4 地下鉄事業からの財政支援について (「大阪市交通事業中期経営計画」で想定している考え方) (1) 財政支援の必要性 ● バス事業の資金不足比率は、平成19年度決算見込で29.8%となっており、「地方公共団体の財政の健全化に関する法 律」における経営健全化基準(資金不足比率 20%)を既に超えている。 バス事業については、「中期経営計画」に基づき経営改善に取り組んでいるほか、今後さらにバス事業単独での増収対 策やコスト削減に取り組むとともに、本検討会において市営バスサービスのあり方について抜本的な検討を進めているとこ ろであるが、このような状況で推移すると、平成20年度決算以降適用となる同法に基づき、「経営健全化団体」になることが 予想される。 ● 「経営健全化団体」になると、経営健全化計画の策定を求められるほか、健全化の実施状況によっては、国等の勧告を 受けることとなる。 ● このような状況のもと、 ・ 本市交通事業は、地下鉄・ニュートラムを根幹にバスがそれを補完するネットワークを形成していることに加えて、 料金面でも地下鉄・バス乗継割引制度を導入するなど、地下鉄とバスを一体的に運営していること ・ バス事業の赤字の原因の一つが、地下鉄網の整備によるものであること などから、バス事業単独での財務規律の確保を前提に、地下鉄事業からバス事業への財政支援の早期実施を検討する 必要がある。 24 4 地下鉄事業からの財政支援について (「大阪市交通事業中期経営計画」で想定している考え方) (2) 財政支援の法的根拠 ● 地方公営企業は特別会計ごとに独立採算が原則(地方公営企業法第17条の2)であるが、同法第17条の3において、 地方公共団体は、特別の理由により必要がある場合には、一般会計又は他の特別会計から、地方公営企業の特別会計 に補助をすることができる、とされている。 また、同法第18条では「出資」、第18条の2では「長期貸付」をすることができる、とされている。 地方公営企業法(抄) (経費の負担の原則) 第17条の2 2 地方公営企業の特別会計においては、その経費は、前項の規定により地方公共団体の一般会計又は 他の特別会計において負担するものを除き、当該地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てなけれ ばならない。 (補助) 第17条の3 地方公共団体は、災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合には、一般会計又は 他の特別会計から地方公営企業の特別会計に補助をすることができる。 (出資) 第18条 地方公共団体は、第17条の2第1項の規定によるもののほか、一般会計又は他の特別会計から 地方公営企業の特別会計に出資をすることができる。 2 地方公営企業の特別会計は、前項の規定による出資を受けた場合には、利益の状況に応じ、納付金 を一般会計又は当該他の特別会計に納付するものとする。 (長期貸付け) 第18条の2 地方公共団体は、第17条の2第1項の規定によるもののほか、一般会計又は他の特別会計 から地方公営企業の特別会計に長期の貸付けをすることができる。 2 地方公営企業の特別会計は、前項の規定による長期の貸付けを受けた場合には、適正な利息を一般 会計又は当該他の特別会計に支払わなければならない。 25 4 地下鉄事業からの財政支援について (「大阪市交通事業中期経営計画」で想定している考え方) (3) 中期経営計画における財政支援メニュー 項 目 (単位:億円) 20年度 21年度 22年度 21~23年度 23年度 (3年間) 0 18 19 24 61 (ア) 地下鉄・バス乗継割引相当額負担金 →27頁参照 0 5 5 4 14 (イ) フィーダー系運営欠損相当額負担金 →28頁参照 0 12 13 19 44 (ウ) 一般会計分担金相当額負担金 →28頁参照 0 1 1 1 3 ② 出 資 金 →29頁参照 0 53 53 0 106 ③ 借 入 金 →30頁参照 0 0 0 54 54 合 計 0 71 72 78 221 ① 繰 入 金 ( ) 収営 益業 的外 収収 入益 資 本 的 収 入 26 4 地下鉄事業からの財政支援について (「大阪市交通事業中期経営計画」で想定している考え方) (4) 財政支援メニューの考え方及び内容 ①「繰入」について 地下鉄・バスの一体的運営のための財政支援 (ア) 地下鉄・バス乗継割引相当額負担金 ※ 「地下鉄・バス乗継割引」制度とは… バスと地下鉄の乗継利便を高めるために実施している「地下鉄・バス 乗継割引」については、地下鉄・バス事業でそれぞれ50円ずつ負担して いるが、バス事業単体でみれば乗継割引の負担が大きいことから、今後 も地下鉄とバスの一体的運営を維持するため、その割引相当額を地下鉄 事業から繰り入れる。 ・ バスから地下鉄、地下鉄からバスに連続してご利用のとき、 連絡料金を適用します。 ・ バス⇒バス乗継(バス回数券(紙)でのご利用は除く)とあ わせてご利用いただけます。 ・ どの停留所、駅で乗り継いでも適用します。 ※乗り継ぐ途中に他の交通機関をご利用の場合は適用しません。 【単独でご利用の場合】 (負担額の算出方法) 対象年度の前々年度における地下鉄・バス乗継割引相当額のうち、 バスの割引相当額を負担 ◆ 定期券 … 共通全線定期、2事業連絡定期 ◆ 定期外 … 現金、スルッとKANSAI対応カード、回数カード、ICカード ※フィーダー系、コミュニティ系補助の算定に係る分を除く 地下鉄(1区200円) 一般バス(200円) 100円の お得! 【乗り継いでご利用の場合】 地下鉄(1区150円) 一般バス(150円) + ▲50円 = 連絡料金 300円に ▲50円 ※ 図中の料金は大人料金です 27 4 地下鉄事業からの財政支援について (「大阪市交通事業中期経営計画」で想定している考え方) (4) 財政支援メニューの考え方及び内容 ①「繰入」について 地下鉄・バスの一体的運営のための財政支援 (イ) フィーダー系運営欠損相当額負担金 フィーダー系バスサービスについては、地下鉄と一体となった運営を指向しており、市営交通ネットワーク維持の観点から、 フィーダー系バス路線の欠損額について、地下鉄事業から繰り入れる。 (負担額の算出方法) 対象年度の前々年度におけるフィーダー系バス路線のうち、赤字系統の欠損額を負担 (平成18年度は19系統が対象) (ウ) 一般会計分担金相当額負担金 市営バス事業が負担している 「一般会計分担金」相当額について、民営バス事業者と同一の競争条件を確保する観点から、 地下鉄事業から繰り入れる。 ※「一般会計分担金」とは… (負担額の算出方法) 一般会計で支出している経費のうち、大阪市全体の業務に 当該年度における「一般会計分担金」相当額を負担 係る経費を、会計規模等により按分して、交通局と水道局の 企業会計が負担しているもの。 【例】 職員研修や職員採用など統括部局に係る経費 監査に係る経費 市会事務に係る経費 など 28 4 地下鉄事業からの財政支援について (「大阪市交通事業中期経営計画」で想定している考え方) (4) 財政支援メニューの考え方及び内容 ②「出資」について 経営基盤安定化のための財政支援 バス路線のうち、地下鉄のフィーダー機能を有するフィーダー系バスサービスは、地下鉄と一体となった運営を 指向しており、フィーダー系の経営基盤の安定化を図るため、バス事業の営業に供する有形固定資産(平成18年 度末)のうち、フィーダー系に係る資産総額相当額(106億円)を 、2か年に分けて出資を受ける。 項目 資産額 (単位:億円) うちフィーダー系 相当額 29 営業所 131 車両 198 44 その他 152 33 481 106 計 *資産額は、平成18年度末時点のものを示す。 29 4 地下鉄事業からの財政支援について (「大阪市交通事業中期経営計画」で想定している考え方) (4) 財政支援メニューの考え方及び内容 ③「借入」について 企業債償還金の年度間の不均衡是正のための財政支援 車両更新時期等により、資金調達のために発行した企業債の元金償還額が年度ごとにいびつになっており、この元金 償還金の平準化を図るため、標準的な投資を行った場合の元金償還金との差額を借り入れるものとし、平成18年度末の バス事業における固定資産総額 約481億円(土地除く)を平均耐用年数 約23.4年で除した 約20億円との差額(下図の斜 線部分)を借り入れる。なお、元金償還金が一定額を下回った場合は、借入金を返済する。 (単位:億円) 企業債償還金 投資額 標準的な投資を行った場合 ・H6~11 低公害化促進(排ガス規制等)のための車両更新 ・H4~11 老朽化等による4営業所建替 などにより、投資額が増加 90 83 80 70 67 投資に係る元金償還がピークを 迎え、償還金が増嵩 60 48 50 43 40 40 39 40 30 26 22 23 22 19 20 19 39 37 34 30 48 車両更新による 投資額の増加 45 29 27 29 27 21 20 32 29 29 25 25 22 21 35 38 39 32 31 32 31 25 22 24 20 20 17 13 10 9 7 13 0 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 30 4 地下鉄事業からの財政支援について (「大阪市交通事業中期経営計画」で想定している考え方) (5) 財政支援に関する主な意見 メ リ ッ ト ● 財政支援により、経営健全化基準をクリアでき、市営バスサービスのあり方や本市全体の交通政策についても 十分な検討を行ったうえで、自主的かつ自立的にバス事業の抜本的見直しができる。 ● 地下鉄事業からバス事業へ財政支援を行うことにより、地下鉄とバスとの一体的なネットワークや運営を維持できる。 デ メ リ ッ ト ● 財政支援ありきでは、バス事業の財務規律が緩み、経営改善に対するインセンティブが働きにくくなる。 ● 地下鉄利用者とバス利用者の受益者負担の原則が損なわれる可能性がある。 ● 地下鉄事業の経営が悪化すれば、地下鉄事業とバス事業が共倒れになる恐れがある。 31 4 地下鉄事業からの財政支援について (「大阪市交通事業中期経営計画」で想定している考え方) (6) 当局における財政支援の過去の実績 第2次財政再建計画(昭和48年度~昭和57年度) ● バス事業の財政再建達成のため、次のとおり財政支援を受けた。 ◇ 繰入 一般会計から 港営会計から ◇ 長期借入 一般会計から 地下鉄事業から ◇ 出資 一般会計から 地下鉄事業から 467億円 (再建債の元利補助、車両購入費補助など) 9億円 (開発中の南港地区のバス運行に係る赤字の1/2相当額) 310億円 (昭和57年度末残高90億円) 301億円 (同期間中に全額返済) 110億円 (うち60億円は、昭和58~60年度に受けた出資) 190億円 [参考] 地下鉄事業からの出資の考え方 ・ 地下鉄の整備が、比較的乗客の多い路線、バスにとって経営的に有利な路線について進められ てきたことによる営業補償的な措置 ・ 市内交通において、バスと地下鉄とが一体として利用できるシステムが、整備の基本方針であり、 バスは地下鉄を補完する機能(=地下鉄の培養機関としての役割)を有している (参 考) 神戸市交通局の対応 ● 平成19年度2月補正予算において、交通事業基金 328億円を取り崩し、基金を管理している地下鉄事業から バス事業に繰り入れた。 32
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