主要国の環境規制(リサイクル

平成 23 年度環境関連動向調査
2012 年 3 月
日本機械輸出組合
この事業は、競輪の補助金を受けて
実施したものです。
http://ringring-keirin.jp
1
平成 23 年度中国における環境関連動向調査
第1回
中国「危険化学品安全管理条例」の改定
中国国務院は 2011 年 2 月 16 日、第 144 回常務会議で「危険化学品安全管理条例」の
改正草稿を承認し、2011 年 3 月 2 日付で改定版「危険化学品安全管理条例」
(国務院令
第 591 号)として公布した。同改定条例は 2011 年 12 月 1 日より施行される。
現行の「危険化学品安全管理条例」
(国務院令第 344 号)は 2002 年 3 月 15 日に施行
された。急速な市場経済の拡大が続く中国では、工業を中心とした生産活動の活発化に
ともない危険化学品の生産や使用の頻度が増大している。その一方で危険化学品の使用、
保管、輸送等における違法な取り扱いによる爆発や漏えい、飛散等の事故がたびたび発
生し、工場の近隣住民にも環境被害が及ぶ重大な事故例も報告されている。
今般、現行条例の施行から 9 年余りを経て改定版が公布された中国の「危険化学品安
全管理条例」について改定が行われた背景、改定のポイント及び新条例の主な規定の概
要等について整理する。
1.中国政府の危険化学品に対する法令整備の経緯
中国における危険化学品の取扱い安全管理に関する法律整備の始まりは、1961 年に
国務院の承認にもとづき、当時の国家経済委員会、化学工業部、鉄道部、商業部、公安
部が各部門レベルの行政管理規定として試行的に制定した①「中小化学工業の業種転換
における安全生産管理規定」、②「化学危険品安全管理条例」
、③「化学危険品の経営許
可及び購買に関する暫定弁法」
、④「危険物の鉄道運輸規則」
、⑤「危険物品運輸に関す
る防火管理規則」及び⑥「爆発性及び易燃性物質の管理規則違反に対する暫定処罰弁法」
の6つ関連法令である。
中国で最初に危険化学品管理を専門に取り扱った国務院レベルの法令は、1987 年 2
月 17 日に国務院が発布した「化学危険品安全管理条例」
(国発[1987]14 号)である。
同条例は当時の社会主義国家体制のもとで中央政府が管理主導する計画経済の枠組み
を前提として、主として国有企業をはじめとする化工企業等での化学危険品の取り扱い
管理を定めたものだった。
その後 2002 年 1 月 26 日、国務院は新たに「危険化学品安全管理条例」
(国務院令 344
号)を公表した。同条例は 1987 年の「化学危険品安全管理条例」の延長的発展として
の改定版ではなく、国家による計画経済体制から市場経済体制への移行に対応した危険
化学品管理の抜本的な改定条例として導入された。規制対象として管理すべき危険化学
品の範囲として生産、貯蔵、輸送、使用中のみでなく、廃棄された後の化学品の安全管
理についての規定がはじめて盛り込まれ、危険化学品の安全管理が生産安全のみならず
環境対策の重要法令としても位置づけられた。
今般 2011 年 3 月 2 日付公布の改定版「危険化学品安全管理条例」
(国務院令第 591 号)
は、2002 年版「危険化学品安全管理条例」
(国務院令 344 号)の施行から約 9 年ぶりの
改定となる。中国市場経済の深化や化工企業数の増加、危険化学品の管理不備に起因す
る重大環境事故の多発など近年の社会状況の変化を反映した改定となっている。
2
2.改定の背景
改定版「危険化学品安全管理条例」は全部で 8 章 102 条項から構成され、現行条例の
7 章 74 条項に比較して多くの新条項が盛り込まれた。本改定の背景について中国環境
保護部ウェブサイトは 2011 年 3 月 14 日付、国務院法制弁公室及び国家安全生産監督管
理総局による解説コメントを公表した。
(1)中央政府の機構改革に対応
日本の内閣に相当する国務院は、中国社会経済の発展と変化に対応することを目的と
して 2003 年と 2008 年に相次いで組織改編を行った。危険化学品の安全管理に関係する
組織機構と職務管掌にもいくつかの変更が生じたため、同条例に関係する行政機構の職
責分担や組織名称等を中央政府の機構改革後の部門名称等に整合させる必要があった。
(2)危険化学品の使用に関連する事故の多発
危険化学品を製造する化学工場等における安全管理とは別に、危険化学品を調達して
自らの製品の生産プロセスに使用して生産活動を行う企業での化学品安全事故が多く
発生しており、現行条例の危険化学品の安全管理規制に不十分な部分があることが明ら
かになった。このため危険化学品の安全管理の更なる強化のために改定を実施する。
とくに爆発性を有する危険化学品を生産プロセスに使用する企業に対する安全管理
面の規制が不十分であった。また当該企業の工場等で重大事故が発生した場合に、近隣
環境への影響評価の実施方法を含めて公共安全に対するリスク管理が十分に考慮され
ていない面があった。このため化工企業以外での危険化学品の使用までを含めて安全規
制を強化する。
図表1に最近、中国で発生した危険化学品による重大事故の事例を示す。
図表1.危険化学品による重大事故の事例
No.
時期
場所
1
2004 年 4 月
重慶市
2
2005 年 11 月
吉林省
吉林市
3
2007 年 5 月
河北省
滄州市
4
2007 年 7 月
山東省
徳州市
事故概要
化学工場で塩素凝縮器の配管腐食が原因で強アルカ
リ性のアミン塩液が漏出、液化塩素貯蔵槽に混入し
三塩化水素と反応して爆発した。9 人死亡、3 人負傷。
近隣住民 15 万人が避難した。
防かび剤製造工場のジフェニル生産工程でアニリン
製造装置の配管が目詰まりを起こし爆発。8 人死亡、
3 人負傷。近隣環境にジフェニルが飛散し汚染被害を
生じた。
化学工場の硝化工程制御システムの不具合で硝酸濃
度が異常に上昇し、ニトロトルエン貯蔵槽が高温に
なり爆発。5 人死亡、80 人負傷。工場の近隣住民数
千人が避難した。
化学工場のアンモニア生産工程で爆発が発生、9 人死
亡、1 名負傷。圧縮機配管の溶接の不具合が原因。法
3
5
2008 年 1 月
内モンゴル
自治区
錫林浩特市
令に定める定期検査が行われていなかった。
化学工場のジイソブチレン貯蔵槽からタンクローリ
ー車へ充填作業中に爆発が発生、大規模火災となっ
た。作業員が定められた静電気防止服を着用してい
なかった。作業員 2 人が死亡。
出所:各種中国語ニュースサイトより日本テピアまとめ
3.改定の概要
(1)主な改定ポイント
2002 年 3 月 15 日施行の現行「危険化学品安全管理条例」と 2011 年 12 月 1 日より施
行される改定条例の主な改定ポイントを図表 2.に示す。
図表 2.
「危険化学品安全管理条例」の主な改定ポイント
項目
現行条例(2002 年)
(GB12268)
危 険 化 学 品 の 「危険貨物品名表」
範囲
「劇毒化学品目録」
企業の責任
主な許可制度
改定条例(2011 年)
「危険化学品目録」
企業の責任者は危険化学品管理 危険化学品の安全管理は予防を第
の法令、法規、国家標準等の要 一に企業が総合管理方針の策定と
求を遵守する責任を負う
実行に主体的な責任を負う
①危険化学品安全生産許可
①危険化学品安全生産許可
②危険化学品経営許可
②危険化学品経営許可(貯蔵業も対
象とすることを明確化)
③危険化学品安全使用許可(新設)
経 営 許 可 制 度 省、自治区、直轄市人民政府の 市、県政府の安全生産監督管理部門
の許可権限
経済貿易管理部門
に権限が移譲
①工場の新設、拡張、生産増量
許可手続の迅
速化
処理期限の規定なし
申請書類受理から 45 日以内に回答
②危険化学品経営許可
処理期限の規定なし
申請書類受理から 30 日以内に回答
4
①現場立ち入り、資料閲覧請求
監督管理機関
の 取 り 締 ま り ②違法行為に対する停止命令
権限
③期限を定めた改善命令
左記に加えて以下の権限
罰則(最高)
50 万元以上 100 万元以下の罰金
5 万元以上 50 万元以下の罰金
①違法現場の封鎖命令
②違法行為資産の差押え命令
(2)主な改定ポイントの説明
①「危険化学品目録」の制定
現行条例の第 3 条は危険化学品の定義として 7 種類――①爆発性物品、②圧縮及び液
化気体、③易燃性液体、④易燃性固体、⑤自然発火性物品、⑥酸化剤及び有機過酸化物、
⑦有毒及び腐食性物質を例示として列挙しつつ、規制対象となる具体的な危険化学品の
種類は国家標準として定める「危険貨物品リスト」(GB12268)によるものとしている。
一方で同条項は、「危険貨物品リスト」と並んで、国務院の経済貿易総合管理部門が
公安、環境保護、衛生、品質監督、交通の各部門と共同で指定する「劇毒化学品リスト」
に収載する化学品及び「危険貨物品リスト」に未収載のその他の化学品についても危険
化学品の規制対象とすると規定しており、同条例の規制対象となる危険化学品のリスト
が一本化されておらず不明確な状況があった。
新条例は危険化学品について、「有毒性、腐食性、爆発性、燃焼性、助燃性等の性質
を有し人体、施設、環境に対して危険性を有する劇毒化学品及びその他の化学品」(第
3 条)として包括的な定義づけを採用した。そのうえで、安全生産監督管理部門と工業
情報化、公安、環境保護、衛生、品質監督管理・検疫、交通運輸、農業の各主管部門が
共同で確定する分類標準にもとづき「危険化学品目録」を制定、公表するとともに必要
に応じて調整を行うものと規定した。これにより本条例により規制対象となる化学品リ
ストの一本化が図られる見込みである。
②企業の主体的責任の明確化
危険化学品の安全管理における企業責任の考え方として、現行条例では企業の安全管
理責任者が法令や国家標準の要求を遵守すべきことに重点が置かれている。新条例は、
企業は法令や国家標準を遵守するだけでなく、みずから自主的に安全管理方針を策定し
その実行に主体的な責任を負うべきことを明確に規定した(第 4 条)
。
かつて計画経済のもとで国家の主導により経済活動が運営されていた時代には、政府
が定めた法令等を遵守させることが重視されたが、市場経済化が進み企業活動の規模が
増大した現在において危険化学品の安全管理は、企業が主体的責任を持って自ら取り組
む方向へと中国政府の基本的な政策方針が転換したとみるべきである。
5
③「危険化学品安全使用許可制度」を新設
国家安全生産監督管理総局によると危険化学品の使用にともなう事故の発生件数は
近年増加傾向にあり、化学品関連の事故全体の約 4 分の 1 を占める。現行条例は、危険
化学品の生産及び貯蔵活動における安全管理については比較的に規定が整備されてい
る一方で、危険化学品の使用の側面、とくに危険化学品を生産プロセスに使用して製品
生産に従事する企業でのリスクについて規制が不十分であったため、新条例では「危険
化学品安全使用許可制度」が新設された。
危険化学品安全使用許可は、危険化学品を生産プロセスに使用するすべての企業に取
得を義務づけるのではなく、使用量が一定規模を越える場合に限って規制の対象となる。
この危険化学品の使用量に関する基準は、国務院安全生産監督管理部門と公安部門、農
業主管部門が共同で決定のうえ公布するとされている(第 29 条)。
なお、原料や生産プロセスの材料として危険化学品を使用し、生産される最終製品も
危険化学品である生産企業の場合は、現行条例で規定されている既存の「安全生産許可」
を取得すればよく、新設の「安全使用許可」を取得する必要はない。
④許可手続の迅速化と簡便化
今回の改定では、化工企業数の増加に対応して危険化学品の取り扱いに関する許可手
続きの下部行政機関への権限移譲が盛り込まれるとともに、許可申請手続の迅速化及び
簡便化が図られた。行政部門の処理負荷の分散とともに化工企業や運輸等の産業界のニ
ーズを一部取り入れた改定となっている。
危険化学品経営許可証の発行は、現行条例のもとで省または市レベルの政府部門が認
可及び発行処理を行っているが、行政部門の負荷を軽減し処理の迅速化を進めるため県
または地級市レベル政府の安全生産監督管理部門に許認可権限が移譲された。
また現行条例には行政部門での審査処理期間に関する規定はないが、新条例では各種
の許可申請が提出された際の許可証発行の可否通知までの期限が明記された。危険化学
品工場の新設・拡張の事前許可申請は申請受理から 45 日以内(第 12 条)
、危険化学品
経営許可証の申請は同 30 日以内(第 35 条)、劇毒化学品の道路運輸通行証の発行申請
は同 7 日以内(第 50 条)とする規定が盛り込まれ行政プロセスの透明度が高まった。
なお、劇毒化学品の道路運輸通行証の発行申請については、現行条例では運送の最終
目的地を管轄する県級人民政府の公安部門に申請手続きを行わなければならないもの
と規定されているが、新条例では貨物の出発地あるいは目的地のいずれかの県級人民政
府の公安部門に申請を行うことができるよう要件が緩和された。
⑤監督検査機関の権限及び罰則の強化
新条例では危険化学品を使用する企業の現場での違法行為が重大な環境汚染事故に
つながっているとの反省から、安全生産監督管理部門の監督検査権限が強化された。同
部門責任者の許可により監督検査担当者は、違法行為が行われている危険化学品の製
造・貯蔵・使用施設等を封鎖し、当該違法行為の停止を命じるとともに、現場の設備、
原材料、輸送用具等の差押えを執行する権限を有することが明記された。(第 7 条)
6
違法行為に対する罰則規定も強化され、罰金の最高規定は現行の 5 万元以上 50 万元
以下から新条例では 50 万元以上 100 万元以下へ引き上げられた。本規定は、事前許可
を受けずに危険化学品工場の新設、拡張または貯蔵施設の建設を行い、安全生産監督管
理部門により建設停止命令を受けても違法行為を止めず、改善命令の期限を過ぎても違
法状態が是正されない場合が規定されている。同行為が犯罪を構成する場合には合わせ
て刑事上の責任も追及される。
(第 76 条)
罰金が比較的軽い違法事例では、危険化学品の包装材として繰り返し使用する容器の
法定検査を怠った場合や法定のメンテナンス安全設備の未設置、定期的な安全評価の実
施不備等の場合に現行条例で 1 万元ないし 2 万元の罰金が新条例では 5 万元の罰金へ引
き上げられた。
(第 80 条)
また時代に合わせた新たな違法行為への対応例として新条例は、危険化学品を郵便や
ビジネス宅配便により運送委託することを禁止する条項を盛り込んだ(第 64 条)。少量
の危険化学品をインターネット等を通じて違法に販売することを想定した規定である。
同規定に違反した場合は 10 万元以上 20 万元以下の罰金が科され、合わせて「郵政法」
の規定による処罰を受ける。(条例 87 条)
⑥危険化学品管理の国際ルールとの整合性を重視
新条例第 15 条は危険化学品の生産企業は生産する危険化学品の特性を説明する化学
品安全技術説明書(MSDS)及び化学品安全ラベルを、包装容器に貼り付けまたは紐付け
て添付しなければならないことを明記するとともに、化学品安全技術説明書(MSDS)及
び化学品安全ラベルの記載内容は国家標準の要求に適合するものでなければならない
と規定した。
安全生産監督管理総局は、新条例は危険化学品の安全管理に関して国際ルールと整合
した科学的で明確な管理を重視するとしており、国連が主導で策定する GHS(Globally
Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals:化学品の分類及
び表示に関する世界調和システム)の要求に整合するかたちで国内の危険化学品目録の
明確化を進める方針を示している。
中国の危険化学品安全管理に関係する国家標準は GHS の分類や技術内容と基本的に
一致させて制定されており、今回の改定条例で化学品安全技術説明書(MSDS)及び化学
品安全ラベルの記載内容は、国家標準に従って作成すべきことが明確に規定された。
中国の化学品安全技術説明書(MSDS)及び化学品安全ラベルに関連する主要な国家標
準を図表 3.に示す。
図表 3.化学品安全技術説明書(MSDS)及び化学品安全ラベルに関連する主な国家標準
No.
1
名称
化学品安全技術説明書内容及び項目順序
7
標準番号
実施日
GB/T16483-2008
2009 年 2 月 1 日
2
GHS にもとづく化学品ラベル規範
GB/T22234-2008
2009 年 2 月 1 日
3
化学品の分類及び危険性の公示に関する通則
GB13690-2009
2010 年 5 月 1 日
4
化学品安全ラベル作成規定
GB15258-2009
2010 年 5 月 1 日
5
危険貨物の包装ラベル
GB190-2009
2010 年 5 月 1 日
4.改定版中国「危険化学品安全管理条例」の概要
2011 年改定版「危険化学品安全管理条例」の主要な規制及び制度に関する規定につ
いて、危険化学品の取り扱い企業が経営活動において取得することが義務づけられる許
認可事項を中心に対訳を示しながら同条例の概要を紹介する。
(1)総則(第 1 章)
①条例の目的
危険化学品の安全管理を強化しこれによる事故を予防し国民の生命と財産の安全、環境
保護を保障するために本条例を制定する。
(第 1 条)
②条例が適用される活動範囲
危険化学品の生産、貯蔵、使用、経営及び運輸の安全管理の活動に本条例を適用する。
廃棄危険化学品の処理については環境保護関連の法律、行政法規等を踏まえ本条例を適
用する。
(第 2 条)
③危険化学品の定義
本条例の危険化学品とは、有毒性、腐食性、爆発性、燃焼性、助燃性等の性質を有し、
人体、施設または環境に危害を与えるおそれのある劇毒化学品その他の化学品をいう。
(第 3 条)
④危険化学品目録
国務院安全生産監督管理部門と工業情報化、公安、環境保護、衛生、品質監督管理・検
疫、交通運輸、農業の各主管部門は共同で、化学品の危険特性分類に鑑みて分類標準を
確定し公表するとともに必要に応じて同目録の調整を行う。
(第 3 条)
(2)生産、貯蔵安全(第 2 章)
①危険化学品安全生産許可証
危険化学品の生産企業は、生産活動を開始する前に「安全生産管理条例」の規定により
危険化学品安全生産許可証を取得しなければならない。
(第 14 条)
②化学品安全技術説明書
8
危険化学品の生産企業は生産する危険化学品の特性を説明する化学品安全技術説明書
(MSDS)及び化学品安全ラベルを、包装容器に貼り付けまたは紐付けて添付しなければ
ならない。化学品安全技術説明書(MSDS)及び化学品安全ラベルの記載内容は国家標準
の要求に適合するものでなければならない。
(第 15 条)
生産企業は危険化学品が新しい危険特性を有することを発見した場合は、速やかに公表
し化学品安全技術説明書(MSDS)及び化学品安全ラベルの記載内容を改正しなければな
らない。
(第 15 条)
③漏出等の環境保護部門への報告義務
環境保護部門の規定する重点環境管理危険化学品を生産する企業は、当該化学品の環境
中への漏出があった場合は環境保護部門へ報告を行わなければならない。環境保護部門
は速やかに環境リスク管理措置を講じる。
(第 16 条)
④危険化学品の貯蔵
危険化学品は国家標準あるいは業界標準の要求に適合する専用の倉庫で貯蔵しなけれ
ばならない。劇毒化学品、爆発危険の高い化学品は警告表示を設置するとともに国家の
定める技術基準を満たす防災施設で保管しなければならない。(第 26 条)
(3)使用安全(第 3 章)
①危険化学品安全使用許可証
危険化学品を使用して生産活動に従事する企業で、その使用量が一定規模を越える場合
は、本条例の規定により危険化学品安全使用許可証を取得しなければならない。
危険化学品の使用量の基準は、国務院安全生産監督管理部門と公安部門、農業主管部門
が共同で決定のうえ公布する。
(第 29 条)
②危険化学品安全使用許可証の申請条件
危険化学品安全使用許可証を申請する企業は、その使用条件及び技術が法令、国家標準、
業界標準の要求に適合するとともに、以下の条件を備えなければならない。
a)使用する危険化学品に対応した専門技術人員がいること。
b)安全管理組織と専任の安全管理人員がいること。
c)国家規定に定める危険化学品事故の対応計画及び応急救護機材と設備を備えること。
d)法令に従い安全評価を実施すること。(第 30 条)
③危険化学品安全使用許可証の申請手続き
危険化学品安全使用許可証を申請する企業は、条例第 30 条に規定する申請条件を満た
すことを証明する資料を添えて、所在地を管轄する市級人民政府の安全生産監督管理部
門に申請を行う。
市級人民政府は申請を受理した日から 45 日以内に許可証発行の承認可否を決定しなけ
ればならない。承認しない場合はその理由を書面で通知する。安全生産監督管理部門は
9
危険化学品安全使用許可証の発行状況について、環境保護部門及び公安部門へ報告する
義務がある。
(第 31 条)
(4)経営安全(第 4 章)
①危険化学品経営許可証
危険化学品を取り扱う事業を経営する企業(貯蔵業を含む)は危険化学品経営許可証を
取得しなければならない。
②危険化学品経営許可証の申請条件
危険化学品経営許可証を申請する企業は以下の条件を備えなければならない。
a)国家標準または業界標準に適合する経営施設を有すること。危険化学品の貯蔵を行
う場合は、国家標準または業界標準に適合する貯蔵施設が必要である。
b)専門の技術訓練を経て所定の試験に合格した従業員を有すること。
c)安全管理のための社内規定と制度を完備すること。
d)専任の安全管理人員を有すること。
e)国家規定に定める危険化学品事故の対応計画及び応急救護機材と設備を備えること。
f)法律、法規に定めるその他の条件を備えること。(第 34 条)
③危険化学品経営許可証の申請手続き
劇毒化学品または爆発性危険化学品を取扱う企業は、所在地を管轄する市級人民政府の
安全生産監督管理部門に申請を行う。その他の危険化学品を取り扱う企業は、県級人民
政府の安全生産監督管理部門に申請を行う。
申請を受理した人民政府は申請企業の経営施設及び貯蔵施設の現場確認を行い、30 日
以内に許可証発行の承認可否を決定しなければならない。承認しない場合はその理由を
書面で通知する。
④劇毒化学品購買許可証
劇毒化学品購買許可証を取得しない者は劇毒化学品及び爆発性危険化学品を購入する
ことができない。劇毒化学品購買許可証は下記の証明資料を添えて所在地の県級人民政
府の公安部門に申請を行う。
a)営業許可証あるいは法人登記証の写し
b)購買する劇毒化学品の種類及び数量の説明資料
c)購買する劇毒化学品の用途の説明資料
d)申請担当者の身分証明書
県級人民政府は申請を受理した日から 3 日以内に劇毒化学品購買許可証の発行承認の
可否を決定しなければならない。承認しない場合はその理由を書面で通知する。
(第 39
条)
10
(5)運輸安全(第 5 章)
①危険化学品の運輸許可証
危険化学品の道路運輸または水路運輸を行う企業は、それぞれ関連する法律や行政法規
にしたがって危険貨物道路運輸許可証あるいは危険貨物水路運輸許可証を取得すると
ともに、工商行政部門の定める登記手続きを事前に完了する必要がある。(第 43 条)
②劇毒化学品道路運輸通行証
劇毒化学品の道路運輸を委託する者は、事前に貨物の出発地あるいは目的地のいずれか
の県級人民政府の公安部門に劇毒化学品道路運輸通行証を申請しなければならない。
申請には以下の資料を添付する。
a)運輸を委託する劇毒化学品の種類及び数量の説明資料
b)輸送の出発地、目的地、輸送経路及び輸送時間の説明資料
c)運送業者が危険貨物道路運輸許可証を有していること、運輸車両が運行許可証、運
転手が運転免許証を有していることの証明資料
県級人民政府の公安部門は申請を受理した日から 7 日以内に劇毒化学品道路運輸通行
証の発行承認の可否を決定しなければならない。承認しない場合はその理由を書面で通
知する。国務院公安部門は、劇毒化学品道路運輸通行証管理弁法を制定し公布する。
(第
50 条)
③輸送手段の制限
危険化学品を普通貨物に混載して運輸委託をしてはならない。また、危険化学品を郵便
あるいは宅配便を用いて輸送委託することを禁止する。
(第 64 条)
(6)危険化学品登記及び事故応急対応(第 6 章)
①危険化学品登記制度
国は危険化学品の安全管理と事故予防、事故発生時の応急対応の技術情報の提供に資す
るため危険化学品登記制度の実施を支持する。
(第 66 条)
②登記申請義務
危険化学品の生産企業、輸入企業は国務院安全生産監督管理部門が所管する危険化学品
登記機関に対して、自らが取り扱う危険化学品の種類、用途、危険特性等について登記
申請を行わなければならない。また取り扱う危険化学品について新しい危険特性を発見
した場合は、危険化学品登記機関に登記内容の変更手続きを行う義務がある。
(第 67 条)
③事故応急対応
危険化学品の事故が発生した場合は、関係する地方政府の安全生産監督管理部門、環境
保護、公安、衛生、交通運輸等の関連部門が共同して緊急事故対策組織を速やかに設置
して応急処置に当たる。以下の措置を実施して事故による損失の防止を図らなければな
11
らない。
a)速やかに被災者の救護体制を整え、必要な避難その他の措置をとり危害区域内の人
命の安全を確保する。
b)速やかに危害源となっている危険化学品の性質、危害区域の範囲、程度を把握する。
c)事故による人体、動植物、土壌、水源、大気への影響を防止するため速やかに現場
の閉鎖、隔離、洗浄等の措置をとる。
d)危険化学品の影響による環境汚染及び生態系破壊の状況をモニタリング、評価し環
境と生態系の回復に向けた措置をとる。(第 72 条)
5.危険化学品管理当局の最近の動き
(1)安全生産監督管理総局
①危険化学品生産企業の安全標準化管理を導入
安全生産監督管理総局は 2011 年 2 月 14 日付、「危険化学品企業の安全生産標準化の
強化に関する通知」
(安監総三[2011]24 号)を公表した。これに先立って国務院が公表
した「企業の安全生産の強化に関する通知」
(国発[2010]23 号)にもとづき、危険化学
品の生産企業の安全標準化管理を新たに導入する方針を伝えた。
危険化学品生産企業の安全生産レベルを 3 段階の標準化等級に分類して認定する制
度を取り入れる。各地方の安全生産監督管理部門の指導のもと 1 年以上、安全性向上の
取り組みを継続した企業を安全生産標準 3 級として認定する。3 級企業が 2 年以上安全
性改善の取り組みを継続し、状況が良好と認められた場合、2 級及び 1 級への格上げ申
請を行うことができる制度とする。各等級の認定基準の詳細は示されていない。
また同通知は安全生産標準の等級証書を獲得した企業が、その後に重大な爆発、漏え
い等による死亡事故を起こした場合は、認定した等級が即時に取り消される制度とする
考えを示している。
②改定版「危険化学品安全管理条例」の学習徹底を通知
改定版「危険化学品安全管理条例」の公布を受けて安全生産監督管理総局は 2011 年
5 月 23 日付、
「危険化学品安全管理条例の学習宣伝の徹底に関する通知」(安監総政法
[2011]78 号)を全国の各省、自治区、直轄市の安全生産監督管理局及び関連する中央
国有企業に対して公表した。
同通知は、危険化学品の安全管理を徹底することで危険化学品事故の発生を未然に防
止し、国民の生命と財産の安全を保障する安全生産監督管理業務の意義を強調するとと
もに、爆発性危険化学品に関連する重大事故が社会公共の安全に及ぼす影響が極めて大
きいことを指摘した。
そのうえで同通知は、改定条例は危険化学品の使用における安全許可制度が強化され
た点に関して言及した。さらに処罰規定において、違法行為の性質と危険性の程度に応
じた法的責任の重さが考慮された結果、罰金が大幅に引き上げられたことに触れつつ、
安全生産監督管理部門が法令執行の実施管理を適切に強化することにより安全生産と
12
社会安定のための法的な保障を提供することが重要であるとの基本方針を示した。
全国各級の地方安全生産監督管理部門に対して新条例の改定内容の確認を徹底する
とともに安全管理人員の研修訓練等を計画的に実施すること等を求めた。
(2)上海市
上海市安全生産監督管理局は 2011 年 5 月 31 日から 1 ヵ月間にわたり、上海市の企業
による危険化学品に関する違法な生産、経営活動の撲滅に向けた一斉取り締まり特別検
査をスタートさせた。
同特別検査は、危険化学品を使用して生産活動を行う有色金属の精錬化工企業を重点
的な取り締まり対象として実施する。営業許可証のほか危険化学品安全管理条例で義務
づけられた危険化学品生産許可証や同経営許可証の有無と有効性を検査する。また、危
険化学品の貯蔵や生産に関する計画内容や実際の経営活動が許可証の範囲内と一致し
ているかどうかもチェックする。
さらに危険化学品の取り扱い許可がないにも関わらず、危険化学品を使用する生産業
務の下請けをしていたり、逆に自社は許可を受けているが許可を持たない下請け企業に
危険化学品関連の業務を違法に外注している事例がないかについても検査を行う方針。
上海市安全生産監督管理局は、管轄下の各区及び県級の安全生産監督管理部門に対し
て特別検査の実施状況の報告を求める。過去には検査で違法行為が摘発されて生産停止
や工場が閉鎖された企業が、後日勝手に生産活動を再開させる事例が後を絶たなかった
経緯もあり検査後のフォローアップ調査も実施するとしている。
(3)遼寧省
遼寧省安全生産監督管理局は 2011 年 5 月 26 日、同日より 7 月中旬までの間、省内全
域において危険化学品取り扱いに関する違法経営企業の一掃を図る摘発キャンペーン
を行うことを決定した。
今回の取り締まり活動は、①危険化学品の無許可経営、②許可証の期限切れでの経営
活動、③申請をしたが許可証の交付前に行われる経営活動、④必要な安全施設の不備や
虚偽の許可証の使用――等の違法行為を重点対象とする。
遼寧省安全生産監督管理局は、今回の一斉摘発はブラックリスト企業の把握が目的で
あり、違法行為の性質が劣悪な企業に対しては法により厳罰を科す方針にもとづき、リ
ストアップされた企業を長期重点監督対象として継続的に監視を続けるほか、情報メデ
ィアを通じて違法実態を公開し社会一般からの批判による監督を受けさせるとしてい
る。
2011 年 3 月 2 日の改定版「危険化学品安全管理条例」の公布のタイミングに相前後
して、危険化学品企業の生産管理の取り締まり強化を図る動きが全国的に広がっている。
新条例の施行は 2011 年 12 月 1 日であり、今後、条例施行日までに「危険化学品目録」
の改定版や新たに導入された「危険化学品安全使用許可制度」の対象となる危険化学品
の使用量に関する基準等が公表される見込みである。
13
中国環境モニタリングレポート(2011/08)
中国の重金属汚染の状況と政府の対応
中国環境保護部が 2011 年 6 月 3 日に公表した「2010 年環境状況公報」によると、中
国では重金属物質を原因とする土壌汚染や健康被害が深刻化しており喫緊の対策課題
となっている。2010 年に重金属による環境汚染事件は 14 件発生し、うち 9 件が工場の
作業員や近隣住民の血液中から基準を超える鉛が検出される血中鉛事件で、同様のケー
スは 2011 年に入ってからもすでに 7 件が報告されている。
製品寿命を終えて廃棄される自動車や電気製品等の工業製品に含有される重金属類
や蓄電池等の回収リサイクルの過程で処理される鉛などが主な原因とされており、中国
政府は重金属汚染に対処するため 2010 年 5 月、
「鉛蓄電池及び鉛リサイクル業の汚染防
止対策に関する通知」を公表するとともに、同対策としてはじめて 15 億元の予算を充
てて汚染防止区域の設置や無害化処理技術の支援に着手するとともに、鉛蓄電池業界の
指導強化に乗り出した。重金属による土壌等の汚染防止のための新たな基本法の立法も
現在検討が進められている。
今後、電気電子製品や自動車関連を中心として工業製品の回収と分解、リサイクルが
急速に拡大していくことが見込まれるなか、輸入製品や輸入業者等に対する含有重金属
に対する製品規制が強化される可能性もあるため、最近の中国の重金属汚染の現状と政
府の対策の動きについて概要を整理して紹介する。
1.中国の重金属汚染の状況
(1)2010 年環境状況公報
中国環境保護部は 2011 年 5 月 29 日付で「2010 年中国環境状況公報」を公表し、6 月
3 日、同部李干傑副部長が国務院新聞弁公室と共同で報告会見を開催した。「中国環境
状況公報」は、1989 年 12 月 26 日に施行された「環境保護法」の規定にもとづいて、
国務院の環境行政所管部門である環境保護部(1989 年当時は環境保護総局)が全国の
大気、水、土壌や生態系の環境状況等について毎年モニタリングを実施して結果を取り
まとめる報告書であり、1991 年から継続して毎年実施されている。
同報告会で環境保護部の李干傑副部長は、2010 年の中国の環境状況は全体として良
好な状態が維持されるとともに一部の指標では改善の兆しが見られるものの、社会経済
が発展段階にあることによる現状の産業構造とエネルギー消費方式のあり方に起因す
る環境面への負荷は巨大であり、環境調和型で持続的発展が可能な社会構造を構築する
ためにはさらに困難なチャレンジが必要であるとの認識を示した。
特に 2010 年に 14 件の重金属を原因とする環境汚染事件が発生したことがトピックと
して取り上げられ、重金属汚染の影響が全国的に深刻化しつつあることが報告された。
うち 9 件が地域住民の血液中から基準値を上回る鉛成分が検出される鉛中毒事件であ
り、同様のケースは 2011 年に入ってからも新たに 7 件報告されていることが明らかに
された。
14
李干傑副部長は中国の重金属汚染の背景として、重化学工業等のエネルギー多消費・
高汚染型業種が多くの地方経済において主要産業となっている現状を指摘するととも
に、電気電子製品等の廃棄物の不適切な処理が環境汚染の主な要因になっているとの見
方を示した。そのうえで李干傑副部長は、これらの重金属汚染事件は近隣住民の健康に
深刻な影響を与えるとともに社会の安定を脅かすものであり、中国政府としてこれまで
に発生したすべての重金属汚染事案に対して厳格な調査と処置を行ったことを強調し
た。
さらに国民の健康に対して被害を及ぼすような突出した環境汚染問題の発生を未然
に防止することを目的として、2010 年に中国政府としてはじめて重金属汚染防止目的
の特別対策資金として 15 億元を配分したことを報告した。具体的には、飲用水水源の
安全確保のための対策が進められており、今後環境保護部では同特別対策資金を活用し
て、汚染防止のための新技術の開発や環境モニタリングと行政執行監督強化のためのシ
ステム整備を推進するとしている。
(2)重金属による健康被害事件
最近中国で報告された重金属による健康被害事件のうち典型的な事例として、ヒ素、
鉛等を扱う工場が原因となった雲南省、陝西省、湖南省での事例を以下に紹介する。
①雲南省陽宗海ヒ素汚染事件
2008 年 6 月、雲南省の高原湖である陽宗海でヒ素による水質汚染が進んでいること
が判明し、周辺の住民約 10 万人の飲用水確保に大きな影響が及んだ。同湖の水質汚染
は湖畔に立地する雲南澄江製綿工場が国家基準に違反して汚染水の浄化処理施設を設
置せずに操業していたことが原因であった。大量の工業用水を工場内で循環使用してい
たが、循環水に含まれるヒ素が長期間にわたり工場施設の地下の土壌へ徐々に滲み出し、
地下水脈を経由して陽宗海の湖水に影響を与えたとされる。同工場は工場建設の前提と
なる環境影響評価で要求された環境基準に適合する防水処理工事も実施していなかっ
た。
雲南省環境保護局による水質検査の結果、陽宗海のヒ素濃度は最も高いところで1リ
ットル当たり 0.128mg と「中国生活飲料用水衛生標準」(GB5749-2006)に定める基準値
である同 0.01mg を 10 倍以上上回った。このため同湖からの飲用水の取水は禁止され周
辺住民の飲用水供給に問題が生じた。この汚染事件に関連して、原因となった製綿工場
の監督認可に関与した雲南省政府職員 26 名が問責処分を受け、とくに責任が厳重とさ
れた 12 名が免職処分となった。
中国の飲用水の水質基準を定める国家環境基準である「中国生活飲料用水衛生標準」
の重金属等の毒理指標及び放射線指標の制限値を参考として図表1に示す。
15
図表1.中国生活飲料用水衛生標準(抜粋)
指標物質
基準限度
毒理指標
ヒ素(mg/L)
0.01
カドミウム(mg/L)
0.005
六価クロム(mg/L)
0.05
鉛(mg/L)
0.01
水銀(mg/L)
0.001
セレン(mg/L)
0.01
シアン化物(mg/L)
0.05
フッ素化物(mg/L)
1.0
硝酸塩(mg/L)
10
クロロホルム(mg/L)
0.06
四塩化炭素(mg/L)
0.002
シュウ酸塩(mg/L)
0.01
ホルムアルデヒド(mg/L)
0.9
亜塩素酸(mg/L)
0.7
塩素酸(mg/L)
0.7
放射性物質指標※
α放射性総量(Bq/L)
0.5
β放射性総量(Bq/L)
1
※放射性物質指標は参考ガイドラインであり、放射性物質の種類に
より評価を実施し飲用可否を判断する。
出所:
「中国生活飲料用水衛生標準」(GB5749-2006)
②陝西省鳳翔県児童血中鉛事件
2009 年、陝西省鳳翔県長青鎮の馬道口村と孫家南頭村の 2 つの村で、乳幼児を含む
数百名の児童の血中鉛濃度が正常値の上限を大きく上回り、鉛中毒のレベルに達してい
ることが発覚した。長青鎮が属する宝鶏市政府が調査委員会を組織して現地調査を実施
したところ、2 つの村に隣接する長青工業園区に所在する東嶺亜鉛精錬工場から排出さ
れる高濃度の鉛成分を含んだ工業廃液が付近の土壌に浸透して地下水を汚染している
ことが確認された。
同亜鉛精錬工場は事前に実施された環境影響評価により同工業園区の重点汚染企業
として指定され、鳳翔県環境保護局と同工業区管理委員会は環境汚染が懸念される範囲
に住む住民を安全な場所へ移転させることを工場建設の条件としていたが、実際には移
転が行われないまま工場の操業が開始していた。
2011 年 6 月 3 日に北京で開催された環境保護部と国務院新聞弁公室が共同で開催し
た「2010 年中国環境状況公報」報告会見の席上、ニューヨークタイムズ記者が鉛中毒
症状の児童の血液検査を病院側が拒否したとの地元メディア報道に関する環境保護部
の認識を質す質問を行った。同部の李干傑副部長は、病院側の検査拒否の事実認識につ
16
いては触れず、各地で発生した鉛中毒事件を党中央と国務院は重大な懸念をもって注視
しており、すでに通報された個別事案について厳正な調査を実施済みであり、その状況
については各種メディアを通じて社会各方面へ情報公開していると回答した。
③湖南省益陽市重金属汚染事件
2011 年 3 月 10 日、益陽八三銻品(アンチモン)冶煉工場に勤務する従業員の一部に
ヒ素中毒の症状が現れた。アンチモンはプラスチック製品や繊維製品などの難燃剤をは
じめ、自動車部品や家電品など幅広い工業製品向けに利用される金属元素である。現場
調査の結果、工場経営層及び従業員のアンチモンの毒性に対する認識不足と安全管理上
の取り扱い不備が原因であることが判明した。
同工場の敷地内に造成されたバスケットボール場は、アンチモン製錬炉の底に堆積し
た残渣粉を廃物利用して作られており、同運動施設を利用する工場の従業員はアンチモ
ンの成分を直接吸引していた。また使用済み工業用水の浄化設備が設置されておらず、
高濃度のヒ素を含んだ廃液が工場敷地内の土壌に直接排出されていたため、工場構内の
井戸水が基準を上回るヒ素により汚染された。
湖南省及び益陽市環境保護局による技術処理の結果、3 月 15 日までに汚染源の毒性
除去が完了したが、井戸水を飲んだ 35 人の従業員がヒ素中毒になりうち重症の 1 名が
死亡した。
(3)重金属汚染の発生要因
元国家環境保護局副局長で全国政治協商人口資源環境委員会の王玉慶副主任は 2011
年 3 月 6 日、全国政協第 11 回第 4 次会議で、3 年をかけて実施中の全国土壌汚染調査
の結果報告が年内に取りまとまる見通しであることを明らかにした。
同副主任によると中国の重金属汚染の発生状況は、重金属を取り扱う工場からの違法
な廃水等の排出の他に、都市部の工業地区から長期間にわたって重金属を含んだ汚水が
浸出し郊外の農地の灌漑水として重金属汚染水が使用される事例や、鉱山の採掘地区で
重金属スラグ等の処理が不適切なため降雨により重金属が近隣の居住地区へ流出する
事例、また近隣の都市化のため金属精錬工場や化学工場が郊外へ移転した際に工場跡地
の土壌に浸透した重金属が近隣環境へ流出する事例等が典型的である。
環境保護部等 9 部門が共同で 2011 年 3 月 28 日に開催した「2011 年全国汚染物質違
法排出企業の取り締まりと住民の健康保障のための環境行動計画」に関する電話会議は、
本年の行動計画の重点を重金属汚染の防止に置くことを決定し、その中でも鉛蓄電池企
業の監督強化を最重点任務とすることが確認された。2009 年 1 月施行の「循環経済促
進法」や 2011 年 1 月施行の「廃棄電器電子製品回収処理管理条例」にもとづき、電気
電子製品や自動車部品を中心として製品の回収・分解リサイクルの動きが活発化する中
で、鉛蓄電池の適正な回収・分解処理に対する業界の指導管理を徹底する。
中国の環境汚染を引き起こしている汚染源物質に関する調査は、環境保護部、農業
部、国家統計局が共同で 2007 年から 2009 年にかけて初めて実施された。国内の汚染物
質の排出源を工業汚染源、農業汚染源、生活汚染源及び集中汚染物管理施設の 4 つの汚
17
染源に分けて、合計 592 万地点余りのサンプル調査をもとに分析集計が行われた。同調
査の結果は 2010 年 2 月、
「第 1 次全国汚染源調査公報」としてデータが公表され、2007
年 12 月 31 日を調査基準日とする中国の主要汚染物質の排出総量は図表 2 に示すとおり
である。汚染源として環境中に放出された重金属(カドミウム、クロム、ヒ素、水銀、
鉛の合計)は 900 トンに達すると報告されている。
なお「国民経済社会発展第 12 次 5 ヵ年計画」
(2011-2015 年)では、窒素酸化物(NOx)
、
硫黄酸化物(SOx)
、COD(化学的酸素要求量:Chemical Oxygen Demand)
、アンモニア窒
素の 4 物質が排出総量規制の対象となっている。
図表 2.全国の主要汚染物質の排出総量
汚染物質名称
排出総量
COD
3028.36 万トン
総リン
42.32 万トン
アンモニア窒素
172.91 万トン
窒素酸化物(NOx)
1797.70 万トン
硫黄酸化物(SOx)
2320.00 万トン
重金属※
900 トン
※)重金属はカドミウム、クロム、ヒ素、水銀、鉛の合計
出所:
「第 1 次全国汚染源調査広報」(2010 年 2 月)
(4)重金属汚染拡大の背景
中国で重金属汚染による健康被害事件が多発している背景として、かつての高度成長
期の日本と同様に国の政策が経済成長の面に偏重するあまり、環境保護への配慮がなお
ざりにされがちであった点や重金属汚染が環境、身体健康に及ぼす毒性リスクが十分に
認識されていなかったことが指摘される。さらには中国特有の行政管理体制に起因する
要因も存在すると考えられる。
①地方政府による経済成長政策の偏重
各省市の地方政府の環境保護部門は、環境行政の執行に関しては中央政府の環境保護
部の指導を受ける立場にあるが、組織自体としては地方政府の一部門であり基本的に地
方政府の長である省長等の指揮系統下にある。
1980 年代以降の改革開放路線により経済成長が重視されるようになると、GDP 成長率
が地方政府の長の業績評価項目として最重要視される傾向が強まり、環境保護部門が打
ち出す政策はさほど重視されない時期があった。省長をトップとする地方官僚組織のも
とで、地方政府は経済発展を第一の課題とするため、一般的に投資金額が大きい重金属
関連業種を含む工業プロジェクトは GDP 指標をベースとした経済成長への貢献度が大
きく、地方政府はこれらの企業の地元への誘致を熱心に行い、環境部門のチェックが甘
くなる傾向が強かった。
比較的早期に工業化による経済発展を遂げた浙江省は、2004 年に技術の立ち遅れた
18
鉛蓄電池企業の選別強化を打ち出し、違反行為がみられた企業に対して同省内での経営
許可の取り消しを行った。この際、浙江省から経営許可を取り消された企業が名義を変
えて安徽、山東、江西、湖北等の GDP 発展を重要課題とする各省からの誘致を受け生産
拠点を移転し、その後各地で重金属汚染が頻発する原因となった。
②地域住民の環境意識の不足と救済策の未整備
重金属汚染は一定の時間をかけて徐々に進行するため近隣の住民も気がつきにくく
健康被害が拡大しやすい。特に児童が有毒物質による影響を大きく受けやすいことも問
題となる。汚染レベルの初期には原因が明確に特定できないケースがあり、政府部門も
環境汚染の責任を認定しにくく、住民が救済を求めることができない状況に置かれる場
合がある。他方、管轄地域での汚染事件の発生を認めることは地方の環境保護部門にと
って事前の監督不足として責任問題となる可能性がある。このため官僚組織としては事
件を大事にせず穏便に済ませたいとの意向が働きやすいとの指摘がある。
環境保護部傘下のメディアである中国環境報は、2011 年 6 月 3 日付の論評で、環境
先進国であるフィンランドで環境への重大な汚染事件を引き起こした企業に対する厳
罰を定めた立法の例や南アフリカやクウェートで導入されている環境汚染企業を住民
が提訴できる環境公益訴訟制度を紹介し、環境被害を受けた地域住民が企業から直接的
に法的な損害賠償により救済を受けることができる法制度面での整備を急ぐべきであ
るとの提言を掲載した。
③重金属汚染に対する総合的防止政策の不備
急速な経済発展にともない様々な環境問題が顕在化するようになり、2006 年に始ま
った「国民経済社会発展第 11 次 5 ヵ年規画」において、それまでの資源浪費型で野放
図な経済発展方式から持続的成長が可能な経済社会構造への転換を目指して省エネ・排
出削減を重視する政策が明確に打ち出されたことから環境保護部門の政策がにわかに
重要視されるようになった。
同 5 ヵ年計画では、窒素酸化物(NOx)と硫黄酸化物(SOx)の排出総量規制が中央政
府の約束性指標として掲げられ、各地方政府に目標の達成が厳しく求められたことから
全国の環境保護部門は汚染物質の排出削減の取り組みを強化するようになった。汚染が
目に見えて進み社会問題となった大気と水の環境質の改善に注力するところとなった
が、土壌の汚染は取り組みが総じて遅れている状況である。
現在、長期間にわたって累積した重金属による汚染の影響は点在するスポットとして
現れてきており、大気や水の環境質対策と異なり一定の面としての取り組みが実施しに
くい。このため地方政府の環境保護部門の重金属汚染に対する管理能力がまだ不十分で、
問題が発覚した事案に対する事後的な対策に終始している状態であり、重金属汚染に対
する総合的防止策の整備は緒に就いたところと言える。
2.中国政府の政策的対応
環境保護部は 2011 年 4 月 12 日付、
「2011 年全国汚染防止工作の要点に関する通知」
19
(環弁[2011]46 号)を公表し、この中で 12 次 5 ヵ年期間中(2011-2015 年)の環境
保護対策の重点は「重金属」、
「化学物質」及び「危険廃棄物」の 3 種類の汚染物の管理
強化であるとの基本方針を示した。このうち重金属汚染の防止に関しては、「重金属汚
染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」にもとづき、各省市の環境保護部門が各地方の重金属汚
染防止規画を策定して 2011 年 6 月末までに環境保護部へ届け出ることとした。また、
重金属汚染物の排出削減目標についても年度目標を設定して 2011 年 10 月末までに報告
するよう要求し、具体的な取り組みの強化を指示した。
中国政府が 2011 年度に入ってから公表した重金属汚染の防止に関する主要な政策で
ある「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」、「重金属汚染環境モニタリング管理強
化に関する意見」及び「鉛蓄電池及び鉛リサイクル業の汚染防止対策に関する通知」の
内容を以下に解説する。
(1)
「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」
環境保護部は北京で 2011 年 2 月 18 日、
「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」に関
する工作会議を開催し、周生賢部長が出席し講演を行った。同部長は重金属汚染が多く
の国民、とりわけ児童の健康に大きな影響を及ぼしていることに憂慮を示し、社会の安
全と安定を図るため「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」が近く国務院の承認を得
て正式に成立する見通しであることを明らかにした。
同規画は「国家経済社会発展第 12 次 5 ヵ年規画」のもとで最初に制定される個別政
策推進の 5 ヵ年計画であり周生賢部長は、同会議の席上で党中央と国務院が重金属汚染
の拡大防止を高度に重視していることを強調した。環境保護部ウェブサイトが公表した
「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」の概要を図表 3 にまとめて示す。
図表 3. 「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」の概要
項目
内容
目的
国民の健康に大きな影響を及ぼす重金属汚染による被害の拡大を防止し、社
会の安全と安定を図る。
2015 年までに以下の各目標を達成する。
・重金属汚染防止の政策体系を整備して健康被害問題を解決する。
政策目標
・突発的な環境事故が発生した際の緊急対応体制を確立する。
・重金属汚染による健康面への影響評価体制を確立する。
・重金属関連業界の産業構造の改善及び合理化を進める。
重点対策
重金属物質
重点管理
対象業種
ヒ素、鉛、水銀、クロム、カドミウムの 5 大重金属
採鉱、金属精錬、鉛蓄電池、皮革、化学工業の 5 業種
20
具体的削減
目標
財政措置
重点管理区域
主要重金属汚染物質の排出を 2007 年比で 15%削減
重点管理区域以外
主要重金属汚染物質の排出を 2007 年と同水準とする
国家中央財政から 750 億元を専用資金として配分
以下に該当する企業は一律に操業停止を命じ改善を要求し、改善が確認され
るまで操業再開を許可しない。
・環境影響評価を受けない、または「三同時制度」を実行しない企業
操業停止
命令措置
・飲用水の水源地付近に所在する企業
・汚染防止設備に不備がある企業または恒常的に汚染物質排出基準を超過
する企業
・重大な環境安全に関する情報を隠ぺいした企業
出所:
「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」(環境保護部ウェブサイトより作成)
企業に操業停止を命じる場合とされている「三同時制度」の違反とは、中国の「環境
影響評価法」に規定された投資プロジェクトの政府承認に必要な環境影響評価制度の要
求事項を遵守しないことを指す。環境影響評価の結果、要求される環境保護施設につい
てはプロジェクト本体の工程進度と同時に設計し、施工し、実際の使用を開始すること
が義務づけられる。これに反して一部地域では地方政府と企業の癒着が横行し、環境影
響評価の手続や「三同時制度」の実施がなおざりにされたため重金属汚染の原因となっ
たとの批判があった。今回、環境管理に問題があった企業は改善が確認された後、2 年
間は上場あるいは融資による資金調達を認めない等の厳しい措置も追加された。
「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」の方針にもとづき、各省市政府は各地方独
自の「一区一策」を盛り込んだ重金属汚染防止規画及び年度実施計画を編成するととも
にそれらの具体的措置に対応する資金を配分することが要求される。また、重金属汚染
防止の成果を各地の経済社会発展の評価体系に取り入れると同時に、地方政府の幹部職
員の総合考課制度の重要内容として位置づけるものとされた。
環境保護部によると「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」の全文は当面の間、非
公開の方針とされた。湖北日報の報道によると重点管理区域には湖北省を含む 14 の省
が指定され、全国で 138 ヵ所の重点地域が設定された。採鉱、金属精錬、鉛蓄電池、皮
革、化学工業の 5 業種に属する全国の 4,452 企業が重点防止企業として汚染モニタリン
グシステムの導入対象とされており、環境保護部の周生賢部長はさらなる重金属汚染対
策の強化ため、2015 年までに 100 億元が追加投資されるとの見通しを明らかにした。
(2)重金属汚染環境モニタリング管理強化に関する意見
環境保護部は国務院の「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」を受けて、同規画の
政策目標の達成を促進するために 2011 年 5 月 3 日、
「重金属汚染環境モニタリング管理
21
強化に関する意見」
(環弁[2011]52 号)を策定し公表した。同意見は近年、全国各地
で発生した重金属による環境汚染事件が国民の健康に大きな被害を及ぼしたことの重
大性に鑑み、重金属企業による汚染物質の環境中への排出状況のモニタリングを強化す
るとともに、同業種企業の重金属成分の排出が大気、土壌、地表水、飲用水源地、沿岸
海域の生態系と人の健康に与える影響を正しく評価することの重要性を強調した。
各級の環境保護部門は「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」の要求にもとづき、
全国の 38 ヵ所の重点地域の 5 つの業種に属する 4,452 社の重点防止企業を重金属モニ
タリング重点ポイントとして設定する。各地方政府の監督のもと重金属排出企業は自主
的に、国家または地方が公表する各業界の汚染物排出抑制基準に従ってモニタリングを
実施しなければならない。図表 4 に「重金属汚染環境モニタリング管理強化に関する意
見」に示された重金属環境汚染モニタリング管理の概要をまとめる。
図表 4.重金属環境汚染モニタリング管理の概要
項目
内容
モニタリング対象
重金属物質
重点対象 :ヒ素、鉛、水銀、クロム、カドミウム
その他対象:ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、マンガン、
コバルト、タリウム、アンチモン等
企業自主モニタリング
管理の要求
・重金属モニタリングは関係法規にもとづき企業が責任をもって
自主的に実施しなければならない。
・企業はモニタリングを同業務の能力をもつ検査機関に委託して
実施することを認める。但し、環境保護部門へ事前の報告を要
する。
・重金属排出モニタリングは毎日、日単位で実施する体制を整え
データを計測して専用データファイルに記録、保存する。
・記録したデータを月単位で環境保護部門へ報告する。
企業自主モニタリング
管理の強化措置
・各級の環境保護部門は企業から毎月報告を受けるモニタリング
データをチェックし、基準を超えるデータを発見した場合は企
業の現場を検査し状況を把握する。
・環境保護部門は 2 ヵ月ごとに重金属企業のモニタリング業務の
適切性の監督チェックを行う。
・環境保護部門は半年ごとに重金属企業の周辺環境のモニタリン
グチェックを行い異常があれば地方政府へ報告する。
重金属モニタリングの
報告と情報公開
・各級の環境保護部門は定期的に重金属モニタリング監督実施報
告を作成し所属人民政府と上級環境保護部門へ報告する。
・全国 4452 の重点防止企業のデータについては、中央の環境モニ
タリング総局へ直接報告する。
・重金属排出企業は自主モニタリング報告を毎日作成し、地域の
公共媒体を通じて自社の汚染物排出状況を公表する。
出所:
「重金属汚染環境モニタリング管理強化に関する意見」(環弁[2011]52 号)
22
(3)鉛蓄電池及び鉛リサイクル業の汚染防止対策に関する通知
電気電子製品をはじめとして製品の回収リサイクルによる資源の再利用を図る循環
型経済の促進が近年になり中国でも取り組まれている。その過程で家電製品等の部品や
蓄電池に含まれる鉛が、適切な無害化処理をされずに環境中に排出される事例が数多く
報告された。さらに一部の地域では児童を中心とする近隣住民の体内に鉛が取りこまれ
る血中鉛事件が発生して中国社会の大きな関心を集めるところとなった。
環境保護部は、国民の健康に被害を及ぼす鉛汚染の原因となる鉛蓄電池企業と鉛リサ
イクル企業に対する取り締まりを強化するため 2011 年 5 月 18 日、
「鉛蓄電池及び鉛リ
サイクル業の汚染防止対策に関する通知」
(環発[2011]56 号)を公表した。図表 5 に
同通知の概要をまとめて示す。
図表 5.鉛蓄電池及び鉛リサイクル業の汚染防止対策に関する通知の概要
項目
内容
規制対象業種
・鉛蓄電池企業(鉛蓄電池の製造、加工、組立、回収を行う企業、
電極板部品のみ製造する企業も含む)
・鉛リサイクル企業
投資プロジェクト
承認の厳格化
・鉛を取り扱う工場を建設する投資プロジェクトは、鉛汚染物の
計画排出量を示す根拠を添えて省(区・市)の環境保護部門に
申請を行い厳格な審査を受けるものとする。
・「重金属汚染総合防止 12 次 5 ヵ年規画」に規定する重点管理区
域内では新規の建設を禁止する。
・重点管理区域以外では新規の建設、拡張、改築はビルドアンド
スクラップ方式で前後の鉛汚染物排出量の減少を前提とする。
環境管理の強化
・各企業が環境保護方針及び突発事故発生の際の対応計画を策定
し定期的に教育・訓練を実施することを義務づける。
・地方環境保護部門は 2012 年末までに各企業の環境情報ファイル
を整備しモニタリング情報の一元管理を実現する。
「重金属汚染環境モニタリング管理強化に関する意見」に従い
・
鉛汚染物の排出量を 日単位でモニタリングし月単位で環境保
護部門へ報告する。
違法企業の取り締ま
り強化
・プロジェクト承認条件である環境影響評価の要求事項を満たし
ていないことが発覚した場合は一律に生産停止を命じる。
・危険廃棄物経営許可証を取得せずに鉛蓄電池の回収業務に従事
した企業は一律に操業停止を命じる。
・基準を超える汚染物排出が長期に改善しない場合は、当該企業
内に監督管理部門の指導員を常駐させ責任追及を徹底する。
環境汚染被害者
の救済制度
・環境汚染賠償責任保険の市場メカニズムを導入し、重点管理区
域内に所在する汚染事故リスクの高い企業に対して環境汚染賠
償責任保険への加入を義務づける。
23
出所:
「鉛蓄電池及び鉛リサイクル業の汚染防止対策に関する通知」(環発[2011]56 号)
3.重金属に関する製品規制の現状と動向
(1)中国版 RoHS「電子情報製品汚染予防管理弁法」
中国版 RoHS と言われる「電子情報製品汚染予防管理弁法」は 2006 年 2 月 28 日に公
布され、2007 年 3 月 1 日より施行された。電子情報製品の廃棄後の重金属や有害化学
物質の環境への漏出による環境汚染と国民の健康被害を防止することを目的として、鉛、
水銀、カドミウム、六価クロム等 6 種類の特定有害物質の含有有無や環境安全使用期限、
廃棄時のリサイクル可否等の情報表示が義務づけられている。
中国工業情報化部は 2010 年 7 月 16 日付、同法の改定草稿を公表し、関連業界等から
の意見募集の受付を同年 8 月末まで実施した。同改定草稿は規制対象となる製品を従来
の「電子情報製品」から「直流電圧 1,500V、交流電圧 1,000V 以下の定格電圧で使用す
るすべての設備および機器製品」へ大幅に拡大する抜本的な内容を含み、EU RoHS 指令
の製品範囲との整合を図る改定となっている。
管理弁法の名称も「電子情報製品汚染予防管理弁法」から「電子電気製品汚染予防管
理弁法」に改められ、改定版中国 RoHS は電子情報製品だけでなく白物家電を含む家庭
用電気製品や照明機器のほか、電動工具や玩具、自動販売機等のあらゆる民生用機器が
包含されることとなる。
新華通訊社系の現地メディア「経済参考報」は 2011 年 4 月 11 日付で、中国版改定
RoHS となる「電子電気製品汚染予防管理弁法」は現在までに公開意見ヒアリング等の
ステップを経て、すでに WTO の審査手続を終え、政府関連部門間の最終調整段階に入っ
ており、2011 年の下半期中に公布され 2012 年の上半期には正式に施行されるとの見通
しを伝えた。
同弁法の所管部である工業情報化部省エネ総合利用司資源総合利用処の黄建忠処長
は、2011 年 3 月 16 日に上海で行われた第 5 回電子製造年会の講演で同弁法の改定動向
に言及した。改定後に「重点管理目録」に指定される製品は、特定有害物質を含有しな
いことの強制認証を必須とするのではなく、「国家統一電子情報製品自主認証」の基準
にしたがって自主認証を取得すれば足るとの内容に変更されるとの方針も明らかにし
ており、関連業界等の意見を反映した改定内容となる見込みである。
(2)中国 WEEE「廃棄電器電子製品回収処理条例」
中国版 WEEE と言われる「廃棄電器電子製品回収処理条例」は、2011 年 1 月 1 日に正
式に施行された。同条例は、中国における廃棄電器電子製品の回収リサイクル活動を対
象として環境保護および国民の健康を保障することを目的として制定された。
中国では廃棄電器電子製品の回収・分解処理が環境保護に関する専門的な知識等を持
たない零細企業または個人によって行われた経緯があり、環境汚染防止の措置がほとん
ど採られないまま分解処理が行われてきた。具体的には、排煙や灰に含まれる有害物質
対策を取らないまま屋外に野積みしたスクラップを焼却処理したり、電子回路基板を強
酸性の薬剤に浸し、重金属類が含まれる廃液を水路や土壌中に排出する等の近隣住民の
24
健康に重大な被害を与えるような違反行為が横行する実態があった。
同条例では、リサイクル処理企業による目先の利益のみを優先した野放図な経営実態
が環境に深刻な影響を与えてきたことに鑑み、廃棄電器電子製品の回収処理資格制度が
導入された。適正な分解処理に関する知識や技能、また設備等を有する者に法にもとづ
き資格を付与し、国の定める環境保護基準にしたがって最終処理を行うことを目的とし
て「廃棄電器電子製品処理資格許可管理弁法」
(環境保護部令第 13 号)が同条例と合わ
せて施行された。
同資格許可管理弁法は、認可を与えるための基本的な条件として、①廃棄電器電子製
品の処理施設を完備していること、②処理する廃棄電器電子製品の特性に応じた分別、
包装その他の設備を有すること、③完全に無害化等処理することができない廃棄電器電
子製品について適切な再利用あるいは最終処分ができること、④分解リサイクル処理の
安全性と品質確保のための専門技術員を配置していること――等を求めている。
現在「廃棄電器電子製品回収処理条例」の規制対象品目は、国務院承認を経て 2010
年 9 月 8 日に公表された「廃棄電器電子製品処理目録(第 1 次)
」
(図表 6)に示すとお
りである。
図表 6.廃棄電器電子製品処理目録(第 1 次)
No.
製品種類
製品範囲
1
テレビ
ブラウン管テレビ(白黒、カラー)、プラズマテレビ、液晶テレビ、
リアプロジェクションテレビおよびその他の方式の信号を受信して
映像と音声を出す端末設備
2
冷蔵庫
冷蔵冷凍庫、冷凍庫、冷蔵庫およびその他の保冷システム、エネルギ
ーを使用して冷気を得る冷蔵庫
3
洗濯機
タテ型洗濯機、ドラム式洗濯機、撹拌式洗濯機、脱水機その他機械作
用により衣類を洗う器具(乾燥機能を兼ねるものを含む)
エアコン
一体型エアコン(窓用エアコン、壁掛け式等)、分離式エアコン(分
離壁掛け型、分離床置き型等)、セントラルエアコンその他の制冷量
14,000W 以下のルームエアコン器具
パソコン
デスクトップ型パソコン(本体・ディスプレイ分離式、一体式、キー
ボード、マウス)、携帯式パソコン(パームトップパソコンを含む)
等の情報処理機器
4
5
出所:
「廃棄電器電子製品処理目録(第 1 次)」
(国家発展改革委員会公告 2010 年第 24 号)
中国の電器電子製品の回収リサイクルは 2011 年 1 月の「廃棄電器電子製品回収処理
条例」の施行に先立って実施された「家電以旧換新」プロジェクトによる適法ルートで
の回収処理率向上の促進効果が大きかった。同プロジェクトは省エネ・環境対策の一環
25
として、エネルギー消費効率の低い旧式の家電製品から省エネ型の新製品への買い替え
を促すために、中国政府が 2009 年 8 月から実施している買い替え促進政策で、旧家電
を正規の回収ルートで処分すれば新製品購入時の補助金を受けることができる制度で
ある。2011 年 7 月 5 日付「上海証券報」は、同制度の実施以来、廃棄処理された家電
のうち合法的に分解処理された割合は 71.7%に達し、実施前より 30%程度上昇したと
報じた。
「廃棄電器電子製品回収処理条例」は、回収処理企業のコストをカバーして回収リサ
イクルを促進するため、廃棄電器電子製品処理基金を設立して電器電子製品の生産者、
輸入業者およびその代理人は同基金へ拠出金を納付しなければならないことを規定し
た。拠出金の負担は輸入及び生産企業にとっては経営上のコストアップ要因となる。
工業情報化部が関連業界に示した「廃棄電器電子製品処理基金徴収使用管理弁法」
(第
3 次業界意見募集稿)では、拠出金額は、各 1 台当たりテレビ 15 元、冷蔵庫 12 元、洗
濯機 7 元、エアコン 7 元、パソコン 10 元とし、製品の設計段階から資源の総合利用に
適した無害化処理設計が採用され、環境にやさしい材料を使用する電器電子製品は拠出
金を軽減する旨の規定が盛り込まれた。同意見稿の回収処理企業に交付される補助金は
各 1 台当たりテレビ 85 元、冷蔵庫 80 元、洗濯機 35 元、エアコン 35 元、パソコン 85
元である。
上海市再生資源回収利用協会のウェブサイトは、年間 1,100 万台の冷蔵庫を生産する
美的集団を例に挙げ、同基金の導入により冷蔵庫部門だけで年間 1 億 3,200 万元のコス
ト増になることを紹介した。しかし業界全体としては、同基金への拠出金は企業のコス
ト増要因になるものの同基金制度が公平・公正に運用されれば社会全体の省エネ・排出
削減に大きな意義があり、回収リサイクル事業で収益を生む機会が期待できるとの前向
きな反応が主流であると指摘している。TCL 集団は国内最高水準のハイテク技術による
電器電子製品リサイクル処理企業を目指して 2 億 5,000 万元を投資して TCL 奥博
(天津)
環境発展有限公司を設立した。
中国のリサイクル業界はこれまで零細もしくは個人企業が主に従事してきたが今後、
適法な廃棄電器電子製品の回収リサイクル率を先進国並の水準へ高めていくためには、
同条例と同時に施行された「廃棄電器電子製品処理資格許可管理弁法」及び「廃棄電器
電子製品処理企業資格審査および許可ガイドの公告」にもとづいて、適正な分解処理に
関する知識や技能、設備等を備える近代的な回収処理企業を育成して、同産業の基盤を
形成していくことが不可欠である。
以
26
上
平成 23 年度中国における環境関連動向調査
第3回
中国のエネルギー関連製品ラベル制度
中国のエネルギー効率に関する製品ラベルには「エネルギー効率ラベル」と「省エネ
製品ラベル」の 2 種類がある。
「エネルギー効率ラベル」は製品のエネルギー効率を 5
段階または 3 段階で消費者に示して省エネ製品の普及促進を図る製品ラベル制度であ
り、「省エネ製品ラベル」は所定の認証機関による認証を取得することで政府調達にお
ける優先購買の対象となる等の優遇措置を受けることができる制度である。いずれの製
品ラベルも中国省エネ法を基本法として導入されており、関連の実施弁法等により対象
製品の種類やエネルギー効率に関する技術標準が定められている。
第 3 回中国環境関連動向調査は、中国の省エネ政策の状況とその推進策の一環として
の 2 種類のエネルギー関連製品ラベル制度の概要について、中国の省エネ製品普及政策
や規制強化の最新動向等を含めて整理しレポートする。
1.中国の省エネ対策の現状
中国政府は従来のエネルギー多消費型の社会経済発展モデルから資源節約型の省エ
ネ・循環経済社会への転換を図ることを目標として、
「国民経済・社会発展第 11 次 5 ヵ
年規画綱要(2006~2010 年)」で初めて単位 GDP 当たりのエネルギー消費量を削減する
数値目標を導入した。2010 年までに 2005 年対比で 20%削減する具体的な目標を掲げ、
中央政府が達成に対して責任をもつ約束性指標として位置づけたが、
最終的には 19.1%
の削減にとどまり目標とした 20%削減は達成できなかった。
2011 年から 2015 年までを対象期間とする「国民経済・社会発展第 12 次 5 ヵ年規画
綱要」にも、先の「第 11 次 5 ヵ年規画」に引き続いて単位 GDP 当たりのエネルギー消
費量の削減目標が盛り込まれた。2015 年までに 2010 年対比で 16%削減する目標が前期
の 5 ヵ年規画と同様に中央政府の約束性指標として設定されている。
中国政府の省エネ・低炭素社会の実現に向けた国家戦略及び目標は、国家発展改革委
員会・気候変動対応司に属する気候変動対応指導グループ(
「応対気候変化領導小組」
)
が基本方針を策定し、気候変動専門家委員会に審議・調整を指示して取りまとめる。
国家気候変動対応指導グループは、国務院の決定により 2007 年 6 月に設置された気
候変動対策に関する戦略決定機関で、温家宝首相をリーダー、李克強副総理と戴秉国・
国務委員を副リーダーとし、各省庁の大臣や長官に相当する国務院各部のトップクラス
がメンバーとなって構成されている。
温家宝首相は 2011 年 7 月 19 日、国家気候変動対応指導グループ会議を召集し、中央
政府が掲げた省エネ目標を達成するため省エネ対策関連制度の執行を強化する方針を
強調した。具体的には、各種投資プロジェクトに対する事前の省エネ評価審査制度の実
施を徹底することや企業ごとの電力使用状況の統計管理を強化することに加えて、エネ
ルギー効率ラベルの更なる普及ならびに省エネ製品ラベルと政府グリーン調達制度を
27
効果的に組み合わせた省エネ製品・設備の導入推進を加速すること等が提言された。
2 種類のエネルギー関連製品ラベル制度は、国家の省エネ削減目標を達成するための
重要施策の一環として位置づけられている。
2.中国の省エネ政策体系
中国政府による省エネ関連政策は、「省エネ法」を基本法として関連法令の規定にも
とづいて実行されている。中国の「省エネ法」
(「節約能源法」国家主席令第 77 号)は
1997 年 11 月 1 日に制定され、その後 2007 年 10 月の第 10 回全人代常務委員会第 30 回
会議で改正案が承認され、2008 年 4 月 1 日から現行法が施行されている。
同法は社会全般の省エネ化を促進することによりエネルギー利用効率を高め、環境の
保護を図りながら、持続的発展が可能な経済社会を構築することを目的とする(第 1 条)
。
同法による省エネ政策は、①中央政府の省エネ管理部門が定める製品及び設備のエネ
ルギー使用効率に関する基準の遵守を求める強制性の管理制度、及び②政府が指定する
第三者機関の技術基準にもとづいて、エネルギー効率が国内先進水準にあると認証され
た製品及び設備に対して政府による優遇措置を付与する任意性の奨励政策――の 2 つ
が基本的な柱となっている。
図表 1.中国の省エネ政策の基本体系
(1)管理制度
省エネ法第 13 条は、国務院の標準化主管部門及び省エネ所管部門が製品等のエネル
ギー使用効率に関して国家標準及び業界標準を制定して、製品省エネの技術基準体系を
定めることを規定した。そのうえで、エネルギー使用効率が低く技術が立ち遅れた製品
及び設備に対しては中国市場での生産及び販売を禁止する「淘汰制度」を実施するとし
ている(第 16 条)
。
この基本政策にもとづき省エネ法第 18 条は、家庭用電気製品など社会で広く使用さ
28
れエネルギー使用量の多い製品を対象として、国家が「エネルギー効率ラベル」による
分類管理を実施することを規定し、同条項が「中国エネルギー効率ラベル制度」の法的
根拠となっている。同分類管理で国が定めるエネルギー効率基準に適合しない製品及び
設備は、生産・輸入または販売を禁止すると規定しており(第 17 条)、中国エネルギー
効率ラベルは、「淘汰制度」の具体的な運用基準を含む強制規定にもとづく管理制度で
あることを理解する必要がある。
(2)奨励政策
省エネ法第 20 条は「省エネ製品ラベル」について規定し、エネルギーを使用する製
品の生産者及び販売者は、自主性の原則にもとづいて国が定める省エネ製品認証規定に
従い、国務院の認証認可監督管理部門が指定する認証機関に対して、製品の省エネ認証
を申請し、省エネ製品認証証書を取得した場合には、当該製品に省エネ製品ラベルを表
示することが認められる。
「省エネ製品ラベル」は、省エネ型の製品及び設備の普及促進を目的とする任意性の
規定にもとづく奨励制度であり、強制規定にもとづく管理制度である「エネルギー効率
ラベル」とは政策上の位置づけが異なる。
省エネ製品認証証書を取得した企業には、中国政府による各種の優遇措置が与えられ
る。省エネ法は、政府の購買管理部門が政府購買において優先的に調達すべき省エネ製
品及び設備のリストを制定する「省エネ製品政府購買制度」を規定しており、同リスト
の物品を調達する際には、省エネ製品認証を取得済みの製品を優先的に購買しなければ
ならない(第 64 条)。また、省エネ製品の研究開発や生産技術の改良に関する技術プロ
ジェクト等を実施する際には、税制上の優遇や低金利融資による金融支援等の奨励措置
が与えられる。
3.中国のエネルギー関連製品ラベル制度の概要
中国の主要な製品ラベル制度である「エネルギー効率ラベル」と「省エネ製品ラベル」
について各々の概要を以下に解説する。
(1)エネルギー効率ラベル
①所管官庁及び根拠法令
省エネ法第 18 条の規定にもとづき、国家発展改革委員会と国家品質監督検査検疫局
が共同で「エネルギー効率ラベル管理弁法」(国家発展改革委員会、国家品質監督検査
検疫局第 17 号)を制定し、2005 年 3 月 1 日から正式施行された。
同弁法の規定により、国家発展改革委員会、国家品質監督検査検疫局及び国家認証認
可監督管理委員会が共同でエネルギー効率ラベル制度の管理運営を所管する。
②ラベル制度の目的及び図案
社会で広く使用され省エネ促進の潜在余地が大きい製品に対して、国が統一的に実施
する製品ラベル制度で、消費者の商品選択の意思決定に有益な情報を提供し、エネルギ
ー効率の高い製品を社会に普及させることを目的とする。
製品のエネルギー使用効率性能は 5 段階または 3 段階で分類表示される。1 等級がエ
29
ネルギー効率に最も優れ、5 段階表示の 3 等級が国内の平均的な水準とされる。最低の
5 等級のエネルギー効率に達しない製品は中国国内での生産及び販売が認められない。
「エネルギー効率ラベル管理弁法」の規定によりエネルギー効率ラベルは効率等級の
他に生産者名称、製品型式番号、エネルギー消費量、エネルギー効率等級の判定基準と
なる国家標準の番号を表記しなければならない(第 8 条)
。
図表 2.中国エネルギー効率ラベルの図案
図表 3.5 段階分類表示の場合の各等級の内容
エネルギー効率等級
各等級基準の内容
1 等級
最も高効率で国際的にも先進水準に達している
2 等級
中国国内の平均的な水準を上回る
3 等級
中国国内で平均的なエネルギー効率の水準
4 等級
中国国内の平均的な水準を下回る
5 等級
国内市場で販売できる最低基準のエネルギー効率
③ラベル対象品目及び認証基準
「エネルギー効率ラベル管理弁法」第 3 条は、国務院省エネ所管部門は省エネ促進の
潜在余地が大きい製品種類の中から「エネルギー効率ラベル対象製品リスト」に収載す
る製品を選定して公表することを規定している。
同規定にもとづき 2005 年 3 月 1 日、
「エネルギー効率ラベル対象製品リスト
(第 1 次)」
が公表され、ルームエアコンと家庭用冷蔵庫がエネルギー効率表示ラベルの最初の対象
製品に指定され同制度の運用が開始した。以来、直近では 2011 年 3 月に第 7 次リスト
が公表されパネル型平面テレビと家庭用電子レンジの 2 種類の製品が指定されており、
30
これまでに家電製品、照明設備、事務所設備、工業用設備、商業用設備の 5 分野にわた
る 23 種類の製品がエネルギー効率ラベル対象製品として指定されている。
「エネルギー効率ラベル対象製品リスト」が公表される際には、同製品のエネルギー
効率認証基準となる国家標準も合わせて公表されている。図表 4 に第 1 次から第 7 次ま
でのエネルギー効率ラベル対象製品と認証基準の一覧を示す。認証基準の GB で始まる
コードは国家標準(中国語発音で‘Guojia Biaozhun’)であることを表し、国家品質
監督検査検疫総局と国家標準化管理委員会が共同で制定する環境・エネルギー技術基準
であることを示す。
図表 4. エネルギー効率表示ラベル対象製品と認証基準一覧
リスト No.
公表時期
製品品目
認証基準
第1次
2005 年 3 月 1 日
家庭用冷蔵庫
GB12021.2-2003
ルームエアコン
GB12021.2-2004
第2次
2007 年 3 月 1 日
電動洗濯機
GB12021.4-2004
ユニット式エアコン
GB19576-2004
第3次
2008 年 6 月 1 日
安定器付蛍光灯用
GB19044-2003
高圧ナトリウムランプ
GB19573-2004
三相非同期モーター
GB18613-2006
冷水チラーユニット
GB19577-2004
家庭用ガス温水器
GB20665-2006
第4次
2009 年 3 月 1 日
風速切替式ルームエアコン
GB21455-2008
マルチ式エアコン(ヒートポ
GB21454-2008
ンプ)ユニット
貯水式電気温水器
GB21519-2008
家庭用電気コンロ
GB21456-2008
第5次
2010 年 3 月 1 日
自動炊飯器
GB12021.6-2008
扇風機
GB12021.9-2008
電源スイッチ
GB21518.9-2008
容積式コンプレッサ
GB19153-2009
第6次
2010 年 11 月 1 日 変圧器
GB24790-2009
通風機
GB19761-2009
第7次
2011 年 3 月 11 日 パネル型平面テレビ
GB24850-2010
家庭用電子レンジ
GB24849-2010
④エネルギー効率の認証方式
エネルギー効率ラベルは対象に指定された製品について表示することが強制である
ため、当該製品のエネルギー効率の測定と等級ランクの確認を実施しなければならない
が、その方式は「自己宣言方式」を採用しており、社外の第三者認証機関の測定にもと
づく認証を受けることは義務づけられていない。
「エネルギー効率ラベル対象製品リスト」に指定された製品を生産あるいは輸入する
企業は、国が認可する認証機関に委託するか、あるいは自社の品質管理部門等により自
ら国家標準に定める技術基準に照らして自社製品のエネルギー効率を測定して等級ラ
ンクを確定する(「エネルギー効率ラベル管理弁法」第 9 条)
。製品のエネルギー効率を
31
自己宣言方式により確定すれば、規定の様式にもとづきエネルギー効率ラベルを製品や
包装パッケージに表示することができる。
製品の生産、輸入企業は同ラベルの使用を開始してから 30 日以内に、所管官庁から
の授権により認証管理業務を行うエネルギー効率表示管理センターに対して、生産企業
の場合は営業許可証あるいは登記証の写し、輸入企業の場合は輸入契約書の写しに当該
製品のエネルギー効率測定の結果報告、表示使用するエネルギー効率ラベルのサンプル
を提出する(第 11 条)
。後日、これらの内容に変更が生じた場合は企業が自主的に変更
の届出を行う。
エネルギー効率ラベルは強制性の管理制度であるため、届出の受理手続に関してエネ
ルギー効率表示管理センターは企業から費用を徴収しないことが定められている(第
14 条)
。
(2)省エネ製品ラベル
①所管官庁及び根拠法令
省エネ法第 20 条の規定にもとづき 1999 年 2 月 11 日、
「省エネ製品認証管理弁法」が
制定され、中央政府の国家経済貿易委員会(現在の国家発展改革委員会)が中心となっ
て、省エネ製品の認証業務の授権機関として中国省エネ製品認証センターが設立されて
認証業務が開始した。現在、国家発展改革員会の所管のもと、国家品質監督検査検疫総
局が制度の全体管理を実施する。
②ラベル制度の目的及び図案
省エネ製品ラベルは、中国の製品エネルギー効率の向上と省エネ製品の市場における
健全な競争を通じて、環境保護と中国の省エネ製品の国際貿易の発展を促進することを
目的として導入された(「省エネ製品認証管理弁法」第 1 条)
。
中国語で省エネを「節能」と表すことから「節」の文字を図案化したラベルを採用し
ている。
図表 5.省エネ製品ラベル図案
③ラベル対象品目及び認証基準
認証機関である中国省エネ製品認証センターの関連ウェブサイトによると、ラベル対
象品目の範囲として 35 種類の製品品目が示されている。これまでに1万以上の製品に
32
対して省エネ製品ラベル認証が付与された。
図表 6.
No.
省エネ製品ラベルの対象品目
品目名称
No.
品目名称
1
家庭用冷蔵庫
19
コンピュータ
2
ルームエアコン
20
ディスプレイ
3
ユニット式ルームエアコン
21
管形蛍光灯用安定器
4
チラーユニット
22
高圧ナトリウム灯用安定器
5
家庭用洗濯機
23
高圧ナトリウム灯用交流電子安定器
6
家庭用電子レンジ
24
両口金型蛍光灯
7
家庭用貯水式電気温水器
25
インバータ式蛍光灯
8
家庭用炊飯器
26
片口金型蛍光灯
9
電気コンロ
27
低圧降圧式節電器
10
排煙レンジフード
28
モーター用調圧節電器
11
カラーテレビ受信機
29
交流電力系統抵抗器
12
DVD/VCD ディスク
30
容積式コンプレッサ
13
プリンタ・ファクシミリ一体機
31
電力工事用金具
14
ファクシミリ
32
中小型三相交流式非同期モーター
15
プリンタ
33
外部電源
16
デジタル式多機能 OA 機
34
通風機
17
ポリスチレン発泡樹脂板
35
配電変圧器
18
窓枠建材
出所:中国省エネ製品認証センター
④省エネ製品の認証方式
省エネ製品ラベルの申請は義務ではなく任意の自主申請方式による。外国企業も中国
企業と同様に、中国省エネ製品認証センターに対して申請手続きを行う(省エネ製品認
証管理弁法第 4 条)
。
省エネ製品認証申請書に、営業許可証または登記証の写し、製品の性能検査報告書、
生産能力を証明する資料、品質管理マニュアル等を添付して提出する。申請企業は、国
の品質管理部門の定める品質保証基準あるいは外国企業の場合は、ISO9000 シリーズの
品質保証体系の認証を取得していることが申請の条件となっている。
中国省エネ製品認証センターは申請書類の受領後 10 日以内に書面審査を行い、不備
がある場合には申請者に通知し 30 日以内の期限を定めて必要資料の補充を求める。期
限内に資料の補充ができず、適切な説明がされない場合には認証申請が却下される。
33
認証申請書が受理されると、認証センターは申請企業の現場検査を実施する。具体的
には認証センターが委託する検査機関が申請企業を訪問して、製品のサンプル抜き取り
検査を行い、製品検査報告書を作成して認証センターへ提出する。その後、専門家によ
る認証評価チームの総合審査を経て、省エネ製品認証証書の交付が決定される。
その後、中国省エネ製品認証センターと認証企業の間で「省エネ製品ラベル使用協議
書」の作成と署名を行い、当該製品に対する省エネ製品ラベルの統一管理番号が付与さ
れる。認証証書の有効期限は 4 年間となっており、継続する際には所定の書類を添えて
認証継続の申請手続きが必要である。
⑤省エネ製品政府購買制度との関係
省エネ製品ラベル認証を取得した製品は、中国政府が推進する「政府グリーン調達制
度」において優先購買の対象となる。
財政部、環境保護部及び国家発展改革員会が共同で 2007 年 7 月 30 日に公表した「省
エネ製品の政府強制購買制度の実施に関する意見」は、中央財政資金により物品、資材
等の政府調達を行う際に「省エネ製品政府調達リスト」に掲載された製品が技術水準及
びサービス面で所定の調達要件を満たす場合は、強制的にリスト収載製品の中から優先
購買すべきことを関係政府部門へ通知している。
「省エネ製品政府調達リスト」は 2004 年 12 月 17 日の第 1 次リストの公表以来、対
象製品の追加と見直しが重ねられており、直近では 2011 年 7 月 29 日付で公表された同
第 10 次リストが最新版となっている。
図表 7 に「エネルギー効率ラベル」と「省エネ製品ラベル」の概略を比較して示す。
図表 7.
「エネルギー効率ラベル」と「省エネ製品ラベル」の比較
項
目
エネルギー効率ラベル
省エネ製品ラベル
ラベル制度の目的
消費者へ情報提供により
省エネ製品の普及促進
中国の省エネ製品市場の
健全な発展促進
ラベル表示の義務
指定製品は強制適用
任意による自主申請
認証方式
自己宣言方式
第三者認証方式
認証内容
エネルギー効率
エネルギー効率と品質
政策措置の性格
省エネ管理制度
省エネ奨励制度
認証申請費用負担
国
企業
4.中国エネルギー効率ラベルに関する動向
(1)対象製品の追加の動き
34
2011 年 6 月 17 日に北京で開催された中国標準化研究院が主催する「2010 年度エネル
ギー効率ラベル市場調査報告会」で、同研究院エネルギー効率ラベル管理センターの曹
寧博士は、エネルギー効率ラベル対象製品の新たな追加の動きについて言及した。
デジタル式テレビ受信機、プリンタ及びファックス、小型モーターの 3 種類の製品を
対象とする「エネルギー効率ラベル対象製品リスト(第 8 次)
」の予備承認の手続きを
関連所管部門に対してすでに行ったことを明らかにした。近く正式に同製品の省エネ技
術要求の国家標準と合わせて公表されるものと見られる。
曹博士はさらに、水熱源ヒートポンプユニット、換気扇、マイクロコンピュータ、家
庭用太陽熱温水システム、両口金型蛍光灯、蛍光灯安定器等の製品についてエネルギー
効率ラベルの適用に向けた技術要求基準の検討に着手したことも明らかにした。現在
「第 7 次リスト」までで指定された 23 種類の製品が同ラベルの対象となっているが、
「第 12 次 5 ヵ年規画」期間中の 2015 年までに 40 種類以上に拡大して主要なエネルギ
ー使用製品をラベルの対象に含める意向を表明した。
(2)エネルギー効率ラベルの市場認知度
エネルギー効率ラベルは、強制規定による国家のエネルギー管理制度の一環で、対象
とされた製品はラベル表示が義務づけられる。その一方で、中国の消費市場で同ラベル
の認知度が十分に浸透していない状況もあるようである。
パネル型平面テレビは「エネルギー効率ラベル対象製品リスト(第 7 次)
」で指定さ
れ、2011 年 3 月 1 日以降に出荷または輸入された製品は同ラベルを表示しなければ販
売することができない。2011 年 6 月 15 日付「中国科技日報」は、パネル型平面テレビ
が同ラベル対象となって 3 ヵ月が経過したが、家電店の売り場調査の結果、製品にラベ
ルを貼付していた割合は 79%にとどまったと伝えた。残りの 21%については説明書あ
るいは包装パッケージにエネルギー効率等級を表示しており、完全に違法とはいえない
がメーカー、販売店とも製品本体へのエネルギー効率ラベルの表示をさほど重視してい
ないと指摘した。
同記事は消費者の声として、冷蔵庫やエアコンと比較してテレビはもともと消費電力
が小さいので省エネ効率はそれほど重要ではなく、エネルギー効率等級は参考とする程
度で、商品選択で最も重視するのは価格とブランドであるとの調査結果を伝えており、
中国消費市場でのエネルギー効率ラベルへの認知度はまだ改善の余地があるようであ
る。
(3)中国政府の省エネ製品普及政策
国家発展改革員会、工業情報化部、財政部などが共同で省エネ製品の普及を促進する
ことを目的として、エネルギー効率が 1 等級あるいは 2 等級の製品の新規購入に対して
購入代金の一部を政府が補助する支援制度が実施されている。
2009 年 6 月から始まった同支援制度は「省エネ製品恵民プロジェクト」と呼ばれ、
エアコン、冷蔵庫、パネル型平面テレビ、洗濯機、照明機器など 10 種類の製品が対象
とされた。補助金支給の基準は省エネ製品と旧式製品の価格差の一定割合を基準として
35
決定され、エアコンの場合 1 台当たり 300-850 元(約 3,900-11,000 円)の補助金が支
給される。
恵民プロジェクトのもとで、2009 年 6 月から 2010 年 12 月までに 3,000 万台を超え
るエネルギー等級 1・2 級の省エネ型エアコン製品が販売され、政府財政から累計で 100
億元規模の補助金が支給された。プロジェクト実施以前には中国のエアコン市場におけ
る省エネ製品の販売シェアは 5%程度であったが現在は約 80%と大幅に増加し、恵民プ
ロジェクトが中国の省エネ製品普及とエネルギー効率ラベルの認知度向上に大きな役
割を果たしたことは間違いない。
エネルギー効率ラベル 3 等級から 5 等級の効率の低いエアコン製品は中国でほとんど
生産されなくなった実態を踏まえて国家発展改革員会等は、2011 年 5 月 31 日をもって
エアコンに対する恵民プロジェクトの補助金支給を終了することを決定した。中国政府
は同プロジェクトの実施後わずか 2 年で、省エネ型エアコン製品の普及率が世界トップ
レベルに到達したことを取り組み成果として強調した。
(4)エネルギー効率基準の適用強化の動向
2011 年 7 月 1 日から中国国内で製造、販売される単体モーターおよび装置に組み込
まれたモーター製品を対象として、従来より厳しいエネルギー効率基準(GB18613-2006
GB2 級)の適用が施行された。国家標準 GB18613-2006「中小型三相非同期モーターの限
定値及びエネルギー効率等級」は 2007 年 7 月 1 日に実施され、2008 年 6 月 1 日公表の
「エネルギー効率ラベル対象製品リスト(第 3 次)
」により三相非同期モーターがエネ
ルギー効率ラベル表示の対象製品となっている。
国家標準 GB18613-2006 は電圧 690V 以下、周波数 50Hz の三相交流電源給電のモータ
ーを対象として、エネルギー効率により GB1 級・2 級・3 級の 3 区分の等級表を定めて
いる。2007 年 7 月 1 日の実施時には GB3 級レベルを限定値(最低限のエネルギー効率)
とする技術標準が示されるとともに、同標準の実施から 4 年後の 2011 年 7 月 1 日には
限定値を GB3 級から GB2 級レベルに引き上げることが予め規定されていたものである。
今後、中国市場で販売される製品に対するエネルギー効率基準は強化されていくこと
が予想され、新たな製品種類を対象とする国家標準の制定動向に注意を払う必要がある。
2011 年 7 月 1 日実施の三相非同期モーターの限定値基準の改定と同様に、すでに実施
されている国家標準の規定文言の中で将来時点における基準強化を予め規定している
ものがあるので参考までに以下に示す。
①家庭用電気コンロ
国家標準 GB21456-2008「家庭用電気コンロの限定値及びエネルギー効率等級」
(2008
年 9 月 1 日実施)は、エネルギー効率により 1 級から 5 級まで 5 区分の等級表が定めら
れ、待機電力効率の限定値は 5W とされている。同標準実施 4 年後の 2012 年 9 月 1 日か
らはエネルギー効率の限定値は 3 級レベルが適用され、待機電力効率の限定値は一律
2W と厳しくなる。
②パネル型平面テレビ
国家標準 GB24850-2010
「パネル型平面テレビの限定値及びエネルギー効率等級」
(2010
36
年 12 月 1 日実施)は、2011 年 12 月 31 日までに出荷あるいは輸入される製品について
は GB/T8170 に定める条件のもとで待機電力が 1W 以下とされている。2012 年 1 月 1 日
以降については同条件で 0.50W 以下となり、待機電力効率の限定値が厳しくなる。
③家庭用電子レンジ
国家標準 GB24849-2010「家庭用電子レンジの限定値及びエネルギー効率等級」
(2010
年 12 月 1 日実施)は、エネルギー効率により 1 級から 5 級まで 5 区分の等級表が定め
られ、5 級レベルの効率値 54%、オーブン機能付きは加熱 1℃当たりエネルギー消費
1.4Wh 以下が限定値とされている。同標準実施 2 年後の 2012 年 12 月 1 日からは、4 級
レベルの効率値 56%、オーブン機能付きは加熱 1℃当たりエネルギー消費 1.2Wh 以下が
限定値となる。
上記に示すものが将来時点における適用基準の改定を予め定めるすべての国家標準
を網羅するものではない点に留意いただきたい。具体的には対象製品に適用される国家
標準の規定文言を原文で確認し、不明点については所管部門である国家標準化管理委員
会もしくはその委託認証機関へ確認することが望ましい。
37
中国環境モニタリング情報
中国 RoHS「国家統一電子情報製品汚染予防自主認証実施規則」の概要
中国国家認証認可監督管理委員会と工業情報化部は共同で、2011 年 8 月 25 日付で「国
家統一電子情報製品汚染予防自主認証実施規則」を公表した(国家認証認可監督管理委
員会公告 2011 年第 19 号)
。
中国版 RoHS といわれる「電子情報製品汚染予防管理弁法」
(2007 年 3 月施行)は、
特定有害物質の使用制限を 2 段階方式で実施することを定めており、現在は規制対象の
全製品に有害物質の含有の有無と環境保護使用期限を示すラベルを表示する第 1 ステ
ップが実施されている。現段階では所定のラベル表示による情報開示を行えば、閾値を
超える特定有害物質が含有されていても製品の上市は制限されていない。
同弁法は第 2 ステップとして「重点管理目録」を制定し、リストアップされた製品に
ついて強制認証の対象とすることを明記しており、同目録に指定された製品は特定有害
物質の含有率をはじめとする環境安全面の製品認証を取得しなければ市場での販売が
できなくなる。この「重点管理目録」の制定時期は法令では定められておらず、中国
RoHS の所管部署である工業情報化部が同国の産業発展の実情と技術水準の状況を踏ま
えて関連部門と協議のうえ決定するものとされている。2009 年 10 月に同目録のパブコ
メ版ドラフトの第一次公示が行われ、「携帯端末」、「電話機(固定電話及びコードレス
電話を含む)
」、「パソコン用プリンタ」の 3 品目がリストアップされたが、今のところ
正式公示には至っていない。
一方、国家認証認可監督管理委員会と工業情報化部は「電子情報製品汚染予防管理弁
法」が規定する有害物質の使用制限を推進するため、2010 年 5 月 18 日付で「国家統一
電子情報製品自主認証の実施に関する意見」を公表し、新たな製品自主認証制度を導入
する方針を示した。今回、「国家統一電子情報製品汚染予防自主認証実施規則」の公表
と同時に「国家統一自主認証対象製品目録(第一次)リスト」(国家認証認可監督管理
委員会公告 2011 年第 18 号)も合わせて公表され、多数の品目の製品がリストアップさ
れた。最終製品だけでなく部品、デバイス類、コンポーネント、材料等のいわゆる中間
材製品が数多く自主認証の対象として示された点が注目される。
以下に 2011 年 11 月 1 日から施行されている「国家統一電子情報製品汚染予防自主認
証実施規則」の概要について紹介する。
1.「国家統一電子情報製品汚染予防自主認証実施規則」の概要
(1)適用範囲
同規則は「国家統一電子製品汚染予防自主認証目録」にリストアップされた最終製品、
コンポーネント製品、部品及びデバイス製品、材料製品を対象として、これらに含有さ
れる有害物質を抑制するために適用される。抑制対象となる物質は、「電子情報製品汚
染予防管理弁法」に定める鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE の 6 種類の
有害物質である。
38
(2)認証方法タイプ
自主認証申請を行う製品の種類に応じて図表1に示す 4 タイプの認証方法がある。製
品の型式ごとに全品検査を行うタイプ1以外はサンプル抽出による検査となり、すべて
の部材を検査しないため、申請製品の特定有害物質の含有量が GB/T26572-2011「電子
電気製品の制限物質含有量要求」に適合していることについて生産企業が自己宣言を行
う方式が採用された。いずれの認証方法タイプの場合も認証取得後の定期的な監督フォ
ローが実施される。タイプ 2 の認証検査方法の対象となる製品は同規則附表 1 に示され
たコンポーネント及びデバイス製品である。同表の参考日本語訳を附録 1 に掲載する。
図表 1.
「国家統一自主認証」の認証方法タイプの概略
認証タイプ
認証検査方法
自己宣言
認証後監督
適用製品
タイプ 1
型式試験
-
要
コンポーネント、デバイス、材
料製品
タイプ 2
通常サンプル検査
要
要
規則附表1に掲載されたコン
ポーネント及びデバイス製品
タイプ 3
最適化サンプル検査
要
要
最終製品類及び部品類製品
(「複雑製品」
)
タイプ 4
通常サンプル検査及
び初回工場検査
要
要
同規則の範囲内の全ての製品
(3)認証の基本手順
国家統一自主認証の申請手順は、①申請書類の提出、②書面審査、③サンプル検査、
④工場立会い検査(タイプ 4 の場合)
、⑤認証結果の評価と承認、⑥認証後監督、の各
ステップにより実施される。
(4)各ステップの基本要求
①申請書類の提出
ⅰ)認証申請手続きの単位
国家統一自主認証の取得を申請する者(以下、認証委託人)は中国国家認証認可監督
管理委員会と工業情報化部が共同で認可する認証機関に対して申請書を提出する。製品
認証の申請手続きは製品の型式ごとに行うことが原則である。ただし例外として、同一
場所で同一の加工技術により同種の製品を生産する場合には、いくつかの型式にわたる
複数の製品種類を 1 回の認証申請手続きに含めることができる「シリーズ認証申請」
(「系列産品申請認証」
)が認められる。シリーズ認証申請に関する規定は以下のとおり。
a)最終製品、コンポーネント、デバイス、部品の場合
基準となる型式製品を決定し、当該製品と材料組成の差異が 10%未満かつ差異項目
が 200 未満の場合は 1 申請手続きに含めることができる。原則としてシリーズ申請に含
39
めることができる型式数は 10 を超えないものとするが、製品間で材料の組成に差異が
ない場合には緩和することを認める旨規定されている。シリーズ申請を行う場合、認証
委託人は型式ごとの材料の差異に関する詳細な説明資料を申請書に添付することが必
要である。
b)材料製品の場合
シリーズ申請する各型式の材料製品に使用される原材料の配合成分の種類が同一で
あることが条件とされる。ただし、配合成分に微量の異なる物質が含まれていても製品
全体の配合成分比率に影響を与えない程度の量であれば同一とみなす。
ⅱ)提出する書類
認証申請書類を提出する際に以下の附属書類を添付する。
a)生産企業汚染予防管理体系に関する管理書類
実施規則附表 2「生産企業汚染予防(RoHS)管理能力要求」にもとづいて作成する。
国家統一自主認証の申請に当たり、製品に含まれる有害物質の種類や性質を確実に識別
して、適切なリスク管理を自主的に行う管理能力と組織体制を備えていること示すため
に提出する。なお、認証方法タイプ 4 の場合は工場立会い検査が行われるため提出対象
外である。
b)認証申請製品の汚染予防供給者適合性宣言(自己宣言文書)
タイプ 2、3、4 の認証申請の場合に実施規則附表 3 の様式フォームに記載して提出す
る。サンプル抽出方式で認証検査を実施するため、サンプル提出されなかった製品部材
についても特定有害物質の含有量が基準に適合していることを、生産者の立場から自己
宣言する文書である。同実施規則附表 3「汚染予防供給者適合性宣言」の参考日本語訳
を附録 2 に掲載する。
c)シリーズ申請の場合、各型式の使用材料の差異に関する詳細な説明資料
d)製品に組み込まれた材料、コンポーネント、デバイス、部品がすでに国家統一汚染
予防認証を取得している場合は、その認証証書の写しと証書番号
e)認証委託人の組織機構コード
f)営業許可証の写し
g)取得済み各種認証体系の認証証書の写し
h)その他必要な書類
②書面審査
認証機関は申請書類を受理する際に認証委託人との間で、申請にかかる双方の責任所
在に関する協議書を取り交わしたうえで、受け付けた申請書類にもとづき以下項目につ
き書面審査を行う。
i) 認証委託人の組織機構コード及び営業許可証の写しをチェックし、製品認証を申請
する生産企業等が実在し違法性がないことを確認する。また、製品に対する商標権
及び OEM 等にかかる知的財産権の関係について違法性がないことを確認する。
40
ⅱ)シリーズ申請の場合は、各型式の使用材料の差異に関する詳細な説明資料を検討し
申請手続き単位が適切であるか確認する。
ⅲ)工場立会い検査を実施しないタイプ 1、2、3 の場合、
「生産企業汚染予防管理体系
に関する管理書類」及び取得済みの各種認証体系の認証証書の写しをチェックし、
認証申請する生産企業が有害物質のリスク管理要求を満足しているか否かを審査
する。
ⅳ)「認証申請製品の汚染予防供給者適合性宣言」及び双方の責任所在に関する協議書
の内容により当該認証申請業務にかかるリスクを検討、審査する。
③サンプル検査
ⅰ)サンプル検査の原則
国家統一自主認証のサンプル検査業務は国家認証認可監督管理委員会及び工業情報
化部が共同で認可する試験機関に委託して実施しなければならない。
タイプ 1 及びタイプ 3 の場合は、認証委託人側でサンプル抽出を行う。サンプルは認
証申請する型式製品のうち代表的なものを選定し、当該サンプルは申請に含まれるすべ
ての型式製品に使用される材料を包含するものでなければならない。また、シリーズ申
請における複数製品の差異に関する要件を認証機関が検証できるものでなければなら
ない。またタイプ 2 及びタイプ 4 では、認証委託人と認証機関が派遣した人員の双方が
約定された場所において共同でサンプル抽出を実施する。
ⅱ)提出するサンプルの数量
同規則により認証タイプごとに提出が必要なサンプルの数量を図表 2 にまとめる。
図表 2.認証検査に必要なサンプルの提出数量
認証タイプ
提出サンプル数
認証申請手続き1単位ごとに製品 1 セット
タイプ 1
固体の場合 50g 以上、液体の場合 50mg 以上であることを要する
認証申請手続き1単位ごとに製品 1 セット
タイプ 2 及び 4
実施規則附表 4「検査サンプル数量表」に従い、認証申請製品を最小単位
に分解した際に、すでに認証取得済みの部品数の割合によって提供が必要
なサンプル数量 1 セット
最終製品及びコンポーネント製品は 2 セット
タイプ 3
GB/T26572-2011 の附表 D(電子電気機器中の材料及びコンポーネントの有
害物質含有可能性)の PBB、PBDE、六価クロムの 3 種類の特定有害物質の
含有可能性が H(高)とされている部材については、実施規則附表 4「検
査サンプル数量表」に従い提供が必要なサンプル数量1セット
41
同実施規則附表 4 は認証申請時に提出が必要な「検査サンプルの数量表」で、申請対
象製品を最小単位にまで分解したときの部品の総量数に対する国家統一自主認証を既
に取得済みの部品数の比率によって、提出が必要なサンプル抽出数の割合を定めたもの
である。同表を附録 3 に掲載する。
例えば、製品の材料総量数が 20 を超え 100 以下の場合で、このうち国家統一認証を
取得済みの部品の比率が 50%超 100%以下の場合は、最少サンプル抽出数の割合は 30%と
されるため、提出が必要な検査サンプル数量の範囲は 6~30 となる。国家統一認証を取
得済み比率が 10%未満であれば、最少サンプル抽出数の割合は 50%とされるため提出サ
ンプル数量の範囲は 10~50 となり、部品やコンポーネント単位で同自主認証を取得済
みの部材を多く使用しているほど、これらを組み込んだ最終製品の認証申請時の負荷が
軽減されるしくみとなっている。最終製品を組成する材料、コンポーネント、デバイス、
部品がすでに国家統一自主認証を取得済みである場合は、当該部分はサンプルとして提
出する必要はない。
試験機関はサンプル検査報告書作成後 3 ヵ月間、当該サンプルを保存しなければなら
ない。3 ヵ月が経過すると申請者が請求すれば返却されるが、認証機関はサンプル検査
の関係資料を認証証書が失効してから 5 年間保存することが義務づけられている。
ⅲ)サンプル検査の実施規則
検査対象は鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、PBB、PBDE の 6 種類の有害物質であ
り、適用される技術標準は閾値及び分解については GB/T26572-2011「電子電気製品中
に含有される使用制限物質の要求」
、検査方法については GB/T26125-2011「電子電気製
品中の 6 種類の制限物質の測定方法」である。
サンプル検査において不合格となった場合は、検査を実施した試験機関は不合格報告
書を作成するとともに速やかに認証機関及び認証委託人に通知する。別のサンプルによ
る再検査を認めるか否かは認証機関が決定する。
認証タイプごとに適用されるサンプル検査の概略は以下のとおりである。
a)型式試験(タイプ 1)
提出された検査サンプルに対して蛍光 X 線分析装置でスクリーニングを行い、有害物
質の含有量が閾値を超過する可能性があるサンプルに対して化学検査を実施する。
b)通常サンプル検査(タイプ 2、タイプ 4)
最終製品及び提出された検査サンプルに対して蛍光 X 線分析装置でスクリーニング
を行い、有害物質の含有量が閾値を超過する可能性があるサンプルに対して化学検査を
行う。製品の蛍光 X 線分析の結果、閾値を超過する可能性がある部材が提供サンプル中
にない場合は、最終製品を GB/T26572-2011 に従って分解のうえ化学検査を実施する。
c)最適化サンプル検査(タイプ 3)
最終製品及び提出された検査サンプルに対して蛍光 X 線分析装置でスクリーニング
を行い、有害物質含有量が閾値を超過する可能性があるサンプルに対して化学検査を行
う。さらに GB/T26572-2011 附表 D(電子電気機器中の材料及びコンポーネントの有害
物質含有可能性)の特定有害物質の含有可能性が H(高)とされる部材及び試験機関が
含有可能性が高いと判断する部材についても化学検査を実施する。当該部材が提供サン
プル中にない場合は、GB/T26572-2011 に従い最終製品を分解して化学検査を実施する。
42
④工場立会い検査(タイプ 4)
生産企業がはじめて国家統一自主認証を申請する場合は、認証機関が派遣する人員が
工場を訪問して立会いのうえ初回工場検査を実施する。工場立会い検査では、実施規則
附表 2「生産企業汚染予防(RoHS)管理能力要求」にもとづいて企業の組織体制等がチ
ェックされる。製品検査は通常サンプル検査で、認証委託人と認証機関が派遣した人員
の双方立会のもとサンプル抽出を行い試験機関へ提出する。工場立会い検査の所要時間
は対象企業の規模により 1 人日ないし 4 人日で実施される。
⑤認証結果の評価と承認
認証機関は製品サンプル検査及び工場検査の結果に対して総合評価を実施し、審査に
合格した製品について認証委託人に認証証書を発行する責任を負う。原則として 1 申請
単位ごとに 1 枚の「国家統一自主認証証書」が発行される。認証証書の有効期間は 5 年
間である。ただし、OEM 方式等で生産する製品の場合は、認証証書の有効期間は OEM 協
議書等に定めた期間を越えないものとされる。
認証審査の手続きに要する日数については実施規則中に規定があり、認証機関あるい
は試験機関が認証審査費用を収納し、サンプルを受領した日から起算するものとされて
いる。図表 3 に認証審査手続きに要する日数の規定内容を示す。
図表 3.認証審査手続きに要する日数の規定
認証審査業務プロセス
最終製品、コンポーネントのサ
ンプル検査
規定所用日数
①X 線スクリーニング
15 作業日以内
②化学検査
10 作業日以内
③報告書作成
10 作業日以内
合計
35 作業日以内
部品、デバイス、材料のサンプ
ル検査
X 線スクリーニング、化学検
査、報告書作成
20 作業日以内
工場検査
立会検査及び報告書作成
5 作業日以内
検査データ評価・判定
審査、承認、証書発行
5 作業日以内
⑥認証後監督
認証取得後のフォロー監督業務は、ⅰ)認証後サンプル検査、およびⅱ)汚染予防保
証能力に関する監督検査により実施される。
ⅰ)認証後サンプル検査
認証機関は「認証認可条例」の規定にもとづき、認証証書の有効期間中は随時、認証
製品のサンプル検査を実施することができる。検査サンプルの取得は当該企業の生産ラ
イン、倉庫、販売店店頭、ユーザー等いずれからも抽出することが認められる。
原則として、認証機関は認証した製品に対して認証証書の有効期間中、毎年 1 回以上、
認証後サンプル検査を実施しなければならず、また元の認証時とは異なる試験機関(実
験室)に委託して行わなければならない。なお、認証後サンプル検査の費用は企業側が
43
負担する。
認証取得後のフォロー監督業務で不合格と判定された場合は、同規則附表 6「認証後
監督で不合格となった場合の処理」にもとづき措置を行う。図表 4 に同規則附表 6 に規
定される処置基準の概要を示す。なお、サンプル検査を含む認証後モニタリング検査を
拒否した場合は、認証機関は当該企業が有する全ての製品認証を取り消し、全国の認証
機関は 12 カ月間、当該企業からの一切の認証申請を受理しない。
図表 4.認証後サンプル検査で不合格となった場合の処置基準
状況
GB/T26572-2011 附表 D 中の D1 に特定有害物質の含有可能性が H(高)と
されている項目で基準値の 10 倍以上が検出され、かつ 3 件以上の検査サ
ンプル単位で不合格となった場合
処置
認証機関は当該生産企業の同種の製品のすべての認証証書を取り消すと
ともに、新たな申請は少なくとも1年間はタイプ 4 の認証方式のみとし、
2 年間は認証申請時に提出するサンプル数量を規定の 2 倍とする
状況
GB/T26572-2011 附表 D 中の D1 に特定有害物質の含有可能性が H(高)と
されている項目で不合格となったがケース 1 の条件には達しない場合
処置
検査サンプル数量を規定の 2 倍にして再検査を行う。再検査で合格した場
合は、生産企業は初回サンプル検査で不合格となった原因の分析と改善状
況に関する報告書を認証機関に対して提出する必要がある。認証機関は同
報告書の改善内容を精査し適切な措置を実施することができる。
再検査の結果さらに不合格となった場合、認証機関は当該生産企業の同種
の製品のすべての認証証書を取り消すとともに、新たな申請は少なくとも
1年間はタイプ 4 の認証方式のみとし、2 年間は認証申請時に提出するサ
ンプル数量を規定の 2 倍とする。
状況
GB/T26572-2011 附表 D 中の D1 に特定有害物質の含有可能性が H(高)と
されている項目以外で不合格となった場合
処置
生産企業は不合格となった原因の分析と改善状況に関する報告書を認証
機関に対して提出することができ、認証機関は同報告書の改善内容を精査
し適切な措置を実施する。
ケース 1
ケース 2
ケース 3
不合格となった検査サンプルが国家統一自主認証を取得済みの部材であった場合は、
認証機関はケース 1 から 3 の処置基準にもとづいて適切な措置を実施するとともに、生
産企業に対し一定の期限を定めて認証製品の品質不適合に関する改善措置の報告書を
提出させる。
同報告書には少なくとも①不適合部材を製造し供給したサプライヤーに対して実施
した措置及び②不合格とされた部材の代替方法について記載することが必要である。認
証機関は報告された措置の適切性を確認するとともに、同措置が有効に実施されたこと
を確認するまでは当該不合格品に関連する認証証書の効力を暫定的に停止する。
ⅱ)汚染予防保証能力に関する監督検査
認証委託人に以下の状況が発生した場合には、企業の汚染予防保証能力に関する監督
検査を臨時に実施する。とくに d)及び e)の状況が発生した場合には認証機関は監督
検査の頻度を増やさなければならない。
44
a)認証申請時の検査において不合格項目があるとき
b)製品サンプル検査において不合格とされたとき
c)生産企業の組織機構、生産条件、管理体制等に変動があり製品管理の適切性に影響
を与える可能性があるとき
d)認証製品が国家及び地方の品質監督当局のサンプル検査で不合格とされたとき
e)生産企業の製品管理の不適切性が発覚もしくは告発され、生産企業の過失が確認さ
れたとき
汚染予防保証能力に関する監督検査において不合格の項目がある場合は、認証機関は
3 ヵ月の期限を定めて是正を求める。期限内に是正が行われない場合は、認証証書の効
力の一時停止または取り消し措置をとるとともに同措置内容が公表される。
(5)認証ラベル
国家統一自主認証実施規則にもとづいて認証証書を取得した製品は、図表 5 に示す中
国 RoHS 国家統一自主認証ラベルを製品上に表示することが認められる。図案の下部の
ABCDE の部分には認証機関の略称が表示される。
図表 5.国家統一自主認証ラベル図案
2.「国家統一電子情報製品汚染予防自主認証目録(第 1 次)
」の内容
国家統一自主認証実施規則の公表と合わせて今回、同自主認証制度の対象となる製品
が「国家統一自主認証対象製品目録(第一次)リスト」として公表された。最終製品 6
品目の他、コンポーネント製品 29 品目、部品製品 83 品目、材料製品 39 品目と幅広い
製品群がリストに収載されている。最終製品については、2009 年 10 月 9 日公表の中国
RoHS「重点管理製品目録」の第一次公示(パブコメ版)で示された「携帯端末」
、
「電話
機(固定電話及びコードレス電話を含む)
」、
「パソコン用プリンタ」の 3 品目に加えて
「パソコン本体(小型デスクトップ型及び携帯ノート型)」
、
「パソコン用ディスプレイ」、
「テレビ」の 3 品目が追加された。
「国家統一電子情報製品汚染予防自主認証目録(第 1 次)
」にリストアップされた製
品について、附録 4 に原文表記及び参考日本語訳を掲載する。
45
3.中国 RoHS の最新動向
2011 年 9 月 1 日付「新華網」は、国家認証認可監督管理委員会の責任者のコメント
として、今回の「国家統一自主認証」の導入は自主認証制度と強制認証制度を融合させ
た中国独自の新しい有害物質使用制限方式であり、第三者認証により生産企業の社会的
責任の履行を支援し、電子通信機器産業のレベルアップを推進するうえで意義があると
の政策方針を伝えた。
工業情報化部と国家認証認可監督管理委員会は、「重点管理目録」による強制認証と
新たに導入される「国家統一自主認証」の関係性について、最終製品に組み込まれるコ
ンポーネントや部品といった中間材を広く自主認証の対象とし、自主認証済みの部材の
情報を最終製品の強制認証の際に認証機関が採用することで、自主認証と強制認証の 2
つの制度を一体的に運用する考え方を強調し、サプライチェーン全体で効率的に RoHS
対応の水準を引き上げることに意義があると指摘していた。今回公表された国家統一自
主認証実施規則は、同自主認証を取得済みの部材を多く使用する製品の認証時に提出が
必要な検査サンプル数が緩和される等、上記の考え方に沿った具体的な規定が盛り込ま
れている。
また 2011 年 11 月 7 日付「人民網」によると、工業情報化部・省エネ総合利用司の高
振傑研究員は先頃、中国家電技術大会の席上で現行の「電子情報製品汚染予防管理弁法」
の改定動向について言及した。対象製品の範囲を電子情報製品から白物家電を含む使用
電圧直流 1500V、交流 1000V 以下のすべての電気製品及び設備へ拡大する、改定版中国
RoHS となる「電子電気製品汚染予防管理弁法」の制定作業が進行中で、2011 年 3 月ま
でに WTO/TBT への事前通報を完了し現在、科学技術部及び財政部を共同策定部署に加え
て政府内部での調整作業が進んでいる。これらの進展状況を報告した上で、同研究員は
改定版中国 RoHS 弁法が 2012 年上半期中に公布される可能性があるとの見方を示した。
高振傑研究員はまた 2011 年 11 月中に工業情報化部と関連部門が共同で、「電子情報
製品汚染予防管理弁法」の実施状況についての検査を強化する方針を明らかにした。電
子情報関連の製造業が発達し、消費市場である大都市が集積する長江デルタ地域及び珠
海デルタ地域を中心に実施される見通しで、現在中国 RoHS の第 1 ステップとして実施
されている「電子情報製品汚染予防ラベル要求」(SJ/T11364-2006)に定められた所定
のラベル表示による特定有害物質に関する情報開示の実施状況を徹底検査するとして
いる。
日本企業の中国製造現地法人においても部品の現地調達率が高まる中、調達先である
中国企業等を含めて同自主認証の早期取得を要請するなど、製品製造のサプライチェー
ン全体を視野に入れた戦略的な対応を検討する必要があるものと思われる。
46
附録 1.「認証タイプ 2 を適用できるコンポーネント及びデバイス製品」
No
製品名
原文
No
製品名
原文
1
コンデンサー
电容器
26 X 線イメージ増倍管
2
抵抗器
电阻器
27 電子増倍管
3
チョッパー
斩波器
28 撮像管
4
センサー
传感器
29 光学画像装置
5
インダクター
电感器
30 ディスプレイデバイス
显示器件
6
オシレーター
振荡器
31 発光素子
发光器件
7
サーキュレーター
环形器
32 感光性デバイス
光敏器件
8
アイソレーター
隔离器
33 光結合素子
9
リミッター
限幅器
34 赤外線デバイス
红外器件
35 レーザー機器
激光器件
10
11
12
13
14
周波数制御および代替
部品
電子プリント基板
感知装置およびセンサ
ー
パネル部品
セレニウムパイル、セレ
ニウムスライス
频率控制和选择用元
件
X 射线图像增强管
电子倍增管
摄像管
光电图像器件
光电耦合器件
电子印制电路板
36 光結合素子
光电耦合器件
敏感元件及传感器
37 光電検出器
光电探测器件
面板元件
硒堆,硒片
石英晶体器件
38 LED
39 レーザー機器
激光器件
15
水晶デバイス
16
電気音響装置の部品
电声器件零部件
17
電子セラミック部品
电子陶瓷零件
18
電子管チューブ
19
ビーム管
20
CRT 用アクセサリ
21
光源
电光源
46 IC
集成电路
22
PDP モニター
PDP 屏
47 マイクロモーター
微特电机
23
LCD モニター
LCD 屏
48 バッテリー
电池
24
フォトチューブ
光电管
49 インクカートリッジ
墨盒
25
光増倍管
电子管
电子束管
显像管配件
40 光通信デバイス
发光二极管
光通信器件
41 ダイオード
半导体二极管
42 トランジスタ
半导体三极管
43 感知装置およびセンサー
44 半導体の冷却装置
45
光电倍增管
47
敏感器件及传感器
半导体制冷器件
パワー半導体デバイス(5A 电力半导体器件(5A
以上)
以上)
附録 2.「製品汚染予防供給者適合性宣言」フォーム
製品汚染予防供給者適合性宣言
番
号:
宣言者名称:
宣言者住所:
電話番号 :
宣言製品 :
番号
製品名称
型式番号
商標
1
2
・・・
n
当社は上記製品の認証委託に当たり《国家統一電子情報製品汚染予防自主認証実施
規則》
(CNCA-RoHS-01:2011)に定める以下の認証タイプを採用します。
□タイプ 2
□タイプ 3
□タイプ 4
当社は今回認証委託を行う汚染予防検査のサンプルは上記製品の材料をすべて包含しない可
能性があることを認識します。
サンプル検査で確認ができない材料について、上記の製品は、鉛(Pb)
、水銀(Hg)、カドミウ
ム(Cd)
、六価クロム(CrⅥ)
、PBB、PBDE の含有量が GB/T26572-2011「電子電気製品の制限物質
含有量要求」に適合していることを当社は宣言します。
添付資料:
署名権限を有する者の氏名及び役職
署名:
期日:
48
附録 3. 「認証申請時に必要な検査サンプル数量表」
製品材料総量数(X)
1<X<≦20
20<X<≦100
100<X<≦500
500<X<≦3000
X>3000
材料のうち国家統一認
証取得済み比率(Y)
最少サンプル抽出数
の割合
必要検査サンプ
ル数量の範囲
Y≦10%
100%
1-20
10%<Y≦50%
80%
1-16
50%<Y≦100%
40%
1-8
100%
15%
1-3
Y≦10%
50%
10-50
10%<Y≦50%
40%
8-40
50%<Y≦100%
30%
6-30
100%
5%
1-5
Y≦10%
20%
20-100
10%<Y≦50%
15%
15-75
50%<Y≦100%
10%
10-50
100%
2%
2-10
Y≦10%
15%
75-450
10%<Y≦50%
10%
50-300
50%<Y≦100%
6%
30-180
100%
1%
2-30
Y≦10%
10%
300-800
10%<Y≦50%
6%
180-400
50%<Y≦100%
3%
90-200
100%
1%
30-50
1.製品材料総量数(X)は製品を組成するコンポーネント、デバイス、材料を最小検査単位まで分
解したときの総数を示す。表中の百分率はすべて(X)に対する割合である。
2.認証未取得の部材から優先的にサンプル選定を行い、最少数量に足りない場合は認証取得済みの
部材を選定しても良い。
3. GB/T26572-2011 附表 D 中の D1 に特定有害物質の含有可能性が H(高)とされている部材を優先
的にサンプル選定する。
4.実際に提供するサンプル数は上表の必要検査サンプル数量の範囲でなければならない。
49
附録 4. 「国家統一電子情報製品汚染予防自主認証目録(第 1 次)
」
最終製品 (整机产品)
コンピュータ関連製品
原文
コンピュータ――小型デスクトップコンピュータ
计算机---微型台式计算机
1
コンピュータ――ノートパソコン
计算机---便携式计算机
2
コンピュータと接続するディスプレイ装置
与计算机连用的显示设备
3
コンピュータと接続するプリンタ装置
与计算机相连的打印设备
家庭用電子製品
4
テレビ
电视机
通信機器製品
5
携帯端末
移动用户终端
6
電話(固定電話端末およびコードレス電話端末を含む) 电话机(包括固定电话终端,无绳电话终端)
コンポーネント製品 (组件产品)
コンピュータ用電子部品
1
マウス
2
キーボード
3
ハードディスクドライブ
4
CD-ROM ドライブ
5
PC カード
6
内蔵メモリ
7
サウンドカード
8
グラフィックカード
9
ネットワークカード
10 その他機能カードおよびインターフェイスカード
11 スイッチング電源
12 外部電源アダプタ
13 その他
ディスプレイデバイス用電子部品
14 ディスプレイユニット
15 リモコン送信機
16 チューナー
17 ライン出力トランス
18 バックライトユニット
19 ディスプレイデバイス用 PCBA
20 その他
コンピュータと接続する印刷デバイス用電子部品
21 プリントヘッド
22 カートリッジ
23 その他
携帯端末および電話機用電子部品
24 電源アダプタあるいは充電器
25 携帯端末および電話機マザーボード
26 携帯端末および電話機 LCD モジュール
27 携帯端末および電話機 RF モジュール
28 携帯端末用カメラモジュール
29 その他
50
原文
鼠标器
键盘
硬盘
光盘驱动器
微机主机卡
内存条
声卡
显卡
网卡
其他功能卡和接口卡
开关电源
外接电源适配器
其他
显示器
遥控发射器
调谐器
行输出变压器
背光组件
显示设备用 PCBA
其他
打印头
硒鼓
其他
电源适配器或充电器
移动用户终端及电话机主机板
移动用户终端及电话机 LCD 模块
移动用户终端及电话机 RF 模块
移动用户终端光学摄照像模块
其他
部品及びデバイス製品
電子部品
1 コンデンサー
2 抵抗
3 ポテンショメーター
4 コネクタ
5 スイッチ
6
プラグ、ソケット
7 リレー
8 チョッパー
9 センサー
10 磁気コンポーネント
11 インダクター
12 オシレーター
13 サーキュレーター
14 アイソレーター
15 リミッター
16 フィルター
17 電子トランス
18 コイル
19 マイク
20 スピーカー
21 ヘッドセット
22 ピックアップ
23 ブザー
24 ブザー振動板
25 周波数制御および代替部品
26 電子セラミック部品
27 感知装置およびセンサー
28 パネル部品
29 ショックアブソーバー
30 セレニウムパイル、セレニウムスライス
31 留め具
32 水晶デバイスおよびリレーシェル、チューブソケット
33 電気音響装置の部品
34 電子セラミック部品
35 電子プラスチック部品
36 マイクロモーター
37 電線ケーブル
38 光ファイバーケーブル
39 その他
電子デバイス
40 チューブ
41 ビーム管
42 CRT 用アクセサリ
43 光源
44 PDP モニター
51
原文
电容器
电阻器
电位器
连接器
开关
插头,插座
茶座
继电器
斩波器
传感器
磁性元件
电感器
振荡器
环形器
隔离器
限幅器
滤波器
电子变压器
线圈
传声器
扬声器
耳机
拾音机
蜂鸣器
蜂鸣片
频率控制和选择用元件
电子印制电路板
敏感元件及传感器
面板元件
减震器
硒堆,硒片
坚固件
石英晶体器件及继电器管壳,管座
电声器件零部件
电子陶瓷零件
电子塑料零件
微特电机
电子电线电缆
光纤光缆
其他
电子管
电子束管
显像管配件
电光源
PDP 屏
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
LCD モニター
フォトチューブ
光増倍管
X 線イメージ増倍管
電子増倍管
撮像管
光学画像装置
ディスプレイデバイス
発光素子
感光性デバイス
光結合素子
LCD 屏
光电管
光电倍增管
X 射线图像增强管
电子倍增管
摄像管
光电图像器件
显示器件
发光器件
光敏器件
光电耦合器件
56 赤外線デバイス
57 レーザー機器
58 光結合素子
59 光電検出器
60 LED
61 レーザー機器
62 光通信デバイス
63 ダイオード
64 トランジスタ
65 感知装置およびセンサー
66 半導体の冷却装置
67 パワー半導体デバイス(5A 以上)
68 IC
69 バッテリー
70 その他
電子情報製品用部品
71 シャーシ
72 フロッピーディスク
73 CD
74 ラジエーター
75 偏向コイル
76 磁気ヘッド
77 光学ヘッド
78 アンテナ
79 データ伝送ライン
80 カートリッジ
81 リボン
82 コントロールパネル(金属薄膜パネルユニット)
83 その他
52
红外器件
激光器件
光电耦合器件
光电探测器件
发光二极管
激光器件
光通信器件
半导体二极管
半导体三极管
敏感器件及传感器
半导体制冷器件
电力半导体器件(5A 以上)
集成电路
电池
其他
机箱
软盘片
光盘
散热器
偏转线圈
磁头
光学头
天线
数据传输线
墨盒
色带
按键控制面板(金属薄膜按键组件)
其他
材料製品
(材料产品)
電子材料製品
1
断熱版
2
銅張り板
3
電子部品専用のスチールワイヤー
4
電解二酸化マンガンパウダー
5
コンデンサー用箔材料
6
圧電材料
7
光ファイバー母材
8
タングステン製品
9
モリブデン製品
10 ニッケル基合板
11 複合金属電子材料
12 接点材料
13 液晶材料
14 合金材料
15 半導体結晶
16 半導体シート
17 半導体封止材料
18 リソグラフィのマスク
19 石英製品
20 蛍光パウダー
21 情報機器類化学薬品用炭酸塩
22 ゲッター
23 フォトレジスト
24 その他
電子情報製品用基礎材料
25 インク
26 ゴム
27 はんだ
28 フラックス
29 難燃剤
30 電解液
31 プラス、マイナス極の材料
32 トナー(マスターバッチ)
33 コーティング材料
34 金属および金属化合物材料
35
プラスチック製品およびゴム材料
36
37
38
39
ガラス製品
セラミック製品
複合材料製品
その他
原文
绝缘板
敷铜板
电子元件专用钢丝
电解二氧化锰粉
电容器用铝箔材料
压电材料
光纤预制棒
鸽制品
钼制品
镍基合金
复合金属电子材料
触头材料
液晶材料
合金材料
半导体材料
半导体片材
半导体封装材料
光刻掩膜板
石英制品
荧光粉
信息化学品用碳酸盐
消气剂
光刻胶
其他
油墨
胶
焊料
助焊料
阻燃料
电解液
正负极材料
色粉(色母)
涂覆材料
金属及金属化合物材料产品
塑料及橡胶材料产品
玻璃材料产品
陶瓷材料产品
复合型材料产品
其他
53
平成 23 年度 海外の環境規制動向
Ⅰ.欧州
1.WEEE&RoHS 動向
(1) RoHS 改正動向
改正 RoHS 指令は、2008 年 12 月の改正案公表から 2 年半余りを経て、2011 年 7 月 1 日
付の EU 官報に公示された。官報公示から 20 日後の 2011 年 7 月 21 日、改正 RoHS 指令は
発効した。以下に、これまでの経緯、改正指令の概要、今後の予定を紹介し、最後に新
旧指令の比較表を掲載する。
① 経緯
1) 2008 年 12 月:欧州委員会より RoHS 指令改正案公表。
2) 2010 年 6 月 2 日:欧州議会環境委員会案採択。
3) 2010 年 11 月 12 日:理事会・欧州議会・欧州委員会の 3 者間での非公式協議にて
実質合意。
4) 2010 年 11 月 24 日:欧州議会本会議にて 12 日の合意内容で可決・採択。
5) 2011 年 5 月 27 日:上記合意を理事会が承認・採択。
6) 2011 年 7 月 1 日:官報公示。
7) 2011 年 7 月 21 日:改正指令発効。
② 概要
1) 適用対象範囲と施行日
(a) 直流 1,500V 以下、交流 1,000V 以下で稼動する全ての電気電子機器
カテゴリー1
カテゴリー2
カテゴリー3
カテゴリー4
カテゴリー5
カテゴリー6
:大型家庭用電気製品
:小型家庭用電気製品
:IT および遠隔通信機器
:民生用機器
:照明装置
:電動工具
カテゴリー7
カテゴリー8
カテゴリー9
カテゴリー10
カテゴリー11
:玩具、レジャーおよびスポーツ機器
:医療用機器
:監視・制御機器
:自動販売機類
:その他の電気電子機器(上記 10 カテ
ゴリーのいずれにも入らないもの)
(b) 軍事用機器、輸送機器、据付型大型産業用工具、大型固定装置、研究開発用機器
等 10 製品は適用対象から除外。
(c) 現行指令で対象外だったカテゴリー(医療用機器、監視・制御機器)も、指令発
効日(2011 年 7 月 21 日)から 3~6 年後に施行(機器のカテゴリーにより施行
日は異なる)
。
(d) 10 カテゴリー以外のその他の機器は「カテゴリー11」に分類され、指令発効日
から 8 年後に施行。
(e) 補修、再使用、機能のアップデート、能力のアップグレードを目的とするスペア
パーツやケーブルについては、以下の場合適用対象となる(1)。
i 2006 年 7 月 1 日以降に上市された電気電子機器向けの場合
ii 2014 年 7 月 21 日以降に上市された医療機器向けの場合
(1)
従って、上記 i~v で示された日付以前に上市された製品向けのスペアパーツは適用対象外と
なる。
54
iii 2016 年 7 月 21 日以降に上市された体外診断機器向けの場合
iv 2014 年 7 月 21 日以降に上市された監視・制御機器向けの場合
v 2017 年 7 月 21 日以降に上市された工業用監視・制御機器向けの場合
2) 制限物質
(a) 現行指令と同じ 6 物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB(ポリ臭化ビ
フェニール)、PBDE(ポリ臭化ジフェニールエーテル))。
(b) ただし、欧州委員会による 3 年以内の制限物質の見直しを規定。
3) CE マーキング
(a) 適合性評価を実施し、完成品に CE マークを貼付することが新たに義務化。
(b) 標準化機関(CENELEC)が整合規格を検討している(規格は早くても 2012 年初め
か)。
※法律の内容については、必ず原文等にてご確認ください。
(2) WEEE 改正動向
WEEE 指令改正案は、2011 年 2 月 3 日に欧州議会本会議で修正案が採択され、2011 年 3
月 14 日の理事会にて、政治的合意が採択された。その後、第一読会における「理事会の
立場」が 7 月 19 日に採択された。第一読会における、理事会の立場と欧州議会案では隔
たりが大きく、第二読会での検討に移ることになった。
① 現在の状況
1) 欧州議会本会議は、2011 年 2 月 3 日に欧州議会修正案を採択した。議会案は、適
用対象をすべての電気電子機器とすること、太陽光発電モジュールの適用範囲か
らの除外、エコデザイン要求事項の設定、高い回収目標(2016 年 85%)、処理・
リサイクル等に関する整合規格の作成等、欧州委員会改正案の内容よりも踏み込
んだ内容となっている。
2) 理事会は、2011 年 3 月 14 日に政治的合意(Political Agreement)を採択した後、
2011 年 6 月 10 日付で「理事会の立場」を公表した。その後、2011 年 7 月 5 日に
開催された COREPER において、第一読会の「理事会の立場」及びステートメント
を次の理事会において採択することに合意し、2011 年 7 月 19 日に開催された農水
理事会にて正式に採択した。内容は 3 月の政治的合意と大きく異なる点はなく、
依然として欧州議会案との隔たりは大きい。
② 今後の予定
y 理事会が第一読会の立場を採択したことから、次のステップは、欧州議会における第
二読会での検討へと移行する。なお、通常立法手続上、第二読会以降、欧州議会及び
理事会での検討期間はそれぞれ 3 か月とされる。
y 欧州議会の Web サイトによれば、今後の予定は、現時点では次のとおりである(今
後、状況により変更があり得る)。
2011 年 10 月 4 日 欧州議会環境委員会案採択
2012 年 1 月 16 日 欧州議会本会議討議(第二読会)
※法律(案)の内容については、必ず原文等にてご確認ください。
55
2.EU 及び加盟国情報
E U
① 業界レベルでの WEEE 処理基準
② ノルウェー:調査を実施した 11 か国中、WEEE 回収量が最高
③ 太陽光発電パネルを WEEE 指令の対象とするかをめぐるコンサルテーション
④ ELV 指令における重金属制限に関する除外
⑤ 新規則によるカドミウム含有製品禁止範囲の拡大(REACH 規則 制限)
⑥ デンマーク、EU 全体でのフタル酸含有プラスチック製品の禁止を要求
⑦ 幅広い消費者製品での BPA 禁止を求める圧力
⑧ REACH レビュー報告書、8 月に発表予定
⑨ SIN リスト掲載物質に触発された、内分泌かく乱物質への欧州委員会の取り組み
⑩ ファンに関する実施措置(エコデザイン指令)
⑪ 欧州委員会、エアコンのエネルギーラベル規則案を採択
⑫ エネルギーラベル:低い遵守レベルが明らかに
⑬ 欧州議会議員、厳格な温室効果ガス排出基準を強く推奨するも、財務担当大臣は柔軟性が
必要であると警告
⑭ 気候変動対策に向けた拘束的協定の必要性は認めるも、ダーバンでの協定成立には悲観的
⑮ 欧州委員会、資源効率的な欧州の確立に向けた 2 つの報告書を発表
英国
① 電子機器廃棄物の違法輸送
② 「環境配慮製品の広告表示ガイダンス」を公表
ドイツ
① 新廃棄物リサイクル法案
② ドイツ当局は消費者に対し、製造者及び販売者からの高懸念物質(SVHC)情報の積極的な
入手を推奨
③ 白熱電球の段階的廃止に断固たる態度で臨むドイツ連邦環境庁長官
④ 既存の公共建築物及び新規建築物の冷暖房に関する再生可能エネルギー利用要求
⑤ 「ブルー・エンジェル」の適用範囲拡大
フランス
① 環境ラベル
② コンシューマー製品へのフタル酸及びその他の物質の使用禁止法案
オランダ
① オランダにおける REACH 実施状況(2007~2010 年)の評価
② 2020 年までに EU 気候変動戦略の目標を達成する見込み
デンマーク
① 化学物質および製品の分類、包装、表示、販売および保管に関する新命令の発効
56
② 4 種類のフタル酸禁止の導入計画
スウェーデン
① 電子玩具とコンシューマー製品における高濃度の鉛
② ビスフェノール A に関する報告書
③ 有毒物質の無い日常環境のための新行動計画
イタリア
① 有毒物質の無い日常環境のための新行動計画電子玩具とコンシューマー製品における高
濃度の鉛電子機器廃棄物トレーサビリティ制度(SISTRI)の発効延期
スペイン
① 3,900 万 kg を超える 2010 年廃電気電子機器リサイクル量
② 議会は製品への炭素排出量表示の実施を政府に要求案
ポーランド
① 使用済み鉛酸電池及び蓄電池に関するリサイクル率の算出に関する新規則
② 化学物質に関する新法が発効
ベルギー
① 欧州裁判所はベルギーが REACH 規則の義務を予定通り遂行していないと判断
② ブリュッセル首都圏地域で義務化される建築物エネルギー性能証明書
③ 電池、タイヤ、懐中電灯に関する環境政策協定
2.米 国
(1) 機器ラベリングルール(連邦)
(2) エネルギー保全プログラム:家庭用衣料乾燥機・室内空調機器用エネルギー保全基準(連
邦)
(3) 連邦調達規則を改正する暫定ルール
(4) ENERGY STAR Version 5.0 製品仕様(家庭用食器洗い機)
(5) ENERGY STAR Version 6.0 製品仕様(テレビ)
(6) ENERGY STAR Version 3.0 製品仕様案(エアコン)
(7) S.847 安全化学物質法 2011
(8) カリフォルニア州 SB515
(9) ニューヨーク州 A03141 子供用製品中の有害化学物質の規制に関連する、環境保全法修正
法案
(10) ニューヨーク州 A05798 一部製品中の一部エーテルの使用に関連する、環境保全法修正法
案
(11) ニューヨーク州 A06293 製品引き取りに関連する、環境保全法修正法
(12) テキサス州 SB329 一部のテレビ機器の販売、再生、リサイクルに関する法案)
57
3.その他
1.
小型電気電子機器リサイクル制度 の検討状況
(1) 循環型社会形成の推進
(2) 目指すべき資源循環、循環型社会形成における課題
(3) 都市鉱山、使用済製品の海外での不適正処理
(4) 有用金属の主な用途
(5) 資源供給の偏在性と寡占性への対応の必要性
(6) 主要金属資源供給に占める資源メジャーの位置付け
(7) 欧米における金属資源調達リスクへの対応
(8) 持続可能な資源管理に関する国際パネル(UNEP)
(9) 新興国の需要増大に伴う資源価格高騰
(10) 最終処分場の逼迫
(11) 使用済製品からの有用金属のリサイクルの現状
(12) 使用済製品中の有用金属含有量と国内需要量との比較
(13) 使用済小型電気電子機器に含まれる有用金属の埋立処分状況
(14) フロー推計結果(一次案)(小型機器)とまとめ
(15) 検討対象製品分野
(16) 政府方針等での位置づけ
(17) 海外におけるリサイクル制度化の動き
(18) 小型電気電子機器リサイクルシステムの必要性(考え方)
(19) リサイクルの是非
(20) 費用対効果(試算)
2.
カーボンフットプリント
(1) カーボンフットプリント制度とは
x カーボンフットプリント制度とは、商品のライフサイクル全体で排出された温室効果
ガスを二酸化炭素の排出量に換算して「見える化」する仕組みの一つ。
x 事業者・消費者双方が温室効果ガス削減に向けた行動をするため、一定のルールに基
づいて算出した数値(物差し)。
(2) カーボンフットプリント制度試行事業の全体スケジュール
x ISO等の国際的な制度協調を図りつつ、平成24年度以降の民間移行を睨み、試行
事業を推進。
x サービス分野の実証や広範囲PCRの更なる実証を進めると共に、民間移行に向けた
とりまとめ作業を推進。
(3) カーボンフットプリント(CFP)制度試行事業に関するヒアリングの結果概要
x 全体認識
x 中長期的課題
x CFP事業上の課題
x 今後の望まれる方向性
(4) 海外のカーボンフットプリント関連情報
x イギリスの動向
x フランスの動向
x 韓国の動向
x その他における動向
58
3.
ウオーターフットプリント
(1) ウォーターフットプリント(WF)とは?
‚ ウォーターフットプリント(Water footprint)は、「人間活動が(水資源の使用によ
って)地球環境を踏みつけた足跡」という比喩からきており、製品等のライフサイク
ル全体で「使用」※される水の総量に数値換算した指標のことである。
‚ 水の「使用」の定義には、単に取水量とする場合等あり、議論が必要。水資源の持続
的な活用、不必要な水利用の削減、水利用の状況把握等の指標として活用することが
期待される。
(2) ISO-14046(PWI)
Water footprint—Requirements and guidelines
4.
サステナブルコンソーシアム
米国ウオールマートがサプライチェーンのグリーン化を先導。産学が協働して、より
良い製品の生産、消費、サプライチェーンによる持続可能な社会の実現をめざす。
サステナビリテイ コンソーシアムは消費者に見せるラベルを作るのか?-No, 消費者
に 見 せ る ラ ベ ル を 作 る の で は な い 。 Sustainability Measurement and Reporting
Standards (SMRS‘s) を作り、生産者が何をどのように測るかを示し、共通のデータベ
ースにどのように報告するかを決める。この報告は IT tools を使って行われ、現実の
サプライチェーンの中で、バイヤーや販売者、最終ユーザーが持続可能な商品について
決定することに役立つ。商品レベルの持続性についての情報が共通のデータベースに入
れば、生産者、流通業者、第3者認証機関、ラベル主催者が、商品についてのコミュニ
ケーションを促進し、持続可能性を高めるための様々な用途にこのデータを利用するこ
とができる。
5.
組織の GHG と SCOPE3
(1) 組織のカーボンフットプリント
ISO-TR14069(WD):組織の温室効果ガス排出量の定量化と報告-ISO14064-1 の適用のた
めの手引き
(2) 組織の GHG プロトコール
‚ スコープ1:組織から直接排出される GHG
‚ スコープ2:購入するエネルギーを生産するために排出される GHG
‚ スコープ3:組織が関与する全ての GHG 排出量
6.
LCA データベースガイダンス
(1) 1 月 30 日(日)~2 月 4 日(金)湘南国際村センター
(2) UNEP/SETAC Life Cycle Initiative が主催
(3) 世界から選択された49名が参加
(4) データベース(DB)に関するガイダンスを作成
x Unit プロセスデータ、積算型データの作り方
x DB の作り方(レビュー、運営)
x DB の連携(ネットワーキング)
x 新たな手法(産業連関表分析,統計表、
、、)
7.
IEC と ISO の環境規格状況
(1) 世界の製品環境規制と国際標準規格
59
x
製品環境規制によるあらたなビジネス競争の始まり
新しいルールにいち早く慣れるか,自分に適したルールを作ってしまうことが生
き残りのための必須条件
x 欧州の New Approach 指令と整合規格
x 法律の実質を握る規格の重要性
x 欧州 CE マーキング指令としての全体図
x 米国 EISA 法
日本では高効率モータ IE2 以上の 1%にすぎない。米国は 2005 年に EISA 法(EPACT
2005 とも呼ばれる)により効率基準を義務化した。モーター効率のグレードは NEMA*1
が規格化し,IEC*2 で国際標準化されている。
(2) 日本主導の IEC TC 111 の活動
x 世界の3大国際標準化会議(国際電気標準会議(IEC)、国際電気通信連合(ITU)、 国
際標準化機構(ISO))
x 製品カーボンフットプリントをめぐる主導権争い
x GHG Protocol の完成版発行
x ISO 14067 における開発文書
x RoHS 指令の整合規格 EN 5xxxx
x いよいよ出てきた Mandate 499
x Mandateへの対応窓口の CENELEC TC111X
x CENELEC TC111X の活動
(3) 新たな標準化のターゲット
x 世界に広がるスマートシティ
x 国際標準化の必要性
x 国内の取り組み体制
x 評価指標検討の方向性(案)
(4) 今後予想される日本企業にとっての重要な局面と対策
‚ 事業を脅かすフォーラムスタンダードの一例:エコ商品の世界基準作り
‚ フォーラムスタンダードを抑止するデジュールスタンダード
‚ まだまだある日本主導の標準化の芽
- シャワートイレ
- 日本料理(Japanese Cuisine)
- 生物多様性マネジメント
60
米国環境監査について
1.法規制の体系
1-1 法規制体系の特徴
日本の法規制は、成文法であり、かつ法規制の内容に重複がない特徴がある。さらに、
地方自治体は、法規制に反しない範囲で条例を定めることができる。
一方、米国の法規制は、コモン・ローと呼ばれる判例法を中心とするものであり、かつ、
連邦法と州法のダブルスタンダードから成る特徴がある。
1-2 米国の環境法規制体系
米国の環境法規制について、企業が対応すべき法規制は、その企業の運営場所により異
なる。その理由は、州法の規制内容が各州で異なるからである。このことから、米国は、
一つの国と考えるより、合衆国の中に 50 の異なる国が存在すると考えた方が良い。
さらに、法規制の内容が重複することも可能であり、重複した場合、一番厳し内容を選
択する原則がある。これが、米国法規制を難解にしている原因の一つである。重複する全
ての関連法規制の内容を確認する必要があるため、かなりの専門知識と高度な英語力が必
要となる。数多くの法規制が存在するが、図中には、特に重要な法規制を記載してある。
州法に関しては、カリフォルニア州のように連邦政府より先進的な州もある。図中では、
カリフォルニア州法の代表例も示した。
1-3 罰則
日本の法規制では、検察庁が一元的に管理しているが、米国の法規制の場合、司法省
(DOJ)のほか環境保護庁(EPA)でも管理している。
日本では、違反の発見、書類送検、事実確認、裁判、罰金の流れに沿って、違反企業が
処罰される。現行犯に対して罰則が科されるタイプであり、罰金も米国と比べるとかなり
安いものである。
一方、米国では、遡及効果があるため、違反は、違反を起こした時点まで遡り、違反日
数に対して、一日当たり最高 27,500 ドルの罰金が課される。違反した日数に、一日当た
りの罰金額を掛け合わした金額が罰金となる。ただし、企業が順守のための努力を示せば、
罰金が減額される。これらには、自主的に違反を届出ることや第三者によるコンプライア
ンス(順法)監査などが相当する。
1-4 コンプライアンス監査
コンプライアンス監査は、順法監査の意味であり、米国では、独立性のある、第三者が
法規制の順法状況を評価する。違反などの問題が起こりそうな場合には、Attorney Client
Privilege(弁護士・依頼者間での秘匿特権)を利用した監査を行うこともある。Attorney
Client Privilege は、日本で聞き慣れない言葉であるが、監査を行う時に、監査結果や
これに伴う情報を保護するために利用される。違反が発見され、訴訟などに巻き込まれる
と関連情報を提出する義務が生じ、必要な書類が手元に残らず、十分な訴訟対応が出来な
くなることがある。しなしながら、Attorney Client Privilege がある場合、弁護士と依
頼者間のコミュニケーションが保護されており、保有する情報は、裁判所からの命令等が
ある場合を除き、情報を提出する必要が無く、万が一紛糾となった場合にも、情報が保護
される。環境コンサルタントは、エキスパートとしての位置づけとなり、Attorney Client
61
Privilege の対象となる。最後に、Attorney Client Privilege を付けるかどうかの判断
は、監査の計画時に決めることが望ましい。
1-5 監査を始める前に
監査を始める前に注意すべき点について述べる。監査目的、目標を明確にすることが重
要であるが、それだけ十分であろうか?貴社が突然訴訟に巻き込まれたと仮定する。その
時に、法令順守を行っていたことを証明することができるだろうか。
1-5-1 監査の独立性について
ここでは、法令違反に対する訴訟が政府から起こされたケースを想定する。裁判におい
て、企業は、コンプライアンス(法令順守)を継続していたことを証明したい。違反行為
は、たまたま起こったことであることを主張したい。このことを証明するにはどうしたら
良いか。継続的にコンプラインスを証明することは困難であるので、過去の一点でのコン
プライアンスを示すことにより、企業のコンプライアンス努力を示すことになる。企業の
コンプラインス努力を示すためには、独立した環境監査を実施するしかない。独立した監
査とは、第三者の専門家による監査である。本社スタッフによる子会社の監査は、独立し
た監査とは言えない。なぜなら、監査に対して、本社のマネジメントが影響力を与えるこ
とが出来るからである。独立した監査結果があれば、裁判で企業のコンプライアンス努力
が認められる可能性も高い。認められれば、罰則が軽減される可能性も高まる。
1-5-2 監査基準について
米国内であれば、当然、米国環境法および米国基準が適用される。余談であるが、関連
会社がアジアや南米の環境法規制や基準が弱い地域にあるケースでは、米国の環境基準を
用いて監査をすることを勧める。
2.グローバル監査
グローバル化により企業のビジネスチャンスが増したが、その反面、企業の環境リスク
も増した。そのため、グローバル化が進むにつれて本社主導のグローバル監査の重要性も
増している。例えば、ある施設で環境違反が起こったと仮定する。その違反がクリティカ
ルなものであれば、その違反情報は、インタネットなどにより、グローバルに発信され、
その結果、企業イメージをダウンさせることもあり得る。これを防ぐためには、本社主導
のグローバル監査を実施するしかない。
グローバル監査は、本社ワールドポリシー、ISO14001 環境マネジメント、および環境プ
ログラムから構成される。環境プログラムは、大気関連、水関連、廃棄物マネジメント、
化学物質マネジメントなどのコンプラインスに必要な要素から構成される。
この頃は、サプライヤーから調達する部品や原材料などに含まれる化学物質の情報管理
なども監査対象となってきた。なぜならば、OEM や EMS を含むサプライヤーが引き起こした
環境問題について、発注元がサプライヤーを指導すべきと NPO や NGO が考えており、NPO や
NGO が不買運動などを起こすことにより、発注元がサプライヤーに対して適切な指導を行う
ことができるからである。
下図にグローバル(国際)環境システムのモデルを示す。これは、実際に大手企業が導
入しているモデルである。このモデルの特徴は、環境マネジメントシステムが、ISO14001
環境マネジメントと環境プログラムから構成されることである。環境プログラムには、大
62
気関連、水関連、廃棄物マネジメントなどに自社の環境基準が導入されている。自社の環
境基準は、現地の環境基準と比較して、基準の厳しい方が優先利用される。(自社の環境基
準をベースラインとして、海外の工場でも活用できる仕組みである。
)
2-1 環境監査の種類
環境監査には、下図に示す監査があり、目的に応じて、使い分ける。以下で各々の監査
について、特徴を解説する。
2-1-1
環境デューデリジェンス
企業買収に含まれる不動産物件などが汚染されていると、売買される際にトラブルが生
じる。土壌・地下水汚染の修復費用は多額であり、企業経営を脅かす可能性もあるためク
ローズアップされる。
米国では、ニューヨーク州ラブカナルで起きた環境汚染を契機に、土壌・地下水汚染浄
化に厳格な法規制が制定された。注意すべき点は、汚染浄化責任者の定義を、汚染を起こ
した当事者は勿論のこと、土地開発者、銀行などの融資を行った金融機関などその他の関
係者までに広げた点である。そのため、企業買収時には、買収ターゲットとなる企業の環
境汚染の有無などの調査を行うことが不可欠である。
2-1-2 環境デューデリジェンスのプロセス
米国では、40 CRF Part 312-Innocent Landowners, Standards for Conducting All
Appropriate Inquiries で土地などの不動産購入者がスーパーファンド法の汚染浄化義務か
ら免除されるために実施しなければならない規格を定義している。通常は、ASTM
(American Society for Testing and Material)によりフェーズ I 規格(ASTM E1527-05)
が策定されている。これは、ISO14015-Environmental Management: Environmental
Assessment of Sites and Organization (EASO)での環境デューデリジェンスと異なる。
米国の環境デューデリジェンスでは、環境汚染などの環境責任を中心に調査が行われる。
環境デューデリジェンスは、Phase I(フェーズI)、Phase II(フェーズII)、Phase III
(フェーズIII)から構成される。フェーズIでは、ターゲット施設の履歴、許認可申
請などの書類を中心に審査する。EDR などのデータベースを利用して、ターゲット施設の半
径 1 マイル(1.6Km)以内にある、汚染浄化施設、RCRA サイト(有害廃棄物処理場)、地下
貯蔵タンクの位置などを把握し、ターゲット施設への影響を検証する。ただし、半径は必
要に応じて調整する。フェーズIでは、書類審査、施設の目視や担当者へのインタビュー
等が中心となり、実際の土壌や地下水の分析調査は行わない。目視による汚染兆候の発見
がキーポイントとなる。
フェーズIIでは、フェーズIの調査結果を基にして、汚染の可能性のある土壌や地下
水などを特定し、分析を行う。分析方法は、通常、EPA の分析方法に従う。(注:米国の汚
染化学物質数は、日本のものより多い。)
フェーズIIIでは、汚染土壌や汚染地下水などを浄化する。浄化には、自主的な浄化
と当局からの命令により浄化するケースがある。どちらのケースでも、EPA へ浄化計画書を
提出し、浄化を実施するための許認可を得なければならない。この許認可には、浄化のエ
ンドポイント(浄化完了点)などの取り決めを含む。
通常の企業買収や施設買収(不動産購入)のための環境デューデリジェンスでは、フェ
ーズIIIの汚染浄化は行わない。購入希望者が汚染の存在を承知してターゲット施設ま
たは企業を買収するときには、譲渡契約書中で汚染浄化についての浄化責任の所在を明確
63
にする。
2-1-3 工場閉鎖時の環境監査(環境デューデリジェンス)
工場閉鎖時に環境監査(環境デューデリジェンス)を義務付けている州がある。工場閉
鎖時に注意すべき点は、汚染の有無である。例えば、貯蔵タンクがある場合、漏れの有無
などに注意を払う。また、使用していない地下貯蔵タンクがあれば、永久閉鎖するための
タンク撤去手続きが必要となる。建築物の基礎近くにある地下貯蔵タンクで、基礎に影響
を及ぼす可能性がある場合には、地下貯蔵タンクの内容物の漏れが無い事を確認し、タン
ク内にセメントなどの不活性マテリアルを注入し、タンクが使用できないようにすること
もある。汚染浄化には、通常、州からの許認可が必要になる。
2-1-4 コンプライアンス(法令順守)監査
コンプライアンス監査は、法規制の順守状況を確認し、必要に応じて是正措置を講ずる
ことを目的としている。その他の目的として、経営層が法規制の順守を行っていることを
示す証拠として利用されることもある。勿論、訴訟された時の資料としても利用が可能で
ある。このため、経営層が、独立性を保持している監査を実施するケースが多い。
依頼を受けた監査人(または監査会社)は、監査計画を作成し、その計画に従って監査
を実施する。評価方法は、通常、違法リスクを考慮し、次の 3 つに分類できる。
分類例:
(1) 即対応が必要
(2) なるべく早い時期に対応が必要
(3) 可能であれば対応した方が良い
これは、一例であり、これだけに限定されるものではない。
2-1-5 監査実施例
監査は、施設の規模や製造製品や工程の複雑さなどにより異なる。通常、1~2 名程度で、
2~5 日の日程でオンサイト(施設)監査を行う。
ここでは、標準的な監査プロセスを示す。
監査初日:
z オープニングミーティング
¾ 自己紹介
¾ 日程とプロトコールなどの確認
¾ 施設に入る時の保護具や緊急避難経路などの確認
z 会社説明、施設の履歴およびオペレーションなどの説明
z 施設の観察
¾ ポイント:マテリアルのフローに沿って、素早く全体を視察する。この
時点では、質問やインタビューなどを行わないが、目視により、施設の
全体像を把握することを目的とする。
(事前資料との整合性を確認するこ
ともある。)
z 監査の実施
¾ 許認可申請書の確認
¾ 化学物質の使用状況(使用履歴を含む)、保管状況、マネジメントの状況
の確認
¾ 法規制のコンプライアンスの確認
— 下図の法規制を中心に監査する(監査対象法規制は、事前に取り決
64
z
z
z
める場合もある)。下図では、製造業が注意を払った方が良いと思わ
れる法規制をリストアップしてあるが、これだけに限定されるもの
ではない。
環境法規制での監査チェックポイント:
¾ 有害物質管理法
— 新規化学物質の登録書および輸入記録
¾ 資源回復法
— EPA・ID 番号
— ジェネレーター・ステータス
(有害廃棄物の発生量により規則が異なる)
— 有害廃棄物のマニフェスト
— 廃棄物の保管管理
¾ ユニバーサル廃棄物規則
— 蛍光灯、充電電池、水銀使用デバイスのマネジメントおよびジェネ
レーター・ステータス
¾ 地下貯蔵タンク
— 資源保護回復法下での管理、加圧テストなどの結果
¾ 漏れ防止、コントロールおよび対策に関する規則
— 油などを貯蔵するタンクなどから内容物が漏れ出した時の対策計画
¾ 地域住民の知る権利法
— 特定化学物質の保管量および報告書
— TRI(特定化学物質排出移動インベントリー)報告書
— 緊急時の対応計画書
¾ 大気浄化法
— 許認可申請書(連邦法タイトルV、州法)
— 排気量の算出計算
— 汚染防止機器、乾燥機、ボイラーなどのモニターリング記録
— VOC(揮発性有機化学物質)の保管状況
¾ 水質浄化法
— 排水許可(直接排水:NPDES、雨水排水、間接排水:POTW)
— 排水分析記録
— 排水装置のメンテ記録
¾ アスベストに関する規則
— アスベストサーベイの結果
監査最終日
— クロージングミーティング
„ 監査協力のお礼
„ 所見の解説
¾ 解説時に写真等を使用すると効果的である。
¾ 被監査人が指摘事項を確認する。
„ 是正措置の説明
„ 質疑応答
報告書
— 報告書のフォーマット
„ フォーマットについては、計画書作成時に決めたフォーマット
65
z
を使用する。
フォローアップ
— 通常、監査修了後 6~12 ヶ月後に行う。
„ ポイントは、前回指摘された事項が是正されているかを確認す
ることである。
2-1-6 環境システム
環境システムは、環境マネジメントシステムと環境プログラムから構成される。環境マ
ネジメントシステムは、国際規格である ISO14001 環境マネジメントシステムを利用する。
環境プログラムは、企業が取り決めた基準であり、通常、環境法と整合性が取れている。
米国で環境マネジメントシステムを監査する際の注意点は、システムの有効性を確認す
ることであり、マニュアル等が適切に実行されていることを確認することが重要である。
必要に応じて、システムのパフォーマンスも確認する。
システムの有効性の確認は、現場の担当者やラインマンにインタビュー、または、必要
に応じて、デモストレーションなどにより確認できる。
2-1-7 安全と衛生システム
環境監査に労働安全・衛生の項目を入れて監査をすることも可能である。その場合、環
境・安全・衛生監査と呼ばれ、英語では、頭文字をとって、EHS 監査(または ESH 監査)と
呼ばれる。環境と安全・衛生では、オーバーラップする部分も多くあるため、2 つの監査を
同時に行うメリットがある。下図には、労働安全衛生法で重要な法規制をリストアップし
てある。
危険伝達基準では、MSDS のトレーニングを従業員に義務付けている。2012 年 3 月に米国
は GHS 対応することが正式に決まった。これにより、2013 年 12 月 1 日までに、経営者は、
従業員に対して、GHS 対応の危険伝達基準トレーニングを実施しなければならない。さらに、
GHS 対応 SDS は、2015 年 6 月 1 日までに導入を完了することも決まった。これにより、
MSDS/SDS のフォーマットも統一される。
危険伝達基準は、労働安全・衛生法の中で、一番違反摘発が多い規則であるので、労働
安全・衛生の監査を実施する際には、十分な注意を払う必要がある。以下に注意すべき監
査チェックポイントを示す。
2-1-8 労働安全衛生法での監査チェックポイント
„ 危険伝達基準
¾ MSDS(または SDS)の管理状況
¾ MSDS を利用した危険伝達基準トレーニングの実施状況
¾ 液体含有ボトルのラベルの貼付状況
„ 緊急行動計画
¾ 緊急時計画の有無および更新日の確認
„ 個人用保護具
¾ 個人用保護具の選定基準の確認
„ 呼吸器保護具
¾ フェイスマスクのフィットテスト記録の確認
„ 閉鎖空間への入室
¾ 閉鎖空間が特定されているかの確認
¾ 閉鎖空間であることを示す掲示板の確認
66
„ ロックアウト・タグアウト
¾ 化学物質、高温、通電箇所などのエネルギーが溜まっている場所へアクセ
ツする際に、他人が間違ってスイッチを入れることを防ぐためのロックア
ウト・タグアウトの方法が確定されているかどうかの確認
„ ホットワーク
¾ 溶接作業の有無を確認後、溶接を行うための許可書(ホットワークパーミ
ット)が提出されているかの確認
„ フォークリフト
¾ オペレターのトレーニング記録の確認
¾ フォークリフトの運転速度の確認
„ 作業場の管理維持
¾ 整理整頓清掃の確認
„ 労働安全衛生に関する記録
¾ ログ 300(怪我などの労災記録)の掲示内容および掲示場所の確認
„ 工場安全に関する規則
¾ メタノールなどの OSHA 指定有害物質を工程で使用する際の手順書の確認
2-1-9 サプライヤー監査
欧州 REACH 規則、紛争鉱物(タンタル、錫、タングステン、金)の使用禁止(米国ドッ
ト・フランク法)などの法規制により、メーカーは、自社が調達する部品等に含有する化
学物質の情報を確認しなければならない。違反メーカーには、罰金や該当製品の上市禁止
などの厳しい罰則が課される。
以下にオンサイトのサプライヤー監査実施例を示す。
オンサイト監査プロセス:
z 自己紹介
z 安全上の説明
z 製品の説明
z 情報収集
¾ 部品や原材料の BOM からの情報
— 全成分(フルマテリアルデータ)での該当化学物質含有量の計算
— 含有証明書(または含有していない証明書)からコンプライアンス
状況の把握
¾ 調達部品に含有する化学物質情報
¾ 製品のロット番号と化学物質情報の整合性確認
¾ 法規された化学物質情報の更新状況
z 収集情報の分析
z 購買担当者などへの情報確認
z 報告書の作成
監査は、サンプリングベースなので、リスクが高いと思われる部品のコンプライアンス
を優先的に行う。
3.監査時のトラブル事例
ここでは、監査時のトラブル事例とその対処方法例について述べる。
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事例① 過去に実施された監査結果の変更要求
監査人、コンサルタントや弁護士は、自分たちが係わった時点以降については、コメン
トが出来るが、自分たちが係わる前に起こったことについては、通常、アドバイス等がで
きないことを説明した。
事例② MSDS の捏造
日本から米国に輸出されたケミカル製品の MSDS に記載すべき化学物質が削除されていた。
削除されていた化学物質は、米国 TSCA に未登録のものであり、本来は、TSCA に新規化学物
質として登録してから米国に輸入しなければならない。これは、日本本社の担当者が TSCA
申請を回避するために、故意に記載すべき成分を MSDS から削除したものであることが判明
した。コンプラインス監査はこの時点で停止した。この問題の対応は、弁護士を中心に行
われた。
事例③ 顧客からの環境証明書に対する虚偽の返答
顧客からの特定化学物質の含有証明にたいして、実際には含有しているが、証明書には
含有が無く、全ての法規制に順守していると回答。この顧客は、この証明をベースに法令
順守の判断をしており、知らないうちに法令違反を犯している。この種の問題は、ただ単
に謝って済む問題でなく、場合により、訴訟が起こるので、弁護士と相談して対処すべき
である。
事例④ 虚偽のトレーンング記録
トレーニング実施日が不自然であったため、ランダムにトレーニングを受講した従業員
にトレーニングの内容についてのインタビューを行った。従業員へのインタビューから、
トレーニングが実施された日は、休暇を取っていたことが判明した。トレーニング記録を
管理する総務部に対して、是正を求めた。
事例⑤ 許認可申請書の紛失
特定化学物質の輸入許可書を紛失したため、当局からコピーを入手した。
事例⑥ 重油タンクからの重油漏れ痕跡
燃料用重油タンクの周辺に重油が漏れた痕跡を発見したが、担当者は、漏えいが無いと
言い張った。クロージングミーティングで、重油漏れ痕跡があるため、土壌分析を本社に
提言する旨を説明したら、担当者が重油漏れのあったことを認めた。後日、土壌分析を行
い、汚染を浄化した。
事例⑦ 研究室での飲食
揮発性化学物質を使用している研究室内での飲食を発見した。研究者全員に化学物質の
暴露経路の説明を行い、研究室内での飲食を禁じる措置が取られた。
4.弁護士およびコンサルタントの活用方法
弁護士またはコンサルタントを活用する際の注意点を以下で説明する。
弁護士やコンサルタントは、依頼契約が締結された後については、アドバイスをしてくれ
るが、依頼前のことについては、アドバイスをしてくれない。法規制問題が発覚したら、
または問題が発覚する可能性がある場合には、出来る限り早い時期に弁護士やコンサルタ
ントのアドバイスを受けることを推奨する。
アドバイスを受けるのが遅れると、選択するオプションが減り、効果的な対策が出来な
くなることもある。
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5.最後に
米国では、どの企業にも訴訟されるリスクがある。企業は、訴訟に巻き込まれることを
想定した対策を確立しておくことが必要である。第三者環境監査は、企業が法廷で身の潔
白を証明する唯一の手段である。ただし、監査は、サンプルベースなので、全てをカバー
するもので無い。
監査中に、即事故につながる危険を発見した時、どのような対応を取るべきか。監査を
止めて、事故が起こらないような対応を取る。安全を確認してから、監査を継続する。
仮に、監査中に重大な法規制違反を発見した際には、どのような対応を取るべきか。監
査を一時止めて、弁護士のアドバイスを得るのが企業にとってベストな対応かもしれない。
重大な法規制違反を発見した際の対策を事前に取り決めておくと、監査がスムーズに進む。
最後に、経営者には、法令順守を確実にする義務がある。
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