日英色彩語の連想イメージの比較

国際教養学部紀要 VOL.1(2005.3)
日英色彩語の連想イメージの比較
Comparison of Images for Color Terms in Japanese and English
伴
浩
美
BAN Hiromi
0.
はじめに
東の野にかぎろひの立つ見えて
かへりみすれば月かたぶきぬ
(『万葉集』柿本人麻呂)
ぬすつと犬めが
くさつた波止場の月に吠えてゐる
(萩原朔太郎「悲しい月夜」『月に吠える』)
It is the very error of the moon;
She comes more nearer earth than she was wont,
And makes men mad.
(William Shakespeare, “Othello”, V, ii)
(ああ、月のせいだ。
月がいつもより地球に近づいたから、人間どもが狂いだしたのだ。
小田島雄志訳)
日本の和歌は、花鳥風月を上手く使って、情景描写に情感を添えた。月は、詠む人にも味わう人にも、哀感
を感じ取らせる。朔太郎は、月に吠える犬を使って、現代人の孤独と憂鬱な情感を表現した。ところが西欧で
は、月は人を狂気にするとみる。また、日本語では「青白い月」、英語では silver moon である。月に住む動
物は、西洋では兎とは限らず、蛙のこともあるが、日本ではもっぱら兎である。ところ変われば、イメージも
変わる。
イメージは、漢字で表すと「心象」である。つまり、心の中に描かれる感覚的な映像である。個人の経験的
知識が蓄積された記憶となって形成されたものと、ある文化に属する人々の共通の認識のもとに形成されて受
け継がれたものが、一つになって、各個人のイメージとなる。
人間は昔から、「色」によって喜怒哀楽の感情を表してきた。美術でいう暖色(赤・橙・黄 )と寒色(水色・
青・藍)は、感情表現に上手く用いられている。キリスト教では、天の父(神)は、青、聖霊は赤、子(人間)
は黄色で表されるということである。アメリカの大学では、学部により卒業式に着るフードの色を変えている
ところがある。国旗の色も、それぞれ何かを象徴している。仏教の僧侶の衣の色は、位階を示す。花言葉も、
それぞれの花の色に関係している。その他、文化によって、時代によって、具体的な事物からの連想で、抽象
的な概念を表すために、さまざまな色が用いられてきている。
本研究では、幾つかの主要な色彩語のイメージについて、日本語と英語の場合での比較を行ってみた。まず、
辞書を用いて、それぞれの色彩語に対し、一般的にどの様なイメージが持たれているのかを調べてみた。次に、
中学生と大学生を対象とし、実際にどの様なイメージを抱いているのかアンケート調査を行ってみた。
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1.
各色の一般的なイメージ
まず、『英語イメージ辞典』(三省堂)、『英語発想 IMAGE 辞典』(朝日出版社)などを用いて、赤・red、
黄・yellow、緑・green、青・blue、桃色・pink、白・white、黒・black について、一般的にどのようなイメ
ージが持たれているのか調べてみた。それぞれのイメージを図 1 から図 7 に示す。
1.1
赤・red のイメージ
【red】
【赤】
恥・怒り
血
熱血・熱中
日焼け
楽しい
革命・共産主義
高貴・名誉
赤字
セクシー
危険・注意
アメリカインディアン
めでたい
赤毛
女性
図1
赤・red のイメージ
赤は、「炎」や「血」の色を連想させ、「情熱」「革命」「左翼思想」「危険」「怒り」などのシンボルで
ある。人に鮮烈で強烈な印象を与える赤は、red-blooded(血気盛んな)や red hot(猛烈に興奮して熱中した)
の語に情熱的な人をイメージさせ、また see red(カーッとなる)、turn red in the grills(怒った顔を見せる)、
red rag(人を怒らせるもの)などの句で、「怒り」を効果的に表している。旧ソビエト連邦や中国の国旗が赤
旗だったことから、赤は共産主義のシンボルと認められていて、左翼思想を持っていると思われる人を指して、
批判的に「あいつは赤だ」と言う。
更に英語では、「高貴さ」や「名誉」「楽しさ」を連想し、give someone the red-carpet treatment(下に
も置かぬもてなしをする)や paint the town red(大いに飲み歩く)といった表現がある。また、a red light
district(売春地域) のよ うに、黒 と並 んで「セクシーな色」とされたりする。また、人種的な意味合いでは、
「アメリカインディアン」を指す。
1.2
黄・yellow のイメージ
【黄】
【yellow】
注意
光・明るい
未熟
東洋人
図2
黄・yellow のイメージ
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臆病・卑劣
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幼児が太陽を書く時、日本人は赤で、西欧人は黄色で塗る。明るい黄色は、太陽の神々の色、特にアポロの
色とされたらしい。キリスト教では聖衣の色で、「真実」を表すが、鈍い黄色は、裏切りのユダから、「臆病」
「卑劣」「嫉妬」を表す。英語には yellow belly(臆病者)、yellow-dog contract(労働組合に入らないこと
を条件に結ぶ雇用契約)の表現が、このイメージから作られている。また、黄色は人の注意を引く色として使
われたことからくる、yellow press(扇情的な新聞)、yellowback(黄表紙の扇情的な小説)という語もある。
注意信号は黄色であり、日本でも、幼稚園児や小学生は、黄色い帽子をかぶって通学する。日本語では、ほか
に未熟のイメージがあり、「くちばしが黄色い」「黄色い声を出す」という表現がある。なお、人種的には、
肌の色から「東洋人」を指す。
1.3
緑・green のイメージ
【緑】
【green】
植物
未熟
気分が悪い
安全
うらやましい
生命・成長
米ドル紙幣・お金
やすらぎ
さわやかさ
図3
緑・green のイメージ
日英共通してまず連想されるのが「植物」である。そこから派生して植物の持つ「爽やかさ」や「生命・成
長」などへとイメージが広がっていく。英語では「嫉妬」や「羨ましい気持ち」も表し、green with envy(ね
たみを顔に表す)、green-eyed(嫉妬の)という表現がそれらを示している。
1.4
青・blue のイメージ
【blue】
【青】
空・海
未熟
血の気のない
緑
あざ
図4
憂うつ
一流・優良
厳格・清教徒的
わいせつ
青・blue のイメージ
「青」というと、大抵の人は、晴れた日の「空」の青さか「海」の青さを思い浮かべるであろう。寒色であ
る青は、「幸福」「希望」「誠実」「沈着」などを表す色とされている。メーテルリンク(Maurice Maeterlinck)
の『青い鳥(L’oiseau Bleu)』(1908)は、「幸福」のシンボルとなった。キリスト教では、「貞節」「敬神」
「希望」の色として尊ばれたが、中世になって、「低俗な愛」の色、「道化」の色にイメージが変わった。
英語では、「高貴」「優良」のイメージを blue-blooded(貴族の)、blue ribbon(最優秀の)、blue-chip
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(一流の)などに残している一方、「憂鬱」のイメージを blue devils(憂鬱)、feel blue(憂鬱である)、have
the blues(気分がふさいでいる)、a blue Monday(休み明けで憂鬱な月曜日)などで、「猥褻」のイメージ
を blue films(ポルノ映画)、blue jokes(猥談)などで表して、イメージが固定していない。
日本語の「青」は、「緑」と重なる。実際には緑色である交通信号を「青信号」と言っても、誰も怪しまな
いし、春から初夏にかけての草木の緑も「青々とした草」「青葉」と言う。未熟な若者は「青二才」である。
日本では、「緑」は比較的新しい言葉で、古くは「青」と「緑」を区別しなかったということである。
1.5
桃色・pink のイメージ
【桃色】
【pink】
女性的
セクシー・わいせつ
健康
左翼がかった人
図5
桃色・pink のイメージ
pink は、赤と白を混ぜ合わせて作られる色である。赤を含む量によって、日本語では桜色・桃色・ばら色な
どと区別する。花の名前を付けていることからも分かるように、「女性的」な色と考えられているが、「桃色」
には、「セクシー」「エロチック」「猥褻」のイメージがつきまとう。「ピンク映画」はポルノ映画のことで
あり、「桃色遊戯」「桃色事件」は、猥褻行為を暗示する。一方、英語の pink は、in the pink(健康で)に
見られるように、大変健康的で、卑猥な意味合いは全くない。なお、少し赤みを帯びているところから、「左
翼がかった人」を指すこともある。
1.6
白・white のイメージ
【white】
【白】
潔白・罪のない
美しい
清らか・汚れていない
白髪
優雅・労働しない
何もない
血の気のない
不健康
弱々しい
興ざめ
白人
図6
白・white のイメージ
「白」は、どの色にも染まっていない色で、「純潔」「潔白」「清浄」などを表す。日本では、花嫁や死者、
切腹する者は、「白無垢」姿であった。キリストも、死からよみがえった時、白い衣装を着ていた。
肌の白さは、「戸外労働をしない上流階級の人々」の象徴であったが、最近米国では、日に焼けたスポーツ
マンの肌との比較から、「不健康」なイメージの方が強いようである。日本では、未だに美人と色白は切り離
せない。
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また、白は「善」、黒は「悪」のイメージは、世界中に根強いが、白が「白人」を、黒が「黒人」を連想す
ることから、最近、英語圏では露骨な直接表現を避ける傾向にある。日本語では、まさにそのまま「白黒をつ
ける」「あいつは白だ」のように、白は「無罪」を、黒は「有罪」を表す。
1.7
黒・black のイメージ
【黒】
【black】
悪
暗闇
死・悲しみ
不吉・恐怖
目・髪
神秘的・謎
黒字
迷惑・排斥
あざ
正装
黒人
セクシー
図7
黒・black のイメージ
「黒」は、日英語共に、「悪」「不吉」「死」「敗北」「違反」の含意がある。日本では、喪服の色は黒で
あり、「死」「悲しみ」を表す。漢字の多くは中国から来ているので、中国語とも、共通のイメージがある。
「黒星」「黒幕」「黒い霧」「腹黒い」「黒い噂」など、「悪」を黒で表す語句は多い。英語で「悪」を black
で表す表現は、blackmail(恐喝)、black Jack(脅し)、put the black on(ゆする)などが挙げられる。「不
吉」を表す例としては、black words(不吉な言葉)、black humor(気味悪いユーモア)、Black Friday(不
吉な金曜日)、また、「違反」を表す例としては、black market(闇市)、black rent(闇家賃)などがある。
なお、日本人の「黒い目」は英語では「焦茶色の目(dark brown eyes)」と言い、a black eye とすると、
「殴られてできた目の周りのあざ」のことになる。
2.
連想イメージの調査
我々はいろいろな「色」から様々な感情を受け、また、色彩語から様々なものを連想する。同じ色彩語が日
本語で表現されたり、英語で表現されたりするが、それぞれに受けるイメージは全く同じものであるとは思わ
れない。同じ色彩語を日本語と英語(カタカナ)で表現した際に、どの様なものを連想する傾向が見受けられ
るのか、質問紙によるアンケート調査を行ってみた。
2.1
調査方法
<被験者>
東京都内 公立中学 1 年生 24 名(男子 18 名、女子 6 名)
富山県内 私立大学 1∼4 年生 43 名(男子 30 名、女子 13 名)
<調査期日>
2004 年 7 月中旬
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<調査内容>
1) 各色の連想イメージ
「赤」「レッド」「橙」「オレンジ」「黄」「イエロー」「緑」「グリーン」「青」「ブルー」「桃」「ピン
ク」「白」「ホワイト」「黒」「ブラック」の 8 色 16 語それぞれから連想するものをできるだけ多く記述し
てもらった。
2) 各色彩語に対する好感度
「4. 非常に好き、3. 好き、2. 嫌い、1. 非常に嫌い」の 4 段階で、それぞれの色彩語に対する好感度を表し
てもらった。
2.2
調査結果と考察
2.2.1
各色の連想イメージ
まず、各色彩語に対して得られたイメージの回答数を、中学生の結果を図 8、大学生の結果を図 9 に示す。
図より、中学生の場合は「桃」(57)・「ピンク」(63)、大学生の場合は「橙」(66)・「オレンジ」(84)の場合を除い
た 7 色について、日本語(漢字表記)の場合の方が英語(カタカナ表記)の場合よりも多くの回答が得られて
居るこ と が 分 か る。 特 に 、 中 学生 の 場 合 で は、「赤」(111)・「レッド」(84)、「緑」(99)・「グリーン」(75)に つい
て、それぞれ 27、24 の差が見られ、大学生についても同様に、「赤」(143)・「レッド」(94)、「緑」(126)・「グ
リーン」(83)について、それぞれ 49、43 もの大きな差が見られ、さらに、「白」(118)・「ホワイト」(78)につい
ても 40 の差が生じている。これらのことより、中学生・大学生ともに漢字表記の方がイメージしやすいこと
が明らかとなった。
150
150 143
中学生
140
120
大学生
140
130
126
130
118
120
111
110
110
99
100
90
84
79
78
75
72
65 64
70
64
75
84
84
88 87
83
66
70
63
82
78
76
80
57
60
63
63
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
0
ラ
ブ
黒
ト
ク
ッ
イ
ワ
ホ
白
ン
ー
ク
ン
ピ
桃
ル
ブ
青
ジ
ー
ロ
リー
グ
緑
エ
イ
黄
図9
中学生の連想イメージの回答数
ン
レ
オ
橙
ト
ク
ッ
ド
ッ
レ
赤
ラ
ブ
黒
イ
ワ
ホ
白
ン
ー
ク
ン
ピ
桃
ル
ブ
青
ジ
ー
ロ
リー
グ
緑
エ
イ
黄
ン
レ
オ
橙
ド
ッ
レ
赤
図8
94
90
83
80
104
100
94
92
大学生の連想イメージの回答数
次に、各色彩語に対して回答数が多く得られたイメージとその回答数とパーセンテージをそれぞれ 5 位まで
と、回答数の合計を表 1 から表 8 に示す。以下、「赤」「レッド」、「橙」「オレンジ」、「黄」「イエロー」、
「緑」「グリーン」、「青」「ブルー」、「桃」「ピンク」、「白」「ホワイト」、「黒」「ブラック」の順に、
上位のイメージについて見てみる。
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<赤・レッドのイメージ>
表1
赤・レッドの連想イメージ
中 学 生
大 学 生
赤
レッド
赤
レッド
1
血
18 16.22%
血
7
8.33%
血
29 20.28%
戦隊のリーダー
8
8.51%
2
リンゴ
13 11.71%
スパイダーマン
6
7.14%
リンゴ
22 15.38%
火
4
4.26%
3
トマト
12 10.81%
炎
5
5.95%
トマト
9
6.29%
トマト
3
3.19%
4
イチゴ
8
7.21%
リンゴ
5
5.95%
赤信号
8
5.59%
ポスト
3
3.19%
5
火
7
6.31%
戦隊のリーダー
5
5.95%
イチゴ
8
5.59%
ワイン
3
3.19%
回答
総数
111 100.00%
84 100.00%
143 100.00%
94 100.00%
中学生・大学生ともに「赤」のイメージのトップは「血」、2 位は「リンゴ」、3 位は「トマト」となって
いる。中学生は「レッド」でも「血」がトップであるが、パーセンテージは 8.33%と、「赤」の場合の 16.22%
の半分くらいになっている。
大学生では「レッド」のトップが「○○レンジャー」という「戦隊のリーダー」であるが、これは「レンジ
ャー」というカタカナ表記されるものであるがゆえに「レッド」から連想されるのではないかと思われる。
<橙・オレンジのイメージ>
表2
橙・オレンジの連想イメージ
中 学 生
大 学 生
橙
オレンジ
橙
1
ミカン
9 13.85%
ミカン
14 21.88%
ミカン
2
ニンジン
7 10.77%
オレンジ
8 12.50%
ニンジン
3
夕焼け
6
9.23% オレンジジュース 7 10.94%
4
カボチャ
4
6.15%
5
回答
総数
土
4
6.15%
65 100.00%
太陽
3
4.69%
火
3
4.69%
ミカンジュース
3
4.69%
夕焼け
3
4.69%
64 100.00%
オレンジ
オレンジ
23 27.38%
7.58%
ミカン
13 15.48%
サッカーの
オランダ代表
14 21.21%
5
いよかん
3
4.55%
5
5.95%
夕日
3
4.55% オレンジジュース 4
4.76%
夕焼け
3
4.55%
66 100.00%
オレンジレンジ
(歌手)
4
4.76%
84 100.00%
「橙」については、中学生・大学生ともに「ミカン」がトップ、「ニンジン」が 2 位となっている。中学生
では「オレンジ(色)」でも「ミカン」がトップで、「橙」の場合より 8%くらい高くなっている。
一方、大学生では「オレンジ(色)」では「オレンジ」がトップで、回答総数の約 27%も占めている。な お、
大学生では「サッカーのオランダ代表」や「オレンジレンジ(歌手)」のような回答がみられ、知識の豊富さ
が伺える。
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<黄・イエローのイメージ>
表3
黄・イエローの連想イメージ
中 学 生
大 学 生
黄
1
イエロー
タンポポ
7
2 グレープフルーツ 5
8.43%
6.02%
レモン
黄
黄信号
17 23.61%
バナナ
イエロー
11 13.10%
バナナ
9 10.71%
5.56%
レモン
9 10.71%
11 15.28%
レモン
イエローハット
11 17.46%
(カー用品販売店)
6
9.52%
バナナ
4
6.35%
黄色人種
3
レモン
5
6.02% グレープフルーツ 4
4
稲妻
4
4.82%
電気
4
5.56%
卵黄
5
5.95%
3
4.76%
5
黄信号
4
4.82%
パイナップル
3
4.17%
パイナップル
3
3.57% グレープフルーツ 3
4.76%
バナナ
4
4.82%
回答
総数
83 100.00%
72 100.00%
84 100.00%
63 100.00%
他の色の場合と異なり、「黄」色で「タンポポ」「グレープフルーツ」「パイナップル」のようなカタカナ
表記のイメージが上位に入っている。「レモン」は「黄」「イエロー」ともに上位にあり、「イエロー」では
中 学 ・ 大 学 と も に ト ップ で 、23.61%、 17.46%と い う 高 い 割 合 を 占 め て い る 。 な お 、
yellow
には「黄色い
肌の人」という意味があり、大学生が「イエロー」で「黄色人種」というイメージを持ったのは、その知識が
働いたためと思われる。
<緑・グリーンのイメージ>
表4
緑・グリーンの連想イメージ
中 学 生
大 学 生
緑
グリーン
緑
グリーン
1
森
13 13.13%
非常灯
5
6.67%
草
14 11.11%
2
葉
12 12.12%
草
3
4.00%
木
13 10.32%
芝生
5
6.02%
3
木
10 10.10%
クローバー
3
4.00%
森
13 10.32%
アスパラガス
4
4.82%
4
草
8
8.08%
葉
3
4.00%
葉
9
7.14%
茶
3
3.61%
5
林
8
8.08%
ブロッコリー
3
4.00%
山
6
4.76%
ピーマン
3
3.61%
森
3
4.00%
森
3
3.61%
モロヘイヤ
3
4.00%
レタス
3
4.00%
回答
総数
99 100.00%
75 100.00%
126 100.00%
グリーンピース 14 16.87%
83 100.00%
中学生・大学生ともに「緑」は上位 5 位が全て漢字一文字で表されるものとなっている。それらの幾つかは
「グリーン」でも上位に見られるが、いずれもパーセンテージは 4.08%∼9.13%少なくなっている。「グリー
ン」では、「ブロッコリー」「グリーンピース」などカタカナ表記の野菜が多く挙げられている。大学生で 2
位の「芝生」はゴルフとの関連が考えられる。
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<青・ブルーのイメージ>
表5
青・ブルーの連想イメージ
中 学 生
大 学 生
青
ブルー
青
ブルー
1
空
19 24.36%
海
11 17.19%
空
26 29.55%
2
海
16 20.51%
ブルーハワイ
8 12.50%
海
19 21.59%
16 18.39%
空
9 10.34%
6.25%
青信号
8
9.09%
サッカーの
日本代表
4
6.25%
地球
4
4.55%
ハワイ
3
3.45%
ジャージ
3
4.69%
水
4
4.55%
ブルーハワイ
3
3.45%
2.56%
プール
3
4.69%
2
2.56%
水
3
4.69%
2
2.56%
3
水
8 10.26% オーシャンブルー 4
4
川
7
8.97%
空
5
雨
2
2.56%
氷
2
ドラえもん
炎
回答
総数
海
78 100.00%
64 100.00%
88 100.00%
3
3.45%
87 100.00%
中学生・大学生ともに「青」は「空」、「ブルー」は「海」がトップである。中学生では「青」では漢字一
文字のものが多く、「ブルー」では「ブルーハワイ」のように「ブルー」を含むものの他、「ジャージ」「プ
ール」といった中学生の学校生活に密着したカタカナ表記の回答が見られる。大学生では「赤」「黄」の場合
と同様に信号機の色が挙がっているが、これは、普段、車を使用することが多いという経験が反映されている
と思われる。
<桃色・ピンクのイメージ>
表6
桃色・ピンクの連想イメージ
中 学 生
大 学 生
桃
ピンク
桃
1
桃
19 33.33%
桃
2
桃太郎
6 10.53%
サクラ
6
9.52%
桃太郎
6
3
サクラ
5
8.77%
ピーチ
6
9.52%
サクラ
4
ウメ
2
3.51%
(キャラクター)
4
6.35%
5
桜餅
2
3.51%
ハート
4
6.35%
春
2
3.51%
ひな祭り
2
3.51%
回答
総数
57 100.00%
カービィ
桃
ピンク
サクラ
5
7.94%
7.89%
口紅
3
4.76%
5
6.58%
ピンクパンサー
3
4.76%
女性
2
2.63%
風俗
3
4.76%
「桃尻女と鮫肌
男」(映画)
2
2.63%
豚
3
4.76%
7 11.11%
63 100.00%
32 42.11%
76 100.00%
63 100.00%
中学生では「桃(色)」「ピンク」ともに「桃」という回答数が最も多くなっているが、「ピンク」の場合
「ピーチ」という英語表現を使った回答も多く得られている。この色については、中学生では「ひな祭り」や
「カービィ」など可愛いイメージのものが多いのに対し、大学生では特に「ピンク」の場合にセクシーなイメ
ージが強いようであり、今回調査を行った 8 色中、中学生と大学生の違いが最も顕著に見受けられる色である。
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国際教養学部紀要 VOL.1(2005.3)
<白・ホワイトのイメージ>
表7
白・ホワイトの連想イメージ
中 学 生
大 学 生
白
1
紙
ホワイト
9
白
ホワイト
9.78%
ホワイトボード
8 10.13%
雪
16 13.56%
修正液
5
6.41%
7
8.86%
雲
15 12.71%
クリーム
4
5.13%
2
雲
8
8.70%
ホワイト
チョコレート
3
砂糖
6
6.52%
雪
6
7.59%
紙
5
4.24%
クリスマス
4
5.13%
4
白髪
6
6.52%
紙
4
5.06%
牛乳
4
3.39%
ホワイトボード
4
5.13%
5
雪
6
6.52%
ホワイトデー
3
3.80%
靴下
3
2.54%
生クリーム
3
3.85%
ワイシャツ
3
3.80%
歯
3
2.54%
回答
総数
92 100.00%
79 100.00%
118 100.00%
78 100.00%
大 学 生の 「 白」の トッ プ が「 雪 」で 、 パー センテージも 13.56%と高くなっているのは、大学の所在地(富
山)がかなり影響していると考えられる。「ホワイト」については、特に中学生で「ホワイトボード」「ホワ
イトクリスマス」のように、「ホワイト」を含んだものが上位に挙がっている。大学生の場合、普段使用する
こ と が 多 い 「 修 正 液 」 が 「 ホ ワ イ ト 」 の ト ッ プ となっ ている が、
white
の意 味の一 つに「 白色の ペン キ 」
があることから、「ホワイト」の場合に連想される可能性が高いと思われる。
<黒・ブラックのイメージ>
表8
黒・ブラックの連想イメージ
中 学 生
黒
大 学 生
ブラック
髪
2
墨
8
8.51%
サングラス
5
6.67%
夜
8
7.69%
6
7.32%
3
闇
8
8.51%
ブラックホール
4
5.33%
胡麻
6
5.77% ブラックジャック 5
6.10%
4
炭
7
7.45%
黒ネコ
3
4.00%
炭
6
5.77%
スーツ
3
3.66%
5
夜
4
4.26%
チョコレート
3
4.00%
闇
6
5.77%
タキシード
3
3.66%
ブラック
チョコレート
3
4.00%
ブラックペッパー 3
3.66%
回答
総数
94 100.00%
12 16.00%
75 100.00%
髪
ブラック
1
12 12.77%
コーヒー
黒
18 17.31%
コーヒー
黒人
104 100.00%
13 15.85%
82 100.00%
中学生・大学生ともに「黒」は「髪」、「ブラック」は「コーヒー」がトップである。中学生の「黒」には
上位 5 位全て漢字一文字のイメージが挙がっている。中学生・大学生ともに「ブラック」で「ブラックホール」
「ブラックジャック」のように「ブラック」を含んだものが多く上位に入っている。なお、大学生では更に「ス
ーツ」「タキシード」といったカタカナ表記の正装のイメージも上位に入っている。
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国際教養学部紀要 VOL.1(2005.3)
2.2.2
各色彩語に対する好感度
各色彩語に対する好感度の平均値と 8 色の平均値を中学・大学とも男女別に求めてみた。その結果を図 10
に示す。
中学生・漢字
中学生・カタカナ
赤
4
黒
ブラック
桃
緑
ホワイト
オレンジ
グリーン
8 色平均値
男子平均
白
1
黄
0
桃
ホワイト
緑
青
女子平均
男子平均
8 色平均値
オレンジ
3
2
1
イエロー
0
ブルー
女子平均
4
ブラック
橙
3
2
ピンク
青
男子平均
黒
1
黄
0
レッド
4
3
2
1
大学生・カタカナ
赤
4
橙
3
2
白
大学生・漢字
レッド
イエロー
0
ピンク
グリーン
ブルー
女子平均
8 色平均値
男子平均
女子平均
8 色平均値
男子:2.81
男子:2.71
男子:3.00
男子:2.89
女子:2.77
女子:3.17
女子:3.20
女子:3.15
図 10
各色彩語に対する好感度
中学生の場合、カタカナ表記の 8 色の平均値が女子の場合 3.17 と、男子よりも 0.46 も高く、女子は全体的
に英語表現の色を好むという傾向が見受けられた。
大学生の場合、「青」「白」「黒」「ブラック」以外は女子の値が若干大きくなっており、8 色の平均値を
見ても、漢字の場合は 0.2 点、カタカナの場合は 0.26 点、女子の値が男子よりも高くなっており、女子の方が
今回調査対象とした色彩語に対する好感度が全体的にやや高く、また、漢字よりもカタカナ表記の場合の方に
男女差が見られることが明らかとなった。
3.
おわりに
イメージや連想は、同一文化内においても厳密に言えば個人や時代によって差のあるものであるが、まして、
文化、歴史が異なる日本語と英語の間には、慣用表現として定着したイメージに様々な差がみられる。
今回、中学生と大学生を調査対象とし、日英語の色彩語の連想イメージについて調べてみた。また、それぞ
れの色彩語に対する好感度についても調査を行った。結果として、日本語の色彩語の方が多くのものをイメー
ジしやすいこと、漢字一文字の色彩語に対して漢字一文字のイメージが多く出される傾向があること、また、
英語の場合には、その色彩語を含んだイメージがよく出されることが明らかとなった。
今後は、更に他の年代や他の地域に居住する人々についても調査を行い、好感度とイメージとの関わりにつ
いても検討を行う予定である。
[謝辞]
本論文作成に当たり、アンケートに回答して下さった皆様には、感謝の念にたえません。本当にありがとう
ございました。
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国際教養学部紀要 VOL.1(2005.3)
[参考文献]
赤池鉄士(1981)『英語色彩の文化誌』研究社出版
赤祖父哲二編(1986)『英語イメージ辞典』三省堂
De Vries, A.(1974) Dictionary of Symbols and Imagery . North-Holland Publishing Company[山下主一郎
他訳『イメージ・シンボル事典』大修館書店 1984]
神山瑤子・長坂信子(2004)『パーソナルカラーの教科書』新紀元社
クディラ, フランシス J.・羽鳥博愛(1984)『英語発想 IMAGE 辞典』朝日出版社
國廣哲彌(1982)「連想の比較」國廣哲彌編『日英語比較講座 第 4 巻 発想と表現』大修館書店
宮田登・深沢俊編著(1989)『日欧対照イメージ事典』北星堂書店
日本流行色協会編(1991)『色のイメージ事典』同朋舎出版
須賀川誠三(1999)『英語色彩語の意味と比喩』成美堂
田中春美・田中幸子(1996)『社会言語学への招待』ミネルヴァ書房
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