Scene50 危険な建物 竣工時 既存不適格 建築物 法適合 建築物 竣工時 なのでしょうか 耐震診 断補強 法改正 法適合 建築物 不適合 ※2 建築物 不適合 ※2 建築物 既存不適格 建築物 0.3 未満 高い 0.3 以上 0.6 未満 ある 0.6 以上 低い 図2 増改築 法適合建築物 地震動に対して 倒壊崩壊する危険性 法適合建築物 耐震補強の例 耐震壁を増設 窓 既存不適格建物は、現行法規に適合するよう に改修工事を行わない限り、既存不適格建物 増厚して 補強 A [㎡] EXP−J ▼ 昭和○○年竣工 EXP−Jを設 けてもBに は遡及する 元は全 面開口が 塞がれる場合も・ ・ ・ ブレースを増設 B [㎡] 開口部にRC造 耐震壁を増設 窓 C [㎡] 既存不適格建築物 その他 昭和○○年 竣工 既設 新設RC 既存不適格建物の増築の例 EXP−J ▼ :新設壁 元は一部開口 実施設計 注 ※1:増改築部は法適合建築物 ※2:不適合建築物の増改築はできない ※3:新築部は法適合建築物 図3 建物の耐震性は Is 値 で示される。実際の判 定では、地域指標や地 盤指標によるが左記 の値が目安となる 構造計算 法に適合さ 竣工時 せるための 違法建築物 改修工事 法適合 建築物 構造耐震指標の目安 ls 値 法改正 法適合建築物 への改修工事 増改築 違法増築 法適合 建築物 現在 増改築 既存不適格 既存不適格 建築物 ※3 建築物 表1 K型壁ブレース補強 (構造強度だけではなく使い勝手や 意匠も考慮して補強形式を決定) 増改築部 現行法規に適合 X型ブレース補強 既存不適格建築物 ABに増築(C) する場合(例) (A+B) /2≧C A:遡及しない B:耐震診断基準に適合 既存不適格建築物と不適合建築物がある 世の中にある建築物は多種多様で、戦前から建っている古い ものも、現在の建築基準法に適合している新築のものもありま す。古い建物は建築当時の基準には適合していますが、月日が 経つと、法律や条例などの改正により新しい法律には適合しま せん。その場合に建物の取り扱いはどうなるのでしょうか。 建物の寿命は長く、寿命をまっとうするまでに建築技術のレ (A+B) /2<C A:遡及しない B:現行法規に適合 視線の妨げ になる 使用しながらの補強が できるため外周に補強 を設ける場合も多い 変更する工事によっても法律に適合しなくなることがありま す。一部には、建物完成後に増改築したことによって、既存不適 合となる場合もあります。 既存不適格建築物が一概に危険とは限らない 建築物であっても、耐震性能が高く評価されることもあり、既 存不適格建築物だからといって危険な建物とは限りません。 耐震診断を行って耐震性能が不足することが分かった場合や 耐震性能を向上させたい場合には、ブレースや耐震壁を新設し 建物の耐震性能が十分でないと、大地震時に被害が生じる恐 たり、耐震壁を増し打ちしたりする「耐震補強」を行います(図 れがあります。安全性はすべての建物に確保されることが望ま 2) 。建物前面のブレースは視線の妨げになったりしますが、最 しいのですが、すべての建物に耐震性能の確保を義務化すると、 近ではデザインと融合した耐震補強の事例も出てきています。 存不適格建築物の延床面積の半分以下とすること、既存不適格 建築物と増改築部分の間にエキスパンションジョイントを設け 別構造体とするなどの条件付きで、既存不適格建築物の一部を 残したまま増改築を行うことができます(図 3) 。 ただし、確認機関により全く異なる判断がされる場合がある ので、事前に確認機関と相談することが重要です。 既存不適格の部分については、耐震診断を行い安全性を確認 ベルは向上します。最新技術が駆使された建物でも、50 年後の 経済的な理由などから混乱が生じます。そのため当面の対応と 社会では古い技術で建てられた建物となります。技術だけでな して、 大人数が利用する公共的な施設である学校、 体育館、 病院、 や危険物を貯蔵する建築物などでは、耐震診断を行う努力をす 補強工事の全体計画を特定行政庁に認定してもらい、計画的に く、法律や条例なども「古く」なります。このような建築物を 劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、老人ホーム ることが法律で決められています。 既存部分の遡及工事を行うこともできます。事業予算や用途上 法律用語で「既存不適格建築物」といいます。ただし建築基準法 などの所有者に対しては、地震による安全性を確認する耐震診 では、原則として着工時の法律に適合することを要求している 断を行うよう努めることを法律で定めています。 この法律を 「耐 ため、 建物を建てたときの状態で継続使用する限りは、 法令の規 震改修の促進に関する法律」 (耐震改修促進法)といいます。 多数の人が利用する施設以外にも、一定の規模以上の建築物 既存不適格建物でも条件付きでの増築ができる 既存不適格建築物を、現在の建築基準法に適合させることが します。耐震性能が不足する場合は、耐震補強を実施するか、 の制約などから工事を実施できない場合にも、工事計画を提出 することで長期的に工事を行えるように配慮されています。 * * 定で不適合のまま存在することが許容されています(建築基準 建築基準法における耐震性能に適合しない既存不適格建築物 難しいケースがよくあります。防火性能と耐震性能が十分では 既存不適格と聞くと、建て替えなければいけない危険な建築 法 3 条 2 項) 。耐震性能や防火・避難に対する決まりごとに適 に対しては耐震診断を行うことで安全性を確認します。鉄筋コ ない場合に、両方満足させる増改築ができればいちばんよいの 物をイメージしますが、現況の調査書、新築・増築の時期、既 合しない場合も既存不適格建築物となります。 ンクリート造、鉄骨造、木造によって評価方法が異なりますが、 ですが、コストがかかるため工事を断念しなければならず、火 存建築物の平面図・配置図、設計されたときの法律への適合性 一方、建築当時は法律や条例などに適合したが、改築や増築 入手資料や調査結果より建物の強度、 粘り強さ、 月日における劣 事にも地震にも危険な状態のままになっています。火事は人が を確認できれば、既存不適格建築物であっても合法的に耐震補 を行い、法律や条例などに適合しなくなった建物を一般的に 化、建物のかたちなどから構造耐震指標 Is 値 (表1) を算出する 注意することである程度防げますが、地震が起こるのを防ぐの 強などの工事を実施することができます。まずは関連図書を集 「既存不適合建築物」といいます。たとえば、周辺の地盤高さを ことで大地震時の構造体の耐震性能を評価します。既存不適格 は現代の技術でも不可能です。 このため、 増改築部分の面積を既 め、現状を把握することが重要です。 132 本 PDF はエクスナレッジ刊「スパッとわかる建築構造」からの抜粋です。個人で利用される以外は、著作権者に無断で複製、印刷、配布は出来ません。 (株) エクスナレッジ 基本設計 改修 既存不適格建築物は、 建物竣工時から既存不適格建物、不適合建築物への変遷 構造計画 図1 (江尻憲泰) 133
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