給与所得者の課税範囲

(1) 課税関係の概要
給与所得の課税関係は、個人が永住者である居住者、非永住者である居住者又は非居住
者のいずれに該当するかにより次のように整理できます。
① 居住者(永住者)に該当する場合
区分
日本での
支払方法
源泉
課税
(*1)
徴収
税率
納付
期限等
給与所得の
源泉徴収税
国内勤務に基づ
く給与
有
国内払い・
国外払い
額表に基づ
必要
き甲欄又は
翌月 10 日
乙欄により
徴収
国外勤務に基づ
く給与
国内勤務に基づく給与と同じ
勤務が国内と国
外に渡って行わ
国内勤務に基づく給与と同じ
れた場合
(*1)支払事務を取り扱う事業所等の所在地により次のように区分できます。
区分
国内払い
国外払い
内容
国内の事業所等から支払われる給与(国外へ支払う場合
も含まれます)
国外の事業所等から支払われる給与(国内へ支払う場合
も含まれます)
② 居住者(非永住者)に該当する場合
区分
日本での
課税
源泉
支払方法
税率
徴収
納付
期限等
給与所得の
源泉徴収税
国内勤務に基づ
く給与
国内払い・
有
国外払い
必要
額表に基づ
き甲欄又は
翌月 10 日
乙欄により
徴収
・ 国内の事
業所から
給与所得の
支払われ
源泉徴収税
た場合
・ 海外の事
有
国外勤務に基づ
業所から
く給与
国内口座
有
額表に基づ
き甲欄又は
翌月 10 日
乙欄により
徴収
へ支払わ
れた場合
上記以外の
無
場合
不要
-
-
次の算式により、国内勤務に係る給与と国外勤務に係る給与を算出
し、それぞれ上記「国内勤務に基づく給与」と「国外勤務に基づく
給与」に準じて取り扱う。
勤務が国内と国
外に渡って行わ
れた場合
(算式)
給与、賞与の金額
+国外勤務期間)}
× {国内勤務期間 / (国内勤務期間
③ 非居住者に該当する場合
区分
国内勤務に基づ
日本での
課税
有
く給与
源泉
支払方法
納付
税率
徴収
期限等
翌月 10 日
20%
国内払い
必要
国外払い
必要(給与を支払 20%
翌月末日
う法人が日本に
支店等を有して
いる場合のみ)
が
翌年 3 月
う法人が日本に
20%の税率
15 日 が 確
支店等を有して
により日本
定申告期限
いない場合)
で確定申告
不要(給与を支払 個 人
をする。
国外勤務に基づ
無
く給与
国内払い
不要
-
-
国外払い
不要
-
-
20%
翌月 10 日
勤務が国内と国
国内勤務
国内払い
必要
外に渡って行わ
に係る給
国外払い
必要(給与を支払 20%
れた場合
与のみ有
う法人が日本に
り(*2)
支店等を有して
翌月末日
いる場合のみ)
が
翌年 3 月
う法人が日本に
20%の税率
15 日 が 確
支店等を有して
により日本
定申告期限
いない場合)
で確定申告
不要(給与を支払 個 人
をする。
(*2)次の計算により国内勤務に係る給与を計算します。
給与、賞与の金額 ×
{国内勤務期間 / (国内勤務期間+国外勤務期間)}
(2) 内国法人の役員に関する特例
① 国内法の取扱い
非居住者に該当する内国法人の役員の課税関係は、上記(1)③ではなく、下記イ)又
はロ)の課税関係となります。
これは、一般の従業員の場合、勤務地によって国内源泉所得の判定をしますが、内国法
人の役員の場合、役員の勤務地(国内勤務又は国外勤務)ではなく、その内国法人の所在
地によって、国内源泉所得を判定する特例規定があるためです。
なお、居住者である内国法人の役員や、居住者又は非居住者である外国法人の役員(内
国法人の役員を兼務している場合を除く)については特例規定がないため、上記(1)と
同様の課税関係となります。
イ) 海外支店に勤務する場合(役員である内国法人の海外支店)
勤務先
国内勤務に
日本での課税
有
基づく給与
支払方法
源泉
税率
徴収
納付期限等
国内払い
必要
20%
翌月 10 日
国外払い
必要
20%
翌月末日
国外勤務に
有
国内払い
必要
20%
翌月 10 日
基づく給与
(使用人兼務
国外払い
必要
20%
翌月末日
不要
-
-
役員に該当し
ない場合)
無(使用人兼務 国内払い・
役員に該当す
国外払い
る場合)
ロ) 現地法人に勤務する場合(役員である内国法人とは別の現地法人)
勤務先
国内勤務に
日本での課税
有
基づく給与
支払方法
源泉
税率
徴収
納付期限等
国内払い
必要
20%
翌月 10 日
国外払い
必要
20%
翌月末日
国外勤務に
有
国内払い
必要
20%
翌月 10 日
基づく給与
(*3 の要件に
国外払い
必要
20%
翌月末日
無(*3 の要件
国内払い・
不要
-
-
に該当する場
国外払い
該当しない場
合)
合)
(*3)次のいずれの要件にも該当する場合
 その子会社の設置が現地の特殊事情に基づくものであって、その子会社の実態が内
国法人の支店、出張所と異ならないものであること。
 その役員の子会社における勤務が内国法人の命令に基づくものであって、その内国
法人の使用人としての勤務であると認められること。
② 租税条約の取扱い
役員の給与について、国内法では、上記①のように内国法人の所在地を所得の源泉地と
考えます。
一方、租税条約のなかには、国内源泉所得の考え方が国内法と異なるものがあります。
この場合、最終的には、租税条約の規定が適用されるため注意が必要です。
次の表は、主な租税条約と国内法との関係、その場合の役員給与の課税関係を整理した
ものです。
国内法
日本での
支払方
源泉
との違い
課税
法
徴収
国内払
必要
締結国
所得源泉
アメリカ、イギ
その法人
無
リス、イタリ
の所在地
(*4)
有
税率
20%
い
ア、オーストラ
国外払
リア、カナダ、
い
納付期限
等
翌 月 10
日
必要
20%
翌月末日
不要
-
-
スペイン、韓
国、中国、ドイ
ツ、ブラジル、
フランス、ロシ
アなど
オーストリア、 その役員
ニュージーラ
有
無
の勤務地
国内払
い
ンドなど
国外払
い
アイルランド、 その他
フィリピンな
ど
有
場合によ
日本での課税が有る場合又は無い
って有
場合のそれぞれの取扱いは、上欄
と同様
(*4)租税条約には、国内法にある使用人兼務役員等の例外規定はありません。