貿易取引~ 貿易取引~輸入編( 輸入編(その1 その1)輸入商品の 輸入商品のコスト計算 コスト計算 (財)茨城県中小企業振興公社 貿易アドバイザー 小林 公典 2001/10/09 貿易取引~ 貿易取引~輸入編( 輸入編(その1 その1) 輸入商品の 輸入商品のコスト計算 コスト計算 (財)茨城県中小企業振興公社 貿易アドバイザー 小林 公典 輸入を始める際には、海外の輸出業者から出された価格が、日本に輸入するといくらになるかというコスト計算が必要である。「輸出価格の1.5倍くらいが大体の輸入 コストの目安になる」などとコストの見当をつける人もいる。しかし、輸出価格の建値(価格条件)や輸入税率も違うし、実際に輸入する数量の規模とか取引形態によりコ ストも違うので、実際に即した計算が必要である。 初めて自社で輸入を手がけようとする場合には計算の仕方がわかりにくいかもしれない。ここではイタリア産のスパゲッティを輸入する際のコスト計算を例に挙げて各 費用項目について説明したい。輸出価格はCPT Tokyoで1kg当たりUS$0.55、数量は20フィートコンテナー1台分を輸入する場合である。なお、包装は500g入りポリ袋が カートンに20袋入り、1コンテナーには2,000カートン(20,000kg)入る場合である。 1)CPT Tokyo US$0.55 per kgx20,000kgx\130= 2)海上保険料 \1,430,000x 110%xO.7%= 3)L/C開設料 \1,430,000xO,30%= 4)銀行諸掛 5)輸入税\30x20,000kg 6)THC(ターミナルハンドリングチャージ) 7)通関手数料 8)食品手数料 9)取り扱い手数料 10)OLT申請料 11)コンテナー横持ち料 12)バン出し入出庫 \2000x20tx1,5 13)保管料 \500x20tx1,5x3期= 14)その他(ラベル印刷料など) 15)小計 500g入り1袋あたり \1,430,000 \11,011 \4,290 \15,000 \600,000 \28,491 \11,800 \11,000 \20,000 \5,100 \15,000 \60,000 \45,000 \50,000 \2,298,201 \58 1)CPT Tokyo US$0.55 per kgx20,000kgx\130=\1,430,000 これはCPT価格(日本までの輸送費込みlkg当たりの輸出価格)をコンテナー1台分の数量(20,000kg)に乗じて、為替換算率(1米ドルあたり130円)で円に換算したもの。 為替相場の変動リスクを勘案して実際より円安のレートで計算するほうが無難であろう。 海外の輸出業者から価格を出してもらう場合、EXW(工場渡し条件)、FOB(本船渡し条件)、FCA(輸送人渡し条件)、CPT(輸送費込み条件)、CFR(運賃込み条件)などの 色んな価格条件で価格が提出される。これらの取引条件が付かない価格が出されたら、その価格はどこまでの費用がカバーされているか、リスクの分岐点はどこかを 確かめる必要がある。 EXW、FOB、FCA、CPT、CFRなどは国際商業会議所が「インコタームズ」(International Commercial Termsの略)として制定した国際貿易取引に使用される定型的な取 引条件である。現行の2000年版インコタームズでは13の取引条件がある。「インコタームズ」の個々の取引条件に対する理解は貿易取引を進めるために欠かせないこ とであるが、ここでは紙面の都合上説明を割愛せざるを得ない。別途、貿易参考書などを参照頂きたい。 EXW、FOB、FCAなどの条件では、その価格に含まれない現地の輸送費や通関費用、船積費用、海上運賃などの諸費用を調べてそれらの費用をコスト計算に含める 必要がある。しかし、日本から現地の費用を調べるのは容易でない場合もある。従い、輸出業者からはCPT(輸送費込み条件)、CFR(運賃込み条件)など日本までの運 賃込みの価格を出してもらうほうが便利である。 2)海上保 2)海上保険 海上保険料 \1,430,000x110%xO.7%=\11,011 保険料率は保険会社に問い合わせるのが確実である。普通保険料はCIF価格(運賃保険込みの価格)の110%に掛かるが上記の計算は便宜上CPT(輸送費込み条件) 価格の110%に料率を掛けた。 3)L/C開設料 3)L/C開設料 \1,430,000xO.30%=\4,290 4)銀行諸掛 4)銀行諸掛 \15,000 輸入の決済条件は輸入者が信頼されて後払い送金やL/Cなしの荷為替手形決済条件などが認められない限りL/C(信用状)や前払い送金決済が多い。L/Cは銀行に 開設してもらうのであるが、銀行に開設手数料を払う必要がある。料率は依頼人の銀行に対する信用度や取引の多寡によって異なる。高くてもL/C金額の0.3%を見て おけば十分であろう。これ以外に銀行がL/Cを通知する際に要する電信料やそのほかの銀行費用も含めて\15,000をみている。もし、銀行からユーザンスの供与を受け る場合(銀行から一定期間の金融を受ける場合)は、金利を別途計算に含めることが必要になる。 5)輸入 5)輸入税 輸入税 \30x20,000kg=\600,000 スパゲティの場合は重量に対して輸入税が課せられる。一般的にはCIF価格(運賃保険料込みの価格)に対し何パーセントというような従価による課税が多い。税率は 通関業者や税関に照会して正しい税率を把握することが必要。 6)THC(ターミナルハンドリングチャージ)\28,491 船会社がコンテナーターミナルで掛かる費用を運賃とは別にTHCとして徴収する。コンテナーあたりいくらという料率だが、航路によって異なる。 7)通 7)通関手数料 \11,800 8)食品手 \11,000 8)食品手数 食品手数料 9)取 9)取り扱い手数料 \20,000 通関手数料は通関書類などをそろえて税関に申告することに伴う手数料、また食品手数料は食品の場合に最寄りの厚生労働省の出先機関に提出する「食品等輸入 届書」の手数料である。取扱手数料は通関業者の懐に入る手数料である。 10)OLT申請料 10)OLT申請料 11)コンテナー 11)コンテナー横 コンテナー横持ち料 12)バン 12)バン出 バン出し入出庫 \2000x20tx1.5 13)保管料 13)保管料 \500x20tx1.5x3期 500x20tx1.5x3期= \5,100 \15,000 \60,000 \45,000 \45,000 通関は貨物をコンテナーに入れたままコンテナーヤードで通関をきる場合と、ヤードから倉庫(保税上屋)に入れて、倉庫で通関をきる場合とがある。ヤードで通関をき ってから自社に納入する前者の場合のほうが費用的には安上がりだが、ここでは後者の場合について計算をした。 OLT申請料とはコンテナーをコンテナーヤードから最寄りの倉庫に保税のまま動かす際に申請する申請料である。コンテナー横持ち料はヤードから倉庫までの距離 によって異なる。倉庫に運ばれたコンテナーから貨物を出して倉庫に入れ、出庫までの荷役関連費用が「バン出し入出庫料」になる。 倉庫保管料は1日から10日、11日から20日、21日から月末までの夫々の「期」の間で貨物の入出庫がなされると1期分の保管料を払う。「期」をまたがって入出庫がな される場合、例えば8日に入庫して12日に出庫した場合は2期分の保管料を支払うことになる。 上記の計算では「バン出し入出庫料」も「保管料」も容積(立方メートル)あたり夫々2000円、500円の料率で計算している。スパゲティの場合、重量の1.5倍くらいが立方 メートルになる筈で、上記のような計算をした。保管貨物の価格の高いものの保管料は高くなる。通関、荷卸、保管料などは予め通関業者と十分打ち合わせを行い、見 積書を取るとより正確なコスト計算が出来る。 14)その 14)その他 その他(ラベル印刷料 ラベル印刷料など 印刷料など) など) \50,000 食品の場合、商品名、容量、輸入業者名などを記載した日本語の表示が必要だが、これのラベルのフィルム原版製作料(上記の計算ではラベルは輸出業者の費用で 現地で貼ってもらうか、包装フィルムに印刷をしてもらうことが前提)などを見積もった。 二,三回実際に輸入を行えば実務に対する理解も深まり実際に掛かった費用との比較も出来てより正確なコスト計算が出来るようになるはずである。
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