知床を世界自然遺産に! 斜里町地域新エネルギービジョン 概 要 版 20 世紀の 100 年間に、気温は 0.6 度・海水は 20cm上昇しました。石油や 石炭などの化石燃料は、地球の温暖化につながる二酸化炭素を大量に排出しま す。次の 100 年では、気温は1度以上高くなると予想され、その「温室効果」 がもたらす海面上昇による砂浜の消滅や、干ばつ・洪水などの天候異常、生態 系の変化による疫病や病害虫の大発生、食糧生産の低下など、深刻な事態が指 摘されています。 “知床”を擁する斜里町は、このたび環境基本条例に続き、 「地域新エネル ギービジョン」を町民参加のもとにまとめました。この「概要版」は、その報 告書の内容をパンフレットにまとめたもので、これからの斜里町地域に安全で 自給的なエネルギーを導入していく指針となるものです。 本町の貴重な環境に配慮しながら、地域が循環化社会に相応しい仕組みを創 造していくためにも、地域を担う全ての皆さんとともに、今後とも望ましいエ ネルギーのあり方を考えていきます。 「新エネルギー」とは 新エネルギーとは、石油・石炭等の化石燃料や原子力に替わるエネルギーのことで、太陽・風・雪 氷などの自然資源の活用、生ごみ・廃棄物や生物体から派生する木質系・農畜水産系の各種バイオマ スの活用があげられます。それらは、環境への付加が少なくクリーンで再生可能であるという特性を 持っています。 (注 1/二酸化炭素を追加的に発生させない点でカーボン・ニュートラルと定式化されています) 新エネルギーは、その形状により次のようにも区分されます。 ① 自然エネルギー:地域毎に固有な条件を持ち(分散型) 、「無尽蔵・無限・無料」なパワー ② リサイクルエネルギー:循環型として地域内での再資源化 ③ 従来型エネルギーの新利用:クリーンエネルギー自動車・天然ガスコージェネレーション・燃料電池 (注 2/コージェネレーションとは電気を発生させる時に,熱も利用するシステム) これらの新エネルギーは、今日の資源有限化と地球温暖化が問われる時代において、石油に代替す るエネルギーとして、とりわけエネルギー資源の自給率向上の立場からも積極的な導入が期待されて います。 (注 3/日本はエネルギー資源の 80%以上を輸入に頼り,原子力も含めると自給率は 5%以下です) 斜里町のエネルギー使用と「新エネルギー導入」の規模 斜里町に利用可能な新エネルギー 新エネルギー(再生可能含)種類別賦存量の割合 ◆総エネルギー量では 231,000Gkcal,灯油換算では 小水力 0.0% 年間約2.6万キロリットル,経済効果にすると約 15億円の賦存量があります。 (注:G=106.灯油は 60 円/㍑換算) これは、灯油のホームタンク(490 リットル)に 地熱 12.5% クリーンエネルギー自動車 9.2% 太陽光 7.3% 太陽熱 8.2% 雪氷冷熱 0.0% 生活系 2.8% 農業系 24.4% して、約53,000個分に相当します。 森林系 31.1% ◆種類別に斜里町に多く賦存している新エネルギー 畜産系 3.9% 水産系 0.6% (再生可能エネルギー含む)の量は、 森林系バイオマス→農業系バイオマス→太陽エネ ルギー→未使用エネルギー(温泉排水)→クリー ンエネルギー自動車 の順となっています。 (注:風力・雪氷熱・小水力は数値から除いています) 斜里町で使用しているエネルギー ◆公共施設で使用している電気・ガス・重油・灯油 及びガソリンについて集計しました。 ・自動車以外の合計は 8,260Gkcal、購入費用は約 1.2 億円。 (灯油・重油は主に暖房用,軽油除く) ◆一般家庭や事業者と運輸を加えた斜里町地域の総 エネルギー使用量は 304,000Gcal と推計。 ・構成比では,一般家庭 36%,産業 21%,運輸 41%, 公共施設 3%となります。 電気 1,909.0 灯油 3,123.7 重油 3,123.6 ガス 105.5 合計 8,261.8 単位:Gcal ガソリン 737.7 「新エネルギー」の導入展開プラン 斜里町に存在する新エネルギーの導入活用は、 従来の産業や事業の区分枠を超えて複数の領域に展開されていきます。 地域固有の資源・発生物を、電気・熱(暖房,給湯,ロードヒーティング) ・冷熱(野菜等の保存,空調)として、また製品と して流通・活用することにより、 “地域に新しい産業・雇用創出”をもたらすことが期待されます。 ■重点プログラム:プロジェクト①案 ■重点プログラム:プロジェクト③案 ∼国立公園内施設は環境保全の自然エネルギー発電 太陽熱発電機 (スターリングエ ハイブリッド風車 (小 型 風 車+太 陽 光 ) ∼温泉排水によりロードヒーティング活用(駅前再開発など) 温 泉 施 設 発電 駅前再開発 熱 駐車場への温泉排水活用 (完全自給型) 太陽光パネル 発 電 ガ ス 木質ボイラー 真 空 ヒートパイプ 木質ガス化 発電 需要施設 加温・攪拌用電力 生ごみ 駐 (瞬間熱移動 ) 排 水 バイオ トイレ 生 ご み 混合処理 ■重点プログラム:プロジェクト⑥案 ■重点プログラム:プロジェクト⑦案 ∼住民参加型の新エネルギーの普及・導入を進めます ∼バイオガスエネルギー=電気・熱を、地域公共施設に 普 及 啓 発 活 動 ( ソ フ ト ) や すらぎの 苑近 接の 町有 地 等 その他の 普及啓発活動 斜 里 エ ネ ル ギ ー 供 給 公 社 (仮 称 ) バイオガスプラント シンポジウム 開 催 施設維持エネルギー 熱 : 2 ,6 0 0G c a l/ 年 電 気 :15万 kW h/年 参画・ 申請依頼 町民 支援 知床自然エネルギ ー 研究会(仮称) 町 余剰エネルギー 熱 : 3 ,0 0 0G c a l/ 年 電 気 : 2 3 0万 k W h / 年 電熱供給 連携 情報の提供 各地の研究会 草の根支援 事業等 助成金の申請 や すらぎの 苑 導入 助成金の交付 一般家庭への導入(ハード) 町内業者組織 国保病院 あおばの 家 町内各所へ導入(ハード) ぽ る と 21 太陽光発電 クリーンエネルギー 自動車 太陽光発電 施 設 エ ネ ル ギ ー 需 要 (推 計 値 含 む ): 熱 : 約 2 ,6 0 0 G c a l/ 年 電 気 :約 100万 kW h/年 小型風車 デイサービ ス セン ター 新エネルギー導入例より 【ヤクスギランド:入口レストハウス】 ∼建物の電気を太陽光で充足 【北檜山町:風力と太陽のハイブリッド】 【江別まちむら農場:畜産ふん尿で発電・売電】 ∼CO2削減分を「環境価値取引」としても販売 斜里町の今後の取り組み 地域住民 意見・要望 庁内組織 理事者 新エネルギー導入検討委員会 (環境・エネルギー委員会) 各部署 一般家庭 事業者 導入支援・ 相談窓口・ 環境教育 課題の執行:普及・啓発、公共施設への導入 支援 ∼地域への効果的な導入・推進 提案 町内検討委員会 ・地域研究会 【推進執行体制】 二酸化炭素の削減・省エネルギーについて ◎斜里町で使用している総エネルギー量は、CO2にして約 23,000 ㌧です。 一方、新エネルギーの賦存量は、CO2換算で約 17,500 ㌧あります。 (これは京都会議で定めた、温室効果ガスの 2010 年までの日本の削減値 ▲6%に相当する規模です) ◎今回の「新エネルギービジョン」では、 斜里町の当面の CO2削減目標を 828 ㌧・町内の発生量の 3.6%と定めました。 これを重点プロジェクトの導入や、森林系バイオマス・雪氷熱の活用、クリーン エネルギー自動車の普及、公共施設の改修・設備更新時の非化石燃料の 導入検討などにより達成していきます。 ◎新エネルギー導入とあわせて大切なテーマは省エネルギー対策です。 例えば・・・、家庭の待機電力カット・洗濯のまとめ洗い・トイレ便座のフタ締めや、 自動車のアイドリングストップ・照明の蛍光灯化など、また事業所のコージェネレーション=発電と熱の 併給システム、そしてリサイクルや行政事務見直しなどは、電気や熱エネルギーの節約であり、 同時に CO2削減ともなります。 これらについて、官民一体の取り組みを推進します。 斜里町地域新エネルギービジョン・概要版 斜里町役場 環境生活部環境保全課 〒099-4192 北海道斜里郡斜里町本町 12 番地 ℡:01522−3−3131 Fax:01522−2−2040 (平成 16 年 2 月発行) 斜里町の街づくりとしての新エネルギー導入 21 世紀に持続するエネルギー,非化石燃料への転換 ◎斜里町の総合計画は、 「みどりと人間の調和を求めて」を基調としています。 ◎そして、環境基本条例では、 「町民が誇りとするこの地域を引き継ぐ責務を有し、生態系の均衡に配慮した 環境保全及び創造に取り組み・・・環境への負荷の少ない社会を築く」ことをうたい、そのための基本方針と して、 「環境に配慮した生活様式、廃棄物の減量化、資源の循環的利用、エネルギーの有効活用及び未利用 エネルギーの開発促進」を推進することを掲げています(条例第 9 条) 。 ◎新エネルギーの導入は、斜里町の街づくりの理念にもとづいた取り組みを基本的な柱としていきます。 【新エネルギーの導入展開の視点】 ∼地域環境、地域資源を最大限に活用します ∼住民・事業者が参画し、行政と一体となって推進します Ⅰ.何よりも豊かな自然環境を 適切に保全すること ◎斜里町における新エネルギー導入の基本方針は、当面以下の3つのテーマを推進します。 ■ 基本方針A:新エネルギーの普及・啓発の取り組み ※普及促進のために →PR/役場情報・ホームページ掲載、パンフレット作成 →学校カリキュラムへの組み込み →交流/説明会・シンポジウム・イベントの開催 →市民団体・関係組織とも連携、生涯学習メニュー化 ■ 基本方針B:新エネルギーの公共施設への率先導入 ※自然遺産申請地域の施設へ ※市街地・再開発の施設へ →国立公園内の施設維持、トイレ・発生ごみの地域処理 →駅前再開発・福祉施設等に「地場エネルギー資源」活用 →シャトルバス燃料、クリーンエネルギー自動車 →学校「エコスクール」、(生ごみ・でんぷん工場残さの資源化) 【導入検討される新エネルギー】 Ⅱ.その自然と共生し体感する 持続的な観光事業の推進 1) 2) 3) 4) Ⅲ.一次産業を中心に地元経済 の振興と安定した住民生活 環境に負荷をかけない自然形状エネルギー活用 一次産業から派生するバイオマス活用 地元資源の循環調和型の再資源活用 需要サイドの新エネルギーの導入 (従来型エネルギーの新らしい利用) 新エネルギーの種類別導入可能性 ※環境教育の促進のために ■ 基本方針C:新エネルギーの効果的な導入促進 ※町民・事業者への導入支援 →担当部署・相談窓口の設置、補助制度活用の援助、 独自策(エコマネー:地域通貨の導入など) →先行モニュメント;駅前・公園・校庭、庁舎ロビー等 ※CO2削減の実効的取り組み →エネルギーの総使用量の抑制、効率的使用の対策 省エネルギーの普及・ →2010 年までの削減目標・新エネルギー導入目標の設定 斜里町の新エネルギー導入構想:重点導入プログラム ≪ホームタンク 490 ㍑換算量≫ エネルギーの種類 導入条件・方向性 ・賦存量の条件はあるので,支援制度の活用も含め 太陽エネルギー て普及が期待されます. ・導入順としては,→公共施設にモデル的に設置→ 太陽光・熱エネルギー ∼太陽光:3,930個分 太陽熱:4,360個分 補助制度により一般住宅に設置→(NPO型の)事 業所と想定します. 風力エネルギー ・立地により中小型風車の可能性があります. 風力エネルギー ・風車は啓発効果が大きいので,モニュメントとしての 【知床クリーン&グリーンエネルギー計画(仮)】∼10のプロジェクト 1)観光地環境保全型の新エネルギー導入 ∼「世界遺産保全」,非化石燃料へ積極的転換 ①国立公園内施設自然エネルギー発電導入プロジェクト ②廃油バイオ燃料化知床巡回バス利用プロジェクト ∼仮に1,000kWhで約100個分 導入も検討します. ・地域発生する資源活用として,特に農業,畜産,森 林系は賦存量的に有望です.この導入による循 バイオマス エネルギー 環型システムづくりを推進します. →バイオガスの熱・電気(→地域活用)や残さ物の 固形化・ガス化(+臭気対策) →枝条や間伐材のチップ・ペレット燃料化 →生活系は,生ごみ・下水のガス化,廃油のディー バイオマスエネルギー ∼農産系:13,000個分 ∼畜産系: 2,100個分 ∼水産系: 300個分 ∼森林系:16,600個分 ∼生活系: 1,080個分 ゼルエンジン燃料化が有効 →水産系残さは上記ガス化に混合可能 雪氷熱 エネルギー ・積算寒度は大きく賦存量的に有望です. 未使用 エネルギー ・地域的な条件から,温泉水は駅前再開発やウトロ地 域で排水活用を検討します. ・小水力は条件の有無によりますが、教育啓蒙の観点 需要サイド ・省エネルギーかつCO2削減効果が高いものです. クリーンエネルギー自動車 燃料電池 ∼資源の循環型システムの構築, クリーンエネルギーの街づくり 3)地域活性化の新エネルギー利活用 雪氷熱エネルギー ∼地域特性を活かした住民参加の街づくり ③温泉排水ロ−ドヒ−ティング活用プロジェクト ④生ごみバイオガス化利活用プロジェクト ⑤下水汚泥バイオガス化活用プロジェクト ⑥住民主体参加型新エネルギー普及・導入プロジェクト ⑦斜里エネルギー供給公社プロジェクト ・活用方法が具体化されれば導入設置します. その他 (小水力・地熱等) 天然ガスコージェネレーション 2)自然環境調和型の新エネルギー導入 からも検討します. ・町民組織の活動ともつながり、補助制度とあわせた 未利用・その他エネルギー ∼温泉排水:6,700個分 需要サイドのエネルギー 導入普及を進めていきます. ∼クリ-ンエネルギー自動車:4,900個分 4)農林業活性化の新エネルギー利活用 ∼基幹産業も循環型エネルギーを推進 ⑧でんぷん工場残渣バイオガス化利活用プロジェクト ⑨森林系バイオマスエネルギー利活用プロジェクト ⑩雪氷熱利活用プロジェクト
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