ビジネスの変革を加速 - Wind River

The Intelligence in the Internet of Things
ビジネスの変革を加速
モノのインターネットにおけるビジネスチャンスとインテリジェンス
著者:ウインドリバー、戦略マーケティング担当バイスプレジデント、ジェンズ・ウィーガンド
INNOVATORS START HERE.
ACCELERATING BUSINESS TRANSFORMATION
概要
インテリジェントデバイスは、周囲の環境を把握してそれに対応できるため、広範囲の業種で複雑な
意思決定を自動化するときに大きな威力を発揮します。現在、数億万台で 1 兆ドルを売り上げていま
すが、インテリジェントデバイスは爆発的な成長の可能性を秘めています。IT 調査会社 IDC による
と、インテリジェントシステムの市場は 2015 年までに 40 億台、2 兆円規模に達するとされています。
また IDC は、ネットワーク対応デバイスの数も 2020 年までに 200 億∼ 500 億台に達すると予測して
います。
しかし、この「モノのインターネット(IoT)」には、大きな課題も残されています。標準化された手法
が存在しないため、IoT ソリューションを複数の業種にわたって拡張できないということです。
組込テクノロジをワールドワイドに提供するリーディングカンパニーであるウインドリバーは、IoT
と IoT で動作するデバイスにインテリジェンスと信頼性、管理性、セキュリティをもたらすソリュー
ションを提供しています。さまざまな業種にわたるデバイスおよびシステム開発者、メーカー、イン
テグレータ、ネットワーク運営事業者、そして顧客と密接に協力し、ビジネスニーズの把握と IoT ソ
リューションの特定にも務めています。本ホワイトペーパーでは、その経験に基づいて、期待される
主なビジネスチャンスと、IoT の可能性をすべて引き出すための課題について解説します。
目次
概 要 ............................................................................................................................. 2
従来型ビジネスの終焉 ..................................................................................................... 3
小売業 ..................................................................................................................... 3
エネルギー .............................................................................................................. 3
ビルと一般住宅 ........................................................................................................ 4
オートモーティブ ...................................................................................................... 4
ヘルスケア ............................................................................................................... 4
輸送 ........................................................................................................................ 5
大きなビジネスチャンス、大きな課題 ................................................................................ 5
標準を求めて ................................................................................................................. 6
2 | White Paper
ACCELERATING BUSINESS TRANSFORMATION
従来型ビジネスの終焉
IoT は、
「インダストリアルインターネット」あるいは「産業革命
4.0」と呼ばれることもあります。IoT によってさまざまな分野で
従来のビジネスモデルが崩れつつあります。大幅な生産性の向上
とスケールメリットを通じて既存の業務を変革する力を秘めて
いるだけでなく、IoT はこれまで存在しなかったまったく新しい
事業分野やサービスを生み出す可能性も持っています。
IoT を通じたスマートデバイスの接続を促している要因は、よく
あることですが、経済的なメリットです。たとえば、マシンを保
• 適応型分析:IoT で生成された膨大なデータセットを、実践的
で豊富な情報のソースに変換することで、ビジネスを変革す
る傾向を見きわめる適応型分析が可能になります。大規模な
リアルタイムの意思決定を実現してデバイスやシステムの動
作を改善できるので、適応型分析は実際にスマートシステム
をさらにスマートにします。そのため、システムは発生と同時
に問題を正確に診断し解決できます。
産業界は、日々の業務に IoT の機能を応用する方法も模索してい
ます。
守するにも電気メーターを読み取るにも、あるいは冷暖房を調
節してビルのエネルギー利用を管理するにも、人間 1 人あたり
小売業
のコストは一般的にデバイス 1 台の 3 倍以上かかります。
IoT 技術を利用すると、無線 ID(RFID)を介した通信を利用して自
もうひとつの重要な要因が、より迅速で適切な意思決定を行う
ためのビッグデータのリアルタイムな需要です。データは今や
ビジネスの新しい通貨になっていますが、IoT アーキテクチャで
は生データと構造化データ両方の取得のほか、ビジネス上のイ
ンテリジェントな決定を形成し導き出す高度なリアルタイム分
析も可能です。IoT アーキテクチャはクラウドへの出入り口とし
て、またクラウドの潜在能力を引き出す手段としても機能する
ので、企業は新たな効率と経済性を生み出す新しい B2B または
B2C サービスを開発できます。
IoT は、複数の産業部門にわたって以下の 2 つの運用上重要なメ
リットを創出しています。
動販売機に在庫を補充できるため、必要性ではなくスケジュー
ルに基づいて補充することで、発生するコストと非効率を削減
できます。同じ技術で、最近の携帯電話の決済標準を通じた最新
の決済のコンセプトも実現します。または、停電、破壊行為、機
器障害などによって引き起こされる計画外のダウンタイムにつ
いてのアラートを表示できます。
消費者の立場からすると、オンラインと実店舗でのショッピン
グ体験の境目はますます曖昧になっていくでしょう。店舗の通
路にタッチスクリーンのモニタと広告がひしめき、買い物客は
店舗用の割引券をスマートフォンでダウンロードできるからです。
スワイプでデータを収集し、ポイントカードをスキャンすれば、
高度にカスタマイズした製品やサービスを上得意の顧客に示す
ことも可能です。
• リアルタイム分析:予知保全と自己診断を可能にすることで、
リアルタイム分析が IoT のインテリジェントなマシンやデバ
イスによって自律的に実行されます。たとえば、システムの
機械的負荷を減らして障害が発生しそうなコンポーネントの
ライフサイクルを延ばしたり、自律的にサービスコールを要
請したりすることが可能です。予知保全を行えば、定期点検
と予防メンテナンスに伴う時間と労力が不要になり、部品在
庫の管理改善と在庫コストの削減によって効率が向上しま
す。インテリジェントデバイスによって提供されるパフォー
マンスデータは、研究開発の情報にもなるので、エンジニア
は今後の製品で繰り返される問題に対処できます。
3 | White Paper
エネルギー
太陽光発電や風力発電などの代替エネルギーが、エネルギー生
産の全体に占める比率は高くなりつつあり、供給条件、市場価
格、需要に対応して顧客の消費を管理する動的な需要予測メカ
ニズムがなければ、発電の品質を維持することは困難になりま
す。太陽光発電や風力発電については予測が難しいことを考え
ると、発電事業では緊急時に備えうる能力が必要です。その解決
策は、インテリジェントなグリッドオートメーションにありま
す。供給上の意思決定を下すために膨大な量のデータを生成、収
集、分析するセンサーの数は大幅に増え続けています。
ACCELERATING BUSINESS TRANSFORMATION
M2M の監視と制御でスマートグリッドはかつてない信頼性、セ
オートモーティブ
キュリティ、パフォーマンスにより、変わり続ける条件に対応す
今日、最新の自動車に装備されている何十個かの電子制御ユ
る自律的な調整が可能です。スマートエネルギーグリッドに
よって従来型のエネルギー源と新興のエネルギー源の統合が進
み、エネルギー供給の環境適合性、安全性、経済性も向上しま
す。事業者は、エネルギーの流れを透過的かつ可視的に監視、分
析するとともに、消費者のスマートメーターと双方向で通信す
ることによって消費パターンを分析します。エネルギーの供給
は、リアルタイムデータに基づいてスマート IoT デバイスによっ
て管理され、状況認識が提供されます。予知保全機能で、環境条
件、トランスの動作不良、その他の供給設備によって生じる停止
またはダウンタイムの影響が軽減されます。
インテリジェントなエネルギーの供給と管理は、環境的な配慮
に見合うものです。ネットワーク対応デバイスは、人間に頼る手
作業と比べて数倍の精度と反応速度で電源管理タスクを実行で
き、それがエネルギー削減、優先順位の決定、停止時応答ポリ
シーの設定につながります。
ビルと一般住宅
ニット(ECU)は、多数のセンサーに接続されて IoT の概念にふ
さわしいインテリジェンスの基盤となっています。ECU と車載
コンピュータだけでも、機械的問題の可能性があればドライバ
に警告しますが、IoT では「ネットワーク対応車両」としてテレ
メトリサービスを利用し、その情報をサービスセンターに送信
します。運用者はデータを取得して正規化し、その情報に関して
他の関係者と協力することができます。このような装備を利用
して、保守技術者は顧客に応じた個別のサービスを提供するこ
とで、カスタマーロイヤルティを構築できます。修理工場では、
部品在庫を最適化することができるので、顧客の自動車から得
たデータに基づいて顧客が必要な部品のみを注文すれば済みま
す。走行中の車両から情報を得られれば、自動車メーカーは研究
開発を促進、改善することができます。
一般道路でも高速道路でも、車両間の通信によってドライバは
交通渋滞や事故情報を受け取ります。自治体が運用する交通管
理システムと自動車の間の通信を利用すれば、交通量が増え続
ける地域でも渋滞を回避できるため、快適に運転できます。
スマートビルディングやスマートホームをスマートエネルギー
グリッドと統合すれば、企業でも一般家庭でも電力消費を削減
車載の支援システムが増えているため、車両間通信を利用して
できる大きなチャンスが広がります。電力事業者は、ビルの居住
自動車を結ぶクラスタによって自動車はますます自律的なデバ
者のスケジュールと利用パターンに基づいて効率化を図ること
イスとなり、安全性とセキュリティが向上して、ドライバにとっ
ができます。建物の運営者と電力を消費する居住者は、電力消費
ても自動車全体にとっても効率的になります。自動車業界は、コ
を監視しながら暖房、照明、セキュリティシステムをリモートで
スト削減と新しい収益源を確保することにより新しいビジネス
制御できます。スマート電力メーターとスマートアプライアン
チ ャ ン ス を 創 出 で き ま す。成 功 の 基 盤 は、信 頼 性、セ キ ュ リ
スがインテリジェントな電源と通信して、供給と需要のバラン
ティ、管理性に優れたインテリジェントな接続を車両で実現で
スをとります。ソーラーパネルや家庭用風力タービンといった
きるかどうかにかかっており、ビジネスインフラストラクチャ
手段で発電する設備から電力グリッドに電力を供給できるた
と統合されれば分析と予知保全が可能になります。
め、エネルギー供給で真に双方向のシステムが成立します。
ヘルスケア
社会の人口統計が変化し、寿命が延びて高齢化が進んでいるた
め、現代のビルは高齢者の独居に対応する必要があります。セン
サーとコントローラ、インテリジェンスを備えたスマートビル
ディングは、居住者に対して遠隔医療やその他の技術支援を提
供し、真の環境支援生活を実現します。
IoT の概念は、将来的なビルのみならず、相互接続と相互運用が
広がっている都市においても重要な役割を果たします。インテ
リジェンス、セキュリティ、モジュール性、そして自律的な操
作、ス マ ー ト ビ ル デ ィ ン グ や 設 備 が 可 能 な 直 感 的 な イ ン タ
フェースを通じて今日のビルディングオートメーションを拡張
すれば、私たちの生活も労働体験も変わる可能性があります。
4 | White Paper
病院でも診療所でも家庭でも、さらにはモバイルアプリケー
ションを介してでも、IoT ベースのヘルスケアサービスには多く
の可能性が広がっています。スマートデバイスを利用して、医療
の専門家は患者の状態を的確に把握し、適切な時期に正確で現
実的な治療を行えます。
ACCELERATING BUSINESS TRANSFORMATION
投薬量や X 線の放射レベルはマシンによって管理されます。病
院は CT スキャナ、X 線撮影機、その他の設備から得たデータを
利用してその利用状況を監視および監査し、患者の安全性を確
保するとともに、FDA の順守要件も満たすことができます。
たとえば、現在、輸液ポンプは常時監視して、患者の安全を確保
します。そのポンプをインテリジェントなシステムアーキテク
チャに接続すれば、投薬を事前に設定することも、あるいは電子
投薬システムやバーコードに接続することもできます。インテ
リジェントな輸液ポンプは、間もなく実用段階に入ります。
輸送
航空、鉄道、都市交通などあらゆる形態の大量輸送が、予測可能
で安全なサービスを約束し、最適な設備の利用も保証すべく、自
動化された意思決定とデータにますます依存するようになって
います。北米で採用されているポジティブ列車制御(PTC)と、
欧州列車制御システム(ETCS)は、IoT がエコシステム全体に影
響する 2 つの事例です。輸送部門からオペレータ、サプライヤま
での運用手順もその影響を受けます。マルチテナントの概念に
より関係者全員がさらに密接に協力し合い、重要情報にアクセ
スできるため、輸送システムのより信頼性が高く安全な運用が
可能になります。航空機どうしで乱気流を報告し合い、バスどう
しで遅延情報を報告し合うように相互で通信できるようにな
り、クラウドベースの中央制御システムでそれぞれの移動を追
跡します。
単にオペレータを交代させるだけでなく、欠陥データがリアル
タイムで直接エンジニアに送信されるため、詳細な分析が可能
です。予知保全によって、修理の必要な資産を特定し、点検に必
要なダウンタイムを最小限に抑えて設備の最適な稼働を確保し
ます。システム運用者は、定時のパフォーマンス、エネルギー消
費量、使用率、メンテナンスのニーズなど、つまりは業務に影響
するあらゆる運用パラメータを、リアルタイムで確認できます。
自動車と鉄道、あるいは都市交通とそれ以外の交通といったシ
ステムオブシステム(システムから成るシステム)を、IoT 対応
のインテリジェンスによって統合するというのは、非常に先進
的な概念です。異なる輸送部門からのビジネスインテリジェン
スを組み合わせれば、消費者にとってのシームレスなモビリ
ティというまったく新しい体験が創出されます。
5 | White Paper
大きなビジネスチャンス、大きな課題
上記の実際の活用例は、すでに導入されているものから開発中、
企画中のものまで含めていずれも真に変革力のあるものです。
IoT は、新しいビジネスおよびサービスチャンスを生むだけでな
く収益の創出を可能にして加速します。ところが、せっかくの
チャンスをめぐる盛り上がりも、採用を鈍らせ、垂直市場の内部
でも垂直市場間でもスケーラビリティを損ないかねない現実的
な課題によって阻まれているのが現状です。
IoT に利害を持つ企業は、次のような疑問に対応する必要があり
ます。豊富な新しいアプリケーション、システム、およびデバイ
スを、複雑な、ときには脆弱なことさえあるネットワークに接続
する最適な方法は何か。ビッグデータのどんな情報をもとにし
てシステムとデバイスを設計すれば、接続体験が改善されるの
か。サイロ化した垂直市場間、システム間、アプリケーション間
でどのようにデータを交換するのか。潜在的な収益を高めるた
めには、IoT 対応システムの運用効率をどのように拡張すればい
いのか。そして、成功事例や教訓を、複数の垂直市場間でいかに
広く活用するのか。
オペレータと、デバイスまたはシステムメーカーとでは、チャン
スの捉え方が大きく異なりますが、効率的に拡張し、デバイス当
たりの平均収益を増やして競合上の差別化を確立するようなソ
リューションを開発する一方で特定の垂直産業のニーズに対応
するという目的はすべてに共通しています。
ACCELERATING BUSINESS TRANSFORMATION
標準を求めて
ウインドリバーは、さまざまな業界パートナーおよび顧客と積
幅広い導入を妨げている最大の課題は、市場の断片化です。市場
はさまざまな垂直産業で構成されており、その目的が重なり合
うことはほとんどないため、ソリューションの拡張が難しく
なっています。しかも、インテリジェントシステムの構築に伴う
テクノロジは多岐にわたり複雑です。ほとんどのソリューショ
ンは、業務のバックボーンとシステムまたはデバイスドメイン
との間でシームレスなエンドツーエンドの体験を提供できない
ため、ある程度のカスタマイズが必要になります。また、専門的
極的に協力し、このような課題に対処して障壁を取り除き、IoT
の概念の定着に努めています。広範な分野とミッションクリ
ティカルなアプリケーションに深い経験を持つ弊社は、エンド
ユーザのニーズを理解し、信頼性、管理性、セキュリティに優れ
たインテリジェントコンポーネントを最初から設計していま
す。弊社は、あらゆる業界が IoT を活用してパフォーマンスを改
善し、新しいサービスおよびビジネスを立ち上げて新たな収益
源を創出することを、全力でサポートしています。
スキルや専門知識も不足しています。必須の市場戦略に加え、イ
ンテリジェントデバイスの構築に必要なスキルは通常、オペ
レータやデバイスメーカーの中核的な技能と異なるためです。
テクノロジまたはアプリケーションのデプロイにおける標準が
なかなか発展しないことも、課題の 1 つです。開発の多くは孤立
して実施されています。IoT アーキテクチャの中心的なコンポー
ネントは、その場しのぎの対応で実装されてきた場合が多く、開
発でもデプロイでも競合する複数の標準が利用されています。
ほとんどのオペレータとデバイスメーカーは、パートナーから
相当のサポートを受けない限り IoT ベースのソリューションを
作成できません。そのパートナーでさえ、現在のエコシステムに
属していないのが現状です。
IoT の潜在的な市場は広大ですが、企業が得られる実際のメリッ
トは、実際のアプリケーションを作り出すときの複雑さによっ
て今のところ制限されています。これも、標準が統一され、市場
ニーズとビジネスケースが今より厳密に定義され、オペレータ
とデバイスメーカーが実現できる真の価値、すなわち革新的な
新しいサービスと新しいアプリケーションに自由に集中できる
ようになれば、急速に変わっていくでしょう。
ウインドリバーは組み込みソフトウェアとモバイルソフトウェアのリーディングカンパニーです。
企業がデバイスソフトウェアを、より早く高品質かつ低コスト、かつ高信頼性で開発、運用、管理することを可能にします。
ウインドリバー株式会社
■販売代理店
東京本社
〒 150- 0012 東京都渋谷区広尾 1-1-39 恵比寿プライムスクェアタワー
TEL.03- 5778-6001(代表)
大阪営業所
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