感性情報に基づいた楽曲の特徴空間の可視化

情報処理北海道シンポジウム 2006
感性情報に基づいた楽曲の特徴空間の可視化
武井 亨
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エド ワード ・パック・エン・フィ
(函館高専情報工学科)†
はじめに
東海林 智也∗
ここで特徴量と感性情報に対して直接サポートベクター
携帯電話を主としてインターネット網がほぼ全世帯に
普及した現在,楽曲の配信サービスの需要がますます増
大している [1].ここで楽曲の数は膨大であるため,効果
的な楽曲検索技術が必要とされている [2].
従来の楽曲検索は楽曲名や歌手名などの文字情報を用
マシンを適用せずに,正閏相関分析をおこなってからサ
ポートベクターマシンを適用する理由は,サポートベク
ターマシンは特徴量の次元を圧縮することが出来ないた
めである.
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いるものがほとんどであったが,近年では「明るい曲」,
「 落ち着く曲」など の個人の感性に基づいて楽曲の検索
をおこなう技術が求められているため,感性情報と結び
つけやすい特徴を楽曲から抽出する手法が数多く提案さ
れている [3][4].
いずれの特徴抽出手法を用いるにしろ,一般に楽曲の
シミュレーション例
シミュレーション例として,実際に一人の被験者が 22
曲の楽曲を聞いて得た感性情報に従って特徴空間を判別
した結果を図 1 に示す.この図から特徴空間が非線形な
境界によって判別されている様子が分かる.なお今回は
サポートベクターマシンのカーネルとしてガウスカーネ
ルを用いた.
特徴空間は高次元空間となり,さらにあいまいな人間の
感性情報から作られた非線形な曲面を境として特徴空間
の領域が分けられるため,ある個人の特徴を観測者が直
感的に理解することが難しいという問題がある.
そこで本発表では楽曲の特徴空間の次元を 2 次元まで
落として画像として表示し,さらに非線形な判別曲面を
2 次元の曲線によって示すひとつの手法を提案する.こ
の様な可視化により,各個人が楽曲から受ける感性を観
測者が容易に比較検討することが可能となるため,心理
Fig. 1 感性情報に基づいた特徴空間の判別結果
学などへの応用も考えられる.
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提案アルゴリズム
本発表ではある曲を聞いたときに得られた感性を「明
るい」
「落ち着く」
「悲しい」のいずれかに分類して感性
情報とする.さらに楽曲の特徴量として西洋音楽の 12 個
の音階による音符の構成比率を用いる.ただしオクター
ブの違いは無視するため,ひとつの楽曲から得られる特
徴量は 12 次元となる.
この様にして得られた感性情報と曲の特徴量を基にし
て特徴空間内で非線形判別をおこない,特徴空間と非線
形な判別曲面を 2 次元画像として可視化する.本発表で
は以下のアルゴ リズムによって可視化を実現することを
提案する.
1. 楽曲から抽出した特徴量に対して主成分分析をおこ
なって次元を圧縮する
2. 圧縮した特徴量と感性情報に関して正閏相関分析を
おこなって感性情報と特徴量を結びつける
3. 特徴量に関する第 1,2 正閏相関得点に対してサポー
トベクターマシン [5] を適用し 特徴空間と非線形判
別曲面を可視化する
∗ [email protected]
† 函館市戸倉町
14 番1号
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まとめ
本発表では個人が楽曲から受けた感性情報を基にして
特徴空間を判別した結果を 2 次元画像として可視化する
ひとつの手法を提案した.また実際にシミュレーション
をおこなってその結果を図示した.
参考文献
[1] 帆足啓一郎, 上月勝博, 菅谷史昭, 楽曲配信サービ
スを支える音楽情報検索技術, 電子情報通信学会誌,
pp.529-534, Vol.88, No.7, 2005.
[2] 柏野邦夫, 音楽や映像の高速探索, 情報処理学会誌,
pp.381-386, Vol.47, No4, 2006.
[3] 辻康博, 星守, 大森匡, 曲の局所パターン特徴量を用
いた類似曲検索・感性語による検索, 電子情報通信
学会技術報告, pp.17-24, SP96-124, 1997.
[4] 東海林 智也, 関数データ解析を用いた楽曲からの
特徴抽出, 日本計算機統計学会第 20 回大会論文集,
2006.
[5] Nello Cristianini, John Shawe-Taylor, 大北剛訳, サ
ポートベクターマシン入門, 共立出版, 2005.