リス研通信 No.4017

発行:2016年 3 月号
リス研通信 No.4017 シナノグルミの根接地インピーダンス測
定
http://www.asahi-net.or.jp/~fb4m-iszk/risuken
値の変化は重要である2).連続測定により,四
季を通じて1 日を周期とした変化が認められた.長期的変
調査 2013/11/8
http://jsmbe.eng.niigata化をみると,| Z |,Rp は春から夏にかけて減少し,秋から冬
u.ac.jp/MBEnagano/Proceedings/MBEnagano04.pdf p
にかけて上昇していることがわかる.Cp は春から夏にかけ
16 シナノグルミの根接地インピーダンスにおける日変化 て増加し,秋から冬にかけては減少していることがわかる.
○上條岳穂,田中京子,茅野誠司,矢嶋征雄,山浦逸雄 測定期間中,何回も突発的な変化が生じているが,これは
信州大学繊維学部機能機械学科
降雨による影響であり,図中の最下部に示した降水タイミン
グに同期している.
1.はじめに
樹木の根の状態を非破壊的にモニタする方法として,根接 連続測定によりRp,Cp の1 日のおよその変化率を得ること
地インピーダンスの測定を試みてきた1).これまでに落葉
ができた.全期間通じて,ρは1~2 %とあまり変化していな
樹の落葉前後における根接地インピーダンスの連続測定 いのに対して,Rp は5~15 %,Cp は5~30 %変化すること
の報告があるが,本研究では,シナノグルミについて2005 がわかった.また,このRp,Cp の変化率はともに,夏に比
年3 月から12 月まで連続測定を行い,四季を通じての日 べ,冬の方が高くなる傾向が見られた.
変化について検討した.
次に,気温に対するRp とCp の時間的変化を定量的に知
2. 実験材料および実験方法
るために相互相関関数を計算した.図2 に気温とRp の相
測定対象は本学附属農場で栽培されている落葉果樹のシ 互相関関数を示し,図3 に気温とCp の相互相関関数を示
ナノグルミ(J. regia L.)とした.樹齢18年,測定開始時根元 す.時期別に降水を観測しなかった4 日分のデータについ
直径約30 cm,高さ約6 m である.根接地インピーダンスの て計算した.計算の始めと終わりのデータは値が一致する
測定は4 電極法によって行い,測定用電極として地面に金 よう,4 日間のすべてのデータに対し,線形的な補正を施
属製電極棒2 本,対象にステンレス製の釘2 本を使用し
した.気温に対するRp,Cp の遅れがτの関数として表され
た.連続測定を行うためインピーダンスメータ
ている.変化分をみるために平均レベルを0 として表した.
(HIOKI:3532)をパソコンで制御し,データを取得した.測 図2 の気温とRp の相関関係をみると,4, 11 月の落葉期と
定印加電圧5 V,周波数1 kHz とした.根接地インピーダン 6, 8 月の生長期のパターンは逆である.τ= 0 に対する
スの電気等価回路を抵抗Rp と容量Cp の並列回路と仮定 ピークおよび谷の位置をみると,落葉期は気温の変化に対
し,インピーダンス | Z |とともに評価する.気温等の気象
して2~3 時間程度遅れて負の相関を示し,生長期は気温
データは気象庁のアメダス(観測地:上田市古里)によっ
の変化に対して1 時間程度遅れて正の相関を示しているこ
た.
とがわかる.一般に,温度が上がれば大地の抵抗は低くな
るといわれる3).したがって,落葉期は樹木の活動というよ
3. 実験結果および考察
りは土壌の温度の影響を強く受けていると考えられる.しか
2005 年3 月18 日から12 月31 日まで連続測定した結果を し,生長期は逆に気温と正の相関を示した.この時期は,
図1 に示す.シナノグルミは4 月20 日頃脱苞し,5 月5 日 温度の他に樹木特有の生理的活動が強く関わっているの
頃開花した.5 月15 日頃には大部分で葉が茂り生長期と ではないかと考えられた.図 3 の気温とCp の相関関係に
なった.その後,11 月中旬に落葉した.測定データの欠損 ついてみると,全期間同じパターンであり,気温とは負の相
部分は実験器材の不具合により測定が中断したものであ
関を示した.その中で6 月は,気温の変化に比べてCp の
る.| Z |とRp はほぼ等しくグラフが重なっている.これはCp 変化は1 時間程度早く,6 月以外は同時か1 時間程度遅
によるリアクタンス成分が抵抗成分に比べてかなり小さいか い.6 月頃の変化が,温度に先行しているということは,とく
らである.しかし,値が小さくてもこの存在は,根の組織の
に日照と強い関係があるのではないかと考えられる.
容量性に依存し,膜容量と壁の機能に関係するので,この
①
発行部数:140
4. まとめ
根接地インピーダンスの連続測定において,四季を通じて明瞭な
日変化を認めた.また,季節による日変化パターンの違いを見出す
ことができ,根の状態モニタリングの可能性を見出した.今後,他の
樹木についても測定を試みたい.
電気インピーダンス測定による植物水分状態の評価
高橋 伸英,藤原 尚,山浦 逸雄,山田 興一 信州大学繊維学部
電気インピーダンスの測定には、試料に刺入される電極と試料の接
触部での電極インピーダンスを無視できる方法として、4 電極法を
用いた(Fig. 2)。電極には直径0.5mm、長さ2.0cm の白金線を用
い、先端を尖らせて針状にしたものを4 本用意した(①~④)。電極
の間隔は3cm とし、深さ2mm まで差し込んだ。測定にはLCR ハイテ
スタ3522(日置電機株式会社)を用い、その交流電源から電極①と
④の間に1kHz の電流を流し、②と③の間で電圧を測定する
インピーダンスとは
「インピーダンス」≒「抵抗値」
インピーダンスは交流電流を回路に流した時の平均抵抗値の事で
す、