調査結果 - 相模原市立環境情報センター

2.2 調査結果
2.2.1 相模原市の昆虫相(文献調査)
相模原市の昆虫相についてのまとまった既存資料として、以下の文献が挙げられる。な
お、巻末の資料4にはこれらの文献を整理し、陸上昆虫類既存文献記録種一覧として示す。
文献1:相模原市の動物生息状況等調査報告書(相模原市教育委員会,1986)
文献2:相模原の動物(相模原市教育委員会,1988)
文献3:相模原の昆虫(相模原市教育委員会,1991)
文献4:神奈川県昆虫調査報告書(神奈川県教育委員会,1981)
文献5:第2回自然環境保全基礎調査
神奈川県動植物分布図(環境庁,1981)
文献6:神奈川県地域環境評価書−県央地域−(神奈川県環境部,1992)
これらの文献によると、相模原市では15目186科1093種の昆虫類が確認されている。
各目の分布生態等から勘案して相模原市の昆虫相を見た場合、トンボ目、カマキリ目、
ナナフシ目、バッタ目、チョウ類については概ね全体の種類は把握されていると考えられ
る。その他のカメムシ目、アミメカゲロウ目、コウチュウ目、ハチ目、ハエ目、チョウ目
のチョウ類以外については日本でのそれらの目の解明が遅れているせいもあり、まだまだ
相模原市全体の種類の把握には至っていないと考えられる。
以上を踏まえて、主な目別の相模原市の昆虫相の特徴について述べる。
トンボ目は9科44種が確認されており、概ね相模原市のトンボ相は把握できていると考
えられる。それらの中で注目すべき種としてはキイトトンボ(止水)、アオモンイトトン
ボ(止水)、オオイトトンボ(止水)、モノサシトンボ(止水)、アオイトトンボ(止
水)、カワトンボ(流水)、ヤマサナエ(流水)、オナガサナエ(流水)、オジロサナエ
(流水)、タカネトンボ(止水)、キトンボ(止水)、ネキトンボ(止水)、コシアキト
ンボ(止水)などが挙げられる。これらの種が現在も生息しているかどうか興味がもたれ
るところである。
バッタ目は14科52種が確認されており、概ね相模原市のバッタ相は把握できていると考
えられる。それらの中で注目すべき種としては、カワラスズ(河原)、スズムシ(草地)、
マツムシ(草地)、クツワムシ(草地)、キリギリス(草地)、カヤキリ(草地)、カワ
ラバッタ(河原)、ツマグロイナゴ(湿性草地)、ナキイナゴ(林縁草地)などが挙げら
れる。これらの種が現在も生息しているかどうか興味がもたれるところである。
カメムシ目は43科115種が確認されているがおそらくその数倍は相模原市に生息している
と考えられる。それらの中で注目すべき種としてはハルゼミ(アカマツ林)、ヒメイトア
メンボ(水辺)、オオアメンボ(止水)、タイコウチ(止水)、ミズカマキリ(止水)な
どが挙げられる。
コウチュウ目は61科660種が確認されているが、極めて多様な分類群であるためおそらく
その数倍は相模原市に生息していると考えられる。ただしオサムシ科、カミキリムシ科、
ハムシ科などはかなりの種数が記録されており、解明度は高いと思われる。それらの中で
注目すべき種としては、クロカタビロオサムシ(樹林)、セグロマメゴモクムシ(河川敷
などの草地)、ヨツモンカタキバゴミムシ(河川敷などの草地)、クロサヒラタアトキリ
ゴミムシ(樹林)、ツマキレオナガミズスマシ(流水)、コオナガミズスマシ(流水)、
ガムシ(止水)、ヒゲブトハナムグリ(林縁草地)、ヒゲコガネ(河川敷などの草地)、
ヤマトタマムシ(樹林)、ウバタマムシ(アカマツ林)、ウバタマコメツキ(アカマツ
林)、ゲンジボタル(清流)、ヘイケボタル(止水)、オオキノコムシ(樹林)、ルリボ
シカミキリ(樹林)、マツノマダラカミキリ(アカマツ林)などが挙げられる。
ハチ目は10科37種が確認されているが、多様な分類群であるためおそらくその10倍以上
は生息していると考えられる。しかも図鑑類で同定することが困難なせいもあり普通種も
まだ把握されていない。
ハエ目は14科28種が確認されているが、非常に多様な分類群であるためおそらくその50
倍以上は生息していると考えられる。しかもハチ目と同様に図鑑類での同定が困難なせい
もあり普通種の把握がまだなされていない。
チョウ目は19科135種が確認されている。チョウ類については8科77種確認されており概
ね相模原市全体は把握されていると考えられるが、蛾類については多様な分類群であるた
めおそらくその数倍は生息していると考えられる。それらの中で注目すべき種としてはア
オバセセリ(樹林)、ギンイチモンジセセリ(高茎草地)、ミヤマカラスアゲハ(樹林)、
ウスバシロチョウ(林間草地)、スジボソヤマキチョウ(山地)、ウラナミアカシジミ
(クヌギ林)、ミドリシジミ(ハンノキ林)、クロシジミ(林縁草地)、シルビアシジミ
(河川敷などの草地)、ミズジチョウ(山地渓流)コムラサキ(ヤナギ林)、スミナガシ
(樹林)、クジャクチョウ(ブナ帯)、オオムラサキ(広がりのある樹林)、ジャノメチ
ョウ(河川敷などの草地)、オオミズアオ(樹林)、ヒメヤママユ(樹林)などが挙げら
れる。
全体として見た場合、多摩丘陵などと同様に台地上に広がる樹林部に成立する樹林性昆
虫が中心の昆虫相だと思われる。それに相模川などの水辺や草地性の種が加わり、さらに
は丹沢山麓部の山地性の昆虫も一部見られるといった相模原市の地理的な特徴が加わって
いる。しかし、宅地開発などにより樹林部が減少している現在ではかなりの種が姿を消し
ているのではないかと考えられる。
なお、チョウ類の記録の中でムラサキツバメ(東限は和歌山周辺、関東地方には分布し
ていない)及びルエルタテハ(北方系の種でかなり高標高地に分布。神奈川県未記録種)
については誤認の可能性が高い。
2.2.2 現地調査における昆虫類の記録
(1)概況
現地調査の結果、任意採集調査で15目236科1332種、ベイトトラップ調査で8目52科204
種、ライトトラップ調査で8目62科197種、合計で15目249科1524種の昆虫類を確認した。
目別に見ると、コウチュウ目が772種と最も多く、次いでハチ目の170種、ハエ目の169種、
カメムシ目の156種、チョウ目の153種の順で、コウチュウ目、ハチ目、ハエ目、カメムシ
目、チョウ目の5大目(昆虫類の中で最も種類数の多い5目)で合計1420種と全種類数の
約93%を占める結果となった。他の目の種類数はバッタ目が47種、アミメカゲロウ目が24
種、トンボ目が19種、カマキリ目が4種、ハサミムシ目が3種、ゴキブリ目とシリアゲム
シ目がそれぞれ2種、イシノミ目とナナフシ目、トビケラ目がそれぞれ1種であった
(表4.2.4)。
確認種は概ね関東地方の平地から丘陵地にかけて普通に見られる種類であったが、分布
生態等が特徴的な種類も見られた。それらについては以降に述べるものとする。
表4.2.4
目
任意調査
イシノミ
1
トンボ
19
ゴキブリ
2
カマキリ
4
バッタ
45
ナナフシ
1
ハサミムシ
3
カメムシ
148
アミメカゲロウ
23
コウチュウ
659
ハチ
163
シリアゲムシ
2
ハエ
168
トビケラ
1
チョウ
93
15目
1332
目別種類数一覧
ベイトトラップ ライトトラップ
1
0
0
0
1
0
0
0
5
6
0
0
3
0
16
21
0
2
149
82
27
1
0
0
2
12
0
1
0
72
204
197
合計
1
19
2
4
47
1
3
156
24
772
170
2
169
1
153
1524
(2)各地区における昆虫相の状況
各地区別の任意採集調査結果の目別種類数一覧を以下の表4.2.5及び図4.2.2に示す。任
意採集調査においては調査時期、回数、天候など多くの要因が関わっているため、一概に
地区ごとの比較はできないが、基本構成種については相模川流域の地区は概ね400種前後、
境川流域は概ね200種前後、河岸段丘部は立地環境による違いはあるものの多くて300種前
後、台地上部は大体200∼300種で多様な環境が見られる場合は400種前後、丘陵部は400種
前後の昆虫相から成り立っていると考えられる。
最も確認種類数が多かったのはK-1地区(磯部地区勝坂遺跡)の504種で、次いでSA-2地
区(大島地区神沢)の492種で、次いでD-5地区(下溝地区相模原公園周辺)とSA-3地区
(田名地区望地)の438種で、400種を越えた地区に共通していることとして、ある程度ま
とまりのある雑木林があること、ある程度広がりのある草地・耕作地環境があること、近
くに流水や止水などの水辺環境があることの3点が挙げられる。
表4.2.5
調査地区別目別種類数
目
低 地 部 (相 模 川 沿 岸 域 )
斜 面 部 (西 部 地 域 )
台 地 部 (東 部 地 域 )
境川流域
計
S A - 1 S A - 2 SA-3 SA-4 TY-1 TY-2 TY-3 TY-4 K-1 D - 1 D-2 D-3 D - 4 D-5 SK-1 S K - 2
イシノミ
0
1
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
1
トンボ
10
15
10
9
4
4
5
5
10
3
3
2
2
7
2
2
19
ゴキブリ
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
2
カマキリ
0
2
2
0
0
0
0
2
1
1
0
0
1
0
0
0
4
バッタ
10
24
22
20
14
17
18
13
18
18
4
9
16
22
4
9
45
ナナフシ
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
1
1
0
1
0
0
1
ハサミムシ
0
0
1
1
1
0
1
0
0
1
0
0
0
1
0
0
3
カメムシ
44
62
52
50
17
46
17
43
61
42
30
34
27
51
22
3 6 148
アミメカゲロウ
4
11
8
3
0
8
1
4
12
3
2
6
4
7
2
5
23
コウチュウ
207
205
201
137
45
167
36
101 243 107 96
9 9 139 215
62
124 659
ハチ
30
59
60
52
21
49
21
32
61
54
22
39
39
54
25
3 8 163
シリアゲムシ
0
0
0
0
0
1
0
2
2
1
0
0
0
1
0
0
2
ハエ
30
77
52
35
31
54
31
43
60
45
29
33
34
56
27
3 7 168
トビケラ
1
1
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
チョウ
36
35
29
25
9
32
14
17
35
30
14
22
19
23
13
17
93
15目
373
492
438
334
142
3 7 9 1 4 4 263 504 3 0 6 201 246 2 8 2 438
157
268 1332
図4.2.2
調査地区別目別種類数
600
500
チョウ
トビケラ
ハエ
シリアゲムシ
ハチ
コウチュウ
アミメカゲロウ
カメムシ
ハサミムシ
ナナフシ
バッタ
カマキリ
ゴキブリ
トンボ
イシノミ
種類数
400
300
200
100
0
SA-1
SA-2
SA-3
SA-4
SK-1
SK-2
TY-1
TY-2 TY-3
調査地区
TY-4
D-1
D-2
D-3
D-4
D-5
K-1
各地区の昆虫相の概要を以下に示す。
●SA-1,2,3,4地区(低地部:相模川沿岸地域の各地区)
これらの地区は基本的には流水環境、止水環境、裸地環境(河原、砂地)、草地環境
(低茎草地、高茎草地、耕作地)、樹林環境(ヤナギ林、雑木林)が一通り見られるため、
昆虫相は比較的多様である。
これらの地区に特徴的な種類としては、ハグロトンボ(流水)、ダビドサナエ(流水)
カワラスズ(河原)、キリギリス(低茎草地)、クビキリギリス(高茎草地)、マダラバ
ッタ(南方系種)、ショウリョウバッタモドキ(低茎草地、高茎草地)、ヒナバッタ(低
茎草地)、クルマバッタモドキ(裸地)、ハネナガイナゴ(湿性草地)、ムギメクラガメ
(高茎草地)、オオアメンボ(止水)、エビイロカメムシ(高茎草地)、ミズカゲロウ
(水辺)、ツノトンボ(高茎草地)、ホソツツタマムシ(高茎草地)、ヒメサビキコリ
(河原)、ホッカイジョウカイ(河川敷)、チバクギヌキヒメジョウカイモドキ(広葉樹
林)、ヒラノクロテントウダマシ(広葉樹林)、ババヒメテントウ(高茎草地)、ジュウ
サンホシテントウ(高茎草地)、コジマヒゲナガコバネカミキリ(広葉樹林)、ラミーカ
ミキリ(分布拡大種)、ヤナギイネゾウモドキ(ヤナギ林)、ヤナギルリハムシ(ヤナギ
林)、エゾクシケアリ(北方系種)、キタドロバチ(砂地)、クララギングチ(砂地)、
シロスジヒゲナガハナバチ(砂地)、ニッポンヒゲナガハナバチ(林縁草地)、ヒラヤマ
アミメケブカミバエ(低茎草地)、スネアカキンバエ(河原)、ギンイチモンジセセリ
(高茎草地)、ミヤマチャバネセセリ(高茎草地)、ウラゴマダラシジミ(広葉樹林)、
オオミドリシジミ(広葉樹林)、ゴイシシジミ(ササ群落)、クロヒカゲ(ササ群落)な
どが挙げられる。
●TY-1,2,3,4地区(斜面部:河岸段丘の各地区)
斜面部は河川敷ほどの広がりはないものの、小面積で草地や耕作地、樹林、水辺などが
見られる。TY-1,3地区は狭い範囲での草地や耕作地の環境であるため基本的な昆虫相は草
地・耕作地性の種である。TY-4地区は草地、耕作地に加えて小面積の樹林も加わるため樹
林性の種が混じる。TY-2地区は斜面林が中心の場所であり大部分樹林性の種で占められて
いる。
TY-1,3地区に特徴的な種類としては、ウスイロササキリ(低茎草地)、アカヒメヘリカ
メムシ(低茎草地)、マルガタゴミムシ(低茎草地)、アカビロウドコガネ(低茎草地)、
マダラチビコメツキ(低茎草地)、ヨツボシテントウダマシ(耕作地)、チャバネセセリ
(低茎草地)、モンシロチョウ(耕作地)、ウラナミシジミ(耕作地)などが挙げられる。
TY-2,4地区に特徴的な種類としては、セスジツユムシ(マント群落)、ツヤアオカメム
シ(広葉樹林)、アカスジキンカメムシ(広葉樹林)、ムーアシロホシテントウ(広葉樹
林)、ヒゲブトゴミムシダマシ(広葉樹林)、ハリブトシリアゲアリ(広葉樹林)、シベ
リアカタアリ(広葉樹林)、ミカドオオアリ(広葉樹林)、ヤマトシリアゲ(広葉樹林)、
ガガンボモドキ(広葉樹林)、マガリケムシヒキ(広葉樹林)、キンアリノスアブ(林縁
草地)、クロフトモモホソバエ(林縁草地)、ミズイロオナガシジミ(広葉樹林)、ムラ
サキシジミ(広葉樹林)などが挙げられる。
相模川に比較的近いK-1地区には広く広葉樹林が分布しており、草地や耕作地も多く見ら
れるが、現在では市街地化が進んでいる。K-1地区の基本的な昆虫相は樹林性の種であるが
草地、耕作地性の種などにも特徴的なものが見られる。また、相模原市としては数少ない
湿地環境が見られる場所でもある。
K-1地区に特徴的な種類としては、ヒガシカワトンボ(細流)、オニヤンマ(広葉樹林と
細流)、ハラビロトンボ(湿地)、ヒメギス(林縁草地)、トゲヒシバッタ(湿地)、シ
ロヘリクチブトカメムシ(南方系種)、ヒメカマキリモドキ(林縁草地)、ヤマトタマム
シ(広葉樹林)、センノカミキリ(広葉樹林)、ホシベニカミキリ(南方系種)、エゴヒ
ゲナガゾウムシ(広葉樹林)、コゲチャホソクチゾウムシ(広葉樹林)、カシワクチブト
ゾウムシ(広葉樹林)、ヨツボシオオアリ(広葉樹林)、ニッポンヒゲナガハナバチ(林
縁草地)、ヤマトツヤハナバチ(林縁草地)、ミカドガガンボ(湿地)、ルリハナアブ
(林縁草地)、ヒメフンバエ(湿地)、カラスアゲハ(広葉樹林)、ミズイロオナガシジ
ミ(広葉樹林)、ウラゴマダラシジミ(広葉樹林)、アカシジミ(広葉樹林)、サトキマ
ダラヒカゲ(ササ群落)などが挙げられる。
●D-1,2,3,4,5地区(台地部:台地上部)
台地上部の調査地区とした場所では広い範囲で広葉樹林が分布しているが、周辺は市街
地化が進んでいるため草地や耕作地は少ない。したがって、基本的な昆虫相は樹林性の種
である。
これらの地区に特徴的な種類としては、ウスグモスズ(広葉樹林)、ヒメグンバイ(広
葉樹林)、オオクモヘリカメムシ(広葉樹林)、ウシカメムシ(広葉樹林)、セアカツノ
カメムシ(広葉樹林)、エサキモンキツノカメムシ(広葉樹林)、ジュウジアトキリゴミ
ムシ(広葉樹林)、コクワガタ(広葉樹林)、キマワリ(広葉樹林)、カシワクチブトゾ
ウムシ(広葉樹林)、ヒメクロオトシブミ(広葉樹林)、ツンプトクチブトゾウムシ(広
葉樹林)、ムネボソアリ(広葉樹林)、カタグロチビドロバチ(広葉樹林)、ミカドジガ
バチ(広葉樹林)、オオハキリバチ(広葉樹林)、マガリケムシヒキ(広葉樹林)、クロ
ヒラタアブ(広葉樹林)、キンアリノスアブ(林縁草地)、ヒメキマダラセセリ(林縁草
地)、カラスアゲハ(広葉樹林)、ミズイロオナガシジミ(広葉樹林)、アカシジミ(広
葉樹林)、ムラサキシジミ(広葉樹林)などが挙げられる。
●SK-1,2地区(台地部:境川流域の各地区)
境川の各地区は流域沿岸の市街地化が進んでおり、基本的には孤立した樹林が残ってい
る程度で、広がりのある草地環境や水辺環境は乏しい。したがって、昆虫相としては樹林
性の種が中心で、水辺の種や草地性の種は貧弱である。
これらの地区に特徴的な種類としては、ミンミンゼミ(広葉樹林)、アカスジキンカメ
ムシ(広葉樹林)、ウメカメムシ(広葉樹林)、エサキモンキツノカメムシ(広葉樹林)、
コイチャコガネ(広葉樹林)、ムーアシロホシテントウ(広葉樹林)、センノカミキリ
(広葉樹林)、キイロスズメバチ(広葉樹林)、ミズイロオナガシジミ(広葉樹林)、ア
カシジミ(広葉樹林)、サトキマダラヒカゲ(ササ群落)などが挙げられる。
次に主な目別に昆虫相の特色について述べる。
■トンボ目
トンボ目は今回の調査で19種を確認した。
イトトンボ科はアジアイトトンボ1種のみの確認であった。他のイトトンボ類が確認さ
れなかった理由は不明であるが、既存資料(相模原の動物、相模原の昆虫)でクロイトト
ンボやセスジイトトンボが記録されている相模川の河川敷はここ何年かの度重なる増水に
より生息環境が消失した可能性がある。
アオイトトンボ科はオオアオイトトンボ1種であった。本種を確認したのは2ヶ所(SA
-1,SA-2)でいずれも低地部(相模川沿岸地域)であった。
カワトンボ科はハグロトンボとヒガシカワトンボの2種を確認した。両種とも相模川沿
岸地域の地区のみの確認であり、ヒガシカワトンボはSA-2地区とK-1地区で少数個体を、ハ
グロトンボはSA-1,2,3,4の確認された。中でもSA-3地区、SA-4地区では多数の個体を確認
した。
サナエトンボ科はダビドサナエとコオニヤンマの2種であり、低地部相模川沿岸地域の
SA-2地区、SA-3地区、SA-4地区のみの確認であった。
オニヤンマ科はオニヤンマ1種であり、相模川沿岸地域のSA-1地区、SA-2地区と台地上
部のD-5地区、斜面部のK-1地区の4ヶ所で確認した。相模川沿岸地域の各地区は崖側の細
流で発生している可能性が考えられる。D-5地区はフィッシングパーク周辺が、K-1地区は
羽化個体を確認したことから調査地区内の湧水地が発生地となっていると考えられる。
ヤンマ科はクロスジギンヤンマ1種であった。確認したのは斜面部のTY-2地区(横山丘
陵緑地)のみであるが、周辺で発生した個体かどうかは不明である。
トンボ科は11種確認した。ハラビロトンボは最近比較的少なくなっている種類であり、
今回の調査ではSA-2地区とK-1地区で各1個体確認した。コノシメトンボは比較的山地性の
アカネ属であり相模原市周辺では少ないとされている。今回の調査ではTY-4地区で1個体
確認したが、どこからか飛来した個体の可能性が高いと考えられる。ヒメアカネは比較的
良好な湿地に生息するアカネ属である。今回の調査ではSA-2地区とTY-2地区で確認したが
いずれの場所でも個体数は少なかった。
■ゴキブリ目
ゴキブリ目はヤマトゴキブリとモリチャバネゴキブリの2種を確認した。ともに樹林林
床に生息しているため、相模原市の雑木林に広く生息していると考えられる。今回の調査
ではヤマトゴキブリはTY-2地区、D-3地区、D-4地区で、モリチャバネゴキブリはSA-1地区
で確認した。
■カマキリ目
カマキリ目はハラビロカマキリ、コカマキリ、チョウセンカマキリ、オオカマキリの4
種を確認した。これらの種は基本的には草地や林縁に生息しているため、そういった環境
が見られる場所に広く生息していると考えられる。ただし個体数はどこでもあまり多くは
ない。
■バッタ目
バッタ目は今回の調査で45種を確認した。
カワラスズは神奈川県では砂礫地や鉄道線路に分布しているが、相模原市の分布はおそ
らく今回確認したSA-2地区(大島地区神沢)に限られているのではないかと考えられる。
既存資料を見ても神沢で記録されているのみである。クダマキモドキとヤブキリは樹林林
縁性の昆虫であり、個体数はそれほど多くはない。今回の調査ではクダマキモドキはSA-2
地区とD-5地区、ヤブキリはD-5地区でそれぞれ確認した。キリギリスは乾性草地に生息す
る昆虫であるが、最近ではあまり見られなくなっている。今回の調査ではSA-3地区のみで
確認した。個体数は比較的多かった(10個体)。クビキリギリスはススキやオギなどの高
茎草地を好む種類で、通常は河川敷によく見られる。今回の調査ではSA-2,3地区、TY-2地
区で確認した。マダラバッタは南方系のバッタで関東以北ではあまり多くない種類である。
今回の調査ではSA-4地区で確認した。ショウリョウバッタモドキはやや湿ったイネ科草本
の草地に局地的に生息する。今回の調査ではSA-3地区で非常に多数の個体を確認した。ハ
ネナガイナゴは湿性草地に局地的に生息している。今回の調査ではSA-2地区で1個体のみ
確認した。
■カメムシ目
カメムシ目は今回の調査で148種を確認した。
アヤヘリハネナガウンカは樹林性の種で個体数は比較的少ない。今回の調査ではK-1地区
で1個体のみ確認した。クロスジホソサジヨコバイは南方系の種類で関東地方ではほとん
ど記録がない。今回の調査ではD-4地区で1個体のみ確認した。オオアメンボは神奈川県で
は減少している種類である。今回の調査ではSA-2地区で比較的多くの個体を確認した。オ
オクモヘリカメムシは樹林性のカメムシでネムノキなどに見られる。今回の調査ではSA-2,
3地区、D-1,5地区の樹林において少数確認した。アカスジキンカメムシは雑木林などに見
られる樹林性のカメムシである。今回の調査ではSA-1地区、SK-2地区、TY-2地区、TY-4地
区、D-1地区、D-2地区、D-3地区、D-4地区及びK-1地区と比較的多くの場所で確認した。ウ
シカメムシは常緑樹に見られる樹林性のカメムシであり個体数はあまり多くない。今回の
調査ではSK-2地区とD-5地区で1個体づつ確認した。ミヤマカメムシは比較的山地に見られ
る樹林性のカメムシである。今回の調査ではK-1地区のみで確認した。イチモンジカメムシ
は草地性のカメムシであるが個体数は少ない。今回の調査ではD-1地区のみで確認した。シ
ロヘリクチブトカメムシは南方系のカメムシで最近神奈川県から記録された。今回の調査
ではSA-4地区とK-1地区で複数個体を確認した。
■アミメカゲロウ目
アミメカゲロウ目は今回の調査で23種を確認した。
ラクダムシは海岸のマツ林などに見られる種で、今回の調査ではK-1地区のみで確認した。
ミズカゲロウは神奈川県では記録がほとんどない種類である。今回の調査ではSA-4地区で
1個体のみ確認した。オガタヒロバカゲロウも神奈川県での記録がほとんどない種類であ
る。今回の調査ではSA-2地区で1個体のみ確認した。ヒメカマキリモドキは幼虫がクモ類
の卵嚢に寄生する特殊な生態の昆虫である。今回の調査ではK-1地区で1個体のみ確認した。
■コウチュウ目
コウチュウ目は今回の調査で659種を確認した。
ムネアカセンチコガネは低茎草地などに生息するが個体数は少ない。今回の調査ではD2地区のみで確認した。ヤマトタマムシは、以前は雑木林などに普通に見られたが現在は減
少している種類である。今回の調査ではSA-3地区とK-1地区で複数個体を確認した。ホソツ
ツタマムシはススキ草地などに見られる草地性のタマムシである。今回の調査ではSA-3地
区で1個体のみ確認した。今回の調査ではSA-1地区で1個体のみ確認した。チバクギヌキ
ヒメジョウカイモドキは千葉県の鋸山の標本に基づいて比較的最近記載された種類である。
既存資料ではSA-1地区の大島河原で記録されていたが、今回の調査ではSA-2地区で複数個
体を確認した。ヒラノクロテントウダマシは比較的最近記載された種類であるが、今回の
調査ではSA-1地区でのみ確認した。クロスジヒメテントウは南方系の種類で神奈川県未記
録種である。今回の調査ではD-2地区で1個体のみ確認した。ミスジキイロテントウは南方
系種であり、最近神奈川県から記録された。今回の調査ではSA-4地区で1個体のみ確認し
た。ジュウサンホシテントウはヨシ原などの湿性草地に生息し、個体数は少ない。今回の
調査ではSA-2,4地区で複数個体を確認した。フタオビミドリトラカミキリは南方系の種類
で神奈川県では西丹沢地区を除けば沿岸部に分布している。今回の調査ではD-4地区で1個
体のみ確認した。シロオビゴマフカミキリは神奈川県では山地性の種類であり個体数は少
ない。今回の調査ではSA-1地区で1個体のみ確認した。ホシベニカミキリはタブノキを加
害する南方系種であり神奈川県では沿岸部に分布している。今回の調査ではSA-4地区とK1地区で複数個体を確認した。ラミーカミキリは以前は神奈川県西部に分布が限られていた
カミキリムシであるが現在では丹沢山麓部に分布を広げており、相模原市は本種の東端の
分布となる。今回の調査ではSA-1,2,3地区で複数個体を確認した。クラークマルノミハム
シは箱根や丹沢に見られるハムシである。今回の調査ではSA-4地区で2個体確認した。セ
ダカカクムネトビハムシは神奈川県未記録種である。今回の調査ではSA-3地区で1個体の
み確認した。
■ハチ目
ハチ目は今回の調査で163種を確認した。
トサヤドリキバチはキバチ類の幼虫に寄生する珍しいハチである。今回の調査ではD-3地
区で1個体のみ確認した。ヤマトカギバラアリは常緑樹林の林床に生息し、クモ類やムカ
デ類の卵を餌とする珍しいアリである。今回の調査ではD-5地区で1個体のみ確認した。ヤ
マトスジドロバチは神奈川県の記録はほとんどないドロバチである。今回の調査ではD-5地
区で1個体のみ確認した。ミカドジガバチは樹木の甲虫孔などに営巣する樹林性のカリバ
チで、餌はシャチホコガ科の幼虫である。今回の調査ではD-5地区で2個体を確認した。ガ
ガンボギングチも樹木の甲虫孔に営巣するカリバチで、餌はガガンボ類である。今回の調
査ではSA-3地区で1個体のみ確認した。シロスジヒゲナガハナバチは河川敷などの草地周
辺に見られるハナバチである。今回の調査ではSA-2,3,4地区、D-5地区、K-1地区で複数個
体を確認した。
■シリアゲムシ目
シリアゲムシ目は今回の調査で2種を確認した。
ヤマトシリアゲはやや湿った樹林林縁などに見られるが個体数はあまり多くない。今回
の調査ではTY-4地区、D-1地区、K-1地区で複数個体を確認した。ガガンボモドキは薄暗い
樹林内などに局地的に見られる。今回の調査ではTY-2,4地区、D-5地区、K-1地区で複数個
体を確認した。
■ハエ目
ハエ目は今回の調査で168種を確認した。
ミカドガガンボは湿地周辺に見られる日本最大のガガンボである。今回の調査ではK-1地
区で2個体確認した。イワタシギアブは珍しいアブで関東地方の記録はほとんどない。今
回の調査ではSK-2地区で2個体確認した。ネグロミズアブは広葉樹林に見られるが個体数
はあまり多くない。今回の調査ではSA-3地区で2個体確認した。Holopogonjaponicus は最
近関東地方の山地に分布することが報告されたムシヒキアブで、神奈川県の記録はほとん
どない。今回の調査ではSK-2地区で1個体のみ確認した。ツマキオオヒラタアブは比較的
珍しいハナアブで個体数も少ない。今回の調査ではSA-2地区で1個体のみ確認した。ムラ
クモハマダラミバエは比較的珍しいミバエで神奈川県初記録種である。今回の調査ではSK
-1地区で1個体のみ確認した。ミドリバエは広葉樹林に見られるハエで個体数はあまり多
くない。今回の調査ではSA-2地区、D-4地区、K-1地区で複数個体確認した。カワユニクバ
エは草地に見られるニクバエであるが個体数は少ない。今回の調査ではD-5地区、K-1地区
で2個体確認した。
■チョウ目
チョウ目は今回の調査で93種を確認した。
ギンイチモンジセセリは河川敷などの高茎草地に局地的に見られるセセリチョウである。
今回の調査ではSA-1,2地区で少数確認した。ヒメキマダラセセリは林縁草地に見られるセ
セリチョウであるが、市街地周辺では個体数が減少している。今回の調査ではD-1地区で2
個体確認した。モンキアゲハは神奈川県には広く分布しているが個体数は少ない。今回の
調査ではSA-1,2地区で2個体確認した。ミズイロオナガシジミはコナラなどに見られるシ
ジミチョウで市街地周辺では個体数が減少している。今回の調査ではSA-1,3地区、TY-2地
区、D-1,2,3,5地区、SK-2地区、K-1地区で比較的多くの個体を確認した。ウラゴマダラシ
ジミはイボタに見られるシジミチョウで市街地周辺ではかなり個体数が減少している。今
回の調査ではSA-1地区、K-1地区で複数個体を確認した。オオミドリシジミはコナラなどに
見られるシジミチョウで市街地周辺ではほとんど見られなくなっている。今回の調査では
SA-1地区で1個体のみ確認した。アカシジミはコナラやクヌギなどに見られるシジミチョ
ウで市街地周辺では個体数が減少している。今回の調査ではD-1,3,5地区、K-1地区で複数
個体を確認した。ゴイシシジミはアズマネザサなどにつくアブラムシ類を幼虫が餌とする
肉食性のシジミチョウで、分布は局地的である。今回の調査ではSA-2,3地区で2個体確認
した。クロヒカゲは比較的山地に多いジャノメチョウで相模原市周辺では個体数は少ない。
今回の調査ではSA-2地区で複数個体を確認した。
2.2.3 ベイトトラップ調査による地表性昆虫類の状況
ベイトトラップ地点別の種類数と個体数(アリ科以外)について表4.2.6に示す。
ベイトトラップ地点の中で種類数が最も多かったのはBT-6の70種で、次いでBT-1の52種、
BT-10の48種、BT-4の46種の順でBT-2が27種と最も少なかった。アリ科以外の個体数で見る
と、BT-11が413個体と最も多く、次いでBT-9の362個体、BT-6の223個体、BT-10の215個体
順でBT-3が53個体と最も少なかった。地上徘徊性の昆虫に関しては必ずしも良好な環境ほ
ど種多様度が高くなるわけではなく、かえって攪乱の度合が強い場所ほど種多様度が高く
なるようである。石谷(1996)によれば種多様度指数(SID)は河川敷と耕作地が大で山林は逆
に小となったと報告している。種類数が多かったBT-6は耕作地周辺の地点であり攪乱の度
合が強いために種類数が多くなったと考えられる。個体数について見てみると、アオオサ
ムシとオオヒラタシデムシが大きな割合を占めており、これらの個体数の多少が全体の個
体数の多少に影響を及ぼしていた。アオオサムシやオオヒラタシデムシは安定した場所よ
りも伐採跡地や林縁草地、河川敷といった比較的攪乱された場所に多く見られる種類であ
り、これらが多く見られた場所は多少なりとも攪乱されている場所ではないかと考えられ
る。
石谷正宇,1996.環境指標としての地表徘徊性ゴミムシ類.昆虫と自然31(12)
表4.2.6
項目
BT-1
種類数
52
個体数(アリ科以外)
90
BT-2
27
54
ベイトトラップ地点別種類数、個体数
BT-3
38
53
BT-4
46
109
種類数
BT-5
40
168
BT-6
70
223
BT-7
39
93
BT-8
34
114
BT-9 BT-10 BT-11 BT-12
40
48
39
44
362
215
413
178
個 体 数 (アリ科以外)
80
450
400
70
350
60
300
50
200
30
150
20
100
10
50
0
0
BT-1
BT-2
BT-3
BT-4
図4.2.3
BT-5
BT-6
BT-7
ベイトトラップ地点
BT-8
BT-9
BT-10
ベイトトラップ地点別種類数、個体数
BT-11
BT-12
個体数
種類数
250
40
次にベイトトラップ調査結果から得られた特徴的な種類の分布状況について述べる。
エゾカタビロオサムシはヨトウガの幼虫を主な餌とするため河川敷などの草地で見られ
るが個体数は少ない。今回の調査ではBT-2とBT-3の河川敷で複数個体を確認した。ヒメマ
イマイカブリは幼虫がカタツムリを餌とする種類で最近個体数が減少している。今回の調
査ではBT-3,5,6の相模川に近い地点で複数個体を確認した。チョウセンゴモクムシは最近
個体数が減少している種類である。今回の調査ではBT-2で1個体のみ確認した。アシナガ
アリは樹林林床性のアリで、ある程度まとまりのある樹林に見られる。今回の調査ではBT
-1で多く確認したほかBT-4,7,11でも少数見られた。エゾクシケアリは山地性のアリで神奈
川県では相模川流域に特異的に見られる。今回の調査ではBT-2で複数個体を確認した。キ
イロケアリは関東地方では山地性のアリである。今回の調査ではBT-5で1個体のみ確認し
た。
2.2.4 ライトトラップ調査による各地区の調査結果
ライトトラップ地点別の目別種類数一覧を表4.2.7に示す。ライトトラップ地点はLT-1が
低地部(相模川沿岸地域)、LT-2が斜面部、LT-3が台地部(境川流域)とそれぞれ異なる
環境において実施したわけだが、結果を見る限りコウチュウ目やカメムシ目では違いがあ
るもののライトトラップ調査の主目的である蛾類についてはそれほど明確な違いは認めら
れず、いずれの地点も確認種類数は少なかった。特にいずれの地点においても樹林性の蛾
類であるシャクガ科やシャチホコガ科が極端に少なく、大型蛾類のスズメガ科やヤママユ
ガ科が1種類も確認できなかったことから、相模原市の蛾類相は全体的にかなり貧弱であ
るといえる。
表4.2.7
ライトトラップ地点別目別一覧
目
LT-1
バッタ
1
カメムシ
6
アミメカゲロウ
2
コウチュウ
47
ハチ
1
ハエ
4
トビケラ
1
チョウ
39
8目
101
LT-2 LT-3
1
4
7
12
0
0
38
20
0
0
4
6
1
1
30
27
81
70
計
6
21
2
82
1
12
1
72
197
120
100
種類数
80
チョウ
トビケラ
ハエ
ハチ
コウチュウ
アミメカゲロウ
カメムシ
バッタ
60
40
20
0
LT-1
LT-2
ライトトラップ地点
図4.2.4
LT-3
ライトトラップ地点別目別種類数
次にライトトラップ調査結果から得られた特徴的な種類の分布状況について述べる。
シブイロカヤキリモドキは高茎草地に見られる種類で個体数はあまり多くない。今回の
調査ではLT-1で1個体のみ確認した。テツイロヒメカミキリは市街地周辺で見られること
が多いカミキリムシであり、個体数はあまり多くない。今回の調査ではLT-3で1個体のみ
確認した。
2.2.5 注目すべき昆虫類
(1)相模原市における希少昆虫
現地調査で確認した昆虫類の中から表4.2.8に示す選定基準により48種の注目種を抽出し
た。確認地点を図4.2.5∼図4.2.12に示し、確認状況について以下に示す。
表4.2.8
目
トンボ
科
カワトンボ
昆虫類注目種一覧
種
ハグロトンボ
ヒガシカワトンボ
オニヤンマ
オニヤンマ
トンボ
コノシメトンボ
バッタ
マツムシ
アオマツムシ
キリギリス
キリギリス
バッタ
ショウリョウバッタモドキ
ハネナガイナゴ
カメムシ
アメンボ
オオアメンボ
ミズムシ
コミズムシ属の一種
キンカメムシ
アカスジキンカメムシ
カメムシ
ウシカメムシ
アミメカゲロウカマキリモドキ
ヒメカマキリモドキ
コウチュウ
オサムシ
エゾカタビロオサムシ
ヒメマイマイカブリ
チョウセンゴモクムシ
ツヤマメゴモクムシ
ダイミョウアトキリゴミムシ
ガムシ
コガムシ
マルハナノミダマシ ツマアカマルハナノミダマシ
センチコガネ
ムネアカセンチコガネ
ヒラタドロムシ
マスダチビヒラタドロムシ
タマムシ
クロタマムシ
ヤマトタマムシ
ホソツツタマムシ
ホタル
ゲンジボタル
ジョウカイボン
ムネアカクロジョウカイ
ジョウカイモドキ チバクギヌキヒメジョウカイモドキ
ホソヒラタムシ
ミツカドコナヒラタムシ
テントウムシダマシ ヒラノクロテントウダマシ
カミキリムシ
テツイロヒメカミキリ
センノカミキリ
ホシベニカミキリ
ラミーカミキリ
ハムシ
クラークマルノミハムシ
ヒゲナガゾウムシ ヨリメチビヒゲナガゾウムシ
ホソクチゾウムシ コゲチャホソクチゾウムシ
ハチ
スズメバチ
オオスズメバチ
チョウ
セセリチョウ
ギンイチモンジセセリ
ヒメキマダラセセリ
アゲハチョウ
モンキアゲハ
シジミチョウ
ミズイロオナガシジミ
ウラゴマダラシジミ
オオミドリシジミ
アカシジミ
ムラサキシジミ
ゴイシシジミ
ジャノメチョウ
クロヒカゲ
7目
31科
48種
任意
●
●
●
●
●
●
●
●
●
調査方法
ベイト ライト
a
b
c
選定基準
d
e
f
g
減少H
減少H
D・G
二級種
B・G
D
●
●
●
●
減少H
減少H
危惧F
減少H
減少H
G
B
B
●
●
●
●
●
減少H
減少H
危惧E
減少H
減少H
危惧F
●
●
●
二級種
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
減少H
二級種
減少H
減少H
二級種
◎
指標
二級種
希少種
二級種
二級種
二級種
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
39
減少H
C
二級種
二級種
二級種
二級種
G
減少H 二級種
二級種
C
G
6
4
0
0
選定基準
a:種の保存法
b:国および県指定天然記念物
c:日本の絶滅のおそれのある野生生物 無脊椎動物編(環境庁編1991)による絶滅危惧種、危急種、希少種
d:第1回自然環境保全基礎調査(環境庁1976)の主要野生動物
e:第2回自然環境保全基礎調査 (環境庁1977)の指標昆虫
A-G 神奈川県の調査対象昆虫
f:神奈川県レッドデータ生物調査報告書(神奈川県生命の星・地球博物館1995)による絶滅種、危惧種、減少種等
g:地域環境評価書−県央地域−(神奈川県環境部1992)による一級種、二級種
0
1
11
17
二級種
二級種
二級種
二級種
二級種
二級種
二級種
20
●ハグロトンボ Calopteryxatrata
生息環境:水生植物が繁茂するゆるやかな流れ。なお、未熟個体は暗がりを好む性質が強く水
辺からやや離れたうす暗い林地に移って、林床でしばらく生活する。
分
布:本州、四国、九州に分布する。神奈川県では都市部や三浦半島ではほぼ姿を消し現
在も確実に発生しているのは相模川及び酒匂川水系にほぼ限定さる。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●カワトンボ(ヒガシカワトンボ) Mnaispruinosacostalis
生息環境:平地から山地水にいたる各種の清流。羽化した昆虫は生涯羽化水域から遠く離れる
ことはない。
分
布:亜種ニシカワトンボは静岡県以西の本州、四国、九州に分布する。亜種ヒガシカワ
トンボは静岡県以北の本州と北海道に分布する。神奈川県では平地から丘陵地、低
山地にかけて広く分布しているが、最近個体数が減少している。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●オニヤンマ Anotogastersieboldii
生息環境:小川や湧水、湿地、滞水などきわめて広範な水域に生息。
分
布:北海道、本州、四国、九州、南西諸島に分布する。神奈川県では平地の市街地を除
いて丘陵地から低山地にかけて広く分布している。
選定理由:第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫D・G
●コノシメトンボ Sympetrumbacchamatutinum
生息環境:丘陵地や低山地の挺水植物が繁茂する池沼や水田に生息。未熟な個体は羽化水域を
離れて丘陵や低山地の樹林で生活する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布する。神奈川県では産地が少なく個体数も多くな
い。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●アオマツムシ Calyptotrypushibinonis
生息環境:市街地やその周辺の樹林。
分
布:明治時代に東京に持ち込まれた移入種。都市部を中心に関東、中部、関西、九州な
どで分布を広げている。
選定理由:第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫B・G
●キリギリス Gampsocleisbuergeri
生息環境:日当たりのよい河原や土手などの草地にすむ。
分
布:本州、四国、九州に分布する。神奈川県では市街地の草地の減少と平行して姿を消
している。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●ショウリョウバッタモドキ Gonistabicolor
生息環境:池の土手や湿地の周辺など湿ったイネ科草地にすむ。たいてい群れている。
分
布:関東以西の本州、四国、九州、南西諸島に分布する。神奈川県では市街地からほと
んど姿を消し、分布が限定されてきている。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●ハネナガイナゴ Oxyajaponicajaponica
生息環境:水田やその付近の湿った草地にすむ。
分
布:本州、四国、九州、南西諸島に分布する。神奈川県では最近の記録は丹沢山麓部の
谷戸の水田に限られている。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の絶滅危惧種
●オオアメンボ Gerriselongatus
生息環境:小さな水面や池沼に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布する。神奈川県では丹沢山地周辺と葉山町に限られている。
選定理由:第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫D神奈川県レッドデータ生物調査
報告書の減少種
●コミズムシ属の一種 Sigarasp.
生息環境:小さな水面や池沼に生息する。
分
布:同定困難なため正確な分布はわかっていない
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種。
●アカスジキンカメムシ Poecilocorislewisi
生息環境:落葉広葉樹、常緑広葉樹、針葉樹などの樹林に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布する。神奈川県では広く樹林に分布している。
選定理由:第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫G
●ウシカメムシ Alcimocorisjaponensis
生息環境:落葉広葉樹や常緑広葉樹に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布する。神奈川県では平地から山地まで広範囲に分布してい
る。
選定理由:第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫B
●ヒメカマキリモドキ Mantispajaponica
生息環境:主に山地の樹林林縁などに見られる。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布する。神奈川県では主に山地に見られる。
選定理由:第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫B
●エゾカタビロオサムシ Campalitachinense
生息環境:草地や河川敷に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布する。神奈川県では各地に分布するが、個体数は
全体的に減少している。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●ヒメマイマイカブリ Damasterblaptoidesoxuroides
生息環境:平地から山地まで見られるが、平地のやや湿った環境に多い。
分
布:関東地方から中部地方まで分布する。神奈川県では各地に広く分布する。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●チョウセンゴモクムシ Harpaluscrates
生息環境:河川敷の草地の石下に生息する。
分
布:本州に分布する。神奈川県では横浜市や大磯町の記録がある。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の絶滅危惧種
●ツヤマメゴモクムシ Stenolophusiridicolor
生息環境:河川敷の湿地周辺の草地に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布する。神奈川県では県内各地の河川敷や谷戸地に
分布している。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●ダイミョウアトキリゴミムシ Cymindisdaimio
生息環境:山地の山麓部、低山帯などの林床の落葉中に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布する。神奈川県では川崎市の記録しかないが丹沢
周辺などに生息している可能性がある。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●コガムシ Hydrocharaaffinis
生息環境:平地∼山地の水田・池・沼などに生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布する。神奈川県では平地から山地まで見られたが
近年激減している。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の絶滅危惧種
●ツマアカマルハナノミダマシ Eucinetushaemorrhoidalis
生息環境:不明
分
布:本州
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●ムネアカセンチコガネ Bolbocerosomanigroplagiatum
生息環境:おそらく林間草地や林縁草地に生息していると思われる。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では横浜市、藤沢市、厚木市
などで多くの記録があるが、最近の情報が少ない。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●マスダチビヒラタドロムシ Psephenoidesjaponicus
生息環境:清流付近に生息している。
分
布:本州、四国、九州に分布している。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●クロタマムシ Buprestishaemorrhoidalisjapanensis
生息環境:樹林に生息し幼虫はアカマツ、モミなどの枯材につく。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では厚木市、藤沢市、大磯町
などに記録がある。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●ヤマトタマムシ Chrysochroafulgidissimafulgidissima
生息環境:エノキ、ケヤキ、サクラ、カシ類などの樹林に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では座間市、海老名市、大和市、厚木
市、茅ヶ崎市などに記録がある。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●ホソツツタマムシ Paracylindromorphusjapanensis
生息環境:ススキやオギの草地に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では大和市、座間市、相模原市の記録
がある。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●ゲンジボタル Luciolacruciata
生息環境:清流付近に生息する。
分布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では全域に分布する。
選定理由:第1回自然環境保全基礎調査の主要野生動物
第2回自然環境保全基礎調査の指標昆虫
●ムネアカクロジョウカイ Athemellusadusticollis
生息環境:谷戸のようなやや湿った草地がある場所に生息する。
分
布:北海道、本州、九州に分布している。神奈川県では全域に分布している。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●チバクギヌキヒメジョウカイモドキ Ebaeuschibaensis
生息環境:詳しい生態は不明であるが、樹林に生息していると思われる。
分
布:本州(関東地方)に分布している。神奈川県では相模原市の記録のみ。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の希少種
●ミツカドコナヒラタムシ Silvanoprusscuticollis
生息環境:ソダや薪などに生息する。
分
布:本州、奄美大島に分布している。神奈川県では相模原市の記録のみ。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●ヒラノクロテントウダマシ Endomychushiranoi
生息環境:キノコや枯木、樹皮下等に生息する。
分
布:神奈川県と長野県に分布している。神奈川県では丹沢周辺に分布する。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●テツイロヒメカミキリ Ceresiumsinicum
生息環境:広葉樹林に生息する。
分
布:本州、九州、奄美に分布している。神奈川県では市街地周辺の記録が多い。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●センノカミキリ Acaloleptaluxuriosaluxuriosa
生息環境:センノキ、カクレミノ、ヤツデなどが生育している樹林に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では各地に見られる。
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
●ホシベニカミキリ Eupromusruber
生息環境:タブノキが生育している樹林に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では三浦半島や鎌倉市、小田原市など
に記録がある。
選定理由:第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫C
●ラミーカミキリ Paragleneafortunei
生息環境:林縁のカラムシなどに生息する。
分
布:本州(関東以西)
、四国、九州に分布している。神奈川県では西部に多く見られたが、
最近県央部にも分布を広げている。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●クラークマルノミハムシ Argopusclarki
生息環境:樹林林縁などに生息している。
分
布:本州(箱根、丹沢周辺)に分布している。神奈川県では丹沢周辺に広く見られる。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●ヨリメチビヒゲナガゾウムシ Unciferakashii
生息環境:樹林に生息している。
分
布:本州に分布している。神奈川県では大和市や厚木市の記録がある。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●コゲチャホソクチゾウムシ Apionsemisericeum
生息環境:樹林に生息している。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では丹沢周辺に見られる。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●オオスズメバチ Vespamandariniajaponica
生息環境:平地から低山地の樹林などに生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では各地に見られる。
選定理由:第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫G
●ギンイチモンジセセリ Leptalinaunicolor
生息環境:山地草原や河川敷周辺のススキ草地やオギ草地に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では相模川流域に広く見ら
選定理由:神奈川県レッドデータ生物調査報告書の減少種
地域環境評価書−県央地域−による二級種
●ヒメキマダラセセリ Ochlodesochraceus
生息環境:日当たりの良い樹林付近、渓流、池畔の草地などに生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では湘南、小田原、箱根、津
久井及び丹沢地区の丘陵から山地に分布している。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●モンキアゲハ Papiliohelenusnicconicolens
生息環境:平地から低山地の樹林の多い地域に生息する。
分
布:本州、四国、九州、南西諸島に分布している。神奈川県では全域に見られる。
選定理由:第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫C
●ミズイロオナガシジミ Antigiusattiliaattilia
生息環境:平地から低山地の二次林などから高地の樹林まで広い地域に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では全域に見られる。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●ウラゴマダラシジミ Artopoetespryeri
生息環境:渓流沿いの林縁に多く生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では小田原、箱根地区以外に
分布するが川崎・横浜及び三浦半島では局地的である。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●オオミドリシジミ Favoniusorientalis
生息環境:平地から低山地の二次林などに見られる。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では小田原、箱根地区以外の
全地区に生息しているが、川崎、横浜三浦半島、県央などでは局地的である。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
第2回自然環境保全基礎調査の神奈川県特定昆虫G
●アカシジミ Japonicalutealutea
生息環境:暖帯から温帯林に広く見られる。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では小田原、箱根地区以外の
全地区に生息しているが、川崎、横浜三浦半島、県央各地区では雑木林の減少に伴
って生息地が限られてきている。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●ムラサキシジミ Narathurajaponica
生息環境:ブナ科の常緑樹や落葉樹が多い樹林に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では平地から丘陵地のアラカシの混じ
る雑木林に生息するが、産地は局限される。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●ゴイシシジミ Tarakahamadahamada
生息環境:平地から低山地のササ群落周辺に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
●クロヒカゲ Lethedianadiana
生息環境:平地から山地の樹林の周辺に多く生息する。
分
布:北海道、本州、九州に分布している。神奈川県では津久井、丹沢、箱根の山間地の
他、多摩丘陵、大磯・渋沢丘陵に生息している。
選定理由:地域環境評価書−県央地域−による二級種
(2)環境指標種の分布
現地調査で確認した昆虫類の中から分布・生態等を勘案して環境指標種を選定した。
以降に各環境ごとの指標種とその分布状況について述べる。
a)樹林環境指標種
良好な樹林環境の定義は難しいが、ここでは良好な樹林環境の指標種として①移動性が
あまりなく環境依存性があり、②ある程度の面的な広がりを必要とする種類であり、③大
型でなじみやすい昆虫として、アカスジキンカメムシ、コクワガタ、カナブン、ヤマトタ
マムシ、センノカミキリ、ガガンボモドキ、オオスズメバチ、ミズイロオナガシジミ、オ
オミドリシジミ、アカシジミの10種類を選定した。さらに、良好な林縁環境の指標種とし
てニッポンヒゲナガハナバチ、ヒメキマダラセセリ、ヒカゲチョウの3種を加えた計13種
を樹林環境指標種とした。
表4.2.9に樹林環境指標種の分布を示す。これを見ると最も多くの種を確認したのはK-1
地区の9種であり、次いでTY-2地区とD-5地区の6種、SA-3地区、SK-2地区、D-1地区の5
種の順であった。したがって、K-1地区の樹林環境が比較的良好であると考えられる。
表4.2.9
樹林環境指標種の分布
樹林環境指標種
低 地 部 (相 模 川 沿 岸 域 )
斜 面 部 (西 部 地 域 )
SA-1 S A - 2 SA-3 S A - 4 TY-1 TY-2 TY-3 TY-4 K-1
アカスジキンカメムシ
●
●
●
●
コクワガタ
●
カナブン
●
●
●
●
ヤマトタマムシ
●
●
センノカミキリ
●
オオスズメバチ
●
●
●
ニッポンヒゲナガハナバチ ●
●
●
●
ガガンボモドキ
●
●
●
ヒメキマダラセセリ
ミズイロオナガシジミ
●
●
●
●
オオミドリシジミ
●
アカシジミ
●
ヒカゲチョウ
●
●
●
●
●
13種
4
3
5
2
0
6
0
3
10
D-1
●
台 地 部 (東部地域)
境川流域
D-2 D-3 D-4 D-5 SK-1 SK-2
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
6
●
●
●
●
●
3
3
●
5
●
●
●
●
7
●
0
5
●コクワガタ Macrodorcasrectusrectus
生息環境:平地から低山地の雑木林に最も普通なクワガタムシ。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では平地から低山地にかけて
広く分布している。
確認状況:TY-2 地区、D-2 地区、D-4 地区、D-5 地区で確認した。
選定理由:平地の雑木林を代表する大型昆虫
●カナブン Rhomborrhinajaponica
生息環境:平地から低山地の雑木林に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では各地に見られる。
確認状況:SA-2 地区、SA-3 地区、TY-2 地区、D-4 地区、D-5 地区、K-1 地区で確認した。
選定理由:平地の雑木林を代表する大型昆虫
●ガガンボモドキ Bittacusnipponicus
生息環境:平地のやや湿った雑木林に生息する。
分
布:本州に分布している。神奈川県では平地から山地まで分布している。
確認状況:TY-2 地区、TY-4 地区、D-5 地区、K-1 地区で確認した。
選定理由:平地のやや湿った雑木林を代表する大型昆虫
●ヒカゲチョウ Lethesicelis
生息環境:雑木林周辺に多く生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では全域に広く見られる。
確認状況:SA-2 地区、SA-3 地区、SA-4 地区、TY-2 地区、D-1 地区、D-4 地区、D-5 地区、
K-1 地区で多くの個体を確認した。
選定理由:平地の雑木林を代表する蝶
b)都市部の環境指標種
都市部の環境指標種としては①狭い緑地で生息可能であり、②市街地によく見られる種
であり、③比較的なじみやすい昆虫として、アオマツムシ、カネタタキ、ツマグロオオヨ
コバイ、ヤブガラシグンバイ、チャバネアオカメムシ、マメコガネ、ムーアシロホシテン
トウ、ハリブトシリアゲアリ、ホソヒラタアブ、ダイミョウセセリ、キチョウ、ヤマトシ
ジミ、ムラサキシジミの13種を選定した。
表4.2.10に都市部の指標種の分布を示す。これを見ると最も多くの種を確認したのはTY
-2地区で全種確認しており、SA-2地区、D-1地区、K-1地区も12種と多くの種を確認してい
る。
表4.2.10
都市部の指標種
アオマツムシ
カネタタキ
ツマグロオオヨコバイ
ヤブガラシグンバイ
チャバネアオカメムシ
マメコガネ
ムーアシロホシテントウ
ハリブトシリアゲアリ
ホソヒラタアブ
ダイミョウセセリ
キ チ ョウ
ムラサキシジミ
ヤマトシジミ
13種
低 地 部 (相 模 川 沿 岸 域 )
SA-1 SA-2 SA-3 SA-4
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
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●
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●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
11
12
11
10
都市部の指標種の分布
斜 面 部 (西 部 地 域 )
TY-1 TY-2 TY-3 TY-4 K - 1
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
4
13
4
10
12
台 地 部 (東 部 地 域 )
D-2 D-3 D-4
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
12
10
10
11
D-1
●
●
●
●
●
境川流域
D-5 SK-1 SK-2
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
10
10
12
●カネタタキ Ornebiuskanetataki
生息環境:雑木林などに見られ、公園、庭木などにも生息する。
分
布:本州、四国、九州、南西諸島に分布している。神奈川県では全域に広く見られる。
確認状況:TY-1 地区以外のすべての調査地区で確認した。
選定理由:都市部の樹林の普通種
●ツマグロオオヨコバイ Bothrogoniaferruginea
生息環境:樹林林縁部に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では全域に広く見られる。
確認状況:SA-4 地区、TY-1 地区、TY-3 地区以外のすべての調査地区で確認した。
選定理由:平地の雑木林の普通種
●ヤブガラシグンバイ Cysteochilaconsueta
生息環境:樹林林縁部などのヤブガラシに見られる。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では全域に広く見られる。
確認状況:SA-1 地区、SA-2 地区、SA-3 地区、SA-4 地区、SK-1 地区、SK-2 地区、TY-2 地区、
D-1 地区、D-2 地区で確認した。
選定理由:平地のマント群落の普通種
●チャバネアオカメムシ Plautiacrossotastali
生息環境:樹林に生息する。
分
布:本州、四国、九州に分布している。神奈川県では全域に広く見られる。
確認状況:SA-2 地区、SA-3 地区、SA-4 地区、SK-1 地区、SK-2 地区、TY-2 地区、D-1 地区、
D-2 地区、D-3 地区、D-4 地区、D-5 地区、K-1 地区で確認した。
選定理由:平地の樹林の普通種
●マメコガネ Popilliajaponica
生息環境:草地から樹林林縁部まで広く生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では全域に見られる。
確認状況:SA-1 地区、SA-2 地区、SA-3 地区、SA-4 地区、SK-2 地区、TY-2 地区、D-2 地区、
D-3 地区、D-4 地区、K-1 地区で確認した。
選定理由:平地の樹林林縁や草地の普通種
●ムーアシロホシテントウ Calviamuiri
生息環境:樹林林縁部に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布する。神奈川県では各地に普通である。
確認状況:SA-2 地区、SK-1 地区、SK-2 地区、TY-2 地区、D-2 地区、D-3 地区、D-4 地区、
K-1 地区で確認した。
選定理由:平地の雑木林の普通種
●ハリブトシリアゲアリ Crematogastermatsumuraimatsumurai
生息環境:樹林に生息する。
分
北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では各地に見られる。
確認状況:SA-1 地区、TY-3 地区、D-4 地区以外のすべての調査地区で確認した。
選定理由:平地の樹林の普通種
●ホソヒラタアブ Eisyrphusbalteatus
生息環境:樹林林縁部などに生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では各地に見られる。
確認状況:SA-1 地区、SA-2 地区、SA-3 地区、SA-4 地区、SK-2 地区、TY-2 地区、D-2 地区、
D-3 地区、D-4 地区、K-1 地区で確認した。
選定理由:平地の雑木林の普通種
●ダイミョウセセリ Daimiotethys
生息環境:樹林周辺に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では各地に見られる。
確認状況:SA-1 地区、SA-4 地区、SK-1 地区、SK-2 地区、TY-2 地区、TY-4 地区、D-1 地区、
D-3 地区、D-4 地区、K-1 地区で確認した。
選定理由:平地の樹林周辺の普通種
●キチョウ Euremahecabe
生息環境:平地から低山地の草地や路傍などに生息する。
分
布:本州、四国、九州、南西諸島に分布している。神奈川県では各地に見られる。
確認状況:TY-3 地区以外のすべての調査地区で確認した。
選定理由:平地の草地や路傍の普通種
●ヤマトシジミ Zizeeriamahaargia
生息環境:平地から低山地の草地や路傍などに生息する。
分
布:本州、四国、九州、南西諸島に分布している。神奈川県では各地に見られる。
確認状況:すべての調査地区で確認した。
選定理由:平地の草地や路傍の普通種
c)水辺・湿地環境指標種
良好な水辺・湿地環境指標種としては、①湧水・止水環境を代表する種であり、②環境
依存性が高い種であり、③比較的なじみやすい昆虫として、オニヤンマ、ハラビロトンボ、
ヒメアカネ、オオアメンボ、コミズムシ属の一種、マメゲンゴロウ、モンキマメゲンゴロ
ウ、ゲンジボタル、ミカドガガンボの9種を選定した。
表4.2.11に水辺・湿地環境指標種の分布を示す。これを見るとわかるように、最も確認
種が多いのは相模川流域のSA-2地区であり、次いでSA-1地区とK-1地区であった。河岸段丘
部や台地上部、境川流域は、今回の結果から見ると水辺・湿地環境は良好であるとは云え
ない。
表4.2.11
水辺・湿地環境指標種の分布
斜 面 部 (西 部 地 域 )
水 辺 ・ 湿 地 環 境 指 標 種 低 地 部 (相 模 川 沿 岸 域 )
S A - 1 SA-2 SA-3 SA-4 TY-1 TY-2 TY-3 T Y - 4 K-1
オニヤンマ
●
●
●
ハラビロトンボ
●
●
ヒメアカネ
●
●
オオアメンボ
●
コミズムシ属の一種
マメゲンゴロウ
●
モンキマメゲンゴロウ
●
ゲンジボタル
●
ミカドガガンボ
●
9種
3
5
0
0
0
1
0
0
3
D-1
境川流域
台 地 部 (東 部 地 域 )
D-2 D-3 D-4 D-5 SK-1 SK-2
●
●
0
0
0
0
2
0
0
●ハラビロトンボ Lyriothemispachygastra
生息環境:平地や丘陵地の挺水植物が繁茂する沼沢地や湿地に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では川崎、横浜、湘南、県央
地区に記録があるが少ない。
確認状況:SA-2 地区、K-1 地区で確認した。
選定理由:良好な止水環境の指標種
●ヒメアカネ Sympetrumparvulum
生息環境:平地から丘陵地の水生植物が繁茂する滲出水のある湿地や休耕田などに生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では少ない種の一つで各地に
見られるものの分布は限られている。
確認状況:SA-2 地区、TY-2 地区で確認した。
選定理由:良好な止水環境の指標種
●マメゲンゴロウ Agabusjaponicus
生息環境:基本的には止水に生息するが、あらゆる水域に見られる。
分
布:北海道、本州、四国、九州、南西諸島に分布している。神奈川県では各地に見られ
る。
確認状況:SA-1 地区で確認した。
選定理由:良好な止水環境の指標種
●モンキマメゲンゴロウ Platambuspictipennis
生息環境:清流に生息し、河川の上流から下流まで広い範囲に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。神奈川県では各地に見られる。
確認状況:SA-1 地区で確認した。
選定理由:良好な水辺環境の指標種
●ミカドガガンボ Ctenacroscelismikado
生息環境:休耕田などの湿地の周辺に生息する。
分
布:北海道、本州、四国、九州に分布している。
確認状況:K-1 地区で確認した。
選定理由:良好な湿地環境の指標種