第 2 章 地域の課題と計画の 基本的考え方

●●●●● 第 2 章 ●●●●●
地域の課題と計画の
基本的考え方
1 地域の現状と課題
(1)地域における“つながり”がつくりにくくなっています
墨田区では、再開発によるマンション建設等を背景に、平成 12 年以降、転入が転
出を上回る状況が続いており、人口の増加とともに新しい住民が増えています。総人
口は平成 19 年の 238,580 人から、平成 23 年には 250,183 人へと増加しました。
ヒアリング調査からは、新しい住民とのつながり、新しい住民同士のつながりができ
にくいなどの声があげられています。
一方で、墨田区における近所づきあいをみると、「困ったときにお互いに相談した
り助けあったりする」や「留守にするとき声をかけあうなど、親しく話をする」
「たま
に立ち話や世間話をする」といった比較的親しいつきあいは、平成 17 年度は 52.6%
と過半数を占めていましたが、平成 21 年度には 46.3%と 6.3 ポイント減少しまし
た。ヒアリング調査からも、昔のようなお茶飲み話が、なかなかできにくくなったと
いう意見が出されています。これらのことから地域での人と人のつながりが薄れつつ
あることがわかります。
総人口の推移
300,000人
250,000人
200,000人
150,000人
0~17歳
18~39歳
40~64歳
65歳以上
238,580
242,120
244,771
247,914
250,183
48,462
49,880
51,260
52,468
52,978
80,543
81,206
81,704
82,847
84,795
79,134
80,135
80,770
81,263
80,788
30,441
30,899
31,037
31,336
31,622
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
平成23年
100,000人
50,000人
0人
資料:住民基本台帳及び外国人登録人口(各年 1 月 1 日現在)
15
●住民の声
・新しく転入してきた人との交流が少ないと感じている。
・昔のようなお茶飲み話が、なかなかできなくなった。
・外国籍の方たちとのコミュニケーションはあいさつ程度となっている。
近所づきあいの程度
0%
20%
平成17年度
14.0
平成21年度
12.4
困ったときに
お互いに相談
したり助け
あったりする
9.0
7.3
40%
60%
29.6
36.4
26.6
留守にするとき
声をかけあう
など、親しく話
をする
80%
41.2
たまに立ち話
や世間話を
する
資料:「「健康」に関する区民アンケート調査
16
顔をあわせたら
あいさつをする
100%
9.6
9.6
ほとんど
つきあい
はない
調査結果報告書」(平成 22 年 3 月)
(2)家族で支える力が弱くなっています
世帯数は年々増加傾向にありますが、一世帯あたりの人員は平成 19 年の 1.99 人
から平成 23 年には 1.90 人に減少しており、世帯の核家族化・単身化が進んでいま
す。
子育てをしている家庭においては、
「預ってもらえる親族や友人・知人はいない」と
いう回答が、乳幼児の保護者では 17.5%、
小学生保護者では 13.5%となっています。
乳幼児・小学生の保護者どちらにおいても、緊急時に比べて日常的に預ってもらえる
割合は低くなっています。
高齢者においては、支えてくれる家族や知人が「いない」という回答が 6.4%、
「い
るが、行き来できる所には住んでいない」が 5.1%であり、1 割強の人は支えてくれ
る人がいない状況にあります。全体に占める割合は少ないものの、それぞれが抱える
問題は複雑化しています。
今後も世帯の核家族化・単身化が進むと推測されることから、子育て、日常の手助
け、介護などについて、家族で支える力は今まで以上に弱くなっていくと考えられま
す。
世帯数と 1 世帯あたり人員の推移
世帯数
130,000世帯
1世帯あたり人員
124,995
126,509
122,282
2.40人
119,549
120,000世帯
2.50人
2.30人
116,008
2.20人
110,000世帯
2.10人
2.00人
100,000世帯
1.99
1.96
1.93
1.90人
1.92
1.90
90,000世帯
1.80人
1.70人
平成19年
平成20年
平成21年
資料:住民基本台帳人口(各年4月 1 日現在)
17
平成22年
平成23年
子どもを預かってもらえる人の有無
〈 乳幼児保護者調査 〉
0%
20%
日常的に祖父母等の親族に
預かってもらえる
15.8
3.4
0%
80%
20%
40%
日常的に祖父母等の親族に
預かってもらえる
『いる』
=85.1 %
7.6
31.6
預かってもらえる親族や
友人・知人はいない
17.5
1.7
総回答者数=1,310人
不明
80%
52.0
19.1
預かってもらえる親族や
友人・知人はいない
60%
28.2
緊急時もしくは用事の際には
子どもを預けられる友人・知人がいる
緊急時もしくは用事の際には
子どもを預けられる友人・知人がいる
不明
60%
緊急時もしくは用事の際には
62.2
祖父母等の親族に預かってもらえる
『いる』
日常的に子どもを預けられる
=80.8%
友人・知人がいる
緊急時もしくは用事の際には
祖父母等の親族に預かってもらえる
日常的に子どもを預けられる
友人・知人がいる
40%
〈 小学生保護者調査 〉
13.5
1.4
総回答者数=734人
資料:「墨田区次世代育成支援行動計画策定のための調査報告書」(平成 21 年 3 月)
『いる』=100%-「預ってもらえる親族や友人・知人はいない」-不明
支えてくれる家族や知人の有無
0%
20%
40%
いる(同居している・
近所に住んでいる)
66.7
いる(同居・近所ではないが、
行き来できる所に住んでいる)
その他
80%
6.4
いない
いるが、行き来できる所には
住んでいない
60%
22.8
5.1
2.0
回答者数=1,287人
資料:「高齢者の生活実態・意識調査等報告書」(平成 20 年 3 月)
●住民の声
・ひとり暮らしの人が増えていて、孤立化しているという
問題がある。
・核家族化が進んで、親が単独で子育てしている。身近な
助けあいがあるとよい。
18
(3)見守りや支援が必要な人が増えています
●見守り・支援・介護を必要とする人
65 歳以上の高齢者人口は増加しており、平成 23 年 4 月現在 53,014 人、高齢化
率は 21.2%です。高齢者の8割以上は介護を必要としない元気な高齢者であり、地域
における福祉活動の担い手として活躍している人も多くいます。
一方で、高齢者人口のうち、支援や介護が必要な状態につながりやすい 75 歳以上
の後期高齢者が占める割合は、平成 19年の 42.7%から平成 23 年には 46.8%とな
っており、増加の傾向にあります。
また、平成 17 年の国勢調査結果によると、高齢者がいる世帯のうち 57.2%が、「単
身世帯」あるいは「夫婦のみ世帯」であることがわかりました。
高齢者人口の増加は、地域において、見守り・支援・介護を必要とする人が増加す
ることに大きく影響します。
高齢者人口の推移
75歳以上
60,000人
48,462
65~74歳
49,880
高齢化率
51,260
52,468
50%
53,014
40%
23,251
24,785
20,675
21,541
22,343
20.3
20.6
20.9
21.2
21.2
27,787
28,339
28,917
29,217
28,229
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
平成23年
40,000人
20,000人
30%
20%
10%
0%
0人
資料:住民基本台帳及び外国人登録人口(各年 4 月 1 日現在)
高齢者がいる世帯の家族構成
三世代世帯
3,369世帯
10.0%
その他
1,890世帯
5.6%
●住民の声
・地域の中に、ひとり暮らしで、
見守りが必要な人が増えてきて
単身世帯
10,626世帯
31.5%
いる。
夫婦と子ども
世帯
9,168世帯 夫婦のみ
27.2%
世帯
8,663世帯
25.7%
・地域全体が高齢化していて、地域
を自分たちで支えられるか不安。
資料:総務省統計局「平成 17 年国勢調査」
19
●障害がある人
障害がある人の数を障害者手帳交付者数からみると、平成 23 年 3 月現在、身体障
害者手帳が 8,096 人、愛の手帳(知的障害者の手帳)が 1,299 人、精神障害者保健
福祉手帳は 804 人です。総じて高齢化の傾向がみられます。
また、精神障害者は、手帳の交付を受けていない人もおり、精神疾患のために通院
治療を受けている自立支援医療申請者は 4,262 人となります。
障害がある人は支援を受ける側というイメージを抱きがちですが、支援をする側と
して活動したり、地域に貢献している方もいます。しかし、障害がある人の増加、高
齢化の傾向を踏まえると、今後はより一層、地域における理解を進めるとともに、地
域において支える力が求められます。
障害者手帳交付者数の推移
9,000人
7,537
7,374
7,628
8,096
7,859
6,000人
身体障害者手帳
愛の手帳
精神保健福祉手帳
3,000人
1,167
1,137
0人
549
419
平成19年
1,211
平成20年
528
平成21年
1,250
677
平成22年
1,299
804
平成23年
資料提供:福祉保健部障害者福祉課・保健衛生担当保健計画課(各年 3 月 31 日現在)
●住民の声
・障害者・児について、家族の中だけで問題を抱えてしま
う人が多い。
・地域の中に交流がなく、孤立している障害者・児がいる。
・地域に障害者がいることが知られていない、把握されて
いない。
20
●子育て家庭
子育て家庭の世帯形態は、就学前の乳幼児のいる家庭の 90.5%、小学生のいる家
庭の 85.3%は、「両親と子どもの世帯」又は「ひとり親と子どもの世帯」の核家族世
帯となっています。
子育てに関する相談先の有無をみると、9 割以上が相談先があると回答しています。
しかし、5%には満たない少数ではあるものの、子育てについて相談先がないと回答し
ている家庭もあります。
地域の中では、子育てをしている人たちで交流したり、子どもを預けたり、預かっ
たりしながら、支えあって子育てをしている実態があります。しかし、一方ではひと
りで子育てをしている、日常の支援を得られないなどの悩みをあげている家庭もあり、
地域で子育て家庭を支援していく視点が求められています。
子育て家庭の世帯形態
〈 乳幼児保護者調査 〉
0%
20%
三世代世帯
60%
80%
100%
0%
20%
両親と子どもの世帯
88.2
両親と子どもの世帯
ひとり親と子どもの世帯
40%
〈 小学生保護者調査 〉
2.3
8.0
ひとり親と子どもの世帯
40%
60%
80%
100%
77.5
7.8
13.8
三世代世帯
その他の世帯
0.5
その他の世帯
0.7
不明
1.0
総回答者数=1,310人 不明
0.3
総回答者数=734人
資料:「墨田区次世代育成支援行動計画策定のための調査報告書」(平成 21 年 3 月)
21
子育てに関する相談先の有無
〈 乳幼児保護者調査 〉
〈 小学生保護者調査 〉
0%
0%
20%
40%
60%
80%
20%
40%
60%
あなたの配偶者
80.2
(パートナー)
あなたの配偶者
66.3
あなたの親
31.7
その他の家族・親族
保育園や幼稚園等
子育てのための施設
22.2
あなたの親
32.4
71.3
5.2
学校
2.7
10.2
保健所・保健センター
5.0
保健所・保健センター
1.0
子育て支援総合センター
等の相談機関
4.7
子育て支援総合センター
等の相談機関
2.2
区役所
0.5
区役所
0.3
その他
2.1
その他
1.9
気軽に相談できる人はいない
2.6
気軽に相談できる人はいない
不明
0.7
総回答者数=1,310人 不明
4.0
1.5
総回答者数=734人
資料:「墨田区次世代育成支援行動計画策定のための調査報告書」(平成 21 年 3 月)
●住民の声
・孤立して子育てしている状況がある。
・子どもが病気の時に対応してくれる制度・サービスが不十分。
・共働きが多いにもかかわらず、子育てを支援してくれる身近
な人がいない。
・通学時や外遊びの時の安全面に不安がある。
・小学校高学年から中学生を受け入れてくれる場所が少ない、
子どもの行き場が少ないと感じる。
22
100%
53.3
友人・知人
保育園や幼稚園等
子育てのための施設
80%
68.9
その他の家族・親族
68.6
友人・知人
学校
100%
(4)地域の活動への参加が減少しています
墨田区における町会・自治会への加入率は 68.6%(平成 23 年 8 月現在)、老人
クラブ加入率は 19.2%(平成 23 年 4 月現在)です。墨田区は他区に比べて加入率
が高い実態はありますが、これらの活動への参加率は総じて減少傾向にあります。
何らかの地域活動に参加していない人は 52.7%で、参加している人の 40.5%を上
回っています。つながりを得るきっかけとなっている地域活動については、参加が減
少している傾向があります。
町会・自治会加入世帯数の推移
加入世帯数
100,000世帯
89,173
89,547
91,285
老人クラブの推移
老人クラブ加入者数
加入率
91,534
91,876
90%
80,000世帯
13,830
14,015
老人クラブ加入率
13,888
13,635
50%
12,000人
40%
9,000人
30%
80%
60,000世帯
40,000世帯
14,056
100% 15,000人
72.0
70%
70.2
70.0
68.7
68.6
6,000人
60%
20,000世帯
0世帯
50%
3,000人
40%
0人
平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年
20%
22.0
21.0
20.6
19.9
19.2
平成
21年
平成
22年
平成
23年
10%
0%
平成
19年
平成
20年
資料提供:区民活動推進課(各年 8 月 1 日現在)
資料提供:高齢者福祉課(各年 4 月 1 日現在)
加入率=全世帯に占める加入世帯の割合
加入率=60 歳以上人口に占める割合
参加している地域の活動
■住民の声
・町会に加入していない高齢者や
若い世代が増えてきている。
・子ども会に入っていないので、
その後の地域の町会活動につ
ながらない。
・学校選択制により、子ども会活
0%
10%
町会・自治会
青少年の育成
30%
40%
50%
60%
28.6
4.0
地域の
ボランティア
5.4
PTA活動
5.2
趣味の講座
・グループ
スポーツ団体
20%
7.7
参加して
いる
=40.5%
5.1
動が成り立たなくなっている。
老人クラブ
6.7
・高齢になっても働いている人が
増えて、60 代では地域の活動
参加していない
その他
に入りたがらない。
・新しい住民は、町会につながり
無回答
にくい。
52.7
2.1
4.7
資料:「墨田区住宅マスタープラン改定基礎調査
報告書概要版」(平成 22 年 3 月)
23
(5)活動の担い手の確保・拡充が必要です
墨田区では人口の増加が続いており、新しい住民が転入してきている実態があるこ
とは既述のとおりです。新しい住民の増加は、地域の活動の新たな担い手となる人た
ちが増えることにもつながります。
しかし、平成 22 年 4 月現在、すみだボランティアセンターに登録されているボラ
ンティア団体数は 65 団体、個人ボランティア登録者数は 406 人であり、団体数は増
加していますが、個人登録者は年度により違いがみられ、総じて減少の傾向にありま
す。また、個人登録者の年齢は、30 歳代以下が減少し、年齢の高い人の割合が増えて
います。
町会・自治会の活動、ボランティア活動、住民参加型在宅福祉サービスなど、住民
が主体となり支えあいや助けあいを展開する活動は様々な形態がありますが、いずれ
においても今後の担い手の確保・拡充が求められます。
すみだボランティアセンター登録数の推移
平成 10 年
平成 13 年
平成 16 年
平成 19 年
平成 22 年
団体数
47 団体
47 団体
56 団体
64 団体
65 団体
個人登録者数
931 人
1,236 人
936 人
531 人
406 人
3,146 人
3,432 人
2,967 人
2,360 人
2,387 人
団体加入者数・
個人登録者数の合計
個人登録者の年齢構成割合(平成 16・22 年)
30%
平成16年(合計936人)
25.6
平成22年(合計406人)
25%
20.2
17.9
20%
22.6
14.9
15%
10%
7.1
11.1
9.6
9.2
14.5
14.3
3.4
5%
0%
10.1
10.7
5.4
0.0
3.1
0.1
0~9歳 10歳代 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 80歳代
資料提供:すみだボランティアセンター(各年 4 月 1 日現在)
24
●住民の声
・担い手をつくり出す仕組みがない。
・担い手の確保が大変である。
・ボランティアが高齢化している。
・仕事を持つ人が増えて、いろいろな活動への参加・協力が難
しくなってきている。
・リーダーを育てる、地域に関心を持ってもらう取り組みが必
要だ。
夏!体験ボランティアでの車いす体験
25
(6)災害への関心が高まっています
墨田区はこれまでの歴史と経験から、災害に対しては関心が比較的高いまちといえ
ます。しかし、東日本大震災が起こったことなどを背景に、大きな災害に対する不安
や関心は高まっています。墨田区住民意識調査における生活環境評価では、墨田区の
災害時の安全性について良い(「良い」と「やや良い」の合計)という評価は 13.9%
と 1 割台にとどまっています。
また、ヒアリング調査からは、東日本大震災後に実施したこともあって、災害に対
する不安が多くあげられ、災害への関心の高さが浮き彫りとなりました。
墨田区の災害時の安全性に関する生活環境評価
無回答
1.2%
良い 4.3%
やや良い
9.6%
悪い
8.9%
やや悪い
17.8 %
普通
57.2%
資料:「第 21 回墨田区住民意識調査結果概要」
(平成 22 年 10 月)
●住民の声
・古い家が多く災害が怖い。
・災害時の避難所や居場所など、障害者支援が大丈夫なのか非常に不安。
・災害時の避難場所がわからない。また、一人で避難できるかわからない。
・身近な地域で、住民同士で助けあえる災害時の体制づくりが必要。
・個人情報保護制度が壁になり、安否確認等に必要な情報が手に入らない。
26
(7)福祉の芽を育てる力・
ネットワークづくりを推進する力が求められています
ヒアリング調査からは、「社会福祉協議会を知らない人がたくさんいる」
「何をして
いるのかわかりにくい」といった声があげられました。加えて、
「社会福祉協議会が中
心になって、地域の中で支えあいを進めていこうという気持ちを育てる役割を担って
ほしい」などの意見も出されました。地域における社協の認知度アップとともに、社
協が地域福祉活動を推進するけん引役となることを期待する声があげられています。
一方、町会・自治会や老人クラブなどの住民が参加する地域活動は、墨田区では参
加が少なくなりつつあるとはいえ、都内の中では比較的活発に活動が展開されている
といえます。こうした活動を通して、特別に意識することなくボランティアや社会貢
献が自然な形で行われています。こうした日常の地域福祉活動を育て、地域や福祉へ
の関心や理解を深め、自然に地域福祉活動に取り組める土壌や文化をつくり育ててい
くことも重要です。
また、「活動のつながりがない」「効果的に課題の解決をしていくためには、バラバ
ラに行われている活動や取り組みを有機的につなぐ仕組みが必要」という意見もあり、
社協が中心となって、地域の人材、活動、組織のネットワークをつくるべきという意
見も出されました。
●住民の声
・社会福祉協議会の認知度をあげてほしい。何をしている
かわからないと、協働※もできない。
・見守りはしているが、ネットワークがない。
・地域ではいろいろな福祉活動があるが、活動同士のつな
がりは薄い。関係機関の連携が必要と感じている。
・ボランティア団体同士の横のつながりがない。
・地域の情報が入りにくい、何かあったときに地域の情報
が見えない。
27
2
理想とする10年後のすみだ
ヒアリング調査や墨田区地域福祉活動計画策定委員会及び作業部会において、住民
や関係機関等が理想とする 10 年後のすみだの姿がうかびあがってきました。10 年
後のすみだの姿に対する主な意見は、以下のとおりです。
●つながりがほしい!
・下町人情がずっと続くようなまちでいてほしい!
・あいさつが自然に飛び交うつきあいができるといいな~!
・家族ぐるみで地域でのつきあいをしていたい!
・すみませんの声に返事をしてくれる、あったかさのある
まちが理想!
●支えあい・助けあいが大切!
・新旧住民の交流が進み、理解して支えあえるまちに!
・子どもから大人まで世代の境なく、協力できるまちになっ
てほしい!
・ボランティアや地域貢献意識が高いまちに成長していきた
い!
●安心して暮らせるまちに!
・パワーあふれる元気な高齢者がたくさんいる墨田!
・子どもたちが公園や外でにぎやかに遊べる!
・防災・災害対応がしっかりしている安心のまちに暮
らしたい!
・多様な人たちが元気を発揮できる墨田になったらい
いな!
ヒアリング調査等より
28
住民・関係機関等が理想としているまちの姿からは、年をとっても、障害があって
も、だれもがいつまでも安心して暮らせるまちであってほしいという願いがあること、
住民一人ひとりが日頃から、お互いに心と心を通わせあい、支えあっていくことので
きるつながりを地域の中で築いていきたいと考えていること、こうしたつながりや支
えあいをつくる取り組みが、今まさに求められていることがわかりました。
住民・関係機関等が理想とする10年後のすみだ
みんながつながって
支えあい・助けあい
いるまちに
あふれるまち
なりたい!
になってほしい!
だれもが
安心して暮らせる
やさしいまちに!
ミニ・デイの活動
29
3
計画の基本理念
理想とする10年後のすみだを実現するために
基 本 理 念
みんなでつくる
ひとがつながる やさしいまち
墨田区では、少子高齢化や世帯の核家族化・単身化が急激に進行し、同時に近所同
士のつきあいやつながりが希薄化しつつあります。下町人情あふれるまちというイメ
ージがある一方で、家族や地域のきずなは弱まりつつあります。
こうした中、介護や支援、見守りが必要な人は増加しています。地域において、こ
れらの人たちを地域で支えるとともに、不安を解消したり、孤立を予防するためには、
人と人とのつながりは欠かすことができせません。
住民一人ひとりが、日頃から、お互いに心と心を通わせあい、支えあっていくこと
のできるつながりを、地域の中で築いていくことが求められています。中でも、社協
には、時には人と人がつながる橋渡しをしたり、時には住民や関係機関等をサポート
しつつ、つながるきっかけをつくったり、一緒に課題の解決に取り組んでいく役割が
期待されています。
本計画では、「みんなでつくる
ひとがつながる
やさしいまち」を基本理念とし
て掲げ、墨田区に生活するすべての住民が、住み慣れた地域で自立し、安心して生活
できる地域社会の実現に向けて、それぞれが持っている力を結びつないでいく取り組
みを進めます。
30
4
第3次計画において
社協に求められる取り組みの視点
(1)社会福祉協議会とは
墨田区社会福祉協議会は、昭和 35 年 5 月 30 日に任意団体として設立し、昭和 37
年 10 月 30 日に社会福祉法人となった民間非営利の社会福祉団体です。社会福祉法
第 109 条において「地域福祉の推進を図ることを目的とする団体」として明確に位置
づけられ、住民、ボランティア、福祉NPO※、民生委員・児童委員、福祉・保健・更
生保護に関する関係機関及び団体、行政機関などの参加・協力を得ながら、地域福祉
を推進する活動に取り組む役割を担っています。これまでも、住民や関係機関等との
協働※のもと、ボランティア活動の推進、住民参加型在宅福祉サービスなどの住民参
加による助けあい活動の支援、小地域福祉活動※やサロン活動※による地域ぐるみの支
えあい活動の支援などを行ってきました。
(2)第3次計画において求められる社協の取り組みの視点
第 3 次計画が始まる平成 24 年度からの 10 年間は、私たちがかつて経験したこと
のない課題が待ち構えています。さらなる少子高齢化、世帯の縮小、介護が必要な方
の増加が予測される一方で、右肩上がりの経済成長を期待することは困難であり、雇
用の不安が増大するとともに、社会保障費の増加や国及び地方自治体の財政が厳しく
なることは避けて通れない状況にあると考えられます。
そのような状況の中、社協には地域の中で核となり、人と人、地域の資源と資源、
人と資源をつなぎ、様々な地域の活動を支援することを通して、身近な地域の課題の
発見と解決に導いていく役割が求められています。しかし、社協の組織規模や財政基
盤を鑑みると、解決に必要な方策すべてに力を注ぐことは困難であり、限られた人材
や財源を集中的に投入する必要があります。
第 3 次計画における社協が取り組むポイントをまとめると、次の 4 つがあげられま
す。
31
●
人づくり、地域づくりを担う
●
1 つ目は、行政との役割分担を明確にするという視点で整理すると、行
政には建物や設備、制度や仕組みなどをつくる役割を、社協はそこで活動
する人づくり、取り組みに必要な地域のつながりづくりを推進することに
強い期待が寄せられています。
今後、社協は、これまで取り組んできた福祉教育やボランティア育成の
経験等を活かし、地域で活動する人づくり、地域のつながりづくりを進め
る役割を担っていきます。
●
住民の主体的な活動をサポートする
●
2 つ目に、住民活動を側面から支援する役割の強化があります。先にも
述べたとおり、社協の組織規模からは、すべての住民活動に社協の職員が
継続的にかかわることは現実的に困難であるといえます。また、地域には
それぞれの地域特有の課題があり、社協自身が活動の担い手となり、すべ
ての地域の課題解決に取り組むことは難しいと考えられます。
今後、社協は、住民組織の立ち上げ支援や既存組織の支援など、住民の
主体的な活動をサポートすることに力を注いでいきます。そのためには、
地区担当制の導入など、社協の職員が今まで以上に地域の中に入り、住民
とともに活動を展開することによって地域活動を支援していきます。
32
●
資金支援から情報・ノウハウ支援へのシフトを図る
●
3 つ目に、これまで社協は地域の活動に資金面での活動助成を行ってき
ましたが、今後は支援の必要な活動へは助成を行いつつ、一方で活動立ち
上げのための講座を開く、活動場所やノウハウを提供するなどの支援に力
を入れていきます。
今後、社協は、資金面での直接支援から情報やノウハウ等への間接支援
にシフトすることで、活動の形骸化やマンネリ化を回避し、課題の解決に
向けた効果的な活動に発展していくための支援を展開していきます。
●
これまでつながりが弱かった住民や対象にアプローチする
●
4 つ目に、これまでつながりがの弱かった住民や対象へのアプローチの必
要性があげられます。社協は町会・自治会、ボランティア団体、障害者団体
など、既存の組織や団体とのつながりを持って、数多くの場面で協働※して
きた経験があります。しかし、こうした町会・自治会、団体等とつながりの
ない住民への認知度は低く、また、若者や子育て家庭、外国籍の方、サラリ
ーマンの方たちなどとのつながりは強いとはいえず、これまで展開してきた
事業においても、これらの方々は対象となっていない場合が多々みられます。
今後、社協は、地域の課題の発見や解決のためにも、これまでつながりが
弱かった住民や対象にアプローチをし、これらの方たちを巻き込んだ活動を
展開していきます。
33
5
基本目標と主要課題
本計画では、基本理念を実現するための基本的な方向を示す 7 つの基本目標を掲
げます。
また、基本目標ごとに主要課題を掲げ、主要課題にそって具体的な事業や活動を展
開していきます。
基本目標1
基本目標1
小地域福祉活動による支えあいのまちをつくる
小地域福祉活動※など地域における住民の主体的な福祉活動の拡大・充実を推進
するとともに、活動を担う人材の育成、社協の支援体制の充実に取り組みます。
主要課題1
住民が主体的に行う活動-小地域福祉活動を拡大・充実する
主要課題2
住民が主体的に行う活動-地域を支える人材を育成する
主要課題3
社協が主体的に行う活動
-地域福祉を支える社協の体制を充実する
主要課題4
基本目標2
基本目標2
社協が主体的に行う活動-課題別支援体制を構築する
ボランティアの心が育むまちをつくる
より多くの住民がボランティア活動に関心を持ち、参加できるよう支援の充
実・強化を図ります。
主要課題5
ボランティア活動を充実させる体制を整備する
主要課題6
分野別ボランティア活動を支援する
基本目標3
基本目標3
地域福祉のネットワークをつくる
社協は地域福祉を推進する中心的役割となることを期待されていることから、
地域福祉推進のためのネットワーク構築の核となる役割を担うなど、ネットワー
クづくりに向けた取り組みを展開していきます。
主要課題7
地域福祉の充実に向けたネットワークを構築する
34
基本目標 4
基本目標4
学び・知らせあう地域福祉を進める
住民が身近な地域の課題に気づき、課題の解決に向けて取り組むこと等を通じ
て、住民同士が学び・知らせあう機会や場づくりを進め、住民一人ひとりが地域福
祉の担い手として、主体的に行動する力を育成していきます。
主要課題8
福祉教育を充実する
主要課題9
地域福祉情報を発信する
主要課題10
人材育成のための講座を充実する
基本目標 5
基本目標5
安心して暮らすための支援を進める
住民が安心してサービスを利用できるための支援、一人ひとりの権利を守る支
援のさらなる充実を図り、判断能力が不十分な方、家族等の支援が期待できない
方でも、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう事業に取り組みます。
主要課題11
福祉サービス利用支援体制を充実する
主要課題12
当事者への支援を充実する
主要課題13
福祉資金貸付事業を充実する
基本目標 6
基本目標6
災害に備えて人と地域の輪をつくる
災害に対する住民の不安を軽減し、住民自らできる取り組みを進めるため、社
協の活動や事業の特性を活かした災害時対応の取り組みを展開します。
主要課題14
災害に備えた地域づくりを進める
主要課題15
災害時に即応できる体制の整備をする
基本目標 7
基本目標7
地域に根ざした社協の基盤をつくる
社協が住民や関係機関等と協働※して、地域福祉を推進する地域の核となる役
割を担えるよう、社協の基盤強化に取り組みます。
主要課題16
住民との関係を強化する
主要課題17
社協の運営基盤を強化する
35
6
事業の展開
-全体の体系図-
基本理念
みんなでつくる
ひとがつながる
主要課題
基本目標
住民が主体
1
小地域福祉活動による
支えあいのまちをつくる
やさしいまち
で活動する
社協が主体
で活動する
主要課題1
小地域福祉活動を拡大・充実する
主要課題2
地域を支える人材を育成する
主要課題3
地域福祉を支える社協の体制を充実する
主要課題4
課題別支援体制を構築する
2
ボランティアの心が育む
まちをつくる
主要課題5 ボランティア活動を充実させる体制を整備する
主要課題6
分野別ボランティア活動を支援する
主要課題7
地域福祉の充実に向けたネットワークを構築する
主要課題8
福祉教育を充実する
主要課題9
地域福祉情報を発信する
主要課題 10
人材育成のための講座を充実する
主要課題 11
福祉サービス利用支援体制を充実する
主要課題 12
当事者への支援を充実する
主要課題 13
福祉資金貸付事業を充実する
災害に備えて
人と地域の輪をつくる
主要課題 14
災害に備えた地域づくりを進める
主要課題 15
災害時に即応できる体制の整備をする
地域に根ざした
社協の基盤をつくる
主要課題 16
住民との関係を強化する
主要課題 17
社協の運営基盤を強化する
3
地域福祉の
ネットワークをつくる
4
学び・知らせあう
地域福祉を進める
5
安心して暮らすための
支援を進める
6
7
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※[新規]は本計画において新たに始める新規事業、[重点]は本計画における重点事業、(再)は再掲事業
主要課題1
1.小地域福祉活動実施地区の拡大 [重点]
2.拠点型小地域福祉活動の実施 [重点]
3.ふれあいサロン実施地区の拡大 [重点]
4.小地域福祉活動メニューの充実 [新規・重点]
5.孤立を防ぐ取り組みの充実 [新規・重点]
6.おもちゃサロンの充実 [新規]
7.災害時に活きる小地域福祉活動の充実 [新規]
8.外国人住民への支援の充実 [新規]
主要課題2
9.地域活動者等の人材発掘
10.地域福祉活動リーダーの育成
主要課題3
11.地域福祉コーディネーターの拡充
12.地域福祉活動への支援の充実
主要課題4
14.地域特性に合った支援の構築 [新規・重点]
15.孤 立 し た 人 に 対 す る 支 援 及 び 他 機 関 と の 連 携 [新規]
16.子どもが活躍できる場づくり
17.ミニ・デイサービスの充実
主要課題5
18.すみだボランティアセンターの充実 [重点]
19.ボランティアグループへの支援の充実
20.幅広い世代向けのメニューの充実
主要課題6
21.企業向け社会貢献プログラム作成・協働事業の推進 [重点]
22.住民参加型在宅福祉サービスの充実 [重点]
23.社会貢献型後見人の養成・支援 [新規・重点]
16.(再)子どもが活躍できる場づくり [新規]
主要課題7
24.地域活動グループ間のネットワークづくり
25.地域を取り巻く組織及び地域資源との連携の強化
26.ボランティアグループのネットワーク化
27.専門的ボランティアと地域との連携の強化 [重点]
28.関係施設・NPO等との連携の充実
29.社協と関係機関の連携強化
5. (再)孤立を防ぐ取り組みの充実 [新規・重点]
14. (再)地域特性に合った支援の構築 [新規・重点]
15. (再)孤立した人に対する支援及び他機関との連携 [新規]
主要課題8
30.地域での「福祉教育」の充実
31.学校での「福祉教育」の充実
主要課題9
32.地域福祉情報の発信の充実 [新規・重点]
33.ボランティア啓発事業の実施
主要課題 10
34.ボランティア育成のための講習・講座の充実
35.災害に備えた講座の実施 [新規]
9. (再)地域活動者等の人材発掘 [重点]
10. (再)地域福祉活動リーダーの育成
主要課題 11
36.成年後見制度の利用支援
23. (再)社会貢献型後見人の養成・支援 [新規・重点]
37.法人後見監督事業の実施 [新規・重点]
38.地域福祉権利擁護事業の充実
39.財産保全サービス事業の充実
40.総合相談(福祉なんでも相談)事業の充実
41.権利擁護法律相談事業の充実
42.苦情調整第三者委員会の運営
主要課題 12
43.障害者の地域デビューを支える地域の体制づくり
44.当事者グループへの支援 [新規]
6.(再)おもちゃサロンの充実 [新規]
45.福祉用具・用品のリサイクルの推進
主要課題 13
46.福祉資金貸付・生活相談の充実
主要課題 14
7. (再)災害時に活きる小地域福祉活動の充実 [新規]
27. (再)専門的ボランティアと地域との連携の強化 [重点]
主要課題 15
47.災害ボランティア活動体制の整備 [重点]
35. (再)災害に備えた講座の実施 [新規]
48.福祉避難所との連携 [新規]
49.被災者に対する資金の相談・貸付
主要課題 16
50.職員の地区担当制の導入 [新規・重点]
11. (再) 地 域 福 祉 コ ー デ ィ ネ ー タ ー の 拡 充 [重点]
51.広報活動の充実
52.住民ニーズ・福祉課題の調査研究及び施策提言
53.地 域 福 祉 活 動 計 画 の 推 進 体 制 確 立 と 計 画 的 推 進 [重点]
主要課題 17
54.会費・寄付金等の自主財源の増強と安定的確保 [重点]
55.補助金・助成金等の安定的確保
56.事業収入の確保
21. (再)企業向け社会貢献プログラム作成・協働事業の推進 [重点]
57.個別給付の見直し
58.助成事業の見直し
59.理事会・評議員会等の活性化 [重点]
60.経営の現況把握と経営戦略の策定 [重点]
61.法令順守と情報公開の推進
62.事業改善や新規事業の開発 [重点]
63.軌道にのった事業の委譲 [新規]
64.事務局組織強化と職員の資質向上
[重点]
[重点]
[新規・重点]
37
13.小地域福祉活動の広報の充実
[新規]
[新規]
[重点]