平成17年度 厚生労働科学研究 子ども家庭総合推進事業 委託研究事業 東京都における妊婦および子育て中の 母親の喫煙・飲酒の現状 ― 区市町村の乳幼児健康診査の場を活用した 自記式アンケート調査解析 ― 報告書 「妊娠・育児中の飲酒・喫煙防止と小児の事故防止対策の推進 及び環境整備に関する研究」委託研究事業 (山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座) 委託研究者 山縣然太朗 鈴木孝太 分担研究者 澤 節子(墨田区保健所) 平成18年3月 はじめに 近年、わが国において家族構成や生活スタイル、個人の人生観、地域社会の 変化などが子育て環境に影響を及ぼし育児に対する不安を抱える母親が増えて いると言われております。そこで母子の健康を守り、子どもを健やかに育てる ために「健やか親子21」推進運動が広く展開されてきました。 「健やか親子21」推進協議会の課題3幹事団体は、小児保健医療水準を維 持・向上させるための環境整備を推進しておりますが、全国保健所長会が代表 して「妊産婦の飲酒・喫煙ゼロ」を活動テーマにして調査研究事業を行ってき ました。平成16年度は財団法人 日本公衆衛生協会 地域保健総合推進事業 として、東京保健所長会による都内の妊産婦の喫煙・飲酒の実態調査を行いそ の現状の概略を把握することができました。 さらに今年度は平成17年度厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業) 「 住民参加と保健福祉の協働による子育て機能の向上・普及・評価に関する研究 (主任研究者:前川喜平)の分担研究(分担研究者:澤 節子)として「妊娠 ・育児中の飲酒・喫煙防止と小児の事故防止対策の推進及び環境整備に関する 研究」を行いました。そして平成16年度に得た5千8百件以上の貴重なアン ケート調査結果の解析作業は多大な労力、時間と能力を要するため、東京保健 所長会単独で行うのは難しいと考え山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医 学講座(山縣然太朗 教授、鈴木孝太 助手)に詳細に解析していただきまし た。 この解析結果から東京都の妊婦や子育て中の母親の喫煙・飲酒の実態、それ らに関する知識の周知状況が明らかになりました。今後、妊婦の喫煙を正確に 把握した上での喫煙指導、受動喫煙に関する正しい情報提供、出産後の喫煙再 開防止指導、妊娠中・授乳中の飲酒に関する正しい情報提供が重要な課題であ ることが分かりました。 妊産婦の喫煙、飲酒対策は子育ての環境を整える上で極めて重要です。少子 高齢社会に向かう我が国において、妊産婦の健康を守り育児不安を解消する社 会実現のためにも、全国の保健所、区市町村において本報告書を活用していた だきと思います。 アンケート調査にご協力いただいた多くの妊婦、保護者の方々および東京都 の区市町村に対して心より御礼申し上げます。 平成18年3月 分担研究者:澤 節子(墨田区保健所長) 「妊娠・育児中の飲酒・喫煙防止と小児の事故防止対策の 推進及び環境整備に関する研究」班員名簿 分担研究者 澤 研究協力者 節子(墨田区保健所・所長) 東海林文夫(葛飾区保健所・所長) 研究協力者 山中龍宏(緑園こどもクリニック・院長) 研究協力者 山口鶴子(板橋区保健所・所長) 研究協力者 平野宏和(板橋区志村健康福祉センター・所長) 委託研究者 山縣然太朗(教授) 研究協力者 鈴木孝太(助手) (山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座) ― 東京都における妊婦および子育て中の母親の喫煙・飲酒の現状 区市町村の乳幼児健康診査の場を活用した自記式アンケート調査解析 報告書 作成班 山縣然太朗、鈴木孝太 澤 節子、東海林文夫 ― 目次 はじめに 研究班名簿 Ⅰ. 総括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 Ⅱ. 調査の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 Ⅲ. 調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 Ⅳ. 文献的考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 Ⅴ. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44 アンケート調査 様式1(妊婦調査) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 様式2(子育て中の母親調査) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 あとがき Ⅰ.総括 本調査は東京都の妊婦や子育て中の母親の喫煙・飲酒の実態、それらに関す る知識についての現状を把握することを目的とした。明らかになった点と、今 後の取り組みの方向性を示す。 まず、調査結果の集計から明らかになったことは以下のとおりである。 1. 調査回答者は妊婦 2006 人、子育て中の母親 3825 人であった。 約 2 ヶ月弱の間に、都内の区市町村で調査を実施した。全 23 区 26 市 5 町 8 村のうち、妊婦については 20 区 24 市 2 町 1 村、子育て中の 母親については 20 区 14 市 3 町 3 村と、大部分の区市町村において調 査が実施された。調査集団の代表性については、区市町村の母子保健 事業参加者が対象であり、地域の偏りは少ないと思われるが、一方で 妊婦全体、子育て中の母親全体を代表しているか否かは不明である。 後述する喫煙率や飲酒率を見ると、比較的健康意識の高い集団の可能 性がある。 2. 妊婦の喫煙率は 2.2%、喫煙本数は平均 7.7 本/日であった。 平成 12 年の乳幼児身体発育調査によると、妊婦の喫煙率は 10.0%で あり、今回の結果はかなり低率となっている。 3. 妊娠前の喫煙者のうち 93.6%が、妊娠前に禁煙していた。 大多数の喫煙者は、妊娠を契機に禁煙することが伺える。 4. 妊婦の同居者における喫煙率は 46.3%、夫の喫煙率は 44.6%であった。 平成 12 年の乳幼児身体発育調査では妊婦同居者の喫煙率は 45.7% となっており、今回の結果とほぼ一致している。 5. 8.1%が妊娠中も飲酒していた。 1 平成 12 年の乳幼児身体発育調査によると、妊婦の飲酒率は 18.1%で あり、今回の結果は喫煙とともにかなり低率となっている。 6. 妊娠中の飲酒教育を受けたものの割合は 17.6%であり、胎児性アルコー ル症候群という言葉を知っている人は 34.1%と、あまり周知されていない。 同時に調査したアルコール依存症については 94.1%、受動喫煙につ いては 59.0%が知っていると回答しており、知識の普及が進んでいな い。 7. 子育て中の母親の喫煙率は 17.6%、喫煙本数は平均 12.1 本/日であっ た。 平成 14 年の国民栄養調査における 20∼30 歳代の女性の喫煙率とほ ぼ同様であった。 8. 禁煙したいと考えている子育て中の母親は 66.1%であった。 禁煙したいと考える人のうち約 60%が「したいができない」と回答 していた。 9. 子 育 て中 の母 親の 同 居 者における喫 煙 率は 55.2 %、夫 の喫煙率は 51.9%であった。 妊娠中に比べて上昇している。 10. 現在飲酒している子育て中の母親は 59.6%、妊娠中禁酒していたのは 68.9%であった。 再喫煙とともに、再飲酒もかなり高率に起こっている。 11. 子育て中の母親においても、胎児性アルコール症候群という言葉を知って いる人は 39.3%と、あまり周知されていない。 同時に調査したアルコール依存症については 94.1%、受動喫煙につ いては 52.9%が知っていると回答しており、知識の普及が進んでいな 2 い。 12. 妊婦調査と子育て中の母親調査において、妊娠中の喫煙・飲酒率に乖離 があった。 子育て中の母親調査において、妊娠中も喫煙していたと回答した人 は 6.0%、妊娠中も飲酒していたと回答した人は 27.0%であった。両者 ともに妊婦調査に比べるとかなり高率であり、妊婦調査から得られた 喫煙率、飲酒率は過小評価と考えられる可能性がある。 以上の結果から、現在の問題点として以下の項目が挙げられる。 ・妊娠中の受動喫煙 ・出産後の喫煙再開 ・妊娠中・授乳中の飲酒 ・妊娠中の飲酒に対する知識不足 これらの問題点に関連する要因を探るために追加解析(多変量解析)を行っ た。 以下に関連要因についてのまとめを記す。 1. 妊娠中の受動喫煙 夫の喫煙については、20 歳代の妊婦に比べて、30 歳代の妊婦の夫に喫 煙者が少ない。現在喫煙している、喫煙していたがやめたという妊婦の夫 に喫煙者が多い。また、受動喫煙の知識については、20 歳代に比べて 40 歳代、また飲酒している人、妊娠中の飲酒に対する指導・知識がない人で 受動喫煙という言葉を知らない傾向があった。逆に喫煙している・喫煙し ていたがやめた人は受動喫煙という言葉を知っている傾向を認めた。 3 若年者、夫婦そろって喫煙している人はハイリスクであることが伺える。 また、喫煙者は受動喫煙という言葉を知っていて喫煙していることも伺え た。 2. 出産後の喫煙再開 子育て中の母親の喫煙については、20 歳代に比べて、30 歳代・40 歳代 の母親で喫煙していない傾向があった。一方栄養がミルクのみ、夫が喫煙 している人、本人が飲酒している人で喫煙している傾向を認めた。 再喫煙についても若年者、夫婦そろって喫煙している人ハイリスクであ ることが伺えた。ミルクによる栄養と再喫煙については、授乳中の喫煙が 母乳の分泌を抑制するという報告もあり、再喫煙によって母乳育児が困難 になっている可能性もある。 3. 妊娠中・授乳中の飲酒 妊娠中の飲酒に関しては、初産婦で飲酒していない傾向があった。喫煙 者に飲酒者が多い傾向を示したが、夫の喫煙とはあまり関係なかった。胎 児性アルコール症候群についての知識がないことが飲酒しないことに関 連していた。一方、子育て中の母親の飲酒についても、初産婦で飲酒しな い傾向を示し、喫煙者で飲酒している傾向を示した。胎児性アルコール症 候群やアルコール依存症についての知識がないことが、飲酒しないことに 関連していた。 飲酒していない人にとっては、アルコールに関連した用語も、自身には 関係ないこととして捉えられている可能性がある。 4. 妊娠中の飲酒に対する知識不足 妊婦が胎児性アルコール症候群という言葉を知っているか否かについ ては、夫が喫煙している人で言葉を知らない傾向があったが、本人の喫煙 4 とは関係がなかった。飲酒している人で言葉を知っている傾向があった。 一方、妊娠中の飲酒について指導を受けていない、あるいは情報を得てい ない人、アルコール依存症という言葉を知らない人で知らない傾向を認め た。 これらの結果を考慮したところ、今後の方向性として以下の 4 つが考えられ る。 1. 妊婦の喫煙者を正確に把握した上での禁煙指導 (モニタリング・状況把握、介入) 2. 妊婦および同居者に対する、受動喫煙に関する正しい情報提供と禁煙支援 (啓発、介入) 3. 出産後の喫煙再開防止指導 (介入) 4. 妊娠中・授乳中の飲酒に関する正しい情報提供 (啓発) 今後、各保健所および区市町村において、上記に関する具体的な取り組みを 計画・施行していくことが重要であり、本調査結果を有効に利用することが望 まれる。 山梨大学大学院医学工学総合研究部 社会医学講座 鈴木孝太 山縣然太朗 5 Ⅱ.調査の概要 1. 目的 妊娠中の喫煙・飲酒は、胎児の発育に大きな影響を及ぼし、特に喫煙は低出 生体重児のリスクファクターとして広く知られている。また、飲酒については 胎児性アルコール症候群を発症する可能性があり、望ましくないとされている。 一方で、授乳期の喫煙・飲酒は、乳汁中にニコチンやアルコールが高濃度で移 行し、児に対しても悪影響を及ぼすという報告もある。 「健やか親子 21」におい ては、妊娠中の喫煙・飲酒率を 0%にすることが目標値として提示されており、 それに対する行政の取り組みも重要である。そこで今回、東京都の妊婦や子育 て中の母親の喫煙・飲酒の実態、それらに関する知識についての現状を把握す ることを目的とし、アンケートによる調査を行う。 2. 実施期間 2004 年 8 月末∼10 月中旬 3. 調査対象 区市町村母子保健事業のうち、妊婦については母親学級等参加者、子育て中 の母親については1歳6カ月児健診受診児の保護者を主たる対象者とする(一 部 3 歳児健診等の受診児の保護者も含む)。 4. 調査方法 東京保健所長会母子保健部会が妊婦、産婦(子育て中の母親)用アンケート を作成した。調査項目は、喫煙の有無、禁煙の時期、家族の喫煙、喫煙場所、 飲酒の有無、飲酒教育、アルコール依存症・胎児性アルコール症候群・受動喫 煙の言葉の周知である。保健所長が区市町村に調査を依頼し、上記区市町村母 子保健事業において自記式アンケート調査を実施する。 5. 調査の実施と解析 6 実施主体は、東京保健所長会であり、調査の実施は各区市町村、解析は山梨 大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座(教授 孝太)が行う。 7 山縣然太朗、助手 鈴木 Ⅲ.調査結果 1. 集計結果(単純集計) ① 妊婦調査(回収数:2006) 回答者の年齢および妊娠週数 (有効回答(年齢):1985) 平均:30.7 歳 標準偏差:4.1 歳 妊婦年齢階級 人数 最小値:18 歳 最大値:44 歳 パーセント 10 歳代 5人 0.3% 20 歳代 748 人 37.7% 30 歳代 1,193 人 60.1% 40 歳代 39 人 2.0% 224 211 201 200 181 142 125 ︵ 人 150 数 151 129 95 ︶ 人 100 93 81 73 50 11 2 3 8 21 32 62 40 36 25 19 11 5 3 1 0 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 妊婦年齢(歳) 8 (有効回答(妊娠週数):1944) 平均:24.7 週 標準偏差:5.0 週 最小値:5 週 最大値:38 週 165 158 159 150 128 121 114 131 128 122 人 100 数 100 ︵ 72 7 0 ︶ 人 68 49 50 72 63 43 46 40 23 21 8 2 2 2 1 5 5 14 9 3 0 5 6 8 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 妊娠週数(週) 問1 今回は初めてのお産ですか? 1.初産 2.( )人目 (有効回答:1970) 平均:1.0 人目 標準偏差:0.2 人目 経産 72人(3.65%) 最小値:1 人目 何人目か(経産婦) 初産 1,898人 (96.35%) 9 最大値:4 人目 人数 パーセント 2 人目 56 人 77.78% 3 人目 13 人 18.06% 4 人目 2人 2.78% 不明 1人 1.39% 問2 あなたは 「たばこ」 を吸いますか? 1.吸っている ( )歳から → 問3へ 2.吸っていたがやめた → 問5へ 3.吸ったことが無い → 問6へ (有効回答:1968) 喫煙歴 人数 パーセント 現在喫煙している 44 人 2.24% 喫煙していたがやめた 639 人 32.47% 1,285 人 65.29% 喫煙歴無し 喫煙者の喫煙開始年齢(有効回答:39) 平均:18.7 歳 標準偏差:2.0 歳 最小値:14 歳 最大値:23 歳 20 17 ︵ 人 数 10 7 ︶ 人 5 2 1 2 2 2 1 0 14歳 15歳 16歳 17歳 18歳 19歳 20歳 22歳 23歳 喫煙開始年齢 10 問3 吸っている方は本数をお書きください。 → 問4へ 現在 一日 ( )本、 妊娠前は 一日 ( )本 (有効回答(現在の本数):39) 平均:7.7 本 標準偏差:5.5 本 最小値:1 本 10 最大値:20 本 9 8 ︵ 人 数 5 4 ︶ 人 3 4 3 2 2 1 1 1 6 7 8 1 0 1 2 3 4 5 10 13 15 20 現在の喫煙本数(本) (有効回答(妊娠前の本数):42) 平均:16.3 本 標準偏差:10.6 本 最小値:0 本 最大値:40 本 15 15 ︵ 人 10 数 ︶ 人 6 6 5 1 1 1 2 5 7 1 2 1 2 3 1 1 1 0 0 10 12 15 16 20 25 30 35 39 40 妊娠前の喫煙本数(本) 11 問4 今後はどうしますか? 1.禁煙したい 2.禁煙したいが出来ない 3.禁煙するつもりはない (有効回答:39) 人数 パーセント 禁煙したい 18 人 46.15% 禁煙したいができない 17 人 43.59% 禁煙するつもりはない 4人 10.26% 問5 禁煙したのはいつ頃ですか? 1.結婚するとき 2.妊娠する前 3.妊娠が分かってから (有効回答:637) 人数 パーセント 結婚するとき 115 人 18.05% 妊娠する前 189 人 29.67% 妊娠がわかってから 317 人 49.76% その他(結婚以前など) 16 人 2.51% 問6 同居の家族の喫煙についてお聞きします。 1.吸う人はいない 2.いる(夫、夫の父、夫の母、実母、実父、その他) (有効回答:1992) いる 吸う人は いない 923人 (46.34%) 1069人 (53.66%) 12 同居家族の喫煙: 夫(有効回答:1973) あり 879人 (44.55%) 夫の父(有効回答:1943) あり 53人 (2.73%) なし 1,094人 (55.45%) なし 1,890人 (97.27%) 夫の母(有効回答:1942) 実母(有効回答:1942) あり 24人 (1.24%) あり 29人 (1.49%) なし 1,918人 (98.76%) なし 1,913人 (98.51%) 実父(有効回答:1947) その他の喫煙者(有効回答:1943) あり 58人 (2.98%) あり 22人 (1.13%) なし 1,889人 (97.02%) なし 1,921人 (98.87%) 13 問7 問6で「いる」と答えた方へ。同居の方の喫煙場所は どこですか? 1.家では吸わない 2.ベランダや別の部屋などで吸っている 3.換気扇の下で吸っている 4.そばで吸うので煙を吸わされている (有効回答:920) 3 ベランダ・換気扇・そば 11 換気扇・そば 6 ベランダ・そば 62 ベランダ・換気扇の下 72 そばで吸う 235 換気扇の下 370 ベランダや別の部屋 161 家では吸わない 0 50 14 100 150 200 人数(人) 250 300 350 400 問8 あなたは飲酒(日本酒、ビール、ワイン、焼酎、その他アルコール) しますか? 1.毎日飲む 2.時々飲む 3.妊娠してからは飲まない 4.前から飲まない (有効回答:1997) 毎日飲む 2人 (0.1%) 前から飲 時々飲む まない 160人 433人 (8.01%) (21.68%) 妊娠して からは飲 1,402人 まない (70.21%) 問9 妊娠中の飲酒について教育や指導を受けましたか? 1.受けた (誰からですか。 医師、助産師、保健師、看護師、その他) 2.受けていない 3.受けていないがパンフレット、冊子などから知識を得た (有効回答:1964) 受けた 受けてい ないが知 識を得た 1,096人 (55.8%) 15 345人 (17.57%) 受けて いない 523人 (26.63%) 妊娠中の飲酒に対する教育・指導: 医師から(有効回答:1943) 助産師から(有効回答:1942) あり 132人 (6.79%) あり 120人 (6.18%) なし 1,811人 (93.21%) なし 1,822人 (93.82%) 保健師から(有効回答:1945) 看護師から(有効回答:1943) あり 21人 (1.08%) あり 62人 (3.19%) なし 1,922人 (98.92%) なし 1,883人 (96.81%) その他から(有効回答:1942) あり 43人 (2.21%) なし 1,899人 (97.79%) 16 問10 つぎの言葉をご存知ですか? 「はい」のときは○で囲んでください(複数回答可) 1.アルコール依存症 2.胎児性アルコール症候群 3.受動喫煙 アルコール依存症 胎児性アルコール症候群 (有効回答:2001) (有効回答:1960) 知ら ない 118人 (5.9%) 知って いる 669人 (34.13%) 知って 1,883人 いる (94.1%) 受動喫煙 (有効回答:1977) 知って いる 1,167人 (59.03%) 知ら ない 810人 (40.97%) 17 知ら ない 1,291人 (65.87%) ② 子育て中の母親調査(回収数:3825) 回答者の年齢 (有効回答(年齢):3660) 平均:32.3 歳 標準偏差:4.6 歳 保護者年齢階級 最小値:15 歳 人数 パーセント 10 歳代 10 人 0.27% 20 歳代 909 人 24.84% 30 歳代 2,536 人 69.29% 205 人 5.6% 40 歳代以降 最大値:56 歳 人数(人) 343 348 327 303 279 350 300 244 250 184 200 150 246 255 197 125 110 100 124 114 80 73 53 55 50 14 1 2 2 5 46 39 22 29 16 11 5 4 1 1 1 1 0 15 16 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 49 51 56 保護者年齢(歳) 18 問1 今回は初めての育児ですか? 1.初めて 2.( )人目 (有効回答:3802) 平均:1.6 人目 標準偏差:0.7 人目 最小値:1 人目 何人目か 経産 初産 1,669人 (43.9%) 2,133人 (56.1%) 人数 パーセント 1 人目 2,133 人 56.1% 2 人目 1,296 人 34.09% 3 人目 320 人 8.42% 4 人目 43 人 1.13% 5 人目 10 人 0.26% 栄養方法はどうでしたか? 1.母乳( ヵ月間) 2.母乳とミルクの混合 (有効回答:3677) 最大値:5 人目 3.ミルク 栄養方法 人数 パーセント 母乳 1,524 人 41.45% 母乳とミルクの混合 1,630 人 44.33% 523 人 14.22% ミルク (有効回答(母乳の期間):1290) 平均:13.2 ヶ月 標準偏差:4.9 ヶ月 最小値:1 ヶ月 最大値:36 ヶ月 人数(人) 266 250 208 200 150 90 100 72 51 50 14 16 31 14 16 26 80 84 75 47 38 36 38 51 9 6 1 11 1 1 4 1 1 2 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 22 23 24 28 29 30 32 34 36 母乳は何ヶ月までか (ヶ月) 19 問2 あなたは 「たばこ」 を吸いますか? 1.ずっと吸っている ( )歳から → 問3へ 2.妊娠中は禁煙したが現在は吸っている、 出産後( ) ヵ月から → 問3へ 3.吸っていたがやめた → 問5へ 4.吸ったことが無い → 問6へ (有効回答:3739) 喫煙歴 人数 パーセント ずっと吸っている 224 人 5.99% 妊娠中禁煙→再喫煙 434 人 11.61% 吸っていたがやめた 836 人 22.36% 2,245 人 60.04% 吸ったことがない (喫煙者の喫煙開始年齢(有効回答:206)) 平均:19.3 歳 標準偏差:2.9 歳 最小値:12 歳 最大値:34 歳 107 110 100 90 80 ︵ 人 数 ︶ 人 70 60 50 40 28 30 20 10 1 3 5 11 13 8 7 7 2 2 1 2 2 3 2 1 1 0 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 34 喫煙開始年齢(歳) 20 (出産後の喫煙開始時期(有効回答:594) ) 平均:4.3 ヶ月∼ 標準偏差:5.0 ヶ月∼ 最小値:0 ヶ月∼ 最大値:30 ヶ月∼ 30 25 1 1 3 24 18 17 ︵ヶ 出 産 後 の 喫 煙 開 始 時 期 ︶ 月 か ら 7 1 16 15 14 13 6 8 10 7 12 11 10 9 35 4 21 11 14 10 8 7 6 53 5.5 5 4 3 1 2.5 2 1.5 2 33 29 58 34 2 1 0 57 186 0 50 100 人数(人) 21 150 問3 吸っている方は本数をお書きください。 → 問4へ。 現在 一日 ( )本、 妊娠前は 一日 ( )本 (有効回答(現在の本数):631) 平均:12.1 本 標準偏差:6.2 本 最小値:0 本 最大値:40 本 40 3 1 5 1 1 34 30 25 23 20 141 18 3 1 1 17.5 17 15 82 13 16 10 12.5 ︵ 現 在 の 喫 煙 本 数 ︶ 本 12 5 2 1 11.5 11 10 177 9 2 1 8.5 8 7.5 20 6 7 14 6.5 1 6 24 5.5 6 5 51 4.5 1 4 12 3.5 2 25 3 2.5 1 2 10 1.5 1 3 1 1 0 0 50 100 人数( 人) 22 150 (有効回答(妊娠前の本数):644) 平均:11.5 本 標準偏差:9.4 本 最小値:0 本 最大値:60 本 2 1 60 50 11 13 11 40 30 25 1 23 152 20 2 1 18 17.5 57 15 妊 14 娠 13 前 の 12.5 12 喫 10 煙 本 9 数 8 1 16 8 5 138 4 ︵ 12 1 7.5 ︶ 本 7 7 1 6.5 7 6 2 5.5 24 5 6 4 1 3.5 4 2 3 3 2 1 151 0 0 50 100 人数( 人) 23 150 問4 今後はどうしますか? 1.禁煙したい 2.禁煙したいが出来ない 3.禁煙するつもりはない (有効回答:638) 人数 パーセント 禁煙したい 161 人 25.24% 禁煙したいができない 261 人 40.91% 禁煙するつもりはない 216 人 33.86% 問5 禁煙したのはいつ頃ですか? 1.結婚するとき 2.妊娠する前 3.妊娠が分かってから 4.出産後 (有効回答:1210) 人数 パーセント 結婚するとき 209 人 17.27% 妊娠する前 265 人 21.9% 妊娠がわかってから 695 人 57.44% 出産後 23 人 1.9% その他(結婚以前など) 18 人 1.49% 問6 同居の家族の喫煙についてお聞きします。(○で囲んでください) 1.吸う人はいない 2.いる (夫、夫の父、夫の母、実母、実父、その他) (有効回答:3786) いる 2,090人 (55.2%) 吸う人は いない 1,696人 (44.8%) 24 同居家族の喫煙: 夫(有効回答:3818) あり 夫の父(有効回答:3802) あり 166人 (4.37%) なし 1,982人 (51.91%) 1,836人 (48.09%) なし 3,636人 (95.63%) 夫の母(有効回答:3799) 実母(有効回答:3798) あり 75人 (1.97%) あり 118人 (3.11%) なし 3,724人 (98.03%) なし 3,680人 (96.89%) 実父(有効回答:3800) その他の喫煙者(有効回答:3797) あり 201人 (5.29%) あり 72人 (1.9%) なし 3,725人 (98.1%) なし 3,599人 (94.71%) 25 問7 問6で「いる」と答えた方へ。同居の方の喫煙場所は どこですか? 1.家では吸わない 2.ベランダや別の部屋などで吸っている 3.換気扇の下で吸っている 4.そばで吸うので煙を吸わされている (有効回答:2077) ベランダ・ 換気扇・そば 2 家では吸わない・ベランダ・換気扇 2 12 換気扇・そば 5 ベランダ・そば 143 ベランダ・換気扇 3 家では吸わ な い・別の部屋 207 そばで吸う 786 換気扇の下 ベ ラ ン ダや別の部屋 655 262 家 では吸わない 0 100 200 300 400 500 人数(人) 26 600 700 800 問8 あなたは飲酒(日本酒、ビール、ワイン、焼酎、その他 アルコール) しますか? 1.毎日飲む 2.時々飲む 3.妊娠してからは飲まない 4.前から飲まない 5.出産後は飲まない (有効回答:3793) 毎日飲む 出産後は 飲まない 395人 (10.41%) 110人(2.9%) 前から 飲まない 966人 (25.47%) 妊娠して からは 飲まない 時々飲む 1,866人 (49.2%) 456人(12.02%) 問9 飲酒している方にお聞きします。 1.妊娠中も飲んだ 2.妊娠中は量・回数を控えた 3.妊娠中は止めた 4.授乳中は止めた(母乳、母乳とミルク混合の方) (有効回答:2369) 人数 妊娠中も飲んだ パーセント 77 人 3.25% 妊娠中は量・回数を控えた 500 人 21.11% 妊娠中は止めた 845 人 35.67% 授乳中は止めた 95 人 4.01% 4人 0.17% 60 人 2.53% 788 人 33.26% 妊娠中は飲んだが、授乳中は止めた 妊娠中控えて、授乳中は止めた 妊娠中も授乳中も止めた 27 妊娠中も飲酒を続けた: (有効回答:3798) 妊娠中の飲酒量・回数を控えた: (有効回答:3801) はい 89人 (2.34%) はい 561人 (14.76%) いいえ 3,709人 (97.66%) いいえ 3,240人 (85.24%) 妊娠中は飲酒を止めた: (有効回答:3808) 授乳中は飲酒を止めた: (有効回答:3802) はい はい 1,633人 (42.88%) 947人 (24.91%) いいえ 2,175人 (57.12%) いいえ 2,855人 (75.09%) 28 問10 つぎの言葉をご存知ですか? 「はい」のときは○で囲んでください(複数回答可) 1.アルコール依存症 2.胎児性アルコール症候群 アルコール依存症 (有効回答:3821) 胎児性アルコール症候群 (有効回答:3,802) 知ら ない 224人 (5.86%) 知って いる 知って いる 1,495人 (39.32%) 3,597人 (94.14%) 受動喫煙 (有効回答:3806) 知って いる 2,013人 (52.89%) 3.受動喫煙 知ら ない 1,793人 (47.11%) 29 知ら ない 2,307人 (60.68%) 2. 多変量解析 【調査結果の見方】 ここでは、それぞれの項目について、関連すると思われる項目の相互作用 などを考慮に入れた、「調整オッズ比」を示している。 たとえば、 「妊娠中の夫の喫煙について、現在喫煙している妊婦の(調整)オッズ比: 7.4(95%信頼区間 3.4-16.3)」 と表現されている場合、その解釈は 「妊婦の年齢階級、分娩歴、飲酒状況などの影響が一定と考えた場合に、 今まで喫煙していない人の夫が喫煙しているリスクを基準(1.0)とすれ ば、喫煙している人は喫煙していない人の 7.6 倍、夫が喫煙している可能 性が高い。また、この確率(オッズ比)は 95%の確率で 3.4∼16.3 の間 にある」 となる。つまりオッズ比が正の場合は、その因子がリスクとなる可能性を 示し、逆にオッズ比が負の場合は、その因子によって改善する可能性を示 している。 統計学的に有意である、ということは通常 95%信頼区間が 1 をまたがな いことを条件としている。 30 ① 妊娠中の受動喫煙に関する検討 ・夫の喫煙(あり)についてのオッズ比を示した。 (有効回答:1882) 変数名 オッズ比 20歳代 10歳代 30歳代 40歳代 経産婦 初産婦 喫煙したことがない 現在(妊娠中) 喫煙している 喫煙していたがやめた 飲酒していない 飲酒している 妊娠中の飲酒に対する指導を受けた・ 知識がある 妊娠中の飲酒に対する指導・知識なし 受動喫煙という言葉を知っている 受動喫煙という言葉を知らない 1.0 5.5 0.8 0.5 1.0 0.9 1.0 7.4 2.6 1.0 0.9 1.0 0.9 1.0 1.2 95%信頼区間 下限 上限 0.6 0.6 0.3 - 50.4 1.0 1.1 0.5 - 1.5 3.4 2.1 - 16.3 3.2 0.6 - 1.3 0.7 - 1.2 1.0 - 1.4 (結果のまとめ) ・20 歳代の妊婦に比べて、30 歳代の妊婦の夫に喫煙者が少ない。 ・現在喫煙している、喫煙していたがやめたという妊婦の夫に喫煙者が多 い。 31 ・受動喫煙という言葉の知識(なし)についてのオッズ比を示した。 (有効回答:1882) 変数名 オッズ比 20歳代 10歳代 30歳代 40歳代 経産婦 初産婦 喫煙したことがない 現在(妊娠中) 喫煙している 喫煙していたがやめた 夫の喫煙なし 夫の喫煙あり 飲酒していない 飲酒している 妊娠中の飲酒に対する指導を受けた・ 知識がある 妊娠中の飲酒に対する指導・知識なし 1.0 0.4 1.2 2.3 1.0 1.0 1.0 0.5 0.8 1.0 1.2 1.0 1.4 1.0 1.9 95%信頼区間 下限 上限 0.0 1.0 1.2 - 3.3 1.5 4.5 0.6 - 1.6 0.2 0.6 - 1.0 1.0 1.0 - 1.4 1.0 - 2.0 1.5 - 2.3 (結果のまとめ) ・40 歳代で言葉を知らない傾向を認めた。 ・喫煙している・喫煙していたがやめた人は言葉を知っている傾向あり。 ・飲酒している人で言葉を知らない傾向あり。 ・妊娠中の飲酒に対する指導・知識がない人で言葉を知らない傾向あり。 32 ② 出産後の喫煙再開に関する検討 ・妊娠後の喫煙再開について 保護者の喫煙(あり)についてのオッズ比を示した。 (有効回答:3558) 変数名 オッズ比 20歳代 10歳代 30歳代 40歳代 経産婦 初産婦 母乳栄養 ミルクのみの栄養 夫の喫煙なし 夫の喫煙あり 飲酒していない 飲酒している 受動喫煙という言葉を知っている 受動喫煙という言葉を知らない 1.0 3.7 0.5 0.4 1.0 0.9 1.0 2.3 1.0 4.2 1.0 1.4 1.0 0.9 (結果のまとめ) ・30 歳代・40 歳代で喫煙していない傾向あり。 ・ミルクのみの栄養で喫煙している傾向あり。 ・夫が喫煙している人で喫煙している傾向あり。 ・飲酒している人で喫煙している傾向あり。 33 95%信頼区間 下限 上限 1.0 0.4 0.2 - 13.8 0.6 0.7 0.8 - 1.1 1.9 - 3.0 3.4 - 5.2 1.1 - 1.7 0.7 - 1.1 ③ 妊娠中・授乳中の飲酒に関する検討 ・妊娠中の飲酒(あり)についてのオッズ比を示した。 (有効回答:1873) 変数名 オッズ比 20歳代 10歳代 30歳代 40歳代 経産婦 初産婦 喫煙したことがない 現在(妊娠中) 喫煙している 喫煙していたがやめた 夫の喫煙なし 夫の喫煙あり 妊娠中の飲酒に対する指導を受けた・ 知識がある 妊娠中の飲酒に対する指導・知識なし アルコール依存症という言葉を知っている アルコール依存症という言葉を知らない 胎児性アルコール症候群という言葉を知っている 胎児性アルコール症候群という言葉を知らない 1.0 3.1 0.8 0.8 1.0 0.4 1.0 4.1 2.1 1.0 0.9 1.0 0.8 1.0 1.7 1.0 0.7 95%信頼区間 下限 上限 0.3 0.5 0.2 - 29.4 1.1 2.8 0.2 - 0.7 1.8 1.5 - 9.5 3.0 0.7 - 1.3 0.6 - 1.2 0.9 - 3.3 0.5 - 1.0 (結果のまとめ) ・初産婦で飲酒していない傾向がある。 ・喫煙者に飲酒者が多い傾向がある。 ・胎児性アルコール症候群に対する言葉を知らない人で、飲酒していない 傾向あり。 34 ・子育て中の母親の飲酒(あり)についてのオッズ比を示した。 (有効回答:3556) 変数名 オッズ比 20歳代 10歳代 30歳代 40歳代 経産婦 初産婦 母乳栄養 ミルクのみの栄養 喫煙なし 喫煙あり 夫の喫煙なし 夫の喫煙あり アルコール依存症という言葉を知っている アルコール依存症という言葉を知らない 胎児性アルコール症候群という言葉を知っている 胎児性アルコール症候群という言葉を知らない 1.0 0.3 1.0 1.0 1.0 0.7 1.0 0.9 1.0 1.4 1.0 1.1 1.0 0.6 1.0 0.8 95%信頼区間 下限 上限 0.1 0.9 0.7 - 1.2 1.2 1.4 0.6 - 0.8 0.8 - 1.1 1.1 - 1.7 1.0 - 1.3 0.4 - 0.8 0.7 - 1.0 (結果のまとめ) ・初産婦で飲酒していない傾向あり。 ・喫煙している人で飲酒している傾向あり。 ・アルコール依存症・胎児性アルコール症候群という言葉を知っている人 で飲酒している傾向あり。 35 ④ 妊娠中の飲酒に対する知識不足 ・胎児性アルコール症候群に対する知識(なし)についてのオッズ比を示 した。 (有効回答:1873) 変数名 オッズ比 20歳代 30歳代 40歳代 経産婦 初産婦 喫煙したことがない 現在(妊娠中) 喫煙している 喫煙していたがやめた 夫の喫煙なし 夫の喫煙あり 飲酒していない 飲酒している 妊娠中の飲酒に対する指導を受けた・ 知識がある 妊娠中の飲酒に対する指導・知識なし アルコール依存症という言葉を知っている アルコール依存症という言葉を知らない 1.0 0.8 0.8 1.0 1.2 1.0 1.1 0.8 1.0 1.3 1.0 0.7 1.0 1.7 1.0 4.5 95%信頼区間 下限 上限 0.7 0.4 - 1.0 1.6 0.8 - 2.0 0.5 0.7 - 2.2 1.0 1.0 - 1.6 0.5 - 1.0 1.4 - 2.2 2.3 - 8.8 (結果のまとめ) ・夫が喫煙している人で言葉を知らない傾向あり。 ・飲酒している人で言葉を知っている傾向あり。 ・妊娠中の飲酒に対する指導・知識のない人で言葉を知らない傾向あり。 ・アルコール依存症という言葉を知らない人で知らない傾向あり。 36 Ⅳ.文献的考察 1. 妊婦・子育て中の母親の喫煙 ① 世界各国およびわが国の現状 アメリカやカナダでは、全国的に妊婦の喫煙率が調査されている。例えばア メリカにおいては人口動態統計の一部として集計されており、1989 年に 19.5%だった妊婦の喫煙率が、2003 年には 11%と低下していると報告されて いる 1)。また、カナダにおいては、1994-95 年において 2 歳以下の子どものう ち 23.5%の母親が妊娠中に喫煙していたが、1998-99 年においては 19.4%に 低下しているという報告もある 2) は低下傾向であるとの報告がある 。これらを含め世界的には、妊婦の喫煙率 3) 。しかしながら、妊娠中に喫煙している 5∼6 人に 1 人がその事実を隠している、あるいは妊娠中に禁煙している人は 出産後すぐに喫煙を再開しているとも言われている 3) 。 一方わが国では、平成 12 年に行われた乳幼児身体発育調査において、平成 2 年に比べて妊婦の喫煙率が上昇している(5.6%→10.0 %)という報告がな されている 4)。その中でも特に若年妊婦の喫煙率が高く、これは最近 10 年間 で 2 から 3 倍に上昇している未成年者の喫煙率がもたらした結果と考えられ ている 5) 。また、同調査における同居者の同室における喫煙率は 45.7%とな っている 4) 。全国調査ではないが、石川県における調査では妊婦の喫煙につ いて、15%が喫煙しており、7 ヶ月以降も 7∼8%が喫煙していたと報告され ている 6) 。 このように、わが国における妊婦の喫煙率は上昇しており、上記のように喫 煙の事実を隠すことも考えられる。今回の調査において喫煙している人のうち、 禁煙したいと考える人は 90%程度で、そのうち半数は禁煙したくてもできな いと考えている。妊婦の喫煙に対して正しい情報を提供し、妊娠中の喫煙率を 37 低下させることに加え、やめたくてもやめられない喫煙妊婦に対しての効果的 な指導方法を考慮していく必要があると考えられる。 ② 妊婦・子育て中の母親の喫煙と胎児・乳幼児発育に関する研究 妊婦の喫煙により、さまざまな妊娠合併症や出生後の胎児に関する障害のリ スクが上昇することが知られている。例えば妊娠合併症については、低出生体 重児についてのオッズ比が 2.4∼4.3、早産については 1.3∼6 といった報告が ある 5) 。また、出生後の障害としては、低身長 7)8) 、知能指数の低下 7)9) 、注 意欠陥多動性障害(ADHD)10)11)や後遺障害の発生率が高い 12)13)、といった 報告がある。また、1985 年には喫煙妊婦からの子どもの異常が胎児性タバコ 症候群(fetal tobacco syndrome : FTS)として提案された 14)。ただ、体重増 加に関して出生後の影響は比較的軽度であるとしている報告も散見される 15)。 たばこの煙に含まれる有害物質としては、一酸化炭素(CO)、ニコチン、シ アン化水素が代表的なものとして挙げられる。ニコチンの作用によって、妊婦 においては胎盤、臍帯や胎児の血管が収縮して血流が減少し、酸素や栄養の供 給が低下する 5)。マウスによる研究では、妊娠前のニコチン投与や高母体週齡 など、他の要因が加わるとニコチンの影響が明らかになるという報告もある 15)。また高濃度の CO によって胎児が酸素欠乏状態に陥る。胎児ヘモグロビン は CO との親和性が高く、胎児の血中 CO 濃度は喫煙している妊婦自身の 1.8 倍になり 16)、喫煙妊婦から生まれた新生児の一酸化炭素ヘモグロビン濃度は 母体の喫煙本数と正の相関があるという報告もある 17)。シアン化水素につい ては、その解毒のためにビタミン B12 や含硫アミノ酸が消費され、胎児の蛋 白合成が阻害される 15)。これらの要因による低酸素状態が、発達遅滞と関連 すると考えられる。 38 このように妊婦本人の喫煙はさまざまなメカニズムで胎児、そして出生後も 子どもに影響するが、家庭や職場でも周囲の喫煙、いわゆる受動喫煙にさらさ れるケースが多く考えられる。今回の調査でも、過去の調査と同様に半数近く の同居家族が喫煙していた。受動喫煙の場合には、妊婦自身が喫煙した場合に 比べて、CO は 1/3 程度 18)、ニコチンは 1/3∼5 程度 19)20)ではあるが、妊婦の 体内に流入する。喫煙が胎児に引き起こす疾患、例えば先天奇形や呼吸器疾患、 あるいは ADHD や反社会的行動などの受動喫煙による影響は明らかになって いないものが多いが 5)、受動喫煙が子宮内発達遅延や低出生体重児と関連する といわれており、危険性はかなり大きいと考えられる。 一方で出産後の再喫煙がかなり高率になっており、その影響も数多く報告さ れている。例えば、授乳期間中の母親においては、喫煙によりプロラクチン濃 度が低くなり 24)、母乳分泌の低下を招く。さらに母乳中のニコチン濃度など についても、非喫煙者の母乳からは検出されない 25)、喫煙母体の血清中と母 乳中のニコチン濃度が相関し、母乳中のニコチン半減期は 97 分である 26)、喫 煙母体からの母乳を摂取している乳児の血清中および尿中のニコチン濃度が 高値である 27)、受動喫煙や嗅ぎたばこであってもニコチンの母乳中の濃度と 関連がある 28)、などの報告があり、児への影響も少なくない。しかしながら、 喫煙中の母体であっても、母乳育児のほうが人工栄養に比べて、児の急性の呼 吸器疾患が少ないというデータもあり れている 29)、母乳育児と禁煙の重要性が指摘さ 30)。一方で、乳幼児が両親からの受動喫煙にさらされている割合が 37.5%という報告もあり 31)、子どもの受動喫煙も大きな問題となっている。 例えば、乳幼児突然死症候群(SIDS)や、喘息などの呼吸器疾患 32)33) 、中耳 炎など耳鼻咽喉科の疾患については受動喫煙がその危険を高めると言われて いる 32)33)。 39 このように、妊娠・育児中の喫煙は児に対してかなりの影響を及ぼしており、 虐待の一つであるという意見もある 34)。しっかりと実態を把握し、喫煙者に 対する適切な禁煙指導が望まれる。 40 妊婦・子育て中の母親の飲酒 ① 世界各国およびわが国の現状 カナダにおいては、妊婦の飲酒についても全国的な調査がなされている。喫 煙と同様の調査において、1994-95 年には 17.4%であったが、1998-99 年にお いては 14.6%となっている 2) 。わが国においては、平成 12 年乳幼児身体発 育調査において、妊婦の飲酒率は 18.1%となっている 4) 。飲酒率については、 喫煙と異なり高年齢となるほど高率になっていく傾向が認められる 4) 。 ② 妊婦・保護者の飲酒と胎児・乳幼児発育に関する研究 アルコールの胎児毒性は古代ギリシャやローマ時代から推測されていたが 35)、医学的に明らかに報告されたのは 1968 年フランスにおける胎児性アルコ ール症候群(FAS) の臨床例が初めてであった 36)。FAS についてはその後多 数の報告がなされ、その詳細についても明らかになってきている。妊娠中のア ルコール摂取による影響は、ほとんどが FAS によって説明されているため、 FAS について概略する。 FAS の発生頻度は、アメリカでは新生児 1000 人に 0.5∼2 人との報告があ る 37)。わが国においては 1978 年に初めて報告され 程度に 1 人程度との報告がなされている 35)、その後新生児 1 万人 38)。しかしながら、国民栄養調査に よれば、わが国でも飲酒女性の割合も上昇しており(20∼29 歳の女性の飲酒 率は 4.2%(1991 年)→9.4%(2001 年))、今後 FAS の発生頻度が上昇する 可能性も考えられる。 さて、FAS の臨床像としては、1980 年に FAS の研究グループによって以 下の診断基準が提唱されている 39)。 妊娠中の飲酒が確認されたうえで、 41 (ア) 出生前および/あるいは出生後の成長遅滞(妊娠期間を補正し て、体重、身長および/あるいは頭囲が 10 パーセンタイルより 下)。 (イ) 中枢神経系の障害(神経学的以上の徴候、発達遅滞、あるいは 知的障害)。 (ウ) 特有な顔面の形成不全で以下の 3 徴候のうち少なくとも 2 徴候 を有する。 ① 小頭(3 パーセンタイルより下の頭囲) ② 小眼球および/あるいは短眼瞼裂 ③ 人中形成不全、薄い上唇、および平坦な上顎部 これら 3 項目を満たすものを FAS と診断し、そろわないものを Fetal Alcohol Effect(FAE)としている。これらの子供については種々の合併症が 認められ、その中には心臓の先天奇形なども含まれる 40)。 では、FAS とアルコール摂取量、摂取時期についてはどのような関連が認 められるのであろうか。慢性アルコール症でなく、機会飲酒であってもかなり のアルコール摂取をした場合には FAS 様の児が出生したとの報告や 41)、妊娠 に気づくまでの 1 ヶ月間における大量摂取が児の注意力、記憶力、認識力など の発達に関して最も危険な因子となっているという報告がある 42)。継続的な 飲酒よりも、回数は少ないものの大量にアルコールを摂取するほうが血中アル コールのピークの値が高いために代謝に時間を要するため、胎児の脳に対して 影響が大きいとする報告もある 43)。このように、妊娠中のどの時期であって もアルコールは胎児に影響を及ぼす可能性があり、また妊娠に気づく前であっ てもその影響は大きいと考えられることから、妊娠を考える女性については飲 酒を控えるよう情報提供していくことが重要である。 42 一方、授乳中の飲酒による母乳への影響は以下のような報告がある。授乳 中の女性が飲酒すれば飲酒したアルコールの 2%が血中に入り、母乳中の濃度 は血中濃度とほぼ等しくなる。そして飲酒後 0.5∼1 時間の間に濃度はピーク に達する 44)45)。また母乳の分泌についても、1g/kg 以上のアルコール量が母乳 の射乳反射を阻害し、2g/kg の飲酒では哺乳によるオキシトシン遊離を完全に 遮断するという報告もある 46)。さらにアルコールの代謝産物であるアセトア ルデヒドについては母乳中に有意な量は検出されないという報告がある 44)。 このように母乳中へアルコールが移行することによって、乳児はアルコー ル中毒を起こしたり 47)、低プロトロンビン血症による出血をきたしたりする 48 )。また、母乳中のアルコールにより乳児のコルチゾール 値を低下させ、 Cushing 症候群と診断された事例も存在する 49)。 以上のように妊婦・子育て中の母親の飲酒についても、国内外より数多く の報告があり、胎児・乳児に与える影響は決して小さいものではない。今回の 調査では、受動喫煙という言葉に比べ、胎児性アルコール症候群という言葉の 認識度はかなり低い結果となった。アルコールについてもその危険性をしっか りと周知し、飲酒している女性に対しての適切な指導が必要であると思われる。 43 Ⅴ.参考文献 1) Hoyert DL, et al: Annual summary of vital statistics: 2004. 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