計測車で取得する位置情報付画像を利用した 土地評価業務の研究と提案 日本土地評価システム㈱東京支社長 木村 智行 アクリーグ㈱情報技術部 行政事務支援課 時空間計測技術開発室 係長 大橋 貴之 はじめに 課税客体の正確な把握は課税庁の責務 現 状 ・市町村合併により市域面積の増大かつ職員数の抑制 ・現地調査員の労力がかかる ・作業者の熟練度による計測精度、判断基準の差異に伴う取 得データのばらつき 課 題 位置情報付画像を利用した技術応用 三次元計測車両の概要 GPS信号を受信す るためのアンテナ デジタルカメラ ルーフキャリアに2 台設置 GPS PCS DMI CCDカメラ ルーフキャリアに 2台設置(方向は 自由) 総合制御装置 IMU ジャイロ 車輪の動きをミリ単 位で計測する装置 車の傾き、加減速を 検知する装置 データ取得の概要 1 計測車が道路を走行し、1mごとに経度(X)緯度(Y) 標高(Z)の三次元データを取得 2 同時に現地ロケーションを5mごとに撮影 三次元座標データ(1mごと) 画像データ(5mごと) 5m 1m 研究の手法 (1)通常の土地評価に関する作業の分析 作業工程の把握 作業フローの把握 (2)三次元計測車両を利用できる作業工程の検討 用途地区、状況類似地域における概況調査 標準宅地、街路(路線)の現地調査 データを利用した見直し検討業務 (3)三次元計測車両を利用した応用手法の検討 幅員計測等 ロケーション情報、高さデータの利用等 作業の分析 三次元計測車両による作業フローの検討 人による計測 計測車両による撮影 用途地区見直し 二次元図面等による 洗い直し 状況類似地域見直し 標準宅地見直し 実走行・撮影 三次元画像 による検証 路線区分見直し 人による実査 写真撮影 図面等出力 価格形成要因データ取得 画像による計測 データ検証等 構築データによる 検証 各種協議・検討 三次元画像利用 実証実験の内容 実証実験は、ロケーション撮影に適した地方都市とデータ 計測に適した密集市街地の2つのエリアについて、実測を行 い従来の手法と比較検討しました。 ≪実験エリア≫ ①地方都市(栃木県鹿沼市) ②東京都内の密集市街地 ≪実験日時≫ 2007年7月から8月 ①実証実験詳細(栃木県鹿沼市) 栃木県鹿沼市においては、用途地区、状況類似地域の見直 しや現況把握に重きをおいて、標準地並びに街路の左右のロ ケーション状況の撮影を中心に実施。 (広角撮影) 市街地宅地評価 法地区 その他の宅地評 価法地区 カメラ2 標準宅地を中心として 前後50mを往復走行 車両 カメラ1 主要路線の起点から終 点まで往復走行 ②実証実験詳細(密集市街地) 都内においては、街路(路線)の現況把握とともに、幅 員等の詳細データの取得を目的として、より高精度の 現況撮影を実施。(前後2方向撮影) カメラ1 車両 カメラ2 調査エリア内の 全対象路線を撮 影 走行実験フロー(①②共通) 走行計画策定 対象地域の走行撮影 機材セットアップ GPS座標セット、各種微調整 走行データ解析 走行・撮影 走行データ編集 機材点検調整 データシステムセット 走行・撮影 幅員データ等計測取得 データ移動、機材撤収 作業量等 ① 栃木県鹿沼市 計測エリア 標準宅地の正面路線(鹿沼市全域) 走行路線本数 路線価地区:197路線 その他地区:244路線 作業人員 ② 都 車両運転者1名、計測管理者1名 内 計測エリア 幹線道路を中心とした併用住宅地区及び市街 地の中の住宅地区 走行路線本数 市街地:228路線 幹線道路:173路線 作業人員 車両運転者1名、計測管理者1名 計測補助者1名 ①鹿沼市における実験結果 現地調査 所要時間 データ整理 所要時間 従来 方式 約55h 約3h 計測 車両 1路線当り 作業効率 データ整理・取 得所要 約8分/ 標準宅地付近を 2方向撮影 1路線 約7分/ 約36.5h 約16h 約15%程度 効率アップ 1路線 路線価、その他 地区の平均 その後の作業が更に 効率アップ ①作業効率について 実験結果のとおり、後処理を含めますと、従来方式と比較し ますと、平均して約115%の作業効率の上昇 その後の作業の作業において更に作業効率が上昇 ・デジタルマップ上に位置を落とす。 ・標準宅地調書等も自動化可能 ・地図上から該当する写真をPC上に表示等 撮影画像(調査時) 左側カメラ 右側カメラ 撮影画像(処理後) 後処理後 ②都内における実験結果 同一地域における徒歩による現地調査との作業効率比較 現地調査 所要時間 データ整理 所要時間 1路線当り 作業効率 データ整理・ 取得所要時間 徒歩 20 h 4.5 h 3.7分/1路線 幅員等は 現地計測 計測車両 5.25 h 12 h 2.6分/1路線 市街地・幹線 の平均 徒歩 60∼80路線/1日 約30%程度 かなり頑張って 効率アップ 100路線/1日程度 データ精度等について 撮影した画像を基に、幅員データ計測 ※作業者の恣意的な判断を排除する為、 「徒歩」 「計測車による撮影」 各々別人が作業 「画像によるデータ取得」 人 両方式とも 画像より取得 既存データ・台帳等と比較し ±5∼15cm程度の誤差 従来の方法と ほぼ同等の精度で活用可能 保存された画像データをもとに、再度現場へ出向くことなく、 地区担当者以外の熟練者、管理者などを交えての再検証ができるというメリットも 幅員以外の路線データ 価格形成要因のデータ取得 舗装及び歩道の有無、連続性等 容易に取得可能 一部の不一致データについては、判断の個 人差が原因であったが、担当者間で画像 データを用いた再検証で、判断の統一 その他のデータ 計測車両による位置情報付画像では計測ポイン トの位置情報が残る 幅員を計測した位置を図上に表示可能 検証性に優れる ・現地作業員、画像データ計測員の判断の相違点の 原因究明が可能 ・過年度の計測結果の照合が容易 その他の有効性 ・高度利用や店舗等の連たん性、地域の品等といった総合的な 判断にも利用可能 ・各路線の詳細な現地状況の検証 ・現地未踏査の職員、熟練者等と画面上の確認で協議、判断 が可能 現地の状況に疑義が発生 計測車両による取得 従来方式 現場写真、航空写真から 検討 それでも不明は再度現地 調査 連続した撮影画像の為、 再度現地調査不要 新たな可能性 三次元位置情報から高低差、傾斜データを取得 より詳細で客観的な要因データの構築 精緻な評価の実現 実験より得られた利点 ①現地調査時間の大幅な短縮による作業の効率化 ②現況に近い立体的(三次元)な資料の構築、確認検証が可能 ③机上で市町村職員、管理者、委託事業者間での相互判断、高 度で総合的な判断が可能 ④取得データに疑義、誤りがあった場合でも、その場で再検証 が可能 ⑤計測ポイントの位置情報からデータ間、担当者間の誤差検証 が容易 ⑥経年異動状況の把握、判定が容易 副次的な効果 ①実査において計測不可能な地点(危険を伴う場所等)であっ ても取得画像からの計測であれば可能 ②調査漏れを防ぐことができる ③徒歩等での実査と比較して、付近住民への配慮の軽減 課題点 ①事前の作業計画が必要 ②軽自動車による撮影の為、狭小な街路、私道、階段、段差 のある街路での計測が不可能 ③急傾斜地、凹凸の激しい箇所等で、走行不可能なケースが 発生する ④渋滞の場合、前後の車両によりカメラの視界が確保できず、 後の計測作業に支障が出る場合がある まとめ 現況の経年変化の管理 効果大 幅員等の街路データ取得の効率化 各種検証作業の改善 更なる新しい手法で の検証、見直し作業 の可能性 行政における様々な 方面での有効利用 の可能性 現地調査の省力化 撮影画像、位置情報の有効利用 新しい付加価値情報の創造 おわりに 最後になりましたが、今回の実証実験に際しご協力を賜り ました、鹿沼市をはじめとした関係各位の御厚意に改めて深 く感謝いたします。 5Fオリオン展示ブースにてご覧頂けます 日本土地評価システム株式会社 東京支社長 木村 智行 Tel 03-5298-2294 アクリーグ株式会社 情報技術部 行政事務支援課 時空間計測技術開発室 係長 大橋 貴之 Tel 0285-24-3933
© Copyright 2024 Paperzz