京山々レトロ - 株式会社クカニア

林野庁
平成 22 年度住宅分野への地域材供給シェアー拡大総合対策事業
きょうさんざん
京山々レトロ
Kyo-sanzan
Best Book
京山々・木の家づくりの会
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きょうさんざん
は
京山々レトロと
職人の手で作る
家づくりに参加する
自然を生活に取り入れる
竹内
明
髙田光雄
住宅商販売パンフレット
CONTENTS
平成の質感を求める
京山々レトロのテーマ
京山々倉庫
︽コラム︾
エイジング処理を行う
古材を使う
京山々レトロの手法
古建具を使う
レトロ建具を使う
土間を造る
宇根田茂
木造の自由度を向上させる
きょうさんざん
京山々レトロの知恵
不動産は変化する
︽コラム︾
50
家づくりは楽しい
知っていると得をする知恵
庭づくりは家と一体 ︽コラム︾
ユーテリティ
トイレ
木建具
ダイニングキッチン
リビング
外観
42 42 42 42 42 42 42
資金計画
全体工程
︽コラム︾
現代の引き戸文化
西村孝平
比地黒義男
金子師樹
あとがき
西巻
優
住宅づくりの検討必須アイテム
家づくりを誰に依頼するか?
78 76 74 72 70
ロートアイアンを使う
ステンドグラスを使う
庭を造る
広葉樹を組み入れる
土壁を塗る
︽コラム︾
黒い鉄・茶色い鉄
京山々レトロの流通
京山々レトロ住宅を商品化する
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京山々レトロとは?
レトロとは﹁質感﹂を示す意
レトロとは一般に、﹁古さ﹂と﹁懐かしさ﹂を意味する言葉です。京町家改修のテーマが多くある京
都の建築事業では、新築はどちらかと言うと、置き去りにされている感があります。再生を望まれるこ
とが多く、新築でも、古建具やゴロンボと言った経年変化した材を求められることが多いのです。こう
えんこいた
した動向に潜んでいるものは何なのでしょう?新築の家づくりにおいて、階段の段板を広葉樹で製作す
ると大変喜ばれます。床をヒノキの縁甲板を用いて、それを柿渋で着色すると、時間の経過とともにに
深みのある色艶が生まれてくるのです。土間をタタキ仕上げにすると、その土っぽさが好まれるのです。
門からのアプローチに古石を用いると、自然な風合いが生まれて、落ち着いた風情が生まれるのです。
京町家の改修での手法を新築に用いると、それは他の真新しい素材の中で、きらりと輝くのです。そ
の輝きに、多くの人が感じるのです。京町家への憧憬と新築の家づくりへのニーズは同根なのではない
で し ょ う か?
家の面白さやデザイン面の奇抜さではなく、家に落ち着きを求めているのではないで
しょうか?
長期優良住宅の提唱する家の断熱性や維持管理の容易さと言った性能も大事です。しかし、
都市の最小単位の﹁家﹂、生活の器となる﹁家﹂、人が営みを安心して行える﹁家﹂に求められているこ
とが何なのかは大きなテーマです。京山々レトロの住宅商品を開発し、販売してみて判ったことは、現
代の住宅に求められているものは、﹁質感﹂であると言うことです。古いものを新しい家に持ち込みた
いと希望することは、極端な言い方をすれば、古いものが欲しいのではないのです。古いものに現れて
何故京町家がこれだけの人気を博しているのでしょうか?多大な工費をかけて直して使うのでしょ
いる素材の質感なのです。空間の質的な味わいなのです。この発見は大きな成果です。
う?あるいは、昔のままの町家に最小限の改修で住むのでしょう?この動向はしばらく続きます。そこ
に潜んでいる改修のモチベーションは、ひとえに、京町家がもっている﹁質感﹂への憧憬なのではない
この質感のある家づくりが﹁京山々レトロ﹂の家づくりのモチーフです。当初は、新築住宅に京町家
でしょうか?
の古い味わいを持ち込みことが京山々レトロとしてスタートしました。しかし、今、京山々レトロは、
質感のある家づくりを行うこと全般を指し示しています。レトロを言う言葉が指しめすように、古い懐
かしいものが背後にあります。しかし、概念は広く﹁質感がある家づくり﹂を指すのです。
新築の﹁質感ある家﹂づくり
新築の質感を向上させる手法は、良い材料を用いて、良い職人さんの手による仕事をすることが一般
あいろ
的な考え方です。そうすると、住宅コストはどんどん上昇します。新築の家で一般的な家づくりを行う
場合、施工コストは一定の限度があります。この隘路を解く手法として京山々レトロはスタートしまし
た。新しい家に古い質感のあるものを創造する手法として、古材のゴロンボを入れたり、外壁に古材の
板を用いたり、エイジング加工をした床を用いたり、レトロ木建具を製作したり、手摺にロートアイア
ンを用いたりしました。京山々レトロは、こうした手法を開発したことによって、今までの新築住宅と
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は異なった住宅になったのです。不動産業者は、この住宅を住宅商品として市場に流したのです。この
反応をアンケート調査しましたが、こうした住宅商品をもっと期待したいとの反応でした。この調査で
は、何故アルミのサッシュが付いているのか?
と言う質問もありました。住宅性能としての最低限の
機密性を確保するつもりでしたが、市場はもっとコンセプチャルに作っても良いのではないか?と言う
反応もありました。京山々レトロの住宅商品づくりの視点をどこに置くかという問題はそのたびごとの
住宅商品の位置づけによって異なっています。住宅の委託の場合は、お施主さんとの協議によって自由
に変容することが出来ます。新築でも、建売と委託ではその内容の詰め方に差異が発生することは当然
のことです。京山々・木の家づくりの会では、こうしたあらゆるニーズに対応できるようにこの開発を
行いました。この開発で住宅商品の新築市場でのニーズを把握できました。この手法をさらに深めて、
日本の新築木造建築に新しい方向が生まれることを期待してこの本を製作しました。
改修の﹁質感ある家﹂づくり
改修による京山々レトロとは、京山々・木の家づくりの会の中では、概ね、京町家の再生を指します。
京町家の再生は、元々京町家という質感のある建物がベースにあります。朽ちていたり、老朽化が激し
かったり、足元が腐ったりしている場合が多いのですが、京町家というテイストは何らかの形で残って
います。この残っている部分に光を当て、屋根仕舞や設備インフラを整えて再生します。この場合テー
マは、﹁元あった状態に戻し、生活設備を充実する﹂手法が一般的です。そうしながら、京町家の現代
年以上継
住宅に欠けている部分に光を当てて、再生するのです。そうすると、﹁古く﹂、﹁寒く﹂、﹁使いにくい﹂
といわれた京町家が蘇るのです。この京町家再生に人気が集まっています。京町家の再生は
さらに、京町家だけでなく、古家の現況が持っている個性を活かした改修も盛んになり始めました。
続していますが、衰えを知りません。益々古い家へのニーズが高まっています。
古家の持っているポテンシャルを活かして、良いところにスポットを当て、現代感覚を取り入て積極的
に試みることも行われています。
京山々レトロのテーマは、大きな広がりを持ち始めました。
消費者は、家づくりに何を求めるのか?
家とはどのような役割を持つのか?
若い世代の人々にとっての家の価値とは何か?
この単純な問いに対する一つの答えが京山々レトロの中にあります。日本の木造建築は衰退し消える
宿命にあるかとも思われました。京町家は木造文化の現代的意義を掘り起こしました。そして、木の家
づくりが掘り出した﹁質感﹂は、市民権を得ようとしています。日本の木造文化が活き活きとして未来
に繋がることを願っています。
京山々・木の家づくりの会
京都大学教授
髙田光雄
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京山々レトロのテーマ
※この建物は新築住宅です。
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平成の「質感」を求める
建物の「質」が問われる時代になってきま
した。団塊の世代が築いた価値観に変わって、
団塊世代のジュニア世代では良いものを限定
して選ぶ嗜好性が確立されてきています。皆
が良いという価値観ではなく、自分にとって
良いかどうかで判断します。
シ ョ ン 空 間 で す。 こ の 家 の﹁ 個 性 ﹂ に 今 関 心 が
動空間であり、子育て空間であり、コミュニケー
の 家 の 中 で の 生 活 は、 癒 し 空 間 で あ り、 創 造 活
む こ と に よ っ て 人 間 の 営 み が 果 た さ れ ま す。 こ
家 は 都 市 を 構 成 す る 最 小 単 位 で、 こ の 家 に 住
て も 良 い 構 造 を 持 っ て い る 必 要 が あ り ま す。 そ
け ま せ ん。 変 化 す る 住 人 の 活 動 に 柔 軟 に 変 化 し
な け れ ば い け ま せ ん。 快 適 な 環 境 で な け れ ば い
な け れ ば い け ま せ ん。 住 人 に と っ て 使 い や す く
れ る 空 間 が 家 な の で す。 家 の 内 部 は、 心 地 よ く
た。 人 間 の 環 境 の 最 小 単 位 と し て、 我 侭 が 許 さ
都市に個性的に住む
集 ま っ て い ま す。 一 人 ひ と り の 顔 が 異 な る よ う
して何よりも個人の自由を助ける装置でなけれ
ば い け ま せ ん。 家 の 内 部 は、 こ う し た 自 由 を 十
全に満たす工夫がされていなければなりません。
家 の 内 部 は、 誰 に も 邪 魔 さ れ な い 自 由 空 間 な の
です。
質感を実現する方法
質 感 と は、 人 間 の 感 性 に 訴 え る 快 適 さ の こ と
で す。 心 地 よ い 空 間 と は、 そ の 家 の 住 人 を 柔 ら
か く 包 み 込 む の で す。 何 を 快 適 と 感 じ る か は 人
を心地よく感じない
に よ っ て 異 な る 感 受 性 を も っ て い ま す。 木 の 家
人 も 多 く い ま す。 京
山 々・ 木 の 家 づ く り
の 会 で は、 山 の 木・
日本の木をテーマに
家づくりを行ってい
ま す。 ほ と ん ど 日 本
人は木の環境を快適
と感じる感性を身に
つ け て い ま す。 そ れ
が今失われていると
思 い ま す。 つ い 最 近
ま で、 日 本 の 家 は 木
で出来ていると相場
が 決 ま っ て い ま し た。
日本は森林資源国で
す。 こ の 森 林 資 源 を
活 用 す る 運 動 は、 人
の快適な空間づくり
と 相 性 が 良 い の で す。
京 山 々・ 木 の 家 づ く
りの会はこの木を使
う様々な手法を開発
し、 心 地 よ い 空 間 づ
くりを創造すること
を目指しています。
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土間空間にある無垢材の階段 赤色の壁紙で個性的なトイレ
古材ゴロンボの吹き抜け
暖炉のある土間空間の利用
に、 住 ま い は 全 て 異 な っ て い る 時 代 に な り ま し
高い天井とゴロンボを使ったレトロ感のある2階の子供部屋
法と捉えることができます。
たものが人間に快適さを与える機能を使った手
い も の が 良 い と 言 う 意 味 よ り、 素 材 感 を 活 か し
の 方 法 が、 京 山 々 レ ト ロ で す。 レ ト ロ と は、 古
に与える快適さに注目してチャレンジした一つ
限 の 潜 在 力 を 持 っ て い ま す。 こ の 無 垢 材 の 人 間
必 要 が あ り ま す。 無 垢 材 は、 こ の 代 表 と し て 無
快適感を作りだす現代的な手法を開発していく
の 上 で、 人 間 環 境 と し て の 家 づ く り に 楽 し く、
コ ス ト 効 率 も 視 野 に 入 れ る 必 要 が あ り ま す。 そ
し て の 豊 か さ を 引 き 出 す こ と が 出 来 る の で す。
無垢の素材感を引き出す
木 の 家 は 無 垢 材 で 作 り ま す。 日 本 の 家 は、 元
来﹁ 木 ﹂ と﹁ 土 ﹂ と﹁ 紙 ﹂ で 出 来 て い ま し た。
自然に存在するもので家づくりを行っていたの
で す。 こ の 基 本 的 な 人 間 環 境 が た ま た ま 戦 後 の
復興期と重なり石油製品の恩恵によって過剰に
素 材 が 交 代 し た の で す。 今 そ の 揺 れ を 修 正 し て
い る 時 期 と 考 え る こ と が で き ま す。 設 備 面 や 安
全 面 で の 効 率 は こ の 恩 恵 で 向 上 し ま し た。 し か
し、 人 間 環 境 と し て の 家 を 考 え た と き、 自 然 素
材 が 人 間 の 身 体 に は 優 し い の で す。 こ の 無 垢 材
の 素 材 感 を 引 き 出 す こ と に よ っ て、 人 間 環 境 と
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自然の力﹁光﹂と﹁風﹂を活用する
窓 か ら 入 る 太 陽 光 は、 パ ッ シ ブ な 自 然 の 力 に よ
冬 の ダ イ レ ク ト ゲ イ ン は 家 を 暖 め ま す。 南 の
て、 そ の 反 対 方 向 に 窓 を 開 け る こ と で す。 そ う
です。即ち、建築する土地の夏の風の方向を計っ
ギ ー の 方 法 は、 室 内 に 自 然 の 風 を 呼 び 込 む こ と
夏の暑さをしのぐ最も効果的でローエネル
涼しさは﹁風﹂
る エ ネ ル ギ ー で す。 こ の 恩 恵 は 意 外 と 気 が つ い
暖かさは﹁輻射﹂
て い て い な い の で す。 土 地 の 使 い 方 や 建 物 の 配
することによって自然の風が家に入ります。
昔 の お 寺 の 本 堂 は、 涼 し く 感 じ ま し た。 そ れ
置 で、 こ の エ ネ ル ギ ー を 用 い る こ と が で き る の
です。さらに南に吹き抜けの廊下を配置すると、
昨 今 は、 輻 射 熱 の 気 持 ち よ さ か ら 薪 ス ト ー ブ
機 を 使 わ な く な り ま し た が、 実 は 扇 風 機 は、 最
理 を 現 代 に 生 か す 必 要 が あ り ま す。 昨 今 は 扇 風
い く た め に、 体 が 冷 え る の で す。 自 然 の こ の 原
は、 夏 の 太 陽 光 が、 大 き な 屋 根 と 大 き な 天 井 裏
に 関 心 が 集 ま っ て い ま す。 ス ト ー ブ か ら 発 せ ら
も効率的な涼しさを体に与える良い方法なので
のお陰で、本堂の室内温度を上げません。さらに、
れ る 輻 射 熱 は 直 接 体 を 暖 め る の で す。 こ の 効 果
す。 ク ー ラ ー を 用 い て、 室 内 の 温 度 を 下 げ る シ
そ の 効 果 は 倍 増 さ れ ま す。 日 の 光 を 浴 び な が ら
は バ ツ グ ン で、 一 度 薪 ス ト ー ブ の 暖 か さ を 知 っ
ス テ ム に 慣 れ て し ま っ た 現 代 人 に は、 扇 風 機 の
の縁側での日向ぼっこは、日本の原風景ですが、
て し ま う と 虜 に な っ て し ま い ま す。 こ れ と 同 じ
風 で は 不 十 分 と 感 じ ま す が、 今 一 度 エ ア コ ン を
裏 山 の 木 々 の 自 然 が 起 こ す 風 が、 室 内 を 通 り 抜
原 理 で、 南 の 窓 を 冬 の 太 陽 光 線 の 入 射 角 を 計 っ
極力使わない生活スタイルを考える時期でもあ
け ま す。 こ の、 風 は 気 化 熱 が 体 か ら 熱 を 奪 っ て
て室内に入れる方法がダイレクトゲインの方法
り ま す。 自 然 の 力 を 借 り て、 そ れ で も 足 り な い
これは暖かさを自然から得る一つの知恵なので
で す。 都 市 の 中 で、 直 射 日 光 を 取 り 込 む こ と が
時 に は、 エ ア コ ン に 頼 る、 そ う し た 生 活 ス タ イ
す。
難 し い 場 合 が 多 い で す が、 家 づ く り の 基 本 と し
ルになることも考える必要があります。
てプランづくりに活かすことが大切です。
陽 の 光 は、 万 人 に 与 え ら れ た 地 球 の 恵 み な の
です。これを使わない手はないと思います。
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下:藤井厚二作の聴竹居。冬は南のダイレクト
ゲインで部屋の中が暖かく、夏は、地中の冷え
た熱を利用し、屋根裏の熱気を排出する自然装
置が付いてます。
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職人の手で造る
工業製品への信頼感ではなく、職人の技へ
の関心が高まっています。人間らしさや温も
り感が忘れ去られた反動でしょうか?工業的
なデザイン価値よりも人間的フィット感の価
値を大切にする傾向があります。空気がおい
しいと感じる家が求められています。
伝統の知恵と技を現代に活用する
与 し ま す。 こ の 伝 統 的 な 職 人 関 係 は、 現 在 で も
ク ロ ス 屋 さ ん、 洗 い 屋 さ ん な ど が 家 づ く り に 関
電気屋さん、塗装屋さん、表具屋さん、畳屋さん、
石屋さん、植木屋さん、建具屋さん、水道屋さん、
大 工 さ ん、 瓦 屋 さ ん、 板 金 屋 さ ん。 左 官 さ ん、
その専門技術を持って、建物の建設を行います。
代 的 な 簡 便 構 法 と は 異 な り、 そ れ ぞ れ の 職 人 が
大 工 の 棟 梁 を 軸 と し た こ の チ ー ム ワ ー ク は、 現
梁を﹁あらわし﹂ 部
( 屋の中で梁を意匠的に見せ
土 間 の タ タ キ 仕 上 げ も 復 活 し て い ま す。 構 造 の
す。 ベ ン ガ ラ や 柿 渋 塗 装 も 見 直 さ れ て い ま す。
ま す。 広 葉 樹 の 無 垢 板 を 天 板 と し て 使 っ て い ま
コ ラ ボ さ せ て い ま す。 古 石 の 味 が 見 直 さ れ て い
見 直 さ れ て い ま す。 鉄 を 火 で 柔 ら く し て 木 材 と
始 ま っ て い ま す。 ヒ ノ キ の 縁 甲 板 の 床 の 良 さ も
直 さ れ て い ま す。 古 建 具 を 新 築 に 用 い る こ と も
げ が 尊 重 さ れ て い ま す。 木 製 建 具 の 引 き 戸 が 見
土 壁 の 良 さ が 今 見 直 さ れ て い ま す。 漆 喰 仕 上
続いています。そして、現代の木の家づくりは、
ること に
) す る 方 法 も 人 気 が あ り ま す。 家 づ く
りは新しく伝統を見直すこから始まっています。
を磨いた職人さんの手の温もりが必要なのです。
様 々 な 技 術 開 発 に よ っ 進 化 し て い ま す。 質 の 高
京山々レトロとはそうした活動の総称と捉える
木 の 家 は 大 工 職 人 を 初 め と し た、 様 々 な 職 方
い 木 の 家 づ く り を 実 現 す る た め に は、 こ う し た
の コ ラ ボ レ ー シ ョ ン に よ っ て 出 来 上 が り ま す。
職 人 さ ん の 力 無 し に は 実 現 で き ま せ ん。 温 も り
ことができます。
えんこいた
の あ る 無 垢 材 の 良 さ を 活 か す た め に は、 人 間 技
10
11
家づくりに参加する
建 築 の プ ロ の 職 人 と 素 人 の D I Y (Do It
Yourself の略 ) は同居するのです。家づくりに
参加し、地域に参加し、価値観を共有する人と
コミュニケーションを結ぶのです。人間関係は、
価値観で結ばれるのです。その価値観を生み出
すことが、個人個人の家づくりなのです。
関心があるのは当然ですが、こうした視点を持っ
た若者の登場することで日本の木造は新しい息
曜 大 工 が 高 じ て、 家 づ く り に 走 る 年 齢 層 が あ り
こ と を し 始 め た の で す。 ひ と 昔 前 は、 趣 味 で 日
て も、 自 分 の 家 へ の 愛 着 か ら、 自 ら 手 を 加 え る
家 づ く り に 参 加 し 始 め た の で す。 技 術 的 に 劣 っ
ま っ て い ま し た。 し か し、 現 代 の 若 者 は、 自 ら
家づくりはプロの職人さんが行うと相場が決
技術の深さなどへの愛着がこうした流れを作り
す。 経 年 変 化 し た 家 の 重 厚 感 や 素 材 感、 職 人 の
は満足していないかがここに見ることができま
敬 意 で す。 如 何 に、 現 在 供 給 さ れ て い る 住 宅 で
の あ る 家 へ の 憧 憬 は、 日 本 の 木 造 文 化 に 対 す る
古 民 家 再 生 の 動 き と 連 動 し て い ま す。 古 い 歴 史
捉 え る 若 い 世 代 が 増 え て い ま す。 京 町 家 再 生 や
す。
務所は多くの引き出しを用意する必要がありま
うするお施主さんの要望に応えるために設計事
このように真剣に個性的な家づくりを目指そ
木造文化に興味を持つ
ま し た。 そ れ は 自 分 で 作 る 喜 び が 主 体 で し た。
出 し て い る の で す。 こ の 日 本 の 木 造 文 化 の 深 さ
吹をもつことが出来ます。
そうした趣味ではなく実用的に参加できるとこ
と 楽 し さ に 触 れ た 時、 思 わ ず 体 を 動 か し て 参 加
い ま せ ん。 京 山 々・ 木 の 家 づ く り の 会 で は、 こ
現代では手間のかかる作業のためにほとんど行
タタキ︵三和土︶土間仕上げはにがり 塩
( と
)
赤 土 を 混 ぜ て 木 の 槌 で 叩 い て 固 め る 手 法 で す。
具体的DIY参加例
ろ に 参 加 す る の で す。 一 般 的 に は、 土 壁 塗 り や
したくなったのです。
の作業をイベント化して多くの人の参加を得て
です。この手法は、﹁土間が現代の家には必要で
行 い ま し た。 勿 論、 お 施 主 さ ん の 希 望 に よ っ て
家 づ く り を 設 計 事 務 所 に 依 頼 す る と、 専 門
す ﹂ と 言 う 京 山 々 の 考 え と、 実 際 に 土 間 を 気 に
設計行為への参加
塗 装 と 言 っ た 軽 微 な も の で す が、 現 場 で の 参 加
だけでは無く、家づくりを考え、手法を検討し、
設 計 行 為 や、 調 達 行 為 に 及 ぶ 木 の 家 づ く り 全 般
に 対 す る 興 味 と、 日 本 の 家 づ く り シ ス テ ム へ の
という返答で家づ
そ の た め に、 日 本 に 継 承 さ れ て き た 木 造 文 化 は
同時に工業製品が輝かしくきらめいていました。
統 や 文 化 を 否 定 的 に 捉 え る 傾 向 が あ り ま し た。
ん で い ま す。 戦 後 の 西 欧 志 向 は、 日 本 古 来 の 伝
参 加 し た い、 自 分 も の に し た い と い う 願 望 が 潜
は、 深 み が あ っ て 楽 し く 味 わ い 深 い 家 づ く り に
と 捉 え る こ と が で き ま す。 そ し て 関 心 の 中 心 に
活用すると言う新しいスタイルが芽生え始めた
中 で、 地 域 工 務 店 に 依 頼 し な が ら、 地 域 の 材 を
導 い て い き ま す。 家 は 買 う も の か ら 地 域 社 会 の
こ の 現 象 は、 日 本 の 家 づ く り を 新 し い 方 向 に
一 方 で あ り ま す が、 一 方 で は、 自 分 の 生 活 環 境
は木造文化体系を理解した数寄者という解釈が
材 を 検 討 で き る よ う に な る の で す。 普 請 道 楽 と
き る よ う に な り ま す。 自 分 に 相 応 し い 空 間 や 素
る と か、 自 分 で 施 工 参 加 す る と 言 っ た 判 断 が で
が 専 門 的 で ど こ に 自 由 度 が あ り、 選 択 の 巾 が あ
た 内 容 が あ り ま す。 一 度 理 解 が 深 ま る と、 ど こ
生 活 す る 家 の こ と で す か ら、 日 常 生 活 と 直 結 し
ク リ エ イ テ ィ ブ な こ と を 考 え 始 め ま す。 人 間 の
か? こ ん な こ と は で き な い だ ろ う か? と 様 々 な
う し て こ う な る の だ ろ う? こ う で き な い だ ろ う
造 文 化 に 興 味 を 抱 い た お 施 主 さ ん は、 次 第 に ど
く り が 進 ん で い き ま す。 と こ ろ が、 こ う し た 木
しい事例です。
入って作ったDIYの気持ちが合致したすばら
とか
敬 遠 さ れ ま し た。 古 く、 勢 い が 無 く、 陳 腐 で、
への興味が高じた結果と解釈することが出来ま
家の提案する手法に
同 じ こ と の 繰 り か え し と 捉 え ら れ た の で す。 と
向学心から始まった動きなのです。
こ ろ が、 今、 こ の 木 造 の 家 づ く り が 活 き 活 き と
す。対象が自らの家での日常生活の場ですので、
no
した楽しい日本文化に触れる絶好のチャンスと
YES
12
上:土間のタタキ仕上げの作業
上:ベンガラ塗り作業
上:玄関の上り框を選ぶ
上:漆喰塗り作業
上:踏み板選定中
上:上棟式風景
上:古建具の選定
上:ゴロンボの洗浄中
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自然を生活に取り入れる
夏の通風、冬の太陽光の直接入射、室内の
日中の明るさ、庭の眺め、空間の広がり、空
間の豊かさ、素材の質感、空気の流れと言っ
た住環境の相互的な豊かさを求める動きが現
れ始めています。人間環境トータルな視点か
らの「家」への評価です。
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ま す。 採 光 の 確 保、 風 の 通 り 道、 ダ イ レ ク ト ゲ
住 宅 に お い て は、 開 口 部 は 様 々 な 役 割 を 持 ち
に取り込むことが出来ます。
が調和すると四季の変化や光や風の変化を室内
内 を 広 く 見 せ ま す。 開 口 部 の 大 き さ と、 景 色 と
す。 そ し て、 部 屋 か ら の 自 然 へ の 広 が り は、 室
庭 は、 景 を 造 り 生 活 者 の 気 持 ち を 豊 か に し ま
でも、季節感を取り込む手法は様々にあります。
四季の変化を味わう空間づくり
日 本 の 美 意 識 は、 自 然 観 を 大 切 に し ま す。 自
然と同化する様々な手法が千年以上に渡って継
承 さ れ て い ま す。 家 づ く り に お い て 自 然 の 恵 み
を ど う 取 り 入 れ る か は 大 き な テ ー マ で す。 し か
し、 一 方 で、 多 く の 場 合、 家 の 庭 を 確 保 す る 空
間 が 少 な い こ と も 事 実 で す。 し か し、 僅 か な 空
間 と 景 色 と し て 室 内 に 取 り 込 む こ と は、 設 計 レ
ベ ル で の 大 き な 課 題 で す。 与 え ら れ た 狭 い 空 間
イ ン の よ る 太 陽 熱 の 取 り 込 み、 窓 か ら の 放 射 熱
の 遮 断、 そ し て 景 色 の 額 縁 と し て 機 能 で す。 特
に 南 の 開 放 開 口 部 は、 こ れ ら の 多 義 的 な 要 素 を
四 季 の 変 化 を 味 わ う た め に は、 庭 の 景 の つ く
複合的に消化した機能を持つ必要があります。
りかたも四季の変化を想定しておく必要があり
ま す。 建 築 計 画 に お い て は、 窓 か ら 何 が 見 え る
か? 四 季 の の 移 り 変 わ り に よ っ て 景 色 が ど う の
よ う に 変 化 す る か? 夏 と 冬 で は、 光 と 風 が ど の
よ う に 変 化 す る か? は 事 前 に 検 討 し て お く 必 要
があります。
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︽コラム︾
こころ
い
ま
数寄屋の精神を現代に
竹内
明
株式会社
竹内工務店
代表取締役
私 達 は、 京 都 と い う 日 本 の 中 で も 歴 史 あ
る文化の高い風土を持つ土地に住まい暮らし
て い ま す。 海 外 へ 目 を 向 け て も 近 代 国 家 の ア
年前の古い住宅が今
メリカにない欧州の国々に匹敵する歴史や文
化が日本にはあります。
例 え ば、 イ ギ リ ス の
年住
年をゆうに越えるものが今なお現存
100
町家も
に造られた民家が現存していますし民家や京
る 訳 で す が、 日 本 で も 最 古 の 民 家 は 室 町 時 代
でも使われているという事実に驚かさせられ
500
し て い ま す し、 い ま さ ら 長 命 化 住 宅 ー
100
使 う 手 法 は、 我 々 の 常 套 手 法 に な り つ つ あ り
し た。 新 し い 家 に 古 い 家 で 使 っ て い た 材 木 を
ような深い味わいと風味をかもしだしていま
が ご と く、 時 を へ て 醸 成 さ れ た ウ ィ ス キ ー の
て、 あ た か も 古 い 家 の 歴 史 を 新 し い 家 に 紡 ぐ
欅の地板が何ともいえない風合いを出してい
あ り ま す が、 そ れ は 年 を 経 て 飴 色 に 変 化 し た
床の欅の地板を新しい家の敷台に使った事が
けやき
生まれた DNA
がそうさせるのだと思います。
施主の想いで家族の歴史を刻んだ古い家の
それは単なる郷愁だけではなく我々の持って
年を経るごとにその感情は強くなってきます。
私 達 は、 古 い 物 に 非 常 に 愛 着 を 感 じ ま す。
を続けています。
宅といわれるまでもなく私達はその家づくり
京山々倉庫
上:キッチン背面収納をナラと
ウォールナットで製作しました。
モジュールがあったのですが︶そして四季の
方をしています。︵もちろん京間という共通の
きょうま
を他の部屋に敷代えたりと大変合理的な使い
と お し み 古 い 木 や 建 具 を 使 い 廻 し し た り、 畳
京 都 人 は 住 ま い の 中 で 古 い も の を 愛 し、 い
新しい役割を与えることができるのです。
ま す。 無 垢 材 は、 そ う し て 次 の 世 代 で も 充 分
下:階段の壁にニッチを無垢板
で設けました。
16
下:ロートアイアンで造ったオ
リジナのスイッチプレート
で錆を止めてしまう鋼材です。
■コールテン鋼
コ ー ル テ ン 鋼 は、 1930
年代にアメリカの研
究者が、強度に優れた高張力鋼を開発しようと、
いろいろな元素を添加していた過程で、銅・ク
ロ ム・ ニ ッ ケ ル・ り ん を 添 加 し た 低 合 金 鋼 に、
年代
耐候性能があることを発見しました。 1960
になってアメリカでは、建築材料や鉄塔、ガー
ドレールなどに普及し始めました。日本でも同
じ頃、各鉄鋼会社から湿気の多い日本の気候に
合 っ た コ ー ル テ ン 鋼 が 商 品 化 さ れ、 主 に 船 舶、
ではコールテン鋼はどのように錆にくくなって
鉄 道 車 両 な ど に 用 い ら れ る よ う に な り ま し た。
いくのか?コールテン鋼は、大気中において乾
湿を繰り返しているうちに、その表面に綿密で
密着性に優れた錆が形成されます。この錆を﹁保
護性さび﹂と呼ばれています。この保護性さび
は普通の鋼材のさび層と違い、2層構造をして
います。2層構造の鋼材に近い内層さびで銅や
ニッケルなどの合金元素が濃縮し微細なさび層
を形成することにより、高い環境遮断機能を作
り防食性を高めていると言われています。ただ
し﹁保護性さび﹂は、数ヶ月∼数年掛けてゆっ
くりと作られていきますこの時間の流れが自然
な素材感なのかもしれません。
鉄と木を組み合わせることは、お互いの存在
■素材感
感を高め合う効果があると思います。たとえば
鉄の力強さと木の柔かさのように。しかし有機
質な木と無機質な鉄は簡単に協調してくれませ
ん。
京山々レトロでは、ゴロンボの古材や古建
具の木に対して鉄はロートアイアンによる手作
り感やコールテン鋼の質感のようにレトロ感を
出す事で、鉄と木が協調したのではないかと思
います。
17
上:ロートアイアンのとコール
テン鋼の表札
京山々レトロの流通
※この建物は新築住宅です。
18
京山々レトロを住宅商品化する
「質」を問う時代になってきました。建売住
宅の人気が低下していることと、このテーマ
とは、深い関りがあります。今、家を求めて
いる層は、団塊世代のジュニア世代です。こ
の世代は、自分の気に入った住み心地をも求
めたいます。
たのです。ステレオタイプ化された住宅商品は戦
付加価値住宅としてパッケージ化の必要
住 宅 商 品 は、 一 般 に 建 売 住 宅 と 呼 ば れ て い ま
よって発達した手法です。同じ型式住宅を多量に
者と住宅購入者の関係の中で適度なバランスに
が必要とされる社会状況の中で発達した住宅供給
あって、住宅供給者の手詰まり感が強く売れる住
増えて、住宅余り現象が生じています。その中に
を求める人が少なくなって、一方で住宅は空家が
この住宅商品が今苦戦を強いられています。家
後に復興期を象徴する社会現象となりました。
供給することによってコストパフォーマンスを向
宅商品化が必要な状況となっています。一方、住
す。建売住宅は、戦後の日本において多量な住宅
上させ、家を求める人々に適度な価格で供給でき
宅への欲求は、京町家へのニーズのように本物の
家、質感のある家が求められています。家は﹁住
む器﹂から﹁生活を味わう家﹂へ変化しています。
ところが、土地価格の高い都市部では、土地と建
物との総額は、ローン借入れの対象から大きく外
れる場合が多いのです。従って、こうした﹁生活
を味わう﹂個性的な住宅商品を求めようとしても、
総額で土地と建物をパッケージ化した住宅を選ば
ざるを得ない状況があるのです。こうした市場の
ニーズを汲み取り、その住宅商品をコストバラン
スを図りながら、嗜好性を満足させることが出来
る住宅商品は今後の大きなマーケットと言えるで
しょう。
土地と建物の総額でより良い家を求めるニー
ズの一方で、京山々レトロのような付加価値住宅
商 品 を 求 め る ニ ー ズ が も う 一 つ あ り ま す。 ワ ン
パッケージ商品ニーズには価格対コストの視点だ
そ れ は、 気 に 入 っ た 家 は 欲 し い が、 家 づ く り
けでは無いのです。
を考え、設計事務所や工務店と一緒になって汗を
かく手間が取れない人がいるのです。自分の気に
入った家づくりには、相当な努力と学習が必要で
す。一生に何度も家づくりの体験をする人は少な
く、多くの人は、初めての経験となるのです。し
かも、金額的には多くの負担を強いられます。そ
うした家づくりに手間と時間を割くことが出来に
く い 人 が 存 在 し て い る の で す。 こ う し た 人 々 に
とって、京山々レトロのような付加価値商品は、
嗜好性が合わせたすばらしい商品なのです。こう
した商品は同じ建売と言う概念で纏めることは難
しい範疇です。嗜好性が多様化して、あらゆる商
品が選択肢として考えられる時代に、明確な嗜好
性をもった人達への住宅商品づくり求められる時
代になったのです。
19
住宅完成商品を求めるニーズ
上:京山々レトロ商品住宅の販売風景
住宅商品販売パンフレット
20
21
22
23
24
25
︽コラム︾
不動産は変化する
西村孝平
株式会社八清 ハ
( チセ )代表取締役
26
自然を愛で、季節ごとに建具を換えたり床の
間に季節の花や植物を飾ったり自然を友とし
て暮らしてきました。まさに数寄屋の精神性
数寄屋は一服のお茶の味わいを通じて、季
がこのなかにあります。
節の移ろいを感じるわび寂びの小空間に、い
ろんな樹種の木を使い空間やひかりの変化を
一 定 の 枠︵ 人 を も て な す 設 え の 場 を 持 つ ︶
つけて自由に遊びをもって楽しんでいます。
の中で思う存分、自身が住まう事を楽しむこ
とができるのが数寄屋の精神性をもつ家と私
は思います。
日常の中でふと非日常を憶い、都市の住
まいのなかで四季の季節を感じることのでき
る住まい、人生の中で最も時を多く過ごす家
を創るこの最も大事な住まいづくりの実現を
﹁京山々・家づくりの会﹂がお手伝いします。
27
そしてその新しい感性の家づくりのヒント
TEL:075-882-7878
をこの京山々倉庫で見つけていただければ幸
京山々倉庫:京都市右京区嵯峨北堀町 23( 覚雄山 鹿王院の隣 )
いです。
下:タモとウォールナットで作っ
たタタミベット。
上:玄関に赤の拭き漆のケヤキ
板を用い、収納扉に和紙を貼り、
玄関の風合いを演出しています。
京山々レトロの手法
※この建物は新築住宅です。
28
古材を使う
「古材は古材にして新材にあらず。
」と言う
言葉は、材料が高価で、人件費が安い時代に
古材が新材とは別の材料ですとの意味でした。
今、古材は貴重な「質感」を表現する希少価
値を持つ材料です。時間が生み出す価値に再
度注目したいと思います。
古 材 は、 古 材 商 が 市 場 を 形 成 し て い ま す。 一
の作業によって建物から外された古材は、釘や金
のかかる作業で、経験者でないと出来ません。こ
古材を新築の建物で使う
般に古材と言えば地松のゴロンボ 断
( 面架構を施
この手間を必要とする古材の加工は、一般的には
物を取り去って古材商によって商品となります。
さない部材 を
) さすことがほとんどで、古材商も
このゴロンボを主力に集めて、販売しています。
高価で、味わいのある家づくりや民家・町家の再
京 町 家 の 再 生 を 多 く 手 が け て い る 京 山 々・ 木
生でないと用いません。
古 材 は、 古 い 民 家 や 町 家 を 解 体 し た 時 に 出 ま
すが、この解体時に﹁手解体﹂を行って、丁寧に
建物から外します。この﹁手解体﹂の作業は手間
の家づくりの会では、この古材を京町家再生では
頻繁に用いています。この経験から古材の味を活
かして新築の家づくりへのチャレンジを様々な機
会に行っています。古材を新築で使うためには、
大工職人の技術力が必要です。幸い京町家の再生
で鍛えられている大工さんの技術力は、容易にこ
右ページの住宅は京山々レトロの新築木造で
のことを実現できるのです。
す。古材市場から調達したゴロンボ梁を活かしま
した。柱や一部の一般の梁は新材を用いています。
床にエイジング加工したフローリングを用い、
古建具を用い、ロートアイアンで階段の手摺を作
りました。こうした処理によって、新築の家が素
材感のあるレトロなイメージを出すことが出来ま
した。古民家改修や京町家の改修とは異なった質
感を生み出すことができました。この住宅商品は、
気に入った購入者が現れて、大事に使われていま
す。新築に質感を与える一つの方法です。
古材活用は木造文化継承の契機
古材は、戦前の木造建物が次々と解体されるた
年は容易に使えます。森林資源の豊富な日本は、
つくろ
木造加工技術を高度に体系化しました。さらに、
木造の家を繕う技術も高度に発達しています。今
は新材を購入した方が木材材料費が安い状況で
す。一度使われた木材はユンボで簡単に解体処分
してしまいます。しかし、日本の木造文化では古
材は再利用できる素材です。そして、それを建物
に再利用する技術も伝承されています。木造体系
の維持発展の視点と、住宅に求めている﹁質感﹂
との双方に観点から、古材を活用することが出来
るのです。今、改めて木材の自由度と付加価値を
見直す契機として、古材の活用を考えたいと思い
ます。
29
び世の中にでてきています。木材は、三∼五〇〇
上:古材のゴロンボ梁を使った例 下:古材商で販売している古材の状況
レトロ手法で新しい消費者層を発見
新 築 の 住 宅 商 品 を 求 め る 人 は、 京 町 家 の 再 生
を求める層に比べて構造的な安定性や設備面の快
適性を重視します。新築の住宅商品では素材感へ
のこだわりや質感への期待はあまりニーズが無い
のかと想像していました。こだわり家づくりを求
める人は、設計者への依頼者や特殊な工務店への
依頼する方向へ流れていくと漠然と捉えていまし
た。京山々・木の家づくりの会のお施主さんは、
今回の京山々レトロの住宅商品化は大きな波
そうしたそうした層が多いのです。
紋を投げかけました。この実験で分ったことは、
超えなければなりません。資金の制約の中で求め
識の無い中で、理解しがたい難しい判断を幾つも
確かに、家づくりは疲れる作業です。専門的な知
れている消費者は、木の外観にびっくりしたので
メージが良かったのです。サイデイング貼りに慣
ります。もう一つは、レトロ感のある懐かしいイ
家の中で、床がしっかりしていると、安心感があ
めに、部屋の内部がきりっと締まっているのです。
エイジング加工した無垢材を用いました。そのた
る道をさがさなければなりません。多くの事例か
す。まるで、
体バランスを重視する購入層が存在するのです。
ら自分に適した回答をさがさなければなりませ
年前に戻ったかの様なイメージを
ん。そうしたわずらわしさから開放されて、出来
えを持った購入層が潜在ニーズとして数多く存在
いかどうかを判断するだけなのです。こうした考
品です。価格と場所と内容が自分にとって相応し
たものを選択するだけのことができるのが住宅商
ありました。
のレトロな建物に相応しく無いとの意見が幾つか
アルミサッシュの機密性を重視したのですが、こ
じたのです。アルミサッシュが以外と不評でした。
与えます。勿論細部のこだわりに、家の質感を感
るのでは無いという事実です。木の家を求めたい
と考える人だけが質感のある家づくりを求めてい
し て 自 分 の 家 に 仕 上 げ て い く こ と が 大 切 で す。﹂
す。一つは、本物素材は、やはり人の感性に訴え
良いと言います。これは、2通りの意味がありま
ホームページの写真で見るより実際の建物の方が
京 山 々 レ ト ロ に 集 ま っ た 人 々 は、 異 口 同 音 に
い住まいづくりの方向性となったのです。
と言う主張が京山々レトロです。この結果が新し
﹁人間の住まいには、質感が必要とされるのです。﹂
要 視 さ れ る 中 で、 こ う し た こ と と は 全 く 異 な る
長期優良住宅で家の性能と耐久性ばかりが重
するのです。
人=汗をかいて家づくりを行う人だけではないの
る力を持つと言うことです。今回は、床に幅広の
消費者は、
﹁平成の質﹂を求めています
です。木の家を望みながら、住宅商品としての全
﹁家づくりは設計して工務店と一緒になって努力
30
30
古材材材材材材材
古古古古古古古古古古古古古古
材活活活活活活
活用用用用用用
用はははははははははははははは
は木木木木木木木木木木木木木木木
木造造造造造造造造造造造造
造継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継継
継承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承承
承ののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののの
の契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契契
契機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機機
機
31
は松くい虫で、建築材料としてほとんど使われな
試みでは、外壁に松板の古材を貼りました。松板
材を選ぶことが重要です。今回の京山々レトロの
す。しかも耐久性が求められ、耐用年数のある素
が大切です。どんな外壁でも、太陽光の紫外線か
しても必要です。そうして家への愛着をもつこと
にはいきません。そうした家の維持管理は、どう
メンテナンスが必要です。張りっぱなしと言う訳
懐かしい外壁の板貼りを用いました。板貼りは、
レ ト ロ で は、﹁ 山 の 恵 み を 山 に 還 す ﹂ 活 動 か ら、
ディングが用いられるようになりました。京山々
れかかでした。しかし、コストと耐久性からサイ
本の家の外壁は歴史的には、漆喰が板張りのいず
のある家づくりは、家の外構にも神経を注ぐ必要
す。この装置にも木を使うことができます。質感
家として落ちついた環境づくりに必要な装置で
す。庭が美しく見えます。
たのですが、ブロック塀の無機質感が消えていま
れをラフに貼りました。ブロック塀の内側に貼っ
かったり、色がまだらになったりしています。そ
ものです。古材を用いましたので、高さが合わな
左 の 写 真 は、 古 材 の 松 板 に 防 腐 塗 料 を ぬ っ た
塀に木を貼ると背景として美しい
くなった材料ですが、古材のゴロンボをスライス
ら劣化を避けることはできません。永遠にメンテ
があります。庭づくりも重要な項目です。家全体
外壁に古材の板を使う
して外壁に張りました。この外壁が、素材感を持
の環境づくりを考える必要があります。
家の外観には住み手の気持ちが現れる
つのです。正面の一方のみですが、この松板の鎧
壁に木を貼る﹂ことは、忘れていた家の味をもう
ナンスフリーという素材はありません。﹁家の外
を持つ年齢層もありますが、若年層にはこうした
から考えることが出来ます。
壁とは何か?家を維持するとは何か?を家の外壁
一度思い起こす一つの方法です。家とは何か?外
家 の 外 観 は、 風 雨 か ら 家 を 守 る 役 割 が あ り ま
張りは失われていた家の外観に懐かしさを呼び戻
外壁は新鮮に写るようです。外観に木が貼ってあ
家の外構は、セキュリティ面の安全性を考え、
してくれました。ノスタルジックにこうした感慨
ると、何故か安心感を与えてくれるようです。日
32
33
エイジング処理を行う
何故、わざと古く見せる技術が発達してき
たのでしょう?時間が作り出した本物が人に
感動を与えるからです。物の生産価値ではな
い、存在価値を大切にし始めたからです。唯
一無二のものへの価値観は、時間経過に対し
ても敬意を払うのです。
左 ペ ー ジ の 下 は、 襖 紙 を 色 付 け す る 方 法 と し
な 選 択 の 対 象 と な り ま す。 床 は 平 滑 で、 足 ざ わ
の 強 い 素 材 で す。 無 垢 の 家 づ く り に お い て 重 要
床 材 は、 住 宅 に お い て 一 番 接 触 感 覚 的 な 要 素
くなりました。この材を用いることで、レトロ感
やはりその質感は落ちますが、その技術は大変良
す。実際の時間経過をしたエイジングに比べると
理の方法はそうした需要にこたえる一つの方法で
価値観が再度生まれたのです。このエイジング処
うと油拭きを施さないとどんどん退色します。し
えながら長持ちさせる方法です。白木が外部に使
襖が出来上がったのです。
よって、和紙と素材感が引き立ち、風合いを持つ
て北山杉の皮を用いて染色しました。この方法に
り が 大 切 で す。 素 足 で 歩 い て 気 持 ち よ く 感 じ る
かし、ベンガラを塗ることによって、木は呼吸を
無垢材は風合いを加工処理できる
の が 無 垢 材 の 良 さ で す。 こ の 床 材 に エ イ ジ ン グ
のある床に変わるのです。
素材が市場にでることからも、エイジングが求め
リング材のサンプルを並べたものです。こうした
左 ペ ー ジ の 上 は、 エ イ ジ ン グ 加 工 し た フ ロ ー
この伝統に技術が今見直されているのです。
ンガラを途中で施すことによって再度蘇ります。
しながら劣化していくのです。この、劣化は、ベ
元来、京町家のベンガラ塗りは木部の退色を抑
加 工 を 施 し た も の を 用 い た 例 が 左 の 写 真 で す。
た 材 料 で す。 こ の 処 理 し た 材 料 を 用 い る と 部 屋
た例です。新築でも、塗装仕上げを施すことによっ
で色付けを施して、シュールなイメージに仕上げ
の真ん中の写真は、新築の家ですが、窓枠を塗装
エ イ ジ ン グ 処 理 は 他 に も あ り ま す。 左 ペ ー ジ
た家の付加価値が向上するのです。
要があります。そうすうることによって木を使っ
す。こうした仕上げ方法をさらに研究していく必
床材の表面をブラッシングして古色仕上げとし
全体が、懐かしいイメージとなります。無垢材は、
られている材であることが判ります。
て古く悪くなると言うイメージが木材にはあり
び る こ と が、 質 感 の 原 点 で す。 時 間 経 過 に よ っ
て、風合いをだすことが出来るのです。
木 に 柿 渋 を 施 す と、 程 よ い 退 色 感 が 生 ま れ ま
エ イ ジ ン グ 処 理 を し て も、 使 っ て い る と さ ら に
ま し た。 こ の た め に、 木 造 の 家 は 一 時 見 捨 て ら
風 合 い を 帯 び て き ま す。 こ の 使 っ て 風 合 い を 帯
れ た の で す。 し か し、 そ の 風 合 い が 良 い と い う
34
35
古建具を使う
古建具市場があります。小さい市場ですが、
ニーズがあるのです。建具職人は減っていま
す。でも、日本の建具は変容しながら新しい
市場を形成してきています。若者にとって大
工職人だけでなく建具職人もあこがれの職業
になる時代かやってくるかも知れません。
36
材は古い方が良い
ほんけん
古 建 具 は、 京 町 家 の 改 修 に お い て は 無 く て
は な ら な い ア イ テ ム で す。 本 間 ( 尺 寸 =
1 9 8 0 .9 ミ リ を
) 間とするモジュールで統
一されている京間のサイズは、どの家でも建具が
3
古建具を契機に木の家の良さが再認識されてい
占領せずに、邪魔にならないのです。こうして、
化を使うことができます。引き戸の方が、空間を
ドアーよりも、空けた時と閉めたときの空間の変
同時に、引き戸の魅力も再評価されています。
定しています。
丁寧な手仕事の技です。それと古建具は素材が安
えに、古建具の持つ素材の質感と昔の建具職人の
古建具には魅力があるのです。この魅力は、ひと
と言うお施主さんがあとを絶ちません。それ程に
必要があるのです。それでも、古建具を用いたい
ると、建具を先に決めてからプランを微調整する
ません。その新築の家に古建具を持ち込もうとす
り、従って建具サイスも特別注文でなければいけ
くりを行うために、部屋によって畳サイズは異な
づくりではありません。通り芯を基準にプランづ
とおりしん
が基準で部屋が分れ、柱はその外にあるという家
です。新築の家は、本間サイズのように畳サイズ
ほんけん
家づくりに古建具を用いようとする動きが活発
こ の 古 建 具 の 質 感 に 人 気 が あ り ま す。 新 築 の
高い木建具が安く購入できるのです。
生というジャンルに限定されますが、古くて質の
るのです。これは画期的なことです。京町家の再
時に、木建具が無ければ、建具屋さんで調達でき
町家の建具は流通しているのです。古い家を直す
はまります。このモジュールの統一によって、京
6
ます。京山々レトロでは、古建具が家づくりに大
きな役割を果たしています。
37
1.0
レトロ建具を使う
本物の職人が製作する木建具ではなく、軽
快に楽しく木建具を味わう手法の開発も大切
です。まだ、木建具への愛着は芽生えていな
いのです。とりあえず、建具に個性を持たせて、
楽しむ文化が必要です。同時に引き戸文化も
取り戻さなければなりません。
38
指しています。木建具の文
味をだした建具のことを
すが、全体として現代の木の家に似合っています。
た部材があったり、退色部材があったりしていま
用いて新建具を作った例です。ベンガラが塗られ
こ の ペ ー ジ の 左 の 建 具 は、 昔 の 建 具 の 材 料 を
レンジが建具の需要の流れを変えました。
から、新作建具に挑戦し始めたのです。このチャ
無垢の材料は塗装で変化する
レ ト ロ 建 具 と は、 新 建
化 は 一 時 消 え か け ま し た。
具ですが、古建具のような
建具は大工職人にではで
このページの右の建具は、杉の板戸を濃い塗装を
め
塗って古さを表現した新建具です。建具は、部屋
き
が必要で、特殊な工具が必
きません。肌理細かい作業
面に、退色塗装を施すことによって、ムラが発生
右 ペ ー ジ の 建 具 は、 杉 の 板 戸 な の で す が、 表
の表情に個性を与えます。建具のデザインは、住
新作の建具への需要は少
して、その風合いがレトロ感を醸し出しています。
み手の個性を表現します。
なくなりました。昔の和風
チェッカーガラスの格子窓も、その額縁も、しっ
要なために、専門の建具職
の家づくりのために建具
人が製作するのです。この
職人は仕事をしていたの
とりとした質感を出しています。
さを活かした框戸の需要
給するようになり、木の良
作れるフラッシュ戸を供
これを、復活し新しい木建具文化を築くためには、
がりありました。この文化が今消えつつあります。
によって異なりました。その地方地方独自の建具
です。建具に込められた日本の室内の風景は土地
木建具は日本の木造文化が生んだ一つの傑作
で、純粋な和風住宅の衰退
が す く な く な っ た の で す。
このレトロ建具は格好の手法と言えましょう。
と供に、建具職人は機械で
そ れ と 同 時 に 技 術 は 衰 え、
新しい方向を見出すこと
と こ ろ が、 木 の 家 づ く
が出来なかったのです。
りに木建具は必要なので
す。建具職人の製作する建
具は、単純なフラッシュ戸
より風合いがあり、質感が
あるのです。この建具の魅
力がしだいに評価される
ようになったのです。建具
39
職 人 も 研 鑽 を 重 ね ま し た。
今までの、純粋和風の建具
アジアンの建具
土間を造る
土間が家の中に在るとほこりっぽいし、暖
房効果が低いとの見解があります。民家はかっ
て土間中心の暗い世界でしたから。その忘れ
ていた土間が家での生活の実感を取り戻す契
機となるのです。3LDK の家を得た今、家に必
要なことが何かを問い直す必要があります。
40
汚れ物は土間で処理していたのです。その土間が、
足空間のことです。靴を脱いで生活する日本では、
的な使い方が見直されているのです。土間とは土
に土間とは、色々な用途に使われます。この多義
その時によって変わるからです。それと同じよう
と書かれているだけです。それは、部屋の用途は
書かれていません。﹁3帖の間﹂とか、﹁8帖の間﹂
ているのです。日本の畳の間には、部屋の用途が
です。ところが、今土間空間の多様性が注目され
現 代 の 家 に は 土 間 は あ り ま せ ん。 必 要 な い の
れていた京町家から現代の住宅へ贈
家のハレとケがしっかりと区別さ
広がりと作業空間が生まれるのです。
だ け で、 予 想 も 出 来 な か っ た 空 間 の
る の で す。 玄 関 土 間 を 僅 か に 広 げ る
空間と言える機能を持つことができ
が 出 来 る の で す。 家 の 中 で の 第 3 の
玄関空間から作業空間に代わること
が 求 め ら れ ま す。 そ の 時 に、 土 間 は
は、 家 の 中 で 様 々 な こ と を 行 う こ と
本 の 生 活 ス タ イ ル で す が、 こ れ か ら
家に土間があると生活が広がる
都市生活では必要が無くなり、消えてしまったの
り物と捉えることができます。
その役割を大きく果たします。
す が、 餅 つ き の 様 な イ ベ ン ト で は、
土 間 は、 常 は 家 族 の 出 入 り 空 間 で
です。ところが生活を家の中で十全に行おうとす
の中に野菜やちょっとした大工仕事などで汚れ物
ると、土間空間の役割が脚光を浴びるのです。家
を持ち込まない生活に慣れてしまっている現代日
41
ロートアイアンを使う
鉄と木は相性が良い。との見解は新しい価
値観です。日本の木造文化は、「木」と「土」
と「紙」でできていたのです。鉄は、道具の
素材であっても、家づくりの素材ではなかっ
たのです。でも、ロートアイアンという素材
感は新しい価値を提供してくれるのです。
たのです。ロートアイアンは日本語では鍛造と言
すことを発見しました。鉄に対する概念が変わっ
は、この鉄を熱して叩くと独自の風合いを醸し出
思われていました。京山々・木の家づくりの会で
鉄は熱すると柔らかくなる
鉄は日本の家づくりでは余り積極的に用いま
せ ん で し た。 鉄 の 硬 く 強 い 表 情 は、 木 と の 相 性
が 余 り 良 く な い の で す。 鉄 は 腐 り ま す。 錆 び ま
す。この鉄と、木の家づくりとは関連性が無いと
います。一定の温度になると鉄が溶けだす温度が
あ り ま す。 こ れ を 融 点 と 言 い ま す。 7 0 0 度 ∼
1200度の範囲でこの解けた鉄を叩くと、鉄は
様々に変化します。この性質を使って、鉄を自由
に加工して、風合いを持たせる方法がロートアイ
アンという手法です。
42
ロ ー ト ア イ ア ン の 装 飾 の 一 つ し て 曲 線︵ ス ク
西洋鍛冶と言われているのもこの曲線を多く使っ
レーションを行います。この鉄の質感は、木の家
こうした鉄の技術を木の家づくりとコラボ
ているからだと思います。
なからず関係があります。ふろしきなどで馴染み
ロール︶があります。この曲線と唐草紋様とは少
の深い唐草紋様は、古くは古代エジプトやギリシ
づくりと相性が良いのです。
淘汰されていきました。その後日本の唐草紋様は、
た以降、紋様も文化と同様に日本人独自の感性に
の影響が多かったのですが、遣唐使が廃止になっ
遣唐使が廃止になる平安時代中期までは大陸文化
手法ですが、この方法だと、一度錆びてしまえば、
捉えるのです。一般的には好みの差がきつく出る
た物に見えますが、これを風合いのある素材感と
コールテン鋼です。錆びた風合いは一見汚くなっ
幕 を 作 っ て こ れ 以 上 錆 び な い よ う に し た の が、
鉄は錆びるものですがこの錆びを使って酸化
コールテン鋼という防錆処理
ヤ、ペルシア文明の植物紋様がシルクロードを経
て中国に入っていたとされています。
四季の花をモチーフした花紋様が主流になってい
後は錆びが進行しないのです。こうした鉄の特性
日本も飛鳥時代に中国から植物紋様が伝来し、
きますが、建築にはあまり紋様は用いられません
を使って、質感を出すのです。
でした。
一方西洋では建築物にも植物紋様を多く用い
られていました。そしてこの植物紋様がロートア
イアンの曲線の起源と言われ ロ, ートアイアンが
43
上:ロートアイアンを使った取っ
手です。計上の手触り感もレト
ロです。
右ページ上:ロートアイアンの
手摺の表面の仕上げの表情です。
右ページ下右:ロートアイアン
で造った蹴り板です。
右ページ下左:ロートアイアン
の階段手摺の全景です。
右:コールテン鋼で作ったポス
ト。10 年程使用していますが、
サビは止まっています。
ステンドグラスを使う
鉛ガラスへの憧れがあります。向こうの景
色が歪んで見えて、ロマン漂う世界を作って
くれます。ステンドグラスは、そんな漂うよ
うな美学ではなく、すこし強烈な印象を与え
ます。でも使い方で日本人の感性に同化させ
ることが出来ます。
アンティークな香り
英国では、建物は古いものほど価値を持つと
いう常識があります。この価値観は、歴史のあ
る国に共通の価値観です。日本もそうした価値
観が骨董の世界では残っていますが、戦争とい
う文化破壊で、その価値観が消えてしまったか
に見えます。しかし、京町家という住宅の世界
でそうした価値観が少し芽生えてきたように思
何故日本の木造住宅にステンドガラスを用い
えます。
るのか?と言う質問にそれが日本の木の文化に
輝きを持たせてくれるから。という答えではい
けないのでしょうか。日本には英国のステンド
ガ ラ ス と の 文 化 的 な 接 点 は あ り ま せ ん。 た だ、
年以上昔のアンティークな輝
日本には無いきらめきをステンドグラスは持っ
ているのです。
美意識を感じるのです。
を位置づけたいと思います。なんとも言えない
ロを輝かせてくれる部材としてステンドグラス
化の流れを継承するだけでは無く、京山々レト
言う見解を持っています。純粋に日本の木造文
いステンドグラスは、京山々レトロに似合うと
は、個人の趣味の範疇です。我々は、英国の古
はんちゅう
のです。ステンドグラスを取り入れるかどうか
きは、京山々レトロに輝きをもたらしてくれる
100
44
上:玄関の脇にお施主さん自ら探してきました。
家をロマンで仕上げる心が大切です。
下:ステンドグラスの自由奔放な創造性と柔ら
かさは、個人の自由の発露が感じられ楽しくな
るのです。
上:無垢の階段の脇にあるステンドグラスはモ
ノトーンで華やかさに欠けるきらいがある玄関
ホールに鮮やかな新鮮さを提供してくれます。
右ページ下:玄関の脇に明けられたステンドグ
ラスのお陰で、玄関に光が一杯入って明るくな
りました。
右ページ上:玄関の脇に明けられたステンドグ
ラスは沈みがちな外観に華やかさをもたらしま
す。夜は特に色合いが鮮やかに映ります。
45
庭を造る
建築と造園は切っても切れない相互関係が
あります。建築の美しさは、庭が引き立てます。
庭の美しさは、建築から眺めます。この切れ
ない関係は、人の心の中に深く入ります。四
季の変化はこれを増徴します。用だけでなく
景にも心を注ぎましょう。
景は広がりを創る
庭 の 役 割 は 景 を 造 る こ と で す。 庭 づ く り は 建
築と異なり利用目的が無く、景色という美くしさ
を演出するものなのです。この役割によって住み
手の住環境が異なるのです。美しい庭に囲まれる
一方で、美しく庭を維持管理するためには、管
と気持ちが豊かになり、生活が充実します。
理に手間がかかります。費用がかかります。この
二律背反を、住み手は選択する必要があります。
人によっては、造園空間を無駄な空間で手間のか
かる場所と捉える場合もあります。
又、 緑 や 花 の 美 し さ は 欲 し い が、 で き る だ け
メンテンスフリーを望む人もいます。造園空間と
造 園 と は、 そ う し た 選 択 の 自 由 が あ る も の と
はそうした住み手の嗜好性によるものなのです。
理解した上で、四季の景色や、気象の変化に対し
て移り行く自然の変化は楽しいと感じる人がほと
京 町 家 の 再 生 を 行 っ て い る と、 必 ず 中 庭 が あ
んどです。
ります。そして、中庭の造園処理を怠ると、なん
ともおかしな空間と感じます。このおかしな感じ
は、在るべきものが無いと言う欠落感です。この
観点からすると都市生活には、緑=造園空間はな
くてはならないものです。空気と同じように、日
本人の原体験に組み込まれているようです。自然
意に同化して季節と共にを過すことが求められて
いるのです。
庭 は、 建 物 の 内 部 空 間 を 広 げ る 効 果 も 持 っ て
います。庭を部屋から眺める景色である一方、部
屋の空間的な広がり付与する装置でもあるので
す。狭い空間も庭を含めると広がりをもつのです。
人間が広いと感じる心理学的効果には明らかに庭
を含んだ空間があるのです。空間の豊かさと実際
の部屋の実空間の大きさだけでは無い空間が含ま
れるのです。
46
47
広葉樹木を組み入れる
「針葉樹」だけで出来た家は、色気が無い。
と言う表現が針葉樹と広葉樹の関係を良く表
しています。針葉樹は、まじめで遊びがない
のです。広葉樹は、輝きがあるのですが多量
に使うとうるさいのです。そんな木の使い方
をもっと深める必要があります。
広葉樹は、家の中では天板、地板、階段板、框、
さが生まれます。
広葉樹の木目は、樹木独自の味がある
木の家づくりに欠かせない樹種が広葉樹です。
木造住宅の構造材はスギやヒノキと言った針葉樹
樹木の性質や特性を理解しておく必要があります
家具などに使われます。適材適所に用いるには、
が、 こ う し た こ と は 専 門 家 に 任 せ た 方 が 良 い で
です。この針葉樹は日本の山に多量に植林されて
しょう。京山々・木の家づくりの会の木の達人は、
いて、森林資源国日本の大きな財産です。この山
の木を使って家づくりをすることが京山々・木の
うしてもストレートな均質の感じの家になってし
法があります。針葉樹だけで家づくりをするとど
せん。工場生産品ではないのです。家づくりが始
を持っています。樹木は同じものが2つと在りま
倉庫では、家づくりに活かすリーズナブルな樹種
広葉樹は、一般的に高価なものですが、京山々
ています。
経験的・体感的に木の性質を理解して仕事を行っ
家づくりの会の目的です。
そ の 家 づ く り に、 深 み と 味 わ い 与 え る 一 つ の
まいます。広葉樹は、その樹種ごとに独自の味わ
手法に、広葉樹の樹種を組合わせて使うという方
いと艶があります。その広葉樹を加えると家に生
を楽しむことが出来ます。クリは、地味ですが、
家具に適します。トチは色が白く女性的な肌触り
タモやナラは、木の性質もおとなしく万人向けで
ていて、フォーマルなイメージを持っています。
例 え ば ケ ヤ キ は 男 性 的 で、 木 目 が き り り と し
かして使うのかを考えることができるのです。
メージが形成されると、その樹種をどうしたら活
木の家づくりが楽しくなってきます。樹種へのイ
いるのです。木の木目や雰囲気が分ってくると、
えてきます。日本人は木を感じるDNAを持って
ないものですが、何回も足を運ぶとその性質が見
しいことです。最初は、木を見てもその差が分ら
まってから、こうした広葉樹を探索することは楽
芯が強く物理的なねじれもあります。サクラはす
気が生まれます。
んなりとした木目ですが、美しい肌艶があります。
こ う し た 木 の 性 質 は、 勿 論 同 じ 樹 種 で も 個 体
差があります。このような樹木の性質を理解して
室内や屋外に使うと木の家づくりの深みと艶っぽ
48
上:玄関の下駄箱への
渡りはサクラ。上り框
は、広幅のトチの皮付
き。
左:タモで作成したタ
タミベッド。両側の耳
はウォールナット。
最左:ケヤキの一枚板
のケヤキの段板。
右:皮付きのブビンガ
の建具の上框。皮の部
分が野趣を室内に与え
自然を持ち込んだイ
メージを演出。
49
土壁を塗る
土壁は、ボード下地の上に薄くぬる手法が
一般化しています。この簡便方法でも、十分
土壁の良さを室内環境に取り入れることがで
きます。DIY で、土壁に挑戦すると、家づくり
の実感を味わうことができます。
土壁の調湿機能で空気がきれいになる
の 効 果 が 良 く 体 験 さ れ ま す。 気 密 性 の 高 い 居 室
屋の快適さが異なります。マンションの改修でそ
ロスを貼った部屋と土壁を塗った部屋とでは、部
効果が異なります。珪藻土は最もポピュラーな土
されています。そしてその塗り厚によってもその
材が、土壁です。土壁塗りは様々な材料が商品化
る CO2
やその他の人間の排出物で空気は汚れま
す。この空気の浄化に最も効果を発揮する建築部
土 壁 の 調 湿 機 能 は よ く 知 れ 渡 っ て い ま す。 ク
は、 換 気 装 置 が あ っ て も、 室 内 は 人 間 の 排 出 す
壁で多くの人に使われています。珪藻土は活性炭
をはるかに上回る通気性のよさや、耐熱効果、吸
放湿効果、防虫効果などの優れた特長をたくさん
もっており、安心で健康的な暮らしを実現する壁
材として大きな注目を集めています。
京 山 々・ 木 の 家 づ く り の 会 で は、 漆 喰 塗 り を
良く使います。これは、仕上がりが多少デコボコ
でも塗り厚と素材感
が素人DIYでやっ
てものが不自然さが
無 く、 親 し ま れ て い
る か ら で す。 そ し て、
土壁の空気清浄機能
を気軽に味わえるか
らです。
土壁塗りをするこ
とは、湿式 ク
( ロスな
どの貼り材を用いず
に、 水 で 溶 か し た 土
壁で仕上げる方 反: 対
語 乾
= 式 で
) 壁の仕
上げをすることを意
味 し ま す。 こ の 湿 式
で壁を仕上げること
に よ っ て、 調 湿 機 能
が 生 ま れ、 空 気 の 浄
化が行われるのです。
建物で一番多い面
が、 壁 で す。 壁 は 住
宅 に お い て、 人 間 環
境を包み込む最大の
部 位 な の で す。 こ の
面 的 に 広 い 部 位 を、
表 情 豊 か に、 人 間 環
境 を 創 り 出 す 手 法 が、
日本の建物の歴史の
50
下:柱と壁の伝統的な
取り合い。日本の建物
の原点です。
中 で は、 土 壁 と い う
手法に定着したので
す。 今 土 壁 の 価 値 が
見 直 さ れ て い ま す。
コ ス ト 的 に は、 負 担
となること土壁です
が、 こ れ か ら の 家 づ
くりで是非検討した
い仕上げ方法です。
51
左:漆喰仕上げの壁。
畳の間と調和して人
の憩う空間うを作る。
上:櫛引きの表情のあ
る壁仕上げ。
︽コラム︾
上:コークスに風を吹き込ん
で 700℃∼ 1200℃に熱して鉄
たた
を柔らかくして、叩きます。
黒い鉄・茶色い鉄
下:茶色い鉄と黒い鉄のコン
ビネーション。
宇根田茂
株式会社
フェライオ
代表取締役
誤解している人が居るかもしれません。
■黒い鉄
鉄 は 元 々 黒 く あ り ま せ ん。 シ ル バ ー 色 が
鉄 本 来 の 色 で す。 で は な ぜ 黒 色 を し て い
る の か? そ れ は 鉄 の 表 面 に 酸 化 皮 膜 が 作
ら れ て、 そ の 皮 膜 が 黒 色 を し て い る か ら
で す。 厳 密 に 言 う と 真 っ 黒 で は な く、 青
みがかった黒色です。
ではどうしてロートアイアンと言われ
る製品は黒い色したものが多いのでしょ
う か? そ れ は 鉄 を 様 々 な 形 に す る た め に
℃以 上 の 炉 の 中 へ 入 れ、 鉄 を 軟 ら か
1000
く し て 加 工 し や す く し ま す。 こ の 鉄 を 熱
くする時に酸化皮膜が作られるため、ロー
トアイアンの鉄は黒く見えるのです。
■ロートアイアン
日本語で﹁鍛造﹂。
﹁鉄は熱いうちに打て﹂
の こ と わ ざ 通 り、 コ ー ク ス 炉 な ど で 熱 し
軟 ら か く な っ た 鉄 を、 金 床︵ 英 語 名 : ア
ンビル︶の上に置きハンマーなどで一気
に 叩 い て 形 を 作 り ま す。 京 山 々 レ ト ロ で
は、 階 段 手 摺 と 玄 関 ド ア の 蹴 板 に ロ ー ト
ア イ ア ン が 使 わ れ て い ま す。 ど ち ら も シ
ン プ ル な デ ザ イ ン で は あ り ま す が、 ハ ン
マ ー で 叩 い た 鎚 目︵ つ ち め ︶ を 部 材 に 付
け て い く こ と や、 階 段 手 摺 で は エ ン ド 部
分 を ハ ン マ ー で 丸 く 加 工 し た こ と で、 両
方とも温かみのある手作り感を出してい
ます。
■茶色い鉄
普 段 み な さ ん が 目 に し て い る 錆 で す。
普通の鉄なら錆が出てしまうと何年も掛
け て で す が 朽 ち て し ま い ま す が、 こ れ か
ら説明するコールテン鋼は自ら出した錆
52
53
京山々レトロの知恵
※この建物は新築住宅です。
54
木造の自由度を向上させる
の伝統構法は、日本の木造文化を発展させて今日
現代の木の家の技術背景は、伝統構法です。こ
業化した製品が出回っています。そうした進化を
がほとんどです。キッチンやお風呂は、高度に工
す。空間づくりは机と椅子を中心としたリビング
木の家に求められる新しいニーズ
に至っています。この技術は様々な時代に様々な
取り込む必要があります。
何 故 か 日 本 人 は、 靴 を 脱 い で、 一 段 上 が っ て
変容を遂げて今日に至っています。この木造構法
はまだまだ進化を遂げることが出来る余地を持っ
生活様式を選んでいます。西洋的に靴のままで生
活することはできないのです。この事実が独自の
空間形態を作り出しているのです。この空間の使
い方に伝統的な木の家づくりが挑戦しているので
新しい住宅スタイルは、今始まったばかりと言
す。
えましょう。そして、現在は在来構法と呼んでい
る木造構法も進化を遂げることになるでしょう。
こ う し た 要 求 に 対 し て、 構 法 の 内 容 は、 生 活
畳の空間に対する憧れも失われていないのです。
方や建てる目的も変化
空間へのニーズによって変わるのです。家の使い
し て い ま す。 大 家 族 を
支 え る 家 で は な く、 一
世代を支える家なので
す。 対 に に な り 子 供 を
生み、育て、巣立たせ、
そうした営為に必要な
生活環境としての家な
の で す。 当 然 求 め ら れ
るものが今までの木造
代 は、 家 は
構法とは異なっていま
す。 今 の
家づくりも含めて同時
進行で自分達が楽しめ
る要素が必要なのです。
そのことに価値を見出
す こ と が 出 来 た ら、 家
づくりにチャレンジす
る の で す。 社 会 的 な 価
値観で家を判断せずに、
自分達の目線で選ぶの
で す。 そ う し た、 新 し
いニーズに木の家は対
応していくのです。
55
30
上り框に自然の北山杉
ヒノキ壁ユニット風呂
ヒノキの縁甲板の廊下
ロフトのある子供部屋
ています。
現代の生活様式は立ち生活中心になっていま
畳のあるリビングは落ち着いた日本の伝統空間を引き継いだ型式です。
外 観
56
上:漆喰調の外壁はサイデング板にリシン
吹き付けです。下屋を支えているのは、北
山杉の変木です。玄関はルミサッシュの引
き戸でフルオープンになっています。
左:サッシュの額縁を木で囲って
います。南向きのベランダは太陽
の光を一杯浴びることができます。
2階に特注の布団干し場が設けら
れています。
57
右ページ:漆喰塗りの外壁と無垢材の外観
です。垂木ピッチは 30cm と細かく、屋根
はガロバリウムで、壁から浮いた形になっ
ています。門はロートアイアンでできてい
ます。
上:外壁は弾性吹き付け材でサッシュはアメリ
カ製です。玄関ドアは引き違えの木製建具です。
2 階のベランダが張り出しています。
左:アプローチの緩やかな階段がこの
家のゆとりを表現しています。洋館風
のファサードは夢のある世界が感じら
れます。
58
上:南に面する敷地で、太陽の光は中庭を
通して降り注ぎます。外壁は、アルミの波
型成型板で、耐久性があります。広い敷地
で2台の駐車場を持っています。
左:シンプルな外観に、横一の木格子がア
クセントになっています。窓からの光が美
しいシルエットを描きます。
59
右:南の光を一杯室内に取り込むリビング
です。玄関は昔懐かしい引き違いの玄関戸
です。屋根は、本物の瓦ですが、平葺きに
見える山の無い瓦です。
下:平入りの控えめのファサードです。正
面には駐車場の門があり、人は脇の入口か
ら入ります。長い瓦屋根がこの家の個性で
す。
60
左:風致地区の典型的な外観です。
瓦屋根と深い庇は落ちついてしっ
とり感があります。隣地の石積み
を合わせています。景観的統一が
大切です。
右:付け柱と付け梁で伝統的な風致地
区に相応しい外観にしています。門扉
は現代的にすっきりとさせました。四
つ目垣で塀をしています。
61
62
63
リビング
64
左:古建具の引き分けで階段、玄関ス
ペースまでリビング空間が広がります。
古材ゴロンの梁を使っています。リビ
ング手前は吹き抜けになっています。
右:土間空間と一体となったリビング
空間です。古建具を間仕切に用いてい
ます。この建具は完全引き込み戸とし
て土間への開放感を作り出しています。
下:玄関土間と一体となった、リビン
グ空間です。建具によって空間が広く
も狭くも使える構造になっています。
掘り炬燵型式のリビングテーブルです。
左:中庭に面したリビングで採光を確
保しています。ロールカーテンによっ
て光を調節しています。壁には輻射熱
暖房機がかけられています。
下:ヒノキのフローリングと北山スギ
の丸太の吹き抜け天井で、広々とした
空間です。窓からの開放性が部屋を広
く見せています。
65
上:京宿「枩邑 ( マツムラ )」のサロン
空間です。京町家の改修で宿として再
生されました。古い幅広の松板の床材
が重厚感を与えています。建具と家具
を現代感覚で置き換えました。
左:京町家改修のリビングに薪ストー
ブうぃを設置しました。薪ストーブに
よる火力と輻射熱の効果は気持ちよく
枚冬楽しんでいます。違和感無く町家
で使っています。
下:京町家の中の家具を西洋家具で纏
めました。最初はミスマッチに感じま
したが、慣れると違和感を感じません。
66
67
右:透明感のある白に構造梁を
黒でまとめました。木の味を軽
快なインテリアとして統一して
います。
下:壁際に収納をまとめすっき
りとしたリビングにしています。
シナベニアにウレタン仕上げは、
シンプルな印象を与えます。
68
上:リビングを吹き抜けにして天井高さを高くし
空間的な広さを確保しています。
上:白と軽やかな木とを取り合わせで美しく纏め
ています。
右:リビング上部を吹き抜けとして、2 階との
一体感を演出しています。
左:リビングの南
面の開口部を上部
窓に限定し、外部
からの視線を遮り、
南の光を東面に設
けて中庭からの採
光を確保していま
す。中庭がリビン
グに広がりを持た
せています。
69
ルハウス
内 装 で す。
木を用い
かな空間
がります。
ークとの
木の味を
ま す。 コ
ト打ち放
感は木と
左:漆喰と無垢材の質
感のあるリビングです。
ゴロンボ梁あらわしが
力強さを表現していま
す。木の素材感を感じ
させる表現です。
70
右: モ デ ル
「風」の内
RC の中に
ると柔ら
が出来上が
杉板とチ
混合床で木
だしてい
ンクリー
しの素材
合います。
左:南面の開口部
を全面開放した明
るいリビングダイ
ニングです。キッ
チンを中央に配
し、 周 囲 の 動 線
を フ リ ー と し た、
キッチンとリビン
グ一体型です。
上:暖炉の温もりと漆喰と木が新鮮
な空間を作り出しています。床は
スギ1等のフローリングです。コ
ンパクトなリビングダイニング空
間です。
下: リビング空間に4帖半の和室
を組入れました。大きなキッチン
と収納家具と一体型のリビングで、
自由な使い方が可能です。
71
72
73
ダイニング キッチン
74
上:梁やドア枠を黒塗りの枠として全体を
引き締めています。勝手口のドアは西洋風
に無垢板で製作しました。
左:フレームキッ
チンでリビング
を見渡す対面
キッチン型式で
す。 空 間 が 一 体
で庭も空間とし
て取り込んだ広
いリビング空間
です
右 ペ ー ジ: 壁 を
立ち上げ壁面
キッチンを対面
キッチンに仕立
て ま し た。 背 面
の作業テーブル
はトチの一枚板
で す。 料 理 本 立
てが好評です。
下:壁際に収納をまとめすっきりとしたリ
ビングにしています。シナベニアにウレタ
ン仕上げは、シンプルな印象を与えます。
75
左:京町家の土間を残して、古い流しを
タイルで新たに作りました。単純な昔の
スタイルを好みました。古家具の水屋が
質感を出しています。
中:京町家のキッチンを吹き抜けを残し
てシステムキッチンで現代的且つ機能的
にしました。京町家の良さと現代生活の
快適性の両方を追求しました。
下:壁キッチンを半分だけ対面キッチン
として使い、作業しながら会話を楽しむ
形式を採用しました。足元はイタリアン
タイルです。
76
右: 古 い 民 家
を 増 築 し て、
リビングダイ
ニングを作り
ま し た。 古 材
と新材を共存
さ せ、 現 代 空
間として仕上
げました。
77
78
右上:キッチン扉のホワイト塗装が美し
いキッチンです。
右下:天井高の高い豊かなリビングダイ
ニングです。構造用梁が美しくかかって
います。レンジフードもおしゃれな形態
をしています。
79
上:漆喰塗りの白
壁と白塗装のヒノ
キのフローリング
を基調としたリビ
ングダイニング空
間です。折れ戸の
サッシュを用いて
ます。
左ページ下:リビ
ングダイニング空
間内に階段を設置
して動線的に一体
感を作り出しまし
た。床材はヒノキ
の1等を用いまし
た。
上: L 型 キ ッ チ ン
をダイニグリビン
グの中央に配置し
て、 動 線 の 中 心 に
据えています。
左: キ ッ チ ン 裏 の
収納を家具として
作 成 し ま し た。 大
収納容量を確保し
て い ま す。 キ ッ チ
ンは壁付けの使い
易いキッチンです。
80
左: 製 作 し た キ ッ
チ ン で す。 シ ン ク
をヒモコマツの無
垢 板 に 埋 め 込 み、
収納扉はウォ−ル
ナットの突き板で
す。 壁 は タ イ ル で
仕上げました。
右−ジ下:対面キッ
チ ン で リ ビ ン グ、
ダ イ ニ ン グ、 和 室
を 一 望 で き、 外 部
のも眺められます。
81
82
83
木建具
84
上:多種類の広葉樹を配置した
かまちど
框戸です。
まさめ
上:上下にスギの柾目の板を貼
り中央に銀色のメラミン板を
貼ったフラッシュ開き戸
85
上:木目の杉板に竹の桟で止め
かまちど
た框戸です。
かまちど
上:無垢のスギの桟の框戸です。
奥の板はメラミン板です。
右ページ:引き戸
をアウトセット
において、縦框を
取りすっきりと
したデティール
としています。
下:アルミ板とガラス板の建具枠にし
ました。金属質とガラス湿と木質が新
鮮な建具を創り出しています。
上:sルミ板とアgラス板と木の鴨居
との取り合い。不思議な透明感のある
ディテールです。
86
右:鴨居をガラスと木ですっきりした建具枠としまし
た。引戸の戸袋を型板ガラスを用いています。板戸は、
丸の穴を開けた現代的な意匠です。こうして、軽やか
な引戸が出来上がりました。
下:欄間と鴨居を一体にして、欄
間にはガラスを嵌めこみました。
欄間は軽やかな室内空閑そ作る日
本の伝統的な手法です。
左:板戸の戸当たりには、クリの
ナグリの柱を当てました。引戸の
戸袋は、3枚の一枚板で構成し、
ガラスのスリットで外部の光を取
り込んでいます。
87
トイレ
88
右ページ:電話器を見つ
けて、電話器のマークの
付いた古建具を見つけま
した。自己満足的に遊び
ました。
上:手洗いの洗面器は益子焼で、蛇口はレ
トロな蛇口をお施主さんが見つけました。
壁には大谷石を貼っています。
左:手洗いは素焼きの手洗い器を探しまし
た。壁は思いきって赤の壁紙を貼りました。
腰はスギの板貼りです。
89
洗面室
90
右:2 階の洗面室を廊下に出しま
した。気楽に使うユーテリティと
しての機能を持たせています。
下:堅木のブビンガをカウン
ターに用いています。収納は
極力少なくしました。
右ページ:広めの洗面室にし
て、自由に使えるフレキシブ
ルにしました。床下には、家
具で収納を設けます。
91
︽コラム︾
上:大原にある京都庭園研究
所のモデル庭園の小屋から
の眺め。
庭づくりは家と一体
下:店舗内部から苔庭の眺め
( 瑞宝堂:京都下鴨 )
比地黒義男
株式会社
京都庭園研究所
代表取締役
庭 は、 家 か ら 眺 め る よ う に 出 来 て い ま
す。これは、庭の定義です。勿論、﹁心地池﹂
のように池の周りを巡りながら散策を楽し
むように作られる庭もありますが、最小単
位の庭とは、家から眺めるように出来てい
ます。
庭 の 主 人 は、﹁ 人 ﹂ で す。 人 の 心 に 響 く
景色が庭を造る目的です。庭は用がありま
せん。庭が在っても、人間の役には立たな
い の で す。 こ の 庭 が 必 要 物 で 無 い こ と が、
庭を造る意味なのです。この逆説的な存在
は、人間の心の問題としてに捉えると簡単
に解決するのです。人は庭を見て、美しい
と感じます。良い雰囲気とうっとりします。
そうした人間の心を捉えて離さないのが庭
です。人によって美意識は異なります。何
を 美 し い と 感 じ る は 文 化 背 景、 社 会 背 景、
成長環境、現在の興味によって時々刻々変
わります。しかし、その人に嗜好性は、あ
る年齢になると一定の枠の中に入ってきま
す。その美の判断意識が、その人の庭への
求める﹁美﹂なのです。
庭 を、 家 か ら 眺 め て い る 時、 時 々 家 に
居るのか庭の中に同化しているのか、良く
判らなくなります。これは、日本の庭の特
徴なのですが、縁側から先の庭の空間は実
は、家のなかの延長なのです。そして、庭
が家の中に入り込んでいるのです。そして
庭は見る人の心のなかに入り込んでいるの
です。この相互貫入こそがが日本人独自の
ですから、庭を造るときは、目線を部屋
美意識なのです。
の見るべき想定位置から眺めます。そして、
風景がどのように見えるか、風景が季節に
92
上:流れの景色を東屋から眺
める
っ て ど の 様 に 変 化 す る か、 風 景 が ど の よ
う な 印 象 を 与 え る か を 見 定 め ま す。 見 る
相 手 は 人 間 で す。 こ の 不 思 議 な 人 と 庭 の
風景がどのような印象を与えるかを見定
関 係 が 季 節 に よ っ て ど の 様 に 変 化 す る か、
めます。大自然を歩いていると、感動的な
風景に出会います。季節季節のある時間に
美しいう風景と感動することがあります。
人は、自然の中に生息して、その自然から
恩恵として、美しい自然を恵みとして受け
取ることができます。この感動を、日常の
中に引き寄せる術は造園と言う技術に体
系化されたのです。庭師はこの自然との会
話が大好きな人種です。美しい風景に出会
うと、何とかそれを技術化できないだろう
か?何とか、あの感動を蘇らすことができ
ないだろうか?と日夜腐心しています。
﹁好きこそ物の上手なれ﹂の言葉があり
ますが、自分の技術が上手か下手かは、人
が判断することなので、自分では良く判り
ませんが、この﹁好き﹂と言う言葉は大好
き で す。 好 き だ か ら こ の 職 業 が 続 く の で
す。私の夢は、今京都の大原を拠点として
活動していますが、この大原に﹁お花畑﹂
の名所を造る事です。自分でも、自分のロ
マンティシズムの﹁ハット﹂することがあ
ります。いい年をしたおじさんがお花畑を
夢 見 る の で す。 そ の 楽 し さ は、 愉 快 で す。
単純に嬉しいのです。そうした環境が自分
この自分の感性を大切にしたいと思い
の身の回りに出来ると、嬉しいのです。
造ってきました。京都だけでなく全国の名
庭は数多くあります。しかし、単純に美し
いと感じる心が、原点と思っています。そ
の 原 点 を 大 切 に し て、 美 し い と 感 じ る 心
を育みたいと考えています。
93
ま す。 確 か に 深 遠 な 美 の 世 界 を 日 本 人 は
下:大原モデル庭園の新館の
玄関の雪景色
知っていると得をする知恵
※この建物は新築住宅です。
94
家づくりは楽しい
家づくりには、専門的な知識がたくさん必
要です。始めはとっつき難いのですが、その
豊饒な知識の世界が見えてくるとそれは楽し
さに変わります。時間をかけてアプローチす
れば、身についてくるのです。日常生活に関
係することが多いので、学ぶ価値があります。
では不足してた住宅が、空家率が30%台になろ
どんどん縮小化する時代へと変わりました。今ま
の田園都市へと肥大化していた時代から、都市が
右 肩 上 り の 時 代 は 終 わ り を 告 げ ま し た。 郊 外
置﹂として、家を位置づけたのです。
起こし始めました。﹁自分の個性を満たす空間装
必要とする30歳代の世代は、独自の消費行動を
わったのです。こうした状況の中、結婚して家を
も個性的な空間の最小単位の場を求めることに変
の最小単位の家族にとって、最も我がままで、最
。
知れば知るほど深い知識と知恵が必要
うとしています。この時代に住まいへのニーズは
こ の 個 性 の 表 現 に は、 こ だ わ り の 価 値 観 が 背
大きく変貌しました。﹁住まい﹂と言う場をを求
めることが目的の時代から、住まう家とは、人間
景にあります。より深く日本の木造文化を求めて
日本回帰が始まったのです。
日 本 の 木 造 文 化 を 学 習 し 始 め る と、 多 く の 埋
もれていた知識が新鮮に見えてきます。
家 づ く り に 使 わ れ る 木 材 の 味 わ い 方、 座 敷 と
か床といった住まいの住み方、日本の地鎮祭や上
棟式といった家づくりにまつわる祭事のやり方、
タタキ仕上げやベンガラ塗りと言った自然素材の
家づくり職人の技術の活
活かし方、瓦や壁と言った伝統素材の耐久性能、
用 方 法、 職 人 の 手 の 技 術
に よ る 味 わ い 等 々、 家 づ
くりには深遠な木造文化
が潜んでいます。そして、
そこには﹁木の温もり感﹂
や﹁ 素 材 を 加 工 す る 味 わ
い ﹂ が あ る の で す。 工 業
製品では得ることの出来
住宅で必要なことは何
ない風合いがあるのです。
な の か?﹁ 住 ま う ﹂ と は
ど う し た ら 快 適 な の か?
それを実現するにはどう
し た ら 良 い の か? と い っ
た 問 題 に 突 き 当 り ま す。
そ の 答 え は、 日 本 の 伝 統
的な家づくりの手法をど
う現代生活に活かすのか
という問題と重なってき
ま す。 平 成 の 快 適 な 家 づ
くりへの模索が始まった
の で す。 京 山 々 レ ト ロ は
一つの解です。
95
家づくりを誰 に 依 頼 す る か ?
設計 を 設 計 事 務 所 工事を工務店 土地は不動産屋
も重要なポイントです。ところが、本物の木の家
きな資金を使う家づくりは、委頼先の信頼性が最
の家づくりを行う場合に、共通した悩みです。大
委頼先はどこになのだろう?この悩みは多くの木
か悩みます。自分のスタイルに合った最も適切な
づくりを依頼したい場合、どこに依頼したら良い
ます。しかし、在来木造構法で質感のある木の家
社会的信頼を得るためのあらゆる体制をとってい
大手プレハブメーカーには信頼性があります。
作業です。美しさは大切ですが、家としての実用
と工学を両立させて住宅と言う実用建築に活かす
人を選ぶことが大切です。設計作業とは、感性学
りも、お施主さんの目的をはっきりと解釈できる
良い建物づくりを考えなければいけません。何よ
計画と利便性を同時に満たし、コストバランスの
を指導していかなければなりません。豊かな空間
を考えて最適な材料を選びそれを活かすよう職人
質感のある家づくりを実現するためには、家全体
を用いただけでは、質感のある家は実現しません。
表す職能なのです。
と言えます。お施主さんの目的を理解して、形に
ランスよく使うことができる工務店が良い工務店
らも生まれれてきます。この材料を選びコストバ
のです。家の味わいは、材料を自由に使うことか
けます。そうすることによって、家に深みがでる
の家は多くの種類の違う山の木をたくみに使い分
を自由に使うことが出来る必要があります。日本
目的の家を実現できる委頼先を探すことが大切
づくりを行っている工務店や設計事務所はまだま
性を持ってないといけません。コストも常に意識
万円/坪から木の家を実現
だ少数派なのです。宣伝広告や告知を十分に行う
しなければなりません。
す。工務店のスタッフは常に求められる技術を磨
工 務 店 の 役 割 は、 家 を 実 際 に 施 工 す る こ と で
工務店は技術と材料の専門家
ことが出来ないでいます。そのために、良い腕や
優れた技術を持っていても、広く知れ渡らないの
です。
﹁ 京 山 々・ 木 の 家 づ く り の 会 ﹂ は、﹁ 山 の 恵 み
を山に還す﹂を合言葉にこうしたこだわり工務店、
いています。木の家づくりは、高度な職人さんの
技術を必要とします。ノミやカンナを使えない大
工さんは、残念ながら本物の木の家づくりはでき
ません。山の木を使って家づくりを行うことは、
日本に1、000 年以上に渡って伝承されてきた
技術を使うことです。日本において木造構法を操
る大工職人はポピュラーな技術でしたが、今は特
殊な視点で見られているようです。日本の家は山
の木で造ることは、極めて自然な家づくりの方法
です。この技術は昔の大工さんならば、誰でもで
きることなのです。この技術を使って現代の家づ
くりを行う団体が﹁京山々・木の家づくりの会﹂
です。戦後の一時に、工業化住宅が流行しました
が、日本の家づくりは、日本の木を使うことが最
も う 一 つ、 工 務 店 の 役 割 は、 適 材 適 所 に 材 料
も自然なことなのです。
山 の 木 を 使 っ た 木 の 家 づ く り が、 庶 民 に 手 の
届かない程のコスト高になっては意味がありませ
ん。しかし、木の家の施工コストは、激安住宅と
言うわけにはいけません。材料費にも職人さんに
も必要な経費があります。職人さんの技術を活か
して仕事をしてもらい、木の香りのする気持ちの
万円/坪という指標です。
良い家づくりを行うことに必要な経費としての目
安は、
くりの会は存在します。
木の家を実現する団体として、京山々・木の家づ
す。人間の顔は一人一人異なるように。個性的な
のかを常に考えています。家は、一軒一軒違いま
一つです。家の付加価値をどうしたら実現できる
と言う住宅商品化もこうしたチャレンジのうちの
チャレンジをおこなっています。﹁京山々レトロ﹂
らも、家づくりに木を使いたい人のために様々な
家づくりの会は、こうしたコストを基準としなが
仕様によってコスト異なるのです。京山々・木の
よって異なります。一品生産なのですから、その
勿 論 こ れ は 一 つ の 目 安 で あ っ て、 一 戸 一 戸 に
60
設計事務所、不動産業者、木の生産者が集まった
団体です。メンバーは皆﹁山の木﹂を巧みに使う
ことに情熱を注いでいます。
良い設計事務所は良い仲間
設計事務所は敷居が高いと多くの人が考えて
います。住宅づくりで一級建築設計士に設計を依
頼する必要性を感じない人がほとんどです。しか
し、付加価値の高い質感をのある木の家づくり目
指す場合は、この木の活かし方に長けた専門家が
いないと実現が難しいのです。木造の得意な設計
事務には様々な木の家づくりの付加価値情報がス
トックされています。所設計者とは、お施主さん
の思いを専門的な技術でサポートしてくれるお施
主さんの仲間です。仲間を味方に組み入れて、専
門的な知識を引き出し、自分の目的とする家の実
現に向けて活動してもらうのです。家づくりに木
60
96
97
住 宅づくりの 検 討 必 須 ア イ テ ム
項 目 毎のチェックが必要
家の改修を数多くおこなっている京山々・木の家
づくりのメンバーにとって、家を直して使うこと
ジにも、コストにも、使い易さにも全てに反映し
できます。こうした改修のレベル差から考えて、
内部の仕上げ材は、簡単に部分的に改修するこが
されますが、これも比較的容易な改修ができます。
次 に 外 部 サ ッ シ ュ、 断 熱 材、 床 材 な ど が 選 定
は日常的なことなのです。
てきます。そして、そのプランをベースに多くの
コストバランスを図るのです。家は住人が変われ
ば、改修が必ず生まれます。キッチンなどは、一
では難しく、家づくりに関係する全ての人の意見
家の主婦が変われば最初に改修になる所です。
年以上耐用すべき家づ
年以上経てば、必ず設備
日本の資源活用になるのです。
す。そして、山の木をすこしでも消費することで、
低い家が京山々・木の家づくりの会の家づくりで
使って楽しく、美しい家で、ランニングコストの
された生活をすることが、家づくりの目的です。
家 は 使 う 道 具 で す。 そ の 中 で 住 み 手 が、 満 た
﹁良し悪し﹂は住み手が決める
蓄えているのです。
なのです。そのために、専門的な知識と行動力を
めの方策を設計事務所と工務店の力を借りるべき
めに趣旨を曲げてしますのではなく、実現するた
も問い続けなければなりません。コスト制約のた
ります。家を建てる目的は何なのか?それはいつ
一方で、その家で全人格的な活動を行う場でもあ
す。家は物理的な空間で機能空間でありますが、
た場合、無駄な資金と時間を使ってしまうからで
す。そうしないと、家の完成が求めるものでなかっ
明確になるまで、何度でも検討する必要がありま
家づくりの夢が大切です。家の目的とその手法が
からコストを意識する必要はありません。理想の
家 づ く り は コ ス ト に 縛 ら れ る の で す が、 初 め
自由発想スタートでコスト最終
と住むものですから、視点が異なれば、違った意
年ですから、
次 は 外 壁 と 屋 根 で す。 建 築 構 造 さ え し っ か り
備配管は、
していれば、屋根も壁も変えることが可能です。
をどうしたら活かした形で家づくりに反映するこ
職人さんが適切なのか?こうした疑問は、良い家
コスト的には負担はかなりのウエイトがかかりま
管には、しっかりした仕様で設置する必要があり、
づくりを願う場合は、当然の悩みです。この時に、
すが、設備配管や構造補強に比べると容易なので
と が 出 来 る か? こ れ が、 最 初 に 直 面 す る 悩 み で
協力なパートナーが設計事務所です。このパート
す。家は出来た後の維持管理が必要です。それは、
コスト削減は難しいです。設備機器は、いずれ変
ナーに、お施主さんの家づくりコンセプトを伝え
時間経過の中で、その都度異なりますが、家の骨
す。材木の価格やそれを加工する職人さんの手間
それを実現するベストな回答を得るのです。それ
えるのですからコストバランスを考えて選定する
が、間取りと言う平面図に表現されたとき、第一
格に関ること意外は、比較的容易なのです。京町
代がどの位でできるのか?そして求める品質とそ
歩が始まります。平面図は家づくりのコンセプト
自由度があります。
年単位で使えます。従って、設備配
機器の交換と言う問題に直面します。しかし、設
年数が
次 は 設 備 で す。 こ れ も 設 備 機 器 の 法 的 な 耐 用
てきます。
実現する工務店を決めると自ずとコストは決まっ
満たすための処置は必要です。そしてこの構法を
くりに、スケルトン部分の構法を選び耐震性能を
ルの2つに分かれます。
スケルトンと、自由に仕様を選択できるインフィ
は大きく分けて、基礎や構造のように最低必要な
次にコストのバランスです。家づくりのコスト
コスト管理には手法がある
見があります。家の全体像がこのようにできます。
を聞き取るべきです。多くの場合、家は複数の人
シュミレーションを行います。この作業は、一人
を表現しているか否か?そのは、家全体のイメー
家づくりは、様々な視点からの判断が必要
家 づ く り は、 一 つ の 事 業 で す。 全 体 の 到 達 イ
メージを描き、資金と時間を使って、建築行為と
言う具体的な形を創造するのです。最終成果物は
﹁家﹂という具体的な形ですが、このプロセスには、
建築基準法と言う法律や、ソフトのイメージ形成
や、ハードの素材の調達や、職人の腕、さらには、
設備機器の性能、家の耐用年数も含まれます。構
造的な耐力や、日々の高熱費など、実際の生活面
での使い安さや、メンテナンスの容易さも含まれ
ます。固定資産税や都市計画税もかかってきます。
これらの全てを勉強する時間をとることは多くの
場合難しいと思います。そこで、専門家に依頼す
ることが必要になります。設計事務所には、設計
を依頼し、工務店には施工をお願いすることが良
い家づくりをする最も一般的な方法です。専門分
野の知識を活用しなければ、満足する家づくりは
難しいと思います。
総合バランスが必要
100
20
れを加工する職人さんの腕はどの程度のレベルの
100
家 づ く り に は コ ス ト が か か り ま す。 こ の お 金
15
98
大項目
全体イメー
ジづくり
No
検討項目
1 住宅イメージ
2 構造仕様
基本仕様
設定
細目検討項目
元イメージ、住宅形式、町家・民
和風、洋風だけではイメージ分類できません。自
家再生、新築、生活イメージ、ラ
分のイメージに合う建築を見出すことが一番先に
イフステージ
在来木造構法、伝統木造構法、パ
考えなければなりません。
京山々・木の家づくりの会では、在来木造構法か
ネル構法、2 × 4 構法、鉄骨構造、 伝統構法になります。他の方式との比較検討が必
RC 構法
ペアーガラスサッシュ、断熱サッ
3 断熱仕様
要です。
断熱性能の良否によってランニングコストが変
シュ、羊毛断熱 , セルロース断熱、 わってきます。見えないコストであるだけに充分
外壁通気
4 冷暖房システム
摘 要
エアコン、パネルヒーター、OM
ソーラー、床暖房、輻射暖房
な理解と検討が必要です。
熱源の選択が方向性を決定します。利用スタイル
を充分検討した上で、メリットデメリットを考え
て決める必要があります。
ダイニングリビング一体化・分離、 全ての考えは、平面図に反映されます。この平面
5 間取り ( 平面図 ) 居室部屋数、家事室、玄関、土間
計画が良ければ、建物の内容が良くなります。あ
空間
らゆる角度から検討します。
延べ床面積と施工面積は異なる場合があります。
延べ床面積、施工床面積
それによって、建築コストも変わります。空間的
建ぺい率、容積率、高さ制限、用
な把握とそれにかかるコスト意識が重要です。
敷地に制約される建築基準法を充分理解した上で
7 建築基準法の条件 途地域、景観規制、高度規制、防
の計画が必要です。制約ではなく、それを上手に
6
延べ床面積
・施工面積
8 動線計画
火規制
活かす知恵が必要です。
使い易い家とは、住人の個性と動線計画が合って
廊下、階段、トイレ個数
いることです。日常の行動パターンを客観的に把
建築計画
9 立体空間計画
10 内部仕上仕様
11 外部仕上仕様
12 設備性能
吹き抜け、共用エリア、ロフト、
ベランダ、屋上ベランダ
床・壁・天井、窓枠、木建具、間
仕切り壁
外壁仕上げ、屋根材、外構
熱源システム ( 電気・ガス )、配管
システム、給湯ヶ所数
解体工事費、建築工事範囲、別途
13 建築工事資金
14 住宅関連資金
15 DIY( 施工参加 )
税金、借入れ経費、引越し、イベ
ント経費、確認申請手数料、印紙
仕上げ参加、古建具利用
施主参加
16 施主支給品
17 設計事務所
えない空間をじっくりと理解した計画が必要で
す。高さの感覚は数値的に理解すると良いです。
仕上げは、居住する人の感性に影響を与えるもの
です。類似事例や参考事例を検討しながら合った
素材を選出する必要があります。
家の構えは、住み手のライフスタイルが現れます。
好きな家には愛着がうまれ大事にします。模型や
パースで検証します。
給排水、衛生器具、電気設備などは 20 年前後に
は交換する必要があります。替えることを念頭に
おいて全体の計画を考えます。
建築工事の見積には、多くの場合別途工事が書い
工事内容 ( 外構工事、
カーテン工事、 てあります。見積の範囲がとこまでなのかを把握
クーラー工事、ボーリング調査 )
資金計画
握して計画する必要があります。
建築は3次元空間で出来ています。平面図では見
照明器具、持込家具リスト、金物、
手洗い
しておく必要があります。
税金、借入れ手数料、火災保険は全体計画をする
上で忘れがちです。資金計画表を作成してしっか
りと押さえて置くべき項目です。
最近の若者は積極的に家づくりに参加する場合が
あります。こうしたことが許されるかどうか工務
店に事前にチェックしておく必要があります
お施主さんが商品や部材を工務店に支給すること
ができる場合があります。取付費は必要ですが、
個性的な家づくりには欠かせない方法です。
設計事務所は専門的な知識によって、お施主さん
確認申請代行、基本設計、実施設計、 の代行する役割を持っています。設計事務所との
工事監理
依頼先
コミュニケーションが思い通りの家づくりに欠か
せません。
信頼できる工務店は、様々な角度からの検討が必
18 工務店
施工範囲、工期、工程、品質管理
要です。相性の問題が一番です。フィーリングが
合う工務店選びが必要です。
99
資金 計 画
日 常 で は 発 生 しない出費を把握する
けの資金が必要なのかを理解できます。このシュ
ミレーションは家づくりには欠かすことができま
せん。千万単位の事業ですから、慎重に判断すべ
きです。建築の良否がこの事業の良否を決定しま
す。
建築工事でしっかりしないと見落としがちな
のが、別途工事項目です。建設工事は、どこから
何処までを工事すると言う請負契約です。見積に
明記してある別途工事に注意し、見積に入ってい
る項目と入ってない項目をしっかりと把握しま
しょう。この注意を怠ると、あとからの処理が大
変です。
すれば、自ずと家づくりに対する考え方が見えて
資金からすれば僅かな金額ですが、それも重なる
こ れ ら の 項 目 は、 そ れ ぞ れ 金 額 的 に は 全 体 の
外構・税金・ローンは忘れがち
きます。﹂と言う答えでした。ゆっくりと時間を
外 構 は、 建 築 本 体 で は 見 な い 習 慣 が 工 務 店 に
と資金の目処が必要です。
を果たす依頼者を探す先と考えて下さい。
京山々・
の家づくりの会は、このパートナーとしての役割
設計事務所であり、工務店なのです。京山々・木
場合は、そのお手伝いをしてくれるパートナーが
その評価ができます。家を自分流の家として創る
家を商品と考えた場合は、スペックを比較して
です。最終局面で、外構工事をしない場合も良く
しっかりしていて、それなりの工事費が必要なの
と判断するのですが、一般的の美しい家は外構も
関係なく、家づくりには門扉や塀は含まれている
者側から見ると、そうした建築業界のルールは、
建築工事から外して工務店は考えるのです。発注
と思っていますが、外構は造園業者が行うので、
はあります。お施主さんは、当然入っているもの
木の家づくりの会のメンバーはしそうしたことの
税 金 は、 す ぐ に は 請 求 が あ り ま せ ん が、 後 で
あります。
請求がくるので、日常生活とは異なる費用として
の思いを実現した家づくりの完成したものを見る
去の家を見たり、見学会への参加なのです。個人
て捉える必要があります。
別途発生するもので、家づくりに必要な経費とし
ローン経費や火災保険も建築工事の費用とは
考えておく必要があります。
ことができるのです。そして、その実現にどれだ
ズレがあります。そこで重要なことが、実際に過
そうした思いと、実際の資金計画は多くの場合
ます。
依頼に対しては、充分な役割を果たすことができ
に重要かが判ってきます。
ているのかがわかり、自分で判断することが如何
かけることによって、自分が家づくりに何を求め
そして、技術者とお話を何回かして下さい。そう
た。
返答は、﹁その工務店の事例をまず見て下さい。
たのですが信頼性を心配しているとの内容でし
てみると、地域工務店は木の家で、大変気に入っ
がどう思いますか?との質問です。よくよく聞い
すが、信頼性が地域工務店には無いと思うのです
同じ間取りで比較して地域工務店の方が安いので
比較してどちらが良いかとの問いがありました。
あ る 相 談 に、 プ レ ハ ブ メ ー カ と 地 域 工 務 店 と
とするかは、お施主さんの心の中にあります。
れぞれに特徴を持っていて、何と何を比較に対象
家づくりの方法は、様々な方法があります。そ
木の家の建設は﹁質﹂が重要
資金計画はプロジェクトの進行に合わせて随時修正する
家づくりは、人生で最大の大きな行事です。こ
の資金計画は、建築業界、不動産業界、税務業界、
ローン業界の4つ専門分野を理解しておく必要が
あります。予期せぬ請求が無いようにしっかりと
資金計画をしておく必要があります。
土地代が大きなウエイトです
都心部で土地を取得して建物を建てる事業をし
よ う と す る と、 土 地 価 格 の 事 業 全 体 に 占 め る 割 合
が 一 番 大 き な ウ エ イ ト を 占 め ま す。 家 を 建 て る 場
合、
﹁何処に住むか﹂は大変重要な問題です。通勤、
通学、保育園、幼稚園、公共施設、公共交通、病院、
商 店 街 や シ ョ ッ ピ ン グ セ ン タ ー、 周 辺 環 境、 地 域
性 等 々 の 総 合 判 断 と、 土 地 単 価 と 希 望 土 地 面 積 の
問題との総合判断によって選定しなければなりま
せ ん。 こ の 選 定 に は、 判 断 に 個 体 差 が あ り ど の 方
法 が 正 解 と 言 う こ と は で き ま せ ん。 皆 が ほ し い 土
地 は 高 く、 一 般 に 望 ま れ な い 土 地 は 安 い の で す。
逆 に 考 え る と、 一 般 に 何 時 で も 売 れ る 整 形 の 土 地
は 高 く、 路 地 裏 の 旗 竿 土 地 は 単 価 が 安 い の で す。
︶はインター
路線化︵ http://www.rosenka.nta.go.jp/
ネットで公開している国税庁の財産基準評価書で
信 頼 の お け る 土 地 価 格 の バ ロ メ ー タ で す。 勿 論、
こ の 単 価 は 固 定 資 産 と し て 評 価 価 格 で、 売 買 は 取
引 に よ っ て 時 価 で 取 引 さ れ ま す。 売 り 手 と 買 い 手
が 納 得 し た 価 格 が 取 引 価 格 で す。 ど の エ リ ア で ど
れだけの大きさの土地と延べ床面積がどの程度の
広さの建物を考えるかによって事業計画は大きく
変わります。この土地代金を考慮したシミレーショ
ン を 行 う こ と が、 家 づ く り 事 業 の 第 一 歩 で す。 左
の表をエクセルに入れてシュミレーションして下
さい。自動計算によって一瞬に判断できます。
100
○○邸 新築工事 事業計画
※土地:34 坪 延べ床面積 30 坪での想定シュミレーション
※金額はあくまでも参考概算価格です
( 税込 )
新築工事にかかる費用 規模
単位
34.0
坪
単 価
金 額
適 用
■不動産諸経費(想定土地評価額:13,370000)
購入土地価格
800,000
27,200,000
仲介手数料(土地価格の 3.0%)
3.0
%
27,200,000
816,000
土地登記費用 ( 固定資産評価格の 1.0%)
1.0
%
13,370,000
133,700
土地契約印紙代
1.0
式
15,000
15,000
固定資産税他精算金 ( ¥233,000/12 ヶ月 )
10.0
ヶ月
19,417
194,170
2 月に購入した場合
水道加入金・引込み工事費 ( 内容より異なる )
1.0
式
500,000
500,000
13 → 20 φに口径変更
不動産取得税 (1/2 に軽減処置 )
3.0
%
13,370,000
200,550
平成 24 年 3 月末まで
計 ①
29,059,420
■建築工事(想定建物評価額:12,600,000)
建築本体工事
30.0
坪
600,000
18,000,000
仕様設定で異なります
外構工事
1.0
式
800,000
800,000
仕様設定で異なります
設計費(建築工事費 + 外構工事 ) × 8.0%
8.0
%
18,800,000
1,504,000
確認申請手数料(延べ 100㎡∼ 150㎡)
1.0
式
160,000
160,000
建築工事請負契約印紙税 (5000 万円以下 )
1.0
式
20,000
20,000
地盤調査費
1.0
式
50,000
50,000
カーテン工事
1.0
式
200,000
200,000
エアコン工事
3.0
台
180,000
540,000
不動産取得税 (1/2 に軽減処置 )
3.0
%
12,600,000
189,000
建築登記費用 ( 固定資産評価格の 2.0%)
2.0
%
12,600,000
360,000
住宅性能保証登録料
1.0
式
100,000
100,000
計 ②
21,923,000
40,000
40,000
■諸経費
ローン銀行事務手数料
1.0
式
ローン印紙代
1.0
式
20,000
火災保険
1.0
式
600,000
計 ③
20,000
600,000 契約内容で異なります
660,000
引越し費用
1.0
式
150,000
150,000
祭事費(近隣挨拶・地鎮祭・上棟式)
1.0
式
100,000
100,000
計 ④
250,000
合計① + ② + ③ + ④
51,892,420
■その他
101
全体 工 程
流 れ を 把 握して全体を理解する
さんの求める家づくりは、限られた範囲の回答し
来ます。建設の方法は無数にありますが、お施主
んが何を何時までに決める必要があるかが判って
ガイドラインの全貌を理解しておくと、お施主さ
化と質的変化を把握する重要な羅針盤です。この
家 づ く り の 工 程 は、 や る べ き こ と の 時 間 的 変
築知識は、膨大な物のなかから自分に最も適切な
り付ける物を見ても予備知識ができています。建
この作業が充分なされていると、現場で実際の取
にコスト対価値効果についても検証すべきです。
り、設備システムを検討したりするのです。同時
見たり、材料を検討したり、断熱性能を比較した
に時間を割くことをお勧めします。色々な現場を
時間経過に伴って決めるべきことが変わる
かありません。その回答も、全体予算によって絞
物を選んで、アセンブルする作業です。
坪クラスの一般
的な工程表です。勿論、設計期間が伸びたり、工
右 の 工 程 表 は、 延 べ 床 面 積
り込まれてきます。最良な回答を限られた時間の
中で探し出さなければなりません。
設計に時間をかける方が良い
す。良い家を建てたいと思えば思うほど様々な検
みます。充分な検討がなされても、現場で迷いま
す。本格的な土壁の乾きを一年間見る場合もあり
よって、工務店との調整によって自由に変わりま
場合は、時間を調整する場合もあります。条件に
場合はこれに解体工事が加わります。季節が悪い
事期間が伸びたします。既存の建物が建っている
討を加えたくなるものです。そのためには、設計
家 づ く り は、 着 工 し だ す と 思 っ た よ り 早 く 進
30
ます。お気に入りの大工さんの手が空くのを待つ
場合もあります。現場で、DYIで参加する場合
は、工期を長めに取ります。工程は、お施主さん
の家への関りの内容によって大きく変わるので
す。そうした条件で、設計事務所や工務店と契約
を結ぶのです。事前に判ることは全て工程や見積
の条件となります。家づくりの経験豊富な設計事
務所や工務店はこうしたことに、慣れていますか
全 体 の 工 程 表 が で き る と、 家 づ く り 事 業 の 全
ら、希望の家づくりが実現できるのです。
貌が見え、工務店の見積が出来上がると、具体的
な資金の用途が見えてきます。そうしたプロセス
は、設計事務所や工務店に詳しい説明を求めて理
解する必要があります。出来上がった家を買うの
ではなく、家づくり事業を行うのです。
102
○○邸新築工事 工程表
103
︽コラム︾
上:手前が日本の縁側で、奥が
イタリアサンテラスです。2 つ
のテラスが共存しています。
ひきど
現代の引戸文化
金子師樹
株式会社三喜木工
代表取締役
家 づ く り に 於 け る 木 建 具 の 位 置 づ け は、
どんどんと変化しています。現代住宅では、
建 具 は、 既 製 品 の メ ー カ ー 建 具 を 選 ぶ こ と
が 当 た り 前 の 時 代 が 長 く 続 き ま し た。 誰 も
が、 建 具 に は カ タ ロ グ の 中 か ら 選 ぶ の が 当
た り 前、 デ ザ イ ン は チ ョ イ ス す る も の と 決
ま っ て い ま し た。 建 具 を 建 具 が 製 作 す る と
言 っ て も、 せ い ぜ い フ ラ ッ シ ュ 戸 で、 塗 装
を ど ん な 色 に 仕 上 げ る か が テ ー マ で し た。
し か し、 和 室 廻 り は、 や は り 製 作 建 具 で キ
チ ッ ト 造 り こ む の で、 和 風 は 手 間 と コ ス ト
が か か る も の だ と 判 断 さ れ ま し た。 そ れ は
コ ス ト 的 に は 全 体 の 建 具 工 事 費 の 中 で は、
割高で次第に和室の仕事が少なくなりまし
た。 木 建 具 職 人 は、 一 方 で は 家 の 中 か ら 和
室 が 少 な く な り 仕 事 が 無 く な り、 一 方 で 機
械で作るフラッシュ戸や既製品に押されて
ひきど
その存在価値が無くなっていったのです。
日 本 の 家 は、 引 戸 が 主 流 で し た が、 い つ
の間にか西洋スタイルになり開き戸全盛に
な り、 益 々 建 具 職 人 の 居 場 所 は 無 く な っ て
しまったのでした。
こ う し た 流 れ が 変 わ っ た の は、 無 垢 材 の
家 づ く り が 人 気 が 出 始 め て か ら で す。 無 垢
材 の 家 づ く り に、 プ リ ン ト 合 板 の 建 具 は 似
合 い ま せ ん。 シ ン プ ル で も、 無 垢 材 を 使 っ
た 建 具 が 必 要 な の で す。 こ の 潮 流 が 次 第 に
多くの無垢の家づくり派の人の認められて
りの良い優れた建具であることが再認識さ
し た。 狭 い 日 本 の 住 宅 で は、 引 戸 は、 収 ま
あ り ま す。 ま ず、 引 戸 の 見 直 し が 始 ま り ま
今、 引 戸 の 木 建 具 へ の 関 心 が 高 ま り つ つ
始めたのです。
次第に無垢材を用いた建具が人気が集まり
下:マンションの改修のモデ
ルハウス内の引戸建具です。
104
れました。壁の中に引き込まれる建具は、開
き戸のように、中途半端に空間を占領しない
のです。
次に部屋の開閉によって空間の利用形態
が2通りに使えると言う引戸の良さが再認識
されたのです。障子で仕切られた和室の二間
続きの部屋の多様な使い方に関心が集まりま
した。この考えを洋室と廊下との仕切りに用
い、引込み戸にすると、開いたときは、廊下
まで部屋に取り込み、閉じた時は、暖房時の
効率の良い部屋にすると言った応用が生まれ
そ し て、 三 つ め の 効 用 と し て 建 具 の デ ザ
たのです。
イン性が尊重されたのです。框戸をガラスや
無垢板で仕上げると独自の風合いを持つので
す。それは、室内に華やかさと楽しさを持ち
込んでくれるのです。古い型板ガラスの模様
は、味があります。現代のメラミン版との取
り合わせは現代性を主張してくれます。ノコ
メを入れて表面を退色させた板戸は独自の風
合いがあります。
京山々レトロでは、古建具の味に負けない
レトロ感のある建具を目指しました。
建具文化が日本にはあります。建具職人と
しての職人魂は、これを活かして次世代に継
承したいと考え挑戦してきました。そして今、
引き戸の框戸が市民権を得始めたのです。家
の建具を自慢する人が出始めたのです。この
現象は、建具職人にとっては嬉しいことです。
日本の家は、部屋の華やかな設えの一部を建
具が受け持っていました。地域独自の建物の
し回復したのです。建具の細工は大工さんに
はできません。同じ木材を扱っているのです
が、 道 具 も 神 経 の 異 な る も の を 使 う の で す。
この文化をもっと広めたいと思っています。
105
独自性を担っていたのです。その役割が、少
下:障子の骨のランダムな形
状を楽しむ建具です。建具が
意匠として扱われています。
上:古建具を新築にはめ込み
ました。雪見障子で、腰の本
あじろ
物の杉の網代がきれいです。
あとがき 京山々・木の家づくりの会の活動は 3 年目を迎えました。山の木の癒
し効果についての一般消費者の反応は極めて良好です。家づくりを求め
る層の内、30 代の若者が反応しています。団塊ジュニアと呼ばれるこの
層にとって、無垢材を使った木造の家づくりに反応しています。 若い
こうした層は、日本が「木の国」で、森林資源国であることに気がつい
ていません。エコな木造、Co2 削減の観点から知識はありますが、日本
の伝統的な家づくりが、蓄積された木造文化と言う認識はあまりありま
せん。しかし、北山杉が室町時代から 600 年の伝統があることを知ると
感動します。色々な木造文化が歴史的な遺産としてあることを知ると興
味を示します。その木造文化が、今の自分の家づくりとつながっている
ことが分ってくると、それを吸収しようとします。
一方で、木の家は「心地よい」ことを実感しています。肌で、無垢材
の感覚を受け入れます。感性の豊かな若者は、
「心地良い空間」を作り
出す無垢材に反応しているのです。素材の肌触り、色の良さ、素材感の
楽しさを味わっているのです。
今こうした世代は、家づくりに参加することによって、日本の文化の
一部を学習し始めています。日本文化回帰が実践的に行われているので
す。現代的な解釈を加えながら、使いよい空間に仕立て上げながら、木
造文化を現代流に解釈しているのです。
この動向は、京山々・木の家づくりの会の趣旨に合致します。若い世
代が、日本の山や木造に関心をもつことは、次世代へ継承する大きなモ
チーフとなります。
京山々・木の家づくりの会 会長
西巻 優
京山々レトロ
発行日:平成 23 年 2 月 28 日
印刷所:京山々・木の家づくりの会
ⓒ CUCANIA,INC. 2011 Prnted in Japan
頒 価:1,000 円(税込)
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107
〒603-8164 京都市北区紫野東御所田町 4-9 TEL:075-432-7997 FAX:075-432-7625
http://www.kyo-sanzan.jp
© CUCANIA, INC. 2010 Printed in Japan
頒価 1,000 円 ( 税込 )
本体価格 953 円
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