ゲームアプリにおけるヒット現象の数理モデル

ゲームアプリにおけるヒット現象の数理モデル
18100121
主担当教員
1. はじめに
スマートフォンの普及により若者は日々の中で
暇さえあればスマホをいじるようになった。そし
て 2012 年 2 月にリリースされた「パズル&ドラゴ
ンズ」が火付けとなり、その後のゲームアプリの
爆発的ヒット現象がうまれた。本研究では、ゲー
ムアプリの流行とヒットの様子を数理現象として
捉え、構造の解明及び推移予測とブログデータに
よる推移の再現を行うことが目的である。
2. 先行研究
先行研究として「ヒット現象の数理モデル[1]」
から引用した数理モデルを本研究でのヒット後減
衰期の推移に応用して用いた。𝑛 𝑡 :時間 t までに
アプリをダウンロードした人数、𝑛# :潜在的なゲ
ームをする人の数、𝑎:1 日当たりに 1 人の人がア
プリをダウンロードする確率とすると、式(1)のモ
デルが与えられ、この式は一日当たりのアプリダ
ウンロード数が指数関数的に減衰することを示す。
式(1)の対数をとると t の 1 次式(2)が得られるが、
この式を用いた推移予測を行った。
𝑑𝑛(𝑡)
= 𝑎𝑛# 𝑒 *+,
𝑑𝑡
log0#
𝑑𝑛 𝑡
𝑑𝑡
= log0# 𝑎𝑛# − 𝑎𝑡 log0# 𝑒
(1)
(2)
3.分析
3.1 分析データ(解析対象データ)
本研究では「パズル&ドラゴンズ」「
、クイズ RPG
魔法使いと黒猫のウィズ」、「モンスターストライ
ク」、「白猫プロジェクト」の 4 つのゲームアプリ
について公式 HP の IR 情報から 100 万 DL 達成日
毎の累計データを取得した。ブログデータは
Goolge で「パズドラ blog 2012/10/01」と検索を
行い、ヒット件数を日ごとに取得した。
3.2 分析方法
取得した DL 累積データから一日当たりの平均
DL 数を計算してその対数を取り、グラフ化した。
「パズル&ドラゴンズ」、
「クイズ RPG 魔法使いと
黒猫のウィズ」、「白猫プロジェクト」はヒット期
と減衰期がみられたため、最新のデータから 1 個
ずつ相関係数が最大になる点まで遡ったときの近
川崎廣吉教授
副担当教員
栗田
稔也
鄭躍軍教授
似曲線と、ヒット期と思われる期間の平均から算
出した近似曲線との交点をヒット期・減衰期の境
目として分析した。さらに、減衰期を抽出して近
似曲線の式と減衰の数理モデル(式(2))から最終的
な DL 数の予測を行った。
ブログ数は日ごとの変動が大きいため 7 日の移
動平均データを作成し DL 累計と比較した。また、
(ブログ書込件数)÷(DL 累積数)=(話題性)
とみなし、グラフ化した。
3.3 分析結果
ヒット期・減衰期の様子と減衰後の最終 DL 数
は以下の表のような結果となった。
ヒット期間始 ヒット期終了の ヒット期が ヒット期間の
めの累計D L
累計D L数
始まるま
長さ
400万
1400万
276日
189日
500万
1200万
181日
66日
300万
900万
20日
22日
パズドラ
黒猫
白猫
1日あたり 最終D L数
の平均D L (予測)
5~8万 7078万
10~12万 6811万
25万
3266万
4. 考察
結果から、リリースが最近のアプリほどヒット
までにかかる時間とヒット期間そのものが短く、
その後急激な減衰をしめすことが明らかになった。
要因としてゲームアプリ数の増加によるジャンル
ごとのアプリの充実とユーザが新たなアプリに移
行するサイクルの早期化が考えられる。同時に、
スマホでゲームをするという行動様式が今後さら
に定着していくことが伺えた。それに合わせて
1000 万 DL を目安に、ユーザ側には次のアプリ移
行の提案を、制作側にはアプリ開発のサイクルの
提案がなされる結果となったと考える。ブログデ
ータとの比較からは法則性を確認できなかなった。
5. おわりに
本研究からヒット構造解明の可能性や方向性が
見えた。今後さらにアプリデータを取得しジャン
ルごとやリリース日ごとで推移のパターン化を行
うことができたら、推移予測の確実性が高まると
思われる。また、確実性向上にはブログに代わる
再現性の高い外部データの取得が必要である。
参考文献
[1] 石井晃, 梅村早苗, 林隆文, 松田直也, 新垣久史, 中
川健, 吉田就彦. (2008).「ヒット現象の数理モ
デル: 映画興行を例とした計算と実測の比較」.
JWEIN, 56: 93