タブレット端末時代の電子書籍・雑誌・新聞利用動向を調査 電通総研では、次世代のデジタル端末として 2010 年から話題となっているタブレッ ト端末の利用実態を、アップル社の iPad 保有者を対象として米国で調査しました。 タブレット端末は、手帳や書籍と同等サイズの画面を備え、キーボードではなくタッ チパネルを用いて画面を直接操作できることから、電子書籍・雑誌・新聞など、文字中 心のメディアの表示に適した端末として注目されてきました。 そこで、今回の米国調査ではこれらのメディアの電子版がどのぐらいタブレット端末 上で利用されているのかを中心に、とりまとめをおこないました。 調査結果を5つのポイントに焦点を当ててご紹介します。 1) 【端末利用の状況】米国の iPad 保有者の間では、端末をほぼ毎日利用する習慣 が定着し、1 日の平均利用時間も 1 時間を大きく超えている。 2)【端末の利用目的】最も多い使い道はウェブの閲覧、e メールなど、パソコン 上での使い方とさほど変わらない。電子書籍の利用は、コンテンツ消費として はゲームとならび上位を占める。 3)【電子書籍端末併用者によるタブレット端末への期待】保有者の 3 割が、いわ ゆる電子書籍端末も保有している。電子書籍端末併用者が電子書籍を読む時間 は iPad 経由と電子書籍端末経由とで拮抗している。また電子書籍端末併用者の タブレット端末への期待は、電子書籍から、電子新聞や電子雑誌へと広がって いる。 4)【電子書籍・電子雑誌の購読数】調査回答者の 8 割は、1 カ月に 1 冊以上の電 子書籍を購読しており、全体の平均購読冊数は 3 冊以上に上る。また、同じく 6割以上が 1 誌以上の電子雑誌を iPad で購読したと回答しており、平均購読誌 数は 2.7 誌に上る。また、従来の紙の書籍・雑誌の購読量に対するマイナスの 影響は全体としては確認されなかった。 5)【電子雑誌・電子新聞の読者】電子雑誌や電子新聞は、若年利用者を中心に新 しい読者を獲得しており、出版・新聞業界にとって期待が持てる。更なる進化 のためには、関連情報へのリンクや読者相互の話題共有など、ネット体験の良 さを取り込んだ進化が期待される。 ■米国調査の概要 ・調査時期:2010 年 10 月 21 日~27 日 ・調査方法:米国のインターネット調査パネルを利用したウェブ調査 ・調査対象者:20 代から 60 代の男女 ・サンプル数:413 サンプル -1- 電通総研では、この調査のレポートと図表集を『米国 iPad 利用実態調査』CD-R に取 りまとめました(発売:日経 BP 社) 。 ■『米国 iPad 利用実態調査』 概要 ・CD-R(PDF 形式のレポートと図表集) ・編集 電通総研 ・発行 株式会社電通 ・発売 日経 BP 社 販売サイト http://techon.jp/books/ne.html#190600 ・発行日 2011 年 1 月 28 日 ・価格 98,000 円(税込) ■問い合わせ先 電通総研 インサイト・センター テクノロジーイノベーション部 電話:03-6216-8803(美和・市原) -2- ■調査回答者の構成 回答者の構成をみると、性別では男女がほぼ半分ずつ含まれており、年齢は 30 代以下の若 い世代が中心になっている。今回の調査では通常のデジタル家電の普及開始の時期と同じ ように、男性が多く、30 代以下の若い層が中心である。 回答者の構成( 年齢) 回答者の構成( 性別) 60代 7.7% 50代 11.1% 20代 26.6% 女性 48.7% 40代 16.5% 男性 51.3% 30代 38.0% ■調査結果のポイント 1)端末利用の状況 利用頻度(左)毎日 1 回以上の接触者が 9 割を超え、利用の定着ぶりがうかがえる。 利用時間(右)iPad 保有者の一日の平均利用時間(換算値)は 83 分となり 1 日あたり 1 時間を大きく上回る。 利用頻度 利用時間 40 30 27.4 33.9 30 25.2 18.9 20 (% ) (% ) 15.3 20 17.7 11.6 12.3 10 10 12.6 8.0 5.6 4.4 2.2 2.4 2.7 0 0 毎日 毎日5 毎日2 1 0 回 ~9 回 ~4 回 以上 毎日 1回 週に5 週に3 週に1 ~6 回 ~4 回 ~2 回 それ 以下 -3- 10分 以下 11~ 20分 21~ 30分 31~ 61~ 121~180分 60分 120分180分 超 2)端末の利用目的 端末のさまざまな使いみちのなかでは e メール、ウェブの閲覧、ソーシャルネットワーキ ングなどパソコンでの利用の代わりとなる使い方が上位を占めている。コンテンツ消費の ための使いみちとしては、電子書籍とゲームに人気がある。 利用目的( 現在) 0 20 40 60 80 6 6 .6 e メ ール 63.7 ウェ ブ の閲覧 59.8 ソ ーシ ャ ルネッ ト ワーキン グ 51.1 電子書籍 50.1 ゲーム 46.0 オン ラ イ ン シ ョ ッ ピ ン グ 43.1 音楽鑑賞 41.9 ニュ ースの取得ツ ールと し て 写真管理 40.7 地図・ ナビ ゲーショ ン 40.2 電子新聞 39.5 映画やド ラ マなど の視聴 39.2 3 9 .0 電子雑誌 31.7 その他の娯楽 25.4 仕事・ 学習上の書類作成や管理 22.8 フ ィ ッ ト ネス・ スポーツ ・ 健康状態の管理 11.6 上記以外 特定用途はなし (% ) 2.2 電子新聞や電子雑誌の利用は電子書籍ほどまでには高くはなく、ともに 4 割弱の人が利用 目的として挙げている。 3)電子書籍端末併用者によるタブレット端末への期待 iPad 保有者のうち電子書籍端末も保有する人は 3 割に上る。調査回答者は極めて電子機器 の利用に親和的な先進利用者と推測される。 他のデジ タ ル端末の保有 90 80 78.5 70 61.5 60 ( %) 50 43.8 40 33.4 30 20 10 0 スマート フ ォ ン PC ( ラ ッ プ ト ッ プ・ ネッ ト ブ ッ ク ) 携帯型ゲーム機 -4- 電子書籍端末 電子書籍端末併用者が電子書籍を読む時間を iPad 経由と電子書籍端末経由とで比べると、 iPad からのほうが長いという人が 4 割を超えている(左)が、閲読時間のシェア(右)で はほとんど拮抗している。これは、最も熱心な愛読家層を中心に、電子書籍端末の利用の 比重が高いことを示唆している。 iPa d と 電子書籍端末 電子書籍を 読む時間が長いのは iPa d 42.0% 0% 20% 同等 電子書籍端末 29.8% 40% iPa d と 電子書籍端末 電子書籍閲読時間シェ ア 28.2% 60% 80% 電子書籍端末 iPa d 48.7% 51.3% 100% ( 電子書籍端末所有者) ( 電子書籍端末所有者の延べ平均) また、電子書籍端末併用者の“読む”端末としてのタブレット端末への期待は、電子書籍 から電子新聞や電子雑誌へと広がりを見せている。 利用目的( 電子書籍端末保有者) 0 20 40 60 51.1 電子書籍 48.9 全体( i Pa d 保有者) 39.5 電子新聞 電子書瀬端末保有者 46.7 3 9 .0 電子雑誌 44.5 4)電子書籍・電子雑誌の購読数調査回答者が iPad で購読している電子書籍は 3.2 冊(平 均換算値)に上る。また、電子雑誌は 2.7 誌※となった。また、従来の紙の書籍の購読数は、 iPad 以前に 2.8 冊だったが、調査時点の直前 1 カ月では 2.9 冊であった。同じく紙の雑誌 の購読誌数は 3.2 誌(iPad 保有以前)と 3.3 誌(直前 1 カ月)であった。調査からは電子 版の普及にともなう紙の書籍や雑誌の購読数量に対するマイナスの影響は全体としては確 認されなかった。 -5- 書籍・ 雑誌購読数( 1 カ 月あたり ) の変化 7 6 .1 6 .0 6 5 2 .7 3 .2 4 3 .2 2 .8 電子版( i Pa d 版) 3 印刷版 2 3 .3 2.9 1 0 i Pa d 以前 現在 i Pa d 以前 書籍 現在 雑誌 雑誌の購読数は、 同一雑誌を 1カ 月に2号以上購読し た場合も 1誌と 数えている 5)電子雑誌・電子新聞の読者 電子雑誌や電子新聞は、20 代から 30 代の若年利用者を中心に新しい読者を獲得しており、 出版・新聞業界にとって期待が持てる。 iPa d 版電子新聞を 閲読( 最近1 カ 月) iPa d 版電子雑誌を 購読( 最近1 カ 月) 80 70.0 80 72.6 69.1 64.7 60 60 58.0 60.3 30代 40代 55.1 (% ) (% ) 47.4 40 20 40 20 0 0 20代 30代 40代 50・ 60代 20代 50・ 60代 電子新聞については無料版が多く 、 ま た有料版で も 一部コ ン テ ン ツ を 無料で 読める も のが含ま れる ため、 集計 時に「 購読」 ではな く 「 閲読」 者の割合と し てあら わし た。 ただし、その位置づけは、現在の端末保有者の間では電子書籍ほど確立されていない。た とえば、新聞社のデジタルニュース配信をどのような端末で読むことが多いか、という質 問をすると、端末保有者の間で圧倒的に多く 4 割近くの人に利用されているのは、パソコ ンを利用して新聞社のニュースサイトに直接アクセスするというものだった。またタブレ ット端末を使う場合でも、パソコンと同じように新聞社のニュースサイトに直接アクセス するという人が、タブレット端末専用の電子新聞アプリなどを用いてアクセスする場合を -6- 新聞社のデジタ ルニュ ース配信へのアク セス方法 0 10 20 30 40 (% ) 39.2 PCのブ ラ ウザから 直接 20.1 i Pa d のブ ラ ウザから 直接 14.5 i Pa d のニュ ースア プ リ を 使っ て 13.1 PCでソ ーシャ ルメ ディ ア経由で 9.7 PCのR SSリ ーダーから 9.7 携帯電話のブ ラ ウザから 直接 9.2 携帯電話のニュ ースアプ リ を 使っ て 6.8 携帯電話でソ ーシャ ルメ ディ ア経由で 5.8 i Pa d でソ ーシャ ルメ ディ ア経由で 電子書籍端末を 使っ て その他 3.1 1.2 19.9 新聞社のオン ラ イ ン 記事は見ない 多いも の2 つま で回答 上回っていた。 今後、タブレット端末で読んでみたい電子書籍・雑誌・新聞についてたずねたところ、 3つに共通して回答者が多かったのは「ディスプレイで読みやすいようレイアウト」され たものというものであり回答者の 3 割~4 割から支持を得た。 「印刷版と同内容・同一レイ アウト」というものも多く、同一のコンテンツが電子版でも読めることの安心感も支持を 集めているようだ。他方、 「本文からネット上の関連情報へリンク」「本文の話題で、他の 読者と広くつながる」などの項目は、電子書籍よりも電子雑誌や電子新聞で回答者が多く なった。 今後読んでみたい電子書籍・雑誌・新聞 電子書籍 電子雑誌 電子新聞 動画や音楽が入っている 4 1 .6 2 9 .3 1 7 .2 テキスト読み上げ機能がある 3 9 .0 4 3 .6 2 6 .9 ディスプレイで読みやすくレイアウト 4 0 .2 3 9 .7 3 6 .6 電子版だけのオリジナル 2 8 .3 3 2 .9 1 8 .6 印刷版と同内容・同一レイアウト 3 8 .5 3 2 .4 2 6 .6 本文からネット上の関連情報へリンク 2 3 .0 3 1 .7 2 5 .2 本文の話題で、他の読者と広くつながる 1 8 .6 2 4 .5 1 9 .6 読みたいがこのなかにはない 1 9 .4 1 7 .7 1 1 .4 特に読みたいと思わない 1 0 .7 1 8 .9 2 8 .1 電子雑誌や電子新聞の読者は、出版社や新聞社が編集した情報を踏まえつつ、興味がわい た場合にはネット上のさまざまな情報で知識を補足したり、他の読者と考え方を共有した りすることにも関心を示しているようだ。紙とネットの良いところを融合させた体験を提 供できるかどうかが、電子雑誌や電子新聞が進化していくうえで試金石になるかもしれな い。 -7- 【参考】 『米国 iPad 利用実態調査』の主な内容 本調査はレポート 6 本と 172 点の図表集により構成されています。 また、 特別に電通総研が 2009 年 12 月に米国で実施した電子書籍端末キンドルの利用実態調査の結果もあわせて採録しました。 序 タブレットメディア時代の到来 ■レポート集 1 デバイス編 1-1 iPad の利用状況 1-2 “読む”端末としての iPad の評価 2 コンテンツ編 2-1 電子書籍・電子雑誌・電子新聞の利用動向 2-2 iPad 利用動向の日米比 較 3 テーマ分析編 3-1 端末保有開始時期の影響 3-2 デジタルコミュニケーションにおける テキストの役割 ■図表集 1 デバイス編 1-1 iPad の利用状況 (1-4)保有者属性/保有モデル (5-17)利用頻度/時間/場所/利用目的 (18-21) iPad に望むこと (22)まとめ 1-2 “読む”端末としての iPad の評価 (1-3)紙との読みやすさ比較 (4)電子書籍を読む 端末は (5-7)電子書籍端末保有者との比較(年齢構成/書籍購読数) (8-14)電子書籍端末 との比較(利用場所/利用時間/ディスプレー評価/電子書籍を読む上で良い点)(15-16)電 子書籍端末保有者が iPad に望むこと/今後読みたい電子書籍 (17)まとめ 2 コンテンツ編 2-1-1 電子書籍の利用動向 (1-6)書籍・電子書籍の購読冊数/年齢構成 (7-10)印刷版と iPad 版の完読率比較 (11-16)電子書店の利用/理由 (17-18)今後 iPad で読みたい電子書籍 (19)まとめ 2-1-2 電子雑誌の利用動向 (1-5)雑誌・電子雑誌購読数/年齢構成 (6-7)電子雑誌書店の 利用 (8-11)電子雑誌の利用 (12-19)電子雑誌の魅力/読み方/満足度・継続意向 (20-23)今 後読みたい電子雑誌 (24-26)読まない理由 (27)まとめ 2-1-3 電子新聞の利用動向 (1)印刷版の新聞購読紙数 (2-3)ニュースへのアクセス方法 (4-10)閲読状況/頻度 (11-14)電子新聞の魅力/満足度/継続意向 (15-17)読まない人/理由 (18-21)今後読みたい電子新聞 (22)まとめ 2-2 iPad 利用動向の日米比較 (1)調査概要 (2)保有者属性 (3)他のデジタル端末の保有 (4-7)利用目的/購入理由 (8-13)コンテンツ消費傾向 (14-18)書籍/雑誌の購入数と見込み (19-22)電子書籍ストアの利用(23-28)電子雑誌の非購入理由 (29-31)印刷雑誌との望まし い価格比 (32)まとめ 3 テーマ分析編 3-1 端末保有開始時期の影響 (1)分析視点の整理 (2-4)電子書籍端末との比較 (5)iPad の利用目的 (6-8)読みやすさ/完読率 (9-10)書籍・雑誌・新聞の購入数 (11-15)読んでみた い電子書籍/雑誌/新聞/魅力 (16)継続意向 (17)まとめ 3-2 デジタルコミュニケーションにおけるテキストの役割 (1-4)ソーシャルメディアの 利用/コミュニケーション傾向 (5-6)情報表現スタイル (7)iPad の利用目的 (8)メディア 消費状況 (9-10)読んでみたい電子書籍/魅力 (11-12)読んでみたい電子雑誌/読み方/魅力 (13-14)新聞へのアクセス/読んでみたい電子新聞 (15)電子雑誌/電子新聞の継続意向 (16) まとめ <参考資料> 米国 Kindle 利用実態調査 -8-
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