企業行動研究部会議事録 (第 235 回)

企業行動研究部会議事録 (第 235 回)
日 時: 平成 28 年 3 月 14 日(月曜日) 18:00-20:10
場 所: 中央大学駿河台記念館 3 階 350 号室
出席者: (14名 井上(真)
、上原、勝田、河口、北川、木下、栗栖、西藤、佐藤、
出口、菱山、古谷、古山、峰内、敬称略)
1.連絡事項
勝田部会長より開会が宣言され、学会報の配信確認及び 6 月開催予定の学会総会・研究
発表大会、並びにこれに先んじて開催予定のウイスキー工場見学ツアーについて案内が行
われた。次に西藤部会員より、本日出席の古谷部会員が、中央大学総合政策大学院におい
て博士号を授与されたことが報告され、古谷部会員より挨拶があった。出席者一同より拍
手が送られ賞賛の辞が多数述べられた。
続いて勝田部会長より、本日出席予定の増澤新部会員が仕事の都合で出席不能となり、
日程の都合がつかず、以降もほぼご欠席となりそうだが、部会入会を承認頂きたいとの確
認があり、若干の質疑の後承認された。
2.テーマ発表:『ラウダト・シ』、教皇フランシスコの環境に関する回勅(栗栖徳雄)
<発表概要・骨子>
教皇フランシスコはちょうど 3 年前の昨日教皇に就任した。本日発表の『ラウダト・シ』
については、環境における気候変動の内容についての真偽などのテーマには触れないこと
をご理解いただきたい。また最初に私が本学会に入会したきっかけについて少し話しをす
るのをお許しいただきたいとの発言が行われ説明に入った。
入会のきっかけは上智大学経済学部で経営倫理を教えておられ当学会の設立メンバーの
お一人であった山田經三神父(2015 年 7 月没)との出会いであった。*
教皇フランシスコは教会のドグマあるいはドクトリンを変えようとはしていない。彼は、
①Walk The Talk の人である。つまり言ったことは必ず実践する人である。②法律論やべ
き論を展開するのではなく、彼は常に弱者の立場、視点から現実を見て発言する。➂メデ
ィアが彼について言及するときには、Mercy、つまりいつくしみ、憐れみを具現した人、あ
るいは Periphery、つまり周辺、限界の状況にいる人びとを第一に考える人と云う表現が多
く見られる。
教皇フランシスコは大きなパラダイムシフトを具現・実践している人だと思う。266 代目
の教皇であるが、これまでのカトリック教会の歴史の中で、教皇ヨハネ 23 世(261 代、1958
~1963)以外では、初めての脱ヨーロッパ中心主義の教皇である。
(報告は教皇フランシスコに関する諸活動や考え方について縷々紹介された。詳細は省
略させていただき、事前配布資料等を参照いただくこととする)
<意見交換・質疑骨子>
・カトリックと言う言葉の意味は、もともとクレド(使徒信条)の終わりに出てくるカト
リック即ち「公同の教会」の意味を持っていたが、その後起こったプロテスタント運動
の影響もあり大きな変わりはないと感じているがどうか?
⇒教皇ヨハネ 23 世は第 2 バチカン公会議(1962-1965)を開き、カトリック信者だけ
でなく「世界の善意の人びと」にも呼びかけた。また彼の回勅『パーチェム・イン・
テリス』(地上の平和)(1963)も同様に全世界の人びとへ発信された。
一方今回の教皇フランシスコの『ラウダト・シ』も世界中のすべての善意に人びとに
向けて書かれている。並列表記をしてみると、カトリック教会、聖公会、英国国教会、
ルーテル派と並ぶがルーテル派あたりまで教義的にはほとんど同じと考えてよいと思
う。今年 10 月スエーデンで開催される宗教改革 500 年記念行事に教皇フランシスコは
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参加して共同の祈りをする予定がある。違いよりも一致していることを見つけ協働し
ていくが大切であると考えている。日本の内村鑑三が言っていることも直線的に見る
と大きな違いがあるように見えるがカトリックからぐるっと回って円で捉えると紙一
重の違いがあるだけかもしれない。
・最近の中東情勢との関係で質問したい。難民が多く発生している現下の状況での立場は
どうか?
⇒範囲は別として難民は受け入れるべきとの立場をとっている。なぜなら彼は最も弱い
人の立場で考えているからだ。私の個人的意見を言えば、日本は規模が小さくても難
民を受け入れる実験位はしてもよかったのではないかと考えている。
・シリア内戦に対するローマ教皇庁の立場は明確にされているか?
⇒あの地域が最もクリスチャンが迫害を受け殺されている地域だと認識して発言してい
る。教皇フランシスコはユダヤ教やイスラムに対してもそれぞれ正統な活動をしてい
る組織にはきちんと「共に祈りましょう」という態度で敬意を持って接している。
・ごく最近、ローマ法王とロシア正教の長と会見をしたが、これは今後どのように展開す
るか?
⇒彼が教皇になったとき、あるジャーナリストの質問に、自らをローマ教皇と言う宗教
上のヒエラルキーの頂点の立場の表現ではなく、
「ローマの司教」
(Bishop of Rome)
と答えている。
最近キューバでロシア正教のトップと会見したときも同じ立場で会った。
余談になるが、彼はアルゼンチン時代からつねに最も貧しい人びと(ホームレスやス
ラムの住人など)の立場に立って「他者のために!」ということがベースになってい
る。
最近 NHK で紹介されたが、30 歳の女性が東北の気仙沼市で編み物の会社を起こし現
地に貢献している。単なる奉仕活動ではなく、あくまでビジネスベースで雇用を創り
出し持続的な発展を図っている。このように仕事に向き合う変化はグローバルで起こ
っていると感じている。
・COP21 パリ協定について。各国のトップクラスに教皇が一人ひとりに問いかけていたが、
今後の世界に対する影響をどのように考えるか?
⇒教皇の影響力は今後カトリックに留まらず、世界に広がって行くと考えている。これ
からもたえずメッセージを発信していくと思う。また教皇はどのようにすると自分の
メッセージを広めて行くことができるかよく認識されている人だと感じている。
天皇皇后両陛下が東日本大震災の被災者と接している姿を見たある日本人の司祭が、
彼の本の中で「自分は司祭として両陛下に負けてしまった」と書いているように、教
皇も自らの行動を通じて大きな影響を与えて行くと思う。
・企業不祥事や LGBT については何かお考えを表示されているか?
⇒最後はそれぞれの人の心、良心で決めてくださいと表明されている。たとえば堕胎は
否定されているが避妊については一部エイズ等の予防のために認めていると思う。ま
た聖職者による幼児・子供に対する性的虐待等についても、きちんと対応すべきとし
ている。ゲイ、レスビアン等の性的傾向やカトリックの離婚・再婚等についても、そ
れぞれの人に寄り添い彼らが良心にしたがって決めるのを助けるという立場である。
「誰がいったい裁くことができるのか」と発言されている。
・世の多くの宗教の中で倫理と言うことについての評価はどのようなものか?
⇒教皇ヨハネ 23 世の第 2 バチカン公会議のあと、
期待に反して教皇パウロ 6 世が回勅『フ
マネ・ヴィテ』によって人工的産児制限を否定したことが大きな議論を呼んだ。しか
し教皇フランシスコは彼の弱い人や周辺の人に対する具体的ないつくしみの行動等に
よって人の痛みや苦しみがわかる教皇として評価が高まってきている。このような意
味で、つまり貧しい人や苦しんでいる人に寄り添って行こうとする司祭が増えてきて
おり、良い評価が得られつつあると考えている。
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・キリスト教の中にはエジプトのコプト正教会やイラクの東方正教会のように教義(三位
一体)がまったく異なるものがあると思うがこれらとの関係は?
⇒コプトは第 2 バチカン公会議にオブザーバーとして参加している。また初期のキリス
ト教時代のことを共有している人びととの関係の維持は続いている。
・COP21 パリでの発言以前に教皇が意見を主張したことはあるか?
⇒ある。但し政治的ではなく、宗教者として命の尊厳と共通善の観点から発言をしてい
る。昨年の米国訪問の際、国連でも「「戦争はすべての権利の否定であり、環境に対す
る悲劇的な攻撃である」と平和と環境へのアピールがあった。
*山田神父に関する部分は記載しておりませんことをご了解ください(以下略)
3.事前提出資料等について
勝田部会長より発言が促され佐藤部会員より事前に配布した資料「日本取締役協会の
コーポレートガバナンスオブザイヤー BEST5」等について提出の趣旨等が紹介され、
今後もウオッチしてゆきたいとの報告と若干の意見交換が行われた。
4.その他
会員より増田部会員の今後の出席予定について質問があり、勝田部会長より本人が大
学で要職に就かれたことも有る様で、部会の日程に出席できなくなったようであること
が説明され、今後議事録等の資料は継続してお届けの予定であることが確認された。
これを受け事前提出の資料について若干の議論が行われた。
勝田部会長より、今後のテーマについてメモレベルでももちろん良いのでテーマ発表
をお願いしたい。次回は前に多少議論を残した T 社問題等に絞った報告などもお願いし
たい。
河口例会幹事より 3 月 24 日開催予定のシンポジウムへの参加申し込みの追加呼びかけ
が行われた後閉会した。
次回日程:4 月 11 日(月)中央大学駿河台記念館 350 室
(文責:河口)
議事録送付先(敬称略):
[部会員]:朝倉、荒川、安藤、井上(真)、井上、岩倉、上原、遠藤(淳)、遠藤(梨)、大泉、
岡田(佳)、勝田、加藤、河口、川村、北川、木下、熊本、栗栖、桑山、小池、西藤、斉藤、
佐久間、櫻井、佐藤、柴柳、鈴木(啓)
、瀬名、潜道、高橋、武谷、田村、出口、徳山、
中島、那須、西井、西村、根城、野瀬、野田、比賀江、樋口、肥後、菱山、平塚、古谷、
古山、前原、増岡、増渕、松尾、松本、丸山、水島、水野、峰内、宮川、山口、山中、
山本、横舘、吉村、
[学会本部]:梅津会長、水尾副会長、高橋前会長、内田
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