イタリア・トレヴィーゾ バドエーレ産 ホワイト・アスパラガス 現地レポート

イタリア・トレヴィーゾ バドエーレ産
◎ 苗について ◎
No.1
登馬商事株式会社
2014 年 3 月 31 日
作成者:横澤一史
ホワイト・アスパラガス 現地レポート
砂地に種を蒔き、1 年かけて苗を作ります。成長した苗は一度掘り起し、
乾燥させて苗のみを取り扱う卸業者が買い集めます。
ファンティン社は苗作りもアスパラガス生産自体を両方行っている非常に珍しい会社です。
品種はヨーロッパに出回っているものだけでも 26 種類もあり、グリーンアスパラ、ホワイト
アスパラは両商品とも同じ品種ですが、やはりホワイト向き、グリーン向きの品種はあるようです。
各生産者はその土壌に合ったもの、また収穫時期を鑑みて品種をセレクトします。
イタリア産ホワイトアスパラで多く用いられるのは CUMULUS 種、ZENO 種、EROS 種、GROLIM 種、
左 2 人がファンティンご夫妻
右の方は今回おせわになった、
イタリアの通関のプロの方。
MAGNUS 種などです。
HERCOLIM という品種が最上と言われていますが、苗の流通価格が通常の 2 倍もして、
その上栽培が難しいため、あまり栽培されません。
この時期ファンティン社で使用していたのは MAGNUS、GROLIM、EROS の 3 種。
常に複数種を植え付け、何か問題が発生した際のリスクヘッジを行っております。
苗はその後、春先から夏にかけて植えられ、2 年間成長させ 3 年目から収穫開始となります。
収穫を開始してから 6 年から 8 年程度は収穫可能、その後最低 7 年間は休耕地とする為、
広い土地が必要な点、休耕地の期間が長い点がホワイトアスパラの付加価値につながっております。
ファンティン社の取り扱う
◎ 収穫について ◎
アスパラガスの苗
2014/3/18(火)AM6 時から収穫立ち会い。
この時期はまだ気温が低く、収穫はハウスのみで行われました。
朝の気温は 8 度くらい。最低気温 10℃∼ 12℃以上になると収穫の最盛期になります。
露地ものはハウスに比べて 2 週間程度遅れて開始になるようです。
ファンティン氏曰く、露地物とハウス物の味の差は正直あまりないと感じている様子。
本日の収穫量は 4 時間かけて収穫し、出荷時換算でグリーン 110 ㎏、ホワイト 120 ㎏程度。
収穫後、水の中に 30 分程度漬けておき選別を開始しました。
こちらも新情報ですが、選別後 22 ㎝以下の長さにカットいたします。これは EU の法律で定められており、
これよりも長いものは生産者が不当に利益を得ているとされ、法律違反で罰せられる様子です。
カットしたスソモノは販売不可の様子です。
1 ㎏束にまとめられ 5 束 ×1 箱に梱包。弊社向けは今回においてはバラ出しですが、
次回以降は着荷の状態で協議する事となりました。
生産量自体は、最盛期で 1 日 400 ㎏程度、毎週価格は変動しますが、復活祭の頃は需要が高まり、
最も価格が高騰するようです。
尚、今年の復活祭は 4/20 です。イタリア全体が完全にお休みになるため、前後 1 週間はスケジュールにも変動があります。
① 畝から顔出す
② 長い刈り取り器で、
③ 採れたてアスパラ
④ 水洗い
⑤ 選別
この畝の下にまだまだ
30 ㎝程のアスパラを
地中深くから生えてくる物を
30 分程、水洗い。
太さで選別。左手前から
ホワイトアスパラ
沢山隠れてます
ファンティンさんが
職人芸で刈り取ります。
土をかぶせていくのではなく、
刈り取る為、難しい収穫です。
採れたアスパラを
桶の中に漬けます。
カット前に、クオリティと
2 つ目が登馬セレクション。
No.2
話は前後しますが、
3/17(月)の夜にファンティン家にてアスパラガスの試食をしました。
・ファンティン社の瓶詰商品を用いてのクロスティーニ
・グリーンアスパラとサンダニエーレ産生ハムのパイ包み焼き、
・グリーンアスパラのリゾット、ボイルしたホワイトアスパラとポーチドエッグを供して頂きました。
好みでオリーブオイルとワインヴィネガーも勧められました。
卵・油・ヴィネガーというオランデーズソースと同じアプローチです。
口径が狭い縦長の鍋でアスパラが立てられた状態で 20 分程度ボイル。
ちょうど穂先が熱湯にかからず、蒸されている状態を保ちます。
イタリアでは通常のやり方とのことですが、日本の常識よりも長いボイル時間の印象。
皮はほとんど剥かずに、そのままクタクタになるまで茹でている感覚。フォークとナイフを使って食べていたら、
「イタリアでは手づかみで食べるんだ」と指摘を受けました。
アスパラを手で持ってトロトロの黄身につけてそのまま食べる、これがイタリア式だそうです。
① アスパラボイル器
② ボイル完了
③ どさっと茹で上がり。
イタリアでは IKEA で購入できる
中にザルがついていて便利。
イタリアでは皮ごとクタクタになるまで、
そうです。
あつあつです。
茹で上げます。
なかなかよさげなボイル器です。
元々曲がっているアスパラも
茹で上げ後はまっすぐになります。
④ クロスティーニ
⑤ パイ包み焼き
⑥ グリーンアスパラのリゾット
胡椒をかけて出来上がりっ!
生ハムの塩味とマッチして、
リゾットに使うブイヨンをアスパラの
美味しいっす!
茹で汁使用している為、風味満載。
とっても美味しいリゾットでした。
No.3
試食の際、ホワイトアスパラの歴史についても学習。
イタリアにおいて、アスパラガスは昔から食されてきたものの、本格的な生産体制になってからの歴史はまだ浅く、
第 2 次世界大戦時のムッソリーニ政権が、国内の食糧自給率を上げて国力を強化する目的で、
ヴェネト州東部からヴェネツィアにかけて湿地を干拓し、その一帯に小麦やトウモロコシを植え始めました。
その後、農業政策の転換により、ホワイトアスパラの生産を開始したという流れがあり、まだ半世紀の歴史との事。
尚、バドエーレ周辺はもともと養蚕業が盛んで、ミラノへ良質の絹を納めていましたが、
中国から安い絹が入ってくるようになると養蚕業者は養蚕をあきらめ、アスパラガスの生産を始めました。
ホワイトアスパラを生産する上で大事な点は、粘土質ながら石やカタマリの少ない土壌。
これは、通常のイメージと違い、ホワイトアスパラは苗を植えた後、30 ㎝程度土盛りを行うため
(伸びた分だけ徐々に土をかぶせていくのではなかったのです!)、
土壌に石や固い土の部分があると、それを避けて曲がった状態で生えてしまいます。
又、フランスのロワール地方やイタリアのパドヴァ近郊では、湧き出る温泉を利用し、その温水を管で地中に通し、
土の温度を上げてハウスものの早積みを行っています。
しかしながら、非常にコストがかかり、休耕地とする事も難しい為、品質の安定性に若干不安があるとの事です。
ファンティン社でも過去に一度試みましたが、バドエーレには温泉が無く、水を温める燃料コストが大変なことになり、
土壌改良に注力する方針に切り替えた経緯があるそうです。
やはり、旬は 4 月中頃から 5 月中旬とのことですので、弊社も旬の時期の販売に注力していきたいです。
◎ 物流に関して ◎
イタリアではまだまだ物流システムがスムーズではありません。通常、生鮮物を輸入しようとすると、
収穫から日本のレストラン様へお届けするのに 6 日間かかってしまう現状がありました。今回ファンティン社が、
「精魂込めて作ったアスパラガスが 1 週間もかかって日本のレストランに届くことはどうしても受け入れがたい」
という職人魂を発揮して頂き、イタリアの通関業者も巻き込んで協議を行った結果、
日曜日に収穫されたものが木曜日にはお届けできるスキームを組むことが可能となりました。
生産者であるファンティン社のオーナーのアスパラガスに対する強い愛情が、
最短のリードタイムを実現することになったのです。
春の香りとして、ヨーロッパを代表する野菜に成長したホワイトアスパラですが、
知れば知るほど、奥が深く面白い商品だと感じ、中々行う事ができていない、
イタリア産の定期便が定着できる様、生産者と協力していきます。
By 横澤一史