高大接続改革 - Kei-Net

特集
高大接続改革
今年3月 31 日に高大接続改革の実現に向けた具体的な
かについての関心が高まるだろう。
方策を検討するために設置されていた「高大接続システム
そこで、今回の特集では、Part1 として高大接続システ
改革会議」の「最終報告」が公表された。平成 25 年の教
ム改革会議「最終報告」のポイントをまとめるとともに、
育再生実行会議第四次提言「高等学校教育と大学教育との
高校教員への「最終報告」に関するアンケート結果をまと
接続・大学入学者選抜の在り方について」から、議論が本
めた。Part 2では、
各大学への「高大接続改革アンケート」
格化した高大接続改革だが、
「最終報告」の公表により一
の調査結果を分析する。Part3 では、大学入試研究を専門
定の方向性が示された<図>。
としている佐賀大学の西郡大准教授へのインタビューによ
今後、2つの共通テストの詳細とともに、
「大学入学希
り、今後の個別選抜の方向性について考える。また、既に
望者学力評価テスト」を各大学が利用するのか、各大学の
実施されている、各大学の多面的・総合的評価に関する取
個別試験が多面的・総合的評価に基づく選抜に変化するの
り組みを紹介する。
CONTENTS
Part 3 ▶▶
Part 1 ▶▶
高大接続システム改革会議「最終報告」のポイント ............... p3 概説 各大学の個別選抜は変わるのか?
コラム1●高校教員アンケートより ............................................... p6
佐賀大学 西郡大 准教授 ................................................... p13
Part 2 ▶▶
各大学の取り組み
2つの共通テストは利用されるのか、個別選抜は変わるのか?
大学への
「高大接続改革に関するアンケート」
結果より............ p7
コラム2●私立大学の立場から
学校法人立命館 本郷真紹 理事補佐 ................... p12
京都大学教育学部特色入試 ................................................... p16
福井大学高大連携探究プロジェクト .................................. p20
徳島大学生物資源産業学部 ................................................... p23
佐賀大学芸術地域デザイン学部 .......................................... p26
<図>高大接続改革の全体イメージ
ー「高等学校教育」「大学教育」「大学入学者選抜」の一体的改革による「学力の3要素」の伸長
(高大接続システム改革会議「最終報告」より)
本特集では高等学校基礎学力テスト(仮称)、大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の「仮称」を省略している。
2 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
特集
高大接続改革
Part 1 〉
〉高大接続システム改革会議「最終報告」のポイント
高大接続改革の実現に向けた具体的な方策を検討するために設置されていた「高大接続システム改革会議」の「最
終報告」が今年3月 31 日に公表された。4・5月号の「高大接続改革を追う」では、公表前の 3 月 11 日(第 13 回)
までの内容をもとにレポートしたが、本特集にあたってもう一度、「最終報告」の内容をまとめておく。
高等学校で学力の3要素を育成
大学入学者選抜で多面的・総合的に評価
本(希望する個人受検も可能に)
【問題提供等】
・高校の定期考査、都道府県教育委員会等が実施している
大学教育でさらに伸長
実力テスト、新規問題の作成等を通じてアイテムバンク
今回の高大接続改革は、大学入学者選抜の改革だけで
に問題を蓄積。問題群の中から複数レベルの問題セット
なく、高校教育、大学教育の改革も行う一体的改革であ
を構築し、学校が問題セットを選んで受検
る。それぞれの改革のポイントを示しているのが2ペー
(注1)
ジの図である。
「学力の3要素」
【対象教科・科目】
を高等学校までの
・平成 31 〜 34 年度(試行実施期)
:国語、数学、英語(「国
教育で育成し、大学入学者選抜では、大学入試センター
語総合」
「数学 I」
「コミュニケーション英語 I」を範囲、
試験(以下、センター試験)を「大学入学希望者学力評
義務教育段階の内容も含む。英語は4技能の測定を前提)
価テスト」に変える。センター試験より、思考力・判断
・平成 35 年度以降:新学習指導要領における必履修科目
力・表現力を一層重視し、マークシート式問題を改善す
を踏まえた構成。地理歴史や公民、理科等を追加導入
るだけでなく、記述式問題も段階的に導入する。個別選
【問題の内容】
抜では、これまで知識・技能を中心だった内容を、「学
・学力の3要素のうち基礎的な「知識・技能」を問う問題
力の3要素」を多面的・総合的に評価するものにし、入
学者に対して「学力の3要素」をさらに伸ばしていくた
を中心
【出題・解答・成績提供方式】
めに大学教育の改革も行うという図式だ。
・選択式、記述式(導入当初は短文記述式を一部試行実施)
・CBT の導入。学校内に配備されているコンピュータを活
高等学校基礎学力テストは
用するインハウス方式の導入をベースに検討も、紙によ
診断型テスト
高等学校基礎学力テストは、文部科学省高等学校教育
る実施も念頭に検討
【実施回数・時期・場所】
部会、教育再生実行会議などでも議論されていたが、結
・学校・設置者で、学年・時期、教科等を適切に判断。学
局、大学入学者選抜を念頭においた共通テストではなく、
当面は、
高等学校における基礎的な学習の定着度を把握・
校単位の受検の場合は原則当該学校で実施
【受検料】
提示し、学校の教育改善、国や都道府県の教育施策の改
善等に活用する仕組みとなった。
・1回あたり数千円程度の低廉な価格設定を検討
【大学入学者選抜等への結果活用】
・ 平成 31 〜 34 年度の「試行実施期」には大学入学者選抜・
◆高等学校基礎学力テストの制度設計のポイント
就職等には用いない。どの程度定着するのか、活用の状
【目的】
・高校段階の基礎学力の定着度合いを把握・提示
況を踏まえながら、平成 35 年度以降について検討
【名称】
・学校における指導改善、国・都道府県における教育施策
の改善への活用
【対象者】
・学校または設置者の判断により、学校単位での受検を基
・
「診断」
「検査」
「検定」等をベースに適切な名称を新テ
ストの実施方針(平成 29 年度初頭)までに確定
(2016 年5~6月河合塾 第2回高大接続改革シンポジウム文部
科学省基調講演資料などを参考にガイドライン編集部で作成)
(注1)①知識・技能、②思考力・判断力・表現力等、③主体性・多様性・協働性
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 3
<図表1>高大接続システム改革のスケジュール
29 年度
32 年度
33 年度
35 年度
※ 試行実施期においては、本来の目的である学習改善等に用いながら仕
組みの定着を図ることとし、そこで得られた実証的データや関係者の
意見を踏まえながら検証
※ 検証を踏まえ、
「実施大綱」を見直し
﹁平成 年度大学入学者選抜
実施要項﹂発出︵ 年5月︶
新学習指導要領の
下での実施
37
36
各大学で選抜実施
各大学の入学者選抜
方法等の予告・公表
各大学で選抜実施
32
新学習指導要領に対応した
個別選抜の実施に関する通知
﹁平成 年度大学入学者選抜
実施要項﹂発出︵ 年5月︶
各大学の入学者選抜
方法等の予告・公表
大学入学者選抜実施要項の見直しに
係る予告通知︵ 年度初頭目途︶
大学入学者選抜実施要項の
見直しについて、
高校・大学関係者による協議
﹁
の在
※AO入 試 ﹂﹁ 推 薦 入 試 ﹂﹁一般 入 試 ﹂
り方の見直し、
調査書の見直しなど
個別大学における
入学者選抜改革
33
新学習指導要領に
対応したテストの実施
新学習指導要領に対応した
﹁実施大綱﹂
の策定・公表
新学習指導要領に対応した
﹁実施大綱﹂
の予告
﹁大学入学希望者学力評価
テスト
︵仮称︶
﹂
の実施
﹁実施大綱﹂
の策定・公表
︵ 年度初頭目途︶
31
現行学習指導要領の下での実施
29
36 年度
「高等学校基礎学力テスト
(仮称)」の試行実施
新テストに係る実証的・専門的検討と準備・実施
30
34 年度
﹁高等学校基礎学力
テスト
︵仮称︶
﹂
の実施
30
プレテストの実施
︵ 年度目途︶
﹁実施方針﹂
の策定・公表
︵ 年度初頭︶
﹁実施方針﹂
の策定に向けた検討
対
※象教科・科目の出題内容や範囲、
記述式及び英語の実施方法と実施
時 期 、プレテストの実 施 内 容 、正 式
実施までのスケジュールなど
﹁大学入学希望者学力評価
テスト
︵仮称︶﹂
の導入
29
31 年度
﹁実施大綱﹂
の策定・公表
︵ 年度初頭︶
29
30 年度
﹁実施大綱﹂
の検討
︵新テストの具体的内容︶
29
プレテストの実施
︵ 年度目途︶
﹁実施方針﹂
の策定・公表
︵ 年度初頭︶
出
プレテストの実
※題内容や範囲、
施内容、正式実施までのスケジュ
ールなど
﹁高等学校基礎
学力テスト
︵仮称︶﹂
の導入
﹁実施方針﹂
の策定に
向けた検討
28 年度
(高大接続システム改革会議「最終報告」より)
共通テストと個別選抜の両方を改革
共通テストでは記述式問題も出題
大学入学者選抜改革については、センター試験の後継
となる大学入学希望者学力評価テストと、個別大学の入
学者選抜改革が両輪である。
・平成 36 年度以降(次期学習指導要領下)
次期学習指導要領の趣旨を十分に踏まえ、特に思考力・
判断力・表現力を構成する諸能力をより適切に評価
次期学習指導要領での導入が検討されている「数理探究
(仮称)
」
、教科「情報」についても出題
【マークシート式問題】
・より思考力・判断力・表現力を重視した作問へ改善
◆大学入学希望者学力評価テストの制度設計のポイント
【目的・対象者】
・ 大学入学希望者。知識・技能を十分に有しているかに加
え、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価
【対象教科・科目】
・平成 32 〜 35 年度(現行学習指導要領下)
試験の出題科目数はできるだけ簡素化
次期学習指導要領改訂の議論の方向性を勘案するとと
もに、大学教育を受けるために必要な諸能力を適切に
評価
4 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
・評価結果は、現在よりも多くの情報(各科目の領域ごと、
問ごとの解答状況など)を各大学へ提供
【記述式問題】
・今後どのような分野においても主体性を持って活動する
ために重要となる、複数の情報を統合し構造化して新し
い考えをまとめる思考・判断の能力や、その過程を表現
する能力の評価のため、記述式問題を導入
・共通テストに記述式を導入することにより、高校教育を
生徒の能動的な学習をより重視したものに改善
・国立大学の二次試験のような解答の自由度の高い記述式
特集
ではなく、設問で一定の条件を設定し、
高大接続改革
<図表2>高大接続改革の検討・推進体制
それを踏まえて結論や結論に至るプロセ
ス等を解答させる「条件付記述式」を中
心に作問。当面は、国語、数学
※平成 32 ~ 35 年度は短文記述式、平成 36
年度以降はより文字数の多い問題を導入
・評価結果は段階別表示
・実施時期は、マークシート式問題と同日
に実施する案、マークシート式問題とは
別の日に実施する案のそれぞれについて、
十分に検討
【英語の多技能を評価する問題】
・4技能の評価を推進。「話すこと」につい
ては、環境整備や採点等の観点から、平
成 32 年度からの実施可能性について十分
に検討
【複数回実施】
・日程上の問題、CBT の導入や等化等によ
る資格試験的な取扱いの可能性などを中
心として、引き続き検討
(2016 年5~6月河合塾 第2回高大接続改革シ
ンポジウム文部科学省基調講演資料などを参考に
ガイドライン編集部で作成)
なお、対象教科・科目において「数理探
究(仮称)
」
、教科「情報」についても出題
*役職等は発表当時(4月 28 日)
(文部科学省資料)
と言及されているのは、平成 26 年 12 月
の中央教育審議会「高大接続改革答申」で記載されてい
学者受入れ方針において入学者選抜に求める能力と評価
た、
「合教科・科目型」
「総合型」に相当する科目だから
方法の関係を明確化し、それに基づいて選抜を実施する
である。また、記述式についてはマークシート式と同じ
ことが求められる。最短で平成 30 年度入試から3つの
ウエイトではなく、マークシート方式より少ないウエイ
ポリシーの策定義務化による大学入学者選抜が実施され
トで出題されると予想される。
る予定であるが、Part2「高大接続改革アンケート」の結
果を見ると既に各大学での見直しは始まっているようだ。
平成 29 年度初頭には
プレテストの実施内容など詳細が公表
最後に、「最終報告」後の検討体制として4月 28 日
に「高大接続改革の検討・推進体制」が公表された<図
2つの共通テストの今後の検討のスケジュールは<図
表2>。既に各グループでの検討は始まっているが、高
表1>の通りである。平成 29 年度初頭には「実施方針」
大接続システム改革会議のように議論は公開されていな
として、対象教科・科目の出題内容や範囲、プレテスト
い。高大接続改革は、高校教育、大学教育に大きな影響
の実施内容、正式実施までのスケジュールが公表される。
を及ぼす改革であり、高校・大学関係者だけでなく小学
個別選抜改革については、
今後、
学力の3要素を多面的・
校・中学校も含め、生徒・保護者も大きな関心を持って
総合的に評価する入学者選抜へ改善するために、各大学
いる。情報についてはある程度の段階で公表されること
(注2)
において、3つのポリシー
を策定するとともに、入
を期待したい。
(注2)卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)、教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)、入学者受入れの方針(アドミッショ
ン・ポリシー)
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 5
コ ラ ム
1
高校教員アンケートより
今年3月に公表された高大接続システム改革会議
の「最終報告」について、高校の先生方はどう考え
ているのか。ガイドライン編集部では、
「最終報告」
の内容と、個別試験で多面的・総合的な評価が推進
されていることについて、ガイドラインモニターの
(注)
先生方にアンケートを実施した
。
同期や現場の引き上げも同時に考えないと理念が独り歩きし
そうです。
個別選抜における多面的・総合的な評価
具体性・公平性、指導方法に戸惑いの声
また、個別大学における入学者選抜において、多面的・総合
的な評価が推進されることについても聞いた。多面的・総合的
な評価を行うこと自体は望ましいとしつつ、入試の公平性や、
「最終報告」の具体性や実現可能性
選抜内容、評価方法、評価基準について危惧する声が挙がっ
学校現場への影響を指摘
ている。
まず、高大接続システム改革会議「最終報告」を読んだか
について聞いたところ、
「読んだ」は 26%、
「一部読んだ」は
41% となり、合わせて 67% が読んだと回答している<図>。
さらに、最終報告を「読んだ」
「一部読んだ」と回答した先
生に、その内容について意見を聞いたところ、改革の具体性や
実現可能性などに言及する声が目立つ一方、内容が当初より現
実的になった点を評価する意見も挙がっている。
【具体性・実現可能性】
❖現段階では個別選抜の大学側の具体的な例が出ておらず、
動きようがない。現行の個別選抜をどうするかもわからない。
具体的なイメージがわかない。
❖本当に大学側が個別選抜で多面的・総合的な評価を推進し
ていくのか。実行部分が見えてこない。中高の現場では、概
念よりも具体的な実施策とその対応策が知りたいのである。
❖制度設計と工程明示が終わった感があるが、具体性に乏しく
評価ができない。つまりは何をしていくのか、そして現場の
われわれはどう用意していくのか不明と言わざるを得ない内
容だったと思います。
【公平性】
❖個別選抜で多面的・総合的な評価が推進されること自体は、
大いに賛成である。だが、その評価方法が、主観的ではなく、
客観的でかつ公平性があり、そして、誰が見ても、わかりや
❖
「高等学校基礎学力テスト(仮称)
」と「大学入学希望者学力
評価テスト(仮称)
」が実現性に欠けるという印象です。問
すくシンプルで納得のいく評価方法にできるかどうかは問題
だ。
題の例なども見ましたが、実際に「知識・技能」
「思考力・
❖客観的にどう判断するのかがやはり課題であると思います。
判断力・表現力」とそれらを評価する方法となるのか疑問で
誰が何を基準にするのかもポイントになってくるので、やは
す。
り受験生が公平感を感じる制度にしてほしい。どんな方法を
❖
「大学入学希望者学力評価テスト」の複数回実施が見送られ
そうで少し現実的になってきたと感じました。ただし、国語
や数学の記述や複数解答の設定など入試スタイルについて
は大きな変更になりそうなので、今後も注意していきたいと
思いました。
とっても結局は「選抜試験」である以上、わかりやすい形が
好ましいと思います。
【高校での指導】
❖大学としては多様な人材を獲得したいと考えているようだが、
高校の現状の教育環境ではそのような人材を育てることは厳
❖私たちのスキルや意識は、今回の改革のペースには遠く及ば
ないくらい後れを取っていると思います。現場とのペースの
しいと思います。
❖時代の要請として避けられないことだと思いますが、こうい
った面の学力をつけさせる方法論が確立されていないので、
<図>高大接続システム改革会議「最終報告」内容を
読んだか
知らなかった
6%
不安は募ります。
【その他】
❖方向性としては正しいと思う。それに合わせた高校教育の改
読んだ
26%
革は、まだまだ不十分だと思われるが。
❖個性は千差万別であり、確かに評価されるべきではあるが、
やはり基本は学力が大切だから、学力による選抜を中心にす
るべきだと思う。
読んでいない
26%
❖生徒の主体的な学びの成果を問うことで、生徒たちの学ぶこ
一部読んだ
41%
6 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
とへの責任がより大きくなる。生徒たちに責任を持たせるの
は正しいと思うが、主体的な学びができるさまざまな機会が
与えられる環境作りが必要であると思う。
(注)2016 年 4 〜5月に実施、回答数 95 件。
特集
高大接続改革
Part 2 〉
〉大学への「高大接続改革に関するアンケート」結果より
河合塾では、高大接続システム改革会議の「最終報告」が公表された後、各大学に対して「高大接続改革に関す
るアンケート調査」を実施した。まだ明らかになっていない部分も多いが、現状でのお考え・方向性として調査を
実施した。各大学は2つの新しいテストについてどのように考えているのか、個別選抜は変わるのか、アンケート
の結果を見てみよう。
今回の高大接続改革については、入学定員の多い私立
大学入学希望者学力評価テスト
大の考えが注目される。そこで、今回の分析では設置者
約8割の大学で「利用したい」
別の分析に加え、特に私立大については入学定員別に分
「自大学で大学入学希望者学力評価テストを利用した
析を行った。
いか」を聞いたところ、大学全体では 82%の大学が利用
その結果、この設問では、入学定員が1学年 300 人
したいと回答した<図表1>。利用しない意向としては、
未満の大学で「利用したい」が 69%と最も低く、
「利用
国立大で「利用したいとは思わない」が1校、
公立大は「利
しない可能性が高い」は 19%(18 校)、「利用したいと
用しない可能性が高い」
「利用したいとは思わない」がそ
は思わない」2%(2校)と、利用しない意向が最も高
れぞれ1校ずつ、私立大では「利用しない可能性が高い」
くなった<図表2>。
28 校、
「利用したいとは思わない」5 校である。
大学入学希望者学力評価テストを「利用したい」と回
答した 334 校について、マークシート式の成績と記述
高大接続改革に関するアンケートの実施概要
1. 実施時期:2016 年4月 15 日〜6月 13 日
2. 方法:郵送で入試担当副学長、アドミッションセンター
長、入試担当部門長に回答を依頼。返送方法は、郵送・
fax・メールいずれかによる。
発送数
82
86
578
746
全体
返送数
59
47
300
406
回答率
72%
55%
52%
54%
全体
国立大
(n=59)
公立大
・複数回実施について妥当な実施回数・実施時期
[ 高等学校基礎学力テスト ]
・大学入学者選抜への利用
[ 個別選抜 ]
・3つのポリシーの一体的な策定・公表
・自大学での多面的・総合的評価の実施について現状と今後
・学力の3要素について個別試験でどの程度重視するか
[ その他 ]
・英語外部試験の利用
83%
(n=47)
公立大
(n=47)
私立大
93%
5%
2% 2%13%
2%
2% 2%
13%
9% 2%
9%
83%
80%
(n=300)
私立大
(n=300)
0%
20%
80%
40%
60%
0%
20%
40%
60%
■利用したい ■利用しない可能性が高い 9%
80%
80%
9%
100%
100%
したい ■利用
しない可能性が高い ■利用したいと
は思わない ■未回答
■利用したいとは思わない ■未回答
[ 大学入学希望者学力評価テスト ]
か。
7% 2%
9%
5%
2%
82%
93%
(n=406)
国立大
(n=59)
5. 主な設問:
・自大学で利用したいと考えるか。記述式の利用についてはどう
2%
7% 2%
9%
82%
(n=406)
3. 発送数:746 大学(通信制のみ・大学院大学は除く)
4. 回答数:
設置者
国立大学
公立大学
私立大学
全体
<図表1>自大学での大学入学希望者学力評価テストの
利用について
<図表2>大学入学希望者学力評価テストの利用
(私立大、入学定員別)
全体
全体
(n=300)
3,000人以上
80%
78%
(n=18)
3,000人以上
(n=18)
1,000∼2,999人
9% 9%
6% 17%
78%
89%
(n=66)
1,000∼2,999人
(n=66)
300∼999人
6% 17%
3% 8%
2%
3%
8%
7% 2%
8%
2%8%
7%
19% 2%
10%
89%
84%
(n=119)
300∼999人
(n=119)
300人未満
84%
69%
(n=97)
300人未満
(n=97)
0%
・高大接続システム改革会議「最終報告」の評価
2%
9% 2%
9%
80%
(n=300)
19%
80%
10%
100%
0%
20%
40%
60%
80%
■利用したい ■利用しない可能性が高い 100%
20%
69%
40%
60%
したい ■利用
しない可能性が高い ■利用したいと
は思わない ■未回答
・高大接続改革、新テストに対するご意見
■利用したいとは思わない ■未回答
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 7
全体
1%
3%
8%
2%
7% 2%
8%
7%
2% 8%
(n=119)
300人未満
19% 2%
10%
69%
(n=97)
300人未満
19%
10%
69%
(n=97)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
■利用したい ■利用しない可能性が高い ■利用したい ■利用しない可能性が高い ■利用したいとは思わない ■未回答
■利用したいとは思わない ■未回答
(n=66)
300∼999人
(n=119)
300∼999人
89%
84%
84%
全体
<図表3>大学入学希望者学力評価テスト―記述式の成
績利用
1%
全体
(n=334)
全体
(n=334)
国立大
(n=55)
国立大
(n=55)
公立大
(n=39)
公立大
(n=39)
私立大
87%
87%
93%
93%
10%1%1%
10% 1%
5% 2%
5% 2%
95%
95%
3% 3%
3% 3%
2%
12% 2%1%
1%
12%
80%
100%
80%
100%
85%
85%
0%
20%
40%
60%
0%
20%
40%
60%
■利用したい ■利用しない可能性が高い ■利用したい ■利用しない可能性が高い ■利用したいとは思わない ■未回答
■利用したいとは思わない ■未回答
(n=240)
私立大
(n=240)
全体
3,000人以上
(n=14)
3,000人以上
(n=14)
1,000∼2,999人
(n=59)
1,000∼2,999人
(n=59)
300∼999人
(n=100)
300∼999人
(n=100)
300人未満
(n=67)
300人未満
85%
85%
4% 11%
全体
<図表5>大学入学希望者学力評価テストの実施回数
35%
4% 2%
11%
50%
国立大
(n=406)
(n=59)
85%
国立大
全体
公立大
(n=59)
(n=406)
(n=47)
公立大
国立大
私立大
(n=47)
(n=59)
(n=300)
私立大
公立大0%
(n=300)
(n=47)
50%
55%
85%
55%
43%
85%
43%
20%55%
40%
7% 7%
2%
2% 7%
7%
35%
4%
11%
30%
13%
2%
2%
30%
7%
7%13%
41%
5% 11%
2%
11%
41%
5% 13%
60% 30% 80%
100%
20%
40%
60%
80%
100%
私立大0%■1回 ■2回 ■3回 ■4回以上 ■未回答
41%
5% 11%
43%
(n=300)
■1回 ■2回 ■3回 ■4回以上 ■未回答
0%
20%
40%
60%
80%
100%
■1回 ■2回 ■3回 ■4回以上 ■未回答
(校)
<図表6>複数回実施の場合、妥当な実施時期
<図表4>大学入学希望者学力評価テスト―記述式の成
績利用(私立大、入学定員別)
(n=240)
全体
(n=240)
35%
50%
(n=406)
2%
12%2%1%
12% 1%
100%
100%
81%
81%
10% 3% 5%
10% 3% 5%
84%
84%
15% 1%
15% 1%
87%
10% 3%
87%
10% 3%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
■利用したい ■利用しない可能性が高い ■利用したい ■利用しない可能性が高い ■利用したいとは思わない ■未回答
■利用したいとは思わない ■未回答
300
(校)
300
250
215271
■記述式
250
(校)
200
■マークシート式
215
300
200
■マークシート式
150
271
129
97
■記述式
250
150
100
129
215
69 56
97
200
■マークシート式
46 42 40 40
100
50 23
27 22
69 56
19 26 24
54
150
46
129
40
40
42
50
0 23 19 26 24
22
97 1月 27
7月 8月 9月 10月 11月 12月
2月 3月
54
100
69 56
0 以前
8月 46
9月
10月
12月 1月 2月 3月
40 40 11月
42
50 7月
23 19 26 24
27 22
以前
54
0
7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
以前
<図表7>高等学校基礎学力テストは大学入学者選抜に
利用されるべきか
(n=67)
式の成績を分けて利用することが可能になった場合、記
述式の成績を利用したいか聞いたところ 87%(292 校)
の大学で利用したいと回答した。設置者別に見ると、国
全体
(n=406)
全体
国立大
(n=406)
(n=59)
国立大
全体
前向きであることがわかった。
大学入学希望者学力評価テストの実施回数は
国立大は1回、私立大は1回と2回が半々
大学入学希望者学力評価テストの実施回数は設置者に
40%
9%
51%
37%
54%
40%
9%
8%
37%51%
49%
54% 40%
36%
8%
9%
15%
37%49%
54%
36%
54%
38%
15%
8%
8%
(n=300)
0%
(n=47)
54%
49%
20%
(n=300)
私立大
公立大
38%
60% 36% 80%
8%
15%
100%
20%
40%
60%
80%
私立大 0%■大学入学者選抜にも活用されるべきである
38%
54%
100%
8%
■大学入学者選抜の利用にはふさわしくない
■大学入学者選抜にも活用されるべきである
0%
20%
40%
60%
80%
■未回答
■大学入学者選抜の利用にはふさわしくない
100%
40%
(n=300)
■大学入学者選抜にも活用されるべきである
■未回答
<図表3>。また、私立大を規模別に見ると<図表4>、
14 校が「利用したい」と回答し、記述式の成績の利用に
51%
公立大
国立大
私立大
(n=47)
(n=59)
公立大
(n=59)
(n=406)
(n=47)
公立大では9割を超えるが、私立大では 85%とやや低い
入学定員 3,000 人以上の大学(14 校)中、全校となる
271
■記述式
■大学入学者選抜の利用にはふさわしくない
は大学としてもあまり考えていないようだ。
■未回答
高等学校基礎学力テス
ト
全体
57%
25%
8% 11%
全体
57%
25%
8% 11%
大学入学者選抜への利用は約6割が
「利用したい」
国立大
(n=406)
39%
10%
20%
31%
(n=406)
(n=59)
国立大
39% 57%
10%
31%
全体
25% 20%8% 11%
公立大
(n=59)
「最終報告」では、高等学校基礎学力テストは平成
57%
26%
4% 13% 31
(n=406)
(n=47)
公立大
26%20%4% 13%
国立大
39% 57%
10%
31%
~
34 年度(
「試行実施期」
)の大学入学者選抜の利用が
私立大
(n=47)
24%
6% 10%
60%
(n=59)
(n=300)
私立大
24%
6% 10%
60%
公立大
見送られた。しかし、昨年の朝日新聞
河合塾共同調査
20% 57% 40%
60% ×26%
80% 4% 13%
100%
0%
(n=300)
(n=47)
よって回答が分かれた<図表5>。1回と答えたのは国
20%
40%
60%
80%
100%
「ひらく
日本の大学」では推薦・AO入試における学力
私立大0%■利用したい ■利用しない可能性が高い
24%
6% 10%
60%
立大 85%、公立大 55%、私立大 43%である。私立大
■利用したいとは思わない ■未回答
■利用したい ■利用しない可能性が高い
保証として、テストの利用を考える大学もあった。そこ
0%
20%
40%
60%
80%
100%
(n=300)
■利用したいとは思わない ■未回答
は2回という回答が1回とほぼ同じ 41%であった。
で「大学入学者選抜への活用」について、
「活用される
実施時期は大学入試センター試験と同じ1月が最も多
■利用したいとは思わない ■未回答
べきか」
「選抜の利用にはふさわしくないか」を聞いた
い<図表6>。記述式についてはマークシート方式と別
<図表7>。全体では利用すべきかどうかについて意見
日程で行う案も「最終報告」で提案されているが、1月
が分かれている。国立大に比べ公立大・私立大で「活用
に次いで 12 月が多く、7月・8月などの早期の前倒し
されるべきである」という回答が高く、約半数は「活用
8 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
■利用したい ■利用しない可能性が高い
37%
(n=59)
公立大
49%
(n=47)
私立大
36%
0%
20%
40%
60%
0%
8%
80%
20%
40%
60%
80%
100%
■既に多面的・総合的な評価を充分実施できている
特集
高大接続改革
■既に多面的・総合的な評価を実施しているが改善すべき点もある
■多面的・総合的な評価を実施できているとは言い難い状況である
■未回答
15%
38%
54%
(n=300)
8%
54%
100%
■大学入学者選抜にも活用されるべきである
■大学入学者選抜の利用にはふさわしくない
■未回答
<図表8>高等学校基礎学力テストを自大学で
利用したいか
全体
57%
(n=406)
国立大
25%
39%
(n=59)
公立大
私立大
0%
20%
40%
10%
20%
60%
(n=300)
8% 11%
31%
57%
(n=47)
<図表 10 >新しい選抜の導入や選抜方法の変更
26%
4% 13%
24%
6% 10%
60%
80%
全体 10% 7% 7%
(n=406)
国立大
(n=59)
私立大
(n=300)
公立大
(n=47)
16% 3%
14%
81%
(n=59)
74%
11%
私立大 7%
9% 6%
18% 3%
73%
(n=300)
0%
20%
40%
54%
77%
20%
2%
5%
4%6%
2%
6%
70%
40%
60%
80%
100%
■平成29年度入試から予定 ■平成30年度入試から予定
■それ以降の年度に予定 ■検討中
(今後検討する予定を含む)
■変更の予定は当面ない ■未回答
個別選抜の改革もポイントとなっている。個別大学の入
74%
国立大 5%
20%
11% 6% 4%
0%
■利用したいとは思わない ■未回答
(n=406)
12%
(n=47)
■利用したい ■利用しない可能性が高い
全体 7%
14%
公立大 6% 6%
100%
<図表9>多面的・総合的評価の実施
69%
60%
80%
100%
■既に多面的・総合的な評価を充分実施できている
■既に多面的・総合的な評価を実施しているが改善すべき点もある
■多面的・総合的な評価を実施できているとは言い難い状況である
■未回答
学者選抜の改革については、平成 28 年度中に3つのポ
リシー(注)の策定、改正、確認等を行う必要がある。
3つの方針の策定・公表についてはすでに公表してい
全体
る大学が
51%となり、今後公表する大学としては、
「す
19%
8% 10%
41%
18% 4%
(n=406)
でに検討を開始」28%、
「平成 28 年度中に検討を開始
国立大
22%
10% 15%
37%
10% 5%
(n=59)
予定」15%を合わせて4割程度となった。設置者別に
公立大
(n=47)
49%
13% 6%
23%
9%
見ると、国立大が「既に公表済み」の割合が最も低い(国
私立大
20%
9% 10%
(n=300)
立大 34%、公立大
0%
20%
19% 3%
40%
64%、私立大 53%)。国立大では今
40%
60%
80%
100%
後検討する予定で、「既に検討を開始」46%、「平成 28
■導入済みである ■次年度以降導入が決まっている
年度中に検討を開始予定」19%となっている。
■導入する方向で検討中 ■検討中であるが方向性が定まっていない
されるべきである」と回答している。
■利用する予定はない ■未回答
今後、個別選抜で多面的・総合的な評価を実施するこ
では、大学入学者選抜で利用できるようになった場合
とが求められている。そこで、各大学は多面的・総合的
に、自大学で利用したいと考えるかを聞いたところ、全
評価についてどのように考えているのかを聞いた<図表
2%
体では利用についての肯定的な意見が多く、57%が利
全体 10% 7% 7%
69%
5%
9>。「既に充分できている」7%、「既に実施している
(n=406)
用したいと回答した<図表8>。ただ、国立大では<図
国立大
(n=59)
14%
12%
20%
54%
が改善すべき点もある」74%と、改善すべき点はある
表7>と同じ傾向で、
「利用したい」は4割、
「利用しな
ものの、多面的・総合的評価については既に実施してい
(n=47)
い可能性が高い」
「利用したいとは思わない」が合わせ
るという認識を大学では持っているようだ。
公立大 6% 6%
77%
4%6%
2%
私立大 11% 6% 4%
6%
70%
て5割となり、現状では利用しない国立大が多いようだ。
(n=300)
0%
20%
40%
60%
80%
私立大については入学定員別に見ると、3,000
さらに多面的・総合的評価を行うため、新しい選抜の
100%
人以上の
導入や現在の選抜方法の変更を予定しているかを聞いた
■平成29年度入試か
ら予定 ■平成30年度入試か
ら予定
大学(18
校)では、
「利用したい」8校、
「利用しない
■それ以降の年度に予定 ■検討中
(今後検討する予定を含む)
可能性が高い」6校(未回答4校)となった。
「利用し
■変更の予定は当面ない ■未回答
ところ、平成 29 年度あるいは平成 30 年度から予定して
たい」と回答したのは 1,000 ~ 2,999 人は 67%、300
設置者別に見ると、国立大で具体的な検討が進んでいる
~ 999 人は 61%、300 人未満は 57%であった。3,000
ようだ。なお、自由記述欄を見ると、今年3月に「最終
人以上を除けば、入学定員が多い大学のほうが「利用し
報告」が公表されたが、新しい2つのテストの内容・方
たい」と回答する割合が高かった。
法について決まっていない部分も多いことから、具体的
な検討に入れないという事情もあるようだ。平成 29 年
個別選抜における多面的・総合的評価は
「既に実施しているが改善が必要」という認識
全体
(n=406)
19%
8% 10%
41%
いる大学は全体で 17%と2割に満たない<図表 10 >が、
18% 4%
度あるいは平成 30 年度入試から予定している大学につ
いてその一例を<図表 11 >としてまとめた。
2つの共通テストのほか、高大接続改革では各大学の
国立大
(n=59)
22%
10%
15%
37%
10% 5%
(注)
ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)
、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)
、アドミッション・ポリシー(入学者受
公立大
49%
13% 6%
23%
9%
(n=47)
入れの方針)
私立大
19% 3%
9% 10%
40%
20%
(n=300)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 9
<図表 11 >平成 29 年度・平成 30 年度入試から実施予定の内容(抜粋)
[ 平成 29 年度入試 ]
大学名
回答内容
弘前大学
全学的に AO 入試を導入する。
東北大学
AO 入試の拡大。グローバル人材のための入試(国際バカロレア入試、グローバル入試(英語コース入試))。
お茶の水女子
大学
現行の AO 入試の募集人員(10 名)を倍増(20 名)した上で、志望者の能力・意欲・適性などをじっくり・幅広く・
丁寧に測定し、合否判定を行う新型 AO 入試として導入する。入学時に知的ピークを迎える学生ではなく、入学後、
さらに卒業後に大学院または社会において「伸びしろ(ポテンシャル)」のある学生を選抜する。
横浜国立大学
新たな AO 入試の導入。
豊橋技術科学大学
英日バイリンガル授業を実施する等が特徴の、グローバル技術科学アーキテクト養成コース(GAC)を創設し、平
成 29 年度より第3年次、平成 30 年度より第1年次の受け入れを開始する。その入学者選抜に際し、新たに外部英
語試験を評価に導入するなどした。
名古屋大学
推薦入試で志願者が自己アピールのために任意で提出できる書類を導入。
名古屋工業大学
平成 29 年度工学部第一部創造工学教育課程推薦入試(大学入試センター試験を免除)において、第 2 次選考の筆記
試験で課している「英語」を取りやめ、出願資格に英語能力の評価基準を定め、その評価に外部試験のスコアを利用。
琉球大学
教育学部・工学部は改組し、多面的総合的に評価するために筆記以外の方法と筆記を合わせて導入する。
芝浦工業大学
英語資格、検定試験を利用した選抜を行う。
津田塾大学
秋に実施している特別入試等に英語外部試験を導入する。
東京経済大学
全学横断プログラムである「キャリアデザインプログラム」において、グループディスカッション(集団討論)の導
入を平成 29 年度入試から予定している。
東邦大学
大学入学希望者学力評価テストの導入を念頭におき、学力の3要素の知識・技能以外の部分をより積極的に評価する
選抜試験(高大接続型入試)を平成 29 年度入試から実施予定。本学が実施する講義・実習・フィールドワークなど
から構成される、高大接続プログラム(土曜日・夏休みに開講)を受講してもらい、いわば「大学インターンシップ」
を体験してもらう。プログラムの受講が出願条件の1つとなる。プログラムへの取り組み状況と出願後に実施する面
接試験を総合的に判断して入学の可否を判定する。募集定員は実施初年度であることも勘案し若干名としている。
早稲田大学
平成 29 年度入試から「公募制学校推薦入試(FACT 選抜)」を人間科学部で新設。文化構想学部・文学部で「一般入試(英
語4技能テスト利用型)」を新規導入。平成 30 年度入試から「新思考入試(地域連携型)」を新設し、5学部(文化
構想学部・文学部・商学部・人間科学部・スポーツ科学部)で導入。平成 30 年度国際教養学部の一般入試より、3
教科の得点に英語4技能試験の結果を加算する方式に移行(未提出による出願も可能)する予定。
鎌倉女子大学
AO 入試(高大接続重視型)を新設。学力の3要素を観点にルーブリック評価で合否判定を行う。
愛知工科大学
高校の学びと大学の学びの連携を意識した小論文を一般入試に入れる。推薦入試でもこれらを意識した内容面接と基
礎学力試験を入れる。
京都産業大学
平成 29 年度設置予定の現代社会学部において、「次世代型リーダー選抜入試」を実施予定。
大阪工業大学
普通科を対象とした特別推薦入試「普通科高校特別推薦入試」を新たに設ける。科目試験で知識などを、小論文で思
考力・表現力などを、面接で主体性などの資質を主に判定。
関西大学
英語外部試験の活用、AO 入試選抜方法の見直し等。
川崎医療福祉大学
ほぼすべての入試区分で基礎学力確認テストを導入。すべての入試区分に面接を導入。
広島工業大学
日本文理大学
グループ討議または作業の導入。
「AO 入試・地域創生人育成型」を新規導入し、「体験講義・グループワーク」「小論文」「面接」を通じて選考を行う。
[ 平成 30 年度入試 ]
大学名
回答内容
千葉大学
AO 入試の実施。
一橋大学
平成 30 年度入試から、多面的・総合的に評価する推薦入試を全学部で実施する(現状、商学部のみで実施)。
金沢大学
文系一括入試、理系一括入試を平成 30 年度入試から導入予定。
創価大学
区分としては AO 入試として、平成 30 年度から実施予定。この入試では選抜方法に本学の強みであるアクティブラー
ニング手法を取り入れ、かつ小論文、面接も実施し、一人の受験生を多角的重層的に評価し、本学の建学の精神に適っ
た受験生を獲得したい(詳細は今後)。また同年度に、現在実施している公募推薦入試の選抜方法を変更する。特に
その面接試験において、一人にかける時間を2倍以上にして、より人物評価を重視し、かつ高校までの取り組みの評
価ウエイトを一層高める予定。
( 上記はアンケートの回答内容です。出願の際には募集要項・願書等で必ず確認してください。
)
10 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
■平成29年度入試から予定 ■平成30年度入試から予定
■それ以降の年度に予定 ■検討中
(今後検討する予定を含む)
■変更の予定は当面ない ■未回答
<図表 12 >英語外部試験の導入
全体
19%
国立大
22%
公立大
13% 6%
私立大
20%
(n=406)
(n=59)
(n=47)
(n=300)
0%
8% 10%
10%
20%
40%
18% 4%
37%
49%
9% 10%
高大接続改革
◆実施時期、回数、記述式問題の内容、採点の方法、受験者
41%
15%
特集
10% 5%
23%
19% 3%
40%
60%
9%
80%
100%
■導入済みである ■次年度以降導入が決まっている
■導入する方向で検討中 ■検討中であるが方向性が定まっていない
■利用する予定はない ■未回答
への結果の提示方法について一刻も早く示してほしい。
(公
立大)
◆高校、大学、入試の一体的な改革であり、わかりやすい報
告書となっている。新テストは 56 万人の受験者があり、
改革は慎重に準備されるべきだが、入試だけで終始する高
校時代の在り方や教育風土はグローバル時代にあって、若
者育成に課題が多く、会議で議論された方向性に賛同する。
(公立大)
◆高校における基礎学力の底上げ、向上とアクティブ・ラー
ニングの全面的な展開との関係が見えにくいように思える。
英語の外部試験は2割の大学で導入済み
2割の大学で導入の方向
さらに大学との関係では、入学試験改革のみが大きくクロ
ーズアップされる結果となっており、我が国における高大
接続的教育(学習・学修)の在り方・方向性をもう少し具
英語は4技能を重視する観点から、大学入学者選抜で
体性をもって提示していただきたいと思う。
(私立大)
の英語外部試験の導入が拡大している。各大学の導入状
◆「知識・技能を着実に測る」ことが重要かつ、そのメソッ
況・予定について聞いたところ、19%の大学で導入済
ドの効率化を求めたい。その上で、他の2要素の「可能性」
みであり、18%の大学で導入する方向で検討されてい
は大学で独自に測り得る制度を望む。
(私立大)
る<図表 12 >。入学定員 3,000 人以上の私立大では、
◆改革の方向性としては理解できる部分が多いが、実現に向
回答のあった 18 校のうち 11 校で「導入済み」
、
「次年
けて、AI の活用や CBT の導入など技術的な課題やテスト
度以降の導入が決まっている」4校、
「導入する方向で検
実施に関する運用面での問題などで、解決すべき課題が多
討中」1校である。<図表 11 >にあるように関西大学を
い。
(私立大)
はじめ、いくつかの大学で英語外部試験が導入される予
◆理念は賛同できるものの、具体的な実施・施策や高校のカ
定だ。
リキュラム改革、テストの中身など課題が多いと感じる。
最後に高大接続改革、新テストに対する意見も記入し
また、私立大学の独自性を担保することも要望したいと思
てもらった。受験生・高校生、高校、大学への配慮を求
う。
(私立大)
める声とともに、早く詳細を決めてほしいという要望が
多かった。一部ご紹介しよう。
◆大学の自由度を認める部分と認めない部分、認めない部分
について何らかのペナルティー、順守する大学へのインセ
ンティブなど検討すべき。
(私立大)
◆高大接続改革は必要である。国立大は、個別試験で必要な
◆私学には独自の教育方針があるので、必ずしも国公立大学
教科の記述試験を実施している。大学入学希望者学力評価
と足並みを揃えられるとは限らないが、多様な学生を獲得
テストで無理に記述試験を導入する必要はないと思われる。
していくためにできることは意欲的にやりたい。
(私立大)
むしろ、記述試験導入のため、現在の大学入試センター試
◆新しい「大学入学希望者学力評価テスト」の教科型につい
験の問題より、問題の質が低下しないか危惧している。
(国
ては難関大学の選抜にも充分活用できるように難易度を高
立大)
くしていただきたいと願う。このことが実現すれば、本学
◆改革の主旨には賛同できるが、現状では実現可能な段階に
としては安心して多元的評価を重視した個別選抜に注力す
は至っていないと思われる。新たなテストの導入について
ることが可能になると考える。また、高大接続改革におい
は実施の可能性の十分な検討が望まれる。(国立大)
ては「高等学校基礎学力テスト」が肝であったはず。これ
◆受験生にとって、新たな格差が生じないようにすること、
を全国の大学の AO 入試や推薦入試に活用できるようにし
および新テストの実施について大学に新たな負担増が生じ
ないと一連の検討が単なるセンター試験の改革に終わって
ないようにすることが重要と考える。(公立大)
しまうのではないかと残念に思う。
(私立大)
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 11
コ ラ ム
2
私立大学の立場から
「高大接続改革アンケート」の結果を大学関係者
はどのように見るのか。特に私立大学でどのように
考えているのかが気になるところだ。そこで、今回、
学校法人立命館の本郷真紹 理事補佐(立命館大学
文学部教授)にお話をうかがった。
多様な方法で入学させた学生を
証するだけで充分だと思います。それよりも、特定の科目のみを
集中的に学習し、他の科目の基礎的な知識を持ち合わせず進学
する方が問題なのではないでしょうか。高校の間に大学での学び
に必要となる基礎的な知識や学力を身につけることと、入試の科
目として課すことを分けて考えればよいと思います。
――そうなると大学入学希望者学力評価テストに出ない科目は
勉強しなくなるのではありませんか。
そういう現状を変えていけばよいのです。例えば高等学校基礎
大学教育で伸ばしているかも問われる
学力テストについて、理科と社会の各科目は6割得点できたら大
――大学入学希望者学力評価テストについて、約8割の大学で
学の受験資格があるとする、などです。
利用したい、記述式はそのうち約9割の大学で利用したいという
大学入学後の学びを考えると、文系の生徒は数学を、理系の
結果になりました。この点についてはいかがですか。
生徒も国語をきちんと勉強し、その到達度を入試で検証する方が
本郷(以下、同じ)これは大体このような数値だろうと思います。
よいのではないでしょうか。学部の特性を考えた上で入試科目を
まだ大学入学希望者学力評価テストの詳細がわかりませんが、共
設定し、あとの科目は高等学校基礎学力テストで一定の点数をと
通の学力テストがあるのなら使ってみようと思うのではないでしょ
れば大学受験資格があるという仕組みにすればよいと思います。
うか。
――英語の外部資格試験は2割が導入済み、2割が今後導入と
――大学入学希望者学力評価テストの実施回数は、国立大学で
いう結果となりました。
は 85%が1回、私立大学では1回と2回が 4 割程度と国立と私
日本がグローバル化することは避けて通れません。大学での専
立で意見が分かれました。
攻にかかわらず、コミュニケーションツールとしての英語は求めら
国立大学は、1月に大学入試センター試験を実施し、その点数
れるため、大学入学者に求める英語の学力としては4技能が必要
を推薦入試や個別試験に利用するのが前提です。入試の期間が
です。大学関係者にとってはコミュニケーションツールとしての英
私立大に比べて短いことから、大学にとっては1回で済むのでそ
語の力を測ることができればよく、必ずしも共通テストで英語の
の方がやりやすいのでしょう。一方、私立大学は、国立大学に比
科目が必要だとは思っていないということだと思います。
べて推薦・AO入試などの特別入試を数多く実施し、それらを一
――多面的・総合的評価による選抜の課題はありますか。
般入試と同じ価値としてみなしている大学も多いです。入試の種
現在、私立大学全体の入学者の内訳は、一般選抜と特別選抜
類も多く、期間も長いことから、早めに複数回テストが実施され
が半々です。一方、国立大学では現在、推薦・AO入試などの特
るのであればその結果を使いたいということでしょう。国立大学
別入試による入学者は 15%程度で、今後、特別入試や国際バカ
と私立大学の入試スタイルの違いが反映されていると思います。
ロレア入試等を拡大し、入学定員の 30%を特別入試にするとい
――高等学校基礎学力テストは、全体では 57%の大学が、私
う目標を掲げています。私立大学にとっては国立大学との関係で、
立大では 60%の大学が「利用したい」と回答しています。
いつ入試を実施し、どの時点で合格者を出し、いつ入学者を確定
テストの内容やレベルが具体的に提示されていないので、コメ
させるのかは非常に問題です。もし、国立大学の入試が早まるの
ントするのは難しいのですが、特に特別入試において教科学力の
であれば、私立大学は受験者・入学者の確保のために、国立大
検証が充分ではなかった、そういう意味で利用価値があると考
学より前に入試を行うことを考えるでしょう。入試が早期化する
えたのではないでしょうか。ただ、当初、高等学校基礎学力テス
懸念がありますし、私立大学では特別入試による入学者数を予
トの生徒の成績を調査書に記載することも想定されていましたが、
想することも難しくなります。一方で、定員管理の厳格化も求めら
それは高等学校の成績差を顕在化させることになるので、現実的
れています。私立大学の経営のリスクが増えます。
には難しいでしょう。そうではなく、調査書と関連付けず、生徒
それとは別に、私が課題だと思うことがあります。それは、多
個人のテストの結果を選抜に使えばよいのではないでしょうか。
様な選抜を行い多様な学生を入学させても、大学での学びが一
――2つのテストの出題教科・科目についてはどのようにお考え
律であることです。多様な選抜を行ってエッジの立った学生を受け
ですか。
入れても、大学教育でそれを伸ばすことがなかなかできない。入
個人的には、なぜすべての教科・科目を大学入学希望者学力
学後の評価にしても、GPA で見ると一般選抜で入学した学生の
評価テストで実施する必要があるのかと思います。
方が成績がよいので、選抜時にどうしてもそちらの方に重きを置
私は日本史が専門ですが、大学入試センター試験の日本史で
いてしまう。学生をどのように評価するかも課題です。多様な学
70 点の学生と 90 点の学生は、大学に入って大きな差はありませ
生を受け入れて多種多様な在り方で育てることができる大学が、
ん。日本史をはじめ社会科の科目は、基礎的なテストで知識を検
これからは魅力ある大学として評価されることになると思います。
12 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
特集
高大接続改革
Part 3 〉
〉概説 各大学の個別選抜は変わるのか?
今年 3 月に公表された高大接続システム改革会議の「最終報告」では、「高等学校教育」「大学教育」「大学入学
者選抜」の一体的改革による「学力の3要素」の伸長が提言された。特に大学入学者選抜について「学力の3要素」
を多面的・総合的に評価することが求められており、加えて大学教育には3つの方針(卒業認定・学位授与の方針、
教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)に基づく質的転換が求められている。
これらを受けて、今後、大学入学者選抜がどのように変化していくのか、特に学力3要素と多面的・総合的評価、
共通テストと個別選抜との関係について、
「高大接続における大学入試」について研究している、佐賀大学アドミッ
ションセンター副センター長でインスティテューショナル・リサーチ(IR)室長を兼任する西郡大准教授にお話を
うかがった。
学力の3要素とアドミッションポリシーを
どのように対応させるかが問われている
学力の3要素を評価する方法と基準を明示することであ
る。また、それぞれの評価基準のウェイトも示す必要も
あるだろう。
「中央教育審議会によるいわゆる『高大接続答申』と
これまでの AP は、どちらかといえば、教育目標とし
高大接続システム改革会議の『最終報告』により、高大
てのめざす人材像を示しているものが多く、評価する対
接続の新しい枠組みが提示されました。今後は各大学が
象や基準を示すものとして十分であるとは言えなかった。
どのように具体的に取り組むかが課題になります」と西
そこで西郡准教授は、次のような方法を提案している。
郡准教授は語る。
各選抜方法では対象となるターゲットを明確にした上で、
現在、
提示されている枠組みは、
共通テストである「大
評価する対象(学力の3要素等)と評価する方法・形式
学入学希望者学力評価テスト」で、学力の3要素のうち、
(ペーパーテスト、面接等)でマトリックスを作り、そ
「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を評価し、
こに配点ウェイトを記載するという方法である。これに
各大学が実施する個別試験で「主体性・多様性・協働性」
よって AP と具体的な選抜方法とを対応させることが可
を評価することである<図表1>。しかし、学問分野等
能となり、選抜方法によっては、特定の項目の配点ウェ
によっては個別試験でも共通テストとは違った形式で
イトが 0 の場合もあり得る<図表2>。こうした表で
「知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」を問うこ
AP を表現することで、どの選抜方法がどの領域を評価
とも考えられる。そこで求められているのが、アドミッ
するかを明示することが可能となる。
ション・ポリシー(AP、入学者受入れの方針)の中で、
<図表1>「高等学校基礎学力テスト」と「大学入学希望者学力評価テスト」の難易度と活用方策イメージ
大学入学者選抜の
ための仕組み
高校教育の質の確保・
向上のための仕組み
*高等学校基礎学力テストは試行実施期(平成 31 ~ 34 年度)には
大学入学者選抜等には用いない。
(高大接続システム改革会議第6回配付資料に*と注記を追加)
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 13
<図表2>多様な入試における多面的・総合的評価に向けた
AP 設定の考え方
選抜方法
多面的・総合的評価の課題は
コストと効果のバランス
学力の3要素のうち「思考力・判断力・表現
力」は、総合問題や記述式の問題形式によって
ペーパーテストでも評価するノウハウはある
前期日程
対象
(ターゲット)
評価
評価
評価
評価
方法① 方法② 方法③ 方法④
AP ① AP ② AP ③ AP ④
評価
方法⑤
AP ⑤
50
30
10
10
80
10
10
0
0
○○の実績を持つ人
20
30
0
20
30
社会人入試 ○○の経験を持つ人
0
20
10
50
20
○○入試
0
10
20
10
60
後期日程
推薦入試
全ての人
○○の背景を持つ人
0
数値は各選抜方法における評価の割合(%)を示す(数値はダミー)
(西郡 大 准教授作成)
程度蓄積されているが、「主体性・多様性・協
働性」の評価方法については、テスト研究の分野での蓄
その場合には、調査書や活動報告書などの書類自体を評
積も十分ではなく、各大学が最も苦心するところだと西
価する方法、それらの書類を面接試験等の参考資料とし
郡准教授はその難しさを指摘する。
て評価するなどいくつかの方法が考えられます。国は、
各大学の個別選抜での「主体性・多様性・協働性」の
多面的・総合的評価を推進しようとしていますが、その
評価方法としては、面接試験がまず思い浮かぶのではな
評価には、さまざまな意味でのコストがかかります。大
いか。しかし、面接試験については、
「これまでの面接
きなコストをかけて期待した入学者を得られればよいの
試験研究により、課題があることがわかっています。テ
ですが、そうではない場合も考えられます。コストとの
ストには、
『信頼性』と『妥当性』が必要ですが、一般
兼ね合いを含めて入学者選抜制度の設計をする必要があ
的な自由面接試験では面接官によって評価の一致率が低
ります。また、本当に評価したい要素を測定できている
くなることが信頼性の面での課題とされています」(西
かの検証も不可欠であり、そのための追跡調査が必要で
郡准教授)
す。さらに、仮に新しい評価方法が開発されたとしても、
信頼性を担保するためには面接官のトレーニングを行
そのノウハウを発展的に継承し、一定の質を維持しなが
うことや面接試験での質問内容や評価の観点を構造化し
ら継続的に実施していくことも求められます」(西郡准
て、ルーブリックを作ることなどで対応が可能であるが、
教授)
それにはかなりの時間と労力を要する。また、妥当性は
さらに難しい課題でもある。妥当性とは、
「本当に望ま
しい学生を適切に選ぶことができているか」ということ
入学者選抜の改革をきっかけに
大学教育も改革を進めなければならない
だが、望ましい学生という概念について、学部内あるい
他の重要なポイントとして、西郡准教授が指摘するの
は学科内でコンセンサスを作り上げることも相当な時間
が、入学者選抜と大学教育の関係である。さまざまな課
と労力を必要とする。
題を乗り越えて、入学者選抜方法を変えたとしても、入
このほか、集団討論形式の試験であれば、日頃のゼミ
学後の大学教育が変わらなくては、多様な入学者を受け
ナール活動の応用で対応が可能であり、比較的導入しや
入れても、学生がその良さを大学教育で伸ばすことがで
すいとする考え方もあるが、実際にはゼミナールとは異
きないことも考えられる。それではコストをかけて入学
なるノウハウが必要となる。試験の場合、初めて会った
者選抜を行った効果を十分に活かせていないことになる。
生徒同士で討論が成立するようコーディネートする役割
「本来は、卒業認定、ディプロマ・ポリシー(DP、卒
が必要になる。コーディネーターを大学教員が行う場合、
業認定・学位授与の方針)があり、そのためのカリキュ
コーディネーターには、各発言者の時間配分にも気を配
ラム・ポリシー(CP、教育課程編成・実施の方針)があ
りながら進行させる等のスキルが求められ、力量に差が
り、それらに適性のある入学者を選ぶというのが望まし
あると合否にも影響が出る懸念が生じる。しかし、コー
い」
(西郡准教授)が、入学者選抜の在り方を契機にして、
ディネートの専門家を複数配置すれば、かなりのコスト
大学教育の改革を進めるということも考えられるだろう。
がかかることになる。
「受験生の能力や資質を多面的・総合的に評価する入
このようにすでに行われている評価方法はいくつかの
学者選抜によって入学する学生の割合が、一定の範囲を
課題があり、今後、新しい評価方法を開発することが必
超えるまで広がると、大学教育の方向性や手法において
要となる。
質的変容を促す影響力が出てくるかもしれません」
(西
「高校時代の活動実績を評価することも考えられます。
郡准教授)
14 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
特集
高大接続改革
<図表3> AO 型入試の類型
発掘志向
お見合い型
多様人材獲得型
入学後のミスマッチを抑制するために、
自大学と相性の良い学生を探し出そうと
するもの。
学習活動の活性化を目的に、他学生へ好
影響をもたらすような新たなターゲット
層を設定し、同ターゲットに合致した人
材を発掘しようとするもの。
マッチング志向
ターゲット設定志向
マッチング醸成型
教育プログラム一体型
入学後のミスマッチを抑制するために、
入学試験までの接触を通じてマッチング
意識を醸成することで、自大学と相性の
良い学生を育成するもの。
教育プログラム(あるいはカリキュラム
等)と入試を一体的に捉え、同プログラ
ムを遂行できる人材を獲得して育成して
いこうとするもの。
育成志向
(西郡 大 准教授作成)
しかし、西郡准教授によると、全ての大学が多面的・
校生を育てて入学までつなげる、言わば『育てる入試』
総合的な評価による入学者を拡大すればよいわけではな
です。多くの大学が連携して高校生を育て、高校生はさ
く、各大学には、それぞれの大学がもつ理念や教育目標、
まざまな活動を行った上で自分の適性に合う大学を選択
教育手法があり、それに応じて入試の在り方を判断する
するなど教育的にも意味があります」と西郡准教授は語る。
ことが求められている。
また、2つ目として、高校時代の主体的な活動実績を
高大が連携する「育てる入試」
高校時代の主体的活動に加点する方法も
評価して加点する方式も考えられる。この方式の導入が
進めば、高校生の主体的活動を促進する効果も見込まれ
る。加点する得点や活動は、各学部・学科などがそのア
多面的・総合的評価による入学者選抜の課題をいくつ
ドミッション・ポリシーの特色に応じて決めることから、
か示してきたが、西郡准教授はそれらを克服するための
佐賀大学ではこの方式を「特色加点」と称している。現
方法も提案している。
時点では、AO 入試などの一部入試での実施に留まるが、
1つ目は高大連携活動として取り組む方法である。そ
一般入試など受験者数の多い選抜方法でも導入が可能だ。
れも単発的な活動ではなく、高校3年間にわたる継続し
一般的に教科型の学力試験では、ボーダーライン付近に
た講義の受講や大学生とのグループワークなどに高校生
ほぼ点数差がない受験生が集まることが多い。従来であ
が取り組む育成志向の高大連携事業である。最後まで活
れば 1 点刻みで合否判定を行うところであるが、
「この
動に参加した高校生には修了証を授与し、自分が受験し
数点差に能力的な明確な順序性があるわけではありませ
たい大学の入試でアピールすることを推奨する。取り組
ん。そうであれば、ボーダーライン周辺の一定の受験者
みの質を維持するために、一定の基準を満たした者のみ
に対して入試得点以外の評価したい要素(高校時代の活
が修了者となるため、その修了証が受験生の実績を評価
動実績)に加点する方法をとれば、大学にとってより適
する手段にもなる。また、このような活動に多くの大学
性のある受験生を選抜できる可能性が高くなります。受
が連携して取り組めば、各大学が発行する修了証を相互
験生にとっても高校時代に頑張った活動や実績を活かせ
に評価する仕組みが成立するかもしれない。これによっ
るチャンスとなるでしょう」(西郡准教授)
て高大連携がさらに活性化し、多面的・総合的評価の推
また、前述の高大連携活動での修了証なども特色加点
進にも効果がある。教育プログラムと入学者選抜が一体
の評価対象として活用ができる。
となった方法と言えるだろう。
高大接続の今後について、西郡准教授は「高校教育が
(注)
を西郡准教授が類型化
変化しているのと同様、大学教育も変化しています。高
したもので、縦軸を「アプローチ」
、横軸を「目的」とし
校と大学は相互に情報を交換するなど関係の強化が必要
て4つのタイプに分類している。第4象限の「教育プロ
です。お互いの変化や目的が理解できれば、入学者選抜
グラム一体型」の一部として高大連携の取り組みは解釈
の在り方も高校と大学の双方が求める最適なかたちに変
される。
わって行くでしょう」と前向きだ。そのためには、大学
「高校教育から大学教育へ繋がる一連の流れの中で高
のアドミッション機能の一層の充実と強化が求められる。
<図表3>は、AO型入試
(注)従来の学力検査を中心とした一般入試とは異なる側面から、志願者の能力や資質等を多面的・総合的に評価しようとする入試
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 15
各大学の取り組み
教育学の研究成果を活かしたパフォーマンス評価を
重視した特色入試を実施し、1年次の大学教育も変化
京都大学 教育学部 矢野 智司 教授
西岡 加名恵 准教授
京都大学では、平成 28(2016)年度入試より全学部
で特色入試を導入した。特色入試は、従来から行ってき
た一般入試とは異なり、従来型の筆記試験だけでは測れ
矢野 智司 教授
西岡 加名恵 准教授
ない能力を評価する入試である。基本方針では、
「高等
学校での学修における行動と成果の測定」を行うとして
が決まり、各学部がそれぞれの理念に基づいて特色入試
おり、高校での幅広い学びとの接続を重視した高大接続
の制度を構築する中で、
教育学部は「学びの報告書」
「学
型の入学者選抜である。
びの設計書」の両方を課し、パフォーマンス評価を重視
選抜方法は個々の学部によって異なるが、法学部を除
する選抜を行うこととなった。
いて、
「学びの報告書」または「学びの設計書」を課し
西岡准教授によると、このパフォーマンス評価とは、
ていることは共通している。今回は、
「学びの報告書」
「学
知識やスキルを活用・応用・総合する力を見るために、
びの設計書」の両方を課し、パフォーマンス評価を重視
した特色入試を実施した教育学部の取り組みについて大
学院教育学研究科の矢野智司教授と西岡加名恵准教授に
話をうかがった。
パフォーマンス評価を重視した
教育学部の特色入試
<図表 1 >京都大学 教育学部 平成 29 年度特色入試 選抜日程等
出願期間
第 1 次選考
(提出書類にもとづいて選考)
平成 28 年 10 月 3 日~ 7 日
提出書類:調査書
学びの報告書
学びの設計書
教育学部では、全学で特色入試についての検討が始ま
る以前の平成 24(2012)年度から、入試改革について
第 1 次選考結果発表
平成 28 年 11 月 7 日
の研究会を立ち上げ、学部の全教員が参加し、多忙な時
間の合間を縫って新しい入試についての検討を重ねてき
た。
第 2 次選考
(課題と口頭試問にもとづいて
選考)
「教育に関する専門家集団として、諸外国の入試制度
やさまざまな評価方法などについて、専門的な見地から
検討しました」と矢野智司教授は当時を振り返る。また、
教育学研究科では教育実践コラボレーション・センター
平成 28 年 11 月 26 日~ 27 日
課題(100 点)
口頭試問(100 点)
合計 200 点
第 2 次選考結果発表
平成 28 年 12 月 15 日
大学入試センター試験
平成 29 年 1 月 14 日~ 15 日
最終選考
大学入試センター試験の
合計得点が 900 点満点中
80%以上の者が合格者
最終合格発表
平成 29 年 2 月 8 日
の E.FORUM という活動を通じて学校現場の教員に対
して研修を提供しているため、高校教育改革の状況につ
いても従来から認識していた。そのため、西岡加名恵准
教授は「高校現場が変わろうと努力している姿を見ると、
教育学部の新しい入試は、それに対する応援のメッセー
ジとなることが望ましい」との思いもあったと語る。
平成 25(2013)年に全学で特色入試を実施する方針
16 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
*平成 28 年6月6日に公表された「平成 29 年度特色入試選抜要項」に
基づき、ガイドライン編集部で作成。出願にあたっては必ず願書等で
確認してください。
特集
学習の成果物やそれに関わる活動を評価する方法であり、
高大接続改革
提出書類の評価基準は
自由記述問題で知識の活用力を問うことや文章によるア
教育学部が求める人物像
ピールを評価することも広い意味でのパフォーマンス評
価に含まれる。
教育学部が求める「学びの報告書」は、これまでどの
教育学部では、
「学びの報告書」
「学びの設計書」「調
ような経験を通して、どのような成果を得てきたかにつ
査書」に加えて、第 2 次選考では口頭試問や課題への
いて記述するもので、中学時代から現在まで取り組んだ
対応を見ることを通してパフォーマンス評価を行ってい
「学び」の活動として、各教科での学習や総合的な学習
る<図表1>。
の時間、読書、課外活動、学校行事での活動、ボランテ
<図表 2 >京都大学 教育学部 平成 28 年度特色入試「学びの報告書」
(前年度版)より抜粋
【1】中学時代から現在までに取り組んだ「学び」の活動(各教科での学習や総合的な学習の時間、読書、課外活動、学校行事での活動、
ボランティア活動等)のうち、主なものを時間の経過に沿って記述してください。
(1)
「時期」欄には活動を行った時期(西暦で○年○月、○年○月~○年○月など)を記入してください。
(2)
「活動内容」欄には活動の名称と簡単な説明を書いてください。その際、できるだけ、その成果を示す資料を添付してください。
(3)
「資料番号」欄には対応する資料の番号を記入してください。
【2】取得した資格や各種の検定の成績がある場合は、その最高の等級や得点を列挙してください(9件以内)。
(1)「時期」欄には資格・検定などを取得・受験した時期を記入してください。
(2)「資格・検定など」の欄には資格・検定の種別と成績を記入してください。その際、その証明書のコピーを添付してください。
(3)「資料番号」欄には対応する資料(証明書のコピー)の番号を記入してください。
【3】 【1】にあげた活動の中で最も重点を置いた3つの活動について、説明してください。
(1)「活動内容」欄に、活動の名称や種別を書いてください。
(2)「資料番号」欄に該当する資料番号を記入してください。
(3)「関与の程度」の欄に、1回の活動時間、週あたり日数、継続時間等を書いてください。
(4)「成果・意義など」の欄には、あなた自身が取り組んだ活動の具体的な内容や生み出した成果、あなた自身にとっての意義を
記述してください。
<参考>添付資料に関する注意事項(前年度版)より
「学びの報告書」に添付する資料や検定の例としては、次のようなものが考えられます。ただし、これらに限定するものではありません。
●各教科で執筆したレポート、論文など
●総合的な学習の時間、課題研究、SSH・SGH などで探究・研究した成果をまとめたレポート、ポスター、論文、パワーポイント(印
刷されたもの)など
●読書を踏まえた小論文など
●自分が制作した作品(またはその写真や動画)やそれに関する解説など
●課外活動、学校行事・生徒会での活動、ボランティア活動、文化・芸術・スポーツ活動、留学・国際交流などで取り組んだ活動(工
夫や試行錯誤)に関する記録(ノートなど)、あなたの活動について関係者から寄せられたメッセージなど
●雑誌や新聞に掲載された記事など
●各教科にかかわる大会、コンテスト、コンクール、国際科学オリンピックなどの成績を証明するもの(表彰状のコピーなど)
例:教育委員会賞、総合文化祭優秀賞、高校生論文コンテスト、読売科学賞、英語スピーチコンテスト、高校生ディベート大会、
模擬国連、国際科学オリンピック(Jr. セクション含む)、科学の甲子園、日本学生科学賞、高校生科学技術チャレンジ、
ビジネスアイデアコンテスト等
●英検、TOEFL、TOEIC、 その他の外国語の検定、能力試験
●各種の技能や知識などの検定や資格、段位
●国際バカロレア(資格証書、最終試験成績証明書)
*上記は平成 28 年度の内容です。平成 29 年度特色入試については大学のホームページ等で確認してください。
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 17
ィア活動等が参考として例示されている<図表2>。例
また、もうひとつの提出書類である「学びの設計書」は、
示を見ると、高校での日常の学習活動への取り組みを評
志望理由書も兼ねている。教育学部へ入学を希望する理
価対象としており、国際数学オリンピック出場者などの
由に加え、大学生活で何を目標にして、どのように学び
特別な活動に限定されているものではないことがわかる。
たいかを具体的に設計して記載することが求められる。
「学びの報告書」には、記載した成果を示す資料、いわ
さらに大学卒業後、大学で学んだことをどのように活か
ゆるエビデンスの添付が求められており、資料を A4 版
したいかについても具体的に記載することが必要だ。
のクリアファイルなどのファイル1冊に時系列に綴じて
大学卒業後のことについては、特色入試での入学者へ
提出することとなっている。このファイルが実質的にポ
の聞き取り調査によると書きづらかったとの意見があっ
ートフォリオの役割を果たしている。
たそうである。高校生の段階で将来のことを想像するの
実際に提出された「学びの報告書」は、
「総合的な学
は難しかったようだが、「おぼろげでも良いので、中学
習の時間での活動など高校での活動に加え、課外活動に
2年生から高校2年生までの間で将来を考えることは、
ついて記載されたものなどさまざま」
(西岡准教授)で
学生の大学・社会での成長の面からも有意義との研究成
あった。
果がある(注1)」と西岡准教授は語る。また、矢野教授も
書類の評価は、特色入試で教育学部が求める人物像と
「生徒一人ひとりが具体的に自分の将来像について考え
して示した内容との適合性が求められた。例えば、総合
る機会が十分にないからではないか」と語るなど、特色
的な学習の時間を学びの活動として記述する場合、単に
入試の提出書類から高校教育を巡る課題も見えてきてい
課題研究に取り組んだだけでは十分ではなく、求める人
る。
物像の中で示されているように「教科の学習及び総合的
な学習の時間などにおいて学習を深め、テーマを設定し
て探究活動を行い、卓越した学力を身につけ、成果をあ
「課題」を作問する負担が
大きな課題に
げた者、
(中略)創造的な熟達を通して、深い洞察を得
教育学部特色入試は、書類選考(第 1 次選考)合格
ている者」と、自分なりに1つの問いから次の問いにつ
者に対して、第2次選考として「課題」と「口頭試問」
なげていく探究的な力や取り組みが求められている。
を課している。この「課題」で出題される問題は、複数
また、
「学びの報告書」では、最も重点を置いた3つ
の資料を示し、そこで示される教育に関係する課題に対
の活動を抽出して記載することになっているが、中には
して、自分なりの意見を論述させる内容であり、文章や
抽出された3つの活動が、教育学部の求める人物像とは
データから要点を読み取る読解力や論理的思考力などが
やや距離のあるケースも見られたそうだ。
矢野教授は「受
問われる。現在、今年度(平成 28 年度)の入試問題の
験生本人にとって意味があるものと、評価者にとって意
公開準備中であるが、サンプル問題として公開している
味があるものとの考え方の隔たりが一部に見られました。
「課題」は教育学部の特色入試サイトよりダウンロード
学びの報告書は自分が頑張ったと感じている活動や長く
が可能である(注2)。
時間を使った活動を書くのではなく、それらの取り組み
「作問の過程では、学部内で、どのような力を学生に
を通して何を考え、
何を学んだかを示すことが必要です」
身につけさせたいかが議論されることになる。サンプル
と話す。
問題が示す通り、文章を正確に読む力、資料を検証する
なお、評価者は出願した全員の書類に目を通しており、
力、自分なりに考えを組み立てて発信する力などが求め
それによって評価の客観性、比較可能性を高めている。
られている。また、出題内容は教育学部としての知見が
「専門が異なる複数の目で見ることは客観性を高める1
問われることになるが、われわれの教育についての思い
つの方法です。異なる専門性を突き合わせて評価するこ
を込めた問題にしたいという共通認識がある」(西岡准
とで評価が精緻になります」と西岡准教授は説明する。
教授)と、作問には相当に力が入っている。
ただし、今年度(平成 28 年度)の志願者数が 25 名で
特色入試における「課題」の継続的な作問が可能かど
あったため、それも可能だが、書類審査ができる人数に
うかは、多面的・総合的な評価を行う上で、重要である
は一定の限界があるだろう<図表3>。
が、これについて矢野教授は「作問作業は確かに大きな
(注1)中原淳・溝上慎一編『活躍する組織人の探究――大学から企業へのトランジション』東京大学出版会、2014 年
(注2)http://tokusyoku.educ.kyoto-u.ac.jp/document
18 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
特集
高大接続改革
<図表3>平成 28 年度 京都大学特色入試 入試結果
学部・学科・専攻
募集人員
総合人間学部
志願者数
倍率
第 1 次選考
合格者数
第 2 次選考
合格者数
最終選考
合格者数
入学者数
5
29
5.8
29
-
5
5
10
40
4.0
9
-
7
7
6
25
4.2
12
7
5
5
法学部(後期日程)
20
324
16.2
324
-
22
21
経済学部
25
77
3.1
61
-
25
25
5
59
11.8
59
5
5
5
5
5
1.0
5
-
1
1
10
13
1.3
13
10
1
1
人間健康科学科 理学療法学専攻
3
7
2.3
7
4
2
2
人間健康科学科 作業療法学専攻
3
2
0.7
2
2
2
2
薬科学科
3
2
0.7
2
2
0
0
地球工学科
3
0
-
-
-
0
0
電気電子工学科
5
12
2.4
-
-
3
3
情報学科
2
1
0.5
1
1
1
1
若干
0
-
-
-
0
0
3
20
6.7
10
-
3
3
文学部
教育学部
理学部
医学科
医学部
薬学部
工学部
人間健康科学科 看護学専攻
工業化学科
農学部
食料 ・ 環境経済学科
労力を必要としますが、問題の素材が尽きることはあり
こまで考えて制度設計を行いました」(矢野教授)と特
ません。なぜならわれわれは日々研究に取り組んでいる
色入試の導入は、単に新しい入試制度を導入することが
からです。そこでは次々に新しい課題が生まれ、その解
目的ではなく、高校教育と大学教育の実質的な接続を見
決に向けてさらに研究を進める必要があります。そして、
据えたものであったと説明する。このように特色入試の
これこそが教育学部での学びであり、特色入試にもつな
がっているのです」と見通しを語った。
特色入試は大学教育も変えて
高大接続の実質化にも寄与
「課題」の入試問題が、大学の授業の教材に使えるもの
であることは、入試問題を通じて高校生に対して大学で
学ぶとはどういうことかを示していることに他ならない。
特色入試の今後について、西岡准教授は「受験生にと
って心理的負担の大きな入試方法かもしれませんが、決
このように教育学部の教員の高度な専門性を背景に作
して人物評価を行っているのではありません」と多面的・
成された特色入試の「課題」のサンプル問題は、大学の
総合的に学力を評価する入試であることを強調する。そ
授業で教材としても使われている。今年度の教育学部の
して、「高校生は、それぞれの問題意識を持ち、大学で
1年次の必修科目「教育研究入門」の授業は、
「課題」
の学びに大きな期待を持っていることを改めて認識しま
のサンプル問題を使用したワークショップを取り入れる
した。大学は果たしてその期待に応えるだけの教育を提
ものとなった。従来、当科目は講義形式で行われていた
供できているか、大学側が試されています」と現状を捉
が、特色入試の実施を契機として、学生が主体的に取り
えている。
組む形式に授業を変えた。つまり、特色入試の導入は大
矢野教授も「われわれの研究に対する姿勢が問われて
学教育の在り方にも影響を及ぼしたことになる。
います」と語り、今後のさらなる改善を視野に入れてい
「入試を変えることで高校教育を変えるだけでなく、
る。既にアンケート調査などの追跡調査を始めており、
大学教育も変わることが大切です。両方が変わることに
特色入試の効果や前述の「教育研究入門」の授業形式変
よって、はじめて高校教育、入試、大学教育がつながる
更の効果の検証を進めるなど、京都大学教育学部の高大
ことになります。教育学部は新しい入試を考える際、そ
接続への挑戦はこれからも続いていく。
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 19
ルーブリック評価を導入した「課題研究」を実施
高大連携で「高校教育改革」をめざす
福井大学 アドミッションセンター 大久保 貢 教授
福井大学アドミッションセンターでは、科学技術振興
機構のサイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)
や、文部科学省の調査研究として、高大連携による「課
題研究」の実践に取り組んできた。2015 年度からは、文
大久保 貢 教授
部科学省の「高等学校における多様な学習成果の評価手
法に関する調査研究事業」の採択を受け、ルーブリック
論理立てて考えるのではなく、直感で答えようとする傾
を利用した「課題研究」の評価を実施している。
向が強まっていると感じます。質問に来ても本質の理解
現在、高校で活用できるルーブリックの作成も進行し
は二の次で、『答えだけ教えてほしい』という学生もい
ており、高大連携で高校教育の改善もめざしている。ア
ます。また、知識は教員から与えられるものという受け
ドミッションセンターの大久保貢教授に話をうかがった。
身の姿勢が顕著で、自分で問題を探して解決しようとす
大学入学後に必要となる能力に焦点を当てた
「課題研究」プログラムを開発
る主体性が身についていません。これらは、高校教育が
知識偏重になっていることの弊害ではないかと考えまし
た。一方で、大学に入学すると、大学教育では、問題解
福井大学では、2003(平成 15)年度から SPP を開
決能力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション
始した。夏休みに3日間、学内に高校生を集め、物理、
能力、探究心、論理的思考力、創造力などが要求されま
化学、情報などに関するテーマを提示。グループに分か
す。高校教育と大学教育がうまく接続するには、高校、
れ、講義、実験・実習、プレゼンテーションなどの「課
大学双方でそうした能力の必要性について共通認識を図
題研究」に取り組むというものだ。その目的を、大久保
ることが重要になります。そこで、それらの能力の養成
貢教授は、次のように語る。
に焦点を当てた『課題研究』プログラムを開発し、実施
「近年、高校までの学びと大学での学びに大きな乖離
することにしたのです」
が生じています。例えば、大学の授業で、学生が答えを
なお、福井大学では「課題研究」と「工学体験入学」
<図表1>
「課題研究」
に対する普通科の高校生の感想
(能力面)
<図表2> SPP 事業に参加した学生の入学後の学業成績
問題解決能力
問題解決能力
4.3
4.6
4.3
4.6
論理的思考力
論理的思考力
4.4
4.5
4.4
4.5
プレゼンテーション能力
レゼンテーション能力
4.6
4.9
4.6
コミュニケーション能力
ミュニケーション能力
4.2
4.5
4.2
4.5
文章表現力
4.5
4.4
4.5
4.4
文章表現力
全く感じなかった 全く感じなかった
13
24
1
2
強く感じた
35
4
■物理系 ■化学系
■物理系 ■化学系
20 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
(人数)
70
2.45
60
2.34
50
60
50
4.9
強く感じた
5
40
2.25
30
20
10
(人数)
70
5 5
0
SPP事業
2.45
(GPA)
2.5
(GPA)
2.5
61 59
61 59
2.4
2.39
(人数)
(人数)
2.3
2009年
2.32
2009年2.3
2.32
2.25
2.24
2.24
40
2010年
2010年
2.2
2.2
2.16
2.16
2.13
2.13
30
(GPA)
(GPA)
22
2009年
2.1
2009年2.1
20 22
20
20
2010年
2010年
2.0
2.0
10
5 54 5
4 5
2.34
2.39
2.4
0
1.9
1.9
工学
高大連携
工学 SPP事業
高大連携 SSH
SSH
体験入学
不参加
体験入学
不参加
(図表1・2は大久保 貢 教授提供)
特集
高大接続改革
なども実施していた。
ったほか、他の生徒とコミュニケーションを図りながら、
「工学体験入学は1日間のプログラムのため、単に大
振り返りを行う場が設けられた。2日目は「音を比べよ
学の教育内容や環境を一方的に伝えるだけで、一時的な
う」の実習を実施し、高校教員から「発表用スライドの
刺激に終わってしまいます。もっと持続的で一貫性のあ
作成とプレゼンテーション」の講義を受け、発表の準備
るプログラムにすることが重要だと考え、現在は、工学
を行った。3日目は成果発表に向けての追加実験等の後、
体験入学は止めて、
『課題研究』の取り組みに一本化し
班ごとに約 12 分間の発表・質疑応答を実施した。
ています」
(大久保教授)
評価を担当したのは、大学教員と TA のほか、委託事
「課題研究」の成果は着実に上がっている。終了後に行
業に研究協力者として参加している福井県内の高校教員、
われる自己評価を見ると、課題解決能力、プレゼンテーシ
福井県教育委員会、福井県教育研究所の教員など、計
ョン能力、論理的思考力などが向上したと回答する生徒が
16 名である。1名の評価者が2つの班(生徒6名)を
多い<図表1>。大学入学後の GPA でも、
「課題研究」
評価する。つまり、生徒1名に対して5名が評価するこ
に参加した学生の学業成績が高めになっている<図表2>。
とになる。
「考力」「働力」
「創力」の観点から評価
4 段階で「総合評価」を示す
その評価のために、事前に大学と高校教員等が協力し
てルーブリックを作成した。これまでの課題研究に関す
る調査研究などから、ルーブリックは、「考力」
(問題発
このような成果を受けて、2013(平成 25)年度から、
見力、目標設定力、計画力、調整力)、「働力」(自己表
文部科学省の委託事業「高等学校における多様な学習成
現力、先見力、発信力、傾聴力)、
「創力」
(実行力、修
果の評価手法に関する調査研究事業」に採択され、「高
正力、独創力、企画力)について、それぞれS、A、B、
大連携による課題研究の実践を通した大学の学びに対応
Cの4段階で評価する<図表3>。
できる能力・育成の評価手法の調査研究と大学入試改革」
具体的な評価としては、生徒はそれぞれ実験や実習を
というテーマで、
「高大連携探究プロジェクト」を実施
行うが、場面ごとに、例えば A という場面では「考力
している。
「課題研究」に取り組むことは同じだが、そ
の問題発見力」「働力の自己表現力」「創力の実行力」を
れまでとの最大の違いは評価が導入されたことだ。
評価し、B という場面では「考力の目標設定力」
「働力
では 2015 年度の「高大連携探究プロジェクト」の概
の先見力」「創力の修正力」を評価する、といった方法だ。
要を紹介しよう。8 月上旬の3日間、5つの高校(福井
そのほかに、成果発表時のルーブリックも作成されてい
県立金津高校・羽水高校・武生東高校・坂井高校、私立
る。
敦賀気比高校)から、計 18 名の生徒が参加した。
生徒には、後日、
「課題探究プロジェクト実践証明書」
以前は複数のテーマが提示され、グループごとに異な
が送付される。その中には、評価者の平均値を 100 点
るテーマに取り組んでいたが、評価に有利不利が生じな
満点で換算した 4 段階評価(A= 80 以上、B= 70 ~
いように、今回は全員に「コンピュータを使った音声情
79、C= 60 ~ 69、D= 59 以下)が、「総合評価」と
報処理」というテーマが与えられた。
して示されている。また、「考力」「働力」「創力」ごと
生徒には「参加者決定通知書」に「事前学習資料」が
のスコアもレーダーチャートで示され、自分の現状の強
同封され、当日までの予習が義務づけられた。また、当
み、弱みが把握でき、その後の学びを進める上でのモチ
日「実験ノート」が配布され、課題ごとに仮説、実験結
ベーションの強化にも役立てられる。
果、考察(個人の考察とグループの考察)
、自己評価な
どを記入する。実験は、各班3~4名の異なる高校の生
徒で構成され、1~2名のティーチング・アシスタント
(TA)として大学生・大学院生が実験指導と評価のため
ルーブリックを作成して評価すれば
大学入学後に伸びる生徒がわかる
「ルーブリックを作成し、その観点で評価を行うと、
に配置された。
どの生徒が大学入学後に伸びる力を備えているか、よく
1日目は、テーマに関連する講義のほか、
「音声の正
わかること、即ち、大学入学後の伸びしろを見出すこと
体を探ろう」
「音を見てみよう」の2つの実習を行い、
ができたことが新鮮な驚きでした。しかも、追跡調査に
夜は一緒に宿泊し、
「声を分析しよう」という実習を行
よって、このルーブリック評価には相応の妥当性がある
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 21
<図表3>汎用的ルーブリック(抜粋)
評価対象
S(4)
A(3)
B(2)
C(1)
考力
変化や異常に関する事柄
変化や異常に気づくが、
変化や異常が起こった要
変化や異常に気づいてい
との関係性に着目してい
その原因については考え
因について考えている。
ない。
る。
ていない。
問題発見力
変化や異常を
見る力
目標設定力
様々な条件を考慮し、問
仮説を立てて、
問題解決に向けた道筋を、 ある程度の見通しはある 問題解決に対する見通し
題解決に向けた方策を考
見通しを持つ力
論理的に示している。
が、論理的ではない。
がない。
えている。
評価対象
S(4)
A(3)
B(2)
C(1)
創力
実行力
活動を
制御する力
規則性を理解するととも 繰り返し作業に取り組み、 積 極 的 に 課 題 に 取 り組
指示された課題を実行し
に、新しい解決方法を試 規則性について考えてい み、新しい課題について
ている。
みている。
る。
も挑戦している。
修正力
障害を
克服する力
障害原因を究明し、試行 障害原因を究明している
工夫・改善に取り組み障
障害の原因の究明を十分
錯誤しながら工夫・改善 が、工夫・改善を行って
害を克服している。
に行っていない。
している。
いない。
(文部科学省 平成 27 年度 高等学校における「多様な学習成果の評価手法に関する調査研究」研究成果報告書(福井大学)より)
ことも判明しています。ある高校の参加者のうち、総合
評価がAだった1名は難関大学、Bの3名は国立大学に
入学しています。本学の AO 入試でも、総合評価Bの1
名は上位、Cの2名は中位の成績で合格しており、相関
6国立大学が共同で
「課題研究」とルーブリックを組み合わせた
ガイドブックを作成
関係が認められます。まだ母数が少ない中での考察であ
その一助とするために、福井大学は、静岡大学、信州
り、今後、実践を重ねることで、評価の信頼性を高めて
大学、三重大学、香川大学、佐賀大学と研究会共同プロ
いきたいと考えています」
(大久保教授)
ジェクトを発足させ、今年 2 月、第 1 回目の会議を開
ただし、
「課題研究」を大学入試にそのまま導入でき
催した。この 6 大学で、数学、物理、化学、生物の「課
るかというと、かなり難しい面があると大久保教授は語
題研究プログラム」を開発。そのプログラムに対応する
る。
「評価には大変な手間がかかりますから、数多くの
ルーブリックと組み合わせたガイドブックを作成し、高
受験生に対応するのは困難です」
校に提供する予定だ。一部の科目は、今年度中の作成を
AO 入試などで、
「課題研究」プロジェクトに参加し、
目標にしている。
高い総合評価を得た受験生にプラス点を与える方法も考
「ルーブリックの作成には、大学教員だけでなく、高
えられるが、
「そのためには、大学教員に課題研究の評
校教員にも参画してもらっています。高校教員に、問題
価の妥当性を納得してもらうことが不可欠です。そのた
解決能力、コミュニケーション能力、プレゼンテーショ
めには今後、きめ細かく追跡調査を行っていく必要があ
ン能力などの汎用的能力を鍛えることが大切だという意
ります」
(大久保教授)
識改革を促すことが重要だからです」(大久保教授)
大学入試への活用よりも、大久保教授が念頭に置いて
福井大学では、このほかにも高大連携を行っており、
いるのが、高校教育を変えるきっかけづくりにしたいと
2008 年度には工学部教員と高校教員で「高大連携数理
いうことである。
「この調査研究の最大の目的は、高校
教育研究会」を設立。高校、大学の授業を相互に参観す
教育の質保証です。現在の高校の進路指導は、難関大学
るほか、2 カ月に 1 回、意見交換の場も設けられた。
の合格者を増やすことに重きが置かれている感がありま
「高大連携数理教育研究会で明らかになったことは、
す。大学入学後に必要になる主体的な学びの姿勢や、モ
高校で受け身の学習態度しか身についておらず、大学入
チベーションを強化することが立ち遅れています。そこ
学後の学業成績が伸び悩んでしまうことです。主体的に
で、私たちは今回作成したルーブリックを参考に、各高
学び、考える力を養うにはどうしたらいいか、高校、大
校で使えるようなルーブリックを開発し、高校教育でも
学が協力して真剣に議論することが、スムーズな接続の
活用してもらい、高校と大学とが共通の評価の観点を持
ために重要になっています。『課題探究プロジェクト』
は、
った教育をすることを期待しています」
(大久保教授)
それを考える上での貴重なヒントになると考えていま
す」(大久保教授)
22 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
高大接続改革
特集
新学部設置を機に、学力の3要素に探究力を加えた
多面的・総合的に評価する選抜を実施
徳島大学 生物資源産業学部 辻 明彦 学部長
総合教育センター 植野 美彦 准教授
徳島大学は、今年度学部新設・改組によって、ヘルス・
フード・アグリとバイオを融合した産業を創出する人材
の育成をめざして生物資源産業学部を設置した。大学入
辻 明彦 学部長
植野 美彦 准教授
学者選抜においては、
「学力の3要素」を多面的・総合
的に評価する選抜を実施した。
はもちろんですが、将来会社を起業して、地方を元気に
生物資源産業学部の教育に連動した個別選抜改革によ
するような人材を輩出したいと考えました。そこで、農
って高等学校に期待することについて、学部長の辻明彦
学系の学部にはあまりない、経済・経営関連科目を必修
教授と総合教育センターアドミッション部門 部門長の
科目に加えるなどして、いわゆる6次産業化のプロを育
植野美彦准教授に話をうかがった。
成するカリキュラムを構築しました」と説明する。
地域の強みである生物資源を活かし
6次産業化を推進する人材を育成
具体的には3週間以上のインターンシップを必修化し、
「起業体験実習(ビジネスプラン作成)」「アグリビジネ
ス起業論」「ブランド戦略論」といった経済・経営関連
徳島大学は、平成 28(2016)年度に「新産業の創出
科目を1〜3年次に設定するとともに、学生の成長を把
など我が国の産業競争力強化に貢献できる人材の育成」
握するためにラーニング・ポートフォリオの導入、そし
を目的に、生物資源産業学部(入学定員 100 名)と理
て県内外における企業との連携強化も視野に入れている。
工学部(入学定員昼間 550 名、夜間主 45 名)を設置し、
真に学びたい学生を集めるために
総合科学部を社会科学系の学部に改組した。
多面的・総合的に評価する入学者選抜を構築
徳島大学には生命科学の研究者が多く、生物資源産業
学部設置母体となった工学部生物工学科や総合科学部社
入学者選抜にあたっては、辻学部長は「現在の高校生
会創生学科(理系)所属の研究者に加え、薬学部には漢
は、大学入試センター試験(以下、センター試験)の成
方など天然物化学の研究者、医学部医科栄養学科には機
績によって受験する大学を決める傾向があります。この
能食品の研究者などがいる。そのため生物資源をバイオ
結果、入学後に大学や学部・学科とミスマッチを起こし
医薬、バイオマス、機能食品、農業とさまざまな方面へ
てしまう学生もいます。ですから、真に本学部で学びた
活用するための研究・教育を行うことができる。さらに、
い学生を集めるための入学者選抜を考えました」と話す。
大学附属の農工商連携センターでは、農作物の育種生産
また、植野准教授は、「18 歳人口の減少という現実と、
や植物工場などの研究を行っている。こうしたメンバー
地方国立大学という本学の立場から、地方創生を担う学
が集まり、他大学からも必要な人材を招聘して、新学部
生を求める際、どのような能力に比重を置いて評価すべ
である生物資源産業学部がスタートした。
きかを考えました。アドミッション・ポリシー(AP)は、
生物資源産業学部として新学部を設置した経緯につい
ディプロマ・ポリシーやカリキュラム・ポリシーに基づ
て、辻学部長は「都会より地方が優位なものとしては生
き、根底から考えました」と説明する。
物資源があります。そこで生物資源を活かした産業を興
AP については「学力の3要素」(注) の評価を網羅す
すことが、本学に求められる役割と考え、学部の人材育
ることに加え、学部独自の観点として「探究力」を追加
成方針を定めました。また、企業に就職して活躍するの
している。そして求める人物像として「関心・意欲・態
(注)学力の3 要素…知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 23
<図表1>生物資源産業学部 求める人物像(6観点)
で話すことは苦手だが、書くこと
は得意」という受験生にも配慮し
ている。
総合問題、集団討論など
8つの選抜方法を実施
いくつか選抜方法の具体的な内
容を見ると、まず「総合問題」で
<図表2>APと入学者選抜方法の関係性
は、主に「化学」の基礎学力に加
えて、数学的視点を用いた思考・
判断力を問う問題が出題される。
平成 28 年度入試では、グリコー
ゲンやデンプンの性質および構造
や、それらに関する数学的応用力
に関する出題などが見られた。他
に生物産業資源学部で学ぶ、バイ
オテクノロジー、食料、農業等に
関わる諸問題について論述する出
題も加えられている。
「
『総合問題』については、受験
生が特殊な受験勉強をしなければ
度」
「探究力」
「表現力」
「知識・教養」
「思考・判断力」
「協
ならないと誤解しがちなのですが、決してそうではあり
働力」の6つの観点に整理した<図表1>。
ません。化学は一般入試の記述問題を想定した準備を行
続いて、これらの AP と入学者選抜の方法を連動させ
うまでですし、数学的視点というのは、広義において、
ることとした。具体的には「総合問題」
「集団討論」「集
センター試験程度までのレベルを想定しています。それ
団面接」
「個人面接(口頭試問を含む)
」
「調査書」
「志望
よりも、総合問題の目的は、従来の枠組みを越えた『思
動機書」
「学びの設計書」による各選抜方法と、重点評
考・判断力』『表現力』等の評価をめざすということです。
価項目として設定する6つの観点との関係性を示し、
初年度となる平成 28 年度入試では、前年の4月に具体
AP と選抜方法を完全に連動化させている<図表2>。
内容の公表<図表4>、そして9月に作題委員の先生方
「例えば『集団討論』では、
『表現力』
『思考・判断力』
の作成によるサンプル問題を提供し、受験準備に配慮し
『協働力』を重点的に評価します。それ以外の力も評価
ました。西日本地区国立大学新設学部・学科の一部にお
することができますが、全ての観点を短い時間で評価す
いても、総合問題を採用するケースが出ており、出題内
ることは難しいため、指定した観点を重点的に評価する
容の詳細まで明らかにしています」(植野准教授)
ことによって丁寧な選抜となるようにしました」
(植野
「集団討論」は、3〜6名1グループで、バイオテク
准教授)
ノロジー、食料、農業関連の中からテーマが提示され、
入試区分については、<図表3>にある4つとし、そ
自分の見解をまとめた後、討論を行う。評価担当者は複
れぞれどの力を重視し、どの選抜方法を組み合わせるか
数で、討論の進行は大学教員で行う。複数分野をまたい
を決めた。例えば『推薦入試Ⅱ』は、1,000 点満点中セ
だ幅広いテーマになっているのは、「テーマの範囲を狭
ンター試験の配点を 300 点として、一定の基礎学力を
めると対策に偏執されて、われわれが評価したいことが
担保しつつ、書類審査と集団討論・集団面接を課し、主
評価できないという懸念があります。集団討論は、関心
体性と表現力に重点を置いて選抜する。
『一般入試(後
や知識を評価することを目的としていません。前述の通
期日程)
』は、個別選抜は総合問題のみだが、
「面接など
り、『思考・判断力』『表現力』『協働力』の評価を重点
24 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
特集
高大接続改革
<図表3>入学者選抜における選抜方法・配点
的に行っています」
(植野准教授)
「集団面接」は3〜6名1グルー
プで行い、
「一般入試(前期)
」では、
バイオテクノロジー、食料、農業に
関するテーマを提示し、自分の考察
を簡潔に述べる。
「推薦入試Ⅱ」
では、
志望動機・志望理由を中心に質問を
行って、主体性と表現力を評価して
いる。
「
『集団討論』でも『集団面接』
でも、流暢に話す生徒と朴訥に話す生徒がいますが、流
暢さを評価する試験ではないので、自分の考えをしっか
<図表4>入学者選抜における選抜内容の例示
入学者選抜
方法
選抜区分
選抜内容
推薦Ⅰ
推薦Ⅱ
概ね3名~6名を1グループとし、複数の評
価担当者による集団討論を行う。試験準備室
で、
テーマの提示(バイオテクノロジー、食料、
農業関連)
・説明ののち、15 分間で自分の見
解のまとめ(所定の記述用紙の記入と提出有)
を行う。試験室で最大 20 分間の討論を行う
(終了5分前よりまとめ)
。討論の進行役は評
価担当者が行い、発言は原則として挙手制に
よって実施する。
り述べることができれば評価しています。また、評価者
は均等に発言させるように配慮しています」
(辻学部長)
推薦入試で課す「志望動機書」は、大学・学部の志望
動機について高校生活等を踏まえて記述するもので、
「学
びの設計書」は、入学後の学びから卒業して社会人にな
るまでの計画を、これから学びたい分野とその理由を含
めて記述するものである。どちらも「表現力」を評価す
集団討論
<図表3><図表4>は平成 28 年度入試向けの内容です。平成 29 年度入
試向けの内容は入学者選抜要項等で確認してください。
(図表1〜4は植野 美彦 准教授提供)
ることに加え、「志望動機書」では「関心・意欲・態度」
を、
「学びの設計書」では「探究力」を評価している。
他学部の入学者選抜については、現在、生物資源産業
加えて辻学部長は「
『志望動機書』
『学びの設計書』は、
学部をモデルとして、AP の具体化を含めた見直しを行
生徒がこれを書くことで、改めて本当に自分が進みたい
っているところである。「AP を根底から見直すという
分野かどうかを考えることになります。これが、非常に
プロセスを経た上で、個別選抜方法を考えることが重要
意味のあることなのです」と狙いを説明する。
です。見直した結果、現行の個別選抜で求める人物像と
なお、
「志望動機書」と「学びの設計書」は他者の関
の整合性が相応に取れているのであれば、個別選抜を改
与を指摘する声があるが、面接等で提出書類の内容を確
革ではなく改良までとして考えるべきでしょう。高等学
認するだけでなく、一定の方術を用いることで見抜くこ
校にも配慮しなければなりません。われわれとしては、
とができるという。
これから追跡研究によってこの個別選抜の妥当性を検証
多面的・総合的評価の導入で
高校生活の積み重ねが評価される大学入試へ
することを進めていきます」(植野准教授)
このように生物資源産業学部では多面的・総合的評価
を導入したが、多面的・総合的評価では、選抜にあたっ
このような選抜を行った成果については、入学後、学
て「公正さ」をいかに担保するかが課題となる。
「公正
生に対して AP を知った上で受験したか否かについてア
とは何かの定義は難しいところ」と植野准教授も指摘し
ンケートを実施した。集計途中ではあるが「良く知って
つつ、「まずは、入学者選抜に関する情報、すなわち具
いた」
「ある程度知っていた」が大勢を占め、
「全く知ら
体的な選抜方法やその内容を予め提示することが大切で
なかった」という回答はなかった。
「この結果から、AP
す」と話す。多面的・総合的評価について、辻学部長は
が入学者選抜に反映されていることを伝えれば、これを
「多面的・総合的評価とは、ペーパーテストのように結
理解した上で受験してくれることがわかりました」(植
果だけでなく、本人が力を育んできたプロセスを評価す
野准教授)
ることです。これによって、高校生は高校ならではの生
また、学生たちは農業クラブを自主的に立ち上げ、1
活を送ることができ、その積み重ねが評価されるように
年生約 40 名が参加しているなど、
非常に活動的だという。
なると考えています」と期待を寄せている。
※本内容は、平成 28 年度入試の内容をもとに取材を行いました。平成 29 年度入試の内容については、今年 7月末公表の入学者選抜要項等でご確認ください。
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 25
「問題解決・提案力」を新学部の一般入試で実施
「佐賀大学版CBT」などの入試改革にも着手
佐賀大学 アドミッションセンター 西郡 大 准教授
佐賀大学では、平成 28(2016)年度からの第3期中期
目標・中期計画中に「佐賀大学版 CBT」
「特色加点」
「継
続・育成型の高大連携活動」という3つの入試改革に着
手する。それに先立ち、平成 28 年度に設置された芸術地
域デザイン学部地域デザインコースの個別試験で、前期
日程は「総合問題」
、後期日程は「問題解決・提案力テス
ト」を実施し、多面的・総合的な評価を実施している。
西郡 大 准教授
アドミッションポリシーに基づき
制度設計された選抜方法
特に後期日程で課された「問題解決・提案力テスト」は、
芸術地域デザイン学部は 2016 年に設置された新しい
企画力、発想力等を問うなど多面的な評価を行う選抜方
学部で、芸術表現コースと地域デザインコースで構成
法だ。このような選抜方法を AO 入試等ではなく、一般
され、有田セラミック分野など地域を意識した学修内
入試で実施した点が注目される。
容に特色のある新学部だ。今回の選抜方法について、
今回は、さまざまな取り組みの中から、
「問題解決・提
西郡大准教授は、「地域デザインコースは全く新しいコ
案力テスト」
「佐賀大学版 CBT」について、アドミッシ
ースのため、入試制度は学部だけでなく、アドミッシ
ョンセンターの西郡大准教授に話をうかがった。
ョンセンターとの協働で作られました。制度設計を進
<図表1>芸術地域デザイン学部地域デザインコースの入学者受入れの方針
キュレーター(学芸員)やアートコーディネーターとして国内・海外の文化芸術振興に寄与できる人材、また、まちづくり、地域創生
等のコーディネーターやリーダーとして地域社会に貢献できる人材を養成します。そのために、以下に示すような学生を求めています。
①高等学校で習得すべき基礎的学力と発想力、また、地域社会が抱える問題についての基礎的な知識を有する人
②専門分野の内容を学習するために必要な読解力、論理的思考力、分析力、考察力などを有する人
③国内に限らずグローバルな視点で情報収集、情報発信できる一定の語学力を有する人
④地域社会が抱える問題に関心があり、芸術を通じて地域社会を機能的に繋げていける企画力、発想力、表現力等を有する人
⑤主体的にものごとに取り組み、積極的に行動できる人
⑥意欲的かつ継続的に地域の文化芸術活動に参画する意欲のある人
⑦将来、キュレーター ( 学芸員 ) やアートコーディネーターとなることを、また、自治体・企業等で文化振興、文化財保存やまちづく
り等に携わる仕事を志望する人
〔地域デザインコースで学ぶために必要な能力や適性等および入学志願者に求める高等学校等での学習の取り組み〕
本コースで問われるのは、芸術表現の技能・巧拙ではありません。地域デザインコースにおける 4 年間の教育課程を確実に修得する
ためには、高等学校で履修する教科・科目を広く学んでおくことが重要です。特に、国語、英語の基礎的な学力を有していることが求
められます。これらの幅広い基礎的な学力をもとに、自分の考えを分かり易く、文章や絵、図表などを多角的に組み合わせることで口
頭で表現できる企画力、発想力、表現力が必要です。将来、国内・海外の文化芸術振興、あるいはまちづくり、地域創生等に貢献でき
る人材となるためには、地域社会にとどまらない幅広い視野と強い関心を持つことも重要です。読書などを通して知識教養を深めると
ともに、大学入学前にボランティア活動や学校内外での諸活動など、地域や社会全般に関わる何らかの実践を経験できる機会があれば、
積極的に挑戦することを期待します。
(平成 28 年度佐賀大学学生募集要項(一般入試)より、赤字はガイドライン編集部による)
26 Kawaijuku Guideline 2016.7・8
特集
高大接続改革
める中で、当初は教科・科目による入試制度も検討さ
点者間で共通理解を得るなど丁寧に採点を進めた。な
れましたが、現在の高大接続改革の方向性なども勘案
お、答案を評価するポイントは企画力、発想力、提案
し、企画力、発想力、提案力を評価する入試を行うこ
力など AP で示されている各観点である。
ととなりました」と説明する。
実際の答案は事前に想定していた以上に優れた内容
入試科目は大学入試センター試験(以下、センター
のものが多く、それぞれの受験生の個性が表れており、
試験)に加えて、個別試験では前期日程は「総合問題」、
表現力豊かな説得力のある答案も見られたそうだ。た
後期日程は「問題解決・提案力テスト」と「英語」が
だし、「絵が上手く描けていても、企画提案の話の筋が
課されている。アドミッション・ポリシー(AP)<図
きちんと通った内容でなければ高い評価とはなりませ
表1>では、必要な学力として「読解力、論理的思考力、
ん。また、データを正しく読み取ってグラフを正確に
分析力、考察力」と「一定の語学力」などを明示して
描けていることも大切です」(西郡准教授)
おり、それを評価するために英文を含む文章や資料を
このように「問題解決・提案力テスト」は、AP で示
題材に、読解力、論理的思考力、分析力、考察力を問
された観点を総合的に評価する独自の試験であったが、
う「総合問題」が前期日程で課されている。また、AP
想定していた以上に優れた答案が多かったこともあり、
では、芸術を通じて地域社会を機能的につなげられる
西郡准教授は新しい試みに手応えを感じている。ただ
「企画力、発想力、表現力等」も必要な学力として明示
し、AP には高校で身につけるべき基礎学力も含まれて
しており、それを評価するために、企画力、発想力、
おり、センター試験と英語も加えた総合点で合否判定
表現力等を含む問題解決能力および提案力を総合的に
されるため、「問題解決・提案力テスト」だけがよくて
評価する「問題解決・提案力テスト」が後期日程で課
も合格点に届かなかった場合もあった。
されている。
特に後期日程で課されている「問題解決・提案力テ
スト」について、「地域デザインコースには、美術館や
課題は評価観点、配点と
問題作成技術の継承
博物館の学芸員となるためのキュレーション分野(注1)
初年度としては成功したと言える「問題解決・提案
やまちづくりなどに関わるフィールドデザインといっ
力テスト」だが、今後の課題も見えてきている。1つ
た分野があります。これらの分野では企画力や発想力、
は評価の観点と配点である。評価の観点は AP で示した
提案力が必要となるため、その素地があるかを評価す
各個別の要素となるが、各配点のウエイトによって合
るために、出題を小論文形式にするのではなく、受験
否に影響が出るため、それらの配点をどうするかは重
生が自分なりに考えを整理して提案する形式にしまし
要な課題となる。「どの観点にどれくらいの重みを持た
た」と西郡准教授は語る。
せるかは、今後の追跡調査の結果をもとに慎重に検討
採点のための綿密な事前準備
答案の評価は AP の観点に基づく
する必要があります」(西郡准教授)
もう1つの課題は、追跡調査の方法である。通常、
入試と入学後の関係を追跡調査する場合は、GPA など
実際に出題された「問題解決・提案力テスト」は、
の定量的な指標を用いることが多い。しかし、問題解決・
ある美術館の来館者数の経年変化のデータを複数示し
提案力は定量的な指標では特性を十分に評価できない
た上で、受験者がそれらのデータをグラフ化し、さら
可能性もあるため、卒業制作や卒業研究など定性的な
に課題を分析した上で来館者数を増加させるための企
評価も想定しなければならない。「入学者の特性につい
画提案を、文字だけでなく図や絵、表などを用いて B3
ては、まだ4月のため(取材時)、十分に理解できてい
用紙に自由にまとめるという内容だ。評価にあたって
ません。今後、学習活動を進めていく中で、アクティブ・
は、採点者間で差が出ないように共通理解を固めてか
ラーニング等への適応能力など、学部の先生方と協働
ら採点が行われた。また、採点を進める中で当初の想
しながら、この入試方法での入学者の特性を検証して
定と異なる答案があった場合は、その都度、改めて採
いく必要があります」(西郡准教授) (注1)キュレーターとは、博物館・美術館の専門職 ( 学芸員)、自治体の教育委員会の文化財担当者、展覧会やアートイベントの企画担当などの幅広い仕事をする
人をさす言葉である(佐賀大学「キュレーター一日体験!」より)
。
Kawaijuku Guideline 2016.7・8 27
<図表2>「佐賀大学版 CBT」モニターテストの実施結果
※佐賀県教育委員会と連携して県内の高校でモニター調査(化学)を実施
(西郡 大 准教授提供)
験の動画を見せ、そこから考えられる現象を選択肢から
「佐賀大学版 CBT」
選ばせたり、現象の理由を記述式で説明させる内容を出
デジタル技術を活用したテストの可能性
題している<図表 2 >。
さらに、入試改革の一環として、従来のペーパーテス
動画を使用すると、順を追って実験の過程を見せるこ
ト (PBT:Paper Based Testing) で問うことが難しい内容
とができ、ペーパーテストで表現できなかった時間軸を
について、タブレット端末を使用した動画によるテスト
取り入れた出題も可能となる。この形式のテストを将来
(注
として「佐賀大学版 CBT(Computer Based Testing)」
的に「問題解決・提案力テスト」に使うことも可能性と
2)
を開発している。従来の PBT では、学力の3要素が
しては考えられる。「例えば、地域課題を扱ったストー
示す「思考力・判断力・表現力」の一部分を評価してい
リーの動画を受験生に見せ、そこから何が問題なのかを
ると考えることができる。PBT の制約を受けない評価
考えてもらい、必要に応じて端末内のデータベースから
方法として、プレゼンテーションや集団討論などの方法
情報検索を行い、解決方法の提案を表現させるといった
もあるが、受験者数が増えるとコストや実施面で対応し
内容も考えられます」(西郡准教授)
にくくなる。また、受験対策が進めば、評価したい特性
だが、西郡准教授によると課題がいくつかあると言う。
が測れなくなることも懸念される。こうした点を踏まえ
まず、「佐賀大学版 CBT」と PBT との違いを明確にす
て、受験対策を積極的にすることが受験生の実質的な成
ることだ。PBT の限界を克服するために開発している
長につながるような試験問題・制度にして、入試を教育
「佐賀大学版 CBT」であるが、そこで測定している能力
機会と捉えた「受験対策前提」の入試制度にしてはどう
は、PBT で測定している能力とどのように異なるかに
かというコンセプトで設計されている。
ついて、テスト開発段階において十分に検証することが
ところで、
佐賀県は ICT 教育の先進県であり、
2014(平
必要である。
成 26)年に佐賀県の公立高校では高校入学時に全員が
そして、他のテストと同様に質の良い問題を継続的に
学習用タブレット端末を導入した。そのため、CBT 開
作題するという課題だ。入試問題は、教材としても活用
発にあたっては、モニターとして高校の協力も得られや
される。質の良い問題を継続的に提供することで、高校
すい環境にある。実際にテストの開発段階では、高校の
での教育活動にも活かすことができる。今後は、英語や
先生から意見をもらうなどの協力を得て、
「化学」を題
数学といった分野で活用できるか検討を進めるという。
材にした試行版のテストを開発。高校生に受験をしても
課題もあるが、さまざまな可能性を持つ試みである。今
らい、モニター調査も行った。試行版テストでは化学実
後の「佐賀大学版 CBT」の動向が注目される。
(注2)一般的に言われているCBTとは、項目反応理論などを用いて受験生の能力をコンピュータテストにより測定するテストを指すが、佐賀大学ではそれとは異
なる考え方でテストを開発しているため、
「佐賀大学版 CBT」と呼んでいる。なお、PBT の廃止を意図するものではなく、PBTで評価が難しい部分を補完
するというコンセプトで開発を進めている。
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