エスト・ウェスト ニュース - エスト・ウェストオークションズ

2016 年 6 月発行号
June 2016
エスト・ウェスト ニュース
Special feature on auction highlights
多彩な作品で好結果 スプリングセール
草間から菩薩像
幅広い作品にビッド集まる
別ジャンルの 2 点がトップロット
2016 スプリングセール香港は、5 月 31 日にヴィンテージワ
インおよび近代・戦後・現代美術、6 月 1 日に宝飾および中
国書画・骨董のセールという構成で開催された。
中国経済の減速によるアジア美術市場の低迷が言われている
が、人々が価格に対してより敏感になり、市場が以前にも増
して成熟してきたという見方もできる。今回のオークション
は今後の市場の方向性を示唆する多くの要素が認められた。
同額でトップロットとなった全く趣の異なる 2 作品、目にも
鮮やかな草間のアクリル画と、高さ 50cm という大きさが珍
しい清中期の弥勒菩薩像は、ともに競り合いの末、177 万香
草間 彌生「富士」 38 × 45 cm
港ドル( 約 2,570 万円 )で中華圏のコレクターに落札された。
その白熱した応札の様子からはアジア市場の回復だけではな
く、確かな審美眼をもったコレクターの存在を感じさせた。
ピカソから具体、競り合い活況
P. ピカソから始まった近代・戦後・現代美術のオークショ
ン。依然人気のセラミックは、下見会中、作品の裏側まで隈
なく確認する愛好家が多かった。結果、5 点全てが落札。続
く M. シャガール、J. ミロ、P. クレー、近代巨匠作家の作品
に会場の競り合いが続く。ポップアートの象徴、A. ウォー
ホルのロットを迎え、そしてバンクシーなど西欧の現代美術
作家作品も落札され、日本の戦後美術作家、今井俊満の作品
群へと移ってゆく。
今井作品は 20 点の出品。ここまで一人の作家の作品が集ま
ることは珍しく、今井の特集を組んだカタログが公開される
や否や問い合わせは殺到、オークション当日に期待が寄せら
れた。
オークション会場にずらりと並んだ今井作品は、下見会に訪
れた人々を魅了した。黒、白、紅、金、銀、藍、紫、緑。日
本人の生活のなかに深く浸透してきた色彩を用い、パリで
の生活により開花した独自の表現手段によって制作された今
井の作品。これら独特の色彩が織りなす躍動感溢れる筆使い
は、日本はもとより、中国大陸や台湾、香港、シンガポール
のコレクターを魅了した。中でもとりわけ異彩を放つ 131 ×
162cm の大作、「Chevalier de la Nuit」は、絵画という枠に
銅鎏金弥勒菩薩立像 h50.5 × w25 cm
* 日本円は 1 香港ドルを 14.5 円とした参考価格
Special feature on auction highlights
エスト・ウェスト ニュース
今井 俊満「Chevalier de la nuit」 131 × 162 cm
2016 年 6 月発行号
June 2016
は収まりきらない立体的な奥行きを感じさ
せ、圧倒的な存在感を醸し出していた。会
場と電話でのコレクターの競り合いの結果、
153 万 4 千香港ドル( 約 2,225 万円 )で落札。
今井の作品は全 20 点中 17 点という高落札
率を記録し、変わらぬ人気を保ち続けてい
ることを証明した。
「戦後」という特殊な時代に日本で生まれた
力強い表現方法を駆使する吉原治良、白髪
一雄、田中敦子、前川強らの具体作家の作
品は、日本を含むアジア、ヨーロッパのギャ
ラリストやコレクターに軒並み落札された。
その具体作家の中でもとりわけ多くの人の
興味を惹いたのは、元永定正である。下見
会では元永の作品目当てに訪れる人も多く、
絵本作家でもあった元永の作品を前にする
と、平仮名のみのタイトルからイメージさ
れる不思議な物語の世界に引き込まれる。1
作品が上値を超えて落札され、香港のコレ
クターの手に渡った。
草間彌生、不動の人気
今季のセールで最も強い存在感を見せたのは、草間であろう。アジアはもと
より欧米からの問い合わせの数は予想を超え、下見会中、草間の作品が飾ら
れた展示室は来場者が途切れることはなかった。水玉や網模様、かぼちゃな
どをモチーフにし、独特の色使いで知られる草間。幼い頃、病による幻覚や
幻聴の恐怖を鎮めるため、見たものをスケッチブックに描いていたという体
験が草間の絵の原点となった。今季は 87 歳になる今も現役で制作を続ける
草間の軌跡が垣間見られる 8 作品が並んだ。
オークションでは草間のロットになった途端、会場後方に位置する電話ビッ
ドブースの声がそれまで以上に騒がしくなった。会場に来ることのできない
世界中の参加者たちが電話ビッドを申し込み、電話の回線はすべて埋まり、
予備の電話も使用するような状況であった。会場の熱気は一気に高まり、2
点のセラミック作品は、43 万〜 63 万香港ドルの落札予想価格に対して、上
値を大幅に超える 112 万 1 千香港ドル( 約 1,625 万円 )で落札。続くコラージュ
や絵画も全てが台湾、フィリピン、香港、日本のギャラリストやコレクター
に落札され、アジアを中心とした国際市場での評価の高さが窺えた。
草間 彌生「パンプキン」 各 h28 × w29.8 × d26.5 cm
落札予想価格 43 万 - 63 万香港ドル
落札価格 112 万 1 千香港ドル 約 1,625 万円
シンガポール近代美術の先駆者、鐘 泗賓(チェオン・スーピン)。
多才な画風を操る鐘の抽象画が初登場。80 万〜 130 万香港
ドルの落札予想価格に対して、165 万 2 千香港ドル( 約 2,400
万円 )と上値を超える落札価格を打ち出した。
続く韓国近代・現代を代表する作家、李 聖子(リー・ソンジャ)、
金 興洙(キム・フンス)、金 昌烈(キム・チャンギョル)の作品は、同
国のコレクターが下見会中、何度も作品の前に足を運び吟味
する姿が印象的だった。会場の競り合いの結果、すべて落札。
PICK UP! 新 人 紹 介
日本現代アートを牽引する作家たち
* 日本円は 1 香港ドルを 14.5 円とした参考価格
桑山は色彩への強いこ
だわりを持ち、色の個
性と支持体の組み合わ
せが作る空間を計算し
ながら作品を創る。実
物を前にすると、その
独特のテクスチャーと
色に吸い込まれるよう
な不思議な感覚を覚え
る。3 万 〜 5 万 香 港 ド
ルの落札予想価格に対
し て、13 万 5,700 香 港
桑山 忠明「無題」
ド ル( 約 200 万 円 )と
h67.3 × w61.5 × d10.5 cm
上値を大幅に超えて落
札。今後の動向が気になる作家の一人である。
そして中盤に登場するのは奈良美智。世界的に有名になった
現在でも常に深く考え、自分を高める努力を怠らない奈良は
近年、アジアをはじめ世界中からこれまで以上に高く評価さ
れている。作品の価格がここ数年で数倍に跳ね上がるなど、
国内外のオークションハウスでその人気の高さは留まるとこ
ろを知らず、出品の 2 作品は、それぞれ中華系のコレクター
が高値で落札。
絵筆を使わず、手で直接キャンバスやダンボールに描く独特
のスタイルとライブペインディングで知られるロッカクアヤ
コ。現在 34 歳という若さでヨーロッパにおいてすでに確固
たる評価を確立している。作家の指先が紡ぎ出す鮮やかな色
と線、ダンボールの特質、その画風に惹きつけられるファン
は多く、アフターセールでの成立も含め 3 点が落札された。
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シンガポール、韓国など、アジアの戦後美術の作家の人気も
疑う余地はない。
昨年 11 月に日本で公開された映画「FOUJITA」が記憶に
新しい藤田嗣治。独自の乳白色や、一筆描きのごとくのびや
かに描かれながらも繊細な線によって特徴づけられる藤田の
絵は、フランスで熱狂的な支持を得ている。今回のスプリン
グセール香港で紹介した 1941 年制作の水彩画は、中華系の
コレクターが落札し、ヨーロッパや日本以外のアジアでの人
気が高まっていることを裏付ける結果となった。
オークションの終盤には、Z. ウーキーが登場。序盤に登場し
た P. クレーに影響を受け、抽象表現に傾倒したウーキーで
あるが、西洋の巨匠作家に引けを取らず、この作家ならでは
の魅力溢れる水彩、アクアチント、リトグラフの 5 作品は全
て落札となり、近代・戦後・現代美術のセールは幕を閉じた。
結果として、本ジャンル全 105 ロット、落札総額 1,972 万 3,110
香港ドル( 約 2 億 8,599 万円 )、落札率 78%となった。落札
率としては堅調であるものの、落札額の伸び率に課題の見え
るセールとなった。
熱気冷めやらぬオークション会場を、満足そうな表情を浮か
べ後にするコレクターの姿を目にして、次回のオークション
もまた、市場の今の需要だけではなく、その先のニーズを作
り出すようなラインナップを揃え、香港に戻りたいと感じた。
シンガポール、韓国の近代・現代作家
草間と同じく日本戦後美術を率いてきた作家たちの躍進は、今季のセールで
も目を見張るものがあった。堂本尚郎、菅井汲、山田正亮、山口長男、オノ
サトトシノブの作品は順当に落札。アジアに加え、フランス、イギリスなど
のヨーロッパのコレクターの手に渡った。早くから問い合わせの多かった一
人、杉全直は会場と電話での白熱した競り合いの結果、今季 4 作品全て落札。
ユーモアと官能的な表現で独特の世界観を描き出す平賀敬の作品は、下見会
で海外のコレクターの目を釘付けに。競り合いの結果、小品ながら 2 万〜 3
万香港ドルの落札予想価格に対して 12 万 9,800 香港ドル( 約 190 万円 )を打
ち出すなど、3 作品が全て落札された。
これまでの「アート」の概念を覆し、金属などの様々な素材を使用しながら、アメ
リカを中心に実験的作品を発表し続ける桑山忠明は、今季初めての登場となる。
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2016 年 6 月発行号
June 2016
山田 正亮「Work」 91 × 60.5 cm
落札予想価格 30 万 - 50 万香港ドル
落札価格 82 万 6 千香港ドル 約 1,200 万円
新入社員
鐘 泗賓(チェオン・スーピン)
「Abstraction」
79 × 97.5 cm
ペ テ ラ ン
裵 太郎
裵( ぺ )と申します。韓国の出身で、学生のときに日本に留学したことをきっかけに、
日本で働くようになりました。
エスト・ウェストに入社する前は貿易会社に勤めており、ずっと精密機械を取り扱っ
ていたので、美術品のオークション会社での業務はまったく新しい経験です。
香港での下見会およびオークションに参加した事で、美術品が鮮やかに見え、前職と
はまた違った感動がありました。今後は韓国のお客様とのやり取りを中心とした営業
スタッフを担当して参ります。入社したばかりなので、これから一生懸命勉強し、お
客様から「あなたにお願いしたい」という言葉が聞けるよう、向上心を持って頑張り
たいと思いますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
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2016 年 6 月発行号
June 2016
日本戦 後美術、落札価 格 高騰 の 10 年
- エスト・ウェストの 落 札 結 果 よ り -
具体をはじめとする日本戦後美術に対する世界的評
価の高まりを受け、それらの作品の、近年における
価格高騰は目を見張るものがあります。エスト・ウェ
ストでは 1990 年から継続して日本の戦後美術を世
界に紹介して参りましたが、10 年前と現在の落札
価格を比較すると、草間彌生が 50 倍になっており、
今から見ると破格のエスティメーションであったに
もかかわらず、不落札となってしまった白髪一雄の
大作もありました。
なぜこれほど
価格が上がったのでしょう?
日本の戦後期はアンフォルメルや具体派など、世界
的に評価されるべき高い実力をもった作家が多くい
ました。ロスコやポロック等、同時代のアメリカの
抽象美術が高く評価され、市場取引が高騰するなか
で、同等の実力を持った戦後の日本人作家だけが評
価をされず、市場での取引が割安であることに世界
の美術市場が目を向けたことがきっかけです。また
日本の美術に目を向けるに至った背景として、草間、
奈良、村上などが近年の世界市場を賑わせていたと
いうこともあります。
日本戦後美術の価格は
これからも上がりますか?
エストではこれらの作家が注目をされる前から、白
髪や田中、今井などの作家たちを世界に紹介してき
ました。近年になって「戦後美術」というジャンル
が著しく評価をされたとはいえ、日本の抽象作家で
はまだまだ良い作家もいますし、同時代の世界の抽
象作家と比べて相対的に価格が低いのは事実です。
価格が上がった代表的な作家たちもピークを迎えた
わけではないので、周辺作家の評価が上がることで、
既に価値付けられた作家たちの評価も比例して上昇
すると思います。
これから買うべき作家の作品は
どのように探したらいいですか?
独創性や力強さ、思想、空間、そして美術史上の文
脈など、絵画の原則ともいえるこれらの基礎的な要
素を備えつつ、かつ世間一般にとびつかれていない
作家が日本にはまだまだいます。「戦後」に括られて
いても、円熟期が 70 年から 80 年代に渡る作家も
いますし、また、日本以外のアジア各国の 50 年代、
60 年代の作家に目を向けるなど、少し地域や時代
を広げて捉えてみるのも良いかもしれません。あえ
てここに具体的な作家名を出すことはしませんが、
そのような作家をご自身で探し当てることも、コレ
クションをしていく上での醍醐味になると思います。
2005 年
2015 年
草間 彌生
「かぼちゃ」15.5×22 cm 2004 年
落札予想価格 20 万 - 30 万円
落札価格
27 万 6 千円
「かぼちゃ」15.8×22.7 cm 1990 年
落札予想価格 約 620 万 - 930 万円
落札価格 約
1,360 万円
白髪 一雄
「変化」130.5×162 cm 1989 年
落札予想価格 180 万 - 280 万円
不落札
「古史」91×91 cm 1982 年
落札予想価格 約 4,300 万 - 5,900 万円
落札価格 約
7,814 万円
今井 俊満
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2016 年 6 月発行号
June 2016
Special feature on auction highlights
五大シャトー、ペトリュスに人気集中
一大ワイン市場・香港で手応え
ヴィンテージワイン
2016 スプリングセール香港の幕開けを飾ったヴィンテージワ
インオークション。
オークション会場には多くの参加者がつめかけた。事前の書
面入札でも 20 ロット以上入札したビッダーがいるなど期待が
高まる中開かれたセールは、落札率 74%と堅調ぶりを見せた。
今回出品された全 102 ロット、総数約 400 本のほとんどが日
本の個人コレクターによるもので、五大シャトーはもちろん
のこと、ロマネ・コンティやヴォーヌ・ロマネ・クロ・パラ
ントゥをはじめとするブルゴーニュワイン、更に、これまで
エスト・ウェストで出品されることの少なかったイタリアワ
インも含まれており、非常にバラエティーに富んだラインナッ
プとなった。日本人のコレクションは保存状態がよいと人気
であることに加え、中には入手してから一度も木箱から出さ
れていないという完全未開封のものもあるなど、そのほとん
どがきわめて良好なコンディションであったことも大きな
セールスポイントとなった。
2008 年、それまでワインにかけられていた 80%の関税が完全
撤廃されて以降、ワインの輸入量が飛躍的に増えた香港。エ
スト・ウェストのセールが行われる直前にも、35 カ国以上の
出展者がワインやスピリッツを展示するアジア最大級のイベ
ントが開催されるなど、ワインに対する関心の高さがうかが
える。実際、今回の落札ロット数をビッダーの居住地域ごと
に分けると、香港が全ロットの約半数近くを占めている。中
国や台湾など、他の中華圏はいずれも 1 割未満に
とどまっていることからしても、同じ中華系の
中でも香港が群を抜いてワインにビッドして
いるのは明らかだろう。
また、ワインの産地ごとに落札率を見てみる
と、ブルゴーニュワインは 63.9%、イタリア
ワインは 66.7%であるのに対して、ボルドー
ワインは 81.2% であり、ボルドーワインの人
気の高さが看取される。ボルドーの中でもと
りわけ、ムートンやラフィット、ラトゥール
など五大シャトー、そしてペトリュスに対し
て多くのビッドが集まり、会場では何度もパ
ドルがあがっていた。
今後、香港のワイン市場が拡大を続けていく
とともに、ワイン愛好家の数が一層増えて
いくことが予測される。今回のセールはボル
ドーの有名銘柄の人気が優勢であったが、愛
好家の増加に伴い、ブルゴーニュやイタリア
ワインといった他の産地にも、より一層の関
心が向けられていく可能性も大いに有る。今
後も香港のワインマーケットを注視していき
たい。
見目麗しいシャトー・ムートンの " アーティスト・ラベル "
Chateau Mouton
五大シャトーの 1 つとして知られているシャトー・ムートンは、1945 年以降、毎年異なるアーティストにラベルデザイ
ンを依頼していることでも有名です。今回のオークションでは、全部で 12 種類の華やかなボトルが集まりました。M. シャ
ガールや P. ピカソ、K. ヘリング、F. ベーコンなど、これまでたくさんの著名なアーティストが、ワインやブドウ、羊( ムー
トンとはフランス語で " 羊 " )をテーマとしたラベルをムートンのために描いてきました。
「日の出」130 ×195 cm 1964 年
「黒い太陽」129.5 ×161.8 cm 1960 年頃
落札予想価格 150 万 - 250 万円
落札予想価格 約 930 万 - 1,400 万円
落札価格
落札価格
156 万 5 千円
ただし、中には例外もあり、2000 年のミレニアムを記念したボト
ルラベルは、アーティストが描いたものではなく、16 世紀ドイツの
羊型の銀製カップをもとにデザインされた羊が金色のエナメル彩であ
しらわれています( 左 )。また、2004 年のボトルは、英仏協商が調
印されてから 100 年を迎えたことを記念して、イギリスのチャール
ズ皇太子が描いた風景画をラベルとして用いています( 中央 )。
さらに、同じ年に 2 つの異なるラベルが作られたこともあります。
1993 年のラベルは、フランスの画家、バルテュスによって描かれた
横たわる裸婦像でした( 右 )。しかし、裸婦が描かれているためにア
メリカでは流通が禁止されてしまい、アメリカに輸出されるボトルの
み裸婦が消され、白い空白のまま出荷されました。このため、1993
年のボトルは、裸婦がいるものといないもの、2 パターンのラベルが
生まれることになりました。
約 4,154 万円
山田 正亮
「WORK C- 033」45.5×27 cm 1963 年
「作品 C.038」41×24 cm 1963 年
落札予想価格 15 万 - 25 万円
落札予想価格 約 110 万 - 190 万円
落札価格
落札価格
17 万 2,500 円
約 208 万円
* 2015 年の 予想価格、落札価格は香港ドルを日本円に換算した参考価格です
2000 年
2004 年
1993 年
生まれた年や結婚した年など、特別な年のムートンをどんなアーティ
ストが描いているのか、探してみるのも面白いかもしれません。
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エスト・ウェスト ニュース
2016 年 6 月発行号
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市場研究が功奏!ビッダー戻る宝飾部門
-ジュエリー&ウォッチ-
落札率 7 割近くの好結果
ジュエリー&ウォッチセールでは、今回は
中華圏のお客様のニーズが高い珊瑚、翡翠、
真珠などを中心としたラインナップ。下見会に
は中国大陸、香港、台湾、シンガポール、日本、
ロシアなど国際色豊かなお客様が来場され、毎回来
て頂いている香港のコレクターも競り合いを予感され
ていたのか、より熱心に下見を行っていた。
オークションは成り行きの珊瑚からスタート。エンジェルス
キン珊瑚、桃珊瑚のネックレスはビッダーにとって魅力的な、
手ごろ感のあるエスティメイトを設定し、下値の 7 千香港ド
ル( 約 10 万円 )の半額からの競り合いとなった。予想通り、
白熱した応札が重なり、予想価格下値の 2 倍以上で落札され
た。しかしなお、その落札価格は一般的な小売店等での販売
価格を下回る。改めてオークションでの売買は出品者・落札
者双方にとって利益となるものであると実感した。珊瑚の人
気が高いことは予想していたものの、会場のパドルが目まぐ
るしく挙がる様子は息もつかせなかった。
続く翡翠も 7 点中 6 点が落札という好結果。また、前回あた
りから、中華圏の翡翠の愛好家は年配の方だけではなく、若
いコレクターも多く見受けられ、翡翠文化はこれからも中華
圏に広がってゆくことを実感した。真珠にもビッドが重なり、
その内、大粒の真珠のネックレスは比較的リーズナブルな予
想価格であったことも幸いし、上値の 2 倍近くの値段で落札
された。
ダイヤモンド系ジュエリーもよく競られ、ほとんどが落札され
た。その一つ、イエローダイヤモンドネックレスは今回のジュ
エリーセールのハイライトであり、10 万~ 15 万香港ドルの予
想価格に対して、16 万 5,200 香港ドル( 約 240 万円 )で香港の
お客様が落札した。続いてエメラルドの中にキャッツアイ効果
があらわれる希少な宝石、コロンビア産 エメラルドキャッツ
アイの指輪は 7 万 6,700 香港ドル( 約 110 万円 )で落札された。
9.19 ct コロンビア産 エメラルドキャッツアイ
ダイヤモンド プラチナリング
2.080 & 1.054 ct ファンシー インテンス
イエロー ダイヤモンド プラチナネックレス
* 日本円は 1 香港ドルを 14.5 円とした参考価格
2016 年 6 月発行号
June 2016
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予想額 10 倍で落札の文物
中国美術に活気ふたたび
下見会から白熱する審美眼
後半に入り、サファイア系も落札率
81% と好調で、34.15ct ブルースター
サファイアリングは予想価格下値の
3 倍、8 万 8,500 香港ドル( 約 130 万
円 )で海外のお客様が落札。前回に
引き続き、スターサファイアは人気
であった。また、2.006ct ビルマ産ピジョン
ブラッドルビーリングも下値の半額、1 万香港ドル( 約 15 万円 )
からのスタートという圧倒的な魅力でビッダーを惹きつけた。
また、丹念に仕上げられたミキモトの真珠ネックレスも人気
を博し、ブルガリのマルチカラーストーンネックレスとティ
ファニーのダイヤモンドリングも落札され、これらオーソ
ドックスなデザインのブランドジュエリーは時代を問わず人
気であることを感じさせた。
カタログの裏表紙にも登場した翡翠ダイ
ヤモンドネックレスは、美しい翡翠と、
無色透明の最高値である D カラーのダイ
ヤモンドが付いている。この作品を競る
ためにオークションに参加したお客様も
いたほど。結局 6 万 5 千香港ドルの上値
を超え、8 万 2,600 香港ドル( 約 120 万円 )
で落札された。
セール最後は数が少ないながら人気を博し
た時計 2 ロット。それぞれ予想価格下値の
約 2 倍ですべて香港のお客様が落札した。
今回のジュエリー&ウォッチは、オークション中に静まるよう
な瞬間がほとんどなく、会場も電話ビッドも最初から最後まで
ずっとパドルが挙がり続けるような雰囲気であった。香港の
ジュエリー市場は数年前のバブル期、昨年の不景気を経験し、
いま回復していることが感じられる。ぜひ次回のオータムセー
ルでは多くの魅力的なジュエリーを集められるよう努めたい。
2016 年 5 月香港スプリングセールの東洋美術部門では、計
131 点の作品が登場し、仏教文物、近・現代絵画、唐宋元明
清陶磁器、青銅器、寿山石、漆・木製品、玉製品、文房用具
など、様々なジャンルが揃う充実したラインナップとなった。
下見会では現地香港をはじめ、中国、台湾などの愛好家が数
多く来場し、何度もご来場いただいている欧米のコレクター
の姿も見られた。前回の香港下見会よりも広い展示スペース
を確保していたものの、数多くの熱心なコレクターにより下
見会の展示場は賑わいを見せた。会場に入るなり、すぐに興
味のある作品を尋ねる愛好家がいる一方で、最初から最後ま
で一つ一つの作品を丹念にチェックする来場者も見られた。
昨年のオータムセールで大好評を博した「釋迦牟尼本生唐卡」
に続いて、今回のスプリングセールでも仏教文物からクオリ
ティーの高い逸品が登場。特に清中期の貴重な鎏金仏像は、
下見会で多くの注目を浴び、ショーケースは常に熱心な愛好
家に囲まれていた。他の仏像も下見のために一体ずつケース
から取り出され、ひとときもケースの中に落ち着いているこ
とがないほどであった。一点の作品を 30 分以上かけて吟味
する愛好家の姿も印象深かった。書画では中国近現代作家の
実力者である斉白石、徐悲鴻などの作品を揃え、昨年高い伸
び率と 100%の落札率を達成した汪亜塵の作品も出品された。
陶磁器では今回も唐宋・明清時代の作品が出品され、その中
では絶対数が少ない、非常に珍しい釉色による宋時代の「龍
泉窯青釉洗」が多くの愛好家を魅了し、一目見ようと常に数
人がショーケースの前に並んでいる光景も見られた。
その他、人気分野である玉製品は清時代と高古の玉を紹介し、
加えて、寿山石・田黄コレクションも新たなチャレンジとし
て出品された。
弥勒菩薩像 がトップロットを飾る
6 月 1 日の夕方、大盛況であったジュエリー&ウォッチオー
クションに引き続き、中国古美術オークションの会場も満席
に近い状態となった。注目を浴びていた仏教文物からスター
ト。途端に白熱した競り合いにより早くも序盤のクライマッ
クスを迎えた。最初に登場した「銅鎏金金剛持座像」は 2 万
5 千香港ドルから競りがスタートし、落札予想価格上値を超
えて 23 万 6 千香港ドル( 約 340 万円 )で落札された。続いて、
大きさと美しさを揃えた「銅鎏金彌勒菩薩立像」の登場と共に、
さらに息を飲む白熱した雰囲気となった。18 万香港ドルから
競り始めると、会場では激しい競りが展開され、電話入札も
負けずに応札。次々とパドルが挙がり、またたく間に倍の金
額に達した。その後も競り合いが続き、オークショニアがハ
ンマーを打ち鳴らした時には 177 万香港ドル( 約 2,570 万円 )、
龍泉窯青釉洗 h5.0 ×φ 13.8 cm
落札予想価格下値の 7 倍の金額で電話入札の愛好家に落札さ
れ、前日の現代美術と並ぶ今季のトップロットを記録した。
龍泉窯 が予想額 10 倍、巨大珊瑚も落札
中盤に登場した「龍泉窯青釉洗」は今回のオークションで最も
高い伸び率を示した。カタログが公開されてから実に多くの問
い合わせを受け、電話と書面入札が殺到。電話ビッドの回線が
すべて埋まる人気となった。結果として、落札予想価格の 10
倍を超える 27 万 1,400 香港ドル( 約 394 万円 )で落札された。
その他、高さ 60cm を誇る巨大な珊瑚置物「珊瑚八仙人文置物」
が 70 万 8 千香港ドル( 約 1,030 万円 )で落札。書画では汪亜塵
の作品が、市場価格からみると手ごろ感のある、ほぼ 1 万香港
ドル近くという金額で全て落札され、明清・高古玉製品、田黄・
寿山石など、コレクターたちが強い関心を持つジャンルも、今
回はリーズナブルな金額で落札され、それもオークションなら
ではの魅力だと思われた。
全体から見ると、書画や一部の文物に不落札が重なり、落札
率は低いものとなった。しかし予想以上に高額となった作品
もあり、課題も含め新たな発見の多いセールであった。また、
この分野はこれまで中国大陸の愛好家が落札者の中心と認識
されていたが、近年、台湾や香港のビッダーも増え、さらに欧米
の愛好家にも落札して頂けたのは新しい傾向として歓迎すべ
きことであった。中国古美術を含めた東洋美術の良い作品を
紹介し続け、世界に広げるため今後も努力を重ねていきたい。
Special feature on auction highlights
エスト・ウェスト ニュース
落札率 86%
幅広く競られ好結果
2016 年 6 月発行号
June 2016
東京オークション
4 月 21 日(木 )エスト・ウェスト五反田セールルーム
日本・東洋美術
日本美術は下見会・オークションに多くの日本や中国の愛好
家にご来場頂き、落札率は 86% と前回に続き好調となった。
荒川豊蔵や三輪休雪、河井寛次郎など日本の陶芸界を支えた
近代陶芸作家の作品は依然として国内の愛好家からの評価・
注目度が高く、出品された作品のうち 8 割が落札された。中
でも川喜田半泥子の独特なユーモアを感じられる「信楽平水
指」はオークション前から問い合わせが多く、下見会でも来
場者の手に取られ人気を博した。伊万里焼や九谷焼など、江
戸期に制作された古陶磁器も日本の愛好家により全て順当に
落札されている。
金彩を多く用いて細かく
絵付けがなされた煌びや
かな薩摩焼と、蒔絵が施
された美しい漆工芸作品
はその絢爛さと綿密さが
中国圏の愛好家たちに好
まれ高値での落札となっ
た。また、竹で組まれた
伊藤 賢一郎「耳付掛花籠」
上品な花篭は現在香港を
h24 × w36.8 cm
中心に人気が広まってお
落札予想価格 5 万 - 8 万円
り、出品された 3 作品と
落札価格 18 万 4 千円
も予想価格上値を超えて
落札、今後も注目される作品の一つである。前回不調であっ
た七宝作品は出品された 18 作品が全て落札、日本と中華圏の
愛好家が競り合う形となった。
今回のセールで最も結果を残したのはやはり伽羅・沈香から
なる香木だろう。オークションでの平均落札率は 6 ~ 7 割程
度と言われているが、香木はエスト・ウェストで近年に開催
2016 年 6 月発行号
June 2016
エスト・ウェスト ニュース
Special feature on auction highlights
中華系ビッダー回復、落札率伸びる
-西洋装飾美術-
ガレの初期作品に予想価格 3 倍超の高値
された全てのセールで落札率 100% を誇る稀有とも言える存
在。本セールでもその勢いそのままに 25 ロット全てが落札さ
れ会場を盛り上げた。
今回の日本美術部門ではロット数が 109 点と、いつもの東京
オークションのこの部門にしては少なかったが、前述した陶
磁器、漆器、七宝、香木の他にも象牙や銀瓶なども順当に落
札され、全体的にバランスよく競られていた。
今回は目玉となる高額作品がなかったものの、質の良い小品
を集めたことが市場の需要と見合った結果と思われる。もち
ろんエスト・ウェストの強みである多彩なコレクターのお客
様の興味を惹きつける高額な優品を集めていくべきではある
が、今回の東京オークションを通じて、市場の新たな需要、
傾向を知ることができたことは大いに意義のあることであっ
た。今回も多数出品された日本の伝統工芸作品は、まだ値が
上がりきらず、海外コレクターによる収集熱が予見される分
野として、今が買い時と言える。
秋のセールに向けて、課題を見極めつつ、今、そして今後の
市場の動きを読んだ作品集めに努めたい。
開始 から 1 周年! エスト・ウェスト ライブビッド 回を重ね順調
春のライブビッド、4 月の東京オークションについては、この 1 回で 昨年 1 年間 の 約 2.5 倍もの落札額を獲得すること
ができました。昨年、ライブビッドを始めた初回の東京オークションでは、ライブビッド確認用のパソコンにはじめの 1
ビッドが届き、ほっと安心した記憶もまだ新しいのですが、今回の
東京オークションではそのレベルをはるかに超え、ライブビッドの
単位(千円)
ライブビッド 東京セール落札額推移
4,000
参加者が会場の参加者と 30 回以上も応札を繰り返したり、ライブ
ビッド同士で競り合うことでオークショニアをはじめ会場を盛り上げ
3,000
たりと、ライブビッドを起点として白熱する場面が多く見られました。
非常に感動しています。
ライブビッド参加のお客様の落札額が増えてきたのは、つまり、ライ
ブビッド全体の参加者が増えてきたからなのですが、ここまで参加人
数を増やすことができたのも、運用に信頼をいただいているからこそ
だと思っております。次回オークションに向け、国内外を問わず、更
に多くのお客様に参加して頂けるよう、工夫して参りたいと思います。
( 担当:小島 )
2,000
1,000
0
2015
スプリングセール
2015
オータムセール
2016
スプリングセール
今回、西洋装飾美術の落札率は 85.1% と、昨年秋のセール
よりも 8.4 ポイント高い数値を記録。
落札ロット数のシェア率を地域別で見ると、日本が 50%で
あるのに対し、中国・香港はあわせて 48%( 中国 37%、香
港 11% )と、日中がほぼ二分している。中国経済の株安の
影響を受けた昨年秋のセールでは、日本が 54%、中国・香
港が 35%であったのに比べると、今回のセールで中国系
ビッダーが再びシェアを増やしているのは明らかであり、
株安が起こる前の 2015 スプリングセールとほぼ同じ状態ま
で回復した。
アール・ヌーヴォー作
品の中でも問い合わせ
が多かったのは、ガレ
「蝶文花瓶」。金属酸化
物の粉末をガラスに入
れるサリシュール技法
によって生み出された
深緑の斑紋の上に、金
彩とエナメル彩による
華やかな装飾が施され
た本作は、下見会中も
一際多くの人の目を惹
E. ガレ「蝶文花瓶」h12.1 ×φ15.7 cm
いていた。落札予想価
格は 100 万~ 150 万円であったが、最終的に 322 万円にま
で値が上がり、会場は拍手に包まれた。
また、高さ 20cm の小品ではありながら黄色と黄緑色の斑
紋が美しいティファニースタジオの「瑪瑙文花瓶」は、172
万 5 千円で落札。ドーム「水仙文花瓶」は、溶着したガラ
スの小片を彫刻するラメール技法によって可憐な水仙が描
出された優品で、109 万 2,500 円で愛好家の手に渡った。
美しいラリック作品に
会場参加者とライブビッダー競り合い
中華系ビッダーの参戦が目立ったラリック作品は、全ての
ロットが落札。「小首をかしげる女性」が落札予想価格上値
を超えて 230 万円となった他、花瓶「マリサ」は 55 万 2 千円、
蓋物「プリムヴェール」は 63 万 2,500 円で落札されるなど、
成り行きの作品にも国内外から、そしてインターネットか
らの参加であるライブビッドを含め、数多くのビッドが集
まった。
オークション中盤には、カタログの表紙にもなった D.H. シ
パリュス「シヴァ」が登場。本作品の存在感もあり、今回
のセールではシパリュスをはじめとするアールデコ彫刻を
集めることができた。残念ながら「シヴァ」は不落札となっ
R. ラリック「小首をかしげる女性」
h37 × w20 × d10 cm
てしまったものの、アールデコ彫刻の中でも象牙・ブロン
ズ彫刻に対するビッダーの評価は一際高く、ほとんどが落
札予想価格上値を超える結果に。とりわけ、象牙・ブロン
ズ彫刻「戦士」のロットは競りが白熱し、予想価格 25 万~
35 万円に対し 161 万円となった。
これらの彫刻作品に比肩して、テーブルウェア・カトラリー
類の競りには目を見張るものがあった。落札率は 100%を
記録し、その内の半数以上が予想価格上値を超えている。
バカラやマイセンなど、ネームバリューのあるブランドの
作品は安定した人気を保持し続けているが、鮮やかな花模
様や金彩が施された華やかな作品は、より一層中華系ビッ
ダーからの熱い支持を受けていた。
ま た、 前 回 の セ ー ル
に引き続き今回も登
場した古代ものの作
品 群 は、 フ ラ ン ス の
美術雑誌に広告を掲
載した効果もあって
か、 日 本 の み な ら ず
欧米のコレクターか
らの問い合わせがい
つも以上に多かった。
特 に、 美 し い 線 描 装
飾 が 印 象 的 な「 ラ ス
ラスター彩ペルシャ文字文鉢
h7.6 ×φ 17.2 cm
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エスト・ウェスト ニュース
2016 年 6 月発行号
June 2016
存在感しめす台湾市場
ほぼ全点落札のファインアート
2016 スプリングセール東京のラストを飾ったのは、ファイン
アートの作品群。赤瀬川源平や藤田嗣治、L. イカール、G.
ルオーなど、洋の東西問わず非常に多彩なアーティストた
ちが一堂に会した。2016 年現在も活動を続けており、東京
都現代美術館で開催された大規模な回顧展も記憶に新しい
菅木志雄による作品「界離」は、落札予想価格 10 万~ 15
万円に対して 172 万 5 千円という驚くべき記録を残した。
PICK UP!
作品解説
Special feature on auction highlights
激化するアジア美術市場、日本に追い風
ター彩ペルシャ文字文鉢」は、コンディションがきわめて
良好であったことからも非常に多くの注目を集め、激しい
競り合いの結果、落札予想価格 18 万~ 28 万円を大きく超
えて 86 万 2,500 円で落札された。
スプリングセール全体を振り返ると、やはりガレ「蝶文花
瓶」のような高度な技法を駆使したアーティスティックな
作品や、希少性の高い優品はまず間違いなくコレクターた
ちからの評価を受けている。
同時に、今回のセールで顕著だったのは、比較的手が届き
易い成り行きのロットに対して、前回以上に関心が高く
なっている点だろう。これまで本稿で紹介したラリックの
花瓶「マリサ」や蓋物「プリムヴェール」、テーブルウェア
類など、激しい競り合いを繰り広げ予想価格以上の結果を
出したのは多くが成り行きのロットであった。
これらの作品に比べると、ガレやドームの後期の作品や、
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2016 年 6 月発行号
June 2016
菅 木志雄「界離」
h17.9 × w10 × d18 cm etc.
マイセンであってもフィギュア作品などは今回それほど金
額が伸びず、目覚ましい結果とは言えなかったが、逆に考
えれば今が買い時と言えるだろう。
クオリティーの高い優品の人気は必定であるが、その一方、
華麗で優美な作品であるにもかかわらず予想価格がそれほ
ど高くない手ごろ感のあるロットが、多くのビッダーの興
味を惹いている。冒頭で触れた通り、中国大陸系ビッダー
は再びシェア率を上げてきているものの、まだ中国経済の
完全な回復には至っていない現在、この傾向はしばらく継
続するのではないかと思われる。
ベル・エポック の 旅 行ブームを象徴
セレブ のマストアイテム "トラベルケース "
東 京 セ ー ル の 下 見 会 で、 多 く の 人 が 足 を 止 め て 見 て い た
S.T. デュポンのトラベルケース。出品されることが多くない
せいか、興味を持たれた方がたくさんいらっしゃいました。
S.T. デュポンと言えば、高級ライターのブランドと思われる
方も多いかもしれませんが、デュポンがライターの製造を開始
するのは 1940 年代になってからのことで、1872 年の創業
当初は上流階級向けの旅行鞄や革製品などの工房として出発し
ました。19 世紀フランスで活躍した印象派の画家たちが、鉄
道の駅や汽車、郊外でのレジャーの様子をたびたび描いている
ことからも分かるように、交通網の整備・発展が進むにつれ、
富裕層の人々は旅行や遠出を楽しむようになっており、時代の
流れに乗ったデュポンは大きな成功を収めます。
しかしながらこの結果は、台湾の躍進を示すだけでなく、
中国大陸の美術市場の停滞をも表しているだろう。世界の
美術市場動向を調査している欧州美術財団( TEFAF )が発
表した最新のリポートによれば、2015 年、全世界での美術
品の売上高は 682 億ドル( 約 8.2 兆円 )から 638 億ドル( 約
7.7 兆円 )に下落し、前年まで市場でのシェア率がアメリカ
に次いで 2 位であった中国は、今回その座をイギリスに譲っ
て 3 位にランクダウンした。やはり、2015 年上半期に起き
た世界同時株安とそれに伴う中国経済の減速が、美術市場
にも如実に影を落としている。
もうひとつ、このリポートで興味深く思われるのは、2015
年はあらゆる美術の中でも戦後美術と現代美術が最も多く
取り引きされたという点である。本紙でも紹介した通り、
草間彌生や白髪一雄、山田正亮など、日本の戦後・現代美
術作品はこの 10 年で高騰しており、今後もこの傾向は続く
ことが予想される( 本紙 4 ページ参照 )。
また、4 年後、東京オリンピックが開催されるが、これは世
界中の目が日本に集まる大イベントであり、日本が世界に向
けて自国の文化を発信する大きなチャンスである。オリン
ピックを契機として、日本のアートシーンに対してより一層
関心が高まり、美術市場が賑わう可能性も大いにあるだろう。
圧倒的な日本人コレクター登場
加えて、新世代の日本人コレクターが台頭しつつあること
も注目される。各メディアのニュースでも取り上げられて
いたが、昨年、通販サイト ZOZOTOWN の運営会社とし
て知られる株式会社スタートトゥデイの代表取締役・前澤
友作氏が、クリスティーズ・ニューヨークで J.M. バスキア
の大作を 5,728 万 5 千ドル( 約 62.4 億円 )で落札した。前
澤氏が落札した作品は、1985 年に初めて日本でバスキア展
が開かれた際に出品されていたものであり、日本にとって
歴史的な意味を持つ作品であったことが購入のきっかけと
なったと語る同氏の存在は意義深い。
バブル時代、日本人コレクターが世界の美術市場を賑わ
せていたころから遠くなって久しい中で、この華々しい
ニュースを聞けることは、美術マーケットの一端を担う弊
社として大変喜ばしく思う。
多くの人にとって美術品を購入するということ自体が縁遠
くなってしまっている昨今、まだ 40 代前半にして活躍する
前澤氏の存在は、若年層にとって大きな刺激ともなるので
はないだろうか。今後も新世代のコレクターたちが市場を
盛り上げていくことを期待したい。
香港事務所 新装開店!
2016 年 4 月 1 日より、エスト・ウェストオークションズ香港はオー
クションの開催場所であるルネッサンス・ハーバービューホテル香港の
Mフロアにオフィスを移転致しました。
都 彭
本作品は、黒い革のケースを開けると、内側が鮮やかな赤色で
彩られ、そこに小瓶やブラシ、小箱、爪の手入れセット、ソー
イングセット、大きな鏡などがコンパクトに詰め込まれていま
す。これらのキットは天然の純正漆が贅沢に使われ、熟練の職
人たちの手で丁寧に仕上げられました。
また、黒漆で塗られたパーツの表面には朱色の漆で「都彭」( デュポン )と漢字のサインが書かれ
ており、東洋の漆器をイメージさせる仕掛けを見ることができます。黒と赤の対比が美しい本作品
は、実用品としてももちろん、鑑賞用としても楽しめます。このような美しいアンティークはオー
クション以外で出会うことは難しいでしょう。次回も、興味深い作品をたくさんご紹介していきた
いと思います。
2016 年スプリングセール
東南アジア 3%
韓国 1%
香港における落札ロット 欧米 5%
数の地域別内訳を見る
中国
と、前回同様、香港のビッ
7%
ダーがロットの約半数を
台湾 36%
占めており、エスト・ウェ
日本 18%
ストが香港市場に受け入
れられているということ
を改めて実感できた。と
香港 30%
は言え、一番目を惹かれ
るのは、落札金額の地域
2016 スプリングセール香 港
別内訳において、台湾が
落札金額 地域別内訳
36% と 首 位 を 誇 っ て い
る点だろう。台湾のビッダーたちの落札ロット数はそれ程
多くないものの、トップロットとなった「銅鎏金弥勒菩薩
立像」や草間彌生の「富士」など、高額なロットの競り合
いを制したのはいずれも台湾であった。折しも昨年、東京
国立近代美術館で、台湾の代表的な美術愛好家であるヤゲ
オ・コーポレーション会長ピエール・チェン氏の一大コレ
クションが展示されていたが、今回のセールは、中国大陸
部や香港に引けを取らず、台湾の美術マーケットもまた大
きく成長し続けていることを証明する結果となった。
東洋趣味を反映した
漢字のサイン
先日開催された 2016 スプリングセール香港では、新しいオフィスが
オークション会場入口とつながっているように位置しているため、様々
な業務が円滑に行われただけでなく、多くのお客様に香港でのエスト・
ウェストの活動を強く印象づけることができました。
たまたま香港を訪れていた中華系のコレクターの方がオフィスの前を通
り、そこで下見会・オークションのことを知り会場に足を運ばれる姿も
見受けられました。皆様も香港においでの際はぜひ、お立ち寄り下さい。
Special feature on auction highlights
エスト・ウェスト ニュース
2016 年 6 月発行号
June 2016
2016 オータムセール東京・香港 開催
東 京オークション:10 月 21 日(金)- 22 日(土) 香 港オークション: 11 月 28 日(月)- 30 日(水)
出品作品募集中
作 品 募 集 締 切 東 京:9 月上旬 香港:10 月上旬
中国経済の変動、新興コレクターの活躍など、オークション市場は今、次なる流れが起こりつつあります。
エスト・ウェストでは世界のコレクターが欲しいものを先んじて紹介し、市場を変えて参りました。次は、お客様がお
持ちのコレクションが求められるかもしれません。まずは無料査定からお気軽にお問い合わせ下さい。
今井 俊満「THE FLOW OF WATERS」 アクリル、キャンバス 1989 年 198 × 300 cm
Collection of Jean-Michel Jarre
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アドヴァンスシステム
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営 業 時 間 月-金 : 1 0 時 -1 8 時 土:1 0 時- 1 6 時 日 祝 休
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