さいゆうしゅう 最優秀賞 「えぞいととんぼの産卵」 さつえい うら てるあき 撮影 浦 輝秋さん 審査員 評 写真全体の構成、色感覚、生 しぼ 態的な意味、絞りの設定、光の とら 捉え方、どれをとっても申し分 のない写真です。スイレンの葉 の色が錦絵のように美しく、水 う 面と浮かぶ葉との境目に、わず かに太陽の反射が見える。その 葉にとまって産卵するエゾイト トンボの生態。どこか昔を思わ せ、なつかしさまでも感じさせ てくれます。この写真に、あと 数枚の写真を追加すると、すて きな絵本ができあがりそうです。 おうぼ しんさ 応募総数50名84点の中から最優秀賞に選ばれたのは、浦輝明さんの作品です。審査は写真家の大倉 しゅんじ 舜二さんと山口進さんにお願いしました。入選された方々の作品をはじめ、応募いただいたすべての作 品は、5月29日までふれあい昆虫館2階「特別展示コーナー」で展示しています。 たくさんのご応募ありがとうございました。 (7∼8ページに関連記事) しょうかい 昆虫による受粉をテーマに、7種の植物とその奇妙な花に引き寄せられる昆虫の関係を紹介した写真 かんしょう 展です。作品展とあわせてご鑑賞ください。 2階の展示スペースは「チョウの園」を取り囲むように「コ」 巨大なバッタの模型の下にあるタッチパネルパソコンでは、 の字型になっており、今回紹介する「学習コーナー」や「情 昆虫の体の様々な器官を写真と簡単な解説で知ることができ ゆうが ま 報コーナー」から、優雅に舞うチョウをガラス越しに楽しむ ます。また、このパソコンの向かいにある、たて2.5mよこ こともできます。 3.5mの大きなパネルでは、〈食物連鎖〉の中での「昆虫」の 生態的な地位を絵でわかりやすく示しています。 この他、〈昆虫の進化〉では、“太古の昔からの昆虫・ゴ キブリ”と“ハチの仲間の進化”をテーマにパネルで解説し しょくもつれんさ 昆虫の定義や体のつくり、食物連鎖、共生、系統と進化、 ています。また、 〈共生〉については“昆虫と植物の助け合い” 変態など、昆虫に関する基本を学ぶコーナーです。ちょっぴ と“昆虫と昆虫の助け合い”を、〈変態〉については“完全変 りアカデミックで難しい内容もありますが、できれば何か一 態”と“不完全変態”を、それぞれ立体的なアクリル製のパ つは見てほしいところです。 ネルで紹介しています。 ここには、昆虫の体のつくりについて紹介した巨大なバッ タの模型があります。このバッタのように、体が頭、胸、腹 の三つに分かれた節足動物を「昆虫」といいます。昆虫は、 同じ節足動物のクモ、ムカデ、カニなどに比べて、種類数、 最後の展示コーナーが、「情報コーナー」です。 たな 個体数がはるかに多く、様々な環境に生息しています。特に ここでは、棚 種類数から見ると、動物全体の約4分の3をしめますが、な に並んだ図書で はんえい ぜこれほどまでにきわだった繁栄をとげることができたので 興味のある昆虫 しょうか。 を詳しく調べて ここで、もう一度昆虫の体に目を向けてみましょう。情報 もよいでしょう。 を処理するために発達した頭、運動系をつかさどる胸、そし パソコンのクイ くわ せいしょく て消化と生殖をつかさどる腹と、重要な機能を三つの部分に ズで、自分の昆 役割分担させたこと、さらに、いろいろな環境に体のつくり 虫知識を確かめ はんしょく (機能)を変化させていく順応性を身につけたことや、繁殖の ることもできま ぼうだい パソコンクイズを楽しむ家族 ための膨大な産卵数など、繁栄の秘密はいろいろあるようで す。 す。 小さな子ども向けには、ジグソーパズルなどの遊具や絵本 し し く い す があります。また、獅子吼の山々を望みながら、椅子にこし かけてゆっくりくつろぐスペースもあります。「感想ノート」 には、みなさんのご意見、ご感想をどしどし書いてほしいと 思っています。 このコーナ ーは、さまざ まな昆虫情報、 自然情報が得 られるように、 さらに充実さ せていく予定 です。 (津田) タッチパネルパソコンの画面 パズルをする子どもたち −2− 昆虫ウォッチングコーナーに、展示を休止したマイマイカ ミズカマキリは、野外では5月頃に水際の土などにうめこ ブリに代わって、新顔が登場しました。その昆虫はクロカタ むように産卵します。ところが、展示している水そうで飼育 ゾウムシ(写真1)といい、名前のとおり体がかたく真っ黒な していたミズカマキリが、昨年の10月22日に、かくれ場所 ゾウムシの仲間で、そのかたさは鳥が食べても消化できない としておいてある木の上に季節はずれの卵を産みました。 と言われるほどです。 おき 本種は日本では沖 や え やま なわ 縄県の八重山諸島に 生息しており、当昆 虫館では一昨年の夏 しいく より飼育しています。 ここでは本種の飼育 法について紹介しま 写真1 クロカタゾウムシ す。 ミズカマキリ はば 飼育には、幅約30cmのプラスチック水そうを使用し、 そこで、産卵場所として生け花をさすときに使う「オアシ かんそう 乾燥を防ぐため、フタには小さな穴をあけたビニールをかぶ しめ ス」を新たに水そうに入れておいたところ、それに産卵しま し せています。底には湿らせた砂を5cm以上の深さに敷き、 した。卵が産みつけられたオアシスは水そうから取り出し、 から その上に殻に切れ目を入れたマテバシイのドングリを、2段 水を1cmほど入れた直径10cmのカップに移しました。産 つ 以上になるように敷き詰めます(写真2)。成虫のエサには、 卵は11月13日までみられ、その間に2回オアシスを取りか リンゴの果実やサンゴジュを与えていますが、サンゴジュは えました。 葉だけでなく芽や樹皮など様々な部分を食べています。 最初のふ化を確認したのは10月27日で、一度に28頭の クロカタゾウ 幼虫が生まれました。その後も続々とふ化し、11月20日ま ムシは、この飼 でに3個のオアシスから97頭の幼虫が生まれました。 育容器内で交尾 ふ化した幼虫は1∼3頭ずつカップに入れ、エサとして、 し、敷き詰めた フタホシコオロギの1齢幼虫を与えました。3齢を過ぎた頃 ドングリのすき からコオロギを大きなものに変え、そのほかときどき、みど 間に産卵します。 り池から採ってきたミズムシやヤゴも与えました。 ふ化後、幼虫は ふ化して39日目の12月5日に最初の成虫が羽化し、最終 ドングリにもぐ 的に28頭の成虫が得られました。飼育経過は表に示したと りこみ、それを おりで、成虫の体長は6月に飼育していたものと大きな差は 食べて育ちます。 ありませんでした。 れい 写真2 クロカタゾウムシ飼育容器 大きくなった幼虫はドングリから出て、下に敷いた砂の中で 各齢期の日数と成虫の体長(10頭の平均) サナギになり、そこで成虫となって外へ出てきます。 1 齢 2 齢 3 齢 4 齢 5 齢 幼虫期間 体 長 この飼育法では、ふ化や成長の様子をくわしく観察するこ 9.7日 とができないので正確な成長記録はとれませんが、22∼27 7.6日 7.2日 8.0日 11.5日 44.0日 39.0mm ℃の飼育室で、およそ3∼4ヶ月で成虫となって出てきました。 ところで、ミズカマキリだけでなく、同じ部屋で展示して また、容器のかべ際でさなぎになった個体を観察していたと いたタガメも、11月27日と12月8日に卵を産みました。 ころ、2週間後に羽化したのが確認できました。 これら2種の季節はずれの産卵の要因ははっきりとわかりま 以上の方法で、飼育を始めた一昨年は10頭だった個体数が、 せんが、この室内における温度や日長条件が野外と大きく異 3世代目が羽化している現在、150頭にまで増えています。 なったために起こった現象ではないかと考えています。 (平松) (中村) −3− ・容器に入れる幼虫の数は少ない方がよく育ちます。目安と しては、10cm四方に1∼2頭です。 しつど 卵からかえった幼虫には、すぐに食草(エサとなる植物) ・容器の中の湿度が高くなると、ウィルス性の病気が発生し を与えなければなりません。ふ化したばかりの幼虫はとても やすくなることから、容器内についた水滴はふき取りまし 小さく、一番大きなアゲハチョウ科の幼虫でも、せいぜい2 ょう。容器の底に、新聞紙やティッシュなどを敷いておく ∼3mmです。このようなふ化して間もない幼虫は、口がま と、余分な水分をある程度吸い取ってくれます。 すいてき じょうぶ だ丈夫ではないので、できるだけ柔らかい葉を与えるように ・密閉できる容器(タッパーウェアなど)を使用する際は、 しましょう。 温度管理に気をつけましょう。太陽光やライトが当たると、 飼い方には、大 中はすぐに高温になり、幼虫が死んでしまいます。空気を きく分けて2つの方 通すために、ふたに1∼2cmの穴をあけ、その穴にカン 法があります。1つ レイシャなどを貼っておきましょう。 はタッパーウェア ・容器内にフンがたまると、カビがはえたりして不衛生です。 やプラスチック水 掃除は毎日行なってください。 そうなどを使って ・当たり前のことですが、食草が少なくなったり乾いたりし は そうじ かわ か 写真1 写真 専用のカップを利用した飼育(シロオビアゲハ) 育てる方法で、昆 たら、すぐにとり換えましょう。 虫館では、飼育専 昆虫館では、飼育専用カップを使って、アゲハチョウ科や 用 の カ ッ プ( 直 径 マダラチョウ科のチョウをたくさん飼っています。これらの 1 0 c m × 高 さ 他にも、シジミチョウ科など、幼虫が単独で生活する種類を 1 0 c m )を 使 用 し 飼育する時に有効です。 ています(写真1)。 もう1つの方 この方法は、手間 法は、鉢植えや がかかる反面、病 地植えの食草に、 気の伝染を防いだり、 直接幼虫をつけ はちう おそ 写真2 写真 食草の切り口に水でぬらしたティッシュをまく 外敵に襲われる心 る飼育法です 配がないという利 ( 写 真 4 )。 エ 点があります。また、 サの交換がほと 幼虫の行動を細か んど必要ないう く観察するのに適 え、フン掃除も しています。食草 楽で、容器を使 の切り口に水でぬ った飼育よりも手軽なのですが、大きな欠点があります。 らしたティッシュ 第1は、病気が発生した時に、その食草につけた他の幼虫 を ま き( 写 真 2 )、 にも伝染してしまい、全滅する危険があることです。病気の さらにアルミホイ 幼虫は、エサをあまり食べなかったり、液状のフンをしたり ルでおおい(写真3)、 しますから、そのような幼虫がいたら、すぐに隔離しなけれ それに幼虫をつけ ばなりません。ただし、このような幼虫を発見した時点では、 こうかん 写真4 写真 鉢植えの食草による飼育(クロテンシロチョウ) ぜんめつ かくり 写真3 写真 さらにアルミホイルでおおう て飼育容器の中に入れておけばよいのです。この時、割りば すでに他の幼虫に伝染していることが多いものです。そうな いっしょ しなどを適当な長さに切って一緒に入れておくと、食草を立 ると、残念ながら、手のほどこしようがありません。 か て掛けたり、さなぎになる時に役立ちます。 第2は、野外の地植えの食草につけて飼育する際は、外敵 注意点として、次のことに気をつけましょう。 に襲われやすいということです。小鳥はいうにおよばず、肉 −4− 食性の小動物、はたまた寄生バチや寄生バエなどの小さなも 態になったら、さ のまで、危険がいっぱいなのです。目の細かいネットなどで わったり動かした おおうと、ある程度は防ぐことができますから、必ず行なっ りしてはいけません。 てください。できれば鉢植えの食草を準備して、室内で飼育 台座から動かなく する方が安全でしょう。 なって脱皮を完了 昆虫館では、シロチョウ科とタテハチョウ科の多くを、鉢 するのに、1∼2日 植えの食草で飼っています。これらの他にも、イネ科やカヤ 間ほどかかります。 ツリグサ科などの水あげの悪い植物を食草とする、ジャノメ さなぎには、お チョウ科やセセリチョウ科のチョウなど、幼虫が集団で生活 尻を固定したうえ したり、巣を作ったりする種類に有効です。 で背中に糸を回し しり たい て 体 を 支 え る“ 帯 よう 蛹” (アゲハチョウ 写真 写真7 垂 蛹(オオゴマダラ) は ほとんどのチョウの幼虫は、特定の葉に糸を吐きつけ、そ 科やシロチョウ科 だいざ の上で休みます。この糸が吐きつけられた部分を“台座”と など) (写真6)と、お尻とその接着部分を糸で固定してぶら いいますが、台 下がった状態になる“垂蛹” (マダラチョウ科やタテハチョウ 座 を 作 る に は、 科など) (写真7)があります。どちらも、よう化(幼虫から かなりの体力が さなぎになること)前には、体が縮まるので、この状態にな 必要なので、幼 ったら、絶対に動かしてはなりません。また、よう化して1 虫はできるだけ 日くらいは、さなぎが完全に固まっていないので、さわらな 動かさないよう いよう注意しましょう。 すいよう 心がけましょう。 食草交換やフ 写真 写真5 にっちょう 水でぬらした筆を使って幼虫を移動させる ン 掃 除 な ど で、 日照時間の長短を“日長”といいます。多くの昆虫はこの どうしても幼虫 日長によって、休眠(成長や活動が停止すること)するかし を移動させる必要がある時は、次の点に注意しましょう。 ないかが左右されます。 ・幼虫はできるだけ素手でさわらないようにしましょう。 この日長を人工的に変えることによって、春∼夏に休眠蛹 きゅうみんよう ・台座で休んでいる幼虫を移動させる時は、はさみで周囲を (越冬するさなぎ)を作ったり、秋∼冬でも休眠しないさな 切り取って、そのまま移します。 ぎをつくったりすることが可能です。たとえばアゲハチョウ ・どうしても幼虫だけを動かす必要のある時は、筆を使って の場合、幼虫時代の日長を13時間以下にすると休眠蛹にな ください。水でぬらした筆で、幼虫のお尻を持ち上げるよ りますが、14時間以上にすると休眠しないさなぎになる、 うにすると、筆にくっついてきます(写真5)。 といったことが調べられています。 昆虫館では、このような性質を利用して、食草が豊富な夏 のうちに、冬に羽化させるための休眠蛹をたくさん用意して だっぴ く 幼虫は脱皮を繰り返しながら成長します。その回数は種類 います。また、チョウの羽化が少なくなる秋∼冬には、日長 によって異なります を長く設定して、休眠しないさなぎを作り、継続して「チョ が、おおよそ4∼5 ウの園」にチョウを放すことができるよう工夫しています。 回脱皮して、さなぎ 幼虫時代の日長は、さなぎばかりでなく、羽化する成虫の になるのです。 大きさや模様、生態にも、影響をおよぼすことがあります。 脱皮前にはエサを いろいろな種類で確認できますから、夏休みの自由研究など ほとんど食べなくな で、みなさんも取り上げてみてはいかがでしょうか。 り、台座から動かな 日長を調節する方法は簡単です。飼育容器がすっぽり入る くなります。また体 ような大きめのダンボール箱を用意し、決められた時間をそ の色も、それまでよ の中に入れて、真っ暗な状態で飼育するだけです。どんな種 けいぞく えいきょう あわ 写真6 写真 帯 蛹(ナガサキアゲハ) り少し淡くなります。 類を選べばよいのか、また日長をどのように設定したらよい 脱 皮 に 失 敗 す る と、 のかなど、分からないことがあったら、昆虫館へどんどん質 幼虫は死んでしまう 問してください。 (三上) ので、このような状 −5− ろぼう 平成8年8月、白山の砂防新道を登り始めて20分ばかり過ぎた頃、路傍のイ か ケマの葉が巻かれているのに気がついた。初めて見るものだから、休止も兼ね てさっそく調べてみることにした。巻かれた葉をほぐしてゆくと、中から乳白 色をしたガの幼虫らしいものが飛び出して、地上に落下した。探しても見つか らないため、次の葉を取り、注意しながらほぐしてようやく幼虫を手にするこ とができた。幼虫はガの一種、それもメイガ科の幼虫に思われたので、飼育も 簡単であろうと考えて、巣を2個採集して持ち帰ったのである。ところが、こ のイケマの葉は案外早くしおれてしまい、幼虫は死んでしまった。 次の年は幼虫の巣を見つけることができず、平成10年に再度飼育を試みよ うと登山をした。この年は10個の巣を採集し、昆虫館で5個を、家で5個を、 イケマの葉を巻いたガの幼虫 それぞれ飼育することにしたのである。昆虫館では5匹の幼虫がともにイケマの葉を食い順調にさなぎに成長したので、 くさ そのうち3匹は早く羽化させようと途中から低温処理をした。これが悪かったのかイケマの葉が腐り、さなぎは死んで しまった。残りの2匹もイケマの葉が腐り、内にひそんでいたさなぎは死んでしまった。 自宅に置いたものはどうなったかというと、初めの頃は順調に成長していた が、そのうち3匹が急に太くなった。「これは老熟したな」と思っていたところ、 2∼3日して調べてみると、幼虫の体側に1匹の線虫がうごめいていた。線虫の ふしょう 名前は不詳だが、こんなガの幼虫に寄生する種もいることを知らされたのであ る。残りの2匹も結局死んでしまい、平成10年の飼育も失敗に終わってしまっ た。 平成11年、再びイケマの葉を巻くメイガの幼虫を探して砂防新道をたど り、 どうにか1匹だけ採集して持ち帰った。この時は巻いた葉を現地でほぐしたが、 ガの幼虫から出てきた線虫 大部分は小さな幼虫であったため、飼育しやすい大きなものを採集したのであ こうかん る。同時に持ち帰った別の葉と交換しながら飼育を続けたが、この時は空のタ ッパーがなかったため、土を半分ばかり入れたポットに入れていたのである。昆虫館から帰ると毎日のようにポットを だっしゅつ 調べていたが、ある日、葉の間から脱出した幼虫が土の中にもぐり始めている様子を目にした。白山でも老熟した幼虫 は土の中にもぐるのだろうかと思っている今日この頃である。 い つ 平成12年になっても、幼虫がもぐったポットには何の変化もない。何時になったら成虫が羽化してくるのか、楽し みに待つ日々が続く。 (館長) 「ゴキブリを知っていますか?」と聞かれて「知らない」と答える人は、おそらくいないでしょう。私たちの生活に最 きら も身近な存在ですが、最も嫌われているゴキブリ。これだけ身近にいながら、みなさんはゴキブリのことをどこまで知 っているでしょうか。 たんじょう ゴキブリは、私たち人類が誕生するずっと以前の、約3億年も前から存在していたと考えられています。この3億 きょうりゅう 年前というのは、恐竜の現れる時代のさらに昔で、魚類から進化した両生類が地上へ進出した頃にまでさかのぼります。 しかも、3億年という気の遠くなるような長い時間の中で、その形態をほとんど変えることなく現在に至っているとい う点で、ゴキブリはまさに「生きた化石」と呼ぶにふさわしい昆虫なのです。 −6− せんぱい このように、ゴキブリは系統学的には私たちの「大先輩」にあたるにもかかわらず、そのテカテカと黒光りする体、 おんみつ さか 夜行性ゆえの隠密行動、そしてコソコソした不気味な動きなど、私たち人間の感性を逆なでするような形態、生態をも さいきん ったことも加わって、「害虫」のイメージが強調されてしまいました。それに、ゴキブリが細菌やウィルスなどの病原 ばいかい いぞん 体を媒介するやっかいな昆虫となったのも、ゴキブリの一部が人間生活に依存した生活をするようになり、生ゴミを食 ふえいせい べたり、下水道や便所といった不衛生な場所をすみかとしたためです。 しかし、ゴキブリのすべてが害虫かというとそうではなく、日本に生息しているおおよそ50種のうち、人家に住み つき「害虫」と呼ばれているのは、クロゴキブリ・ヤマトゴキブリ・チャバネゴキブリなど10種ほどです。本来野外に そうじや すんでいた彼らは「森の掃除屋」であり、時には花粉の媒介者としても活躍します。つまり、ゴキブリは自然生態系の 一構成員で、重要な役割を果たしているのです。また、ゴキブリは栄養価が高く、東南アジアでは食用や薬用に使われ ているそうです。最近では、ゴキブリの脳に電極を取り付けた「ラジコンゴキブリ」も作られており、また、昆虫の神 も ほう 経機能の解明や昆虫を模倣した六足歩行ロボットの開発など、生物工学をはじめとした様々な分野で未知の可能性を秘 めています。 こうしたゴキブリの実態や有用性を考えると、少しは見る目が変わってくるのではないでしょうか。 (石川) 区 分 最優秀賞 優 秀 賞 優 秀 賞 優 秀 賞 入 選 入 選 入 選 入 選 入 選 入 選 特 別 賞 特 別 賞 第一回昆虫写真コンクールの入賞者は右の12名の方々です。 さつえい ひしゃたい 昆虫という撮影しづらい被写体であったためか、応募者は写 真に熟練した方が多く、内容の濃いコンクールとなりました。 しんさ 審査員からも、「レベルが高く、審査に困った」との感想を いただいたほどです。また、コンクール作品展では来館者に よる展示写真の人気投票を行なっています。お気に入りの一 枚にご投票ください。 (林) 作 品 タ イ ト ル えぞいととんぼの産卵 脱 皮 ベニシジミ ベニシジミ 水のみ場 ウラミスジシジミ トンボと水蓮 れんげ咲く頃 アザミに訪花したミドリヒョウモン雄 ハラビロカマキリ アブラゼミ羽化 愛のひととき 撮影者 浦 輝秋 小幡英典 井上正照 中橋利和 藤原孝夫 竹谷宏二 城政太郎 松本常義 矢田新平 山本浩伸 本間義弘 野口幸子 昨年の12月 30日に新しい 1月22日に多目的ホールで、チョウのハネに関する話と 食草温室が完 実験、しおり作りを行ないました。チョウの分類、ハネの構 成 し ま し た。 造、鱗粉の色や形について話した後、顕微鏡を使った鱗粉の この新温室は 観察と、どのハネがあればチョウは飛べるのかをオオゴマダ 広さ150㎡で、 ラで実験しました。 温風ヒーター しおり作りはあらかじめ用意しておいたチョウのハネを使 で暖めています。 って行ないました。台紙に絵や文字をかいて、それにチョウ これにより、食 のハネをボンドで貼り、最後にラミネート加工をします。簡 草の温室栽培 単そうですが、ハネが薄いことや、鱗粉のとれやすい種など りんぷん 新食草温室 せま 面積が約2倍となりました。これまでは食草の栽培面積が狭 もあり、台紙に貼るのがなかなか思うようにいかない様子で く、チョウなどのエサとなる食草が冬場を中心に不足がちで した。今回は参加者が13名と少なかったのですが、その分 したが、その心配がかなり解消できる見込みです。 (藤) ゆっくりと観察、工作ができたのではないでしょうか。(林) −7− 同時開催 開催期間 平成12年2月23日∼5月29日 場 所 昆虫館2階 特別展示コーナー 日 時 平成12年6月17日(土) 夕方∼ 場 所 金沢市周辺(予定) 内 容 ゲンジボタルの観察 参加対象 制限なし(小学生以下は保護者同伴) 定員30名 参 加 費 無 料 定員30名 日 時 平成12年7月2日(日) 無 料 場 所 未 定 日 時 平成12年4月16日(日) 場 所 金沢市坪野町坪野キャンプ場周辺 内 容 ギフチョウの生態観察ほか 参加対象 小学4年生以上(小学生は保護者同伴) つぼの どうはん 参 加 費 内 容 「森の宝石」と呼ばれるゼフィルス(ミドリシジミ の仲間)の生態観察など 参加対象 小学4年生以上(小学生は保護者同伴) 定員30名 日 時 平成12年5月13日(土) 午前と午後の2回 場 所 昆虫館 多目的ホール 内 容 アゲハチョウやモンシロチョウの飼育体験 参加対象 制限なし(小学3年生以下は保護者同伴) 参 加 費 参 加 費 無 料 定員各30名 やっぱり春はいいですね。1998年は虫の発生が非常 無 料 に早く、1999年は例年並みでしたが、今年はどんな年 になるのでしょうか。 そういえば、「2000年1月1日」のラベルを付けられ そっこう る虫を採集しようと林へ出かけた人に始まって、側溝の ふたをめくって冬越しする虫を見つけた人、木の枝に付 いているチョウやガのさなぎを探した人など、今年に入 開催期間 平成12年6月7日∼8月28日 内 容 夏にみられる虫たちの生体展示 って職員の活動が一段と活発化してきたように思います。 今年も虫との出会いを求めて出かけ、この通信でどん どん紹介していきます。みなさんからの情報も待ってい カブト・クワガタふれあいハウスほか 場 所 ます。 (津田) 昆虫館2階 特別展示コーナー おう ぼ *教室・観察会への応募方法は、約1ヶ月前の「広報 編 集 ・ 発 行/石川県ふれあい昆虫館 〒920−2113 石川県石川郡鶴来町八幡町戌3番地 TEL(07619)2−3417 FAX(07619)3−9970 E-mail:hureai-ins@ p2222.nsk.ne.jp けいさい いしかわ」 (各新聞水曜日に掲載)でお知らせします。 *観察会は、天候により中止する場合もあります。 −8−
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