セルフピアスリベッティングと メカニカルクリンチングによる 高張力鋼板とアルミニウム合金板の塑性接合 豊橋技術科学大学 森 謙一郎 http://plast.me.tut.ac.jp/ 自動車の軽量化に対して高張力鋼板とアルミニウム合金板の使用が増加しているが,融点 が大きく異なるため,これらを溶接によって接合することは困難である.セルフピアスリ ベッティングとメカニカルクリンチングは板材を常温で塑性変形させることによって接合し ており,異種材料の接合が可能であり,本講演ではそれらについて説明する. セルフピアスリベッティングと メカニカルクリンチングによる 高張力鋼板とアルミニウム合金板の塑性接合 豊橋技術科学大学 森謙一郎 自動車車体の接合 板組 接合 車体軽量化:高張力鋼板とアルミニウム合金板 骨格部材の45%高張力鋼板 アルミ自動車 溶接:異種材の接合は困難 アルミニウム合金板の接合 • • • • • • 1) セルフピアスリベッティング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 2) メカニカルクリンチング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 アルミニウム:溶接性 が低い Audi_A2:アルミ自動車 表 裏 セルフピアシングリベット セルフピアスリベッティングの接合ロボット セルフピアスリベッティングの接合プロセス リベット パンチ リベティング装置 ロボットアーム 板押え ロボット Cフレーム セルフピアスリベッティングの特徴 パンチ リベット (鋼) 板押え • • • ダイス 板にSPRを打込み,機械的に結合 穴あけ不要 溶接の難しい材料の接合 異種材の接合 接合部 スポット溶接と同程度の接合速度 • • • 1) セルフピアスリベッティング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 2) メカニカルクリンチング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 Cフレーム セルフピアスリベッティングによる接合 接合要件 ・上板の貫通 ・下板で広がり インターロックの形成 ・下板の割れなし 高張力鋼板とアルミニウム合金板の 接合における問題点 高張力鋼板 ・高強度 ・延性小 高張力鋼板:440-980MPa アルミニウム合金板:A5052 パンチ 板押え インターロック 上板未貫通 上板 ダイ 下板 貫通 広がり (b) 上板の貫通 (c) 下板で広がりイン ターロックの形成 広がり:小 インターロック:小 (a) 打込み開始時 (a) 上板に高張力鋼板 下板割れ (b)下板に高張力鋼板 980MPa-アルミニウム合金板 の変形挙動(tu=1.4mm, tl=1.5mm) 高張力鋼板-アルミニウム合金板の接合範囲 3 3 480HV 340HV 2 1 良好 0 s=0.0mm s=1.4mm s=3.2mm s=5.0mm 1 2 下板厚さ tl /㎜ (a) SPFC440 1 良好 0 1 2 下板厚さ tl /㎜ (b) SPFC980 30 打込み荷重 P / kN リベット 480HV 340HV 980MPa 大きく 深く A5052 従来ダイ 上板厚さ tu / ㎜ 3 インターロックなし 2 1 良好 1 2 下板厚さ tl / ㎜ 修正前 3 25 リベット圧縮荷重 20 15 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 ダイ深さ / mm 改善ダイ 修正ダイスを用いた 高張力鋼板-アルミニウム合金板の接合範囲 上板厚さ tu / ㎜ 3 2 980MPa-アルミニウム合金板における 打込み荷重とダイ深さの関係 980MPa-アルミニウム合金板の接合性改善 0 インターロックなし 上板厚さ tu /㎜ 上板厚さ tu /㎜ インターロックなし セルフピアスリベッティングの 有限要素シミュレーション 3 インターロックなし 2 1 良好 0 1 2 下板厚さ tl / ㎜ 修正ダイ 3 (a) 上板 下板 SPFC980 t1.4, A5052 t1.5 (b) 上板 下板 A5052 t1.5, SPFC980 t1.4 3 アルミニウム合金板-高張力鋼板における インターロックに及ぼす下板強度の影響 ダイ形状の修正による アルミニウム合金板-980MPaの接合性向上 h1 h2 φ2.4 インターロック / mm φ10 0.3 h1=0.8mm,h2=2.2mm h1=0.2mm, h2=1.4mm (a) 上板1.5mm,下板1.4mm 0.2 0.1 0 400 500 600 700 800 900 1000 下板引張強さ / MPa h1=0.2mm, h2=1.4mm h1=0.8mm,h2=2.2mm (b) 上板1.5mm,下板2.0mm アルミニウム合金板-高張力鋼板における 接合範囲 3 3 上板厚さ tu /㎜ 上板厚さ tu /㎜ インターロックなし 2 ・上板・中板の貫通 接合要件 ・下板で広がり インターロックの形成 ・下板の割れなし パンチ インターロックなし リベット 2 1 下板割れ 0 セルフピアスリベッティングによる3枚板の接合 1 良好 1 2 下板厚さ tl /㎜ (a) SPFC440 3 0 板押え 上板 中板 下板 良好 1 2 下板厚さ tl /㎜ (b) SPFC980 ダイ 3 インターロック (a) 接合前 (b) 上板貫通 (c) 中板貫通 (d) インターロック の形成 セルフピアスリベッティングによる3枚以上の接合 SPCC アルミ アルミ (a) アルミ合金板の5枚 (上から4枚目まで0.5mm,下板=1.5mm) SPCC SPFC980 アルミ (b) SPCCとアルミ合金板 • • • (上板,中板=1mm,下板=2.5mm) SPFC980 SPCC アルミ インターロック (c) 高張力鋼板とアルミ合金板(上板,中板=1mm,下板=2.5mm) • • • 1) セルフピアスリベッティング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 2) メカニカルクリンチング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 接合された高張力鋼板とアルミニウム合金板の 強度評価法 引張せん断試験における破壊挙動 上板 引張せん断試験 JIS-Z-3136 F 20 F 125 (a) 上板破壊,3.3kN (A5052,tu=1.5mm, SPCC,tl=1.5mm) 150 十字引張試験 上板 F リベット JIS-Z-3137 下板 F F F (b) 下板破壊,2.4kN (A5052,tu =1.5mm, SPFC980,tl=2.3mm) 引張せん断試験における シミュレーションと実験による破壊挙動 引張せん断試験のシミュレーション 相当応力[kgf/mm2] 上板 リベット 下板 接合後の十字引張試験強度と破壊挙動 十字引張試験のシミュレーション F 相当応力[kgf/mm2] F F F リベット リベット 上板 リベット 上板 下板 下板 (a) 下板からの引抜け (b) 上板破壊 引張試験強度に及ぼす破壊強度 十字引張試験の実験結果 上板破壊 引抜け 引抜け 十字引張強さ 引抜け 上板破壊 上板強度・厚さ 接合強度 5 5 4 4 3 3 2 2 1 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0.5 1.0 3.0 2.5 2.0 1.5 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0.0 (a) SPFC980-A5052 インターロック,下板強度 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 (b) A5052-SPFC980 メカニカルクリンチングの接合プロセス • • • • • • 1) セルフピアスリベッティング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 2) メカニカルクリンチング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 メカニカルクリンチングの自動車への応用 接合要件 ・下板でのインターロックの形成 ・板材の破断なし パンチ インターロック Δx 板押え 上板 下板 ダイ ダイ 接合前 接合完了 セルフピアスリベッティングとメカニカル クリンチングの比較 表面処理高張力鋼板 パンチ 抵抗スポット溶接 電極の寿命:短い コーティング厚さ:小さい リベット リベット パンチ パンチ セルフピアス リベッティング メカニカル クリンチング ボンネットフード ダイ メカニカルクリンチング コスト:大 強度:高 ダイ コスト:小 強度:低 メカニカルクリンチングによる 高張力鋼板とアルミ二ウム合金板の接合 • • • • • • 1) セルフピアスリベッティング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 2) メカニカルクリンチング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 放射割れ 上板割れ 高張力鋼板 アルミ合金 高張力鋼板 (a)下板に高張力鋼板 アルミ合金 (b)上板に高張力鋼板 浅底ダイによる上板高張力鋼板の接合 平底ダイによる下板高張力鋼板の接合 0.25 0.25 SPFC590 インターロック Δx/㎜ 0.20 0.15 Δx =0.14㎜ (a)平底ダイ 0.10 標準ダイ 0.05 0 200 400 600 800 下板引張強さ/MPa インターロック Δx/㎜ 平底ダイ 0.20 0.15 Δx =0.12㎜ 0.10 (a)浅底ダイ 0.05 0 200 1000 400 600 800 上板引張強さ/MPa 1000 (b)標準ダイ (b)標準ダイ 工具形状の修正 tmin=0.43mm Δx=0.14mm 計算 tmin=0.40mm Δx=0.13mm 実験 • • • (a) 590MPa for d=8.5mm and h=1.8mm tmin=0.47mm Δx=0.03mm 計算 tmin=0.62mm Δx=0.06mm 実験 (b) 780MPa for d=8.5mm and h=1.5mm • • • 1) セルフピアスリベッティング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 2) メカニカルクリンチング 接合プロセス 高張力鋼板とアルミニウム合金板の接合 接合強度 十字引張り試験における破壊 十字引張強度 下板変形 上板変形 十字引張強さ 引抜け 上板最小肉厚部破壊 Δt 接合強度 Δx (b) 上板最小肉厚部破壊 (a) 引抜け 上板強度・ 最小部肉厚(Δt) インターロックΔx,上下板強度 アルミニウム合金板-高張力鋼板の 十字引張強度 接合されたアルミニウム合金の 引張せん断静的強度 上板 1.5 下板高張力鋼板 上板SPFC780 1.0 上板高張力鋼板 0.5 A5052,2.5mm A5052,2.5mm せん断引張疲労強度 /kN 0 200 400 600 800 1000 高張力鋼板の引張強さ /MPa 引張せん断荷重 /kN 十字引張荷重 / kN 4 下板 セルフピアス リベッティング 3 2 メカニカル クリンチング抵抗スポット 溶接 1 0 0.5 上板SPFC980 ナゲット端部 1 1.5 2 2.5 3 ストローク /mm 3.5 疲労限付近の負荷荷重における 板の最大主応力と降伏応力の比 接合されたアルミニウム合金の 引張せん断疲労強度 4 A5052,1.5mm 最大主応力比 440MPa,1.8mm 鋼リベット 3 0.8 A5052,1.5mm A5052,1.5mm A7075リ ベット 2 1.0 440MPa,1.8mm A5052,1.5mm A5052,2.0mm A5052,2.0mm 0.6 1 上板 メカニカル クリンチング 四角形 クリンチ 0 104 A5052,1.5mm A5052,1.5mm 105 106 繰り返し回数 n 抵抗スポット溶接 A5052,1.5mm; A5052,1.5mm 107 A5052,1.5mm 440MPa,1.4mm 0.4 上板 0.2 上板 (a) メカニカル クリンチング 下板 下板 (b) スポット溶接 (c) セルフピアス リベッティング 0.0
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