電子掲示板上における風説流布の原因と 株式市場への影響

電子掲示板上における風説流布の原因と
株式市場への影響
学籍番号 200310966
大塚
匠
社会経済システム専攻
指導教官
石井
健一
目次
第1章 序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1-1. 背景
1-2. 関連研究
1-3. 研究目的
1-4. 仮説の設定
第2章 研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
2-1. 調査方法
2-1-1.
風説の媒体
2-1-2.
風説の定義
2-1-3.
風説の検索方法
2-1-4.
調査期間及び検索された風説の数
2-2.
分析方法
2-2-1.
煽り方による分類
2-2-2.
時間帯による分類
2-2-3.
分析に用いる株価指標
2-2-4.
風説の内容による分類
第3章 結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
3-1. 全体の概況
3-1-1.
風説の煽り方と時間帯による分類結果
3-1-2.
風説の内容による分類結果
3-1-3.
風説の流布の対象となった銘柄の特徴
3-2.
仮説の検証
3-2-1.
風説流布と株価の関係に関する考察
3-2-2.
風説の内容と株価の関係に関する考察
第4章
結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
参考文献・付録
1
第1章
序論
1−1背景
昨今のインターネットの普及にともない、電子掲示板やブログ等において誰もが情報を
発信することが可能になった。しかし、この情報発信の容易さが「風説の流布」という問
題を引き起こしている。
「風説の流布」の定義として、「風説」は噂を意味し、「流布」は不特
定又は多数の人に伝播させることを意味する。(馬場 1969)つまり、「風説の流布」とは、
新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、インターネット等を通して噂を流す行為である。また、「風
説の流布」は有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引のため又は有価証券の相
場の変動を図る目的を以ってなされた場合、「相場操縦罪及び相場変動目的の風説流布罪」
となる。(証券取引法第158条)このような犯罪になりかねない行為がインターネット上
で氾濫している現状を問題として取り上げ、今回の研究をするに至った。
1−2.関連研究
問題に取り組むにあたって参考となる実際に起きた風説の流布事件の事例と、インター
ネット掲示板における風説流布についての研究事例を以下に挙げる。
相場変動目的の風説の流布事件の発生状況と判例
○企業による流布の事例
1961 年
日本レアメンタル工業株事件
同会社の代表取締役である被告人は、同会社の将来性が極めて有望であるかのごとく吹聴
し、特殊株市場での同社株の相場価格を騰貴させることを企図し、昭和 36 年 5 月 9 日、都
内の料亭で証券会社の社員等 10 数名の証券業者及び証券業界紙記者を招き、同社の実情説
明会を催し、その席上、同社が新規にポリバリコン製造業を始めるにつき、M 財閥系の某
大手商社と資本提携が実現し、当該財閥系に入ることとなったという趣旨の架空内容の説
明を行い、同社株の相場を変動させる目的で風説を流布した。被告人は、2 年 6 月の懲罰刑
(執行猶予 4 年)の有罪となった。(神山 1998)
1995 年
テーエスデー事件
店頭登録のソフトウェア開発会社であるテーエスデーの社長 M は、1992 年 8 月、東京証券
取引所で記者会見し、O 教授が開発したエイズワクチンについて臨床試験を始めたと発表
した。店頭登録していた同社の株価は、当該情報発表以前の同年四月頃は 730 円であった
が、発表後は急騰し、同年 9 月 8 日には 3650 円まで上昇した。同社が発行していた転換社
債のオプションの行使期限は同年 9 月末であった。株価は、転換価格の 2760 円を超えて約
四割が株式に転換されたといわれる。そうなると、同社はその分については償還する必要
がなくなる。ところが、同社長は、同年 11 月になって、タイでの臨床試験について事実と
異なっていたことを認めたが、意図的ではなかったと弁明した。同社は、1993 年 11 月に
2
は破産宣告を受けた。証券取引等監視委員会は、1995 年 2 月、一五八条の有価証券等の相
場の変動を図る目的で風説を流布したとして元社長宅などを捜索し、同年 6 月 23 日、東京
地検に告発した。東京地検特捜部は、同年 7 月 6 日、元社長を逮捕し、同月 26 日、東京地
検に起訴した。被告人は、大袈裟に表現したに過ぎないとして「風説の流布」に該当しな
いと主張したが、1 年 4 月の懲役刑(執行猶予 3 年)の有罪となった。(神山 1998)
○第三者による流布の事例
1997 年
占い師事件
占い師 N は、ギャンブル情報誌「ギャンぶる大帝」の 1994 年 6 月号(創刊号)、8 月号、
10 月号から 12 月号で、独自に開発した「九星周期法」と名付けた占い法を使って三銘柄の
株の推奨記事を執筆した。このうち、①10 月号の「熊沢製油産業」(名証二部上場)、②11
月号の「ボーソー油脂」
(東証二部上場)、③12 月号の「森下仁丹」
(東証二部上場)の各上
場銘柄を取り上げ、①では香港の資産家が買いまくっているとか、その他の銘柄について
も種々の虚偽の情報と占いを使って株価の変動を図り、実際にこれらの株価が値上がりし
た。証券取引等監視委員会は、1996 年 3 月 29 日までに風説流布罪で N の事務所等を捜索
し、強制調査をし、そして 1997 年 1 月 17 日、N を風説流布罪で東京地検に告発した。東
京地検特捜部は、同年 1 月 24 日、N を同罪で東京簡易裁判所は、同年 2 月、罰金 50 万円
の略式命令を下した。(神山
1998)
「風説の流布」は、当該株発行会社が行うのが一般的であるが、「占い師事件」は第三者
が雑誌を通して虚偽の風説を流布して株価を吊り上げた事件として注目される。(神山
1998)このような第三者による「風説の流布」の摘発例が少ないのは、風説流布と相場変
動の因果関係が明白である場合のみでしか摘発されないからである。インターネット上で
個人が電子掲示板やブログ等において風説を流布することは第三者による「風説の流布」
に該当し、そうした風説流布と相場変動の因果関係が明白であると立証することは困難で
あり、多くの風説が野放しにされている。
インターネット掲示板における風説流布についての研究事例
「株式市場における報道と流言-ネットバブルにおける光通信の事例研究-」
インターネット上の掲示板やメーリングリストなどの媒体を通じて発信された悪意のデ
マ情報、いわゆる風説の流布によって、その対象となった企業の株価が急落するという事
態が頻繁に発生している。
光通信やマイカルなどで風説の元凶とされた「Yahoo!掲示板」についての内容分析をお
こない、分析の対象として光通信をとりあげた。書き込まれたメッセージをランダム抽出
し、光通信の躍進の期間と没落の期間の記事内容を対比させるために 2000 年 1 月 1 日から
6 月 30 日の期間を 3 分割し時系列分析をおこなった。
3
掲示板における発言数について、1,2 月には、ほかのネットベンチャーと横並びであった
光通信が 3,4月に入って急激に増加した。これは、3 月 10 日の文芸春秋の光通信に関する
非好意的な内容の記事が発端となり、事件が人々にとって重大でありながら、それ関する
詳細な報道がなされておらず、また人々が、そのような情報の不確実な状況で大変混乱し
ており、このようなネット掲示板においての風説が流布したものと推測できる。さらに、
期間ごとの光通信に対する好意度を分析し、どの項目も第1期から第 2 期、第 2 期から第 3
期へと移行するにつれ、好意度が低下しており、当時の世論を反映する結果がはっきりと
あらわれた。人々が光通信に幻想を抱いていた第1期は、経営状況や株価を好意的に評価
する人が多く、メディアの煽りが大衆に広く浸透していたことがわかる。第 2 期に移行し
ても、「まだ光通信の経営は好調であろう」と、人々が信じきっていたことを、この結果は
よくあらわしている。若干、文芸春秋の記事や風説の影響を受けてか、第1期に比して、
非好意的な書き込みをするものもいたが、1 回目の会見(3 月 15 日)で、光通信の社長で
ある重田が「業績は好調」と述べていたことを受け、まだ好意的に評価していた人々も存
在していたようである。だが、赤字・業績下方修正の発表後は、業務、経営状況に関する
好意度は極端に下がっていた。この結果からも、あの発表の影響が大きく、人々が完全に
光通信の幻想から脱却し、市場関係者だけでなく、一般の人々までもが重田の嘘に激怒し
たと思われる。また、
「未来予測」からも報道の影響があらわれている。ネットバブル期は、
光通信に対し、明るい未来を予想するものが多かった。逆に、第 2 期以降は、倒産、株価 2
桁など、極端な予想をするものが増加し、もうすぐ立ち直るであろうと、好意的に評価す
るものはわずかであった。(金村 2002)
この研究は、光通信という企業を事例とした株式市場における流言の研究であり、時系
列的に光通信に関する報道と掲示板の発言を分析し、その関係を明らかにした。しかし、
この研究は一企業を対象としたものであり、掲示板における風説が、株主及び会社にとっ
て重大である株価への影響を分析した研究ではない。本研究では、電子掲示板上で風説の
対象となったあらゆる企業を対象とし、株価への影響と風説の流布の原因を探っていく。
1−3.研究目的
「風説の流布」という犯罪がインターネット上で数多く行われているにもかかわらず、
こうした動きを監視している証券取引等監視委員会の取り締まりは十分ではなく、私たち
がインターネット上で風説を目の当たりにすることは容易である。さらに、そうした情報
を信頼して投資判断を行った結果、株主及び会社が損害を被る可能性は十分あり、しいて
は市場の信頼や健全性を阻害することにつながる。このような現状において、インターネ
ット上で風説が流布される原因と株価への影響を探ることを本研究の目的とし、さらに研
究の延長として、健全な市場をつくるためにはどのような方策が必要であるかを考えてい
4
きたい。
1−4.仮説の設定
インターネット上における風説と現実の株価との関係に関する仮説を以下のように設定
した。
仮説(1)風説が株価に与える影響はない。
仮説(2)株価の下落が風説の流布を発生させる。
仮説(3)株価の下落が大きいほど、風説がよりネガティブになる。
仮説(1)に関して、たしかに、インターネットを通じて発信された風説が光通信やマイ
カルなどの銘柄の株価を急落させたという事例がある。
(金村 2002)しかし、株価の急落の
原因は風説の流布だけにあるのではなく、投資家の信用を落とすような業績の悪化や不祥
事などの事実による原因が大きかったはずである。また、石井(1994)によると、新聞記
事の予測には現実の動向と偶然以上の一致はみられないことがわかった。この仮説を適用
すると、インターネット上で予測された株価や、噂が期待する株価の動向が現実の株価の
動向に一致することはないと考えられる。さらに、この説は心理学的側面から考えること
ができる。加藤(2003)によると、生起する確率がはっきりしない不確実性を人々は好ま
ないという。つまり、風説の特徴である曖昧さに対して人々は回避する傾向を示すと考え
られる。よって、人々は風説の煽りを受けることはなく、また風説が期待するような株価
になることはないと考えられる。以上から、風説が株価へ影響を与えることはないと予想
する。
仮説(2)に関して、ハリントン(1989)によると、テレビの経済ニュースは、景気が悪
化したときに多くなるが、景気が良くなっても増えることはないとしている。また、石井
(1994)によると、日本経済新聞と読売新聞の内容分析を行ったところ、株式報道は株価
が下落した時に増加することがわかった。これらの仮説を適用して、電子掲示板上での風
説についてもこの傾向があると予想する。
仮説(3)に関して、シブタニ(1966)によると、流言とは、あいまいな状況にともに巻
き込まれた人々が、自分たちの知識を寄せあつめることによって、その状況について有意
味な解釈を行おうとするコミュニケーションであるとしている。つまり、株価の下落とい
うあいまいな状況に置かれた人々が、自分の知識や手に入る情報を集積した結果、その状
況に関して一歩先の解釈をし、その解釈自体が風説という流言になりうると考えられる。
さらに、置かれた状況があいまいであればあるほど、つまり、株価の下落が大きいほど、
その状況についてなされた解釈は実際の状況とはかけ離れたものとなると考えられ、風説
の内容は実際の状況から負の方向へ向かっていくと予想される。
5
第2章
研究方法
2−1.調査方法
2−1−1.風説の媒体
インターネット上における風説の流布の媒体として、今回は Yahoo!掲示板−株式
(http://messages.yahoo.co.jp/yahoo/Business___Finance/Investments/Stocks/index.html)
を選択する。
これは、実際に 2000 年 4 月に人材派遣会社のグッドウィル・グループが、
Yahoo!
ファイナンス掲示板上で株暴落説が大量に書かれ、証券取引等監視委員会が調査に乗り出
すという事件が起こり、また、光通信など、急激に売り上げを伸ばした新興企業に対する
経営上のさまざまな噂などが流され、株価が急速に下がるという現象も確認されているか
らである。
(マルチメディア・インターネット事典 http://www.jiten.com/dicmi/docs/k28/21667s.htm)
また、Yahoo!掲示板は日本最大規模の電子掲示板であり、株式カテゴリにおいて東証上場
企業や店頭公開企業などの株式銘柄ごとに掲示板が用意されているからである。11 月 19
日現在、Yahoo!掲示板−株式カテゴリの銘柄ごとのトピック数は 4342 あり、上場していな
い銘柄も含めて 4336 社の掲示板が用意されており、上場企業 3857 社全てを網羅している。
Yahoo!掲示板に匹敵する電子掲示板として、2ch(2ちゃんねる)があり、この掲示板にも株
式板や市況実況板が用意されているが、全ての上場銘柄のスレッドがあらかじめ用意され
てはいない。これらの理由から、Yahoo!掲示板の株式カテゴリ上に流布される風説を調査
の対象とする。
2−1−2.風説の定義
Yahoo!掲示板−株式カテゴリに投稿された書き込みの中で、どのような情報が風説に該
当するのかを定義する。
(馬場 1969)によると、
「風説とは、噂を意味する。必ずしも出所
又は根拠があいまいなものであることは必要でなく、また、行為者自ら創造したものであ
るかどうかは問わない。虚偽であることは必要ない。」とある。しかし、
(神山 1998)によ
ると、「風説流布は噂だけで犯罪行為とするには余りにも曖昧であるので、虚偽の風説の流
布と解すべきである。」とある。この研究では、「風説流布罪」に当てはまるような風説だ
けを取り上げるのではなく、実際に犯罪として摘発することが難しい風説も取り上げたい。
つまり、「風説とは、噂を意味する」という定義をこの研究での風説の定義とし、事実では
ない情報だけでなく予想や推測も風説として扱う。また、風説の根拠の有無であるが、た
とえ根拠が挙げてあったとしても、その根拠自体が偽造であったり、信頼性が低い可能性
があるため、根拠の有無は考慮しない。以下は書き込まれた情報が風説であるかどうか判
別する方法の例である。
風説の判別方法の例
6
例えば、「ソニー製充電池、発火の恐れ」という内容の投稿が書き込まれたとする。これは
実際に起こったソニーの不祥事であり、YOMIURI ONLINE
(http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_06081525.cfm)によると、「米パソコン最大手デルは
14日、日本や米国などで販売したノート型パソコンに搭載したソニー製充電池(バッテ
リー)について、「極めてまれに、使用中に発火の可能性がある」として、自主回収・無
償交換すると発表」と報道された。「ソニー製充電池、発火の恐れ」という投稿が14日
の発表の前後どちらかに書き込まれたかによって、その投稿が風説であるかどうかを判断
する。
○ 14日の発表前に投稿
根拠もなく「ソニー製充電池、発火の恐れ」と書き込む→風説の流布となる
根拠ありで「ソニー製充電池、発火の恐れ」と書き込む
→根拠が偽造であるなら風説の流布となる
→根拠が事実であるならインサイダー情報となる
○ 14日の発表後に投稿
「ソニー製充電池、発火の恐れ」と書き込む。→風説の流布ではない
上記の例より、つまり、事実の発表前に流された噂が「風説の流布」に該当する。根拠
が事実であった場合、インサイダー取引につながる恐れがあるが、根拠が事実であると判
断するのは難しいのでこれも「風説の流布」として扱う。もちろん、報道後の書き込みは
「風説の流布」には該当しない。
2−1−3.風説の検索方法
Yahoo!掲示板−株式カテゴリにおける全ての投稿に目を通すのは、時間的に不可能であ
り、効率的にも悪いので Yahoo!掲示板の検索機能を使用し風説を調査した。以下は検索方
法のフローチャートである。
①Yahoo!掲示板−株式カテゴリにおいて「風説」、「通報」と検索。
↓
②検索された投稿を調べ、その返信元をクリックしていく。
↓
③発見された投稿が事実でない情報や予想、推測であった場合、「風説」として扱う。
①掲示板内で風説を発見するための検索ワードは「風説」
、「通報」とした。まず、
「風説」
というワードであるが、風説を流布した投稿に返信する形で、他の投稿者が「風説の流布」
を指摘する投稿を検索することができた。また、「通報」というワードは、風説を流布した
7
投稿に返信する形で、「証券取引等監視委員会に通報しました」というような投稿を検索す
ることができた。他にも「違反」、「逮捕」といった風説に結びつくワードで検索したが、
ほとんど発見することはできなかった。
②検索された投稿の「これは メッセージ 123456 abcde さんに対する返信です」(例)の下
線部の所をクリックしていき、風説と思われる投稿を探していく。メッセージのあとの番
号はそのスレッドにおけるナンバーを表しており、「abcde」は投稿者の Yahoo! JAPAN ID
を表している。なお、クリック先の投稿が Yahoo!によって削除されている場合があり、そ
の場合は投稿の内容がわからないので風説としては扱わない。
Yahoo!掲示板では、公序良俗に反したり、著作権を侵害する、個人情報漏えいを含むな
ど利用規約に違反する不快な投稿は、違反報告フォームから報告することができる。そし
て、Yahoo! JAPAN が違反報告をもとに、投稿メッセージを確認し、違反しているかを判断
して削除するとある。また、Yahoo!掲示板の株式カテゴリでは、個別の投稿に関し、証券
取引法等の法令に違反していると閲覧者が判断した場合は、証券取引等監視委員会への情
報提供をすることができる。
③検索された投稿が事実として公表されない情報や単なる予想、推測であった場合、その
投稿を「風説」として扱う。事実として公表されているか否かは、Yahoo!ファイナンスの
銘柄ごとに用意してある「最新関連ニュース」を参照する。
2−1−4.調査期間及び検索された風説の数
調査期間:2006 年 7 月 14 日から 8 月 22 日
違反投稿が Yahoo! JAPAN によって削除されて、閲覧できなくなるのを防ぐために、2 日
の間隔で Yahoo!掲示板の株式カテゴリを検索した。時間帯は主に午後 10 時から 12 時の間
である。
検索された風説の数:134
銘柄数:93
2−2.風説の分類方法
2−2−1.煽り方による分類
風説が買い煽りか、売り煽りかの性質であるかによって株価への反映は変わってくると
考えられるので以下のように分類した。分類の方法は、株価に対し正の方向であるものは
「買い煽り」とし、負の方向であるものは「売り煽り」とした。株価に対しどちらの方向
8
に働くかを判断できない風説も若干存在し、これを「その他」とした。
2−2−2.時間帯による分類
Yahoo!掲示板−株式カテゴリ上で流布された風説を、投稿された時間帯によって場合分
けをする。これは、投稿された時間帯によって株価への反映日が異なってくるからである。
証券取引所は祝日および年末年始を除く、月曜から金曜日までとなっており、取引時間は
市場により若干異なっている。東京証券取引所での取引時間は前場が午前 9 時から 11 時、
後場が 12 時半から午後 3 時までとなっており、これを基に場合分けをする。営業日の午前
9 時から午後 3 時までに投稿された風説を「取引時間内の風説」とし、それ以外の時間に投
稿された風説を「取引時間外の風説」とに場合分けをする。
2−2−3.分析に用いる株価指標
分析に用いる株価の指標として終値における前日比を用いる。前日比とは、ある時点の
株価とその前日の終値との差額を比較した値であり、前日比=(その日の終値−前日の終
値)÷(前日の終値)で表すことができる。「取引時間内の風説」はその日の終値における
前日比を「当日の前日比」として用い、「取引時間外の風説」は翌営業日の終値における前
日比を「当日の前日比」として用いる。そして、「当日の前日比」の前の日の前日比を「前
の日の前日比」、次の日の前日比を「次の日の前日比」と呼ぶことにする。風説を投稿した
人は時間内か、時間外であるかによって以下のように、株価に対する認識が異なってくる。
表 2-1 風説の投稿時間帯における株価への認識
次の日の前日比
当日の前日比
前の日の前日比
取引時間内
認識していない
投稿する前までは認識している 認識している
取引時間外
認識していない
認識していない
認識している
風説を投稿する前と投稿した後の株価の変化を調べるために、株価を認識しているか、
していないかの前後における前日比を用いる。これに従い、「取引時間内の風説」は「次の
日の前日比」
、「当日の前日比」、「前の日の前日比」を用い、
「取引時間外の風説」は「次の
日の前日比」、「当日の前日比」を用いる。また、風説が投稿された銘柄を「風説銘柄」と
呼ぶことにし、株式市場全体の値動きと風説流布の発生との関係を調べたいので、日経平
均株価を風説銘柄の株価とともに採用し、これを「日経平均」と呼ぶことにする。日経平
均株価は、東証第一部上場銘柄のうち取引が活発で流動性の高い 225 銘柄を選定し、ダウ
平均株価の算出方法を基にした計算方法で修正平均を算出したものである。風説銘柄と同
様に日経平均も前日比を用い、風説の流布の時間帯が取引時間内の場合は「次の日の前日
比」、
「当日の前日比」、
「前の日の前日比」を用い、取引時間外の場合は「次の日の前日比」、
9
「当日の前日比」を用いる。
2−2−4.風説の内容による分類
実際に Yahoo!掲示板−株式カテゴリで得られた風説がどういった内容であるかによって
以下のように分類した。また、実際に投稿された例を一部抜粋して示し、例のカッコ内は
銘柄名である。
○ 売り煽りの内容
悪い噂系
真偽がつかず、企業にとってマイナスな噂を「悪い噂系」とする。
(悪い噂の例)
ここの専務が横領してる(クロニクル)
倒産、上場廃止、逮捕系
悪い噂の中でも特に、「倒産」、「上場廃止」、「逮捕」という文字を含む投稿、または、
これらに結びつくような投稿を「倒産、上場廃止、逮捕系」として一まとめにした。これ
は、これらの単語が非常に負の方向にインパクトが強いという観点からである。
(倒産の例)
イチヤ 倒産しました。(イチヤ)
(上場廃止の例)
年内に上場廃止だから(ナノテックス)
(逮捕の例)
子会社粉飾で次は、ウノトラマン逮捕か?(USEN)
下降の株価及び決算予想系
株価及び決算に関しての具体的な数字を用いた負の予想や、ただ単に下がる、悪いといっ
た負の予想を「株価及び決算予想系」とした。
(株価予想の例)
この株明日以降暴落らしい。(ダヴィンチ・アドバイザーズ)
(決算予想の例)
8 月末に発表になる決算の数字は確実に悲惨なものが出てくる。(GMOインターネット)
○ 買い煽りの内容
良い噂系
真偽がつかず、企業にとってプラスな噂を「良い噂系」とする。
(良い噂の例)
祝!!
一部上場決定(ダヴィンチ・アドバイザーズ)
10
上昇の株価予想系
株価に関しての具体的な数字を用いた正の予想や、ただ単に上がる、良いといった正の予
想を「株価予想系」とした。なお、売り煽りと違って決算予想は見られなかった。
(株価予想の例)
軽く倍の倍になります。(富士バイオメディックス)
第3章
結果と考察
3−1.全体の概況
Yahoo!掲示板の株式カテゴリにおける風説の調査から、投稿された風説の様々な特徴を
見いだすことができた。
3−1−1. 風説の煽り方と時間帯による分類結果
表 3-1-1 風説の煽り方と時間帯別による度数と割合
取引時間内
取引時間外
買い煽りの度数
8
16
買い煽りの割合
5.97%
売り煽りの度数
36
売り煽りの割合
26.87%
合計
24
11.94% 17.91%
69
105
51.49% 78.36%
その他の度数
3
2
5
その他の割合
2.24%
1.49%
3.73%
47
87
134
35.07%
64.93%
100%
合計
表 3-1-1 より、風説の煽り方については、売り煽りの割合が 78.36%となり、ほかに比べて
非常に大きかった。また、投稿時間については、取引時間外の割合が 64.93%となり、取
引時間内に比べて大きかった。今回、調査した風説の特徴として、株価に対し負の方向に
煽る「売り煽り」であり、証券を正規に取引することができない「取引時間外」に流布さ
れるということがわかる。
11
3−1−2. 風説の内容による分類結果
表 3-1-2 風説の内容による分類別の度数
煽り方
内容の分類
重複
売り煽り 悪い噂系
単独
44
32
倒産、上場廃止、逮捕系
29
26
下降の株価及び決算予想系
43
33
16
13
11
8
買い煽り 良い噂系
上昇の株価予想系
*風説の内容が重複したものの合計を「重複」、内容が単独なものを「単独」としている。
売り煽りの分類においては、「悪い噂系」と「下降の株価及び決算予想系」がほぼ横並び
で、「倒産、上場廃止、逮捕系」が最も少なかった。また、「悪い噂系」と「下降の株価及
び決算予想系」は一つの風説の中に重複していることが多いが、
「倒産、上場廃止、逮捕系」
は単独で書かれているという傾向があった。買い煽りの分類においては、
「良い噂系」が「上
昇の株価予想系」に比べて多かった。
12
3−1−3.風説の流布の対象となった銘柄の特徴
風説の流布の対象となった銘柄がどういった特徴を持つのか探るために、検索された風
説の数が上位であった銘柄とその特徴を以下に挙げる。
表 3-1-3 検索された風説の数が上位である銘柄とその特徴
順位 企業銘柄
風説の数 業種分類
設立年
特色
旧豊国産業が社名変更。経営陣・業態
1位
アイビーダイ
ワ
6
卸売業
1947 年
ともに次々と変化。外資が大株主、資
源開発で再出発
本体は純粋持ち株会社。ボーダフォン
ソフトバンク
6
情報・通信
1981 年
買収で総合通信会社の基盤強化。業績
予想は非開示
不動産の証券化を助言・実行し、その
3位
アセット・マネ
ジャーズ
4
サービス業
2000 年
管理も。不動産ファンドの組成・運営
との2本柱
外資中心に不動産投資ファンドを組
ダヴィンチ・ア
ドバイザーズ
4
サービス業
1998 年
成・運用。ファンド手数料が主収入源。
国内顧客も拡大
画像圧縮ソフトがコア。破産した平成
ドリームテク
ノロジーズ
6位
SBIホール
ディングス
4
情報・通信
1995 年
電電由来の通信事業は06年6月日
本テレコムに譲渡
3
その他金融
業
ベンチャー投資、運用、証券など総合
1999 年
金融会社志向。純粋持ち株会社。業績
予想は非開示
インターネットによるインフラ・メデ
GMOインタ
ーネット
3
情報・通信
1991 年
ィア・金融関連事業を展開、06年5
月にネット証券に参入
Yahoo!ファイナンス(http://quote.yahoo.co.jp)より
風説の対象となった銘柄の特徴として、表 3-1-3 から「情報・通信」、「サービス業」とい
う業種が多いことがわかる。また、「アイビーダイワ」は投資、「アセット・マネジャーズ」
はマーチャントバンキング、「ダヴィンチ・アドバイザーズ」は不動産投資顧問、投資、「S
BIホールディングス」はベンチャー投資、運用、証券など総合金融を主な事業として行っ
ており、共通して投資に関する事業を行っているという特徴が得られた。さらに、上記の
7社中5社が 1990 年以降に設立された企業であるという特徴も見られた。
13
3−2.仮説の検証
この章では、第1章で設定した以下の仮説について検証する。
仮説(1)風説が株価に与える影響はない。
仮説(2)株価の下落が風説の流布を発生させる。
仮説(3)株価の下落が大きいほど、風説がよりネガティブになる。
3−2−1.風説流布と株価の関係に関する考察
以下の表は、風説銘柄の株価及び日経平均株価の前日比の平均値を算出し、帰無仮説「前
日比の平均に差がない」を検定したものである。
表 3-2-1(売り煽り:取引時間内)風説銘柄と日経平均の前日比の平均値とt検定
度数=36、自由度=35、検定値=0
有意確率(両
平均値(%)
t値
風説銘柄:次の日の前日比
0.405
0.436
0.666
風説銘柄:当日の前日比
-0.929
-1.670
0.104
風説銘柄:前の日の前日比
-3.075
-4.201
0.000***
日経平均:次の日の前日比
0.321
1.036
0.307
日経平均:当日の前日比
0.030
0.151
0.881
日経平均:前の日の前日比
-0.491
-2.247
0.031*
有意水準: * 5%
** 1%
側)
***0.1%
表 3-2-2(売り煽り:取引時間外)風説銘柄と日経平均の前日比の平均値とt検定
度数=69、自由度=68、検定値=0
有意確率(両
平均値(%)
t値
風説銘柄:当日の前日比
0.069
0.092
0.927
風説銘柄:前の日の前日比
-2.327
-3.720
0.000***
日経平均:当日の前日比
-0.087
-0.471
0.503
日経平均:前の日の前日比
-0.118
-0.437
0.355
有意水準: * 5%
** 1%
***0.1%
14
側)
表 3-2-3(買い煽り:取引時間内)風説銘柄と日経平均の前日比の平均値とt検定
度数=8、自由度=7、検定値=0
有意確率(両
平均値(%)
t値
風説銘柄:次の日の前日比
0.825
0.344
0.741
風説銘柄:当日の前日比
2.158
1.196
0.271
風説銘柄:前の日の前日比
1.899
1.174
0.279
日経平均:次の日の前日比
0.399
0.739
0.484
日経平均:当日の前日比
-0.423
-1.106
0.305
日経平均:前の日の前日比
0.238
0.623
0.553
側)
表 3-2-4(買い煽り:取引時間外)風説銘柄と日経平均の前日比の平均値とt検定
度数=16、自由度=15、検定値=0
有意確率(両
平均値(%)
t値
風説銘柄:当日の前日比
-0.148
-0.094
0.926
風説銘柄:前の日の前日比
0.578
0.415
0.684
日経平均:当日の前日比
-0.557
-1.847
0.085
日経平均:前の日の前日比
0.260
0.728
0.478
側)
仮説 1
「風説が株価に与える影響はない」
表 3-2 より、風説が流布された後の風説銘柄の前日比は、売り煽り、買い煽りともに検
定値 0 に対し有意差はみられなかった。また、取引時間内での次の日の前日比、取引時間
外での当日の前日比の平均値は 1%の絶対値を上回ることはなく、株価に大きな変動があっ
たとは言い難い。以上より、風説の流布が株価に与えた影響はみられなかったといえる。
仮説2
「株価の下落が風説の流布を発生させる」
表 3-2-1 より、売り煽り:取引時間内の風説銘柄:前の日の前日比は、有意水準 0.1%
で負に有意であった。(t=-4.201、df=35、p<0.001)また、表 3-2-2 より、売り煽り:取引
時間外の風説銘柄:前の日の前日比についても、有意水準 0.1%で負に有意であった。
(t=-3.720、df=68、p<0.001)さらに、取引時間内の前の日の前日比の平均値は-3.075%、
取引時間外においては-2.327%と大幅な下落であった。以上より、風説を流布する前の日に
おける風説銘柄の前日比は負であったので、株価の下落が風説の流布を発生させたといえ
る。また、表 3-2-1 より、売り煽り:取引時間内の日経平均:前の日の前日比は、有意水
準 5%で負に有意(t=-2.247、df=35,p<0.05)であり、市場全体の株価下落も風説の流布の発
15
生に影響を与えた可能性も考えられる。
3−2−2.風説の内容と株価の関係に関する考察
仮説3
「株価の下落が大きいほど、風説がよりネガティブになる」
この仮説を検証するために売り煽りの風説の内容を、「倒産、上場廃止、逮捕系」>「悪
い噂系」>「下降の株価及び決算予想系」の順にネガティブであるとする。これは、数字
的な予測よりも具体的な内容を持った噂の方が直接的に負の印象を与えやすく、また、「倒
産、上場廃止、逮捕」、これら3つの単語が、企業の経営が危機的であるという印象を喚
起するという理由からである。
分析を行うにあたって、一つの風説の中に内容が重複している場合と単独な場合があり、
今回は単独な内容の風説のみを用いる。
「倒産、上場廃止、逮捕系」、
「悪い噂、虚偽系」、
「下
降の株価及び決算予想系」、3つのグループの株価の間に差があるかを調べるために、前日
比を従属変数、風説の内容を独立変数とし、帰無仮説「3つのグループの前日比の平均に
差がない」を検定した。
表 3-2-5(売り煽り:取引時間内)風説の内容別による分散分析
風説銘柄:次の日の前日比×風説の内容
風説銘柄:当日の前日比×風説の内容
風説銘柄:前の日の前日比×風説の内容
グループ間(結
合)
自由度
F値
有意確率
2
1.860
0.172
0.698
0.505
1.050
0.362
グループ内
32
合計
34
グループ間(結
合)
2
グループ内
32
合計
34
グループ間(結
合)
2
グループ内
32
合計
34
16
表 3-2-6(売り煽り:取引時間外)風説の内容別による分散分析
風説銘柄:当日の前日比×風説の内容
風説銘柄:前の日の前日比×風説の内容
グループ間(結
合)
自由度
F値
有意確率
2
0.991
0.378
0.091
0.913
グループ内
53
合計
55
グループ間(結
合)
2
グループ内
53
合計
55
表 3-2-5,6 より、取引時間内、時間外ともに、分類した風説の3つのグループ間に有意
差はみられず、それぞれの前日比の平均に差があることは実証できなかった。
次に、3つのグループの株価の前日比の平均値を算出し、3つのグループの平均値を比
較することによって、仮説を検証する。
表 3-2-7(売り煽り:取引時間内)風説の内容別による前日比の平均値
風説銘柄:次
風説の内容
の日の前日
比
倒産、上場廃止、逮捕系
悪い噂系
下降の株価及び決算予想系
風説銘柄:当
日の前日比
風説銘柄:前
の日の前日
比
平均値(%)
-1.674
-1.312
-4.071
度数
13
13
13
標準偏差
7.073
3.219
3.493
平均値(%)
1.646
-1.424
-3.170
度数
12
12
12
標準偏差
4.007
3.913
4.880
平均値(%)
2.288
0.141
-1.393
度数
10
10
10
標準偏差
4.212
2.998
4.920
17
表 3-2-8(売り煽り:取引時間外)風説の内容別による前日比の平均値
風説銘柄:当
風説の内容
倒産、上場廃止、逮捕系
悪い噂系
下降の株価及び決算予想系
日の前日比
風説銘柄:前
の日の前日
比
平均値(%)
-2.624
-2.063
度数
13
13
標準偏差
11.158
7.685
平均値(%)
0.037
-1.679
度数
20
20
標準偏差
3.883
4.884
平均値(%)
0.531
-2.396
度数
23
23
標準偏差
5.106
4.485
表 3-2-7,8 より、取引時間内において、前の日の前日比の平均値は風説がネガティブな
ほど負であったが、取引時間外においては「下降の株価及び決算予想系」が最も負となり、
仮説を実証することはできなかった。興味深いことに、風説を流布した後の前日比である、
取引時間内での次の日の前日比、取引時間外での当日の前日比の平均値は、風説の内容が
ネガティブになるほど低くなっていた。さらに、「悪い噂系」及び「下降の株価及び決算
予想系」において、これらの平均値は正であったが、「倒産、上場廃止、逮捕系」におい
てのみ負であった。これは、一部の銘柄において、実際に倒産などを予想させるような危
機的な状況であった、もしくは、「倒産」、「上場廃止」、「逮捕」という風説が株価に負の影
響を与えたという可能性が考えられる。
第4章
結論
この研究は、電子掲示板上における風説の流布について調査し、その原因と影響を探る
ことによって、健全な株式市場を実現するために必要な方策を導き出すことを目的として
いた。
風説の流布の原因として、売り煽りについては、株価の下落が風説の流布を発生させる
ことがわかった。この状況における風説の流布は、「株主の悲観的なはけ口」、「利益を得る
ための株価操作」、「株価の下落をおもしろがった悪戯」などを目的としていると考えられ
る。買い煽りについては、サンプル数が少ないこともあり、はっきりとした原因を特定す
ることはできなかった。
風説の流布の影響として、風説を流布した後の前日比は売り煽り、買い煽りともに、大
きな変動はみられなかった。しかし、風説の内容で分類した「倒産、上場廃止、逮捕系」
において、風説を流布した後の前日比の平均値は、負の有意差はみられなかったものの、
18
-1.5%以下であった。これは、一部の銘柄において、実際に倒産などを予想させるような状
況であったとも考えられるが、風説が株価に負の影響を与えたという可能性も考えられる。
「風説が株価に与える影響はない」という仮説は支持されたわけでなく、風説の影響をよ
り深く探るためには、風説の流布の対象となった銘柄を一つ一つ個別に調査する必要があ
る。また、今回の研究では、取引時間内に投稿された風説に関して、投稿された時点での
株価ではなく、その日の終値を用いたので、正確なデータを分析したとはいえないだろう。
より正確な分析をするためには、詳細な株価情報を含んだティックデータを用いる必要が
ある。
最後に、インターネット上の風説流布による株式市場の信頼や健全性の阻害を解消する
方策を考える。今回の研究の成果として、「株価の下落が風説の流布を発生させる」という
結果が得られたので、「株価が一定以上下落した銘柄の掲示板の一時停止」という規則を提
案する。これは、様々な憶測が流れやすいという理由からであり、光通信のような経営危
機に陥った銘柄、ライブドアのような社長逮捕という大きなスキャンダルに見舞われた銘
柄もこれに含むとする。この規則は、利用者の発言の機会や情報の収集の機会を奪ってし
まう負の側面もあるが、風説の流布を防止するためには致し方ない手段である。だが、こ
のような強引な手段をとらずとも、サイトの管理者と利用者が責任とモラルに基づいた行
動をすれば、風説の流布は起こりえないだろう。証券取引等委員会やサイトの管理者によ
る取締りや注意勧告、利用者同士の呼びかけや管理者への通報など、責任とモラルに基づ
いた行動が電子掲示板上ではよりいっそう求められる。
19
参考文献
石井健一 (1994)「第 11 章
経済動向と消費意識」
「消費行動の社会心理学」より
加藤英明 (2003)「行動ファイナンス
飽戸弘編
福村出版
理論と実証」朝倉書店
金村健司 (2002)「株式市場における報道と流言-ネットバブルにおける光通信の事例研究-」
神山敏雄 (1998)「株価操作(相場操縦)罪及び相場変動目的の風説流布についての考察」
「判例時報 1635 号」より
判例時報刊行会
日本評論新社
Shibutani,T. (1966) 「Improvised news:A sociological study of rumor」Bobbs-Merril
広井修・橋元良明・後藤将之(訳)1985 年 流言と社会 東京創元社
馬場義宣 (1969)「経済法編Ⅰ
第三章
証券取引法」
「注釈特別刑法第五巻Ⅰ」より
Harrington,D.E. (1989)
伊藤栄樹ほか編
立花書房
「Economic news on television」Public Option Quarterly
マルメディア・インターネット事典ホームページ
http://www.jiten.com/dicmi/docs/k28/21667s.htm
Yahoo!掲示板−株式カテゴリホームページ
http://messages.yahoo.co.jp/yahoo/Business___Finance/Investments/Stocks/index.html
Yahoo!ファイナンスホームページ
YOMIURI ONLINE ホームページ
http://quote.yahoo.co.jp
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_06081525.cfm
20
付録:Yahoo!掲示板-株式カテゴリにおける風説流布の主な例
調査期間 平成 18 年 7 月 14 日から 8 月 22 日
売り煽り
悪い噂系
・
北朝鮮とべったりの関係なんだって?(ジェイ・ブリッジ)
・
ここの専務が横領してる(クロニクル)
・
SD ホールの増資資金をエバーライフの CM 費に充てたとの噂(SDホールディングス)
・
受注キャンセル(ブイ・テクノロジー)
・
近日中に脱税で会社が起訴される(JBCCホールディングス)
・
顧客にインサイダー取引もやらせるらしいぞ(マネックス・ビーンズ・ホールディング
ス)
・
とんでもない悪材料があるって本当?(アイディーユー)
・
近々営業停止になります(荏原)
・
今後2年間の閉鎖率70%に上る可能性(ベンチャー・リンク)
・
来週はとんでもないブラックサプライズが出ます。(サハダイヤモンド)
・
ある材料が延期になるみたい(エフアンドエム)
・
営業停止!取引員免許取り消し!(小林洋行)
・
粉飾?(小林洋行)
・
色々な問題をかかえているらしい。(SANKYO)
・
某証券の担当者が言ってました。ここはもう終わり。(アライドテレシスホールディン
グス)
・
ここの役員の経歴見てみな。カタギじゃないスジ者ばっかだよ。(ジェイ・ブリッジ)
・
本日
・
孫のインサイダー疑惑浮上(ソフトバンク)
引け後に
発表
MSCB(楽天)
倒産、上場廃止、逮捕系
・
ここ倒産するらしいよ (住友ゴム工業)
・
倒産するらしいよ。(フィスコ)
・
上場廃止か?(鉄人化計画)
・
利益目処無く倒産かもね♪(三洋電機)
・
第 2 のライブドアショック再来(ドリームインキュベータ)
・
子会社粉飾で次は、ウノトラマン逮捕か?(USEN)
・
藤田逮捕って何?(サイバーエージェント)
21
下降の株価及び決算予想系
・
8 月末に発表になる決算の数字は確実に悲惨なものが出てくる。(GMOインターネッ
ト)
・
業績予想下方修正?(群馬銀行)
・
決算はボロボロ(アイビーダイワ)
・
来期は赤字かもよ(ソフトブレーン)
・
引け後の発表悪材料かもしれませんね(ディー・エヌ・エー)
・
今中間は−15%減益 四半期は減益(ネプロジャパン)
・
400 円割れは来月末と見ました。5401 (新日本製鐵)
・
目標株価も
・
この会社明日以降は7連続S安暴落らしいよ。(ダヴィンチ・アドバイザーズ)
・
今日は寄り天ですよ。(エン・ジャパン)
・
出来高減少株価は暴落!!!!!!!(アセット・マネジャーズ)
・
明日から 100%下げです(ディー・エヌ・エー)
・
月曜の寄り付きはとんでもないことになっているであろう。(アップガレージ)
200 円代に突入または
それ以下になるかも。(日本航空)
買い煽り
良い噂系
・ 祝!!
一部上場決定(ダヴィンチ・アドバイザーズ)
・ そろそろ決算を見込んで浮上してくるでしょう。(原弘産)
・ エイズ IR きたぞー(タカラバイオ)
・ 好材料出るそうです!(モジュレ)
・ Amazon に納入っていう噂?(ジャストシステム)
・ 期末配当 800 円(SBIホールディングス)
上昇の株価予想系
・ 目標株価 500 万 0 金利解除で上昇する株 日本エンタ∼ 買っとけ w(日本エンタープラ
イズ)
・ 軽く倍の倍になります。(富士バイオメディックス)
・ 暴騰は間違いじゃないよ。(新日本科学)
・ 明日以降値上がりしてしまいます。(レックス・ホールディングス)
どちらでもない
・ インサイダーがたくさん (マーベラスエンターテイメント)
・ TBSが楽天と本格的に合併を前向きに考えているとそうだ!(楽天)
・ 当社は株式会社まんだらけと合併します。(ユージン)
22