平成 18 年 5 月 15 日 アジア共同国際債(アジアボンド)市場の創設提言 ―アジアボンド発行市場へのロードマップ― エクゼクティブサマリー ¾ 域内の市場参加者と市場インフラのレベルアップ アジア経済共同体の発展のためには、アジアの共有財産としての域内金融資 本市場の発達が不可欠である。そしてそれには、日本など域内の市場参加者と 市場インフラのレベルアップが必須条件として求められる。 これからは、世界の舞台で活躍できる日本発、アジア発の金融のプロの育成と、 そのための国際水準のスタジアムの建設を本格的に行い、日本とアジア市場の 発達の遅れを克服する必要がある。いわば、プロサッカーの世界におけるJリー グ、あるいはアジアリーグのようなプロのリーグの創設が、金融資本市場の世 界にも必要となっているのである。そしてそこでリーダーシップをとるべきは、 まずは、国内資本市場の規模と発展段階で勝る日本と韓国であろう。 ¾ 国際債発行流通市場としての「アジア共同国際債市場」の必要性 日本を中心とする東アジアでは、近年、域内の発展と競争力確保のため、域内 に自由な取引環境を備えたプロの参加者のための市場である「ユーロ債市場」 のような国際的金融市場を積極的に作り出すことが、関係者の努力次第で、基 本的には可能な状況となりつつあると考えられる。 現在まで、域内主要国の国内金融資本市場では、関連の法制や決済システムな どの市場インフラ構築が進みつつあるが、それに対し、国際債が発行され売買 流通される場としての、アジア域内で自己完結する「共同国際債市場」の発達 は決定的に遅れている。そして、その必要性すらあまり認識されていない。 国際債といえば、アジア域内市場関係者は、依然としてロンドン金融街の金融 機関と欧州国際証券決済システムの使用を前提とする、英国とベネルクス三国 の連携システムとしての「ユーロ債発行流通市場」に依存する形となっている。 すなわち、自国以外の市場でのアジアの発行体の証券については、証券の発 行・流通・償還にかかわる仲介業者・証券決済システム・関連法制・格付け機 関、発行関連法実務に関する法律家・弁護士などまで含め、英国や欧米を中心 とするアジア域外の業者や専門家やシステムの使用が前提となり、日本とアジ アの発行体にとって、欧米の発行体と同等のコストの優位性と自国通貨建て債 券発行などの利便性が確保できているとはいえない。 1 日本円以外のアジア通貨建ての国際債証券には、基本的に、それらの発行と流 通に際して、自国内のみならずユーロ債市場も含め、さまざまな制約が存在す る。また日本を含むアジアの金融機関についても、欧米と対等に勝負できるだ けのプロの技を磨く環境が、アジアに整っているとはいえない。 アジアにおいて、いまだに明確な形では実現していない域内独自の共同 offshore市場としての「アジア共同国際債市場(ユーロ債市場型アジアボンド 市場)」の創設は、域内のプロの育成・鍛錬と市場イノベーション創造の場の創 出、また域内の貯蓄を域内で循環させるための、域内で自己完結可能な費用対 効果の高い、自国通貨建てを含む国際債市場の創出として、大きな意義がある。 その実現のためには、アジア域内の要素・要件のもとで自己完結可能な、ユー ロ債市場型の国際債のための各種市場インフラの構築実現が必要とされる。ま たそのクロスボーダー・インフラは、各国国内市場を有機的かつ自然な形でつ ないで、かつての金融危機のような国を跨いだ資金循環不全を未然に防止する 働きもする。 いまわが国をはじめとする域内各国の主要市場参加者の主導によって、足元の 種々の制度的制約(周知不足を含めた国内法制上の制約・税法上の制約・有効 な国際的証券決済システムの不在など)をさらに本格的に取り除く努力が必要 となっているのである。 その際、アジア共同国際債市場では、経済共同体としての姿を示しはじめた東 アジアにおいて、発行体も投資家もその主軸はアジア諸国のメンバーであると の想定が可能であるし、また域外の市場関係者の参加も当然のこととして想定 可能である。つまりそれは世界中の市場と市場関係者に開かれた構造を持つ。 ¾ アジア共同国際債(アジアボンド)市場ヴィジョンの構築と共有が必要 各国政府と ADB が中心となってここ数年来進められている「アジア債券市場 育成イニシアティブ(ABMI)」は、非常に重要な取り組みであり、種々の重要 な成果を挙げてきていると考えられる。 今後は、アジア資本市場の参加者であるべき公的な証券発行体機関と民間の 発行体・仲介業者・機関投資家などの市場参加者(市場のプロの実務家)によ る、アジア共同国際債(アジアボンド)市場のヴィジョン構築と共有が必要と なっているといえよう。 ¾ アジア共同国際債(アジアボンド)発行市場へのロードマップ提言 主な提言内容は、次の4点である。 (1)自国通貨建てアジア共同国際債(アジアボンド)市場の必要性と、実現 への具体的な道程(ロードマップ)の提言 (2)共同国際債(アジアボンド)市場に関する法制の留意事項の提言(日本 の発行体は、新会社法上の社債ではないものとして構成し日本法を発行 準拠法としてアジアボンドを発行すべきであるし、それが可能である) (3)アジア資本市場協議会(CMAA)創設の提言 (4)証券決済方式としての Dual Core アプローチ等の提案 2 提言発表にいたる経緯 総合研究開発機構では、研究会座長に神田秀樹東京大学大学院法学研究科教 授を迎え、企業財務協議会および日本資本市場協議会と協同し、 「東アジア地域 の金融資本市場の一体性確立に向けての戦略ヴィジョン」の提言を行うことを 目的に、 「域内市場の原則・ルールのあり方に関する研究会」 ・ 「域内統合市場イ ンフラに関する研究会」を 2005 年7月にキックオフした。 以降、市場専門家の知恵を集め、ワーキング・グループのミーティングを随 時開催、また、数次にわたり日韓両国で韓国資本市場関係専門家メンバーとの 交流・意見聴取を行った。その後、本年に入って、目的意識を共有した韓国の専 門家メンバーも自主的に検討に加わり、日韓の市場専門家チームが合同で、集 中的なディスカッションを行ってきた。 また 05 年末からはアジア債券市場構 想を推進するアジア開発銀行(ADB)とも意見交換しつつ、作業を行ってきた。 2006 年 3 月 27 日には、東京で「NIRA-ADB 共同フォーラム」を開催し、そ の8ヶ月に亘る研究成果を、NIRA 政策提言(中間報告)案として参加者に提示 した。そこで NIRA の研究チームが用意した提言案は、フォーラム終了時点で、 参加者の約4分の3から肯定的な支持を得る結果となった。 上記提言は、3 月 27 日のフォーラムにおける議論(アンケート結果を、P.21 に添付)を踏まえ、それ以降のメンバー他関係者による検討・討議内容も含んだ 成果である。 なお、本提言は、日韓の民間の市場実務家の、主体的で前向きの連携・協力を ベースとして策定されたものであることを、併せて申し添える。 詳細説明 背景説明:自国通貨建てアジアボンド市場の基本的役割 アジア危機をもたらした理由も、なお現在も続くアジア通貨・経済の不安定さも、そ の大きな要因は、ドルペックであり、言い換えれば、ドルに対する自国通貨の切り上 げ要求であり、ドルによる外貨準備の為替リスクの肥大化である。 他面、アジアの域内貿易による関係各国の密接な関係は、その決済がドルで行わ れていても、そのような貿易用のドルは各国の通貨に交換されるものであるから、各 国の通貨が貿易に使われていることになる。従って、自国通貨建てアジアボンド市場 の存在は、為替の交換手数料の節約にもなるし、輸出債権(とりわけプラント輸出な ど長期債権)に裏付けられている限度では、為替リスクのない各国通貨建の社債債 務の存在が、必要かつ正当化される。 また、現地生産のための資本の輸出に伴い、従来は、長期資本が各国通貨で固 定されてきた。この場合は、現地生産国の通貨建ての債券を発行して資金調達をす ることができれば、為替リスクを回避できる。 さらに、歴史を振り返れば、日本企業は、1970 年代から、その高度成長を支えるた 3 めの資金調達を、金利の安いエクイティファイナンス(転換社債や新株予約権付社 債)の形でユーロ市場において行ってきた。そして、欧米の投資家は日本の高度成長 に投資した。 現在この関係は、東アジアの先進国である日本や韓国と、それを追いかける ASEAN 諸国等の間に成立している。投資信託を含む日本や韓国の機関投資家は、 円建てやウォン建ての ASEAN 諸国のエクイティファイナンスに資金の出し手として対 応できる。それは現在の BRICs ブームに象徴されている。 上記のような自国通貨建ての社債やエクイティ債に関しては、実体経済である貿易 や直接投資といった厚みのある底辺がすでにアジアに存在し、また物流はお互いに 近い国の間でより多く行われ、そこで必要とされ正当化されることはいうまでもない。 以上は、各国の政府当局の対応を待たなくても自然に発生する経済の流れである。 しかしその出発点は、各国の外為政策、通貨の自由化の進展や、会計・ディスクロー ジャーの状況等を考えると、その始まりは、ユーロ市場がそうであったように、「プロの 投資家の作るアジア国際債市場」ということになろう。 しかし、ユーロ市場では、アジアの主要通貨については、基本的に、円を別にすれ ばウォンでさえ利用に制限があり、ましてやそれ以外のアジアの通貨建て債券の受 入は、いまだ困難であろう。 個別課題認識と前提条件 Q: 21 世紀型のアジア共通・共同の国際債券市場構築を、どうやって推進すべきか。 具体的に、特に金融資本市場分野において、アジア共通の市場インフラを構築する には、どういった課題が存在するのか? A: まずは、各国で市場関連の法規制システムの調和を図る必要がある。アジア債 券市場の構築は、これまで、各国の財務当局、中央銀行、政治家の並々ならぬ努力 で推進されてきた。現在も、日本を始めとするアジア各国財務省のサポートのもとで、 アジア開発銀行を中心に、「ASEAN+3 Asian Bond Markets Initiative (ABMI)」という枠 組みでの持続的な検討が進んでおり、各国が知恵を絞っている。 今後、重要となるのは、市場実務家、金融機関、シンクタンク等の重層的な連携で あると考えられる。特に、日本市場の重要性を考えると、日本の発行体企業や機関 投資家などの市場関係者は、率先してアジア金融資本市場の中核としての日本国内 の金融資本市場改革を進める必要があろう。 そして、それに続いて、アジアの社会・経済的発展のためには、域内共通・共同の 市場インフラとして、各国の国内市場の枠を超えた金融資本市場を育成し、市場制度 基盤を整備していくことが必要となる。そのためには、域内共同の金融資本市場を支 える、各国の既存の枠組みを超えたアジア共通の制度システムが必要となる。 例えば、各国国内の金融資本市場にかかわる法制度・税制などのシステムが、 offshore での国際的な証券の発行・流通を阻害しないよう、柔軟でシンプルな制度構 4 築と対応が必要とされる。 また、それらの証券の情報開示と情報登録のためのシンプルなルール。 それと、決済システム。すなわち、(欧州のシステムを利用しなくてもアジア域内で 自己完結可能な)国際的な証券決済システム。 さらに、各国国内市場ではなく共同国際市場で発行された証券のためのリスティン グ、つまりファイリングないしはレジスター(開示登録)を行うための場所(証券取引所 を想定)の整備。 また、域内市場参加者の間の自主的な共同国際債市場取引ルール形成のための 市場参加者による主体的な組織の創設、などである。 こういったことまで含めて、アジアでは、これまで一流発行体による自由な国際的 証券発行流通市場の代名詞であった「(英国とベネルクス3国の連携で、開示書類の 登録・証券決済・発行流通市場などの全体システムが構成されている)ユーロ債市 場」のような、他の国際的証券市場に負けないだけの、アジア独自のソフトインフラの イノベーションが必要となろう。 なお、日本円以外のアジア通貨建ての証券には、基本的に、それらの発行と流通 に際して、自国内のみならず、ユーロ債市場も含めた欧米の外債市場において、さま ざまな制約が存在する。たとえば、ユーロ債市場では、日本円以外のアジア通貨建て 証券は、制度的に発行ができないか、発行が困難もしくは証券決済が遅れるというよ うな障害が存在する。したがって、ユーロ債市場ではできないが、アジア債市場によっ てならコスト的にも劣後せず発行が可能となるものとしての、アジア諸国の発行体の 自国通貨建て債券発行・流通の必要十分な受け皿となりうるような、アジア共同型国 際債市場の創設には、大きな意義がある。 ただし、そこで重要な前提が2つある。それらは、①アジア債市場のインフラは、債 券だけを対象とするのではなく、エクイティ物の証券の発行・流通にも利用可能となる はずであること、また、②これらアジアに構築される共同・共通の国際債市場インフラ は、アジア国籍の参加者だけのものではないということである。世界中の資本市場関 係者にオープンな形の、最も進んだ、世界に開かれた国際的証券市場インフラを構 築する、との前提を、アジアの市場関係者は、忘れてはならない。 域内各国の発行体企業・証券引受金融機関・格付機関、法律家などの市場実務 家、研究者などの主体的な連携による努力の継続は、近い将来、アジア共同の証券 市場に固有の、「アジア・スタンダード」と呼ぶことのできる、共通の市場ガバナンス原 則の確立につながっていくと考えられる。 まさに、域内の代表選手としての日本の市場実務家・市場専門家・政府の責務は 重大である。 5 -アジアボンド市場への構想 わが国をはじめとするアジア各国政府・財務省の主導により、現在アジア開発銀行 を事務局として、アジア債券市場構想とその構築のための具体的検討が進展してい る。そしてそこでは数々の重要な成果が現れてきている。韓国提案のアジアボンド・ス タンダード1はその重要な成果であるといえよう。 そこで指摘された市場インフラや起債手続き等の整備に関し、今後、具体的かつ 実現可能性の高い、優先順位の高い特定の分野についての独自の提言を、市場実 務家中心のグループで行うべく、NIRA 研究プロジェクトは実施された。 以下に、これまでに抽出された問題意識と検討のポイントを挙げる。 ¾ 問題意識と検討のポイント: 1. アジア債市場を、英国とベネルックス 3 国を中心に隆盛を誇っているユーロ債市 場のアジア版のようなものとして、ユーロ債市場の自主ルールの基本(IPMA2を 引き継いだICMA3ルール)を共有しつつ、アジアの市場関係者自身の手で、アジ ア独自のものとして構築することはできないか。 2. 発行市場および流通市場のすべてにわたっての大構想を考えるよりも、まずはよ り身近で現実的な、重要性・必要性の高いアジア債の発行市場にかかわる問題 点を集中的につぶすこととしてはどうか。たとえば、アジア各国の国内の金融資 本市場の大きさ、市場参加者の理解度、国内の関連の法制度システムインフラ の整備状況などを勘案すると、日本と韓国が手を携えてこれを行うことに意義が あるのではないか。(日韓ワールドカップの開催成功を想起したい) 3. そのための、日本の市場関係者の役割は何か。官庁・官民の発行体・地域経済 団体・仲介機関・投資家のうち、どのセクターがイニシアティブをとるべきか。(証 券発行という、最初のアクションを起こす、発行体グループの重要性が大きいの ではないか) また、その中で仲介機関、特に国内を越えたアジア金融資本市場 における金融機関の役割をどのように認識するか。 4. 日本に続いて市場規模が大きく、また市場機能の活用について真剣に取り組ん できている韓国は、日本にとって重要なパートナーとなるが、その韓国にとっての 1 (参考) 2005 年 5 月 4 日イスタンブールに於ける ASEAN+3会議で合意された新しい検討課題。 1.アジア通貨バスケット建債券の研究 (ABMI ロードマップにおける日本提案) −域内で共通の債券発行単位をもつことにより、域内全体としての規模の利益を追求。 2.メンバー国による自己審査 (ABMI ロードマップにおける日本提案) −市場参加者から指摘された、アジアの債券市場における投資等に対する障害について、各国が自己審査を実施するこ とを通じ、より user-friendly な債券市場育成を目指す。 3.アジアボンド・スタンダード (韓国提案) -東アジア債券市場における市場インフラや起債手続き等の整備において、東アジア地域の国際債券市場の育成、及び、 そのための基準の設定に関する長期的な検討を行う。 http://asianbondsonline.adb.org/documents/Asian_Bonds_Standard_2005_May.pdf 2 IPMA: International Primary Market Association ICMA: International Capital Market Association 3 6 制度的制約・プロジェクトの阻害要因は何か。 5. 具体的検討のポイントとしては、次のような項目が特に重要と考えられる (詳しく は、以下に添付の「アジア共同国際債(アジアボンド)発行市場へのロードマップ」 表参照) 。 ① アジアの発行体とアジアの金融機関などで構成される、(最初の時点ではア ジアボンド発行のための、民間主導の発行市場創設に向けた)資本市場関 係者の推進母体「CMAA:Capital Market Association for Asia」の設置を検討 する必要がある。 ② ユーロ債型の共同国際債(国内市場で発行されないインターナショナル債)と してのアジアボンドの発行手続きとシンディケートのルールのあり方をどう考 えるか。 ③ アジアボンドの発行にかかわる法制のあり方(どの国の法制かも含めて)は どうあるべきか。日本の外債(アジアボンドを含む)の発行体は日本法準拠 が可能であることが、ここへきて確認された。すなわち、 Made in Japan の国 際債(外債)を作るために、会社法上の社債の社債管理者必置原則は、会社 法上の社債4と構成しない選択肢を含めることによって、制約とはならない。 また、韓国の発行体は韓国法準拠が可能か? そのほか資本規制などに問 題はないか。 それら韓国法制上の制約は何か? またその解決方法は? ④ ユーロ債型の国際債としてのアジアボンドの証券決済と決済インフラのあり 方をどう考えたらいいか。欧州の決済システムを用いずとも国内債とみなさ れない、アジア域内におけるユーロ債型の共同国際債のつくり方をどのよう に構想するか。 今回、一つの構想提案として、Dual Core Asian International CSD のアプロー チを提言する。これは、欧州ユーロ債市場における、国際債としての認知を 受けるための、ユーロクリア(ベルギー)とクリアストリーム(ルクセンブルク) という、2 つの国際的証券決済機関の利用のされ方からヒントを得た。 Dual Core Asian International CSD とは、日本の居住者による国際債の発 行の場合に、例えば韓国の CSD を国際的証券決済機関(ICSD)として使い、 一方で、韓国居住者など日本以外のアジアの発行体による国際債の発行の 場合に、日本の CSD(保振機構、その他)を国際的証券決済機関(ICSD)とし て使うことを指す。 ユーロ債市場におけるユーロクリア(ベルギー)とクリアストリーム(ルクセン ブルグ)の2大決済機関のように、この 2 つの、アジアの異なる国に存在する 証券決済機関を、「2 つのコア(Dual Core)」の ICSD として使うことで、欧州 の2大決済機関に頼ることなく、アジア内で発行・流通を自己完結的に行うこ とのできる共同国際債市場創設が可能となると考えられる。 ちなみに、英国居住者発行の債券が、ユーロクリアかクリアストリームで決済 されれば、その債券は英国の国内債ではなく、ユーロ債(国際債)として認識 される。ベルギーの居住者発行の債券は、ユーロクリアではなくクリアストリ ームで決済されてはじめてユーロ債として認識されることを想起したい。 4 社債について、「この法律の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、第 676 条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるもの」との定義規定を設けた(会社法2条 23 号)。 7 ⑤ 非国内・国際債市場においては免除されるべき、源泉徴収税など、アジアボ ンド市場における関連の税のあり方をどう考えるか。 ⑥ 非国内・国際債であるアジアボンドにかかわる情報開示と開示書類の登録 (レジスター、ファイリング、ないしリスティング)のあり方をどうするか。(たと えば、アジアとの接合点としての大阪証券取引所の活用という考え方はどう か?) ⑦ 国際証券引受・社債管理・総合投資運用管理(グローバル・カストディ業務)な どに関する、日本とアジアの金融機関の役割の再認識と再確認が必要では ないか。 <注:各種の国際債の定義と説明> ユーロ債とは、通貨としてのユーロ圏内で発行された債券を意味しない。特定の 通貨建てで、その通貨の国内市場以外で発行される債券をいう。 すなわち、域内各国の国内で登録されない債券である。国境を越えて証券決済 が行われ、通常、国際的なシンディケート団などによって国際的に取引される債券 を指す。円建てなら「ユーロ・円債」、ドル建てなら「ユーロ・ドル債」、EU 通貨のユ ーロ建てならば「ユーロ・ユーロ債」という。 ユーロ債市場は、これまでは、各国通貨当局のコントロールが及びにくかったの で、規制の少ない自由な市場であった。 (しかしその自由なはずのユーロ債市場も、EU という巨大国家的領域を対象とする 「EU 規制」が生み出されつつあることで、それら規制の対象となり始めていることから、 欧州域内というある種国家的規制の枠組みの中で発行・流通する、一種の国内債的な 債券となりつつあるとの見方もある。但し、その評価を現時点で軽々に行うことはできな い。なぜなら、現在の EU は、国家を超えたひとつのコスモスを形成しようとしており、そ こで機能するユーロ市場に対して、そのより健全な発展のためのコスモスの次元からの 規制が加えられることは、官民協力の方向である限り、必ずしも否定的に考える必要は ないとの見方もできるからである) それに対して、各国内において、その国の通貨建てで非居住者が発行する外債 を、日本市場で発行されるものを「サムライ債」、米国市場で発行されるものを「ヤ ンキー債」と呼ぶ。 これまでは、ユーロ債とこれらの外債をあわせて、国際債と呼んできた。 これに対して、起債が行われる国の居住者によって発行される通常自国通貨建 ての債券であって当該国内で払込・利払い・償還などが決済されるものを国内債と いう。 アジア債ないしはアジア共同国際債(アジアボンド)は、上記の定義上からは、自 由な市場を前提としてきた本来的な意味におけるユーロ債と同一のものであり、国 際債の一種であるが、アジア域内の共通・共同の非国内債市場において、より自 由に、かつ域内自己完結的に、アジアの自国通貨建てなどで発行・流通を行うこと のできる債券を指す。 8 (なお、ここまで進んできた、上記の EU の流れを、アジアにおいてもポジティブに 受け止めて、むしろ一足先に取り入れることで、アジア債の場合には、民間の努力 を中心に置きながらも、他方で EU 規制に似た方向での関係国の官から民への協 調をも促す方向へアジア各国を説得する材料として使うということもあり得ると考え られる。すなわち、「アジアの関係各国のいずれからも非国内市場(offshore)的で あるものの存在」を想定した上で、そこでの協調的規制を考慮するという類の問題 として認識することができよう。詳しくは、P.20 共通通貨単位に関する若干の補足 参照) (参考) ユーロ市場とは、現在ユーロの統一通貨が流通するユーロ市場またヨーロッパ ではないことは誰でも知っていることであろう。しかし法律的に、「ユーロ市場とは 何か」と聞かれると答えられる人は少ないと思われる。法律的には、ユーロ圏を 含む世界の先進国にはそれぞれに一般投資家保護のための法規制があるが、 その法規制が免除された市場である。 大 ざ っ ぱ な 言 い 方 を す れ ば 、 日 本 に お い て 、 適 格 機 関 投 資 家 ( Qualified institutional investors)に対する私募(Private placement)は、証券法上、金融庁 に対する届出(これも投資信託のみに要求される)だけででき、国内の適格機関 投資家のうち指定金融機関(Designated financial institutions)とされるものに対し ては、外国証券業者が国外から自由に勧誘ができるとされている。 自由化が進んでいる先進国の市場では、日本の適格機関投資家よりも一般的 にもっと広い定義をもつ先進国のプロの投資家については、それぞれの自国法 による規制を外している。そのようなプロの全世界的横串マーケットであるという のが、法律上のユーロ債市場といえるであろう。投資信託はプロの投資家であ り、一般個人投資家は投資信託等を通じてユーロ市場に参加する。 (松本啓二著「クロス・ボーダー証券取引とコーポレート・ファイナンス」金融財政 事情研究会、2006 からの当該部分抜粋) (犬飼 重仁) 参考文献: • "KEIO-NIRA" アジア資本市場研究フォーラム 議事録 (2003 年 10 月 18-19 日) http://www.nira.go.jp/newsj/kanren/150/157/index.html • 「邦銀はアジア債券市場育成に主体的な関与を−域内で資金が還流する仕組みが必要−」(慶応大学吉 野教授と犬飼との共同執筆), 『週刊金融財政事情』, (2004 年 1 月 19 日号) http://www.nira.go.jp/newsj/kanren/130/135/002.pdf • 「東アジア域内共通の金融資本市場構築への課題」 中国経済サミット 2005(北京市人民大会堂)におけ る犬飼重仁講演 (2005 年 5 月 24 日) http://www.nira.go.jp/newsj/kanren/150/159/keizais.html (日本語・英語・中国語のプレゼンテーション 資料) • 「JERI Report: 東アジア共同債券市場構築の必要性」 犬飼重仁 (原文: 韓国語) 『韓国中央日報』, (2005 年 11 月 18 日) • 「特集 邦銀の復活?: タテ割りから顧客サービス志向の組織体制へ変革を」 犬飼重仁 『週刊金融財政 事情』 (2005 年 11 月 28 日号) • 『クロス・ボーダー証券取引とコーポレート・ファイナンス』 金融財政事情研究会刊 松本啓二著 2006 年 9 アジア共同国際債(アジアボンド)発行市場へのロードマップ提言 下の表(ロードマップ)は、日韓の専門家による議論と 2006 年 3 月 27 日の NIRA-ADB 共同フォーラムでの討論を踏まえ、できるところからやっていくとの発想の もとで、(流通市場についての構想はさておいて)まずは発行市場のグランドデザイン の骨格案として、整備すべき市場のソフトインフラを、時系列に沿って纏めたものであ る。 Road Map to the Asian Bond Primary Market5 Category (提言の要素項 目) Present (現在) Y2007 (日本・投資サービス法施行予定年) ① Issuing Procedure (発行手続) ICMA(ユーロ債 市場における 市場協議会) Syndicate rule ( 募 集 ルール) ③ Governing Law (Issuing) (発行準拠法) Eurobond syndicate (ICMA) English law (Made in the U.K.) 日本では 商法上の制約 が存在したこと で、93 年以降こ れまで、すべて 英国法準拠で 発行されてき た。 Euroclear(ベル ギー・ブラッセ an Asian self-regulatory organization (自主ルール策定団体) →Creation of CMAA 6 (JCMA 7 を母 体として創設) (当初は、アジアの発 行体及び発行市場の協議会としての 位置づけから出発する) Asian bond market primary standard ((ICMA)ベースのモデルを作成す る) Asian country law8 ・ 外債であるアジアボンドに関して は、日本法準拠が可能となること が確認された (Made in Japan) ・ OECD 国である韓国法の可能性 要検証 ・ シンガポール法他 (ユーロ債市場でも、先進国発行体 は母国法準拠が一般的慣行) ② ④ Settlement (証券決済) Dual Core9 Asian international CSD (ただし早期実現のための現実解と 5 Y2009 (日本版金融サー ビス市場法施行の 目標年) Harmonization by legal enforcement + CMAA Asian bond market primary standard Asian country law Dual Core Asian international CSD 流通市場のルールのあり方については、発行市場の発達に応じて、追って別途検討を要する。 アジアの資本市場にかかわる協議会:(CMAA:Capital Markets Association for Asia) 7 日本資本市場協議会 (JCMA:The Japan Capital Markets Association) 8 「クロス・ボーダー証券取引とコーポレート・ファイナンス」 金融財政事情研究会刊 松本啓二著 (2006) 参照。 9 Dual Core Asian international CSD とは、日本の居住者による国際債の発行の場合に、例え ば韓国の CSD を国際的証券決済機関(ICSD)として使い、一方で、韓国居住者など日本以外の 発行体による国際債の発行の場合に、日本の CSD を国際的証券決済機関(ICSD)として使うこと を指す。ユーロ債市場におけるユーロクリアとクリアストリームの2大決済機関のように、この 2 つ のアジアの異なる国に存在する証券決済機関を、「2 つのコア(Dual core)」の ICSD として使うこと で、欧州の2大決済機関に頼ることなく、アジア内で発行・流通を自己完結的に行うことのできる共 同国際債市場創設が可能となる。 6 10 ル), Clearstream(ル クセンブルグ) Exempt して、カストディ利用のアプローチも 考えられる) ⑦ Disclosure (Filing) (証券内容 の開示) Securities exchange (Mostly LSE, Lux) ⑧ Electronic Disclosure (電子的開 示) Documentat ion ( 発 行 要項など関 係書類) Credit Rating (格付け) Introduced by each country Exempt, based on the use of the above International Settlement (to be confirmed) Harmonization of some accounting standards (国際標準との間に差異 がある場合は、それを明記することで 対応可能) Asian Major Securities exchange ・JPN (For instance, Osaka Stock Exchange) ・KOR (KRX) ・SGP (SGX) Harmonization of regulations, Linkage with EDINET10 with XBRL Use Eurobond (ICMA) form Develop Asian bond form (JCMA+CMAA がモデル案作成) Market practice, Market judgment Market practice, Market judgment (市場慣行による。日系格付機関の 利用を含む) ⑤ ⑥ ⑨ ⑩ Withholding TAX (源泉税) Accounting Standard (会計) Decided by bond issued country Exempt Harmonization accounting standards of Securities exchange (JPN, KOR, SGP, etc.) Harmonization of regulations, Linkage with EDINET Use Asian bond form Market practice, Market judgment なお、ADB で検討中のアジア通貨のバスケットによる債券計算単位(ACU)の 検討の将来の進展をにらんで、せっかくの前向きの取り組みをより実りあるも のとするために、たとえば、ACU 建ての債券先物市場や通貨先物市場の創設を(た とえば日本の大阪証券取引所など)域内の投資取引所で行うなど、合わせ技の 取り組みで、アジア共同国際債(アジアボンド)市場をより使い勝手の良いも のとする努力が、そこには欠かせないとも考えられる。 10 投資家のために金融庁が行政サービスの一環として運営・提供する電子的な情報開示のため のネットワークシステム。『証券取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示 システム』のこと。 11 「アジア共同国際債(アジアボンド)発行市場へのロードマップ」 提言の中の主要3項目の説明 <以下、個別説明参照> I II III アジア資本市場協議会(CMAA)設立構想 アジア国際債市場創設に関する法制実務上の留意点 Dual Core Asian International CSD フレームワーク Ⅰ アジア資本市場協議会(CMAA)設立構想 EU 統合指令以前から隆盛を誇る国際・非国内(offshore)債としてのユーロボンド 市場が、EU 統合指令後にオンショア化が進むと見込まれる事に鑑み、従前ユーロボ ンド発行市場を利用してきたアジア各国発行者にアジア域内引受業者を加えたメン バーを中心に、アジア開銀ならびに米欧の金融機関の支援も得ながら、アジア各国 の国内市場に対するアジア域内共同国際債市場として Asian Offshore Capital Market を構築発展させる。 各国国内市場における規制との関係においては、共同国際債・非国内債 (offshore)市場としての位置付けを当初から明確にして、各国規制当局間の協力・協 調を得ながら各国国内法対応を行うとした場合の摩擦を回避しつつ、域内でオンショ ア−オフショア間の資金循環を阻害しない構造の確立を狙う。 アジア共同国際債市場においては、従前のユーロ債では取り扱えなかったアジア 通貨の共同国際債券発行の登竜門として位置付けられ、アジア・タイム・ゾーン内で の約定・決済のメリットが追及される。 アジア各国国内市場の成熟度・市場の厚みおよび各国国内業者の発展度を鑑み、 発行(起債)市場にかかるルール・市場慣行の形成(発行手続き、シンディケートのル ール、情報開示と開示書類のファイリングおよび公示のあり方)などを決め、アジア共 同国際債発行市場創設を推進する主体としての Capital Markets Association for Asia (CMAA)を創出するに際しては、ユーロ市場での起債経験が豊富なアジア域内発行 者を中心に、アジア各国主要業者ならびに域内外のクロス・ボーダー取引に秀でた国 際的証券業者がアドバイザーとして参加する形が望ましい。 当初のスタートを引受業者のみとせず、むしろ発行体主導での母体設立とするの は、長期産業資金ニーズに基づく調達の場としてのアジア共同国際債市場を想定し ていることと、アジアの債券流通市場での活発なセカンダリー育成には、かつての NTT に始まる日本の社債市場改革の経験からも、資本市場ユーザーとしての発行体 のリーダーシップと協力が必要と考えるからである。特に流通市場の形成に関しては、 12 本来市場取引の仲介者・金融取引の媒介者である証券会社・投資銀行にとって、自 ら買い向かい・売り向かいして自己ポジションを取るリスクは避けられるに越したこと はないので、結果、流動性の小さい市場の発展・育成には日本の社債市場改革を見 るまでもなく、発行者の強いコミットメントとリーダーシップが必要となる。 母体としては、2003 年 10 月に東京で NIRA と日本資本市場協議会(JCMA)が主導 的な役割を果たして創設された Asian Capital Markets Study Group を本年中に発展 的に再編成し、それにアジア各国の主要な証券業者、および若干の域内外のクロス・ ボーダー取引に秀でた国際的証券業者がアドバイザーとして参加する。 具体的には、ユーロ市場での起債経験が豊富な各国主要民間発行者が Asian Offshore Capital Market のユーザーとして、ユーザー・フレンドリーな市場慣行の枠 組みを提唱し、アドバイザーとして参加する証券業者が助言および指導を行い、引受 参加者にとっても受け入れられる制度設計を目指す。 制度設計に向けては、少なくとも以下の5つの部会を CMAA 内に設置し、それぞれ が担当分野における提言・勧告に向けた検討を本年末までに開始し、第一次レコメン デーションを Road Map にあわせ 2007 年末までに発表することを提言する。 1. 2. 3. 4. 5. 開示(Disclosure)部会 準拠法・引受契約(Legal and Documentation) 部会 シンディケート・ルール(New issue practice and syndication rule) 部会 決済部会(CSD との合同部会: Clearing & Settlement)) マーケット・メーキング・ルール(Market Practice) 部会 これらの検討に際しては、IPMA(現 ICMA)の Recommendation を参考に詳細を詰 めてゆく。 ¾ IPMA を参考とした場合の CMAA の位置付け(案) An organization concerned with new issue procedure including disclosure in the Asian Offshore Capital Markets, but it will not be an exchange, nor a regulator empowered by statue. CMAA s rules take the form pf recommendations, which will be based on the general agreement of the major participants in the Asian Offshore Capital Markets. This agreement is to be secured by a philosophy of consensus among issuers and underwriters. CMAA will have no power to sanction and members are free to waive any particular recommendation when launching an issue. CMAA will mandate from its members is to facilitate the operation of the Asian inter-region / cross border markets. Factors in the smooth functioning of the markets may involve legal or documentation questions, best market practice, clearing and settlement, regulation, disclosure or others. 13 域内共同国際債市場における各国主要業者の成長および市場の発展とともに将 来的に Asian Capital Market Dealers Association アジア証券業協会が別途形成され、 発行者の会であるアジア資本市場協議会と車の両輪で市場振興機能を果たすことは 十分想定されることであるが、それまではCMAAがいわゆる自主規制団体として機 能することを想定。 ¾ 実務上の課題 ・ 域内外クロス・ボーダー取引経験 → 日本の業者が殆ど ・ 流動性 (域内各国内引受業者の資本力、資金調達力、トレーディング能力等の差) ・ 域内各国の国内金融証券市場の厚みの差 ・ 証券取引環境の違い: ユニバーサルバンキング → 日韓以外 = Non OEC 銀証分離 → 日韓 = OECD IMF 4 条国、8 条国 → 外貨取引規制, 外貨建証券取引規制の違い (鈴木 裕彦) Ⅱ アジア国際債市場創設に関する法制実務上の留意点 1.日本における外債の出発点 (1) 国内債 社債権者保護: 社債管理会社と日本の裁判所の監督の下の社債権者集会 社債管理会社は発行会社が任命するものであるが「社債権者のため善管義務 (Duty of Good Manager)にもとづき公平且誠実に社債の管理を為す義務を負う」 新会社法では、その内容をもっと明確にし、「弁済の受領、債権の保全その他の社 債の管理」としている。 この考え方は、歴史的には社債は一般の投資家が取得するので、銀行預金と同じ く元本が事実上保証されるべきものであるとの考え方にもとづいていた。その結果、 事実上はメインバンクの融資の Refinance 的な機能が歴史的な出発点であった。 (2)外債 外債はそれに対し、社債権者保護のうえでは、社債権者の自己リスク原則にもとづ く欧米の発行地の制度に従うというのが国際的な考え方であり、日本もそれに従って きた。 2.1993 年改正商法 社債発行限度の廃止と引換に、社債管理会社の設置は強制設置とされた結果、 外債の準拠法は、全部外国法になった。社債管理会社の重い義務に伴う Fee が高す 14 ぎるので、その Fee の安い英米型の Trustee(受託者といっても権利はあっても義務 はない) & Paying Agent もしくは Fiscal Agent(単なる発行体の支払代理人) または ドイツ・スイス型の発行者と社債権者の相対方式が用いられた。 3.本年 5 月施行の会社法 (1)法務省の立場 本年 5 月施行の会社法においては、社債の定義(会社法2条 23 号)が設けられ、 会社法の規制に従って、割当および償還が行われるもののみが社債とされ社債でな い債券の発行も認められた。 (2) 実務の対応 発行会社にとって、社債は、多数者からの多額の借入に過ぎないが、同じ債務で あっても劣後関係(Seniority)があるので、その点は明確にされる必要がある。 多方、外債に社債の管理者を用いると Fee が高くなるので、それを用いないことと すると、外債は一部の例外を除き、会社法の社債の定義に基づかないで発行される こととなり、会社法上の社債でなくなる。 従って、外債は、「社債同順位外債」といった名称で発行されることになろう。 社債でなければその発行のための取締役会の決議が必要でなくなるが、この点は 裁判所でなく法務省の解釈に過ぎないので、法的安全のため社債と同様、取締役会 の決議で授権することになろう。(やらないでよいことを念のためやっても害はないし、 代表取締役に対する包括授権の制度は既に認められているから実務上も困らない からである。) 対外的には、社債の名称が用いられるであろう。既存の外債の Negative Pledge 条項や同順位(pari passe)条項や国際的整合性が必要であるからで ある。 4.源泉税 日本の民間国外債については、それが非居住者に保有されるものについては、利 子についての 20%の源泉税が免除されている。その根拠となる時限立法である租税 特別措置法は「平成 20 年 3 月 31 日までに発行された民間国外債」についての免除」 について規定されている。国税庁から3.(2)の外債も民間国外債に含まれるとの確 認を得ている。 5.新会社法のもとにおける日本の発行体のアジア国際債 予想される発行は、普通債、転換社債型新株予約権付社債となろう。 普通債の場合、Fiscal Agent 方式による社債同順位外債、または各社債の金額が 1 億円以上である場合の社債の管理者強制設置規定の免除(会社法702条)にもと づく発行になろう。 転換社債型新株予約権付社債の場合、1 億円以上というのは実務に合わないので、 社債同順位外債に新株予約権をつけたものになろう。 準拠法については、社債管理者のないものは、国内債であっても国外債であって も社債ではないとの法務省の見解にもとづき、よりコストのかからない日本法準拠法 ということになろう。 15 6.日本の投資家 アジア国際債を購入する日本の投資者は、サムライ債のような一般の投資者でな く、ユーロ市場と同様のプロ=適格機関投資家(Qualified Institutional Investors:QII) になる。QII の範囲は新金融商品販売法で拡張される予定である。QII 以外の投資家 に 販 売 す る 場 合 に は 、 日 本 の 証 券 取 引 法 に よ る 有 価 証 券 届 出 書 ( Securities Registration Statement)の提出と目論見書(Prospectus)の使用が必要となるからで ある。 (松本 啓二) Ⅲ Dual Core Asian International CSD フレームワーク <To Be Model>と<Can Be Model> 1.コンセプト 日韓が相互協力の下、既存機能を最大限活用し、実現性の高いフレームワーク を構築する。当該フレームワークは、安全かつ効率的でコスト競争力ある決済サ ービスを Asian Bond (Primary) Market に提供する。 2.基本スキーム <To Be Model> (1) 日本・韓国それぞれが自国の発行・決済システムを整備しつつ、相互協力の下、 早期に共同国際債市場インフラを利用可能とするフレームワークを構築する。 <日本企業の Asian Bond 起債例> 発行会社 (代理人契約等) FA・登録機関 Dual Core 韓国 KSD(NCSD) 保振機構(NCSD) (買取引受契約) 口座 記帳の流れ 口座 引受主幹事証券 口座 口座 カストディ (引受証券) 日本投資家 (韓国投資家) 購入 日本投資家 NCSD: National Central Securities Depository その国を代表する証券集中預託機関 ① 発行体は相手国で発行体の属する自国法を発行準拠法とする起債手続き を行う。 ② 相手国の NCSD(証券集中預託機関)を現地預託機関として利用。 9 日本企業であれば韓国 KSD を現地預託機関として発行。 16 ③ 現地預託機関たる相手国 NCSD と自国 NCSD のリンクにより、自国投資家 が通常の国内社債と同様にローコストで当該債券を決済できる仕組みを 目指す。 9 自国投資家は自国 NCSD を経由して当該債券を取得。 ・ 日本においては、外国株券振替制度と同様に自国 NCSD(保振機 構)が海外預託機関(NCSD 等)に直接リンクするイメージが考えら れる。 9 相手国投資家も相手国 NCSD を通じ当該社債を購入可能。 9 両国の NCSD が Dual Core となり、 Virtual な International CSD (国際的な証券集中預託機関)を構成するイメージとなる。 9 まず、発行企業と投資家層に比較的厚みがあり、決済インフラの整備 が進みつつある日本と韓国が Dual Core として互いに協力し、アジア 債券市場の決済インフラ整備の具体化を目指すことを検討する。 ・ 日韓以外のアジア諸国発行体にもインフラを開放することが前提。 (但し、決済リンク整備の関係で投資家は日韓が中心となろう) ・ 両国の NCSD は、IT、制度、ビジネス等で連携を一層強化するとと もに、制度およびシステム改革によりサービスレベルの向上をはか り、国際的に通用する NCSD を目指すことが必要(政策的取組み が必要)。 9 実現可能性にかかる下記の点について検証が必要 ・ 他のアプローチ(後述の代替策等)と比べ、中期的視野で優位性 はあるか。NCSD として先行投資が可能か。 ・ 両国 NCSD に企画推進、システム開発のマンパワーはあるか。 (特に、保振機構が現時点で国際的な展開に取組むことが可能 か) <Can Be Model> (案 C が現実的かつ望ましい姿と考えられる) (2) 上記アプローチが早期実現困難と判断される場合、下記代替策( Can Be Model )により決済インフラを段階的に発展させ、 To Be Model (上記アプロ ーチおよび Asia Settle 等)に繋げていくことが考えられる。 ① 案 A:市場関係者(含発行会社)の出資等により、新たな限定目的 CSD を 設立しシステムを構築。 9 コストに見合う取引を確保できる見通しがあるか。経営を軌道に乗せ ることは容易ではないと考えられるがどうか。 9 商品横断的標準インターフェイス(照合・決済システム等)の利用が出 来ないと、参加者の使い勝手・コストに影響が出てくるのではないか。 ② 案 B:決済はユーロ債と同様とする(International CSD 利用)。 9 通常のユーロ債と同様に ICSD(ユーロクリア等)で集中決済を行う。通 17 常のユーロ債と同じであるため、別途、イニシャルコストはかからな い。 9 国内取引の使い勝手はユーロ債と同じ。域内の発行流通市場を前提 とすると決済インフラが遠隔地となり非効率的。「アジア域内で自己完 結可能な費用対効果の高い国際債市場の創設」というコンセプトにも 繋がらない。 9 韓国レポートが指摘するように、資金決済にかかる時差の問題、ICSD のアジア通貨の適用範囲の狭さが問題になると考えられる。 通常の国内債の例 一般的なユーロ債の例 CSD 口座 X ICSD 口座 Y 口座 X 決済 カストディ X 口座 Y 決済 欧州 照合シ ステム 国内 カストディ X 投資家 A 証券会社 Y 投資家 A 取引 証券会社 Y 取引 ③ 案 C:大手カストディ銀行(Asian Trustee)が現地預託機関(現地 NCSD 等) にリンクし決済機能を提供(競争原理による集中化を期待)。 9 カストディ銀行のビジネス戦略やフィー次第となるが、アジア地域にこ のようなビジネス展開を目指すカストディが現れるかどうか。 9 将来、NCSD 同士の努力により Dual Core Asian ICSD アプローチが 現実となった場合には、そのまま大手カストディとして活躍可能。 9 なお、NCSD が Asian Trustee となり現地預託機関と直接リンクすること も考えられ、これが日韓の場合、上記 To Be モデル となる。 起債例 NCSD 相手国 口座 X ※NCSD の直接参加者とならない 場合はサブカストディ経由 (現地法人経由※) Asian Trustee “X” 投資家 A 取引 日本 証券会社 Y ※Asian Trustee X は仲介業者および投資家をできるだけ顧客 とすることが必要。Asian Trustee が複数となる場合の跨る決 済は NCSD レベルでの決済が発生し効率が低下する。 2.その他 (1) 証券決済にかかる法律関係 ① 証券決済の準拠法は、日本では法例 10 条の適用により物権所在地法とな る。ヘーグ条約批准後は、投資家の属する口座管理機関が属する国の準 18 拠法を(口座契約に従い)適用可能(現状の混蔵寄託法理を適用)。 9 韓国等における外国証券決済法制については、要確認。 ② アジア諸国において、証券決済の各国実質法の標準化をはかっていくこと が望ましい。( UNIDORIT=私法統一国際協会 の動きをフォロー) (2) その他検討すべき論点 ① 上記共同国際債も、 Dual Core Approach 等により国内 NCSD を利用可能 であれば、国内債同様に中央銀行の適格担保証券としていただき、中央 銀行による担保貸付制度が利用可能となることが期待される。 ② 流動性の高い銘柄は各国 CCP(清算機関)の取扱対象とすることも考えら れる。 9 CCP における債務引受・ネッティングによる、カウンターパーティ・リス クの軽減、および資金流動性節約効果を期待。 9 日本においては、独立 CCP である JGBCC の国内取扱銘柄の拡大が 考えられる。ただし、上記共同国際債が保振取扱対象であることが必 要。 ③ いずれのアプローチにせよ、カストディ( Asian Trustee )の発達を促し、国 内証券・外国証券の預託取扱を拡大・集約させることが望まれる。 9 日本においては、一般債振替制度の実施により、カストディ利用が拡 大中。 9 カストディ銀行において、決済資金の流動性調達が行いやすい枠組み を検討すべき(決済対象証券の円滑な担保利用スキーム、オフセッテ ィングによる流動性節約スキーム)。 9 預託証券のレンディング・サービス、トライ・パーティ・レポ等の拡充が はかられれば、市場の厚みを増すことにも繋がる。 (吉田 聡) 19 共通通貨単位に関する若干の補足11 今回提言したアジア共同国際債については、各国の国内法的対応の問題へと 重点を傾斜させることは極力避け(伝統的な国別の対応の手法ではカードが限 られる)、関係国のいずれからも非国内(offshore)的で独立した市場の存在 を考えた上で、EU規制に似た方向での東アジアの関係国の官からの協調を招き 込む方向も、いずれ検討に値すると考えられる。 そして、その場合には、東アジア諸国における為替レートが安定すれば、い ずれ民間が活用を考えるであろう、2005年にNIRAが提言した東アジア共通通貨 単位(EACU12)の支配する、共同国際債(offshore)的な超国家的市場の育成が念 頭に入ってくるであろう (1980年代初頭にヨーロッパの銀行が案出したユー ロ・チェックの銀行間の決済が、EMSの下での為替レートの安定に支えられて、 相互にECUでなされるようになっていったことを想起したい)。 いずれにしても、近い将来の民間による共通通貨単位の活用が支配しうるよ うな状況の発生は、国家を超えたアジア債券市場の展開への重要な支援になる と思われる。 (曽野 和明・犬飼 重仁) 11 本「共通通貨単位に関する若干の補足」の記載については、インド・ハイデラバードにおける地域通貨単位の 研究に関する日中韓財務大臣声明及び ASEAN+3 財務大臣声明における合意とは、全く無関係である。 12 NIRA Market Governance Report 2005 包括的・横断的市場法制のグランドデザイン 第 2 部 補章2.4 「東 アジア自由証券(債券)市場」創設構想 提言 1.東アジア経済共同体の発展のためには域内金融資本市場の発達が欠かせない。そのためには日本など域内 の市場参加者のレベルアップが欠かせない。 2.金融機関及び機関投資家の世界における、バイサイドの未熟、および陳腐化したままのセルサイドが、日本の 金融資本市場の改革を拒んできた。世界の舞台で活躍できる金融のプロをもっと育て、これを克服する必要があ る。 3.日本を中心とする東アジアは、域内の発展と競争力確保のため、ユーロ債市場型の自由市場を積極的に作り 出すことが可能な状況となりつつあり、自由証券市場はプロの育成と鍛錬の場ともなる。ここに東アジア自由証券 (債券)市場の創設を提言する。 4.オンショアとオフショアの両市場一体型オフショア市場としての自由証券(債券)市場の創設への障害はいまや 乗り越えられないほどの高い壁ではない。しかし、それを取り除くために誰も動いていない。このままでは日本の 金融資本市場、東京国際金融市場は、巨大なローカルマーケットのままでその命を終えてしまう懸念なしとしな い。 5.その際、自由証券(債券)市場では、経済共同体としての姿を示しはじめた東アジアにおいて、発行体も投資家 もその主軸は東アジア諸国のメンバーであるとの想定が可能であり、彼らの必要性と利便性を考慮した金融商品 の出現が待たれる。 6.為替レートの予期せぬ変動のリスクの緩和を目指し、アジア通貨相互間での安定した為替レートの定着を求め つつ、人民元のレートの適切な調整が行われるタイミングをトリガーとして、その後の実施を想定して、円と元とウ ォンなど東アジアの主要通貨によるバスケットを創出し、この共通の計算単位を活用したアジア債券の発行流通を 可能とさせる方向での検討をはじめることを提言する。これを債券計算単位としての《仮称》東アジア通貨単位 (EACU, East Asia Currency Unit)と呼ぶこととする。なお、この計算単位の創出は、為替取引自由の理論的世界 では、これは一種の為替取引上の合意として市場関係者の合意で創出できる性格のものでもある。 7.明確な到達目標として、東アジア自由証券(債券)市場創設のヴィジョンを持ち、乗り越えるべき諸々の問題点 についての議論を活発化させるべきである。 20 2006年3月27日開催 NIRA・ADB共同フォーラム 「アジア共同国際債(アジアボンド)市場への展望」 アンケート結果 フォーラムには約90名が参加したが、以下のとおり、最後に実施したアンケートに 回答した参加者のうちの約4分の3が、提言案の内容に肯定的な見解を示しているこ とは、特筆に値しよう。 よくわかっ た なんとなく わかった 何のことか わからなか った 12 14 4 0 1 31 1 13 4 0 1 19 0 0 0 1 0 1 60.8% 37.3% 1.9% よくわかっ た なんとなく わかった 何のことか わからなか った 8 12 1 1 22 2 16 10 1 29 0 0 0 0 0 43.1% 56.9% 0.0% よくわかっ た なんとなく わかった 何のことか わからなか った 5 7 1 5 0 0 7 7 0 26 51.0% 9 8 1 24 47.0% 1 0 0 1 2.0% よくわかっ た なんとなく わかった 17 31 何のことか わからなか った 3 33.3% 60.8% 5.9% ユーロ債市場型アジア共同国際債 (アジアボンド)市場創設 なんとしても実現すべき 実現した方がよい 国内市場とユーロ債市場で十分 必要ない 無回答 合計 AIPMA(Asian international primary market association)創設 (その後CMAAに名称変更) なんとしても実現すべき 実現した方がよい どちらともいえない 無回答 合計 デュアルコア決済システム なんとしても実現すべき 代替案による方法をまず実現すべ き 実現した方がよい どちらともいえない 無回答 合計 法制実務上の留意点 合計 21 人数 13 27 8 1 2 51 人数 10 28 11 2 51 人数 % 25.5% 53.0% 15.7% 1.9% 3.9% 100.0% % 19.6% 54.9% 21.6% 3.9% 100.0% % 6 12 11.8% 23.5% 16 15 2 51 31.4% 29.4% 3.9% 100.0% 人数 51 % 100.0% 肯定的比率 78.5% 肯定的比率 74.5% 肯定的比率 66.7% 参考資料 2003 東アジア各国債券市場(含む海外発行分)残高内訳 9,000.0 8,000.0 7,000.0 US$ Billion 6,000.0 5,000.0 4,000.0 3,000.0 2,000.0 1,000.0 0.0 日本 韓国 中国 台湾 マレーシア 香港 シンガポール 海外発行 255.2 62.0 12.2 19.7 23.4 50.8 22.1 8.9 国債・公債 6,150.1 124.3 243.0 77.7 40.4 15.5 36.6 30.7 金融機関債 1,224.9 163.0 235.8 1.1 13.4 6.4 2.6 9.5 770.0 157.1 12.2 34.5 44.9 6.4 2.6 9.5 社債 タイ 東アジア各国 国内債券市場残高 総合表 10,000.0 9,000.0 8,000.0 US$ Billion 7,000.0 6,000.0 5,000.0 4,000.0 3,000.0 2,000.0 1,000.0 0.0 日本 韓国 中国 台湾 マレーシア シンガポール タイ 2001 5,753.0 292.7 418.7 82.0 82.7 51.4 36.2 43.5 2002 6,666.3 380.9 480.4 101.5 84.3 55.2 47.3 45.3 2003 8,145.0 444.4 491.0 113.3 98.7 57.5 56.8 44.9 2004 8,866.7 568.3 483.3 125.3 106.6 66.3 64.9 45.9 22 香港 NIRA 東アジア地域の金融市場の一体性確立に向けての戦略ヴィジョン研究会 メンバー一覧 (メンバー・オブザーバーの抜粋) z 学識経験者 神田 吉野 曽野 上村 河村 z 秀樹 直行 和明 達男 賢治 東京大学大学院法学研究科教授 (座長) 慶応義塾大学大学院経済学研究科教授 北海道大学名誉教授・手塚山大学名誉教授 早稲田大学法学部・大学院法務研究科教授 関東学院大学助教授 市場実務家等 吉田 聡 大和証券 SMBC IT 統括部部長(共同部会リーダー) 鈴木 裕彦 バークレイズキャピタル証券会社東京支店 投資銀行本部ディレクター(共 同部会リーダー) 松本 啓二 森・濱田松本法律事務所 特別顧問 辯護士(共同部会特別アドバイザー) 内山 昌秋 トレードウィン(株)代表取締役社長 大崎 貞和 野村資本市場研究所 研究主幹 小森 英哉 スタンダードチャータード銀行 東京支店トランザクションバンキング部長 佐藤 良治 日立キャピタル(株)業務役員社長室長兼法務部長兼リスク統括部長 平岩孝一郎 NTT データ金融ビジネス事業本部金融戦略ビジネス推進室ビジネス企画部長 福島 啓修 オリックス 投資銀行本部金融戦略グループマネージングダイレクター 村上 雅春 NTT データ決済ソリューション事業本部 eB ビジネスユニット eB 商品企画担 当部長 水野 辰哉 フィッチ・レーティングス 格付部門ダイレクター 吉見 享 スイフト・ジャパン Vice President Commercial Division z オブザーバー 柿沼 光宏 飯野海運(株)ステークホルダーリレーションズ調査グループ執行役員 玉木 伸介 元・総合研究開発機構主任研究員(現・預金保険機構財務部) 原田 靖博 (株)格付投資情報センター(R&I)代表取締役社長 平井 一志 中央三井インフォメーションテクノロジー(株)取締役総務部長 藤村 和久 スイフト・ジャパン在日代表 松永 秀昭 日本証券業協会市場本部公社債・金融商品部次長 吉沢 勳 みずほコーポレート銀行カスタマーサービスチーム次長 z 在韓国共同研究者 Gyutaeg Oh z 韓国債券研究所長・Chung-Ang 大学教授 NIRA 研究体制 犬飼 重仁 NIRA 主席研究員・日本資本市場協議会事務局長(チームリーダー) 李 鋼哲 国際研究交流部主任研究員 森 直子 国際研究交流部研究員 松本 高宏 研究開発部研究員(前) 坂東 真弓 国際研究交流部研究員 HYUN SUK NIRA リサーチアシスタント (共同研究者) 中野 広海 企業活力研究所企画研究部 主任研究員 (企業財務協議会・日本資本市場協議会事務局) 23 《総合研究開発機構とは》 総合研究開発機構(NIRA)は、昭和 49(1974)年3月 25 日、産業界、学界、労働界、地方公共 団体などの代表の発起により、総合研究開発機構法に基づいて政府に認可された政策志向型の 研究機関で、官民各界からの出資、寄付による基金で運営されています。 NIRA の主な目的は、平和の理念に基づき現代社会が直面する複雑な諸問題の解明に寄与す るため、自主的、長期的な視点をもって総合的な調査研究を実施することで、その研究の対象は 時代の潮流をとらえつつ、経済、政治、社会、行政、地域、国際などの領域にわたっています。 このために、総合的な研究開発の実施を基本として、研究情報の提供や国内外の多くの研究 機関との交流、研究助成など積極的な活動を展開しています。 会 長 : 小 林 陽太郎 理 事 長 : 伊 藤 元 重 研究評議会議長 : 塩野谷 祐 一 富士ゼロックス株式会社 相談役最高顧問 東京大学大学院 経済学研究科教授 一橋大学 名誉教授 〒150−6034 東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー34階 http://www.nira.go.jp/ 連絡先 Tel.03-5448-1735 Fax.03-5448-1745 企画広報課 本研究提言に関する注記 この研究は ASEAN+3財務大臣プロセス及びアジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)とは直 接の関係はなく、独自・独立の立場で行われたものである。 また、本提言には、内外の関係当局や関係団体と同意した内容を含んではいないし、外部のいか なる団体の見解・意向も反映していない。 24
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