食道がん治療の現況と先端医療 国際医療センター 包括的がんセンター 消化器病センター 消化器外科 竹田明彦 はじめに 食道がんは比較的まれな疾患ですが、その全体数は近年増加傾向にあります。 内視鏡検査技術の進歩により早期の食道がんが多数見つかることが多くなった ためです。しかし、依然として食道がんの大半を占めるのは進行した症例であ り、治療に難渋することがあります。 食道がん治療法 一般的に食道がんの治療法は、①手術によるがん組織とリンパ節を切り取る 手術療法、②放射線をあててがん細胞を死滅させる放射線療法、③薬を使う化 学療法などが主流です。これらの治療法にはそれぞれ短所と長所があります。 手術治療は現在の標準治療法で、がん細胞を取り除くことができる最も確実 な治療法と考えられています。しかし、その一方で患者さんの負担は大きく、 また手術後の合併症もあります。切除技術の向上と手術前後の管理法の進歩に より、以前よりは安全に行われるようになりましたが、早期のがんを除くとそ の治療成績はまだ満足できるものではありません。 放射線治療は腫瘍に放射線を照射してがん細胞を死滅させようとするもので、 手術に比べると負担の少ない治療法ですが、照射範囲を中心に様々な程度の副 作用を生じ、通常の放射線治療だけでは手術を上回る成績は得られていません。 また抗癌剤を用いる化学療法は局所的な効果が乏しいために、高度進行例を除 いて化学療法が単独で用いられることは少ない状況です。 最近の食道癌治療 最近、放射線治療に化学療法を加えた併用治療が食道がん治療に多く用いら れるようになり、手術的治療に匹敵するような良好な成績を上げている施設も 出てきました。また手術前に放射線と化学療法を先行させる手法も一部の施設 では行われていますが、明瞭な遠隔成績の向上までは至っていないのが現実で す。今回の私のお話では、食道がんの疫学的な基礎事項からはじめて、食道が ん治療の歴史的な推移に話を進め、さらに我々が 21 世紀以降に取り組んできた 先端的な治療手段であるがん抑制遺伝子である p53 を用いた遺伝子治療や従来 の放射線とはその性質を異にし、かつ腫瘍に対する治療効果が期待できる重粒 子線治療を紹介し、食道がん治療の現況をと将来展望を概説したいと思います。 履歴書 学歴、職歴 昭和 60 年 5 月 千葉大学医学部附属病院 第二外科 医員(研修医)に採用 昭和 61 年 4 月 川崎製鉄健康保険組合千葉病院 外科 外科研修医に採用 昭和 62 年 4 月 国立千葉病院 外科 外科チーフレジデントに採用 平成 4 年 3 月 千葉大学大学院医学研究科外科系専攻博士過程修了 平成 4 年 4月 千葉社会保険病院 外科(手術部長)に採用 平成 6 年 4月 横浜労災病院 外科(外科医長)に採用 平成 8 年 4月 千葉大学医学部附属病院 第二外科 医員に採用 平成 10 年 12 月 千葉大学医学部附属病院 第二外科 文部教官助手に採用 平成 11 年 10 月 船橋市立医療センター 外科(外科副部長)に採用 平成 13 年 2 月 Post-Doctoral Fellow (U. T. M. D. Anderson Cancer Center) に採用 平成 14 年 6 月 Research Fellow (Baylor College of Medicine) に採用 平成 15 年 2 月 東京大学医科学研究所付属病院 平成 16 年 4 月 埼玉医科大学病院 平成 19 年 4 月 埼玉医科大学国際医療センター病院 外科 消化器一般外科 文部科学教官助手に採用 助教授に採用 消化器外科 准教授に採用 現在に至る 学位 平成 4 年 3 月 博士(医学)の学位授与 (千大院医博甲第 737 号) 免許・資格 昭和 60 年 5月 第 79 回医師国家試験合格 医師免許証 (医籍登録 290948 号) 昭和 63 年 12 月 日本外科学会 認定医 (登録番号 3869 号) 平成 3 年 12 月 日本消化器外科学会 認定医 (認定番号 17 号) 平成 6 年 12 月 日本消化器病学会 認定医 (認定番号 21637) 平成 7 年 12 月 日本消化器外科学会 平成 10 年 2月 日本乳癌学会 平成 12 年 6月 日本消化器外科学会 指導医 (認定番号 2191) 平成 12 年 12 月 日本外科学会 指導医 (登録番号 S004699 号) 平成 14 年 1月 日本消化器外科学会 平成 15 年 8月 日本癌治療学会 臨床試験登録医 (認定番号 0898 号) 平成 16 年 1月 日本臨床外科学会 平成 16 年 12 月 日本外科学会 外科専門医認定 (認定番号 1801517) 専門医 (認定番号 328) 認定医 (認定番号 457) 消化器外科専門医認定 (認定番号 3000328) 評議員委嘱 平成 18 年 4月 日本臨床腫瘍学会 暫定指導医 (認定番号 05343) 平成 19 年 8月 日本がん治療認定医機構 暫定教育医 (認定番号 070430) 所属学会および社会における活動 昭和 60 年 5 月 日本外科学会 昭和 61 年 4 月 日本臨床外科学会 昭和 62 年 4 月 日本消化器外科学会 平成 2 年 4 月 日本消化器病学会 平成 3 年 4 月 日本癌学会 平成 4 年 4 月 日本癌治療学会 平成 4 年 4 月 日本ハイパーサーミア学会 平成 8 年 4 月 日本乳癌学会 平成 9 年 4 月 日本胃癌学会 平成 9 年 4 月 日本バイオセラピー学会 平成 12 年 4 月 日本分子腫瘍マーカー研究会 平成 14 年 4 月 米国癌学会 (American Association of Cancer Research: AACR) 平成 16 年 4 月 米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology: ASCO) 平成 17 年 4 月 日本外科系連合学会 平成 17 年 4 月 欧州医学腫瘍学会 (European Society of Medical Oncology: ESMO) 平成 17 年 4 月 日本大腸肛門病学会 平成 18 年 4 月 日本家族性腫瘍学会 平成 18 年 9 月 国際消化管遺伝性腫瘍学会 第二回国際遺伝性腫瘍学会(InSiGHT2007) 大会組織委員会委員(財務、渉外、学術等) 受賞 平成 5 年 12 月 第 3 回日本 BRM 学会 学術研究論文奨励賞 「AngiotensinⅡと tumor necrosis factor 併用によるモノクローナル抗体の腫瘍集積増強効果」 平成 8 年 9 月 第 6 回日本 BRM 学会 学術研究論文奨励賞 「Carboplatin-immunoconjugates の体内動態および抗腫瘍活性に関する基礎的検討」 平成 19 年 8 月 The Lloyd M. Nyhus Prize (International Surgical Week ISW 2007) 「Serum p53 Antibodies is a Postoperative Predictive Biomarker after Curative Resection in Colorectal Cancer Patients」
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