HIV 感染者における臓器移植の安全性と有効性 感染者における臓器

Michele Roland
Roland :HIV
:HIV 感染者における臓器移植の安全性と有効性
HIV 感染者における臓器移植の安全性と有効性
原題:Safety and Efficacy of Solid Organ Transplantation in HIV-Positive Patients
出典:THE PRN NOTEBOOK March 2001 Vol. VI, Num. 1
http://www.prn.org/prn_nb_cntnt/current.htm
著者:Michele Roland,MD
翻訳:広島大学医学部小児科 畝井和彦、西村 裕
HAART の成功はエイズによる死亡が以前に比し減少した事実で明らかである。しかし他
の合併症で死亡する例がかなり速やかに増加していて、これらには末期の臓器不全が含ま
れている。The PRN Nootebook の報告では 2 つの論説が HIV 感染者において慢性 B,C
型肝炎による重篤な肝疾患を概説している。また HIV 感染者での腎疾患の報告が急増して
いて、これらには HIV 関連腎症や、HIV 感染者はその他慢性腎不全の原因となる全ての疾
患である例えば糸球体腎炎や IgA 腎症、アミロイドーシス、糖尿病に冒されやすいことが
示されている。
末期肝不全、腎不全の患者にとって(末期心肺疾患はここでは触れない)臓器移植がお
そらく唯一の選択肢であろう。アメリカ移植評議会によれば、毎年 50000 人以上が臓器移
植の恩恵を受けている。The United Network for Organ Sharing(UNOS)は HIV 感染者
を臓器待機者の表に加えることを同意してきた。(UNOS は HIV 感染者やウイルス保持者
と看做される者例えばゲイ、静注薬物使用者、売春婦については臓器提供からははずして
いる) しかし多くの保険会社と臓器移植センターは HIV 感染者の臓器移植に 2 つの要因か
らちゅうちょしている。
先ず第一に、HIV 感染者は HAART 施行以前は免疫不全により生涯が短く致死的な合併
症の危険性がある。臓器の需要は多く供給は少ない事実に鑑みて、移植センターでは需要
の多い臓器を誰に割り当てるか、その生命予後を考慮する。第二に侵襲の大きい手術や拒
絶反応を押さえるための免疫抑制剤投与が HIV 感染者の免疫能を増悪して疾患を急速に進
行させ死に到らせるのではないかということだ。
HAART は HIV 感染者の予後を大きく変え、その生命予後は糖尿病や高血圧等の慢性疾
患と同程度にまでなってきたといってよい。それ故 HIV 感染者が生命予後のみで移植を受
けられないのは大いに議論される点である。残された懸念は臓器移植の有効性と免疫抑制
療法の安全性である。
カリフォルニア大学(USCF)の Michelle Roland,Peter Stock らは最近州から 200 万ドル
の予算を受け末期腎、肝不全 HIV 感染者の移植研究を開始した。2000 年 11 月の PRN で、
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Roland は HIV における移植と、地面を揺るがすような待望を秘めた USCF の研究を現在
のあらゆる方面の進歩と共に長々と話した。
移植の適応の考え方とこれまで
HIV 感染者で末期腎不全の患者への腎移植の適応についての考え方を調査するため、ロ
チェスター医科大学の Aaron Spital はアメリカ中の 248 の腎移植センターに調査書を送っ
た。解答のあった 149(60%)の施設総てがレシピエントに HIV 検査が必要で、これらの施設
の 84%が HIV 検査を拒否する患者は受け入れられないと返答している。解答のあった殆ど
の施設が無症候性 HIV 感染者への死体腎(88%)、生体腎(91%)移植は、その患者が移植のよ
い適応であってもしないと言っている。HIV 感染者への移植を考慮するとした少数の施設
でも、この調査以前にそのような移植を行った所は一つもなかった。殆どの施設では HIV
感染者への移植がその患者に悪影響を及ぼすことを恐れていて、貴重な臓器の無駄と考え
ている者もいた。
Spital の調査結果は非観的なものであるが、Roland らはもっと楽観的だ。「全米中に
UCSF の移植研究に非常に熱心な 14 の施設があり、多角的研究に積極的に参加しているし
その内の幾つかの施設では移植を行った所もある。これは我々に非常に印象的であったが、
外科医と移植施設の趨勢の変化を反映していると思う。まさに教育の問題なのだ。外科医
でここ数年の進歩に明るい人や HIV 感染の専門家と一緒に仕事をしている人たちはより一
層互いに胸襟を開き合っている。移植の世界においてこの興味は増大している。
」と述べて
いる。
最も多く HIV 感染者に移植が行われたのは HAART 施行前の時代である。初期の報告の
幾つかは移植後の予後は悪いことを示し、また臓器予後は効果がないことを示すものもあ
った。
ミネソタ大学の Roland らによって 1991 年に一つの報告が為された。ミネソタ大学で行
われた 5 人の HIV 陽性患者への臓器移植と、83 人の HIV 感染の臓器のレシピエントにつ
いて報告された例とを比較研究している。88 人中 66 人は移植前には HIV 陰性で、HIV 陽
性者から臓器提供か輸血を受けた。
88 人中 25 人(28%)が AIDS になり、その 25 人中 20 人(80%)が AIDS 合併症でおよそ 37
ヶ月後に死亡している。
他の 9 人(10%)は HIV 関連疾患に進行した。全 AIDS 進行者で AIDS
進行までの平均は 27.5 ヶ月であった。移植時に HIV 陰性であった患者の AIDS 進行までの
平均は 32 ヶ月で、HIV 陽性者のそれは 17 ヶ月であった。
移植に関した資料はミネソタ大学の評論から見出せる。腎移植を受けた患者中、48 人が
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手術前に HIV に感染していた。その内 37 人に腎機能が回復し、76%が正常機能であった。
35 ヶ月の追跡で 48 人中 13 人(27%)が AIDS に進行し、7 人(15%)が症候性 HIV 感染症と
なり、28 人(58%)が無症候性であった。経過中、13 人が死亡し、それは AIDS 進行患者が
11 人(85%)を占めた。
腎移植を受け、手術時に HIV 陽性であった 11 人中、8 人は腎機能が回復し、6 人(75%)
が正常機能であった。31 ヶ月の経過中、3 人(27%)が AIDS に進行し、8 人は無症候性のま
まであった。
4 人の死亡が報告されているが、
AIDS で死亡したのはそのうち 3 人であった。
肝移植については、12 人が移植時に HIV 陰性であった。そのうち 11 人(92%)が正常肝機
能を得られた。37 ヶ月後、3 人(25%)が AIDS に進行し、2 人(17%)が症候性 HIV 感染とな
り、7 人(58%)は無症候性であった。4 人の死亡が報告されているが、2 人は無症候性の群
からであった。移植時に HIV 陽性者はもっと予後が悪く、およそ 40%が移植後 17 ヶ月で
AIDS に進行し、9 人が移植後およそ 14 ヶ月で死亡している。死亡した 9 人中 5 人は無症
候性の群で、死因は敗血症、誤嚥、薬剤障害、また術中の出血多量であった。
その他には Roland らが 1994 年、Bichat-Claude bernard 病院感染症科から報告してい
る。11 人の HIV 陽性者の肝移植について書かれていて、全員 1985 年∼1987 年の間に感染
している。8 人は術中の輸血または血液製剤から、1 人は臓器そのものから感染し、残りの
2 人は移植後、移植とは無関係に感染している。総ての患者は 3 剤併用の免疫抑制を受けて
いてシクロスポリンが含まれている。
52 ヶ月の経過中、4 例に慢性拒絶反応が見られた。全体で HIV 関連合併症の出現頻度と
HIV 関連死のそれはそれぞれ 82%と 27%であり、3 人は HIV 合併症が急速に進行して死亡
した。しかしながら希望もあり、7 年後の生存率の報告では、術中感染 11 例中 36%、術後
感染中 70%であった。
3 番目に、Tzakis らが 1990 年に出した、15 人の HIV 陽性者への肝移植の報告がある。
12.75 年の経過中、2 人(13%)が生存していて、1 人は移植前の感染で 1 人は術中の感染で
ある。興味深いことに 2 人とも移植後数年以内に HAART が開始されている。経過中死亡
した 13 人中、HAART を施行していたのは 1 人のみであった。
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表1.肝・腎移植における成人の臓器と患者の生存率:UNOS
表1.肝・腎移植における成人の臓器と患者の生存率:UNOS の結果
1/1/1997-12/31/1998
の移植で、1/31/1999
までの経過で 1 年間
生存した症例
1/1/1997-12/31/1998
の移植で、1/31/1999
までの経過で 1 ヶ月
生存した症例
肝
移
1/1/1995-12/31/1996
の移植で、1/31/1999
までの経過で 3 年間
生存した症例
植
臓器
移植数
観察中(%)
残存数(%)
7,161
96.0
90.0
7,161
91.7
79.8
6,724
92.8
68.8
患者
患者数
観察中(%)
生存数(%)
6,755
95.8
94.0
6,755
90.9
85.6
6,283
92.0
75.9
腎
移
植
臓器
移植数
観察中(%)
残存数(%)
22,423
94.3
96.1
22,423
88.7
90.5
20,791
91.3
79.4
患者
移植数
観察中(%)
残存数(%)
22,341
93.7
99.0
22,341
86.8
95.6
20,682
87.9
90.5
全国的な死体肝の生着率と患者の生存率は United Network Organ Sharing(UNOS)によって報告され、デ
ータの収集は National Organ Procurement and Transplantation Network(OPTN)と Scientific Registry
of Transplant Recipients による。HIV 特異的な臓器、患者の生存データは UNOS によって算出されたの
ではなく、OPTN あるいは Scientific Registry によるものである。
臓器の生着率は移植後のある時点でまだ機能している臓器の比率を参照している。患者生存率は移植後
のある時点でまだ生存している患者の比率を参照している。この報告では臓器と患者の生存率は1か月、
1年、3年で行われている。
生存率は移植後指定された期間における臓器や患者の比率をみたものである。生存率は価値のある情報
だが、それ自体誤った解釈の可能性もある。臓器や患者が生存できるかどうかはそれぞれの個別の移植プ
ログラムやそのプログラムにおける個々の患者の特徴などに依存するからである。
出典:UNOS Transplant Patient DataSource 2001
ピッツバーグの経験
より進歩的な外科医の 1 人にピッツバーグ大学の John Fung がいる。Fung らは数年間
に渉り HAART 施行前から HIV 感染者の移植の指導的立場である。Roland は、ピッツバ
ーグのグループは利点がある、そこの移植と HIV の仕事はこの分野の先駆者であると述べ
ている。Fung らは 5 人の肝移植と 2 人の腎移植を経験豊富に報告している。これらは全て
移植前に HAART を施行されていた。奇妙なことに肝移植の 5 人は PI を、腎移植の 2 人は
NNRTI を基にした治療であった。
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カルシニューリン阻害剤であるタクロリムスが免疫抑制に使用された。Roland は、この
薬剤は PI 剤や NNRTI 剤を併用する場合には注意が必要だ。PI 剤はタクロリムスの血中濃
度を劇的に上昇させる。Fung らは 1∼2mg/週の投与であった、NNRTI 剤も同様で、ピッ
ツバーグでの投与量は 0.1mg/kg/day であった、と述べている。
最近 Fung らは、慢性拒絶で死亡した例を報告した。Roland は、この不運な例の背後に
ある状況を巡って考察した。この患者の回復期に医者は抗ウイルス療法を変更していた。
PI 剤を中止にされていたが、この情報が移植チームに伝わっていなかった。この時期、p450
の相互作用がなく、その結果タクロリムスの量が少なすぎたのだ。総ての医療者と患者の
間の情報交換と薬剤相互作用についての注意深い観察が必要だと述べている。
4 人の肝移植患者はまだ生存していて、全て C 型肝炎による肝障害のため移植を受けた。
5 人目の患者は NRTI による肝障害のため移植を受けたが、移植後程なくして死亡した。最
長経過観察は 2.5 年である。不幸にも、4 人中 3 人が HCV 肝炎を再発し、IFNα とリバビ
リンによる治療を受けているが、残りの 1 人は HCV-RNA 陰性を維持している。
HIV の進行に関しては、移植を受けた患者全員がウイルス量は測定感度以下で CD4 数は
200/μl 以上を維持している。Roland はこの結果より、「我々はこれらの患者に HIV 感染
症の進行見られないことに勇気づけられた。ウイルス量の反跳もなく、CD4 数もよく維持
されている。決定的なのは 1 人の患者が 2.5 年間生存していることだ。この様な例は我々の
研究では見ていないが、これぞ我々の追い求めているものである。
」と述べた。
UCSFの研究
UCSF の研究(その計画の資金提供をすすめてきたカリフォルニアの女性議員である、
Carole Midgen によって Midgen HIV Transplant Initiative と名付けられた)の目的は明確
で、簡潔である。最初の目的は、腎と肝の移植と HIV 進行による移植後の免疫抑制と免疫
機能のマーカーの影響の評価である。もうひとつの問題は移植臓器の機能と寿命における
HIV 感染の影響である。研究に組み込まれた 3 番目の目的は免疫抑制剤とプロテアーゼ阻
害剤、NNRTI の間の薬物動力学的な相互作用を評価することである。研究に含まれる適任
者は特殊な例ではない。移植待機リスト上の標準的な基準をみたさなければならない。患
者は、現在も過去にも食道カンジダ症を除く日和見感染に罹患していてはいけない。また
カリニ肺炎とヘルペス、真菌感染に対する適切な予防薬を使用していることが望まれる。
HCV 感染のために移植を受ける患者では、肝生検や再発時の HCV 治療も含めた頻回のモ
ニタリングがされなければならない。
CD4 陽性細胞数とウイルス量の基準は患者の腎や肝の可能性で変化する。腎移植を受け
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る患者は研究に先立って 3 ヶ月の安定した抗レトロウイルス治療がなされなければならず、
ウイルス量は検出感度以下(<50 コピー/ml)で、CD4 陽性数は少なくとも 200/mm3 は必
要である。肝移植を受ける患者は CD4 陽性細胞数は少なくとも 100/mm3 必要で、また安
定した治療に基づき、ウイルスが検出されないことが要求される。
患者は 5 年間経過観察を受ける。ほとんどの患者は外来患者として経過観察されるが、
薬物動力学的な研究のため General Clinical Research Center(GCRC)を入院患者として
訪れる 5 例は例外である。もちろん、臓器の拒絶反応や薬剤量の調節が必要な患者はさら
なる PK モニタリングのため、GCRC への入院が必要となろう。
この研究で使用される免疫抑制剤は標準的な移植例で使用されるものと同様である。
Prednisone、mycophenylate、calcineurin 阻害剤(tacrolimus や cyclosporine)が使用可
能である。もちろん calcineurin 阻害剤の量は P450 の阻害量と患者による。さらに、医療
者と患者が注意しなければならないことは、mycophenylate と stavudine あるいは
zidovudine は拮抗する可能性があり、抵抗性と薬剤耐性と点から考えると、できるだけ併
用しないほうがよいとうことである。Dr. Roland は HIV 陽性患者に calcineurin 阻害剤を
使用するのは興味深いとした。Calcineurin 阻害剤、とくに cyclosporine は CD4 陽性細胞
の増殖を停止させる。この段階では逆効果とも思われるが、CD4 陽性細胞の増殖が緩除に
なることは実際には HIV の標的が減少することになる。Dr. Roland は「なぜそうなるかは
明確ではないが、HIV 感染に関連した一つの仮設として、これらの薬剤が免疫系の過剰な
活性化を減少させるかもしれない。Cyclosporin はまた、cyclophilin との相互作用を通して、
直接的な抗 HIV 活性を持っているとも考えられている。
」と説明した。
Midgen HIV Transplant Initiative に組み込まれた 4 つの副研究がある。第一番目には
薬物動力学的評価がある。入院患者で、血清において 24 時間以上免疫抑制剤、プロテアー
ゼ阻害剤、NNRTI の濃度を評価したものである(図 1 参照、2 月の第 8 回レトロウイルスと
日和見感染症会議での薬剤間相互作用のデータ)。尿毒性のスクリーニングは不法な薬剤や
他の薬剤に関しても調査され、除外されていないため、他の薬物間の相互作用も考えられ
る。
2 番目はヒトパピローマウイルス(HPV)に関する研究で、特に移植患者における子宮頚部
あるいは直腸部異形成、新生物の発生に関するものである。Dr. Roland によると、「移植を
うけた HIV 患者は子宮頚部、直腸の新生物の発生の危険性が増加する。我々は HIV 陽性患
者における移植がこの過程をこれ以上進行させないことを明確にしたい。定期的な内視鏡
検査とスメア、もし必要があれば生検によって異形成、癌の臨床的、病理組織的観察を行
っていく。」
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3 番目の副研究はヒトヘルペス 8 型(HHV-8)に関するもので、HHV-8 はカポジ肉腫、
Castleman 病、腹腔内原発のリンパ腫などの原因とされている。患者は HHV-8 に対する
検査として、血漿中や細胞中の HHV-8 のウイルス量定量検査を受け、HHV-8 に関連した
免疫学的研究も行われる。
4 番目の副研究は対象患者における移植の免疫学的帰結と免疫抑制に関して調査するも
のである。評価に含まれる免疫学的パラメーターは、リンパ球の循環血中の分類を評価す
るための末梢血表原型(ナイーブ細胞や記憶細胞)、自己抗原や phytohemagglutin やリコー
ル抗原に反応した変化を評価するためのリンパ球増殖反応(LPR)
、ナチュラルキラー細胞
の機能、CD8 細胞の抑制活性、キメラ現象の研究、胸腺 Index を評価するための胸部 CT
などと広範囲にわたり、制限はない。
カリフォルニア州からの現在の資金提供は腎移植あるいは肝移植の約 15 例に対する臨床
的、研究的評価を UCSF ができるようにするためだけのもので、患者はカリフォルニア在
住でなければならない。資金が移植のコストをカバーできるのに対して、Dr. Roland と彼
女のチームは臨床的なコストをカバーしてくれるような資金返済の計画をもった他のグル
ープと連携している。「このことにより我々は資金を拡大することができ、多くの興味深く、
適格な HIV 陽性患者をカバーすることができ、そして最大限の研究機会をもって成果を得
ることができる。
」
このパイロット研究のさらなる目的のために、Dr. Roland と Stock は国中の臨床医や研
究家と連携している。これは共通のプロトコールと中央化されたデータ集積と分析施設を
もった多角的な研究を互いに行うという目的である。NIH はデータ収集と研究室業務のた
めに約 300,000 ドルをなげうってきたが、必要な資金は山積みで、移植手術や術後管理の
ためのコストは個人的な資金提供にも頼る必要がでてきている。
最初の経験
Dr. Roland の 11 月の講演で、5 例の HIV 陽性患者が UCSF スタディで移植を受けたこ
とを報告した。すべての症例が生存しており、もっとも経過の長い症例は、一番最初の患
者で 27 週間経過していると報告された。
最初の患者は HCV と HIV に感染した 15 歳の男性で、母親をドナーとした肝移植を受け
た。移植後に肝不全を発症し、死体からの肝・腎を含む、2 回目の移植がなされた。他の 4
症例はすべて腎移植であり、1 例は生体からで 3 例は死体からであった。Dr. Roland は最
後にこうコメントしている。「彼らはすべてかなりうまくいっている。最初の 1 例以外は、
ウイルス量は検出感度以下で、CD4 陽性細胞数はほぼ 200/mm3 を維持できている。我々は
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Michele Roland
Roland :HIV
:HIV 感染者における臓器移植の安全性と有効性
現在何例かの患者をスクリーニング中で、何ヶ月か何年か後にはさらに興味深いデータを
提供できると期待している。
」
(CsA)、ネルフィナビル
(NLF)、ネビラピン
(NVP):予備の相互作用データ
図1 シクロスポリン
シクロスポリン(CsA)
、ネルフィナビル(NLF)
、ネビラピン(NVP)
:予備の相互作用データ
(CsA)
、ネルフィナビル(NLF)
、ネビラピン(NVP)
ネルフィナビルとネビラピンの AUC におけるシクロスポリンの影響
NLF:CsA 追加後 4 週間で AUC は 100%増加。ベースラインに戻ったのは 6 ヵ月後
NVP:CsA 追加後 0-4 時間の AUC で 35%減少。以後 6 ヶ月以上変化なし。
シクロスポリンの AUC におけるネビラピンの影響
・ AUC を維持するためには標準的な移植後投与量からわずかな減量であった
・ 6か月も変化なし。
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Roland :HIV
:HIV 感染者における臓器移植の安全性と有効性
シクロスポリンの
シクロスポリンの AUC におけるネルフィナビルの影響
・AUC を維持するために 50%の減量
・6か月以上変動した。
参考文献
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