資料 - 公益財団法人日本医療機能評価機構

QIを用いた医療の質改善活動
-聖路加国際病院と日本病院会の経験-
1.医療の質とその指標:Quality Indicator
2.聖路加国際病院におけるQI測定・改善
3.QI改善のメカニズムと組織の役割
4.厚生労働省:研究班と推進事業
5.日本病院会QIプロジェクト
6.海外の状況:Pay-for-Performanceなど
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構造(Structure)
組織、機器、職員の数・専門性など
Avedis Donabedian
プロセス(Process)
(1919-2000:ミシガン大学教授)
実際の診療・看護内容、職員の行動
「医療の質は
3つの側面
から評価される。」
アウトカム(Outcome)
治癒、生存、QOL、満足、コストなど
(Milbank Memorial Fund Quarterly, 1966)
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EBM
基礎医学・病態生理
臨床研究の結果
患者の意向
医療者側要因
法律・経済・倫理
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診
療
ガ
イ
ド
ラ
イ
ン
診療
看護
(プロセス)
最
良
の
ア
ウ
ト
カ
ム
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EBM
基礎医学・病態生理
臨床研究の結果
患者の意向
医療者側要因
法律・経済・倫理
Jan. 19, 2013
診
療
ガ
イ
ド
ラ
イ
ン
診療
看護
(プロセス)
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最
良
の
ア
ウ
ト
カ
ム
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研究デザイン Research Designs
1.観察(記述)研究
Observational (Descriptive) Studies
1)症例報告
2)群間比較
3)症例対照研究
4)コホート研究
5)時系列研究
6)質的研究
2.実験(介入)研究
Case Report
Group Comparison
Case-control Study
Cohort Study
Time-sequence Study
Quality Study
Experimental (Interventional) Studies
1)ランダム化比較試験
Randomized Controlled Study
2)非ランダム化比較試験
Non-randomized Controlled Study
3)1患者でのランダム化比較試験 N-of-1 Randomized Controlled Study
3.統合型研究
Synthetic Study
1)メタ分析
2)決断分析
3)費用効果分析
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Meta Analysis
Decision Analysis
Cost-effectiveness Analysis
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エビデンスの質(レベル)
Ⅰa
複数のランダム化比較試験のメタ分析による
Ⅰb
少なくとも1つのランダム化比較試験による
Ⅱa
少なくとも1つの非ランダム化比較試験による
Ⅱb
少なくとも1つの他の準実験的研究による
Ⅲ
コホート研究や症例対照研究、横断研究などの
分析疫学的研究による
Ⅳ
症例報告やケース・シリーズなどの記述研究による
Ⅴ
患者データに基づかない、専門委員会の報告や
権威者の意見による
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「エビデンス」と「実際の診療」の格差
確立されたエビデンスがあっても、さまざまな理由(知らな
い、信じない、知っていてもできない、知ってはいるがやりたくないな
ど)で、エビデンスに合致した診療が行われない、あるい
は「普及」に長期間を要することがある。
↓
エビデンスと実際に行われている診療との間に格差
(Evidence Practice Gap)があること、改善の余地がある
ことを知らなければ、より質の高い医療(=エビデンスに
則った診療)を提供しようとの意欲さえ湧かないであろう。
↓
格差の有無・程度を示す目安(指標)を質指標(QI:
Quality Indicator)という。
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QI(Quality Indicator)の例
 Rollow W, et al. Assessment of the medical quality improvement
organization program. Ann Intern Med 2006:145;342-353)
 米国50州、DC、2領土の医療施設での41の指標(病院を対象とし
た指標は21)について、2002年の値と2004年の値を比較。
市中肺炎の患者のうち、病院に到着後4時間以内に抗菌
薬が投与された者の割合
61.8% → 69.0%
予定手術に先立って予防的抗菌薬投与を受けた患者のう
ち、執刀1時間以内に受けた者の割合
46.2% → 68.5%
心筋梗塞の患者のうち、退院時にβ遮断薬を投与されて
いる者の割合
80.2% → 90.1%
エビデンス
1970年代から行われた複数のランダム化比較試験で、
心筋梗塞後の患者のうち、β遮断薬を処方された患者は、処方さ
れなかった患者に比べて心筋梗塞の再発が1/3減った。
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基礎医学・病態生理
臨床研究の結果
患者の意向
医療者側要因
法律・経済・倫理
診
療
ガ
イ
ド
ラ
イ
ン
診療
看護
(プロセス)
ク
バッ
ド
ー
フィ
実際に行われた診療
PDCA Cycle
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最
良
の
ア
ウ
ト
カ
ム
行為やアウトカムを知る
(Quality Indicatorを用いて)
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QIを用いた医療の質改善活動
-聖路加国際病院と日本病院会の経験-
1.医療の質とその指標:Quality Indicator
2.聖路加国際病院におけるQI測定・改善
3.QI改善のメカニズムと組織の役割
4.厚生労働省:研究班と推進事業
5.日本病院会QIプロジェクト
6.海外の状況:Pay-for-Performanceなど
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診療情報解析システムWG(2005年5月)
QI委員会(2006年4月)
= Quality Indicator(指標)
QI
= Quality Improvement(改善)
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測定するQI項目の決定方針
1. できるだけプロセス指標を取り上げる
2. 欧米の先行例を参考にする
3. 各部署のヒヤリングをして、できるだけ意向を尊重する
4. できるだけ多くの職種が関わる指標を取り上げる
5. できるだけ電子カルテ(2003年7月に導入)から引き出せる
指標を取り上げる
6. 臨床現場のスタッフに新たな負担・仕事が発生しない指標
を取り上げる
約100項目のQIを測定へ
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QI委員会
委員は約40名(+出席自由+外部からの見学者)
・委員長は院長
・副委員長は医療情報管理室マネジャー(診療情報管理士)
毎月1回開催
年度初めに、委員や部署からの提言をもとに、1年以
内に改善したいQIを10~15項目採り上げ、各QIごと
に担当者を決める。
各QIの担当者の役割
・年度内に目標値を達成するための活動を行う
毎月の委員会
・採り上げたQIについて、担当者が前月までの値を発表
(算出は、医療情報管理室・診療情報解析室が担当)
・年度内に目標値を達成するための方策を話し合う。
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聖路加国際病院のQI: ウェッブと冊子で公表
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全診療科・職種部門のヒアリングを行い、担当者を決定
⇒ 診療科特有の指標も
耳鼻科からの指標
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小児科からの指標
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病院全体の指標(例)
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循環器系のプロセス指標(例)
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急性心筋梗塞患者での退院時処方(1
急性心筋梗塞患者での退院時処方(1)
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急性心筋梗塞患者での退院時処方(2
急性心筋梗塞患者での退院時処方(2)
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LDLコレステロールのコントロール
危険因子数1
危険因子数1~2、目標値:LDL
、目標値:LDL--C<140mg/dl
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LDLコレステロールのコントロール
LDLコレステロールのコントロール
分子: 最終検査結果値が140mg/dl未満の患者数
分母: 脂質降下薬が処方された外来患者、かつ、初回処方日と最終処方日の間隔が90日以上、
かつ、外来検査でLDLコレステロールを測定している患者数
期間: 2011年1月から12月 対象: 分母20人以上
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LDLコレステロールのコントロール
危険因子数1
危険因子数1~2、目標値:LDL
、目標値:LDL--C<140mg/dl
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LDLコレステロールのコントロール
冠動脈疾患の既往あり、目標値:LDL
冠動脈疾患の既往あり、目標値:LDL--C<100mg/dl
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糖尿病患者での血糖値のコントロール HbA1c
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30
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糖尿病患者の血糖コントロール
分子: HbA1c(JDS)の最終値が7.0%未満の患者数
分母: 糖尿病の薬物治療を施行されている患者数
(過去1年間に該当治療薬が外来で合計90日以上処方されている患者)
期間: 2011年1月から12月 対象: 分母10人以上
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糖尿病患者での血糖値のコントロール HbA1c
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転倒・転落へのQI委員会の対応
問題の重大さを認識
「転倒・転落研究会」を発足(2006年)
それまでに収集されていたデータを解析、解釈・検討
対応策の発案・実施
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従来の転倒・転落アセスメントツール:13項目
身体的側面
精神・認知的側面
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単変量解析(χ2検定):11項目が転倒・転落発生と有意に関
11項目が転倒・転落発生と有意に関
連
できない
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多重ロジスティック回帰分析:5項目が転倒・転落と有意に関連
できない
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転倒・転落のリスクアセスメント項目の採否
①転倒転落経験あり
②歩行補助具使用あり
③歩行障害あり
④めまい、たちくらみあり
⑤排泄障害あり
⑦挿入物あり
⑧精神状態あり
⑨見当識障害あり
⑩ナースコールができない
⑪徘徊・多動あり
採用
転倒予測に重要との研究
結果が複数ある
採用
採用
⑫睡眠薬・精神安定剤の服用あり
採否について分析・
検討
⑬看護師の直感あり
採用
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各項目の重みづけと感度・特異度
*カットオフポイント=2
感度(%)
特異度(%)
AUC
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今回の対象者
別の6ヶ月間の対象者
73.6
81.5
0.805
84.1
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78.4
0.837
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“新”転倒・転落アセスメントツール(7項目)
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中心静脈カテーテル挿入術の重篤合併症発生率
(動脈穿刺あるいは気胸の発生率)
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QI委員会による対応
中心静脈カテーテル挿入術(CVC)にともなう合併症
の発生に関する客観的データを収集する必要性を認
識
テンプレートを開発し、全てのCVC手技の記録開始( 2007
年)
エコーガイド下鎖骨下静脈カテーテル挿入術での
合併症発生率が最も高い(2008年前半)
院内「CVC認定制度」を制定し、
直ちに施行(2008年度後半)
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院外から講師を招いて、CVC実技講
習会を複数回実施(2008年度)
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中心静脈カテーテル挿入術の重篤合併症発生率
(動脈穿刺あるいは気胸の発生率)
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2004/2005年から 2010年への変化
(#QI=73)
11.0%
16.4%
改善
不変
悪化
72.6%
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QIを用いた医療の質改善活動
-聖路加国際病院と日本病院会の経験-
1.医療の質とその指標:Quality Indicator
2.聖路加国際病院におけるQI測定・改善
3.QI改善のメカニズムと組織の役割
4.厚生労働省:研究班と推進事業
5.日本病院会QIプロジェクト
6.海外の状況:Pay-for-Performanceなど
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QIを測定・公表することによる改善のメカニズム
1. ホーソン効果(Hawthorne Effect)
・他人に見られる、監視されるとパフォーマンスが向上する
(改善への動機づけ:無意識的な場合が多い?)
(Hawthorneはシカゴ郊外の町の名前:ウェスターン電気会社の工場Hawthorne Worksで1924年~
1932年に行われた工員の生産性に関する実験の結果に由来)
2. 比較することによるパフォーマンス向上(改善への動機づけ
:意識的)
・エビデンスとの比較 (エビデンス・診療ギャップ)
・他の医師、他の医療施設との比較(ベンチ・マーキング)
3. 個人による改善への努力+組織としてのアプローチ
・医療の質の向上・改善は「医療者個人の努力・変化に係る」という考
えから「組織として行える部分が少なくない」という考えへのパラダイム
・シフトが必要・・・・医療安全の場合に必要であったように。
Jan. 19, 2013
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QI改善への組織としての介入
1.業務プロセスの見直し 例:待ち時間
2.設備・機器の見直し 例:手すり
3.規則・ガイドライン・システムの見直し
例:CVC認定制度
4.勉強会・研修会の開催 例:糖尿病治療
5.フィードバック 例:糖尿病、高血圧
6.コミュニケーションの改善 例:Door-to-Balloon
7.患者さんへの働きかけ 例:患者誤認防止
Jan. 19, 2013
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QIを用いた医療の質改善活動
-聖路加国際病院と日本病院会の経験-
1.医療の質とその指標:Quality Indicator
2.聖路加国際病院におけるQI測定・改善
3.QI改善のメカニズムと組織の役割
4.厚生労働省:研究班と推進事業
5.QIをめぐる国内外の状況
6.6.海外の状況:Pay-for-Performanceなど
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平成21年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)
「医療の質向上に資するアウトカム評価に関する研究」
(研究代表者:福井次矢)
“病院の医療の質を測る”Quality Indicatorに関する調査
目的:質指標(QI)の測定に対する医療機関の認識・現状、
必要な資源、そしてQIを公開することに関する意識を
知る
方法:郵送による質問紙票調査(15問)
対象:日本病院会会員のうち病床100床以上の2,100施設
および大学病院100施設の計2,200施設
時期:平成22年2月
回収:大学病院36、一般病院432、計468施設(21.3%)
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医療の質評価に関心があるか?
%
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医療
医療
医療の質の評価を行っているか?
Jan. 19, 2013
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医療
医療の質評価の対象項目
%
Jan. 19, 2013
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質指標(QI)の結果を公表すべきか?
Jan. 19, 2013
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質指標(QI)の結果を公表することは、
質の高い医療を提供するうえで有用か?
Jan. 19, 2013
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質指標(QI)の測定は、今後、全国の医療
機関に導入すべきか?
Jan. 19, 2013
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厚生労働省「医療の質の評価・公表推進事業」
 厚生労働省の2010年度の事業として、3つの病院団体 (国
立病院機構、全日本病院協会、日本病院会)に補助金を出
して、10項目以上のQIを測定・公表
 日本病院会:30病院で11項目のQI
①患者満足度(外来)
②患者満足度(入院)
③死亡退院患者率
④入院患者の転倒転落発生率
⑤手術患者での予防的抗菌薬投与
⑥退院後6週間以内の緊急再入院率
⑦予防可能な静脈血栓塞栓症
⑧褥瘡発生率
⑨糖尿病患者での血糖コントロール
⑩心筋梗塞患者でのアスピリン処方率
⑪静脈血栓塞栓の予防行為実施率
平成23年4月28日、QI測定値をホームページ上に公開
 平成23年度は、恩賜財団済生会、全日本民主医療機関連
合会、日本慢性期医療協会の3団体に補助金
Jan. 19, 2013
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QIを用いた医療の質改善活動
-聖路加国際病院と日本病院会の経験-
1.医療の質とその指標:Quality Indicator
2.聖路加国際病院におけるQI測定・改善
3.QI改善のメカニズムと組織の役割
4.厚生労働省:研究班と推進事業
5.日本病院会QIプロジェクト
6.海外の状況:Pay-for-Performanceなど
Jan. 19, 2013
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日本病院会QIプロジェクト
平成23年7月、前年度の厚労省補助事業の継続
を決定
QI委員会を設置
目的は会員病院のQIを経年的に改善
85病院が参加、平成23年9月、3回の説明会
一般病床の病院では11指標、療養型病床、精神
科病床を有する病院で異なる指標
平成24年度は145病院で続行中
結果のフィードバック、改善の経験についてシン
ポジウム開催
Jan. 19, 2013
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一般:No1-a 患者満足度(外来患者) 大変満足
分子
「この病院での診療に大変満足している」と回答した外来患者数
分母
患者満足度調査に回答した外来患者数
35.7%
Jan. 19, 2013
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一般:No1-b 患者満足度(外来患者) 大変満足または満足
分子
「この病院での診療に大変満足または満足している」と回答した外来患者数
分母
患者満足度調査に回答した外来患者数
82.0%
Jan. 19, 2013
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69
一般:No2-a 患者満足度(入院患者) 大変満足
分子
「この病院での診療に大変満足している」と回答した入院患者数
分母
患者満足度調査に回答した入院患者数
52.0%
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
70
一般:No2-b 患者満足度(入院患者) 大変満足または満足
分子
「この病院での診療に大変満足または満足している」と回答した入院患者数
分母
患者満足度調査に回答した入院患者数
88.0%
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
71
一般:No3 死亡退院患者率
分子
死亡退院患者数
分母
退院患者数
Jan. 19, 2013
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一般:No3 死亡退院患者率
分子
死亡退院患者数
分母
退院患者数
Jan. 19, 2013
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73
一般:No4-a 入院患者の転倒・転落発生率
分子
医療安全管理室へインシデント・アクシデントレポートが提出された転倒・転落件数
分母
入院延べ患者数
Jan. 19, 2013
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74
一般:No4-a 入院患者の転倒・転落発生率
分子
医療安全管理室へインシデント・アクシデントレポートが提出された転倒・転落件数
分母
入院延べ患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
75
一般:No4-b 入院患者の転倒・転落による損傷発生率
分子
医療安全管理室へインシデント・アクシデントレポートが提出された転倒・転落件数のうち損
傷レベル4以上の転倒・転落件数
分母
入院延べ患者数
Jan. 19, 2013
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76
一般:No4-b 入院患者の転倒・転落による損傷発生率
分子
医療安全管理室へインシデント・アクシデントレポートが提出された転倒・転落件数のうち損
傷レベル4以上の転倒・転落件数
分母
入院延べ患者数
Jan. 19, 2013
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77
一般:No5 手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
分子
手術開始前1時間以内に予防的抗菌薬が投与開始された退院患者数
分母
入院手術を受けた退院患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
78
一般:No5 手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
分子
手術開始前1時間以内に予防的抗菌薬が投与開始された退院患者数
分母
入院手術を受けた退院患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
79
一般:No6 退院後6週間以内の救急医療入院率
分子
退院後6週間以内の救急入院患者数
分母
退院患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
80
一般:No6 退院後6週間以内の救急医療入院率
分子
退院後6週間以内の救急入院患者数
分母
退院患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
81
一般:No7 手術ありの患者の肺血栓塞栓症の発生率
分子
分母のうち、肺血栓塞栓症を発症した患者数
分母
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を施行した退院患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
82
一般:No7 手術ありの患者の肺血栓塞栓症の発生率
分子
分母のうち、肺血栓塞栓症を発症した患者数
分母
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を施行した退院患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
83
一般:No8 褥瘡発生率
分子
調査期間における分母対象患者のうち、d2以上の褥瘡の院内新規発生患者数
分母
入院延べ患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
84
一般:No8 褥瘡発生率
分子
調査期間における分母対象患者のうち、d2以上の褥瘡の院内新規発生患者数
分母
入院延べ患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
85
一般:No9 糖尿病患者の血糖コントロール
分子
HbA1c(NGSP)の最終値が7.0%未満の外来患者数
分母
糖尿病の薬物治療を施行されている外来患者数
49.1%
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
86
一般:No9 糖尿病患者の血糖コントロール
分子
HbA1c(NGSP)の最終値が7.0%未満の外来患者数
分母
糖尿病の薬物治療を施行されている外来患者数
43.5%
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
87
一般:No10 急性心筋梗塞患者に対する退院時アスピリンあるいは硫酸クロピドグレル処方率
分子
分母のうち、退院時処方でアスピリンあるいは硫酸クロピドグレルが処方された患者数
分母
急性心筋梗塞あるいは再発性心筋梗塞の退院患者数
90.3%
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
88
一般:No11 手術ありの患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
分子
分母のうち、肺血栓塞栓症の予防対策(弾性ストッキングの着用、間歇的空気圧迫装置の
利用、抗凝固療法のいずれか、または2つ以上)が実施された患者数
分母
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を施行した退院患者数
Jan. 19, 2013
T. Fukui, MD, MPH, PhD, St. Luke's International Hospital
89
一般:No11 手術ありの患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
分子
分母のうち、肺血栓塞栓症の予防対策(弾性ストッキングの着用、間歇的空気圧迫装置の
利用、抗凝固療法のいずれか、または2つ以上)が実施された患者数
分母
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を施行した退院患者数
Jan. 19, 2013
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90
QIを用いた医療の質改善活動
-聖路加国際病院と日本病院会の経験-
1.医療の質とその指標:Quality Indicator
2.聖路加国際病院におけるQI測定・改善
3.QI改善のメカニズムと組織の役割
4.厚生労働省:研究班と推進事業
5.日本病院会QIプロジェクト
6.海外の状況:Pay-for-Performanceなど
Jan. 19, 2013
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91
QIを用いた医療の質改善へのインセンティブ
-Pay for Performance(P4P)-
 米国: メディケア・メディケイドの“10 Never Events”
1. 転倒と外傷
2. 血管内カテーテル関連感染症
3. 不十分な血糖コントロールによる疾病
4. カテーテル関連尿道感染症
5.股関節あるいは膝関節の人工関節手術後の深部静脈血栓症と肺塞栓症
6. 術後の遺物遺残
7. 冠状動脈バイパス手術、整形外科手術、肥満外科手術後の術創感染症
8. 空気塞栓症
9. 血液型不適合
10. 褥瘡(ステージ3、ステージ4)
 英国: GPの収入がP4Pにより25%アップ、全医療費予算の
14%が P4Pで支払われている。
 香港:2009年にQI測定と連動させたP4Pを開始
Jan. 19, 2013
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92
QIを用いた医療の質改善へのインセンティブ
-P4P以外-
 オランダ:3領域(Basic Set, Healthcare Transparency,
Medical Safety)のQIについて、政府による医療の質検閲
が行われている
 France: 保健省内の医療の質・安全局が、3領域のQIの結
果に基づいて病院をAからEにランク付けしている
当初期待されたQIの効果
 患者の受療行動を変化させて、質の低い病院は淘汰される?
 現在までの調査研究では、医師の行動には大きな変化が起
こったが、患者の受療行動には有意な変化は起こっていない、
Jan. 19, 2013
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93
QI活動の最終目的(アウトカム)
• あくまでも「提供する医療の質の改善」
• 改善につながらないQI測定・公表は無意味
– 病院ごとのQIを比較しても、厳密な意味で医療の質のみ
を比較していることにはならない
⇒対象患者の特性が異なるため
• 全ての病院がQI測定が可能なわけではない
• 一部の病院でQI測定を行って、医療の質向上に有
用であることが示された「改善策」を大多数の病院
に普及させる試みこそ重要
• QIの測定・公表は、「改善策」の発見・確認、改善へ
の動機づけ、改善効果のモニタリングに有用
Jan. 19, 2013
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94
QIを用いた医療の質改善活動
-聖路加国際病院と日本病院会の経験-
1.医療の質とその指標:Quality Indicator
2.聖路加国際病院におけるQI測定・改善
3.QI改善のメカニズムと組織の役割
4.厚生労働省:研究班と推進事業
5.日本病院会QIプロジェクト
6.海外の状況:Pay-for-Performanceなど
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