北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 北朝鮮における人道に対する犯罪への ICC管轄権行使可能性に対する一考察 ― 国連報告書を中心に ― I. はじめに II. 報告書から読み取れる人権侵害の状況 1. 報告書の評価 2. 北朝鮮における人権侵害 A. 思想、表現、宗教の自由に対する侵害 B. 差別 C. 移動の自由及び居住の自由の侵害 D. 食料の権利及び生存権に関する侵害 E. 恣意拘禁、拷問、処刑及び収容所 F. 外国人の強制失踪(誘拐の場合も含む) III. 手続法上の論点 1. ICC が管轄権を有する対象犯罪 2. ICC における時間的管轄権 3. ICC における管轄権行使の前提条件 4. ICC による管轄権行使の方法 5. 受理許容性の判断 6. 当てはめ 7. 小括 IV. 実体法上の論点 A. 人道に対する犯罪の文脈適要件 B. 人道に対する犯罪の行為類型別検討 C. 人道に対する犯罪の主観的・客観的要件 V. おわりに 1 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 I. はじめに ・国連の北朝鮮人権調査委員会が 2014 年 2 月 17 日に北朝鮮での広範囲な人権侵害を厳しく非難 する最終報告書を公表した。 →日本と欧州連合の共同提案で 2013 年 3 月に設置された北朝鮮人権調査委員会は、国連人権 理事会が北朝鮮で「人道に対する罪」にあたる人権侵害が行われているかを調査するために 設置。 ・委員長はオーストラリア人のマイケル・カービー氏。 委員はインドネシア人のマルズキ・ダルスマン氏とセルビア人のソーニャ・ビセルコ氏。 ・約一年間の調査期間を経て作成された『朝鮮民主主義共和国における人権に関する国連調査委 員会の報告1』は、約 400 ページに渡り北朝鮮当局による広範囲で組織的な人権侵害の証言などを 記録しており、「世界に類を見ない人権状況」を確認することができる。 ・7 つの人権侵害の類型 →「人道に対する罪」に相当する可能性を評価。 ⇒最後には北朝鮮で生じた人道に対する罪の首謀者に対し、説明責任を確実に負わせるために も、国際刑事裁判所(ICC)への付託や特別法廷の設置を提案している。 国際刑事裁判所(以下 ICC)とは 1998 年のローマ規程が採択され、2002 年 7 月 1 日に発効した 常設的な国際刑事司法機関のことである。個人と国家の一定の行為を犯罪として処罰する刑事国 際法は既に国際慣習法として存在したが、 「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪」を条 文化し、さらに常設の国際的な刑事法廷の組織と訴訟手続を定める国際公法の法規範とその司法 機関を成立させることは国際刑事法の歴史において画期的な進歩であった。ICC に付託すること で、当該国が真正に訴追する意図または能力を欠く場合でも真相解明と個別責任の明確化につな がる2。 それでは今回の北朝鮮の事例に関して ICC はローマ規程上何をすることができるだろうか。そし て将来的にはどのような事態が想定されるだろうか。今回の報告書に関しては、要約版の邦訳が 外務省から出され3、日本国内における関心の高さは感じさせるものの、ICC の可能性に関して深 く言及する研究は未だ出されていないように思われる。この論文はその様な試みを達成するた め、まず初めに今回の報告書を基に北朝鮮における人権侵害の現状を整理し(Ⅱ) 、次に ICC に おける手続法上の問題(Ⅲ)、ICC における実体法上の問題(Ⅳ)を順次検討する。 II. 報告書から読み取れる人権侵害の状況 1 2 3 ‘A/HRC/25/CRP.1 補完性の原則 外務省 HP 2 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 1. 報告書の評価 ・「北朝鮮の人権に関する国連調査委員会による報告書であり、特に人道に対する罪に相当しう る人権侵害についての、全面的な説明責任の確保という観点から、同国における組織的、広範か つ重大な人権侵害について調査する目的に基づいて作成された4」 。 ・ 「調査委員会は裁判機関でも検察官でもない。また個々の犯罪責任を最終決定する立場にない。 しかしながら、判明した内容が、人道に対する罪が行われているとの確証に至る合理的根拠を構 成し、管轄権を有する国内又は国際的な裁判機関による犯罪捜査に値するかどうかを決定するこ とができる5」 。 ・ 「調査委員会は、北朝鮮による組織的、広範かつ重大な人権侵害がこれまで行われてきており、 また、現在も行われていることを明らかにした。判明した侵害は多くの場合、国策に基づいた人 道に対する罪を伴っていた。主な加害者は国家安全保衛部、人民保安部、朝鮮人民軍、検察所、 司法及び朝鮮労働党の官僚で、朝鮮労働党の中央組織、国防委員会及び北朝鮮最高指導者の実質 的な管理下で行動している6」と結論付けた。 <調査方法に関しての問題点> ① 北朝鮮における現地調査が行えなかったこと7。 →公聴会を通じ、直接の証言を得た。 (被害者及び他の承認に対し 240 回を超える非公開のインタビューを行った) ② 証人が報復を恐れること。 →家族の安全について危惧しており、また、自分達の行動が未だに当局から密かに監視され 続けていると考えていたから。 2. 北朝鮮における人権侵害 A. 思想、表現、宗教の自由に対する侵害 そもそも個人の思想、表現、宗教の自由は ICCPR18 条と 20 条によって、さらに子供に関しての 思想、表現、宗教の自由は CRC14 条により保護されている。 それにも関わらず北朝鮮においては以下のような方法で個人の思想、表現、宗教の自由が侵害さ れている。 A-1 教化、プロパガンダと巨大組織 4 5 6 7 注 3 の資料より paragraph74 Ibid. 注 3 資料より paragraph24 公式訪問国は韓国、日本、タイ、英国及び米国。 3 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 ・幼少期からの教化 子供は金日成、金正日、そして現在は金正恩を崇めそして偶像化(崇拝)するように教育さ れている。スローガン、ポスター、絵などが幼稚園に飾られている 数学、理科、美術や音楽などの一般的な教科の他に、学校シラバスにおいて(異例に)大きな割 合を占めているのが金日成や金正日の功績や教え、10 の原理や北朝鮮公式版の革命の歴史につい て学ぶ授業である。北朝鮮で以前教師をやっていた人が金日成と金正日の書物に基づいたイデオ ロギーが北朝鮮における教育の大半を占めるのではないかと言っている。こういったコンテンツ は学生たちが理解し、覚えられるようにカスタマイズされる。もし金日成の哲学や、革命の歴史 などの教科でよい成績を生徒がとれない場合には、他の科目がとても優秀であったとしても罰を 受けることがある。 ・北朝鮮の教化プログラム 二つの根幹的な狙い ① 最高指導者に対するこの上ない忠誠心とコミットメントを育ませること ② 日本、アメリカ、韓国に対する敵意と深い嫌悪感を育成すること ・マスゲームやその他のマスプロパガンダイベントへの参加強制 A-2 中央メディアを通しての厳格な情報統制や非政治的情報を含む必要以上の情報の排除 ・テレビやラジオの統制 北朝鮮には4つのテレビ局があるが全て政府統制下にある。また、市民はテレビを購入した際に は政府による認可を得ないと回線をつなげることができない。 ・出版メディアやインターネットの規制、また他の通信手段の規制 ・外国映画や携帯電話の取り締まり A-3 暴力や監視を通しての表現ならびに意見の自由の抑圧 A-4 宗教の自由や信仰心の表現の自由の否定 ・モニタリングシステム/監視システム ・宗教的迫害 ・キリスト教徒を政治犯として扱う B. 差別 北朝鮮の主張:「あらゆるセクターで平等、差別のないこと、そして平等な権利が十分に達成さ れ、実施されている国である」 4 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 ⇒しかし、実際は、硬直的な階層社会に固定化された差別が根付いていており、北朝鮮は国家統 制を維持するための主な手段として公式差別を行っている。 B-1 出身成分制度に基づく差別 出身成分制度(Songbun system) :国民が国家により割り当てられた社会階級及び出自、政治的意 見や宗教を基に分類される制度。 ⇒政治的忠誠があるとみなされた社会的に有利な出身成分を持つ上位層(Elite class)は、社会的 決定において一定の自由がある。それに対して、国民の中の大きな割合を占めている、資産もな く、政治的忠誠を疑われたため有利な出身成分も持たない下位層(Core class)は、生活すらまま ならない状態を打開する手立てもなく地方に隔離され取り残されている。 B-2 ジェンダーに基づく差別 経済面:1990 年代の飢餓的状況を生き抜くための女性の社会進出により、市場における女性の支 配が高まるにつれて、国家は女性の経済的な進出に制限を設けた。 政治面:女性は最高幹部のわずか 5%、中央政府職員の 10%を占めるに過ぎず、男性が支配的。 生活面:女性に対する伝統的な家父長的態度や性的暴力が根付いている。食料及び移動の自由に 対する権利が侵害されているため、人身売買の被害を受けやすく、性的取引及び売春へ の従事が増加している。また、医療サービスの面でもその権利は著しく害されている。 ⇒表現及び結社の自由が完全否定される北朝鮮においては、女性は他のどの国でもみられるよう な、集団で女性の権利を擁護していく動きができない。 B-3 障害を基にした差別 北朝鮮においては、特に子供やその家族に対する差別が問題となっている。主に、障害児の家族 への居住地制限や、障害児の隔離、障害を抱える孤児たちの殺害等である。 ⇒しかし、障害者専門学校の建設や、北朝鮮選手のパラリンピック出場など、近年、この障害に 基づく差別の問題には国家が取り組みを進めている兆候がみられる。 C. 移動の自由及び居住の自由の侵害 5 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 国民の移動の自由は ICCPR や ICESCR でも保障されているが、北朝鮮では出身成分を基礎にした 差別の体制により、国民同士の接触及び外界との接触から国民を隔離する政策によって、移動の 自由に対する権利が全面的に侵害されている。 C-1 北朝鮮における移動の自由及び居住の自由 北朝鮮においては、生活すべき場所及び働くべき場所を国家が指定・強制しており、さらに国家 が指定した居住地及び雇用の強制的な割り当ては多分に社会的階級を基礎にして行われる。これ が、社会経済的及び物理的に隔離された社会を創り出してきた。北朝鮮では、指導部に対する政 治的忠誠があるとみなされた人々は良好な場所で生活し、働くことができる一方で、政治的に疑 いがあるとみなされた人々の家族は周縁地域に追いやられているという現状がある。 また、国民は当局の許可がなければ、一時的に居住場所を移ることも、国内を旅行することもで きない。社会及び家族の結び付きを犠牲にして、全く異なる複数の居住状況を維持し、情報の流 れを制限し、国家統制を最大化したいという強い願望が、この政策を後押ししている。 C-2 国を離れる自由 北朝鮮は事実上、一般国民の海外旅行を完全に禁止している。国家による国民の情報操作をスム ーズに遂行するためであるが、これにより国民は国を離れる権利を侵害されている。 この禁止命令は、厳しい国境警備により執行されているが、国民は未だ、脱出の危険を冒してい る。彼らは主に政治的・経済的理由により脱北を図っており、脱出先は主に中国である。 国境周辺の地域には SSD、MPS や KPA が配置され、特に警戒されている。脱北未遂者には厳し い制裁が加えられ、その家族も制裁の対象となる。 送還された者には深刻な人権侵害が待っているにもかかわらず、中国は、不法に国境を超えた北 朝鮮国民を強制送還するという厳しい政策を維持している。中国は、こうした者は経済的(及び 不法)移住者であるとの見方に従って、これを実行している。 しかし、国境を超えた北朝鮮国民の多くは、迫害から逃れた難民又は後発難民と認められるべき であり、その結果、国際的な保護を受ける資格を有する。中国もまた、北朝鮮国民を強制送還す ることで、国際難民法及び国際人権法下におけるノン・ルフールマンの原則を尊重する義務を怠 っている。場合によっては、中国当局者が北朝鮮当局のカウンターパートに逮捕者に関する情報 を提供していると思われる。 また、北朝鮮における女性に対する差別、その脆弱な立場、並びに追放及び送還の可能性のため、 6 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 女性は人身売買の被害に非常に遭い易い。北朝鮮の多くの女性が、無理矢理結婚もしくは内縁関 係にさせる、または強制的に売春させる目的で、強制的あるいは騙されて北朝鮮から中国へ売ら れ、又は中国国内において売買されている。 現在中国には、北朝鮮人女性の子供が 20,000 人いると推定される。この子供たちは、出生を登 録することにより、母親が中国による追放及び送還のリスクに晒されることを避けるため、出生 届が提出されず、国籍、教育、医療の権利を剥奪される。 C-3 国に戻る、あるいは離散した家族に会うための便宜を享受する権利 北朝鮮は繰り返し、他国、この場合は韓国と、特別なつながりを持つ国民、又は関係があると主 張する国民が、韓国に戻るか、或いは長く離散している家族に会うための便宜を享受する権利を 尊重する義務を怠っている。韓国の親戚との接触及びコミュニケーションを阻止するために北朝 鮮が実施している激しい妨害工作は、国際人権法下の国家の義務に違反している。こうした制限 は、恣意的かつ冷酷であり、非人道的である。関係者が高齢になっていることを考え合わせると、 特に、一度合意された離散家族の一時的な再会が全く説得力のない理由で中止された場合には顕 著にその非人道性があらわれている。 D. 食料の権利及び生存権に関する侵害 北朝鮮の置かれている状況において、食料の権利、飢餓からの解放、及び生存権は、 食料の不 足や必需品へのアクセスといった狭い議論に収まらない。北朝鮮は国民を統制する道具として食 料を使っており、当局が政治体制の存続に不可欠と考える者を優遇するシステムを採っている。 D-1 北朝鮮の食料事情 北朝鮮では、困窮している者から国家が食料を没収及び奪取し、他のグループに食料を供給する 体制がある。国家は食料へのアクセス及び配給に関して、出身成分を基礎にした差別を行ってお り、平壌など国内の一部の地域には特権を与えている。さらに、北朝鮮は最も脆弱な人々のニー ズを考慮しておらず、調査委員会では特に、子供たちの継続的かつ慢性的な栄養失調状態及びそ の長期的な影響について懸念が抱かれている。 北朝鮮は初めて国際援助を要請した 1995 年よりもかなり前から、国内の食料事情悪化を認識し ていた。国家が管理する食料の生産及び配給では,1980 年代末から、既に十分な食料を国民に 提供することができなくなっていた。その際、透明性、説明責任及び民主主義的な制度の欠落、 並びに表現、情報及び結社の自由に対する欠如が、最適な経済的解決策を採用することを妨げた。 7 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 北朝鮮では上記のとおり国家により国民が得る食料の量がコントロールされている。配給される 食料はその人の住んでいる場所や就いている職業によって異なるが、年々配給される量は減少傾 向にある。 そのような中、1993年には暴動が発生しアジア諸国との外交交渉が行われたものの、北朝鮮 政府の動きは徐々に鈍くなり、更なる国民への取立ての結果、多くの人々が中国やロシアへ逃亡 した。 苦しい状況にも関わらず、情報の隠匿のため、国民は崩壊しゆく公共配給制度の代替策をみつけ られず、また、国際援助の遅れを招いた。情報が早く提供されていれば、多くの命が救われたは ずである。国家は,国民に十分な食料を提供する能力がなかったにもかかわらず、国民による主 要な対処メカニズムの利用、特に食料を探すための国内外の移動及び闇市における取引や労働を 犯罪とみなし、法律と効果的な支配を維持した。 1990 年代以降、状況は変わってきてはいるが、飢餓と栄養不良は引き続き広範囲に及んでいる。 飢餓による死亡も引き続き報告されている。調査委員会は、十分な食料の権利及び飢餓からの解 放を侵害する法律及び政策を含む構造的な問題が依然として残っており、これが大量飢餓の繰り 返しにつながることを危惧している。 世界銀行の統計によると、北朝鮮の小児死亡率1990年の45パーセントから1999年には 58パーセントにまで上昇していると推定される。また、2003年から2008年の間で、4 5パーセントの5歳未満の子どもが栄養不足により体の成長をを妨げられていると思われる。 D-2 地理的分断と隔離 上述の通り、北朝鮮は身分社会であり、身分が上であるほど食料面などで高待遇が望める。その 結果、上位の人々が多く住むところと下位の人々が多く住むところで国が地理的に分断されてい る現状がある。例えば、平壌のような都市では優遇されることが多く、そこの住民は比較的高い 生活水準を保っている。 D-3 食料状況の悪化への認識と隠匿 食料状況の悪化にも関わらず、国家の上層部はそれに関する情報を他国に隠し、外部に漏らすこ とはなかった。その結果、①早期段階での自国民による体制強化の遅れ、②他国が食糧援助のた めに得るべき情報の到達の遅れ、③その結果他国による様々な援助の遅れ、の面において問題が 生じた。 D-4 国家及びその指導部による行動と怠慢 8 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 調査委員会では、食料事情に関する国家のコントロールを超えた要因の影響は認めながらも、国 家及びその指導部による決定、行動、怠慢が、最低でも数十万人の命を奪った原因であり、生き 残った人々にも永久的な身体的及び精神的な損害を与えたとの見解に至っている。 D-5 人道援助や最も影響の大きい地域・団体へのアクセスの妨害 最悪の大量飢餓の最中でさえ、北朝鮮は人道的配慮を欠いた条件を課し、食料援助の配給を妨げ た。 D-6 入手可能な資源を最大限活用すること 北朝鮮は、飢えた人々に食料を与えるために、入手可能な資源を最大限活用する義務を一貫して 怠った。軍事支出、主に機械設備並びに兵器システム及び核プログラムの開発に係る支出が、大 量飢餓の期間でさえ、常に優先された。 D-7 飢餓、餓死、飢えによる病気から解放される権利の侵害 国民が飢餓やそれによる病気にかかることに関しては、少なからず国家に責任があるといえる。 長年にわたる他国からの援助にも関わらず状況が未だ好転しないのは、他ならぬ国家の上層部に 重い責任があるといえ、その説明責任を果たす義務が彼らにはある。 D-8 食料を得る権利の侵害と囚人 また北朝鮮は拘禁施設において、支配と処罰の手段として故意に飢餓状態を利用してきている。 その結果、多くの政治犯及び一般囚が死亡している。 E. 恣意拘禁、拷問、処刑及び収容所 北朝鮮の警察及び治安部隊は、現在の政府の体制やそれを支える思想に対するあらゆる反抗に対 し先手を打って阻止すべく、深刻な人権侵害に相当しうる組織的な暴力と処罰を行っている。 E-1 恣意拘束及び強制失踪 北朝鮮では、大規模な治安組織の様々な部門が高度に中央集権化された治安部隊が、恒常的に 人々を政治犯罪に問う。そして、政治犯罪に関わったとされた者は、公判や司法による決定や逮 捕状もなしに、自身の罪状を知らぬまま恣意的に逮捕され、政治犯収容所に「失踪」させられる。 9 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 そこで、家族には罪状どころか安否や所在を知らされることなく、長期間にわたり外部との接触 を絶った状態で拘束、監禁、隔離される。 E-2 拷問及び飢餓による取調べ 北朝鮮では、特に政治犯罪に関する尋問において、拷問が認められている。尋問拘留所の監房に は、身動きが取れないほど人が詰め込まれており、看守によって行動は制限されている。尋問室 では、容疑者に圧力をかけて自白させ、また他者を告発させるため、幾度にも渡る長時間の拷問 を行い、容疑者はその身体的・精神的苦痛から逃れるために犯してもいない罪を認める。また、 医療サービスは提供されておらず、尋問拘留所で死亡する容疑者の大半は、拷問、飢餓、そして 拘留所内の劣悪な生活環境からの発病によるものである。 <図 1> Pigeon torture 鳩拷問の様子 <図 2> Scale, Aero plane, Motorcycle torture 起重機拷問, 飛行機拷問, オートバイ拷問の様子 E-3 政治犯収容所 北朝鮮の政治犯収容所は 1950 年代に設立され、現在も 4 カ所の大規模政治犯収容所が運営され ている。北朝鮮当局は政治犯収容所の存在を否定しているが、元看守、収容者及び近隣住民の証 言、衛星画像からも政治犯収容所制度が依然として運営されていることが確認されている。 収容所に収監される容疑者の多くは、政治的忠誠を疑われ、政府に対して驚異的だと判断された 人間である。収容所に収監された容疑者は、北朝鮮国民としての全ての権利を失ったとされ、計 画的な飢餓、強制労働、処刑、拷問、性的暴行、並びに処罰、強制堕胎及び嬰児殺しによって執 行される生殖に関する権利の否定を通じて、収容者は徐々に排除される。 収容所内では女性が力でねじ伏せられ、性的暴行を受けることが多い。しかし、これらの性行為 の強要によって女性が身籠った場合、その女性は過酷な強制労働を強いられ、時には内密に処刑 10 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 される。例外はなく、女性は中絶を強いられ、あるいは子供は生まれたと同時に殺される。 収容所は、規則を破った収容者に対して、最短で死に至るように食事を与えない方針をとってい る。収容者は毎日 12 時間の強制労働を強いられ、大量な食料を生産しているのにも関わらず、 その食料は収容者に与えられることはなく、収容者の大半は飢餓や栄養失調により死亡する。 E-4 一般収容所 収容者の大多数は、恣意的な拘束(前述)の被害者である。一般収容所内の環境は、政治犯収容 所と同等の環境であり、計画的な飢餓及び不法な強制労働に晒されている。収容者は、尋問拘留 所での数か月に及ぶ拷問を受けているため、身体的・精神的に非常に衰弱しきっている中で、毎 日 9~12 時間の労働を強いられ、割り当てられた労働をこなせない場合、拷問や非人道的な処罰 を受ける。また、一般収容所においても、女性は看守から食料や生活必需品の代償として性交を 強いられることがあるが、政治犯収容所とは異なり、基本的に中絶を強いられることはない。 E-5 処刑 国家政策として、当局は政治犯罪及び多くの場合重犯罪とは言えないその他犯罪に対し、公判の 上又は公判なしに、公開又は秘密裏に処刑を行っておる。 公開処刑を定期的に実施する政策は、処刑が行われる周辺住民は例え子供であっても処刑への参 加を強いられるため、一般国民の中に恐怖を植え付ける役割を担っている。1990 年代には公開 処刑は非常に一般的であり、現在も引き続き実施されている。2013 年後半には、政治的な動機 による公開処刑の件数が急増したようである。 また、秘密裏に行われる処刑は、各収容所内で収容者を対象に行われる。収容者は基本的人権が 剥奪され、外部との関わりを全て絶たれている。その上、その遺体を家族に返す必要がないこと から、処刑を隠蔽することが容易なため、収容所内では秘密裏に処刑が行われている。 E-6 薬物人体実験 調査委員会は、北朝鮮当局が、化学兵器や生物兵器を試すための薬物人体実験を行っている可能 性を示唆したが、この人体に対する薬物実験を証明するためには更なる確実な証拠が必要である とする立場をとっている。 F. 外国人の強制失踪(誘拐の場合も含む) 11 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 <前提> 強制失踪-国際連合総会が 1992 年 12 月 18 日の国際連合総会決議第 133 号において採択した 「強 制失踪からのすべての者の保護に関する宣言」において強制失踪は罰すべき行為であるとされて いる。(その後強制失踪条約が締結されている) 報告書では、北朝鮮における外国人の強制失踪をいくつかの時期に区分しており、各時期によっ て被害者の特徴も分かれる。 F-1 1950-53 年 朝鮮戦争における韓国人の拉致 数は正確には分からないが 8 万から 10 万人が拉致されたと予測されている。 拉致行為は主に韓国労働党の兵士によって行われ、一般市民をその住居や仕事場から事情聴取と いう名目で連れ出したまま、その身柄が返されることはなかった。 主に男性が拉致の標的とされ、朝鮮戦争中における拉致被害者全体の 97.8%を占めた。拉致被害 者の年齢層は若い者が多く、16 歳から 20 歳が 21.3%、21 歳から 25 歳が 33.7%、26 歳から 30 歳 が 19.9%、31 から 35 歳が 9.8%、その他が 15.4%であった。拉致被害者の職種はエンジニアが 12.2%であり、農民が 60.8%であることなどから、特別な能力を有する者を拉致するというより は、無差別に拉致をされていた可能性の方が高いといえる。 F-2 1953 年 朝鮮戦争の捕虜に対する本国送還の拒否 朝鮮戦争停戦時、約 8 万 2 千人もの韓国兵が行方不明となっていた。戦時中に捕虜として北朝鮮 に捕えられていた韓国兵が、停戦後も本国に送還されることなく、北朝鮮国内において重労働な どを課されていた。 F-3 1955-92 年 戦後拉致と韓国人の強制失踪 朝鮮戦争の休戦協定が結ばれた後も韓国人の拉致や強制失踪は続いた。約 3835 人の韓国人が北 朝鮮により逮捕あるいは拉致をされ、その内 9 名の逃亡を含む計 3319 人が一年半以内に帰国を したが残りの 516 名は未だ北朝鮮により失踪されたままだとされている。拉致された人々の情報 によると、拉致された韓国人は概して教育水準が高く、かつて学校に通っていた者が大半であっ た。北朝鮮に渡った後彼らはスパイ育成学校に入学させられ、金日成や革命について学ぶだけで なく、テコンドーや運転、誘拐の仕方、家屋への浸入、殺害の方法などを教えられた。スパイ学 校を卒業すればどの学校を卒業するよりもはるかに良い特権を与えられると言われると同時に、 脅されてもいたために彼らに選択の余地はなかった。 (スパイ学校において授業態度の悪かった ある証言者は、監視役の北朝鮮人に人気のない山に車で連れて行かれ、銃を突き付けられ、態度 を改めないとここで殺すと脅された。) 12 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 F-4 1959-84 年 「Return to Paradise」期に北朝鮮へ移住した在日朝鮮人と日本人 第二次世界大戦終結後、日本国内から豊富な食料や職を求めて北朝鮮へ移住する者が多数現れた。 戦後日本が貧困に陥ったことに加え、在日本朝鮮人総聯合会(Chongryon)や日本メディアが北 朝鮮を食料の豊かな国、職に困らない国、ある意味「楽園」として取り上げ、 「楽園への回帰」 を促した影響が大きい。しかし北朝鮮の実態はそんなものではなく、依然として食糧不足や人手 不足に悩まされていた。北朝鮮に移住した者たちは居住地や職の自由も与えられず、常に監視を されながら生活を送ることになった。日本へ出された手紙などは全て検閲を通されたため、北朝 鮮にとって不利な情報が書かれているものは日本に届くことはなかった。しかし曖昧な文章を書 いたり暗号化したりして家族に危険を知らせようとする者や、切手の裏に文字を書く工夫をする 者などもいたため日本に北朝鮮の情報をもたらすことが出来た。 (※図 3) この時期の特徴としては、他の時期が強制的に拉致などをされているのに比べ、北朝鮮への移住 は自発的に行われている。しかしその後帰国が許されなかったのである。 <※図 3> F-5 1970 年代-80 年代 日本国民の拉致 (日本海)沿岸部における拉致が多発、船に乗せそのまま北朝鮮へ連行するパターン。 多くの拉致被害者は北朝鮮人スパイの日本語教師などとして登用された。韓国におけるハイジャ ック事件なども、日本国籍を偽装した北朝鮮人二人組によるもので、彼らの日本語指導も日本人 拉致被害者が行ったとされている。 F-6 1970 年代後半 他国の女性の拉致 混血の必要性⇒女性の拉致が増えている 現段階で判明している被害者の国籍:レバノン、タイ、中国、マレーシア、シンガポール、ロー マ、フランス F-7 1990 年代-現在まで 中国からの拉致 13 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 中国国内にいる北朝鮮人の中でも、要人(Bowibu [State Security Department]勤務者など)にターゲ ットを絞って組織的に誘拐を行っているとの報告がされている。 III. ICC の管轄権について ICC は、常設の国際刑事裁判所であるが、無条件で管轄権を行使することはできず、同規程によ り、その管轄権行使の条件が定められている。 1. ICC が管轄権を有する対象犯罪 ICC が管轄権を有する犯罪類型は「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪」であるとされ ている。 (ローマ規程 1 条)ここでいう「もっとも重大な犯罪」とは、ローマ規程 5 条において 挙げられている人道に対する罪、侵略犯罪、戦争犯罪、集団殺害罪の 4 類型である。 2. ICC における時間的管轄権 罪刑法定主義は、世界の主要な刑事司法体系において広く採用されている。 ICC においても罪刑法定主義は採用されている。 ⇒「この規程が効力を生じた後に行われる犯罪についてのみ管轄権を有する」とされ(同規程 11 条 1 項)規程が効力を有する以前に行われた犯罪に対しては管轄権を有しないが、効力を有して 以後、将来に向かってはその管轄権を妨げられず時間的な制約は存在しない、 ⇒時効が存在しないとされている。 3. ICC における管轄権行使の前提条件 現在同規程 12 条には、ICC の管轄権行使の前提条件として、 「犯罪発生国(締約国国籍の船舶や 航空機を含む)又は被疑者の国籍国が ICC の締約国である」場合に管轄権行使が認められている。 ⇒ICC の管轄権行使の前提条件として、属地主義、および、能動的属人主義に限定されており、 積極的属人主義や世界主義を ICC が採用していない点と、どちらかの要件を具備すれば、犯罪地 国が非締約国であっても、被疑者が非締約国であっても ICC が管轄権を有するという点に注意。 ※当事国がどちらも非締約国であった場合についても管轄権を行使しうる場合がある。 ⇒①安保理による事態の ICC 付託と②非締約国が ICC の管轄権行使を受諾した場合の 2 つの場合 においては、当事国が両方非締約国であった場合においても ICC は管轄権を有する。 14 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 4. ICC による管轄権行使の方法 ICC が管轄権を行使する、すなわち、検察官が捜査を開始するための条件(Trigger mechanism) とはどのようなものであるのか。 ① ローマ規定締約国による ICC への事態の付託 すべての締約国は後述の ICC が管轄権を有する犯罪類型が行われていると考えられる事態を ICC に付託することができる。 (同規程 14 条 1 項) ※ここでいう「事態」とは、特定の被疑者や特定の事件ではなく、捜査の端緒となりうるもので あればよい。 ② 安保理による ICC への事態の付託 締約国のみならず、安保理も ICC への事態の付託を行うことが可能である。(同規程 13 条b) 安保理が ICC による管轄権行使を付託する根拠は国連憲章 7 章 39 条の平和及び安全を維持し又 は回復するための行動である。 (同規程 13 条(b) ) ③ 検察官による自己の発意に基づく捜査の開始 予審裁判部による捜査開始の許可が出た場合に捜査を開始しうるという制限のもと検察官自身 により捜査を開始しうる。 ※その条件の詳細については、同規程 15 条を参照 5. 受理許容性の判断 ICC が管轄権を行使しうる場合であっても、事件につき、管轄権を有する国がすでに事件の捜査、 訴追を行っている場合には、ICC は管轄権を行使しえない。しかし、その訴追が ICC の介入を避 けるための形式的なものである場合には ICC は管轄権を行使しうるとされている。 例:中核犯罪を犯した人間に対してその国籍国が裁判を行ったが、その内容が、被告を無罪にす るといったような、法的に「不正」である場合。 上官責任 上官責任とは、自ら命令した犯罪行為のみでなく、部下の違法行為を黙認した場合や、処罰を行 わなかった場合などにおいて上官が負う責任のことをいう。 (同規程 28 条) その源流は、ICTY 規程(ユーゴスラビア国際刑事裁判所規程)において明文化されている。 ・上官責任の成立要件 15 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 ① 上官・部下関係があること ② 部下による犯罪を防止・処罰するために必要かつ合理的な措置を取らなかったこと ③部下による犯罪が行われそうであること又はすでに行われたことを上官が知り、又は知る理由 があったこと ⇒すなわち、上官責任は「部下の犯罪を防ぐことができた(又は防ぐべきであった)にもかかわ らずその防止のための集団を取らなかった」という責任であるという意味で、不作為の責任であ るとされている。 では、ある犯罪事実とその上官の不作為との間に因果関係は必要なのか。 ⇒かつて(ICTY において)は、両者の因果関係は考慮する必要がないとされていたが、現在の ローマ規程においては、犯罪事実の発生は、上官の不作為の結果生じたものでなければ上官責任 は認められないとされている。 上官責任と間接正犯との関係 間接正犯とは 他の者が刑事上の責任を有するか否かに関わらず当該他の者を通じて当該犯罪を行うこと(同規 程 25 条) 例;ある者が刑事未成年にたいして、中核犯罪を行うよう命令を行い、その者が当該犯罪を実行 するような場合。 では、上官責任と間接正犯とはどのように「住み分け」すればよいのか。 ⇒間接正犯において訴追しえないときに上官責任で訴追する つまり、上官責任は、間接正犯では裁くことのできない「抜け穴」を埋めるための補充的な役割 を果たす。 IV. Ⅳ実体法上の論点 ・ICC 規程第 5 条「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪」 →それでは ICC 規程上の「人道に対する犯罪」は、どのような要件を満たせば「最も重大な犯 罪」となりうるのか(いわゆる「重大性の基準」)? →具体的にどのような行為が「人道に対する犯罪」に含まれるのか。 A. 人道に対する犯罪の文脈的要件 16 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 ICC 規程 7 条によれば、人道に対する犯罪が成立する行為とは「文民たる住民に対する攻撃で あって広範又は組織的なものの一部として、そのような攻撃であると認識しつつ行う」行為のこ とである(シャポー規定)。また、犯罪を構成する個々の行為として、11 の類型を定義し、さら にその定義が曖昧なものについては、2 項以下の定義条項でより詳細に規定している。ここでい う「攻撃」は同条 2 項(a)にあるように「政策要素」を有する「一連の行為」である。以上の文 脈的要件は犯罪成立において不可欠な要件である。よって、①攻撃の対象である「文民たる住民」、 ②攻撃の「広範又は組織的」な性格、③「攻撃」とその政策要素、④攻撃の「認識」の 4 つの要 素をそれぞれ検討する。 ① 攻撃の対象である「文民たる住民」(any civilian population) ・「文民たる住民」が攻撃の主たる(primary)対象でなければならない。 ○「住民」(population)とは、 →個人に対する行為を排除 = 集団的性質をもつ犯罪 ⇒国内法において犯罪を構成すると考えられる単発の行為や限定的かつ無計画に選択された個 人に対する行為は排除されなければならない。 ○「文民」(civilian)とは、 →・武力紛争時 敵対行為に従事しない者 ・平時 攻撃に関与していない者 ・「いかなる」(any)とは、 →該当する者の国籍等関係なくすべての者が保護される ② 攻撃の「広範又は組織的な」性格(widespread or systematic attack) ・無計画または散発の非人道的な行為を人道に対する犯罪の概念から排除するもの。 ・「広範」(widespread)は量的要素 ・「組織的」(systematic)とは質的要素 ⇒「大規模かつ多数の犠牲者を生じる」または「事前の計画または政策に従ったもので、その結 果一定の犯罪の動向が示される」攻撃 ③ 「攻撃」とその政策要素(attack) ・ICC 規程 7 条 2 項(a)「国若しくは組織の政策に従い又は当該政策を推進するため」に行われる 「行為を多重的に行うことを含む」 「一連の行為である」 ・武力紛争との関連性を要件としない ⇒「攻撃」は軍事的なものである必要はない。 17 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 ・攻撃の「一部」として行われる必要 →客観的要素「その性質または結果により客観的に攻撃の一部とされる行為が行われたこと」 →主観的要素「文民たる住民に対する攻撃が存在しかつ自己の行為がその一部であることを実行 者が認識していること」 ・「攻撃」は政策要素を含むものでなければならないとされる。 →国家または組織の政策が攻撃を積極的に促進または奨励する。 (例外)不作為または黙認8 ④ 攻撃の「認識」(knowledge) ・人道に対する犯罪に無関係な犯罪の動向を実行者の主観的要素によって排除する ・実行者は自らの行為が「文民たる住民に対する攻撃であって広範または組織的なものの一部で あること」を認識していなければならないとされる。ただし、実行者が攻撃の全ての性格や政策 の正確な詳細については認識している必要はないとされる。このことからすれば、実行者は攻撃 の性格や政策の詳細のすべてではないが、ある程度の認識をしている必要があることになる9。 以上から、人道に対する犯罪は「国若しくは組織の政策に従い又は当該政策を推進するため」 、 「文民たる住民に対して」 「広範または組織的な」 「一連の行為」「の一部として」行われる行為 であり、それを実行者が「認識しつつ行う」場合に成立する。また、犯罪を構成する個々の行為 として、11 の類型を定義し、さらにその定義が曖昧なものについては、2 項以下の定義条項でよ り詳細に規定している。 人道に対する犯罪の文脈的要件は明確に規定されているように思われるが、実際は判断基準が 明確になっていないものが多く、結果として関連する事実や状況からの推論に委ねられているも のが多く、裁判官の判断が大きな影響を与える10。 B. 人道に対する犯罪の行為類型別検討 次に ICC 規程上の人道に対する犯罪の各類型に、どのような事例が該当するかを検討する。 a) 殺人 「殺人」とは法外な行為によって引き起こされた人の死である。 この類型には、政治犯収容所における虐待等の違法行為によって死亡した場合、法に基づく適 正な手続きを踏まない処刑(特に宗教指導者等国家に重大な危険をもたらす蓋然性のある者は処 刑される) 、計画的な飢餓によってそれを企図した者が結果として餓死することを想定し得る場 8 必要な法整備や抑止を行わない、すなわち「意図的に活動しない」場合。 9 坂本、前掲資料、120 頁 10 Id.at.124 頁 18 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 合などが含まれる。また通常の収容所において役人が理由なしに秘密裡に殺人を行ったことも確 認されている。 b) 絶滅させる行為 「絶滅される行為」とは、住民の一部の破壊をもたらすこと、若しくはそれを意図した生活条 件を故意に課する(特に食料及び薬剤の入手の機会のはく奪)行為である。 厳しい生活環境の政治犯収容所においては、毎年何千人もの囚人が亡くなっている。この生活 環境は大量死がそもそも想定されており、元看守である Ahn Myong-chol が証言するように囚人は 「きつい労働で死ぬ」ことになっている。また通常の収容所においても、目標は囚人を労働を通 じて再教育することにあるとしながらも、政府が多くの被害が生じることを認識していながら必 要な食料と医療を提供しないことは絶滅させる行為である。 厳しい食料環境によって一般市民が餓死することも含まれる。政府の政策が重工業に過度に集 中するあまりに国民に十分な食料が支給されなかった上に、国際的な支援を嘘の情報を支援団体 に提供するなどして断った。また外部からの資金も大部分が軍隊の増強と近代化に費やされた。 c) 奴隷化すること 人に対して所有権に伴ういずれか又はすべての権限を行使することをいい、人(特に女性及び 児童)の取引の過程でそのような権限を行使することを含む。 重労働の強制は奴隷化であり、政治犯収容所において囚人は「まるで動物のように」扱われる。 そして労働を拒めば厳しい罰をくらい、警備の行き届いた収容所から脱出することはほぼ不可能 であり、囚人は完全に収容所当局によって支配されている。ノルマの達成に失敗した者や脱出を 試みた者に厳しい処罰が課されることを考慮すると、通常の収容所、特に炭鉱での強制労働を課 す収容所でも奴隷化が認められる。 d) 住民の追放又は強制移送 国際法の下で許容されている理由によることなく、退去その他の強制的な行為により、合法的 に所在する地域から関係する住民を強制的に移動させることをいう。 通常の収容所に入る者の罪責は個人的なものだが、特に首都のピョンヤンに居住する場合、そ の家族は連帯して責任を負い、社会経済環境の悪い地域に移動させられる。この強制移送は国際 法に反するものである。 e) 国際法の基本的な規則に違反する拘禁その他の身体的な自由の著しいはく奪 政治犯収容所の囚人は多くの場合適正な法手続きを経ずに拘留され、また特別な理由なく拘留 されることもあるが、ほとんどの場合それは終身刑である。通常の収容所の囚人も独立した公正 な裁判を期待することができない。また拘留事由が基本的人権の行使である場合もあり、決して 拘束事由が到底犯罪といえない場合もある。亡命に失敗した者や国家倒壊の危険因子を持ち込む 恐れのある宗教指導者などは、裁判を経ることなく数か月の間拘留される。 19 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 f) 拷問 「拷問」とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず、抑留されている者又は 支配下にある者に著しい苦痛を故意に与えることをいう11。 特に政治犯収容所には特別な拷問部屋があり、囚人は一生身体的苦痛や精神的苦悶を受け続け る。 g) 強姦やその他の重大な性的暴力 政治収容所の当局役員が満足するためだけの性的暴力が力付くに行われている。許可なく妊娠 した女性の囚人は直な身体的苦痛を受けるのみでなく、出産する権利に干渉されたり、過酷な精 神的苦痛も受ける。外国に亡命し、妊娠した女性は連れ戻された場合、その子供が「不潔」とい う理由で強制的に堕胎される。亡命に失敗した女性は厳しい不必要な身体検査を受け、性的な屈 辱を受ける例が確認されている。 h) 迫害 「迫害」とは、集団又は共同体の同一性を理由として、国際法に違反して基本的な権利を意図 的にかつ著しくはく奪すること。政治犯収容所において囚人は宗教的、政治的な背景を理由に迫 害されている。 i) 人の強制失踪 「人の強制失踪」とは、国若しくは政治的組織又はこれらによる許可、支援若しくは黙認を得 た者が、長期間法律の保護の下から排除する意図をもって、人を逮捕し、拘禁し、又は拉致する 行為であって、その自由をはく奪していることを認めず、又はその消息若しくは所在に関する情 報の提供を拒否することを伴うものをいう。 政治犯収容所に拘禁される囚人は市民権をはく奪され、ほとんどの場合解放される希望もなく、 一生を監獄の中で過ごす。囚人の死に際しては、親族に通知されることはなく、埋葬することは まして許されない。韓国や日本、その他の外国から拉致する行為も当然これに含まれる。 j) アパルトヘイト犯罪 「アパルトヘイト犯罪」とは、一の人種的集団が他の一以上の人種的集団を組織的に抑圧し、 及び支配する制度化された体制との関連において、かつ、当該体制を維持する意図をもって行う ものである。 北朝鮮はほぼ単一民族であるので、ここではそのような類型は確認できない。 k) その他の非人道的行為 結果的に餓死しなかったが、食料の入手の機会を故意的にはく奪された人民は心身に重い苦痛 を受け、重大な損害が加えられた。 11 ただし、拷問には、専ら合法的な制裁に固有の又はこれに追随する苦痛が生ずることを含まない。 20 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 V. おわりに ○以上の手続法・実体法両方の観点における考察を下に北朝鮮、同国指導者に対して ICC は管轄 権を有すると結論付けたい。 ・最終報告書が公表されてから 8 か月後、 マルズキ・ダルスマン特別報告者「国連安全保障理事会は、北朝鮮の人権状況を国際刑事裁判所 (ICC)に付託するべきだ」 (10 月 28 日国連総会第 3 委員会の北朝鮮人権セッション) ・実際に安全保障理事会で同決議が採択されたとしても、同盟国である常任理事国の中国が拒否 権を行使することは確実だが、北朝鮮は、国際社会の間で高まる非難を可能な限りかわしておき たいと考えられる。 ・国家主権を楯に、人道に対する罪が 20 世紀において処罰されることは例外的であり、放置さ れることが多かった。しかし、国連による特別裁判所(アド・ホック裁判)の設置が行われ始め、 常設の国際刑事司法機関である ICC が設立された 21 世紀においてそのような事態は許されない12。 ・最終報告書が提出された以上、北朝鮮の人権侵害をもう「知らなかった」では通用しない。 ・Duty to Protect. 12 補完性の原則に基づき、ICC 規程の対象犯罪については一次的には管轄権を有する国にあるが、国 際刑事裁判所(ICC)は当該国が真正に訴追する意図または能力を欠く場合には、裁判をすることが できる。 21 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 (参考資料) 第五条 裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪 1 裁判所の管轄権は、国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪に限定する。裁判所は、こ の規程に基づき次の犯罪について管轄権を有する。 (a) 集団殺害犯罪 (b) 人道に対する犯罪 (c) 戦争犯罪 (d) 侵略犯罪 Article 5 Crimes within the jurisdiction of the Court 1. The jurisdiction of the Court shall be limited to the most serious crimes of concern to the international community as a whole. The Court has jurisdiction in accordance with this Statute with respect to the following crimes: (a) The crime of genocide; (b) Crimes against humanity; (c) War crimes; (d) The crime of aggression. 第七条 人道に対する犯罪 1 この規程の適用上、「人道に対する犯罪」とは、文民たる住民に対する攻撃であって広範又 は組織的なものの一部として、そのような攻撃であると認識しつつ行う次のいずれかの行為 をいう。 (a) 殺人 (b) 絶滅させる行為 (c) 奴隷化すること。 (d) 住民の追放又は強制移送 (e) 国際法の基本的な規則に違反する拘禁その他の身体的な自由の著しいはく奪 (f) 拷問 (g) 強姦(かん) 、性的な奴隷、強制売春、強いられた妊娠状態の継続、強制断種その他あ らゆる形態の性的暴力であってこれらと同等の重大性を有するもの (h) 政治的、人種的、国民的、民族的、文化的又は宗教的な理由、3に定義する性に係る理 由その他国際法の下で許容されないことが普遍的に認められている理由に基づく特定 の集団又は共同体に対する迫害であって、この1に掲げる行為又は裁判所の管轄権の範 囲内にある犯罪を伴うもの (i) 人の強制失踪(そう) (j) アパルトヘイト犯罪 (k) その他の同様の性質を有する非人道的な行為であって、身体又は心身の健康に 対して故意に重い苦痛を与え、又は重大な傷害を加えるもの 2 1の規定の適用上、 (a) 「文民たる住民に対する攻撃」とは、そのような攻撃を行うとの国若しくは組織の政策 に従い又は当該政策を推進するため、文民たる住民に対して1に掲げる行為を多重的に 行うことを含む一連の行為をいう。 (b) 「絶滅させる行為」には、住民の一部の破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意 に課すること(特に食糧及び薬剤の入手の機会のはく奪)を含む。 (c) 「奴隷化すること」とは、人に対して所有権に伴ういずれか又はすべての権限を行使す ることをいい、人(特に女性及び児童)の取引の過程でそのような権限を行使すること を含む。 (d) 「住民の追放又は強制移送」とは、国際法の下で許容されている理由によることなく、 22 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 退去その他の強制的な行為により、合法的に所在する地域から関係する住民を強制的に 移動させることをいう。 (e) 「拷問」とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず、抑留されている 者又は支配下にある者に著しい苦痛を故意に与えることをいう。ただし、拷問には、専 ら合法的な制裁に固有の又はこれに付随する苦痛が生ずることを含まない。 (f) 「強いられた妊娠状態の継続」とは、住民の民族的な組成に影響を与えること又は国際 法に対するその他の重大な違反を行うことを意図して、強制的に妊娠させられた女性を 不法に監禁することをいう。この定義は、妊娠に関する国内法に影響を及ぼすものと解 してはならない。 (g) 「迫害」とは、集団又は共同体の同一性を理由として、国際法に違反して基本的な権利 を意図的にかつ著しくはく奪することをいう。 (h) 「アパルトヘイト犯罪」とは、1に掲げる行為と同様な性質を有する非人道的な行為で あって、一の人種的集団が他の一以上の人種的集団を組織的に抑圧し、及び支配する制 度化された体制との関連において、かつ、当該体制を維持する意図をもって行うものを いう。 (i) 「人の強制失踪(そう)」とは、国若しくは政治的組織又はこれらによる許可、支援若 しくは黙認を得た者が、長期間法律の保護の下から排除する意図をもって、人を逮捕し、 拘禁し、又は拉(ら)致する行為であって、その自由をはく奪していることを認めず、 又はその消息若しくは所在に関する情報の提供を拒否することを伴うものをいう。 3 この規程の適用上、「性」とは、社会の文脈における両性、すなわち、男性及び女性をいう。 「性」の語は、これと異なるいかなる意味も示すものではない。 Article 7 Crimes against humanity 1. For the purpose of this Statute, ‘crime against humanity’ means any of the following acts when committed as part of a widespread or systematic attack directed against any civilian population, with knowledge of the attack: (a) Murder; (b) Extermination; (c) Enslavement; (d) Deportation or forcible transfer of population; (e) Imprisonment or other severe deprivation of physical liberty in violation of fundamental rules of international law; (f) Torture; (g) Rape, sexual slavery, enforced prostitution, forced pregnancy, enforced sterilization, or any other form of sexual violence of comparable gravity; (h) Persecution against any identifiable group or collectivity on political, racial, national, ethnic, cultural, religious, gender as defined in paragraph 3, or other grounds that are universally recognized as impermissible under international law, in connection with any act referred to in this paragraph or any crime within the jurisdiction of the Court; (i) Enforced disappearance of persons; (j) The crime of apartheid; (k) Other inhumane acts of a similar character intentionally causing great suffering, or serious injury to body or to mental or physical health. 23 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 2. For the purpose of paragraph 1: (a) ‘Attack directed against any civilian population’ means a course of conduct involving the multiple commission of acts referred to in paragraph 1 against any civilian population, pursuant to or in furtherance of a State or organizational policy to commit such attack; (b) ‘Extermination’ includes the intentional infliction of conditions of life, inter alia the deprivation of access to food and medicine, calculated to bring about the destruction of part of a population; (c) ‘Enslavement’ means the exercise of any or all of the powers attaching to the right of ownership over a person and includes the exercise of such power in the course of trafficking in persons, in particular women and children; (d) ‘Deportation or forcible transfer of population’ means forced displacement of the persons concerned by expulsion or other coercive acts from the area in which they are lawfully present, without grounds permitted under international law; (e) ‘Torture’ means the intentional infliction of severe pain or suffering, whether physical or mental, upon a person in the custody or under the control of the accused; except that torture shall not include pain or suffering arising only from, inherent in or incidental to, lawful sanctions; 5 Rome Statute of the International Criminal Court (f) ‘Forced pregnancy’ means the unlawful confinement of a woman forcibly made pregnant, with the intent of affecting the ethnic composition of any population or carrying out other grave violations of international law. This definition shall not in any way be interpreted as affecting national laws relating to pregnancy; (g) ‘Persecution’ means the intentional and severe deprivation of fundamental rights contrary to international law by reason of the identity of the group or collectivity; (h) ‘The crime of apartheid’ means inhumane acts of a character similar to those referred to in paragraph 1, committed in the context of an institutionalized regime of systematic oppression and domination by one racial group over any other racial group or groups and committed with the intention of maintaining that regime; (i) ‘Enforced disappearance of persons’ means the arrest, detention or abduction of persons by, or with the authorization, support or acquiescence of, a State or a political organization, followed by a refusal to acknowledge that deprivation of freedom or to give information on the fate or whereabouts of those persons, with the intention of removing them from the protection of the law for a prolonged period of time. 3. For the purpose of this Statute, it is understood that the term ‘gender’ refers to the two sexes, male and female, within the context of society. The term ‘gender’ does not indicate any meaning different from the above. 24 北朝鮮における人道に対する犯罪へのICC管轄権行使可能性に対する一考察 伊藤・古賀・千住・徳山・東 <参考文献> ・「 北 朝 鮮 に お け る 人 権 に 関 す る 国 連 調 査 委 員 会 ( COI ) 最 終 報 告 書 」 , 外 務 省 HP (http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page18_000274.html), 2014 ・「‘Report of the detailed findings of the commission of inquiry on human rights in the Democratic People’s Republic of Korea ‘-- A/HRC/25/CRP1 」 , 国 際 連 合 広 報 セ ン タ ー HP (http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/CoIDPRK/Pages/ReportoftheCommissionofInquiryDPRK.aspx) ・森下忠『国際刑事裁判所の研究』2009 年、成文堂 ・藤田久一「国際人道秩序の構築と国際刑事裁判所(ICC)の役割」『法律時報』79 巻 4 号、 2007 年、4-11,日本評論社 ・小長谷和高『序説 国際刑事裁判 独裁指導者に対する人道の審き』2007 年、尚学社 ・安藤泰子『国際刑事裁判所の理念』2002 年、成文堂 ・東澤靖『国際刑事裁判所 法と実務』2007 年、明石書店 ・日本弁護士連合会『国際刑事裁判所の扉を開く』2008 年、現代人文社 ・坂本一也「第 3 章国際刑事裁判所の事項的管轄権の対象 2人道に対する犯罪」2008 年(村瀬 信也、洪恵子『国際刑事裁判所 最も重大な国際犯罪を裁く』第一版(東信堂)より) ・藤田久一『国際人道法』2000 年、有信堂 ・横濱和弥「国際刑法における「上官責任」とその国内法化の態様に関する一考察」法学政治学 論究 : 法律・政治・社会 (97), 301-333, 2013 ・横濱和弥「国際刑法における「上官責任」に関する一考察」法学政治学論究 : 法律・政治・社 会 (92), 365-397, 2012 ・フィリップ・オステン「国際刑法における「正犯」概念の形成の意義―ICC における組織支配 に基づく間接正犯概念の胎動―」(理論刑法学の3より) ・フィリップ・オステン「国際刑法における行為支配論と正犯概念の新展開―多元的関与形式の 意義―」 (川端博先生古稀記念論文集[上巻]より) ・フィリップ・オステン「正犯概念再考―ルバンガ事件判決と国際刑法における共同正犯論の展 開を素材に―」法学研究 2014-05;87(5):1-34. 25
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