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グローバル事例にみる次世代型銀行店舗
~店舗チャネルの更なる進化を目指して
近年のスマートフォン等の普及に伴い、ダイレクトチャネルでの銀行取引が
増加している。従来主力であった店舗は、依然として取引の大半を占める主要
なチャネルであるが、銀行における各チャネル間のバランスは確実に変化して
いる。
このようなチャネル構造の変化に対応して、海外の銀行ではチャネル全体を
最適化するため、店舗の位置付けを大胆に見直す事例が見られる。
一方で、国内の銀行においては、店舗でフルサービスを提供する戦略から抜け
出せていないのではないか。
澤村 弘泰
本稿では、弊社のグローバルリサーチの結果をもとに、次世代型の銀行店舗に
ついて紹介する。
2002年 アクセンチュア㈱入社
金融サービス本部
シニア・マネジャー
銀行グループ担当
店舗チャネル改革の必要性
ことを想定して、店舗の事務処理機能
サービス、営業時間、接客等が考えら
欧 州 の 銀 行 に 対 し て実施されたアン
を軽量化し、セールス機能強化にリソー
れる。
ケートによれば、2016 年に店舗チャネ
ル経由で商品を購入する顧客は約半数、
商 品 に よ っ て は 7 割 以 上 を 占 め る と
予測されている。このことから、店舗
チャネルは依然として重要なチャネル
であり続けることが分かる。
スを振り向けるといった対応だ。
海外の銀行では、チャネル全体を最適 一 部 の 店 舗 に お け る 提 供 商 品・ サ ー
化 す る 発 想 か ら、 店 舗 の 位 置 付 け を ビスを限定することで、コスト削減を
大胆に見直す事例が見られる。店舗チャ
ネル改革のヒントとするため、海外の
先進事例を紹介する。
一方で、ダイレクトチャネル経由での
次世代型銀行店舗に向けた取組み
取引の割合は商品によっては 50% に
弊社が、グローバルの主要銀行を調査
迫ることが予測されており、主要チャ
した結果によると、次世代型銀行店舗
ネルといえるまでに成長している。その に向けた取組みには大きく つの方向
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結果、チャネル構成が大幅に変わり、
性がある。
店舗チャネルに求められる機能も従来
とは大きく変わってくると考えられる。 1 つは(A)店舗で提供する機能にメリ
(図表 1)
例えば、残高照会や振込はダイレクト
店舗に来店するといった顧客が増える
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目指す取組みが考えられる。ある欧州
の銀行では、サービスレベルの低下を
最小限に抑えつつ、フルサービスを提
供する店舗を全体の 87% から 26% に
削減することに成功している。
営業時間によるメリハリ
地域や顧客のニーズに着目して、店舗
独自の営業時間やサービスを提供し、
顧客満足度や収益向上を目指す取組み
ハリをつける取組み、もう 1 つは(B) が考えられる。国内でも住宅ローンの
相談を土日に実施する等の例が見られ
提供機能を高度化する取組みだ。
(A)店舗で提供する機能にメリハリ
チャネルで好きな時間に実施し、ロー
をつける取組み
ンや保険等について相談したい時だけ
商品・サービスによるメリハリ
メリハリをつける観点として、商品・
るが、海外ではさらにバリエーション
が豊富で、平日の営業時間を延長した
り、無休店舗を設置する銀行も見られ
る。一方で、アウトレットモール併設
図表 1 取引チャネルに関するアンケート結果
Q: それぞれの商品について、どのチャネル経由で購入されていますか?/
されると思いますか?
預金
個人ローン
19%
27%
81%
2016
予測
21%
87%
79%
2010
2016
57%
55%
2010
13%
43%
45%
73%
住宅ローン
2010
2016
予測
予測
(年)
従来主力であった店舗は、依然として取引の大半をしめる主要なチャネルであるが、
各チャネル間のバランスは確実に変化している。
凡例: 店舗
出典:
ダイレクトチャネル等
EFMA, Multichannel Banking in Europe, Jan 2012
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店では土日のみ営業する等、営業時間
向上を目指す取組みが考えられる。例
入出金を伴わない取引であれば、ユー
を短縮する方策も検討の余地がある。
えば、店舗以外のチャネルも含めた全
ザフレンドリーなインターフェースの
チャネルから取得した顧客情報を統合
タブレット端末を店舗に並べて、顧客
化・分析し、店舗に来店した顧客への
顧客ニーズに着目するケースとしては、 おすすめ情報を提供する。営業担当者
顧客に合った接客を行うことで、顧客 はこの情報を元に顧客対応を行うこと
に操作を促す。もちろん、操作が分ら
接客によるメリハリ
満足度の向上を目指す取組みも考えら で、営業の際の的確なアドバイスが可
れ る。 専 門 知 識 が 豊 富 で 高 度 な ア ド 能になる。
バ イ ス が で き る ス タッフを配置する
ことで、富裕層顧客のニーズに応える
ことが可能だ。
(B)提供機能を高度化する取組み
今後、ターゲティング情報を RFID 機
ない等、顧客が困っている場合には、
店舗スタッフが応対することで、顧客
へのサービスレベルは担保する。
グローバル先進事例:取引シーンを
想定した店舗
能や顔認識機能と組み合わせることで、 海 外 の 先 進 銀 行 で は、 前 述 の 2 つ の
来店時に顧客を認識し、店舗入り口に 方向性を踏まえ、これまでとは異なる
設置したデジタル・サイネージ・ボー
店舗運営を実現している。
端末操作で手続きを進められるように
一方で、店舗職員の説明が無くても対
店 舗 チ ャ ネ ル で 提 供する機能にメリ ドにその顧客へのおすすめ商品を表示
ア イ ル ラ ン ド の AIB 銀 行 で は、 家 族
ハリをつけたら、次は提供機能を高度 できる時代が到来するだろう。
(図表 2)
連れの顧客が住宅ローンの相談を落ち
化させることが重要だ。
着いて受けられるよう、空港ラウンジ
事務処理機能のセルフサービス化
ITによるセールス機能の高度化
のように顧客がくつろげるスペースや
事務処理機能のセルフサービス化は、
セールス機能を高度化するためには、 商品・サービス提供時に、顧客自身の お子様向けのスペースを用意している。
店舗に対して、販売に直結する顧客の
イベント情報やターゲティング情報を
提供することで営業力を強化し、収益
することで、ローコストなオペレーショ
ンを実現する取組みである。例えば、
応可能な取引を希望する顧客に対して
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図表 2 店舗での商品おすすめの流れ(例示)
ATMを利用する場合
待ち時間
ATM待ちの間に、簡単な商品説明をモバイル
に配信
入出金
ATMで入出金した後に、商品購入画面へ
誘導
入店
店舗入り口に設置したデジタル・サイネージ・
ボードに、
商品名を表示
モバイル端末
対面での相談サービスを利用する場合
ATM
待ち時間
相談の順番待ちの間に利用できるように、
店舗内にタブレットを設置
相談
窓口職員の利用する端末におすすめ商品を
表示して、営業を支援
タブレットに簡単な商品説明を表示
デジタル・サイネージ・ボード
タブレット端末
窓口職員用端末
は、IT を活用したタッチセンサー型の
ストランの情報を表示している。情報
での取引履歴等の定量情報と、問合せ
テーブルやタブレットを配置し、セル
を見た顧客が提携したレストランへ行
内容等の定性情報を組合せて分析し、
フサービスでのオペレーションに顧客
くと優遇サービスが受けられる。支払
フルサービス店舗、軽量店舗等をどの
を誘導する試みが行われており、顧客
いの際、銀行が発行するクレジットカー
ような組合せで配置すべきか検討しな
の取引シーンに応じてメリハリをつけ
ドやデビットカードが利用されると、 ければならない。
た店舗運営を実現している。(図表 3)
銀行側にもメリットがあるため、提携
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グローバル先進事例:他業種との
コラボレーション店舗
先と Win-Win の関係を築くことがで
きる。
次世代型店舗プランニングにおいて
契 機 と す る た め、 店 舗 で 金 融 以 外 の 検討すべき観点
顧客の金融以外のニーズを捉え販売の
商品を取り扱う事例もある。
南アフリカの ABSA 銀行では、
カーディー
ラーとコラボレーションして店舗内に
自動車を展示している。購入を希望する
これまでに紹介してきたような次世代
型店舗への改革を成功させるために
は、4 つの観点でプランニングするこ
とが重要だ。
顧客に対して、自動車ローンや保険等 観点①:顧客ニーズに合致した店舗
も 含 め て、 総 合 的 な サ ー ビ ス を 提 供 ポートフォリオと店舗形態の検討
することで、自動車を梃子にして金融
どのような店舗をつくるか考える際に
商品を販売する取組みだ。
は、銀行全体における店舗のポートフォ
シンガポールの DBS 銀行では、店舗に
設置したタブレットに提携しているレ
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リ オ を 検 討 す る こ と が 必 要 で あ る。
顧客が各店舗にどのような商品・サー
ビスを求めているかについて、これま
観点②:顧客の動線を意識した店舗
レイアウトの確立
店舗形態が固まったら、顧客の店舗内
動線を想定して、レイアウト設計を検
討する。例えば海外では、相談カウン
ターを店舗の奥に設置し、相談しに来
店する顧客が店舗内を歩く動線を作り
出している銀行もある。相談カウンター
の手前には、相談内容に関連する商品・
サービスの紹介映像を表示 す る タ ブ
レット端末を配置し、相談の帰りに手
に取ってもらうことで、クロスセルに
つながるような店舗レイアウトを志向
している。
図表 3 AIB Lab の店舗概略
商談ブース
ATMコーナー
エント
ランス
タブレット端末
コーナー
エントランス
デジタル
サイネージ ボード
エレベーター
セミナー
スペース
オンライン
バンキングデモ
タブレット端末コーナー
商品説明カウンター
キッズ
スペース
商品説明カウンター
セミナースペース
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観点③:接客に優れた人材の確保
また、新たにセルフサービス化できる
店 舗 に お い て 顧 客 満足を勝ち取るた メニューを増やす試みも必要だ。口座
めには、店舗スタッフのコミュニケー 開設など、窓口でしか提供が難しいと
ションスキルも重要である。応対する 思われているようなサービスも、通帳
スタッフの接客スキルが低ければ、顧客 等の受渡しや本人確認をシステム化で
は店舗に足を運ばなくなる。海外の事
きれば、セルフサービス化をすること
例では、接客のプロフェッショナルで
も検討すべきだ。
あるホテルスタッフを雇用するケース
終わりに
もある。商品説明はシステム利用によ
り補完することで、接客スキルに特化
したスタッフ雇用も可能となる。
観点④:ローコストオペレーションを
実現するテクノロジーの導入
預金や振込等は ATM 導入により、セル
フサービス化が進んでいるが、さらに
顧 客 の 利 便 性 を 向 上できないか検討
すべきである。例えば、音声認識等を
活用して、画面操作に不慣れなお年寄
本稿では、次世代型店舗について紹介
した。弊社は金融機関専門のデザイン
会社であるアレン・インターナショナル
社と共同で、今回ご紹介した様な次世
代店舗のプランニング、デザイン、実
店舗の構築と幅広い店舗改革を海外の
金融機関で支援した実績がある。貴行
にてこのような取組みを検討される際
には弊社にお声がけいただければ幸い
である。
りの顧客でも自身でオペレーションが
できることを目指すなどの方策が考え
られる。
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