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マニュアル
J.P. バロン
東京医科大学国際情報センター 教授
2005 年 9 月 28 日
© J. Patrick Barron
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このマニュアルは、皆さんが自信をもって
論文が書けるよう、お手伝いをするためにで
きました。最初に、ピア・レビューという概
念を理解してください。ピア・レビューとは、
peer(いわゆる同じ資格を持つ人、仲間とい
う意味)から成っています。このシステムは、
科学的な出版物が増えてきた 17 世紀に、論
文の科学的根拠を判断するのは、第 3 者が行
なう方が良いという考えから、スコットラン
ドで作られました。第 3 者が直接批判すると、
著者と対立が生まれるので、原著論文に対するコメントを、査読員 2、3 人が匿名で出し、編集
者と著者に戻るという仕組みです。これは、その後他の国々でも行なわれるようになりました。
このマニュアルのもう一つの目的は、査読員のコメントをよりよく理解し、それに対する返事
ができるようになるコツを教えること、また、査読者の役割を説明し、査読を頼まれている方の
立場を少し楽にすることです。
統一規定についても、このマニュアルである程度とりあげています。統一規定で説明している
ように、医学の原著論文の基本的な構造は、IMRAD 形式、いわゆる Introduction、Methods、
Results and Discussion です。もう一つは、著者がターゲットにしている学術誌の投稿規定につ
いての説明です。
特に、注意しなければならないことは、ス
ペーシングです。これは、縦のスペーシング
と横のスペーシングの両方がありますが、横
のスペーシングには、コンマ、ピリオドなど
の後のスペースや、括弧の中にはスペースを
置かない、括弧の外は必ずスペースを置く、
またパーセント、摂氏・華氏・角度の度数以
外は、数字と単位の間に必ずスペースを置く
こと、などの規則があります。これらの規則
を無視すると、ライティング能力が小学校の
低学年以下と見なされる危険性があります。また、統一規定にもよく書かれていますが、論文に
関する全ての文章をダブル・スペースで書くことは、常識です。これは、読みやすさのためと、
間に校閲の記入ができるようにするためです。ちなみに、パラグラフとパラグラフの間は、ダブ
ル・ダブル・スペースを使うことを勧めます。
タイトルページは論文の顔なので、査読者に不安感を与えないように注意し、どっしりとした
感じを与えるようにするべきです。
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キーワードは、統一規定で 3~10 までとされていますが、Target journal の投稿規定に 4 つ
や 5 つと指定してあれば、それに合わせるべきです。
また、略語を使う際には、抄録と本文の両方で、初出の際に説明する(スペルアウトする)必
要があります。説明する際は、スペルアウトを先に書いて、括弧内に略語を大文字で書くのが普
通です。
また、このマニュアルでは、論文の概要を素早く把握するためには、どうすればよいかについ
ても説明しています。統計学的な重要性にも触れています。もう一つ、日本人の先生方が書かれ
た論文では、メーカーの名前は紹介してあっても、所在地を書き忘れているというミスが多く見
られます。
また、最近の倫理やインフォームド・コン
セ ン ト に つ い て の 傾 向 、 retrospective 、
prospective ( 遡 及 的 、 見 通 し ) と
randomization(無作為化)という概念も紹
介しています。推測は、なるべく少なくした
方がよいですが、場合によっては、
speculation(推測)は価値があるものです。
但し、それが推測であることを明確にしなけ
ればいけません。
もう一つ、medical publishing の黄金律と
して、”minimum length, maximum impact(最短のスペースで、最大限に、分かりやすいイン
パクトのある文章を書くこと)” があります。
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また、日本語で論文を出してしまえば、
永久にその中味を英語で書くことはできな
いという悩みを持っている方が多いと思い
ますが、条件が満たされていれば、二次出
版が許される場合があると、統一規定に説
明があります。それについても、このマニ
ュアルで分かりやすく述べてあります。さ
らに、非常に役に立つ、Manual of Style
についてもお話します。アメリカでも様々
な Manual があり、また医学英語コミュニケーションについての本は日本にも存在してい
ます。
最後に、チェックリストの重要性について触れています。以上がこのマニュアルの大体の目的
と内容です。
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