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1 北極圏水域におけるオイル流出(事故)に対処するためのフィールド

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北極圏水域におけるオイル流出(事故)に対処するためのフィールド・ガイド
編・著:オーウェンズ・コーストラル・コンサルタンツ(OCC)代表
エドワード・H.オーウェンズ
カウンタースピル・リサーチ・インク(CRI)
ローレンス・B.ソルズバーグ
マーク・R.ウエスト
モーリン・マックグラス
発
行:1998年9月
EPPR
Arctic Waters Field Guide
ワーキング・グループ
i
Disclaimer(直訳は否認声明)
お断り
本書(記載事項)は、北極海をとりまく国々が有している領海の確定やその他任意の水域におけ
る権利等に関する法的ポジションを何らゆがめるものではない。
表紙絵/クリストファー・ウォーカー「北極」
(36 インチ×48 インチメゾーナイトパネル
アク
リルポリマー仕上げ)
作者のクリストファー・ウォーカーは国際的に知られている画家で、カナディアン・ア
ートの perceptual realist(知覚現実主義者)として高い評価を得ている。彼はカナディア
ン・アーカイブスに入り、いわゆる「米国/カナダ1994北極海セクション」と呼ばれ
る歴史的な北極探検に同行画家として参加。この「北極」の絵画コンセプトは、このとき
の航海から得たものである。彼は現在、カナダ
ブリティッシュ・コロンビア州のカリカ
ムビーチで、芸術活動を続けている。
C.ウォーカー及び彼の作品(リプリントおよび原画)に関するお問合せは、ノースラ
ンド・イメージ社まで:
e-メール:[email protected]
ウェブサイト(ホームページ):http://nanaimo.ark.com/~nlimages
フリーダイヤル:1-800-799-5241
1
tel/fax:+1-250-752-0242
Arctic Waters Field Guide
ii
EPPRについて
The Emergency Prevention Preparedness and Response(EPPR)ワーキンググループは,
北極圏における緊急的な環境汚染の脅威に対処するための将来的な協力体制を整えるために設立
された。EPPRは,the Arctic Environmental Protection Strategy(北極圏環境保護戦略)
(A
EPS)の一環として機能している。1991 年,フィンランドのロヴァニエミで the Ministerial
Declaration(各国政府代表者会議)が開催され,カナダ,デンマーク/グリーンランド,フィン
ランド,アイスランド,ノルウェー,ロシア連邦,スウェーデン,アメリカ合衆国によって AEPS
が採択された。EPPR のほかに the Artic Monitoring and Assessment Program(AMAP)(北極圏
モニター&アセスメントプログラム), Protection of the Artic Marine Environment (PAME)(北
極海の環境保護), Conservation of Artic Flora and Fauna (CAFF)(北極圏の動植物保護), and
Sustainable Development and Utilization (SDU)(環境破壊を伴わない継続的な資源開発と活
用)が AEPS に含まれる。
EPPR は,北極圏に属する各国政府と住人とが,汚染物質の流出事故や北極圏で行われる活動
によってもたらさせる環境破壊を防ぎ,備え,対処するための場を提供している。
EPPR は National Contacts システムによって運営され,EPPR の事業計画の進捗状況を評価
し発展させるために,少なくとも年1回会合がもたれている。
(通常この手の組織に見られる)議
長はいるが,副議長も書記官(秘書官)もいない。EPPR はプロジェクトを開発運営するための
基金や maintain accounts(口座・EPPR としての独立した会計)を設けずに,いわゆる“lead
country principle”
(主要国の政府予算)で運営している。EPPR の全活動は各国スタッフによっ
てプレゼンされるが,そのプレゼン(を通して情報交換すること)そのものが EPPR プログラム
の重要な目的(ねらい)のひとつでもある。これまでに EPPR フォーラムはスウェーデンの Lulea
(1992 年),アラスカのアンカレッジ(1994 年),ロシア連邦の Norilsk(1995 年),カナダの
イエローナイフ(1996 年),グリーンランドのイルリサット(1997 年),フィンランドのロヴァ
ニエミ(1998 年)で開催された。
EPPR の仕事のほとんどは,北極圏の環境に対する被害規模を予測し緊急対処法を判断するこ
とと,被害を防いだり軽減するための力を養うことであるが,その中には以下の作業(仕事)も
2
含まれる:すなわち,リスク分析,放射能事故や大量のオイル流出のような緊急事態への対処法
の蓄積,環境問題に関する協定(書)の調整(評価),警告システム(警報)や連絡網(ウォーニ
ング・システムやコミュニケーション・ネットワーク)の評価,研究開発データを含む技術的情
報と経験の共有など。
Arctic Waters Field Guide
iii
謝辞
「北極圏水域におけるオイル流出事故のためのフィールド・ガイド」は,北極を取り巻く8カ
国が資金提供することに合意することによって生まれた。また下記団体からの資金援助により,
このプロジェクト(フィールド・ガイドの発行)は完遂した。
・ Indian & Northern Affairs Canada, Contaminated Sites Office, Yellowknife, NT
(
;ノースウエストテリトリー,イエローナイ
フ)
・ Office of Emergency Management, US Department of Energy, Washington, DC
(米国エネルギー省緊急事態管理事務局;ワシントンDC)
・ Oil Spill Recovery Institute, Prince William Sound Science Center, Cordova, AK
(オイル流出事故回復協会,プリンスウイリアム湾科学センター;アラスカ州コルドヴァ)
北極圏水域のフィールド・ガイド・ワーキンググループの指揮の下,次の各氏が(このフィール
ド・ガイドのために)資料提供した。
Dr. Yury Aleshin, EMERCOM of Russia(ユーリ・
博士,ロシア
)
Danielle Amat, Canadian Coast Guard (ダニーリー・アマット,カナダ沿岸警備隊)
Dr. Andrie Chen, Exxon Production Research Company, USA(アンドリー・チャン博士,エク
ソン・プロダクション・リサーチ社,米国)
Ed Collins, Environment Canada(エド・コリンズ,カナダ環境省)
Vladimir Davydov, EMERCOM of Russia(ウラジミール・
Peter Devenis, Peter Devenis & Associates, Canada
Larry Dietrick, Alaska Dept. of Environmental Conservation,USA
David Egilson, Environment and Food Agency, Iceland
3
,ロシア
)
Captain Thomas Fago, Swedish Coast Guard
Eugene Filatov, EMERCOM of Russia
Boris Galushkin, Russian Scientific Inst. of Civil Defence & Emerg.
John Goodman, Canada Coast Guard
Ann Heinrich, US Department of Energy
Dr. Laura Johnson, Environment Canada
Kjell Kolstad, SFT-Norwegian Pollution Control Authority
Kari Lampela, Finnish Environment Institute
Dmitriy Labanov, EMERCOM of Russia
Bruce McKenzie, BP Exploration, Alaska
Joe Nazareth, Ministry of Environment and Energy, Denmark
Walter Parker, US Arctic Research Commission
Captain Buzz Rome,US Coast Guard
Dr. Gennady Semanov, CNIIMF, Russia
Gary Sergy, Environment Canada
Yury Shishkin, EMERCOM of Russia
Duane Smith, Inuvialuit Game Council, Canada
Dr. Norm Snow, Inuvialuit Joint Secretariat, Canada
Dr. Gary Thomas, Prince William Sound Science Center, USA
David Tilden, Project Manager, Environment Canada
Cdr. Ross Tuxhorn, US Coast Guard
Arctic Waters Field Guide
iv
発行所:
Environment Canada, Prairie and Northern Region
Environmental Protection Branch, Northwest Territories Division
Suite 301, 5204 50th Avenue, Yellowknife, NT Canada X1A 1E2
カナダ環境省プレーリー,北部地域環境保護局,ノースウエスト・テリトリー部
X1A 1E2 カナダ
ノースウエスト・テリトリー
4
イエローナイフ
電話:+
50番通り5204
#301
1-867-669-4700
ファックス:+
1-867-873-8185
発行人:カナダ連邦環境大臣
執筆:エドワード・H.オーウェンズ(オーウェンズ・コーストラル・コンサルタンツ)
ローレンス・B.ソルズバーグ(カウンタースピル・リサーチ・インク)
マーク・R.ウエスト(
〃
)
モーリン・マックグラス(
〃
)
引用:Emergency Prevention, Preparedness and response (EPPR), 1998
Field guide for Oil Spill Response in Artic Waters 1998年版
Environment Canada, Yellowknife ,NT Canada, 348ページ
版権:Minister of Public Works and Government Services, 1998
Canadian government Publishing catalogue No.:En40-562/1998E
ISBN:
0-660-17555-X
このガイドのお求めは:カナダ環境省
Suite 301, 5204 50th Avenue, Yellowknife, NT Canada X1A 1E2
ファックス:+
または
1-867-873-8185
EPPR Working Group National Contacts のホームページ
(http://arctic-council.usgs.gov)へアクセス
印刷所:コピー・タイム・コミュニケーションズ
カナダ
ブリティッシュ・コロンビア洲
バンクーバー
グランビル通り427
(427 Granville Street, Vancouver, BC Canada V6C 1T1)
電話:+1-604-682-8307
5
Arctic Waters Field Guide
v
目次
EPPR について
i
謝辞
ii
1
用語集
1-1
2
はじめに
2-1
パート A-オペレーション(実践編)
3
主な対処法の説明
3-1
4
戦略(の立て方)
4-1
5
手段(具体的方法)
5-1
パート B-技術サポート(知識編)
6
オイル流出のタイプとその検知
6-1
7
事故周知(届,広告)と対処法決定のプロセス
7-1
8
北極圏の沿岸地域の特徴
8-1
9
参考文献
9-1
Arctic Waters Field Guide
1
1-1
用語集
Arctic Waters Field Guide
1-2
目次
1
用語集
1.1 見出し記号
1.2 季節
1.3 環境
1.4 事故対応の方法(手段)
1.5 事故対応の可能性
1.6 オイルの位置
1.7 海外線での取扱法(処理方法)
1.8 潮位
6
1.9 オイルの粘度
Arctic Waters Field Guide
1-3
この章では,本フィールド・ガイドに出てくる(で使われる)用語,アイコン,記号についてま
とめてあります。
1.1
見出し記号
人命や健康にとっての安全性を考慮すべきこと
実践にあたっては制限したり増強したりする可能性があるため,対応策運用にあたって
考慮すげきこと
一般的に適切かつ実践的であると考えられるため、推奨される作戦,技術
一般的に適切かつ実践的であるとは考えられないため,推奨できない作戦,技術
1.2
季節
無氷期(氷は全く見られない)
氷の形成期(氷が張り始める)
氷解期(氷が解け始める)
氷結期(一面厚い氷に被われている)
1.3
環境
海
湖
川
海岸線
Arctic Waters Field Guide
1.4
1-4
事故対応の方法(手段)
浮動バリア
固定バリア
水中バリア
汀段,ベルム
7
溝または穴
迂回(誘導)フェンス
アドバンシング・スキマー(前進/移動スキマー)
固定スキマー
吸引システム
防護フェンス内で水面のオイルが燃えている
氷上でオイルが燃えている
砕氷内でオイルが燃えている
大型船を使った消散剤散布
航空機を使った消散剤散布(消散剤の空中散布)
1.5
事故対応の可能性(対処方法の有効性)
最適/推奨できる
適当/条件付きで推奨
不適/推奨できない
Arctic Waters Field Guide
1.6
1-5
(流出した)オイルの位置
オイルは水面上にある
オイルは水中にある
オイルは氷と混ざって水面に浮いている
オイルは水中にあり,その上に砕氷がある
オイルは氷の下側にある
オイルは氷の表面にある
8
オイルは氷に被われた水中にある
Arctic Waters Field Guide
1-7
1.7 沿岸(海岸線)での処置(取扱い方法)
自然力による回復・復旧(一般的な方法)
洗い流す/回復・復旧(一般的な方法)
移動させる(一般的な方法)
その場での処置(一般的な方法)
化学的/バイオ的(一般的な方法)
自然力による回復・復旧
フラッディング(大量の水で洗い流すこと)
低圧,冷水洗浄
低圧,温水または熱湯洗浄
高圧,冷水洗浄
高圧,温水または熱湯洗浄
蒸気クリーニング
サンドブラスティング(砂を吹きつける)
手動での移動(移送)
吸引システム
重機を使った移動
植物(草木)伐採
吸着剤による回収
混ぜる(混合する)
堆積物の移動
燃える(燃やす)
分散剤
沿岸用クリーナー(洗浄剤)
凝固剤,粘性と弾性を持たせる溶剤(粘弾性剤)
9
栄養剤(肥料)添加/バイオ的修復
Arctic Waters Field Guide
1-7
1.8 潮位
1メートル以下
1~3メートル
3~10メートル
10メートル以上
1.9 オイルの粘度
軽い(水状)
中間(糖蜜状)
重い(タール状)
10
Arctic Waters Field Guide
2
2-1
はじめに
Arctic Waters Field Guide
2-2
(この章の)目次
2
はじめに
2-1
2.1 はじめに
2-3
2.1.1 ねらい(目的)
2-3
2.1.2 目的(対象)
2-3
2.1.3 主義(主旨)
2-3
2.1.4 背景
2-3
2.2
(本書でカバーする対象)範囲(地域)と内容
2.3
適用とローカルの知識(本ガイドの活用の仕方と現場での必要知識)2-7
2.4
出典
2-8
2.5
安全に対する考慮(安全についての考慮)
2-9
2.6
意思決定のプロセスと実現可能性,利点,結果(影響)の評価
2-10
2.7
構成とフォーマット(体裁)
Arctic Waters Field Guide
2-5
2-3
2.1 はじめに
2.1.1
ねらい(目的)
本フィールド・ガイドは,特異な気象・地理条件を持つ北極圏の国々に,オイル流出事故に対
処ガイダンスを提供するものとして開発された。
2.1.2
目的(対象)
本ガイド(の内容)は,自然環境や人間の健康に害をもたらす沖合や沿岸,湖や(大きな)川
でのオイル流出を想定して,厳寒期の水上,氷上,雪上におけるオイル流出事故に対する実践的
な戦略や手法に焦点を当てている。
2.1.3
主義(主旨)
本フィールド・ガイドの第一義(第一の目的)は,テクニカル・マネージャー(技術指揮者)
やディシジョンメーカー(意思決定者),現場で対処しなければならないローカル・コミュニティ
11
ー,広報担当やメディアに有効な情報を提供することである。
本ガイドは,現存するマニュアルや参考文献の複製を作成することを意図していないが,氷や
雪の中でのオイル流出事故に関する情報をできるだけ列挙した。
2.1.4
背景
オイル流出事故対応ガイドのほとんどは,凍ってない水辺の沿岸や海岸線の環境について焦点
を当てている。しかし北極では1年のほとんどが氷に被われている。また(北極地帯・地方)で
は沖合の自然環境は,生態学的に非常に重要である。現存しているフィールド・ガイドは北極地
方の特異な自然科学的,生物学的,海洋学的,大気的条件(表2-1)については書かれていな
いため,載せられているオイル流出事故の対処方法(活動)やそのためのトレーニングは,
(北極
圏の事故については)実際的でない。(あまり実践的でない)
Arctic Waters Field Guide
2-4
表2-1 北極地方の特徴
環境的要因
・ 夏期は生物活動が活性化
・ 生態系に与える影響が,季節によって大きく違う
・ ユニークな海岸のタイプ(氷棚,グレーシャー,ice foot feature,ツンドラ海岸:セクシ
ョン4参照)
・ ユニークな海洋と海岸線の季節変化(無氷海原,凍りはじめ,氷結,氷解)
・ 風化作用が遅く,流出オイルが(他地域と比べ)長く留まったままである(なかなか消え
ない)
事故処理遂行上,考慮すべき事
・
遠隔地のロジスティックサポート
・
支援装置が到着するまで,手持ちの道具で応急対応する必要性
・
寒冷・遠隔地における安全性
・ 低温が道具(装置・設備)や人に及ぼす影響
・ 季節の変わり目の氷がたくさん浮かんだ水域,流氷群のある冬の海における船の操作
・ 冬期の氷上における作業
・ 季節ごとの日照時間の変化(変わりやすさ)
12
・ 上陸や洗浄作業の際には,永久凍土層に対するダメージを最小限にくいとめること
・ 立案実行,監視,追跡のためのエアクラフトの必要性
Arctic Waters Field Guide
2.2
2-5
(本書でカバーする対象)範囲(地域)と内容
本ガイドで説明している水域(水環境)は:
海
湖
川(河川)
海岸線
「北極圏」
(Arctic)の世界共通の定義はないが,AEPS の各国は「北極圏」についてそれぞれの
説明をしている(その国独自の定義付けをしている)。下記の表は,1996年の EPPR フォー
ラムでそれをまとめたものである。
表2-2 各国での「北極圏」(Arctic)の定義
(1)ノースウエスト・テリトリー,ヌナヴト,ユーコン・テリトリー(2)
カナダ
ハドソン湾の海域および沿岸地帯,ジェームズ湾,ケベック州の北緯60度
以北,およびアンガヴァ湾(3)北極海とボーフォート海に続く海域
グリーンランド
デンマーク
北極圏(北緯66度33分)の北部に位置するラップランド地方
フィンランド
アイスランド全土と隣接した海
アイスランド
Svalbard, Jan Mayen 島および北極圏以北の地域 Saltfjellet-Svartisen 国立
ノルウェー
公園および Rana 市(町)を含む
以下のライン以北の地域
ロシア連邦
(1)北極圏にある国境線から Usinsk の西まで
(2)Nizhyaya 川沿いに南西にくだり,Vilyui, Alden 川へ(3)Taygomos
の南部で Shelikohova 湾を渡り,
(4)Karaginskiy 島の北,カムチャッカ半
島を横切る
北極圏の北に位置するノルボッテン地方
13
スウェーデン
(1)ポーキュパイン川,ユーコン川,クスコクウィン川に囲まれた北西の
アメリカ合衆国
領土(2)北極海,ボーフォート海,ベーリング海,チュコト海に隣接する
海域,(3)アリューシャン列島
Arctic Waters Field Guide
2-6
本フィールド・ガイドでは,EPPR ワーキング・グループは対象地域を北極圏(Arctic)に限
定しないで,1年のうち海,湖,川が氷に被われる地域まで広げている。これにより,本フィー
ルド・ガイドは北極圏だけでなくその他の寒冷地域にも応用できるようになっている。
(また)本フィールド・ガイドはあらゆる規模のオイル流出事故に対応している。簡略化する
ために,原油から精製油までの様々な油を,その粘度によって3つのグループに大別している(表
2-3)。
表2-3 オイルの粘度分類
粘度の種類
軽い
中間
重い
さらっとしている
とろっとしている
どろっとしている(ねばねばし
(水(液)状)
(糖蜜状)
ている)
(タール状)
ディーゼルオイル
Bunker A(バンカー燃料)
Bunker B and C
ガソリン
Fuel Oil No.4
Fuel Oil No.6
石油
潤滑油
風化した原油?
灯油
中質原油?(中質油)
瀝青(アスファルト・ピ
(medium crudes)
本ガイドでは,海の状態を下記に分類している。
表2-4 海の状態
14
ッチなど)
情況
有義波高(m)
風速(km/h)
なぎ
0.3m以下
10km/h以下
防護水域
0.3-2m
10-30km/h
開放水域
2m以上
30km/h以上
(本書では)四季はそれぞれ open water(無氷期),freeze-up(氷の形成期),breakup(氷解期),
frozen conditions(凍結期)という言葉で表している。
Arctic Waters Field Guide
2.3
2-7
本ガイドの活用の仕方と現場での必要知識
本フィールド・ガイドは,オイル流出事故に対処するときに,どんな戦略でどんな技術をつか
ったら適切かつ実践的で有効か選択判断する際に役立つよう意図してつくられている。しかし実
際には1件1件違うので,このガイドで推奨する技術や戦略や方法が当てはまらない場合もあり
得る。(現実に即さない場合もあり得る。)
本ガイドは技術マニュアルではない。(実際にオイル流出事故に対応する場合は),現場の自然
環境や流出したオイルの種類を特定し,どんな戦略,技術が適当かは専門の技術者に意見を仰ぐ
べきである。
水面や氷上のオイルのトラッキングは,できるだけ速やかに行い,支援部隊(支援機材と人員)
が到着しだいすぐ仕事に取りかかれるようにする。
現地での状態,優先順位,流出元を把握することが,対処作業の中で一番重要である。どんな
油製品なのかあるいは原油なのかを知ることは,安全面という観点からも現場で作業をする作業
員にとって健康で安全な計画を展開する上でも,大変重要である。また,流出したオイルを特定
することで,流出したり,
(こぼれている)染み込んだり,回収したオイルを作業員が安易に燃や
してしまう危険から免れられる。(安易に燃やしてしまうことがなくなる)
Arctic Waters Field Guide
2.4
2-8
出典
本フィールド・ガイド作成にあたっては,多くの文献やハンドブックから引用している。
オイル/氷/海(水)の扱い方については下記を参照した。
Oil Spill Response in the Arctic, Part 2 and 3
15
(Oil Industry Task Group, 1983 and 1984),
State-of-the-Art Review(最先端技術レビュー):Oil-in-Recovery
(Solsberg and McGrath, 1992),
Proceedings of the International Oil Spill Conferences 1975-1997(オイル流出事故に関す
る国際会議(1975-1977)の議事録)
Proceedings of the Arctic and Marine Oilspill Programme (AMOP) Technical
Seminars(1978-1998)(AMOP の技術セミナー(1978-1998)の議事録
また the Mechanical Oil Recovery in Ice Infested Waters (MORICE) program(SNITEF,
1995through 1998) と a spill response study of the North Caspian Sea (Shell, 1998)からも貴
重な示唆を得た。
海岸線での対処法(セクション4.11および5.7)については,the US EPA Manual of
Practice for Protection and Cleanup of Shorelines (Foget et al., 1979)を基にしている。このマ
ニュアルの北極地域については,オーウェンが1996年にアップデート(改訂)している。ま
た API(1985), API/NOAA(1994), CCG(1995a), COMCAWE(1981,1983), EPRco.(1992),
ITOPF(1987),
Kerambrun(1993),
Michel,
et
al.(1994),
MPCU(1994),
NOAA(1994),
Owens(1994)も参考にした。セクション8の北極海沿岸地方(Arctic coasts)については,Bird
and Schwartz(1985)と Owens(1994)から引用した。
Arctic Waters Field Guide
2.5
2-9
安全についての考察
北極地帯において安全性について考えるとき,まず考慮しなければならないのは雪と氷と低温
である。氷のない海や海岸線でのオイル流出事故対処法は,温かい地帯のそれと大差ないが,セ
クション7で述べているように(記述しているように),北極地方では,対応策を考えるときに安
全性や実用性を考慮に入れることが重要である。特に「安全」については本ガイド全編を通じて
注意を促しており,そのためのトレーニングの必要性も強調している。
spill response(オイル流出事故対応)においては,人の命と健康を守ることが最優先されるべき
である。
事故対応策を考えるとき,作業員や大衆(その地域の一般住民)の人命と健康を守るための「健
16
康で安全な計画」(the Health and Safety Plan)を立てることが重要である。北極地方において安
全性に関する留意点は下記のとおり:
・ 低温,過酷な気象状況(条件)
・ 風向きの変化によって,氷(の塊)がくっついたり離れたりする
・ 氷の荷重限界
・ 大型船や小型船への凍結の影響
・ (北極に生息する)熊(シロクマ,ホッキョクグマ)やその他哺乳動物たち
・ 冬期は日照時間が短く夜が長いこと
・ (人や機械装置)の作業効率が下がること。例えば機械が壊れやすい,水や燃料が凍る,
バッテリーが弱くなる,燃料の消費量が増える(燃費が下がる)など。
北極地方の多くは僻地なので,ルートについては例えそれが短い距離でも,人(歩行者)や機
械がたどって行けるように,あらかじめ安全かどうかチェックすべきである。現場作業員とオペ
レーションセンター(司令塔)との間の定期連絡は必須。
安全性の確認と適切な機械設備の選択は,氷の上,氷の中,氷に隣接しているところでは,特
に重要である。多くの場合,氷は流動的で,状況は瞬時に変化する。開氷域と呼ばれる海では,
氷原が生じ開放水域が閉じてしまうことがある。また霧氷が船に凍り付くこともしばしばである。
人(作業員,人員)は常に風や気温や天候に注意を払っていなければならない。
Arctic Waters Field Guide
2.6
2-10
意思決定のプロセスと実現可能性,利点,結果(影響)の評価
どんなオイル事故対策を選ぶか決定する際に,流出したオイルを制御し移動し回収するための
適切かつ有効な戦略を選ぶことが大切であるが,その決定は安全性,実用性,季節的地域的環境
条件を考慮してなされるべきである。
また適切な処理戦略と技術が選択されたかどうかは,採用された対策の利点と結果から判断さ
れる。事故処理対策の目的は,オイルが広がらないように被害を最小限に食い止めることであり,
また被害のあった地域や資源の自然回復を促進することであるので,対策を講じたことによって
その目的が達せられず,オイルが自然風化によって消えるよりもかえってダメージが広がるよう
であれば,その対策は再考されなければならない。その際,永久凍土を傷めたりツンドラの植生
を乱したりという,二次的ダメージの可能性も判断材料としなければならない。
17
アセスメントのプロセスは Net Environmental Benefit 分析とよばれているが,自然環境と経
済の問題を含んでいる。
流出オイルが生活やその他の経済活動に影響を及ぼしうるということは,
地元住民にとっては常に重要な問題なので,保護と対応の優先順位を決める際には考慮に入れる
べきである。
まとめると,適切な対応策を選択し優先順位を決める際には,次の点を考慮に入れる:
・ 安全に関わること-安全かどうか注意すること(オイルの種類,天候(お天気)
,気候(風
土),野生動物,ローカルハザード(危険))
・ 実用性と実現性
・ その土地の自然環境,生活,経済活動
・ 対応策が野生動物や自然環境(沼地,ツンドラ,永久凍土等)に影響を与える可能性
・ 季節的な条件
Arctic Waters Field Guide
2.7
2-11
構成とフォーマット(体裁)
本フィールド・ガイドのパート A は3つの章立てになっており(3つのセクションに分かれて
おり),それぞれが独立した運用の手引きとして使えるようになっている。
セクション3
この章は first responders(現場で最初に作業に当たる人)のために作られている。(first
responders はこの章を参照のこと)北極圏水域の季節ごとの状況下で,どういうアクションを取
ったら速やかに流出オイルがひろがることを防げるか,流出による被害を最小限にとどめられる
かについてまとめられている。装置や材料(機械や溶剤等)についても簡単に触れている。
セクション4
下記項目についての対応策を説明している。
・source control(流出元の制御、流出元を抑える、コントロールする、扱う、働きかける)
・free oil の制御(流出したオイルをコントロールする、
・保護
・海岸での扱い
海(海洋)
、湖(湖沼)
、川(河川)
、海岸の自然環境について、それぞれ考察している。
セクション5
18
)
セクション4で説明した戦略に関連して、水面、氷中、海岸に流出したオイルを移動、取扱い
のための対処法や道具についての情報がまとめられている。
パート B では,効果的な対応ができるように,北極の自然環境を理解する上で重要な情報が載
せられている。
セクション6&7
流出オイルの動き方と消滅について記載。また対策のオペレーション・マネジメントに関わる
届出(通告,通知)とプロセス決定について記載。
セクション8
北極の沿岸地域の特徴について,地図で示した地域ごとにまとめてある。
可能な限りアイコンや図,表を使い,本ガイドのあちこち参照しながら情報が得やすいように
工夫されている。使われているアイコンについては,セクション1で説明されているが,表紙と
裏表紙の裏のページにも載せている。
19
パートA
運用編
Arctic Waters Field Guide
3
3-1
主な対処法(対応策)
Arctic Waters Field Guide
3-2
目次
3
主な対処法(対応策)
3-1
3.1 はじめに
3-3
3.2 夏季(水の凍っていない時期)における流出オイルの処理
3-5
3.2.1 海
3.2.2
3.2.3
3.3
3.2.1.1 一般的なガイドライン
3-5
3.2.1.2 対処戦略と方法
3-6
湖(湖沼)
3-11
3.2.2.1
一般的なガイドライン
3-11
3.2.2.2
対処戦略と方法
3-12
川(河川)
3-18
3.2.3.1
一般的なガイドライン
3-18
3.2.3.2
対処戦略と方法
3-19
春季・秋季(過渡期)における流出オイルの処理
3-25
3.3.1
3-25
3.3.2
3.3.3
3.4
3-5
海
3.3.1.1
一般的なガイドライン
3-25
3.3.1.2
対処戦略と方法
3-26
湖(湖沼)
3-31
3.3.2.1
一般的なガイドライン
3-31
3.3.2.2
対処戦略と方法
3-32
川(河川)
3-36
3.3.3.1
一般的なガイドライン
3-36
3.3.3.2
対処戦略と方法
3-37
冬期(凍結期・厳寒期)における流出オイルの処理
3-41
3.4.1
3-41
海,湖(湖沼),川(河川)
20
3.4.1.1
一般的なガイドライン
3-41
3.4.1.2
対処戦略と方法
3-42
21
Arctic Waters Field Guide
3.1
3-3
はじめに
まず最初にすることは,流出オイルが流出元周辺からなるべく広がらないようにすること。意
思決定に従いながらの具体的な対応展開の過程については,セクション7で説明しているが,下
記の点が含まれている。
・状況判断(現場の速やかな見積り(見極め)が有用で,潮流や海岸線の知識を考慮すべき。
(事故時との比較の)基準となる(平常な状態を写した)ビデオは役に立つ(有効)。)
・速やかに流出オイルを特定すること
・流出オイルに対して実践的かつ有効な戦略を展開すること
・その場で手当できるものを使っての対処方法を選択すること
・流出元周辺でオイルの流出(放出)を封じ込めること
例えば海での(海で起こった)流出事故の場合,first responder(現場で最初に事故処理す
※(first responder: personnel with range of technical experience
who serve as local, trained community responders
and are required to be first at the scene of a spill)
る人・作業員)は流出オイルの種類,量,位置をまず特定(明確に)しなければならない。そ
してこの情報に基づいて,responder は入手可能な資材を使って流出オイルの広がりを最小限
に抑えるための実践的なアプローチ(取り組み方,手段)を決めなければ(決定しなければ)
ならない。そのような行動を起こすための一般的なガイドラインは,下記のとおり:
・行動に移る前に考える
・エリア緊急時計画に従って,その(事故が関係する)地域のスーパーバイザーに連絡する(通
知する)
・常にその地域の利益や関連性(concerns(仕事,影響,かかわり,関心事))を考慮に入れ
る
・その地域との関連性をベースにして優先順位や戦略を明確にする(決める)
・もし作業が安全に行えるのであれば,オイルの流出(放出)を止める
素早い状況判断(状況把握)が役に立つ:(すなわち)
・流出事故が起きる前から,その(海域)の潮流や海岸線を知っておくこと
22
・事故時との比較の基準となる平常な状態(事故前の普段の状態)を写したビデオは有効
このセクションおよび以下のセクションに出てくる見出し記号は,first responder に役立つ様々
なカテゴリーのアドバイスを示している。すなわち,
安全性について考慮に入れるべき事柄
運用上考慮すべき事柄
お勧めの戦略または技術
不適切な技術等
その他のアイコンは対処方法を示すのに使われている。セクション1では,そのアイコンの定義
を,セクション5ではその詳細を説明している。また本ガイドのカバーの内側(表紙と裏表紙の
裏側)にもアイコン一覧表を載せている。)
Arctic Waters Field Guide
3-4
First responderすなわち※豊富な技術経験を持ち,地元の訓練を積んだresponder団体(作業部
隊)に勤務しており,ひとたび流出事故が起こった場合には現場に急行できる人のことであるが,
このセクション(章)にはfirst responderにお勧めの実用的な(実際的な)対処方法を載せてい
る。Responder(現地で作業をする人)は,流出事故の警戒態勢に入ったときはごく限られた情
報しか得られないかもしれないので(ことが多いので),このセクションでは,図3-1に示した
ように,まず季節(無氷期,形成期,氷解期,凍結期)で索引し,次に環境(海,湖(湖沼),
川(河川))で(必要な情報が)検索できるように構成してある。
季節
環境
対処戦略と方法
海
3.2
夏季(氷がない)
⇒
氷の形成期
3.3
春季・秋季(過渡期)
⇒
湖(湖沼)
⇒
氷解期
23
・化学的処理
⇒
川(河川)
・収容・回収(復旧)
・現地焼却
・保護
3.4
冬期(凍結期・厳寒期)
⇒
⇒
・海岸線処理
図3-1 セクション3 構成
季節は下記のように定義されている:
無氷期
氷が全くない。
(氷の)形成期
新しい氷が出来つつある。
氷解期
氷が解け出している。
凍結期
固い氷で一面覆われている。
回収と回復,化学的処理,現地焼却,海岸線処理の方法は,4つの対処戦略の中で説明されてい
る。
1.流出元での制御
油膜が広がらないように,流出元周辺で流出を抑える
2.流出オイルの制御 流出元から少し離れたところに広がっている油膜に焦点を当て処理する。
3.保護
海岸線やその他の資源を汚染から守ために取られる対処方法
4.海岸線処理
海岸に打ち上げられた流出オイルの処理
Arctic Waters Field Guide
3.2
3-5
夏季(水が凍っていない季節)の流出事故
3.2.1
海
3.2.1.1
一般的なガイドライン
寒い地方で流出事故の処理作業をする人は,低気温による凍死や冷たい水に落ちた場合,
その他低体温症を引き起こす様々な危険に対して訓練を受けているべきである。
環境被害(汚染)を最小限に食い止める最も効果的な方法は,流出元をコントロールす
ることに(作業活動の)焦点をあて,オイルが広がらないようにすることである。
最適な対処戦略を決定するために,油膜探知や監視には現地で調達できるものを活用す
べきである。
・茶色の油膜をすくい取る,焼却する,化学的処理をする場所を見つける
・
(油膜の)虹色の光沢が自然に消えるまで待ちながら,もし海岸線処理が適切な手段である
ならばその準備をする。
24
・波高が1メートル以上の場合は,流出オイルの監視作業が唯一実際的な一次対処の作業で
ある
表3-1 夏季・海での対応
環境
対応
対応
流出オイル
の位置
対処方法
封じ込め/回収
焼却
実現可能性
化学処理
流出元での制御
流出オイルの制御
保護
Arctic Waters Field Guide
3.2.1.2
3-6
対処戦略と方法
大型船,油田(自然の突然の噴出)あるいはパイプラインから流出したオイルに対処するには,
流出元で油膜をコントロールすることと漏れだしたオイルを取り除くことが必要である。この2
つの作業の目的は,流出オイルの広がりを最小限に食い止めることと,環境への影響を最小限に
することにある。流出元での処理と流出元から離れてしまった油膜の処理は,ほぼ同じ方法によ
る。
封じ込めと回収
封じ込め
ブーム((流出をくいとめる)防材,浮動フェンス)は,流出オイルを封じ込めるあるいは
集めるために,リリースポイントまたはその下流(流されていく先)で使う。
ブームは,U,V あるいは J の形に配置して使う。油膜が薄い場合,流出元でオイルを封
じ込め除去するのに比べ効果薄。
ブームは潮流の速度が秒速0.5メートル(1ノット)以下,風速が持続35キロメート
ル(20ノット)以下の時に有効。
25
回収
吸着スキマー(オイル吸着させて機械的に回収するユニット(装置)
)が効果的:軽油およ
び中質油の場合は,ディスク,ドラム,モップ(型スキマー)を使って除去し,重油の場合はブ
ラシやベルト・スキマーを使う。
オイルと水が分離している場合,または流出したオイルが多量で層が厚く乳化していない
場合は,堰き止めてスキミングする。
流出オイルが沈む可能性がある場合,出来ればそれが水中に沈む前に押さえる。水中に沈
んでしまったオイルを見つけるのは困難であり,それを回収するのはもっと困難である。
もしブラシ型,あるいはベルト型のスキマーが漂っている重油を回収できない場合は,ト
ロールで回収してみる。
回収量を正確に見積もることは,対応策を成功に導く鍵となる。
回収したオイルの種類と量により,バージ(荷船),牽引することのできるタンク,タンカ
ー,その他のものに収納(格納)することができる。
Arctic Waters Field Guide
3-7
化学的処理
流出オイルを化学的処理するのが効果的と判断された場合は,速やかに訓練を積んだ人
員によって処理されるべきである。
:
・流出オイルの粘度が 10000cSt 以下,すなわち糖蜜よりさらりとしている場合に限る。
・水温はオイルの氷点以上であること,すなわちオイルが流れる温度であること。
・油膜の厚みが0.1ミリ以上あること。
・薬剤の散布は,流出事故が起こってから2-5日以内のオイルが風化せず(化学的)消散
可能な時期であること。
化学的処理の場合は大型船または飛行機を使う。化学処理実行(運用)の指示は,空か
らの見通しがきく位置から出すこと。:
・地元に備蓄してある薬剤を,薬剤対オイルの比率が1:10から1:100になる範囲で
使用する。
・沖合の流出事故には,プロペラ機とヘリコプターを使う。
・沿岸地帯では,大型船のほうが実用的。
26
・後から作業に携わる人員に伝達できるよう,投薬量,散布した地域,投薬効果などは記録
しておく。
現地焼却
現地焼却は,一般的には訓練を積んだ作業員によって速やかに履行されなければならな
い。遠隔地においては,下記の要因をもとに現地焼却すべきかどうか決定すべきである。:
・エマルジョンが少なくとも約75%のオイルであること。
・油膜の厚みが2-3ミリ以上であること。
・波高は2メートル以下で荒れてないこと。
・風速は35キロ(20ノット)以下であること。
・原油を燃やす場合は,流出事故から2-5日以内であること。
Arctic Waters Field Guide
3-8
イグニッション・
(点火)システムは必要;耐火ブームと監視用エアクラフトは,入手可
能であれば使うべきである。
現場作業員にとって安全な計画であるために,点火,燃焼,煙の影響を受けるであろう
地域の位置を明示する。
原油は硫黄の含有量が高いので,燃やしても燃やさなくても人体や安全性に対する影響
が懸念される。
作業員や一般人,野生動物を保護するために,風下に10キロの立ち入り禁止ゾーンを
設ける。
火が(別のものに引火して)燃え広がらないように注意し,また燃焼を完全に消し止め
る道具を用意する。
保護
オイルが流出していく道すがらの(環境)資源を保護するには,一般的には機械装置を配置(配
備)するが,化学的処理をしたり焼却したりすることもある。保護の目的は流出オイルと危険に
さらされている(環境)資源との接触を防ぐ,あるいは最小限にすることである。
まず最初に,オイルの流れていく方向とスピードを予測すること。次に危険にさらされ
ている資源を特定し,保護策が有効かどうか判断する。もし保護策がうまくいきそうだと思える
ときは,以下のように機械を使って封じ込めと回収の作戦をとる。
・ブームを広げる
27
・(ブームを)固定し,定期的にアンカー・システムをモニターする。
小さめの吸着スキマーを使う。例えば,ディスク型,ドラム型,モップ型のスキマーで,
水上または陸上の収納システムを使って,軽油,中質油を収納器に移動する。
海が荒れているときは,オイルが波しぶきと混ざったり,ブームがうまく働かず,保護戦
略はうまくいかないかもしれない。
Arctic Waters Field Guide
3-9
現地焼却は,水辺では有効な保護戦略の1つである。準備できるならば耐火ブームと監
視用エアクラフトを用意し,流出オイルの集中したところで点火装置を使うこと。
安全に現地焼却を行うためには,火の大きさがどのくらいになるか,避難場所や煙の人体
への影響などを事前に考慮し,例えば風下10キロメートル(6マイル)の立入禁止区域や,原
油に含まれる硫黄,消火器具などの準備をすべきである。
化学的処理は,以下の条件下の沿岸では,有効な保護技術である;
・流れがよい(淀んでいない,浄化力がある)
・水深が10-20メートル以上
化学的処理が有効なのは,流出オイルが以下のような場合である:
・粘度が cSt 以下,すなわち糖蜜よりさらっとしていること
・水温がオイルの氷点より高いこと,すなわち液状であること
・油膜の厚みが0.1ミリ以上であること
以下の条件下では,飛行機よりも大型船を使用したほうが効果的である:
・オイル流出から2-5日以内に化学処理を行う場合
・流出範囲が沿岸の比較的狭い範囲であり,船からの薬品散布が容易な場合
・散布する薬剤と燃料が積んである船が沿岸のしかるべき場所に待機していて,すぐ出
航できる場合
・アクセスがよい,視界がよい,油膜があること
投薬量,散布した場所,化学的処理の効果に関する情報は記録に残し,次の作業員に伝
達すること。
Arctic Waters Field Guide
3-10
28
海岸での処理
流出元の制御(封じ込め)や流出オイルの回収,周囲の保護(処理)が必要ない場合は,海岸
での処理に最初にとりかかる。これはオイルタンクからの流出事故のような陸上の事故の場合,
または全部あるいはほとんどのオイルが海岸で波に洗われている場合である。
流出オイルが風化する前,つまり流出事故直後では,以下のような場所では,洗い流し
(洗い流すこと)が一般的に実際的かつ効果的である。:
・不透過性の岸壁(岩壁,人工構造物)
・堆積海岸または干潟(砂,泥)
・植物が生えている海岸(湿地,泥炭地,ツンドラ低地)
遮蔽性の波の荒くない堆積海岸では,トレンチング(回収溝)が,淀んだオイルを回収
し,またそのオイルが再分配(離散)するのを防ぐのに迅速で効果的な方法である。トレンチ(回
収溝)の中のオイルはバキュームカーで移動する。(移し替える,取り除く)
波が打ち寄せる開けた海岸(オープン・ビーチ)では,波の作用によって流出オイルと
堆積物とが混ざりあい(オイルが)堆積物に埋もれてしまう前に,海面から流出オイルを回収し
てしまうことが重要である。
油性廃棄物・廃油の(不法)投棄が発生した場合には(北極圏や遠隔地ではよくある),
オイルは比較的(わりあいに)風化しないので(そのままではなかなか風化しないので),ミキシ
ングと海岸の堆積物の移動が実際的かつ大変効果的であろう。ミキシング(または掘り起こし)
とは,土木作業用または農業用の道具を使って油性堆積物を動かし,蒸発作用や波の浄化作用と
いった風化のプロセスにさらし,油にまみれた海岸の自然浄化力を高めることである。この作業
には,油性廃棄物を機械的に回収するなどの技術は要しない。
陸上の作業では,掘削,トラクターの使用,
(直ちに消火できないような,大規模の)焼
却作業などの永久凍土層を傷つける行為はさけること。
Arctic Waters Field Guide
3-11
表3-2は,北極圏海域の海岸のタイプ別に適切な初期処理方法を示している。
表3-2 海岸線での初期処理方法
海岸の種類
推奨される初期処理方法
岩盤(岩場)
29
人工構造物
凍りついた,または氷で覆われた海岸
砂浜
混合堆積物の海岸
中礫/玉石海岸
巨礫,ぎざぎざした海岸
砂干潟
泥干潟
海水湿地
泥炭海岸
水浸しのツンドラ低地
ツンドラ崖地
雪の積もった海岸線
Arctic Waters Field Guide
3-12
3.2.2.湖(湖沼)
3.2.2.1一般的なガイドライン
寒い地方で流出事故の処理作業をする人は,低気温による凍死や冷たい水に落ちた場合,
その他低体温症を引き起こす様々な危険に対して訓練を受けているべきである。
環境被害(汚染)を最小限に食い止める最も効果的な方法は,流出元をコントロールす
ることに(作業活動の)焦点をあて,オイルが広がらないようにすることである。
最適な対処戦略を決定するために,油膜探知や監視には現地で調達できるものを活用す
べきである。
・茶色の油膜をすくい取る,焼却する,化学的処理をする場所を見つける
・
(油膜の)虹色の光沢が自然に消えるまで待ちながら,もし湖岸処理が適切な手段であるな
30
らばその準備をする。
・波高が1メートル以上の場合は,流出オイルの監視作業が唯一実際的な一次対処の作業で
ある
浅い湖で波が急激に高くなる場合は,流出を安全に封じ込めようとすることはやめる。
表3-3 夏季・湖(湖沼)での対応
環境
対応
対応
流出オイル
の位置
対処方法
封じ込め/回収
焼却
実現可能性
化学処理
流出元での制御
流出オイルの制御
保護
Arctic Waters Field Guide
3-13
3.2.2.2対処戦略と方法
湖で起こった大型船,油田(自然の突然の噴出)あるいはパイプラインからのオイル流出事故
に対処するには,流出元や流出場所から離れたところで油膜をコントロールすることが必要であ
る。この2つの作業の目的は,流出オイルの広がりを最小限に食い止めることと,環境への影響
を最小限にすることにある。流出元での処理と流出元から離れてしまった油膜の処理は,ほぼ同
じ方法による。
封じ込めと回収
海でのオイル流出事故に適用される対処基準のほとんどが,湖の事故にも適用される。船,油
田(自然噴出),パイプラインからの流出事故で要されるのは,流出を止めることと流出したオイ
ルを回収することである。流出を止めることとオイルの回収は同様のアプローチによる。
封じ込め
31
ブーム((流出をくいとめる)防材,浮動フェンス)は,流出オイルを封じ込めるあるいは
集めるために,リリースポイントまたはその下流(流されていく先)で使う。
ブームは,U,V あるいは J の形に配置して使う。
回収
吸着スキマー(オイル吸着させて機械的に回収するユニット(装置)
)が効果的:軽油およ
び中質油の場合は,ディスク,ドラム,モップ(型スキマー)を使って除去し,重油の場合はブ
ラシやベルト・スキマーを使う。
オイルと水が分離している場合,または流出したオイルが多量で層が厚く乳化していない
場合は,堰き止めてスキミングする。
もしブラシ型,あるいはベルト型のスキマーが漂っている重油を回収できない場合は,ト
ロールで回収してみる。しかしながら沈んでしまったオイルを見つけ回収するのは困難である。
回収したオイルは,バージ(荷船)
,牽引することのできるタンク,タンカー,その他の船
に収納(格納)することができる。
湖での小規模な流出事故の場合は,小型の吸着スキマーと一緒にスカート・ブームを使う
のが効果的。
Arctic Waters Field Guide
3-14
化学的処理
流出オイルを化学的処理するのが効果的と判断された場合は,速やかに訓練を積んだ人
員によって処理されるべきである。
:
・流出オイルの粘度が 10000cSt 以下,すなわち糖蜜よりさらりとしている場合に限る。
・水温はオイルの氷点以上であること,すなわちオイルが流れる温度であること。
・油膜の厚みが0.1ミリ以上あること。
・薬剤の散布は,流出事故が起こってから2-5日以内であること。
寒冷地の湖では,化学的処理はあまり(通常)採用されない。それは水の循環が悪く(薬
剤がなかなか)希釈されないために,かえって環境を汚染してしまう可能性があるからである。
しかしながら化学的処理をする場合は,大型船,飛行機両方での処理が可。化学処理実行(運用)
の指示は,空からの見通しがきく位置から出すこと。:
・地元に備蓄してある薬剤を,薬剤対オイルの比率が1:10から1:100になる範囲で
32
使用する。
・岸から離れた場所での流出事故には,プロペラ機とヘリコプターを使う。
・沿岸地帯では,大型船のほうが実用的。
・後から作業に携わる人員に伝達できるよう,投薬量,散布した地域,投薬効果などは記録
しておく。
現地焼却
現地焼却は,下記必須条件が整えば可能。:
・エマルジョンが少なくとも約75%のオイルであること。
・油膜の厚みが2-3ミリ以上であること。
・波高は2メートル以下で荒れてないこと。
・風速は35キロ(20ノット)以下であること。
・原油を燃やす場合は,流出事故から2-5日以内であること。
点火装置は必須,耐火ブームも通常は必要とする,できれば監視用エアクラフトを用意
する。
Arctic Waters Field Guide
3-15
現場作業員にとって安全な計画であるために,点火,燃焼,煙の影響を受けるであろう
地域の位置を明示する。
原油は硫黄の含有量が高いので,燃やしても燃やさなくても人体や安全性に対する影響
が懸念される。
作業員や一般人,野生動物を保護するために,風下10キロに立ち入り禁止ゾーンを設
ける。
火が(別のものに引火して)燃え広がらないように注意し,また燃焼を完全に消し止め
る道具を用意する。
保護
機械装置を使って環境資源を守る方法としては,ブームを使って,。保護の目的は流出オイルと
危険にさらされている(環境)資源との接触を防ぐ,あるいは最小限にすることである。
まず流出オイルの流れていく方向,スピード,汚染度を特定し,保護策が有効かどうか
33
予測する。悪天候のときは,ブームがうまく機能せず表層とオイルとが混ざってしまい,保護策
がうまく働かないかもしれない。しかしながら,
もし保護策がうまくいきそうだと思えるときは,
以下のようにすること。
・可能であれば汚染されやすい環境資源をブームで囲む。
・流速0.4メートル/秒以上の場合は,アングル・ブームで油膜の流れの向きを変える。
・(ブームを)固定し,定期的にアンカー・システムをモニターする。
通常,小型の吸着スキマー(ディスク型,ドラム型,モップ型ユニット)と水上または
陸上の収納システムを使ったオイルの回収が必要とされる。
Arctic Waters Field Guide
3-16
現地焼却は,湖では有効な保護戦略の1つである。準備できるならば耐火ブームと監視
用エアクラフトを用意し,流出オイルの集中したところ,通常は
で点火装置を使うこと。
安全に現地焼却を行うためには,火の大きさがどのくらいになるか,避難場所や煙の人体
への影響などを事前に考慮し,例えば風下10キロメートル(6マイル)の立入禁止区域や,原
油に含まれる硫黄,消火器具などの準備をすべきである。
化学的処理は,湖の事故処理には通常は採用されない。ただし岸から十分に離れ水の循
環がよい場所では化学的処理という選択も可能。
湖岸での処理
流出元の制御(封じ込め)や流出オイルの回収,周囲の保護(処理)が必要ない場合は,湖岸
での処理に最初にとりかかる。これはオイルタンクからの流出事故のような陸上の事故の場合,
または全部あるいはほとんどのオイルが岸辺まで到達している場合である。
流出オイルが風化する前,つまり流出事故直後では,以下のような場所では,洗い流し
(洗い流すこと)が一般的に実際的かつ効果的である。:
・不透過性の岸壁(岩盤海岸(岩場),人工構造物)
・堆積湖岸または(砂,泥で)平らな湖岸
・植物が生えている湖岸(湿地,泥炭地,ツンドラ低地)
波が打ち寄せる湖岸では,波の作用によって流出オイルと堆積物とが混ざりあい(オイ
ルが)堆積物に埋もれてしまう前に,水面から流出オイルを回収してしまうことが重要である。
湖岸では一般的に波が弱く砂や泥が堆積しているので,トレンチング(回収溝)が,淀
34
んだオイルを回収し,またそのオイルが再分配(離散)するのを防ぐのに迅速で効果的な方法で
ある。
第一次対処(first response)としての湖岸での対処方法については表3-2(3-11
ページ)に記載。
Arctic Waters Field Guide
3-17
油性廃棄物・廃油の(不法)投棄は北極圏や遠隔地ではよくあるが,オイルは比較的(わ
りあいに)風化しないので(そのままではなかなか風化しないので)
,ミキシングや堆積物の移動
が実際的な対処方法である。ミキシング(または掘り起こし)や堆積物の移動(波にあらわれる)
は,土木作業用または農業用の道具を使って油性堆積物を動かし,蒸発作用や波の浄化作用とい
った風化のプロセスにさらし,油にまみれた海岸の自然浄化力を高めることである。この作業に
は,油性廃棄物を機械的に回収するなどの技術は要しないが,カナダの Great Bear や Great Slave
湖といったような洗い波の立つ大きな湖では(機械を使っての回収)も効果的かもしれない。
陸上の作業では,掘削,トラクターの使用,
(直ちに消火できないような,大規模の)焼
却作業などの永久凍土層を傷つける行為はさけること。
Arctic Waters Field Guide
3-18
3.2.3川(河川)
3.2.3.1一般的なガイドライン
寒冷地の河川の多くは,流れが速く堆積物が高く積もり谷が深い(岸に容易に近づけない)。そ
のため流出オイルのコントロールは,特に雪解けの流水量が増す春には現実的でないことが多い。
川での事故処理がうまくいくためには,迅速な行動が要求される。
処理装置を設置したり作業を展開するための,行きやすく流れの遅いコントロールポイ
ント(事故処理ポイント)を選ぶ。
移動(回収
作業)場所より下流にブームを設置すると効果的。
寒冷地の急流では,安全第一である。処理装置を設置するために人命を危険にさらして
はいけない。
通常は流出オイルはすぐに岸辺に到達するので,ほとんどの場合は岸辺での処理が唯一
の(選択できる)処理手段となる。
35
表3-4 夏季・川(河川)での対応
環境
対応
対応
流出オイル
の位置
対処方法
封じ込め/回収
焼却
実現可能性
化学処理
流出元での制御
流出オイルの制御
保護
Arctic Waters Field Guide
3-19
3.2.3.2.対処戦略と方法
川で起こったオイル流出事故処理としては,はるかかなたの下流に流れていった油(油膜)を
回収することが多い。流出元での封じ込めは不可能に近いため,また揮発性油が流出した場合は
安全に(流れを)誘導することができないので,流出場所から離れたところで油膜をコントロー
ルすることが必要である。ただし川岸が広い場合は,流れがゆるくなっているところで,状況が
整えば,流出元で油を封じ込めることも可能なことがある。その場合は,下流方向にブームを配
置する。
封じ込めと回収
封じ込め
油(油膜)を封じ込めるために川でブームを使うのは,下記の場合実践的:
・ブームを流れに対して角度をつけて配置し,油を回収地点のほうへ流れるようにする。
・一般的にこの方法が有効なのは,川の流れが秒速1メートル以下(2ノット)の場合で
ある。
ブームは,下記仕様のものを使うこと。:
・top and bottom tension members
・高さが約70センチ以下のもの
36
・丈夫な布製のもの
川岸が広くても,下記条件下では油膜をとどめておいたりブームを配置することが難し
いので,封じ込め策はうまくいかない可能性がある。:
・流れが逆流する
・渦が巻いている
・土手が浸食されている
・堆積物がうずたかく積もっている
・瓦礫が多い
Arctic Waters Field Guide
3-20
下記の場合は,アングルブームは実用的でないことがある。:
・川幅が広すぎて,効果的に油膜の向きを変えることができない。
・ブームを設置するのに時間が足りない。
・油が薄く広がって,(油膜が薄すぎて)回収できない。
島,海峡(水路),embayments は,うまく利用すれば事故処理作業の効率がアップする。
:
・島は自然の(天然の)バリヤーとなる。
・ブームと水路を一緒に利用して,油膜の流れ向きを変えたり環境資源を保護したりする。
・油を embayments に導いて回収する。
・水が渦巻いている川では,embayments を利用すると油が集めやすい。
粘度の高い油(重油)を川で封じ込めたり流れの方向を変えたり回収するのは一般的には
難しい。というのは,油が水に沈んでしまい,川底にそって移動するか,またはそのまま底にと
どまってしまうからである。
沈んでしまった油は移動したり浮き草が被ったりして,容易には位置を特定できない。
トロールや網は瓦礫に引っかかってしまうので,このタイプのブームはを川での油回収
作業に使うのは効率が悪い。
回収
ブームはしばしば(必ずではない)川での回収作業で油を集める(集中させる)のに使わ
れる。
河川の蛇行しているところや水路の幅が急に広くなっているところでは,水の流れがゆる
37
やかになるので,そういったオイルが自然に集まってくるような(オイルが淀む)回収ポイント
がしばしば選択される。
吸着スキマー(オイル吸着させて機械的に回収するユニット(装置)
)が効果的:軽油およ
び中質油の場合は,ディスク,ドラム,モップ(型スキマー)を使って除去し,重油の場合はブ
ラシやベルト・スキマーを使う。バキュームカーを岸または水上プラットホーム(手配できれば)
に配備しておく。
装置(回収装備)を岸辺にセットアップできない場合は,油回収作業用の水上プラットホ
ームが有益(便利である)。
Arctic Waters Field Guide
3-21
化学的処理
流出オイルを化学的処理するのが効果的と判断された場合は,速やかに訓練を積んだ人
員によって処理されるべきである。
:
・流出オイルの粘度が 10000cSt 以下,すなわち糖蜜よりさらりとしている場合に限る。
・水温はオイルの氷点以上であること,すなわちオイルが流れる温度であること。
・薬剤の散布は,流出事故が起こってから2-5日以内であること。
大型船,飛行機両方での化学的処理が可。化学処理実行(運用)の指示は,空からの見
通しがきく位置から出すこと。:
・地元に備蓄してある薬剤を,薬剤対オイルの比率が1:10から1:100になる範囲で
使用する。
・fixed-wing planes(小型飛行機,固定翼の飛行機)とヘリコプターを使う。
・可能であれば監視用エアクラフトで位置決めをし,そこに船を配置して作業場とする。
・後から作業に携わる人員に伝達できるよう,投薬量,散布した地域,投薬効果などは記録
しておく。
沿岸河川や河口付近では魚の養殖をしていることがあるので,一般的に化学的処理は採
用されない。しかしながら,もし河口付近で化学的処理をすると,水量の多い河口域の水に油が
かき消されていくのを薬剤が促進する。:
・デルタや河口域の(動植物)生息地にとっては,(化学的処理)は逆効果。
・薬剤の表面張力と堆積物の沈積作用により,油は地下に浸透しないで長く留まっている。
38
Arctic Waters Field Guide
3-22
現地焼却
川での現地焼却は,作業が迅速に行われれば実践的であろう。あらかじめ選択されたポ
イントで油膜を遮断して,安全に燃やすこと。通常は embayments の流れが緩やかになたところ
で燃やす。
現地焼却は,下記条件で行えば,川での焼却処理は成功する。:
・エマルジョンが少なくとも約75%のオイルであること。
・油膜の厚みが2-3ミリ以上であること。
・波高は2メートル以下で荒れてないこと。
・風速は35キロ(20ノット)以下であること。
・原油を燃やす場合は,流出事故から2-5日以内であること。
・流速は秒速1メートル以下(2ノット)であること。
点火装置は必須;できれば耐火ブームと監視用エアクラフトを用意する。
現場作業員にとって安全な計画であるために,点火の位置,油の移動,燃焼,煙の影響
を受けるであろう下流域を明示する。
原油は硫黄の含有量が高いので,燃やしても燃やさなくても人体や安全性に対する影響
が懸念される。
作業員や一般人,野生動物を保護するために,風下10キロに立ち入り禁止ゾーンを設
ける。
火が(別のものに引火して)燃え広がらないように注意し,また燃焼を完全に消し止め
る道具を用意する。
Arctic Waters Field Guide
3-23
保護
河川事故で環境資源を守る方法としては,ブームを使って油膜を遮断したり流れの方向をかえ
ることである。大きな(広い)河川では,油が堆積物と混ざりブームで遮断したり方向転換でき
ないので,保護策はあまり機能しない。保護作業の目的は,流出オイルと危険にさらされている
重要な(環境)資源との接触を防ぐ,あるいは最小限にすることである。
39
まず流出オイルの流れていく方向,スピード,汚染度を特定し,保護策が有効かどうか
予測する。もし保護策がうまくいきそうだと思えるときは,以下のようにすること。
・可能であれば,ブームを配置して,汚染されやすい環境資源を保護する。
・流速0.4-1メートルの流れでは,アングル・ブームで油膜の流れの向きを変える。
・(ブームを)固定し,定期的にアンカー・システムをモニターする。
ディスク型,ドラム型,モップ型ユニットといった小型の吸着スキマーを使い油を取り
囲み集めて,水上または陸上の収納システムに回収する。
現地焼却は,川では有効な保護戦略の1つである。準備できるならば耐火ブームと監視
用エアクラフトを用意し,流出オイルの集中したところ,通常は
で点火装置を使うこと。
安全に現地焼却を行うためには,火の大きさがどのくらいになるか,避難場所や煙の人体
への影響などを事前に考慮し,例えば風下10キロメートル(6マイル)の立入禁止区域や,原
油に含まれる硫黄,消火器具などの準備をすべきである。
化学的処理は,河口付近で油が風化や乳化していない(粘度が10000cST 以下,糖
蜜状)以外には,川の事故処理には通常は採用されない。
Arctic Waters Field Guide
3-24
川岸での処理
流出元の制御(封じ込め)や流出オイルの回収,周囲の保護(処理)が必要ない場合は,川岸
での処理に最初にとりかかる。これはオイルタンクからの流出事故のような陸上の事故の場合,
または全部あるいはほとんどのオイルが岸辺に溜まっている場合である。
流出オイルが風化する前,つまり流出事故直後では,以下のような場所では,洗い流し
(洗い流すこと)が一般的に実際的かつ効果的である。:
・不透過性の岸壁(岩盤,人工構造物)
・堆積川岸または干潟(砂,泥)
・植物が生えている川岸(湿地,泥炭地,ツンドラ低地)
水流や波の作用によって流出オイルと堆積物とが混ざりあい(オイルが)堆積物に埋も
れてしまう前に,水面から流出オイルを回収してしまうことが重要である。
川岸(土手)では一般的に流水の力が弱く砂や泥が堆積しているので,トレンチング(回
収溝)が,淀んだオイルを回収し,またそのオイルが再分配(離散)するのを防ぐのに迅速で効
40
果的な方法である。
油性廃棄物・廃油の(不法)投棄は北極圏や遠隔地ではよくある。オイルは比較的(わ
りあいに)風化しないので(そのままではなかなか風化しないので)
,ミキシングや堆積物の移動
が実際的な対処方法であるが,この方法は波にあらわれる海岸に比べ効果的でない。ミキシング
(または掘り起こし)や堆積物の移動(波にあらわれる)は,土木作業用または農業用の道具を
使って油性堆積物を動かし,蒸発作用や流水の浄化作用といった風化のプロセスにさらし,油に
まみれた川岸の自然浄化力を高めることである。この作業には,油性廃棄物を機械的に回収する
などの技術は要しない。
陸上の作業では,掘削,トラクターの使用,
(直ちに消火できないような,大規模の)焼
却作業などの永久凍土層を傷つける行為はさけること。
川岸での主な処理方法は表3-2(3-11ページ)に記載。
Arctic Waters Field Guide
3-25
3.3春季・秋季(過渡期,推移季)における流出オイルの処理
3.3.1海
3.3.1.1一般的なガイドライン
推移季は解けたり凍ったりする氷の種類に特徴がある。
(海が)凍り始める季節は,薄く平らな
氷,小さな氷片やクリスタル片が形成される。一方氷が解け出す季節には,大きく厚い氷塊が浮
かんでいる。疎氷域の処理作業は,安全第一を考える。
氷は移動したり,不安定であり,割れたり解けたりするため,氷上に乗ったり装備を置い
たりするのは大変危険である。
可能であるときは(いつでも),開氷域でブームとスキマーを使って数メートル以上(大
きさ)の油膜を回収すること。
風向きが変化すると氷が動くので,油膜に届きやすい位置に装置(装備)をしばしば置
き換える必要が生じる。
可能であれば,氷の端にオイルを集めて燃やすかすくい取る。
推移季では,簡便な点火装置を使って現地焼却をすることが最も効果的かつ唯一の流出
オイル回収法であることが多い。
もし疎氷域にオイルが広がってしまった場合は,効果的な(実践的な)対処法は何もな
41
い。
表3-5 春季・秋季の海での対応
環境
対応
対応
流出オイル
対処方法
の位置 封じ込め/回収 焼却
実現可能性
化学処理
流出元での制御
流出オイルの制御
保護
Arctic Waters Field Guide
3-26
3.3.1.2.対処戦略と方法
疎氷域での処理作業では,動く氷をどう扱うかが重要なポイントになる。風向きの変化によっ
て,氷の密集(度)がどんどん変化することを心しておかなければならない。安全第一。
海が凍り始める季節の初期,あるいは氷が解ける最終段階(の季節)では,
(氷が海面の25-
30%を覆っているころは),夏季とほぼ同じ処理技術が使えるが,氷がゆるみはじめのころは,
時間とアクセスが問題となる。開氷域が減少すると,船の機動力や機械的回収能力が阻害される。
氷のかけらがエンジンやプロペラタイプのモーターの水取り入れ口から入ってくるので,スクリ
ューで動く船のほうが(この季節には)適している。厳寒期に近いころでは,オイルは氷と混ざ
るか氷に包まれてしまうので,
(そのオイル)をモニタリングするのがよい。この季節は,気温が
低いことで処理作業が制限される。
封じ込めと回収
封じ込め
タンカーや自然噴出,海底パイプラインからの油流出を封じるには,耐久性に優れたコン
テイメント(封じ込め)
・ブームを使う。:
・氷の大きさは,ブームで取り囲んで動かせるほどであること。大きな浮動氷や30%以
上を氷が覆っているところでは,ブームはほとんど機能しない。
・風速35キロ以上のときは,小さな氷塊(氷片)でも,ブームに与える衝撃は大きい。
42
・コンベヤーベルトでできているブームは耐氷性に優れ(氷に強い)
;PVCやポリウレタ
ン性のブームは耐性が劣る。
・ブイ式やほかのタイプのブームは,耐久性の点で劣る。
・疎氷域での固定(アンカーリング)はほとんど不可能。
・ブームを設置したら,そのブームがそこに留まっているか,氷でだめになっていないか
を定期的にモニターすることが重要である。
Arctic Waters Field Guide
3-27
回収
開氷域や氷塊の間の流出油を集めたところに設置できれば,スキマーを使うのが最適であ
る。:
・油は氷につかまっているので,一般的に時間(がかかること)はそれほど問題にならな
いが,風によって氷のかけらが囲いから外に出てしまうことがある。
・(クレーンで操作する)モップ型スキマーや,ドラム型,ブラシ型,ドラム・ブラシ型,
ディスク型スキマーが最も有効なスキマーである。
・ベルト型スキマーは,スキマーの正面の氷を手動でどけることが出来れば,または氷が
ベルトでピックアップできる大きさであれば使用することができる。
・ブラシ型あるいはドラム・ブラシ型以外のスキマーは,最小限のアイスプロセッシング
や除去(よけること)ができる。
・通常,回収した液体には大量の丸くなった溶けかけた氷が含まれているので,大容量の
収納器を用意しないといけない。
化学的処理
氷片でびっしり覆われた海では波の力が弱く薬剤が撹拌されないので,化学的処理はほ
とんど採用されない。しかしながら,氷片がそれほど密でなく波が低く,オイルの消散が進むと
思われるときは,化学的処理を施す。
Arctic Waters Field Guide
3-28
現地焼却
推移季では,下記条件が整うならば,簡便な点火装置を使って現地焼却をすることが最
43
も効果的かつ唯一の流出オイル処理法であることが多い。
:
・エマルジョンが少なくとも約75%のオイルであること。
・油膜の厚みが2-3ミリ以上であること。
・波高は2メートル以下で荒れてないこと。
・風速は35キロ(20ノット)以下であること。
・原油を燃やす場合は,流出事故から2-5日以内であること。
点火装置は必須;できれば耐火ブームと監視用エアクラフトを用意する。
疎氷域では,島陰などの比較的氷がまばらな海域にブームを設置できなければ,耐火ブ
ームがうまく機能しないことがある。
現場作業員にとって安全な計画であるために,点火,燃焼,煙の影響を受けるであろう
エリアを明示する。
原油は硫黄の含有量が高いので,燃やしても燃やさなくても人体や安全性に対する影響
が懸念される。
作業員や一般人,野生動物を保護するために,風下10キロに立ち入り禁止ゾーンを設
ける。
火が(別のものに引火して)燃え広がらないように注意し,また燃焼を完全に消し止め
る道具を用意する。
緊急避難ルートは必ず計算に入れておくこと。
Arctic Waters Field Guide
3-29
保護
疎氷域では,保護策がとれない場合がある。:
・ブームを使う場合は,丈夫な素材のものを使う(コンベヤーベルトや丸太など)。
・しっかりした(大きな)氷が残っていなければ,流出オイルが海岸に打ち寄せられてか
ら処理をする。
軽油,中質油は,ディスク型,ドラム型,モップ型ユニットといった小型の吸着スキマ
ーで吸着し,水上または陸上の収納システムに回収する。
点火装置があるならば,現地焼却は,疎氷海域では可能な保護戦略の1つである。準備
できるならば監視用エアクラフトを用意する。耐火ブームは必要ないかも知れない。:
44
・耐火ブームは氷の中に設置するのは難しく,ダメージを受けやすい。
・油膜の厚みが2-3ミリ以上の氷片の端に寄せられた油または氷片で取り囲まれた油を
燃やす。
安全に現地焼却を行うためには,火の大きさがどのくらいになるか,避難場所や煙の人体
への影響などを事前に考慮し,例えば風下10キロメートル(6マイル)の立入禁止区域や,原
油に含まれる硫黄,消火器具などの準備をすべきである。
化学的処理は,氷の浮かんでいる沿岸では(ほとんど波がないので)撹拌力が弱く,効
果的とはいえない。空中散布も氷のすき間に薬剤をまくのが難しいので,不向きである。
Arctic Waters Field Guide
3-30
海岸での処理
秋季(海が凍り出す季節)
海が凍り始める季節には,海岸の氷(根氷)が発達して潮間帯に広がっていく。
(潮間帯まで徐々
に凍っていく)。海岸上の,雪上あるいは雪中,氷上のオイルは,この季節に氷の中に凍結されて,
春(氷解期)までそこに留まる。
流出オイルをただちに回収出来ない場合は,人体や野生生物に悪影響はおよぼさないので(人
体や野生生物の安全にとって脅威とはならないので),その位置をマークし,厳寒期(完全凍結期)
になってから回収する(セクション3.4,ページ3-45を参照のこと)。または次の氷解期ま
で氷の解けるのを待つこと。
海岸の種類,流出した油の量,種類,
(油が)乗っている雪や氷の状態によって,取るべ
き処理方法が違う。;氷があるなら,低圧洗浄でオイルを回収エリアまで洗い流し,夏季(海が
凍っていない季節)と同じ方法をとる。
あるいは,流出オイルが少量ならば,手動で回収することも適当(適切)である。また
は真空ポンプで吸引するか現地焼却する。
春季(氷が解け出す季節)
春になって氷が解け出すころは,オイルを回収できない場合は,解け出した氷からオイルを洗
い流して分散させる。
低圧洗浄でオイルを回収エリアまで洗い流し,すことができるときは,夏季(海が凍っ
ていない季節)と同じ方法で処理する。
45
あるいは,流出オイルが少量ならば,手動で回収することも適当(適切)である。また
は真空ポンプで吸引するか現地焼却する。
氷上または氷に覆われた海岸での処理方法は,セクション4.11.3に,雪のある海岸線で
の処理についてはセクション4.11.14に記載。
Arctic Waters Field Guide
3-31
3.3.2湖(湖沼)
3.3.2.1一般的なガイドライン
推移季は解けたり凍ったりする氷の種類に特徴がある。
(湖が)凍り始める季節は,薄く平らな
氷,小さな氷片やクリスタル片が形成される。一方氷が解け出す季節には,大きく厚い氷塊が浮
かんでいる。疎氷域の処理作業は,安全第一を考える。
氷は移動したり,不安定であり,割れたり解けたりするため,氷上に乗ったり装備を置い
たりするのは大変危険である。
可能であるときは(いつでも),開氷域でブームとスキマーを使って数メートル以上(大
きさ)の油膜を回収すること。
風向きが変化すると氷が動くので,油膜に届きやすい位置に装置(装備)をしばしば置
き換える必要が生じる。
可能であれば,氷の端にオイルを集めて燃やすかすくい取る。
推移季では,簡便な点火装置を使って現地焼却をすることが最も効果的かつ唯一の流出
オイル回収法であることが多い。
もし疎氷域にオイル小さな固まり(しずく)が広がってしまった場合は,効果的な(実
践的な)対処法は何もない。
表3-6 春季・秋季の湖での対応
環境
対応
対応
流出オイル
対処方法
の位置 封じ込め/回収 焼却
流出元での制御
流出オイルの制御
46
実現可能性
化学処理
保護
Arctic Waters Field Guide
3-32
3.3.2.2.対処戦略と方法
湖での対処方法は,海の場合と同様の判断基準で,疎氷域の状態によって採用される。一般
的な流出元処理(封じ込め)と油膜の回収方法で処理出来なかった油は,スキミングまたは現地
焼却で処理する。
封じ込めと回収
封じ込め
一般的に大きな流動氷が浮かんでいる湖では,ブームを効果的に使うのは難しい。:
・氷の大きさは,ブームで取り囲んで動かせるほどであること。大きな浮動氷や湖面の3
0%以上を氷が覆っているところでは,ブームはほとんど機能しない。
・風速35キロ以上のときは,小さな氷塊(氷片)でも,ブームに与える衝撃は大きい。
・コンベヤーベルトでできているブームは耐氷性に優れ(氷に強い)
;PVCやポリウレタ
ン性のブームは耐性が劣る。
・ブイ式やほかのタイプのブームは,耐久性の点で劣る。
・疎氷域での固定(アンカーリング)はほとんど不可能。
・ブームを設置したら,そのブームがそこに留まっているか,氷でだめになっていないか
を定期的にモニターすることが重要である。
回収
油膜を回収するには,氷片のすき間にオイルを集め,そこにスキマーを設置すると効果的
である。:
・(クレーンで操作する)モップ型スキマーや,ドラム型,ブラシ型,ドラム・ブラシ型,
ディスク型スキマーが最も有効なスキマーである。
・ベルト型(スキマー)は,スキマーの正面やベルトの上の氷を手動でどけることが出来
れば,使用することができる。
・ほとんどのスキマーは,最少限の氷片のミキシングや除去(よけること)ができる。
・ブラシ型あるいはドラム・ブラシ型以外のスキマーは,細かい氷片は除去(よけること)
47
ができるが,溶けかけた氷は(油と一緒に)回収してしまう。
Arctic Waters Field Guide
3-33
化学的処理
推移季では水が循環せず(薬剤が)希釈されないので,かえって環境に悪影響を及ぼす
危険があるので,湖の事故処理には化学的処理は不向きである。
現地焼却
氷の大小にかかわらず,氷片が浮かんでいる季節には現地焼却をすることが最善の流出
オイル処理法である。:
・エマルジョンが少なくとも約75%のオイルであること。
・油膜の厚みが2-3ミリ以上であること。
・波高は2メートル以下で荒れてないこと。
・風速は35キロ(20ノット)以下であること。
・原油を燃やす場合は,流出事故から2-5日以内であること。
点火装置は必須;できれば監視用エアクラフトを用意する。
(もし必要と判断し用意でき
るならば,監視用エアクラフトを使う)
疎氷域では,島陰などの比較的氷がまばらな水域にブームを設置できなければ,耐火ブ
ームがほとんど機能しない。
現場作業員にとって安全な計画であるために,点火,燃焼,煙の影響を受けるであろう
エリアを明示する。
原油は硫黄の含有量が高いので,燃やしても燃やさなくても人体や安全性に対する影響
が懸念される。
作業員や一般人,野生動物を保護するために,風下10キロに立ち入り禁止ゾーンを設
ける。
火が(別のものに引火して)燃え広がらないように注意し,また燃焼を完全に消し止め
る道具を用意する。
緊急避難ルートは必ず計算に入れておくこと。
Arctic Waters Field Guide
3-34
48
保護
湖に氷片があるとき(季節)は,(環境)資源の保護策がとれる場合がある。:
・湖岸がしっかり氷で覆われているときは,湖岸での(環境資源)保護策は必要ない。
・ブームを使う場合は,丈夫な素材のものを使う(コンベヤーベルトや丸太など)。
・疎氷域にブームを固定するのは難しいが,もしブームを使う場合は,定期的にモニター
する。
・氷片があたってブームはダメージを受ける。
・浮動氷があると油膜をうまく導けない。
(思うほうへ誘導するのがスムーズにいかない。)
・オイルを回収するには,モップ型,ディスク型,ドラム型,ブラシ型といった小型の吸
着スキマーを使う。
・
(オイル)と一緒に解けて丸くなった氷片も一緒に回収してしまうので,水上または陸上
に十分な容量の収納器(収納システム)を用意する。
点火装置があるならば,現地焼却は,氷の浮かんでいる湖では可能な保護戦略の1つで
ある。準備できるならば監視用エアクラフトを用意する。耐火ブームは必ずしも必要ではない,
または役に立たない。:
・耐火ブームは氷の中に設置するのは難しく,ダメージを受けやすい。
・十分な量のオイルを氷片の端に寄せ集め,または氷片で取り囲み,完全燃焼させる。す
なわち,(油膜の)厚みは2-3㎜以上。
安全に現地焼却を行うためには,火の大きさがどのくらいになるか,避難場所や煙の人体
への影響などを事前に考慮し,例えば風下10キロメートル(6マイル)の立入禁止区域や,原
油に含まれる硫黄,消火器具などの準備をすべきである。
水が循環せず(薬剤が)希釈されないため,かえって環境に悪影響を及ぼす危険がある
ので,化学的処理は不向きである。
Arctic Waters Field Guide
3-35
湖岸での処理
秋季(湖が凍り出す季節)
海が凍り始める季節には,海岸の氷(根氷)が発達して湖に張り出していく。湖岸上の,雪上
あるいは雪中,氷上のオイルは,この季節に氷の中に凍結されて,春(氷解期)までそこに留ま
49
る。
流出オイルをただちに回収出来ない場合は,人体や野生生物に悪影響はおよぼさないので(人
体や野生生物の安全にとって脅威とはならないので),その位置をマークし,厳寒期(完全凍結期)
になってから回収する(セクション3.4,封じ込めと回収を参照のこと)。または次の氷解期ま
で氷の解けるのを待つこと。
湖岸の種類,流出した油の量,種類,
(油が)乗っている雪や氷の状態によって,取るべ
き処理方法が違う。;氷があるなら,低圧洗浄でオイルを回収エリアまで洗い流し,夏季(湖が
凍っていない季節)と同じ方法をとる。
あるいは,流出オイルが少量ならば,手動で回収することも適当(適切)である。また
は真空ポンプで吸引するか現地焼却する。
春季(氷が解け出す季節)
春になって氷が解け出すころは,オイルを回収できない場合は,解け出した氷からオイルを洗
い流して分散させる。
低圧洗浄でオイルを回収エリアまで洗い流すことができるときは,夏季(水が凍ってい
ない季節)と同じ方法で処理する。
あるいは,流出オイルが少量ならば,手動で回収することも適当(適切)である。また
は真空ポンプで吸引するか現地焼却する。
氷上または氷に覆われた湖岸での処理方法は,セクション4.11.3に,雪のある湖沿岸で
の処理についてはセクション4.11.14に記載。
Arctic Waters Field Guide
3-36
3.3.3川(河川)
3.3.3.1一般的なガイドライン
氷解期には,寒冷地の大河川は氷で詰まり,そのため広範囲にわたって洪水が起きる。その結
果,流出オイルも広い地域に広がることになる。オイルの事故処理は困難で危険な仕事となる。
氷塊を相手にするので,どんな処理方法をとったとしても,人と装備にとって安全な仕事
であることを目標とする。
氷があるときは,流出元を封じたり制御するのは不可能であろう。
氷と流れの速さは,下流の事故処理の妨げとなる。
50
もし氷の状態が許せば(氷の状態を見て),ブームを下流に設置して流れてきたオイルを
遮断する。(この場合)流速は毎秒1メートル以下(2ノット)でなければならない。
(回収または事故処理)装置は,アクセスがよく流れの緩やかなところに設置する。
(オイルの)回収場所は,オイルが流れてきて自然に溜まるところにするべきである。
表3-7 春季・秋季の川での対応
環境
対応
対応
流出オイル
対処方法
の位置 封じ込め/回収 焼却
実現可能性
化学処理
流出オイルの制御
保護
Arctic Waters Field Guide
3-37
3.3.2.2.対処戦略と方法
氷塊や氷片が浮かんでいる川での流出オイルの事故処理は困難であり,不可能であることが
多い。
封じ込めと回収
封じ込め
流れに対して角度をつけてブームを設置できたとしても,川ではブームはあまり役に立た
ない。(その用をなさない。)
・流氷の中ではブームの設置は安全でないことが多い。
;氷片の衝撃でブームの存続が難し
い。
・海岸沿いの大河川では,逆流してくる潮,浸食されている土手,多量の堆積物やがれき
などの他の要因によって,流出事故処理は制限される(制約を受ける)。
・
(上述のような)環境的な要因に加えて,下記の理由で,川にアングル・ブームを設置す
ることは実践的でない(可能性が高い)。
-川幅が広すぎると,ブームを使って土手の1カ所に油膜を誘導することができない。
-ブームをセットアップする十分な時間がない。
51
・もしブームを使うときは,丈夫な素材のもので,incorporate top and bottom tension
members.のものを使う。
回収
油膜を回収するのであれば,小型の吸着スキマー(オイルが付着することによって回収す
る装置),特に垂直ロープのモップ型と,(足場があれば)バキュームカーが,最も効果的な油回
収装置である。
Arctic Waters Field Guide
3-38
化学的処理
川での化学的処理は有効性がなく,かえって環境に悪影響を及ぼす危険があるので,流
水に氷がある季節には不向きである。
現地焼却
現地焼却は,氷が含まれている流水(河川)においての可能な流出オイル処理方法であ
るが,適切でない(実行できない)ことも多い。
・原油を燃やす場合は,流出事故から2-5日以内であること。
・油膜の厚みが2-3ミリ以上であること。
・エマルジョンが少なくとも約75%のオイルであること。
・点火システムと監視用エアクラフトが必要。
・島陰や岬といった比較的氷の少ない水域にブームを設置できなければ,耐火ブームは使
えないことが多い。
現場作業員にとって安全な計画であるために,点火,燃焼,煙の影響を受けるであろう
エリアを明示する。
原油は硫黄の含有量が高いので,燃やしても燃やさなくても人体や安全性に対する影響
が懸念される。
作業員や一般人,野生動物を保護するために,風下10キロに立ち入り禁止ゾーンを設
ける。
火が(別のものに引火して)燃え広がらないように注意し,また燃焼を完全に消し止め
る道具を用意する。
52
Arctic Waters Field Guide
3-39
保護
川に氷片があるとき(季節)は(流水に氷が含まれているときは),(環境)資源を保護
するために,流出オイルの封じ込めと回収処理に採用されたのと同じ技術が使われる。
・安全性への配慮と流氷の中での作業の困難さが,保護活動を妨げる2大ファクターであ
る。
・もし現地焼却が可能なら,それは(環境)保護策というよりは流出オイル処理法として
実行されるということである。
川岸での処理
秋季(川が凍り出す季節)
この季節は川の水位が下がるのが特徴で,流出オイルは凍り付いた(氷が形成されている)岸
辺に打ち上げられ,そこを雪が覆っていなければ回収可能となる。
川岸上の,雪上あるいは雪中,あるいは氷上のオイルは,この季節に氷の中に凍結されて,春
(氷解期)までそこに留まる。
流出オイルをただちに回収出来ない場合は,人体や野生生物に悪影響はおよぼさないので(人
体や野生生物の安全にとって脅威とはならないので),その位置をマークし,厳寒期(完全凍結期)
になってから回収する(セクション3.4,ページ3-45を参照のこと)。または次の氷解期ま
で氷の解けるのを待つこと。
Arctic Waters Field Guide
3-40
川岸の種類,流出した油の量,種類,
(油が)乗っている雪や氷の状態によって,取るべ
き処理方法が違う。;氷があるなら,低圧洗浄でオイルを回収エリアまで洗い流し,夏季(川が
凍っていない季節)と同じ方法をとる。
あるいは,流出オイルが少量ならば,手動で回収することも適当(適切)である。また
は真空ポンプで吸引するか現地焼却も(溜まった油の処理には)適しているかもしれな
い。
春季(氷が解け出す季節)
春になって氷が解け出すと川の水位も上がり,川岸に留まっていた(とらわれていた)オイル
53
は下流に流されるか,堆積物に混ざり水に没してしまう。重い粘性の高い油だけはそのままそこ
に残る。
低圧洗浄でオイルを回収エリアまで洗い流すことができるときは,夏季(水が凍ってい
ない季節)と同じ方法で処理する。
あるいは,流出オイルが少量ならば,手動で回収することも適当(適切)である。また
は真空ポンプで吸引するか現地焼却するのも適切であるかもしれない。
氷がどっと下流に流れ出す氷解期には,多くのオペレーションと安全対策が必要とされ
る。
氷上または氷に覆われた川岸での処理方法は,セクション4.11.3に,雪のある川岸での
処理についてはセクション4.11.14に記載。
Arctic Waters Field Guide
3-41
3.4凍結期における流出オイルの処理
3.4.1海,湖,川
凍結期(厳寒期)には,固い足場が得られオイルも氷に閉じこめられるなどして流動性が失わ
れ,いろいろな意味で処理作業がしやすくなる。ただし暗闇や(厳しい)気象条件を考慮し,
(作
業の)安全性に十分注意を払わなければいけない。
3.4.1.1一般的なガイドライン
作業員は防寒具,防寒靴,保護服を着用し,凍傷,低体温症,疲労の徴候に注意する。
ディーゼルオイル,灯油,原油は風化しないので,流出から数カ月たっても焼却できる。
極めて気温が低いときにはエンジンはかけっぱなしになるので,予備の燃料や潤滑油,
スペアパーツの在庫が必要となる。
冬は結露や凍結その他の問題が起きて,機械効率が下がる。
冬場は暗いので,例え氷上の短い距離を移動するのであっても,作業員は注意を払わなけ
ればならない。:徒歩または乗り物で移動するときは,安全な確認されたルートをつかること。;
機械の操作(機械の運転)には細心の注意が必要。
遠隔地では(以下のような)安全に関連する知識が極めて重要である。:
・救急処置と心肺蘇生術(CPR)
・悪天候やホッキョクグマその他の大型動物によってもたらせる危険
54
・移動方法とその制限
・氷の耐荷重
・ポータブルラジオと充電装置の使用
Arctic Waters Field Guide
3-42
・燃料使用量の増加とバッテリーの軟弱化
・冬の日照時間の短さによる作業上の制約
3.4.1.2対処戦略と方法
雪に覆われたているいないにかかわらず,氷上,氷中,あるいは氷の下にある海,湖,川の流
出オイルを制御することは簡単なことが多い。
表3-8 凍結期(厳寒期)における海,湖,川での対応
環境
対応
対応
流出オイル
対処方法
の位置
封じ込め/回収 焼却
実現可能性
化学処理
流出オイルの制御
保護
流出オイルを閉じこめ,回収するために様々な建造物が造られたり氷が掘られたりする。以下
に記載されている基本的な技術は,特別な状況にも適用できる。
Arctic Waters Field Guide
3-43
封じ込めと回収
封じ込め
氷は一般的に効果的なオイルのバリヤーになり,雪はオイルに対して効果的な吸着剤になる。
機械(装置・道具)や手動で大量の雪とオイルを混ぜ合わせ移動する(取り除く)が,この混合
物に含まれる油の量は少ないのが普通である。
(回収した全体量に比べ油の回収量は少ない)
雪を移動してバリヤーを造るときは,グレイダー(道路の勾配をならす機械)
,ブルドーザ
55
ー,シャベルカー,レーキ(まぐわ)を使う。
・不透過性のベルムやバリヤーに雪のバリヤーを追加するときは,水をスプレーして凍ら
せる。
・プラスチック膜のような不透過性のライナーは,ディーゼルオイルその他の雪に染み込
んでしまうタイプの軽油を囲む壁や堤防を造るときに使うこと。
・集めたオイルはポンプでくみ上げ収納する。
・氷が小山や砕石(砕氷)原や水路を形作っているとき,しばしば処理活動の障害となる。
・氷の畝や溝,その他表面にデコボコがあるときは,流出元,流出量,油の通り道を計算
に入れながら処理計画を組み立てなければならない。
地表の低いところに溜まるように氷下の窪み(ポケット)に自然に流出オイルが溜まって
いくようならば:
・アイス・オーガー(穴をあける工具),チェーンソー,ディッチウイッチ,ブルドーザー,
バックホーを使って(氷に)溝や穴を掘り,氷の下に溜まったオイルに届くようにする。
・オイルの回収にはポンプまたはスキマーを使う。
・焼却は,(アイス・ポケットでは)大概うまくいかない(未遂に終わる)
。
・流水にアングル・ブームを設置して油膜の流れを変えるのと同じ要領で,川の氷に流れ
に対して角度をつけてスロット(細長い穴)をあけ,油を誘導したり溜めたりできる。
・トレンチやブームを油の誘導や貯留に使う場合に限り(現地焼却には不可),ブームをス
ロットの中に入れ,そこに凍ったまま放置することができる。
Arctic Waters Field Guide
3-44
回収
油を集めた場所から収納場所へ移すには,真空ポンプを使う。一般的な問題点は下記のと
おり:
・氷片や解けかけた雪が吸引口やホースにつまること。
・油,氷,水を無差別にピックアップすること。
・水を(一緒に)吸い込むのでラインが凍ること。
・ホースの装着備品(部品)が凍りつくこと。
・ホース,コネクター(接続器),装着部品がもろくなること。
56
化学的処理
一般的に固く凍っているところでは散布薬剤は使わない。ただし漏れた油に注入するこ
とによって海中に吹き出た油を消散するために使われたことがある。
現地焼却
固い氷の上や雪上では,オイルを燃やすことは適切。:
・氷上のオイルは,流出事故から2-5日以内に燃やすこと。
・氷の中,あるいは氷の下に流れ込んだオイルは,数カ月後でも燃やすことは可能。
・油膜の厚みが2-3ミリ以上であること。
現場作業員にとって安全な計画であるために,点火,燃焼,煙の影響を受けるであろう
エリアを明示する。
原油は硫黄の含有量が高いので,燃やしても燃やさなくても人体や安全性に対する影響
が懸念される。
作業員や一般人,野生動物を保護するために,風下10キロに立ち入り禁止ゾーンを設
ける。
火が(別のものに引火して)燃え広がらないように注意し,また燃焼を完全に消し止め
る道具を用意する。
緊急避難ルートは必ず計算に入れておくこと。
Arctic Waters Field Guide
3-45
氷の上でオイルを燃やすには,1個以上の点火装置が必要。
・氷上あるいは雪上の広い範囲のオイルに点火するには,プロパン・トーチを使う。
・ヘリ・トーチは,空中からしか行けない場所に溜まっているオイルその他様々な状態に
ある氷上オイルを燃やすときに使う。あるいは携帯点火装置を使う。
・窪地に溜まったオイルまたは氷に穴をあけて外に出したオイルは点火できる(かもしれ
ない)。
・点火と燃焼を促進するために,燃料を加える(ことは可)。
・氷上でオイルを燃やすときは,大量の水が解け出すので,to trench to contain the oil
57
することが重要である。
保護
封じ込め/方向転換
必要な機材が用意されていれば,氷や雪でバリヤーを造って,ただちにオイルの流れを変えた
り封じ込めたりできる。
雪を移動してバリヤーを造るときは,グレイダー(道路の勾配をならす機械)
,ブルドーザ
ー,シャベルカー,レーキ(まぐわ)を使う。
・不透過性のベルムやバリヤーに雪のバリヤーを追加するときは,水をスプレーして凍ら
せる。
・プラスチック膜のような不透過性のライナーは,ディーゼルオイルその他の雪に染み込
んでしまうタイプの軽油を囲む壁や堤防を造るときに使うこと。
・集めたオイルはポンプでくみ上げ収納する。
・氷が小山や砕石(砕氷)原や水路を形作っているとき,しばしば処理活動の障害となる。
・氷の畝や溝,その他表面にデコボコがあるときは,流出元,流出量,油の通り道を計算
に入れながら処理計画を組み立てなければならない。
Arctic Waters Field Guide
3-46
沿岸での処理
氷上のオイルまたは氷中や岸の固い氷下に閉じこめられたオイルは,このセクションに詳述し
てある封じ込めと回収の方法を使って回収する。
主な処理方法は,手動回収,真空ポンプを使う,機械的回収,焼却である。流出オイル
の量と種類,氷面の特徴によって,適切な道具(手段)を選択することが肝要。
潮位が1メートル以上変わる地域では,水際の氷が(氷盤)が潮の満ち干で上下するの
で,陸際の氷に亀裂が入ること(アイスクラック)を,作業オペレーションや安全対策上,十分
考慮する。またアイスクラックは,嵐に襲われて沿岸の水位が変化することでも起こるので,そ
のような地域では注意が必要である。
58
氷上または氷に覆われた沿岸での処理方法は,セクション4.11.3に,雪のある沿岸での
処理についてはセクション4.11.14に記載。
59
Arctic Waters Field Guide
4
4-1
戦略(の立て方)
Arctic Waters Field Guide
4-2
目次
4
戦略(の立て方)
4-1
4.1
はじめに
4-4
4.2
海
4-7
4.3
4.4
4.5
4.6
流出元での制御
4.2.1
機械による封じ込め/回収
4-7
4.2.2
現地焼却
4-7
4.2.3
化学的処理
4-7
4.2.4
作業上の留意点
4-8
海
流出オイルの制御
4-10
4.3.1
機械による封じ込め/回収
4-10
4.3.2
現地焼却
4-10
4.3.3
化学的処理
4-10
4.3.4
作業上の留意点
4-11
海
保護
4-13
4.4.1
機械による方向転換
4-13
4.4.2
現地焼却
4-13
4.4.3
化学的処理
4-13
4.4.4
作業上の留意点
4-14
湖
流出元の制御
4-16
4.5.1
機械による封じ込め/回収
4-16
4.5.2
現地焼却
4-16
4.5.3
化学的処理
4-16
4.5.4
作業上の留意点
4-17
湖
流出オイルの制御
4-19
4.6.1
機械による封じ込め/回収
4-19
4.6.2
現地焼却
4-19
60
4.7
4.6.3
化学的処理
4-19
4.6.4
作業上の留意点
4-20
湖
保護
4.7.1
機械による封じ込め/回収
4-22
4.7.2
現地焼却
4-22
4.7.3
化学的処理
4-22
4.7.4
作業上の留意点
4-23
Arctic Waters Field Guide
4.8
4.9
4.10
4.11
4-22
川
4-3
流出元の制御
4-25
4.8.1
機械による封じ込め/回収
4-25
4.8.2
現地焼却
4-25
4.8.3
化学的処理
4-25
4.8.4
作業上の留意点
4-26
川
流出オイルの制御
4-28
4.9.1
機械による封じ込め/回収
4-28
4.9.2
現地焼却
4-28
4.9.3
化学的処理
4-28
4.9.4
作業上の留意点
4-29
川
保護
4-31
4.10.1
機械による封じ込め/回収
4-31
4.10.2
現地焼却
4-31
4.10.3
化学的処理
4-31
4.10.4
作業上の留意点
4-32
海岸線(沿岸)での処理
4-34
4.11.1
岩盤(岩場)
4-35
4.11.2
人工構造物
4-41
4.11.3
氷または氷で覆われた海岸
4.11.4
砂浜
4-46
4-51
61
4.11.5
混合堆積物の海岸
4-56
4.11.6
中礫/玉石海岸
4-62
4.11.7
巨礫,リップラップのある海岸
4-67
4.11.8
砂干潟
4-71
4.11.9
泥干潟
4-75
4.11.10
海水湿地
4-79
4.11.11
泥炭海岸
4-83
4.11.12
沈水ツンドラ低地
4-88
4.11.13
ツンドラ海食崖
4-93
4.11.14
雪に覆われた海岸線
4-97
Arctic Waters Field Guide
4.1
4-4
はじめに
このセクションでは,環境ごとの,すなわち海,湖,川,海岸におけるオイル流出事故対応戦
略について述べてある。
環境
対処戦略
図4-1 セクション4の構成
ほとんどの流出事故において,その対応(対処)の主なものは,下記戦略を実行することによ
って環境への影響を軽減することである。
62
戦略1
→
流出元での制御
戦略1
→
流出オイルのオフサイト制御
戦略3
→
保護
それぞれの状況に応じて,表で明らかにしている。:
・環境条件,すなわち季節,水/氷の状態,流出したオイルの位置
・対処方法,すなわち選択可能な手段,選択肢の実現可能性,廃棄物管理の問題
Arctic Waters Field Guide
4-5
それぞれの場合について,表では可能な対処技術,すなわち機械による封じ込め/回収/保護,
現地焼却,薬剤を使っての分散などを示唆している。またそれぞれの選択肢の中でどれがお勧め
の方法であるかも示している。各セクションには,それぞれの戦略特有の運営上,組織上,安全
上の留意点,および実用的なガイドライン,いわゆる“rules of thumb”
(経験則;おばあちゃん
の知恵袋ならぬ親父さんの知恵袋?)について概括している。
セクション4.2-4.10で使われている本文中の見出し記号は:
人身の安全上考慮すべきこと
実践にあたっては制限したり増強したりする可能性があるため,対応策運用にあたって考
慮すべきこと
のようなアイコンは,対処方法を参照するために使われている。
(本書に登場する)アイコ
ンについては,表紙内側とセクション1で説明している。またそのアイコンに対応する対処方法
については,セクション5で詳解している。
大規模な流出事故では,あるいはそれほど大規模でないときも当てはまる場合があるが,第一
次(最初の)対処作業の後は,海岸,湖岸,川岸(土手)の処理が作業の中心となる。処理方法
は,オイルの流出エリア,オイルの性質等物理的特徴やアクセス,組織などの要因をもとに選択
される。14の岸のタイプ(図4-2)ごとの対処技術(対処方法)についてはセクション4.
11に記載されている。
戦略4
→
海岸(線)での処理
4つの戦略で使われるそれぞれの対処方法や道具については,セクション5で詳解している。
63
のような数字の入ったアイコンについては,セクション5に記載されているそれぞれの方法
を参照のこと。
セクション4.11で使われている本文中の見出し記号は:
推奨される作戦または技術(方法)
不適切と考えられる技術(方法)
注意
人,道具(装置),北極圏での作業にかかる制限,制約については,セクション3で詳解
している。どんな対処計画(作業計画)を立てるにしても,作業員と一般大衆の安全第一
である。
Arctic Waters Field Guide
4-6
不透過性または堅固な岸
4.11.1
岩盤
4.11.2
人工構造物
4.11.3
氷の,または氷で覆われた海岸
固められてない,または堆積物のある岸
ビーチ
4.11.4
砂
4.11.5
混合堆積物
4.11.6
中礫/玉石
4.11.7
巨礫,ぎざぎざ
4.11.8
砂
4.11.9
泥
干潟
4.11.10
海水湿地
4.11.11
泥炭(ピート)海岸
4.11.12
沈水ツンドラ低地海岸
4.11.13
ツンドラ海食崖海岸
4.11.14
雪の積もっている海岸(線)
図4-2 海岸の種類
64
Arctic Waters Field Guide
4.2
4-7
海
流出元での制御
海における流出元でのオイル制御の目的は,流出オイルを封じ込めて,広がったり環境を汚染
したりするのを最小限にとどめることである。流出元周辺での流出オイルの制御は,開水面期,
凍結期,季節の過渡期(すべて)において可能でなければならない。
4.2.1
機械による封じ込め/回収
海での機械による封じ込めおよび回収作業の効果は,事故現場の海と風の状態に大きく左右さ
れる。波が2mより高いとき,または風速35km/h以上のときは,封じ込めおよび回収作業
はほとんど不可能であり,敢えて作業をしたとしても安全でない。封じ込めブームやスキマーは,
オイルの広がりを最小限に抑えるため,流出ポイントにできるだけ近く配置しなければならない
。水面下のオイルは,流出元周辺で
のオイルトロールブームを使うと封じ込めること
ができるかもしれない。
凍結期あるいは季節の過渡期では,オイルはしばしば氷の穴(溝)や
の氷で囲ってつくっ
た穴(溝)や自然にできた入り江にためることができる。砕氷が浮かんでいるところでブームを
使うのは難しいが,固い氷の下にもぐったオイルは,
のブームを配置した氷の穴(溝)を使
って集めることもできる。
4.2.2
現地焼却
流出元周辺の開水面や氷の中,あるいは氷上,自然にできた入り江でオイルを焼却することは
効果的であろう
。どこで燃やすにしても,オイルに点火する装置は必要である。開水面で
は,流出元から安全な距離をとったところで耐火ブームを使う。
の耐火ブームは,砕氷が浮
かんでいるところでは,あまり効果がない。海での現地焼却は海の状態によって制約があり,波
高2m以下,風速35km/h以下でという封じ込めや回収作業のほうが実際的である。
4.2.3
化学的処理
波の高さが1-2mを超えるときは,通常機械による対処方法や現地焼却法は使えない。海が
そのような状態のときは,開水面あるいは砕氷の浮かんでいるところで流出元周辺に分散剤をま
65
くことがある。分散剤は,散布範囲が比較的狭い場合は船で
けないときはヘリコプターまたは固定翼機
Arctic Waters Field Guide
4.2.4
,広い範囲をカバーしなければい
で散布する。
4-8
作業上の留意点
海でオイルの流出事故に対応するときには,いくつかの留意点がある。:
作業をするときは,安全な状態であること。作業員の安全確保のため,モニターを使うこ
と(監視員を配置すること)。。硫黄分を多く含んだ原油や揮発油からは爆発性の有毒ガスが
発生する。
必要に応じて,氷が作業員や機械の荷重に耐えられるかどうか,専門家が判断すること。
開水面では,短期間(1-2秒間ごとに),波によって封じ込めや,回収,焼却作業が妨
げられることがよくある。そのようなときには,オイルの特性が適していれば(セクション
5.6参照)
,分散剤の使用が効果的である。
波のうねりが大きいときは(波の間が6秒以上),機械による封じ込め,回収,焼却,分
散剤,いずれも使うことができる。
ブームは,厚い油膜の漂流先(移動方向の下流)にできるだけ速やかに配置する。エアク
ラフトから監視員がブームの配置地点を指示する。ゴムボート式ブーム(空気で膨らませる
タイプのブーム)を使うときには,いっぱいに膨らませて使うこと。スキマーやブームは頻
繁にモニターして,オイルの特性や環境条件の変化に対応してきちんと機能しているかどう
か確認すること。
オイルが流出した後,小さな粒子になったり油膜の厚みが1mm以下になって開水面や砕
氷水中,氷大地に広範に広がってしまった場合には,どんな対処方法も有効でない。流出し
たオイルをモニターすることが,唯一の実際的な選択肢である。
流氷は,流出オイルの封じ込め,回収,分散剤散布作業を,しばしば妨害する。一方,固
く凍った氷は,オイルの封じ込め,回収,焼却作業に利用できる。オイルは通常,氷の下で
は風化しないので,流出事故から数カ月経った後でも,オイルを集め点火することができれ
ば,
の方法でオイルの焼却は可能である。
Arctic Waters Field Guide
4-9
66
環境
季節
水/氷
の状態
処理作業
オイルの位置
対策
封じ込め/回収
焼却 化学的分散
可能性
廃棄物
管理
-氷なし
-平底荷船
-開水面
-タンカー
-作業船
-牽引タンク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-frazil/
grease
ice
-半解氷
-平氷
-固形氷
-ドラム缶
-耐年氷
-タンク車
-浮氷
-作業船
-砕氷
-携帯タンク
-brash
ice
-ice ハンモッ
ク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-窪み
-亀裂-
表4-1 海-流出元での制御
67
Arctic Waters Field Guide
4.3
4-10
海
流出オイルの制御
海での流出オイル制御の目的は,流出元ですべてのオイルを封じ込めることができなかったと
きに,油膜の広がりや環境への影響を軽減することである。フリーオイル,すなわち流出元から
離れてしまったオイルは,
(浮遊の)遮断,回収,焼却などによって制御される。海での流出オイ
ルの制御は,開水面期,凍結期,季節の過渡期(すべて)において可能でなければならない。
4.3.1
機械による封じ込め/回収
海での機械による封じ込めおよび回収作業の効果は,事故現場の海と風の状態に大きく左右さ
れる。波が2mより高いとき,または風速35km/h以上のときは,封じ込めおよび回収作業
はほとんど不可能であり,敢えて作業をしたとしても安全でない。水面が氷結していないとき,
封じ込めブームやスキマーは,より厚い油膜を遮断しコントロールし回収するために,移動モー
ドまたは静止モードで配置しなければならない
。水面下のオイルは,
のオイルトロー
ルブームを使うと封じ込めることができるかもしれない。
季節の過渡期では,オイルは氷の穴(溝)や
の氷で囲ってつくった穴(溝)や自然にでき
た入り江に封じ込めることができる。凍結期には,雪で作ったベルム
使ってオイルが広がるのを防ぐこと。氷の下にもぐったオイルは,
やトレンチ(溝)
を
のブームを配置した氷の
穴(溝)を使って集めることもできる。
4.3.2
現地焼却
開水面や氷の中,あるいは氷上,自然にできた入り江で漂流しているオイルを焼却することは
効果的であろう
定する
。流出オイルから安全な距離をとったところに耐火ブームをアンカーで固
。どの場合でも,オイルの集中したところに点火する。海での現地焼却は海の状態に
よって制約があり,波高2m以下,風速35km/h以下でという封じ込めや回収作業のほうが
実際的である。
4.3.3
化学的処理
いろいろな状況で,開水面あるいは砕氷の浮かんでいるところで分散剤をまくときは,散布範
68
囲が比較的狭い場合は船で
固定翼機
で散布する。
Arctic Waters Field Guide
4.3.4
,広い範囲をカバーしなければいけないときはヘリコプターまたは
4-11
作業上の留意点
流出元で制御しきれなかった大量の流出オイルを沿岸海域で処理しなければならないとき,し
ばしば事故対応作業に不可欠な海岸のクリナップが必要となる。下記ガイドラインは漂流オイル
の回収に利用すべきである。:
作業をするときは,安全な状態であること。作業員の安全確保のため,モニターを使うこ
と(監視員を配置すること)。。硫黄分を多く含んだ原油や揮発油からは爆発性の有毒ガスが
発生する。
必要に応じて,氷が作業員や機械の荷重に耐えられるかどうか,専門家が判断すること。
開水面では,厚い油膜のみ(数ミリメートル以上)セクション5に記載したようにブーム
やスキマーを使って遮断,封じ込め,回収する。監視用エアクラフトを使って,事故後でき
るだけ速やかに装置(ブームやスキマー)をポジショニングすべきである。エアクラフトや
船から効果的に分散剤をまくときには,空からの監視ポイントと同じ方向であること。1m
m以下の薄い油膜は移動式スキマーや焼却システムを使っても効果がなく,散ってしまう。
一般的に分散剤散布と焼却は,寒い気象条件下で流出事故から2-5日以内,流出オイル
の乳化があまり進んでいないほうが効果的である。封じ込め,回収,焼却,薬剤散布は,波
のうねりがあっても,風化,乳化作用が働いていないオイルに使えるが,粘性が高いオイル
や波のインターバルが短い(1-2秒)荒波のところでは実際的でない。
砕氷の浮かんでいる海に広がった流出オイルのスキミングや燃焼は,油膜が十分厚ければ
(少なくとも2-3mmあれば)可能である。オイルが粒子や小さな固まりになって砕氷水
に広がってしまった場合には,氷が解けて油膜が集まらない限り,どんな対処方法も(薬剤
散布を含み)有効でない。流出オイルをモニターすることが,唯一の実際的な選択肢である。
分散剤は通常20-90L/ヘクタールの割合で使用すること。油膜の厚さによって,こ
のオイル対散布剤の割合は,100:1-10:1に調整する。新鮮な(風化が始まっていない)
原油には,20:1の割合から始めるのがよい
Arctic Waters Field Guide
4-12
69
。
環境
季節
水/氷
の状態
処理作業
オイルの位置
対策
封じ込め/回収
焼却 化学的分散
可能性
廃棄物
管理
-氷なし
-平底荷船
-開水面
-タンカー
-作業船
-牽引タンク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-frazil/
grease
ice
-半解氷
-平氷
-固形氷
-ドラム缶
-耐年氷
-タンク車
-浮氷
-作業船
-砕氷
-携帯タンク
-brash
ice
-ice ハンモッ
ク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-窪み
-亀裂-
表4-2 海-流出(漂流)オイルの制御
70
Arctic Waters Field Guide
4.4
4-13
海
保護
海における保護活動の目的は,流出オイルの通り道にある汚染の脅威にさらされている環境資
源とオイルとの接触を,最小限に食い止めることである。保護活動は,流出元での制御や途中で
油膜の遮断,封じ込め,回収,方向転換ができなかったときに必要とされる,特定の場所に施さ
れる防御戦略である。
4.4.1
機械による方向転換
海での機械による封じ込めおよび回収作業の効果は,事故現場の海と風の状態に大きく左右さ
れる。波が2mより高いとき,または風速35km/h以上のときは,機械によるコントロール
はほとんど不可能であり,敢えて作業をしたとしても安全でない。水面が氷結していないときは,
ブームを使って,汚染されやすいエリアからオイルをそらせる
。水面下のオイルは,
のオ
イルトロールブームを使うと封じ込めることができるかもしれない。
季節の過渡期では,アングルブームや
の氷で囲ってつくった穴(溝)を使って,油膜の方
向転換をする。砕氷が浮かんでいるところにブームを配置するのは難しいので,雪で作ったベル
ム
やトレンチ(溝)
を使ってオイルが広がるのを防ぐこと。氷の下にもぐったオイルは,
のブームを配置した氷の穴(溝)を使って方向転換できる。
4.4.2
現地焼却
汚染されやすいエリアを脅かしている油膜を,開水面や氷の中,あるいは氷上,自然にできた
入り江で焼却することができる
。砕氷が浮かんでいるところに耐火ブームを配置するのは
難しいが,潮の流れが1m/s以下で波の高さが2m以下ならば,使うことができる。
4.4.3
化学的処理
油膜が汚染されやすいエリアを脅かしているときは,開水面や氷の中,氷上などいろいろな条
件下で分散剤を使うことができる。分散剤をまくときは,散布範囲が比較的狭い場合は船で
広い範囲をカバーしなければいけないときはヘリコプターまたは固定翼機
,
で散布する。水面下
の狭いエリアに,例えば貝などの環境の変化に弱い環境資源(生物)がいるときは,分散したオ
71
イルに対して無防備なので(大変弱いので),注意すること。
Arctic Waters Field Guide
4.4.4
4-14
作業上の留意点
海での流出オイルによる危険にさらされた環境資源を保護するためのガイドラインは,流出元
あるいは漂流地点でオイル処理するときの留意点と同様である。:
作業をするときは,安全な状態であること。作業員の安全確保のため,モニターを使うこ
と(監視員を配置すること)。。硫黄分を多く含んだ原油や揮発油からは爆発性の有毒ガスが
発生する。
必要に応じて,氷が作業員や機械の荷重に耐えられるかどうか,専門家が判断すること。
海水に氷がなく,潮の流れが速く(1m/s以上)波が荒いときは,ブーミング,スキミ
ング,現地焼却などの方法は,選択肢からはずすこと。沿岸地帯で大規模な流出事故が起き
た場合は,1つの海岸線だけ保護すると,流出オイルを機械的に回収するか焼却しなければ,
隣のエリアを汚染してしまう。
薬剤散布を含む保護技術(保護手段)は,海に氷が浮いているときや固い氷がはっている
ときには,必要ないし実際的でない。氷,特に連続した定着氷が自然のバリヤになって,環境資
源を流出オイルの被害から守ったり,影響力を軽減したりする。安全かつ状況が許せば,集まっ
てきたオイルを焼却するのが最も効果的な対処方法である。(その場合,)油膜の厚みは少なくと
も2-3mmなくてはならない。
保護対策は,薄い油膜(1mm以下),細かく分散して氷のない水面あるいは疎氷面に広
範囲に広がったオイルに対しては,実際的でない。流出オイルをモニターすることが,唯一の実
際的な選択肢である。
Arctic Waters Field Guide
4-15
72
環境
季節
水/氷
の状態
処理作業
オイルの位置
対策
封じ込め/回収
焼却 化学的分散
可能性
廃棄物
管理
-氷なし
-平底荷船
-開水面
-タンカー
-作業船
-牽引タンク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-frazil/
grease
ice
-半解氷
-平氷
-固形氷
-ドラム缶
-耐年氷
-タンク車
-浮氷
-作業船
-砕氷
-携帯タンク
-brash
ice
-ice ハンモッ
ク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-窪み
-亀裂-
表4-3 海-保護
73
Arctic Waters Field Guide
4.5
4-16
湖
流出元での制御
湖における流出元でのオイル制御の目的は,流出オイルを封じ込めて,広がったり環境を汚染
したりするのを最小限にとどめることである。湖における流出元での流出オイルの制御は,開水
面期,凍結期,季節の過渡期(すべて)において可能でなければならない。
4.5.1
機械による封じ込め/回収
湖での機械による封じ込めおよび回収作業の効果は,事故現場の波と風の状態に大きく左右さ
れる。波が2mより高いとき,または風速35km/h以上のときは,封じ込めおよび回収作業
はほとんど不可能であり,敢えて作業をしたとしても安全でない。封じ込めブームやスキマーは,
オイルの広がりを最小限に抑えるため,流出ポイントにできるだけ近く配置しなければならない
。水面下のオイルは,流出元周辺で
のオイルトロールブームを使うと封じ込めること
ができるかもしれない。
凍結期あるいは季節の過渡期では,オイルはしばしば氷の穴(溝)や
の氷で囲ってつくっ
た穴(溝)や自然にできた入り江にためることができる。砕氷が浮かんでいるところでブームを
使うのは難しい。しかしながら,固い氷の下にもぐったオイルは,
のブームを配置した氷の
穴(溝)を使って集めることもできる。
4.5.2
現地焼却
流出元周辺の開水面や氷の中,あるいは氷上,自然にできた入り江でオイルを焼却することは
効果的であろう
。どこで燃やすにしても,オイルに点火する装置やシステムは必要である。
開水面では,流出元から安全な距離をとったところで耐火ブームを使うが,砕氷が浮かんでいる
ところに配置するのは難しい
。現地焼却は風や波の制約があるので,波高2m以下,風速3
5km/h以下でという封じ込めや回収作業のほうが実際的である。
4.5.3
化学的処理
一般的に湖では,たとえそれが大きな湖であったとしても,薬剤散布は勧められない。フラッ
シング力に限りがあり,環境に悪影響を与える可能性があるからだ。
74
Arctic Waters Field Guide
4.5.4
4-17
作業上の留意点
湖でオイルの流出事故に対応するときには,いくつかの留意点がある。:
作業をするときは,安全な状態であること。作業員の安全確保のため,モニターを使うこ
と(監視員を配置すること)。。硫黄分を多く含んだ原油や揮発油からは爆発性の有毒ガスが
発生する。
必要に応じて,氷が作業員や機械の荷重に耐えられるかどうか,専門家が判断すること。
大きな周囲が開けている湖では,短期間に(1-2秒間ごとに)荒波が襲ってきて,封じ
込めや,回収,焼却作業が妨げられることがよくある。波は急激に高くなり,厚みがない(1
0m)のが特徴である。
波のうねりが大きいときは(波の間が6秒以上),機械による封じ込め,回収,焼却,分
散剤,いずれの方法も使うことができる。
ブームは,厚い油膜の漂流先(移動方向の下流)にできるだけ速やかに配置する。エアク
ラフトから監視員がブームの配置地点を指示する。ゴムボート式ブーム(空気で膨らませる
タイプのブーム)を使うときには,いっぱいに膨らませて使うこと。スキマーやブームは頻
繁にモニターして,諸条件の変化に対応してきちんと機能しているかどうか確認すること。
オイルが小さな粒子になったり油膜の厚みが1mm以下になって開水面や砕氷水中,氷大
地に広範に広がってしまった場合には,どんな対処方法も有効でない。流出したオイルをモ
ニターすることが,唯一の実際的な選択肢である。
流氷は,流出オイルの封じ込め,回収,分散剤散布作業を,しばしば妨害する。一方,固
く凍った氷は,オイルの封じ込め,回収,焼却作業に利用できる。オイルは通常,氷の下で
は風化しないので,流出事故から数カ月経った後でも,オイルを集め点火することができれ
ば,
の方法でオイルの焼却は可能である。
Arctic Waters Field Guide
4-18
75
環境
季節
水/氷
の状態
処理作業
オイルの位置
対策
封じ込め/回収
焼却 化学的分散
可能性
廃棄物
管理
-氷なし
-平底荷船
-開水面
-タンカー
-作業船
-牽引タンク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-frazil/
grease
ice
-半解氷
-平氷
-固形氷
-ドラム缶
-耐年氷
-タンク車
-浮氷
-作業船
-砕氷
-携帯タンク
-brash
ice
-ice ハンモッ
ク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-窪み
-亀裂-
表4-4 湖-流出元での制御
76
Arctic Waters Field Guide
4.6
4-19
湖
流出オイルの制御
湖での流出オイル制御の目的は,流出元ですべてのオイルを封じ込めることができなかったと
きに,浮遊している油膜をコントロールして,できるだけ広がらないようにすることである。オ
イルコントロールは,
(浮遊の)遮断,集中,収集処理によって制御される。湖での流出元から離
れてしまったオイルの制御は,開水面期,凍結期,季節の過渡期(すべて)において可能でなけ
ればならない。
4.6.1
機械による封じ込め/回収
湖での機械による封じ込めおよび回収作業の効果は,事故現場の波と風の状態に大きく左右さ
れる。波が2mより高いとき,または風速35km/h以上のときは,封じ込めおよび回収作業
はほとんど不可能であり,敢えて作業をしたとしても安全でない。可能なときは,封じ込めブー
ムやスキマーは,より厚い油膜を遮断しコントロールし回収するために,移動モードまたは静止
モードで配置しなければならない
。水面下のオイルは,
のオイルトロールブームを使
うと封じ込めることができるかもしれない。
氷結期および季節の過渡期では,オイルは氷の穴(溝)や
の氷で囲ってつくった穴(溝)
や自然にできた入り江に封じ込めることができる。しかしながら,疎氷域にブームを配置するの
は難しい。凍結期には,雪で作ったベルム
やトレンチ(溝)
を使ってオイルが広がるの
を防ぐこと。氷の下にもぐったオイルは,
のブームを配置した氷の穴(溝)を使って集める
こともできる。
4.6.2
現地焼却
流出元から離れてしまったオイルを,開水面や氷の中,あるいは氷上,自然にできた入り江で
焼却することは効果的であろう
。点火装置は常に必要である。耐火ブームを使うときは,
流出オイルから安全な距離をとったところに耐火ブームを配置するが,砕氷があるところでは配
置は難しい。一般的に水上での現地焼却は風や波の状態に制約されるので,波高2m以下,風速
35km/h以下でという封じ込めや回収作業のほうが実際的である。
77
4.6.3
化学的処理
一般的に湖では,たとえそれが大きな湖であったとしても,薬剤散布は勧められない。フラッ
シング力に限りがあり,環境に悪影響を与える可能性があるからだ。
Arctic Waters Field Guide
4.6.4
4-20
作業上の留意点
湖において流出元で制御しきれなかった流出オイルを処理しなければならないとき,しばしば
事故対応作業に不可欠な湖岸のクリナップが計画される。しかしながら,浮遊している流出オイ
ルの回収には,いくつかの留意点がある。:
作業をするときは,安全な状態であること。作業員の安全確保のため,モニターを使うこ
と(監視員を配置すること)。硫黄分を多く含んだ原油や揮発油からは爆発性の有毒ガスが発
生する。
必要に応じて,氷が作業員や機械の荷重に耐えられるかどうか,専門家が判断すること。
開水面では,厚い油膜のみ(数ミリメートル以上)ブームやスキマーを使って遮断,封じ
込め,回収する(セクション5参照)。監視用エアクラフトを使って,事故後できるだけ速や
かに装置(ブームやスキマー)をポジショニングすべきである。1mm以下の薄い油膜は分
散してしまい,通常,移動式スキマーや焼却・ブームシステムを使っても効果的に回収でき
ない。
中質油及び重油は,ディーゼルオイルと同様,湖に相当時間とどまっている。特に寒い季
節は湖岸の保護/処理作業が必要である。
一般的に,氷のないときは,流出事故から2-5日以上経ってしまったオイルは風化およ
び乳化作業が進んでいるので,現地焼却には適さない。封じ込め,回収,焼却処理は風化し
てないオイルについても行えるが,波のインターバルが短い(1-2秒)荒波のところでは
実際的でない。
砕氷の浮かんでいる湖に広がった流出オイルのスキミングや燃焼は,油膜が十分厚ければ
可能である。オイルが粒子や小さな固まりになって砕氷水に混ざってしまった場合には,氷
が解けて油膜が集まらない限り,どんな対処方法もってしてもオイルを回収できない。氷の
間に広範に広がってしまったオイルの粒をモニターすることが,唯一の選択肢である。
Arctic Waters Field Guide
4-21
78
環境
季節
水/氷
の状態
処理作業
オイルの位置
対策
封じ込め/回収
焼却 化学的分散
可能性
廃棄物
管理
-氷なし
-平底荷船
-開水面
-タンカー
-作業船
-牽引タンク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-frazil/
grease
ice
-半解氷
-平氷
-固形氷
-ドラム缶
-耐年氷
-タンク車
-浮氷
-作業船
-砕氷
-携帯タンク
-brash
ice
-ice ハンモッ
ク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-窪み
-亀裂-
表4-5 湖-流出オイルの制御
79
Arctic Waters Field Guide
4.7
4-22
湖
保護
湖における保護活動の目的は,流出オイルの通り道にある汚染の脅威にさらされている環境資
源とオイルとの接触を,最小限に食い止めることである。保護活動は,流出元での制御や途中で
油膜の遮断,封じ込め,回収,方向転換ができなかったときに必要とされる,特定の場所に施さ
れる防御戦略である。
4.7.1
機械による方向転換
湖での機械による封じ込めおよび回収作業の効果は,事故現場の波と風の状態に大きく左右さ
れる。波が2mより高いとき,または風速35km/h以上のときは,機械によるコントロール
はほとんど不可能であり,敢えて作業をしたとしても安全でない。水面が氷結していないときは,
ブームを使って,汚染されやすいエリアからオイルをそらせる
。水面下のオイルは,
のオ
イルトロールブームを使うと封じ込めることができるかもしれない。
季節の過渡期では,角度をつけた氷の溝や氷の穴(溝)
にブームを置いて,油膜を誘導す
るが,砕氷が浮かんでいるところにブームを配置するのは難しい。凍結期には,雪で作ったベル
ム
やトレンチ(溝)
を使ってオイルが広がるのを防ぐこと。氷の下にもぐったオイルは,
のブームを配置した氷の穴(溝)を使って方向転換できる。
4.7.2
現地焼却
汚染されやすいエリアを脅かしている油膜を,開水面や氷の中,あるいは氷上,自然にできた
入り江で焼却することができる
。点火システムは常に必要である。耐火ブームを使うとき
は,流出元から安全な距離をとって配置する(砕氷が浮かんでいるところに耐火ブームを配置す
るのは難しい)。一般的に水上で焼却処理を行うときは,風,表流水,波に制約され安いので,表
流水の流れが1m/s以下で波の高さが2m以下ならば実行できる機械による封じ込め作業のほ
うが実際的である。
4.7.3
化学的処理
一般的に湖では,たとえそれが大きな湖であったとしても,薬剤散布は勧められない。フラッ
80
シング力に限りがあり,環境に悪影響を与える可能性があるからだ。
Arctic Waters Field Guide
4.7.4
4-23
作業上の留意点
湖での流出オイルによる危険にさらされた環境資源を保護するためのガイドラインは,流出元
あるいは漂流地点でオイル処理するときの留意点と同様である。:
作業をするときは,安全な状態であること。作業員の安全確保のため,モニターを使うこ
と(監視員を配置すること)。硫黄分を多く含んだ原油や揮発油からは爆発性の有毒ガスが発
生する。
必要に応じて,氷が作業員や機械の荷重に耐えられるかどうか,専門家が判断すること。
水面に氷がなく,水の流れが速く(1m/s以上)波が荒いときは,ブーミング,スキミ
ング,現地焼却などの方法は,選択肢からはずすこと。湖岸近くで大規模な流出事故が起き
た場合は,1つの湖岸だけ保護すると,流出オイルを機械的に回収するか焼却しなければ,
隣のエリアを汚染してしまう。
保護技術(保護手段)は,水に氷が浮いているときや固い氷がはっているときには,必要
ないし実際的でない。氷が自然のバリヤになって,環境資源を流出オイルの被害から守ったり,
影響力を軽減したりする。安全かつ状況が許せば,集まってきたオイルを焼却するのが最も効果
的な対処方法である。(その場合,)油膜の厚みは少なくとも2-3mmであること。
保護対策は,薄い油膜(1mm以下),細かく分散して氷のない水面あるいは疎氷面に広
範囲に広がったオイルに対しては,実際的でない。流出オイルをモニターすることが,唯一の実
際的な選択肢である。
Arctic Waters Field Guide
4-24
81
環境
季節
水/氷
の状態
処理作業
オイルの位置
対策
封じ込め/回収
焼却 化学的分散
可能性
廃棄物
管理
-氷なし
-平底荷船
-開水面
-タンカー
-作業船
-牽引タンク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-frazil/
grease
ice
-半解氷
-平氷
-固形氷
-ドラム缶
-耐年氷
-タンク車
-浮氷
-作業船
-砕氷
-携帯タンク
-brash
ice
-ice ハンモッ
ク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-窪み
-亀裂-
表4-6 湖-保護
82
Arctic Waters Field Guide
4.8
4-25
川
流出元での制御
川における流出元でのオイル制御の目的は,流出オイルを封じ込めて,広がったり環境を汚染
したりするのを最小限にとどめることである。川における流出元周辺での流出オイルの制御は,
開水面期,凍結期,季節の過渡期(すべて)において可能でなければならない。
4.8.1
機械による封じ込め/回収
川での機械による封じ込めおよび回収作業の効果は,流速に大きく左右される。大河川では風
も要因となる。流速1m/s以上,風速35km/h以上のときは,封じ込めおよび回収作業は
ほとんど不可能であり,敢えて作業をしたとしても安全でない。氷がないときは,オイルの広が
りを最小限に抑えるため,ブーム
と固定スキマー
なければならない。水面下のオイルは,流出元周辺で
を流出ポイントにできるだけ近く配置し
のオイルトロールブームを使うと封じ
込めることができるかもしれない。
凍結期あるいは季節の過渡期では,ブームを配置するのは難しいが,オイルはしばしば傾斜を
つけた氷の穴(溝)やブームを配置した氷の穴(溝)
ことができる。氷の下にもぐったオイルは,
,自然にできた embayment にためる
のブームを配置した氷の穴(溝)を使って集め
ることもできる。
4.8.2
現地焼却
流出元周辺の開水面や氷の中,あるいは氷上,自然にできた embayment でオイルを焼却する
ことは効果的であろう
。点火装置は常に必要である。現地焼却ができるかどうかは,耐火
ブームでオイルをまとめることができるかどうかにかかっている。したがって,氷,流れ,波,
風がブームを配置できる状態でないと,現地焼却はできない。耐火ブームを使うときは,流出元
から安全な距離をとって,アンカーで固定しなければならない。凍結期は流出オイルが自然に,
あるいは上記の方法のどれか1つで封じ込めることができるので,流出元での現地焼却は,最も
上首尾の手段であろう。
4.8.3
化学的処理
83
化学的に分散させる方法は,川では普通は採用されない。効果に限りがあり,環境に悪影響を
与える可能性があるからだ。
Arctic Waters Field Guide
4.8.4
4-26
作業上の留意点
川で流出オイルをその流出元で封じ込めるについて,いくつかの留意点がある。:
作業をするときは,安全な状態であること。作業員の安全確保のため,モニターを使うこ
と(監視員を配置すること)。硫黄分を多く含んだ原油や揮発油からは爆発性の有毒ガスが発
生する。
必要に応じて,氷が作業員や機械の荷重に耐えられるかどうか,専門家が判断すること。
大きな流れの速い川で流速が1m/sを超えるときには,封じ込めや,回収,焼却作業は
うまくいかない。
ブームは,厚い油膜の下流にできるだけ速やかに配置しなければならない。ゴムボート式
ブーム(空気で膨らませるタイプのブーム)を使うときには,いっぱいに膨らませ,スキマ
ーやブームは頻繁にモニターして,オイルの特性や環境条件の変化に対応してきちんと機能
しているかどうか確認すること。
油膜が大変薄いとき,すなわちオイルが粒になったり油膜の厚みが1mm以下のとき,ど
んな対処方法も有効でない。流出したオイルをモニターすることが,唯一の実際的な選択肢
である。
流氷は,流出オイルの封じ込め,方向転換(誘導),遮断,回収作業を妨害する。一方,
固く凍った氷は,オイルの封じ込め,回収,焼却作業に利用できる。オイルは通常,氷の下
では風化しないので,流出事故から数カ月経った後でも,オイルを集めることができれば,
の方法でオイルの焼却は可能である。
Arctic Waters Field Guide
4-27
84
環境
季節
水/氷
の状態
処理作業
オイルの位置
対策
封じ込め/回収
焼却 化学的分散
可能性
廃棄物
管理
-氷なし
-平底荷船
-開水面
-タンカー
-作業船
-牽引タンク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-frazil/
grease
ice
-半解氷
-平氷
-固形氷
-ドラム缶
-耐年氷
-タンク車
-浮氷
-作業船
-砕氷
-携帯タンク
-brash
ice
-ice ハンモッ
ク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-窪み
-亀裂-
表4-7 川-流出元での制御
85
Arctic Waters Field Guide
4.9
4-28
川
流出オイルの制御
川での流出オイル制御の目的は,流出元ですべてのオイルを封じ込めることができなかったと
きに,流出オイルが下流域や環境資源にオイルが広がるのを最小限に抑えることである。オイル
コントロールは,油膜の流れを遮断し,油膜が集中したところのオイルを回収することである。
川での流出元から離れてしまったオイルの制御は,開水面期,凍結期,季節の過渡期(すべて)
において可能である。
4.9.1
機械による封じ込め/回収
川での機械による封じ込めおよび回収作業の効果は,主に流速によっている。流速1m/s以
上のときは,封じ込めおよび回収作業はほとんど不可能であり,敢えて作業をしたとしても安全
でない。氷がないときは,ブーム
と固定スキマー
め,回収する。水面下のオイルには向かないが,
を配置して,厚い油膜を遮断し,封じ込
のオイルトロールブームは使えるかもしれ
ない。
季節の過渡期では,傾斜をつけた氷の穴(溝)やブームを配置した氷の穴(溝)
,自然に
できた embayment にオイルを封じ込めることができるかもしれない。凍結期では,雪で作った
ベルム
オイルは,
4.9.2
やトレンチ
を使って,オイルが広がるのを防ぐことができる。氷の下にもぐった
のブームを配置した氷の穴(溝)を使って集めることもできる。
現地焼却
川で流出元から離れてしまったオイルを焼却するときは,自然にできた embayment や氷の穴
(溝),流出元から安全な距離をとってアンカーで固定した耐火ブームを使う
。現地焼却がで
きるかどうかは,機械による封じ込めでオイルをまとめることができるかどうかにかかっている。
氷がなく,流速1m/s以下でなければ,つまりブームを配置できる状態でないと,現地焼却は
できない。凍結期は現地焼却に最適な条件を整えている。オイルは上記の方法のどれか1つを使
ってあらかじめ封じ込めておくことができる。オイルは氷の下では数カ月間,空気にさらされる
まで風化しないので,川では氷の下に自然にたまったオイルを焼却することも可能である。
86
4.9.3
化学的処理
化学的に分散させる方法は,川では普通は採用されない。効果に限りがあり,環境に悪影響を
与える可能性があるからだ。
Arctic Waters Field Guide
4.9.4
4-29
作業上の留意点
川において流出元で制御しきれなかったオイルを処理しなければならないとき,普通は川岸の
クリナップが必要となる。しかしながら,浮遊している流出オイルの回収には,様々な留意点が
影響する。:
作業をするときは,安全な状態であること。作業員の安全確保のため,モニターを使うこ
と(監視員を配置すること)。硫黄分を多く含んだ原油や揮発油からは爆発性の有毒ガスが発
生する。
必要に応じて,氷が作業員や機械の荷重に耐えられるかどうか,専門家が判断すること。
浮遊しているオイルを制御するときは,数ミリメートル以上の厚い油膜のみ,セクション
5で記載してあるようにブームやスキマーを使う。大河川では,監視用エアクラフトは,装
置(ブームやスキマー)のポジショニングに役立つ。1mm以下の薄い油膜は分散してしま
い,通常,移動式スキマーや焼却・ブームシステムを使っても効果的に回収できない。
中質油及び重油は,ディーゼルオイルと同様,寒い季節には相当時間とどまっているので,
川岸の保護/処理作業が必要である。
一般的に,氷のないときは,流出事故から2-5日以上経ってしまったオイルは風化およ
び乳化作業が進んでいるので,現地焼却には適さない。浮遊の遮断,封じ込め,回収,焼却
処理は風化してないオイルについても行えるが,流速が1m/s以上で荒波が立っていると
きは実際的でない。
砕氷の浮かんでいる川に広がった流出オイルは,油膜が十分厚ければ(2-3mm)
,ス
キミングや焼却が可能であるかもしれない。薄い油膜(1mm以下)やオイルの粒,小さな
固まりが砕氷水に混ざってしまった場合には,氷が解けて油膜が集まらない限り,どんな対
処方法もってしてもオイルを回収できない。オイルをモニターすることが,唯一の実際的な
対処法である。
Arctic Waters Field Guide
4-30
87
環境
季節
水/氷
の状態
処理作業
オイルの位置
対策
封じ込め/回収
焼却 化学的分散
可能性
廃棄物
管理
-氷なし
-平底荷船
-開水面
-タンカー
-作業船
-牽引タンク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-frazil/
grease
ice
-半解氷
-平氷
-固形氷
-ドラム缶
-耐年氷
-タンク車
-浮氷
-作業船
-砕氷
-携帯タンク
-brash
ice
-ice ハンモッ
ク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-窪み
-亀裂-
表4-8 川-流出オイルの制御
88
Arctic Waters Field Guide
4.10
4-31
川
保護
川における保護活動の目的は,流出オイルの通り道にある汚染の脅威にさらされている環境資
源とオイルとの接触を,最小限に食い止めることである。保護活動は,流出元での制御や途中で
油膜の遮断,封じ込め,回収,方向転換ができなかったときに必要とされる,特定の場所に施さ
れる防御戦略である。オイル流出事故が起きた際には,機械による方向転換(誘導)と現地焼却
によって,汚染されやすいエリアを守ることができる。
4.10.1
機械による方向転換
川での機械による封じ込めおよび回収作業の効果は,主に流速によっている。流速1m/s以
上のときは,封じ込めおよび回収作業はほとんど不可能であり,敢えて作業をしたとしても安全
でない。氷がないときは,ブーム
を配置して,汚染されやすいエリアからオイルをそらす。
のオイルトロールブームは,水中のオイルを閉め出したり,
回避させるのに使えるかもしれない。
季節の過渡期では,傾斜をつけた氷の穴(溝)やブームを配置した氷の穴(溝)
ルを誘導することができる。凍結期では,雪で作ったベルム
ルが広がるのを防ぐことができる。氷の下にもぐったオイルは,
やトレンチ
に,オイ
を使って,オイ
のブームを配置した氷の穴
(溝)やオイルトロールブームを氷の溝に配置して,オイルの方向をそらすことが可能である。
4.10.2
現地焼却
汚染されやすいエリアを脅かしている油膜を焼却するときは,耐火ブームと点火装置,自然に
できた embayment を使う
。現地焼却ができるかどうかは,機械による封じ込めでオイルをま
とめることができるかどうかにかかっている。氷がなく,流速1m/s以下でなければ,つまり
ブームを配置できる状態でないと,現地焼却はできない。また上記の方法を使ってオイルをまと
めることができる諸条件が整わなければならない。凍結期および氷のない季節は,現地焼却に最
も適しているが,季節の過渡期には流氷があるために,現地焼却法は実行できない。
4.10.3
化学的処理
化学的に分散させる方法は,川では,特に保護手段としては普通は採用されない。効果に限り
89
があり,環境に悪影響を与える可能性があるからだ。
Arctic Waters Field Guide
4.10.4
4-32
作業上の留意点
川で起こったオイル流出事故による危険にさらされた環境資源を保護するためのガイドライン
は,流出元あるいは漂流地点でオイル処理するときのガイドラインと同様である。:
作業をするときは,安全な状態であること。作業員の安全確保のため,モニターを使うこ
と(監視員を配置すること)。硫黄分を多く含んだ揮発性の原油からは,爆発性の有毒ガスが
発生する。
必要に応じて,氷が作業員や機械の荷重に耐えられるかどうか,専門家が判断すること。
水面に氷がなく,流速が1m/s以上のときは,ブーミング,スキミング,現地焼却など
の方法は,選択肢からはずすこと。1カ所の川岸だけ保護すると,流出オイルを機械的に回
収するか焼却しなければ,下流のエリアを汚染してしまう。
保護技術(保護手段)は,水に氷が浮いているときや固い氷がはっているときには,必要
ないし実際的でない。氷が自然のバリヤになって,環境資源を流出オイルの被害から守った
り,影響力を軽減したりする。安全かつ状況が許せば,集まってきたオイルを焼却するのが
最も効果的な対処方法である。油膜の厚みは,焼却する前に少なくとも2-3mmでないと,
実際的でない。
保護対策は,薄い油膜(1mm以下),細かく分散して氷のない水面あるいは疎氷面に広
範囲に広がったオイルに対しては,実際的でない。流出オイルをモニターすることが,唯一
の実際的な選択肢である。
ほとんどの場合,岸から装置を配置するほうが,作業船や労働力を使わなくても済むので,
より安全で実際的でもある。
吸着ブームやスウィープ(モップ)は,流れが穏やかで遅いエリアでは,ときには岸辺の
保護に効果があるが,定期的に点検して,吸着材が十分オイルを吸着したら交換する。
Arctic Waters Field Guide
4-33
90
環境
季節
水/氷
の状態
処理作業
オイルの位置
対策
封じ込め/回収
焼却 化学的分散
可能性
廃棄物
管理
-氷なし
-平底荷船
-開水面
-タンカー
-作業船
-牽引タンク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-frazil/
grease
ice
-半解氷
-平氷
-固形氷
-ドラム缶
-耐年氷
-タンク車
-浮氷
-作業船
-砕氷
-携帯タンク
-brash
ice
-ice ハンモッ
ク
-開水面
-平底荷船
-浮氷
-タンカー
-砕氷
-作業船
-窪み
-亀裂-
表4-9 川-保護
91
Arctic Waters Field Guide
4.11
4-34
海岸線(沿岸)での処理
油にまみれた海岸線を処理することの目的は,自然回復を促進すること,または打ち上げられ
たオイルを回収することである。処理作業には,セクション5.7に記載されている20の物理
的,生物学的,化学的の中の1つ以上の方法を使う。
このセクションでは,戦略と技術(対処方法)は,北極地方の海岸,湖岸,川岸の14種に分
けられた沿岸別に概説されている。
14種の沿岸は,下記のように基盤(基質)の透過性をもとに分けられている。:
・不透過性,あるいは堅固で堆積物がない;安定している(氷を除く)。オイルは地下にしみ
こむことが出来ない。
・透過性あるいは地盤が固まっていない沿岸で,有機質および無機質の堆積物が含まれてい
る。オイルは表面堆積物に浸透または埋没する(このカテゴリーには雪に覆われた沿岸も
含まれる)。
透過性の海岸は,堆積物のサイズ,沿岸(陸地)の主な形状によって,さらに種類が細分され
ている。沿岸の種類はセクション8.9の写真で図示されている。
沿岸での処理作業あるいは清浄作業は,通常氷のないときに行われる。しかしながら,沿岸に
氷や雪がある雪解け期や凍結期に,オイルにまみれることもある。あらゆる種類の沿岸の冬の凍
結期や雪や氷の状態に対応できる戦略については,セクション4.11.3(氷の,または氷に
覆われた沿岸)及び4.11.14(雪で覆われている沿岸)で述べている。
このセクションで使われている見出し記号は:
計画を実行するための推奨される戦略または技術(方法)
不適切と考えられる技術(方法)なので,計画実行のためには推奨できない
Arctic Waters Field Guide
4.11.1
4-35
海岸線(沿岸)での処理
岩盤(岩場)
・岩盤(岩場)は不透過性なので,打ち寄せられたオイルはそのまま地表にとどまる。
・氷のできる沿岸では,毎年大部分の生物が岩場からこすり取られるので,潮間帯の動植物
はほとんど張り付いていない。わずかにクラックやクレバスにのみ洗掘から免れた植物,
92
動物が生息している。概して氷に削られる岩の露頭には,広範な,様々な,豊富な生物は
いない。
・生物が生息しているのは,通常潮下帯や潮間帯の下のゾーンである。
岩場(岩の沿岸)のオイル
・潮間帯の上半分のゾーンに,オイルは堆積する。:
・粘度の高いオイル,あるいは風化したオイルはこのゾーンのすべて生物を窒息させる
が,潮間帯の下部に生息する生物にはあまり影響を与えない。
・軽油や風化してない原油はすぐに潮間帯の下部に流れていき,接触や,あるいはこの
種のオイルに含まれる有毒物質のために,生物に悪影響を与える。
・潮間帯の生物は,下記により,より多大な被害を受ける。:
・少量よりも多量のオイル
・重油(bunker fuels
バンカー燃料)や風化したオイルよりも,軽い純正油(ディー
ゼルオイル,Fuel Oil No.2 など)
Arctic Waters Field Guide
4-36
・岩場の潮間帯下部は,水から出ても普通は湿っているので,オイルは岩や植物に付着して
いることができない。オイルは波や氷の作用が届かないクラックやクレバスにたまる。岩
盤やランプ上のオイルは,窪みや潮だまりに集まる。
オイルパーシスタンス(オイルの安定性)
・海岸では(波にさらされている沿岸では),オイルは波の影響で,あまり岸に打ち上げられ
ない。打ち上げられても,波の作用ですぐに洗い流される。
・波にさらされている海岸であっても,普通の波が届く範囲より上にオイルが跳ね上げられ
たときは,オイルは数週間から数カ月間,ときには数年もそこにとどまる。
・遮蔽性の沿岸にやってきたオイルは,潮間帯上部の直近の高水位の位置にとどまる。
・比較的波がおだやかな沿岸では,重油や風化した原油は波や氷にもっていかれずに,相当
時間(何年も)そこにとどまることがある。
・軽油は短期間に(数日から数週間で)岩場から洗い流される。
開水面での対処例
自然回復
は,波に洗われている沿岸では,特に開水面期初期では,好ましい対処方法
93
である。この方法は,遮蔽性の岸にある重油や風化した原油には適さない。オイルは波や氷
によって岩場から洗い流されず,そこに長くとどまるからである。凍結期の直前では,自然
回復法は不適である。オイルは氷に閉じこめられ,次の氷解期流れ出す可能性があるからで
ある。
Arctic Waters Field Guide
4-37
ガソリンのような軽い揮発性のオイルに対しては,何もしない
のが一番安全な方法で
ある。もしこのタイプのオイルを移動する必要があるときは,水が凍るほど気温が低くなけ
れば,安全な距離をとって(煙,発火,フラッシュバック=炎の逆流などは安全上考慮すべ
きファクター)冷水洗浄法
で処理する。移動したオイルはブーム
や吸着剤,スキマ
を使って封じ込め,収集する。
ー
フラッディング(大量の水で洗い流す)
は,ディーゼルオイルのような軽いオイル処
理には適しているが,粘性の高いオイルや固化しかかっているオイルに対しては実用性がな
い。
軽油や中質油の一部に対して低圧冷水洗浄
を行うと,環境に対するダメージを最小限
にすることができる(後述の避けるべき対処法を参照のこと)。もし水深が十分ならば,ボー
トや作業船から洗浄することができれば,沿岸帯の生物を踏みつけずに済む。
高圧冷水洗浄
と低圧温水/熱湯洗浄
は,低圧冷水洗浄では移動できない粘性の高い
オイルに対して有効である。
少量の中質および重油を手動で(人力で)移動する
のは推奨できる。真空ポンプを手
で持って潮だまりや窪みに集められた軽油(ディーゼルオイルなど),中質/重質油を回収す
るのも効果的である。真空吸引は安全上の理由から,ガソリンには不適である。人力で処理
するときはいつでも,生物を踏みつぶしてしまうエリアを最小限にすること。
吸着剤
は,軽油および中質油を集めるときに消極的に(補助的に)使われる。吸着剤
は少量のオイルに対しては有効である。
Arctic Waters Field Guide
分散剤
4-38
は,タイプが適したオイルに対して満潮時に使われる。もし正しく使うならば,
分散剤は少量のオイルに対して効果がある。どんな化学薬品を使う場合でも,一般的に行政
94
機関の許可が必要である。
沿岸用クリーナー
は,フラッディングや低圧洗浄法でオイルを移動し回収するときに
一緒に使われる。どんな化学薬品を使う場合でも,一般的に行政機関の許可が必要である。
処理方法の組み合わせ例
・人力
でオイルまみれのゴミを回収してから,ハンドツール,真空吸引装置
,吸着剤
などを使って潮だまりのオイルを回収する(生物を踏みつぶさないように注意する)。
・フラッディング法
・沿岸用クリーナー
と低圧洗浄法
は,収集作業や回復作業と一緒に行う。
の使用は,フラッディング法
や低圧洗浄法
,オイルの収集作業
や回復作業と一緒に行う。
避けるべきこと
岩壁では,落ちたり滑ったりしないように,注意すべきである。特に遮るもののない沿岸
では,波が荒く氷の動きも激しいので注意すること。
沿岸地帯に植物(海草)や動物(bamacles,ムラサキガイ等)がいるところでは,潮間帯
の上部から下部へオイルを洗い流すことは避ける。しばしば潮間帯下部はオイル汚染してい
ないのに,クリナップによってオイルを下へ流す,あるいは踏みつけることによってダメー
ジを大きくしてしまうことがある。干満のサイクルの潮位が高くなる間(満潮の中間位から
最高位までの間と落潮の最高位から中間位までの間)に作業を行うことで,潮間帯下部は常
に水の中にあるので,ダメージを避けることができる。
Arctic Waters Field Guide
4-39
高圧温水/熱湯洗浄(スチームクリーニングとサンドブラスティングを含む)
は,
健康な生物も除去してしまう方法なので,避けるべきである。もし生物が生息していないか,
あるいはオイルが既に生物を窒息死させていれば,スポット洗浄でオイルを除去することが
できるが,植物や動物を除去すると,たとえそれがオイルで死んでしまっているとしても,
生息環境が変化してしまうので,コロナイゼーション(群生化)が遅れる。
潮間帯生物に淡水をスプレーするのも避けること。
植生カット
は,植物をだめにして小生物(微生物)や野生動物の保護カバーを除去し
てしまうことになるので,避けること。
まとめ
95
岩の沿岸では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に大差はない。処理方法を選
択する際の重要な要素(ファクター)は:
・遮るもののない(開けた)沿岸:沿岸が開けていて遮るものがなく,波が荒いところでは,
オイルの安定性は比較的短い(数日から数週間),一方遮蔽性の波がおだやかな沿岸では,
一般的にオイルが長くとどまっている(数カ月から数年)
。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:軽いオイルは岩場では重いオイルや風化している原油にく
らべ,安定性がない。
険しい傾斜のあるところでは,ボートや作業船からの作業に制限される。
Arctic Waters Field Guide
4-40
表4-10 岩盤海岸での適切な処理方法
軽油
中質油
重油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
低圧,温水/熱湯
高圧,冷水
高圧,温水/熱湯
手作業による回収
真空吸引
吸着剤
分散剤
沿岸用クリーナー
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.2
オイルが少量の場合のみ適している
4-41
海岸線(沿岸)での処理
人工の堅固な構造物
96
・人工岩壁は岩場の海岸とよく似ている。特に,基盤(基質)は不透過性なので,オイルは
地表に打ち上げられたままである。このタイプの沿岸には,擁壁,岩壁,防波堤が含まれ
る。開けていて(遮るものがなく)透水性で,リップラップ(張石材)のような材料で造
られた構造物については,セクション4.11.7で述べる。
・水中や岸に氷のできる沿岸では,毎年生物が地表(表面)からこすり取られるので,植物
や動物は,洗掘から免れるクラックやクレバスにのみ生息している。概して氷に削られる
表面には,広範な,様々な,豊富な生物はいない。
・クリナップ作業をするときは,オイルで汚れた後浜にある歴史的建造物や考古学的あるい
は歴史的遺跡に特別の注意を払わなければならない。
人工の堅固な構造物上のオイル
・人工の堅固な構造物には,コンクリート,金属,木材といったいろいろな材料が含まれて
いる。これらの材料の表面のきめや粗度はそれぞれ違う;例えば,オイルによってはなめ
らかな金属斜面には付着せず,垂直のざらざらしたコンクリートの表面に付着するものが
ある。
・潮間帯下部は,特に植物(海草)が生えているところは,常に湿っているので,オイルは
あまり付着しない。オイルは潮間帯上部にたまりやすい。
・表面が険しく滑らかで生物が張り付く余地が少ないので,岩の海岸に比べ生物は豊富でな
い。
・傾斜面やランプ(傾斜路)があるときは,オイルは窪みにたまる。
Arctic Waters Field Guide
4-42
オイルパーシスタンス(オイルの安定性)
・遮るもののない海岸では(波にさらされている沿岸では),オイルは波の影響で,あまり岸
に打ち上げられない。打ち上げられても,波の作用で速やかに(数日から数週間で)洗い
流される。
・波にさらされている海岸であっても,普通の波が届く範囲より上にオイルが跳ね上げられ
たときは,オイルは数週間から数カ月間,ときには数年もそこにとどまる。
・遮蔽性の沿岸にやってきたオイルは,直近の高水位の位置近くのゾーンにとどまる。
・比較的波がおだやかな沿岸では,重油や風化した原油は波や氷にもっていかれずに,相当
97
時間(何年も)そこにとどまることがある。
・軽油は短期間に(数日から数週間で)ほとんどの人工構造物の表面から洗い流される。
開水面での対処例
自然回復
は,波に洗われている沿岸では好ましい対処方法である。この方法は,オイ
ルが長くとどまる遮蔽性の岸にある重油や風化した原油には適さない。凍結期の直前では,
自然回復法は不適である。オイルは氷に閉じこめられ,次の氷解期に流れ出す可能性がある
からである。
ガソリンのような軽い揮発性のオイルに対しては,何もしない
のが一番安全な方法で
ある。もしこのタイプのオイルを移動する必要があるときは,水が凍るほど気温が低くなけ
れば,安全な距離をとって(煙,発火,フラッシュバック=炎の逆流などは安全上考慮すべ
きファクター)冷水洗浄法
の1つで処理する。移動したオイルはブーム
や吸着剤,
を使って封じ込め,収集する。
スキマー
フラッディング(大量の水で洗い流す)
は,傾斜面でディーゼルオイルのような軽い
オイル処理には適しているが,粘性の高いオイルや固化しかかっているオイルに対しては実
用性がない。
Arctic Waters Field Guide
4-43
軽油や中質油の一部に対して低圧冷水洗浄
を行うと,環境に対するダメージを最小限
にすることができる(後述の避けるべき対処法を参照のこと)。人工構造物の表面は傾斜が急
なことが多いので,もし水深が十分ならば,ボートや作業船から洗浄することが望ましい。
オイルはブーム
高圧冷水洗浄
や吸着材またはスキマー
と低圧温水/熱湯洗浄
を使って封じ込め,回収する。
は,低圧冷水洗浄では移動できない粘性の高い
オイルに対して有効である。高圧温水/熱湯洗浄法
は(スプレーノズルをオイルの方面か
ら約10センチ離す),歴史的石造物や石こう(しっくい)に付着した粘度の高いオイルを除
去するのに向いている。
氷に削られて人工構造物の表面に生物がいないときは,高圧洗浄法
ーニング法
,サンドブラスティング法
,スチームクリ
は適切である。
少量の中質および重油を手動で(人力で)移動する
ぶしてしまうエリアを最小限にすること。
98
のは推奨できるが,生物を踏みつ
吸着剤
は,少量の軽油および中質油を集めるときに消極的に(補助的に)使われる。
分散剤
や沿岸用クリーナー
は,オイルのタイプ別に作られていて,もし正しく使う
ならば,少量のオイルに対して効果がある。どんな化学薬品を使う場合でも,一般的に行政
機関の許可が必要である。
処理方法の組み合わせ例
・フラッディング法
と低圧洗浄法
を収集作業や回復作業と一緒に行った後,高圧高温法
で残ったオイルを除去する。
・オイルを除去したり集めたりするために,沿岸用クリーナー
低圧洗浄法
はフラッディング法
や
と一緒に使う。
Arctic Waters Field Guide
4-44
避けるべきこと
急傾斜,フラット,狭い人工構造物の表面では,落ちたり滑ったりしないように,注意す
べきである。特に遮るもののない沿岸では,波が荒く氷の動きも激しいので注意すること。
潮間帯に植物(海草)や動物(bamacles,ムラサキガイ等)がいるところでは,潮間帯の
上部から下部へオイルを洗い流すことは避ける。しばしば潮間帯下部はオイル汚染していな
いのに,クリナップによってオイルを下へ流すことによってダメージを大きくしてしまうこ
とがある。このようなダメージは,干満のサイクルの潮位が高くなる間(満潮の中間位から
最高位までの間と落潮の最高位から中間位までの間)に作業を行うことで避けられる。潮間
帯下部は常に水の中にあるので。
高圧温水/熱湯洗浄(スチームクリーニングとサンドブラスティングを含む)
は,
健康な生物も除去してしまう方法なので,避けるべきである。もし生物が生息していないか,
あるいはオイルが既に生物を窒息死させていれば,スポット洗浄でオイルを除去することが
できるが,植物や動物を除去すると,たとえそれがオイルで死んでしまっているとしても,
生息環境が変化してしまうので,コロナイゼーション(群生化)が遅れる。
潮間帯の動植物に淡水をスプレーするのは避けること。
歴史的石造物や石こうに高圧温水/熱湯洗浄法を使うのは適しているが,研磨材
はセメントなどを傷つけるので使わないこと。
99
や薬剤
Arctic Waters Field Guide
4-45
まとめ
人工の堅固な構造物上では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に大差はない。
処理方法を選択する際の重要な要素(ファクター)は:
・遮るもののない(開けた)沿岸:沿岸が開けていて遮るものがなく,波が荒いところでは,
オイルの安定性は比較的短い(数日から数週間),一方遮蔽性の波がおだやかな沿岸では,
一般的にオイルが長くとどまっている(数カ月から数年)
。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの軽いオイルは,人工の堅固な構造
物の上では安定性がない。
人工構造物の傾斜が急なときは,ボートや作業船からの洗浄作業に制限される。
表4-11 人工構造物での適切な処理方法
軽油
中質油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
低圧,温水/熱湯
高圧,冷水
高圧,温水/熱湯
蒸気,サンド
手作業による回収
吸着剤
分散剤
沿岸用クリーナー
最適
Arctic Waters Field Guide
オイルが少量の場合のみ適している
4-46
100
重油
4.11.3
海岸線での処理
氷のまたは氷で覆われた海岸
・氷は比較的不透過性であるが,水が凍ったり解けたりするときに,オイルは氷に閉じこめ
られる。
・氷の海岸では,氷河や氷の端が海上のほうに伸びている。海岸,湖岸,川岸のどんなタイ
プの沿岸にも,季節になると氷は形成される。岸を覆う氷は,次の氷解期まで解けずに残
る。カナダ海の北部沿岸,グリーンランド,ゼムリャフランツァヨシファなどの北極圏の
緯度が高い地域では,海岸を覆ったこおりは1年中解けることがない。
季節的に形成される氷は,岸でいくつかの形をとると思われる。:
・着氷性の波や霧は,潮間帯を覆う定着氷を形成する(氷脚,図4-3)。
・
(板状の)浮氷塊が潮間帯に打ち上げられて,定着氷に合体する,あるいは波の作用によっ
て再漂流する。
・浜辺の地下水が凍る。
・氷の表面の様態は変化しやすく,さらさらした(乾いた)粉雪から解けかけた水分の覆い
雪まで,乾いた氷(固く凍った氷)から濡れた(解けかけた)氷まで様々である。
・雪に覆われた氷や解けかけたものについては,セクション4.11.14の雪に覆われた
海岸線(沿岸)の項で述べる。
・氷河や氷の端で削り取られた氷の海岸は垂直に切り立っていて,解けかけているものは緩
い傾斜に成っている。季節的に形成される海岸地帯の氷の形状は,凍結するときの潮位,
波,天候条件によって決まる。潮位が低いところ(2m以下)では,海岸線の比較的幅の
狭いゾーンを氷が覆う。潮位が高く成るに連れ,氷の幅も広くなり,砕氷もより多く形成
される傾向にある。
Arctic Waters Field Guide
4-47
・比較的波がおだやかな状態で海岸の氷が形成されると,連続したシンプルな塁壁が潮間帯
上部を覆う。凍結の初期の段階で荒波あるいは嵐による波の大きなうねりがあると,いろ
いろな浮氷塊ができて海岸に凍り付き,砕氷と氷床が混ざった複雑な様相を呈する。
101
図4-3 氷脚は波あるいは海水が喫水線(のトップ)で形成される。干潮のあるエリアでは,
固まった氷脚と沿岸の浮氷塊は,クラックのあるところで分断される(中間―満潮時,
底―干潮時)。
・潮間帯の定着氷と海辺に浮かぶ海氷とは,普通は干満のクラックがあるところで,干潮時
の海側,潮間帯下部と切り離される。海岸の定着氷は,まず海氷ができ,それが一部海に
戻った後,氷脚となって残ることで出来上がる。
Arctic Waters Field Guide
4-48
氷海岸または氷に覆われた海岸のオイル
海岸地帯や近海に氷があると,氷は水面にあるオイルが海岸の基盤(基質)に接触するのを防
ぐ働きをすることが多い。
・氷の表面でオイルを洗い流しても,大気,水温,オイルの表面温度が0℃以下でなければ,
オイルは(氷の表面に)付着しない。
・凍結期には,氷点下で海岸や海岸の氷に打ち上げられたオイルは,氷に覆われ,氷に閉じ
込められる。
102
・氷解期または氷の表面が解け出し湿ってくると,オイルは氷の表面に付着していることが
できずに,海水面または海岸溝に集まる(海に戻る)。オイルは(再び)氷の上や普通の波
が届かないところに打ち上げられて,もし再び氷点下まで気温が下がると,打ち上げられ
たオイルは定着氷に合体する。
・砕氷中にあるオイルは,定着氷が海岸を覆ってなければ,
(板状の)浮氷塊の間の岸(基盤)
に打ち上げられる。
・もし連続した定着氷(氷脚)があるときは,氷が海岸線を守るが,氷脚が海岸地帯の下に
張り出して浮氷塊の層も包含しているときは,オイルは氷の亀裂を通って移動し,氷の下
にたまる。
・海岸堆積物の中に形成された氷(凍った地下水)は,打ち上げられたオイルの浸透を防ぐ。
対処例
自然回復
は,遮るもののない(波に洗われている)海岸では好ましい対処方法である。
この方法は,オイルが長くとどまる遮蔽性の岸にある重油や風化した原油には適さない。凍
結期の直前では,自然回復法は不適である。オイルは氷に閉じこめられ,次の氷解期に流れ
出す可能性があるからである。
Arctic Waters Field Guide
4-49
物理的な洗浄法は実際的で効果はあるが,定着氷の端は傾斜が急なことが多いので,もし
水深が十分ならば,ボートや作業船から洗浄することが望ましい。オイルはブーム
着材またはスキマー
や吸
を使って封じ込め,回収する。
洗浄法(流水および収集)は,水が凍らずオイルが乳化していなければ,有効である。
フラッディング(大量の水で洗い流す)
は,傾斜面でディーゼルオイルのような軽い
オイル処理には適しているが,粘性の高いオイルや固化しかかっているオイルに対しては実
用性がない。
吸着剤(補助的使用
や吸着スキマー),真空吸引装置
ある。現場に運べるならば,垂直ロープモップスキマー
,現地焼却
は有効な手段で
は氷の表面を拭き取り,クラッ
クやクレバス,溝からオイルを集めることができる。ロープモップは後浜,作業船,氷上か
らクレーンで働かせることが出来る。
103
オイルと雪が混ざってるときは人力
でも,その場まで入れられるなら機械でも
,容
易に回収(除去)することが出来る。
処理方法の組み合わせ例
・氷が濡れているときは,低圧洗浄法
を使って流動するオイルを収集,回収し,残ったオ
イルをハンドツール(作業道具)や真空ポンプ
収)する
,吸着剤
を使って,人力で除去(回
。
・機械的にこすり取ったり除去した
後に,残ったもの,こぼれたものを人力で除去する
。
避けるべきこと
氷は濡れていると大変に滑りやすいので,溝(亀裂)や薄い氷,浮動氷のあるところで作
業をする人は,十分な注意が必要だ。また機械は一般的に,寒冷で雪や氷があるときは作業
効率が落ち,動かないことも多いので,人力よりも役に立たない。
Arctic Waters Field Guide
4-50
急斜面の氷や棚氷の上では,落ちたり滑ったりしないように,注意すべきである。特に遮
るもののない沿岸では,波が荒く氷の動きも激しいので注意すること。
まとめ
氷の海岸や氷に覆われた海岸では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に大差は
ない。処理方法を選択する際の重要な要素(ファクター)は:
・気温:解け出した氷には,新しく形成された氷とは違う対処戦術(対処方法)が必要であ
る。
・氷表面の状態:表面がなめらかなときは,粗度が高い氷とは違う対処戦術(対処方法)が
必要である。
・氷の形状:傾斜が急な氷の海岸では,作業はボートや作業船からに限られる。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの軽いオイルは,人工の堅固な構造
物の上では安定性がない。
104
表4-12 氷の海岸,氷に覆われた海岸での処理方法
軽油
中質油
重油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
低圧,温水/熱湯
手作業による回収
真空吸引
機械による回収
吸着剤
現地焼却
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.4
オイルが少量の場合のみ適している
4-51
海岸線(沿岸)での処理
砂浜
・砂浜は,軽油や一部の中質油が浸透しやすい。砂浜は大変流動的で常に動き変化している
表面層である。
・きめの細かい砂浜と目の粗い砂浜とでは著しい違いがある。:
・目の粗い砂浜(堆積物の直径が0.5から2mm)には普通,険しい傾斜地があり,
摩擦が乏しい(基質の支持力が弱い)。
・きめの細かい砂浜(堆積物の直径が0.5mm以下)は平坦で,基質の支持力が強く
車を走らせることができる。
・グラニュー(顆粒,細礫)(堆積物の直径が2から4mm)や豆砂利は通常“海岸堆積物”
と考えられており,それについては4.11.6で説明する。
・砂浜では支持力が十分で,様々な車が走行できる。潮間帯下部では,堆積物に水がしみこ
んでいるために(砂基質が)ゆるんでおり,また通常の潮間帯より上の部分でも,風に吹
き飛ばされてきた砂のために支持力が弱いところがある。タイヤは少し沈むことで,支持
105
力が低いのをカバーしている。
・砂は遮るもののない海岸では大変流動的であり,遮蔽されたエリアでは,波のおだやかな
ところでも,絶えず分散を繰り返している。
・この不安定な環境には,移動する(穴を掘る)動物種はほとんど生息していない。一般的
に,囲まれた波の低い環境以外のところでは,生物学的生産性は低い。
・砂浜にたまる堆積物は,地元の資源と供給条件によるところが大きい。
Arctic Waters Field Guide
4-52
砂浜のオイル
・きめの細かい砂浜では,オイルの浸透は制限される。中質油や重油は,25センチ以上の
礫でないと浸透しない。
・軽油は中礫や粗礫の砂(利)浜にすばやく浸透し,地下水と混ざる。また軽油は潮位の変
化によって再び漂流したりする。
・逆流(余波)や地下水が浜に流れ込むことで潮間帯下部は常に湿って(濡れて)いるので,
オイルは打ち上げられたままでいることはない。粘性が高く濃いオイル以外は,満潮にな
ると再び浮き上がり運ばれて,浜の上のほうに集中する。
・波が比較的おだやかであると,例えば波の高さが10から30センチのときは,潮の満ち
干によって砂浜の水位が10センチほど上下する。嵐によって大波が起こると,2,3時
間の間に浜の表面は1メートルも上下する。これらのプロセスで,打ち上げられたオイル
は浸食されたり撹拌されたり埋められたりする。同様のことが,川の流れや波によって,
川岸の油で汚れた堆積物に連続的に働く。
・砂浜の氷板(ice table)は軽油が堆積物中に浸透するのを防ぐ。氷板(ice table)の深さ
は季節によって変化し,夏の間は2,3センチから1.0m以上になる。
対処例
自然回復法
は,オイルの流出量が少ないとき,軽油であるとき,遮るものがない海岸
や遠隔地では,好ましい対処方法である。凍結期の直前では,自然回復法は不適である。オ
イルは新しく形成される氷に閉じこめられ,次の氷解期流れ出す可能性があるからである。
(閉じこめられた)オイルを秋や冬に(植生が枯れる季節)解き放つのは許容できるが,春
106
や夏の生長する季節には許容できない。
Arctic Waters Field Guide
4-53
フラッディング(大量の水で洗い流す)
や低圧洗浄法
は,軽油や中質油の除去には
適している。この方法は粘性の高いオイルには不適で,オイルはさらに浸透したり埋まった
りする。
人力での除去作業
は,中質油や重油の除去に適している。油で汚れていないもの運び出
しは,ごく少量で済むからである。油にまみれた堆積物の量が多くなるにつれ,またオイル
が埋まっていたり堆積物としっかり混ざっているところでは,効率が悪くなる。砂浜でのオ
イル除去作業には先の尖ったシャベルより四角いもののほうが使い勝手がよい。
機械による除去作業
は,海岸線が長く浜の表面にオイルが集中しているところに適し
ている。オイルが堆積物と混ざっていたり埋まっているところの除去作業では,オイルの集
積率が低いので,大量の廃棄物(処理物)の運搬と廃棄が必要になる。
グレーダーは,オイルにまみれた砂の表層を削り取る作業に適している重機である。フロ
ントエンドローダーは,グレーダーほど薄く表層を削り取ることはできない。ブルドーザー
の使用は最終手段である。グレーダーによってつくられた廃棄物の山は,フロントエンドロ
ーダーで除去(移動,)する。
オイルで汚れた砂浜から人力および機械で除去作業をするときの選択決定要因には,下記
が含まれる。
:
・きれいにするエリアの広さ
・処理作業にさける時間
・処理,運搬,廃棄する油汚染した堆積物の量
吸着剤
は,海に洗い流されたオイルを集めるのに有効である。吸着材の効果はオイル
の量が多くなると低下する。吸着材を大量に使用すると,ゴミ廃棄の問題が発生する。
ミキシング
および堆積物の入替
は,軽油の風化作用を促進する。特に堆積物を移動
することで,ほかの処理方法で大部分のオイルを除去したのちに砂に残っているオイルを,
磨き落とすことができる。
Arctic Waters Field Guide
4-54
107
処理方法の組み合わせ例
・フラッディング
で,また漂っているオイルをバックホーで掘った直線の回収トレンチや
オイルだめに流し込んだ後,真空吸引装置
・機械による除去作業
をした後,ミキシング
やスキマーで
回収する。
や堆積物の入替
をする。
避けるべきこと
この種の海岸では,堆積物を除去しすぎるのは問題である。元通りになるのに時間がかか
るからである。また,堆積物を除去しすぎると,浸食などを引き起こす。
処理作業や清掃作業では,きれいな堆積物と油汚染した堆積物とが混ざらないように計画
する。特に,ミキシングや堆積物入替の処理方法を考えているのでなければ,オイルをきれ
いな堆積物の表面にミックスすることは避けること。
オイルが堆積物中に浸透していると,機械や人力による堆積物除去の方法は,運搬と廃棄
が必要なオイル汚染度の低い大量の廃棄物を発生する。
油で汚れた堆積物を横に置く回数が多いと,グレーダーの取りこぼしが多くなる。もし1
台以上のグレーダーが使えるならば,何個も堆積物の山を作るよりは,
(1台ずつ)一気に浜
の上まで運び上げるほうがよい。
きれいなところにオイルの跡を付けるのは避けること。作業者や作業員は,汚れていると
ころを横切らずに,常にきれいなエリアからオイルで汚れているエリアに向かって作業をす
ること。
人力で処理作業をしているときは,回収袋や回収容器に入れすぎてこぼすことがないよう
に,また入れ物が壊れないようにすること。
Arctic Waters Field Guide
4-55
まとめ
砂浜では,回収するオイルの量が多いか少ないかによって,処理方法に違いがある。処理方法
を選択する際の重要な要素(ファクター)は:
・遮るもののない(開けた)沿岸:沿岸が開けていて遮るものがなく,波が荒いところでは,
オイルの安定性は比較的短い(数日から数週間),一方遮蔽性の波がおだやかな沿岸では,
一般的にオイルが長くとどまっている(数カ月から数年)
。波の作用がある海岸では,ミキ
シングや堆積物の入替はより効果的である。
108
・オイルで汚れているエリアの範囲:漂泊しているオイルが大量かつ広範であるときは,機
械による回収作業や現地焼却法がより実際的である。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの大変軽いオイルは,ほとんどの砂
利堆積物に浸透する。
表4-13 砂浜での処理方法
軽油
中質油
重油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
手作業による回収
真空吸引
機械による回収
吸着剤
ミキシング
堆積物の入替
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.5
オイルが少量の場合のみ適している
4-56
海岸線(沿岸)での処理
混合堆積物の海岸
・混合堆積物海岸(砂利浜も参照のこと)は,砂,細礫,中礫,玉石でできている。一般に
表層は流動的で安定性がなく,表面近くほど砂の量が多くなる。巨礫(巨大な丸い岩)が
浜に点在していることもある。
・北極圏の沿岸の低地では,混合堆積物や砂利の堆積が,波の作用によって後浜まで押し上
げられているところがある。このような高い所にある浜は直接植生や泥炭マットが上に乗
って,海に面した土手になる。
・川やデルタでは,水路の端や水路中ほどの bars では,中礫や玉石が目立つことが多い。
それは混合堆積物の層から砂が洗い流されて,粗い堆積物が残るからである。砂その他の
109
細かい堆積物は流れの緩やかなところ,特に川が蛇行している内側の部分,point bars や
河口,デルタに堆積する。
・粗い堆積物が常に海岸線を変えているところでは,特に潮間帯上部では,浜が,小さな生
き物を保持していることができないので,ほとんどの動植物は生き残れない。潮間帯下部
や波が遮られているところでは,より安定しているので,生物は生存しやすい。
・このようなタイプの海岸は,潮間帯上部に険しい区域があるところが多い。粗い堆積物は
トラクション(掃流)が弱いので,車や時には人が作業できない。
(動けない)同様に,川
では流れが下の部分を削り取るために,土手の端は急峻なことが多い。
・このタイプの海岸では,粗い堆積物は,非常にゆっくりとしたプロセスで自然に供給され
るので,オイル汚染した堆積物が除去されたり,
(自然の力で)入れ替えられたりするのは,
非常にゆっくりとしているか,もしくは全くない。
Arctic Waters Field Guide
4-57
混合堆積物海岸のオイル
この海岸は粗めの片(中礫や玉石)にそれより小粒の砂や細礫が入り込んで,軽油や一部の中
質油しか透さない海岸になっている。この浜の表層は流動的である。
図4-4 ビーチの種類
・オイルの末路や安定性から,つまりオイルの浸透性ということでは,この浜は砂浜と同類
だが,オイルの処理方法は中礫/玉石海岸での処理方法に近い。
・オイルの浸透する深さは,オイルの種類に関係している。オイルで汚れた堆積物の埋没や
入替の深さ(度合い)は,波の浸食や回収のプロセスによる(左右される)。
110
・オイルのとどまる時間,安定性は,オイルの種類,浸透や埋没の深さ,保持要因,浜に寄
せる波や流れの強さによる。
・軽油は速やかに粗礫の砂浜に浸透し,地下水と混ざり,潮位の変化によって移動する。
Arctic Waters Field Guide
4-58
・中質油および重油は,混合堆積物海岸では粗い堆積物の海岸よりも浸透していかず,むし
ろ浜の表面下にたまる。
・逆流(余波)や地下水が浜に流れ込むことで潮間帯下部は常に湿って(濡れて)いるので,
オイルは打ち上げられたままでいることはない。粘性が高く濃いオイル以外は,満潮にな
ると再び浮き上がり運ばれて,浜の上のほうに集中する。
・普通,堆積物の表層のみ波や流れの作用で変化する(動かされる)。表層より下に浸透した
オイルは,嵐や氾濫時でない限り,物理的な変化は受けない(物理的に動かされない)。
・氷板(ice table)はオイルが堆積物中に浸透するのを防ぐ。夏の初めの数週間は,氷脚や
定着氷が解け出し,氷板(ice table)の深さは2,3センチから0.5mになる。夏が過
ぎていくにつれ,浜の氷が解け,8月中旬から下旬にかけて氷板(ice table)の深さは増
し1.0mに,時にはそれ以上になる。凍結期の到来とともに,氷板(ice table)はふた
たび表面に近づいてくる。
対処例
自然回復法
は,オイルの流出量が少ないとき,軽油であるとき,遮るものがない海岸
や遠隔地では,好ましい対処方法である。凍結期の直前では,自然回復法は不適である。オ
イルは新しく形成される氷に閉じこめられ,次の氷解期流れ出す可能性があるからである。
Arctic Waters Field Guide
4-59
フラッディング(大量の水で洗い流す)
は,可動性のオイルを堆積物の表面から洗い
流したり,軽油を堆積物の表面や表面下から洗い流し,オイルを回収することができる環境
にやさしい技術(方法)ある。この方法は粘性の高いオイルには不適で,オイルはさらに浸
透したり埋まったりする。
低圧洗浄法
は,可動性のオイルを表層や堆積物の表面から洗い流し回収することがで
きる。この方法はフラッディングよりも粘性の高いオイルに対して有効であるが,粘性が増
すほど,また深く埋まっているほど,効果が薄い。
111
人力での除去作業
は,油汚染しているもの,していないもの合わせて回収される堆積物
の量を最小限にすることができ,表層の油にまみれた堆積物除去に適している。この方法は
深く浸透したり埋まっているオイルには不向きである。人力による除去作業は,アスファル
ト舗装のかけらやタールの塊,小型の油汚染したごみ(礫)などに適している。砂/中礫/
玉石が混ざった海岸でのオイル除去作業には,先の尖ったシャベルが一番使い勝手がよい。
は,半固化した大量のオイルを除去するのに適している。油汚染
機械による除去作業
していない堆積物の除去量をできるだけ少なくできる機械が推奨される。一般的にこの手の
海岸はトラクションが乏しいので,バックホーのついたフロントエンドローダーを使うのが
よいだろう。
吸着剤
は少量の軽油や中質油の回収には有効である。
機械によるミキシング
堆積物の入替
は,堆積物表面および表面下の軽油処理に適している。
は,遮るものがない海岸で,可動性のオイルを回収した後や,オイルに
まみれた堆積物が少量のときに適している。この方法は,浸食する可能性を最小限にする。
堆積物入替法は,浸透,埋没したオイルに適している。堆積物入替法の効果は,波や流れが
どの程度堆積物をこすったり再分散したり再配置するか,あるいはオイルを除去するきめの
細かいもの(粘土やシルト)があるかによる。
Arctic Waters Field Guide
4-60
処理方法の組み合わせ例
・フラッディング
で漂っているオイルをトレンチや油だめに集め,真空ポンプ
でオイ
ルを回収する。
・機械によるミキシング
を行った後,堆積物入替
をし,バイオレメデーション
を
する。
避けるべきこと
この種の海岸では,堆積物を除去しすぎるのは問題である。元通りになるのに時間がかか
るからである。また,堆積物を除去しすぎると,浸食などを引き起こす。
堆積物中に浸透しているオイルの位置は大変低い(深い)ので,機械や人力による堆積物
除去の方法は,回収できるオイルの量の割りには大量の廃棄物を発生する。
フラッシングや堆積物入替法は,オイルが油汚染してない潮間帯下部に広がるのでさける
こと。
112
フラッシングはオイルを浜から洗い出すのではなく,ただ堆積物中に深く移動させるだけ
なので,避けること。
まとめ
混合堆積物海岸では,流出オイルの量が多いか少ないかによって,処理方法に違いがある。処
理方法を選択する際の重要な要素(ファクター)は次のページにリストしてある。:
Arctic Waters Field Guide
4-61
・遮るもののない(開けた)沿岸:沿岸が開けていて遮るものがなく,波が荒いところでは,
オイルの安定性は比較的短い(数日から数週間),一方遮蔽性の波がおだやかな沿岸では,
一般的にオイルが長くとどまっている(数カ月から数年)
;波の作用がある海岸では,ミキ
シングや堆積物の入替はより効果的である。
・オイルで汚れているエリアの範囲:漂泊しているオイルが大量かつ広範であるときは,機
械による回収作業や現地焼却法がより実際的である。
・オイルの位置:もしオイルが埋まっているか堆積物中に浸透している場合は,ミキシング
や堆積物入替のほうが機械による回収よりも好ましい。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの大変軽いオイルのみ,砂の混ざっ
た混合堆積物に浸透する。
表4-14 混合堆積物海岸での処理方法
軽油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
手作業による回収
真空吸引
機械による回収
吸着剤
ミキシング
113
中質油
重油
堆積物の入替
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.6
オイルが少量の場合のみ適している
4-62
海岸線(沿岸)での処理
中礫/玉石海岸
・中礫/玉石海岸(粗い堆積物の海岸としても知られている)は,半固化したオイル以外に
ついて透過性で,表層は流動的で不安定である。巨礫(巨大な丸い岩)が浜に点在してい
ることもある。
・中礫は粒の直径が4-64mmのもの,玉石は64-256mmのものをさす。粗い堆積
物の海岸には,直径2-4mmの細礫(豆砂利)も含まれる。
・中礫/玉石海岸には,直径が2-256mmの材料で造られたリップラップや砂袋で固め
た壁などの人工構造物も含まれる。
材料の直径が256mm以上のものは巨礫と考えられ,
セクション4.11.7の扱いとなる。
・粗い堆積物が常に海岸線を変えているところでは,特に潮間帯上部では,浜が,小さな生
き物を保持していることができないので,ほとんどの動植物は生き残れない。潮間帯下部
や波が遮られているところでは,より安定しているので,生物は生存しやすい。
・このようなタイプの海岸は,潮間帯上部に険しい区域があるところが多い。粗い堆積物は
トラクション(掃流)が弱いので,車や(時には)人が清掃作業できない。
(動けない)同
様に,川では流れが下の部分を削り取るために,土手の端は急峻なことが多い。
・このタイプの海岸では,粗い堆積物は,非常にゆっくりとしたプロセスで自然に供給され
るので,オイル汚染した堆積物が除去されたり,
(自然の力で)入れ替えられたりするのは,
非常にゆっくりとしているか,もしくは全くない。
中礫/玉石海岸のオイル
・中礫/玉石海岸は混合堆積物海岸や砂利浜(セクション4.11.5)とは区別される。
中礫や玉石の1個1個のすき間が広く,その間を砂が埋めているからである。
・中礫/玉石海岸では,海岸に打ち上げられたオイルは,混合堆積物海岸よりもたやすく表
面下の堆積物に浸透する。
Arctic Waters Field Guide
4-63
・オイルの浸透する深さは,オイルの種類と堆積物の大きさに関係している。粒が大きいほ
114
どオイルは浸透しやすいが,オイルの保持力は比較的低いので,オイルはこれらの目の粗
い堆積物から自然に洗い流されてしまう。
・オイルのとどまる時間,安定性は,オイルの種類,浸透の深さ,保持要因,浜に寄せる波
や流れの強さによる。
・軽油や粘性の低いオイルは,潮のポンピング作用で,堆積物の表面や表面下から簡単に洗
い流される。
・普通,堆積物の表層のみ波や流れの作用で変化する(動かされる)。表層より下に浸透した
オイルは,嵐や氾濫時でない限り,物理的な変化は受けない(物理的に動かされない)。
・逆流(余波)や地下水が浜に流れ込むことで潮間帯下部は常に湿って(濡れて)いるので,
オイルは打ち上げられたままでいることはない。粘性が高く濃いオイル以外は,満潮にな
ると再び浮き上がり運ばれて,浜の上のほうに集中する。
・堆積物中のオイルの量(重さまたは嵩)は,通常大変少なく,オイルが溜められているか,
大変濃いときを除いて,1%以下であることが多い。
対処例
自然回復法
は,流出量が少量の軽油であるとき,遮るものがない海岸や遠隔地では,
好ましい対処方法である。凍結期の直前では,自然回復法は不適である。オイルは新しく形
成される氷に閉じこめられ,次の氷解期流れ出す可能性があるからである。
フラッディング(大量の水で洗い流す)
は,可動性のオイルを堆積物の表面や表面下
から洗い流し回収することができる環境にやさしい技術(方法)ある。この方法は粘性や付
着力の高いオイルには不適である。
Arctic Waters Field Guide
低圧洗浄法
4-64
は,可動性のオイルを表層の堆積物から洗い流し回収することができる。こ
の方法はフラッディングよりも粘性の高いオイルに対して有効であるが,粘性や付着力,浸
透の深度が増すほど効果が薄くなる。
人力での除去作業
は,油汚染しているもの,していないもの合わせて回収される堆積物
の量を最小限にすることができ,表層の油にまみれた堆積物除去に適している。この方法は
深く浸透したり埋まっているオイルには不向きである。人力による除去作業は,アスファル
ト舗装のかけらやタールの塊,小型の油汚染したごみ(礫)などに適しているが,油汚染し
ている海岸線が長くなり油にまみれている堆積物の量が多くなるときには,実際的でなくな
115
る。中礫/玉石海岸でのオイル除去作業には,先端が平らなシャベルよりも先の尖ったシャ
ベルのほうが使い勝手がよい。
は,半固化した大量のオイルを除去するのに適している。油汚染
機械による除去作業
していない堆積物の除去量をできるだけ少なくできる機械が推奨される。一般的にこの手の
海岸はトラクションが乏しいので,バックホーのついたフロントエンドローダーを使うのが
よいだろう。
吸着剤
は少量の軽油や中質油の回収には有効である。
機械によるミキシング
は,堆積物表面および表面下の軽油処理に適している。この方
法は,堆積物入替法と一緒に行うことができる。
堆積物の入替
は,遮るものがない海岸で,可動性のオイルを回収した後に適している。
堆積物の入替は,少量の油にまみれた堆積物処理にも有効である。この方法は,浸食する可
能性を最小限にし,浸透,埋没したオイル処理にも適している。堆積物入替法の効果は,波
や流れがどの程度堆積物をこすったり再分散したり再配置するかによる。波がおだやかなと
ころで堆積物入替法を行うときには,機械の力やオイルを除去するきめの細かいもの(粘土
やシルト)が必要になる。
Arctic Waters Field Guide
4-65
処理方法の組み合わせ例
・オイルにまみれた瓦礫を人力で除去し
,真空ポンプ
や吸着材
を使って表面のオイ
ルパッチを回収する。
・フラッディング
と低圧洗浄法
・機械によるミキシング
は組み合わせて使える。
を行った後,堆積物入替
をし,バイオレメデーション
を
する。
避けるべきこと
この種の海岸では,堆積物を除去しすぎると浸食などを引き起こす。浸食すると,自然に
元通りになるのに大変時間がかかる(何十年も)。
堆積物中に浸透しているオイルの位置は大変低い(深い)ので,機械や人力による堆積物
除去の方法は,回収できるオイルの量の割りには大量の廃棄物を発生する。
フラッシングや堆積物入替は,オイルが汚染してない潮間帯下部に広がるのでさけること。
フラッシングはオイルを浜から洗い出すのではなく,ただ堆積物深くに移動させるだけな
116
は一時的に粘性の高いオイルをかき集め,さらに深
ので,避けること。温水または熱湯
いところへ移動させてしまう。オイルが浜を移動している間に温度が下がるか,または冷た
い地下水などに接触することによって,オイルは浜のさらに低いところに溜まってしまう。
まとめ
中礫/玉石海岸では,流出オイルの量が多いか少ないかによって,処理方法が違う。処理方法
を選択する際の重要な要素(ファクター)は次のページにリストしてある。:
・遮るもののない(開けた)沿岸:沿岸が開けていて遮るものがなく,波が荒いところでは,
オイルの安定性は比較的短い(数日から数週間),一方遮蔽性の波がおだやかな沿岸では,
一般的にオイルが長くとどまっている(数カ月から数年)
。
・オイルで汚れているエリアの範囲:漂泊しているオイルが大量かつ広範であるときは,機
械による回収作業や現地焼却法がより実際的である。
・オイルの浸透:もしオイルが埋まっているか堆積物中に浸透している場合は,ミキシング
や堆積物入替のほうが機械による回収よりも好ましい。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの大変軽いオイルのみ,中礫/玉石
海岸に浸透する。
表4-15 中礫/玉石海岸での処理方法
軽油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
手作業による回収
真空吸引
機械による回収
吸着剤
ミキシング
堆積物の入替
117
中質油
重油
バイオレメデーション
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.7
オイルが少量の場合のみ適している
4-67
海岸線(沿岸)での処理
巨礫,リップラップのある海岸
・巨礫海岸は透過性で,表層は安定している。
・巨礫の定義は,直径が256mmより大きく,氷や人や大波で動かされるもの。人工の防
波堤や岸壁は巨礫サイズの材料(リップラップ)で造られているので,巨礫海岸と同じ範
疇に入れる。
・巨礫海岸は,潮間帯下部に泥塩干潟や砂塩干潟があることが多い。
・この種のビーチや沿岸は安定しているので,巨礫が冬の氷の作用でお互いにこすれたり動
いたりしないエリアの巨礫の間や上に,動植物が張り付いている。
・巨礫のバリケードはカナダ海東部やバルト海に見られる。
;巨礫のバリケードは,氷のラフ
ティングとプッシングによってできる。巨礫のバリケードは,潮間帯を横切る,あるいは
沿うように一列に形成される。
巨礫,リップラップのある海岸のオイル
・1個1個の巨礫の間に大きなスペースがあるので,あらゆるタイプのオイルが堆積物中に
入り込む。
・オイルの保持時間あるいは安定性はオイルの種類,浜の波あるいは流れの強さによる。軽
油や付着力のないオイルは,潮の満ち干によって簡単に堆積物の表層から洗い流される。
対処例
ある意味,巨礫海岸は岩の露頭に似ているので,岩の海岸と同じ方法できれいにすること
ができる。しかしながら,オイルは下に横たわる堆積物に浸透していくことができる。
Arctic Waters Field Guide
4-68
表面にあるオイル以外は集めることが難しいことが多いので,自然回復法
は,オイル
流出量が少量であるときは特に,好ましい対処方法である。大きなすき間に入り込んだ重油
や半固化したオイルには,ほとんど効果がない。凍結期の直前では,自然回復法は不適であ
る。オイルは氷に閉じこめられ,次の氷解期流れ出す可能性があるからである。
118
フラッディング(大量の水で洗い流す)
は,可動性のオイルを堆積物の表面や表面下
から洗い流し回収することができる。フラッディングはオイルが重くなるにつれ,有効に働
かなくなる。
低圧冷水洗浄法
は,可動性のオイルを表層の堆積物を洗い流し回収することができる。
この方法はフラッディングよりも粘性の高いオイルに対して有効であるが,粘性や付着力,
浸透の深度が増すほど効果が薄くなる。
人力での除去作業
は,表面のオイルについては適しているが,表面下のオイルについて
は実際的でない。人力による除去作業は,アスファルト舗装のかけらやタールの塊,小型の
油汚染したごみ(礫)などに適しているが,油汚染している海岸線が長くなるにつれ,実際
的でなくなる。
もしオイルの溶脱(?)が問題になるときは,巨礫を(人工のリップラップを)機械で
持ち上げて(移動して)
(あるいは陸や作業船から),下にあるオイルを回収処理し,巨礫を
元に戻す。
吸着剤
は,軽油や中質油が表面か表面近くにあるときの回収には有効である。またオ
イルの量が少ないときにも勧められる。人工のリップラップ海岸では,吸着剤(パッド,枕
など)をクラック(亀裂)に詰め,オイルが構造物に浸透するのを防ぐ;しかしながら,こ
の方法は労働集約的である(たくさんの労働力を要する)
。
Arctic Waters Field Guide
4-69
処理方法の組み合わせ例
・オイルにまみれた瓦礫を除去した後,人力で表面のオイルを除去
,または吸着材
を
使う。
・フラッディング
は低圧洗浄法と組み合わせて使える。
避けるべきこと
この種の海岸では,堆積物の除去は実際的でなく,効果もないことが多い。巨礫サイズの
堆積物は強力な防護層を形成していて,入替は自然に起こらないのが大きな問題である。し
たがって,入替なしの除去作業はビーチ,海岸,川岸の浸食を引き起こす。
フラッシングや洗浄法は,オイルが汚染してない潮間帯下部に広がるのでさけること。
フラッシングはオイルを浜から洗い出すのではなく,ただ堆積物中に深く移動させるだけ
119
は一時的に粘性の高いオイルをかき集め,さら
なので,不適切である。温水または熱湯
に深いところへ移動させてしまう。オイルが浜を移動している間に温度が下がるか,または
冷たい地下水などに接触することで,オイルは浜のさらに低いところに溜まってしまう。
Arctic Waters Field Guide
4-70
まとめ
巨礫海岸またはリップラップ海岸では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に大
差はない。処理方法を選択する際の重要な要素(ファクター)は:
・遮るもののない(開けた)沿岸:沿岸が開けていて遮るものがなく,波が荒いところでは,
オイルの安定性は比較的短い(数日から数週間),一方遮蔽性の波がおだやかな沿岸では,
一般的にオイルが長くとどまっている(数カ月から数年)
。
・オイルの浸透:もしオイルが巨礫やリップラップに浸透している場合は,冷水フラッシン
グが唯一効果的な対処方法である。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:粘性が高く付着力の強いオイル以外は,どんなオイルも巨
礫やリップラップに浸透できる。
傾斜が急な巨礫海岸やリップラップ海岸では,ボートや作業船からの作業に制限される。
表4-16 巨礫海岸またはリップラップのある海岸での処理方法
軽油
中質油
重油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
手作業による回収
吸着剤
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.8
オイルが少量の場合のみ適している
4-71
海岸線(沿岸)での処理
砂干潟
・砂干潟は一般に:
120
・広い
・地表(表面)は平らか緩い傾斜がある
・一部の中質油や軽油を透過させる
・大量のシルトを含む
・表層は大変流動的で不安定である
・砂干潟は,通常,低地や潟,河口(デルタ)付近に形成される。
・このような海岸は,北極の夏の間,多くのエリアで鳥の大切な生息地になっていることが
多く,渡り鳥が動物プランクトンや昆虫,オタマジャクシ(幼虫),蠕虫(ミミズなど)を
餌にする。
・北極海沿岸の低地,ボーフォート海,チュコト海,ラプテフ海,カラ海などでは,強い風
が吹き,水位を10センチも下げ干潟をさらし,喫水線(水と陸の境界線?)を数百メー
トル海のほうへ動かす。
・砂干潟の人および車に対する支持力は弱い(支持力が弱く,人も車も作業ができない)。
・砂干潟の表面は流動的である。水の移動や砂の波紋はいつも見られる。風の起こした波の
作用や流れ込む水の流れによって堆積物が動くので,1回の潮の干潮の間に数センチも表
面が変化する。
・潮干潟にはうね,溝,わだち,クレーターほか,氷が引きずったり転がったり弾んだりし
た跡がある。
砂干潟のオイル
・砂干潟は完全に干上がらず,水が満杯あるいは堆積物表面のすぐ下まであるところも多い。
そのためオイルは浸透していかず,粘性の低いオイルだけが,波によって堆積物と混ざる
程度である。
Arctic Waters Field Guide
4-72
・重油以外は,どんなオイルも満潮時に浮き上がり,潮の流れと風によって移動する。した
がって,オイルは低い湿ったところや水(海水)のいっぱいあるエリアよりも,潮間帯上
部や乾いた砂の上部に集まりやすい。
・重いオイルに限っては埋没する。オイルは穴を掘る小動物の穴を通って,表面下に浸透し,
表面下の堆積物に長期間(数カ月から数年)とどまる。
121
・安定性がない軽いオイルは即時にダメージを与え(動物に接触することで),重いオイルは
穴に充満して生物を窒息させる。
対処例
砂干潟の処理作業は,足場の確保が難しく,また処理作業をすることによってオイル以上
にダメージを与えてしまう。自然回復法
は,オイル流出量が少量であるときは特に,好
ましい対処方法である。凍結期の直前では,自然回復法は不適である。オイルは氷に閉じこ
められ,次の氷解期流れ出す可能性があるからである。
フラッディング(大量の水で洗い流す)
と吸着剤を使った回収
は,軽油および中質
油には効果的である。
人力
や真空ポンプ
を使った回収方法は,窪みに自然に溜まった少量のオイルに対し
ては適している。
支持力が十分で安全にアクセスすることができるならば,重油は機械で
回収する。
オイルをトラッピングや封じ込めで(コンテイニング)で(トレンチや溝に)集める場合
には,落潮のときが効果的である。
Arctic Waters Field Guide
4-73
処理方法の組み合わせ例
・ハンドツール(道具)を使って人力で回収作業
を行った後,真空ポンプ
や吸着材
を使う。
・低圧洗浄法
マー
で窪みや溝(トレンチ)のほうへオイルを流した後,真空ポンプ
やスキ
で回収する。
避けるべきこと
潮間帯での作業は,水位の変化に合わせて計画されなければならない。特定の場所の潮の
満ち干は正確に予測できるが,風や波は水位を変化させる。低地沿岸地方では大波や
set-downs はいつものことなので,予報よりも実際の条件を考慮に入れて,スケジュールや
作業プランを立てるべきである。
砂干潟の支持力は場所によって様々で,エリアによっては人も車も支持できない(作業が
できない)。
作業船(バージ)や底の平らなボートは処理作業や作業員の助けになる。作業船やボート
122
は落潮時に地面または水面に置くと,満潮時には浮き上がる。作業船やボートは思いがけな
い大波などの不測の事態に輸送船としても使える。
堆積物中にオイルを混入させるのは避けるべきである。表面下のオイルは長期間(数年)
留まる。堆積物の擾乱(?)はたとえ堆積物にオイルが含まれていなくてもダメージを与え
るので,
(作業員や作業者車が)移動するときは,オイル汚染エリアと被汚染エリアを注意深
くコントロールしなければならない。
Arctic Waters Field Guide
4-74
まとめ
砂干潟では,流出オイルの量が多いか少ないかによって,処理方法に違いがある。処理方法を
選択する際の重要な要素(ファクター)は:
・遮るもののない(開けた)沿岸:沿岸が開けていて遮るものがなく,波が荒いところでは,
オイルの安定性は比較的短い(数日から数週間),一方遮蔽性の波がおだやかな沿岸では,
一般的にオイルが長くとどまっている(数カ月から数年)
;波や潮流の作用がある海岸では,
ミキシングや堆積物の入替はより効果的である。
・オイルで汚れているエリアの範囲:漂泊しているオイルが大量かつ広範であるときは,機
械による回収作業や現地焼却法がより実際的である。この方法は,干潟で機械を使うこと
でダメージが拡大しないか判断しなければならない。
・オイル汚染エリアの湿気:湿気は掃流,支持力,軽油の浸透性に影響する。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの大変軽いオイルのみ,乾いた砂の
堆積物に浸透する。
表4-17 砂干潟での処理方法
軽油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
手作業による回収
真空吸引
123
中質油
重油
機械による回収
吸着剤
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.9
オイルが少量の場合のみ適している
4-75
海岸線(沿岸)での処理
泥干潟
・泥干潟は一般に:
・広い
・地表(表面)は平らか緩い傾斜がある
・一般的に水が満杯で,不透過性である
・表層は大変流動的である
・泥干潟は,通常,低地や潟,河口(デルタ)付近に形成され,また比較的遮蔽された環境,
波や潮流の影響がすくないところにもよくできる。
・このような海岸は,北極の夏の間,多くのエリアで鳥の大切な生息地になっていることが
多く,渡り鳥が動物プランクトンや昆虫,オタマジャクシ(幼虫),蠕虫(ミミズなど)を
餌にする。
・北極海沿岸の低地,ボーフォート海,チュコト海,ラプテフ海,カラ海などでは,強い風
が吹き,水位を10センチも下げ干潟をさらし,喫水線(水と陸の境界線?)を数百メー
トル海のほうへ動かす。
・泥干潟の表面は大変流動的で,潮の満ち干や落潮時に風によって起こされた波の作用や,
水が流れ込むことによって,数センチも上下する。
・泥干潟にはカタツムリ,蠕虫(ミミズなど),カニなどの土中にもぐる動物種がたくさん生
息していて,鳥や人の食料源となっていることが多い。
・泥干潟の堆積物は一般に支持力が弱く,人も車も支えることができない(人も車も作業を
することができない)。
・潮干潟にはうね,溝,わだち,クレーターほか,氷が引きずったり転がったり弾んだりし
た跡がある。
Arctic Waters Field Guide
4-76
124
泥干潟のオイル
・泥干潟は水が満杯あるいは堆積物表面のすぐ下まである。そのためオイルは浸透していか
ず,粘性の低いオイルだけが,波によって堆積物と混ざる程度である。
・粘性が高い,もしくは比重の重いオイル以外は,どんなオイルも満潮時に浮き上がり,潮
の流れと風によって移動する。その結果,オイルは低い湿ったところや水(海水)のいっ
ぱいあるエリアよりも,潮間帯上部やクレスト先端に集まりやすい。
・重いオイルは埋没する。オイルは泥のクレストや穴にもぐる小動物,カニやミミズの穴を
通って,表面下に浸透し,長期間(数カ月から数年)とどまる。
・安定性がない軽いオイルは即時にダメージを与え(動物に接触することで),重いオイルは
穴に充満して生物を窒息させる。
対処例
選べるならば,自然回復法
は,好ましい対処方法である。処理作業は,足場の確保が
難しく,また処理作業をすることによってオイル以上にダメージを与えてしまう。凍結期の
直前では,自然回復法は不適である。オイルは氷に閉じこめられ,次の氷解期流れ出す可能
性があるからである。
実際のところ,この種の海岸環境にはほとんどの処理方法は効果がない。フラッディング
(大量の水で洗い流す)
や洗浄法
でオイルを集め,吸着剤
や真空ポンプ
を使って
回収するという環境にあまり立ち入らない方法は,いくらか適用性があるかもしれない。
作業船(バージ)や底の平らなボートは処理作業や作業員の助けになる。作業船やボート
は思いがけない大波などの不測の事態に輸送船としても使える。
Arctic Waters Field Guide
4-77
処理方法の組み合わせ例
・ハンドツール(道具)を使っての人力の回収作業
は,真空ポンプ
や吸着材
と一緒
で窪みや溝(トレンチ)のほうへオイルを流した後,真空ポンプ
やスキ
に行える。
・低圧洗浄法
マー
で回収する。
避けるべきこと
海岸地帯での作業は,水位の変化に合わせて計画されなければならない。特定の場所の潮
125
の満ち干は正確に予測できるが,風や波は水位を変化させる。低地沿岸地方では大波や
set-downs はいつものことである。予報値よりも水位が変化する可能性を考慮に入れて,ス
ケジュールや作業プランを立てるべきである。
泥干潟の支持力は場所によって様々で,エリアによっては人や車の重さに耐えられない。
表面下のオイルは長期間(数年)留まるので,堆積物中にオイルを混入させるのは避ける
べきである。堆積物の擾乱(?)はたとえ堆積物にオイルが含まれていなくてもダメージを
与えるので,作業員や作業者車が移動するときは,オイル汚染エリアと被汚染エリアを注意
深くコントロールしなければならない。
Arctic Waters Field Guide
4-78
まとめ
泥干潟では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に違いはない。処理方法を選択
する際の重要な要素(ファクター)は:
・遮るもののない(開けた)沿岸:沿岸が開けていて遮るものがなく,波が荒いところでは,
オイルの安定性は比較的短い(数日から数週間),一方遮蔽性の波がおだやかな沿岸では,
一般的にオイルが長くとどまっている(数カ月から数年)
。
・オイルで汚れているエリアの範囲:オイルの被汚染エリアが広いときは,人力による処理
作業は実際的でない。
・オイル汚染エリアの湿気:湿気は掃流,支持力,軽油の浸透性に影響する。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの大変軽いオイルのみ,乾いた泥の
堆積物に浸透する。
表4-18 泥干潟での処理方法
軽油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
手作業による回収
126
中質油
重油
真空吸引
吸着剤
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.10
オイルが少量の場合のみ適している
4-79
海岸線(沿岸)での処理
海水湿地
・湿地は一般に:
・軽油については浸透性である
・地表(表面)は植生が多い,根が発達して安定している
・干満のある泥入り江や泥潮干潟にふちどられていることがある
・湿地は北極地方では珍しく,生物学的には重要である。湿地は,沈水し植物が生えている
ツンドラ低地海岸(セクション4.11.12)とは区別される。後者には塩性植物種よ
りも耐塩性植物が生えているからである。
・湿地には狭く縁取られた湿地から広い塩湿原まで,様々な種類がある。通常,湿原は満潮
水位よりも上にあり,春の大潮や嵐の大波のときだけ氾濫する。
・湿地には植物や小動物がたくさん生息していて,渡り鳥の群れにとっても重要な場所にな
っている。鳥の生産性,実際の個体数,感受性は季節によって変化する。
・氷は湿地植物の藪やスラブを引き裂いて,潮間帯下部にためたり,むき出しの大地や泥の
クレーターに置き去りにする。
塩湿地のオイル
・オイルは小潮の満潮水位のときには湿地周辺(縁)にダメージを与え,春の大潮などの高
水位のときは,湿原のずっと奥に溜まる。湿地周辺のオイルは次の潮によって洗われ,波
の強さによっては急速に風化される。湿原部に入り込んだオイルはさらされることが少な
く,潮流や波も影響しないので,風化は遅れる。
Arctic Waters Field Guide
4-80
・軽油は湿地の堆積物に浸透するか,動物の穴やクラックに充満する。中質油や重油は表面
にとどまりやすく,植物や動物に何らかの害を及ぼす。
・氷板(ice table)があると,何年もオイルが浸透していくのを押さえることができる。夏
127
は氷板(ice table)の表面(位置)は低くなり,深度1.0m以上になる。
・自然回復率は,オイルの種類,ダメージを受けたエリアの広さ,オイルの付着力,植物の
種類や成長率によって変化し,オイルに汚染された季節にも関係する。軽油の場合は2,
3年で回復するが,極端な状況(粘土の高いオイルが集中している)では何十年もかかる
ことがある。
対処例
自然回復法
は,特に流出オイルの量が少ないときには,好ましい対処方法であると考
えられる。(対処方法)決定に影響するファクターは:
・自然回復率
・処理方法が回復を促進する可能性
・処理作業によって回復が損なわれたり遅れたりしないか
凍結期の直前では,自然回復法は不適である。オイルは氷に閉じこめられ,次の氷解期流
れ出す可能性があるからである。冬の間の処理作業は,土が凍っているために根を傷めるこ
とが少ないと考えられる。
好ましい処理戦略としては,フラッディング(大量の水で洗い流す)
や洗浄法でオイ
ルを回収エリアに流し込むことが,植生に過度なダメージを与えない。
Arctic Waters Field Guide
低圧冷水洗浄法
4-81
は,ダメージを与えずに軽油や中質油を除去出来る。特にボートやク
レーンを使って湿地に作業員や作業車両が入らずに作業ができれば,ダメージは与えないで
済む。
オイルの量が少なければ,吸着材を湿地の周辺に置いて,オイルを集めることができる。
吸着材は湿地の表面を傷つけないように配置し回収すること。
処理方法の組み合わせ例
・フラッディング
と低圧冷水洗浄法
量の軽油や中質油の場合は,吸着剤
・人力による回収作業
はロープモップスキマー
と一緒に使える。少
でもよい。
は,湿地周辺の植生の茎をカットするとき
イル処理の時に一緒に使える。
避けるべきこと
128
や重い粘性の高いオ
人や機械による作業はどんなものでも湿地の自然回復を遅らせる。
オイルの付着した植物をカットする
と通常は回復を遅らせるので,オイルをそのまま
にしておくとほかの環境資源,例えば渡り鳥やひな鳥を脅かす可能性があると考えるときの
み行うこと。カッティングはボートから行わない限り,人や車(処理装置)が湿地に入るの
で,植物の根を傷めてしまう。
焼却は考慮に入れていい方法の1つだが,植物や動物が死んでしまうので,ダメージが大
きい。焼却法
堆積物の除去
は植物の柄が短く根が乾いていると熱から逃れられないので,避けること。
は,車が踏み固めたり人が踏みつぶしたりすることで植物の根を傷つけ
てしまうので,著しく回復を遅らせる。
回収法(除去法)は,重い粘度の高いオイルが厚く溜まって,湿地が元通りになるのに何
十年もかかると思われたときのみ採用する。
Arctic Waters Field Guide
4-82
まとめ
海水(塩)湿地では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に違いはない。処理方
法を選択する際の重要な要素(ファクター)は:
・オイルで汚れた塩湿地にとっては,どんな場合も自然回復が最も好ましい。通常処理作用
は自然回復を促進するよりもむしろ遅らせるだけである。
・粘度の高いオイルが大量に流れ着いたときや,オイルが湿地の内部にひっかかったときは,
ほかの方法も使う(下記参照)。
表4-19 海水湿地での処理方法
軽油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
手作業による回収
植生カット
129
中質油
重油
吸着剤
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.11
オイルが少量の場合のみ適している
4-83
海岸線(沿岸)での処理
泥炭海岸
・泥炭はスポンジ状の圧縮できる繊維状の物質で,植物が不完全に腐敗分解することによっ
てできる。泥炭は北極の低地沿岸地帯によく見られる。
・泥炭は含水量が多いので(重量の80-90%),液体のような性質を持っている。結合力
が非常に弱いので,支持力は大変低い。
・泥炭はツンドラ海食崖から浸食される。ボーフォート海南部沿岸の50%を占め,チュコ
ト海,ラプテプ海,カラ海,バレンツ海沿岸地方にはどこにでもある。浸食された泥炭は
波の穏やかな遮蔽されたエリアに堆積しやすい(流出オイルも堆積しやすい)。
・泥炭の堆積は次のようなところに起こる:
・浜辺のマット
・可動性の泥
一般的にピートは無機物をほとんど含んでいない。
・泥炭は湿ったり乾いたりし,波や塩の作用で簡単に浸食されたり再分散されたりする。
・泥炭の泥はコーヒーの粉のような様相で,水の中,特にビーチや海岸の端に現れる。それ
は浮遊している泥炭の厚いマットから成っていて,厚みが0.5m以上,幅は5-10m
である。
・たいていは,浅瀬の沿岸なので船でアクセスできず,陸からのアクセス,仮の道が必要に
なる。
Arctic Waters Field Guide
4-84
泥炭海岸のオイル
・重い油は(風化した原油など)泥炭マットが乾いていても,しみ込んでいかないが,泥炭
に埋まったり混ざったりし,波や流れの作用で再び動かされる。
・軽い純正品は,泥炭にしみこむ。オイルが泥炭のマットにしみ込むと,回収しづらい。
・乾いた泥炭は,大量のオイルを保有することができる-乾いた泥炭1キロ当たり1-5キ
ロのオイル。
130
・泥炭の泥だまりに接触したオイルは,特に波が穏やかで泥が堆積しているところでは,泥
炭に混ざったままになる。泥だまり(泥のかたまり,slurry)は細礫吸着剤と同じような
働きをし,部分的にオイルを封じ込めてオイルが広がるのを防ぐ。
対処例
自然回復法
は,最もダメージを与えずに,アクセスできないエリアの軽油や中質油を
処理する方法である。泥炭海岸は一般的に年間1m以上も浸食されるので,オイルはこのエ
リアには短期間しかとどまらない。凍結期の直前では,自然回復法は不適である。オイルは
氷に閉じこめられ,次の氷解期流れ出す可能性があるからである。
オイルに瓦礫がたくさん混じっていず,粘性も低いときは,真空吸引法
スキマー
をブーム
や
と一緒に使う。すぐに配置できる真空吸引システムは,オイルが潟やビーチに
どさっと落ちたツンドラブロックの中にたくさん溜まっているときは,特に適している。
Arctic Waters Field Guide
4-85
オイルの混ざった泥炭の泥を集めるには網(網目は1センチより細かい)を使う。網また
は金網はフロントエンドローダーのバケットに結びつけて,オイルの混ざっている泥を水か
ら引き上げる。または作業船や海岸の水際からすくう。
ロープモップは,ディスク型吸着スキマー
が配置できないか,もしくはあまり有効で
ないときに,泥炭の泥に混ざっていないオイルを回収するときに使う。
低圧冷水フラッディング
ームで囲った回収エリア
はまたは洗浄
は,水底からオイルと泥炭を浮き上がらせブ
のほうに流すことができる。この方法は,大量の運搬や廃棄が
必要な大量の泥炭を削り取りることになる。しっかり固定したブーム
に網をカスタマイ
ズすると,オイルの混ざった泥炭の泥を保持することができる。
吸着材
は,泥炭自身も吸着材の働きをするが,風化してない原油や軽油に対しては効
果的である。最も効果的な方法は,泥炭がたくさんあるところで泥炭を自然の吸着材として
使い,回収することである。泥炭は時間のたったオイルよりも新しい原油や燃料に対してよ
り効果的であるが,濡れていると吸着力が弱くなる。一般的につながれてない(まとまって
ない)自然の吸着剤のほうがオイルよりももっと回収が難しい。しかしながら,泥炭がたく
さんあるエリアならば,全ての泥炭を回収できなくても,さらに悪影響があるわけではない
し,吸着剤として使うならば,最もひどく汚れた泥炭の塊を回収する。
131
泥炭および泥を直接回収する
のは,ある条件下で一時的にダメージを与えずにアク
セスできるならば,適当である。泥炭はディスポーザルサイトに移動する前に,堆積し脱水
する(?)。
堆積物の入替
とミキシング
は,もしその作業によってそこがや近くのエリアを汚
染せずにオイルを分散させることができるならば,考えるべき方法である。
Arctic Waters Field Guide
4-86
処理方法の組み合わせ例
・人力でオイルの混ざった泥炭マットをの大部分を熊手で回収し
,ミキシング
をして
物理的バイオ的クリーニングプロセスを促進する。
・低圧冷水洗浄法
は吸着剤
やロープモップスキマー
と一緒に使い,オイルを回収
する。
避けるべきこと
植物を踏みつけたり重い機械を使うのは避ける。そのような作業ははオイルを泥炭の中に
深く取り込ませてしまうからである。泥炭海岸の支持力は開水面期では弱いが,凍結期にな
ると強くなる。夏に作業をするときは,ダメージを出来るだけ少なくするために,作業員は
厚板の歩道(渡り板)を使うかスノーシューズを履くこと。車を入れるときはロールアウト
トラックか,同種のものを使い,表面を傷つけないようにする。
人力で除去し,吸着材で回収し洗浄するのはお勧めの方法であるが,泥炭を踏みつけてダ
メージを与えないようにすること。
ツンドラに泥炭があるときは,大変重いオイルでない限り,基質の回収(除去)や植生の
カットは最小限にすること。もし堆積物の上の泥炭を回収するときは,出来れば上から2-
5センチにすること。
低湿地に生えている植物の上にルーズソルベント/泥炭のスライム(ベタベタした固ま
り)をレーキーする(熊手で掻き出す)のは避けること。
低圧フラッシング法だけを使い,泥炭の浸食を最小限にすること。
火が瞬く間に広がるので,泥炭やオイルのついた瓦礫(ゴミ)を植物が生えている近くで
燃やす
のは避けること。
泥炭低地海岸の処理にドレナージや栄養剤を使うと
132
,かえって泥炭形成が遅れる。
Arctic Waters Field Guide
4-87
まとめ
泥炭海岸では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に違いはない。処理方法を選
択する際の重要な要素(ファクター)は:
・オイルで汚れているエリアの範囲:オイルの被汚染エリアが広いときは,人力による処理
作業は実際的でない。
・オイル汚染エリアの湿気:湿っていると中質油の浸透は進まない。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの大変軽いオイルのみ,湿った泥炭
中に浸透する。
表4-20 泥炭海岸での処理方法
軽油
中質油
重油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
手作業による回収
真空吸引
機械による回収
吸着剤
ミキシング
堆積物の入替
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.12
オイルが少量の場合のみ適している
4-88
海岸線(沿岸)での処理
沈水ツンドラ低地
・ボーフォート海,チュコト海,ラプテフ海,カラ海,バレンツ海などの沿岸地帯の多くは
大変(海抜が)低い低地である。このエリアは,永久凍土が自然に解けてきたことによっ
133
て,また地域的な地盤沈下によって,最近になって何度も水浸しになった。
・潮間帯にない低地は,春の大潮や気象潮によって,しばしば水浸しになる。北極圏の沿岸
地方に吹く強い偏西風によって水位が普段よりも1メートル以上高くなり,低地を水浸し
にし,
(流出)オイルは海岸より数百メートルも内陸に運ばれる。大波がどこまで来たかは
木片や瓦礫の列で分かる(最大大波が届いた跡には,一列に木片や瓦礫が残る)
。
・このエリアは,breaching of thermokarst lakes や洪水によってできた多角形の大地によ
って,複雑で回旋状の(渦巻き状の)海岸になっている。海岸は,植物の生えている干潟,
泥炭マット,塩気性ラグーン,小川が混在しているのが特徴である。ここに生えている植
物は耐塩性で,北極の塩湿地の水性植物よりも乾燥(乾期)に強い。
・このエリアには,沈下したツンドラや植生のある川土手,デルタが含まれる。沈水ツンド
ラポリゴンには,腐敗した植物が沈殿している分水線が連なった(縁が接している)潮だ
まりがあり,大変複雑な地形となっている。
・これらの海岸は,北極圏の夏には渡り鳥の群れが魚や昆虫,昆虫の幼虫,蠕虫(ミミズな
ど)を取って食べ,鳥たちにとって重要な生息地になっている。
・砂や砂利の堆積物は,波の作用によって後浜まで押しやられる。このような離水海岸は,
浜堤の海に面した側に生えている植生や泥炭マットの上に直接乗る(できる)。このような
浜は,その特徴によって,砂浜(セクション4.10.4),混合堆積物海岸(セクション
4.10.5),中礫/玉石海岸(セクション4.10.6)として取り扱う(処理作業を
する)。
Arctic Waters Field Guide
4-89
・たいていは浅瀬の海岸から(船で)アクセスできないので,陸からアクセス,できれば仮
設道路やアクセス道が必要である。
・陸からのアクセスや移動も,海岸線が複雑(複雑な地形)で水浸しのセクションが多いの
で,難しいかもしれない。
沈水ツンドラ低地のオイル
・夏季は堆積物や泥炭堆積は水浸しのことがおおいので,オイルは(浸透せずに)表面だけ
にある。
・ツンドラの表面が泥炭であるところは,重いオイル(風化した原油など)は,たとえ乾い
134
た状態の泥炭マットであっても,深く浸透はしない。
・軽い純正品などは浸透しやすい。オイルが泥炭に浸透したときは,表面のオイルはほとん
ど回収できない。
・乾いた泥炭は,大量のオイル-乾燥泥炭1キロ当たりオイル1-5kg-を含む(吸収す
る)ことができる。
・泥干潟の多い沈水エリアでは,堆積物の表面あるいはそのすぐ下まで(海)水が来ている
ことが多い。このようなところでは,オイルは(堆積物に)浸透せず,軽油のみが堆積物
中の(海)水と混ざる。
・低地干潟では,粘性が低く比重の軽いオイル以外は,潮が満ちてくると浮き上がり,陸地
のほうに運ばれる。その結果,オイルは潮間帯下部の湿ったり水につかっているエリアよ
りも,むしろ潮間帯上部や浜堤(?
Arctic Waters Field Guide
dry ridges)のクレスタに溜まる。
4-90
対処例
自然クリーニング法
は,最もダメージを与えずに,アクセスが難しいエリアの軽油や
中質油を処理する方法であり,このような(自然,地理的)環境のところでは一般的である。
凍結期の直前では,自然回復法は不適である。オイルは氷に閉じこめられ,次の氷解期流れ
出す可能性があるからである。
オイルに瓦礫がたくさん混じっていず,粘性も低いときは,真空吸引法
スキマー
をブーム
や
と一緒に使う。すぐに配置できる真空吸引システムは,オイルがラグーン(潟)
や池にたくさん溜まっているときは,特に適している。
ロープモップは,真空吸引装置やディスク型吸着スキマー
が配置できないか,もしく
はあまり有効でないときに,水面に浮かんでいるオイルや水に浸っている堆積物の表面から
オイルを回収するのに有効である。垂直ロープモップは,クレーンや同様の機械から配置す
る。
低圧冷水フラッディング
囲った回収エリア
吸着材
はまたは洗浄
は,水底からオイルを浮き上がらせブームで
のほうに流すことができる。
は,風化してない原油や石油精製品のほとんどに対しては効果的である。泥炭
がたくさんあるエリアで風化してないオイルを処理するときの最も効果的な方法は,泥炭を
135
自然の吸着材として使い,オイルをたくさん吸着した部分を回収することである。全ての泥
炭を回収できなくても,さらに悪影響があるわけではない。
(つながれてない(まとまってな
い)自然の吸着剤のほうがオイルだけよりももっと回収が難しい)。湿っていると吸着力が弱
くなるので,乾いている泥炭を使うこと。
狭いエリアにオイルが集中しているときは,人力による方法
が適している。
冬期の処理作業は,土が凍っているため(処理作業をすることによる)環境への影響を最
小限にすることができるので,考えるべき方法である。
Arctic Waters Field Guide
4-91
処理方法の組み合わせ例
・フラッディングや低圧冷水洗浄法
ム)を使ってオイルを集め,吸着剤
でベルムやショアシールブーム(海岸線を封じたブー
やロープモップスキマー
でオイルを回収する。
避けるべきこと
植物を踏みつけたり重い機械を使うのは避ける。そのような作業ははオイルを堆積物の中
に深く入り込ませてしまうからである。低地エリアの支持力は開水面期では弱いが,凍結期
になると強くなる。夏に作業をするときは,ダメージを出来るだけ少なくするために,作業
員は厚板の歩道(渡り板)を使うかスノーシューズを履くこと。車を入れるときはトラック
か,同種の表面がへこまない(貫入しない)車を使うこと。
人力で除去し,吸着材で回収し洗浄するのはお勧めの方法であるが,できるだけ人の往来
を少なくすること。
(植物の生えている)ツンドラがオイル汚染したときは,大変重いオイルでない限り,基
質の回収(除去)
や植生のカット
は最小限にすること。もし植物の生えている堆積物
を回収するときは,出来ればオイル汚染しているところの上から2-5センチだけピックア
ップし,根にダメージを与えるのは避けること。
植物の生えているところにオイルをレーキー(熊手で掻き出す)したり,踏みつけたりす
るのは避けること。
低圧水力洗浄法だけを使い,ツンドラへの侵害を最小限にすること。
火は乾いたツンドラに瞬く間に広がるので,植物が生えている近くでは焼却法
ること。
136
は避け
Arctic Waters Field Guide
4-92
まとめ
沈水ツンドラ低地海岸では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に違いはない。
処理方法を選択する際の重要な要素(ファクター)は:
・オイルで汚れているエリアの範囲:オイルの被汚染エリアが広いときは,人力による処理
作業は実際的でない。
・ツンドラの湿気:湿っているとツンドラの支持力は弱くなる。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの大変軽いオイルのみ,湿ったツン
ドラの地表に浸透する。
表4-21 沈水ツンドラ低地での処理方法
軽油
中質油
重油
処理方法
自然回復
大量の水で洗い流す
低圧,冷水
手作業による回収
真空吸引
吸着剤
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.13
オイルが少量の場合のみ適している
4-93
海岸線(沿岸)での処理
ツンドラ海食崖
・ツンドラ崖は,一般的に泥炭や凍土の上に乗ったツンドラ(植物)マットが進捗されてで
きたものである。氷の豊富なツンドラ崖は,堆積物が露出している堆積物が固まっていな
い氷の乏しいツンドラ崖とは全く違っている。
・氷の豊富なツンドラ崖の表面は,熱の作用によって浸食された凍土が露出している。低い
137
崖(高さが3m以下)では,熱と波と流れ(川)の浸食作用がツンドラのベース部分にV
字型の切り込みを入れ,最終的にはアンダーカットされたツンドラは崩れ落ちる。高い崖
(3m以上)は,脱落やスライディングによって崖の表面だけ解ける。両方とも,海岸地
帯にほとんど堆積物がなくビーチは狭いかほとんどないことが多いので,,波や潮流が氷と
泥炭をすみやかに運んでいく。
・氷の少ないツンドラ崖には,固まっていない堆積物(砂やシルト)が多く含まれていて,
上部セクションに泥炭や氷がある。このようなツンドラ崖は波や流れ(川)によって浸食
されており,ベース部分に砂浜があることが多い。後浜のツンドラに多角形の氷が広がっ
ている沿岸地方では,V字型に切れ込んだ「鋸歯」の形をした崖がつくられ,多角形の氷
のくさびが崖の表面に交わっている(ささっている)。
・浸食率は崖に含まれている氷の量や,夏季の波にさらされる度合い,崖の高さによって様々
である。浸食率は低いところで年間約0.5m,夏に月間0.2mであり,高いところで
年間4mを超える(夏に月間1.0から1.5m)。最大浸食率は25mを超え,カナダの
ボーフォート海とラプテフ海の沿岸で記録された。
・ツンドラ崖は下がカットされていて不安定なので,このような海岸で作業をするときは,
安全第一とする。
Arctic Waters Field Guide
4-94
ツンドラ海食崖海岸のオイル
・気温が氷点下でなければ,凍土の露出している上でオイルを洗い流すと凍土に付着せず,
再び浜に流れてしまう。
・泥炭の固まりが細かく割れていたり窪んだりしていると,オイルはそのすき間や窪みに溜
まる。オイルは,オイルと泥炭ブロックが集積しやすい浜の上のほうに溜まる。
・波や水が届く低い崖地のツンドラの表面からは,オイルを洗い流すことができる。遮るも
ののない沿岸では,荒波や風の起こしたうねりによって,堆積物がよくツンドラの上にた
まる(浜堤になることもある)。
・自然の浸食によって,オイルはながく留まらない。崖の上や窪んだツンドラブロック(急
激に浸食された)の上にあるオイルは,波の作用によって再び動き出す。
138
対処例
自然回復法
は,ツンドラ崖の浸食が激しいので,好ましい方法である。凍結期が始ま
ると,崖の上部であってもツンドラや泥炭のあるベース部分であっても,崖の表面にオイル
はとどまることができなくて,大変短い間(数週間)に自然に移動する。凍結期の直前では,
自然回復法は不適である。オイルは氷に閉じこめられ,次の氷解期流れ出す可能性があるか
らである。
開水面期の波がほとんどないときには,暖気によって表面の氷がとけ,崖は形を変える。
この季節には,解け出した氷によって浸食されていく崖から流れたオイルを,崖の下の部分
でベルム
や吸着剤
低圧(冷水)洗浄
剤
を使って囲い込むことができる。
で崖の表面からオイルを洗い流し,崖の下の部分でベルム
や吸着
を使って囲い込み回収することができる。
オイルの量が少ないときは,崖下のオイルやオイル汚染したツンドラ/泥炭を人力で回収
(除去)する方法は実際的である。
Arctic Waters Field Guide
4-95
オイルやオイル汚染したものが大量にあるときは,大型あるいは小型のフロントエンドロ
ーダーを使う機械による回収法
堆積物の入替
が実際てきである。
とミキシング
は,この作業によって現場や隣接するエリアが再びオイ
ルで汚れなければ,考えてもいい方法である。
普通の波の届かないツンドラ崖のてっぺんにあるオイルは,陸地のオイルを処理する方法
と同じように取り扱う。
処理方法の組み合わせ例
・フラッディング
やフローティング
めにオイルを流し,真空吸引装置
・機械で回収(除去)した
で,バックホーで掘った収集トレンチやオイルだ
やスキマー
後,ミキシング
を使って回収する。
や堆積物入替
を行う。
避けるべきこと
崖はいつも自然によって浸食されているので,低圧洗浄などの処理作業によって崖の表面
139
がさらに浸食されるのはダメージングとは考えられないが,ツンドラに植物が生えているの
で,処理作業によって引き起こされる浸食を最小限にするよう注意すべきである。
ツンドラの表面を踏みつけたりほかのダメージを与えないために,できるだけ処理作業は
崖下に限ること。
多くのツンドラ崖は正面に狭い浜があるか,もしくは全く浜がないので,作業をしたり機
械を置くスペースはほとんどない。
ツンドラ崖は浸食されていて不安定である。作業中にブロックが落ちてきたり,陥没した
り,泥が流れたり,崖の高さが2m以上のエリアでは特に,危険なことがいろいろある。
これらのことは,前触れなしに突然起こる。
フラッシングや洗浄作業が引き金となってブロックの落下や陥没,泥の流出(流入)が起
こることがある。
Arctic Waters Field Guide
4-96
まとめ
ツンドラ海食崖海岸では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に違いはない。処
理方法を選択する際の重要な要素(ファクター)は:
・遮るもののない(開けた)沿岸:沿岸が開けていて遮るものがなく,波が荒いところでは,
オイルの安定性は比較的短い(数日から数週間),一方遮蔽性の波がおだやかな沿岸では,
一般的にオイルが長くとどまっている(数カ月から数年)
。;ミキシングや堆積物の入替は
波のある海岸ではさらに効果的である。
・オイルで汚れているエリアの範囲:オイルの被汚染エリアが広いときは,機械による回収
や機械による現地焼却法は実際的である。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:ディーゼルオイルなどの大変軽いオイルのみ,砂地に浸透
する。
140
表4-22 ツンドラ海食崖での処理方法
軽油
中質油
重油
処理方法
自然回復
低圧,冷水
手作業による回収
機械による回収
吸着剤
ミキシング
堆積物の入替
最適
Arctic Waters Field Guide
4.11.14
オイルが少量の場合のみ適している
4-97
海岸線(沿岸)での処理
雪に覆われた海岸線
・北極圏や寒冷地の海岸では,雪はめずらしくない。雪に覆われた海岸の上のオイルの動き
方や広がり方は,下記によって違う:
・雪の種類(新雪か固まっているか)
・気温
・海岸の表面の形状(平坦か坂か)
雪の上のオイル
・オイルが雪に覆われた海岸に流出したときは,陸上の場合と一緒で,気温が低いとオイル
は後浜から浜辺に向かって流れ広がり,浜に打ち寄せられる。
・雪に覆われた海岸に打ち上げられたオイルは,雪によって一部封じ込められる。雪はオイ
ルをよく吸着する。軽油の場合は,オイル含有率(吸収率,雪がオイルを吸着する率)は
大変低く,かつオイルは広い範囲に広がる。
・オイルと雪の割合は,オイルの種類と雪の性質(特徴)による。軽いオイルより中質オイ
ルのほうが含有率が高くなる。オイルの含有率は氷点下以下で雪の表面が固く固まってい
るときは最も低く,新雪のときは最も高くなる。
141
・オイルは雪を解かす。ガソリンは雪の中をすばやく移動し,広い範囲に広がるが,原油は
ガソリンに比べ,より雪を解かすが,あまり広がらない。軽油は毛管現象によって雪をさ
かのぼり広がる。
・オイルの上に新雪が降ると,オイルに付着してオイルの中に移動するので,回収する量が
増加する。
・オイルの上に落ちた雪は,オイルの表面に積もる(集積する)傾向がある。
Arctic Waters Field Guide
4-98
対処例
自然クリーニング法
は,雪解け期に軽油を蒸発させるには好ましい方法である。
シャベルや熊手を使って人的に回収(除去)する方法
は,雪の表層のオイルが少ないと
きには適切な方法であるが,オイルで汚れたエリアが広くなるにつれオイルを吸った雪の量
が多くなり,実際的でなくなる。
トレンチや封じ込めベルム
ついては,真空吸引装置
を使って雪に覆われた表面に溜められた軽油から中質油に
で回収できる。
表面が平らなとき,または機械のアームがオイルで汚れたエリアに届くときは,機械で
雪に覆われたエリアを掻き取り,回収,廃棄する。この方法には,メルティングでオイルと
雪を分離することや,オイルの焼却が含まれることがある。
吸着剤
で軽油や中質油の表面オイルは回収することが出来るが,オイルの範囲やオイ
ルのしみた雪の量が多いときは,吸着剤の効率は下がる。また気温が低くオイルが流動点
以下になったときは,吸着できない。
雪の表面に溜めたオイル,またはベルム
によって封じ込められたオイルは,現地焼却
法によって除去できる。
処理方法の組み合わせ例
・ハンドツール(道具)を使って人力で回収(除去)した後,真空吸引装置
や吸着剤
を
使う。
・機械で掻き取り,あるいは回収(除去)した
除去する。
避けるべきこと
142
後,人力
で残ったものやこぼれたものを
染み込んだ雪の量が多いときは,集めないこと。雪を解かしてオイルと水に分け,オイル
を焼却すると,遠隔地では手に入らない燃料やコンテナが必要なくなる。
坂になっているところ,特に雪の下に氷があるときは,雪の表面は滑りやすい。落ちたり
滑ったりしないように,十分注意すること。
Arctic Waters Field Guide
4-99
まとめ
雪に覆われた海岸では,流出オイルの量が多くても少なくても,処理方法に違いはない。処理
方法を選択する際の重要な要素(ファクター)は:
・気温:雪が解けている(ベタベタしている)ときは,雪が乾いているときと違う対処(処
理)方法を採用する。
・雪の表面の性質:雪が滑らかかざらざらしているか,柔らかいか固いか,平らか傾斜が急
かによって,対処(処理)方法が違う。
・オイルの種類(重いか軽いか)
:粘性が高くベタベタしているオイル以外は,どんなオイル
も雪に覆われた海岸に浸透する。
表4-23 雪に覆われた海岸での処理方法
軽油
中質油
処理方法
自然回復
手作業による回収
真空吸引
機械による回収
吸着剤
現地焼却
最適
オイルが少量の場合のみ適している
143
重油
Arctic Waters Field Guide
5-1
手段(具体的方法)
Arctic Waters Field Guide
5-2
目次
5
手段(具体的方法)
5.1
はじめに
5-3
5.2
機械的封じ込め
5-4
5.2.1
モービル・フローティング・バリヤー
5-5
5.2.1.1
封じ込めブーム
5-5
5.2.1.2
ブーミング・メソッド
5-7
5.3
5.4
5.5
5.6
5.7
5.2.2
静止バリヤー
5-9
5.2.3
水中バリヤー
5-12
5.2.4
ベルム
5-13
5.2.5
掘削溝とスロット
5-14
機械的誘導(方向転換)
5-16
5.3.1
5-16
ブームでの誘導
機械的回収
5-20
5.4.1
前進(移動)スキミング
5-21
5.4.2
静止スキミング
5-24
5.4.3
真空吸引
5-27
現地焼却
5-28
5.5.1
ブームで囲んだ水面でのオイル焼却
5-29
5.5.2
氷上でのオイル焼却
5-31
5.5.3
疎氷域でのオイル焼却
5-33
化学的処理
5-34
5.6.1
船を使っての薬剤散布
5-36
5.6.2
空中散布(空からの薬剤散布)
5-37
沿岸処理
5.7.1
5-39
自然回復
5-41
144
5.7.2
物理的(人為的)方法-洗浄
5-43
5.7.3
物理的(人為的)方法-回収
5-47
5.7.4
物理的(人為的)方法-現地焼却
5-60
5.7.5
化学的/生物学的処理方法
5-64
Arctic Waters Field Guide
5.1
5-3
はじめに
具体的な流出オイルの処理方法は,セクション4で説明された戦略,すなわち流出元の制御,
流出元から離れたところにある油膜の処理,保護策,海岸,川岸,湖岸での処理,にそって実行
されなければならない。このセクションでは,実践的な情報を34とおりの方法にわけて説明し
ており,事故処理の立案をしたり指揮を取る際に,個々にあるいは組み合わせて適用できるよう
にまとめてある。各方法ごとに装置や技術について詳解している。処理方法は10の運用カテゴ
リーに分けられており(表5-1)
,それがさらに細分化されている。
(このセクションの)公判
は,オイルをクリナップするための特殊な道具についてまとめてある。本ガイドでは,
では含んでいない(説明していない)。
表5-1 処理方法のカテゴリー
水上または氷上
機械的封じ込め
機械的誘導(方向転換)
機械的回収
現地焼却
化学的処理
海岸線上(岸辺)
自然回復(風化)
洗浄/回復(回収)
移動(回収)
焼却処理
化学的/生物学的処理
145
ま
Arctic Waters Field Guide
5.2
5-4
機械的封じ込め
機械的封じ込めの目的は,
(自然に溜まらない)流出オイルを様々な機械を使って集め,回収で
きるまでの油膜の厚みにすることである。
広がったオイルを機械的に遮り,誘導し,囲み,集める方法としては,5つの基本的な方法が
ある。:
モービル・フローティング・バリヤー
静止バリヤー(フィルター・フェンス,転倒堰)
水中バリヤー(オイル・トロール,Vスイープ)
ベルム(雪または土)
構造物を掘る(アイス・トレンチ(氷溝))
どの方法を選んだとしても,それが回収出来る量のオイルを予定した作業時間内に集められる
方法かどうか検討しなければならない。以下の基準が機械的封じ込めを容易にする(以下の基準
に合うならば,機械的封じ込めは比較的容易である)。:
・厚い油膜は流出後できるだけ速やかに封じ込めなければならない。多色のつやがある1ミリ以
下の油膜は一般的に回収できない。
・選択したバリヤーや構造物を,流出オイルの封じ込めをしている間,欠陥がないか,修理の必
要がないか,効率を上げるために位置を変える必要がないかどうか,モニターしていること。
・後述する実際の使用方法,ポジショニング,装置の形状は,現場で実際に作業をする場合と違
うことがある。北極圏での諸条件下で流出オイルの制御や回収作業に耐えうるかどうかを確認し
て素材を選び使用しなければならない。
・天気や海の状態の変化,オイルの特性の変化によって,短い時間内で封じ込める技術を工夫す
る(応用する)必要が出てくる。
・複雑な機械を使わないシンプルな方法がベストである。
(シンプルな方法のほうがうまくいく。)
・遠隔地で流出オイルの封じ込め作業を指揮するときには,燃料,潤滑油,スペア部品,道具な
どを考慮に入れること。
(きちんと準備すること)
Arctic Waters Field Guide
5-5
146
5.2.1
モービル・フローティング・バリヤー
5.2.1.1
封じ込めブーム
水面のオイルの封じ込め作業には,大体において何らかの機械的バリヤーを使う。モービル・
フローティング・バリヤーは,原則として浮かんでいるオイルを水面でさえぎり,コントロール
し(誘導し)
,封じ込め回収するのに使う。多数の封じ込めブームは市販されており,4つのカテ
ゴリーに分かれている。
(図5-1)
:
・インターナル・フローテーション(浮きを内蔵)
・プレッシャー・インフレータブル(空気で膨らませる)
・セルフ・インフレーティング(自動膨張型)
・フェンス
どのタイプも,ブームは水面の上下に(帆とスカート(すそ部))広がる。大型のモービル・フ
ローティング・バリヤーは外海用で,小型のものは陰になった穏やかな海域用である。
インターナル・フロテーション・ブームは,最も一般的で高価でなく扱いやすい(設置しやす
い)だろう。たいていはPVCかポリウレタンをコーティングした布で作られており,柔軟な発
泡スチロールの浮きを封入している。底に single tension member がついているタイプと,上部
にそって second tension member がついているタイプがある。
プレッシャー・インフレータブル・ブームは,PVC,ネオプレン,ニトリルゴム,ラバーナ
イロン,ポリウレタンコーティングなどの素材でできており,手動で膨らませるセグメントタイ
プの,または一続きの空気室がついている。
セルフ・インフレーティング・ブームは,PVCあるいはポリウレタンコーティング素材でで
きており,収納時にはたたまれていて設置時には空気をバルブから取り入れ自動的に膨らむ空気
室がついている。
フェンス・ブームは固い素材でできており,発泡ブロックやかんぬき型,アウトリガー型の浮
きで浮くようになっている。
多くの場合,手に入る材料で,例えば丸太やコンベヤーベルトで(図5-1)即席にフローテ
ィング・バリヤーを造ることが必要になるかもしれない。もし丸太を使う場合は,チェーンか吸
着材または他の材料で丸太の端と端をつなぎ,オイルの漏れを最少限にする。流れが緩やかなと
きは(毎秒0.2-0.3メートル以下),丸太はシンプルで丈夫で効果的なバリヤーになる。
147
Arctic Waters Field Guide 5-6
ASTM ブーム・コネクターは標準的な装置(道具で),同タイプのあるいは別タイプのブーム
を接続することができる。
ASTM ブーム
コネクター
tension
member
ASTM ブーム
コネクター
発泡
浮き
スカート
バラスト/
tension member
インターナル・フロテーション
ASTM ブーム
コネクター
浮き袋
浮き袋
空気室接続ホース
スカート
バラスト/
tension member
プレッシャー・インフレータブル
ASTM ブーム
コネクター
エアバルブ
スカート
バラスト/
tension member
セルフ・インフレーティング
浮き
(両側)
スカート/
鉛バラスト
tension member
フェンス
吸着材で丸太を固定
ログ(丸太)ブーム
図5-1 モービル・フローティング・バリヤーの種類
148
Arctic Waters Field Guide
5.2.1.2
5-7
ブーミング・メソッド(ブームの設置(使用)方法)
油膜が開海域あるいは疎氷域に到達すると,
風や潮流によってあっという間に広がってしまい,
(流れ/動きを)さえぎり,封じ込め,回収するのが困難になる。氷があることで流出オイルが
広がるスピードが遅くなり,ある程度(流出オイルを)封じ込めることができるが,氷(が固ま
っていくとき)に取り込まれたり brash ice の中に広がったり,氷塊に付着したりすると,回収
が大変困難になる。荒波や乱流があるときは,オイルは水に混ざり拡散して,回収は不可能にな
る。以上のような理由から,もし危険がないならば,できるだけ流出元に近いところで機械的な
封じ込めを試みることが重要である。
氷がないところよりも氷が散らばっているところで封じ込めブームを使うほうが難しい。一般
的に耐氷性の強い丈夫なブームをウィア(やな)と一緒に使う。氷がないか氷が少ないところで
は,潮流が0.5m/s以下ならば封じ込めブームは効果的に使えが,60-70%以上を氷が
覆っているところでは,ブームは使用不可能なことが多い。
理想的には,ブームで流出元を完全に囲む。もし流出元の近くで爆発の危険があるとき,また
は流出が続いているときは,最初の流出点より下流にオイルを集めるようにブームを使う。しか
しながら,いかなる対処作業よりも安全が優先する。
カテナリー(懸垂線)ブーミング
油膜を封じ込め回収するために,ブームを様々な配置(形)で使う。2艘の船でブームをカテ
ナリー状または U 字型に牽引し,静止してまたは流出元のほうへ向かって移動しながら,オイル
を下流に流させて集める(ことができる)。
牽引ボート
幅=1/3×長さ
図5-2 カテナリー・ブームの配置
149
Arctic Waters Field Guide
5-8
V(字型)ブーミング
ブームを3艘の船でV字型に配置し、スキマーを使う。または2艘の牽引船とスキマー・トレ
ーラー船を使う。
牽引ボート
トレーラー船/スキマー
図5-3 V字型ブーミング
J(字型)ブーミング
ブームをJ字型に引っ張って流出オイルをスキマーに誘導し、封じ込めと回収を同時に行う。
牽引ボート
牽引ボート/スキマー
図5-4 J字型ブーミング
表5-2には、4種の基本ブームと配置、海の状態(なぎ、湾(囲まれている)
、外洋、疎氷海)
におけるそれぞれの適用性の関係についてまとめてある。
表5-2 ブームの種類と配置(陣形)
使用するブーム
インターナル
プレッシャー
セルフ・インフ
フロテーション
インフレータブル
レーティング
フェンス
凪いでいる海
囲まれている海
外洋
疎氷海
最適
適切
150
不適
Arctic Waters Field Guide
5-9
5.2.2 静止バリヤー
静止バリヤーを使う目的は,水の流れを止めることなく,流れてくるオイルを回収できるよう
に堰き止め集めることである。特に小川や水路,入り江などの狭くなるところに,この種のバリ
ヤーを設置し,そこをオイルを通過させ,流出をコントロールする装置として使う。ほとんどの
静止バリヤーは,現地で入手できる材料で造られる。氷,雪,低温は,これらの技術(静止バリ
ヤーで流出オイルを制御すること)に悪影響を及ぼす。
フィルター・フェンス
流れの遅い小河川や小川では,吸着剤のバックネットとして,金網や網を杭にしっかり固定し,
オイルの流れを制御する。がれきなどを排除するために,
(吸着材を置いたネットより)少し上手
にもう1つ金網をはるとよい。吸着材は2つのネットの間に置く。2つのネットを置く方法は(ダ
ブル-フェンシング),流れの向きが逆になる河口付近では,特に有効である。オイルが吸着した
吸着材を交換するときは,オイルを逃がさないように,
(現在フェンスを設置している)下流また
は上流に次のネットを設置する。このフィルター・フェンスは,氷がないときのみ使える手法で
ある。
金網のフェンス
油
吸着剤
図5-5 フィルター・フェンス
カルバート(下水管)・ブロック
ボード等を使って,オイルの流れを止め,水だけを排水設備または下水管に通す方法。下水管
の入り口は,オイルの表面がひっかかる位置に合板(ベニヤ板)でブロックし,その下を水だけ
が通るようにする。合板の位置は,水だけが通る高さに水平に設置する。氷があるときは,オイ
ルと氷片の両方がバリヤーにひっかかり,オイルの回収は難しくなる。
151
下水管
杭
ボートを杭に釘で固定。
流れ
油
図5-6 下水管ブロック
Arctic Waters Field Guide
5-10
インバーテッド・ウィア(転倒ダム,逆さダム)
インバーテッド・ウィア(転倒ダム,逆さダム)
(またはサイフォン・ダムと呼ばれている)は,
小川などの流出オイルを,水の流れを止めずに確保するのに使われる。1本以上のパイプを土ま
たはサンドバッグのダムに,上流側の口(入り口)は流れの底のほうに近く,下流側の口(出口)
は水が流れ出る高さに角度を付けて埋め込む。1本以上のパイプを使うときは,少しずつ角度を
変えて設置する。
パイプまたは下水管
土で造ったダム(圧縮)
油膜層
水の流れ
泥で封印
図5-7 インバーテッド・ウィア(転倒ダム)
バリヤーは雪,土,大きな石で造ることができるが,大きな玉石や丸石を使うときは,プラス
チックシートや袋詰めした泥などを補強のために(ぴっしり封印するために)使うとよい。
ダムが効果的に働くかどうかは,パイプの選択と設置にかかっている。パイプの入り口側は,
パイプ内にオイルが流れ込まないように,十分低く設置しなければならない。パイプが太すぎる
と,流れる水の量が多くなり(速度も遅くなって),オイルが入り口のほうに引きつけられる力が
弱くなる。パイプの出口は,水がスムーズに流れる高さに設置しなければならない。
理想的には,パイプの角度をあまりつけずに,みずをさっと流して水面の高さを変えないよう
152
にする。がれきや氷などでパイプが詰まるとき,あるいは降水で水かさが増しているときは,パ
イプに角度をつける。簡素なダムが表面のオイル(と氷)を堰き止め,水だけを流す。合板やボ
ードを使って比較的簡単に小川や水路にダムを設置する方法がいくつかある。
(板の)両端を切り,
土手にはめる。あるいはオイルを端に逃がすようにする。すき間に吸着材を詰める。必要ならば
ポンプを使って,水面の高さを適当に保つ。
Arctic Waters Field Guide5-11
本来は氷のない状態を想定して設計されたものだが,サイフォン・ダムは氷片があっても高価
を発揮する。氷片はダムの上流で速やかに取り除かれ,オイルの回収が容易になる。しかしなが
らパイプの出口が凍ると,水の流れが妨げられる。
とい式用水路
油膜や油まみれの土が小川や支流を汚染する恐れがあるときは,とい式用水路を造ってオイル
を封じ込め水だけを流れるようにする。雪または土のベルムで十分な大きさの,ただしパイプの
長さより短い範囲の封じ込めエリアを造る。
油まみれの土
パイプ
水の流れ
土または雪のベルム
図5-8 用水路(狭い渓流)
ベルムはギュッと固めて,パイプまたは下水管とぴったりくっついて水が漏れないかどうか確
認すること。このとい式水路を使って流れを保護する方法は,氷片のある状態でも水が流れてい
るようならば可能である。
Arctic Waters Field Guide5-12
153
5.2.3
水中バリヤー
水中バリヤーは,水面下のオイルを遮り,封じ込め,回収するためのものである。水中バリヤ
ーは開けた海で使用するよう設計されている。
トロール・ブーム
もしブームを広げられるほど十分なスペースがある海域では,水に沈んだオイルを集めるため
にオイル・トロール船を使う。
図5-9 水面と水中のオイルを回収するためのオイル・トロール・ブーム
牽引速度を1-2m/sに保ち,
水中と水に浮かんでいるオイルを網のトンネルにくぐらせる。
網のトンネルは通常の封じ込めブームの4メートル下に張る。オイルはトンネルに沿って移動し,
ブームの先端の後ろにつけたじょうご型の筒に入る。オイル2-4トン容量のじょうご型筒を最
大8本までつけることができ,いっぱいになったら回収する。
V-スイープ
V字型ブームの下に2つのブームをつなぐ網が下げられているタイプもある。
Arctic Waters Field Guide
5.2.4
5-13
ベルム
154
水面が固く凍っているときは,雪,土,その他の材料でバリヤーを築き,ベルムでオイルの流
れ広がることをブロックすることができる。セクション5.2.2.で説明した静止バリヤーと
違って,雪や土のバリヤーでは,水の流れからオイルを分離することはできない。
スノー・ベルム(雪で造ったベルム)
固い氷の上では,表面のデコボコや雪は自然のバリヤーとなって,流出オイルが広がるのを制
限し,機械を使って回収したりその場で焼却するに足るオイルをためられることもある。さらに
オイルを囲い込む必要があるときは,雪で簡単に必要とするベルムを造ることができる。雪はま
た格好なオイルの吸着剤でもある。
プラスチックの膜
オイル
雪のベルム
氷
海
図5-10 スノー・ベルム
雪はよく固めなければならない。雪のベルムの上と横に水を吹きかけて氷の膜を作り,流出オ
イルがベルムに浸透しないようにする。ディーゼルオイルまたは軽油が流出した時は,雪のベル
ムをプラスチックの膜を被せるか,または合板のバリヤーを使い,毛管現象によってオイルが染
み込まないようにする(ディーゼルオイルは雪の毛管現象のために上のほうに移動する)。ベルム
はトレンチ(溝)と一緒に使うことにより,流れ広がっているオイルを止め,集めることができ
る。
アース・ベルム(土で造ったベルム)
アース・ベルム(土のベルム)は,ギュッと固めること。もし時間が限られているときは,プ
ラスチックのシートを敷き,オイルが染み込まないようにすること。ベルム/トレンチ(溝)を
流出地点より坂下に設け,オイルの流れを遮断する。
Arctic Waters Field Guide
5-14
155
5.2.5
トレンチ(溝)とスロット(穴)
陸または固い氷の表面では,トレンチ(溝)
,スロット(穴),ピット(窪み)を掘り,流出オ
イルの流れを遮断し,集め,回収する。
アイス・トレンチ(氷の溝)
固く凍った氷の上では,溝を掘るのが,流出オイルの流れを遮断したり方向を変えたり集めた
りするのに効果的である。
溝
オイル
氷
海
図5-11 アイス・トレンチ
ブーム/アイス・トレンチ
コンベンショナル・コンタミネント・ブームを溝にはめ,凍り付かせてバリヤーを造り,冬,
または春になって氷が解け出すまでの間,流出オイルの方向を変えたり止めたりする。
陸
ブーム
オイル
氷
図5-12 ブーム/アイス・トレンチ
156
海
Arctic Waters Field Guide
5-15
アイス・スロット(氷に開けた穴)
氷層の下に自然にできた窪みや空間(ポケット)は,オイルを溜める場所として利用できる。
アイス・オーガーやチェーンソーを使って氷に穴を開け,氷層の表面までオイルを溜め,回収ま
たは焼却する。オイルを回収する場合は,オイルが染み込まないタイプのプラスチックをスロッ
ト(穴)に貼る。
氷の層ができているところに(できつつあるところに)雪や発泡スチロールのような断熱材(防
護材)を置くと,氷の下にオイルを集めるための空間(ポケット)ができる。
氷の穴は重複させる
断熱材
オイル
海
図5-13 アイス・スロット
流速が0.4m/s以上のときは,スロット(穴)に角度をつけて(流れのなかに角度をつけ
てブームを置いたときと同様に),オイルが下側に流れずに穴にそって上がってくるようにする。
ブーム/アイス・スロット
フェンス,インターナル・フロテーション・ブーム,合板やプラスチックシート,金属シート
などをスロットにはめ,氷の下でそれ以上オイルが広がらないようにするためのバリヤーを造る
ことができる。
ブーム
氷
オイル
図5-14 ブーム/アイス/スロット
157
Arctic Waters Field Guide5-16
5.3
機械的誘導(方向転換)
5.3.1
ブームでの誘導
油膜の流れに角度をつけるときは,セクション5.2で説明した囲い込みブームを使って機械
的に流れの方向を変え,オイルに汚染されやすい場所を回避させたり,オイルの集積・回収エリ
アへ誘導する。この方法は,流速約1m/s以上のときに有効。表5-3には5段階の流速に対
応するブームの設置角度と必要な長さ(保護すべき岸の長さとの比率)をまとめてある。氷片が
あるところでは,この方法は不向き。
表5-3 流れが速いときのブームの必要性
流速(m/s)
必要な角度
追加ブームの必要性(%)
0.4
0°
0
0.5
40°
33
0.6
55°
67
0.8
60°
100
1.0
70°
167
1つのブームだけを使ってオイルの誘導をすることが可能な場合もある。下記(英語本文では
右になっている)の例では,転換角度は約60°である。
転換角度
流速0.5の流れ
回収域
図5-15 ブームによる誘導(方向転換)
Arctic Waters Field Guide
5-17
158
特に流れが速い場合や保護すべき場所が広い場合は,オイルの方向を変えるために多くのカス
ケード(滝状に垂れ下がっている)
・ブームが必要である。
流れ
汚染されやすい場所
図5-16 方向転換用カスケード・ブーム
この方法は,油膜を汚染されやすい地域から遠ざけるために,夏季(氷のない季節)に適用さ
れる。
表5-4は,海の状態と4つの基本的なブームを使っての方向転換の適応性についてまとめて
ある。
表5-4 ブームの種類と海の状態―海における誘導(方向転換)
海の状態
インターナル・
プレッシャー・
セルフ・インフレー
フロテーション
インフレータブル
ティング
フェンス
なぎ
囲まれている
開けている
最適
適切
不適
表5-4は,一般的な方向転換用ブームや遮断用ブームを設置したり維持したりするのが困難
なため,氷片がある海を想定していない。氷があるときは,もし安全に設置でき効果が期待でき
るならば,丸太をつないだものや他の素材でできたバリヤーを,前述ブームのように使う。
Arctic Waters Field Guide5-18
川での誘導(方向転換)
川用のブームが多数商品化されている。この川用のブームは上下にバランスを取るおもりが付
けられているのが特徴で,約1m/s以上の速い流れの中で垂直方向の安定性がよい。このタイ
159
プのブームは,一定方向の流れの川に適している。河口付近の流れの向きが干潮で変化する大き
な川では,ブームの位置を調整するのが困難で時間も浪費する。氷片がある川にこの種のブーム
を設置するのも,がれきや氷によってブームの素材が傷むので,問題がある。
流速が0.4m/s以上のときは,流れに対して角度を付けてブームを設置する必要がある(表
5-3参照)
。ブームに角度をつけると,オイルを岸辺に誘導して集めやすくなる。
図5-17 川でのブーミング(ブームの使い方)
表5-5は,川の状態と4つの基本的なブームの適応性についてまとめてある。
表5-5 ブームの種類と川の状態-川における誘導(方向転換)
川の状態
インターナル・
プレッシャー・
セルフ・インフレー
フロテーション
インフレータブル
ティング
フェンス
静か
囲まれている
最適
適切
不適
繰り返すが,氷片のある川にブームを設置したりブームを使うのは効果薄なので,氷がある川
については想定していない。
Arctic Waters Field Guide5-19
川土手でのブームを使っての誘導(方向転換)
潮間帯(河口付近)またはブームを設置している間に水位が上下する川では,ショアシール・
ブーム(図5-18,図5-19)を使い,喫水線をいつでも確実に封じるようにする。
このブームは下側は水の入ったタンク,上側は空気室(浮き袋)になっていて(図5-19),
水位に応じて調節できるようになっている。
ショアシール・ブームを設置するときは,一度水を満たしたブームを岸に設置すると再設置す
160
るのは不可能ではないが難しいので,ブームを設置固定する前に,最高水位を確認しておくこと。
またブームの水タンクがいっぱいになっているか,上部の空気室(浮き袋)に空気が満タンでな
くても,ブームの下部(水タンク)に水が集まっているか(たまったままか)どうか確認するこ
と。
図5-18 ショアシール・ブーム
浮いている状態
岸においてある状態
空気室(浮き袋)
空気室(浮き袋)
水タンク
水タンク
図5-19 ブームの設計
潮位が変わるとブームの下からオイルが漏れてしまうので,大きな石がごろごろしているとこ
ろ,鋭い突起物があるところ,ギザギザの裂け目があるようなところは避けること。ショアシー
ル・ブームは流れ,風,波によって動いたりねじれたりするので,設置した後は定期的にモニタ
ーすること。潮間帯では,ブームが座礁したりこすれ合ったりしても,生地が損傷する。氷があ
なたたくさん浮かんでいる川にブームを設置するのは問題である。下部のタンクの水が凍る恐れ
があり,また氷片によってブームがパンクし,生地が傷むことが多い。
Arctic Waters Field Guide
5.4
5-20
機械的回収
機械で(オイルを)回収することの目的は,封じ込め集中させたオイルを集めることと,オイ
161
ルを廃棄処理するまで一時的に収納器へ移すことである。オイルを回収するためのスキマーは,
大別して3つの種類がある。:
前進(移動式)スキマー
静止(固定式)スキマー
真空吸引装置(真空ポンプ)
オイルを集める方法はいろいろ(様々)あり,前進(移動式)スキマーの中にも静止(固定)
スキマーの中にも,その回収メカニズムがそのグループ特有のものが幾つかあるが,それに対し
て,大体はどちらかのモードを組み合わせて運用するようになっている。
前進(移動式)スキマー
静止(固定式)スキマー
・移動式ウィア(ダム)
・簡易ダム
・相対速度ゼロ・モップ
・自動レベル調節ウィア(ダム)
・吸着リフティング・ベルト
・スクリュー・オーガー・ウィア
・吸着ブラシ
・吸着ドラム
・サブマーション・プレーン・ベルト
・吸着ディスク
・パドル・ベルト
・吸着モップ
・吸着ブラシ
・流体力学応用装置
真空吸引装置にはポンプを組み立てるユニット(部品)も含まれているが,通常は普通のバキ
ュームカーやエアコンベヤーを使う。
回収するオイルの粘度,油膜の厚み,瓦礫,気温といった運用上の要因は,すべてスキマーの
選択に重要な役割を果たす。気温が氷点下以下ならば,ほとんどのスキマーは動かせない(機能
しない)。ポンプやホースの中で氷が形成されたり,モーターはかかりづらくなり,ベルト,ブラ
シ,モップといったピックアップのメカニズムは凍りついてしまう。気温が非常に低いと,気除
くやプラスチックも欠けやすい。気温が低いときにスキマーを使う場合は,高圧で蒸気や熱湯を
かけたり,電熱器やヒートパネルなどを使うとよい。
Arctic Waters Field Guide
5.4.1
5-21
前進(移動)スキミング
162
外海で薄い油膜を遮らなければならないとき,あるいは流水の中でオイルを回収しなければな
らないこともあるだろう。そのようなときに,ある種の前進(移動)スキマーが必要となる。前
進(移動)スキマーは,自己航行できるものと,他の船に牽引または押してもらうタイプとがあ
る。
図5-20で6タイプの前進(移動)スキマーを示している。前進(移動)スキマーは,一般
的に比較的大型で,スキマーの通り道にオイルを誘導するブームと一緒に使うことが多い。氷が
浮かんでいるところでこのスキマーを使うとしても,小さな氷片(一般的に直径1m以下)の水
面カバー率が30%以下でないと大抵は機能しない。
前進(移動)スキマーの中には,流出オイル回収用の船を入手し維持する経費を削減するため
に,VOSS(Vessel of Opportunity Skimming System=スキマー装置を使うための船)とし
て設計されているものがある。
表5-6には,基本的な前進(移動)スキマーとその各種条件下(オイルの粘性,海の状態,
がれきや氷があるかないか等の運用上の条件)での有効性についてまとめてある。一般的にモッ
プ型,ベルト型,ブラシ型の装置は氷を処理できるが,これも機械の設計による(機械がどのよ
うに設計されているかによる)。例えばオイルを集めるためのブームをサイド・アーム(側腕)に
つけているタイプのスキマーは,単純なブラシタイプのスキマーに比べ,疎氷域の海ではあまり
機能しない(作業効率が悪い)。
163
Arctic Waters Field Guide5-22
傾斜縁
ロープ・ドライバ
オイルの分離収納庫
操舵室
双胴船の船体
ロープモップ
移動式ウィア(ダム)
相対速度ゼロ・モップ
回収されたオイル
スクイーズ・ローラー
海水
吸着リフティング・ベルト
ブラシ
パドル
タンク
傾斜ベルト
ベルト
サブマーション・プレーン・ベルト
パドル・ベルト
図5-20 前進(移動)スキマーのいろいろ
164
Arctic Waters Field Guide
5-23
表5-6 前進(移動)スキマー
スキマーの種類
パ ドル ・ ベ ル ト
サ ブマー シ ョ ン ・ プ レ ー ン ・ ベ ル ト
ブラシ
吸着リフティング・ベルト
相対速度ゼロ・モップ
移動式ウィア
外海
囲まれている海
ないでいる海
作業環境
急流(2kts以下)
小川(川幅1フィート以下)
瓦礫の有無(氷も含む)
軽い
油粘度
中間
重い
油/水ピックアップ%*
スキマー
の特徴
回収率
配置のしやすさ
氷がある
氷がない
VOSS として入手可か(自己航行可能か)
インテグラル収納がついているか
*油/水ピックアップ%=再生オイルの%
最適
165
適切
不適
可
Arctic Waters Field Guide
5.4.2
5-24
静止(固定式)スキミング
ブーム,ベルム,氷上に掘られた溝によって囲い込まれた流出オイルは,吸着機やポンプを使
ってコンテナに溜められる。氷に穴をあけたスロットを使って溜められた氷下のオイルは,様々
な携帯用スキマーを使って集めコンテナに移すことができる。
図5-21 静止(固定式)スキミング
小型の携帯用スキマーのブラシ型,ディスク型,ドラム型,ウィア型を,オイルの種類と油膜
の厚みによって使いわける。携帯用ロープ・モップ型スキマーは,氷の穴の間に設置し,氷の下
に閉じこめられたオイルを回収する。携帯用スキマーを使用するときは,ポンプ,水圧式(/油
圧式)パワー・パック,ジェネレーター(発電機)などが必要となるかもしれない。図5-22
に,8種の基本的な静止(固定式)スキマーを示した。
表5-7には,基本的な静止(固定式)スキマーとその各種条件下(オイルの粘性,海の状態,
がれきや氷があるかないか等の運用上の条件)での有効性についてまとめてある。ウィア型のも
のを除いて,どのスキマーも小さな氷片は処理できるが,通常は氷のないところ(海域)か,ま
たは流氷のすき間にスキマーを設置し,油膜にきちんとスキマーが接するようにオイルを集め,
回収作業を行う。
166
Arctic Waters Field Guide
5-25
簡易ウィア(ダム)
自動レベル調節ウィア
スクリュー・オーガー・ウィア
吸着ドラム
吸着ディスク
吸着ロープ・モップ
吸着ブラシ
ハイドロダイナミック
図5-22 静止(固定式)スキマーのいろいろ
167
どのスキマーも使用するところの条件に合わせて,ディスクの(回転)スピードやウィアの設
置位置などを調整しなければならない。
Arctic Waters Field Guide
5-26
表5-7 静止(固定式)スキマー
スキマーの種類
ハ イ ド ロ ダ イ ナミ ッ ク
吸着ブラシ
吸着ロープ・モップ
吸着ディスク
吸着ドラム
スクリュー・オーガー・ウィア
自動レベル調節ウィア(ダム)
簡易ダム(ウィア)
外海
囲まれている海
ないでいる海
作業環境
急流(2kts以下)
小川(川幅1フィート以下)
瓦礫の有無(氷も含む)
軽い
油粘度
中間
重い
油/水ピックアップ%*
スキマー
の特徴
回収率
配置のしやすさ
氷がある
氷がない
インテグラル収納がついているか
*油/水ピックアップ%=再生オイルの%
最適
168
適切
不適
可
Arctic Waters Field Guide
5.4.3
5-27
真空吸引
真空吸引は大量のオイルを迅速に効率よく回収するための手段である。真空吸引法は,様々な
粘度のオイルに対応でき,多様な小型の固形物も処理できる。オイルを穏やかに吸い上げる作業
なので,オイルと水の乳化作用が最小限に抑えられ,後の水を取り除く作業が軽減される。
バキュームカー
もしオイルの溜まったところまで近づけるならば,バキュームカー(図5-23)を使うのが
有効であるが,バキュームカーは車体が大きく重く,また高価であり,吸引限界高度が10メー
トルである。
図5-23
バキュームカー
油膜が薄いオイルだまりにバキュームカーを使うと,水を吸い上げる割合が多くなって,空気
の取り入れに負担がかかり,吸引力が失われる。通常は氷の中に溜めたオイルを吸引するが,ラ
イン(ホース)が凍ったり氷片がホースの口に詰まって吸引力が失われることがよくある。
エアコンベヤー
エアコンベヤーはサイクロン,フィルター,送風機,ポンプを使って溜まったオイルを回収す
る。通常は薄い油膜に対しては低速送風(1500rpm以下)で,厚い油膜に対しては高速送
風(1500rpm以上)で対応する。また水の吸い上げ量を最少限に押さえるために,吸引開
始時に吸引ホースの口を表面から約10センチ離すこと。吸引ホースは長いと扱いづらいので,
169
できるだけ短めにする。
気温が低いと,氷が吸引ホース,特に吸引口と接続部に詰まりやすい。また吸引した水が凍っ
たり,ねばねばしたオイルと氷の小片が混ざってホースの中を流れずに詰まってしまうことがよ
くある。
Arctic Waters Field Guide
5.5
5-28
現地焼却
現地焼却の目的は,オイルを1回の作業で(ワンステップで),すなわち集めたり処分したりせ
ずに取り除くことである。焼却法は海上でも氷上でも,疎氷海でも運用できるオイルの処理方法
である。
ブームで囲い込んで海上でオイルを焼却する
氷上でオイルを焼却する
疎氷海でオイルを焼却する
Arctic Waters Field Guide
5.5.1
5-29
ブームで囲ったオイルの海上焼却
油膜の厚みが2-3ミリ以上あれば,海上でもオイルを燃やすことができる。たいていは,耐
火ブームを使って,海上で焼却できるボリュームになるように油膜を集めなければならない。
油膜を十分に囲い込めるように,油膜がゆっくり漂っているところで(0.4m/sまたは0.
7ノット以下)耐火ブームを広げ,トウボートで牽引する。
もし油膜そのもの,もしくは油膜の漂っている範囲が広すぎてブームで囲い込めないとき,あ
るいは流れが(油膜の流れるスピードが)0.4m/s(0.7ノット)以上のときは,もっと
下流に船とブームを移動する必要があるかもしれない。
潮流に乗って漂いながらオイルが燃焼している間,その燃えているオイルの近くに2つ以上の
ブームをU字型に配置して牽引する。
170
図5-24
Arctic Waters Field Guide
外海での囲い込み/焼却
5-30
耐火ブーム
耐火ブームは流出オイルの囲い込み(封じ込め),誘導(方向転換)
,遮断に使われる。大抵は
ブームは重く頑丈にできているので扱いづらいが耐久性があり,沖合での長時間の焼却作業に耐
えられる。軽くて扱いやすいタイプのブームもあるが,それは耐久性に乏しい。ステンレス製以
外のブームは,鉱物を織り込んだ耐火布かセラミックでできている。
氷が浮かんでいる海ではうまく配置することが難しいので,コンベンショナル・ブームと同様,
耐火ブームの使用は効果薄である。
点火装置
優れた点火装置は,下記の特性を備えている。:
・点火するとオイルを逃がさずすばやく気化させる。
・設計が(作りが)シンプルで,安全で使いやすく,長寿命,最小限の輸送ですむこと。
安全上の理由から,エアクラフトのパイロットは,エアクラフト内に導火線がないもの,ある
いは点火するために窓やドアを開けて手で点火装置を投げなくてよいタイプの点火装置を扱うの
が好ましい。
171
現在2種類の点火装置が市販されている:1つは船または岸から操作する点火装置,もう1つ
はヘリコプターから操作するタイプである。
その1つにヘリ・トーチという商品があるが,この商品はヘリコプターから投下することで,
氷上のオイル溜まり初めあらゆる焼却の場で使えることから,広く愛用されている。またこの商
品は,リモートコントロールで操作するので,比較的安全に使用できる。
プロパントーチのような手で持つタイプの点火装置やその他の商品は,ヘリ・トーチに比べリ
スクが若干大きく,しまっておくときや輸送の際,あるいは使用に際してロジスティックの観点
からも注意が必要である。しかしながら遠隔地での作業やヘリコプターがすぐに手配できないと
きは,手動で点火するのがより実際的である。
Arctic Waters Field Guide
5.5.2
5-31
氷上でのオイル焼却
氷原(固く凍り付いた氷の上)では
連続して固く凍り付いた氷の上では(氷原では),オイルは(自然にできた)窪みや氷の割れ目
に集積するので,雪や氷のベルムでそのオイルを囲い込むことができる。もし安全に作業ができ
るのであれば,氷の窪みなどに集められたオイルを除去するのに最も実際的で効果的な方法は,
(その場で)焼却することである。
バックホー,ブルドーザー,グレーダーなどを使って油まみれの雪を小山またはコーン状にす
る。ディーゼルオイルなどの燃焼促進剤を加え,囲い込んだオイルを点火焼却する。オイルを燃
やしている間に解けた水にオイルが広がって行かないように,コーンの周りを雪のベルムで囲う。
図5-25 雪のコーンを使って焼却
172
Arctic Waters Field Guide
5-32
メルト・プール
海に広がった氷の下に流出オイルが流れ込むと,氷の下面のデコボコにそってオイルが溜まる。
氷が形成されている時期は,オイルはその氷に閉じこめられるが,春になり氷がゆるみ始めると
海水の通り道(狭路)ができ,そこを通ってオイルが氷の表面にせり上がってきて溜まり,点火
焼却可能となる。
図5-26 メルト・プール(解け出した油だまり)
メルト・プールは急に出現して数日しか存在せず,氷が解けると消滅してしまうので,メルト・
プールにたまったオイルを焼却するときは,比較的すばやく作業を行わなければならない。
すばやく作業に取りかかれるとしても,現地焼却の技術を使って大量の流出オイルをメルト・
プールから除去することはためらわれる。たくさんの(何千もの)細かいメルト・プールが広範
囲に出現しているところでは,オイルを運んでいる(包含している)流氷が風邪の影響を受けや
すい。たくさんの動く標的,つまりオイルをためているプールは比較的寿命が短い。加えて,メ
ルト・プールが大きくなって幾つかが一緒になると,オイルは急速に燃焼不可能な薄い層に広が
ってしまい,流氷も解けてしまう。流出オイルが小規模であればあるほど,焼却しやすい。
Arctic Waters Field Guide
5.5.3
5-33
疎氷海でのオイル焼却
173
氷が浮かんでいる海では,風と潮流によって,流出オイルは大きな氷片の周囲や下に流され,
氷原間に閉じこめられていく。氷は天然のバリヤーとなって,オイルが集められる。油膜の厚み
が2-3ミリ以上あるならば,現地焼却が可能である。
図5-27 氷が浮かんでいる外海でのオイル焼却
ヘリコプターから空中
用の点火装置を使って火をつける。現地焼却する場合は,オイルに
点火し燃焼を継続させるために,必ず数ミリ以上の厚みの油膜が必要である。
安全上と業務上の理由から,使えるところではヘリコプターから投下するタイプの点火装置を
使うことが好ましい。
Arctic Waters Field Guide
5.6
5-34
化学的処理
化学的処理の目的は,流出オイルの自然分解や微生物分解を加速するために,オイルを微粒子
化することである。化学的処理は,沖合で油膜をつかまえたとき,あるいは潮流が速いか波の荒
い海岸地帯にオイルがたまっているときに,よく適用される。化学溶剤を使うときは,下記の点
を考慮すること。:
オイルの特性
化学分散するには,オイルの粘度が 10000cSt 以下であること,オイルの氷結
温度より周囲の温度のほうが高いこと,light petroleum をわずかに含んでい
ること。
174
考慮すべき環境
分散剤を使うのは環境に与える影響(汚染)を少なくするためであること:
使用に際しては,環境資源までの距離,毒性の影響,天候,海の状態などを
見極める。
適用モード
適切な量と粒子の大きさの分散剤を,通常は船,小型飛行機,ヘリコプター
から適切なスピードで散布する。
散布装置
薬品散布用に設計された統一デザインのスプレーアーム,ポンプ,ファイヤ
ーモニター(火災探知機),メーター,ノズル,策具を使うこと。
状況に応じて分散剤が使われるとオイルは分解して水に溶け,それによって入り江や河口に入
り込む,あるいは海岸に届いて生息物を汚染するオイルの量を減らすことができる。薬剤を散布
するかどうかは,通常,汚染を最小限に食い止めるための薬剤の1回の最少投薬量を見積もるこ
とによる(最少投薬量がどのくらいになるかによる)。
風化作業によってオイルの粘度がどんどん上がるので,薬剤は,流出事故が起こってからでき
るだけ早いうちに散布しなければならない。分散剤は粘度が2000cSt のオイルに対して効果
を発揮する。粘度が10000cSt までは分散剤の効力はあるが,大量の薬剤を投与しなければ
ならず,また波の撹拌力もより必要となる。粘度が10000から20000cSt になると,薬
剤がオイルに広がっていかないので(浸透していかないので),化学的処理はほとんど不可能であ
る。オイルの粘度と薬剤効果についての正確な記録はないが,ラボテストでは(実験台解では),
様々な粘度のオイルが化学分解されてきている。
氷の浮かんでいる海では,
(水温が低いため)
薬剤と油膜がまざらず,
波の撹拌力も比較的弱い。
Arctic Waters Field Guide
5-35
適用(運用)方法
薬剤を散布するときは,タグボート,単発機,ヘリコプター,双発機などを単体で,あるいは
組み合わせて使う。風,海の状態,波の高さなどによる制限を,基本的なモードごとに表5-8
にまとめてある。悪天候や海が荒れているときは,化学的処理は適さない。
どの方法で散布するにしても,監視(飛行)機と散布船は連絡をとりあって,薬剤が効率よく
効果的に散布されているかどうか確かめることが重要である。
空からに比べ,水上からでは散布範囲,形,油膜の分布がよく見通せない。
175
表5-8 薬剤散布法の比較
散布方法
気象条件
利点
・風速 10-35km/h
不利な点(問題点)
コ ントロールしや
・波の高さ 0.3-3m
すい
作業船/タグボート
小 規模 の流出 事 故
対応に限る
水を撹拌する
散布幅が狭い
・風速 30-35km/h
比較的安価
比 較的 小規模 の 流
・波の高さ2-3m
フ ィールドに着陸
出事故対応に限る
できる
単発機
・風速 30-50km/h
非 常に操作性がよ
・波の高さ2-5m
中型ヘリコプター
い
分散剤の使用のみ
比較的高価
分散剤の使用のみ
どこにでも着陸可
・風速 50-60km/h
搭載量が大きい
非常に高価
・波の高さ5-7m
広 範囲をカバーで
滑走路が必要
きる
大型複発機
分散剤の使用のみ
Arctic Waters Field Guide5-36
5.6.1 船を使っての薬剤散布
作業船やタグボート,はしけなど,様々な船を使って薬剤散布ができるが,比較的航行速度が
遅く作業幅が狭いため,小規模の流出事故処理(対応)にのみ有効である。
図5-28 船を使っての薬剤散布
176
その他,船を使っての薬剤散布に関する留意点は:
・スプレーアームは,船の波しぶきがかからないように,出来るだけ舳先に近いほうに取り
付ける。
・スプレーブームの長さは,船が回転したときにブームの端が水面につかないように調節す
る。
・
(薬剤を)霧状ではなく均一の雨滴状にスプレーできるように,ノズルのサイズと位置を調
整する。
・船を4-19km/h(2-10ノット)のスピードで航行させたときに,船の進行方向に対
して直角に一直線に水を打つように,薬剤をスプレーしなければならない。
・金網のバッグに入れたファイヤー・モニター(火災探知機)をノズルにつけ,標準スプレ
ーブームの4回に1回,薬剤のまざった海水につける。ファイヤーモニター(火災探知機)
が既についているものは,風下に向かって,30度から40度の高さに吊すこと。
Arctic Waters Field Guide
5.6.2
5-37
空中散布
広い範囲にわたってオイルが流出したときには,固定翼機を使って薬剤を空中散布するか,ま
たはヘリコプターにバケツをつり下げて空中散布する。たいていは,油膜の外側の厚いほうの部
分から空中散布を開始する。
図5-29 空中散布
177
大規模な流出事故処理を除いては,かなりの量の薬剤が油膜をはずれてしまうので,クロス・
ウインド・アプリケーション(風下から風上に向かって散布する方法)はお勧めできない。
クルーは低空飛行の経験者であること。
Arctic Waters Field Guide
5-38
ヘリコプターを使った空中散布
薬剤散布をするときは,ヘリコプターにバケツをつり下げて使う。飛行速度やバケツの高度と
いった仕様については、ヘリコプター、バケツ、使用する薬剤の種類によって異なる。ヘリコプ
ターにはレーダ高度計を装備のこと。
図5-30 ヘリコプターを使った空中散布
時速112km(60ノット)の飛行速度、バケツの高度15m(50フィート)で散布する
と、21m(70フィート)幅に 1 ヘクタール当たり32L(3.5USガロン/エーカー)の
薬剤を散布できる。
飛行速度を56km(30ノット)まで減速し、バケツの高度を8m(25フィート)までさ
げると、15m(51フィート)幅に 1 ヘクタール当たり127L(14USガロン/えーかー)
の薬剤を散布できる。最低速飛行を維持すると効果が最大になり,かつローターで吹き飛ばされ
る(薬剤)量は最少となる。ホバリングは避けること。風上に向かって最大飛行速度時速150
kmで散布するのがよい(お勧めである)。
固定翼機を使った空中散布
様々な種類の固定翼機を薬剤散布に使用することができるが,通常は農薬噴霧用の小型飛行機
を使うことが多い。
178
(しかしながら)このタイプの飛行機(農業用の飛行機)のノズルは噴霧(スプレー)用に設
計されているので,薬剤散布には適さない。農業用の飛行機を薬剤散布に使う場合は,既存のノ
ズルを大きいものに換える必要がある。
図5-31 固定翼機を使った空中散布
Arctic Waters Field Guide
5.7
5-39
沿岸(海岸線での)処理
沿岸処理の目的は,より早く油にまみれたエリアを回復(修復)させることにある。この目的
にかなう処理あるいは浄化(清掃)技術(方法)は,沿岸地帯の特性とセクション4.11に記
載されているような油の状態(油の種類と量)にあったものでなければならない。
このセクションでは,20とおりの沿岸処理技術について実践的な情報を,下記の基本的な処
理方法に大別して,提供している。
セクション5.7.1
自然回復
物理的方法
・洗浄
セクション5.7.2
・除去
セクション5.7.3
・現地処理
セクション5.7.4
セクション5.7.5
化学的/生物学的処理
表5-9には,20の対処技術と道具をまとめてある。表中で20の方法に付されている番号
を使えば,このガイドブックのどこからでも,簡単に必要な箇所(方法)を参照することができ
179
る。どの方法をとっても,自然回復以外は,処理がほどこされる海岸線の自然環境に何らかの影
響を与えることになる。表5-9には,流出したオイルの種類や量にかかわらず,使われた技術
や道具がそれぞれの海岸線にどのくらい影響を与えるかをまとめてある。雪や氷に覆われた海岸
線については,雪や氷によって海岸線が流出オイルから守られるので,表には含まれていない。
海岸線ごとに処理方法が分けて明記してあるが,実際は2つ以上の方法を組み合わせて処理に
あたる。
ポンプで海水をくみ上げる方法やモーターで作動する機械を使う方法は,寒冷気候の影響を受
けやすい。気温が低いモーターが始動しなかったり,パイプの水が凍ったり,その他氷や低温に
よってもたらされる様々な障害によって,海岸線処理が妨げられる。
180
Arctic Waters Field Guide
5-40
表5-9 対処方法の影響度予測(油によるダメージは含まれない)(API/NOAA,1994 より)
高圧,温水/熱湯洗浄
7
蒸気(スチーム・クリーニング)
8
砂吹き
9
手動除去
10
真空吸引
11
機械的除去
12
植生伐採
13
吸着剤を用いた回収
14
ミキシング
15
堆積物除去
16
焼却
17
化学的処理(消散剤)
18
沿岸用クリーナー
19
凝固剤処理
20
バイオ的修復
最適(影響をほとんど及ぼさない)
適当(影響はある)
181
不適(影響が大きい)
ツンドラ崖地
6
水 浸し の ツ ン ド ラ 低 地
高圧,冷水洗浄
泥炭海岸
5
海 水湿 地
低圧,温水/熱湯洗浄
泥干潟
4
砂干潟
低圧,冷水洗浄
巨礫海岸
3
中礫/玉石海岸
水浸しにする
混合堆積物の海岸
2
砂浜
自然回復
人工構 造 物
岩 盤( 岩 場 )
1
Arctic Waters Field Guide
5.7.1
5-41
自然回復
Optimum Use
どんなタイプの海岸線も,少量の低粘度オイルで汚染されているだけならば,環境が整えばた
とえ北極圏であっても,自然回復は可能である。
自然回復の目的は,人の手を入れないで汚染されたサイトを回復させることにある。
Description
自然回復させるのが適当かどうかは,現場のオイルの汚染状況や環境資源への被害状況を観察
し,オイルを自然風化させるのが適当かどうかで判断する。状況によっては,その判断が適切か
どうか,状態が変わらないか確かめるために,現場をモニターするのもよいかもしれない。
Applications
次のように判断された場合は、自然回復(という方法)を適用する。:
・浜に打ち上げられたオイルを処理したり洗浄したりするほうが、そのまま放置しておくよ
りも、より環境にダメージを与えると思えるとき。
・典型的な対処技術(方法)をほどこしても、自然回復が早まらないとき、またはその技術
(方法)が実践的でないとき。
・処理作業員にとって、
(流出した)オイルの状態あるいは環境条件が危険だ(悪天候、アク
セスが悪い等)と思われるとき。
(自然回復という方法を適用するのがいいかどうか)判断するには、上記のほかにも危険にさ
らされている環境資源の分析、オイルの種類と量、現場の位置等、その他の要因も関係してくる。
例えば、流出したオイルが少量で粘性が乏しく遠隔地にあった場合、周囲の環境や住民の健康や
野生生物を害さず風化、分解すると判断されるならば、そのまま自然回復させるべきである。
Arctic Waters Field Guide
5-42
自然回復法は、あらゆる流出事故、あらゆる沿岸環境、あらゆる海岸線のタイプにも適用でき
るが、下記条件化での適用が効果的である。:
・オイルの流出量が少量である。
・オイルの粘性が低い。
182
・入り江などの波が穏やかなところよりも、波の荒い外海に面している海岸である。
・遠隔地あるいはアクセスが困難な地域である。
トレードオフ(または Net Environmental Benefit
セクション7.5参照)分析については、
(自然回復法を採用するかしないかについては)下記を考慮する(判断材料とする)。:
1
自然回復率(何もしないでどの程度自然回復するか)を見積もる。
2
何らかの対処をした場合、どの程度回復が早まるか。
3
何らかの対処をしたことによって、回復が遅れるか。
Constraints/Limitations on Natural Recovery(自然回復法の限界)
もし重要な環境資源や人間活動が脅かされるようであれば、自然回復(法)は適切ではない。
オイルがさらに溜まって隣接する環境資源や海岸のきれいなセクションまで汚染するかどうか
(汚染する可能性を)特定すべきで、もし隣接する環境資源やエリアを汚染するようであれば、
自然回復(法)を採用するのはやめたほうがよい。
Arctic Waters Field Guide5-43
5.7.2
物理的処理(方法)-洗浄
洗浄(法)の目的は、水を使って海岸からオイルを除去し、そのオイルを処分するために回収
することである。それぞれの洗浄法は、洗浄、囲い込み(封じ込め)、洗い流した廃棄オイルの回
収を含む何段階かの作業ステップを必要とする。
これらの方法では(各洗浄法では)、次のようにオイルを洗浄することが必須である。:
1
ブームで囲い込みスキマーで回収できるほう(オイルが打ち上げられている海岸線と接し
ている海)へ(洗い流す)
2
排水溝やトレンチといった真空ポンプやスキマーで(オイルを)回収するための回収(集
積)エリアへ(洗い流す)
から
までの洗浄法及びスチーム・クリーニング法は、狭い範囲のスポット洗浄として採
用されることが多い。
洗浄法は、水圧と水温によって、下記(表5-10)のように種別される。一般的に流出事故
処理専用の洗浄用装置は製造されていないが、ほかの用途のための装置が市販されており、それ
を(この洗浄処理に)活用できる。
183
表5-10 洗浄処理(方法)一覧
方法(技術)
水圧
psi
bar
水温(℃)
フラッディング(大量の水で洗い流す)
<20
<1.5
常温
低圧,冷水洗浄
<50
<3
常温
低圧,温水/熱湯洗浄
<50
<3
30-100
50-1000
4-70
>1000
>70
高圧,温水/熱湯洗浄
50-1000
4-70
30-100
スチーム・クリーニング
50-1000
4-70
200
~50
~4
n/a
高圧,冷水洗浄
高圧洗浄
サンド・ブラスティング(砂を吹きつける)
Arctic Waters Field Guide
5-44
表5-11には,基本となる7つの洗浄法の目的とどんな海岸線,流出オイルに適しているか
まとめてある。
表5-11 洗浄処理の応用一覧
方
法
目
的(ねらい)
最適な使い方
大量の水を流すことで,流出油 ・あらゆるタイプの海岸線に適
フラッディング
を浮かせ傾斜面にそって油の
回収エリアまで流していく。
用可
・軽油から中質油まで
常温の海水,湖水,河川水を低 ・不透過性の海岸線,沼地(湿
低圧,冷水洗浄
低圧,温水または熱湯洗浄
圧で吹きつけることで,油を回
地)
収エリアのほうへ洗い流す。
・軽油から中質油まで
低圧で温水(熱した水)を油に
・不透過性の海岸線
吹きつけ回収エリアへ洗い流
・軽油から中質油まで
す。
高圧,冷水洗浄
常温の海水,湖水,河川水を高
・不透過性の海岸線
圧で吹きつけることで,油を回
・中質油から重油まで
184
収エリアのほうへ洗い流す。
高圧,温水または熱湯洗浄
高圧で温水(熱した水)を油に
・不透過性の海岸線
吹きつけ,回収エリアのへ洗い
・中質油から重油まで
流す。
スチーム・クリーニング
サンド・ブラスティング
Arctic Waters Field Guide
固い表面から粘性が高くなっ
・不透過性の人工構造物
た油膜の薄い層を取り除く
・変色あるいは風化の進んだ油
固い表面から粘性が高くなっ
・不透過性の人工構造物
た油膜の薄い層を取り除く
・変色あるいは風化の進んだ油
5-45
フラッディングでは,(下記方法で)海水を海岸線に浴びせる:
・ノズルを使わず,ホースから直接
・
(0.25から0.5センチの)穴を一定間隔で開けたパイプまたはホース(ヘッダー)を,
海岸線から少し離れた位置に海岸線に平行に設置する。
通常,ヘッダーホースは油にまみれたエリアより上手のビーチに設置する(図5-32)。一般
的に
フラッディングと
の低圧洗浄法では,ほとんどの生物(有機体)はそのままそこに
残るので,環境を破壊しない(環境に影響を及ぼさない)
。この洗浄法は沼地(湿地)や植物が生
えている海岸でよく使われる(表5-9)。
図5-32 フラッディング・テクニック
挿入図はビーチの流水層がオイルを地表に浮き上がらせて水際まで洗い流す様子を表している。
の低圧冷水洗浄は,ほとんどの不透過性の海岸線及び一部の透過性海岸(ビーチ)
,沼地(湿
185
地)に有効である。オイルの粘性が増すほど,また玉石や巨礫のビーチにたまったオイルの層が
厚いほど,効果が薄れる(減少する)。洗浄法は砂浜や混合堆積物のビーチではその適用に限界が
あり(不適切ではないが,余り効果的でない)
,また砂や泥の平地には適さないであろう。洗浄法
は,下のほうにオイルが再び溜まるのを防ぐために,フラッディング法と一緒に使うことができ
る。
Arctic Waters Field Guide5-46
図5-33 低圧洗浄
(洗浄法)の制約/限界
潮間帯に動植物が生息している場合,その動植物が油によって汚染されていない場合は特に,
そのゾーンを避けて油及び堆積物を洗い流さなければならない。オイルは水面に集まるので,海
岸では,干潮時と満潮時の間または満潮時に作業を行えば,動植物は水面下(水中)になるので,
それら(の動植物)に与える影響は少ない。
洗い流された油と油にまみれた堆積物は,封じ込め,集めて廃棄しなければならない(図5-
32及び5-33)。そうでなければ,いたずらに油を分散させるだけで,海岸線はきれいにはな
らない。海岸で洗浄法を施す場合には,淡水を使うと海洋動植物が死んでしまうので,必ず海水
を使うこと。
の高圧洗浄法は,その場の健康な(微)生物(有機体)を取り除きダメージを与えてし
まう可能性がある。高圧で吹きつけると,まだ油の乳化作用が起こっていなくても,油を乳化さ
186
せてしまう。また超高圧洗浄,
のスチーム・クリーニング,
のサンド・ブラスティングは,
地表をきれいにぴかぴかにするけれども,同時にすべての(微)生物(有機体)を洗い流してし
まうため不毛となって,環境破壊という観点からは非常に影響が大きい。
Arctic Waters Field Guide5-47
5.7.3
物理的処理方法-回収
物理的処理の目的は,油及び油にまみれたもの(堆積物,瓦礫,植物)などを移動することで
ある。
手作業による回収
真空ポンプ(装置)
機械による回収
植物の刈取り
吸着剤を用いた回収
吸着剤や数種のビーチクリーナーを除いて,この物理的回収に必要な装置(道具)はすべて一
般市販品であり,特に流出オイル処理専用というわけではない。この作業で使われる機械は,2,
3のオイル処理用の特別仕様品を除いて,すべて土木作業用のものである。
(一方)このセクショ
ンで紹介されている吸着剤のほとんどは,流出オイル処理用に特別に製造されたものである。
最適な方法を選ぶには,汚染されたエリアの広さ,油の種類と量,現場までのアクセス,海岸
線のタイプを考慮する。また発生するごみ(廃棄物)の量と運搬回数から,作業効率とコストを
見積もる。ショベルカー(フロントエンドローダー)で処理物をビーチから直接トラックに運ぶ
ようなシングルステップの運搬方法のほうが,グレーダー(モーターグレーダー)で処理物を脇
へ動かしてからショベルカー(フロントエンドローダー)やエレベーティングスクレーパー(な
らし機)で運ぶようなマルチステップの運搬方法よりも資金(resources)を使わなくてすむ。
表5-12には,基本となる5つの方法(技術)の目的とどんな海岸線,流出オイルに適し
ているかまとめてある。
Arctic Waters Field Guide
5-48
187
表5-12 物理的回収方法一覧
方
法
手作業による回収
目
的(ねらい)
最適な使い方
手作業で油と油にまみれたもの(油まみ
・海岸線のタイプは問わない
れの堆積物を含む)を回収する
・表層の少量の油
汚水だめに集められた油を吸引して回 ・軽油から中質油まで,揮発性
真空ポンプ(装置)
収する
でない,集められた油
機械装置を使って油及び油にまみれた ・あらゆるタイプの堆積物海岸
機械による回収
処理物を回収する
・大量の中質油,重油,純正油
が流出したとき
植物の刈取り
油にまみれた茎や幹を刈り取り,油がそ
・沼地(湿地),植物が生えて
こからさらに流れていったり,動物や鳥
いる海岸線
が油に触れないようにする。また(油で ・油が移動すると他の環境資源
汚れた)植物の回復を促進する
に影響を及ぼす危険があると
ころ
油を吸い上げる位置に吸着剤を置く
吸着剤を用いた回収
・海岸線のタイプは問わない
・軽油から重油まで,但し純正
油でない,揮発性でない油
Arctic Waters Field Guide
5-49
表5-13は,それぞれの回収方法の必要とする労働力,処理(回収)速度,発生する破棄物
の量と,その作業がシングルステップで行えるかマルチステップかをまとめてある。
表5-13 物理的回収のための効率ファクター
技術または装置
労働力の
処理(回収)
シングルステップか
発生する
必要性
速度
マルチステップか
廃棄物の量
手作業での回収
集中的に必要
遅い
マルチ
最少
真空ポンプ
集中的に必要
遅い
マルチ
中庸
グレーダー/
最少の労働力
大変速い
シングル/マルチ
中庸
スクレーパー
188
ショベルカー
最少の労働力
速い
シングル
多い
ブルドーザー
最少の労働力
速い
マルチ
非常に多い
バケット掘削機
最少の労働力
中間
シングル
多い
浚渫機/泥はね器
最少の労働力
中間
シングル
多い
ビーチクリーナー
最少の労働力
遅い-中間
いろいろ
少ない
植物の刈取り
集中的に必要
遅い
マルチ
多くなりうる
遅い
マルチ
吸着剤の交換
(フロントエンドローダー)
(バックホー)
広範囲にわた
吸着剤による回収
って大量の油
を吸着させる
量が多ければ
なら,集中的に
多くなりうる
労働力が必要
Arctic Waters Field Guide
5-50
の手作業による回収では,クリーナップチームを組んで作業手袋(軍手),熊手,移植ごて,
シャベル,吸着材,バケツなどを使って油や油のついた堆積物,がれきなどをピックアップしな
ければならない。手作業による回収が適しているのは,以下の場合:
・少量の舗装用アスファルト等の粘性オイル
・地表または地表近くにあるオイル
・車では行けないエリア,または車を動かせないエリア
手作業による回収作業では,海岸に打ち寄せられたタール状の油を吸着材でこそいだり拭き取
ったり,ふるいにかけたりすることもあるので,作業員は防水作業服やレインコート,長靴,手
袋といった防護服を着用すること。
油のついた処理物は直接プラスチックの袋やドラム,その他の容器に入れ運ぶことができる。
もし容器を仮の置き場まで運ぶのならば,1人で簡単に安全に運べる重さにすること。内容物を
こぼさないために,容器は入れすぎたり引きずったりしないこと。
手作業による回収は,人的労働力にたよっているので,広い範囲のオイルを処理するには時間
がかかる。この方法は(手作業による回収は)機械による回収に比べ,作業速度は非常に遅いが,
189
発生するゴミ(廃棄物)の量は少なく(表5-13),廃棄物(タールの固まり,油にまみれた堆
積物,瓦礫等)を拾い集めながら簡単に分別できる。
砂浜では四角いシャベルが使い勝手がよく,混合堆積物や中礫/玉石の海岸では,先のとがっ
たシャベルのほうが作業がしやすい。
Arctic Waters Field Guide
5-51
図5-34 手作業による回収作業;(図上部の挿入図は,油のついた
処理物を直接シャベルですくってショベルカー(フロント
エンドローダー)に入れ,作業ステップを減らしているところ。
の真空ポンプを使った回収法では,まず自然の窪地か溝またはトレンチ(油だめ)のような
回収エリアに油を集める。(図5-35)。この方法(真空ポンプを使った回収法/真空吸引法)
は,オイルを浮き上がらせ集める
のフラッディングや洗浄法と組み合わせて使うことができる。
巨礫と巨礫の間のようなアクセスが困難な場所などでは,このように両方の方法を組み合わせて
使う。
Arctic Waters Field Guide
5-52
190
図5-35 真空ポンプでオイルだめからオイルを吸引回収する
の機械を使った回収では,オイルとオイルにまみれた表層の処理物を海岸から回収するため
の様々な道具が必要である。機械による回収は手作業よりも作業速度は速いが,大量の廃棄物が
発生する。実際の作業方法は,使用可能な(入手できる)作業車両の種類(表5-14,5-1
5)とその車両の現場での作業能力とによって多様化する。それぞれの作業車両の作業効率につ
いて,クリーン度(どのくらいきれいにできるか)と発生するゴミの量の観点から表5-13に
まとめた。
エレベーティングスクレーパー(ならし機)やローダー,バケット掘削機,バキュームカーな
どは,1回の作業ステップで処理物を回収し,直接トラックなり(処理物の)仮置き場に運ぶこ
とができる(図5-36,5-37,5-38)。他の作業車両(グレーダーやブルドーザー)は,
処理物をどけて,さらにそれを別の作業車両(スクレーパーやローダー,バックホー(バケット
掘削機))で運ばなければならないため(図5-39,5-40),2回以上の作業ステップが必
要となり,効率が落ちる。
Arctic Waters Field Guide
5-53
表5-14 代表的な掘削装置(車両)
作業車両
技術(方法)
適性(特徴)
191
エレベーティング
水際に対し平行に動かして,ホッパに集め
比較的固い(目のつまった)平らな砂
スクレーパー
られた油汚染した堆積物の表層を薄くそ
浜で,地表(表層)の油処理に限る;
(ならし
ぎ取る,または一列に寄せられた(油汚染
タイヤが沈むと作業が長引く
機)
した)堆積物を回収する
モーター
水際に対して平行に動かして,一列に寄せ
比較的固い(目のつまった)平らな砂
グレーダー
られた油汚染した堆積物の表層を削り取
浜で,地表の油処理に限る;緩斜面で
る。流出した油の量が多い場合は,運搬路
の作業可;タイヤが沈むと作業が長引
を2つ以上つくる;通常は一気にビーチま
く
で運び上げるのではなく,回収除去する堆
積物の山を何列もつくる。
ショベルカー
バケットで堆積物をトラックまたは(処理
堆積物海岸で,地表(表層)及び堆積
(フロンドエンド
堆積物)の仮置き場へ運ぶ;油汚染が表面
物に染み込んだ油(汚染の堆積物)の
ローダー)
(表層)だけの場合は,きれいな堆積物ま
回収作業が可能;牽引力が落ちると堆
で取らないように,バケットを浅く使う; 積物の量が増す。
または一列に寄せられた油汚染した堆積
物を回収する。
ブルドーザー
他の機械でピックアップし運び出せるよ
堆積物海岸で,地表(表層)及び堆積
うに,ブレードで油汚染した堆積物を移動
物に染み込んだ油(汚染の堆積物)の
する;ほとんどの掘削機は掘削の深さを調
回収作業が可能;牽引力が落ちると堆
節することができず,堆積物中に油を混ぜ
積物の量が増す。
込んでしまう。
バケット
バケットで堆積物をトラックまたは(処理
堆積物海岸及び急斜面で,地表(表層)
掘削機
堆積物)の仮置き場へ運ぶ;油汚染が表面
及び堆積物に染み込んだ油(汚染の堆
(バックホー)
(表層)だけの場合は,きれいな堆積物ま
積物)の回収作業が可能;牽引力が落
で取らないように,バケットを浅く使う; ちると堆積物の量が増す。
または一列に寄せられた油汚染した堆積
物を回収する;延長アームを使ってプラッ
トホームまたはきれいなところからの作
業が可能
192
浚渫機/
バケットで堆積物をトラックまたは(処理
堆積物海岸及び急斜面で,地表(表層)
泥さらい機
堆積物)の仮置き場へ運ぶ;延長アームを
及び堆積物に染み込んだ油(汚染の堆
使ってプラットホームまたはきれいなと
積物)の回収作業が可能
ころからの作業が可能;浚渫の深さをコン
トロール(調節)することはできない。
Arctic Waters Field Guide
5-54
図5-36 エレベーティングスクレーパーで直接回収する(運び出す)
図5-54 バックホーで直接回収する(運び出す)
193
Arctic Waters Field Guide
5-55
図5-38 フロントエンドローダーで直接回収する(運び出す)
図5-39 ローダー/スクレーパーで最初に寄せたものをグレーダーで回収する(運び出す)
Arctic Waters Field Guide
5-56
図5-40 フロントエンドローダーで最初に寄せたものをブルドーザーで回収する(運び出す)
194
岩盤や堅固な人工構造物以外のあらゆる海岸で,機械による(油及び汚染堆積物等の)回収作
業は可能であるが,どの機械を使うのが適当であるか(適切であるか)は,個々の機械の特性だ
けでなく,現場の堆積物(堆積地面)の支圧強度(支持力)や傾斜度に大きく左右される。
市販の土木機械(掘削機械)には,それぞれの使い方や適性があり(表5-14),各機械の能
力は支圧強度により大きく変化する,つまり現場の海岸で走行不能にならないかどうかという点
が重要である。砂浜や平らな泥地では,支圧強度が乏しいために,機械作業には限界がある。ま
た柔らかい堆積物の上では(支圧強度が低いので)タイヤが沈み込むことによって,ホイール走
行型機械の摩擦が増える。ホイール走行型機械が使えない(動かない)ところでも,キャタピラ
ー型(クローラー走行型)機械なら作業可能かもしれないが,タイヤよりももっと堆積物をぐち
ゃぐちゃにしてしまうので,あまりお勧めではない。
・スクレーパーとグレーダーは,固く比較的平らなところでのみ走行が可能で,表層物を薄
く(約10センチ)はぎ取り移動することができる。
・ローダー,ブルドーザー,バックホーは,様々な条件下での作業が可能で,大量の処理物
を掘削し移動するよう設計されている。
Arctic Waters Field Guide
5-57
・バックホー,浚渫機,泥さらい機は,延長アームやクレーンで,はしけや後浜から処理物
をピックアップすることができる。
・ビーチ清掃機には様々な種類がある(表5-15)
。図5-41のようにビーチ上で作業を
する可動機械と,現場から離れたところで油汚染した堆積物を処理し,きれいになったも
のをビーチへ戻す機械がある。
・バキュームカーは溜まった油やオイルだめに集められた油を回収する。
195
図5-41 ビーチ清掃車(after ITOPF, 1975)
エレベーティングスクレーパー,フロントエンドローダー,バックホー,浚渫機,泥さらい機,
バキュームカーは,直接回収,運搬することができる。グレーダー,ブルドーザーは,処理物を
動かし,それをさらに別の機会で回収,運搬する。
どんな場合でも,経験を積んだオペレーターによるテストランやトライアルをして,どの機械
が適しているかを決める。同じ機械でも現場の堆積物の種類,ビーチの傾斜,後浜すなわち大潮
のときに洗われる浜と上限と暴浪が達する限界の海岸線との間の部分の違いにより,適性に大差
が出るからである。
Arctic Waters Field Guide
5-58
表5-15 ビーチ・クリーニング・マシーン(海岸洗浄機)
装置(機械)
技術(方法)
適性(特徴)
可動式リフター/
車を移動しながらベルト,ブラシ,熊手, 通常固くなった,風化した油に
ソーター(選別機),
スクレーパー,フォークなどで,または
限られる,簡単にきれいな堆積
熊手
水噴射で堆積物から油を分離して油や
物と分離できるもの
(油汚染した)堆積物をピックアップす
る
可動式真空吸引装置
真空吸引装置は,スロットあるいは同様
平らで固いビーチ上の浅い油
の吸引装置を可動式プラットホーム(通
層(油だまり)に限定される
常はタンクローリー)に搭載したもの
196
可動式ウオッシャー
車を前進させながら,油にまみれた堆積
油の種類は問わず,油で汚れた
物をピックアップし,洗浄処理し(きれ
砂浜の上層もきれいできる;通
いにし),元に戻す。
常,処理能力(スループット)
は低い
オフサイト・
油にまみれた堆積物をビーチから回収
処理する堆積物の量は問わな
ソーター(選別機)
し,選別したりふるったりし,きれいに
いが,風化した油の処理のみ行
なったものを元に戻す;油廃棄物は処分
う;処理能力は低い
する
オフサイト・
油にまみれた堆積物をビーチから回収
処理する堆積物の量,油の種類
ウオッシャー,
し,洗浄処理し,処理したものは元に戻
は問わない;処理能力は低い
オフサイト処理機
すか処分する
図5-36から5-41は,ガイドとして示してある。オペレーターは,その場に即したクリ
ーンナップ法を提案したり実際に行ったりできる。
の植生をカットする方法は,労働集約的な方法で,沼地(低湿地)や海草などが生えている
ところに適用される。この方法は,油がその場所に留まっていると,それに触れた動植物などに
被害が出る恐れのあるところ,あるいは油や油のついた植物が流動的で,隣接する健康な(まだ
油の被害を受けてない)生物に被害を与えるおそれのあるところで適用する。油のついた枝をカ
ットするときは,根を傷つけないように注意する。処置後の植物の生育(回復)を遅らせてしま
うからである。
Arctic Waters Field Guide
5-59
の吸着剤を使う方法は,油膜が上陸しそうな海岸沿いに吸着剤を並べて油を吸着させる方法
(保護モード)と,既に陸に打ち上げられてしまった油を吸着剤で吸い取る方法(清掃(クリナ
ップ)モード)とがある。市販されている吸着剤としては,パッド,ラグ,毛布,ロール,スイ
ープ(モップ),枕,ブーム(オイルフェンス)などがある。藁やピートなど,現地で調達できる
素材で吸着させることもあるが,このような自然素材のものは市販されている吸着剤に比べて効
果や効率が悪い(劣る)ことが多い。
吸着ブームやスイープ(モップ)は,通常杭や錨で固定する。そしてそれを一列あるいは並列
に並べ,水際に波の動きに合わせて動くフローティング・バリヤーを築く。または,個々の吸着
197
剤を杭につないで,潮間帯で波に漂わせることもできる。
保護モード,清掃モード,どちらの方法においても,吸着剤で油を集め,それを回収し処分す
る。ものによってはリサイクルできる(きれいにし,再利用する)吸着剤もある。この方法は,
吸着剤の供給に限りがあるときや,事故処理現場が遠隔地の場合には適さない。
物理的回収法における制約/限界
手作業や機械による回収作業では,そこに生えている植物を折ったり,油を踏みにじって地中
(堆積物中)に混ぜ込んだりという弊害を与えてしまう。多くの人手を要する清掃作業では,後
浜の砂丘に生えている植物をたくさんの人が踏みつけだめにしたり,近くの環境資源,例えばこ
のあたりで生息している鳥たちなどを傷つけてしまう。
油にまみれたり濡れている岩盤,中礫/玉石海岸は大変滑りやすく,足を踏み外したり,滑っ
たり,落ちたりしやすいので,注意が必要。安全上の理由から,真空吸引法は揮発性油(精油)
回収には適さないし;ポンプでくみ上げることが出来ない油の回収には適さない。
吸着剤は大量の油と接触したときは,すぐ吸着限界に達してしまう。油の量が比較的少ない場
合でも,頻繁に吸着剤の交換が必要になる。これは労働集約的な作業で,毎日大量の廃棄物が発
生する。
Arctic Waters Field Guide
5.7.4
5-60
物理的処理方法-現地処理
このグループに属する各物理的な現地処理法(技術)の目的は,風化や自然分解が進むように,
油の性質を変えたり,油を潮間帯に移動することである。
ミキシング
堆積物の移動
焼却
このグループに属する処理法の一番の特徴は,運搬し処分しなければならない油のついた処理
物が原則的に(基本的には)出ないことである。
分散剤,栄養増強剤,バイオレメデーション(生物修復)による方法も現地処理の方法ではあ
るが,化学的/生物的処理方法(対処技術)の項で説明する(セクション5.7.5)。
表5-16には,各方法の目的(ねらい)と適用例が処理する海岸線の種類や油の性質との関
198
連でまとめてある。
Arctic Waters Field Guide
5-61
表5-16 物理的現地処理一覧
技術(方法)
ミキシング
目的(ねらい)
最適な使い方
地表及び地表面下の油を掘り返して日にさら
・砂浜または粗砂海岸
し,蒸発(濃縮)や自然分解を促進する
・少量の中質油から重油まで
・(地中に)埋まっている油
堆積物の移動
油や油にまみれたものを,自然の力(波)がよ
・砂浜または粗砂海岸
り働く場所へ移動して,自然分解を促進する
・外海に開けている海岸(線)
・普通の波が届かないところに
埋まっている油
焼却
現場で焼却することによって,油を除去または
・丸太,ごみ(瓦礫)
量を減らす
・大量の油
現地処理が適切かどうかの評価は,油を移動させなかった場合はどうなるかを考える。特に,
現地処理を施すことで油の風化や自然分解の速度に変化を期待できるか(風化や自然分解を促進
できると期待できるか)で評価すべきである。
ミキシングや堆積物を置き換えることの利点は,ビーチから何も運び出さないこと,標準的な
農業機械や土木(掘削)機械が使えることである。また,狭い場所にある油汚染した堆積物を水
中でかきまぜる(撹拌する)ことができることである。
のミキシングでは,地表及び地表面下の油汚染した堆積物をビーチの別の場所に移すことな
く,掘り出し,日にさらし,かきまぜる。この方法は,“ティリング(耕作法)”あるいは“エア
レーション(通風法)”としても知られている。
Arctic Waters Field Guide
5-62
の堆積物の移動では,土木作業用の機械を使って,油汚染した堆積物を地表あるいは地表面
下の自然の力による摩滅や風化作用から守られている場所から潮間帯のような守られていない場
所へ移す。地表あるいは地表面下の油汚染した堆積物を掘り返すには,
円板付きの機械やまぐわ,
すき,レーキ(熊手),フォークなどの農作業用の機械を使う。フロントエンドローダー,グレー
199
ダー,ブルドーザーのような土木作業用機械は,油汚染した処理物を別の場所へ移すのに使う。
これらの方法は“サーフ・ウオッシング(波洗浄法)”と呼ばれている。
ミキシングと堆積物の移動は,特に下記のような場合に有効:
・油汚染した堆積物が普通の波が届かない場所にある,つまり嵐あるいは大波(高潮)のと
きに浜が油で汚染した。
・油あるいは油汚染した堆積物が埋まっている,あるいは油が通常の波があらう位置より下
に浸透している。
・大量の油や油汚染した堆積物を回収した後,さらにきれいにしたいとき。回収作業後の残
骸,残りの処理。
・すぐにも嵐が来そうなとき,満潮が近いとき
の燃焼(処理)は,油が(自然に)溜まっているときや,油だめ,トレンチなどに油を集め
たときに適用する。ビーチでは油だけでは完全燃焼しないので(燃焼しつづけることができない
ので),事前に丸太やデブリ(この場合は木くずなどのゴミ?)などの可燃物を油につけ,燃やす。
燃焼(処理)は,ウエットランド(湿地,湿原)の植物がひどく油で汚れてしまった場合にも適
用される。
Arctic Waters Field Guide
5-63
(現地処理)の制限/限界
ミキシングと堆積物の移動(位置換え)の目的は,埋まっている油の劣化を遅らせないために,
自然(の力;日,風雨,波など)にさらすことである。この方法は,生物に影響を与える可能性
があり,また大量の油が放出し,再び浜やその周辺が油で汚れてしまう場合には不適当である。
油で汚れた処理物を海岸線に動かしてはならない。潮間帯より下に生息する健康な(油の被害を
受けてない)生物などのほかの環境資源にダメージを与えてしまうからである。
土が乾いているときにひどく油にまみれた沼沢地の植物を燃やすと,根まで破壊してしまって,
エコシステムに多大な被害をもたらしてしまう。土が湿っていれば,根は熱から守られ,燃焼(処
理)から早く原状回復ができる。
(燃焼処理による)煙の発生も,たとえそれが警報が出されて人体に影響がないとしても,問
題となるかもしれない。一般的に燃焼処理をするときは,特にそれが大規模な場合は,自治体の
許可が必要となる。
200
Arctic Waters Field Guide
5.7.5
5-64
化学的/バイオ的対処技術(対処法)
このグループに属する対処方法の目的は,油を変化させて集めやすくすること,あるいは自然
の風化作用を促進することである。このグループに含まれる方法は:
分散剤
沿岸用クリーナー(洗浄剤)
凝固剤,粘弾性剤
栄養増強剤(肥料)/バイオレメデーション
栄養増強剤(肥料)とバイオレメデーションに使う商品は,オイル流出と関係なく開発された
商品である。それ以外の溶剤は,流出オイル処理専用につくられた市販品である。
表5-17には,このグループの基本となる4つの方法(技術)について,目的,適用例が海
岸線のタイプと油の性質に関連してまとめてある。
分散剤を使用する方法とバイオレメデーションについては単独で,それ以外は,薬剤処理を施
した後,回収する。
化学薬品を頻繁に使用することは政府によって制限されており,通常しかるべき承認や許可が
必要である。
Arctic Waters Field Guide
5-65
処理剤を選ぶときは,下記との兼ね合いで評価を(判断)する:
1
エコシステムに影響する物質(薬剤が)入っている。
2
(海)岸から水(海)に油が移動する。
表5-17 化学的,バイオ的方法一覧
技術(方法)
目的(ねらい)
最適な使い方
油が細かい粒子になって海水に分散 ・軽油から中質油まで,劣化し
分散剤
沿岸用クリーナー
され,自然分解,風化される。
てないもの
クレンザーで油を基底(地表)から
・粗砂海岸
浮かび上がらせて回収する。
・固形化してない
・あらかじめ集められている
201
油の粘性を買えて,回収しやすくす ・砂浜または混合堆積物の海岸
凝固剤,粘弾性剤
栄養増強剤(肥料)
る。
・中質油
自然の生分解を肥料(窒素,リン肥
・どの海岸(線)でも可
料)を加えることで促進する。
・少量の残留オイル
/バイオレメデーション
Arctic Waters Field Guide
の分散剤と
5-66
の沿岸用クリーナーは,油で汚れた部分に直接まいてそのままにしておくか,
またはフラッディングやウオッシングする前の予浸剤として使う。
波によってミキシング(処理)が終わらなかった場合は,溶剤と油をよく混ぜることで,ミキ
シング(処理を施すのと同様の)効果が得られる場合もある。
分散剤が最も効果的なのは,粘性の低い劣化してない油に対してである。粘性が中庸の原油や
粘性が高い油に対しては,効果が薄い。
沿岸用クリーナーは,吸着剤やスキマーを使う油回収処理と一緒に使われることもある。分散
剤処理された油と違って,クリーナーの混合物(クリーナーが混合された油)は回収することが
できる。クリーナーは中から重油に対して効果的で,軽油処理には適していない(図5-42)。
の凝固剤は,エラストマイザー(固化剤),ゲル化剤,流出オイル回収剤として知られてい
る。凝固剤は油を液体から固体に変化させ,油を回収しやすくしたり,流れ出したり,広がるの
を防ぐ。粘弾性剤や弾性改質剤は,油の弾性を変化させる。凝固剤と粘弾性剤は,目の粗い(す
き間が大きい丸いしや巨岩の)堆積物海岸には,油が堆積物に浸透して回収困難になるので,不
向きである。凝固剤や粘弾性剤は軽油から中質油処理に向いている(図5-42)。凝固剤や粘弾
性剤の使用が寒冷地(期)に効果的か適切かについては,試していない(ので分からない)。もし
凝固剤や粘弾性剤が効果があると考えられるならば,小規模のフィールドテストでその実現可能
性と実用性を試してみるとよい。
Arctic Waters Field Guide
5-67
202
大変効果的
やや効果的
あまり効果的でない/適切(使える)
効果なし
図5-42 油の種類と溶剤の適性の関係
のバイオレメデーションは,自然発生した微生物(バクテリア)が酸素を使って炭化水素か
ら水と二酸化炭素に生成する働きで,このプロセスは,通常,油/水の接触面で,酸素,養分,
大気に触れている油に左右される(制限される)。この3つのファクターが増加すると,バイオレ
メデーションが加速される。
肥料には液体と固形とがある。ペレット剤のような固形肥料は,芝やフィールドの発芽(促進)
剤として広く使われている。肥料は水と接するとゆっくり解け出し,水溶性の養分となってじわ
じわと広がっていく。液体肥料は海岸などでペイントスプレーやバックパックといった多種市販
されているスプレー容器を使って散布する。
Arctic Waters Field Guide
5-68
化学的・バイオ的処理方法は,海岸(線)から大量の流動的オイルを回収した後の残留オイル
を処理するための方法である。
定期的(週間あるいは月間ペースで適宜)に養分を供給することになる(かもしれない)。
203
肥料は地表や地表面かのオイルを劣化させるために使われるが,ミキシングや油を粉砕する方
法と組み合わせると,より効果的である。ミキシングすることで,地表のバクテリアが爆発的に
増加する。
制約(制限)/限界
異なった環境条件に合わせて様々な溶剤や薬品が開発されている。例えば淡水用のもの,低温
仕様のもの,粘性の高い油や乳化や風化が進んだ油用などがある。
洗剤と分散剤は相反する働きをする。つまり良い(効果的な)洗剤(地表クリーナー)は分散
剤としては不良であり,良い(効果的な)分散剤は洗剤としては不良である。一度分散剤を使用
すると,油は気質や吸着剤,ディスク型のスキマーの表面には付着しなくなるが,機械による回
収作業に使える海岸用クリーナーもある。
凝固剤や粘弾性剤の効果は,キュアタイムと接触面による(左右される)。混合が正しく行われ
ないと,固形,液体,半固形の油が混ざったものが生成されてしまう。また乳化あるいは風化し
た油,どろどろした重油などに対しては,溶剤と油がよく混ざらないため,
(凝固剤等の)効果は
半減する。凝固剤等を使う方法は,油汚染した植物の処理には不適切である。凝固した油が健康
な植物や動物に付着し窒息させてしまうからである。
バイオレメデーションは効果的であるが,他の処理方法と比べ,ゆっくりと作用する。また気
温が低いとバイオレメデーションの速度が落ちるので,養分を増強するのは夏の暑いときが効果
的である。
パート B
技術サポート(知識編)
Arctic Waters Field Guide
6
流出オイルの動きと追跡
Arctic Waters Field Guide
6
6-1
6-2
流出オイルの動きと追跡
6.1
6-1
風化作用と流出オイルの動き
6-3
6.1.1
水面(海面)のオイル
6-4
6.1.2
氷の中のオイル
6-5
204
6.1.3
6.2
(海岸に)打ち上げられたオイル
流出オイルの動き
6-6
6-7
6.3 (流出オイルの)発見(探知),監視,追跡
6-9
6.4
軌道分析
6-11
6.5
サンプリング
6-13
6.6
座礁したオイルに関する書類の作成,記述の仕方
6-14
Arctic Waters Field Guide
6.1
6-3
風化作用と流出オイルの動き
実践的な戦略を立てるためには,水中や氷中,岸に打ち寄せられた油が時間とともにどうなる
か知ることが重要である。
風化作用は物理的なプロセスと化学的なプロセスとが合わさったもので,流出事故後,その物
理的・化学的プロセスによって油の性質が変化していき,油は自然の力によって劣化していく(図
6-1)。
図6-1 オイルの風化
処理作業をする上で重要な自然の(風化)のプロセスは:
・分散
・乳化
・蒸発(蒸散)
205
・拡散
・沈殿,堆積
Arctic Waters Field Guide
6-4
風化の最終段階では,流出オイルは通常,次のような究極の運命をたどる(究極の形になる,
次のような末路をたどる)。:
・生分解
・酸化
風化の速度は下記(条件)による:
・オイルの種類(粘性や流動点といった物理的特性;ワックス含有といった化学的特性)
・流出オイルの量
・オイルの表層(地表,海面)に出ている割合
・波,海流(潮),氷,天候(温度,風)条件
・オイルの位置(水面か水面下か;氷の上,中,下か;海岸上か海岸の堆積物に埋まってい
るか)
ガソリン,航空機燃料,ディーゼルといった軽いオイル(non-persistent oils)は,大気にさ
らすと通常はすばやく風化する。このような純正オイルに含まれているライトフラクションは,
大気にさらすと直ちに蒸散(揮発)する。温度が高くなると,あるいは風速が増すと,それだけ
蒸散(揮発)が早くなる。無風状態では,温水(0°-5℃)中の5%-20%のディーゼル燃
料は2日間で蒸発し,冷水(-20°-0℃)中では4-5日間で蒸発する。
重い(粘度が高い)オイル(persistent oils)は,風化による分解はゆっくりである。もし乳
化が起こっていれば,水と油が混ざって体積も増え物理的特性も変化しているので,スキミング
や現地焼却,分散剤処理等の処理法も有効となる。
6.1.1
水面のオイル
水面あるいは氷中のオイルがどのように動くかは,オイルと海水の比重によって決まる。オイ
ルが海水よりも軽いときは水面に浮かんで風化される。オイルが海水よりも重い場合は,水中に
沈んで分解され,風化作用はほとんど働かない。沈んだオイルはゆっくり分解される。オイルが
海水とほとんど同じ比重の場合で浮かんでいるときは,オイルよりも軽い淡水に触れると沈んで
206
しまう。
Arctic Waters Field Guide
6.1.2
6-5
氷中のオイル
氷の下に浮いているオイルは,流氷原のでこぼこの下面に沿って移動している。オイルが流氷
の下面に沿って移動するためには0.4m/s以下の潮の流れが必要で,氷のとんがり②(ridges
or keels)に流れを遮られなければ,オイルは氷の下面の窪み(pocket)に溜まっていく(下図
①参照)。
氷は氷と海水の接面で形成されるので,オイルも一緒に凍って氷の中に取り込まれる。流氷の
表面(上)の氷がとけ,下側に氷が形成されていくと,氷の中に閉じこめられたオイルは次第に
上に上がっていき③,ついには氷の表面に出現する。氷の中の海水路や裂け目をオイルが上って
いき④,表面に出現することもある。
氷の中の海水路やアザラシの穴といった氷の裂け目をオイルが通っていくと,氷の張ってない
水面⑤や氷の表面へオイルが流れ出す。氷下のオイルの流れがとぎれなければ,氷を突き破って
流れ出したオイルは,氷の溝(水路)に集まってくる。氷が形成される季節では,新しい氷が油
膜の下にできてくる。
図6-2 氷中と氷下のオイル
Arctic Waters Field Guide
6.1.3
6-6
岸に打ち寄せられたオイル
海岸では,オイルは堆積物中に浸透していくが,それは堆積しているもののサイズとオイルの
207
粘性に関係している。砂浜に浸透していくのはガソリンやディーゼルオイルのような軽油だけで
あり,玉石や中礫が堆積している海岸では,非常に粘度の高いオイルを除いては,ほとんどのオ
イルが堆積物中に浸透していく。海岸の地表にあるオイルは風化や波,風の物理的影響を受ける
が,堆積物に浸透したり埋まってしまったオイルは,風化作用から守られて,劣化が遅く,何十
年もかかることがある。
図6-3 岸に打ち寄せられるオイル
ビーチに打ち上げられたオイルは堆積物と混ぜ,また海に戻す。もしオイルと堆積物の混合物
が海水よりも比重が重ければ,岸に近いゾーンに堆積する。
気温が低いときは,オイルは氷の足元に閉じこめられ,それが氷の表面に跳ね上がるかもしれ
ない。
Arctic Waters Field Guide
6.2
6-7
流出オイルの動き
海面のオイルは風や海流(潮)の影響で広がり分散する。海水は空気より重いので(密なので),
オイルの移動や拡散について表層流のほうが影響が大きい(引っ張る力が強い)。オイルが表層流
と同じ速度,風の3%あるいは30分の1の速度で移動するとき,もし風と海流が同じ方向に移
動しているならば付加的力が働き,もし海流と風が違う方向に移動しているならば,2つの力を
組み合わせた力が働く(図6-4)
。
208
図6-4 風と潮の流れによって海面を移動するオイル
川では水は常に一方向に流れるので,水面の流れも比較的まっすぐである。水の流れによって
オイルは下流へ流れ,風によって土手のほうへ追いやられる。ただし,河口付近では(海岸に近
い川では)潮の影響で上げ潮期には“上流へ”流れの向きが変わるので,事故処理を計画すると
きは,この流れに注意する。
(また)一般に川の流れは下流に向いているが,水路内では流れのパ
ターンが変化するので,オイルの移動は場所によって速くかったり遅かったりし,また淀みに集
まっていく。
Arctic Waters Field Guide
6-8
一般的に氷のない海や湖では,オイルは複雑に移動する。地理的に狭い範囲でもここからあち
らへと流れが変化する。海では同じ地点でも潮の満ち干によって流れが変化する。
氷の浮かんでいる海では,オイルは流氷と同じ速度で移動する。流氷はより風の影響を受けや
すいので,風速が同じ場合は,海水に浮かんでいるときより,流氷の間にあるほうが,オイルは
速く移動する。
北国では,春になると川が解け出した氷塊でいっぱいになり,川が氾濫する(土手まで水が溢
れてしまう)
。その結果,流出オイルが普段は陸であるところまで(陸にある動植物にまで)広が
ってしまう。
Arctic Waters Field Guide
6.3
6-9
(流出オイルの)発見(探知),監視,追跡
監視の目的は,油膜の位置を突き止め,その移動の方向を特定することである。海面の油膜を
209
追跡するには,下記を含むいろいろな方法がある。:
・オプティカル(目で見て):視覚的観察(監視),静止カメラあるいはビデオカメラ
・オプティカル(目で見て):赤外線カメラあるいはIR/UVシステム
・レーザー(光線)センサー
・マイクロウェーブ・ラジオメーター,レーダー
・衛生画像
監視と追跡には,対象全域を完全に繰り返しサーチする組織的なフライトパターンが必要であ
る。この方法では氷の中や上にあるオイルは捉えることができないが,暗視カメラやレーザーセ
ンサーでなら,有効なデータを得ることができる(氷中や氷上のオイルを捕捉することが出来る)。
監視や画像,センサーデータの読み取り(解析)には特別な知識が必要なので,経験のある作
業員に任せる。色のコントラストがはっきりしているので,氷海原に浮かんでいるオイルを空か
ら識別するのは,通常簡単である。
流出オイルの比重が海水よりも重い場合は,水面下に沈んでしまうので,発見(探知)と追跡
は大変難しく,不可能なことも多い。
同様に,
(流)氷の下にあるオイルの検知と追跡も難しく,ダイバーまたはカメラを搭載したリ
モートコントロールの水中ビークルが必要である。
海面または氷の中にあるオイルを記述・記録するには,下記の標準用語を使う(Allen and Dale,
1997 による)。
油膜の大きさ
<0.1 0.1-1.0 1-10 10-100 100-1000 >1000
覆っている比率
海面のオイルに覆われている比率,パーセンテージで表す
油膜の厚さ(厚み) (表6-1参照)
油膜の状態
タールボール-まだら-列になっている-連続している(べた)
Arctic Waters Field Guide
6-10
表6-1 油膜の厚みとオイルのおおよその量
油膜の色
おおよその厚み(㎜)
おおよその量(㎥/㎢)
シルバー/グレー
0.0001
0.1
虹色
0.0003
0.3
黒-焦げ茶-オレンジ“ムース”
0.1 より厚い
100 以上
210
海上,川,湖,氷海原の流出オイルについて記述するときは,通常,エリアを同種の油膜ごと
に分け,それぞれを別個に記述することが必要である。
Arctic Waters Field Guide
6.4
6-11
軌道分析
軌道分析の目的は,流出オイルの制御,保護戦略を展開した場合,オイルがどのような移動経
路をたどるか予測することである。
海上では,単に風と海流の移動速度と方向を分析することで,
海上でのオイルの動きを予測することができる(図6-4)。適切な風と海流のデータが入手でき
れば,軌道モデルはより精度の高い予想(値)となる。
一般的に湖では,水の流れは重要なファクターではないので,流出オイルの軌道を予測するの
はより簡単である。風速と風向が油膜の動きに影響を与える主なファクターだからである。
川では,水の流れが油膜の動きに影響を与える主な力であり,通常は(例外もある)下流に向
かって流れていく。風は,オイルが川のどちら側を流れていくかを決める重要なファクターであ
る。先頭の油膜の辺が下流の観測点に到達する時間を予測するのに,表層流の最大流速のデータ
を使う。北極圏にある川では,季節による特徴が顕著で(図6-5)
,冬の間は❶のように流れが
遅く,春の氷が解け始める季節には❷のように数値がはねあがり,夏の間に❸のように放水量(流
水量)は徐々に少なくなる。
図6-5 カナダマッケンジー川の放水量(流水量)の季節変化
Arctic Waters Field Guide6-12
211
氷海原に浮かんでいる流出オイルは,流氷と同じ方向,同じ速度で移動する。氷と氷の間が広
いところ以外は,流氷は風の影響をもろに受けるが,オイルはほとんど影響を受けない。氷と氷
の間隔が広いところでは(間隔が広く水路のようになっているところでは),オイルは風によって
そのすき間(氷の水路)の片側へ流される。
水中のオイルの動きを予測するには,亜表層流についての知識が必要である。しばしば亜表層
流は表層流とは異なったスピード,異なった方向に移動する。例えば河口や干潮のある(潮の影
響を受ける)入り江では。また氷の下のオイルの移動については,氷と氷の下を流れる海水の動
きに関するデータが必要である。このような状況で有効な予測値を得るためには,流れを計測す
る必要があるだろう。
どの軌道分析あるいは軌道モデリングにおいても,最悪の状況を想定すべきである。流出オイ
ルの軌道を予測するには,風,天候,海や海流の状態と言った不確定要素を考慮に入れなければ
ならない。
Arctic Waters Field Guide
6.5
6-13
サンプリング
流出オイルを処理する場合には,下記の理由からサンプルを集めること(Swedish Coast Guard,
1993 スウェーデン沿岸警備隊):
健康と安全
法的責任
経済的責任
事故処理の立案
処理(対象)物が可燃性,あるいは有毒性であるかもしれない
現場のサンプルと流出元と疑われるところのサンプルを比較する
汚染原因者に対する補償請求算定基準のための分析
物質特性のデータは作業装置(機械)の選択に役立つ
短期環境保護
オイル特性で急性のダメージ効果を判断できる
長期環境保護
オイル(の特性)を見極めることで,長期的環境修復計画を展開できる
広報(情報提供) 流出元,オイル特性,(環境に与える)影響の明確化
処分
オイルの量,特性から適切で安全な処理方法が分かる
Arctic Waters Field Guide
6.6
6-14
座礁したオイルに関する書類の作成,記述の仕方
座礁したオイルの状態を明確にすることは,適切な海岸処理作業を計画する上で,大切なこと
212
である。
海岸,湖岸,川岸のオイルを系統的に文書にする技術が開発されている。このセクションに記
載 さ れ て い る 文 書 作 成 の 方 法 は , カ ナ ダ ( カ ナ ダ 環 境 省 ), ア メ リ カ 合 衆 国 ( National
Oceanographic and Atmospheric Administration 国立海洋大気管理局)
,ヨーロッパ諸国の政府
で採用されている。
その方法は,
(海)岸をセグメントに分割して,オイルの位置,性質,量を標準語彙と定義を使
って記述するのである。記する主な項目は,オイル(油膜)の幅と被覆(分布)についてである。
オイル(油膜)の幅
幅は,海岸区分の中の油で覆われているエリア,または帯の平均の幅。
もし複数の帯やエリアが岸をまたがっいるときは,その幅の合計。
広い
6メートル以上
中間
3-6メートル
狭い
0.5-3メートル
とても狭い
0.5メートル未満
オイル(油膜)の分布
オイルの分布は,オイルによって覆われている帯またはエリア内のオ
イルの割合(パーセンテージ)。複数の帯がある場合は,そのセグメン
トの中でオイルの状態を最もよく表しているところの分布状態を記載
する。
連続している
91-100%
とぎれている
51-90%
まだら
11-50%
散在する
1-11%
ほんのわずか
1%未満
Arctic Waters Field Guide
6-15
経験や訓練を積まないと,水面のオイル分布を見積もるのは難しい。図6-6に水面のオイル
カバー率の例を示した。票6-2には,オイル(油膜)の幅と分布を合わせたものを簡単にまと
めてある。これらのデータは,低空低速飛行のエアクラフトから,または地上の調査で得ること
ができる。
213
分布率
例
連続している
(91-100%)
95%
とぎれている
(51-90%)
70%
まだら
(11-50%)
30%
散在する
(1-10%)
5%
図6-6 水面のオイル分布率の例
Arctic Waters Field Guide
6-16
表6-2 水面を覆うオイル(油膜)のマトリクス
オイルで覆われているエリアの幅
オイル分布
広い
中間
狭い
とても狭い
(>6m)
(3-6m)
(0.5-3m)
(<0.5m)
連続している(91-100%)
重い
重い
中間
軽い
とぎれている(51-90%)
重い
重い
中間
軽い
まだら(11-50%)
中間
中間
軽い
大変軽い
散在する(1-10%)
軽い
軽い
大変軽い
大変軽い
ほんのわずか(<1%)
大変軽い
大変軽い
大変軽い
大変軽い
地上調査では,オイルの厚みを使って座礁したオイルの実際の量を文書かすることができる。:
オイルの厚み
オイルの厚みとは,帯またはエリア内のオイルの平均値または主なオイルの
厚みである。
214
オイル溜まり
一般的に fresh oil またはムースからなる1センチ以上の深さに溜まったもの
カバー
厚さ1センチから0.1センチ
コート
厚さ0.1から0.01のコーティング;粗い堆積物や岩盤についているの
を爪で剥がすことができる
ステイン
0.01センチ以下;粗い堆積物や岩盤から簡単に剥がす(こすり取る)こ
とができない
フィルム(膜)
透明または半透明のフィルム(膜)
海岸にしみこんだり埋まったりしたオイルは,ピットやトレンチ(穴や溝)を掘ることによっ
てのみ,見つかって記録される。
Arctic Waters Field Guide
7
オイル流出事故の通知(周知,届,広告)と対処作業(方法)決定のプロセス
Arctic Waters Field Guide
7
7-1
7-2
オイル流出事故の通知(周知,届,広告)と対処作業(方法)決定のプロセス
7-1
7.1
はじめに
7-3
7.2
通知
7-4
7.3
ディシジョン・プロセス
7-5
7.4
事故処理の目的
7-8
7.5
実現可能性と実質的な環境への利点・利益(恩恵)
Arctic Waters Field Guide
7.1
7-10
7-3
はじめに
どんな状況でも,効果的な流出事故処理をするためには,2つの別個で明確な行動(アクショ
ン)が必要である。:
1
最初の連絡段階で,関係各所へ知らせなければならない。
2
ディシジョン・プロセスで,処理作業全般と処理作業に携わる各人の当面及び長期的な
目的を明確にしなければならない。
215
Arctic Waters Field Guide
7.2
7-4
通知(連絡)
関係政府への連絡は最優先事項であり,法的にも義務づけられている。オイルの探査,生産,
移動,輸送に関わる全ての人は,正しい連絡手続(手順)を認識していなければならない(知っ
ていなければならない)
。
もし流出量が大変少量(2,3バーレル以下)でなければ,あるいは流出元でただちにオイル
を安全に封じ込めることができない場合には,流出事故を発見したときにまず第一にやるべきこ
とは,担当責任者や事故処理に関わることになる責任者に知らせることである。
大概は,まずスーパーバイザー(管理責任者)に知らせるべきである。
(知らせを受けた)管理
責任者は,下記への連絡を含む一連の連絡手続を行う。:
・流出事故対処チーム(団体)
・地方自治体
・場合によっては,関係官庁
・近隣国の関係各局
・一般大衆及び地元の関係団体等
Arctic Waters Field Guide
7.3
7-5
ディシジョン・プロセス
オイル流出事故処理を統括するには,具体的な目標(ゴール)に従って作業活動を展開できる
ようなディシジョン・プロセスが必要である。事故処理(事故対応)の最終目標は,流出オイル
の被害(悪影響)を軽減することである。事故処理(事故対応)は,作業計画の同時進行的評価
と必要に応じた応用を考慮に入れた組織的アプローチで実行されなければならない。
目的設定による(事故処理対策の)運営管理は,下記の論理的段階を踏まえたディシジョン・
プロセスを通して成し遂げられる。
1
情報を集め状況判断する
2
対処目的を明確にする
3
目的にかなった戦略を展開する
4
戦略を履行する上で適切な方法(技術,方法,戦術)を選択する
5
(選択した)方法(技術,方法,戦術)の実用性,実現可能性,安全性を,環境条件と
216
流出オイルの性質から検討する
6
実行プランを立てる
7
必要な(適切な)承認,認可,許可を取る
8
事故処理対応策を現場で実行する
このディシジョン・プロセスは,全ての流出事故対応エリア,海上,河川流域,海岸区分域な
ど具体的な作業単位で適用されなければならない。このアプローチ(取り組み方)は流出規模の
大小にかかわらず,同等に当てはまる(適用できる)。
処理(対処)目的,戦略,方法は,川か沿岸か,下流か岸に沿ってかなど対処エリアによって
変わる。また汚染の危険にさらされている環境資源の感受性,脆弱性や,氷の状態,海岸の種類
によっても変化する。
以下2ページには,ディシジョン・プロセスと連携した活動(作業)例を示してある。
Arctic Waters Field Guide
ステップ1
7-6
情報とデータの収集,状況判断
・海上や海岸の流出オイルの地域分布を,監視,追跡,空中からのビデオテ
ープ調査で特定する。
・sensitivity maps や resource databases から,正確なデータを引き出す。
・地元の知識を得る(現場に詳しい人を探す)。
・流出オイルの移動経路,被害を受けそうな環境資源,オイルの持続性を予
測する。
・安全性,環境的,経済的,文化的制約を認識する
ステップ2
目的の明確化
・局地的な(地域ごとの)処理目的を設定する。
・地域の優先順位を明確にする。
・許容できる(責任の持てる)回復と処理のレベルをはっきりさせる。
・現場での処理目的と優先順位を設定する(確立する)。
ステップ3
戦略を展開する
・目的と優先順位にかなった地域ごとの処理戦略を開発する。
・現場の処理目的にかなった現場の処理戦略を設定する。
217
ステップ4
対処法の選択
・処理(対処)目的と戦術を遂行する上で,妥当かつ有効な方法,戦術を明
確にする。
Arctic Waters Field Guide
ステップ5
7-7
処理作業(対処作業)の実現可能性と安全性を検討する
・提案されたオペレーションに影響する環境的(物理的),経済的,安全上の,
組織上の制約を明らかにする。
・提案されたアクションを行った場合の Net Environmental Benefit(実質的
な環境に対する利点・利益)を算出する(評価する)。
・現場の処理目的と戦術を遂行するために,提案されたオペレーションおよ
び手順が実用的な,実現可能かを判断する。
・提案されたアクションが安全かつ有効に行われないとき,目的や戦術を再
明確化する必要があるかどうか判断する。
ステップ6
処理作業(対処作業)計画を立てる
・地域ごとの長期処理プランを立てる。
・個々の(サイト,グループごとの)処理プランを準備する。
ステップ7
承認や許可を取る
・責任者またはコマンドチームから,処理プランの承認を得る。
・私有地に立ち入る許可を得る。
・処理物の廃棄,焼却など,その他の許可を得る(確保する)。
ステップ8
処理作業(対処作業)を実行に移す
・海上または陸上で処理作業を展開するための戦術を実行に移す。
Arctic Waters Field Guide
7.4
7-8
事故処理(対処作業)の目的
流出オイルの性質と分布に関する情報が集まったら,それがどういう事故であっても,まず下
記の全般的目的を含むディシジョン・プロセスにとりかかること。:
作業員及び一般人の人命と健康をまもる。
218
流出元でのオイルの流出を止める。
事故処理することで,オイル流出を放置しておくよりもダメージが大きくならないようにす
る。
安全で,効率よく,効果的な方法で妥当な資源を使う。
戦略を展開することによる地元の利益とプライオリティー(優先順位)を常に考慮する。
環境汚染を最小限にし,流出オイルから財産(環境資源,土地)をまもる。
破棄物の生産と扱い量を最小限にする。
事故処理作業には異なった地理的要素が含まれるので,プランナーや作業チームが作業目標を
明確にできるように,管理チームは具体的に目的を設定すべきである。
流出元で
オイルの流出元での処理作業における作業目的には,下記の1から4が1つ以上含まれる。:
1
流出オイルを自然風化させる。
2
流出オイルを封じ込め,回収する。
3
流出オイルを焼却する。
4
流出オイルを化学的に分散させる。
Arctic Waters Field Guide
7-9
水面,氷の中
流出元から離れたところでの処理作業の作業目的は,それが海,湖,川,氷中にかかわらず,
下記の1から4のうち1つ以上を含む。:
1
流出オイルを自然風化させる。
2
流出オイルの流れを遮断し,制御し,封じ込め,回収する。
3
流出オイルを焼却する。
4
流出オイルを化学的に分散させる。
氷があるないにかかわらず,上記4つの目的は,異なったところの別々の流出オイルに対して
同時に適用できる。
保護
219
特定の環境資源や汚染されそうな環境資源を流出オイルから守るための処理作業(事故対処作
業)の目的は,下記のどちらか1つである。:
1
流出オイルが環境資源に触れないようにする。
2
流出オイルと触れる環境資源を最小限にする。
海岸線処理
川土手や海岸線などの特別な場所を処理するための事故対処作業の目的は,下記のいずれか1
つである。:
1
油にまみれたエリアを自然回復にまかせる。
2
油にまみれたエリアを元の状態に修復する。
3
油にまみれたエリアの自然回復を促進する。
Arctic Waters Field Guide
7.5
7-10
実現可能性と実質的な環境への利益(恩恵)
ディシジョン・プロセスには,承認され最終決定される前に,前述したほかに2つの重要なス
テップがある。それは計画した活動の実際性と効果(あるいは実現可能性),提案した処理作業に
よる環境への影響(the Net Environmental Benefit)を評価することである。
実現可能性の評価には,ディシジョン・プロセスで明確にされた目的が提案された作業でどの
くらい達成できるかということも含まれている。もし定められた目標が達成できなければ,目標
を再検討しなければならない。このプロセスで戦術や処理活動が変更されることもある。
北極地方のほとんどは遠隔地にあるので,安全性と実際性という2つの重要な要素が,オペレ
ーションの査定には加えられる。もし目的に沿って作業を行うと作業員を危険にさらしたり,犠
牲になる環境資源が多いときには,この目的は再検討されなければならない。
処理(対処)作業の優先順位を決めるためのディシジョン・プロセスでは,地元住民から得た
地元の情報を考慮しなければならない(地元の情報,地元に関する知識を入れて決めなければな
らない)。流出オイルと処理作業が地元民の生活や経済活動に与える影響は,アセスメント全体に
かかわってくる。また,
(自然)環境と住民の生活,経済活動とは密接な関係にあるので,地元に
関する情報は,環境アセスメントの問題にも関係してくる。
オイル流出事故処理作業の実際性を考えるときには,次のような質問を投げかけてみる。:(す
220
なわち)
・ここは遠隔地であるか,つまり宿泊施設は第一次(作業)準備地点より離さなければなら
ないか?
・船は氷の中を(氷海原を)航行できるか?
・流出オイルは作業員,一般人,野生生物によって危険でないか?
・後浜から海岸へ直接行けるか?
・後浜は崖や高台でないか?
Arctic Waters Field Guide
7-11
・近くに適当な(作業)準備地点があるか?
・海岸地帯(shore zone)では機械で作業ができるか?
・どんなゴミが発生し,それは問題なく回収したり処理できるか?
・処理作業によって悪影響を受ける経済資源はあるか?
・処理作業によって悪影響を受ける文化的資源はあるか?
北極地方は経済環境が脆弱なので,少しの変化が住民や生活を支える活動に多大な,時に修復
不可能な影響を与えてしまうことが多い。したがって,事故処理プランは,提案された処理作業
がこの地域の環境や経済活動にもたらす結果を踏まえて,検討すべきである。この検討事項は正
式なプロセスとして認識され,自然回復率と処理作業案の結果を予測することに使われる。この
プロセスは一般的に Net Environmental Benefit 分析と呼ばれている(Baker, 1995)。この分析
で問われる主たる質問は:
・作業案は自然回復を促進するか,遅延するか?
である。
岩浜や塩湿地における処理作業に関する最近の研究では,処理作業や清掃作業によって環境が
より早く修復されることはほとんどないことが分かっている(Sell et al., 1995)。もし作業をす
ることによって,環境修復が促進されるのではなくむしろ遅くあるようであれば,作業内容を変
更するか,もしくは何もしないことである。
どんな事故処理作業でも,自然界の体系に何らかの影響あるいは変化をもたらしてしまう。処
理作業の結果として自然のエコシステムを変化させてしまう危険性は,海上よりも海岸や陸上で
の作業のほうが大きい。
221
Arctic Waters Field Guide
7-12
実質的な利益(net benefit)という考え方は,分析の第2段階で採用され,下記の質問を問う
ことによって,回復が遅れないかを確かめることができる。:
・どの処理ポイントにおいても,さらに作業をしたりオイルを回収したりすることで,ポジ
ティブ・イフェクトがネガティブ・イフェクトに変わらないか?
もし回収しやすいオイルをクリナップ,あるいは処理し,残りを自然風化に任せるならば,環
境修復は促進されるだろう。通常は,残ったオイルを除去,処理するのは,大量のオイルを除去
するよりももっと手がかかり,また環境に影響を及ぼす。
222
Arctic Waters Field Guide
8
北極圏の沿岸地域の特徴
Arctic Waters Field Guide
8
8-1
8-2
北極圏の沿岸地域の特徴
8-1
8.1
はじめに
8-3
8.2
バルト海
8-6
8.3
カナダ
8-11
8.4
グリーンランド
8-23
8.5
アイスランド
8-29
8.6
ノルウェー
8-37
8.7
ロシア
8-44
8.8
アメリカ合衆国(アラスカ)
8-57
8.9
写真集-北極地方の海岸
8-65
Arctic Waters Field Guide
8.1
8-3
はじめに
AEPSのメンバー国による北極地域の定義は(AEPSのメンバー国によって定義された北
極地方の境界線は),セクション2.2に記載してある。EPPRワーキンググループは,バルト
海と東カナダも北極地域に含めることを要請した。この地方の沿岸の物理的特徴をまとめること
によって,各国の地理的特徴と隣国の環境条件が明らかとなった。
内陸部では毎年氷の影響を受けている。内陸の五大湖(北緯42°)の湖岸やカスピ海北部(北
緯40°)ほか多くの河川(川や小川)がこの地帯にあるが,この地域の冬場の水温は,沿岸地
域の水温よりも低い。
寒気団は大陸を西へ横切って内陸の冷たい大気を東海岸へ運び,一方温かい大気は大洋を横切
って西へ移動し暖流の移動と相まって,西海岸の冬に穏やかな気候をもたらす。その結果,氷(山)
は西海岸より東海岸のより緯度が低いところまで発達してくる。アジアでは北緯43°のウラジ
オストックが氷山のできる南限とされているが,北米ではコッド岬の海岸,北緯41°50′が
南限である。それとは対照的に,西海岸では,北緯57°のアラスカ湾沿岸が南限で,北緯78°
223
のスバールバル諸島沿岸では1年中氷結しない。
北極海の表層流のパターンと移動方向は,それぞれ図8-1及び図8-2のとおり。
Arctic Waters Field Guide
8-4
このセクションでは,7つの地域の海岸や沿岸の特徴について記載している。また各地域をさ
らに細分化し,下記項目について表にまとめている。:
・沿岸の特徴
・波にあらわれるところ(海岸)
・氷結期
・潮位
図8-1 北極海の表層海流
Arctic Waters Field Guide
8-5
224
図8-2 北極海の流氷の動き(流れ)
Arctic Waters Field Guide
8.2
8-6
バルト海
バルト海は巨大なトラフで,氷河期にできた氷床で浸食され,氷が引いた後に海水が侵入して
今の海になった。沿岸は緩やかに起伏していて,浸食されている北部には堆積物が少なく,した
がってビーチは少ないが,南部エリアにはビーチがたくさんあり,氷に閉じこめられていた物が
たくさんある(たくさん堆積している)。バルト海への唯一の侵入経路は,デンマークとスウェー
デンに挟まれたデンマークの群島多島海にある狭い海峡である。沿岸地方には5000万人を超
える両国の住人が密集している。
バルト海内では吹送距離が比較的短いため,波のうねりは低くなる。沿岸地帯では潮汐は重要
な特徴ではなく,潮位はどこでも0.1メートル以下である。塩分濃度は低く,0.1-0.3‰
の範囲である。このエリアのほとんどが,氷結していない季節は5月から12月にかけてであり,
北部ではその期間が幾分か短く,南部の沿岸では少し長い。南部では氷の状態は不安定で,冬の
気候がどれだけ厳しいかによる。
バルト海は,下図のとおり4つの地域に分けられている。それぞれの地域は沿岸地域の特徴,
225
海岸線のタイプ,波打ち際,氷結期,潮位の観点から説明されている。
図8-3 バルト海
Arctic Waters Field Guide
ゾーン①
8-7
スカニア(Scania)沿岸
沿岸地帯の特徴
・起伏に乏しいが,堆積物が厚く,浸食されてできた崖が多い。
低地/海岸平野
・群島多島エリア
海岸線のタイプ
岩盤,砂浜,中礫/玉石海岸
氷結期
・4月から11月までは氷結していない
潮
・0.1m以下
位
226
Arctic Waters Field Guide
ゾーン②
8-8
ボスニア湾,フィンランド湾北部
沿岸地帯の特徴
・沿岸起伏に乏しい
低地/海岸平野
・堆積物は豊富でない
海岸線のタイプ
・群島,諸島が多い
・1カ所海岸の高いところ(300m)がある
岩盤海岸
氷結期
・通常,北部地方は5月から12月が氷結しない期間,スト
ックホルム周辺地域は4月から11月は氷結しない期間
潮
位
・0.1m以下
Arctic Waters Field Guide
ゾーン③
8-9
バルト海東海岸,リガ湾
沿岸地帯の特徴
・堆積物が豊富な標高の低い海岸平野
低地/海岸平野
・堡礁浜,ラグーン(潟)(礁湖)
,ダウガバ川河口にデルタ
デルタ,堡礁島/浜
海岸線のタイプ
砂浜,混合堆積物海岸,湿地
227
・通常,北部地域は5月から12月は氷結しない時期,南部
氷結期
は4月から12月にかけて氷結しない。
潮
位
・0.1m以下
Arctic Waters Field Guide
ゾーン④
8-10
バルト海南海岸
沿岸地帯の特徴
・堆積物が豊富な標高の低い海岸平野
低地/海岸平野
・何カ所か崖地あり,堡礁浜,ラグーン(潟)
(礁湖),湿地
・オーデル川,ビスワ川が北ドイツ平原を流れる
デルタ,堡礁島/浜
海岸線のタイプ
砂浜,混合堆積物海岸,湿地
氷結期
・沿岸地方は通常4月から11月は氷結期でない
潮
・0.1m以下
位
Arctic Waters Field Guide
8-11
228
8.3
カナダ
カナダの沿岸地方の地理的に広い範囲,西経53°から140°,北緯43°から83°が氷
の影響を受ける。
ハドソン湾とフォックス湾が,ハドソン海峡で大西洋とつながる広大な内海を形づくっている。
カナダ本土の北部,クイーンエリザベス諸島には無数の島々があり,夏でもほとんど氷にとざさ
れている。ニューファンドランド島からエルズミーア島にかけての東海岸は起伏に富んだフィヨ
ルドが特徴的で,西の北極海沿岸とハドソン湾沿岸は低地である。
中央から西部北極海沿岸は平板な海岸で,ボーフォート海沿岸は堡礁浜,ラグーン(潟)
(礁湖)
が集中しているツンドラ低地である。マッケンジー川は広大なデルタ地帯を流れている。東部は
起伏に富んだ岩石質の土地なので堆積物は少なく,唯一セントローセンス湾南部によく発達した
ビーチがある。
ボーフォート海沿岸沖10キロ地点には,夏でも凍ったままのところがある。氷結期は北へ行
くほど長くなり,クイーンエリザベス諸島北西部やエルズミーア島北部は,1年中氷にとざされ
たままである。クイーンエリザベス諸島中央部の大部分とハドソン湾では氷結しない開水面の期
間が3カ月以下で,南のラブラドルでは6カ月以上である。セントローレンス湾の氷結期は毎年
3,4カ月で,ファンディ湾で毎冬氷が形成されるのは2,3週間,年によってはずっと南のア
メリカ合衆国やナンタケット海峡と同緯度(北緯41°50′)の外海に面した入り江で氷が形
成されることもある。潮位は一般的に低く,ハドソン海峡(8m),フォックス湾(5m),アン
ガヴァ湾(15m),セントローレンス湾(5m)を除けば2メートル以下である。後浜から浜辺
にかけての傾斜が少ないので,ボーフォート海沿岸では夏の間の風によってできるうねりは重要
である。
Arctic Waters Field Guide
8-12
本書にカバーされているカナダ地方は下記の10地域に分けられている。それぞれの地域は沿
岸地域の特徴,海岸線のタイプ,波打ち際,氷結期,潮位の観点から説明されている。
229
図8-4 カナダ
Arctic Waters Field Guide
ゾーン①
8-13
ボーフォート海
沿岸地帯の特徴
低地または海岸平野,デルタ
堡礁島/浜,ツンドラ海岸
海岸線のタイプ
・ツンドラ低平原
・堡礁浜,ラグーン(潟)のある堡礁砂島,海水に浸ったツ
ンドラ低地,急激に浸食されたツンドラ海食崖
・マッケンジー川流域の広大なデルタ地帯
砂浜,ピート海岸
ツンドラ低地,ツンドラ海食崖
230
・1年中,海岸近くに北極の永久凍土があり,波が起こる限
氷結期
界点
・1-4カ月(8月から10月)が氷結期でない。
潮
位
・0.5m以下
Arctic Waters Field Guide
ゾーン②
8-14
カナディアン群島地域
沿岸地帯の特徴
・切り立った崖,崖錐斜面を伴った楯状地
高地または山岳地帯
・東から西にかけて起伏が減少
低地または海岸平野
・低地を除いては,一般的に幅の狭い混合堆積物海岸
海岸線のタイプ
岩盤海岸,砂浜
混合堆積物海岸
氷結期
・氷結しない期間は0-3カ月
・島と島の間の海峡の幅が狭いので,開水面エリアは少ない
潮
位
・1.0-2.0m
231
Arctic Waters Field Guide
ゾーン③
8-15
西部海岸平野
沿岸地帯の特徴
・堡礁砂浜のある南西部のバンクス島を除いては,狭いビー
低地または海岸平野
チを持つ低地。
デルタ,堡礁島/浜
・デルタ,網目状に流れる川,隆起浜が多い
海岸線のタイプ
岩盤海岸,砂浜,混合堆積物海岸,
中礫/玉石海岸
氷結期
・1年中,岸近くに北極の浮氷群が留まっているので,波が
起こるエリアが限られている。(最大吹送距離100km以
下)
潮
・1.0m以下
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン④
8-16
エルズミーア島北部
沿岸地帯の特徴
・起伏に富んだ棚氷海岸
フィヨルド海岸
・ところどころに岩の崖があるビーチもある
棚氷
・万年氷脚
232
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷ついた海岸
氷結期
・氷結しないときはほとんどない。
潮
・1.0m以下
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑤
8-17
東部フィヨルド海岸
(西エルズミーア島およびアクセルハイバーグ島を含む)
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯
フィヨルド海岸
・北部エリアに潮水氷河のある起伏に富んだフィヨルド海岸
・ビーチは一般的に狭い,またはない
・フィヨルドの先にデルタまたは潮間平野(平地)がある
棚氷,デルタ
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷浜,
混合堆積物海岸,砂干潟
氷結期
・氷結しない期間は北部で1カ月以下,南部で3カ月以下
233
潮
・0.5-0.3m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑥
8-18
ハドソン海峡,アンガヴァ湾
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯,
フィヨルド海岸,
・起伏に富んだフィヨルド海岸で,ビーチはほとんどない
・フィヨルドの先に小さなデルタ,または沖積平野
・アンガヴァ湾には広い干潟がある
デルタ,干潟
海岸線のタイプ
岩盤海岸,
混合堆積物海岸
中礫/玉石海岸,
巨礫海岸
砂干潟,泥干潟
氷結期
・氷結しない期間は3-4カ月
・東部の外洋に面しているエリアでは,時々荒波に襲われる
潮
位
・3.0-8.0m
・アンガヴァ湾-15m
234
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑦
8-19
ハドソン湾,ジェームズ湾,フォックス湾
沿岸地帯の特徴
高地または海岸平野
・low muskeg coast,ハドソン湾の南西部に広い潮干潟があ
る
・海岸低地は幅の狭い中礫/玉石海岸や泥干潟共有地
干潟
海岸線のタイプ
岩盤海岸,
混合堆積物海岸
中礫/玉石海岸,
巨礫海岸
砂干潟,泥干潟,湿地
氷結期
・遮蔽性内海
・氷結しない時期2-4カ月
潮
・0.5-0.4m
位
・フォックス湾-5m
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑧
8-20
ラブラドル,アウター・ニューファンドランド
沿岸地帯の特徴
・起伏に富んだフィヨルド海岸線
235
・ビーチはほとんどないが,フィヨルドの先端に小さなデル
高地または山岳地帯
タのある幅が狭い中礫/玉石海岸のあるところもある
フィヨルド海岸,デルタ
海岸線のタイプ
岩盤海岸,中礫/玉石海岸
巨礫海岸,砂干潟
氷結期
・海岸線は荒波にあらわれる,遮蔽性の湾がある
・氷結しない時期は6-10カ月で、南に行くほど長くなり,
ニューファンドランド島では11-12ヶ月氷結しない
潮
位
・1.0-8m(北へいくほど高くなる)
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑨
8-21
セントローレンス湾北部
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯
フィヨルド海岸
低地または海岸平野,潮干潟
・東から西に行くにつれ,起伏が少なくなる
・ニューファンドランド島西部はフィヨルド、低地にはビー
チがない
・セントローレンス川河口付近は広大な泥干潟や湿地
海岸線のタイプ
岩盤海岸,
混合堆積物海岸
泥干潟,湿地
氷結期
・入海(囲まれている海)で,吹送距離は最大で700km,
236
波(うねり,energy level)は北西から南東にかけて高くなる
・氷結しない期間は7-8カ月(4月-11月)
潮
位
・1.0-2.0m
・セントローレンス河口域では5m
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑩
8-22
セントローレンス湾南部
沿岸地帯の特徴
・なだらかな起伏
低地または海岸平野
・高地エリアには混合堆積物海岸,低地エリアには砂浜およ
堡礁島/浜
びラグーン(潟)(礁湖)のある堡礁島
海岸線のタイプ
岩盤海岸,砂浜
混合堆積物海岸,砂干潟,湿地
氷結期
・入海、吹送距離最大500km
・energy level は西から東に行くほど増加
・氷結しない期間は8-9カ月(4月-12月)
潮
位
Arctic Waters Field Guide
・1.0-2.0m
8-23
237
8.4
グリーンランド
グリーンランド沿岸は,内陸に深く入り込んだフィヨルドを持つ高地が一様に続き,ビーチは
ほとんどない。グリーンランドの氷床は沿岸地帯まで氷河となって届いている。グリーンランド
の北側沿岸に沿って棚氷があり,北に行くほど増えている。バッフィン湾北部では,内陸の氷の
端がメルヴィル湾近くまで届いている。バッフィン湾沿岸の南部地域およびディスコ島周辺はな
だらかで,スタック(離れ岩)
(小島群,岩礁島)が多い。フィヨルドがこの沿岸を特徴づけてい
る。
波にあらわれた堆積物(中礫から巨礫サイズ)
がポケットビーチを形成しているところがあり,
ディスコ島東部や東部グリーンランドにあるジェームソンランドに沿って,砂浜が見られる。
グリーンランドの北部沿岸及び東部沿岸(北緯70°-72°)は1年中氷に閉ざされている
が,年によっては流氷が開けて7月下旬から9月下旬にかけては航行が可能である。北極海の永
久流氷は,通常冬の初めから夏の終わりまで,グリーンランドの南東沿岸に存在する。デンマー
ク海峡は8月中旬から9月下旬までの2,3週間,氷結しないが,ファーヴェル岬エリアでは通
常8月上旬から12月下旬まで氷結しない。デービス海峡沿岸は1年中ほとんど氷結しないが,
北へ行くと12月下旬から5月,あるいは6月上旬まで,一年生流氷が形成される。この地域の
南部地区は春(4月―6月)に(グリーンランド東海岸からの)永久流氷の影響を受ける。厳冬
のときのみ,南東部のデービス海峡で一年生流氷が形成される。しかしながら,湾内やフィヨル
ドでは毎冬,局所的に氷が形成される。バッフィン湾南部では約5カ月間(7月-11月),北部
では1-2カ月間(8月-9月),北西エリアでは3-4カ月間(6月-9月),沿岸の海氷が解
ける。
Arctic Waters Field Guide
8-24
グリーンランドは下記の4つの地域に分けられる。それぞれの地域は,沿岸地域の特徴,海岸
線のタイプ,波打ち際,氷結期,潮位の観点から説明されている。
238
図8-5 グリーンランド
Arctic Waters Field Guide
ゾーン①
8-25
デービス海峡沿岸
沿岸地帯の特徴
・崖,フィヨルド,氷山から分離した氷河のある起伏に富ん
フィヨルド海岸
だ海岸地方
海岸線のタイプ
・ビーチはほとんどない,磯
岩盤海岸,氷海岸,中礫/玉石海岸
氷結期
・北部では約6カ月間(5月/6月-12月)
,海氷がない
・南部では,冬の終わりの短い期間のみ(2月-3月)
,海氷
が形成される
・年によっては,南部で永久流氷は4月-6月に見られる
・一年生流氷(通常氷の厚みは1.0メートル以下)
潮
位
・2.7-4.8m
239
Arctic Waters Field Guide
ゾーン②
8-26
バフィン湾沿岸
沿岸地帯の特徴
・崖とフィヨルドにかたどられた起伏に富んだ海岸地方
フィヨルド海岸
・氷山から分離した氷河が多い,特にメルヴィル湾
海岸線のタイプ
・ディスコ島と Nuussavaq(ウーマナーク?)に砂浜
岩盤海岸,氷海岸
氷結期
・北西部では海氷がないのは3-4カ月(6月-9月),北東
で約2カ月(8月中旬-10月中旬),南部で5-6カ月(6
月-11月)
・一年氷(厚さ1-1.5メートル),北西では一年氷に永久
氷が混ざっている
潮
位
・2.0-2.8m
Arctic Waters Field Guide
ゾーン③
8-27
北部及び東部沿岸地域
沿岸地帯の特徴
フィヨルド海岸,棚氷
海岸線のタイプ
・崖とフィヨルドにかたどられた起伏に富んだ海岸地方
・海岸のあちこちに棚氷が形成されている
・棚氷が浮かんでいる氷河口が多数
岩盤海岸,混合堆積物海岸,氷海岸
240
氷結期
・1年中氷結している
・永久(多年)氷(厚さ3-4メートル)
・年によっては8月,9月は東海岸を航行可能
潮
位
・2.8m以下
Arctic Waters Field Guide
ゾーン④
8-28
南東部沿岸地域
沿岸地帯の特徴
・崖とフィヨルドにかたどられた起伏に富んだ海岸地方
フィヨルド海岸
・氷山から分離した氷河
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷海岸
混合堆積物海岸
中礫/玉石海岸
氷結期
・南部では8月-12月は海氷がない,北部では海氷がない
のは8月から9月にかけての2,3週間のみ
・永久氷(厚さ2-3メートル)
潮
位
・1.5mから南西に行くにつれ3.3m
241
Arctic Waters Field Guide
8.5
8-29
アイスランド
アイスランドの沿岸地帯には,たいていは沿岸の海氷や岸の定着氷はないが,アイスランド沿
岸はAEPSの定義では北極圏に入ると考えられている。
沿岸地域の起伏はおおむねなだらかだが,北西の半島には600メートルを超す高い崖地があ
り,北と中東沿岸地域にはフィヨルド海岸がある。南部と堡礁干潟を除いて,沿岸地帯は岩盤層
が露出しており,なだらかな土地に断崖岬や岩州のある川,スタックが多数ある。ストランドフ
ラットは広いポケットビーチと後浜の塩,淡水湿地によって特徴づけられている。南の沿岸はそ
ことは全然異なり,300kmを超す連続した堡礁浜によって特徴づけられている。この沿岸に
は毎年大量の砂がヴァトナヨークトル氷河と Myrdalsjökull 氷原から流されてくる。この広大な
堡礁浜は年間1-10mの割合で常に変化している。
南部と南西部沿岸地帯は,北極海の北部を南西から北東に低気圧が横切る関係で,冬の何カ月
間は波が荒いのが特徴である。波の高さはおおむね2m以下だが,西部のブレイザ湾およびファ
クスア湾では,春には5mにも達する。海氷はめったに見られないが,デンマーク海峡からの氷
が北部および北西部沿岸沿いに流れてきて,ホーン岬付近に春中漂流している。沿岸地帯には岸
の定着氷は形成されないが,遮蔽性の湾内やラグーン(潟),特に淡水のあるところでは氷が形成
され,海岸地帯では打ち上げ波や水煙が凍る。
アイスランドは大西洋中部の分水線上(ユーラシア大陸プレートとアメリカ大陸プレートの境
目)の活火山地帯に位置している。陸や沖合で起こった噴火によって,海岸線や等深線は変化し
た。もっとも劇的な変化は南部沿岸で,後氷河期の噴火によって“jökulhlaup”(glacier burst
氷解水)が起こり,大量の砂が沿岸地帯に運ばれた。その結果,比較的短期に(数日から数週間)
海岸線が数キロにわたってプログラデーションした。
Arctic Waters Field Guide
8-30
アイスランドは下記の6つの地域に分けられる。それぞれの地域は,沿岸地域の特徴,海岸線
のタイプ,波打ち際,氷結期,潮位の観点から説明されている。
242
図8-6 アイスランド
Arctic Waters Field Guide
ゾーン①
8-31
南部海岸平野
沿岸地帯の特徴
・氷河(氷解水)によって流されてきた砂利の堆積物が大量
堡礁(群)島
に積もって,堡礁砂州や島を形成している;突然の噴火や春
低地/海岸平野
氷解水(“glacier bursts”)によって内陸の氷原から火山性の
海岸線のタイプ
堆積物を含んだ砂利が流されてきて,海岸線は変化し続ける。
砂浜,混合堆積物海岸
・砂利の堆積した西限はショルサ川である。
・波の作用で海岸の堆積物の移動が激しい
・春と夏は波はおだやかで,小川や川の流水量は最大になる
氷結期
・1年中開水面
243
潮
位
・1.0-3.0m
Arctic Waters Field Guide
ゾーン②
8-32
南東部ストランドフラット・コースト
沿岸地帯の特徴
・変化し続ける岩岬と入り江の堡礁浜
低地/海岸平野,
・潮の流入でカットされたビーチ,後面に干潟や潮湿地があ
デルタ,堡礁群島
る
海岸線のタイプ
岩盤海岸,泥干潟,塩湿地
氷結期
・1年中開水面;流氷が流れてくる年もある
潮
・1.0-3.0m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン③
8-33
東部フィヨルド・コースト
244
沿岸地帯の特徴
・起伏に富んだフィヨルド海岸
高地または山岳地帯
フィヨルド海岸
海岸線のタイプ
岩盤海岸
氷結期
・大洋に面している沿岸は開水面で遮蔽性の湾内やフィヨル
ドにいくらか氷が形成される
・デンマーク海峡からの流氷が流れてくることもある
潮
・1.0-3.0m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン④
8-34
北部コースト
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯
・崖地といくつかのフィヨルド(Hrútfjördur, Eyjöafjrdur エ
イヤフィヨルズル)のある起伏に富んだ沿岸地
フィヨルド海岸
・Hérardsflói, Axarfjördur, Skagafjördur(スカーガフィヨル
海岸線のタイプ
ズル),Húnaflói には広大なビーチがある
岩盤海岸,混合海岸
氷結期
・大洋に面している沿岸は開水面で流氷がいくらか見られ,
遮蔽性の湾内やフィヨルドでは氷が形成される
245
潮
・1.0-3.0m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑤
8-35
北西部フィヨルド・コースト
沿岸地帯の特徴
・崖とフィヨルドのある起伏に富んだ沿岸地帯
・崖の高さは高いもので600m
高地または山岳地帯
フィヨルド海岸
海岸線のタイプ
岩盤海岸,中礫/玉石海岸
氷結期
・大洋に面している沿岸は開水面で遮蔽性の湾内やフィヨル
ドにいくらか氷が形成される
・冬の終わりから春にかけて,デンマーク海峡からの流氷で
航行に影響が出る;年によってはホーン岬周辺に氷が密集す
るため,航行不可能になる
潮
位
Arctic Waters Field Guide
・1.0-3.0m
8-36
246
ゾーン⑥
西部ストランドフラット・コースト
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯
低地/海岸平野
堡礁群島
・崖とフィヨルドのある起伏の多い沿岸地帯
・2つの大きな火山性岬が Beidafjördur(ブレイザ湾)と
Faxaflói(ファクサ湾)を分けている
・入り江には多くの岩島,州,スタックがある
海岸線のタイプ
・北部の Faxaflói(ファクサ湾)には堡礁砂浜が集中してい
岩盤海岸,砂浜
る
中礫/玉石海岸
・岬には粗目の堆積物海岸がある
氷結期
・大洋に面している沿岸は開水面で,遮蔽性の湾内やフィヨ
ルドにいくらか氷が形成される
潮
位
・大体2m以下だが,Beidafjördur(ブレイザ湾)と Faxaflói
(ファクサ湾)では5m
Arctic Waters Field Guide
8.6
8-37
ノルウェー
ノルウェー沿岸は北極圏の北にあり,スバールバル諸島,ビェルン島(Bjønøya),ヤンマイエ
ン島などが含まれる。ビェルン島を除いて,沿岸地方は氷河の影響を受けた起伏に富んだ地形が
特徴的である。スバールバルのほとんどは氷床で覆われており,フィヨルドの至るところで氷河
が見られる。本土の北部沿岸は急峻なフィヨルドが複雑な海岸線をつくっており,ビーチはほと
んどない。ヤンマイエン島とビェルン島は連続した崖地でかたどられた低地で,ところどころに
幅の狭いビーチがある。
大洋に面した海岸では,波は高い。ノルウェー本土とヤンマイエン島では氷結しない海岸と沿
247
岸海域がある。温かい Gulf Stream(メキシコ湾流)がノルウェー海を1年中凍らせないため,
北極の氷大陸の端に位置しながら,季節変化に富んでいる。流氷の限界は北緯75°東経10°
で,3月に発達し,8月に最小となる。年によってはスバールバル諸島北部および東部沿岸に海
氷が残ることがあるが,大洋に面した南西部沿岸では1年中氷結しない。同様に seasonal pack
ice の限界に近いビェルン島では,外側の西部沿岸は1年中開水面で,東部沿岸は10月から5
月まで氷に閉ざされている。スバールバル諸島の沿岸およびフィヨルド湾では,通常11,12
月から6,7月まで,氷に閉ざされている。
本土沿岸では波の高さは2-4m,スバールバル諸島,ビェルン島,ヤンマイエン島では2m
以下である。
Arctic Waters Field Guide8-38
ノルウェーは下記の6つの地域に分けられる。それぞれの地域は,沿岸地域の特徴,海岸線の
タイプ,波打ち際,氷結期,潮位の観点から説明されている。
図8-7 ノルウェー
Arctic Waters Field Guide
8-39
248
ゾーン①
本土,北極圏限界線北部
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯
フィヨルド海岸
・沿岸は急斜面のフィヨルドがある高い崖地で,海岸線は複
雑である
・磯浜があるセクションもある
海岸線のタイプ
岩盤海岸
混合堆積物海岸
中礫/玉石海岸
氷結期
・大西洋に面していて,吹送距離は無制限
・沿岸海域は1年中開水面
潮
・1.0-4.0m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン②
8-40
スバールバル諸島南部,西部
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯
・沿岸は高い崖地で,フィヨルドに氷河がある
・磯浜が集中しているところがある
フィヨルド海岸,棚氷
249
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷海岸
混合堆積物海岸
中礫/玉石海岸
・大西洋に面していて,吹送距離は無制限
氷結期
・沿岸海域は1年中開水面だが,10月から5月まで海岸が
凍ることがある
潮
・1.0-2.0m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン③
8-41
スバールバル諸島北部,東部
沿岸地帯の特徴
・氷河と棚氷がある起伏に富んだフィヨルド海岸
高地または山岳地帯
フィヨルド海岸,棚氷
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷海岸
混合堆積物海岸,中礫/玉石海岸
氷結期
・北部沿岸は波が低く,1年中氷に閉ざされている
・南部は通常8-9月まで時には10月まで開水面。
250
潮
・1.0m以下
位
Arctic Waters Field Guide
8-42
Bjønøya(ビェルン島)
ゾーン④
沿岸地帯の特徴
低地または海岸平野
・低崖地
・狭い磯浜があるところもある
海岸線のタイプ
岩盤海岸
混合堆積物海岸
氷結期
・大西洋に面していて,吹送距離は無制限
・冬期の北極の流氷限界に近く,西側の沿岸海域は1年中開
水面を持つ
・東部沿岸地域は10月から5月まで氷に閉ざされる
潮
・1.0-2.0m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑤
8-43
ヤンマイエン島
251
沿岸地帯の特徴
・所により狭い磯浜を持つ低崖地
高地または山岳地帯
海岸線のタイプ
岩盤海岸,混合堆積物海岸
氷結期
・大西洋に面しているので,吹送距離は無限
・沿岸海域は1年中開水面
潮
位
Arctic Waters Field Guide
8.7
・1.0-1.5m
8-44
ロシア
ロシアの北部沿岸は北極海とベーリング海を分けていて,東経40°から西経175°,北緯
63°から83°の地理的に広大なエリアにかけて氷の影響を受けている。本土(ユーラシア大
陸)沿岸はおおむね低地が続いていて,それがノバセゼムリャにつながるウラル山脈で(西と東
に)分断されている。低地海岸のほとんどはツンドラ海食崖で,毎年約5-10mの割合で浸食
を受けている。西半分の地区の沖合にある島々には氷帽や氷河がある。大陸には幾つかの大河川
(北ドビナ川,ペチョラ川,オビ川,エニセイ川,レナ川,コルイマ川)が流れている。ベーリ
ング海沿岸では,海岸地帯はほとんどが岩盤の高地で,低地は大きな入り江に2,3続いている
のみである。海岸線は北東から南西に向かって,コリヤーク山脈,
(その北にある)コルイマ山脈,
カムチャッカ半島の火山群に沿ってできている。
北極の永久流氷によって吹送距離が制限されるのと,開水面期は風がほとんど吹かないために,
この地方の波は低い。年によってはタイミル半島の北を永久流氷が移動せず,ノースイースト水
道は砕氷船以外通れなくなる。沖合の島々の北側海岸が永久流氷限界になっており,何年も沿岸
の氷は解けない。コラ半島の北部は,暖流がスカンジナビア半島沿岸沿いに北方へ温かい大気を
運んで来るので,1年中氷結しないが,白海内は12月から5月まで流氷が見られる。ベーリン
252
グ海峡沿岸は通常8月,
9月は氷結しない。ベーリング海沿岸地帯で凍結が始まるのは10月で,
オホーツク海西部および北部では11月である。12月までには氷はサハリン島北部およびカム
チャッカ半島のほぼ全域まで発達する。
北極海沿岸では波は低く,おおむね1m以下だが,ただ1つの例外は白海東部のメゼニ湾では
波は10mに達する。後浜と沿岸との傾斜角が小さいので,バレンツ海,ラプテフ海,チュコト
海沿岸では,開水面期に風によって起こる大波は重要である。
Arctic Waters Field Guide
8-45
北極圏東部のベーリング海沿岸では,波は通常3m以下で,シェリホフ湾内,Penzinsk 湾先端
では,10mに達する。
本書でカバーしているロシアエリア(北極圏ロシア)は,下記の11つの地域に分けられる。
それぞれの地域は,沿岸地域の特徴,海岸線のタイプ,波打ち際,氷結期,潮位の観点から説明
されている。
図8-8
253
ロシア
Arctic Waters Field Guide8-46
ゾーン①
白海
・北部エリア(コラ半島南)は resistant(浸食してない?)
沿岸地帯の特徴
低地または海岸平野
低地海岸で,島が多くビーチはほとんどない
デルタ,堡礁島/浜
・南岸はビーチやデルタのある堆積平野;オネガ川,北ドビ
干潟,ツンドラ海岸
ナ川,広い泥塩干潟,浸食されているツンドラ海食崖(年間
最大5m後退),堡礁砂浜,東部エリア(メゼニ湾)に湿地
海岸線のタイプ
岩盤海岸,砂浜
混合堆積物海岸
泥干潟,湿地,ツンドラ崖海岸
氷結期
・吹送距離に制限がある(吹送距離が限定されている)エリ
ア
・氷結しないのは6月から11月
潮
・白海内では1.0m以下
位
・白海の入り口付近では7.0mでメゼニ湾に向かって徐々
に高くなり,10.0mまで達する
Arctic Waters Field Guide
ゾーン②
8-47
カラ海,バレンツ海
沿岸地帯の特徴
低地または海岸平野,デルタ,
堡礁島/浜,ツンドラ海岸
・低地に海岸平野があり,ツンドラ崖や堡礁砂浜 spits(岬,
砂州),後浜湿地が見られる
・ツンドラ海食崖は年間7-8mの割合で浸食されている
254
海岸線のタイプ
・ペコラ川河口付近に広大なデルタがある
砂浜,湿地
ツンドラ低地海岸
ツンドラ崖海岸
氷結期
・開水面は例年東部セクションでは4カ月(7月-10月)
で,西に行くほど長くなり,白海の入り口では7カ月になる
(6月-12月)
潮
・おおむね1m以下で,ヴァイガチ島と本土との間の海峡に
位
向けて徐々に高くなり,海峡では2mに達する
Arctic Waters Field Guide
ゾーン③
8-48
ノーヴァヤゼムリャ
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯
・高い崖地のフィヨルド海岸(ウラル山脈の延長)で北部地
区には氷河がある
フィヨルド海岸,棚氷
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷海岸
混合堆積物海岸
中礫/玉石海岸
氷結期
・南西部は6月が開水面,北東部は7月,東部海岸地方は8
月
・東部海岸は11月に氷結し,西部は12月に氷結する
255
潮
・1.0m以下
位
Arctic Waters Field Guide
8-49
Baidaratskaya 湾,オビ湾,Enisiesk 湾
ゾーン④
沿岸地帯の特徴
・ツンドラ海食崖(年間5-10mの割合で後退)のある低
フィヨルド海岸,
地海岸,堡礁砂浜,ラグーン(潟)
,湿地
堡礁島/浜
・二大河川の河口(オビ川,エニセイ川)
ツンドラ海岸
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷海岸,砂浜
中礫/玉石海岸
ツンドラ低地海岸
ツンドラ海食崖海岸
氷結期
・開水面は例年3カ月(8月-10月),淡水の影響で河口に
近くなるに従って短くなる
潮
位
Arctic Waters Field Guide
・1.0m以下
8-50
256
ゾーン⑤
タイミル半島
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯
・海岸は高い崖地で岩岬や多くの小島がある
・ビーチには混合堆積物や中礫などがある
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷海岸
混合堆積物海岸
中礫/玉石海岸
・開水面期は1カ月(9月)で,2カ月(8月-9月)のこ
氷結期
ともあるが,北極積氷が近接しているため全く開水面がない
年もある
潮
・1.0m以下
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑥
8-51
フランツァヨシファ島,セーベルナヤゼムリャ
沿岸地帯の特徴
・氷河が見られる起伏に富んだ海岸
高地または山岳地帯
フィヨルド海岸,棚氷
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷海岸
混合堆積物海岸
257
中礫/玉石海岸
氷結期
・北部沿岸は波が低く,1年中氷に閉ざされている;南部は
例年8月9月は開水面,ときには10月まで氷結しない
潮
・1.0m以下
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑦
8-52
シベリア,ノヴォシビルスク諸島
沿岸地帯の特徴
低地または海岸平野
フィヨルド海岸,デルタ
堡礁島/浜
ツンドラ干潟,ツンドラ海岸
海岸線のタイプ
・浸食されているツンドラ海食崖のある低地の海岸平野,泥
干ラグーン(潟),堡礁浜
・レナ川河口付近に広大な浸食デルタ
・ニューシベリア諸島(ノボシビルスク諸島)には岩岬やツ
ンドラ海食崖がある(最大浸食率年間15m)
・沖合は浅瀬
岩盤海岸,砂浜,泥干潟
ツンドラ低地海岸
ツンドラ海食崖海岸
氷結期
・沿岸は波が低い
・永久流氷が1年中海岸近くにあるため,波の発生が抑えら
れているエリア
・開水面期は2カ月(8月-9月)
潮
位
・0.5m以下
258
・風によって大波が起こり,陸地の数キロ先まで襲う
・head of the Khatanga では最高3.0m
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑧
8-53
チュコト半島沿岸,ウランゲル島
沿岸地帯の特徴
・奥が高くなっている狭い海岸平野
フィヨルド海岸,堡礁島/浜
デルタ,ツンドラ海岸
海岸線のタイプ
・岩岬のある海岸,ツンドラ海食崖,低地,特にウランゲル
島ではラグーン(潟)のある砂砂利の堡礁浜
・コルイマ川河口に広大なデルタ
岩盤海岸,砂浜
混合堆積物海岸,泥干潟
ツンドラ低地海岸
ツンドラ海食崖海岸
氷結期
・永久流氷が1年中海岸近くにあるため,波の発生が抑えら
れているエリア
・開水面期は最長3カ月(8月-10月)
・ウランゲル島では開水面になることは滅多にない
潮
・0.1m以下
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑨
8-54
ベーリング海峡,アナドゥイリ湾
259
沿岸地帯の特徴
・常に変化している岩盤と,低地の浸食されているツンドラ
フィヨルド海岸
海食崖が特徴の沿岸地帯
・チュコト半島南東部にフィヨルド
堡礁島/浜
・アナドゥイリ湾内には多くの磯浜と spits(岬,砂州)
ツンドラ海岸
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷海岸,砂浜
中礫/玉石海岸
ツンドラ低地海岸
ツンドラ海食崖海岸
氷結期
・開水面期の2カ月間(8月-9月)は波が高い
潮
・0.25m-3m,湾の先端にかけて高くなる
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑩
8-55
ベーリング海,コリヤーク沿岸
沿岸地帯の特徴
・高地に小規模なフィヨルドと湾入り口に堡礁磯浜
高地または山岳地帯
フィヨルド海岸,堡礁島/浜
海岸線のタイプ
岩盤海岸,氷海岸
中礫/玉石海岸
260
氷結期
・開水面期の3カ月間(8月-10月)は波が高い
潮
・1.0-2.0m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑪
8-56
シェリホフ湾
沿岸地帯の特徴
・広大な塩干潟
低地または海岸平野,塩干潟
海岸線のタイプ
砂干潟,泥干潟
氷結期
・開水面期は4カ月(7月-11月)
潮
・6m-10m,北へ行くほど高くなる
位
Arctic Waters Field Guide
8.8
8-57
アメリカ合衆国(アラスカ)
氷の影響はアラスカ沿岸はるか南のブリストル湾,ベーリング海のアリューシャン列島北部,
261
アラスカ湾北部のクック湾,プリンスウイリアム湾にまで及んでいる。ブルックス山脈があるた
めに海岸線は東西の向きに走っている。この山脈によって,ベーリング海に3つの湾,ブリスト
ル湾,ノートン湾,コツェビュー湾ができている。アリューシャン列島は北太平洋に約2000
kmにわたってつらなる島弧である。
ビーチは平坦で,氷河の氷解水とたくさんの大河川(Colville, Kobuk,ユーコン川,クスコクウ
ィム川,susitna)によって運ばれた堆積物が積もっている。ボーフォート海沿岸とチュコト海沿
岸はツンドラ低地で,堡礁浜やラグーン(潟)が集中している。
夏の間,永久流氷がボーフォート海沿岸近くにあり,年によっては開水面からほんの2,3キ
ロの距離にある。開水面の吹送距離はチュコト海及びベーリング海北部で急激に長くなり,ノー
トン湾南部では氷結しない期間は例年6カ月以上である。ベーリング海では,開水面期には嵐に
よって起こる波の影響で,波は高い(嵐で海が荒れて波が高い)。アラスカ湾南部沿岸は偏差があ
り,クック湾では毎年5カ月も氷があるのに対し,同じ緯度にある隣のプリンスウイリアム湾は,
1年中氷結しない。北部沿岸地域は波が低く,ブリストル湾では7mに達し,クック湾では11
mを超える。クック湾(入り江)では冬は潮の流れが速く流氷があるので,見通しが悪い。ボー
フォート海とチュコト海では後浜から沖合までの傾斜角が低いので,開水面期に風によって波が
起こる現象は重要である。
Arctic Waters Field Guide
8-58
本書でカバーしているアラスカは,下記の6つの地域に分けられる。それぞれの地域は,沿岸
地域の特徴,海岸線のタイプ,波打ち際,氷結期,潮位の観点から説明されている。
262
8-9 アラスカ
Arctic Waters Field Guide
ゾーン①
8-59
ボーフォート海,チュコト海沿岸
沿岸地帯の特徴
低地/海岸平野,デルタ
堡礁島/浜,ツンドラ海岸
海岸線のタイプ
砂浜,ピート海岸
・ツンドラ平野
・ラグーン(潟)や波に洗われるツンドラ低地のある堡礁浜
や堡礁ビーチ,急激に浸食されているツンドラ海食崖
・Colville 川,Canning 川には広大なデルタがある:小さい
デルタはいたるところで見られる。
ツンドラ低地海岸
ツンドラ海食崖海岸
氷結期
・永久流氷が1年中海岸近くにあるため,波の発生が抑えら
れているエリア
・開水面期は3カ月(8月-10月)
263
潮
・0.25m以下
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン②
8-60
コツェビュー湾,ノートン湾,セントローレンス島
沿岸地帯の特徴
・岬には山脈,湾内には低地のビーチがある
・コツェビュー湾,セントローレンス島には堡礁砂浜が集中
高地または山岳地帯
低地/海岸平野,堡礁島/浜
海岸線のタイプ
している
・セントマシュー島,Diomede 島には岩の崖と狭い浜が多い
岩盤海岸,砂浜
混合堆積物海岸
氷結期
・北部エリアでは開水面の期間は3カ月(7月-9月)で,
南に行くほど長くなり,ノートン湾やセントローレンス島で
は6カ月(6月-11月)である
潮
位
Arctic Waters Field Guide
・0.5-1.0m
8-61
264
ゾーン③
ユーコン・デルタ
沿岸地帯の特徴
低地/海岸平野,デルタ
塩干潟,ツンドラ海岸
・多数の海峡,湿地,島,泥干潟の切れ込みがある広大なデ
ルタ
・ツンドラ低地
海岸線のタイプ
混合堆積物海岸,
砂干潟,泥干潟,湿地
ツンドラ低地海岸
ツンドラ海食崖海岸
氷結期
・開水面の期間は6カ月(6月-11月)
潮
・1.0-1.5m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン④
8-62
ブリストル湾
沿岸地帯の特徴
低地/海岸平野,塩干潟
・泥干潟が集中している低地海岸平野
・プリビロフ諸島は狭いビーチを持った岩の崖が多い
265
海岸線のタイプ
混合堆積物海岸
砂干潟,泥干潟
氷結期
・開水面の期間の5-7カ月は波が高い(最長5月-11月)
・プリビロフ諸島は流氷の南限に近いので,3月,4月に海
氷が見られることがある
潮
・3-7m
位
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑤
8-63
クック湾,プリンスウイリアム湾
沿岸地帯の特徴
高地または山岳地帯
フィヨルド海岸,塩干潟,棚氷
海岸線のタイプ
岩盤海岸,中礫/玉石海岸
・ビーチは粗めの堆積物で覆われている
・クック湾(入り江)はじょうご型の河口で,塩泥干潟や湿
地が集中している
・プリンスウイリアム湾は氷河で削られたフィヨルド海岸が
ある
砂干潟,泥干潟,湿地
氷結期
・クック湾(入り江),プリンスウイリアム湾では波の影響は
受けない
・クック湾(入り江)では潮の流れが速く,海岸地帯は4-
5カ月定着氷や流氷で覆われる(11月-4月)
潮
位
・3-11m
266
Arctic Waters Field Guide
ゾーン⑥
8-64
アリューシャン列島
沿岸地帯の特徴
・火山列島
・島中に崖地や岩岬があり起伏に富んでいる
高地または山岳地帯
・ビーチはほとんどないが,磯浜
海岸線のタイプ
岩盤海岸,中礫/玉石海岸
氷結期
・1年中波が荒い
・流氷限界の南部にある沿岸は氷結しない
潮
位
・潮の流れが速い海峡が多い
・1.0-2.0m
Arctic Waters Field Guide
8.9
8-65
写真集-北極地方の海岸
表5.11にまとめられた14タイプの海岸はカラー写真で説明されている。
海岸線のタイプ
図
岩(岩盤)
8-10
人工構造物
8-11
267
氷または氷に覆われた海岸
8-12,8-13
砂浜
8-14
混合堆積物海岸
8-15
中礫/玉石海岸
8-16
巨礫海岸
8-17
砂干潟
8-18
泥干潟
8-19
塩湿地
8-20
ピート海岸
8-21
沈水ツンドラ海岸
8-22
ツンドラ海食崖海岸
8-23,8-24
雪に覆われた海岸線
8-25
図8-26から8-29は冬の海岸線を,図8-30から8-32は雪や氷の中のオイルを表
している。
Arctic Waters Field Guide
8-66
図8-10 カナダ,ラブラドル半島の岩盤海岸
268
図8-11 人工構造物:アラスカ,プルドーベイの杭と金属板のドック
Arctic Waters Field Guide
8-67
図8-12 カナダ,デヴォン島の棚氷
269
図8-13 ノルウェー,Spitzbergen, Kongs フィヨルドの氷山から分離した氷河
Arctic Waters Field Guide
8-68
図8-14 ロシア,オホーツク海のサハリン島の砂浜
270
図8-15 カナダ,ランカスター海峡のリケット岬の混合堆積物海岸
Arctic Waters Field Guide
8-69
図8-16 ノルウェー,Ny Alesund, Spitzbergen の中礫海岸
271
図8-17 カナダ,ラブラドル半島カートライトの巨礫海岸
Arctic Waters Field Guide
8-70
図8-18 カナダ,ラブラドル半島カートライトの
ボウルダーバリケードのある塩砂泥干潟
272
図8-19 アラスカ Kupigruak Channel, Colville 川の川土手にある
干上がって亀裂が入っている泥干潟
Arctic Waters Field Guide
8-71
図8-20 座礁している流氷と流氷の作用で湿地植物がパッチになってしまった地表,
カナダケベック州セントローレンス川
273
図8-21 アラスカ,ボーフォート海フォギーアイランド湾のピート海岸
Arctic Waters Field Guide
8-72
図8-22 アラスカ,ボーフォート海 Ikpikpuk 川近くの沈水ツンドラ低地
274
図8-23 アラスカ,ボーフォート海バロー岬の氷の多いツンドラ海食崖
Arctic Waters Field Guide
8-73
図8-24 アラスカ,チュコト海 Peard 湾の氷の少ないツンドラ海食崖
275
図8-25 アラスカ,チュコト海 Peard 湾のツ冬の海岸線とンドラ崖地
Arctic Waters Field Guide
8-74
図8-26 アラスカ,プリンスウイリアム湾の雪に覆われた海岸地帯
276
図8-27 カナダ,セントローレンス湾の砂浜にできた氷脚
Arctic Waters Field Guide
8-75
図8-28 氷にできた水道;流出オイルをため,燃焼あるいはスキミングできる
277
図8-29 島の氷結していない,風の当たらない側では,
オイルを機械を使って回収することができる
Arctic Waters Field Guide
8-76
図8-30 海岸近くの小さな流氷の間に広がってしまった流出オイル;
効果的な対抗策は何もない
278
図8-31 氷水路にためたオイルの現地焼却
ロシア,コミ共和国 Kolva 川
Arctic Waters Field Guide
8-77
図8-32 氷の塊にしみこんでしまったオイルの粒;
オイルの回収はむずかしい
279
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