2015年度専門委員会年間報告

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2 0 1 5年度専門委員会年間報告
1.総合企画委員会
(1)構成及び運営
本年度の委員会は,委員長1名,委員9名,
過去の状況として,①PAEの実際およびそれ
を取り巻く環境,特になぜ米国で多くのPAE
が活動しているのか,台頭の背景事情やPAE
がどのように収益を上げているのか,②米国で
オブザーバー2名の計12名で,ほぼ月に一度集
の制度・法制等の改正の動きと注意点,また③
まって議論を行う形で活動を行った。また報告
日本における業界別のPAEの影響等に関する
書の作成にあたっては2つのWGに分かれて作
調査検討を行った。後半担当のWGはPAEに関
業を分担した。個別に調査検討作業を行いなが
する将来の対応策に焦点を当て,①見え始めて
ら,適宜月例の全体会議で協議,すりあわせ等
いるPAEの新たな動きや今後の予想,②どの
を行った。
ようなパターンで交渉や訴訟を仕掛けてくるの
(2)活動方針・目的
か,PAEとの訴訟における過去の訴訟履歴調
昨年度,広く知的財産制度全般に関わる課題
査等の重要性,③将来米国でPAEとの特許訴
を委員会で討議し,その中からPAEというテー
訟に巻き込まれたときの具体的な対処法や,さ
マを選択した(PAE[Patent Assertion Entity]
;
らには④訴訟に巻き込まれないための事前策等
従来パテントトロールやNPE[Non Practicing
について調査検討を行った。
Entity]と呼ばれた組織。なお本検討において
検討にあたってはこれまでの記事や成書であ
は,実質的な生産活動を行っていない大学・研
まり触れられていない,日本企業からの視点・
究機関等を対象から外すという意図でNPEでは
注意点を入れること,米国訴訟経験が少ない会
なく,PAEの用語を用いることとした)
。これ
員企業にも有用な記載とすること,さらには知
まで最前線で対応してきた知財関係者の暗黙知
財活用を検討するときのヒントにもなりうる情
とPAEに関する最新情報を集め,整理したう
報を提供することを心がけた。またできる限り
えで文章化することで,今後日本企業がPAE
今現在のPAEの状況を掴むべく,内外企業・
に対応するときに役立つ情報を提供することを
組織関係者にもご協力を頂いてヒアリングを行
目的とした。
い,最新のトレンドを含む情報収集を行った。
(3)活動概要
最後に今後日本が取るべき方策についての提
本年度上記のような活動方針・目的を設定し
たのは,これまでの議論により当委員会内で,
言を含め報告書として取りまとめた。
(4)来年度の活動
1)過去多くの日本企業がPAEと対峙してき
この2年間でPAEに対する調査検討が一応
ているものの,必ずしもその経験が有効に会員
終了し,知財管理誌に当該報告として「PAE
企業内に還元されていないのではないかという
を巡る動向と日本企業としての対策(2016年4
問題意識が共有され,また2)近年の社会情勢
月号)
」を投稿することができたので,来年度
の急変で,PAEもそのビジネススキームや活
からは改めて新テーマを設定し活動を行うこと
動を大きく変えつつあることが指摘されたこと
としている。
にある。本年度はこれらの問題に取り組むべく,
PAEの実態を整理し,それを踏まえたうえで
我々日本企業がどのように対処すべきかについ
2.人材育成委員会
Ⅰ.主な活動等
てまとめるため,2つのWGに分かれて検討作
人材育成委員会としては,
「会員の,会員に
業を進めた。前半担当のWGは,PAEの現在・
よる,会員のための研修」をモットーに,会員
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受講生の人材育成を図ると共に,委員自らのレ
・T1(知財変革リーダー育成)研修のプ
ベルアップを図ることを目的として活動を展開
ログラム追加(ケーススタディの導入)
した。
特に今年度は,当協会方針「変化に対応でき,
当協会の基盤である会員企業の知財人材の育成
・技術管理者向け研修の企画と実施
(4)新規海外コースの企画と効率的研修運営
(アセアン訪問型研修:事前視察,研修内
を図り,人材基盤,財務基盤の確立に貢献する」
容確定)
に基づき,下記の基本方針に沿って,事務局
Ⅱ.委員会の構成
(JIPA人材育成グループ)及び研修運営スタッ
委員会構成としては,委員長,委員長代理を
フ(TES) と の 連 携 に よ り 活 動 を 展 開 し た。
含め合計51名(前年度37名)で,委員長会,正
2015年度活動は委員51名体制,4つの小委員会
副委員長会及び4つの小委員会で構成し活動を
により運営した。
展開した。
1.基本方針
第1小委員会(関東地区)と第2小委員会(関
事務局及び研修運営スタッフとの連携により
西,東海地区)は,既存コースの改編(カリキ
会員満足度の高い知財研修会を提供すると共
ュラム,講師,テキスト)を中心に,第3小委
に,委員自身の自己成長に繋がる明るく楽しい
員会は,新規・臨時コース,特別コース及び技
充実した委員会活動を効率的に展開する。
術者向けコースの企画立案・実施を中心に,第
-The miracle of JIPA’
s Human Resource
Development 奇跡のJIPA人材育成-
“Leading Next Generation Create of IP
Vision”
・会員企業が満足できる研修プログラムの充
実化(JIPAでしかできない研修プログラム)
・委員会メンバーの更なる人材育成(派遣元
をうならせる委員の成長)
4小委員会は,現地研修を伴う海外研修コース
の企画・実施を中心に各々活動を行った。
事務局人材育成グループは7名(東京5名,
大阪2名)でスタートし,研修運営スタッフの
統括及び研修運営活動の円滑化に務めた。
研修会場の運営を行う研修運営スタッフ
(TES)
は,関東8名,関西7名,東海3名,計18名で
行った。
尚,突発的な事態に対してもマニュアルの基
本的事項を踏まえ,適宜TESの「そのときどう
2.重点推進事項
人材育成に関する中長期ビジョンに示された
方向に沿う形で,下記項目について重点推進を
図る。
本年度は,
「変化に対応できるグローバルな
知財活動に対応できる人材を育成するための新
規研修の企画・立案(JIPAでしかできないプ
ログラム)
」について重点的に取り組んだ。
(1)アクション50-50の継続実行と,適切な
フォローアップ
(2)改編Bコース(初級)の研修内容検証,
動くか」という自主的な判断で,対応できたと
考える。
今後とも,研修現場でどのような状況におか
れてもTESの的確な処置,判断が大きなポイン
トになると思われる。
Ⅲ.委員会の運営
委員会の運営としては,4月の委員長会から
始まり,正副委員長会,各小委員会,合同委員
会を適宜開催し委員会活動を展開した。
1.委員長会
略1回/3月のペースで実施し,重点事項の
新規Wコース(グローバル研修)の企画立
進捗を確認。
案と実行
<トピックス>
(3)Tコース/技術者コースの安定運営と効
率的研修運営方法
①「アクション50-50」を継続的に実施し,常
務理事・委員長会議にて適宜,報告
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②2月度及び3月度の関東/関西部会で来年度
研修案内の概要を説明し研修コースPR
③JIPAシンポジウムでのポスター発表
④合同委員会における委員会内研修テーマを審
に,検証対象外のコースについても,でき
る限り聴講し必要に応じて改訂を行う。
⇒結果として聴講による検証コースが増
え,委員会メンバーの負荷が高くなって
しまった。
議
2.正副委員長会
中間報告,年度報告及び編集会議を実施
③2014年度の受講実績は前年比920名減の
13,750名であった。2015年度においては受
①10月に島根県松江市で一泊実施
講者数が増加に転じることができるよう,
②1月に東京事務所で編集会議
対応策を検討し適時実施する。
③3月に東京事務所で引継会を実施
⇒第1小委員会担当の臨時研修を18コース
3.合同委員会
実施するなど,全体として受講者数の増
①4月に関東(第1小,第3小,第4小)
,関
加が図れたが,Wコースの受講者減に歯
西(第2小)を実施
②7月に富山県氷見市で一泊実施(委員会内研
修:鈴木嘉浩副理事長による講演実施)
止めがかからない。来期は対応策を検討
する必要がある。
④引継ぎ事項を中心に懸案となっている事項
③2月に高知県高知市で一泊実施(委員会内研
ごとに担当委員を決めて検討し,2016年度
修:露木育夫人材育成グループ部長による講
から改善できるよう第2小委員会とも連携
演実施)
して取り組む。
4.第1小委員会
⇒特にS1の改編やBコースの東西統一に
<活動方針・活動体制・活動報告>
ついては,第2小委員会はじめ,委員長,
・活動体制
他の小委員会とも連携して取り組むこと
14名(小委員長1名,副委員長3名,委員10
ができた。
名)
。研修コンテンツの分野ごとに,7チーム
<トピック・2016年度に向けて>
体制で活動。また,S1コース改編WGにもメ
①JIPAの研修体系全体の検証・見直し
ンバーを派遣。
②「研修案内」の充実
・活動方針,活動報告
③臨時研修検討の一本化
①昨年度の小委員長,副委員長が退任し,2
年目となる留任委員と新任委員での運営と
⑤東西海での研修プログラムの検討
なるため,全員で協力し円滑な運営が図れ
5.第2小委員会
るよう努める。
<活動方針・活動体制>
⇒留任委員と新任委員で協力し,大きな問
①活動方針(2013~2015年度)
題もなく円滑な運営が図れた。また,今
(ⅰ)
「権利取得」から「権利活用」への移行
年度は45コースにおいて講師の交代や新
(ⅱ)グローバル化に対応した能力を有する
規での選任が必要となったが,委員長や
他の小委員会,事務局のご協力・ご尽力
により,無事に来期の全講師が確定した。
②小委員会メンバーが増員したこともあり,
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④第1小委員会内での課題設定
知財人材の育成
(ⅲ)戦略思考をもって能動的に活動できる
知財人材の育成
②活動体制
負荷の軽減を図る観点から,研修コースの
12名(小委員長1名,副委員長3名,委員8
分類ごとに委員3名又は4名体制で担当す
名)
。関西チーム8名,東海チーム3名に分か
る。検証対象コースについては当日聴講し,
れて活動した。また,S1コース改編WGへも
2016年度に向けて十分な検証を行うと共
メンバーを派遣。
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<活動報告>
①研修検証
関西16コース,東海9コースについて検証。
来期計画:関東/関西・東海での日数・講義
課目の不一致について第1小委員会と協議。来
期は日数を統一し,講義内容もほぼ合わせるこ
必要に応じて,講師に改善を要望。
ととした。
②新規研修企画(2015年度開催)
<トピックス>
前年度から引き継いだものを含め,新規研修
として5コースを企画,開催した。
①小委員会活動
全10回の小委員会を開催。5月は第1小委員
・B1「特実・意匠基礎」
(関西・東海)
会との合同でS1コース改編の方向性,改編B
・B3「商標基礎」
(関西)
コースの東西海不一致解消とアンケート実施,
・B5「知財法務基礎」
(関西・東海)
および検証報告書の統一について意見交換を行
・WU1「米国特許制度」
(東海)
った。また,6月には恒例の合宿研修を大阪府
・R9「欧州特許制度」
(東海)
能勢にて実施。
Bコース群は,従来の単一コースを,Aコー
②三か年活動方針レビュー
スとの差別化,およびCコースへのスムーズな
中期活動方針の最終年度として過去三年間の
橋渡しを目的に分野別に2014年度に改編検討し
活動実績を振り返ると,下表の通り,いずれに
たコースである。2015年度研修にて実施した。
ついてもほぼ方針通りの活動ができた。
東海地区Wコース群は,単一コースであった
東海地区Wコースを国別コースとして充実化し
た。WU1は毎年,R9はR10「アジアの特許
①権利活用指 2013年度
向
R29(国際知財訴訟)
R30(NPE訴訟実務)
2014年度
R43(侵害訴訟対応)
2015年度
東海R40(審判決例)
②グローバル 2014年度
化対応
R42(中国契約)
東海Wコース改編検討
制度」とともに隔年開催とする予定である。
③新規研修企画(2016年度開催予定)
来期の開催を目指し,2コースの新規臨時研
修を企画した。
2015年度
・R10「アジアの特許制度」
(東海)
東海地区Wコースを国別コースとして充実
化。R9と交替で隔年開催の予定。
・
「特許権侵害訴訟演習」
演習を通じて,特許権侵害訴訟手続きの流
れ,重要な法律事項,および実務ポイント
③戦略思考・ 各研修にミニ演習やQ&Aコーナー
能動的人材 などを導入
を習得。
④中四九地区研修計画
過去の受講状況を解析し,知財担当向け初中
級コース,および技術者向けコースの需要あり
R28B(国際契約模擬交
渉)
R30A,B(外国中間処
理演習)
R(特許権侵害訴訟演習)
検討
2014年度
Bコース改編検討
2015年度
S1コース改編検討
<2016年度に向けて>
・関西・東海地区を専門的に担当する第2小委
と判断。来期はR33(拒絶理由実務)
,D15(交
員会は消滅するが,定例研修の内容を把握し,
渉学(応用)
)
,
R6(特許情報活用)
,
G2X(知
それを補完・充実化する臨時研修を企画する
財Advance)を広島にて開催する予定。
という第2小委員会の考え方については,来
⑤改編Bコース関連
期以降,新規研修の企画を担当する小委員会
アンケート:今期新設されたB1,B3,B
5にて受講者アンケートを実施。講義
課目,研修内容とも概ね好評。各講師に結果
をフィードバック。
に引き継ぎたい。
6.S1コース改編WG
<活動体制>
WGメンバー15名。委員会横断のWGを設け
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第3小委員会・事務局メンバーにて構成した。
)
<活動報告>
①会合実績
プレ会合
員会・第3小委員会で意
7.第3小委員会
見交換
<活動方針・活動体制> 8/20 東京事務所 13名
第2回WG
9/29 東京事務所 8名
②以下のコースに改編した。
コース名
関東・関西 定例 S1「知財活動にお
けるマネジメント講座」
受 講
対象者
知財部門のマネージャまたはそれに準ず
る方で,具体的には下記に挙げる方
・マネージャ候補者
・マネージャになってまだ経験の浅い人
・マネージャになって数年経過している
が,知識を補充したい人,意識改革を
したい人,視野を広げたい人
講義課目と講師
1日目
2日目
3日目
4日目
40
「知財マネージャに期待すること」
これからの知財マネージャに期待するこ
午後 とを幅広く講義
講師:
(一社)
日本知的財産協会
久慈直登氏
5/22 第1小委員会・第2小委
第1回WG
午前
4日目
て検討した。
(第1小委員会・第2小委員会・
「知財戦略概論」
知財戦略に関する体系的な講義
講師:㈱日立製作所 戸田祐二氏
「知財戦略の実践」
知財戦略に関する事例紹介を中心とした
午後
講義
講師:シスメックス㈱ 井上二三夫氏
「ブランド戦略における知財の関わり」
ブランド戦略の必要性,知財の関わりに
午前
関する講義
講師:弁理士 外川奈美氏
「攻めと守りの知財活動」
権利活用等に携わる際に知っておくべき
午後
必要最低限の知識に関する講義
講師:弁護士 近藤惠嗣氏
「知財活動におけるリスクマネジメント」
企業活動にかかわる知財関連法務の概要
午前
とリスクマネジメントに関する講義
講師:弁護士 中務尚子氏
「知財活動における税務」
知財に関する税務問題について,効率的
午後
にその全体像を理解する講義
講師:弁護士 手塚崇史氏
「グローバル知財活動における留意点」
グローバル知財活動遂行上の留意点を,
午前
関連する重要情報とともに講義 講師:㈱デンソー 碓氷裕彦氏
①活動方針
(ⅰ)経営感覚人材育成コース(Tコース)
の継続運営に努め,経営に資する知財人材
育成のための研修を充実させる。
(ⅱ)実施中の担当臨時研修の継続運営,お
よび新規臨時研修の企画立案を行う。
(ⅲ)研修の企画運営および委員会活動を通
じて,委員自らの人材育成を図る。
(ⅳ)委員間の交流を深めて委員の情報収集
能力を向上させ,各社の知財活動を充実さ
せる。
②活動体制
小委員会13名(小委員長1名,副委員長2名,
委員10名)
。特別コース・新規臨時コースの9
コース毎に担当を割り振って活動した。
<活動報告> ①T1コースにおいて,
受講生に経営視点で「会
社への提言」を行ってもらえるように,第1
ラウンドに簡単なケーススタディを導入し
た。また,各講師の講義内容についても改善
を行い,受講生の満足度は向上した。
②T2コースの充実化を図る目的で,籏本講師
と種々打合せを行い,次年度に向けた改善検
討を進めた。次年度は事例の変更や知財戦略
講義の充実を図っていく。
③T3コースにおいて,特許委員会・国際委員
会・ライセンス委員会の専門委員会の協力の
もと,充実した研修が実施できた。
<トピックス> ①懸案の「技術部門マネージャのための知的財
産講座」
(R26)
「
,知財と標準のビジネス活用」
(R23)
,
「新興国ビジネスにおける知財・法
務(アフリカ研修)
」
(R39)の臨時研修を企
画し実施した。引き続きブラッシュアップし
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ながら実施していきたい。
②今年度の法改正に合わせて,
「改正特許法35
小委員会11名(小委員長1名,副委員長3名,
委員7名)
。コース毎に担当を割り振って活動
条(職務発明制度)とその実務対応」
(R
した。
44)
,
「営業秘密防衛のための知財部門の役割」
<活動報告>
(R45)を企画し実施し,多くの受講者があ
①F7(アセアン)立上げのための研修内容企
画,事前視察とホスト候補事務所等との交渉
った。
<2016年度に向けて>
①T2コースにおいて,事例の変更や知財戦略
講義の充実を検討してほしい。
②F8(新米国)立ち上げのための研修内容企
画,ホスト事務所選定と交渉
③F2&F5の実施(特に事前,事後の運営,
②「技術部門マネージャのための知的財産講座」
会誌原稿のチェック,アンケート検討等)
(R26)において,内容見直し及び講師への
④既存コースの研修内容見直し(アンケート実
フィードバックが必要である。
③今年度実施した新規研修で受講者数が少なか
った研修(R23,R39,R42)については,
次年度実施の可否を含め検討が必要である。
8.第4小委員会
<活動方針・活動体制>
①活動方針
(ⅰ)グローバル知財人材育成に役立つ研修
を企画・運営する。
(ⅱ)協会・研修生の役に立ち,かつ自身の
成長につなげ,もって会社に貢献する。
施 F4,F6)
,開催間隔見直し(F3,
F5,F6)
⑤F4,F7及びF8の企画書と募集案内を作
成した。募集継続中。
⑥JIPAシンポジウムで人材育成委員会のポス
ターセッションを行った。
⑦知財協及び各会員企業において小委員会を開
催し活動した。
(全11回)
<トピックス>
①ASEANコースの新規立上げに向けて現地視
察を行った。
<2016年度予定>
②役割
(ⅰ)滞在・訪問型の下記海外現地研修を企
画し実施
F2:米国特許制度,関連法規等及び模擬
裁判(モックトライアル)の研修
F3:アジアの知的財産事情の研修(中国,
韓国,台湾)
F4:欧州特許制度,法規及び模擬異議申
立審理の研修
F5:中国知的財産制度及び法規の研修
F6:インドの知的財産事情の研修
F7:アセアンの知的財産事情の研修(新)
F8:米国IPRブートキャンプ&米国流知
財マネジメント入門(新)
(ⅱ)時代,会員ニーズに合った新規現地研
修コースの立上げ検討を進める。
(ⅲ)上記視点で既存各コースの改善及び再
編を検討する。
③活動体制
①F4,F7及びF8コースを実施する。
②翌年度実施予定の各コースは,前回振返りを
踏まえ企画書・募集案内を作成する。
③新規コース,コース再編についての検討を引
き続き進める。
④各コースの運営マニュアルを作っていく。
9.小委員会・研修運営スタッフ(TES)合同
会議
①第1小委員会・関東運営チーム合同会議:4
月,9月,11月に実施
②第2小委員会・関西運営チーム合同会議:4
月,9月,11月に実施
10.研修運営スタッフ(TES)会議
①東西海合同TES会議:5月に大阪で実施
②東西海合同TES会議:11月に愛知県伊良湖で
一泊研修実施
③東西海合同TES会議:3月に東京で実施
Ⅳ.研修状況
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2015年度は受講者総数として,14,896名とい
が著しく少なかったため,中止とした。更に,
う結果になった。目標に掲げた1万5千名には
知財幹部研修として「知財変革リーダー育成研
届かなかったが,昨年度対比108%で1,146名程
修」13名,
「知財戦略スタッフ育成研修」27名
の増加となった。
の受講者で実施した。
「若手企業知財要員育成
定例コースは10,872名(昨年比101%)の受
研修」に41名の参加があった。
定例コースの講師陣は,裁判官,大学教授,
講参加者があり,臨時コースは39コース(うち
広島地方開催3コース)を実施して3,893名(昨
弁護士,弁理士,会員会社の経営者及び知的財
年比134%)の受講参加者があった。
産または法務・技術担当者等,斯界の権威者を
又,今年度は海外研修を2コース実施し,F
2コース(米国)33名,F5コース(中国)17
約200名迎えることができ,当協会の研修会は
質量共に世界に類のない規模となっている。
名の参加者であった。F6コースは,参加者数
2015年度受講者数を次に掲載する。
1)2015年度各地区別受講者数一覧
①関東定例コース受講者数
コース
受講者数
計
入門
A1
A2
入門コース
入門コース
268
151
419
初級
B1
B3
B5
B9
特実・意匠基礎
商標基礎
知財法務基礎
特許情報と特許調査基礎
203
82
153
170
608
C1
C2
C3
C5
C6
C7
C8A
C8B
C9A
C9B
C9E
C10
C11
C15
特許法・実用新案法
意匠法
商標法
知財契約実践
民法概要
民事訴訟法概要
明細書の書き方(化学)
明細書の書き方(電気・機械)
特許情報と特許調査(実践)
化学分野における実践的特許調査
特許情報システムの導入と活用
不正競争防止法と独占禁止法
著作権法(著作権法と企業実務)
交渉学(入門)
272
86
136
342
115
82
200
145
252
105
58
191
130
239
2,353
D1
D3
D6
D15A
D15B
特・実,審判・審決取消訴訟
商標・不競法審判決例と企業における対応
特許侵害訴訟
交渉学(応用)
交渉学(応用)
156
100
180
40
40
516
E1
E7
E8A
E8B
特・実判決例の研究(模擬裁判形式)
特許事例の研究(討論形式)
英文明細書の書き方(化学)
(演習形式)
英文明細書の書き方(電気・ソフトウエアを主として)
(演
習形式)
英文明細書の書き方(機械を主として)
(演習形式)
中級
上級
研究
E8C
42
タイトル
43
36
28
28
19
154
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コース
技術部門
総合
グローバル
タイトル
受講者数
計
G1A
G1B
G2A
G2B
G2X
G3A1
G3A2
G3A3
G3B1
G3B2
G3B3
G3S
G4
技術者リーダーのための知的財産講座(電機)
技術者リーダーのための知的財産講座(化学)
中堅技術者のための知的財産Basic講座(電機)
中堅技術者のための知的財産Basic講座(化学)
中堅技術者のための知的財産Advance講座
本質を考えた発明説明書の書き方演習(電機系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(電機系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(電機系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(化学系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(化学系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(化学系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(ソフトウエア系)
技術系新入社員のためのIPマナー講座
190
172
274
192
191
40
30
45
44
45
44
19
142
1,428
S1
知的財産権と企業経営
166
166
WW1
WW3
WW26
WU1
WU21
WE1
WA1
WA21
国際特許制度と外国特許基礎
外国商標法
国際契約
米国特許制度
米国特許訴訟
欧州特許制度
アジアの特許制度
アジアの知的財産
169
88
307
197
152
145
124
161
1,343
関東地区定例コース 受講者総数
6,987
②関西研修各コース受講者数
コース
タイトル
受講者数
計
入門
A1
A2
入門コース
入門コース
150
134
284
初級
B1
B3
B5
B9
特実・意匠基礎
商標基礎
知財法務基礎
特許情報と特許調査基礎
118
42
72
70
302
C1
C2
C3
C5
C6
C8A
C8B
C8C
C9A
C9B
C9E
C10
C11
C15
特許法・実用新案法
意匠法
商標法
知財契約実践
民法概要
明細書の書き方(化学)
明細書の書き方(電気・機械)
明細書のあり方(化学)~演習~
特許情報と特許調査(実践)
化学分野における実践的特許調査
特許情報システムの導入と活用
不正競争防止法と独占禁止法
著作権法(著作権法と企業実務)
交渉学(入門)
96
50
40
113
52
172
44
47
123
47
28
70
48
74
1,004
D1
D3
D6
D15
特・実,審判・審決取消訴訟
商標・不競法審判決例と企業における対応
特許侵害訴訟
交渉学(応用)
56
29
68
40
193
中級
上級
43
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
コース
研究
技術部門
総合
グローバル
タイトル
受講者数
E1
E8
特・実判決例の研究(討論形式)
英文明細書の書き方(討論および演習形式)
G1C
G1D
G2C
G2D
G2X
G3C1
G3C2
G3C3
G3D1
G3D2
G3D3
G3D4
G4
技術者リーダーのための知的財産講座(電機)
技術者リーダーのための知的財産講座(化学)
中堅技術者のための知的財産Basic講座(電機)
中堅技術者のための知的財産Basic講座(化学)
中堅技術者のための知的財産Advance講座
本質を考えた発明説明書の書き方演習(電機系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(電機系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(電機系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(化学系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(化学系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(化学系)
本質を考えた発明説明書の書き方演習(化学系)
技術系新入社員のためのIPマナー講座
S1
WW1
WW3
WW26
WU1
WU21
WE1
WA1
計
22
27
49
173
98
140
190
120
34
28
26
26
35
13
12
100
995
知的財産権と企業経営
80
80
国際特許制度と外国特許基礎
外国商標法
国際契約
米国特許制度
米国特許訴訟
欧州特許制度
アジアの特許制度
46
28
99
85
86
50
40
434
関西地区定例コース 受講者総数
3,341
③東海研修各コース受講者数
コース
タイトル
受講者数
計
入門
A1
入門コース
65
65
初級
B1
B5
特実・意匠基礎
知財法務基礎
30
26
56
中級
C1
C8
C15
特許法・実用新案法
明細書の書き方(化学・電気・機械)
交渉学(入門)
40
46
42
128
上級
D15
交渉学(応用)
29
29
技術部門
G1E
G1F
G2E
G2F
技術者リーダーのための知的財産講座(電機)
技術者リーダーのための知的財産講座(化学)
中堅技術者のための知的財産Basic講座(電機)
中堅技術者のための知的財産Basic講座(化学)
92
35
65
39
231
グローバル
WU1
米国特許制度
35
35
東海地区定例コース 受講者総数
544
定例総合計 10,872名
44
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
④臨時研修受講者数
コース
R1
R2
R3A
R3B
R4A
R4B
R5
R6
R7
R8
R9
R12
R13A
R13B
R15
R16
R17
R23
R24
R26
R28A
R28B
R30A
R30B
R31A
R31B
R31C
R35
R36
R37
R37A
R38
R38A
R39
R40
R41
R42
R42A
R44
R44A
R45
R46
R50
R51
R52
受講者数
タイトル
関東
中国における知的財産の活用と実務(トピックス含む)
米国最新知財判例及び審査基準の最新動向
知的財産権訴訟における裁判所の審理の実情と最近の裁判例
知的財産権訴訟の動向
米国特許をうまく取得する方法
強い欧州特許を取得する方法
事業活動における知財関連法務
技術者のための特許情報
知財高裁重要判例解説と日本の知財裁判のあり方
知財担当者のための国内中間処理実務の基礎
欧州特許制度
わかりやすい特許判例の読み方
特許発明の技術的範囲について(機械・電気)
特許発明の技術的範囲について(化学)
低コストで欧州特許を取得する方法と欧州知財最新動向
中国特許調査講座
交渉学(入門)
知財と標準のビジネス活用
知財活動における税務
技術部門マネージャのための知的財産講座
英文契約書ドラフティング講座Ⅱ
国際ライセンス契約模擬交渉講座
外国特許中間処理演習(化学)
外国特許中間処理演習(電気・機械)
交渉学(応用)
交渉学(応用)
交渉学(応用)
中国パッシングオフ関連条項の解釈について
東南アジア,中東諸国の知財制度と実務上の留意点
CPC最新情報の紹介と調査実務における留意点(EPOゲスト講師)
CPC最新情報の紹介と調査実務における留意点
特許譲渡情報の入手および活用方法
特許譲渡情報の入手および活用方法(追加開催)
新興国ビジネスにおける知財・法務
特許審決取消訴訟と審判決例
化学系中国語クレームの読解講座
中国語研究開発契約書を読解するための基礎実務講座
中国語知財契約書を読解するための基礎実務講座
改正特許法35条(職務発明制度)とその実務対応
改正特許法35条(職務発明制度)とその実務対応(追加開催)
営業秘密防衛のための知財部門の役割
知的財産権専門の裁判所新設後の動向
技術者のための知的財産基礎講座(地方開催:広島)
技術者のための知的財産実践講座(地方開催:広島)
改正商標制度(新商標)の運用と企業の取り組み(地方開催:広島)
臨時コース 受講者総数
関西
東海
計
41
69
103
―
101
61
98
123
86
113
―
64
―
―
62
76
―
83
175
150
46
28
42
37
39
39
―
29
27
97
―
133
―
16
―
39
―
35
290
216
115
53
―
―
―
17
26
―
27
36
30
32
43
25
56
―
15
36
41
31
37
21
19
50
63
20
12
20
20
―
―
15
―
―
―
35
―
39
休講
―
―
16
―
133
71
32
―
25
44
14
―
―
―
―
―
―
―
―
22
―
14
―
―
―
―
―
―
―
35
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
18
―
―
―
―
―
17
―
―
―
―
58
95
103
27
137
91
130
166
133
169
14
79
36
41
93
113
21
102
260
213
66
40
62
57
39
39
15
29
27
97
35
133
39
16
18
39
16
35
423
287
164
53
25
44
14
2,686
1,101
106
3,893
45
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
⑤海外・特別各コース受講者数
コース
タイトル
受講者数
F2
米国特許制度,法規および模擬裁判研修
33
F5
中国知的財産制度および法規の研修
17
F6
インドの知的財産事情の研修
T1
知財変革リーダー育成研修
13
T2
知財戦略スタッフ育成研修
27
T3
企業若手知的財産要員育成研修
41
計
50
休講
海外・特別コース 受講者総数
81
131
受講者総合計 14,896名(昨年13,750名)
Ⅴ.その他
1.日本弁理士会継続研修の実施状況
更に,日本弁理士会からの要請に基づき,弁
2.活動内容
(1)基本方針
事務局(JIPA人材育成グループ)及び研修
理士の継続研修への対応を行った。
運営スタッフ(TES)との連携により会員満足
2.発明推進協会主催の人材育成協力委員会に
度の高い知財研修会を提供すると共に,委員自
事務局・人材育成グループ露木GLを派遣した。
身の成長に繋がる明るく楽しい充実した委員会
Ⅵ.来年度の活動内容・方針
活動を効率的に展開する。
1.人材育成委員会の役割
人材育成委員会の役割は,協会の主催する知
的財産に関する研修会について,
・新規研修の企画・立案
・研修プログラムの見直し(既存研修の内容改
編,充実)
・研修内容の検証
『資源有限 人智無限 人材こそ 最大の財産』
・会員企業が満足する研修プログラムの充実
(人智を結集したJIPAでしかできない研修の
実施)
・委員会メンバーの更なる人材育成(会員企業
の財産になるような委員の成長)
(2)重点推進事項
等を役割とする。当研修会は,知財の実務担当
次年度は,
「グローバルな事業競争力を高め
からリーダーまで,また知財部門のみならず技
るために知財活動できる人材を育成する研修の
術者まで,それぞれ育成すべき人材の目標化を
企画立案・改編」について重点的に取り組む。
図り,その目標に沿った研修内容の適正化,高
質化を目指し,時代に合った企業で求められる
知財人材を育成することを目的とする。
当協会の研修会の特徴は,
「会員の,会員に
1)グローバル研修(Wコース)の見直し,
改編
2)特別コース(Tコース)/技術者コース
(Gコース)の充実化,安定運営
よる,会員のための研修を提供すること」にあ
・知財変革リーダー育成研修(T1)
,知
る。すなわち,会員受講生を対象とし,私たち
財戦略スタッフ育成研修(T2)の充実
自らが企画,運営し,また,講師の先生方も多
化
くは会員企業やそのOBであるという正に手作
りの研修会であり,日本はおろか世界一の規模
と,内容及び質を誇り,我が国の知的財産レベ
ルの向上に寄与する人材基盤の確立と共に協会
の財政基盤にも大きく寄与する。
46
・技術管理者向け研修の見直し,実施
3)会員企業ニーズに合ったタイムリーな新
規研修の企画,実施
4)新規海外コース(F7,F8)の実施,
Fコース再編および実施年度の検討
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
・新規のアセアン訪問研修(F7)の運営,
委員自身がしても可。
6.人材育成G
実施
・新規の米国アドバンス滞在研修(F8)
の運営,実施
協力体制を維持,強化
7.研修運営スタッフ(TES)
研修会の運営と問題点,改善点の指摘(モニ
Ⅶ.来年度の体制
1.委員長会(メンバー;委員長,委員長代理,
小委員長,事務局。年に数回開催)
委員会の運営全体協議
2.正副委員長会(メンバー;委員長,委員長
代理,小委員長,副委員長,事務局。年に数
回開催)
タリング機能)
TESの指摘事項に関しては,人材育成Gと協
力して対処
3.会誌広報委員会
1.委員会の構成と運営
研修企画の審議・承認,講師の新任,留退任
正副委員長(12名)を含め27名(任期内の退
の審議・承認,臨時研修の審議・承認(なお,
任1名)で構成し,第1小委員会(18名)
,第
緊急性のある臨時研修については委員長判断で
2小委員会(9名)の2つの小委員会で活動を
実行し,後日,承認を含む)
,次年度研修の審議・
行った。
承認(次年度の研修案内(小冊子)
)
,各小委員
委員会会合としては,
「知財管理」誌の原稿
会活動状況の共有
企画,執筆者対応,原稿査読等の実務推進を行
3.合同委員会(メンバー;委員全員,
事務局。
)
う小委員会と,全体の進捗確認,各号の誌面編
年2回,本年は7月と2月を予定。
4.小委員会
成決定,投稿原稿掲載可否判断,共通事項の審
議を行う定例委員会をそれぞれ毎月開催した。
(1)第1小委員会:定例コースの検証・改編
(関
各企画に当たっては,少なくとも1名の正副委
東・関西・東海の3地区)
員長同行のもと,執筆をお願いする先生に直接
(2)第2小委員会:技術者向け定例コース及び
面談し,企画について議論を深めるとともに執
特別コース(経営に資する
筆依頼を行った。また個別テーマとして,特集
知財人材育成に関する新規
号推進,メルマガ対応,JIPAシンポ対応,委
研修会)の検証・改編
員会活動マニュアル改訂の5つを設定し,WG
(3)第3小委員会:臨時コースの検証・改編,
新規企画
(4)第4小委員会:海外コース及びグローバル
(5)臨時WG
で検討を進めることとした。
2.活動方針と行動指針
委員の長期安定的確保を計るべく,
「会員企
化対応研修(国内臨時)の
業および委員が価値を実感できる委員会活動」
企画・実施・検証
を方針とし,行動指針として「①委員自らが課
:必要に応じて適宜構成予定
題形成し企画立案推進する,②メルマガで各号
5.委員会活動の進め方
の注目テーマを紹介する」の2つを掲げた。具
・会議開催は,場所,日程/時間,回数及びT
体的な活動については年初に意見交換し,年度
V会議の活用を考慮し,効率的に開催。意思
末には各委員の活動成果について共有した。
疎通に充分配慮し,メール及び電話連絡をフ
3.活動報告
ル活用する。
・個別案件は委員長会で情報共有化を図りつ
つ,小委員会単位で積極的に活動推進。事務
局及びTESとの連携も重要。密な連絡を。
・定例研修コース開講挨拶は,TESに一任で可。
(1)
「知財管理」誌
2015年度の論文数は117本,総頁数1,679であ
った(昨年度は論文数129本,総頁数1,903)
。
原稿分類別の掲載状況は,委員会の企画原稿
で論文掲載記事の48%を確保し,専門委員会原
47
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
稿が43%,外部投稿原稿が9%であった。専門
画として2008年にスタートした。協会外部の執
委員会原稿の内訳は下表を参照いただきたい
筆者だけでなく専門委員会にも執筆協力を得
(連載や分割掲載は1本としてカウント)
。
て,今年度は14本のテーマを掲載できた。
④知的財産Q&A(第1小委員会)
特許第1
5(4)
これまでは,会員企業の関心が高い比較的近
特許第2
5(4)
時のテーマを主体に,速報性とコンパクトで平
国際第1
5(3)
易な解説を重視して企画していたが,2014年度
国際第2
2(4)
より,より速報性を重視したテーマを取り上げ
国際第3
4(5)
てポイントを平易に解説する,という位置付け
国際第4
0(0)
に変更し,2本のテーマを掲載した。
医薬・バイオ
4(5)
⑤海外注目判決
ソフトウェア
3(2)
判例と実務シリーズでは主に国内判決を取り
著作権
1(1)
上げてきたが,急速なグローバル化に伴い,会
マネジメント第1
1(2)
員企業にとっても重要な海外判決が増えてきて
マネジメント第2
2(4)
いることを鑑み,2015年1月号からこれら海外
情報システム
2(2)
判決を取り上げた新シリーズを開始した。米国,
情報検索
6(2)
欧州,中国等を中心に,会員企業が注目すべき
ライセンス第1
3(3)
判決を取り上げていく予定であり,2015年度と
ライセンス第2
0(2)
しては12本の企画を掲載した。
意匠
0(0)
⑥新刊書紹介
商標
4(3)
会員に有益な新刊書籍を紹介するため,出版
フェアトレード
3(1)
社から協会への献本や,委員が書店で見つけた
人材育成
0(0)
新刊書について,当委員会の委員が紹介原稿を
(カッコ内は前年度原稿数)
執筆し,毎月掲載する。原則,1ヶ月に1本を
目標に運営しているが,積極的な推進により,
(2)全体の活動
①一般企画(第1小委員会)
委員会が企画する論説の40%を占める最も重
要なカテゴリーである。企業活動,知財に関わ
る環境の変化,或いは所属企業における日々の
今年度は19本の書籍紹介文を掲載することがで
きた。
⑦編集後記の執筆
各委員が持ち回りで毎月執筆した。
(3)その他個別の活動
業務等から課題を見出すことによって,論説テ
①特集号企画
ーマを企画・推進する活動に重点を置いた。
2016年4月号掲載予定で,
「知財とマネー」
②判例と実務シリーズ(第2小委員会)
という大テーマで特集を企画した。知財による
最新判決や注目判決から実務に役立つ論点を
資金調達や訴訟における損害賠償額算定,その
議論し,毎月掲載を原則としてテーマと執筆者
ベースとなる知財価値評価,さらには知財活用
を決定する。毎月の企画担当者を決めて運営し,
段階において検討すべき税制など幅広い視点で
17本を掲載することができた。
合計9本の論説を取り上げている。
③今更聞けないシリーズ(第1小委員会)
実務経験の浅い初心者や,実務熟練者でも意
外と知らない諸手続や法制度等に焦点を当て,
コンパクトかつ平易に解説する初級者向けの企
48
2017年4月号に向けた特集テーマについて
も,2015年月から議論をスタートした。
②委員会活動マニュアル改訂
「知財管理」誌の質の安定化を図るため,マ
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
ニュアルに基づいて委員会活動を行っている
の中で「今更聞けないシリーズ」を掲載してい
が,活動の実態とマニュアルの記載内容に齟齬
るが,質の高さを維持しつつ,さらにユーザフ
が生じているため,マニュアルの見直しに着手
レンドリーな機関誌としていくことを2016年度
した。2016年度も継続して改訂を行う。
の課題とする。
③会員企業名表記
「知財管理」誌の原稿中に会員企業名を記載
する場合の規定検討を専門委員会,会誌広報委
4.特許第1委員会
1.構成及び運営
員会の担当理事の意見をいただきながら行っ
2015年度の委員会は,委員長1名,副委員長
た。規定方針は原稿に記載される会員企業側の
(小委員長,小委員長補佐)16名,委員48名の
立場を考慮し,原則伏せ字とし,会員企業名を
計65名の構成で活動した。委員会内に5つの小
記載する場合は当該企業の了解を得た場合に限
委員会を設置し,小委員会毎に活動を推進する
るとした。2016年度より運用を開始し,移行期
体制とした。本年度,小委員会毎の検討カテゴ
間を経て正式に適用する。
リは以下の通りである。
(4)今後の検討課題
2016年度の委員数については,2015年度27名
から29名と微増となる予定である。近年委員会
活動の中心となる3年目の継続委員が少ないこ
とが課題であったが,2016年度の委員構成は3
年目:10名,2年目:9名,1年目:8名と,
スムーズな世代交代が出来るために必要な委員
構成となる予定である。しかし,積極的に委員
を派遣する企業はまだ少なく,委員募集にあた
って個別に会員企業に依頼をすることで委員数
【第1小委員会】
特許制度ハーモナイゼーションに向けた調
査・研究
【第2小委員会】
記載要件に関する研究
【第3委員会】
進歩性に関する研究
【第4委員会】
特許出願に関する諸問題の検討
【第5小委員会】
を確保しているのが実態である。当委員会での
審査過程における諸問題の検討
活動を通して会員企業にとってどんな有益なこ
また,外部の研究会等に積極的に委員を派遣
とがあるのか,派遣委員はどんなスキルアップ
して意見発信を行うと共に,そのような外部の
ができるのか,といった点を説明していくこと
動向や意見などは当委員会の活動にも活用し
で継続的な委員確保につなげていく。
た。また,国際政策プロジェクトと連携して,
また毎月の委員会の開催について,
「知財管
審査制度,運用のグローバル化に向けて,対特
理」誌の円滑な発行のためには月2回の委員会
許庁,対三極ユーザー,五極ユーザーとの意見
開催はやむを得ないと考えている。委員会活動
交換,意見発信を活発に行った。
に多くの時間を割かなければならない点は当委
2.活動概要
員会への委員派遣が敬遠されている原因の1つ
委員会として,年3回の全体会合を開催した。
になっている。従って,委員の継続的な確保と
各小委員会は平均月1回の会合を開催し,個々
いう観点から,委員1人1人の負担を減らすよ
の検討課題,及びパブリックコメント,特許庁
うな運営方法について検討する(TV会議の利
への要請等を含めた外部への意見発信のための
用,議事録の簡略化等)
。
議論を行った。
また「知財管理」誌は質の高い知財情報雑誌
また,委員長,副委員長により構成される正
として内外から高く評価されているところだ
副委員長会議を開催し,特許制度全体および各
が,反面記載内容が難しい,読みにくいといっ
小委員会の検討課題について横断的に対応し
た声を会員企業の読者からいただいている。そ
た。とくに,2015年度は,特許庁が進める特許
49
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
審査基準の全面見直し検討に対応し,審査の質
証の参考例(平成27年11月25日)
,PBPクレー
向上等の観点から,審査基準上の課題と見直し
ムに該当しない例(平成28年1月27日)に,そ
の方向性,さらに具体的な案を議論・とりまと
れぞれ事例が追加されるとともに,物の発明に
めて特許庁へ要望を提出した。
ついての請求項の少なくとも一部に「その物の
更に特許第2委員会の正副委員長と意見交換
製造方法が記載されている場合」に該当するか
を行うなど(7月)
,情報交換に努めた。
否かを,明細書等の記載に加えて技術常識も考
3.各小委員会での活動状況
慮して判断すべきことが明確化された。
【第1小委員会】
(1)日米協働調査
(3)グローバルドシエ
グローバルドシエ会合において決定された優
2015年7月1日から開始された「日米協働調
先5項目の1つである「アラート機能」につい
査の試行プログラム」について,ユーザ視点で
て,出願人,第三者双方の立場から機能要件の
活用方法等の検討を行った。
検討を行い,情報システム委員会に提供した。
日米各庁がそれぞれ行った先行文献調査の結
果及び特許性に関する見解を共有する「日米協
働調査」は,類似する制度のPPHに対して,①
【第2小委員会】
記載要件に関し下記の2つのテーマに取り組
んだ。
早い段階から申請可能,
②まとめて申請可能(日
(1)
「拒絶理由通知における記載要件の三極比
本側のみ)
,③他庁により事後的に先行技術が
較-欧州特許庁を受理官庁としたPCT出願
発見されるリスクの低下が可能,④IDS提出す
における傾向比較-」
る負担の軽減が可能,⑤最初の審査結果の通知
2013年度及び2014年度は,それぞれ日本国特
後は,自由に補正可能といった様々なメリット
許庁並びに米国特許商標庁を受理官庁とした
があることが分かった。
PCT出 願( そ れ ぞ れJP-PCT,US-PCT) を 対
また,コスト削減,早期権利化,まとめ審査,
象とし,First Actionにおける記載要件(実施
権利の安定化といった種々の活用の可能性があ
可能要件,サポート要件,明確性要件)判断の
ることが分かった。
三極比較を行った。今年度は,欧州特許庁を受
一方,申請書の共通化及び申請書の提出先の
理官庁としたPCT出願(EP-PCT)を対象とし,
一元化,調査のパラレル化,プログラムの強制
同様の調査を行った。なお,調査にあたっては,
終了の事前確認,クレームの対応に関する要件
First Action前の補正によって三極間でクレー
の明確化など,利用促進に向けて改善が求めら
ムの記載に実質的な違いが生じていないかとい
れる事項も見出された。
った点についても確認し,補正によりクレーム
なお,
「日米協働調査」に関する研究結果は,
2016年3月の知財管理誌に論説として掲載された。
(2)PBP
記載に実質的な違いが生じているものを,調査
対象から除外した。
EP-PCTにおいて記載要件違反が指摘される
最高裁判決後に特許庁から示された「当面の
割合は,全ての記載要件について,日本が最も
審査・審判の取扱い」について,実務と照らし
多いという結果が示された。特に,これまでに
た検討を行い,PBPに該当しない場合の具体例
行ったJP-PCT及びUS-PCTの結果と合わせる
の追加,不可能・非実際的事情の具体例の追加,
と,実施可能要件違反とサポート要件違反につ
補正の示唆促進などの要望事項を纏め,知的財
いては,受理官庁の違いによらず,日本が欧米
産研究所の「プロダクト・バイ・プロセス・ク
と比較して指摘件数が多いといった傾向が得ら
レームの審査の取扱いに関する調査研究」委員
れた。一方,EP-PCTにおける明確性要件違反
会において提案を行った。
の指摘件数は,欧州が最も少ないといった結果
結果,
「不可能・非実際的事情」の主張・立
50
が得られた。昨年度までの検討では,US-PCT
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
では米国が最も少なく,JP-PCTでは日本が最
日米の動機づけに係る判断は,日本における
も少ないという結果が得られている。つまり,
紙葉類識別装置事件から昨年度の審査基準の改
明確性要件違反の指摘件数は,受理官庁となっ
訂に至る流れや米国におけるKSR判決で転機が
た庁での指摘件数が,相対的に少なくなるとい
訪れた。このような背景から,本年度は日米の
った傾向が見られた。
動機づけに係る審査基準の論理構造の相違と当
この内容を受けて,出願人として注意すべき
該相違が反映された事例について詳細な検討を
事項を提言として発信する。知財管理誌への
行い,当該検討を通して,特許権を獲得すべき
2016年4月投稿を予定している。
重要国である米国の動機づけに係る審査基準の
(2)
「拒絶理由通知における記載要件の五極比
較-米国特許商標庁を受理官庁としたPCT
出願における傾向比較-」
PHEP(Patent Harmonization Experts
理解を深め,米国における出願人の適切な対応
に資することを目指したものである。
(2)検討方法
①審査基準
Panel)における優先検討項目の1つとして記
検討にあたり,動機づけに影響を与える項目
載要件が選ばれたことを受け,2014年度より上
として,以下の4つの基準に着目し,その論理
記テーマと平行して記載要件の五極(日米欧中
構造の相違を検討した。
韓)比較検討を行っている。2015年度は,2014
・グラハムテストと日本の論理付け
年度に三極比較検討を行った,米国特許商標庁
・当業者の技術水準の認定
を受理官庁としたPCT出願のうち,中韓での包
・引例の選定基準
袋入手が可能であり,かつ,FAが通知されて
・主引例に副引例を適用する際の基準
いるものを,検討対象とした。また,上記の三
・後知恵の規制
極比較と同様,補正によって比較不可となった
②事例検討
案件は,検討対象から除外した。2014年度に検
本年度は審査基準の詳細な検討を主眼とし,
討したJP-PCTの結果(83件)と合算し,傾向
①の審査基準の相違に係る理解を深めるための
の解析を行った。また,審査結果が齟齬した事
事例紹介という観点で2007年以降に1stOAが
例の抽出も,あわせて行った(合計187件)
。
出た事例を調査した。
検討の結果,サポート要件違反の指摘件数は
(3)検討結果
JPO,SIPOが相対的に多く,明確性要件違反
審査基準の日米比較を行った結果,引例の選
の指摘件数は,EPO,KIPO,SIPOが相対的に
定基準等で同一技術分野等から引例を引用する
多いことが確認された。また,実施可能要件違
ことが日本と同様に規定されているものの,主
反については,JPOでの指摘件数が相対的に多
引例に副引例を適用する際の基準は,日本の動
く,次いでKIPOでの指摘件数が多かった。
機づけに相当するKSRガイドラインの類型(G)
(3)三極庁・ユーザー会議,industryIP5会合
が,例示的な根拠であり,他の論理的根拠を適
対応
用し,
「理由(MPEP2141,Ⅲ)
」を構成すること
2015年5月のindustry IP5会合(中国,
蘇州)
ができることが明確になった。 及び2016年2月の三極庁・ユーザー会議(米国,
したがって,米国の現行の審査基準は,相違
アレキサンドリア)に参加し,我々の昨年度の
点に係る副引例が同一技術分野に属し,阻害要
調査結果を報告するとともに,その他の検討項
因等の考慮すべき事項がない場合は,当業者が
目に関する議論に参加した。
本件発明に想到することは容易である,とする
【第3小委員会】
「動機づけに係る進歩性判断の日米比較研究」
(1)目的
かつての同一技術分野論に近い状況であり,日
本は昨年の審査基準の改訂に反映された課題等
を重視する総合考慮的な考え方であるため,日
51
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
米で動機づけに際して課題等の認定の軽重に差
った特許文献に付与されているIPC分類と審査
異があることが明確になった。
時の先行技術調査の範囲とを比較し,形態別に
また事例として,化学分野の事例等を検討し,
5つに分類するとともに,各分類における個別
米国において,相違点に係る構成が記載された
事例の検証により審査の問題点と対策の方向性
副引例が同一技術分野であるものの,課題の共
について検討した。
通性を満たさない事例を抽出した。
前記の結果を踏まえると,日本の総合考慮的
更に,経時による傾向,
「早期審査」
,
「情報
提供」の有無による無効率の差異についての調
考え方をベースとする拒絶理由への反論は米国
査も行った。
では有効でない可能性が大きいことを念頭に対
(3)調査の結果
応していくことが重要である。
検討結果の詳細については,論説としてまと
め,知財管理誌に投稿の予定である。
【第4小委員会】
分類結果は,分類①. 証拠が日本特許で先行
技術調査の範囲外から見つかったケース:40件
(23.4%)
,分類②. 証拠が日本特許で先行技術
調 査 の 範 囲 内 か ら 見 つ か っ た ケ ー ス :7 6 件
2014年度からの継続テーマとして「審査時の
(44.4%)
,分類③. 証拠が外国特許だったケー
先行技術調査の範囲に基づく審査の質の検証」
ス:16件(9.4%)
,分類④. 証拠が審査時点で
に取り組んだ。
揃っていたケース:30件(17.5%)
,分類⑤. 証
(1)背景
特許庁は「実施庁目標」において,品質管理
拠が非特許だったケース:59件(34.5%)であ
った。新たな証拠は,先行技術調査の範囲の範
に関する目標を導入,
「特許審査に関する品質
囲内から見つかるケース(分類②)が最も多く,
ポリシー」を策定し「世界最速・最高品質の特
外国特許(分類③)の比率は最も少なかった。
許審査」の実現を目指すことを明言している。
新たな証拠の多くが日本特許(分類①と②)で
また,毎年行われている「特許審査の質にユー
過半数を占めており,最も充実すべきは,日本
ザー調査報告書」のアンケート結果においては,
特許の調査であると考えられる。
ユーザーの問題意識が『審査のばらつき』
『進
各分類の個別事例の調査から,分類①:関連
歩性の運用』
『記載要件の運用』
『外国特許文献・
分野の調査漏れや引例となる先行特許における
非特許文献の調査』にある事が提示されている。
IPCの付与の問題,分類②:補正後の追加調査
このように,審査品質の向上への意識・要求が
不足,分類⑤:検索可能な証拠の調査徹底(特
高まる中,当小委員会では,2014年度からの継
に食品・医薬分野以外)がそれぞれの課題とし
続テーマである「審査時の先行技術調査の範囲
て認識できた。
に基づく審査の質の検証」に取り組み,無効審
経時による各分類の比率の変化を確認したと
判で全部無効となった事件を対象にその無効と
ころ,分類①と②の和が減少傾向となる一方,
なった理由について,審査時の先行技術調査の
分類⑤が増加する傾向が見られた。この結果か
範囲と審決採用証拠の比較調査により検討する
らも非特許証拠の調査の必要性の高まりを認識
ことで,審査の質についての検証を行った。
することができた。なお,
「早期審査」
,
「情報
(2)検討方法
提供」の有無による無効率の差異は無かった。
JP無効審判において「全部無効」でかつ「審
2016年3月の特許庁との意見交換会にて上記
査請求日が2004年1月1日以降」の183件
検討結果について紹介し課題についての提言を
(2015.11.30抽出)の中で,特29条,29条の2で
行った。更に検討結果の詳細については,論説
無効とされた171件を対象とした。その上で,
無効審決において採用された審決採用証拠の種
類(日本特許,外国特許,非特許)
,証拠とな
52
としてまとめ,知財管理誌に投稿の予定である。
【第5小委員会】
「手続違背の検討」に取り組んだ。
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
(1)目的
ても提訴しなければならない場合があり,出願
特許出願の審査過程において手続違背が発生
人にとっては時間的にも費用的にも負担が大き
することがある。本来,意見提出の機会が与え
い。このような場合,出願人に極力負担が少な
られるべき状況において,その機会が与えられ
く,簡易的に解決できる仕組みが望まれる。
ず,出願人が行えるはずの手続の機会が失われ
③について,特許を受ける権利が共有に係る
てしまい,本来権利化可能だったものが拒絶さ
特許出願の拒絶査定に対する審判請求は共有者
れたり,より広い権利が取得できたはずのもの
の全員が共同してしなければならないところ,
の権利範囲が縮小されてしまうなど,出願人に
外観上共有者の一部の者のためにのみする旨の
とって不利な結果を招くことになる。そこで,
表示となってしまった事件では,共同出願人の
手続違背を争点に争った最近の知財高裁裁判例
一部記載漏れが救済されている(平成21年
(行
を,主張の内容により3つに分類した上で検討
ケ)
10148)
。
を行った。
(2)検討方法
知的財産高等裁判所裁判例検索データベース
にてキーワード検索を行い177件を抽出した(裁
判年月日:平成21年1月1日以降~平成27年12
月31日)
。
抽出した177件の内訳は,手続違背あり:26
上記の検討結果を踏まえ,詳細は知財管理誌
に投稿の予定である。
4.対外活動
4.1 全体
特許庁に対しては,特許庁審査基準室・品質
監理室との定期意見交換会を2回(9月,3月)
開催して意見交換し,相互理解に努めた。
件,手続違背なし:129件,判断なし:22件で
また,特許庁による特許審査基準見直しに関
あった。これらを下記3つに分類し,各分類毎
連して,産構審の審査基準専門委員会WGの知
に事例の検討を行った。
財協代表としての委員である伊藤常務理事とと
①対応要求:特許庁に対しさらなる対応を求
めたもの。
②誤り認定:特許庁による判断/対応につい
て誤りであるとの認定を求めたもの。
③救済:出願人側のミスの救済を求めたも
の。
(3)検討結果
①について,平成20年
(行ケ)
10433では,認
定上の微修正,補助的,当然又は暗黙の前提の
もに,特許庁審査基準室と討論・意見要望を行
うための会合を約10回行うとともに上記WG会
合に陪席参加するとともに,8月のパブリック
コメント募集に対する意見を提出した。
4.2 各小委員会関連の対外活動
上記の他,具体的な各小委員会のテーマに関
連して,特許庁他の外部機関と活発に意見を交
換したので,以下に概要を紹介する。
【第1小委員会】
場合に例外的に周知技術の追加が認められ,周
国際政策プロジェクトに委員2名,平成27年
知技術でありさえすれば拒絶理由に提示されて
度審査応用能力研修2,平成27年審判実務者研
いなくても当然引用できるわけはないと判断さ
究会の各々に委員1名,知的財産研究所の「プ
れた。また,平成24年
(行ケ)
10056では,審判
ロダクト・バイ・プロセス・クレームの審査の
において拒絶査定時に周知技術として示された
取扱いに関する調査研究」委員会(全3回)に
に過ぎない引例を主引例として拒絶審決がなさ
委員を2名派遣した。
れたことは「査定の理由と異なる拒絶の理由を
東西部会(2月)にて,
「日米協働調査に対
発見した場合」に当たり手続違背があると判断
する期待」に関し研究テーマの報告を行った。
された。
【第2小委員会】
②について,法定期間の計算間違い(平成22
国際政策プロジェクトに参画し,2015年五極
年
(行ケ)
10095)など明らかな手続違背であっ
ユーザ会議ならびに五極庁・ユーザ会議(蘇
53
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
州)
,韓国知的財産協会(KINPA)との意見交
特許庁審判企画室,知財高裁,東京地裁,大
換(ソウル)
,2016年B+・ユーザ会議,三極ユ
阪地裁,日本弁護士連合会,東京弁護士会,大
ーザ会議ならびに三極庁・ユーザ会議(アレキ
阪弁護士会,弁理士会,飯村敏明氏との意見交
サンドリア)への参加を行った。
換会も積極的に行った。なお,これら意見交換
東西部会(2月)で,今年度の検討結果の報
告を行った。
【第3小委員会】
会の前に弁護士3名(早稲田祐美子氏,辻居幸
一氏,山口裕司氏)と事前相談をして臨んだ。
昨年度成果を5つの論説(
(ⅰ)
「特許法29条
平成27年度特許庁審査応用能力研修に委員3
の2における実質的同一の判断」,
(ⅱ)
「侵害
名を派遣。平成 27 年度産業財産権制度問題調
発見(特許の監視性)に関する検討」
,
(ⅲ)
「特
査研究に委員1名を派遣。第6回の審査基準専
許発明の技術的範囲の文言解釈に出願経過が参
門委員会WGの陪席者に委員を1名派遣した。
酌された事例(禁反言)の検討」
,
(ⅳ)
「侵害
【第4小委員会】
訴訟における近年のクレーム解釈の傾向~特に
平成27年度審査応用能力研修2に委員1名を
機能的クレームについて~」
,
(ⅴ)
「無効理由
派遣した。特許庁審査基準室,品質監理室との
として公知発明・公用発明を用いる場合の注意
定期意見交換会で,審査時の先行技術調査の範
点」
)に纏め,
「知財管理」誌に掲載した。この
囲に基づく審査の質の検証結果について紹介
うち(ⅲ)以外は,11月度の東西地域部会にて
し,課題についての提言を行った(3月)
。
発表した。
【第5小委員会】
2015年度の調査研究テーマおよび各小委員会
平成27年度審査応用能力研修(討論1)に委
の活動概要は以下のとおりである。これらは来
員2名,平成27年審判実務者研究会に委員1名
年度の「知財管理」誌に論説として掲載し,か
を派遣した。第6回JIPA知的財産フォーラム
つ東西地域部会にて発表予定である。
関西(11月)グループディスカッションに,コ
2.各小委員会の活動概要
ーディネーターとして委員1名を派遣した。第
【第1小委員会】
5回の審査基準専門委員会WGの陪席者に委員
「分割出願の権利化後の諸問題」
を1名派遣した。
4.3 その他
企業実務として重要発明ほど分割出願を行う
が,分割出願には分割要件などの特有の問題が
AIPPI主催の「各国の品質目標・管理体制及
ある。特に「分割出願の明細書等に記載された
びユーザー評価に関する調査研究」
(特許庁委
事項が,原出願の出願当初の明細書等に記載さ
託)にワーキンググループ委員として1名(委
れた事項の範囲内であるか」という実体的要件
員長)を派遣した。
が分割出願特許権を活用する際に問題になるこ
5.特許第2委員会
1.構成及び運営
2015年度の特許第2委員会は,委員長1名,
とが統計分析の結果分かってきた。また,分割
出願では特許請求の範囲の技術的範囲の解釈に
おいて,原出願の出願経過が参酌される場合も
ある。
副委員長18名(うち委員長代理・小委員長兼務
本委員会では,分割出願特許権に関する裁判
1名,委員長代理・小委員長補佐兼務1名,小
例を過去10年分抽出し,上記した分割出願に特
委員長4名,小委員長補佐12名),委員43名の
有の問題点を分析し,企業実務家に向け分割出
計62名で構成した。
願に関する留意点を提言した。
正副委員長会議及び第1から第5小委員会ま
での各小委員会は原則毎月定期開催し,年3回
(4月,10月,3月)の全体委員会も開いた。
54
【第2小委員会】
「クレームの限定解釈主張および無効主張に関
する研究」
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
企業実務においては,他社特許権のクリアラ
侵害が争われた裁判例を過去10年分抽出し,そ
ンスを行うに際して文言どおりの解釈で非侵害
の傾向を分析すると同時に,数値限定発明の技
と判断することを建前としながらも,やむを得
術的範囲の属否を判断する際に実務者が考慮す
ない理由から限定解釈をして「自社製品は非侵
べき要素をまとめた判断フローを提案した。
害」という判断をすることがある。しかしなが
【第5小委員会】
ら,限定解釈は文言どおりの解釈で非侵害と判
「特許制度の在り方の研究(中長期テーマの1
断した場合に比べて解釈の妥当性や信頼性を推
年目)
」
し量る術がないため,
「限定解釈をして非侵害」
≪テーマ1≫「特許の有効活用(裁定制度)に
といった判断をすることにはリスクが潜んでいる。
関する検討」
そこで,リスクの大小を推し量ることができ
企業が新たな事業を進める段階において障害
るよう,限定解釈主張が認められた割合の統計
となる他者特許が存在した場合,通常であれば
を取ると共に,解釈手法別・技術分野別等の切
特許回避や実施許諾の可能性を探ることになる
り口から分析を行った。また,無効主張が認め
が,一方で回避のための技術開発への投資が増
られる割合や無効主張がクレームの解釈に与え
加したり,交渉決裂により逆に提訴される可能
る影響についても分析を行った。
性もあること等から,特許権の有効な活用が出
【第3小委員会】
「特許の進歩性判断における阻害要因主張に関
する研究」
来ないケースがあると考えられる。
日本においても強制通常実施権である「裁定
制度」が定められているが,
適用される要件(不
特許の進歩性判断における阻害要因につい
実施,利用関係,公共の利益)が曖昧なため殆
て,審査基準では,
「副引用発明を主引用発明
ど利用されていない。例えば,不実施を理由に
に適用することを阻害する事情があることは,
請求する場合,明確な判断基準はない。
論理付けを妨げる要因(阻害要因)として,進
現在の国際的な制度調和や条約等の状況を考
歩性が肯定される方向に働く要素となる。
」と
慮すると,強制通常実施権を濫用することは有
示されている。しかし,近年の裁判例を確認し
益とは言い難いが,法目的である「国の産業の
たところ,阻害要因ありと判断された裁判例の
発達」のために,ライセンス契約に際して行政
半数以上は,審査基準で示されるものではなく,
庁の関与を必要とする場面も少なからず存在す
主引用発明から本件発明に到達する過程におけ
ると考えられる。
る阻害要因であった。これをふまえ,本研究で
今期は,諸外国での同様な制度を調査すると
は,裁判所の阻害要因に関する判断をふまえた
ともに,日本における特許法以外の裁定制度の
適切な阻害要因主張について提案した。
運用状況を参考に,新たな制度の可能性として,
【第4小委員会】
行政庁が強制介入する裁定だけでなく,調停,
「数値限定発明による権利行使に関する近時判
仲介,あっせんなど,介入度合いが異なる紛争
例の調査・分析」
解決手段の導入について議論を進めた。
請求項の発明特定事項に何らかの数値限定を
≪テーマ2≫「特許権の活用を促進しつつ係争
含む発明(以下,
「数値限定発明」という)は,
にかかる両当事者の負担を軽減できる制度の検
権利取得の有効な手段として知られている。し
討」
かしながら,数値限定という一見明確な権利範
現状の「判定請求制度」は,有効に利用され
囲が侵害訴訟で争われると,属否判断で非充足
ているとは言い難い。その理由は,請求人の一
とされる事例が多いことが統計分析の結果分か
存で取り下げることが可能であり,被請求人に
ってきた。
とっては合理的な制度とは言い難い事,判定結
本小委員会では,数値限定発明に関して特許
果は公開されてしまうため係争の事実やイ号情
55
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
報が他人の目に晒されるリスクも踏まえるとそ
行い,後半はWG活動の時間としてWG毎に調
の利用に慎重にならざるを得ない事,そして判
査研究テーマについて議論を行った。後半の一
定の結論には法的拘束力がなく,紛争解決の最
部の時間には,WG活動と並行して正副委員長
終的手段とは成り得ない事,が挙げられる。一
会議を開催した。
方,紛争解決手段として実際に機能しているの
年に二度(6月,3月)
,国際第2,第3お
は裁判であり,裁判を行うことの負担や予測可
よび第4委員会との合同委員会を開催し,活動
能性の観点(権利者が考えている権利範囲と裁
状況の共有化等を行った。また,年に二度(4
判所が認定する権利範囲とが異なる場合があ
月,10月)
,国際第2,第3および第4委員会
る)から,自社権利の活用を断念しているケー
との合同正副委員長会を開催し,中・長期テー
スも少なからずあると考えられる。
マの方向性のすり合わせ等を行った。
今期は,諸外国(英国,韓国,オーストリア)
での類似制度の調査を行い,第三者に対する権
利活用の可能性について事前に確度の高い判断
をすることが出来,最終的には訴訟手続きに連
4.WG活動
(1)WG1研究テーマ「米国特許権侵害訴訟
実務マニュアルの改訂」
2010年に当委員会から発行した前版からの変
携できる(法的拘束力を持った判断ができる)
更点,すなわち6年分の重要判例,米国特許法
制度と,侵害成立のための最も重要な要件であ
改正,
連邦民事訴訟規則改正およびPAE(Patent
る技術的範囲の属否について法的拘束力のある
Assertion Entity,特許主張主体)による訴訟
判断を行い,その後の紛争解決は,裁判,調停,
急増による影響等を検討し,その成果を第5版
交渉など様々な解決手段に対応できる制度につ
としてまとめている。2016年5月に投稿予定で
いて検討を行った。
ある。
6.国際第1委員会
1.委員会の構成
委員長,委員長代理,副委員長5名,委員41
名,合計48名で構成した。
委員を5つのワーキンググループ(WG)に
分けてそれぞれにWGリーダを指名し,リーダ
を中心に各WGにて後述するテーマについての
またIPR(Inter Partes Review,特許の有効
性を争う手続)改訂規則案の日本企業への影響
を検討し,USPTOへパブコメを提出した。
さらに,協会HPに掲載中の解説資料「米国
特許法改正(AIA)の概要」のアップデートも
行った。
(2)WG2研究テーマ「米国特許クレーム解
釈の動向と実務上の留意点の改訂」
調査,研究活動を行った。また,委員長,委員
2011年に当委員会から発行した前版に掲載し
長代理,副委員長の計6名で構成される正副委
た以降の判例360件を分析し,その成果を第3
員長会議にて,委員会運営およびWGテーマ以
版としてまとめている。2016年4月に投稿予定
外の検討を行った。
である。
2.活動方針
また,
2014年に当委員会から発行した資料「米
「楽しく学び,発信する」を活動ポリシーに
国特許をうまく取得する方法(第5版)
」に沿
定め,活動のコアは米州(北米および中南米)
った研修を昨年度に引き続いて企画した。判例
の調査研究としながら,発信先を意識し,楽し
分析の結果等も盛り込み,講師もWGにて務め,
く活動することを心がけて活動した。
臨時研修として2015年12月に東京,大阪で開催
3.委員会の運営
し好評を得た。
月に一度(ただし6,8,3月は除く)全委員
(3)WG3研究テーマ「米国の限定要求等,
が一堂に会する全体委員会を行った。全体委員
単一性関連のOAに関する実態調査,研究」
会の前半は全体会議として委員間の情報共有を
56
米国の特異な特許制度の1つである「限定要
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
求」により出願人は多大な費用負担を強いられ
員長代理を含む3名)を派遣し,国際制度
ている。その実態を調査・把握し,国際政策PJ
調和の動きを推進すべく,三極(日米欧)
,
と協力して国際制度調和の推進を図るととも
五極の特許庁に対して説明や提言を行っ
に,出願人が取るべき措置を検討した。
た。
具体的には五極(日米欧中韓)それぞれの国
(2)USPTO副 局 長 のJIPA来 訪,Kappos前
で単一性違反の指摘状況を調査して米国の制
USPTO長 官 のJIPA来 訪, 国 際 政 策PJと
度,運用実態の特異性を明確にし,国際政策PJ
IPO(米国知的財産所有者協会)との意見
を通じて五極特許庁やユーザ団体に制度調和を
交換時にそれぞれ,当委員会の活動や成果
働きかけた。さらに調査結果をふまえ,米国の
を紹介し情報交換を行った。
限定要求等において,出願人がとるべき措置に
ついて検討し,TraverseやRejoinderの有用性
を見出した。この成果を論説にまとめ2016年3
月に投稿した。
(4)WG4研究テーマ「米国特許法第112条
(明確性)に関する判例研究」
2014年のNautilus最高裁判決でクレームの明
確性に関する新しい基準が判示された。この新
基準によりCAFC(米国連邦控訴裁判所)の旧
基準に比べて明確性の基準が厳格化されたとい
われているが,その影響は未知数であった。
そこで実務への影響を明らかにすべく,138
(3)判例概要等を知財管理誌の外国特許ニュ
ースに投稿した(6~8本/毎月)
。
(4)2014年度の研究テーマについて関東部会,
関西部会にて報告を行った。
(5)JIPAシンポジウム実行委員会に委員を
1名派遣した。ポスターセッションにも参
加した。
(6)T3研修(企業若手知的財産要員育成研
修)に講師を1名派遣した。
7.国際第2委員会
1.委員会の構成および運営
件の判例を類型化して分析し,影響の大きい2
本年度の委員会活動は,委員長,委員長代理
類型を見出した。この成果を実務上の留意点と
1名,小委員長3名及び委員24名の計29名で行
あわせて論説としてまとめ2016年2月に投稿し
った。
た。
2.委員会の運営
(5)WG5研究テーマ「中南米カナダの特許
3つの小委員会を編成し,毎月の定例会議に
制度・運用における留意点の調査研究」
おいて全体会議と小委員会活動を行った。各小
米国以外の米州諸国では多くの国々で経済発
委員会は担当の小委員長をリーダとして,上記
展が進んでいるが,日本企業はこれらの国々で
の定例会議の他に適宜臨時の小委員会会議等を
の特許出願,活用の経験が少なく,情報も十分
開催し,担当のテーマ検討を行った。
に整理されていない。そこで,ブラジル,メキ
3.委員会の活動概要
シコ,アルゼンチン,コロンビア,チリ,カナ
3.1 本年度の活動方針
ダの制度運用を調査研究し,各国の状況を比較
本年度は,①委員の人脈形成および成長のた
整理して留意点をまとめ,2016年2月に投稿し
めの気づきの場を提供する,②国内外における
た。
JIPAプレゼンスの向上に繋がるアウトプット
なお情報収集の一環として,メキシコ知財庁
を行う,という2つの方針の下,担当地域の中
Miguel長官御一行JIPA御訪問の際の情報交換
から,欧州,南アフリカ及びジンバブエ,PCT
や,JPO/IPR研修の報告会での中南米各国の審
制度について調査・検討を行った。
査官との情報交換等も行った。
3.2 各小委員会の活動
5.その他
(1)2014度に引き続き国際政策PJに委員(委
(1)第1小委員会の活動
本年度,第1小委員会は2つのテーマに分か
57
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
れて活動した。
第1テーマ名:
『欧州特許を上手に取得する
方法』の改訂(10名)
表題の資料は2009年8月の最後の改訂から6
2年目となる活動を行った。
具体的には,2015年9月7日から11日にかけ
て南アフリカ・ジンバブエ調査団を派遣し,南
アフリカの特許庁にあたる企業知的所有権委員
年が経過しており,第1小委員会で,欧州の最
会や,アフリカ広域知的所有権機関(ARIPO)
新状況に追従する改訂を図った。
を訪れ,特許取得に関する実態調査を行うとと
今回の改訂では,より会員企業にとって使い
もに,南アフリカ高等裁判所や,税関を管轄し
やすい資料をめざすとの観点から,主に2つの
ている南アフリカ歳入庁を訪問し,権利行使の
点に重点をおいた。第1は,前回改訂からの6
実態について調査を行った。
年間における法改正,
規則改正及び運用変更(ロ
本テーマは2015年度で完了し,
「南アフリカ・
ンドンアグリーメントの拡大,サーチレポート
ジンバブエ調査団」に関する別冊資料を2016年
への応答義務化,PPH拡大,PACEの運用変更,
6月頃に発行する予定である。
ECfSの実施等)に対応するという点である。
第2は,単に法改正等に対応するのみではなく,
特に欧州特許を取得する上で困っていること,
及び,欧州特許の特殊性がある部分について調
査・研究を行った結果を含める,という点である。
(3)第3小委員会の活動
テーマ名:PCT制度の活用に関する考察
「国際段階とシンガポール移行段階の特許性
判断の関係調査」
(7名)
第3小委員会はPCT国際段階成果物の活用
本テーマでは,これらを踏まえ内容が充実化
法を研究するとの観点から,国際調査機関等に
された原稿を作成した。2015年度の完了テーマ
よる特許性に関する見解と,各国移行後の国内
とし,2016年8月頃に冊子が発行される予定で
審査における特許性判断と,の関係を調査テー
ある。
マの1つに活動しており,本年度は,シンガポ
第2テーマ名:EP口頭審理に関する研究(5
名)
欧州特許庁独自の制度である審査時の口頭審
理について,上手な対応法を研究した。
ール(以下,SG)を対象に調査を行った。
主にSGの国内段階において特許が成立され
るか否かや,成立までの期間などを視点に,国
際段階の状況とこれらとの関係を調査した。結
本テーマでは,口頭審理が召喚された又は開
果,SGの国内段階では,国際調査報告及び外
催された欧州特許等の審査経過を統計的に分析
国審査結果の積極活用により早期権利化が実現
すると共に,口頭審理召喚以後の具体的な手続
されていること等がわかった。
きについて,国際委員会参加企業へのアンケー
本テーマは2015年度の完了テーマとし,調
トや,欧州出願人と日本出願人との差異の抽出
査・研究したところをまとめ,2016年4月に知
を試みる為の欧州代理人へのアンケートを実施
財管理誌に論文投稿予定である。
した。これらの結果から,口頭審理への上手な
3.3 意見発信・対外会合等
対応法を検討した。2015年度の完了テーマとし,
当委員会では,担当範囲の知的財産制度改善
調査・検討結果をまとめ,2016年6月に知財管
に向けて,政策プロジェクトと連携し又は,担
理誌に論文投稿予定である。
当範囲内の国や機関に対し,意見発信を行った。
(2)第2小委員会の活動
具体的には,国際政策プロジェクト(3名派遣)
テーマ名:アフリカ諸国の特許取得・活用に
関する検討(7名)
へ委員を派遣し,PCT作業部会第8回にオブザ
ーバとして出席,特許庁・ユーザ双方にとって
経済発展が進むアフリカにおける知財の位置
メリットのあるPCT制度の適切な発展という視
づけや訴訟制度等から知財環境を把握し知財活
点から議論に参加した。又,EPOとは3度の会
用の可能性・有効性を調査するとの狙いの下,
合(9/16 Video Conference,11/5 Work Shop,
58
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
3/24 Quality Meeting)を持ち,サーチや審査
復審(拒絶理由不服審判に相当)の請求件数も
の品質や適時性を視点に意見発信を行った。
年々増加している。しかしながら,復審につい
また,コンサルテーションへ応答する形で,
ては制度上においては明確であるものの,実務
EPOによる審判部の改革に関する意見募集,欧
上,復審を請求しても本当に勝てるか,または
州統一特許裁判所準備委員会による裁判所の費
どれぐらいの時間や費用を必要とするのかなど
用等に関する意見募集に対してそれぞれ意見発
の実態はあまり知られていない。
信を行った。
3.4 講師派遣等
そこで当小委員会WG1では,当小委員会に
所属する会員企業に対して中国復審における対
また,当委員会では,担当領域の専門家とし
応現状についてアンケート調査を実施し,中国
て,委員派遣を行った。具体的には,AIPPIに
復審に対する会員企業の関心事を把握した上
よる「PCTにおける各国ユーザの国際調査報告
で,中国專利復審委員会によって公開された審
の評価及び国際調査機関の選択基準に関する調
決書(中国語:復審決定書)をランダムに抽出
査研究」
(特許庁委託研究事業)に対し1名を
し,サンプリング調査・分析することにより,
派遣した。
中国復審の実態を明らかにした。そして,効率
8.国際第3委員会
1.委員会の構成および運営
本年度の委員会活動は委員長,小委員長6名,
及び委員36名の計43名で活動を行った。
2.委員会の運営
3つの小委員会を編成し,毎月の定例会議に
的な復審請求や,権利を取得するための復審に
おける対応についてまとめ,論説を作成した。
2016年6月に知財管理誌へ投稿予定である。
テーマ2:別冊資料「中国における特許権取
得の留意点」の第3版改訂(7名)
本資料「中国における特許権取得の留意点」
は2011年10月に第3版に改訂され,約4年が経
おいて全体会議と小委員会活動を行った。各小
過した。その後,特許審査ハイウェイ(PPH)
委員会は担当の小委員長を小委員会リーダとし
の試行開始,実用新案の新規性に関する審査指
て,上記の定例会議の他に適宜臨時の小委員会
南の改訂等が行われ,更に法改正の動きとして,
会議や有識者との意見交換会を開催し,小委員
中国専利法の第4次改正草案,職務発明条例草
会担当のテーマの検討を行った。また,アジア
案の公表が行われた。
戦略PJと連携しアジア諸国への法改正対応を行
そこで,当小委員会では中国専利法の第4次
った。
改正草案と職務発明条例草案の内容を反映した
3.委員会の活動概要
改訂を行うことを最終的な目的とし,2015年度
3.1 本年度の活動方針
はPPH等の第3版以降の新たな動きや法改正等
本年度は,中国に関するテーマを中心に調
を洗い出し,本資料に反映するための作業を行
査・研究を行い,韓国・台湾についてはアジア
った。本資料の第4版は2016年度に完成させる
戦略プロジェクトからの情報を参考に,必要に
予定である。
応じてパブリックコメント等の検討を行った。
3.2 各WGの活動
(1)第1小委員会の活動:
テーマ1:中国復審(拒絶査定不服審判)に
関する調査研究(7名)
近年,中国では特許出願が増加傾向であり,
(2)第2小委員会の活動:
テーマ:中国において専利権に基づき権利行
使された際の留意点(15名)
中国市場の拡大に伴い,中国で事業を行う企
業は,年々増加している。また,中国において
は,米国を超える数の訴訟が起こされており,
登録件数・拒絶査定件数ともに年々増加してい
中国で事業を行う企業は,訴訟を起こされる一
る。これに伴い,拒絶査定を覆すために行う,
定のリスクが存在する。
59
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そこで当小委員会では,中国特許・法律事務
催された日中有識者の意見交換会に委員1
所へのアンケートおよびヒアリングを行うと共
名を参加させ,中国知財制度について意見
に,商業用データベースを用いて,調査・分析
交換を行った。
することにより,中国において専利権に基づく
・2015年9月4日に国際第4委員会と合同委
警告又は訴訟等の権利行使を受けた場合に,有
員会を開催し,当委員会からは中国の職務
効な対応についてまとめを行い,論説を作成し
発明条例(草案)に関する報告を行った。
た。2016年6月に知財管理誌へ投稿予定である。
(3)第3小委員会の活動:
テーマ1:中国企業の事業戦略,知財戦略の
調査研究-急成長する華為技術のケース-(6
・2015年10月26日にJIPA東京事務所で開催
された日中企業連携会議に計7名が陪席し
た。
・2016年3月15日に台湾経済部知慧財産局長
とアジア戦略PJの意見交換において委員
名)
華為技術(Huawei)は,技術的革新による
ブランドイメージの向上,国際的な影響力の向
1名を参加させ,実用新案制度等について
意見交換を行った。
上による海外市場への貢献により,短期間でグ
・2016年3月15日から19日にかけてアジア戦
ローバルメジャーとなった。この背景には,緻
略PJが派遣した中国訪問代表団に委員1
密な事業戦略と,事業戦略を強力にサポートす
名を派遣し,中国専利法における間接侵害
る知財戦略があると推測されるが,事業戦略と
規定導入の建議を行った。
知財戦略を総合的に分析し,中国企業特有の戦
略について研究した例は少ない。
そこで,当小委員会では,華為技術の事業戦
略,知財戦略について調査・分析を行い,論説
を作成した。2016年5月に知財管理誌へ投稿予
定である。
テーマ2:リチウムイオン電池における中国
企業の知財戦略(7名)
これまで中国企業の出願戦略について報告例
・上記以外に,各小委員会にて適宜,特許事
務所と意見交換を開催した。
(2016年3月
31日)
9.国際第4委員会
1.構成及び運営
国際第4委員会は2013年に新設された委員会
で,東南アジア・インド・オセアニア・中東地
域・トルコを担当範囲とし,2015年度は委員長,
はあるものの,中国企業の知財戦略について詳
副委員長7名,および,委員20名の計27名で活
細に検討されている例は少ない。そこで当小委
動を行った。
員会では,1995年の設立以来,電池メーカから
運営としては,ASEAN地域の特許制度比較
自動車事業への参入と,急速な発展を続ける
及び企業戦略の調査・検討する第1小委員会
BYD(比亜迪股份有限公司)に着目し,同社
(13名)
,タイ・ミャンマーを検討する第2小委
を中心にリチウムイオン電池分野に関する中国
員会(7名)
,インドネシア・カンボジアを検
企業の知財戦略を分析し,論説を作成した。
討する第3小委員会(7名)の3つの小委員会
2016年5月に知財管理誌へ投稿予定である。
を設置し,検討を行った。
3.3 その他
2.活動概要
(1)JIPA研修
委員会では,3つの小委員会を編成し,原則
・T3研修講師として岡本委員長,河村副委
として,毎月,定例会議を開催し,全体会議と
員長を派遣し,海外テーマとして中国に関
小委員会活動を行った。各小委員会は担当の副
する指導を行った。
委員長を小委員長として,上記の定例会議の他
(2)外部との交流
・2015年8月21日に知的財産研究所主催で開
60
に臨時の小委員会を開催しつつ,各小委員会担
当のテーマの検討を行った。
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
また,委員長及び副委員長を中心に政策プロ
あるが,実務上の課題が顕在化する一方で,課
ジェクトの中でアジア戦略プロジェクト,経済
題解決に向けた動きは鈍い。現地情報は分散・
連携プロジェクト,JIPAシンポジウムプロジ
断片化の傾向で,PPH等新たな取組みの運用実
ェクトへの対応も行っており,委員会の枠を越
態も不明確である。
えて活動を行っている。
一方,ミャンマーについては,知財関連法が
3.委員会の活動概要
未整備であり,知財庁も存在しない。権利行使
3.1 本年度の活動方針
の制度・運用実態も不明である。知財法制定期
本年度は担当地域の中から,ASEAN地域の
特許制度比較及び企業戦略,タイ,ミャンマー,
限は2021年7月まで再延期された。
このような背景の下,両国での特許取得と権
インドネシア,カンボジアについて調査・検討
利行使の実態を調査し,会員企業の知財活動に
を行った。
資する情報を提供するとともに課題解決を図る
3.2 各WGの活動
ことを目的として調査・研究を行った。
(1)第1小委員会
具体的には,タイについては,特許権取得・
「ASEAN地域の特許制度比較及び企業戦略
権利行使上の運用実態・課題把握を行った。ミ
の調査・研究」をテーマとして活動を行った。
ャンマーについては,知的財産法整備の状況把
経済統合を目指すASEANは「ASEAN知的
握を行った。本テーマについては2015年度の完
財産権行動計画2011-2015」を策定する等,知
了テーマとし,11月にタイ・ミャンマーに派遣
的財産分野でも域内の取り組みを推進してい
した「タイ・ミャンマー調査団」に関する別冊
る。しかし,本計画では,PCT,マドリッドプ
資料を発行し,タイにおける特許取得・行使上
ロトコル,ハーグ協定等の条約加盟やASEAN
の留意点に関する別冊資料を研究結果として報
特許審査協力プログラム(ASPEC)といった,
告した。
緩やかな連携に力を入れており,1990年代の計
(3)第3小委員会
画で目指していた地域の統一的な特許・意匠・
「インドネシア・カンボジアにおける特許権
商標の登録制度実現は影をひそめている。
このような背景の下,企業がASEANで特許
取得及び権利行使の調査・研究」をテーマとし
て活動を行った。
活動を効果的・効率的に進めるため,各国の特
近年,インドネシアは,低賃金,および政治
許 制 度 の 特 徴 を 調 査 す る と 共 に, 連 携 制 度
的安定などの理由から,生産拠点としてインド
(PPH,ASPEC,MSE等)の実態の調査を行っ
ネシアに進出する外資系/日系企業が年々増加
た。具体的には,ASEAN地域の特許制度比較,
しており,2011年度から平均して,経済成長率
連携制度の調査・研究,企業戦略の調査・研究
も6%を超える値で安定している。
を行った。
しかし,インドネシアは,独自に特許出願の
本テーマについては2015年度の完了テーマと
審査を行っているが,審査基準が公開されてい
し,ASEAN,インド,オーストラリア,ニュ
ないため,その運用実態を含め,権利取得にお
ージーランドにおける特許制度対比表に関する
ける効力などにおいて,不明瞭な点が多い。ま
別冊資料を研究結果として報告した。
た,登録件数の正確さが欠けていたり,更新時
(2)第2小委員会
期が不定期であったりするなど,出願人が公的
「タイ・ミャンマーにおける特許権取得及び
に利用できるDBが不十分であるため,権利を
権利行使の調査・研究」をテーマとして活動を
把握することが難しい。さらには,法改正の動
行った。
きがあるとの話もあるが,実態が掴めていない
タイについては,他のASEAN諸国と比較し
ほか,権利行使の観点でも,公共機関の運用実
て現地情報が流通し,実務経験も蓄積されつつ
態が不明確であったりするなど懸念点が多い。
61
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
一方,カンボジアは,1970-80年にかけての
戦乱で痛手を受けたが,近年,政治的安定など
の理由から,経済成長率は6%を超えるまでに
上昇している。最近では,国をあげて外国から
の直接投資を誘致しており,今後の成長性が注
目されている。
しかし,DBが未整備であるため,特許など
の出願情報を把握することができず,そもそも
臨時研修を行った。
10.医薬・バイオテクノロジー委員会
1.委員会の構成および運営
平成27年度のバイオテクノロジー委員会は,
委員長1名,委員長代理1名,副委員長4名,
第1小委員9名及び第2小委員6名の21名で構
成された。
知的財産情報に乏しいため,実態が極めて不明
国内外の特許庁等のパブコメ等緊急の問い合
瞭である。さらに,中国企業からの直接投資が
わせに関しては,正副委員長を中心に検討して
大きく,中国の影響を多大に受けていることが
対応した。
予想されるが,運用に影響があるのか,注目さ
2.活動の概要
れている。
このような背景の下,インドネシア及びカンボ
(1)前年度の繰越
前年度の繰越として,下記論文を知財管理誌
ジアにおける特許権などの取得,権利行使,現
に投稿・掲載した。
地事務所の実態,および知財インフラの整備状
①「最近の医薬・バイオ関連発明における審決
況を調査し,会員企業の知財活動に資する情報
と判決との判断相違要因の考察」知財管理
を提供することを目的として調査研究を行った。
2015年7号掲載。
本テーマについては2015年度の完了テーマと
②「医薬品産業の知財戦略(その1)-グロー
し,2015年11月に派遣した「インドネシア・カ
バル医薬品事業における特許ポートフォリオ
ンボジア調査団」に関する別冊資料を発行する
の分析-」知財管理2015年11号掲載。
とともに,インドネシアにおける特許取得・行
③「医薬品産業の知財戦略(その2)-医薬品
使上の留意点及び,カンボジアにおける特許取
の各特許タイプの権利化の分析」知財管理
得・行使上の留意点に関する別冊資料を研究結
2015年12号掲載。
果として報告することとしている。
3.3 意見発信
委員会では,担当範囲の知的財産制度改善に
(2)特許庁等との意見交換会
①特許庁国際政策課とWIPOにおける遺伝資源
に関する議論に関する意見交換(4月17日)
。
向けて,政策プロジェクトと連携し,又は,担
②特許庁国際政策課との第22回WIPO-SCPに関
当範囲内の国に対し,意見発信を行った。具体
する意見交換会(7月6日,7月22日)
。
的には,アジア戦略プロジェクト(1名派遣)
,
③審査基準室・品質監理室との定期意見交換会
経済連携プロジェクト(1名派遣)
,JIPAシン
ポジウムプロジェクト(1名派遣)へ委員を派
に参加した(9月17日)
。
④審査基準室との意見交換会を実施し,委員会
遣し,適時意見発信を行った。
の活動報告と機能性食品クレームの審査基
3.4 講師等派遣
準,進歩性欠如の拒絶理由に対する薬理デー
また,当委員会では,担当地域の専門家とし
タの後出し可否,プロダクト・バイ・プロセ
て,講師,専門家の派遣を行った。具体的には,
ス・クレームに関する審査ハンドブック案,
2014年度の活動結果について,フィリピン,シ
知財高裁大合議判決を踏まえた特許権存続期
ンガポール,UAE・サウジアラビア,トルコ
間延長制度のあるべき姿,中国の後出しデー
について,
法制度の概要(日本特許法との比較)
,
タ記載要件の緩和で救済された案件について
調査団により情報,活動する上での留意点に関
意見交換を実施した(11月2日)
。
し,研修講師として4名の講師を派遣し,特別
62
⑤インド・タイ特許庁の若手審査官との意見交
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
換会に参加した(11月17日)
。
(3)意見要望書等の提出
①ブラジル審査基準改訂案に対する意見提出
(5月14日)
②日本審査基準改訂案(薬理データの追加提出,
プロダクト・バイ・プロセスクレーム審査取
り扱い)に対する意見提出(6月17日,7月
1日)
③タイ特許法改正案に対する意見提出(3月予
定)
(4)外部団体との意見交換会
と判決との判断相違要因の考察」について,
2月度東西部会にて発表。
②「医薬品産業の知財戦略」について,2月度
東西部会にて発表。
(8)委員会活動
【第1小委員会】
「ライフサイエンス分野における明細書の開
示要件に関する多極間審査・審判比較研究」
WIPO-SCPでも議論されている開示要件(実
施可能要件,サポート要件,出所開示要件)に
ついて,比較国を過去の三極から中国,韓国,
①日本弁理士会バイオ・ライフサイエンス委員
インド,ロシア,ブラジルまで広げて,発明カ
会との意見交換会を開催。先方から「米国特
テゴリー別に各国の審査・審判比較を行った結
許法第101条に関する米国特許商標庁新審査
果,各国の審査に以下のような相違点が見えた。
ガイダンスおよびそのバイオテクノロジー発
(ⅰ)物質(低分子化合物)発明:具体的な
明に対する影響」
,当委員会から「FY14医薬
実施例の数・カバー範囲と成立クレームの広さ
バイオ委員会活動紹介」,
「最近の医薬・バイ
との関係や,薬理データの有無・記載方法と審
オ関連発明における審決・判決の判断相違要
査結果との関係。
因の考察」及び「知財高裁大合議判決を踏ま
(ⅱ)用途発明:薬理データの記載方法と審
えた特許権存続期間延長制度のあるべき姿を
査結果との関係や,出願後の追加資料提出の可
考える」について説明しその後,意見交換し
否。
た(11月27日)
。
(5)委員派遣等
①経済連携プロジェクト(トルコ)に委員派遣。
②H27年度審判実務者研究会に委員派遣。
(ⅲ)製剤発明:製剤構成成分に要求される
限定(機能/特性/用途による限定,種類/含
量による限定)
。
また,生物多様性条約に関連した出所開示要
③第22回WIPO-SCPへ新保委員長をオブザーバ
件については,それが特許要件として規定され
ー派遣(スイス,ジュネーブ:7月27~7月
ている中国,インド,ブラジルの制度の調査比
31日)
。知財管理2015年11号掲載。
較を行った。
④アジア戦略PJインド訪問団に新保委員長を派
遣(2月8日~2月12日)
。
⑤2015年度JIPAシンポジウムに委員派遣。
(6)会誌広報委員会投稿
①知的財産Q&A(No.174)
:
「自然産物に対す
る米国特許法101条特許適格性」知財管理
2015年6号掲載。
②論説「プロダクト・バイ・プロセスクレーム
最高裁判決を考える─平成24年
(受)第1204号 特許権侵害差止請求事件─」知財管理2015年
10号掲載。
(7)東西部会発表
①「最近の医薬・バイオ関連発明における審決
知財管理に5月投稿予定。
【第2小委員会】
「マーカッシュ形式物質クレームに特徴のあ
るライフサイエンス分野におけるコスト面から
見た出願・権利化戦略の研究」
クレーム・明細書の質を維持しつつ,方式コ
ストや翻訳コストを削減する方法を検討した。
特に両コストに影響を与える明細書のページ数
の削減策にフォーカスした。
日本および海外企業の公開特許情報に基づい
て,実施例化合物の数と明細書のページ数との
関係を調査したところ,実施例化合物が多いに
もかかわらず明細書ページ数が少ない,逆に実
63
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
施例化合物が少ないにもかかわらず明細書ペー
ジ数が多いといったケースがあり,それぞれの
明細書の記載方法を分析した。
委員会にて情報共有を図った。
(2)ソフトウェア関連発明における米国特許
適格性(Abstract Idea)の調査・研究
開示要件を満たすという前提の下で(特許登
昨年度,2014年6月の米国最高裁Alice判決
録された案件を調査対象)
,なぜ明細書ページ
において特許適格性の新たな判断基準が示さ
数の相違が生じるのかを明らかにすると共に,
れ,USPTOが上記判決に基づき特許適格性の
明細書ページ数が及ぼす方式コストや翻訳コス
判断に関する予備的審査ガイドラインを発行,
トへのインパクトを出願国数に応じてシミュレ
パブコメを募集したことに伴い,当委員会は,
ーションを行った。
ソフトウェア分野の特許実務への影響を考慮
知財管理に6月投稿予定。
【ポスターセッション】
第15回JIPA知財シンポジウムにおいてポス
ターセッションに参加した。
11.ソフトウェア委員会
1.委員会の構成および運営
本年度のソフトウェア委員会は委員長1名,
し,判断基準を明確にすべき旨,及び,事例を
追加すべき旨の意見を提出した(2014年7月31
日)
。
今年度は,
Alice判決以降,
CAFC判決やUSPTO
審査は特許不適格と判断する率が高い印象があ
り,新たな基準は企業の特許出願,訴訟実務に
影響を与えていることに鑑み,Alice判決以降
の特許適格性についての調査研究として以下の
委員長代理1名,副委員長(小委員長,小委員
2つのアプローチで活動を行った。
長補佐)4名,委員25名の計31名の構成となっ
①Alice事件(SW判例)後,USPTO101条審査
た。活動にあたっては,第1小委員会と第2小
ガイドラインの調査・分析
委員会を設け,第2小委員会ではWG1とWG
前述のガイドライン発行後,2014年12月に
2に分かれ,計3つの小グループによる委員会
USPTOから新たに公表された暫定審査ガイド
運営を行い,正副委員長会議9回,全体委員会
ラインにおいて,判断基準が詳細化されるとと
10回,小委員会およびWG各11回を開催した。
もに具体的事例が追加されるなど,当委員会が
また,各活動テーマの進捗に応じて,各小委員
発信した意見への一定の成果を得た。
会等では自主的な臨時小委員会を開催するなど
そこで,該ガイドラインの判断基準の概要と
積極的な活動を行った。
具体的事例の分析を行い,その結果を9月度の
2.活動概要
東西部会にて会員企業へ報告した。
2.1 第1小委員会
②実際の応答事例分析
第1小委員会は,
「各国におけるソフトウェ
USPTOが2014年度6月に発行した「予備的
ア知財保護」をテーマとして,ソフトウェア関
審査ガイドライン」発行後に許可通知を取り下
連特許に関して,特に日米欧等の審査基準や判
げた案件(830件)の中でファミリーに日本出
例から,成立性(適格性)
,進歩性,侵害訴訟
願を含む案件(113件)を対象に調査を行った。
事件等の事例の検討に取り組んでいる。今年度
主に,米国特許出願の登録状況の確認と対応
は,主に以下の2つの活動を行った。
(1)日米最新ソフトウェア判決ピックアップ
ソフトウェア知財に関連する動向を判決から
把握するべく,日米の最新ソフトウェア判例を
毎月ピックアップし,争点の確認や判決におけ
日本特許出願の拒絶理由や応答事例の内容を調
査し,米国特許法101条と日本特許法29条柱書
の基準の比較とその対応策を分析した。
2.2 第2小委員会 WG1
第2小委員会のWG1では,ネットビジネス
る判断の考え方についての議論を行った。また,
を中心に,ソフトウェアサービスにおける各社
各企業実務で活用可能な判決については,全体
の出願とサービス,収入源との関係等を分析し,
64
※本文の複製、転載、改変、再配布を禁止します。
活用できる知財権について調査・分析を行った。
主な手法は以下の通りである。
(1)分析対象事業・分析企業の選定,類型整
理
①分析対象,企業の絞り込み
主要なネットサービスとして,
「ネットショ
ッピング」
「ネットゲーム」
「コミュニケーショ
ンサイト」
「ウェブコンテンツ配信」
「ウェブ情
報検索サービス」の6サービスを調査対象とし,
該当サービス提供企業9社を選定。
権等)の取得・活用を含めた課題を検討,整理
することを目的に活動した。
活動は,今年度の前半は,東京理科大学MIP
平塚研究室と協力して情報収集や意見交換を行
い,後半は,当委員会内で調査・分析を行った。
主な手法は以下の通りである。
(1)IoT標準化団体の動向調査
IoT標準化団体として活動を活発化させてい
るIIC(Industrial Internet Consortium),OIC
(OPEN INTERCONNECT Consortium),
②類型整理
AllSeen Alliance,Thread Groupの概要,参加
選定した9社が提供するサービス内容(事業)
企業,それぞれの立ち位置などを調査・整理。
および収入源との関係をもとに上記6サービス
(2)オープン化の対象およびその手法と課題
を「課金モデル」
「ECモデル」
「広告モデル」
①各団体におけるOSS(オープンソースソフ
といった3つの事業モデルに分類・類型化し,
トウェア)の特徴(レイヤ,関連技術など)
9社の登録特許を3つの事業モデルとの関係か
を分析
らあてはめて整理。
(2)出願傾向・特許権の活用可能性の分析
次に,各社(9社)の特許について,上記3
つの事業モデルとの関係を整理するとともに,
②オープンソース等のIPRポリシーとアウト
サイダー対策等の課題を検討
(3)競争領域におけるビジネスモデルの展望
と課題
権利活用可能性の判断基準として,以下3つの
参画企業の動向,過去の成功事例及び特許出
視点を定義し,3つの事業モデルに対応付けた
願を調査・分析(展望を推測する材料として)
。
特許権の代表クレームについて権利活用可能性
を分析して,各社毎,事業モデル毎に出願傾向,
権利活用可能性について検討した。
(4)知財管理誌投稿論文の作成
以上の調査・検討結果に基づき,
『ソフトウ
ェアに関連するオープン&クローズ戦略に関す
(a)侵害検知容易性
る調査・研究-IoTにおける標準団体,注目企
(b)単一主体性
業の動向調査を中心に-』と題した論文を作成
(c)クレームの長さ(文字数)
して知財管理誌に投稿した(2016年3月31日初
(3)知財管理誌投稿論文の作成
稿入稿,掲載月未定)
。
以上の調査・検討結果に基づき,
『進展する
3.その他活動
ITサービスやソフトウェアビジネスにおけ
3.1 委員派遣
る,特許戦略に関する調査・研究』と題した論
文を作成して知財管理誌に投稿した(2016年3
月31日初稿入稿,掲載月未定)
。
2.3 第2小委員会 WG2
(1)AIPPIコンピュータ・ソフトウェア特許
研究会
2010年度から継続してAIPPIコンピュータ・
ソフトウェア特許研究会に委員派遣(議題ごと
第2小委員会WG2は,
「ソフトウェアに関
に募集)を行い,欧米を中心としたソフトウェ
連するオープン/クローズ戦略に関する調査・
ア関連発明等の保護に関する意見交換,最新動
研究」をテーマとして,ソフトウェア関連企業
向に関する情報収集により委員会へ展開した。
のオープン/クローズ戦略の事例(IoT標準化
(2)平成27年度審査応用能力研修2
団体,過去事例etc)を調査し,オープン領域
JPO審査官向け上記研修の「討論1・2」へ
とクローズ領域それぞれに対する知財権(特許
副委員長,委員各1名を派遣し,企業側からの
65
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参加者としてJPO審査官と与えられた題材につ
供」に関する議題を提示し,インターネッ
いて討論を行った(12/3,7)
。
トナンバー事件をベースにシステムクレー
(3)JIPAシンポジウム実行委員会
ムやプログラムクレームなどカテゴリを題
JIPAシンポジウム実行委員会へ委員1名を
材に,域外適用,共同侵害などソフトウェ
派遣した。ポスターセッションでは,来場者か
ア特有の課題について活発な意見交換を行
らの各研究テーマについての質疑応答,意見交
った。
換を行った(2/17)
。
3.2 意見書提出,意見交換など
(1)JPO審査基準改訂に際し,CS(コンピュ
院技術経営研究学科(MOT専門職大学院)
の竹内教授,福代研究科長およびTLO佐
ータ・ソフトウェア)審査基準(案)の内
田洋一郎所長らと,大学側からは大 学,
容を精査し,当委員会としての意見を特許
TLOの取り組み,標準化と国際知財政策,
第 一 委 員 会 と 連 携 し て 提 出 し た(6/1 5,
当委員会からは活動テーマについて各々報
8/21)
。
告 し た 上 で, 活 発 な 意 見 交 換 を 行 っ た
(2)画像意匠保護拡充に関する改正案に対し,
(10/23)
。
意匠委員会及び著作権委員会と共同で
(8)東京理科大MIP平塚研究室との共同研究
JIPA意見の検討を行い,JPOと複数回に渡
を実施し,主に前述した第2小委員会WG
って意見交換を行った(5/18ほか)
。現行
2及び委員長とともに,ソフトウェアに関
法の改正を伴わない範囲で,物品にインス
連 す るIoT標 準 化 団 体, イ ン ダ ス ト リ ー
トールされたプログラムにより表示される
4.0,OSSなどに関する情報収集や意見交換
画像デザインについての保護等を内容とし
を行った(4/16,5/22,6/26ほか)
。また,
た改訂意匠審査基準が2016年4月より運用
同研究室主催の元JPO技監の石井氏,小川
されることとなった。
教 授(6/1 9)
, 元EPO審 査 官 ミ ケ ー レ 氏
(3)Kappos,Wegner,LINN Delegationに
国際第一委員会とともに参加した。当委員
会からは,Alice判決に基づくUSC101条予
(7/15)など有識者との意見交換にも参加
した。
(9)著作権委員会との合同委員会を実施し,
備的審査ガイドライン発行後のソフトウェ
両委員会の活動成果の紹介,意見交換を行
ア関連発明における米国特許適格性
った(1/22)
。
(Abstract Idea)の調査・研究内容を議題
(10)JPAA(日本弁理士会)特許委員会ソ
として提示し,最近のUSPTOの審査動向
フトウェア部会との合同委員会を実施し,
やその対応策について,彼ら有識者と活発
両委員会の活動成果の紹介,意見交換を行
な意見交換を行った(6/23)
。
った(2/26)
。
(4)インド特許庁が公表したインドのCRI(コ
ンピュータ関連発明)基準運用停止に対し
て,短期間での懸案事項の解決と運用再開
を要望する旨を当委員会の意見としてアジ
ア戦略PJに提出した(1/5)
。
(5)JPOとの意見交換会として,
審査基準室・
12.著作権委員会
Ⅰ.委員会の構成及び運営
委員長,副委員長を含め29名で活動を行った。
8月を除き,毎月1回計11回の全体委員会を開
催した。
品質管理室(9/17,
3/1特許第1委員会主催)
Ⅱ.委員会の活動
に参加した。
1.著作権政策・立法動向等の把握,分析
(6)大阪地裁(1/20)との意見交換会(特許
第2委員会主催)に「国を跨ぐサービス提
66
(7)山口大学との合同委員会を実施。同大学
(1)著作権立法・司法・ビジネス動向の調査,
報告
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著作権に関する政策・立法動向等をタイムリ
ーに把握することを目的として,知的財産戦略
得るべく検討を行った。
これまでの検討成果について,
「知財管理」
本部,文化庁(文化審議会著作権分科会各小委
2015年6月号・7月号に,2回に分けて掲載し
員会)等の各関係機関における議論,動向の月
たほか,今年度は「台湾著作権法改正案稿」の
次調査を行うとともに,年間を通じて一覧で把
分析や,米国著作権局発行の「Orphan Works
握できるように可視化して,委員会での情報共
and Mass Digitization」に基づき,権利者不明
有及び意見交換を行った。
著作物やアーカイブ(大量電子化)の取扱いに
また,最新の司法動向やコンテンツビジネス
にかかわるトピックを各月の担当委員が詳細に
関する米国内政策動向の調査・分析を行った。
2.国内の裁判例動向の把握分析
解説し,委員会内での理解の深度化を図った。
大まかなテーマに応じて,委員会内に少人数
(2)各種ヒアリング・パブリックコメントへ
の発表チームを編成し,四半期に一回(7月,
の対応
9月,12月,3月に実施)のペースで,委員会
国内外の著作権法制度に関する審議会ヒアリ
全体で共有するにふさわしい事例のリスト化を
ングやパブリック・コメント募集等に対応した。
行い,特に重要度が高い裁判例については,詳
特に,環太平洋パートナーシップ協定(TPP)
締結に伴う著作権法改正に対しては,2015年11
月4日に文化審議会著作権分科会法制・基本問
細な報告資料の作成を行った上で,全体委員会
での発表及び意見交換を行った。
詳細な報告がなされた判例,裁判例は以下の
題小委員会が開催したヒアリングに出席して意
とおりである。
見を述べる等,産業界を代表して積極的な意見
・
「TRIPP TRAPP椅子形態模倣事件」
(知財高
発信を行った。
また,知的財産戦略本部や文化庁が検討を進
めている「新しい時代に対応した著作権制度」
に対しては,委員会内で行ったアンケート結果
(2015年9月実施)や,北海道大学・田村善之
教授との意見交換(後掲)を通じて得られた示
唆等を踏まえつつ,今年度JIPA内に立ち上げ
られた著作権政策研究会と連携して,関係機関
に対し,
「柔軟な権利制限規定の導入」を柱と
する意見・要望の発信を行う等の対応を行った。
その他に,今年度は「知的財産推進計画」
(2015,2016)
,
「世界最先端IT国家創造宣言」
,
「台湾著作権法改正法案」
(第2稿,第3稿)
,
「権
判平成27年4月14日)
・
「ファッションショー映像著作権侵害事件」
(知財高判平成26年8月28日)
・
「ディスプレイフォント無許諾利用事件」
(大
阪高判平成26年9月26日)
・
「Allposters事件」
(欧州司法裁平成27年1月
22日)
・
「江戸明治東京重ね地図事件」
(東京地判平成
26年12月18日)
・
「健保組合キャラクター著作権侵害事件」
(東
京地判平成27年1月29日)
3.著作権に関する社内教育・研修事例紹介及
びアンケート実施
利者不明等の場合の裁定制度における権利者捜
前年度に引き続き,著作権をめぐる法制度や
索のための『相当な努力』の見直し」に対する
実務上留意すべき点に関し,各委員の会社でど
意見提出を行った。
のような教育,研修を行っているかを全体委員
(3)海外「著作権リフォーム」の調査・分析
会で紹介し,各社で工夫しているポイントや,
前年度に引き続き,委員会に設置したワーキ
研修・教育のあるべき姿等について意見交換す
ンググループにおいて,諸外国における「デジ
る機会を設けた
(2015年5月,
6月,
2016年2月)
。
タル化時代に対応した著作権法制見直しの動
また,これまでの事例紹介や意見交換を通じ
き」
(著作権リフォーム)を調査し,中長期的
て明らかになりつつある各社共通の傾向や課題
な視点からわが国の法政策提言に向けた示唆を
等をより明確に抽出し,検討をより深度化する
67
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ため,委員会メンバーを主な対象とするアンケ
テンツの利用とその救済手段」といった論点を
ートを実施した(2016年2月~3月)
。
中心に,意見交換を行った。
4.コンテンツ活用事例に関する調査
6.ソフトウェア委員会との連携
(1)デジタルアーカイブ見学
ソフトウェア委員会との合同委員会を2016年
大日本印刷㈱のご協力により,貴重な文化遺
1月に開催し,当委員会からは,
「新しい時代
産等の保存・継承を行う「DNP京都太秦文化
の著作権制度検討に向けた対応」,
「二次創作の
遺産ギャラリー」を見学し,単純な「複製」の
現状と今後の課題」
,
「社内教育・研修事例に関
概念を超えた最先端のデジタル,アーカイブ化
するアンケート実施の取組み」について発表し,
技術に触れるとともに,コンテンツ保存・継承
意見交換を行った。
の意義や今後の活用の可能性等について,ご説
7.JIPAの活動への対応
明いただいた(2015年9月)
。
・JIPA研修Aコース「著作権法」に関し,当
(2)
「二次創作」に関する意見交換,調査検討
委員会から講師を派遣した。
「初音ミク」等のキャラクターを用いた音声
・JIPA知財シンポジウムのポスターセッショ
合成ソフトウェアの販売元として著名なクリプ
ンに出展し,優秀賞(第3位)を受賞した。
トン・フューチャー・メディア㈱(本社・札幌
市)を訪問し,インターネット等を通じたユー
ザーの多様な二次創作を可能とした,
同社の「ピ
13.マネジメント第1委員会
1.委員会の構成と運営
アピロ・キャラクター・ライセンス」
(以下
マネジメント第1委員会は委員総勢36名で組
「PCL」
)の概要とその基本思想についてご説明
織し,委員長を除いた35名で3つの小委員会を
いただくとともに,権利者と利用者が共生でき
構成し,調査研究を行った。各小委員会は原則
るライセンスモデルやその運用の在り方等につ
として1ヶ月に1回の小委員会を開催して各研
いて活発な意見交換を行った(2015年10月)
。
究テーマの調査・研究を行い,1ヶ月に1回開
また,意見交換した内容等を踏まえ,音声合
催する正副委員長会議で,委員会活動の方向性
成ソフトウェアを開発したヤマハ㈱の委員の協
の調整と確認を行った。10月には,マネジメン
力も得て,音楽からキャラクターイラスト,動画
ト第2委員会と合同で中間の全体会合を開催
等に至るまで,様々な二次創作の権利関係整理
し,各小委員会から研究テーマの検討状況を発
の状況について,より踏み込んだ検討を行った。
表し,マネジメント委員会全員で各テーマ活動
5.有識者,各種団体等との意見交換
内容の共有を行った。また,3月には,マネジ
(1)有識者との意見交換
北海道大学大学院法学研究科・田村善之教授
を2015年10月に訪問し,
「日本の著作権法のリ
メント第2委員会と合同でまとめの全体会合を
開催し,1年間の研究成果の報告し,委員会内
で共有した。
フォーム論」として,現在の著作権法の構造的
第1小委員会は,菅野小委員長および加藤小
課題や零細的利用に対する対策(フェアユース
委員長補佐と10名の委員で「秘密情報防衛の研
規定の導入)
,孤児著作物問題に対する対策(更
究」のテーマについて調査・研究を行った。
新登録制度)などについてご講演いただくとと
近年,企業の技術情報の漏えい事件が社会的
もに,今後のわが国の著作権法のあるべき姿に
な問題になっている。製造業をはじめとする研
ついて,意見交換を行った。
究・開発を積極的に展開する企業にとって,そ
(2)各種団体との意見交換
の成果である「技術情報」は競争力の源泉であ
日本弁護士連合会(日弁連)及び東京地裁,
り,戦略的なマネジメントが求められる。本小
知財高裁との意見交換の場に参加し,
「応用美
委員会では,昨年度から引き続き,ビジネスの
術の著作物性」や「著作権で保護されないコン
多様化,グローバル化を背景に,秘匿と決定し
68
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た情報を他社に開示するケースが増加している
ムの構築など他社とのコラボレーションのため
ことに着目し1年間活動を行った。
に,自ら秘匿技術情報を開示するケースが増加
第2小委員会は,水戸小委員長および杉浦小
している。知財部門は,このような自らの行為
委員長補佐と9名の委員で「イノベーション促
に起因する意図せざる情報漏洩を防ぐために,
進のための税制度に関する研究」のテーマにつ
どのような情報管理を行うべきかを検討した。
いて,知的財産が関係する国際的な税制につい
て調査検討を行い,知的財産部門として取り組
むべきマネジメント上の課題について調査・研
究を行った。
本テーマは2年テーマであり,2年目にあた
る本年は,1年目の検討結果を7月の東西部会
で発表した。7月以降は,英国パテントボック
スについて,仮想の企業をモデルケースとして
利用シミュレーションを行い,イノベーション
促進の観点から制度上の問題点を深堀りし,知
財活用を促進する制度に対する留意点としてま
とめた。また,国際税制に関する知財マネジメ
(3)活動内容
・4月~7月 オープン&クローズ戦略関連文
献の調査と議論 ・8月 技術情報管理の典型モデルの設
定と検討項目の整理
・9月~11月 実態(ヒアリング,アンケート)
調査 ・12月~1月 調査結果を基にした実態分析と
課題の抽出
・1月~3月 論説執筆
(4)活動報告
ヒアリング・アンケートの結果,知財部門は,
ント上の課題を検討し,知的財産部門として今
発明相当の技術を特許として出願するか,ノウ
後取り組むべき事項としてまとめた。
ハウとして秘匿管理するかという判断をする場
上記得られた知見を論説にまとめ知財管理誌
に投稿した(12月15日)
。
第3小委員会は,遠藤小委員長および伊田小
委員長補佐と10名の委員で「開放可能な自社特
面では,社内で主導的な立場にいることが確認
された。さらに,秘匿すると判断された情報も,
特許と同様に知財部門が主導して管理している
企業が多くなっていることが判明した。
許の活用のあり方に関する研究~社会のための
一方,秘匿と決めた技術情報を第三者に開示
有効かつ適正な活用の観点から~」のテーマに
する場合には,事業部門主導でその可否判断を
ついて調査・研究を行った。本小委員会では,
決める会社が多く,知財部門は,案件ごとに事
開放可能な自社特許について,
「社会のための」
業部門の相談に乗るような,事業部門のサポー
活用類型を調査し,開放特許の活用を進める上
トにとどまっているのが実態であった。
での大企業視点からのマネジメント留意点を抽
オープンイノベーションの推進,ビジネスエ
出・提案すると共に,新たな開放特許活用促進
コシステムの構築などの特定の目的で秘匿技術
策についても検討を行った。
情報を第三者に開示する際には,担当技術部門,
2.各小委員会のテーマ概要と活動内容
あるいは事業部門が種々決定事項を主導するの
2.1 第1小委員会
が必然であろうが,重要な技術を経営資源とし
(1)テーマ名 「秘密情報防衛」
て長期に活用していくためには,秘匿技術情報
(2)テーマの背景
の防衛は極めて重要であり,知財部門はこの部
企業が秘匿すると決めた技術情報は,特許と
分の機能を中心的に担うべきと考え,知財部門
同じように重要な経営資源であり,企業の技術
が関与すべき点として秘匿技術の体系化,技術
競争力の観点から,これらを戦略的にマネジメ
開示先との契約における監査条項に注目し,実
ントすることが強く求められている。一方,ビ
務上のポイントについて検討を行った。
ジネス環境が多様化しグローバル化する中で,
2.2 第2小委員会
オープンイノベーションやビジネスエコシステ
(1)テーマ名 「イノベーション促進のため
69
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の税制度に関する研究」
(2)テーマの背景
動機付けにはなり難く,イノベーション促進効
果は少ないと推測された。したがって,日本に
企業が本社,研究所,工場等をどの国に置く
おいて単純に欧州各国と同じようなパテントボ
かを判断する要因の一つとして,当該国の税制
ックスを導入しても,イノベーション促進につ
度がある。本小委員会では,企業が研究所や工
いては大きな効果は得られないと思われる。真
場などをグローバルに配置するにあたり,知的
にイノベーションを促進するためには,OECD
財産部門は単に知的財産の取得や維持管理を行
が2015年10月5日の報告で述べているように,
っていくだけではなく,知的財産に関係する各
研究開発税制とパテントボックスを強くリンク
国の税制度(パテントボックス税制,法人税,
させることや,単に知的財産のライセンスでは
移転価格税制等)についても対応していく必要
なく技術とセットにした場合に優遇される制度
があるとの課題認識のもと,取り組むべきマネ
にするなど,具体的に技術活用を促進するよう
ジメント上の課題の抽出を行うとともに対応に
な制度とする必要がある。
ついて検討を進めた。
(3)活動内容
上記検討の過程で明らかになった知財マネジ
メント上の提言は,以下の4点に集約される。
4月~6月は前年度検討結果の振り返りと,
①知的財産部門は,税の世界と知的財産の世界
新メンバーを含めた委員間の問題意識の共有,
とをつなぐ役割をする国際税制の基礎知識を
7月東西部会での発表準備を行った。同時に,
持った知的財産部員を育てるべきである。
2年目の検討の方向性を改めて検討し,知的財
②製品・売上と知財との対応関係をしっかりと
産部門が国際的な知財に関する税制に対応して
るために,財務部門,営業部門,製造部門と
いくための知財マネジメント上の課題について
の連携構築(特に製品・売上情報と特許の紐
検討し対応を提言することをミッションとした。
づけの社内の仕組み)が必要である。
7月~10月は前記の方向性に基づき,仮想の日
本企業において英国のパテントボックスを利用
③研究開発リソースと対象となる知的財産とを
紐づける仕組みの構築が必要である。
する場合のシミュレーションを行い,知的財産
④パテントボックスを含めた税制利用の社内評
マネジメント上の課題抽出と対応のための提言
価体制(税制利用によるメリット・デメリッ
を検討した。11月には検討結果を論説としてま
トの情報を収集,分析,評価する社内横断的
とめ12月に知財管理誌に投稿した。1月~2月
な体制)を構築する必要がある。
には英国系の法律事務所に英国パテントボック
2.3 第3小委員会
スの実施状況に関するヒアリングを行い,実際
(1)テーマ名 「開放可能な自社特許の活用
に利用する際の留意事項の検討を深めた。1年
のあり方に関する研究~社会のための有効
間の検討結果を3月の全体会合で報告した。
かつ適正な活用の観点から~」
(4)活動報告
年間の活動を通して,以下の結果をまとめ,
(2)テーマの背景
現在,多くの大企業では,事業化に至らなか
知財管理誌に投稿した。4月特集号に論説とし
った研究,実施技術の変更,事業撤退等の諸々
て掲載予定である。
の事情により開放可能となった自社特許が,一
現状の英国のパテントボックスは,どのよう
定の割合を占めているのではないだろうか。
な特許でも適用対象となること,それが英国内
近年,このような特許について,単に,マネタ
で発明されたものでなくてもよいこと,製品に
イゼーションを図るだけでなく,中小企業との
1件でも特許があれば適用対象となること等か
連携,地域貢献を目的とした社会のための活用
ら,グローバル企業が英国内にこの制度がある
を進める企業がでてきている。当小委員会では,
ことを理由に積極的にR&D機能等を配置する
上記のような開放可能な自社特許について,
「社
70
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会のための有効かつ適正な活用」類型を検討す
事業に積極参加する際の課題について検討し,
る中から,開放特許の活用を進める上での社内
その対応策の一つとして,
「開放特許活用委員
のマネジメント上の留意点を抽出すると共に,
会」の設置を提案した。
新たな開放特許活用促進策についても検討を行
った。
(3)活動内容
14.マネジメント第2委員会
1.委員会の構成と運営
4月は,本テーマの関連文献の調査を行うと
マネジメント第2委員会は,委員総勢31名で
ともに,小委員会メンバーの 「社会のための活
組織し,委員長を除いた30名を3つの小委員会
用」 に関する考え方の共有化を実施した。5月
に構成し,調査研究を行った。各小委員会は原
~6月は,共有化した考えに基づき「開放可能
則として1ヶ月に1回の会合を開催して各研究
な特許」の研究対象を明確化した。7月~9月
テーマの調査・研究を行い,1ヶ月に1回マネ
は,
研究対象の活用類型で成果をあげている「川
ジメント第1委員会と合同で開催する正副委員
崎モデル」について,従来の知財交流事業とは
長会議で,委員会活動の方向性の調整と確認を
異なる成功因子があるはずとの仮説を立て,検
行った。10月にマネジメント第1委員会と合同
証のためのヒアリングを実施した。10月~11月
の中間全体会合を開催し,各小委員会の研究テ
は,
「川崎モデル」の成功因子を分析すると共に,
ーマについての活動状況の共有と後半の活動へ
当該活用推進に向けたマネジメントの留意点を
向けての課題を確認した。3月にはマネジメン
抽出した。12月~3月は,抽出結果をまとめる
ト第1委員会と合同の最終全体会合を開催し,
と共に,新たな開放特許活用促進策についても
各小委員会より1年間の研究成果の発表がなさ
検討を行い,原稿の執筆活動を実施した。
れ,今期の活動総括を行った。
(4)活動報告
第1小委員会は,町田小委員長および中山小
検討の初期段階にて,
「開放可能な自社特許
委員長補佐と9名の委員で「技術標準と知財戦
の活用」における研究対象を明確にするために,
略の研究」のテーマについて調査・研究を行っ
開放可能な特許について「活用目的」
「活用先」
た。技術標準はこれまで電気業界において顕著
の切り口から研究対象の類型を明確にした。そ
であったが,標準化の流れは自動車等の他の業
の類型において一定の成果をあげている「川崎
界へも普及し始めている。今後,機械や素材関
モデル」の成功因子を抽出すべく,ライセンサ
係の業界においても無視出来ない技術標準を前
ーである大企業,ライセンシーである中小企業,
提に企業はこれまでの知財戦略をどのように再
それらを仲介する川崎市および川崎市産業振興
構築すれば良いのかについて,委員会メンバー
財団にヒアリングを実施した。これら調査から,
へのアンケートや先行している企業へのヒアリ
川崎モデルの成功因子は,当事者がWin-Winの
ングなどを通じて検討した。
関係にあり,それらを支える仲介者である川崎
第2小委員会では,井内小委員長および小委
市のコーディネータの影響が大きい事がわかっ
員長補佐と8名の委員によって『続・「モノ」
た。具体的には「えこひいき」
「お節介」
「キャ
から 「コト」 へ変化する競争源泉における知財
ラバン隊」のキーワードの下,企業探索,契約,
マネジメントの研究』をテーマとして調査・研
補助金申請等において大企業と中小企業の支援
究を行った。研究対象である「コト」を改めて
を行っている事が大きい。これら分析結果から,
定義し,昨年度とは異なる 「コト」 事例を抽出
更に本類型の活用推進に向けた大企業視点から
し,数社のヒアリングを実施した。これらを通
マネジメントの留意点を抽出し,それらを「企
して,
「コト」づくりにおける知財人財の関与,
業探索フェーズ」と「サポートフェーズ」に分
及び「コト」づくりの過程におけるいわゆる知
け留意点をまとめた。更に,大企業が開放特許
財ミックスについて,主に検討を行った。
71
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第3小委員会は,中田小委員長,岡小委員長
施した。1月~3月は,アンケート結果の分析
補佐と7名の委員で,
「グローバルなイノベー
とともに仮説の検証を継続し,知財管理誌に投
ション促進に関する研究~ビジネスを成功に導
稿する論説の執筆活動を行った。
く外部智の革新的活用~」というテーマで調
(4)活動報告
査・研究を行った。本テーマは2年テーマであ
かつては電気・通信業界を中心に行われてき
り,本年度はその2年目である。事業競争力を
た標準化活動は,いまやこれらの業界に留まら
維持・強化させるためにオープンイノベーショ
ず,機械,金属,化学,素材,食品,医療等こ
ン,特に積極的な「外部智」の導入によるイノ
れまでは比較的技術標準とは馴染みが薄かった
ベーションの促進が重要である。本年度の検討
業界も含めて広がりを見せつつあり,今後この
では,成功事例に基づき外部智導入の流れをモ
流れは無視出来ないものとなっていくことが予
デル化(N/Sモデル)した上でプロセス毎に
想される。標準化活動への関わりについてヒア
詳細に分析し,個々のプロセスにおける知財対
リングを行った結果,成果を出している企業は
応を検討した。次にその検討に基づき,オープ
標準化への明確なポリシーを持っていることが
ンイノベーション促進に貢献する知財部門とし
分かった。知財権の活用により標準化の過程で
ての考え方,取り組み方について考察した。
直接利益を得たり市場で優位に立てるとは限ら
2.各委員会のテーマ概要と活動内容
ないが,自社の技術標準に対する取組みのポジ
2.1 第1小委員会
ショニングと知財権の役割を意識して戦略的に
(1)テーマ名 「技術標準と知財戦略の研究」
活動することが重要であることが分かった。
(2)テーマの背景
2.2 第2小委員会
近年,技術標準の戦略的な活用が注目を集め
(1)テーマ名 「続・「モノ」 から 「コト」 へ
ている。従来は,標準化とは部品の共通規格等
変化する競争源泉における知財マネジメン
を定めて実施することを指し,これによる効率
トの研究」
的な生産や流通を実現することを主な目的とし
(2)テーマの背景
ていた。ところが,昨今は知的財産によって保
企業活動のグローバル化やICT化により,世
護された技術等を標準化し,知的財産と技術標
界の産業構造やビジネスモデルは大きく変化し
準を巧みに組み合わせて企業の収益を拡大する
ている。このような競争環境の中,新興国では
戦略が登場している。このように技術標準を取
低コストでも高品質な製品を量産できるように
り巻く状況は従来とは大きく変わってきてお
なってきた。そのため,先進国であっても,「
り,知財部門としてどのように関与すべきか検
モノ」 単体が利益の源泉となっている業界は減
討する必要が生じている。
ってきており,製品を製造・販売するだけでは
(3)活動内容
なく顧客の潜在ニーズに応えられるよう「モノ」
4月~7月は,本テーマに関係する文献の調
や「サービス」などを一式で提供し,顧客に対
査を行うとともに,小委員会内で技術標準につ
する価値を向上させる取り組みが行われてき
いての理解を深めるための議論を行った。7月
た。即ち,「コト」 づくりを競争源泉とする企
~9月は,議論を通じて「事業領域により,技
業が出現してきている。
術標準への関わり方は異なる」という仮説を立
当小委員会では,「コト」 を生み出し競争源
てるに至った。また技術標準への関わる度合い
泉としていくための 「コト」 づくりのポイント
に応じた5つのポジションを想定した。10月~
を知財の視点で検討するとともに,「コト」 づ
12月は,知財研を皮切りに技術標準で選考して
くりを実践している企業の調査やヒアリングを
いる企業3社へのヒアリングを行い,仮説の検
実施し,「コト」 づくりの過程でどのように知
証を行った。また委員会向けにアンケートを実
的財産をマネジメントしていくべきか考察した。
72
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(3)活動内容
(2)テーマの背景
4月は,本テーマの関連文献の調査を行うと
近年,製品のモジュール化がもたらした新興
ともに,特に本年度新たに加わったメンバーと
国の躍進によりコスト競争が激しさを増すと同
昨年度の活動結果をふまえて 「コト」 に関する
時に,製品ライフサイクルの短縮化によりR&
情報の共有を行った。5月~6月は,研究対象
Dの投資回収が困難になってきている。加えて,
である 「コト」 の考え方,及び本年度の研究の
高度情報化社会の到来により,加速度的に技術
方向性を議論した。7月~8月は,「コト」 の
の陳腐化が進み,また,イノベーションに資す
研究での切り口を設定するとともに,当小委員
る有用な知識も大企業のみならず大学,ベンチ
会での 「コト」 の定義をメンバー間で共有した。
ャー企業等に遍在するようになってきた。この
また,5月~8月は,並行して具体的な「コト」
ような状況においては,従来のような自社のR
の事例の抽出も行った。9月~11月は,抽出し
&Dのみに頼る自前主義から脱却して積極的に
た「コト」の事例についての分析を進め,
「コト」
オープンイノベーションを活用し,
「外部智」
づくりのポイントを知財の視点から検討し,併
を取り入れて革新的な製品やサービスを生み出
せて「コト」づくりの過程における知財のマネ
すことが競争力強化に必要である。本研究にお
ジメントについて検討した。なお,関係先への
いては,外部智導入に関する成功事例を調査,
ヒアリングを8月~2月において並行して実施
検討し,その成功要因を明らかにするとともに
した。12月~3月は,
「コト」づくりの過程で
オープンイノベーション促進に貢献する知財部
知財人財の果たす役割と望ましい組織形態,及
門としての考え方,取り組み方の検討を行った。
び知財ミックスによる「コト」の保護を考察し,
年間の調査結果としてまとめた上で,知財管理
誌に投稿する論説原稿の執筆を行った。
(4)活動報告
(3)活動内容
昨年度行ったオープンイノベーションの課題
の整理及び知財部門との関わりについての検討
を礎に本年度の検討を行った。4月~6月は,
検討の初期段階では,
「コト」の持つ意味が
昨年度検討結果の振り返りと検討ポイントの整
多義的であり,業界によっても異なるので,新
理及びヒアリング先検討のための成功事例の洗
任の委員も交えて改めて「コト」の考え方を共
い出しを行った。7月~8月は,ヒアリング調
有した。その考えのもと,「コト」 づくりの事
査を行い,具体的な成功要因について検討した。
例を6つ抽出して調査研究を進めた。
9月~11月は,引き続きヒアリング調査を行う
これら事例をもとに「コト」づくり過程にお
とともに,外部智導入の具体的な流れを理解す
ける知財マネジメントの留意点について検討し
る「ニーズ・シーズ(N/S)モデル」を考案
た結果,
「コト」の保護には特許だけでは不充
し,当該モデルを用いて事例を分析することに
分であり,特許以外の知的財産権も駆使した知
より外部智導入プロセスにおける知財業務の実
財ミックスの視点が必要であることが分かった。
態を明らかにした。12月~3月は,これまでの
また,
「コト」づくりに知財人財が有機的に
検討結果を踏まえて,オープンイノベーション
関与し貢献するための組織形態についても検討
促進における知財部門としての貢献という観点
を行った。具体的には,通常の知財部門に加え
から論説の取りまとめを実施した。
て,事業側に近い領域で活動する知財推進部門
を設置することが有効であるとの考えに至った。
2.3 第3小委員会
(4)活動報告
本テーマは2年テーマとして設定され,本年
度はその2年目である。昨年度の検討において
(1)テーマ名「グローバルなイノベーション
は,オープンイノベーションの実態の調査によ
促進に関する研究~ビジネスを成功に導く
り課題を抽出,整理し,成功要因について検討
外部智の革新的活用~」
した上で,この成功要因に寄与できる知財部門
73
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としての役割について検討した。本年度は,そ
(5)JIPA研修講師派遣
の検討結果を踏まえて,ヒアリング調査を実施
C9Eコース 8回
し,成功事例における外部智の流れとそれに伴
S1コース 2回
う知財業務の実態について,それらを可視化す
(6)海外派遣
る「ニーズ・シーズ(N/S)モデル」を考案
第3回グローバルドシエタスクフォース
し,当該モデルを用いてプロセス毎に詳細に分
会合 3名
析を進めた。その結果,
各プロセスにおける個々
の知財業務としては一見「当たり前」の業務の
集合であるものの,オープンイノベーション全
(7)委員派遣
AIPPI特許庁受託調査研究 1名
(8)成果物
体を俯瞰した上でそれらの業務を戦略的に組み
ペーパーレスニュース 4回
立てて推進することが重要であることを見出し
論説 2本
た。また,そのためにはオープンイノベーショ
部会発表 4回
ンのスタート時点(初動)からゴール(目的・
成果)をR&D部門,事業部門等と共有し,適
3.活動内容
(1)ミッション
切な時期に適切な内容で知財対応を実行するこ
2013年度に情報システム委員会の活動の方向
とが重要であるという結論に達した。更にその
性を明確化するためにミッションを定義した。
ことを実現するために知財部門として具体的に
また,2015年度には知財事務業務従事者の受け
取り組むべき事項を取りまとめ,論説に投稿す
皿となるべく事務業務の効率化をミッションに
る予定である。
加えた。
15.情報システム委員会
1.委員会の構成
現在のミッションは,
「企業の知的財産活動
を支えるため,①各国の特許庁や特許事務所を
経る知財情報に関する調査・研究,②企業内で
正副委員長会 9名
の知財情報の活用に関する調査・研究,及び③
第1小委員会 9名
知財業務の効率化に関する調査・研究を情報シ
第2小委員会 8名
ステム視点で行い,企業内外の情報システムの
第3小委員会 9名
あるべき姿に関する情報・提言を国内外の企
全27名
業・特許庁・特許事務所に向けて発信する。
」
2.委員会の運営
(1)情報システム委員会活動
とした。
(2)活動方針
正副委員長会 14回
新たなミッションに沿い,また,委員数も大
全体委員会 11回
幅に増加し27名となったことから,上記のとお
第1小委員会 12回
り3つの小委員会体制とした。そして,各小委
第2小委員会 14回
員会に,上記①~③のミッションを割り当てて
第3小委員会 11回
活動を進めることとした。
(2)特許庁意見交換会
(3)プロジェクト活動
グローバルドシエ関連 2回
2015年度も定期開催する小委員会に加え,対
出願ソフトユーザー連絡会 2回
外的な活動に臨機応変に対応することを意図し
(3)特許庁への意見要望提出
グローバルドシエ関連 2回
(4)弁理士会との意見交換会
特許制度運用協議委員会 1回
74
てアドホックに活動する2つのプロジェクト,
特許庁最適化計画及びグローバルドシエ,を設
置して活動を行った。2015年度は両プロジェク
トに専任の副委員長を配置した。
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3.1 正副委員長会
・ビッグデータを扱うには何が必要か
全体委員会,各小委員会,プロジェクト等の
を明らかにし,ビックデータを扱う情報システ
進め方を討議し,円滑に情報システム委員会の
ムとイノベーション創発とのつながりを,調
活動が進むように努めた。
査・研究の狙いとした。
情報システム委員会を円滑に進めるべく,午
そして,ビッグデータの定義の整理,ビッグ
前中に正副委員長会を開催し,その日の午後に
データ利用の目的と課題の整理,ビッグデータ
開催する全体委員会の開催準備や小委員会活動
活用事例の収集,ビッグデータと知財情報を利
の進め方の共有や確認を行った。
用できるツールの調査,及び上記活動内容に基
3.2 全体委員会
づく結論と今後の課題を作成した。
全体委員会では,理事会の連絡事項の伝達の
他,小委員会やプロジェクトの進捗や成果物の
ツール調査の結果,以下のことが判った。
①新たな分析・解析手法の出現により,知財業
情報共有を進め,委員相互の意見交換を図った。
務効率化の分野で利用可能なツールが整備さ
3.3 第1小委員会
れつつある。
調査・研究テーマは,昨年に引き続き「グロ
②ホワイトスペース探索等の分析などにおいて
ーバルな知財情報の効率的かつ正確・迅速なデ
も,対象を特定しているのであれば,相当な
ータ処理方法の研究」とした。
レベルでの調査が可能である。
2015年1月に開催された第2回グローバルド
③分析支援ツールも存在しており,未知の知見,
シエタスクフォース(GDTF)会合で特許庁が
新規アイディア発見において,現状のツール
開発に着手することとした優先五項目のうち,
の機能で実現可能である。しかし,利用者の
XMLによる情報提供を日本特許庁が担当する
ツール操作や分析の熟練度に左右される要素
こととなったことから,日本で利用されている
が多く,分析結果の信頼性が担保しづらい。
インターネット出願ソフトより取得できる
3.5 第3小委員会
XMLファイルの構造解析を行い,XMLファイ
調査・研究テーマは,
「情報システムを利用
ルに取り込んでほしい管理情報等の洗い出しを
した知財業務の効率化施策について」とした。
行った。更に,XMLに関して他国の特許庁に
この調査研究テーマでは,知財業務の効率化
ア ン ケ ー ト を 行 い, 特 許 庁 か ら 出 願 人 へ の
に情報システムが寄与している具体的な事例を
XMLファイルの提供状況について調査した。
調査した。情報システム委員会内で費用削減施
また,2015年度に韓国及び米国特許庁がワン
策についてアンケートを行い,委員会社の関心
ポータルドシエ(OPD)の公衆アクセス版を
の高い事例を取り上げて検討を行った。これら
リリースし,2016年度には日本特許庁も公衆ア
の課題は,大きく①管理業務・事務処理の効率
クセス版をリリースする予定であり,2016年度
化,②出願権利化処理の効率化,及び③特許費
に,日米欧中韓の五庁のOPD公衆アクセスの
用管理に分類された。
リリースが完了することから,各特許庁の公衆
各事例を調査し,導入難易度と導入効果の観
アクセス版の特徴を調査した。
点で分類した。各企業が事例を参考にしやすい
3.4 第2小委員会
ように,事例の特徴,導入している企業の規模
調査・研究テーマは,
「企業内情報システム
について~ビッグデータ解析を踏まえて~」と
した。
2015年度は,知財情報システムにおいて,
・どのようなビッグデータが知財で扱えるか
・ビッグデータの利用により知財で何ができるか
などを考察してまとめた。
3.6 特許庁最適化計画プロジェクト
日本特許庁情報システム課との意見交換会を
通じて,ユーザ利便性を向上する観点での開発
を要望することを狙いとして設置した。
例年どおり,ユーザ連絡会等において電子出
75
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願ソフトへの機能改善内容を聴取し,
「ペーパ
ーレスニュース」を全4回リリースした。
3.7 グローバルドシエプロジェクト
GDTF会合他を通じて,グローバル出願に係
発な質疑応答を行った。
対外関係に関しては今年度も積極的に意見交
換および要望提言を行った。具体的には4月に
イギリス・ロンドンで開催されたPDG会合にお
わる業務フローを大幅に改善し業務量及び費用
いてCPCとFIのコンコーダンスの改善を提案,
の削減を図れるグローバルドシエやePCTの各
また,スイス・ジュネーブのWIPOを訪問して
国移行システムの構築に関する意見や要望を発
IPCの分類調和の加速を要望した。また,アジ
信することを狙いとして設置した。
ア戦略プロジェクトに委員会から1名派遣し,
2015年5月に開催された五大特許庁・五極ユ
ーザ会議で,優先五項目の開発に着手すること
が了承された。優先五項目のうち,XMLによ
インドの特許情報整備向上について具体的事例
を基に要望を提出した。
その他,国内活動としてはJPOや各関係機関
る情報提供が日本特許庁担当となったことか
との意見交換を積極的に行った。
ら,同情報システム課とも意見交換会を行い,
3.各小委員会の活動概要
緊密に連携して具体案の検討を進めた。また,
優先五項目のうち,欧州特許庁が担当となった
アラート機能に関し,欧州特許庁から寄せられ
たアンケートにも迅速に対応し,JIPA意見を
とりまとめ日本特許庁経由で回答した。
2016年2月には第3回GDTF会合が開催さ
【第1小委員会】
(1)
「欧米共通特許分類 CPC に関する研究
と提言」
2013年1月に発効したCPC(欧米共同特許分
類)は欧米特許庁のみならず中韓特許庁でも使
用され,その重要性は高まっているため,昨年
れ,XML化を進める際に考慮してほしい項目
に引き続きCPC臨時研修を開催(関東,関西)
や優先度について,意見・要望を提出した。第
した。内容はCPCの各国特許文献への付与状況,
3 回GDTF会 合 で の 配 布 資 料 等 に つ い て は
商用DB毎の検索情報入手の注意点,C-Setsの
http://www.fiveipoffices.org/industry-
有効活用法などについてである。また,CPCへ
consultation/GDTF2016.htmlを参照されたい。
の対応について日本国特許庁審査部等と意見交
16.情報検索委員会
1.委員会の構成
2015年度の委員会は委員長1名,委員長代理
換を行った。臨時研修の内容および研究成果は
CDにまとめて発行予定。
(2)
「インド知財情報の調査に関する研究」
これまでも,知財管理誌やジェトロ,特許庁,
1名,副委員長7名,委員45名の計54名(4/1
特許事務所,特許調査会社などインドの知的財
現在)で組織し,正副委員長会と3小委員会を
産事情についての考察が散見されるが,いざイ
設けて活動した。小委員会は第1小委員会24名,
ンドへ事業進出するとなると,その特異性のあ
第2小委員会14名,第3小委員会14名で,計7
まり,なお必要な情報が不足していることに気
WGの小テーマに分かれて構成した。
付く。知的財産訴訟数の増加や,特許出願件数
2.委員会の運営
の増加を見ても,各社でインド知財戦略を立案
正副委員長会(月1回開催)で委員会の方針
するにあたり,状況判断の材料としてインド知
決定,重要事項の審議を行い,各小委員長を通
財情報の調査と解析を行う必要性は高いと考え
じて委員会の活動方針,その他の情報共有を図
られる。そこで,インドに事業進出することを
った。
想定し,幾つかの事例を挙げてどのような観点
本年度は初めて中四九地区協議会にて本委員
で特許情報の調査・解析を行い知財戦略に結び
会の研究紹介を行い,好評を博した。成果報告
付けるかを実践的に提示することを試みた。さ
会は1月に開催,1年間の研究成果について活
らに,インド特有の留意点についても調査した。
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成果は知財管理誌に投稿予定。
(3)
「新しい調査手法の探求」
(1)
「特許譲渡情報の入手と活用方法」
近年企業間の競争が激しくなる中,M&A 等
特許・技術文献の検索は依然としてキーワー
により積極的に社外リソースを活用する企業も
ドや分類を使用しており,今後飛躍的な効率化
多くなっており,特許の譲渡情報は他社動向や
や高精度化は期待しづらい。一方,情報検索技
業界動向をタイムリーに把握するうえで非常に
術の進歩は凄まじく,深層学習機能の活用や画
有益な情報源となっている。こうした状況を踏
像解析による検索など,新たな手法のものが出
まえ,主要国(米国,中国,日本,欧州)を対
てきている。そこで,これら最新の情報検索ツ
象に,譲渡情報を入手し分析する手法の研究を
ールを国内外問わず選定し可能な限り試行し
進めた。具体的には,譲渡コードを検索キーと
た。その際,各ツールのアルゴリズムには深く
して譲渡分析に必要な情報(譲渡人,譲受人,
介入せず,あくまでもサーチャー視点でその使
譲渡日,譲渡種別)へと整形する一連の流れを
い勝手や開発ツールベンダへの要望抽出に重点
整理した。また譲渡に関する統計や具体的な譲
を置いた。成果はCDにまとめて発行し,東西
渡分析事例により,譲渡分析の可能性を示した。
部会にて発表予定。
本成果は臨時研修(東京・大阪)の開催やCD
【第2小委員会】
(1)
「特許,意匠及び商標の公開情報に基づ
いた知財戦略の分析」
近年注目されている特許権,意匠権,商標権
発行により会員企業に還元する。
(2)
「企業の動向調査の効率化及び明確な表
現に関する研究」
企業の動向調査の効率化を推進するとともに,
を相互に組み合わせた戦略(知財権ミックス)
その情報を経営層や対外部門に対し迅速に分か
について,データベースから得られる公開情報
りやすく開示することを目的とし活動した。
に基づいて分析することを目的としている。今
まず,各社の経営層や開発部門が必要とする
回,特許と意匠の発明者・創作者の重複の分析
「知財戦略の情報」とはどのようなものかを整
と,意匠と商標を組み合わせたデザイン保護の
理し,その知財戦略に最適な情報の収集に資す
分析を行った。また,情報検索委員会では意匠
るため,特許マップ等の具体例を用いカタログ
と商標の検索がこれまであまり研究されていな
形式でマニュアルを作成した。 それを,より
かったため,国内外の意匠と商標の検索データ
分かりやすくするための具体的な「分析事例」
ベースの確認も行った。成果は知財管理誌に投
を競合他社の動向把握,M&A企業・共同研究
稿予定。
先の選定,用途探索,発明創出の場面を想定し
(2)
「知財審判/訴訟情報の検索手法の研究
と状況分析」
作成した。また,出願人の権利化意欲の指標や,
重要特許の抽出方法等として役立てるためグロ
訴訟・審判情報の公開状況を整理するととも
ーバル特許費用の集計ツールを作成した。得ら
に,各国の訴訟・審判の傾向を分析し,得られ
れた成果はCDにまとめて発行したうえ,東西
た知見を会員各社が知財戦略へ活用することを
部会で発表予定。
目的としている。今回,訴訟・審判の判断基準
が 変 わ っ た 米 国 を 対 象 に, 判 決 ・ 審 決 ・
ITC3 3 7 条 調 査 に 関 し, 技 術 分 野 別 の 傾 向,
17.ライセンス第1委員会
1.委員会の構成
NPE保有特許権の無効化実態を特定するととも
34名で構成し,委員長1名,委員長代理1名
に,企業の米国における特許権が内包している
(小委員長補佐兼任)
,副委員長5名,委員27名
リスクを統計的に分析した。成果は知財管理誌
で,3つの小委員会を編成して,調査研究活動
に投稿予定。
を行った。
【第3小委員会】
2.委員会の運営
77
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ライセンス第1・第2合同委員会を4回(4
ーズ等によって全く異なる様相を見せる共同研
月,8月,10月,3月)実施し,各小委員会の
究開発の契約実務においては,自社の事業計画
活動は原則として月に1回の開催を実施した。
上の位置づけを把握し,相手方当事者の立場や
正副委員長会は,計6回(4月,6月,7月,
考え方を理解しつつ,自社の要望とすり合わせ,
11月,12月,3月)
,そのうち6月は,今年度
落とし所を探ることが重要となる。このような
初の試みとしてライセンス第1・第2とフェア
共同研究開発契約に携わる知財担当者または研
トレード委員会の合同正副委員長合宿を実施。
究開発現場の担当者の契約実務の参考とするこ
3.ライセンス第1・第2合同委員会
とを目指して,昨年度に引き続き,企業間・産
4月の合同委員会は,全体でライセンス委員
学での共同研究開発契約における論点を中心に
会の活動方針や年間計画を共有し,各自が簡単
調査研究を行い,共同研究開発契約実務マニュ
な自己紹介を実施。その後,小委員会単位に分
アルの作成に取り組んだ。
かれ,研究テーマや年間予定等のディスカッシ
この実務マニュアルは,
「総論」
「各論」の2
ョンをし,最後に全体懇親会で交流を深めて委
部構成をとっており,企業の知財・法務部門の
員会活動のスタートを飾った。
新任担当者や研究・開発部門の現場担当者とい
10月の合同委員会では,2013年度と同様に第
った契約実務初心者をターゲットとしている。
1・第2委員会の各小委員会で取り組んでいる
具体的な活動としては,昨年度ドラフトの分
テーマについて,他の小委員会メンバーを交え
担執筆を行った「各論」については,各条項に
たグループディスカッション(6グループ)を
関する解説の内容や条項例,チェックすべきポ
行った。各グループの議長として,小委員長・
イント等について,合同合宿にて収集した他小
小委員長補佐を配置し,小委員会の議論概要や
委員会委員の意見も参考にして深堀りを行い,
課題を共有化し,それについて他小委員会の委
記載の充実を図った。
「総論」については,知
員が議論を行った。委員においては,他小委員
財担当者の教育だけでなく共同研究開発を実施
会の活動状況を知る機会となり,小委員会活動
する開発部門担当者の啓発目的での利用も想定
においては,他小委員会委員の意見を聞く機会
して,共同研究開発の特徴を整理すると共に,
を得る事ができ大変有意義であった。また,委
共同研究開発の実現に至る手順や,実施にあた
員間の交流が深められたことも成果の1つとい
って検討すべき観点等について議論を行い,と
える。
(7月,3月の合同委員会については,
りまとめた。
第2委員会の報告に記載)
また,この他,国内のパブコメでは,
「知財
戦略計画2015」
(知財紛争処理システム)と独
禁法ガイドラインへの意見提出や特許庁審査官
向けライセンシング研修(3月)に講師6名を
派遣するなど,第1・第2委員会の枠を越え,
また一部はフェアトレード委員会等と連携して
対応した。
4.小委員会活動
1)第1小委員会(石打小委員長,石川小委
員長補佐)
これら活動の成果は,資料集「共同研究開発
契約実務マニュアル」として,2016年度に発行
する予定である。
2)第2小委員会(川下小委員長,片野小委
員長補佐)
テーマ:
「ライセンスに関わる海外判例の調
査研究(中長期テーマ3年目)
」
当小委員会は,これまで3年にわたり,ライ
センス契約に関する米国判例の検討,資料集へ
のまとめを行ってきた。
「ライセンス契約に関する判例集(国内)
」
テーマ:①「共同研究開発契約に関する調査研
(JIPA資料集424号/2013年発行)の米国版とす
究」②「国内外の産官学連携に関する調査研究」
る。また,
「ライセンス契約実務マニュアル―
業界や当事者の組み合わせ,研究開発のフェ
契約条文例付き―」
(JIPA資料集370号/2008年
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発行)に示された契約条項に対応する判例を抽
出することとした。
まずSWのテーマについては,ソフトウェア
ライセンス関連での委員の関心が高かった「ク
1年目は,主に情報収集とフォーマットの確
ラウド等の新しいビジネスモデルのライセン
定を行い,2年目にフォーマットに沿って判例
ス」
,
「非係争条項」
,
「源泉税」
,
「SWライセン
をまとめる作業を行った。フォーマットはA4
スにおけるライセンシーの保護」のテーマにつ
の2ページで1つの判例を紹介することとし
いて議論を行い,最終的に「SWライセンスに
た。3年目は,主に2年目に作成したフォーマ
おけるライセンシーの保護」のためのエスクロ
ットの見直しと,検討した判例を資料集に掲載
ーの活用について検討を行った。実際に日本に
するか否かの決定をし,最終的に,資料集とし
おいてエスクローエージェントとして活動をさ
て完成を目指す。
れている一般財団法人ソフトウェア情報センタ
資料集の構成は,
「リーガルリサーチの基礎」
,
ー(SOFTIC)から情報収集を行った上で,現
「米国判例の事件番号の読み方」につづき,フ
在の著作権法,破産法の状況確認を行い,それ
ォーマットにまとめた判例を掲載している。
によるエスクローの限界と,どのような場合に
フォーマットの項目は,
「契約項目」
,
「事件
名称」
,
「裁判所」
,
「対象」
,
「事件番号」
,
「関連
法令」
,
「ポイント」
,
「事実」
,
「争点」
,
「審理内
エスクローの利用可能性があるかについての考
察を行った。
SEPのテーマについては,日・米・欧・中・
容」
,
「判決」及び「実務上の注意点」である。
韓に関する判例・当局判断を確認し,国/地域
判例の理解を助けるため,事案の概要を図で表
毎の重要論点(
「差止の可否(Willing licensee,
すように工夫している。さらに,実務者の視点
誠実交渉)
」
,
「FRAND(料率,ロイヤルティ
から,各判例に基づくライセンス契約上の注意
ベース,スタッキング)
」
,
「Hold up」等)につ
点を掲載している。
いて確認を行った上で,近年注目を集めている
これら活動の成果として,資料集を2016年度
に発行する予定である。
3)第3小委員会(中川小委員長,清水小委
員長補佐)
テーマ:
「①ソフトウェアのライセンスに関
する調査研究,②標準必須特許のライセンスに
関する調査研究」
当小委員会では,昨年から引き続き,特許以
外のライセンスとしてソフトウェア(以下,
「差止の可否(Willing licensee,誠実交渉)
」の
論点について深堀を行い,国/地域毎のSEPに
よる差止の可否の判断の違いについて考察を行
った。
これら活動の成果として,2つの論説を知財
管理に2016年度に掲載する予定である。
18.ライセンス第2委員会
1.委員会の構成
SW)のライセンスに関する調査研究と,会員
委員長1名,副委員長6名(委員長代理1名
企業からの根強い要望がある標準必須特許(以
含む)
,委員25名の32名(年度途中での退任に
下,SEP)のライセンスに関する調査研究とい
より,4月時点より1名減)の構成で,3つの
う2つのテーマについて,調査研究を行った。
小委員会を編成して調査研究活動を行った。
具体的な活動としては,2つのテーマについ
2.委員会の運営
て調査を行うに当たり,まずSWとSEPを同一
ライセンス第1・第2合同委員会を4回(4
テーマとして扱えないか検討を行ったが,2つ
月,7月,10月,3月)実施し,各小委員会は,
のテーマの親和性が低かったこと,委員の興味
原則月1回の活動を行った。正副委員長会は,
が2分していこともあり,SWとSEPのテーマ
ライセンス第1・第2の合同で,計6回(4月,
毎にチームを編成し,それぞれ調査を行うこと
6月,7月,11月,12月,3月)
,また今年度
とした。
初の試みとしてライセンス第1・第2とフェア
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トレード委員会の合同正副委員長会を,それぞ
イセンス契約上重要と位置づけられる契約条件
れ実施した。
について,監査の実施のために,契約書中にど
3.ライセンス第1・第2合同委員会
のような監査条項を規定すればよいのか,また
7月の合同委員会では,TMI総合法律事務所
どのような監査手法や監査チームを編成すれば
の岩品信明弁護士・税理士をお招きし,
「財務・
効果的にライセンシーの契約履行状況を把握す
税務から見た知的財産権の積極活用~海外企業
ることができるのかを考察した。さらに日本企
の事例から学ぶ~」と題してご講演をいただい
業が監査を検討するにあたり,戦略的な監査を
た。
行うにはどのような点に留意すればよいのかを
また,3月の合同委員会では,各小委員会か
ら年間の調査研究報告を行い,年間の活動の総
括を行った(4月,10月の合同委員会について
は,第1委員会の報告に記載)
。
4.小委員会活動
1)第1小委員会(上林小委員長,近藤小委
員長補佐)
併せて考察した。これら活動の成果として,論
説を2016年度に発行する予定である。
2)第2小委員会(野崎小委員長,石田小委
員長補佐)
テーマ:
「技術契約交渉に関する調査研究」
昨年度のライセンス委員会でも技術契約交渉
に関する調査研究を行い,その成果を知財管理
テーマ:
「中国企業とのライセンス契約管理
誌(65巻(2015年)
/11号)にて紹介した。昨年
に関する諸問題(日本企業における戦略的な監
度の調査研究は,独自に作成した模擬交渉事例
査の活用を中心に)
」
を用いて,交渉学の有識者が提唱している交渉
中国企業に技術ライセンスを与えている日本
の事前準備手法を企業の知財渉外担当者が実践
企業にとって,ライセンシーが正しく契約を履
した場合の所感を纏めた,いうなれば,事前準
行しているか,特に正しく実施状況が報告され,
備手法の実践例を紹介したものであった。そこ
実施料が支払われるか,は重大な関心事である。
で当小委員会では,実務者視点で新たな交渉準
一般には,
「ロイヤルティ監査」の実施により
備手法を提案すべく,各業界の知財渉外担当者
実施状況を確認する方法があるが,このロイヤ
が実践している交渉準備手法について調査研究
ルティ監査は,中国企業が相手の場合にも有効
を行った。
な方法であり,またこれにより実施料支払い以
まず,準備から契約締結までの交渉プロセス
外の契約管理上の課題(販売領域遵守,品質確
を可視化し,各ステップでの困り事や関心事を
保,技術不正使用防止等)についての遵守状況
各委員間で共有。その中で,特に困り事や関心
も確認することができる。つまり,ロイヤルテ
事の多かったステップに関連する交渉準備手法
ィ監査を通じてライセンシーの契約履行状況を
のあり方・手法を各委員で討議した。
把握することにより,不正等があればライセン
さらに,交渉学にて提唱されている事前準備
シーに対して是正要求を行うことも可能とな
手法と討議結果とをマージさせることでノウハ
る。この点に着目し,当小委員会ではライセン
ウを体系化させ,ナレッジへと落とし込むこと
サーである日本企業が対中国企業における戦略
により,知財渉外の実務者視点での新たな事前
的な監査の活用についての考察を行うととも
準備手法の提案へとつなげた。
に,ライセンス契約管理に関するその他の諸問
題についても検討を行った。
なお困り事や関心事の多かったステップは
「交渉の目標設定」であり,日々複雑化するビ
ロイヤルティ監査については対中国企業の監
ジネス環境の下,
「創造的な交渉」をより求め
査業務に精通する監査法人から,また,その他
られる知財渉外の実務者視点ならではのテーマ
の諸問題については法律事務所から情報収集を
アップが出来たと考えている。
行った上で,ライセンサーである日本企業がラ
80
これらの活動の成果として,2016年度の知財
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管理誌に論説を投稿する予定である。
3)第3小委員会(竹森小委員長,矢部小委
員長補佐)
テーマ:
「英文ライセンス契約に関する調査
研究」
響のある改正点を調査研究し,論説「欧州委員
会による新「技術移転契約に関する一括適用免
除規則」について」として,知財管理誌2014年
12月号に論説を掲載した。これに米国の調査結
果も追加し,
「日米欧におけるライセンス契約
近年の企業活動のグローバル化に伴い,各業
の改良技術条項および不争条項の規制につい
態においても英文契約を扱うことが増え,知財
て」として論説に纏め,知財管理誌に掲載する
部員も英文契約への対応が必要となっており,
ため,2015年12月に投稿した。
その重要性は従前に増して高まってきている。
5.その他の活動(全て第1委員会と合同で実
しかし,英文契約は,言語や慣習,法体系の違
施)
いから,扱いが難しい。そこで,会員企業のニ
「知的財産権の濫用に関する独占禁止法執行
ーズを考慮に入れながら知財部員の英文契約対
ガイドライン」に関しするパブリックコメント
応力を育成するため,海外企業とのライセンス
募集について,フェアトレード委員会と連携し
契約に焦点を当てた実務に役立つ資料を作成す
て,中国国家発展改革委員会および国家工商行
べく,2年テーマの2年目として調査研究を行
政管理総局に対して意見発信した。
った。
既発行の資料,書籍,委員の経験を参考に,
資料の方向性や構成を検討し,契約を専門とし
ない知財部員から,ライセンス契約を専門とす
る中堅部員までを対象とする資料集の作成・編
集を実施した。基礎から説明することを基本と
また,中国の反不正当競争法の改正草案につ
いても,フェアトレード委員会,アジア戦略プ
ロジェクトと連携して,意見発信を行った。
19.意匠委員会
1.委員会の構成
しつつ,コラム欄を設け,近年注目されている
本年度の意匠委員会は,正副委員長
(3名)を
トピックなども盛り込む。構成としては,
「契
含め22名
(※期中1名退任で21名)
で活動した。
約書ドラフトの留意点」と「モデル契約書」の
活動にあたっては,2つの小委員会を設け,
2部構成とし,
「契約書ドラフトの留意点」には,
第1小委員会11名,第2小委員会11名(※10名)
英米法体系,米国法・米国契約法の基礎知識,
で構成した。
独占禁止法等の留意が必要な法制の概要,英文
2.委員会の運営
契約の表現と注意事項等についての解説を,
「モ
定例会議は全11回開催し,各小委員会での研
デル契約書」は,特許ライセンス契約と技術ラ
究活動,全体会議を実施した。全体会では,当
イセンス契約の2種類とし,条項ごとに,要旨,
日の各小委員会活動の内容及び,政策プロジェ
チェックリスト,留意事項,条文例等について
クト(以下PJ)や外部活動報告等の各種情報の
解説を行う。今年度は,昨年作成した「モデル
共有化を図り,適宜意見交換を行った。 契約書」について,
一般条項も加えて検討し,
「契
国内外の意匠制度に関連する意見発信対応
約書ドラフトの留意点」についても調査研究を
は,全委員に広く意見を求め,多業種意見の反
行った。全体を再度見直し,2016年度下期での
映に努めた。また,円滑な組織運営のための,
資料集の発行を目指す。
活動進捗確認及び見直しを目的として4月,9
また,資料集において解説を行う予定のEU
の競争法に関して,欧州委員会が「技術移転契
月,1月に正副委員長会議を実施した。
3.活動概要
約に関する一括適用免除規則」およびそのガイ
(1)小委員会活動
ドラインについて2014年3月に改正を行ったこ
①第1小委員会
とから,当小委員会では,ライセンス契約に影
【調査・研究テーマ1】
(4月~12月)
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意匠制度の手続き面の国際調和の在り方に関
する調査・研究
【活動内容】
ようとする部分以外の部分の権利の認定におけ
る影響と,損害賠償額算定,部分意匠の補正の
是非について。
意匠の国際出願が2015年4月から利用できる
欧州事例(4)の論点は,
図面の記載における,
ようになったが,各国意匠制度の種々の相違に
模様,色彩,トーンの,権利への影響について。
より,グローバルに権利化するにあたっては,
配慮が必要な点が多々ある。そこで,実務者が
問題と感じている点を洗い出し,基準,運用等
の裏付け調査を行った。国際出願については,
②第2小委員会
【調査研究テーマ】
意匠から見た知財MIX
【活動内容】
加盟国の増加に比例し,活用の機会が増すこと
昨今,いわゆる“知財(権)MIX”が注目さ
を想定し,利便性向上に繋がる,問題解決策を
れている。そこで,
「事業」或は「ブランド」
模索した。
保護という広い視点で製品保護を考え,技術,
日本及び海外出願手続き上の問題について
外観,名称などを複合的に権利化するならば,
は,規定・運用等の裏付け,登録事例の調査を
意匠権をどのように活用すれば効果的なのか研
行い,課題を明確にし,さらに,国際出願に関
究することにした。 連する事項について[①改善提案 ②問題点/
まずは意匠権の対象として製品を観察し,そ
課題 ③対応案のデメリット・メリット]に分
こから他の権利への展開を検討することとし
けて,論点を整理した。これを基に,JPO意匠
て,類型分けを行い,チーム検討を実施した。
課と意見交換を行い,各国の対応状況を確認し
類型は(a. ビジネス別:BtoB/BtoC・部品/
た上で,推進すべき要望事項ないしは,継続し
最終製品, b. 意匠×特許, c. 意匠×商標)とした。
て検討すべき事項及び懸案事項を精査した。
研究成果は,今後の,対外折衝における,発
判例研究や有識者へのヒアリング(下記)等
で情報収集を行った。
信意見のベースとすべく,懸案事項などをリス
・東京理科大 鈴木公明先生(10月2日)
ト形式で整理し,次年度以降に引き継ぐ。
・秀和特許事務所 遠山勉先生(10月23日)
【調査・研究テーマ2】
(1月~3月)
国内及び海外意匠権侵害訴訟事例研究
【活動内容】
下記の,最近の国内外意匠判例を取り上げ,
判決内容の妥当性,判決に見る,権利化の際の
考慮事項などについて議論した。
(部分意匠)
1.大阪地裁 平成23
(ワ)
14336
2.東京地裁 平成26
(ワ)
12985
・桜坂法律事務所 古城春実先生(1月29日)
また,知財マネジメント委員会及び情報検索
委員会とも意見交換会を実施した(10月2日)
。
研究結果は,論説として,以下の項目にまと
め,知財管理誌に投稿する(2016年4月)
。
1.ビジネス観点から見たMIX(ビジネス類
型の分類,ビジネス形態ごとのMIX,自社
の訴求要素への対応)
2.意匠からみた特許とのMIX
(事例研究1.
3.NORDOCK INC. v. SYSTEMS INC.,
インサート器具事件/2.マンホール蓋用
DBA POWERAMP, Fed Circ. Decided:
受枠事件/3.取鍋事件,MIXによる損害
Sept. 29, 2015
賠償額の効果)
(欧州共同体意匠)
4.PMS International Group Plc v
Magmatic Limited JUDGMENT GIVEN
ON:9 March 2016
部分意匠事例(1~3)の論点は,登録を受け
82
3.意匠からみた商標とのMIX(商標タイプ
ごとのMIX,社内体制,制度の違いの活用)
(2)その他のJIPA活動への参画
・JIPA知財シンポジウム(実行委員会委員
/ポスター説明員)
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・アジア戦略プロジェクト
委員会5回,小委員会各11回(第2小委員会は
・経済連携プロジェクト
12回)を開催。
(3)意見書提出・意見交換
2.委員会の運営
・アジア戦略プロジェクトと連携して,海外
委員会開催日の午前中に正副委員長会議(合
意匠制度に関するパブコメ等に対応した
計13名構成)を開催し,委員会運営についての
(中国,台湾,マレーシア他)
。
・画像デザイン保護拡充に関し,JPOとの意
見交換を実施(5,6,7,8,9月)
。意匠
審査基準ワーキンググループの案について,
協議・確認を行うと共に,各小委員会の活動状
況の報告を受け,また,その他臨時案件につい
て随時協議を実施。
小委員会活動は,8月を除き月1回合計11回
ソフトウェア委員会,著作権委員会にも出
開催し(第2小委員会は8月に臨時小委員会を
席を呼びかけ,議論を行った。
実施)
,小委員会毎に本年度の研究テーマ及び
・産業構造審議会 知的財産分科会 意匠制度
日本知的財産協会内外から参画,協力要請のあ
小委員会 報告書「画像デザインの保護の
った事項について調査・研究活動および意見提
在り方について」
(案)に対する意見提出。
出を実施。委員会開催日に計5回の全体委員会
・日本弁理士会意匠委員会との意見交換を実
を開催し,各小委員会の活動成果の共有化を図
施(12月)
。両会の今年度研究テーマに関
るとともに,他団体・機関への意見具申等につ
連し,部分意匠の補正等について議論を行
いて情報共有または商標委員会としての意見内
った。
容の確認・承認を実施。
・
「ハーグ制度プロモーションビデオコンフ
ァランス」開催(9月)
。意匠の国際出願(ハ
ーグ)制度に関する質問に対し,テレビ会議
システムを利用して,WIPOから直接,回答
してもらった。質問は事前にJIPA会員企業
から募集したもの。当日の内容は,後日JPO
等から入手した最新情報を補足し,
「Q&A」
の形で,JIPAホームページに掲載する。
4.外部への委員派遣
①産業構造審議会意匠制度小委員会 意匠審
査基準ワーキンググループ
②特許庁委託事業
・三菱総研/意匠出願動向調査委員会(2
名)
・AIPPI/調査研究ワーキング
③特許庁審判実務者研究会
20.商標委員会
1.委員会の構成
本年度の委員会活動は委員長1名,小委員長
3名,副委員長9名,委員40名の計53名(2016
年3月現在)で構成。活動にあたっては,3つ
の小委員会を設け,正副委員長会議11回,全体
3.研究テーマ活動および対外活動
3.1 第1小委員会
①年間テーマ1:国内商標制度に関する調査
研究
(概要)商標の普通名称化の防止に向けた実務
上の留意点
(成果・進捗)本年4月に初稿を会誌広報委員
会に提出予定。
②年間テーマ2:国内商標制度についての関
係諸機関への意見発信
・知的財産推進計画2016への意見提出
・個人の大量出願について特許庁商標課との意
見交換会(9/17)
・商品・サービス国際分類改正に関する意見交
換会等:ニース国際分類第10-2016版,第112017版,IDリストプロジェクト日本提案,分
類資料の統合について随時対応
・プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協
議会商標権関係WG(テレコムサービス協議
会)に委員派遣
3.2 第2小委員会
①年間テーマ1:ブランド・商標観点を踏ま
えたネーミング開発調整方法の研究
83
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(概要)
「事業部とのネーミングの調整に関する
ために取り得る手段(譲渡,コンセント,異議・
問題について,商標観点・ブランドマーケテ
無効審判,不使用取消請求,等)について各国
ィング観点の双方を踏まえたネーミング調整
代理人回答に基づき,商標実務者向けに資料と
の方法論を研究」
して纏め上げ,3月に初稿提出済。
(成果・進捗)本年3月末に中間報告を取り纏
(2)アルファベット2文字以下および数字か
め,委員会内に共有,知財管理誌の初稿は,
ら構成される標章の商標としての登録性・
4Q 2016/FYに提出予定。
権利範囲についての各国比較の研究
②年間テーマ2:非伝統的商標のブランド活
用手法の研究
(概要)
「新しく導入された非伝統的商標の効果
的なブランド活用戦略・活用手法について,
制度が先行する欧州・米国での活用例を参考
に研究」
(成果・進捗)本年3月末に中間報告を取り纏
め,委員会内に共有,知財管理誌の初稿は,
4Q 2016/FYに提出予定。
・網羅的な外国事例調査について,特許庁に
よる調査を要望するため,10月に特許庁と
意見交換を実施。
・マネジメント第2委員会第2小委員会と11
月に意見交換を実施
③商標トピックス
(概要)海外商標制度に関する最新情報の収集
とその短信
(成果・進捗)年4回(6月・9月・12月・3月)
研究対象国:東アジア,ASEAN,南アジア,
中東,アフリカ,欧州,北米,南米,大洋州か
ら約15ヵ国
(成果・進捗)
各社における実務上の疑問点・問題点を抽出
し,各国専門家見解を得る事項を質問票として
纏めると共に対象国の絞込みを実施。2016年度
内の初稿を目指す。
②海外商標制度・運用に係る関係機関への意
見発信(意見交換,パブコメ対応など)
・経済連携プロジェクトTPPの日本法制化に
関する商標意見提出
・WIPOマドプロ作業部会(11/2~6 ジュネ
ーブ)委員派遣し「従属性の凍結」
,
「基礎
出願との商標同一性緩和の必要性」につい
て意見表明した。JIPA HP掲載済。12月度
役員会にて報告済。知財管理誌への初稿入
稿済。
発行済。掲載例:インド商標実務に関するマ
・アジア戦略プロジェクト 東アジアWG,
ニュアル草案リリース(2015.6掲載)
,EU商
東南アジアWGへ委員参加,中国商標制度
標制度の改正草案発表,カナダ商標出願にお
運用に対する改善要望,フィリピン・マレ
けるニース分類の採用(2015.9掲載)
,台湾
ーシア訪問(11/30~12/4)
,
インド訪問(2/8
の景品における使用も商標使用と認められた
~13)
,中国反不当競争法パブコメ纏め
例(2015.12掲載)
,EU欧州共同体商標規則
・たばこプレーンパッケージング法案への意
等の最終改正案可決(2016.3掲載)など
3.3 第3小委員会
①研究テーマ
(1)自社商標を使用可能にするための障害克
服方法の研究
見発信 シンガポール保健局宛(3/18)
3.4 委員会共通
①産業構造審議会商標制度小委員会商標審査
基準WGに委員派遣
②商標5庁会合(TM5:USPTO開催12/4
研究対象国:中国,インド,ロシア,ブラジ
~5)の事前・事後ミーティングへの参加
ル,インドネシア,タイ,ベトナム,マレーシ
(米国への渡航自粛のため本会議は不参
ア,フィリピン,シンガポール
(成果・進捗)
自社商標を新興国で円滑に使用可能していく
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加)
。悪意の出願対策やタクソノミーなど
各庁リードプロジェクトについて事前ミー
ティングを通じて意見発信や質問等を行っ
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た。
③審査応用能力研修(INPIT)
,審査官コー
ス後期研修(INPIT)に委員派遣(それぞ
れ1名,2名)
④審判実務者検討会(特許庁)に委員派遣(3
名)
(1)第1小委員会
①営業秘密保護法制に関する調査研究
平成27年7月に成立した「不正競争防止法の
一部を改正する法律」の内容を研究し,その結
果の一部をQ&A形式で解説し,知財管理誌に
投稿した(2015年9月号)
。主に,実務上関心
⑤特許庁委託研究「マドプロに関する各国審
を集めている改正事項に重点を置き,生産方法
査運用実態調査」
(AIPPI)
,
「商標の審査
等の営業秘密の不正使用に対する推定規定の導
品質の諸外国対比,管理体制の諸外国対比」
入や営業秘密の海外における不正取得行為の罰
(AIPPI)
,
「平成27年度商標出願動向調査
-マクロ調査-」
(トムソン・ロイター)
に委員派遣
⑥日本弁理士会商標委員会との意見交換会
(10/8)
⑦JETRO欧州の商標制度に関する意見交換
会(11/5)
⑧日本知的財産仲裁センター主催セミナー
(8/24)
,関東化学第一部会講演(10/2)へ
の講師派遣
21.フェアトレード委員会
1.委員会構成
本年度のフェアトレード委員会は,委員長1
名,委員長代理2名,副委員長4名,委員16名
則化等について仮想事例を交えて解説した。
また,
「営業秘密漏洩時の初動マニュアル」
及び「不正競争防止法2条1項8号の重過失認
定」について検討を開始した。
②秘密情報の保護ハンドブック(案)に検討
し,適宜コメントを提出した。
③従業員・退職者等を通じた営業秘密漏えい
対策に関する研究,新興国へ進出する場合にお
ける営業秘密漏洩対策の検討
昨年度実施した多国籍企業の営業秘密・秘密
情報管理に造詣のある弁護士との意見交換を基
に,アジア各国の法制度及び多国籍企業におけ
る秘密管理等の実務の両面から調査・研究を行
い,その成果を知財管理誌へ投稿した(知財管
理誌2015年10月号)
。
の計23名。営業秘密に関する研究を行う第1小
アジア各国における営業秘密管理等の実態を
委員会(13名)
,知的財産権の利用と独占禁止
現地調査すべく,現地の情報収集,現地訪問先
法に関する研究を行う第2小委員会(7名)と
(現地企業,政府機関,仲裁機関,法律事務所等)
いう体制で活動を行った。
へのコンタクト,調査内容および質問内容の検
2.委員会の運営
討を行った。
定 例 会 議 は 1 2 回 開 催 し, 通 常 は 理 事 会 や
JIPAの動き等の共有,不競法や独禁法に関連
した判例研究,及び各小委員会報告を全体で行
(2)第2小委員会
①知的財産権の利用と独禁法問題に関する実
務的検討手法の調査研究
い,その後各小委員会に分かれてそれぞれの研
知的財産権の活用において競争法への抵触が
究テーマについて活動を行った。委員会の運営
懸念される際の対応について,これまで独禁法
やテーマの検討等必要に応じて正副委員長会議
に造詣の深い弁護士との意見交換(ケーススタ
を開催した。また,各小委員会においては研究
ディによる討論会)をもとに,実務に則した対
テーマの進捗に応じて適宜臨時小委員会を開催
応のフレームワークを研究してきた内容を発展
した。本年度はライセンス委員会と合同で正副
させ,仮想事例によるフレームワークの実務的
委員長会議を開催し,それぞれの委員会のテー
整理,追加論点のブラッシュアップに取り組み,
マや委員会の運営について意見交換を行った。
成果の取りまとめを行った。特に,知財権の活
3.活動概要
用と独禁法の抵触の判断基準について,仮想事
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例の検討・留意点の考察を通じ,
「知財ガイド
害現象がインターネット上において生ずる
ライン」の内容のみでは判断が難しいところを,
か
「実質的競争阻害性」
「公正競争阻害性」といっ
・インターネットが国境をまたぐため,その
た実質的な要件に踏み込んで企業実務家が検討
管理は国家なのか,
プロバイダーなのか(1)
を行えるよう,実務目線からの切り口・検討手
の論点と被るか根本的な問題であるとの認
順等を示し,論説:
「知財権の活用と独禁法の
識を得た。
抵触が懸念される場面での実務的検討手法」に
(4)意見書提出
まとめ,知財管理誌に投稿した(2016年2月号
及び3月号掲載)
。
また,2016年1月に公取委より公表された改
正知財ガイドラインについてJIPA意見書との
対比検討等改正内容の分析・評価を行った。
(3)インターネットにおける知財問題の研究
このテーマは専任の担当を決めずに,興味あ
るメンバーが自主的に集まって検討を行った。
主に下記の論点について検討した。
・インターネット上での知的財産権侵害があ
った場合の裁判管轄の問題
・中国での事例から,いかなる知的財産権侵
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・経済産業省 秘密情報の保護ハンドブック
に対する意見書 2016年1月
・中国 国務院法制弁公室 中国反不正当競
争法改正送信稿 2016年3月
・公正取引委員会「知的財産の利用に関する
独占禁止法上の指針」
(FRAND関 係 )
2015年8月
・中国 国家改革発展委員会「知的財産権濫
用に関する独占禁止指南」2016年1月
・中国 国家工商行政管理総局「知的財産権
の濫用に関する独占禁止法執行ガイドライ
ン(第7稿)
」2016年2月