなければ、国際マーケットでフランス以外に養子に出される場合 もある。 【議員所感】 (議員) 1994 年に合計特殊出生率(1 人の女性が産む子どもの数)が 1.65 まで下がったといわれる フランス。現在は 2.00 を保っている。成田市では 1.47 で、 まだ全国平均 (1.4)や県平均(1.31) よりは高いものの、その低さは否めない。進んでいく少子高齢化の原因になっている。子ど もを安心して産み育てる環境がなければ、この打開策は見いだせないだろうし、そもそも非 正規労働者が全体の 3 分の 1 を占めるような状態では結婚そのものにブレーキがかかってし まう。こうした構造的問題の見直しがなければ少子化対策も進まないと思えるが、ヨーロッ パで特出したフランスをから学ぶことができた。 視察したのは、パリ近郊の都市クレテイユ市にある全国家族手当金庫。フランスでは 0 歳 から 2 歳までの 3 年間が保育園。3 歳から 5 歳までが幼稚園。6 歳から 16 歳が義務教育とい 17 う。幼稚園はほとんどが公立で、入園にもさほど問題はないといわれている。問題は保育園。 女性の 8 割以上が働き、出生率が高いということはそれだけ保育園を必要としている。しか し 3 歳以下の子どもは全国で 240 万人、子どもを預ける施設は 100 万人分しかないという。 フランスでも、1970 年代までは、良い母親は家で子育てするという考え方があったという が、現在は女性の自立したい、子どもがいても働き続けたいを政策の基本にしている。その 為、子育てへの支援はしっかりとしている。育休制度は第1子から最長 3 年。支給される手 当は、最高約 6 万円で一人目の場合は 6 カ月、2 人目からは 3 年間もらえる。3 人以上の子ど もがいる場合 3 年間休職して月 6 万円を受け取るか、1 年間だけ休んで月約 9 万円を受けと るか選択できる。日本では、家族手当や子ども手当は企業が行う習慣があるが、フランスは 国が行う。最近では企業の支援も細るばかりだが、子育てに対する国の支援策の貧弱さが分 かる。何よりも日本と違うのは、1 年以上勤務した人が出産すると子どもが 3 歳になるまで、 20%から 100%の幅で短時間勤務を選べ、雇用主はそれを認める義務があることだ。ワーキ ングマザーには「8 割勤務」が多いという。幼稚園と学校は水・土・日が休みなのでフルタ イムで月・火・木・金を働くという。その際、給与は 8 割、福利厚生は正社員と同じで、こ こは日本のパート等の短時間勤務者とは大きく異なっている。 保育制度だが、フランスでは集団教育を好むらしい。それは研究から小さいうちから社会 に溶け込ませておいたほうがいいという結果があるためという。伺った話では、この集団保 育が一番お金もかかる(5 人につき1人の保育士がいないといけない)らしく、その数も足 りないため保育ママ制度も設けられている。この制度は一定の条件を満たした「公認保育マ マ」が自宅で 4 人まで預かるやり方。120 時間の研修を受けて、自宅が所定の要件を満たし ていれば登録できるので、少しの浸透はあるが、 「公認保育ママ」を雇うことになるので各種 保険料や、5 週間の有給休暇制度の間の給料を払うなど経済的な負担も多いという。民間保 育所も参入し、市でも施設建設や、運営に援助している。 (70%の稼働率がないと援助を打ち 切ることもあるという)公的保育園のお迎えは 18 時 30 分までだが、民間では時間に幅を持 たせているらしい。 最後に、日本との大きな違いについて。フランス では、国と企業が一体になって、「職場における親 の憲章」を発表し、自動車や建設などの大手企業 30 社がこの憲章にサインしているという。 「9 時前と 18 時以降は会議を行わない」「企業内に託児所をつ くる」など具体化されているという。また「父親出 産休暇」 (連続 11 日間)の取得者も多く、子育てへ の父親参加が当たり前になってきている。 「家庭と 仕事の両立」は性別に関係なく企業も国もそれを支えようとし、社会の常識になりつつある ようだ。政府や企業の子育て支援策の強化はもとより、成田市としてできる支援策を考える いい機会になった。 18 5. 団長所感 欧州先進都市の視察を終えて 成田市議会海外行政視察団 団長 上田 信博 (1) 都市計画制度・景観整備事情について(ドイツ/シュトゥットガルト市) シュトゥットガルト市は、市内の多くの地点で表面温度、風の強さ、向き、大気の汚染状 況などを継続的且つ詳細に調査しています。そして空気の流れる通り道を「風の道」として 位置付け、そこには出来る限り建築物を建てないよう都市計画等に反映させていました。 これは都市の大気中に滞留する汚染物質を流して空気を純化させることと、熱くなった都 市を冷やそうという目的を併せもっているということで、市の担当者は、 「最も大事とするこ とは、街全体の空気の流れを最適にすること」と話してくれましたが、まさに都市の換気を 図ることを都市計画に組み込むという魅力あふれる着眼点です。 そして 75 年も前からドイツ国内で唯一、気象課という課を設けて、気象に関する問題につ いて調査していたということにも驚きました。 都市の大気汚染やアスファルト舗装面のヒートアイランド現象などは、どこの都市でも発 生している課題です。シュトゥットガルト市の取り組みは成田市においても、ぜひ見習いた いものであり、視察で学んだことの中から今後に生かせるものを確認していきたいと考えま す。 (2) 障がい者雇用への取り組みについて(ドイツ/南ヘッセン州カルベン職業教育所) 障がい者雇用の取り組みについて、フランクフルトから約 15km北東に位置する南ヘッセ ン州カルベン職業教育所を視察致しました。同職業教育所では、一般的な教育についていく ことが困難な障がいを持った青少年たちを施設に住まわせて、様々な社会教育及び職業訓練 を行い、最終的には 3 年間で就業に至らせ社会的な自立を可能にするといった支援を行って おりました。 施設の方の説明を聞き、感銘を受けたのは、障がいを持った青少年一人一人に対して、施 設の担当者はもちろん、職業訓練学校の教師や障がいについての専門医、協力会社などの専 門家が協力してチームを組み色々な方法で粘り強く教育していくという姿勢でした。 施設も広く設備も素晴らしいものでしたが、情熱をもったスタッフの連携した支援という ものが最も大切であると改めて認識した次第です。 (3) 代替エネルギーへの取り組みについて(イタリア/廃棄物発電・排熱利用プラント(A2A 社)) 地球サミット以降、気候変動への対応が喫緊の課題となっています。化石燃料を消費する 19 という事は、引き換えに二酸化炭素を排出するということであり、気候変動に直結するよう な事象が指摘されています。 エネルギー生産と環境保護の両立が強く求められている中で、これからのエネルギー政策 の根幹となり、期待されているのが再生可能な代替エネルギーです。 日本ではこれまで原発にかなりの部分を依存してきましたが、東日本大震災における福島 原子力発電所事故以降は代替エネルギーの重要性が増しています。その代替エネルギーにつ いて学習するため、ミラノ近郊の都市であるブレシア市にある A2A 社所有の廃棄物発電・排 熱利用プラントを視察しました。A2A 社は、イタリア最大の民間公共事業会社で多数のプラ ントを保有する電力大手であり、ブレシア市の廃棄物発電・排熱利用プラントはコロンビア 大学から世界一のプラントであると評価されたほどの規模と性能を持っています。このプラ ントの特徴は、リサイクルできない残留廃棄物を収集して燃焼させ、熱や電力エネルギーに 転換していることです。施設内の燃焼面積部分の火格子は約 100 ㎡あり、年間に燃焼できる ごみの量は 80 万トン、エネルギー生産量については、電気は 600 ギガワットまで発電でき、 熱は 800 ギガワットまで発熱する能力があるというから驚きです。 成田にも富里市と共同で運営している成田富里いずみ清掃工場がありますが、実にその数 倍の規模です。同プラントで生成された熱エネルギー等はブレシア市に暖房用熱源として、 遠距離にもかかわらず配られており、市民生活に役立っております。また、同プラントでは、 建設から 15 年を経た現在でも日曜日には市民のための説明会を開催しており、当施設が環境 に配慮し、市民の健康増進にも役立っていることを繰り返し説明しているとのことでした。 世界トップクラスのプラントを目の当たりにして、これからのエネルギー政策のあり方につ いて成田市の環境政策と同一方向である事を再確認いたしました。 (4) 高齢化社会における高齢者の自立支援策について(フランス/公立老人ホームレジダ ンス・アベイ) 高齢化社会における高齢者の自立支援策について視察するため、パリ郊外のサン=モール 市にある公立老人ホームレジダンス・アベイを訪問致しました。当施設は、公立の老人ホー ムでありながら大変開放感に溢れており、施設内にはクラブ活動が出来るアトリエや美容室、 図書室などの他に、入居者以外も使用できるスポーツジムやシアターがあり、加えて入居者 と小さな子供たちとの交流も意識して、一時保育施設を設置し、開かれた生活環境を実現し ていました。これは施設自体を入居者の自宅と位置付けて一度入居したら最期を迎えるまで 生き生きと生活ができるように配慮しているためとのことです。施設は、近隣の 4 市が共同 で建設したため、待機者は多いとのことでしたが、ハード面、ソフト面共に入居者の幸せや 生きがいを第一に考えた施設の理念が高齢者の自立を支援し快適な住環境を作り上げている と実感しました。 (5) 少子化防止対策について(フランス/クレテイユ家族手当金庫) 20 少子化防止対策として、クレテイユ市の家族手当金庫を視察しました。家族手当金庫は、 家族に対する社会保障の一機関で、家族手当をはじめ様々な給付を行うとともに、育児と仕 事の両立を促すための環境整備や家族政策、地域と家族が一体となって行う育児支援の取り 組みを行っている公益法人です。 日本では家族手当は会社側が支給するものという認識がなされていますが、フランスでは 国から支給されています。同金庫で説明を受けた中で印象的だったのは、フランスでは子ど もを増やすかどうかの決定権は女性が持っていると考え、女性が子どもを産んだ後も働き続 けられる環境を整えるなど、女性の選択した道を尊重して政策を進めてきたという事でした。 フランスのように手厚くきめ細やかな家族政策をすぐに実行に移すことは難しいと思いま すが、参考になるべき点を検証すること、また、子育ての当事者や現場に携わる方々から幅 広く意見を聞き、子どもを持つ世帯への負担軽減を図るため多種多様なニーズを的確に把握 して、それらに応えるべく保育サービスの種類を増やすなど、子どもを産み育てやすい環境 づくりを仕事と生活の調和の観点から整備していくことが重要であり、少子化対策につなが るものであると感じました。 今回の欧州視察で見聞した 5 つのテーマは、いずれも今後の日本におけるテーマとも言え る大きなものばかりです。同時代に国家の垣根を越えて同じ問題・課題に取り組んでいる先 進地の事例を学んだ今、それらを住みよい未来を創出するための今後の施策に役立てるよう 努めてまいります。 21 《資料》 ■日程表 日次 月 日(曜) 1 9月25日 (水) 地 名 現 地 時 間 交通機関 行 成田発 12:15 JL407 フランクフルトへ フランクフルト着 17:20 専用車 着後、ホテルへ 程 <フランクフルト泊> 2 9月26日 シュトゥットガルト 終 日 専用車 都市計画制度・景観整備事情について視察 シュトゥットガルト市役所 (木) <フランクフルト泊> 3 9月27日 フランクフルト 終 日 専用車 障がい者雇用への取り組みについて視察 南ヘッセン州職業教育所 (金) 4 9月28日 <フランクフルト泊> フランクフルト発 ニース着 12:30 14:00 (土) LH1063 ニースへ 専用車 モナコモンテカルロ区へ モンテカルロ区内視察 <ニース泊> 5 9月29日 ニース発 ミラノ着. 8:30 12:30 専用車 ミラノ市内視察 (日) 6 9月30日 <ミラノ泊> ミラノ 9:00 専用車 代替エネルギーへの取り組みについて視察 廃棄物発電・排熱利用プラント(A2A社) (月) ミラノ.発 パリ着 15:30 17:00 AF1013 パリへ 専用車 着後、ホテルへ <パリ泊> 7 10月1日 パリ 終 日 専用車 (火) 高齢化社会における高齢者の自立支援策に ついて視察 公立老人ホームレジダンス・アベイ 少子化防止対策について視察 クレテイユ家族手当金庫 <パリ泊> 8 10月2日 (水) パリ 9:00 専用車 パリ市内視察 パリ発 19:30 JL406 成田へ <機中泊> 9 10月3日 (木) 成田着 14:20 通関後解散 22
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