ProTools に関わる使用メディアの運用基準

ProTools に関わる使用メディアの運用基準
Ver 1.01
社団法人 日本音楽スタジオ協会
平成16年6月25日
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1. 運用基準作成の目的.......................................................................................................... 1
2. 概要 ................................................................................................................................... 1
3. 機器の保全 ........................................................................................................................ 2
4. 記録メディアについて ...................................................................................................... 3
(1)ワークメディアについて...............................................................................................4
(2)バックアップメディアについて.................................................................................... 4
(3)マスターメディアについて ........................................................................................... 5
5. 運用基準 ............................................................................................................................ 6
(1)ワークメディア ............................................................................................................. 6
(2)バックアップメディア .................................................................................................. 6
(3)マスターメディア.......................................................................................................... 6
6. セッションノートに記載する内容.................................................................................... 7
7. ハードディスクレコーディングに対する啓蒙.................................................................. 8
8.今後の課題 .......................................................................................................................... 9
(1)JAPRS を超えた運用規準の作成を目指して................................................................. 9
(2)バックアップに伴う料金体系について ....................................................................... 9
(3)スタジオでの HDD 販売について .................................................................................. 9
(4)マスタリングスタジオでの運用について ................................................................... 9
(5)運用規準の改訂など .................................................................................................... 9
9.付録.................................................................................................................................... 10
(1) ProTools セッションメモ例 (表) .......................................................................... 10
(2) ProTools セッションメモ例 (裏) ...........................................................................11
(3) ProTools セッションシール例............................................................................... 12
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1. 運用基準作成の目的
パーソナルコンピューター(以下 PC)ベースのハードディスクレコーダーは、その
目覚しい進歩により、今ではプロレベルの音楽録音現場に欠かせないツールとなっ
ています。なかでも ProTools は業界の標準機となりつつあります。
本基準はスタジオ運用の危機管理を鑑み、PC ベース機特有のトラブルに対する予防
手段として、ディスクの 2 重化によるバックアップを基本とし、記録メディアの安
全かつ効率的な運用を図ることを目的とします。
また、PC ベースの場合、ソフトウェアー・ハードウェアー共に技術革新が著しいこ
とから、柔軟に更新できる運用基準を目指します。
2. 概要
セッションで用いる録再用メディアをワークメディアと呼びます。
セッション進行中は適宜他のバックアップメディアにバックアップ(コピー)を作
成し、万一ワークメディアが使用不能になった場合に備えます。
ミックスダウンが終了し、ワークメディアを使用しなくなった時点で、保管用とし
て CD-R や DVD-R、データーストリーマー等にマスターメディアを作成します。
どのメディアに関しても、内容が明記されたセッションシートを添付するものとし
ます。
クライアントはセッション開始時にワークメディアもしくはバックアップメディア
のいずれか、もしくは両方を用意して頂きます。
スタジオでお預かりしたメディアおよびデーターに関しては、原則として JAPRS ス
タジオ使用約款 第 10 条1を適用させて頂きます。
1 第 10 条(テープ等の預かり)
当スタジオは、原則としてテープ、楽器、機材(以下「テープ等」といいます)の預かりをしないものとします。た
だし、当スタジオが承諾する場合、スタジオの使用期間に限り、当該スタジオの使用にかかるテープ等の一時預かりを
行うものとします。
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3. 機器の保全
メーカーの推奨環境下での使用を原則とします。
安定運用を計るため、汎用アプリケーションのインストールは避け、専用機として
運用するものとします。
PC に各メディアを接続する場合は、同一のインターフェイスに複数のメディアを接
続せず、複数のインターフェイスに最小限のメディアを接続することで、コネクタ
ーの差込不良といった人為的トラブルや、コネクターの接触不良やメディア異常に
よる電気的トラブルなどのリスクを分散させることができます。
例)好ましくない接続
以下のような接続方法では、SCSI でも IEEE1394 でも PC - マスターメディア間のケ
ーブルやコネクターに障害が起きた場合、両方のメディアに被害が及ぶ恐れがあり
ます。
PC ---> ワークメディア ---> バックアップメディア
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4. 記録メディアについて
ProTools を安全に使うためには Digidesign 社製 DigiDrive の使用を推奨しますが、ワ
ークメディア、バックアップメディア両方に DigiDrive を使用することは予算面からも
現実的ではなく、バックアップメディアは技術進歩の著しい安価な汎用メディアを使用
することが、リーズナブルであると考えます。またこのような HDD は容易に入手できる
ので、供給面でも利便性があります。
ワークメディアおよびバックアップメディアに用いる HDD は、サードパーティーが検品
して出荷し、製品を保証している正規販売品を使用するものとします。
この場合、製品そのものの保証を受けられ、保証期間内であれば修理あるいは交換に応
じてもらえます。
本運用基準では、具体的な HDD のメーカー・型番等を選定するのではなく、ProTools
で使用する上で、安定性・信頼性に優れたメディアの、概要的な選定を目指します。
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(1)ワークメディアについて
安定性・信頼性を考慮して Digidesign 社製 DigiDrive、またはそれに準ずる性能を持つサ
ードパーティー製の SCSI ドライブを用いることとします。また、転送レート 30MB/S 以
上のスペックを持ち、AC コネクタ等しっかりした構造・長時間の連続使用に耐えうる放熱
構造を持った IDE ドライブも対象とします。
ディスクのフォーマットは、それぞれの OS・ソフトウェアのバージョンに適合した
Digidesign 社推奨のものを使用します。
OS
フォーマッタ
フォーマット
備考
OS9
ATTO EXPRESS ProTools
HFS+
ver.5.0 以上、5.0 以下の場合は HFS
OSX
ディスクユーティリティ
HFS+
ジャーナリングはオフにする
(2)バックアップメディアについて
バックアップに支障の無いパフォーマンスであれば、インターフェイスは前述の Ultra
Wide SCSI である必要はなく、SCSI や IEEE1394(FireWire)などが考えられます。
フォーマット規格は互換性・汎用性を重視し、Apple 純正のドライブ設定または Finder
メニューの「ディスクの初期化」を使用し、HFS+形式を適用します。購入した HDD が
Windows フォーマット等でフォーマットされている場合でも、上記の方法での再フォー
マットを適用します。
また、さらに CD-R や DVD-R などへバックアップを作成すれば万全と言えます。
今後、各種サーバーをバックアップメディアとして運用することも考えられます。
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(3)マスターメディアについて
マスターメディアとして使用するメディアの選定も重要な課題です。書き込み時にいく
ら検証(ベリファイ)を行っても、メディアそのものの信頼性・耐久性が低ければ、マ
スターメディアとして役に立ちません。HDD 同様、ProTools のメディアとして使用する
上で安定性・信頼性を優先した選定をするべきであると考えます。
クライアントが保管するマスターメディアとしては、普及率・互換性・耐久性などを考
慮し、現時点で一番有効なものとして CD-R、DVD-R が挙げられます。テープ式データー
ストリーマーも、十分な実績のある製品が発売されています。
また短期間の保存に限定すれば、ハードディスク自体にセッションを含むファイル全て
をコピーすることで、再セッションの際の復元時間を短縮することができます。
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5. 運用基準
これまでの事項をふまえ、下記のような運用基準といたします。
(1)ワークメディア(所有者はクライアント・スタジオのいずれか)
Ultra Wide SCSI 規格以上の SCSI HDD を録再用メディアとしてセッションに用いる。
(2)バックアップメディア(所有者はクライアント・スタジオのいずれか)
ワークメディアがバックアップできる HDD を用意し、セッション中は適宜ワークメディ
アからのバックアップを行う。
(3)マスターメディア(所有者はクライアント)
ワークメディアがコピーできる HDD にバックアップ(短期保存目的)
CD-R/DVD-R またはテープ式データーストリーマーにバックアップ(長期保存目的)
ただしスタジオ所有の HDD を使用した場合、2 週間まで保存し、クライアントの許諾を
得た後、消去させて頂きます。
スタジオでお預かりしたメディアおよびデーターに関しては、原則として JAPRS スタジ
オ使用約款 第 10 条2を適用させて頂きます。
2 第 10 条(テープ等の預かり)
当スタジオは、原則としてテープ、楽器、機材(以下「テープ等」といいます)の預かりをしないものとします。た
だし、当スタジオが承諾する場合、スタジオの使用期間に限り、当該スタジオの使用にかかるテープ等の一時預かりを
行うものとします。
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6. セッションノートに記載する内容
・ 使用した OS のバージョン
例)OS9.2.2
・ HDD のフォーマット形式
例)HFS+
・ オーディオファイルのフォーマット形式
例)SDII
・ ProTools のバージョン
例)ProTools HD 5.3.1
・ サンプリング周波数およびビット長
例)48kHz・24bit
・ タイムコードフォーマット
例)30NDF
・ セッションスタートタイム
例)0h01m00s000ms/f
・ セッションファイル名
・ セッションファイル名−備考
・ 曲名
・ 使用トラック数
・ トラック名
・ トラック名−詳細
・ 使用プラグイン(バージョンを含む)
・ アーティスト・クライアント名
・ ディレクター名
・ エンジニア名
・ オペレーター名
・ 作業場所・日時
・ データーの容量
※付録にてセッションシート例を添付いたします。
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7. ハードディスクレコーディングに対する啓蒙
コンピューターの発展に伴い、利便性の高いメディア(IEEE1394 や USB など)の使用が
増えつつありますが、コンピューターの使用に当たっては、スタジオ・クライアントと
もに基本的な知識・危険性に対する理解を深めるため、JAPRS としては、その啓蒙活動
を行う必要があると考えます。
(例)
・ハードウェアー挿抜時のマウント/アンマウント、電源オン/オフの順序徹底
・搭載インターフェイスの状況把握(種類・速度・接続方法等)
・不正シャットダウンの危険性の把握(危険な理由)
ホットスワップに対応したインターフェイス(IEEE1394 や USB)は扱いが簡便な反面、
コネクターのガタツキ等による接点不良も多く見られます。このようなハードウェアー
を使用する場合は、人為的ミスの予防が大切です。
また、ソフトウェアーに関しては、OS、アプリケーション、プラグインなど PC にイン
ストールするソフトウェアー全てに於いて、正規ユーザーであることを厳守するものと
します。
移動先のスタジオでのプラグインの有無の確認等は事前に行い、無い場合はバウンスす
るなど、適切な対処をする必要があります。
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8.今後の課題
(1)JAPRS を超えた運用規準の作成を目指して
現在 ProTools はプロ用の録音スタジオでの使用だけでなく、幅広いユーザーがいま
す。本運用規準は JAPRS だけのものでなく、Digidesign Japan と販売会社、マスター
メディアを最終保管されるクライアント、制作ディレクターやフリーランスエンジニ
アなどとの共同歩調が必要です。
(2)バックアップに伴う料金体系について
マスターメディア作成および検証は、現段階では長時間作業により経費がかかるため、
別途クライアントに対し請求させて頂く体制づくりが必要です。
(3)スタジオでの HDD 販売について
プロ用の録音スタジオで、現状のマルチテープのように HDD の販売・貸出を行うか
どうかの見解の統一も必要と考えます。
(4)マスタリングスタジオでの運用について
2トラックのミックスダウンマスター以外に、マルチ素材が入った HDD がマスタリング
スタジオに持ち込まれることも増加しています。そのためデータのトランスポートに時
間がかかったり、マスタリングスタジオでミックスの修正が行われるような、マスタリ
ング本来の作業を妨げる要因になっています。このような事のないよう、マルチ素材と
2トラックミックスダウンマスターの HDD を分ける必要があります。
(5)運用規準の改訂など
ProTools はソフトウェアー・ハードウェアー共に技術革新が著しいことから、本運
用規準は柔軟に改訂できるものとします。また技術情報などをタイムリーに JAPRS ホ
ームページへ継続掲載するものとします。
(http://www.japrs.or.jp/protools/)
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A dobe Sy stems
9.付録
(1) ProTools セッションメモ例 (表)
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(2) ProTools セッションメモ例 (裏)
A dobe Sy stems
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(3) ProTools セッションシール例
CLIENT
TITLE
2ch / Multi
AUDIO FORMAT
SDII
fs
AIFF
WAV
No.
MEMO
kHz
bit rate
CPU Platform/OS
MASTER / CLONE
bit
Macintosh OS
.
.
J/E
Windows XP-Home / Professional
ProTools Version
.
.
TDM / LE
DATE
Data Size
GB
13
.
.
SIGN
ProTools に関わる使用メディアの運用基準 作成者名簿
1.社団法人 日本音楽スタジオ協会 会員
淺見 啓明(日本音楽スタジオ協会 会長)
赤沢 健一(有限会社エムズディスク)
井口 進 (有限会社グルーブ・ワン/フォリオサウンド)
石野 和男(株式会社バップ/サウンドイン)
内沼 映二(株式会社ミキサーズ・ラボ/ウエストサイド)
大野 進 (株式会社ファロス)
河村 聡 (株式会社バップ/アドギアー)
清松 智子(株式会社バーディハウス/Bunkamura Studio)
久保田耕司 (株式会社有線ブロードネットワークス/ハートビートレコーディングスタジオ)
河野 洋一(株式会社バップ/サウンドイン)
佐々木高志(株式会社サンライズミュージック/サンライズスタジオ)
椎名 和夫(株式会社ペニンシュラ)
清水 邦彦(株式会社ミキサーズ・ラボ/ウエストサイド)
清水 三義(株式会社青葉台スタジオ)
新島 誠 (株式会社一口坂スタジオ)
福田 幸浩(株式会社音響ハウス)
船津 広隆(株式会社サウンド・シティ)
2.オブザーバー
安藤 和宏(株式会社セプティマ・レイ)
宇都 祐彦(ビクターエンタテインメント株式会社/ビクタースタジオ)
奥原 秀明(ビクターエンタテインメント株式会社/ソフト技術部)
奥村 誠二(東芝 EMI・スタジオ株式会社/制作部録音編集グループ)
笠井 満 (株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ/録音技術本部)
玉川 俊雄(日本ミキサー協会)
常盤野 司(アビッドジャパン株式会社/デジデザイン)
松尾 順二(株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ/録音技術本部)
山本 隆彦(タックシステム株式会社)
<以上、敬称略 五十音順>
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〒 160-0016 東京都新宿区信濃町10番地 宮下ビル2F
TEL.03‐3351‐5356 FAX.03‐3351‐5819
URL http://www.japrs.or.jp E‐mail:[email protected]
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