全日空システム企画株式会社様 ANAグループSaaSアプリケーションプラットフォームを構築。 「きめ細かい個別対応」と「効率的な標準化」の共存に成功 全日空システム企画株式会社 本 社:東京都大田区羽田空港3丁目5番10号 ユーティリティセンタービル 設 立:1986年8月 資 本 金:5,250万円 売 上 高:248億円(2010年3月期) 従 業 員:792名 概 要:ANAグループにおけるIT部門の中核を担う企業。 ANAのシステム開発・運用・保守を全面受託して、 フライトの信頼性と安全性をシステム面から支え てきた。最近は、その英知をグループ外の幅広い企 業にも提供。キャッチフレーズは「First Class IT system」 (ミッションクリティカルな業務活動に ファーストクラスの 「安心」 と 「信頼」 を) http://www.asp-kk.co.jp/ 12社5000ユーザが使う 4アプリケーションをSaaSサービス化 ANAグループのIT部門の中核企業である全日空システム企画 (以降、 「ASP」 と表記) は、 間接業務支援のマルチテナントシステムを開発し、 2008年4月から、 SaaS型シェ アードサービスとしてANAグループ会社各社へ提供している。 従来、 1社ごとに個別に 構築していたシステムを統合したことにより、 30∼40台必要であるところ7台に集約 することに成功。 システムの導入コストと保守運用コストの大幅に削減できた。 しかも、 個社ごとの個別要件には、 設定変更や部品の入れ替えだけできめ細かく対応できる体 制を整えて、 システム開発・修正時のコーディング量も大幅に減らした。 intra-martで 構築したマルチテナントシステムが、 「個別」 と 「共有」 の共存を可能にしたのである。 中配置していましたが、個社ごとにシステム がバラバラであったため、サーバ台数も多く なり、維持コストもかかります。そこで、共通 全日空システム企画(以降、ASP)が開発し システムを構築し、個別ニーズにも対応でき たSaaS型シェアードサービスのアプリケー るSaaS型サービスとして提供することにしま ションは、勤務管理、人事データベース、品質 した」 (西山氏) 。 管理、一般申請(人事、経費精算などのワーク システム統合によって、サーバ台数は大幅 フロー)の4種類である。すでに9社がマルチテ に削減された。 ナントシステムのSaaS利用へ移行済みで、 現在、本番機6台、開発機1台、合計7台で、12社 2010年度中に3社加わって12社になる。 約5000ユーザに対して、4種類のアプリケー 「グループ全体は約50社、 そのうちでASPが ションを提供する体制が整っている。 担当しているのが約20社。グループ会社には 「個別システムのときは、本番機と開発機を IT部門がないことが多いため、 従来から、 ASP 個社ごとに確保していたため、12社なら最低 が開発・運用・保守を担当してきました」と説 でも36台必要。実際には40台以上のサーバが 人材を常に確保しておかなければならないとい 明するのは、ビジネスシステム部 第四チーム 必要となっていました」と、ビジネスシステム う状況に陥ります。共通部分が多い管理系シス リーダーの西山久美子氏だ。 部 第四チーム シニアエキスパートの吉田美 テムを皮切りに、開発言語/開発ツールを1つに これまでは、1社ごとに本番用と開発用の 沙氏は大きな成果を語る。 統一することで、開発・保守・運用を担当する人材 ただし、 システムを共通化したのは、サーバ 統合/サーバ台数削減が主目的ではない。 の有効活用を図りたいと考えました」 (西山氏)。 ANAグループは業務内容が特殊であるた 「グループ会社が個別に保有している資産 め、汎用パッケージでは原型をとどめないほ の統合・共用・有効活用と、グループ会社の管 どカスタマイズしなければならず、開発にも 理系業務を標準化、つまりガバナンスと全体 保守にも余分なコストかかかるという課題を 最適化が最終的な目標です」と西山氏は言う。 抱えていた。遵守しなければならない法令も 開発ツールを統一し、共通フレームワー クを確立した1stステップ 全日空システム企画株式会社 ビジネスシステム部 第四チーム エキスパート 小川 昌宏氏 特殊であるため、法令や社内ルールが変わっ たときに、パッケージでは即応できない。 また、24時間365日のサービス提供を実現す るためにも、ソースプログラムを細部まで把 業種・業態の異なる10社以上の企業が共用で 握しておく必要があった。 きるSaaS型のマルチテナントシステムは、一朝 そこで、生産性と保守性の高い開発ツール 一夕で開発できたのではない。 を探して、intra-martに行き着いた。 1stステップとして、 2004∼2005年ごろから、 Web intra-martなら、パッケージでは対応でき システムの共通フレームワークを構築してきた。 「システムごとに個別のパッケージや開発 ない独自の機能も柔軟に開発できる。しかも、 バ管理を行ってきた。 「サーバは物理的にはデータセンターに集 ツールを適用していると、複数の技術が使える 開発生産性が高い。幅広く利用されている開 全日空システム企画株式会社 ビジネスシステム部 第四チーム シニアエキスパート 吉田 美沙氏 サーバを立て、システムを開発し、 ASPがサー 1 ワークフロー、標準APIなどがそろっており、 シェアードサービス基盤への発展 発ツールであるため、社外の開発スタッフを プでは、 intra-martのバージョンアップによっ 確保しやすいのも魅力だ。 て変わったAPIをラッピングして部品化する そして、オープンソースのintra-martを使 など、 「ASPコア」を大幅に強化・整理。そのう えば、仕様変更への迅速な対応と、 ハイレベル えで、 勤務管理・人事データベース・品質管理・ な保守運用サービスを実現できる。またASP 一般申請の4アプリケーションをマルチテナ のSEは、intra-martを知っていれば、いくつも ントシステムとして搭載した。つまり、PaaS のアプリケーションの開発から障害対応ま 層が1stステップのときから共通化されてい で、柔軟に対応できるのである。 たため、SaaS層の標準化が容易に実現できた PaaS層が標準化されていたため SaaS層共通化も容易に実現 のである。 「intra-martは、アプリケーションを作ると きのモデルが明確なので開発しやすい。デー タベースアクセスをどのレイヤで設定する 全日空システム企画株式会社 ビジネスシステム部 第四チーム リーダー 西山 久美子氏 intra-martを数年間にわたって使い続けた か、ユーザビリティを高める画面デザインを 結果、標準フレームワークが自然に定着し、 どのレイヤで行うか、明確な全体像を開発者 とか、あるいは、地域特性による違いや、業種によ 2ndステップへ進む条件が整ってきた。 そこで 間で共有できるため、グループ開発も効率よ る勤務体系の違いなど、さまざまな個別ニーズに 2007年、 intra-martのバージョンアップを好機 く進められました」 (小川氏)。 も、設定を変えたり、組み合わせる部品を入れ替 として、マルチテナントシステム「αBiZシス 業務ロジック担当、 データベース担当など、 役 えるだけで、最小限のカスタマイズで対応が完了 テム」 の開発をスタートしたのである。 割を分担して、 開発生産性を高めたのである。 する。 「共通化・標準化によって、 サーバ台数削減と 従来から、個社システム単位ではあるが、 開 発ツールをintra-martに統一してきた成果は 大きかった。 個別ニーズに最小限のカスタマイズで 対応するマルチテナントシステム と運用コストが大幅に削減できました。同時 に、 個別ニーズへのきめ細かい対応を迅速に行 「intra-martは標準でマルチテナント機能を 備えていますから、 当然ながらその機能を活用 開発運用人材の有効活用ができて、 導入コスト 出来上がった 「αBiZシステム」 は、 「個別」 と の共存を可能にしたマルチテナントシ しました。業務ロジックは基本的に変化なし。 「共有」 ステムである。 考え方も踏襲できたし、 プログラムも多くが再 えるようになり、 全体の開発工数も大幅低減に 成功したのです」 と西山氏は語る。 開発工数が従来の3分の1に低減したアプリ 利用できました」 と、 ビジネスシステム部 第四 PaaS層に相当する 「ASPコア」 に多数の部品 ケーションもある。 データベースを統合してい チーム エキスパートの小川昌宏氏。 レ イ ヤ 構 造 を 見 る と 、1 s t ス テ ッ プ で は 、 を集約したため、 既存のメニューを開放する設 るため、 グループ会社にまたがった人事異動が 定をするだけで機能の追加/削除ができるよ 発生した場合もデータ連携が容易にできる。 利 intra-martの上に、 検索キーや共通部品などを うになったのである。たとえば、人事データ 用企業の追加をはじめ、 アプリケーションの修 「ASPコア」 として開発し、 その上層として個別 ベースと勤務管理の両方を連携させて使うと 正・保守作業をたった1人のSEで対応できるな アプリケーションを動かしていた。 2ndステッ か、 勤務管理とワークフローを連携させて使う ど、 さまざまな付加効果も生まれている。 「intra-martの機能を使って、4アプリケー ションをシングルサインオンにしたことも、 利 用 者 か ら 高 く 評 価 さ れ て い ま す 。ま た 、 intra-mart 6.1はパフォーマンスが良い。 6台の 本番機を約5000ユーザが使っていますが、 レス ポンスも快適です」 と西山氏は言葉を添える。 今後は、 マルチテナントシステムへ移行して いないグループ会社にも、利用を拡大してい く。 また、 次回のサーバ更改のタイミングで、 仮 想化を視野に入れる方針だ。 「たとえば、業務支援機能を強化するために、パ ブリックのクラウドサービスと連携させるという ときでも、intra-martがベースになっていれば、連 携がスムーズにいくと期待しています。 『個別と共 有の最適な共存』 をしたからこそのメリットを、 こ れからも拡大していきたい」 と西山氏は語った。 1stステップでは、 intra-martの上に、 検索キーや共通部品などを 「ASPコア」 として開発し、 その上層として個別アプリケーションを動かしていた。 2ndステップでは、 intra-martのバージョンアップを行うと同時に、 「ASPコア」 を強化・整理したうえで、 勤務管理・人事データベース・品質管理・一般申請の4アプリケーションをマルチテナントシステムとして搭載した。 PaaS層があらかじめ統一されていたため、 SaaS層の共通化が比較的容易に実現できたのである。 2
© Copyright 2024 Paperzz