研究実施終了報告書(PDF:5261KB)

(様式・終了-1)
公開資料
社会技術研究開発事業・公募型プログラム
研究領域「循環型社会」
研究課題「ボーダーレスサプライチェーンでの逆流通
システムの研究」
研究実施終了報告書
研究期間
平成16年12月~平成19年11月
研究代表者氏名 林 秀臣
(NPOエコデザイン推進機構、理事)
1.研究テーマ
(1)研究領域
:循環型社会
(2)研究総括
:山本良一
(3)研究代表者
:林
(4)研究課題名
:ボーダーレスサプライチェーンでの逆流通システムの研究
(5)研究期間
:
秀臣
平成16年12月~平成19年11月
2.研究実施の概要
①研究開発目標:電子機器産業が抱える国際的な環境調和問題を経済的効率も含め
て解決することを目的とする。即ち、
(1)国際的に分業化した生産と流通過程に適用可能な簡便な環境情報システムを
構築出来ることを検証する。
(2)要素技術の経済性の評価と開発目的の明示:接合と分離技術の適用可能性を
ビジネス形態と、コストから明らかにする。逆流通システムへの製品の投入
形態の生産・流通・利用・廃棄の各段階に与える経済的インパクトを地域内、
国際間システムで研究し分離技術の経済的意味づけを行う。
(3)最終的な目標提示:生産構造と需要構造がグローバル化する時代でのリサイ
クルシステムの構築に向けた提案を行う。
②研究開発項目(サブテーマ):
(1)総括グループ及びサプライチェーン(順・逆)研究グループ
環境規制の実体調査(中国・欧州)
リサイクルビジネスのベンチマーキング
電子機器のエコデザインツールとして必要な部品データベースの研究
逆流通のビジネスモデル提案
(2)ライフサイクル設計とアジア循環のモデル化(モデル化研究グループ)
ライフサイクル設計を支援するための統合設計環境
リユース・アップグレードを可能にするモジュール化設計方法論
グローバル逆流通システムのモデル化とシミュレーション
(3)設計リサイクル研究グループ
電球型蛍光灯(CFL)のリユース性とビジネス化の検討
(4)接合・分離要素技術研究グループ
部品接合技術の総合評価
③実施内容:欧州・中国における電機電子機器に関わる環境法制度の実情研究。電
子機器のエコデザインを進める為の、部品用物質データベースの構成に関する
研究。設計の国際分業で使用可能な環境対応部品調達システムの現状調査。欧
州、タイ、中国、日本におけるリサイクル業実地調査。アメリカにおけるリサ
イクル業のインターネットによる現状調査。バーゼル事務局における中古電機
電子製品の国境移動に関する意見交換。欧州のリサイクル業界のシンポジウム
でのリサイクル事業展開に関する情報収集。タイ、中国における電子機器製造
業のサプライチェーンとリサイクル活動に関する実地調査。タイにおける電子
部品製造業サプライチェーンとリサイクル活動に関する実地調査。電球型蛍光
灯の回路・機構設計とリユース性研究。日本における山本還元の実地調査。中
国における中古電機電子製品需要に関する市場調査。中国における流通生産シ
ステムのビジネスモデル化に向けた共同研究。リユース・アップグレードを可
能にするモジュール化設計方法論の研究。接合・分離技術の特許調査。新しい
接合・分離技術の接合品試作及び実験による評価。
④主な結果
概要:欧州、中国の法制度、リサイクルシステムの経済性などの現状調査を行
った。その結果、循環型のビジネスモデルを社会に実装する地域として中国を
選定した。実装する地域に中国を選定した理由は、次の4点である。①我が国の
製造業が中国と共存共栄の体制を確立する上でビジネスモデルの存在は非常に
有効である②生産・消費・廃棄の各段階で、世界に大きな比重を占めている③
国内に非常に大きな経済格差を有し、国境のない世界の縮図の感を呈している
④経済および環境影響の両面で我が国に非常に強い影響力を有している。
この絞り込みに至る研究としては、日本、欧州、タイ、中国に立地するリサ
イクル業の価値回収の実態調査、欧州の環境に関する諸規制、中国の法制度の
状況を調査した。また、中古品の国境移動に関してはバーゼル条約事務局との
意見交換を行った。
技術的な課題としては、電子機器の環境調和設計に関わる設計ツール、リユ
ース設計の手法、電球型蛍光灯のリユース技術、接合・分離技術を研究した。
また、ビジネスモデル研究のツールとしてシミュレーション技術を開発し、中
国と日本の間を循環するいくつかのモデルを設定して地球温暖化効果に対する
評価を行った。以下に、各課題について更に補則説明を行う。
逆流通のビジネスモデル研究:日本、欧州、中国の3地域にける逆流通段階で
の電機電子機器リサイクル工場による付加価値の回収の結果は以下の通りであ
った。日本では家電リサイクル工場で回収される材料の市場価格は工場に投入
された機器が新製品として市場に出された時の価格の1/60である(2006年相場)。
この市場価格は、リサイクルシステムを運用するコストの1/3であり経済的に自
立出来る水準にはない。消費者による処理負担金額は、機器(新品)の1/20で
ある。この1/2をリサイクル工場の運用コスト、1/2を流通の運用コストとする
事で家電リサイクルの仕組みが成り立っている。欧州では、日本における統一
的な処理システムはなく、このような数字は得られなかった。但し、逆流通過
程で回収される追加的な付加価値を推定する指標として、特定のリサイクル集
団から医療用電子機器に用いられる部品のリサイクル率を得る事が出来た。そ
れによると、製品重量の約3%の部品が回収されている。旧ソ連時代の機器を回
収して処理しているリトワニアの回収業者の特例では、機器の重量が重いため
に、利益を確保できている。しかし先行きについては不透明であり、自動車用
白金触媒の回収を行う事で、収益性を改善している。中国については、リサイ
クル工場は殆ど稼働していなかった。リサイクル工場が稼働しない原因として、
巨大な中古品市場が存在していることが背景にある。中国に進出した日系企業
のリサイクル事業は、工場廃材の再処理により計画されており、市中からの廃
電子機器を用いた事業は計画されていない。
TV、冷蔵庫、洗濯機、空調、携帯電話、ラジオ、PCの所有と廃棄の状況につ
いて、中国の研究機関が保有しているデータを元に沿岸部(北京、上海、広東
省)と内陸部(山西省)の調査を行った。その結果、山西省の100人あたりの販
売数量は、0.9~5.3台と極めて少なく、中古品の販売数は新品と中古品の合計
対比、18~37%で、沿岸部の1.6~30%に比較して非常に多い事が明らかとなった。
また、廃棄される機器は、携帯電話を除き中古品販売数の2/3程度であった。更
に、中古品の保有と購買動向を直接的に把握する為に中国の研究機関に協力を
求めて北京、河北省、遼寧省、吉林省、黒竜江省で約5000人を対象にした市場
調査を行った。調査地域としては、都市部から農村部まで連続した地域を含み、
購買力の格差を推定する為に学歴を織り込んだ。その結果、いずれの所得層で
も元の所有者の99%が廃棄せずに保有、譲渡あるいは、販売していることが
分かった。また新たに入手した機器の約5%は中古機器であった。結果は、使
用済み家電が資産価値を有していることを意味しており、廃家電を有料で廃棄
するあるいは無料で供出するモデルは成立しないと判断される。循環系のビジ
ネスモデルとしては、この資産価値を認める形で構築されなければならない。
中古品市場に関する別の切り口として、多くの人口を有する発展途上地域共通
の問題となる所得水準と格差の問題を国連の調査から纏めた。その結果、所得
の低い地域はGini係数も低く格差は拡大している。従って、安い中古品の需要
が旺盛であると判断された。また循環系の価値獲得構造について分析を行った。
その結果、動脈系の企業(製品の生産と供給側の企業)は事業の収益性を確保
する為に外部購入比率を下げる経営努力を続ける。従って、製品中の材料価値
の比率は常に下がる傾向にある。静脈系の企業(リサイクル事業を行う企業)
が収益性を高めるには、材料以外の付加価値を回収する部分に目を向ける必要
があることが示された。
以上の結果から、市中に流通した電機電子機器のリサイクルを経済的に自立
した事業とする事は日本、欧州、中国の各地域で実現されていない事が明らか
となった。この調査のなかで更に明らかになった事は、中国では購買力の低い
購買層が多数存在しており、この様な購買層に対する製品供給源としての中古
機器市場がリサイクル網に深く組み込まれなければならないという事である。
地球規模で循環生産システムを構築する場合にはこのような購買層の存在は極
めて重要な考慮点である。即ち、現在また将来の地球人口構成を考えた場合、
これらの人々は地球の多数を占めるが、地球規模での循環システムの構築とは
その多数の人々に機器を供給し廃棄するシステムとして機能しなければならな
いという事である。
結論として、この研究で導き出したグローバル化する時代でのリサイクルシ
ステムモデルは、中古品市場と一体になった「流通循環生産システム」である。
今後重要度を増すと考えられる技術的課題は、機器の長期信頼性を向上させ
る部品技術と接合技術、機器のエネルギー効率を改善した部品の置き換え技術、
部品構造と設計の技術、使用履歴の記録と追跡技術である。これらの課題の内、
この研究では接合と分離技術、蛍光灯のリユースモデルを研究した。蛍光灯の
リユースモデルは極めて簡単な機器(部品)ではあるが広範にエネルギー節減
効果を発揮できる。日中を循環系とした場合の総合的なエネルギー節減効果に
ついては、シミュレーションモデルにより試算した。
以上が、この研究の成果である。この研究を行うに当たって、社会技術とし
て特に配慮した点は、研究結果を社会に実装する事である。社会に実装するに
はモデルが実装する社会が求めている事と適合する事が最小限必要な事である。
その為、この研究では、当初ドイツのフランフォーファーIZMと共同研究を行っ
た。理由は、研究を開始する段階では、欧州指令が世界標準として打ち出され
ており、各国がそれに対する対応に最も注力していたからである。しかし、研
究を進めた結果、欧州指令で与えるのはあくまで枠組みであり、循環システム
を構築し実施する場合は、その実施地域の状況が最も優先される事が明らかに
なった。その為、平成18年の中間段階で、中国の4機関との共同研究を行うこ
ととした。
これらの研究機関と共同研究の体制を敷いたことで、情報チャンネルが確保
され、研究成果を社会に実装する道が開かれたと考えている。得られた社会問
題解決に資する効果として客観的な有効性の結論はまだ出ていないが、社会に
広く電機電子機器の恩恵を受ける仕組みの中に循環システムを構築する意味は
極めて大きいと考えている。平成19年1月に北京で開催したワークショップでこ
のモデル(EcoDeNetモデル)を、中国側の研究機関、大学、行政機関に所属す
る研究者に提示して以来、全人代の環境部会の研究会で意見を発信するところ
まで到達した[1]。
3.研究構想
この研究の当初の目的を要約すると、グローバルな生産と消費の行われている中で、
持続的な循環システムを可能とするビジネスモデルを提案する事及び我が国の電子
機器産業に対して技術的開発課題を示すことであった。
この目標自体、研究の当初から現在まで一貫した目標となっている。しかし、研
究を進める中で、現在また将来とも地球人口の最大多数を占める発展途上国(特に
中国を深く調査した)で循環システムが構築できない最大の理由は、使用済み電機
電子機器(UEEE: Used Electrical and Electronics Equipment)の徹底した利用が
ある事が明らかとなった。この事は、廃棄電機電子機器(WEEE: Waste Electrical
and Electronics Equipment)を前提に循環系を構築する先進工業地域の逆流通シス
テムでは深く考えていない部分である。
発展途上地域でのこの様な状況については「循環モデルでの価値連鎖」の構図か
ら予想していたことである。しかし、最終成果物となるビジネスモデルの構築にお
いては先進地域が主導するビジネスモデルの意識が強かった。そこで最終成果物で
のビジネスモデルには世界的に影響力を持つ「発展途上地域の経済モデルに組み込
める仕組み」へと目標の見直しを行った。また、技術課題では、平成18年度から発
展途上地域でのエネルギー問題にも関わる、電球型蛍光灯のリユース技術を新たに
加えた。以下に、研究計画および進め方の概要を記す。
課題を提案した3年前の状況は、欧州における廃電機電子製品(WEEE:Waste Ele
ctric Electronic Equipment)の処理に関する欧州指令が将に発効する前夜にあた
り、ドイツのフランホーファーIZMのEGG2004+(Electronics Goes Green 2004+)
シンポジウムでもWEEE及び関連した有害物質規制指令(RoHS (Restriction on Haz
ardous Substances)指令に関する議論が多数行われた。また、持続的発展(Sustain
able Development)及び、地球温暖化(Global Warming)に関しては更に強い危機感を
持って語られていた。
我が国の電子工業においても欧州の規制の動向は輸出に多大な影響を及ぼすこと
から電子産業界の企業の多大の関心事であり、欧州のWEEEに関する持ち帰り性、有
害物質の規制状況に関しては、循環系に組み込む電子機器の設計指針として大きな
影響を与える事が考えられた。そのため、この部分に関しては、ドイツのフランホ
ーファーIZMを研究チームに組み込むことで、日本の研究を補うこととした。
この研究は、NPOエコデザイン推進機構の構想の元にフランホーファーIZMと協議
を重ねて最終的にフランホーファーIZMが平成16年度、平成17年度に成果を纏めた。
この研究は、電子機器を設計する際のCAD仕様を定める為にも有効である。しかし、
商用ベースのCADについて日本の企業からの聞き込みを行った結果、各企業が情報の
囲い込みが行っており、情報共有の意欲は低い事も明らかとなり、CADへの実装は追
求しないこととした。
循環系の問題については、我が国では2001年から環境と資源枯渇の両睨みの問題
解決を目指す家電リサイクル法の実施が既に行われていた。また、この仕組みを更
にグローバルに展開するべく多くの研究が成されていた。しかし、国内の仕組みを
国際的に広げるには、国内法の及ばない地域に於いて、正しく循環系を運用すると
いう非常にやっかいな問題を克服する必要があった。例えば、NGO Green PeaceがE
xporting Harmとして告発した、中国におけるWEEEによる環境破壊の問題など枚挙に
いとまがない。この問題に対する当時から現在に至る国際的な対応には、有害物の
輸出を禁止するという極めて直裁的な解決法がある。即ち、有害物規制の枠組みBa
sel条約により有害物質の国境移動を禁止した。しかし、有害物と有効資源は物質が
本来的に有する2面性であり基本的に輸入した側での物質処理の内容に関わってい
る。更に、世界の工業はあらゆる物質の国際的な自由な移動によって発展している
事、禁止の枠組み自体が発展の阻害要因となるといった部分にも国家間の考えの違
いがあり具体的な項目の取り決めと運用には多くの課題が残されている。
一方回収網が日本と同じように構築されるという前提で海外から日本へWEEEを流
通させる事により日本の高性能なリサイクル施設を稼働させるという研究も行われ
ていた。この考えは、地球温暖化防止の観点から有効であることを示すことでこの
方向に国際間の協調体制をつくる事への理論的根拠を与えようとするものである。
この研究は以上のような背景の中で企画された。課題名称「ボーダーレスサプラ
イチェーンでの逆流通システムの研究」は、国内の逆流通システムを国際的に適用
する事が単に地理的な拡大と規模の拡大による問題を超えて、国内法の及ばない地
域に於いて、正しく循環系を運用するという制御困難な部分が加わる事を想定して
いる。ここで「ボーダーレス」とは、実際に存在する国境を意識しない近年の状況
を表した言葉である。しかし、実際に国境が消滅しつつあるのは、Internet取引や
設計情報の分野である。物の移動を含む循環社会の部分では国境は厳然として存在
している。例えば、バーゼル条約の制約は国境が存在する事により機能している。
ボーダーレスは、設計情報や商取引の情報が国境の存在を意識せずに流通すること
からの錯覚であり、ものの移動を含む逆流通の世界では実現されていない。
研究を実施するに当たり、法制度、ビジネスモデル、解析ツール、技術課題の検
討と大まかに課題を分解した。
その結果、法制度、ビジネスモデルに関しては、NPOエコデザイン推進機構が中心
となり総括グループを編成した。総括の意味は、研究の全体の枠組みを与えるとの
意味である。
総括グループでは、まず循環系に含まれる価値連鎖の状況を研究した。その目的
は、循環系が市場原理に適合出来るかどうかの判断をするためである。研究のはじ
めには、日本、中国、欧州のリサイクルによる価値回収の実態を調査した。以上の
調査は、現地調査による聞き込みとインターネット調査、シンポジウムでの発表デ
ータの組み合わせである。我が国の家電リサイクルシステムでは、公表されたリサ
イクルプラントの回収実績とスクラップの市場価格を用いた。付加価値の獲得とコ
スト分析は企業機密に触れる極めて難しい内容なので厳密な研究は困難である。そ
こで、間接的な方法ではあるが、タイ、欧州、中国でのリサイクル工場の実地調査
および、上場企業の有価証券報告書を分析した。これらの方法は厳密性を欠くもの
の、大まかな判断は可能と考えられる。中国のUEEEの流通状態に関しては、平成18
年度から北京でワークショップ、研究討論会を開催してデータの収集を試みた。し
かし、公式の統計資料が存在しないことが明らかとなり、北京市、河北省、東北三
省で市場調査を行った。市場調査および情報解析は中国電子工程設計院、中国家用
電器研究院、大連工業大学、天津工業大学と行った。また、ビジネスモデルの検討
にあたっては、これらの機関の他、精華大学、北京大学、信息産業部、全人代環境
部など、中国の有力機関と討論した。
解析ツール、シミュレーションに関しては、設計モデル化研究チームを編成した。
このチームは当初フランホーファーIZMと東京都立大学を中心にした研究体制を敷
いたが、東京都立大学の研究者が大阪大学に移籍したこと、フランホーファーIZM
の研究課題を、NPOエコデザイン推進機構が中心の研究課題に組み込むように課題の
編成替えを行った為、平成18年度からは、大阪大学を中心に編成した。モデル化研
究グループでは、統合ライフサイクル設計支援環境の提案、および、グローバル逆
流通システムのモデル化とシミュレーション、の2点について研究を実施した。
統合ライフサイクル設計支援環境の提案に関しては、個別的な分解性設計、リサ
イクル性設計などのいわゆる環境配慮設計から、ライフサイクル全体を見渡した「ラ
イフサイクル思考」に基づく、ライフサイクル設計へのステップアップが求められ
ていることを背景に、ライフサイクル設計のプロセスとライフサイクル設計を包括
的、かつ、統合的に支援するための計算機環境である「統合ライフサイクル設計支
援環境」のアーキテクチャを提案した。また、このアーキテクチャの提案に加えて、
具体的なサブシステムの実現例としてモジュール設計支援手法を開発した。
グローバル逆流通システムのモデル化とシミュレーションに関しては、使用済
み製品が国内からアジア諸国に流出しているいわゆるe-Waste問題の課題と解決可
能性を検討するために、ライフサイクルシミュレーションの考え方に基づき、アジ
ア循環のモデルを作成し、シミュレーションを実施した。
ビジネスモデルを構築する為に、企業のサプライチェーンを調査する必要性から、
サプライチェーン(順・逆)研究グループを、富士通株式会社を中心に編成した。
但し、研究を進める過程で、この研究は独自に実施することが困難になったため、
総括グループで実施した。
技術課題に関しては、商品分析、部品のリサイクル技術に関する研究と、接合・
分離技術を研究した。前者は、NPOエコデザイン推進機構を中心に(株)フジクラを
加えて設計リサイクル研究グループを編成した。課題は、プリント配線板の製造、
リサイクル、電子モジュール化である。平成18年度からは、より製品に近い研究と
して電球型蛍光灯のリユース技術の研究を日本、欧州、アメリカ、中国の商品分析
と文献調査により行った。後者は、東京大学を中心に物質材料研究所の研究者、芝
浦工業大学の研究者による接合・分離要素技術研究グループを編成し、革新的接合・
分離の可能性を特許調査、文献調査、実験による調査研究を行った。具体的には、
解体性接合技術開発の特許に見られる動向調査を実施した。また、液体ガリウムを
用いた分離法を開発した。ガリウムのスズ薄膜への浸透過程の研究及び棒状接合試
料の分離特性について研究を行った。実用化の壁と考えられたガリウム塗布による
剥離後の再接合に成功した。今後の課題として、主にリサイクル性、環境対応性の
評価に必要となる下記の項目を明らかにする。①塗布後のガリウムの回収及びリサ
イクル方法について検討する。②この手法が社会で使用される場合、想定されるガ
リウムの必要生産量を算出する。③この手法を適用した場合の環境負荷への寄与に
ついて評価する。
4.研究成果
4.1
ボーダーレスサプライチェーンでの逆流通システムの研究 (総括グル
ープ )
(1)研究開発目標
グローバルな生産と消費の行われている中で、持続的な循環システムを可能とする
ビジネスモデルを提案する事及び我が国の電子機器産業に対して技術的開発課題を
示すこと
(2)研究実施内容及び成果
1.はじめに
この研究の目的を要約すると、グローバルな生産と消費の行われている中で、持続的な
循環システムを可能とするビジネスモデルを提案する事及び我が国の電子機器産業に対し
て技術的開発課題を示すことである。
このような課題を提案した 3 年前の状況は、欧州における廃電機電子製品(WEEE:Waste
Electric Electronic Equipment)の処理に関する欧州指令が将に発効するという前夜にあ
たり、ドイツのフランホファーIZM の EGG2004+(Electronics Goes Green 2004+)シンポ
ジウムでも WEEE 及び関連した有害物質規制指令(RoHS (Restriction on Hazardous
Substances) 指 令 に 関 す る 議 論 が 多 数 行 わ れ た 。 ま た 、 持 続 的 発 展 (Sustainable
Development)及び、地球温暖化(Global Warming)に関しては更に強い危機感を持って語ら
れていた。
我が国の電子産業もこのような課題に対して、国内では、環境と資源枯渇の両睨みの問
題解決を目指す家電リサイクル法の実施が既に行われていた。
この研究を行った 3 年間の間に、家電リサイクルプラントは、6 年余りの実績を積み我
が国の制度として定着しつつあるが、回収された機器が違法に転売されるなどの問題も指
摘されるようになった。これは世界に存在する購買力格差に伴って発生した問題と考えら
れる。この研究では、地球規模での循環システムを構築することを研究課題とした。多面
的な研究を行った結果、ビジネスモデルとして中国での実装を前提としたモデルを提示す
ることが出来た。このモデルでは購買力の極めて低い購買層が存在するという事と、中古
品の販売を含むリサイクル産業で多くの雇用がある事を現実の世界と認定している。これ
らの状況は、我が国の状況とは極めて隔たっていると同時に他の多くの先進工業地域の状
況とも異なっている。そのため、この研究の成果が我が国の電子産業の発展に資すること
になるかどうかについて疑問が呈されるかもしれない。しかし、将来の世界が極めて低い
購買力を有する多くの人々による人口で占められる事を考えれば、その疑念は当たらない
といえる。この研究により提示された技術課題を先取りすることは、持続的発展に繋がる
と同時に我が国の産業の競争力を間違いなく高めることになると確信している。
2.グローバル展開の意味
国内の仕組みを国際的に広げるには、国内法の及ばない地域に於いて、正しく循環系を
運用するという非常にやっかいな問題を克服する必要がある。例えば、NGO Green Peace
が Exporting Harm として告発した、中国における WEEE による環境破壊の問題など枚挙に
いとまがない。この問題に対する国際的な対応には、有害物の輸出を禁止するという極め
て直裁的な解決法がある。即ち、Basel 条約により有害物質の国境移動を禁止する事であ
る。しかし、有害物と有効資源は物質が本来的に有する2面性であり基本的に輸入した側
での物質処理の内容に関わっている。資源として輸入したものが有害物質であるかどうか
が明らかになるのは、輸入した資源(有害物)を処理した時点である。ものの移動と処理
の流れが見えなければ条約違反を事後に指摘される危険を伴う。
ものの移動が見えるようになれば、国境を跨いだ WEEE の流通に危険が無くなる。この場
合、流通コスト、流通のエネルギーを使っても高性能なリサイクル施設を稼働させること
が事業的見地からも、地球温暖化防止の観点からも有効となる処理施設の組み合わせがあ
ると推定される。
地球規模での逆流通システムを構築する場合、発展途上地域がその流れの中に組み込ま
れることになる。今までの逆流通システムの研究では発展途上地域における流通問題は検
討が進んでいない。しかし、上で述べた二つの事例からも世界規模での逆流通システムを
構築する上ではこの地域のものの流れを見えるようにする事、あるいは、見えない状態で
もでも正しく処理される仕組みを構築する事が解決すべき最も重要な課題となる。
3.リサイクル業の収益性
国内法の及ばない地域に於いて、正しく循環系を運用するという制御困難な部分が加わ
った場合、市場原理のみでものが循環する可能性がある。市場原理でものが動く場合、も
のを動かす事による対価が獲得できれば、自然にものが循環する。ものを動かすことの対
価が、見える流れの中で獲得されれば、全体の秩序は、自然に保たれる事が予想される。
従って、市場原理により自然の流れを作り出すには、対価の獲得に関する明確な見通しを
立てる必要がある。付加価値の獲得が出来ない方向にはものが流れない。システムを動か
すために必要な付加価値が獲得されるメカニズムを日本、欧州、タイ、中国のリサイクル
事業の実体から調査した。また、製品中の材料価値を企業の財務データで推測した。
(1)日本の場合
日本の家電リサイクルプラントは、2001 年から稼働を開始し 5 年余りとなる。このプラ
ントは世界に先駆けて国家レベルで運用されたシステムであり、リサイクルシステムを研
究する上で非常に有益な情報を得ることが出来る。表―1は、5 年間の実績である。この
表から、家電 4 製品を総合して、重量換算約 75%の資源が回収されて再利用されているこ
とが分かる。即ち、リサイクルしない場合に比べて、資源を約 3 倍に増やしているとも言
える。
表―2は、市場価値から見た資源の回収である。この部分に関しては公的な統計資料は
ないが、電機電子機器の市場価格と、鉄、アルミ、硝子、プラスチックなどの原材料の市
場価格から推定して試算すると、資源回収に比べ、大幅に減少し 2004 年の市場価格では僅
か 0.5%の水準となる。
(注:2005 年~2006 年にかけて、中国での需要増が主な原因で、材
料価格が急騰した。図―1 は、銅価格と LME(ロンドン金属取引所)の在庫量を示した。他
の金属、紙、プラスチックも高騰し、回収された 2006 年の材料の市場価格は 2004 年対比
での約 3 倍高騰した。)
表―1 家電リサイクルプラントによる重量回収率(日本)
(%)
2001
78
73
59
56
空調
TV
冷蔵庫
洗濯機
表―2
空調
TV
2002
78
75
61
60
2003
81
78
63
65
2004
82
81
64
68
2005
84
77
66
75
Legal rate
60
55
50
50
家電リサイクルプラントによる回収重量(日本)(1000 Ton)
2001
45
59
2002
57
72
2003
57
76
2004
65
84
2005
73
84
Total
296
374
冷蔵庫
洗濯機
合計
76
31
211
表―3
鉄
銅
アルミ
非鉄・鉄混合物
CRT ガラス
その他
合計
91
43
263
97
52
282
104
59
311
108
70
334
476
254
1,401
家電リサイクルプラントによる資源回収量(日本)(Ton)
2001
110,555
5,423
965
41,406
45,153
7,462
210,964
2002
127,171
7,901
1,845
56,035
55,075
14,785
262,812
2003
135,769
8,791
1,875
55,671
55,975
25,400
283,481
2004
143,321
10,028
2,298
61,790
60,818
32,799
311,054
2005
145,034
11,883
3,324
69,334
53,727
50,761
334,063
Total
661,850
44,026
10,307
284,236
270,748
131,207
1,402,374
表―4 家電リサイクル費用(日本)(円/台)
回収グループ
A
B
空調
3745
3675
TV
2835
2835
冷蔵庫
4830
4830
洗濯機
2520
2520
日本の家電リサイクル法によると、消費者は一定の処理費用を負担しなければならない。
処理費用は機器により、回収事業者により個別に設定されているが、
(表―3)全てを平均し
て集計すると、資源のリサイクルで回収される付加価値の約10倍、機器の市場価格の約5%
の水準となる。
個々のプラントから公開された資料はないが、聞き込みによる調査では、消費者が支払う
処理費用の 1/2 を流通関係のシステムが 1/2 を処理工場が処理コストとして受け取りリサイ
クルシステムが運用されている。この粗いデータ(表―5)を用いて推定すると、システム
全体としては、回収する付加価値の 10 倍の費用投入、リサイクル工場に限定しても、5 倍の
投入が必要となる。また、このモデルでは、規模拡大を図ることで工場からのアウトプット
(リサイクル商品)のみで損益分岐点に到達させる構図も描くことが出来ない。
表―5A スクラップ類の市場価格
2004年相場
比率
円/Kg 円/Kg
鉄
47%
20
9.4
銅
3%
200
6.3
アルミ
1%
130
1.0
非鉄・鉄等混合物
20%
5
1.0
ブラウン管ガラス
19%
10
1.9
その他有価物
9%
10
0.9
100%
20.6
2006年相場
比率
鉄
銅
アルミ
非鉄・鉄等混合物
ブラウン管ガラス
その他有価物
円/Kg 円/Kg
47%
30
14.2
3%
800
25.1
1%
130
1.0
20%
5
1.0
19%
10
1.9
9%
10
0.9
100%
44.1
表―5B 機器の材料価値回収(スクラップ価格を約 40 円/Kg とした試算)
エアコン
TV
冷蔵庫
洗濯機
A:回収材料
B:処理費 A/B
Kg/台 円/台
円/台
比率
36
1421
3710 38%
21
843
2835 30%
37
1460
4830 30%
20
798
2520 32%
日本の家電リサイクルプラントの状況は、勿論、日本かつ家電 4 品目という条件におい
ての実績である。従って、日本の実績を全地球的に外挿する場合にデータの修正が必要と
なる。簡単には、処理コストの中の人件費見合いを海外人件費コストにより置き換えるこ
とで海外での事業性が推定できる。しかし、この推定でも、回収される資源の付加価値と
運用コストの隔たりが大きく、損益分岐点に到達する見通しは立たない。このことから、
付加価値の回収と利便性のトレードオフの関係があるとしても、材料以外への回収の仕組
みを組み込んだ新しいビジネスモデルを構築しなければならない事が理解される。
図―1 LME(ロンドン金属取引所)の銅相場と在庫の推移
LME, Stock
9,000.0
8,000.0
7,000.0
5,000.0
$/Ton
Kton
4,000.0
3,000.0
2,000.0
1,000.0
2002
2002
2002
2002
2002
2002
2003
2003
2003
2003
2003
2003
2004
2004
2004
2004
2004
2004
2005
2005
2005
2005
2005
2005
2006
2006
2006
2006
2006
2006
2007
2007
2007
2007
0.0
Jan
Mar
May
Jul
Sep
Nov
Jan
Mar
May
Jul
Sep
Nov
Jan
Mar
May
Jul
Sep
Nov
Jan
Mar
May
Jul
Sep
Nov
Jan
Mar
May
Jul
Sep
Nov
Jan
Mar
May
Jul
$/Ton, Kton
6,000.0
Month
(2)欧州の場合
欧州圏の 6 カ国について 8 社を調査した。2004 年段階での実施例を表―6に示す。この例
によると直接経費のみで 0.35EU/Kg~0.64EU/Kg であり、鉄のスクラップ価格約 20 円/Kg
(0.12EU/Kg)の 3 倍~5 倍となっている。また、試行しているリサイクル費は、オランダの例で
は洗濯機で5EU、この値は 1 台の重量を約 10Kg とした時の直接経費相当である。リサイクル費は
各国で非常に大きな差があるが基本的には、システムの運用コストを回収された資源ではなくリ
サイクル費として注入する事により成り立つと言える。
表―6:テークバック制が実施されている欧州地区のリサイクル企業(例)
所在国及び企業
設立年
運営主体
当該国の人口あたり
WEEE 収集量
大型家電
小型家電
IT 及び通信機器
家庭用機器
照明機器
電動工具
ゲーム・スポーツ用品
医療機器
監視及び制御機器
自動販売機
処理コスト(Eu/Kg)
(直接費:Recycling+
輸送コスト Eu/Kg)
Vat
リサイク
ル費用
洗濯機
( 2003
年試行:
コーヒー
Eu/台)
メーカー
TV
冷蔵庫
家電
ベルギー
A社
2001
生産者
4.0Kg
○
○
○
○
―
○
―
―
―
―
1.36
0.54
デンマーク
B社
n/a
地方自治体
4.7Kg
オランダ
C社
D社
1999
1999
生産者
生産者
0.58Kg
4.4Kg
ノルウエー
E社
1999
生産者
8.0Kg
回収 WEEE の種類(WEEE 規制の分類による)
○
○
○
○
○
○
○
○
―
―
○
―
○
○
―
○
―
―
―
―
0.43
0.48
0.61
0.60
0.43
0.45
0.35
0.52
スエーデン
F社
2001
生産者
8.4Kg
スイス
G社
H社
1994
n/a
生産者
3.3Kg
5.1Kg
○
○
○
○
○
○
○
○
○
―
0.47
0.45
○
○
○
○
―
○
―
―
―
―
適用
10
適用
5
適用外
9.33
1
1
0.44
11
20
8
17
8.80
26.40
0.80
0.64
適用
17.06
0.68
10.24
27.30
(3)タイの場合
タイに進出している複写機の企業からリサイクルの実績を聴取した。この企業は、タイの
工場をアジア地区のリサイクル拠点として運用している。収益に関する情報として開示して
頂いた数字は次の通りである。リサイクルコスト 1500 万 TB/月に対してリサイクル材料の
売り上げ 600 万 TB/月、差分の 900 万 TB 円/月は、オペレーションカンパニー(リサイク
ルを委託した他工場)から処理費用として受け取っている。
この構造は、我が国の家電リサイクル法によるプラントが約 20%を回収品からの収益、残
りを処理費用として消費者負担で得ているのに比較して相当に良い水準である。しかし、依
然として、リサイクルによって成り立つビジネスモデルを描くのは厳しい状況である。
(2005
年 9 月調査)
タイ政府の MOI(工業局)にその他のリサイクル企業の実態をヒアリングしたが、同国で
は、データを保有していない。
(4)中国の場合
中国のリサイクル企業に関して 2005 年時点で国家級のリサイクル施設は、殆ど稼働してい
ない。リサイクルの主体は、所謂ゲリラと称する個人の回収業者である。この状況は 2007 年
段階でも殆ど変化がない。収益構造を含む実態に関しては、後に詳細な調査結果を添付する。
この様な状況に至る理由については使用済み電機電子機器が資産価値を有しており無価値な
廃棄物とは見なされていること。その価値を最大限に利用する貧しい住民がいる事。などの
理由が考えられる。その為、国家級のリサイクルセンターに供出するより高く売れる方にも
のが流れている。この流れは、中古品の流通網の中に組み込まれている。従って、リサイク
ル事業そのものが成立していないと言える。2006 年に北京市の 500 人に対して行った故障品
の廃棄と所有に関する市場調査の結果を表―7に示す。これからも、故障品であっても資産
価値を有していることが読み取れる。
表―7 北京市における故障機器の廃棄と所有の状況(2006 年調査)
機器別
修理せずに廃棄
修理せずに他人に譲る
新品と交換
そのまま保有
合計
TV
冷蔵庫
洗濯機
パソコン
比率
回答数
比率
回答数
比率
回答数
比率
3
0.6%
1
0.2%
3
0.6%
2
0.5%
235
46.6%
187
37.7%
203
42.2%
41
10.6%
45
8.9%
40
8.1%
50
10.4%
4
1.0%
221
43.8%
268
54.0%
225
46.8%
341
87.9%
504
100%
496
100%
481
100%
388
100%
回答数
(5)まとめ
以上の結果から、世界の全ての地域で回収材料を収益源とするリサイクル事業は成立しな
いと結論づけられる。勿論、中国の事例の様に個人が環境汚染に配慮せず収益の上がるもの
のみを回収するモデルはある。しかし、全ての汚染源から材料を回収する事と無害化処理を
行うモデルを目標とした場合、このモデルは採用できない。
(6)補足:製造業における付加価値獲得と製品中の材料価値比率に関する考察
リサイクル事業の収益性については、機器の価格に占める材料価格によって影響を受ける。
この値は製品別に異なりまた調達条件により大きく異なる。また同じ材料を同じ量調達して
も価格には差があり企業としては明らかにしたくない数字である。この重要な数字を知る手
がかりは、上場企業の財務諸表にある。即ち、その中にある外部購入費には材料だけでなく
役務の調達も含まれているが、大まかな指標とする事が出来る。また、企業の製品が組み立
て業の場合、純粋な材料ではなく部品を調達する。この場合、部品は元になる部品があり更
にその元になる部品があり更に、材料があるという連鎖を辿る。従ってこの連鎖を全てトレ
ースして初めて材料に到達する。
表―8
企業名
A.売上原価率
B.外部調達比率
C=A×B
NEC
73.3%
38.2%
28.0%
企業名
A.売上原価率
B.外部調達比率
C=A×B
Mitsumi
87.3%
70.6%
61.6%
日立
三洋電機
81.8%
87.1%
61.4%
75.3%
50.2%
65.6%
上場企業の外部調達比率
機器メーカー
東芝
三菱電機 松下電産 パイオニア
81.8%
77.7%
79.8%
87.9%
79.9%
63.5%
55.9%
60.5%
65.4%
49.3%
44.6%
53.2%
モジュールメーカー
Alps
シルバー精工 信濃電気 松下電工 東京コスモス
91.4%
72.0%
85.9%
75.1%
84.2%
63.0%
44.2%
68.8%
44.5%
53.1%
57.6%
31.8%
59.1%
33.4%
44.7%
信越ポリマ 芝浦電子
企業名
A.売上原価率
77.9%
78.7%
B.外部調達比率
58.4%
71.8%
C=A×B
45.5%
56.5%
東光
84.3%
62.9%
53.0%
シャープ
83.0%
56.7%
47.1%
平均
81.6%
61.4%
50.4%
TDK
スター精密
76.1%
67.4%
47.7%
57.9%
36.3%
39.0%
平均
79.9%
56.2%
45.4%
電子部品メーカー
東特
三井ハイテック 進工業 太洋工業
90.7%
80.8%
78.9%
67.4%
73.6%
45.0%
14.5%
19.9%
66.8%
36.4%
11.4%
13.4%
フジクラ
89.3%
79.0%
70.5%
平均
81.0%
53.1%
44.2%
材料メーカー
企業名
信越化学 日立化成 東京応化 三菱マテリアル 三菱ガス化 三井金属 三井化学 大日本インキ 平均
A.売上原価率
82.4%
71.6%
67.8%
89.6%
86.2%
89.6%
86.9%
83.1% 82.2%
B.外部調達比率
69.0%
66.9%
69.5%
78.9%
70.3%
76.0%
76.0%
72.0% 72.3%
C=A×B
56.9%
47.9%
47.1%
70.7%
60.6%
68.1%
66.0%
59.8% 59.6%
企業名
仕入率
三越
73.6%
大丸
73.1%
高島屋
72.7%
イオン
73.1%
小売業
ヤマダ電機
79.1%
コジマ
83.0%
上新電機 松屋電気 平均
81.8%
84.5%
77.6%
電子機器関連の企業と流通業の 2007 年 3 月の決算資料で外部購入費を表―8に纏めた。こ
の表の C が売上(製品価格)に対する材料の価値比率の目安を表す。但し、純粋な材料価値
の比率ではなく、加工品および外注加工費を含んだ数字である。
純粋な材料の価値比率を出すには、表―8の企業の調達関係を明らかにしなければならな
い。しかし、表―8の結果からは、カスケード状の調達関係(例えば、素材を購入して材料
に変える企業がある。その企業から材料を購入して次の加工品を作る。等々)が続くと 1 段
階あたり約50%材料の価値比率が低下することになる。
製造業としてどのように製品開発を行っていくかは企業により差があるがより付加価値が
高い製品を開発する方向は共通である。これには、
「資源生産性を高めるため」という言葉を
用いなくても、コストダウンを進めるという見地からも企業活動として当然行われている。
とすると、製品に占める材料の価値比率は低下する方向に向かうと考えられる。即ち、材料
によって回収される価値は低下傾向に進み、回収される材料価値を収益の源泉とするリサイ
クルの構図は事業的見地では厳しさを増すことが推定される。
4.材料以外の価値回収構造
前に述べた分析から、材料を収益源とするリサイクルの事業構造で自立できる事業形態を
描くことは困難であることが理解される。この状況を脱却するには、材料以外の収益構造を
取り込むことが必要である。これを考えるために、製造過程で付加価値がどのように獲得さ
れるかを復習する。
図―2は、ものを作る過程を含む循環系でものの価値と量の関係を模式的に示した。この
図で、製造過程では、ものの量を失いながら、価値が上がっていく。その価値の上限は極め
て高いこと。これに反し、静脈系では、価値の上限が決まっており静脈系の事業では収益が
頭落ちになる事が分かる。これは、廃棄された機器がもともと保有している価値を無視した
場合であり、この価値が残存している場合は、静脈系でその価値を復活させる事で材料以上
の価値を手にすることが出来る。
このような価値の獲得は、中古品市場が行っている。しかし中古品市場は、リサイクル業
ではなく、中古品を製品として販売しているにすぎない。即ち、製品価値が無くなった段階
で、リサイクル業による材料価値回収の事業となる。
従って、中古品を単に流通させただけでは、リサイクル業の収益性を高めることにならな
い。しかし、中古機器の需要がある場合、中古機器の販売とリサイクル業を合体することで、
中古機器に残存している付加価値でリサイクル業を運営する事が可能となる。課題は、回収
価値の低いリサイクル業へ使用済みの機器を流さずに全て中古品市場に流すことを防ぐ事で
ある。これは、現に中国で起こっている事態であり、単に回収と運搬を共通にすると考えて
もそのような流れを作り出すことにはならない。
この流れを作るには、現在の中古品販売で問題となっている点に関して流通させる条件を
明らかにして、中古品販売側への流れを防ぐことが考えられる。
5.中国における循環システムの構築
以上の分析結果を総合して、循環システム特に静脈系のみで自立させるのは困難である。
特に発展途上地域ではシステムを動かす資金を消費者が負担することは期待できない。一方、
安い電機電子機器に対しては購買力の低い多数の購買層がある。
この購買層は、新しい機器を購入する余力がない。このような状況にある中国を含む発展
途上地域では地域を発展させるために廃棄の問題と同時に、供給の問題も解決していかなけ
ればならない。そこで、仮に安い機器を大量に生産して供給の問題を解決するとしたとして
(この際資金は考慮の外に置く)、生産と廃棄の数量を推定してみる。表―9は 1992 年のデ
ータであるが、多くの家電品で需要は 5 倍から 20 倍以上に拡大する。即ち、これに伴って世
界中で多大の廃棄が発生する事を意味している。
図―4 は、機器寿命と市場の流通数量を表示したグラフである。即ち、機器寿命が延ばせ
れば、市場に多くの機器が行き渡る。このことは結果として、廃棄数量を減少させる。この
原理は極めて当たり前のことであるが、循環系の構築にあたってあまり深く議論されていな
い。
表―9
世界の電機電子機器需要(1992)
World Electronic Equipment/Electrical Appliance demand (Source JMEA) and Population(Source UN Monthly Bulletin)
(in 1992)
Demand (by Country
Group)
G7
Other
Washing M/C Refrigerator Video Camera
K-UNIT
K-UNIT
K-UNIT
20,547
21,048
6,816
a-1.Total Unit
a-2
Demand(Unit/100
0 Person)
b-1.Total Unit
b-2
Demand(Unit/100
0 Person)
index c=a-2/b-2
Radio
Cassette
Copy M/C
POPULATION
K-UNIT
K-UNIT
Millions
Ratio
35,642
2,836
661
12.2%
31.09
23,098
31.85
24,904
10.31
2,018
53.93
45,838
4.29
949
6.20
6.69
0.54
12.31
0.25
5.01
4.76
19.03
4.38
16.84
Sub-total
Rest of the World
生産と廃棄年と稼働台数の関係
廃棄年(累積廃棄台数)
20
15
3,724
68.8%
4,385
81.0%
1,028
19.0%
累積生産台数=
累積廃棄台数
寿命5年の機器で15年の
(但し、時間差有り)
機器での流通数を得る為
には生産を此処まで引き
機器寿命15年の市場での稼働台数
上げなければならない
機器寿命10年の市場での稼働台数
x
10
機器寿命5年の市場での稼働台数
5
00
5
10
x
15
生産年(累積生産台数)
年間生産台数=目標総普及台数/機器寿命
総廃棄台数=年間生産台数×年数
20
図―4
機器寿命と機器の市場での稼働台数の関係
このような状況は実は、廃棄する機器を中古品として再流通させることの本質を表してい
る。この場合、新規に機器を購入する消費者は対価を払って機器を購入する。日本の場合、
これに更に対価を払って処分して貰う。しかし、処分しないでそれを別の人がそのまま使い
続けるとすると、新たな資金も資源も投入することなく新たな機器が生み出されていると見
ることが出来る。発展途上地域の乏しい購買力はこの様な機器であれば利用可能となる。ま
た、この需要は新しく機器を生産する企業の需要層とは異なるので、新規品の外に新規品で
は見えないかくれた市場があると言える。
循環システムを構築する場合、循環(特に静脈系)のみを切り離した解決策を発見するこ
とはこの研究では出来なかった。しかし、この隠れた市場が循環系の一部に組み込まれる事、
即ち機器供給の全体像の中に循環系を設計することの糸口は発見できた。また、この隠れた
市場が存在することは、発展途上地域が発生する新たな廃棄物量を節減するという非常に大
きな意味を有している。また、この市場が多くの人々に便宜を供給していると同時に雇用の
機会を与えていることも明らかになった。この様な事実を踏まえて、発展途上地域で採用可
能な循環の仕組み(試案)を(図―5)示す。
材料
工場
(加工)
流通
EEE
利用者
1
(廃棄者)
逆工場
(逆加工)
逆流通
WEEE
逆工場
(逆加工)
逆流通
WEEE
UEEE
流通
SEEE
利用者
2
(廃棄者)
UEEE
流通
SEEE
流通
REEE
改修工場
(有害物質代替
安全性向上
エネルギー消
費効率改良・
外観改良
操作性改良
修理)
リサイクル技術
図―5
流通循環生産システム
この試案の基本的な考え方は、発展途上地域では循環の仕組みを切り離すのではなく多く
の「経済上、環境上、教育上の課題を同時に解決する」ことである。教育上の課題は、GDP
と教育の問題が密接に関わっている事を示すデータ(図―6)との関わりである。
システムは、教育、生産、販売、回収、リサイクルの各機能を一体にした仕組みである。
この一体性を確保することで、中古品市場で問題となっている EPR、不法投棄、信頼性保証
の問題を解決し、新たな仕組みの中で、教育と更正を行うことで雇用を維持する。また、経
済発展に応じて新たな生産機能を発展途上地域に整える力を住民に与える。
少し、微視的にこの仕組みを説明する。システムの機能としては、中古品の回収と廃棄機
器を同じ回収網に組み込む。即ち、両者を共通の流通網で集めそれを再販売する機器と材料
リサイクルする機器に振り分けて循環させる。このような一体化したシステムを構成しなけ
ればならない理由は、中国の基本的な考え方では自然であるとの考えからである。即ち、使
用済み機器は資産価値を持ったものであり、廃棄するものではない。従って、回収時の取引
は、使用済み機器の所有者がものを売るという形で行われる。その場合、買う側がものの価
値を判定して値付けを行うことが最も大事な機能である。この値決めをする為には、製品の
残存寿命について判定眼を有する回収員の存在が不可欠である。
また、中古業者は全て免許制とし、中古市場に流通させる商品の拡大生産者責任(EPR)は
免許された業者に移転させる。EPR の移転には中古業者の業者マークを貼付する事で行う。
安全上、消費電力など環境上問題のある使用済み機器はそのまま市場に流さずに、改修する
ことを義務づける。改修に耐えない機器は材料リサイクルに送る。これらの活動は、回収拠
点に付属した改修拠点で行う。回収拠点、改修拠点は現在の中古市場または、リサイクルセ
ンターに設置する。要員は現在の中古市場またはリサイクルセンターの要員を教育する。
また、併せて罰則規定も整備する。罰則規定では、違反者に機器のリサイクル作業、改修
作業を実践させ、リサイクルシステムの中で更正させる。再犯には更正期間を累進させる。
この規定の意味は、現状の雇用関係を尊重して正しいリサイクルシステムでの要員として
職を確保する為である。
1.2
40000
35000
1
30000
0.8
25000
0.6
20000
GDP per Capita
Education Index
15000
0.4
10000
0.2
5000
Nigeria
Bangladesh
India
Indonesia
Viet Nam
Iran
China
Turkey
Kazahhstan
Thailand
Brazil
Russia
Mexico
Malaysia
Korea
Germany
France
UK
Japan
0
USA
0
図―6 GDP と Education Index の関係(UN Human Development Report 2005)
6.電機電子産業の技術的課題
中古品を長く使うにはリスクの回避策を講じなければならない。即ち、設計寿命を超えた
利用による危険を回避する事である。また、日本の省エネルギー法の考えから明らかなよう
に、電力消費の大きい機器を長く使用することでエネルギー増が生じるという事もリスクに
含める必要がある。従って、市場に投入される機器については、元の設計寿命以上に使われ
る可能性を考えた上で、上記のリスクを回避する商品を市場に投入する必要がある。その為
の課題は、元々の機器設計で信頼性の限界を部品寿命から推定し、寿命の短い部品を使用す
る場合は、それらが、機器に拡散しないようなモジュール化を進める。また、エネルギー消
費を機能モジュール別に評価し、エネルギー消費の多いモジュールについては低消費のモジ
ュールが開発された時点で、交換しやすい部位に配置する設計を行うことも必要である。こ
の他、有害物質を含有する部品では、物質使用料を節減し更に使用時は集中して配置するな
どの設計技術が必要となる。これらの設計を盛り込んだ機器は、リスク回避のコストを負担
する販売上のリスクを負うことになる。従って、製造業に自発的な対応を求める事は短期的
には無理がある。しかし、長期的な視野に立つと、市場に流通する機器が増えることで、リ
スクを解消できる可能性もある。この部分がいつからどの程度期待できるかはこの研究では
示すことが出来ない。しかし、我が国の製品の有るべき姿として示しておきたい。即ち、発
展途上国の環境の改善と産業の強化と我が国の産業の競争力を高める Win-Win の産業発展の
一つのシナリオである。
中古品として再流通させるもう一つの課題は、商品の EPR の移転を管理する仕組みである。
商品の登録システムに関わる技術課題は、RFID など既に取り組まれている課題の成果を利用
できると考えられる。
7.まとめと提言(社会に実装するために)
この仕組みは、仕組みを実装する地域の産業振興に寄与する。従って、その地域の政府機
関の政策に取り込まれる事が必要である。しかし、初期の段階に於いて、我が国の支援の枠
組みを想定すれば、実施のモデル地域を設定して JAICA(日本国際協力機構)のプロジェク
トとしてモデル施設を設立するのが望ましい。プロジェクトチームの編成にあたって日中双
方の企業、大学、研究機関、行政、NPO からの参画が望ましい。
材料
工場
(加工)
流通
EEE
利用者
1
EPRの移転
新技術課程
(廃棄者)
逆工場
(逆加工)
逆流通
WEEE
逆工場
(逆加工)
逆流通
WEEE
UEEE
流通
SEEE
流通
SEEE
利用者
2
(廃棄者)
UEEE
流通
REEE
改修工場
(有害物質代替
安全性向上
エネルギー消
費効率改良・
外観改良
操作性改良
修理)
リサイクル技術
Basel Agreementの領域
流通
逆流通
逆工場
(逆加工)
材料
工場
(加工)
逆流通
流通
利用者
(廃棄者)
海外
図―7
UEEE(使用済み電機電子機器)を中古品(SEEE)、再生品(REEE)を経て
廃棄品(WEEE)の材料リサイクルに導く流通循環生産システム
モデル地区の選定には、使用済み機器の供給と処理、教育が可能な地域が望ましい。今回
の協力先の立地する、北京、天津、上海、大連はその候補地となる。青島、重慶も次の候補
地域となる。運用で配慮すべきは、地元(中古機器を販売する地区)の生産と需要の枠組み
を強化する事、要員の教育をカスケード的に拡散させる仕組みを織り込むことで、特定の拠
点のみの利益を追求する運営を排除する事である。法律は、教育的、更正的に運用されなけ
ればならない。
最初のモデル地区の建設に並行して、内陸部への建設を進めて、10 年~20 年で約 10 万人
規模の基幹要員の育成(現在のリサイクル人口が約 2000 万人と言われておりその 100 人~200
人の基幹要員を整えるという考え)を完了することで一応の目標が達成される。
この研究課題は最終的に世界的な枠組みでの循環の仕組みを構築することを目指す。その
中で障害になっていることは冒頭に書いた、国内法の及ばない地域に於いて、正しく循環系
を運用するという部分である。中国に提言した仕組みが整備された後は、図―7 のような国
際的な循環系の中に中古品の流通を加えることが出来る。この仕組みは、中国以外の発展途
上地域にも適用することで、世界的な資源と機器の循環の仕組みを構築することが可能とな
る。
以上
補足 1:中国の機器販売量、中古品需要、廃棄数量の現況
中国国内販売量
1999
2000
2001
2002
2003
项目
TV
全国
2459
2762
3070
3411
4013
北京市
103
115
124.9
145.3
176.2
上海市
195.3 203.27 152.75 167.47 170.38
広東省
1395.0 1538.7 1783.2 2248.6
2535
山西省
19
23.3
29.2
34.8
43.5
冷蔵庫
全国
988.8
840.2
828.6 1053.6 1614.2
北京市
35.5
41.8
52.3
55.64
57.9
上海市
42.58
46.18
45.75
35.88
36.09
広東省
315.1
319.7
302
315.4
373
山西省
10.2
11.4
14.2
16.5
17.1
洗濯機
全国
995.9
886.8
777.4
977.0
1175
北京市
14.2
17.8
22.3
27.8
32.4
上海市
64.8
63.7
71.4
85
93
広東省
156.4
138
109.3
95.6
97.5
山西省
10.7
12.9
15.8
14.9
17.3
空調
全国
591.6
813.6
982.6 1408.0 2143.0
北京市
147
156.2
175.5
195
225.2
上海市
175.7
180.7
221.0
217.6
244.5
広東省
272
309
386
594.5 1058.4
山西省
25.3
31.7
38.6
43.9
51.1
携帯電話
全国
1920
4921
7256
9854
11638
北京市
1011 1628.2
2473
3358
3966
上海市
350
384.0
984.2 1456.0 1865.2
広東省
870
1392
2114
2872
3392
山西省
60
70
75
80
84.7
ラジオ
全国
1392.00 1438.00 1480.00 1886.00 1927.60
北京市
55
75.5
94.3
99.3
103.5
上海市
38.8
77.7
110
138.8
150.9
広東省
183.0
359.0
542.2
658.1
756.4
山西省
39.6
49.5
53.8
60.5
70.38
パソコン
全国
382.0
694.0
751.0 1447.0 3083.0
北京市
138.0
189.7
220
255.8
287.5
上海市
144.9
289
579
772
966.2
広東省
76
126
225
272
496
山西省
14
19
22
25
28
2004
单位:万台
2005
5170
198
135.57
2755
47.3
5346.3
220
287.14
3061
52
1699.2
64
33.2
414.5
18
1888
70
43.86
460.6
20
1186
36
103
103
18.9
1211
40
115
153.6
21
2988
248.0
400.1
1267.5
61.7
2767
231.0
362.4
1179
57.4
12651
4311
1953.0
3687
101.2
14158
4825
1169
4126
112
2097.0
112.5
175.5
852.0
76.5
2246.0
125
195
895.7
85
3372
302.6
1050
719.6
30
3746.8
336.3
1167.2
899.6
43
項目
全国
北 京
TV
上 海
広東省
山西省
全国
北 京
冷蔵庫 上 海
広東省
山西省
全国
北 京
洗濯機 上 海
広東省
山西省
全国
北 京
空調
上 海
広東省
山西省
全国
北 京
携帯電話 上 海
広東省
山西省
全国
北 京
ラジオ
上 海
広東省
山西省
全国
北 京
PC
上 海
広東省
山西省
中国における電機電子製品販売・中古品販売・廃棄数(CEEDI)
製品販売数(2005年)
廃棄数 廃棄/中古 販売数/人口
単位
新品
中古品
合計 中古/合計
万台 5,346.3
781.8 6,128.1
12.8%
521.2
66.7%
0.047
万台
220.0
20.0
240.0
8.3%
13.4
66.7%
0.156
万台
287.1
27.5
314.7
8.7%
18.4
66.8%
0.177
万台 3,061.0
50.1 3,111.1
1.6%
45.9
91.7%
0.338
万台
52.0
12.0
64.0
18.8%
8.0
66.8%
0.019
万台 1,888.0
331.8 2,219.8
14.9%
221.2
66.7%
0.017
万台
70.0
15.0
85.0
17.7%
10.0
66.7%
0.055
万台
43.9
20.6
64.5
32.0%
13.8
66.7%
0.036
万台
460.6
37.5
498.1
7.5%
25.0
66.7%
0.054
万台
20.0
9.0
29.0
31.1%
6.0
66.7%
0.009
万台 1,211.0
595.8 1,806.8
33.0%
397.3
66.7%
0.014
万台
40.0
16.9
56.9
29.7%
11.2
66.7%
0.037
万台
115.0
23.2
138.2
16.8%
15.5
66.7%
0.078
万台
153.6
42.2
195.8
21.5%
28.1
66.7%
0.021
万台
21.0
10.1
31.1
32.5%
6.7
66.6%
0.009
万台 2,767.0
496.8 3,263.8
15.2%
331.2
66.7%
0.025
万台
231.0
21.5
252.5
8.5%
14.3
66.7%
0.164
万台
362.4
29.5
392.0
7.5%
19.7
66.7%
0.220
万台 1,179.0
53.7 1,232.7
4.4%
35.8
66.7%
0.134
万台
57.4
12.9
70.3
18.3%
8.6
66.7%
0.021
万部 14,158.0 1,525.0 15,683.0
9.7%
3,237.0
212.3%
0.120
万部 4,825.0
110.8 4,935.8
2.2%
125.0
112.9%
3.209
万部 1,169.0
152.3 1,321.3
11.5%
130.0
85.4%
0.743
万部 4,126.0
276.8 4,402.8
6.3%
320.0
115.6%
0.479
万部
112.0
66.5
178.5
37.2%
28.5
42.9%
0.053
万台 2,246.0 2,340.0 4,586.0
51.0%
1,560.0
66.7%
0.035
万台
125.0
60.1
185.1
32.5%
39.9
66.4%
0.120
万台
195.0
82.6
277.6
29.7%
54.1
65.5%
0.156
万台
895.7
150.0 1,045.7
14.3%
99.8
66.5%
0.114
万台
85.0
36.0
121.0
29.8%
23.9
66.5%
0.036
万台 3,746.8
544.2 4,291.0
12.7%
362.8
66.7%
0.033
万台
336.3
33.3
369.6
9.0%
22.2
66.7%
0.240
万台 1,167.2
45.8 1,213.0
3.8%
30.5
66.7%
0.682
万台
899.6
83.3
982.9
8.5%
55.5
66.7%
0.107
万台
43.0
23.3
66.3
35.2%
8.9
38.1%
0.020
補足2:中国のリサイクル事情に関する調査報告
本文に纏めたように、中国のリサイクル事情は、中古品の市場と組み合わされた形で、問題を
複雑化している。この部分には、統計データが欠如しており、新聞報道や聞き込みを中心にした
断片的情報を読み解くことが必要である。この研究を行うに当たり、上のような手段により中国
の状況を調査して纏めた。調査時期は、2005 年の段階である。その後、2007 年まで、北京、上海、
天津、無錫、大連、蘇州、南京、昆山、青島で情報を補足したが概ねこの 2005 年の調査結果を裏
付けたものであった。バーゼル条約は、国境を跨いで有害物質を規制する枠組みである。中国の
リサイクル事情と併せて調査した結果を以下に掲載する。
Ⅰ 中国における廃電子機器のリサイクル事情
1.電子機器の生産・輸出入・廃棄量と処理動向の概況
中国の主要電子機器・家電製品の生産・廃棄量は、表1のとおりである。
表1
中国の電子機器・家電製品の生産・廃棄量
単位:万台
統計によれば、2003 年 12 月末現在、中国のテレビの保有台数は 3.5 億台、冷蔵庫は 1.3 億台、
洗濯機は 1.7 億台、パソコンは 2000 万台、携帯電話は 1.9 億本に達している。廃棄量については
統計がなく、新聞・雑誌等の報道による数量、年次がまちまちであり、当該業界に確認してもそ
の信憑性は確認できない。
中国・香港の幾つかの新聞、専門誌等に紹介されている推定値を総合してみると、中国では、
2003 年以降、毎年、少なくともテレビで約 500 万台、冷蔵庫、洗濯機で各 500 万台、パソコンで
600 万台、プリンタで 460 万台、携帯電話で 3000 万台程度が廃棄されると見られているようであ
る。これらの情報について関係業界に確認したが、数量そのものについてはコメントが得られな
かった(実際のところ判らないとしている)。
ただ、傾向については、パソコンの廃棄量は今後 5 年、年 25%~30%のペースで増加すると予想
されている(中国パソコン協会)ほか、家電製品は今後少なくとも年 10%増のペースで廃棄量が
増大すると予想されている(環境保護局関係者)。
中国のパソコン1台の寿命は従来の 10 年から現在では 4 年に短縮されており、携帯電話も 2 年未満で
買い換えられる。その他の電器製品も同様の傾向にあり、電器廃棄物の増加速度は生活廃棄物の3倍の
速さであるとの推定もある。
廃電子機器の廃棄量増大の深刻さは、以下の報道に象徴されている。
①新闻晨报 江华(2004/07/22)
上海では 2005 年にテレビ、パソコン、携帯などの電子製品廃棄のピークを迎える。今後、毎
年、電子製品の廃棄量は 10 万トンを超える見込みである。しかし、上海には電子製品廃棄物
処理工場が現在まだ1社も存在していない。
②浙商網(2005/03/31)
浙江省(台州)の 2004 年の固定廃棄物解体量は 170 万トンであった。浙江省では、省内で増
大する固形廃棄物の処理による環境汚染の深刻化を懸念し、2005 年1月1日付けで、「浙江
省家電、電子製品廃棄物回収・処理試行条例」を施行した。同条例によると、テレビ、冷蔵
庫、洗濯機、エアコン、パソコン5種類の家電は指定回収スポットによって回収される。政
府機関、軍隊、公的機関などの廃棄家電は無料で回収スポットに渡さなければならない。
③東北網(2004/04/22)、人民網(2002/2/27)
台州周辺の農村では、数千人以上の農民が電子廃棄物の処理作業を行っている。ほとんどが
手作業で、使用道具はハンマー、ドライバ、はさみ、扇風機などを使って解体して有害気体
を飛し、硫酸で貴金属を取り出す方法が一般的。台州で処理されている電子廃棄物の中には、
現在、輸入が禁止されているパソコン、電話機、デジタルビデオ、パソコンの磁気ドライブ
などがある。その大部分は、日本から輸入されたものであるとみられる。
2.問題の所在
しかし、中国の廃電子機器の回収・リサイクルは行われておらず、大量の廃電子機器が固形廃
棄物として発生し、ごみ処理問題と化している訳ではない。国内で発生する廃電子機器は確実に
回収されており、解体処理によって金属資源を中心に利用可能な資源が回収されている。問題の
所在は、以下の2点にある。
ⅰ)現状の回収・リサイクルの主体が個人(あるいは個人企業)であり、処理技術および環
境への配慮が軽視されている。
ⅱ)本来、違法である欧米等の外国からの輸入廃電子機器の処理が大規模に行われており、
地域によっては極めて深刻な環境被害をもたらしている。
この2つの問題は、主体が個人であり、産業組織の体裁をなしていない点と環境被害をもたら
している点において、共通している。まず国内で発生している廃電子機器については、それが有
価で流通しており、個人(消費者)はもとより企業等においても廃電子機器を回収業者に販売す
ることが常識となっている。このため、資本・技術力のある企業が参入を計画した場合、量的確
保と回収コスト(買取・輸送など)すなわち採算性が課題となり、政府の構想する産業化への道
筋がつかないのが実情である。回収業者によって収集された廃電子機器は、基本的に次の3つの
ルートに分かれる。
ⅰ)修理可能なものは、修理後、中古品として内陸部、農村部等で販売される。
ⅱ)製品としては修理が困難であるが、再利用可能な部品がある場合、中古部品として市場
に供給される。
ⅲ)製品としても部品としても再利用が困難なもの、あるいは一部の再利用可能な部品を回
収した後のものは、解体処理業者(個人あるいは個人企業)に供給される。
一方、輸入廃電子機器製品の処理も社会問題化している。自然之友 赖芸(04/09/09)によれば、
現在、世界の電子製品廃棄物の 80%がアジアに持ち込まれている。また、その 90%は中国に流入
している。しかも、その増加率は大きく、1990 年には輸入量 99 万トン、輸入額 2.6 億ドルであ
ったものが、2000 年には 1750 万トンへと急増している。この記事について、自然之友の赖芸
(Laiyun)氏に電話取材した結果、現在、世界の電子製品廃棄物の 50~80%が発展途上国に持ち
込まれており、その 80%がアジア地域の諸国、その 90%が中国に流入しているとみられているよ
うである。したがって、世界の電子製品廃棄物の 36%~58%が中国に流れていることになり、こ
の処理主体が個人企業あるいは個人であるため、処理技術はもとより事業の考え方に問題があり、
処理地域に深刻な環境問題を引き起こしている。
中国政府は、輸入廃電子機器問題への対応に一環として、2000 年 4 月 1 日からテレビ、パソコ
ン、複写機、カメラビデオ、電話機など 11 種類の廃電子機器の輸入を禁止している。しかし、本
調査で複数の中国関係者から得たコメントによれば、2000 年4月 1 日以降も違法輸入が続いてお
り、問題の抜本的な解決策にはなっていない。違法輸入品は、当然ながらその処理もまた違法と
なる訳で、法律面での取締強化が期待されるところであるが、違法に輸入されるものには、内容
物の虚偽記載で正規の通関を経由して入るものと通関を経由しないいわゆる密輸品の2種類があ
り、結果的には通関でも水際作戦は成果を上げていない。
ちなみに、中国における電子製品廃棄物の主な輸入港は、広東省南海市港、広州黄浦港、福建
省アモイ港、浙江省温州港、台州港、上海、寧波、山東、天津、連雲港などである。これらの中
では、広東、浙江、福建などの輸入量が多い。また、電子製品廃棄物の主な処理基地は、広東省
贵屿镇(汕頭)、広東省南海市大沥镇、浙江省の台州、河北省黄烨(huang ye)市、湖南省および江
西省などにあり、これらの中では、広東省と浙江省で処理基地の数が多い。
増大する国内の廃電子機器、違法輸入が減少しない輸入廃電子機器の処理は、ソースが異なる
ものの、処理主体、処理地域、環境被害の深刻化という意味において、中国では問題の本質、所
在は同じとみている関係者が多い。広東省汕頭市の贵屿(gui yu)镇の現状は、これを象徴してい
る。
電脳商情報(2004/11/02)に掲載された記事と、そのフォローのために本調査で実施した電話
取材によれば、贵屿(gui yu)镇は廃電子機器の処理でクローズアップされたものの、国内で回収
される廃電子機器も同地域に大量に流入している。本調査で訪問調査を実施した上海市環保事業
発展中心によれば、貴屿(gui yu)鎮には中国全土で個人が回収している廃電子機器製品の約 80%
が持ち込まれ、処理されている。輸入品と国内回収品で処理技術が異なる訳ではなく、結局、廃
電子機器の回収・リサイクルの問題の根源は、家内工業レベルの処理技術が主体になっているこ
とと、その結果として環境影響が軽視されていることにある。
汕頭市の中心地から約 100km の位置にある贵屿(gui yu)镇はかって農業地域であったが、気候
が悪く、農作の収穫も悪いため、廃棄物の回収に転じた農民が多いと言われている。処理対象物
はかつて廃プラスチック、廃金属が主体となっていたが、1980 年代末から 1990 年代初頭にかけ
て、電子廃棄物の回収に傾斜する傾向が強まったとされている。自然発生的に廃棄物処理の地盤
が形成されていたこと、農民という低廉な労働力があったことなどの条件が揃っていたため、1990
年代に大量の電子廃棄物諸外国から珠江三角区に流れ込むにつれて、贵屿(gui yu)镇の電子廃棄
物の回収・処理事業が加速的に活発化したのが実情のようである。ピークは 1997~1999 年とみら
れているが、環境汚染で内外の注目を集め、一部の処理業者が他地域に転じたものの、現在も贵
屿(gui yu)镇では毎年数百万トン以上の電子廃棄物が処理されており、世界最大の「電子ごみ」
処理地域であることに変わりはない。
廃電子機器貿易は、中国でその輸入が禁止される以前の問題として、バーゼル法との関連があ
り、同法上どう位置づけられているかがそもそも問題である。報告書を入手するには至らなかっ
たが、自然之友 赖芸(04/09/09)は、アメリカのBAN(バーゼル行動ネットワーク)とSVT
C(Silicon Valley Toxics Coalition:シリコンバーレー有害物資防止連盟)が実施した調査の
報告について、次のように紹介している。
広東省汕頭市の贵屿(gui yu)镇では 1995 年から、アメリカ、日本、韓国からの輸入による電子
製品廃棄物の解体・処理が個人によって行われている。処理能力は現在、年間数百万トンを超え
ている。しかし、処理方法は破砕、埋立、燃焼、硫酸分解などに限られるため、特に廃液は直接
に川に排出することから、環境に非常に悪影響を与えており、現地住民の生活環境が破壊されつ
つある。
汕頭市の環境保護局関係者は、本調査で実施した電話取材に答えて、贵屿(gui yu)镇の環境汚
染の状況はひどく、野焼き、硫酸処理の廃液による排水系汚染は深刻で、中央政府がリサイクル
法を制定に動き始めた導火線となったといっても過言ではないとコメントしている。
本調査においても、事前調査の段階で、中国の廃電子機器処理の実情を把握する上で贵屿(gui
yu)镇の訪問調査は重要と位置づけ、現地調査を計画したが、中国関係者に贵屿镇の訪問調査は中
国人でも危険との忠告を受け、結果的に文献調査、関係者への電話取材に変更した。以下、これ
らによって得た贵屿镇の現状を報告する。
贵屿(gui yu)镇には、廃電子機器の処理を行う村が現在約 20 村あり、個人企業が 300 社あまり
存在している。そのうち年間処理能力が2万トン以上の企業が 10 社、1000 トン以上の企業が 40
社ほどあり、中には1日 200 トンを処理する企業も存在する。回収資源量でみると、プラスチッ
ク、銅、鉄など成果物量が年間2万トン以上の企業も4社程度ある。また、5500 に近い農家が閑
農期に廃棄物の処理ビジネスを手掛けている。贵屿(gui yu)镇の住民の 80%は電子廃棄物の解体
作業場で働いているとされ、1人当たりの年収は約 1.5 万元で、全鎮(贵屿(gui yu)镇)の農民
の平均年収の5倍の水準にある。また、贵屿(gui yu)镇には電子廃棄物のリサイクル工場(作業
所)で働いている河南省、四川省、湖北省などからの出稼ぎの農民が 10 万人ほど存在していると
いわれ、こうした出稼労働者の賃金は、電線の分解作業に携わる例で、日給 16 元~20 元である。
平均労働時間は、1日9時間。焼却処理を担当する作業者の賃金はこれより高く、硫酸を使う作
業者の賃金はさらに高い。
贵屿(gui yu)镇の環境汚染が広く知られるようになって、処理地域が他に移る動きも一部にみ
られる。広東省清遠(qing yuan )市の龍塘(long tang)鎮には、廃電子機器の輸入が禁止された翌
年(2001 年)から毎日約 1000 トンの廃棄パソコンが運び込まれるようになり、第2の「贵屿镇」
化しつつあると言われる。関係者によれば、近い将来、龍塘(long tang)鎮の処理規模は贵屿(gui
yu)镇を超えると予想されている。また、最近、パソコンの解体作業の一部が湖南省に移る動きも
みられる。
個人(個人企業)レベルの廃電子機器処理ビジネスが盛んな背景には、それによって得られる
所得が農民あるいは出稼労働者にとって魅力なことにある。今回、訪問調査(上海市環保事業発
展中心)で得たコメントによれば、貴屿(gui yu)鎮の年間財政収入8億元の内、6.7 億元がこう
した廃電子機器製品の処理によるものとの推定もある。
違法輸入の問題は別として、こうした就労機会や個人の収入、自治体の収入等を壊さずに、廃
電子機器処理ビジネスを産業化し、近代化していくことが、問題を解決する上で望ましい方向と
みられている。このため、現在、中国各地で打ち出されている廃電子機器の解体処理プロジェク
トが、既存の処理ルート・処理地域とどう棲み分けていくのか、あるいは融合していくのかが見
守られる。
Ⅱ 中国における大規模廃電子機器回収・解体処理プロジェクト
表2に、本調査で把握した中国における廃電子機器の解体処理プロジェクトを整理した。これ
らのプロジェクトには現在まだ具体化されていないものも多く、青写真を描いた段階で実質的に
中断されているもの、工場建設は進めているものの回収量の確保の目処が立たないもの、工場は
完成したものの操業開始には至っていないものなどが多い。特に広東省の計画は、プロジェクト
への資本参加を求めている段階で、企業名、資本などの詳細がまったく決まっていないケースが
ほとんどである。また、大連のプロジェクトは報道されているものの、市当局に電話取材を申し
込むと、市関係部署がプロジェクトそのものを知らないとの返事が返ってくる。
ここでは、そうしたケースも含めて、表2に整理したことを断っておきたい。なお、各プロジ
ェクトの進捗状況の詳細は、資料編に個々に報告しているので、ここでは表2にリストアップし
た個々のプロジェクトについて補足するとともに、全般的かつ基本的な事項について整理する。
なお、個々のプロジェクトについては資料編の資料4にインターネット検索による情報、電話取
材による捕捉情報、資料5に訪問調査の結果等を収録している。
ただし、インターネット検索による情報は計画規模、計画の進捗状況等が正確ではないケース
もあるが、出典との関係を明確にするため情報は原文どおりに記述している。本項では、電話取
材、訪問調査等による補足調査の結果を踏まえて、確認情報に基づいて記述した。したがって、
資料4とは計画数量、建設の進捗状況等の情報が一致していないケースがあることに留意された
い。
表2-1
廃電子機器処理プロジェクト(稼動工場を含む)
表2-2 廃電子機器処理プロジェクト(稼動工場を含む)
NO.1~NO.8 広東省プロジェクト
広東省が計画している省プロジェクトで、全省に8つの電子機器総合処理センターを建設し、
同省の電子機器廃棄物の 90%を処理しようという計画。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パ
ソコンの5製品は必ず回収することを法的に義務付けることを前提とするもので、8つの処理セ
ンターの計画能力は年間合計 57 万トン。総投資額は 5.8 億元が見込まれている。2003 年に計画
が公表され、当初、2004 年5月には最初の処理センターを稼動し、逐次建設を進めて 2010 年ま
でにすべての処理センターの建設を完了する青写真が描かれていたが、具体化が遅れている。2005
年 7 月現在、建設の進捗状況等について同省は一切明らかにしていない。
これらプロジェクトのうち汕頭市の贵屿(gui yu)镇が鎮のプロジェクトとして計画した電子機
器資源化産業発展初期計画は、リサイクルタウン建設構想である。2007 年までの第 1 期計画で、
五種金属機器、電線電纜、プラスチック、電子基板などの解体処理区建設を中心にインフラを整
備し、2008 年~2010 年の第2期計画で本格的な資源化計画を推進し、処理をシステム化すること
によって全過程処理体制を実現する方針。第 1 期、第2期計画の実現によって、2010 年までに、
年商 500 万元規模以上の企業 100 社、大規模の株式企業2社を設立し、80%の企業の資格認定取
得を目指している。2004 年末にすでに建設がスタートしたことが伝えられているが、進捗状況は
明らかにされていない。
NO.9 通天電子廠
台湾系資本 100%の会社で、CRTディスプレイ中心の再生事業を展開している。2005 年初め
に江門 19800 ㎡の新工場が完成し、東莞の工場から移転した。電子機器処理事業というよりPC
関連機器の中古製品事業を展開している企業で、受注生産によって新品のディスプレイ、PC筐
体などの製造も行っている。また、回収品の主体は台湾、韓国、タイからの輸入である。廃電子
機器の輸入は禁止されているため、CRTなどは外装(筐体)部分を取り外して再使用部品とし
て輸入している。
中古品ではあるが、再使用はCRTと電子銃程度であり、CRTもディスプレイは研磨剤を塗
布してグラインダで研磨して再生するほか、電子基盤、外装ハウジング部位は金型から新規に製
造するなど、完成品は新品に近い。
NO.10 仁新電子廃棄物資源再生利用(上海)有限公司
2004 年 10 月に設立されたブラジル系 100%の外資企業で、廃棄物処理・再生の専門企業であ
る。上海、成都(四川省)の2箇所に工場を建設しており、上海の工場は 2005 年6月に完成した
が、操業の許可が下りず、待機中。成都は 2005 年末完成の予定で、すでに操業の認可も得ている。
NO.11 上海電子廃棄物交投中心有限公司
上海市環保事業発展中心、上海市資源総合利用協会、上海錦勤(jin qin)集団有限公司の共同出
資プロジェクト。すでに上海市人民政府経済委員会の許可を得ており、2005 年 6 月から建設工事
に着手する予定。用地は上海市保山(bao shan)区の既存工場(企業)を買収によって確保する方
針で、2005 年7月現在、買収交渉中。同社によれば、プロジェクトの成否は回収ルートの確立と
量的な確保、逆有償(諸理費を排出者が負担する)比率をどの程度まで高めることができるかに
ある。
NO.12 偉城(wei cheng)環保工業(無錫)有限公司のプロジェクト
1988 年にシンガポールに設立された廃電子機器処理の専門企業で、すでに中国を含めて 12 カ
国に進出している。処理工場はシンガポール、マレーシアで年間 3.75 万トンの総処理能力を有し
ている。海外進出は回収会社設立による進出で、回収した廃電子機器をシンガポール、マレーシ
アで処理する。中国には3年前に進出し、回収事業を展開しており、北京、天津、上海、無錫、
蘇州、成都、深圳に回収スポットを設置している。現在、回収した製品はシンガポールに送って
処理しているが、無錫の工場が完成すれば、中国での回収物を中国で処理する体制となる。計画
は第 1 期、第2期に分けて実施し、総額6億元強を投下する。インテル、ノッキア、HP、フィ
リプなどの外資系企業の電子廃棄物の処理で実績があるのが強み。
NO.13 青島プロジェクト
2004 年 1 月7日、山東省青島市が電子製品回収試験市として政府に認定されたことに伴いスタ
ートしたもの。電子機器メーカである海尔(ハイアール)グループが進めている計画で、メーカ
主導によるプロジェクトのフィジビリティ・スタディとして位置付けられている。
総投資額は 8000
万元で、このうち 1200 万元は国債で賄われる予定。
回収計画、採算性にメドがたたず、計画は事実上ペンディングの状態にあったが、海尔集団総
公司は青島新天地投資有限公司との共同出資による「青島新天地廃旧家電及び電子製品回収処理
有限公司」を資本金 1000 万元で設立し、2005 年5月下旬、工場建設に着手した。
同プロジェクトの敷地面積は6万 6670 ㎡(100 ムから換算)で、そのうち建築面積は3万㎡で
ある。投資総額は 1.9 億元の予定で、第1期で 1 億元を見込んでいる。回収地域は、長江より北
方地域。処理能力は年間 20 万台。年間約 8387 トンの金属、プラスチック、貴金属混合物など再
利用可能な物資を回収する見込み。回収する製品のうち、修理や部品利用によって再利用可能な
ものを 2000 台程度見込んでおり、これらは中古市場に流す予定。年間売上高として、全体で 2960
万元を当面の目標に掲げている。
計画の成否はどの程度の廃電子機器・家電製品を回収できるかにあり、同社では自社の巨大販
売ネットワークを利用し、逆商流ルートによる廃旧家電の回収に努めている。1 例として、同社
は 2004 年 11 月から 2005 年 2 月にかけて、デパートの家電売り場で電子レンジ買い替えキャンペ
ーンを実施し、古くなった電子レンジの回収を行った。このキャンペーンでの回収実績は電子レ
ンジで約 100 台程度と少なく、全体的にまだ十分な回収量には達していない。したがって、まだ
採算性の目処が立っている訳ではないが、同社は 2005 年 5 月にようやく工場建設に着手した。ま
た、処理工場に導入を予定している冷蔵庫とテレビブラウン管の「無汚染分解装置」の試験を完
了し、早ければ 2005 年内の稼動を目指している。
ただ、安定的な操業環境が整うのは関連法律が本格的に施行されてからと判断しており、その
時期は 2006 年になるのではとみているようである。
NO.14 浙江省プロジェクト
2004 年初頭、浙江省が電子製品回収試験省として政府に認定されたことに伴いスタートしたも
の。同計画は、廃棄物処理の専門企業の主導によるプロジェクトのフィジビリティ・スタディと
して位置付けられている。全省に 11 の回収スポットを設置して回収ネットを構築するのが特徴。
総投資額は1億円の予定で、杭州大地環保公司ほか参加企業数社の負担は5~6000 万元、残りは
国と浙江省地方政府が3:1で出資する。
中心企業である杭州大地環保公司は 2004 年9月に処理工場建設計画(敷地面積 1000 ㎡)を打
ち出し、建設工事に着手した。他のプロジェクト同様に回収ルートの構築が課題とみられていた
が、「浙江省廃旧家電および電子製品回収処理試点暫定条例」が制定され、2005 年から浙江省内
で施行されたのを契機に、回収スポットの設置が進展した。同暫定条例は、定点収集、集中処理、
生産者責任制の原則に基づいて、全省に及ぶ回収ネットワークを設けることを明らかにしており、
規範的な回収体系作りを旨とすると同時に、政府、メーカ、販売者、消費者それぞれの責任を明
確にしている。
2005 年 4 月現在、すでに3つの回収スポットが設置されている。うち1つは家電販売店、ほか
の2つは住民の集団地である社区にある。こうした状況下、同社は①住民社区で回収スポットを
開設し、家庭から買い取る、②デパートの家電売り場での買い替えキャンペーンを通じて回収、
③公的機関からの回収(対価無)、④廃棄物回収スポット、家電修理店からの回収といった4つの
回収ルートで試験的な回収を行ってきた。この結果、2005 年 1 月現在で、テレビ、冷蔵庫、エア
コン、洗濯機、パソコン、ゲーム機など合わせて 135 台、機器部品およびパソコン部品 83.9 トン、
廃棄電燈 10.3 トンの回収実績を上げた。その後も回収に力を入れているが、2005 年2月から 5
月までの4ヶ月間の回収量は重量ベースで約8トンに留まっている。同8トンのうち東芝杭州有
限公司などの外資系企業からの回収量が 80%を占め、民間からの回収量は少ない。このため、こ
のペースでは年間レベルで採算性のある稼動を確保することは困難とみられ、依然として回収量
の確保が課題となっている。
処理工場の建設は部分的に完了しており、2005 年 5 月現在、廃家電製品で年間1万台、印刷基
盤で 1 日 1.6 トンの処理が可能な処理ラインが稼動している。ブラウン管処理機械はまだ導入さ
れておらず、導入工事中。また杭州大地環保公司は、中国家電研究院、中国家電協会と協力して
北京天地双益家電再生科技有限公司を設立しており、家電処理技術と設備の開発研究も進めてい
る。
NO.15 南京溧水金泽(li shui jin ze )金属有限公司(南京金沢公司電子機器廃棄物処理セン
ター)
総額 1000 万元を投下した処理工場が 2004 年 10 月に完成し、操業を開始した。しかし、この操
業は結果的に極めて短期間に終わり、現在、休業状態にある。要因は、長期間かけて収集しても
1 時間程度で処理が終わってしまう程度の量の電子機器廃棄物しか確保できなかったことにある。
回収ルート、回収量の安定的かつ持続的な確保はいまだにメドがたたず、操業再開の予定も未定
の状態。現在、モトローラ、ノキア、3Mほか 10 社と提携しており、生産工程で発生する不良品
を引き取る体制を確立しているが、今後、中国メーカとの提携を拡大していく方針で、こうした
回収体制の強化でいかに実績を上げていくかが同プロジェクトの成否の鍵を握っている。
NO.16 大連再生資源工業園プロジェクト
大連市と日系企業が 2.5 億元を共同出資して廃電子機器・家電製品の処理センターを建設しよ
うとする構想。2004 年夏に一部の新聞で報道された。しかし、大連市に電話取材したが同市は本
プロジェクトそのものを否定しており、そのような計画はないとコメントしている。
NO.17 南京環務資源再生科技有限公司のプロジェクト
5年計画で、13 万 2000 ㎡の敷地に工場面積 1.2 万㎡、事務所 600 ㎡、倉庫2万㎡、コンクリ
ート地面2万㎡、社員寮 4800 ㎡の施設を備えた処理センターを建設する計画。完成すれば、所要
電力 2000KVA/月、用水 3500 ㎥/月規模の工場となる。従業員は職人 920 名、エンジニア 80 名
を予定。
NO.18 蘇州同和資源総合利用有限公司
同和鉱業は 2001 年の蘇州視察を契機に、廃電子機器処理を事業目的とする中国での処理工場を
江蘇省蘇州に建設した。進出の動機は、蘇州および長江三角州地域におけるIT、半導体産業が
将来さらに発展し、その発展に伴い各種の電子廃棄物の処理需要が大規模になるであろうとの判
断したことにある。この判断に基づき、同社は 2003 年、蘇州高新区経済発展集団公司との共同出
資によって、廃電子機器の処理を事業目的とする蘇州同和資源総合利用有限公司を設立した。資
本金は 600 万ドルで、同和鉱業の出資比率は 90%である。
現在、同社は金の再生処理事業を主力事業としており、2004 年 12 月 18 日に工場の稼動を開始
以来、廃液、印刷基盤、CPU などの電子製品から 99.99%純度の金を毎月 10kg 程度回収している。
また、残渣からは銅を回収している。
同社は処理対象を家電製品まで拡大すべく、2005 年 5 月には家電処理設備の導入工事に着手し
ており、9月に完成の予定で、10 月から本格的な廃家電の処理を開始する予定。
NO.19 北京市廃旧家電処理プロジェクト
同プロジェクトは、
「国家発展と改革委員会」の省エネ、節水、資源総合利用プロジェクト投資
計画の1つとして認められているもので、かつ「北京発展と改革」委員会の「2005 年北京市重大
建設プロジェクト:電子機器資源化産業発展初期計画」として位置づけられている。主導企業は、
中国華星集団。同社は 1995 年に設立された中央政府に所属する大手国有企業で、資本金は 8.19
億元である。業務内容は、企業管理、改造、発展に関するコンサルティング、企業資産委託管理、
改組などで、これらの業務と平行して、自動車・自動車部品、オートバイ・同部品、機械設備、
鉄鋼、化学工業原料などの販売を手がけている。
プロジェクトの事前準備は順調に進んでいるとされ、関係研究機関、海外家電リサイクル企業
とも情報交換などを積極的に行っており、中国華星集団によって同プロジェクトへの参加を希望
する企業を入札で選ぶための準備が進められている。2005 年 7 月に開催された電子廃棄物処理会
議によれば、同社が北京経済技術開発区で建設を進めている年間処理能力 120 万台の電子廃棄物
処理工場は 2005 年末には完成する予定。資総額は、8000 万元(「投資北京:INVEST BEIJING」に
よる)。
北京では、この数年、年間約 300 万台の家電製品が廃棄されており、専門家の推定によれば、
2006 年には約 11.52 万トンの電子廃棄物が発生する見込みで、製品別ではテレビ、冷蔵庫、洗濯
機、エアコン、パソコンなどで合計約 357.6 万台、携帯電話で約 234.5 万本が廃棄されるものと
予測されている。さらに 2010 年には、電子廃棄物は 15.83 万トンに増加する見通しにある。この
ため、処理体制の整備が急務となっている。中国華星集団は実質的に国有企業であるため、廃電
子機器処理事業への進出において有利な条件を備えていると判断されるが、成否はまとまった量
の廃電子機器を集めることができるかどうかにかかっている。このため、同社は国と北京政府の
支援を得るための活動を続けており、特に回収ルートの構築を重視し、回収公司、外資系企業、
住宅地の回収スポットなどと提携すべく折衝を行っている。
電子廃棄物処理会議のメンバーである蘇寧(su ning)電気とTCL集団(中国の有名な電子・電
器メーカ)は、2005 年 7 月 16 日から 7 月末にかけて、買い替えキャンペーンを実施し、消費者
が蘇寧(su ning)電気連鎖店においてTCL製のテレビを買い求める際、
中古テレビを 200 元~500
元で引き取ることを計画している。回収したテレビは、すべて専門処理企業に持ち込まれ、処理
されることになる。こうした動きによって、回収活動が円滑に進展し、回収量がまとまれば、北
京経済技術開発区の廃電子機器処理工場は 2005 年末に予定通り離陸することが可能になるもの
と思われるが、期待を下回る量に留まった場合、稼動を延期する公算が強く、本格稼動が関連法
律の整備される 2006 年にずれ込むことも予想される。
NO.20 天津大通銅業有限公司
天津大通銅業有限公司が天津市経済技術開発区で建設を進めている計画で、2005 年9月に廃電
子機器の処理工場の建屋が完成する見通しで、12 月までには設備の設置等を終え、稼動入りする
予定である。導入設備は、日本製である。日本の専門家と協力して設計チームを編成しており、
日本の家電処理企業の参加も検討されている模様。
NO.21 華中地区廃旧家電及び廃棄物加工処理センター
武漢市供销社(廃棄物の回収機関)が武漢市の最大規模の環境保護プロジェクトとして推進し
ている計画である。総投資額は 5 億元で、第1期に 2 億元を投資してセンターを開設する予定。
華中科技大学と清華大学の関係研究機構によるプロジェクトの実行可能性研究(フィジビリテ
ィ・スタディ)は終了しており、「国家発展と改革」委員会も 2000 ムーの土地(武漢市洪山区左
岭(zuo ling)鎮)の使用について許可を出している。
2004 年5月から全国の民営企業に向けて投資者の募集を始めたが、2005 年7月現在、国内企業
からのアプローチはない模様。同社は現在、本プロジェクトへの参加について、アメリカおよび
スイスの処理企業、日本の松下電器などとも折衝中としている。計画具体化のポイントは関連法
律の施行にあると考えられているが、同社は年内施行は困難とみている。同社は、2006 年に入っ
て法律が施行されればすぐにもプロジェクトを本格的に指導する準備はできているとしている。
NO.22 台湾金益鼎(jin yi ding )企业株式有限公司プロジェクト
同プロジェクトは、台湾金益鼎(jin yi ding)企业株式有限公司が天津開発区で建設を進めてい
るもの。同社は電子廃棄物の専門処理企業で、台湾では第1甲類廃棄物処理許可を得ており、電
子廃棄物と印刷基盤貴金属の回収において発達した技術を有している。
すでに同社は、2004 年 10 月 12 日、天津開発区管理委員会と契約を結び、3 万㎡の敷地を購入
しており、この敷地に印刷基盤と電子廃棄物処理工場を建設する予定。同プロジェクトの投資総
額は 1 億元で、計画を実施するための新社が資本金 5000 万元ですでに設立されている。工場は、
2005 年 9 月に完成する予定。
同社の計画は、天津市の積極的な誘致によって実現した。天津開発区にはモトローラ、三星、
トヨタなど、携帯電話、モニター、自動車電子部品を生産するメーカが多く存在しており、電子
廃棄物に対して、従来は、無害化・資源化されず倉庫に保管されたままとなっていた。このため
天津市は、電子廃棄物を有効に利用するために、アジアで最も優れた処理技術を有している処理
企業として知られる台湾金益鼎(jin yi ding)企业株式有限公司を天津開発区に誘致したもの。ま
た、天津市は、将来的に華北地域の電子廃棄物を収集して、同開発区を華北地域の電子廃棄物処
理基地に育てていく方針である。
NO.23 清華同方環境公司・緑電再生(台湾系)プロジェクト
清華同方環境公司が 2002 年、台湾最大の廃電子機器処理企業である緑電再生との協力合意を取
り付けて計画の具体化を進めたプロジェクト。しかし、18 ヵ月後、このプロジェクトは棚上げと
なった。要因は、回収ルートの確立にメドが立たなかったことにある。
以上に述べた廃電子機器処理プロジェクトの立地状況を図1-1、図1-2、図1-3に示し
ておく。
現状を踏まえてみると、中国の廃電子機器回収・リサイクル計画は、問題の解決に向けて政府
が基本方針(大規模資本の導入・誘致による廃電子機器リサイクル事業の産業化の推進による適
正処理体制の確立)を打ち出し、法制度を中心とする事業化環境の整備を進める一方、そのプロ
ジェクト化に係わる仔細を各地域の地方政府(行政)に委ね、モデルケースを生み出そうとして
いるような段階にあるものと受け止められる。
注:○数字は処理プロジェクト(処理工場)の数を示している。
但し、№表記は、報告書本文第2表のプロジェクトの№と一致させている。
北京市
天津市
№20、№22
遼寧省
大連市
湖北省
武漢市
山東省
青島市
四川省
彭州市
No.19
2
No.16
江蘇省
No.13
№15、№17、№18
3
2
No.14
No.21
No.10
上海市
№10、№11
浙江省
杭州市
9
広東省
№1~№9
図1-1 中国の廃電子機器処理プロジェクトの立地状況
注:№表記は、報告書本文第2表のプロジェクトの№と一致させている。
No.3
No.6
No.1
No.9
No.4
No.2
No.5
No.8
No.7
図1-2 中国の廃電子機器処理プロジェクトの立地状況(広東省)
注:№表記は、報告書本文第2表のプロジェクトの№と一致させている。
№15、№17
2
No.12
No.18
図1-3
中国の廃電子機器処理プロジェクトの立地状況(江蘇省)
中国政府が廃電子機器処理ビジネスの産業化政策として具体的な姿勢を示したのは、電子製品
回収試験市・省として青島市、浙江省を認定した 2004 年 1 月である。法制度の起草、検討とうい
う動きはそれ以前に見られるものの、構想実現のために具体的なプロジェクトを推進すべく行動
を起こしたのは、これが最初と受け止められる。しかし、1年以上経過してなおこれらのプロジ
ェクトの中には具体的な進展をみせていないものが多い。
いずれのケースにおいても、計画が思ったほど進展していない理由は、基本的に以下の3点に
ある。
ⅰ)回収量の安定的な確保、量的な確保が難しい。
ⅱ)回収コストから事業の採算性が取れない。
ⅲ)法整備の遅れ
ここに、現状の処理実態と政府が描く廃電子機器の社会的、システム的な処理産業構想との深
い溝があると判断される。現状がもたらしている雇用や所得機会と政府の構想の調和点がなお見
えていないのが実情である。廃電子機器処理が生み出している現状の利益構造をどう誘導し、再
配分していくかは、現在検討下にある諸法案に深く係わっており、その焦点は処理費用を誰が負
担するのか、どのように負担するのかにあるものといえよう。
その点、前述した北京の廃電子機器処理工場建設プロジェクトのように、国と地方政府の支援
を得て国有企業主導で進められている計画がどのような成果を生み出すかが注目されており、
2005 年後半から 2006 年にかけての各プロジェクトの動きが見守られる。
Ⅲ 中国における廃棄電機電子製品の回収ルート
廃電子機器の安定的かつ経済性に見合う量的な確保の問題は、結局、回収ルートの問題となる。
図2に、本調査で得た関係者のコメントから描いた回収・処理ルートの全体像を示す。同図に示
した「回収者」は、個人(出稼労働者等)である。排出源(ソース)は、国内発生と輸入に大別
され、国内発生は、家庭と企業・機関に2分される。企業・機関は、政府を始めとする公的機関
と民間企業に分かれ、民間企業は電子機器生産メーカと販売店、一般の民間企業(電子機器ユー
ザ)に分かれる。
現状では、公的機関、電子機器生産メーカから排出されるものを除くと、ほとんど全量が有価で
取引されており、修理して再利用可能なもの、製品としての再利用はできなくとも部品で再利用
可能なものは中古品市場に流れている。
中古部品市場は、個人の処理業者にとって重要な市場である。路橋(lu qiao)の中古パソコン部
品市場では、基盤、メモリ、CPU、ドライバ、モニターなどが売買されている。最も需要があるの
はモニターである。同部品市場からは、江蘇省南京、広東省全域からの引き合いが多く、ブラウ
ン管では特に広東省方面からの引き合いが覆い。
図2のルート別の物量比は不明であるが、関係者のコメント、現在、推進されている工場建設
計画の大部分が具体化できずに足踏み状態にある現状から推して、かなりの量が公的機関および
電子機器メーカ以外の排出源から有価で流れているものと判断される。
このようなビジネスベースで個人を主体とするルートで流れる廃棄物を適正処理のルートに乗
せ、産業的な処理体制を構築すべく、都市部では、回収スポットの設置が数年前から活発化して
いる。以下に、上海の回収スポット整備プロジェクト、深圳、浙江省の回収スポット(回収セン
ター)開設状況を紹介する。
輸入品
回収業者
輸入業者
電子機器
生 産 メー カ
回収スポットB
公的機関
回収者
民間企業
回収業者の運営す る
解体処理 場もある。
解体処理企業(個人企業含む)
回収者
回収スポットA
家庭
中 古 製 品 ・中 古 部 品 市 場 へ
鉄 ・銅 ・ア ル ミ・プ ラ ス
チ ッ ク ・ガ ラ ス 等 再 生 資
源市場へ
販売店
注 :回 収 ス ポ ッ トに は 公 設 ・順 公 設 の も の (回 収 ス ポ ッ トA )と、回 収 業 者 の 独 自 ス ポ ッ ト(回 収 ス ポ ッ トB )が あ る 。
図2
廃電子機器の回収・処理ルートの全体像
上海では市の主導による回収スポット整備プロジェクトが推進されている。同プロジェクトは、
リストラによる 40 代~50 代の離職者の雇用対策を兼ねた計画(プロジェクト名:4050 工程)で
すでに 272 箇所の回収スポット(交投站)が設置されている。上海市は、これらのスポットを廃棄物
回収の主要経路に位置づけ、これによって市民の廃棄物取引に便利なサービスを提供することができる
としている。また、運営において従業員に使用する回収車マーク(標識)の統一、引取価格の統一(基準)
を徹底し、回収スポットを核とする廃棄物回収システムの確立を目指している。回収量、価格について上
海市および回収・処理関係者に電話取材したが、コメントは得られなかった。量は、まだ統計的に把握す
るような体制になっていないようである。また、価格はノーコメントとしている。
表3
上海市の回収スポット設置プロジェクト
回収スポット
回収スポット
区県
区県
(箇所)
(箇所)
浦東新区
24
普陀区
9
卢湾区
4
闸北区
9
徐汇区
12
杨浦区
15
静安区
3
闵行区
8
黄浦区
6
宝山区
18
长宁区
10
嘉定区
22
虹口区
10
青浦区
21
出所:開放日報(05/06/13)
区県
松江区
奉贤区
南回区
金山区
崇明县
合 計
-
回収スポット
(箇所)
15
28
27
17
14
272
-
一方、深圳市では民間資本による電子機器回収センターの開設が比較的早くから進んでおり、
代表的なものですでに 16 センターが開設されている。また浙江省では、表2に紹介した浙江省プ
ロジェクトの一環として回収スポットの設置が進められており、2005 年 7 月現在で3センターが
解説され、今後、全省で8センターを新たに設置して 11 センター体制を確立する予定となってい
る。
表4 浙江省の電子機器回収センター
センター名
事業内容
江干(jiang gan)区濮家(pu jia)社区回 電子機器ほか
収センター
萧山(Xiao shan)区藕湖滨(ou hu bin) 電子機器ほか
社区回収センター
萧山(Xiao shan)区天乐家电广场
電子機器ほか
出所:中国経済網(04/09/27)、(05/02/25)
表5 深圳市、蘇州の電子機器回収センター
センター名
事業内容
ディスプレーブロック,プリンター、コピー機、
ノートパソコン、パソコンの回収
同兴(tong xing)家私电器商行
鉄、ベッド、家具、工場の不良在庫などの回収
家電、家庭用品、エアコン、ベッド、会社や工
深圳市旧货回收销售中心
場の不良在庫などの回収
深圳南山利通(li tong)容发(rong fa) 家電、パソコン、家具、お店用の用品の回収
旧货商行
深圳市百合隆(bai he long)旧货市场
電器、家具の回収
深圳宏伟旧(hong wei)货回收公司
電器、家具の回収
深圳市百合隆(bai he long)旧货市场回 電器、家具の回収
收部
深圳百合隆(bai he long)旧货公司
電器、家具の回収
深圳市莱英达(lai yng da)旧市场南山 電器、家具の回収
收购总站
深圳市合兴(he xing)旧货回收市场
電器、家具の回収
鹏诚(peng cheng)厨具电器贸易行
電器、家具の回収
深圳市百合隆(bai he long)旧货市场
電器、家具の回収
深圳市百合隆(bai he long)旧货交易市 電器、家具の回収
场
深圳市南山利通(li tong)旧货市场
電器、家具の回収
深圳市和兴(he xing)旧货交易市场
電器、家具の回収
深圳合兴(he xing)旧货交易市场(高价 電器、家具の回収
求购)
パソコン、ディスプレーブロック、硬盤、CPU,
深圳鸿峰(hong feng)电子回收有限公司 プリンタ、FAX 机などの回収、パソコン、家電
修理。
苏州恒通(heng tong)再生资源有限公司 廃プラスチックス、電器廃棄物、ダンボール、
新聞、雑誌などの回収、販売。
出所:深圳 160 信息(2005/06/13)
深圳再生资源回收中心
これら回収スポットの回収量、価格について、市および回収センター関係者に電話取材したが、
コメントは得られなかった。ただ、米モトローラ社の中国での試みが成果を生み出せずにいる現
状は、廃電子機器全般に共通しているとはいえないものの、この問題の困難さを象徴している。
具体的には、
米モトローラ社は 2004 年に中国 151 都市に携帯電話機の回収ボックスを設置したが、
結果的にはなお成果を得るに至っておらず、見通しは厳しいとされている。要因は中古市場に売
る人が多いことにある。携帯電話機は、中古品としての付加価値が高いため、集まり難いという
事情がある。しかし、仮に回収がうまくいっても、携帯電話の場合、回収価値は低いとされる。
硫酸で電子基板に含まれる少量の金、銀を回収するのが限度で、個人あるいは個人レベルの企業
が手がけ、廃硫酸をそのまま流してしまっているのが実情である。
Ⅳ 中国における電機電子機器リサイクル事業の産業化と事業採算性
前述したように、構想中の廃電子機器回収・リサイクルプロジェクトが円滑に進んでいないも
う1つの要因はコストの問題である。
中国政府は、現在、廃電子機器の回収・リサイクルプロジェクトの推進について、リサイクル
専門企業を核に展開するケースと電子機器メーカを核に展開するケースの2つを想定し、フィジ
ビリティ・スタディを実施させている。前者の代表例は広東省の諸プロジェクトであり、後者の
代表例は青島のハイアールグループによるプロジェクトである。しかし、いずれのケースにおい
ても、量的確保とコストがネックとなっており、計画はほとんど進展していない。
その基本的な理由は、中国ではすでに数年間にわたって電子製品廃棄物の回収・処理問題に関
する議論が行われているものの、処理費用の負担について政府、メーカ、消費者の3者間で意見
が一致していないことにある。こうした状況を打開する条件の1つとして関連法案の整備に期待
する意見もあるが、過度の期待はできないと見る向きもあり、業界は状況を静観しているのが実
情のようである。
実際、中国政府が検討を進めている法案をみると、その骨子は、政府が処理基金を設けて回収
システムを作り、処理企業が独立に経営することにある。しかし、処理基金の資金源はまだ決ま
っていない。これについて電子機器業界は、法案を実施するとすれば、政府は処理費用をメーカ
に徴収する可能性が高いとしており、この場合、メーカにとって電子機器製品事業のコストは 5%
~10%上昇するとしている。ハイアール、海信、澳柯玛(ao ke ma)などの3大家電メーカ(いず
れも青島)は、家電事業の利益率は売上高比で5~6%程度の水準に留まるとしており、リサイ
クルコストの負担はメーカの収益を圧迫する要因になるとみられる。また、処理専門企業の立場
からみると、メーカが処理費用を負担しない場合、現状の廃電子機器の回収・リサイクル実態か
ら廃棄製品を有価で回収しなければならず、事業の採算性はかなり厳しいものになる。
一方、中国家庭用電器研究院の家電資源能源利用中心の高級エンジニアは、次のように分析してい
る。現在のような個人による不適正な処理が行われていなければ、国内の家電廃棄物の現状の廃棄量か
ら試算して、電器廃物処理市場は専業処理企業(センター)が 10~20 社程度存在できる規模にある。中
国の国土が広大であることを考慮すれば、各省レベルの地方政府が専業電器廃棄処理場を設置し、地
方に合った実施ルールを設け、計画を具体化する上での交通運輸能力を考えることが重要であり、回収
地と専業処理場は近距離であることが望ましいとしている。
本調査では、費用の負担を巡る問題について、現在、廃電子機器回収・解体処理プロジェクト
を構想中の自治体および企業に電話取材と訪問調査を実施した。杭州市、上海市、ハイアールへ
の電話取材および仁新集団、上海市環保事業発展中心への訪問調査の結果を総括すると、問題は
2つに分かれる。1つは、すでに(違法、合法は別として)かなりの数の個人あるいは3~4人
で運営されている個人企業が電子製品廃棄物の回収・処理事業によって収入を得ており、政府の
構想どおりに廃電子機器の回収・処理体制を正常化し、正規のルートで処理するシステムに移行
した場合、実際問題として雇用と収入の両面で問題が発生することである。ただし、これは輸入
廃棄物が処理の対象になっているケースが多い。
今1つは、国内で発生する廃棄電子製品(家電製品を含む)は回収業者が廃棄者(消費者)か
ら有価で買い上げており、これを無料で引き取る、あるいは消費者に回収・リサイクル費用を直
接負担させる、あるいはメーカが販売価格にこの費用を上乗せさせるといったことによって、経
費を確保すること自体が現状では極めて難しいと考えられることである。すでに、リサイクルセ
ンターのような処理工場の建設計画を有しているケースでは、杭州市のように回収拠点を改めて
設置して回収ルートの確立に注力しているところもあるが、スタートしてみないとどの程度収集
することができるのか、まったく不透明とされている。
事業の採算性を判断する上で重要となるバリューチェーンについて、本調査では十分に把握す
るに至らなかったが、以下、断片的な情報を整理しておく。
①回収・解体コスト事例1
ⅰ)搬送:8トン/トラック 1 台、2台/日、2~3万元/8トン
ⅱ)品名:PCモニター(三菱電機、東芝、台湾製等、すべて外国製)
ⅲ)処理地:汕頭市・贵屿(gui yu)镇
ⅳ)始発地:広州市(贵屿(gui yu)镇では広州ルートで持ち込まれるものがほとんど)
ⅴ)解体:手または電動ドライバによる解体(手作業が多い)
ⅵ)成果物:修理して再利用可能な製品→中古市場へ。
再利用可能な部品→中古市場へ。
再利用不可能なもの→資源として回収し、販売。
・鉄、銅、アルミ→基本的にスクラップで販売。
・プラスチック→再生処理企業に販売し、リペレット化され、成型材料として販
売(ただし、造花などの原料に使用されるケースが多く、部品原料に使用され
るケースは少ない)。
・基板→焼却後、硫酸を用いて半導体から貴金属を回収し、販売。
・電線→銅線を簡単な装置で引き抜き、銅と被覆材をそれぞれ販売。被覆材をで
きるだけ高く販売することが収益の向上に繋がるため、銅線を引き抜く前に被
覆材の材質別に電線をかなり細かく分類しているケースもある。また、違法で
あるが電線の状態で焼却し、銅のみ回収しているケースもまだ多い。
ⅶ)処理費:作業は、初期解体と部位別処理に大きく分かれ、作業内容によって異なるが、平
均的にみると 300 元~700 元/月・人。
②回収・解体コスト事例2
ⅰ)搬送:3~5トン/トラック 1 台、3台/月
ⅱ)品名:PC(SONY,SANYO,CANNO,HP,SHARP,DELL,APPLE,PANASONIC 等)
ⅲ)処理地:汕頭市・贵屿(gui yu)镇
ⅳ)始発地:南海市大沥(da li)镇
ⅴ)作業:9~15 トン/1 週間・3~4人
ⅵ)利益:3000 元/トラック1台分→9000 元/月
③電力、用水価格
中国の電力、用水価格は地域によって異なる。ここでは、南京の環境保護局のコメントに基
づく価格を紹介しておく。
南京供電公司の工場用電力の価格は、1kWh で 0.544 元(7円/kWh)である。また、南京市
自来水(水道水)総公司の工業用水の供水価格は1㎥で 1.32 元であるが、税金、汚水処理費用、
水資源費などを含めると実質 2.6 元となる。
④買取価格、回収資源の価格、利益事例
ⅰ)廃棄電子製品の一般回収価格
一般的に廃電子機器・家電製品の回収は、
「電話予約」→「持ち込み」あるいは「回収業者が訪
問」→「見積」→「現金払い」→回収品運搬といった流れで行われる。回収スポットの買取価格
は、実際には製品の状態、型式(何年製のものか)、メーカ等によって異なり、当然、地域によっ
ても異なる。本調査で得たコメントに基づく限り、廃棄製品のプライスリストは存在しておらず、
ケース・バイ・ケースで取引されており、結果的に成立する価格が相場というのが実情のようで
ある。
複数の回収スポットに確認した結果を集約すると、解体処理せずに中古で転売できるものは相
対的に高く、若干の補修で中古市場に流すことができるものも比較的高値で取引されている。例
えば、ノートパソコンの新しいものであれば、1000~2000 元/台、デスクトップであれば 400 元
/台、洗濯機は 200~400 元、冷蔵庫は 400~600 元、白黒テレビは 100~400 元/台である。目安
は、修理して中古品で販売可能なものは新品価格の 20~30%程度に置かれている。また、修理後、
販売する際の価格は買取価格に新品の価格の 10%を上乗せした程度の価格となる。したがって、
新品価格が1万元であれば、買取価格は 2000 元~3000 元、中古品としての価格は 3000 元~4000
元となる。
以上は、中古品で販売できるもののケースであるが、中古品の価値がなく再使用可能な部品が
見込めるか、解体処理によって資源を回収するしかないものの場合は、買取価格が安くなる。以
下に、解体処理を前提とする聞き取り価格を紹介しておく。
・ テレビ:40~50 元(回収スポットからの買取価格、仁新(ren xin)電子廃棄物資源再生
利用有限公司コメント)
・ パソコン 40~50 元(回収スポットからの買取価格、仁新(ren xin)電子廃棄物資源再
生利用有限公司コメント)
・ 冷蔵庫:80~300 元
・ 冷蔵庫:80 元(回収スポットからの買取価格、仁新(ren xin)電子廃棄物資源再生利用
有限公司コメント)
・ パソコンのモニター:100 元~150 元(広東省の売買価格、上海市環保事業発展中心コ
メント)
・ 基板:800 元/トン(上海市環保事業発展中心コメント)
ⅱ)廃電子機器の回収・転売による個人の収入
利益:30~50 元/日・人
ⅲ)回収資源の価格
・ 銅:2万元/トン(上海市環保事業発展中心コメント)
⑤収益構造
以下、収益構造の試算結果を報告しておく。
ⅰ)基板の例(上海市環保事業発展中心コメントから試算)
・基板価格は 800 元/トン。
・基板からの回収銅は平均で基板重量の 20%であるため約 200kg。
・回収銅の販売価格は、純度にもよるが平均2万元/トン。
∴回収銅1トンベースの利益は、
・基板購入コスト 4000 元
・処理コスト 12,000~13,000 元(人件費ほか)
・回収銅の販売による収入 20,000 元
・粗利 300~400 元/回収銅トン
ⅱ)解体処理工場の例
(電子廃棄物資源再生利用有限公司コメントから試算)
・処理能力は、60 万台/年(TV、パソコン)
。
・処理能力は、30 万台/年(冷蔵庫、洗濯機、エアコン)
。
・工場建設の総工費 3500 万元(設備含) 10 年償却の単純計算で 350 万元/年。
・上記処理をすべてテレビ、冷蔵庫と仮定した場合の買取価格は、5,100 万元(45 元×
60 万台+80 元×30 万台)
。
・売上高(目標)2億元/年(前提:回収率 95%)
・従業員は、400 人(工員 350 人、技術スタッフ 50 人と仮定)。
・人件費は、540 万元(1000 元×12 ヶ月×350 人+2000 元×12 ヶ月×50 人)
∴粗利は、
・処理製品購入費 5100 万元
・処理コスト
人件費(オペレータ等)
:540 万元
役員(3 人):250 万元
電力等の動力費等の諸経費:約 370 万元(推定)
電力:362 万 4000 元(0.544 元/kWh×600 万 kWh/年)
用水:10 万 9200 元(2.6 元/㎥×3500 ㎥/月×12 ヶ月)
設備等償却費:350 万元
・総経費:6610 万元
・売上高:2億元
・粗利:約 1.3 億元
Ⅴ 中国の法整備状況とバーゼル条約
1.中国の法整備状況
中国には廃電子機器の処理を直接の対象とする法律がなく、これまで 1996 年4月に施行された
「中華人民共和国固体廃棄物汚染環境防治法」が適用されてきた。しかし、2000 年 4 月 1 日から
実施されたテレビ、パソコン、複写機、カメラビデオ、電話機など 11 種類の廃電子機器の輸入禁
止を前後として、国内回収品の処理を巡る問題も根源は同じあることから、廃電子機器処理の関
連法案の必要性が論じられるようになり、2001 年から国家発展改革委員会において「廃旧家電と
電子製品回収処理管理条例」の検討が開始された。また、2003 年 1 月には関連法として「中華人
民共和国清潔生産促進法」が施行されている。ただ、同法は廃棄物全般を対象とするものであり、
廃電子機器は同法を適用する対象の1つと位置づけられたに過ぎない。
その後、中国における廃電子機器関連法の整備の動きはさらに活発化するが、この背景には、
前述したEUにおけるWEEE、ROHSの検討が具体化に向けて動き出したことがある。
中国の廃電子機器関連法整備は、このEU2法への対処と、EUから中国に輸出される電子・
電気機器製品が廃棄された際の回収処理体制の整備の2つの側面から促進されているものである。
中国政府は、EUからの輸出製品について、その処理コストを前述したEU2法と同様に、メー
カに負担させる意向を有しており、先に述べた諸法案が施行された場合、国内で近代的かつ適正
処理による受け入れ体制が構築されていることが不可欠となる。
こうした事情から、中国では 2004 年に入って「廃旧家電と電子製品回収処理管理条例」の初稿
が国家発展改革委員会によって発表されたほか、
「わが国の家電製品・電子製品廃棄物回収処理シ
ステム建設」が仮法案として公表されるなど、廃電子機器・家電製品を適用の直接対象とする関
連法案の整備に向けた動きが活発化した。当初、両法案は 2004 年内にも施行される感にあったが、
関連業界との意見調整が難航し、なお検討下にある。
この間、2005 年 4 月には「中華人民共和国固体廃棄物汚染環境防治法」修正後実施されたもの
の、同年 7 月現在、前述した2法案のほか、
「電子製品汚染管理法」、
「電子信息製品汚染防止管理
法」、「電子製品廃棄物回収利用法草案」などの諸法案が起草ないしは検討下にある。これら検討
下にある法案のうち、EUのWEEEに対応したものが「廃旧家電と電子製品回収処理管理条例」、
ROHSに対応したものが「電子信息製品汚染防止管理法」である。
前述したように深刻の度合いが大きいのは対ROHSすなわち「電子信息製品汚染防止管理法」
であり、実施までの猶予はすでに 1 年を切ったが、同法が施行された場合、対応できないメーカ
がかなりあるのではとみられている。国家環境保護総局は 2005 年初頭から「電子信息廃棄物環境
汚染防止管理法」の起草に入り、当初、2005 年 7 月1日から施行される予定となっていたが、な
お関係各部門の審査を受ける段階にあり、施行は事実上見送りとなった。同法案は、電子通信製
品の製造企業を主要な対象とする規制であり、その施行によって電子廃棄物の汚染を製造の段階
から防止することが期待されているもの。また同法は、電子製品廃棄物の解体およびリサイクル
企業を主要な対象とし、廃棄物の回収技術および生産フローに対して具体的な規制を定めるもの
である。しかし、こうした期待はともかく、同法が施行されても電子機器メーカに対ROHS対
応能力がなければEU輸出で大きな打撃を受けることになるだけに、今後の成り行きが見守られ
る。
一方、WEEE対応といえる「廃旧家電と電子製品回収処理管理条例」も、本格施行までには
なお多くの課題を抱えている。以下、同法案について関係者のコメントを含めて整理しておく。
同法の骨子は、①同委員会が家電、電子製品廃棄物回収・処理に対し、協調、監督および管理
を行う義務がある、②科学技術部、財政部、建設部、産業情報部、税務総局、環境総局など各部
門が各自の範囲内で監督管理を行う、③家電、電子製品廃棄物回収・処理に当たり、地方責任制
度をとることになる、④廃棄家電処理企業に対して国が資格認定を行うといったことにある。
同条例によると、国が家電廃棄物の処理工場の建設、処理技術の研究開発、設備購入などサポ
ートする一方、消費者は廃棄する家電製品を家電製品の販売者、アフターサービスセンター、回
収企業などに処理してもらうことを義務付けられる。放置、贈与名目の処理と個人の解体作業は、
禁止される。同条例には、処罰方法も含まれている。
関係者(国家環境保護局、電子機器メーカ、処理事業の計画者など)への電話取材によって得
たコメントによれば、販売者の回収と交付の義務付けは、単に販売者が回収に参加するだけでは
なく、回収した電子機器・電気機器製品を専門的な処理センターに送ることを義務付けられる。
対象は、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコンなどで、その処理費用は消費者が自己負
担する仕組み。実際には、電子機器・家電製品メーカが、その回収処理コストを新製品に転嫁す
ることになるとみられている。しかし、関係者の話を総合的に判断すると、誰が処理費用を負担
するかについて、行政、メーカ、消費者の意見はなお一致していないようである。特にメーカは、
法律で消費者負担を徹底しなければ、実質的にはメーカが負担することになり、現状の利益率(前
述したように、電子機器・家電製品事業の利益率は売上高の5~6%程度とされている)では経
営を圧迫するとして、反発している。
2005 年 6 月末現在、同法案は国務院における審査段階にあり、関係各部門および産業界へのヒ
アリングが行われている。しかし、一方で、省レベルでは同種の法案の実施に踏み切っている省
もある。浙商(zhe shang)網(05/03/31)の報道によれば、浙江省では、「浙江省家電、電子製品
廃棄物回収・処理試行条例」を 2005 年 1 月1日から実施している。同条例では、テレビ、冷蔵庫、
洗濯機、エアコン、パソコン5種類の家電製品が対象になっており、これらの製品の指定回収ス
ポットによる回収が始まっている。また、回収に際して、政府機関、軍隊、公的機関などは廃棄
家電を無料で回収スポットに渡すことが義務付けられている。
以上、法整備の状況を概観した。EU2法のうち、中国の電子機器産業に決定的な打撃を与え
るのはROHSの方とする見方が支配的である。WEEEも中国の電子機器産業にとってコス
ト・アップ要因となるが、ROHSの実施は最悪の場合、中国の対EU輸出の停止になりかねな
い。
2.バーゼル条約との関連
廃電子機器に限らず、廃棄物貿易では国際法上、
「有害廃棄物の越境移動及びその処分の規制に
関するバーゼル条約(以下、バーゼル条約)」との関連が生じる。同条約は、国際的には、有害廃
棄物の国境を越えた移動は抑制すべきという考えから、輸出国から輸入国に対する事前通告及び
同意取得の手続きを義務付ける法律として 1989 年に批准され、1992 年に発効した。この背景に
は、1980 年代に先進国から途上国へ有害廃棄物が輸出され、
環境問題が問題となったことがある。
2005 年 4 月 8 日現在、批准国は 165 カ国にのぼっている。バーゼル条約の詳細は巻末の資料編に
収録したが、ここでは中国における廃電子機器問題との関連において、以下に整理しておく。
今日、廃棄物は貴重な資源としての側面を有しており、工業先進国では動脈産業を核とする経
済社会の持続的な発展を志向して行く上で、廃棄物の適正な処理・再利用が不可欠との考えから
静脈産業の構築が進められている。同時に、発展途上国の多くにおいても、輸入廃棄物の処理に
よる資源の再生化が活発に展開されている。
表6
有害廃棄物の輸出入に関する各国の規制(バーゼル条約事務局による通報)
条約事務局
バーゼル条約の
による
通報国
通報の概要※
通報年月日
根拠条文※
第3条3
電子機器廃棄物等 55 品目の輸入を禁止
中華人民共和国
2002.11.15
第13条2(b)
(2002 年 12 月 4 日報道発表資料)
第4条1
タイ王国
2003.7.11
トルコ共和国
2003.11.13
第13条2(c)
第4条1
廃タイヤの輸入を禁止
アスベストを含む廃棄物の輸入を禁止
第13条2(c)
マレーシア
2004.2.12
第3条
第13条2(b)
インドネシア共和国
2004.2.25
第4条1
使用済み触媒等、独自の有害廃棄物を定
義するほか、OECD 国からの処分目的の
輸入を禁止するなど、手続きを規定
廃バッテリーなど、有害廃棄物の輸入を禁
止
2004.8.17
第13条2(c)
出所:環境省ホームページ
しかし、廃棄物そのものおよび廃棄物処理は、環境、人間への影響を引き起こすリスクも内包
しており、国によっては、輸入する廃棄物の水準を保つため、独自に基準を規定している。中国
では、廃棄物原料の品目ごとに「輸入廃棄物環境保護管理基準」を規定している。また、2002 年
4月1日には、条約第3条3に基づく通報「廃家電等の輸入禁止」を受けた環境省令の制定が行
われている。表6に、中国を含む各国の規制の代表的なものを示す。
廃電子機器製品でいえば、使用済製品として排出されたテレビやパソコンは、輸出先で「中古
品」
(再利用品)として扱われる限り、廃棄物とみなされない。したがって、バーゼル条約の規制
対象ともならず、国際的な規制の枠組みが整っていない状況にある。しかし現実的には、中古品
と称して輸出された廃棄製品が部品取りあるいは廃棄を目的として持ち込まれた場合、不適正な
輸出としてバーゼル条約違反となるばかりでなく、輸出先国での環境汚染が懸念される場合もあ
る。
このため、中国のように廃電子機器の輸入を禁止している国もある。禁止ないしは規制を実施
している国の主目的は、国内産業保護および環境影響の回避にある。アジアでは、中国のほかイ
ンドネシアが廃電子機器の輸入を禁止している。最近では、輸入された中古製品が短期間で廃棄
物となってしまうことなどを避けるため、タイのように中古品の基準を規定した国もある。タイ
では、2003 年から、製造後 3 年以上経過した中古コンピューターや家電、製造後 5 年以上経過し
た複写機の輸入が禁止されている。ヨーロッパでも、冷媒にフロンガスを用いている中古冷蔵庫
の輸出を禁止する規定がある。
廃電子機器に限らず、廃棄物の処理による資源の回収ビジネスは、国によっては雇用問題、自
治体の財政等に係わる側面の問題を有しており、現実と法制度の調和あるいは経済と環境のバラ
ンスを取ることが難しい状況を生み出しているケースもある。
例えば、2004 年 10 月に開催されたバーゼル条約の第7階締約国会議(COP7)では、被覆
電線を有効利用したいインドが被覆電線を B 表に分類することを提案し、被覆電線を A 表に分類
するか B 表に分類するかが議論された。しかし、発展途上国では被覆電線の野焼きによる環境汚
染が深刻化しているという現実もあり、これに反対する意見もあった。結局、COP7ではイン
ドの提案が採択され、被覆電線を事前通知・承認の対象とはしないことが決定されている。
中国の廃電子機器を巡る問題の所在は、これと同じではないが、消費経済の発展の中で、増大
し始めた国内の廃棄製品と輸入廃電子機器製品の処理がもたらす光と影が根源的には同一の問題
を提起しており、現在、整備が進められている関連法案と“バーゼル国内法”がそうした問題す
なわち経済的な利点と環境汚染の回避をどう調和し、解消していくかが大きな課題となっている。
3.「バーゼル条約」と廃電子・電気機器製品補足
1.法律の概要
国際的には、有害廃棄物の国境を越えた移動は抑制すべきという考えから、輸出国から輸入国
に対する事前通告及び同意取得の手続きを義務付ける「有害廃棄物の越境移動及びその処分の規
制に関するバーゼル条約(以下、バーゼル条約)
」が 1989 年に批准され、1992 年に発効している。
80 年代に先進国から途上国へ有害廃棄物が輸出され、環境問題が問題となったことが背景にあ
る。同条約は、締約国と非締約国との廃棄物の輸出入を原則的に禁止し、締約国間で有害廃棄物
の輸出を行う際には、輸出国から輸入国政府に事前通知承認を得ることを規定している。現在、
批准国は 165 カ国にのぼる(2005 年 4 月 8 日時点)。
2.規制対象(有害廃棄物)の範囲
バーゼル条約では「有害廃棄物」として規制対象となるものを、附属書Ⅳに掲げる処分がなさ
れるものであって、次に掲げるものであると規定している。
・附属書I(廃棄物の排出経路、有害物質)の分類に属する廃棄物
・附属書Ⅲ(有害特性)の分類に属する廃棄物
・締約国の国内法令により有害とされている廃棄物(第1条第1項(b))
附属書Ⅱの「特別の配慮を必要とする廃棄物の分類」として、
「家庭から収集される廃棄物」と
「家庭の廃棄物の焼却から生ずる残渣」があり、有害物質を含まないがバーゼル条約上、規制の
対象となっている(これらは「他の廃棄物」とされている)。具体的な品目は附属書Ⅷの A 表(規
制対象物)と附属書Ⅸの B 表(規制対象外)に定められている。
これを具体的に示したリストが附属書Ⅷ(原則規制対象:鉛蓄電池、廃駆除剤、めっき汚泥、
廃石綿、シュレッダーダスト等)と附属書Ⅸ(原則非対象:鉄くず、貴金属のくず、固形プラス
チックくず、紙くず、繊維くず、ゴムくず等)である。
各国はバーゼル条約締約国となる際、
「各国独自で定めた廃棄物」
(第1条第1項(b))について、
バーゼル条約事務局に通報しなければならない。また、重要な変更を行った際も事務局にこれを
通報する必要がある。
附属書Ⅰ(廃棄経路・含有成分)
経路(18 経路)
・医療廃棄物 ・有機溶剤の製造等
含有物質(27 種類)
・ヒ素
・鉛等
附属書Ⅲ(有害特性)
・感染性
・爆発性
・腐食性
・急性毒性
・慢性毒性等、 計 14 種類。
附属書Ⅰ
附属書Ⅲ
規制対象
(告示 別表第3)
規制対象の明確化(リスト化)
附属書Ⅷ(原則規制対象)
鉛蓄電池,廃駆除剤,
めっき汚泥,廃石綿,
シュレッダーダスト 等
(告示 別表第2)
・
・
・
附属書Ⅸ(原則非規制対象)
鉄屑,貴金属の屑,
固形プラスチックくず,紙屑,
繊維くず,ゴムくず 等
(告示 別表第 1)
附属書Ⅷに該当する品目であっても附属書Ⅲの有害特性を有しないものは規制対象外
附属書Ⅸに該当する品目であっても有害物質に汚染されている等により附属書Ⅲの有
害特性を有するものは規制対象
なお、附属書Ⅷ又はⅨに掲載されていないものについては、従来どおり、附属書Ⅰ及び
Ⅲを参照して判断する。
図 1 バーゼル条約の規制対象廃棄物の考え方
出典:環境省・経済産業省資料「バーゼル条約・バーゼル法の概要等」
「有害廃棄物の定義」はある程度決まっているものの、その運用については様々な問題もある。
特に、有害廃棄物か否かを確認する溶出試験の方法がバーゼル条約では定められていないため、
各国が独自に有害廃棄物を定義することが容認されている。そのため、輸出国では原料・製品と
見なされるものが、輸入国では有害廃棄物となるなどの矛盾が生じるケースもある。
B 表に掲げられている廃棄物や中古品に関しても、各国が独自に規制を定めている場合がある。
例えば中国では、輸入が可能な廃棄物のリストを作成しており、廃タイヤなどリスト外のものは
基本的に輸入禁止となっている。インドネシアでは 1990 年代初めに廃プラスチックの輸入を禁止
しており、タイは 2003 年 5 月に廃タイヤの輸入を禁止している。
輸入する廃棄物の水準を保つため、独自に基準を規定している国もある。中国では廃棄物原料
の品目ごとに「輸入廃棄物環境保護管理基準」を規定している。また、2002 年4月1日には、条
約第3条3に基づく通報「廃家電等の輸入禁止」を受けた環境省令の制定が行われているi。
※ 第7類廃棄物のうち、55 品目の廃電気製品(テレビ、冷蔵庫、クーラー、電子レンジ、コピ
ー機、PC、ビデオカメラ、炊飯器、ゲーム機(パチンコ台)、電話機など)の輸入が禁止され
た(中古品を含む)ii。ただし、ゲーム機については「加工貿易」の場合、電話機については
カード・硬貨を使用するものの場合は除く。
使用されたテレビやパソコンなどは、輸出先で「中古品」
(再利用品)として扱われる限り、廃
棄物とみなされない。バーゼル条約の規制対象ともならず、国際的な規制の枠組みが整っていな
い状況にある。しかし中古品と称して輸出されたものが実際には部品取りあるいは廃棄を目的と
して持ち込まれた場合、不適正な輸出としてバーゼル条約違反となるばかりでなく、輸出先国で
の環境汚染が懸念される場合もあるiii。
一部の国では、国内産業保護の観点から中古品の輸入規制を行なっているところもある。イン
ドネシアや中国では中古の電気製品の輸入が原則禁止されている。最近では、輸入された中古製
品が短期間で廃棄物となってしまうことなどを避けるため、タイのように中古品の基準を規定し
たところもある。2003 年から、製造後 3 年以上経った中古コンピューターや家電、製造後 5 年以
上経った複写機の輸入が禁止された。ヨーロッパでも、冷媒にフロンガスを用いている中古冷蔵
庫の輸出を禁止する規定ができているiv。オーストラリアでは、E-waste の定義を規定しており、
稼動状況などが細かく規定されている4。
2004 年 10 月に開催されたバーゼル条約の第 7 回締約国会議(COP7)では、被覆電線を有効利
用したいインドが B 表に分類することを提案し、被覆電線を A 表に分類するか B 表に分類するか
が議論された。たが、発展途上国で野焼きによる環境汚染が考えられたため、これに反対する意
見もあった。結局、COP7 ではインドの提案が採択され、被覆電線を事前通知・承認の対象とはし
ないことが決定された2。
3.バーゼル国内法
日本は、1993 年に同条約に加入し、
「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」
(以下、
バーゼル法)を施行し、
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下、廃棄物処理法)を改正し
ている。バーゼル法と廃棄物処理法および「外国為替及び外国貿易法」
(以下、外為法)によりバ
ーゼル法に対応している。
バーゼル条約(A 表、B 表)に対応して、バーゼル法においても「特定有害廃棄物等」として規
制対象となるもの、規制対象外となるもののリストを示している。別表第一(規制対象外)と別
表第二(規制対象)があり、いずれにも規制されていないものについては別表第三で判断するこ
ととなっている。
輸出または輸入しようとする廃棄物
別表1(非対象リスト)
鉄屑,繊維屑等
53 種類
該当
非該当
別表3
鉛,ヒ素,ダイオキシン類
を一定以上含むもの等
53 種類
非該当
該当
規 制 対 象 外
図2
別表2(対象リスト)
めっき汚泥,鉛蓄電池等
PCB 等 59 種類
該当
規 制 対 象
バーゼル法の規制対象物に関する告示の概要
出典:環境省・経済産業省資料「バーゼル条約・バーゼル法の概要等」
日本において越境移動の規制対象となる廃棄物はバーゼル法における「特定有害廃棄物
等」と廃棄物処理法における「廃棄物」である。バーゼル条約の規制対象となる有害廃
棄物と廃棄物処理法の規制対象物である「廃棄物」の定義の違いについては、図3のよ
うに、双方の定義には有害物質の有無、取引価値の有無で、定義にズレが存在している。
そのため、リサイクル目的で再生資源などを輸出入する場合は、バーゼル法の規制対象
となるか否か、廃棄物処理法の規定する廃棄物に該当するか否かを確認しておく必要が
ある。
廃棄物処理法の
規制対象物
有価物
廃
棄
物
( 無 価 物 )
環境大臣による
輸出の確認
輸入の許可
規制対象
バーゼル国内法の
規制対象物
有
経済産業大臣による
輸出入の承認
害
物
有価物
輸出可能
非有害物
図 3 バーゼル法と廃棄物処理法の規制対象の相違
出典:環境省・経済産業省
資料等
4.輸出の手続
輸出しようとする貨物が特定有害廃棄物等に該当する場合は、外為法に基づく経済産業大臣の
輸出の承認を得る必要がある。そのため、再生資源等を輸出入する際には、税関に「経済産業大
臣の承認を受けていることの証明」あるいは「特定有害廃棄物に該当しないことの証明」が必要
となる。
さらに、特定有害廃棄物等が廃棄物処理法上の廃棄物に該当する場合は、国内処理の原則から、
国外での安易な処理が行われることを防止するため、輸出者が環境大臣の確認手続きを行うこと
が義務付けられているv。
特定有害廃棄物等に該当しない事を証明するためのポイント
1. 分析結果等により客観的に有害性の有無が判断できる資料の提示
2. 輸出入後にリサイクルされることが判断できる資料(有償取引であること、輸出入後の処分者
がリサイクル業者であること等を示す資料)の提示
3. 廃棄物処理法の廃棄物ではないことが判断できる資料の提示
環境大臣は輸出承認に際して、ある種の拒否権を持つが、輸出について最終決定権を持つのは
形式上、経済産業大臣であるとされている。しかし、事実上の輸出の最終決定権は水際である税
関にある。
•
•
•
•
•
特定有害廃棄物等の国内処理の原則
特定有害廃棄物等を輸出する際の輸入国・通過国への事前通告、同意取得の義務付け
非締約国との有害廃棄物等の輸出入の禁止
不法取引が行われた場合等の輸出者による再輸入義務等
移動書類の携帯等
[国内法の整備]
<特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律>
条約附属書に掲げる有害特性を有する廃棄物等もしくは家庭
定義
系の廃棄物またはこれらに類する有害廃棄物等として条約の
「特定有害廃棄物等」 規定に基づき締約国が指定したもの。
基本的事項の公表
経済産業大臣及び環境大臣は、基本的な事項を定め、公表す
るものとする。
(輸入の承認)
(輸出の承認)
①
特定有害廃棄物等を輸出しようとする者
は、外為法に基づく輸出の承認を受ける。
② 環境大臣は、経済産業大臣から環境汚染を
防止するため特に必要があるものについ
て、その申請の写しの送付を受け、環境保
全上支障がない旨の確認を行い、経済産業
大臣に通知する。
③ 経済産業大臣は、環境大臣の通知を受け
たあとでなければ①の承認をしてはならな
いものとする。
①
②
特定有害廃棄物等を輸入しようとする者
は、外為法に基づく輸入の承認を受ける。
環境大臣は、必要がある場合には、経済
産業大臣に対し意見を述べることが出来
る。
(移動書類)
特定有害廃棄物等を輸出する場合において、移動書類を携帯して運搬することを義務
付けるとともに、輸入された特定有害廃棄物等の処分が完了した場合において、その旨を
輸入の相手方、輸出国に通知するものとする。
(措置命令)
①
経済産業大臣及び環境大臣は、必要があると認めるときは、特定有害廃棄物等を輸出した者等に
対し、当該特定有害廃棄物等の回収、処分他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
② 経済産業大臣及び環境大臣は、必要があると認めるときは、特定有害廃棄物等を輸入した者等に
対し、当該特定有害廃棄物等を適正に処分することとその他の必要な措置をとるべきことを命ずるこ
とが出来る。
図 1 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律概要
出典:
環境省・経済産業省資料「バーゼル条約・バーゼル法の概要等」
輸出者
輸入者,処分者
契約
①
輸入国,通過国
②
③
④
経済産業省
環境省
⑥⑦
⑤
輸出者
環境省
⑦
【輸出手続の流れ】
① 外為法に基づく輸出申請
② 申請書類写し送付
③ 相手国への通告
④ 回答の受領
⑤ 回答の送付
⑥ 外為法に基づく輸出承認
⑦ 輸出移動書類の交付
⑦’ 輸出移動書類写しの送付
⑧ 関税法に基づく輸出申告
⑨ 関税法に基づく輸出許可
⑩ 引渡し及び移動書類携帯の義務
⑪ 処分完了の通知等
⑧
税関
⑨
輸出者
⑩
輸入者
⑩
運搬者
企業間のやり取り
⑩
企業と政府間のやり取り
処分者
⑪
環境省
⑪
政府間のやり取り
輸出者
※税関で有害廃棄物でないと主
張する場合、有害性がないこと
を立証する必要がある。
図 5 輸出するときの手続きの流れ
出典:経済産業省『バーゼル条約・バーゼル法の概要等』パンフレット
5.事前相談
輸出入しようと考えている貨物が、①バーゼル法に規定する特定有害廃棄物等に該当するか否
かについて、②廃棄物処理法に規定する廃棄物に該当するか否かについて、環境省及び経済産業
省は事前相談を受け付けている。この事前相談は、書類に記載されている内容について、バーゼ
ル法規制対象に該当するか否かおよび“廃掃法”に該当するか否かについての助言を行うもので
あるが、現実に輸出入される貨物そのものについて関係法規適合を証明するものではないvi。事
前相談書のほか、必要に応じ以下の書類又はその写しの提出が必要な場合もある。
必要に応じて必要な書類には、次のものがある。
① インボイス
② 輸出入契約書
③ 国内取引伝票(請求書、領収書等)
④ 貨物全体の写真
⑤ 成分分析表
⑥ 分析サンプルの写真
⑦ 企業概要
⑧ その他
環境省・経済産業省に相談のあったケースの判断の結果は、2002 年 12 月から税関に通知され
る体制が作られている。
また、環境省・経済産業省は毎年、全国各地で定期的に説明会などを開催している。
6.廃棄物の輸出状況
最近、北朝鮮への RDF(固形化廃棄物燃料)輸出の相談などが増えているが、将来的な環境汚
染(大気汚染等)が懸念されるのに関しては、輸出が許可されていない。また、基本的にはアス
ベスト等、日本でも処理困難物とされるものに関しても輸出は認められていない。
廃棄物であるかどうかの判断は、
「輸出の場合に特別に扱われるものではなく、国内の場合と同
じく、その形状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合
的に勘案して判断される」とあり、以下の相談書と貨物と金銭のフロー図により環境省が判定し
ている。輸出先が廃棄物を購入していても、排出者側で経費を清算すれば手元マイナスになるよ
うな場合であれば、有価物とはみなれない。また、海上運搬費が日本側負担であるケースについ
ては、原則として廃棄物に該当するとして取り扱われている。
廃棄物処理法における「廃棄物」の輸出については、国内処理の原則viiを具体化するとともに、
海外での安易な処理が行われることにより、国内の排出事業者責任の空洞化が生ずるなど国内で
の適正処理に支障をきたすことを防止する観点から、廃棄物処理法第 10 条及び第 15 条の4の5
において環境大臣の確認が必要とされている。
現行法では、
「国内処理の原則に則り、事業者自らが排出者であり、廃棄物処理基準を下回らな
い方法により処理されることが確実であって、再生利用が確実であると認められる場合等に環境
大臣の確認を行うもの」とあることから、最近、
(国内で)利用できない廃棄物について輸出した
いとの相談が増えており、環境省は、2002 年 7 月 5 日から 8 月 2 日まで、パブリックコメントを
募集viiiし、審査基準の明確化を図った。
国内処理原則に基づく厳しい輸出規制により、廃掃法改正以降の輸出実績はなかったが、この
審査基準が明確されて以降、北陸電力による韓国セメント会社への石炭灰の輸出が、初めて環境
省の輸出承認を得て 12 月に輸出されたix。
今後、どのような「廃棄物」の輸出が増えるであろうとの可能性は示唆されるが、環境省は「廃
棄物の輸出を奨励しようとするものではない」
、「個別案件ごとに、審査基準に照らし判断する」
など、細かな条件をあげていることから、その可能性は少ないと思われる。今回の実施に当たっ
ては、環境省職員が輸出先である韓国まで足を運んで処理状況などを視察しており、多くて年 2,
3 件が限度ではないかと考えられる。中小規模事業者の個々の申請にまで対応できるとは考えに
くく、処理がそう難しくない大手企業の「廃棄物」に限られると思われる。
7.罰則規定
廃棄物処理法の改正に伴い、「未遂罪」が適用されることとなったx。罰則は、不法投棄(最大
5年、1億円)に対し、廃棄物処理法の無確認輸出が3年、300万円、外為法の無承認輸出は
1年、300万円と格段に安い。今後、引き上げが予想される。
国内処理の原則:第2条の2
1 国内において生じた廃棄物は、なるべく国内において適正に処理されなければならない。
2 国外において生じた廃棄物は、その輸入により国内における廃棄物の適正な処理に支障が生
じないよう、その輸入が抑制されなければならない。
輸出
輸入
輸入の許可:第 15 条の4の3
○ 廃棄物の輸入には環境大臣の許可が必要
許可の基準
•
国内における廃棄物処理に関する設
備及び技術に照らし、適正に処理さ
れること
•
申請者が当該廃棄物に応じた処理能
力を持つ産業廃棄物処分事業者等で
あること
輸入廃棄物の区分:第2条第4項第2号
•
輸入廃棄物は産業廃棄物(特別管理産業廃
棄物を含む。)とする
輸入者の特例:第 15 条4の4
•
廃棄物を輸入した者は当該廃棄物の排出
事業者をみなす
→第 12 条、第 12 条の 2 等の規定に基づき事
業者として処理
一般廃棄物:第 10 条
産業廃棄物:第 15 条の4の5
○ 廃棄物の輸出には環境大臣の確認が必要
確認の基準
•
国内における当該廃棄物の処理に関する設
備及び技術に照らし、適正な国内処理が困
難であること
•
輸出の相手国において再生利用されること
が確実であること
•
国内の処理基準を下回らない方法で処理さ
れることが確実であること
•
申請者が法的な処理責任を持った者
•
(一般廃棄物:市町村、産業廃棄物:排出
事業者 等)であること
報告の徴収:第 18 条第 2 項
環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、国外廃棄物を輸入しようとする者若しくは輸入したもの
又は廃棄物を輸出しようとするものに対し、国外廃棄物の輸入又は廃棄物の輸出に関し、必要な報告を求めるこ
とができる。
立入検査:第 19 条第 2 項
環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、国外廃棄物を輸入しようとする者若しくは
輸入したもの若しくは廃棄物を輸出しようとする者の事務所、事務所その他の場所に立ち入り、国外廃棄物の輸
入若しくは廃棄物の輸出に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度にお
いて廃棄物を無償で収去させることができる。
※ 輸入廃棄物の処理については、国内発生産業廃棄物と同じく、処理基準に適合しない処理が行われた場合の
改善命令、生活環境の保全上の支障の除去等を命ずる措置命令、さらには罰則の規定が適用される。
(3)研究開発成果の社会的含意、特記事項など
この研究での成果の社会的含意では国内の仕組みを国際的に広げるには、国内法
の及ばない地域に於いて、正しく循環系を運用するという問題を克服することが最
も重要な課題であることを認識し、その対応策を研究した事にある。社会的に意味
のある研究とするには、最終的に社会の仕組みとして研究成果が織り込まれること
が必要である。そのいみで、研究成果を実装する地域として中国に焦点を合わせ、
中国の4研究機関と研究を進めたことは、非常に意義深いことであった。現時点ま
で実装されるかどうかについては、まだ不明であるが、この研究の最終段階で、中
国全国人民会議環境部会主催のシンポジウムに招かれて講演できたことはその一歩
と考えている。また、中国での成果は同じ問題を抱える先進工業地域の循環システ
ムを構築するに際して非常に有益であると考えている。今後2050年に向かって地球
人口の増加はこれらの地域で生じることを考えたとき、日本政府による試験拠点を
構築する為のプロジェクトを支援する枠組みが提供されることを期待したい。また、
電機電子機器の製造業においては、社会的な活動の中に、使用済み製品の再生技術
により発展途上地域を支援する事を位置づけることを期待したい。
(4)研究成果の今後期待される効果
ものを長く使い続ける工業技術が、スクラップ・アンド・ビルドの技術に置き換
わっている。この傾向は技術の進歩と相まって工業技術の変革を進めた。しかし、
必要とする機能を突き詰めたとき、ものを長く使い続けるための工業技術の確立も
また重要な課題であることは明らかである。この研究では、地球規模の循環システ
ムを研究する中で、発展途上地域の需要を満たすことについて認識を深めることに
なったと思う。今後このような見えない需要を念頭に置いた地球の資源、環境問題
の研究、信頼性の高い電機電子製品の開発が加速することを期待したい。
4.2
電子部品に含有する有害物質の表示とデータベースの構築
(総括グループ)
(1)研究開発目標
電機電子機器を設計するときに使用するCADシステムでのデータ標記に対する要求事
項を調査する。また、グローバルな使用環境でCADシステムが構成され、調達システムと
の連携が可能のことを確認する
(2)研究実施内容及び成果
循環システムを構成する場合、リサイクルの容易な材料とそうでない材料が分離された
形で廃棄されるかそうでないかは、総合的なシステム設計に大きな影響がある。例えば、
廃棄された機器に有害物質が含まれていないことが明らかであれば、廃棄された機器の国
境間移動が容易になる。また、リサイクル技術が未熟な段階ではリサイクルを行わず、蓄
積するという戦略を可能とする為にも必要である。この概念を図―1に示す。また、リサ
イクル性を経済性の面から評価する為には、材料の市場価格とリサイクルコストの対比を
行うことが必要である。最近の事例でも明らかなように需要が拡大すれば自動的に価格は
高騰し、高いコストでも市場が受け入れる。この関係を図―2に模式的に示す。即ち、技
術の成熟度と需要量を見ながらリサイクルの時期を決定することで、自立できるリサイク
ルシステムを構築する可能性が出てくる。リサイクルシステムを構築するに当たり、時間
を組み込んだ戦略を立てられるかどうかは、設計段階で機器の設計者が部品の選定段階で
有害物質の情報を的確に知り分解の容易な機器設計を行う事が必要である。当面の課題と
して規制された有害物質を排除することを主眼に、電機電子機器に関わる有害物質の規制
内容と部品調達システム及び電子機器設計用 CAD の現状を調査した。
その結果、部品調達システムを構築するためのコード化、プロトコールの共通化に向け
た活動が既に世界規模で推進中である事が確認された(Rosetta Net コンソーシアム)。
また、材料属性を取り込むプラットフォームとなる電子機器設計用 CAD システムも、商業
ベースで入手可能な段階にある事が確認された(例えば図研(株))。これらのシステムは
Internet ベースによりグローバルにアクセス可能である。従って、有害物の属性が定めら
れれば、容易に設計の現場に取り込むことが出来ると言える。
有害物の表示に関しては本来、有害性の影響度から科学的に定められるものである。し
かし、電子部品に関連した規格 IEC Guide 113、EIA-EICTA-JGPSSI Joint Industry Guide
/ JEDEC JIG-101、IPC Material Declaration Handbook、ZVEI Umbrella Specs、DIN 19220
/ IEC 61906、IMDS、IPC 1752 の表示方法についてはまだ統一が取れていない。これらの
調査結果は英文で後に添付する。
毒性物質を含まない部分
混在している部分
生産者
分離
毒性物質を含む部分
毒性物質の規制
持ち帰り制など
使用量削減
混在している部分
管理条件下で集積
リサイクル
市場
保管期限
図―1
単位は任意値
価格
コストは
上向きに
表示
リサイクル困難材料の分離保管
リサイクル
コスト
① 市場価格と材料の
リサイクルコストとの
分岐点
代替材料
との価格差
累積産出量
② 代替材料とリサイクル
材料のコスト分岐点
年産はグラフのスケールを
累積値の10倍にしで表示
資源の
産出量は
下向きに
表示
③ 最大年産量
産出を始めてからの年数(模式的な表示)
図―2
リサイクル材料のコスト競争力
(時間経過の模式図)
研究内容
1. Introduction __________________________________________________________________ 61
2. Scope of the Study ____________________________________________________________ 63
3. Driving Forces for Material Declarations and EcoDesign: Legislation ___________ 65
3.1.
End-of-Life Vehicles Directive ___________________________________________ 65
3.2.
Waste Electrical and Electronics Equipment Directive______________________ 65
3.3.
Restriction of Hazardous Substances Directive_____________________________ 67
3.4.
Energy-using Products Directive __________________________________________ 68
4. Comparative analysis of existing forms of material declarations _______________ 69
4.1.
JEDEC Joint Industry Guide JIG-101________________________________________ 70
4.2.
IPC 1401 Material Declaration Handbook____________________________________ 72
4.3.
IEC Guide 113 ____________________________________________________________ 72
4.4.
ZVEI Umbrella Specs ______________________________________________________ 73
4.5.
DIN 19220 / IEC 61906 ____________________________________________________ 73
4.6.
IMDS International Material Data System___________________________________ 74
4.7.
IPC Electronics Materials Declaration Standards and Forms_________________ 74
4.8.
Comparison of material declaration schemes________________________________ 75
5. Comparative analysis of necessary material data for existing eco-assessment tools
78
5.1.
Overview of existing methods _____________________________________________ 78
5.1.1. Basic methods __________________________________________________________ 78
5.1.2. Methods based on material intensities __________________________________ 79
5.1.3. Methods regarding hazards due to product contents ______________________ 82
5.1.4. Methods regarding hazards due to process operations ____________________ 83
5.1.5. Methods regarding End-Of-Life __________________________________________ 83
5.1.6. Methods for Eco-Design implementation __________________________________ 84
5.1.7. Methods for Eco-Design product group studies ___________________________ 85
5.2.
Methods in Detail ________________________________________________________ 85
5.2.1. EuP Eco-Report _________________________________________________________ 85
BOM like structure vs. aggregated declaration ____________________________________ 87
Weighting issues _____________________________________________________________ 87
Appropriateness of basic data __________________________________________________ 88
5.2.2. IZM/EE-Toolbox _________________________________________________________ 90
Toxic Potential Indicator (TPI) __________________________________________________ 90
TPI Case Study: USB stick _____________________________________________________ 94
Step 1: Inventory Analysis______________________________________________________ 95
Step 2: Material content analysis ________________________________________________ 96
Step 3: TPI Calculation ________________________________________________________ 98
The Recycling Potential Indicator (RPI) _________________________________________ 100
Issues not examined by the RPI _______________________________________________ 101
Input parameters ____________________________________________________________ 101
Input Parameter 1: The Recycling process _____________________________________ 101
The Input-vectors ____________________________________________________________ 102
Input Parameter 2: Material Profile of the Product ________________________________ 104
Numerical Aggregation of the Recycling Potential Indicator ________________________ 104
6. Development of a best-practice strategy for material declaration based eco-design
106
6.1.
Material Declaration View _______________________________________________ 107
6.2.
RoHS and WEEE View ______________________________________________________
6.3.
Recyclability View ______________________________________________________
6.4.
EcoDesign Tool View _____________________________________________________
6.5.
Design Workflow View ____________________________________________________
6.6.
Conclusions _____________________________________________________________
References _______________________________________________________________________
108
108
108
109
110
111
FIGURES
Fig. 1: Material composition of a power supply unit ............................................................... 61
Fig. 2: Framework of the study ................................................................................................ 64
Fig. 3: Excerpt from Recycling Passport (reference: Project PROMEKREIS) ....................... 67
Fig. 4: The map of material declaration activities (individual company activities not included)
.................................................................................................................................................. 70
Fig. 5: JIG-101 cover................................................................................................................ 71
Fig. 6: Material composition of a Pentium II Personal Computer............................................ 72
Fig. 7: Examples for products, parts, and sub-parts at different points in the value-added chain
(DIN 19220 [34])...................................................................................................................... 74
Fig. 8: Correlation of package size and Si content for ICs (source: ST Microrelectronics) .... 88
Fig. 9: Overview TPI calculation scheme ................................................................................ 91
Fig. 10: From material declaration to environmental screening assessment............................ 94
Fig. 11: Analysed USB Flash Memory .................................................................................... 95
Fig. 12: Material composition of USB Flash Memory............................................................. 98
Fig. 13: TPI per Material of a USB Flash Memory.................................................................. 99
Fig. 14: TPI per Component of a USB Flash Memory............................................................. 99
Fig. 15: TPI per Material of a USB Flash Memory – JIG-101 substances and compounds
marked .................................................................................................................................... 100
Fig. 16: Typical material output in the „shredding/ sorting” process..................................... 104
Fig. 17: The link between materials declaration and micro systems design .......................... 110
TABLES
Tab. 1: List A and B substances of JIG-101............................................................................. 71
Tab. 2: Levels of reporting according to IPC-1752.................................................................. 75
Tab. 3: Comparison of material declaration schemes............................................................... 76
Tab. 4: Pros and cons of declaration schemes for eco-design .................................................. 77
Tab. 5: Overview of environmental screening assessment methods (cont. on next page) ....... 80
Tab. 6: Proposed IC Guide for the EuP EcoReport methodology (data from STM) ............... 88
Tab. 7: Numerical and verbal scaling for standard scale factors.............................................. 92
Tab. 8: Frequently used R phrases and their standard scale factors NR .................................. 92
Tab. 9: List of Components in the USB Flash Memory........................................................... 95
Tab. 10: Different Recycling Processes ................................................................................. 101
Tab. 11: Input vectors used in the determination of a treatment process. .............................. 102
Tab. 12: Life cycle thinking through material declaration based ecodesign – applicability and
limits ....................................................................................................................................... 106
Tab. 13: Key Environmental Performance Indicators for Mobile Phones [44]...................... 107
Introduction
Electronic equipment contains a huge amount of different materials, usually up to several
hundreds. Several of these materials are harmful for the environment, either at material
acquisition, processing, or at the disposal stage. For recycling processes specifically this
complexity is a serious problem as proper separation is not possible and only certain
materials can be recovered.
The figure below shows the composition of the circuitry of a switched power supply, weighting
approx. 22 grams.
Fig. 1: Material composition of a power supply unit
Nearly all electronics companies supplying major OEMs have to or will have to provide
material declarations. Just maintaining data bases for material declarations is not useful to the
companies, besides fulfilling the requirements of their customers. A pro-active strategy to use
these material data also as a basis for eco-design offers remarkable synergy effects.
Companies which are well prepared will benefit from a pro-active implementation and
management of material declarations. They will be ready to meet the upcoming requirements
much better than with short-run activities and thus have constant legal security.
Eco-Design can be performed on different levels. These are roughly:
ƒ compliance with a banned substances list
ƒ ranking of materials based on qualitative assessments
ƒ ranking of materials based on environmental indicators
ƒ screening LCA (life cycle assessment)
ƒ full-scale LCA
The European EuP directive – the so-called eco-design directive – defines ecodesign as
follows [29]:
‘Ecodesign’ means the integration of environmental aspects into product design with
the aim of improving the environmental performance of the EuP throughout its whole
life cycle
As this definition incorporates the life cycle thinking aspect, only the fourth and fifth level of the
above mentioned levels would meet the ecodesign definition of the EuP directive. However, in
this study the term ecodesign refers also to environmental product improvement activities on
the sub life cycle level.
Current material declaration schemes rarely serve the needs of these eco-design approaches.
Partly these declaration schemes even do not guarantee a “legal compliance approach”
(mainly with respect to the RoHS directive requirements).
Scope of the Study
The proposed study with the title “Basic Product Material Declaration - Data Requirements for
Eco-Design” is based on the following pre-considerations:
ƒ
The first step in eco-design of electrical or electronic equipment (EEE) is usually an
environmental assessment of an existing product, a new prototype, or the design
parameter of a new development. The material content of an electronic product is
–among others – a very important aspect for eco-design and eco-assessment
respectively.
ƒ
A proper product material declaration can serve as an excellent information source for
a full environmental assessment (LCA) or a fast environmental screening. In both
cases product material data (declaration) are necessary; however, depending on the
eco-design or eco-assessment approach a 100% declaration of all containing
materials/substances (to the last ppm) might not be necessary.
ƒ
There is a trend to pass material declaration requirements up the supply chain of the
electronics industry, partly driven by legislation activities of the European Commission,
e.g. WEEE/RoHS-Directive, and the adopted EuP-Directive, partly by strict
environmental policies of major OEMs. Until this trend set in, fulfilling these
requirements was mainly done by labor-intensive data acquisition and data
management, but such data was rarely used by the suppliers to take pro-active
action for a more environmentally benign product design.
The working hypothesis for this study is that
ƒ
Eco-Design of electrical and electronic equipment (EEE) starts with a thorough
product eco-assessment. Experience shows, that full eco-assessment (LCA) of EEE
are very time and cost intensive due to the complexity of data, which must be
obtained.
ƒ
Following the important “time and cost consideration” a more practical or efficient
approach is needed by the industry in order to establish a continuous Eco-Design.
Such an approach must however, still detect the most important environmental
aspects of a product throughout the product life cycle.
ƒ
Product material data (material composition of a product) are a very good source or
starting point for such an eco-assessment. A 100% material declaration would be
useful, but is (still) not required by law. OEMs start to inquire comprehensive product
material data along their supply chains.
Under these conditions the task is to adjust existing material data (declaration) and data
requirements for eco-assessment and Eco-Design of EEE respectively. Eco-design of EEE
should have two perspectives: First, a product life cycle perspective in order to determine the
most critical environmental aspects. Second, a value chain perspective in order to investigate
a more time and cost-efficient way towards the generation of usable material declaration.
The schematic diagram below illustrates with the grey area the focus of the study’s
investigation.
Areas of investigation
Electronics
specific
Eco-Design
What kind of information is needed for eco-design?
LCA based
eco-design
screening based
eco-design
Extended
eco-data
IMDS
Umbrella
Specs
Negative
List
Joint Industry
Guides
full 100%
declaration
eco²-efficient
material declaration
What kind of material declaration is efficient for eco-design?
High data Complexity and Costs
Fig. 2: Framework of the study
The final chapter summarises the findings to development of a best-practice strategy for
material declaration based eco-design from different perspectives, namely
ƒ Material Declaration View
ƒ RoHS and WEEE View
ƒ EuP View
ƒ Recyclability View
ƒ EcoDesign Tool View
ƒ Design Workflow View
Driving Forces for Material Declarations and EcoDesign: Legislation
There is no legislation that explicitly requires material declarations, especially positive lists, for
electronic equipment. Although it has become obvious in recent years, that compliance with
many evolving legislative requirements needs appropriate data management. Several
declaration standardization efforts even have been European environmentally based
legislation is a driver for this development.
End-of-Life Vehicles Directive
The End-of-Life Vehicles Directive [25] became effective July 1, 2003. This Directive severely
restricts the use of Pb, Hg, Cd and Cr(VI), although the annex provides a list of exemptions,
e.g. electronics. Even more relevant for the material declaration topic are the recycling
requirements: In 2006 for the whole vehicle a rate of 85% for reuse and recovery has to be
achieved and a rate of 95% in 2015.
The automotive industry implemented an extensive declaration scheme to react accordingly
to the ELV requirements, see the IMDS section below.
Waste Electrical and Electronics Equipment Directive
The WEEE directive [26] requires that “producers provide reuse and treatment information for
each type of new EEE put on the market within one year after the equipment is put on the
market. This information shall identify-, as far as it is needed by reuse centres, treatment and
recycling facilities in order to comply with the provisions of this directive the different EEE
components and materials, as well as the location of dangerous substances and preparations
in EEE. It shall be made available to reuse centres, treatment and recycling facilities by
producers of EEE in the form of manuals or by means of electronic media (e.g. CD-ROM,
online services).” It is not to be expected, that major material recyclers will need material
declarations at all, but refurbishers and others might request it.
Just like the ELV directive the WEEE directive requires certain recycling quotas to be met,
depending on product category ranging from 70 to 80 %, by 2006. A certain material tracking
is required to proof achievement of the recycling quotas, but this will happen rather on the
level of a mass flow tracking at the recyclers, not requiring material composition data for
individual products.
Certain disassembly and separate treatment requirements are set by the WEEE as outlined
below:
1. As a minimum the following substances, preparations and components have to be
removed from any separately collected WEEE:
- polychlorinated biphenyls (PCB) containing capacitors in accordance with Council
Directive 96/59/EC of 16 September 1996 on the disposal of polychlorinated biphenyls
and polychlorinated terphenyls (PCB/PCT)(1),
- mercury containing components, such as switches or backlighting lamps,
- batteries,
- printed circuit boards of mobile phones generally, and of other devices if the surface
of the printed circuit board is greater than 10 square centimetres,
- toner cartridges, liquid and pasty, as well as colour toner,
- plastic containing brominated flame retardants,
- asbestos waste and components which contain asbestos,
- cathode ray tubes,
- chlorofluorocarbons (CFC), hydrochlorofluorocarbons (HCFC) or hydrofluorocarbons
(HFC), hydrocarbons (HC),
- gas discharge lamps,
- liquid crystal displays (together with their casing where appropriate) of a surface
greater than 100 square centimetres and all those back-lighted with gas discharge
lamps,
- external electric cables,
- components containing refractory ceramic fibres as described in Commission Directive
97/69/EC of 5 December 1997 adapting to technical progress Council Directive
67/548/EEC relating to the classification, packaging and labelling of dangerous
substances(2),
- components containing radioactive substances with the exception of components that
are below the exemption thresholds set in Article 3 of and Annex I to Council Directive
96/29/Euratom of 13 May 1996 laying down basic safety standards for the protection of
the health of workers and the general public against the dangers arising from ionising
radiation(3),
- electrolyte capacitors containing substances of concern (height > 25 mm, diameter >
25 mm or proportionately similar volume)
These substances, preparations and components shall be disposed of or recovered in
compliance with Article 4 of Council Directive 75/442/EEC.
2. The following components of WEEE that is separately collected have to be treated as
indicated:
- cathode ray tubes: The fluorescent coating has to be removed,
- equipment containing gases that are ozone depleting or have a global warming
potential (GWP) above 15, such as those contained in foams and refrigeration circuits:
the gases must be properly extracted and properly treated. Ozone-depleting gases
must be treated in accordance with Regulation (EC) No 2037/2000 of the European
Parliament and of the Council of 29 June 2000 on substances that deplete the ozone
layer(4).
- gas discharge lamps: The mercury shall be removed.
Due to these requirements a certain knowledge about products and location of certain
materials and components is needed, but usually in practice rather based on practical
experience than on material declaration data.
For complex products in a German project a so called recycling passport has been developed,
which is of certain usability for complex, high-value investment goods but not for mass market
products in general.
ferromagnetic steel
ferromagnetic steel
coated
4,23 kg
stainless steel
7,25 kg
>PS-HI-FR<
coated
0,65 kg
zincated, coated
14,85 kg
>PS-HI-FR<
coated
3,10 kg
Lithium-Battery
hazardous substance free, non-removable,
Printed circuit board on inner right front door
>ABS<
0,55 kg
LCD-Display
stainless steel
0,50 kg
Integrated with keyboard
>ABS<
0,81 kg
>PS-HI-FR<
Lithium-Battery
hazardous substance free, non-removable,
integrated on Gemini-PCB, left printed
circuit board located in VME rack, inner left
front door
coated
2,83 kg
Fig. 3: Excerpt from Recycling Passport (reference: Project PROMEKREIS)
Restriction of Hazardous Substances Directive
The RoHS directive [27] bans Pb, Hg, Cd and Cr(VI), as well as flame retardants PBB and
PBDE from 2006 on. These requirements initiated an ongoing discussion on compliance
marking [28] as leadfree transition especially will be a question of internal logistics and supply
chain management. Different procedures for such markings have been developed and are
currently subject to negotiations among major manufacturers and industry associations.
A key question of the RoHS is, which minimum concentrations are allowed – as practically a
zero value is not feasible due to ubiquitous impurities. This was clarified by a Commission
Decision, pointing out the following [20]:
a maximum concentration value of 0,1 % by weight in homogeneous materials for lead,
mercury, hexavalent chromium, polybrominated biphenyls (PBB) and polybrominated
diphenyl ethers (PBDE) and of 0,01 % by weight in homogeneous materials for
cadmium shall be tolerated.
A legally binding definition of homogeneous material is not given, but the (non-binding) FAQ
document of the Commission clarifies [22]:
The term "homogeneous" means "of uniform composition throughout". Examples of
"homogeneous materials" are individual types of: plastics, ceramics, glass, metals,
alloys, paper, board, resins, coatings.
The term “mechanically disjointed” means that the materials can, in principle, be
separated by mechanical actions such as: unscrewing, cutting, crushing, grinding and
abrasive processes.
Another important aspect of the RoHS with relevancy for material declarations and ecodesign
is the fact, that there are numerous exemptions to these material bans. Besides the
exemptions for e.g. certain glasses, lamps and alloys as well as certain fields of application –
server, medical equipment, monitoring equipment – there is a continuous process of further
request for exemption based on Art. 5 of the RoHS. Some of these additional exemptions are
already granted, others are still under evaluation. For material declarations and ecodesign the
message is: Even after the July 2006 deadline there is a remarkable number of products
which fall (partly or in full) under these exemptions – RoHS banned substances will still be
legally in use in electronics.
Energy-using Products Directive
The EuP framework directive [29] follows the Integrated Product Policy IPP of the European
Union and will require a more holistic view of product life cycles. Product categories for which
specific directives based on the EuP framework directive are to be expected within the near
future comprise:
ƒ
heating and water heating equipment
ƒ
electric motor systems
ƒ
lighting in both the domestic and tertiary sectors
ƒ
domestic appliances
ƒ
office equipment
ƒ
consumer electronics
ƒ
HVAC (heating ventilating air conditioning) systems
The main task will be the establishment of so-called eco-profiles to identify the
environmentally relevant aspects.
Parameters for eco-design with reference to materials will be e.g.
ƒ
use of materials issued from recycling activities
ƒ
use of substances classified as hazardous
ƒ
ease for reuse and recycling as expressed through: number of materials and
components used …
This list of some exemplary parameters (many more are mentioned in the directive) will
require detailed basic data on product composition.
Comparative analysis of existing forms of material declarations
Material declarations are useful to fulfill customer requirements and to prove legal compliance,
but could also be used for “eco-design”. Although material contents of an electronic product
are just one aspect for eco-design, they are very important.
For screening and full-scale Life Cycle Analysis (LCA) a material declaration is a helpful
starting point, but an LCA assesses the environmental impacts of all processes within the
product life cycle. The material content is only a weak basis to assess manufacturing and
end-of-life processes. Sometimes material content data is linked to generic LCA data for
these materials, but this procedure neglects the electronics specific manufacturing processes
and should not be considered as “best practice” in LCA.
Basic rules for declaration based eco-design are:
Design decisions based on material declarations can only be made on the lowest product
level for which material data is available: In case a declaration is only given for a complete
product, it is not possible to derive recommendations for replacing single components by
others. Eco-design needs a relation between material and function. In case a material
declaration is given for an assembled printed circuit board as a whole (see example in fig. 3,
producer 4) no optimization of electronics component selection is possible.
There are various forms of material declarations and include
ƒ
Negative list: Declaration, that a certain substance is / certain substances are not
contained (criterion for “not-contained” to be defined)
ƒ
Positive list: Quantitative material declaration for a given list of materials / substances
ƒ
Positive list plus other materials in significant amounts: Quantitative material
declaration for a given list of materials / substances plus declaration of all materials
which exceed a certain limit (e.g. 1%)
ƒ
100% declaration of all contained materials / substances
Depending therefore on the legal requirements for declaration one can opt for one form or the
other. To date there are various material declaration activities that partly differ from each other
but which can be used as an instrument to fulfil requirements for material declaration. The
material declaration activities can therefore, be mapped as in the following figure. IEC Guide
113 starts with the materials declaration questionnaire followed by two crossing standards,
IEC 61906/DIN 19220, which supports family declaration following its predecessor ZVEI
Umbrella specs and the EIA, EICTA, JGPSSI Joint Industry Guide, which supports individual
declaration. ZVEI Umbrella specs itself adopts the idea of International Material Data System,
which creates a database of product family declaration for the automobile industry. IPC 1401
follows Joint Industry Guide’s declaration categories specifically for PCB material declaration.
Fig. 4: The map of material declaration activities (individual company activities not
included)
The following section analyses the various material declaration activities in detail.
JEDEC Joint Industry Guide JIG-101
The major standard regarding material declarations is the Joint Industry Material Composition
Declaration Guide, JEDEC JIG-101 [30], published in April 2005. This guide does not require
a 100% declaration of a product, but a declaration of so called List A and List B substances.
List A substances and materials are subject to currently enacted legislation. List B substances
and materials meet at least one of the criteria:
ƒ
Significant environmental, health, or safety interest
ƒ
Trigger hazardous waste management requirements
ƒ
Could have a negative impact on end-of-life management.
While the Joint Industry Guide was a joint draft of EIA, EICTA, JGPSSI, issued September 19,
2003, an additional criterion for list B has been proposed:
ƒ
Precious materials / substances that provide economic value for end-of-life
management purposes
This forth criterion meant an inclusion of bulk and precious metals, namely copper, gold,
magnesium, palladium, and silver, but was withdrawn later. From an environmental
perspective, these “draft B” substances are highly significant, not only due to the economic
value at end-of-life, but for the environmental burden related with the primary metal
acquisition.
Tab. 1: List A and B substances of JIG-101
List A
– Lead
– Cadmium
– Chromium-VI
– Mercury
– PBB
– PBDE
– Asbestos
– Polychlorinated biphenyles (PCB)
– …
List B
– Antimony
– Arsenic
– Beryllium
– Bismuth
– Brominated flame retardants (other
than PBBs or PBDEs)
– Nickel (no alloys)
– Phtalates
– Selenium
– PVC
– …and compounds of these
Fig. 5: JIG-101 cover
Link: http://www.jedec.org/download/search/ACF276.pdf
Fig. 6 shows the composition of a standard Pentium II Personal Computer (without peripheral
devices, such as monitor, key board, and mouse) [31]. List A substances are marked in red,
list B substances are marked dark orange, additional former list B substances according to the
draft version are marked in light orange, all other substances are marked blue.
PS
4,93%
Al
6,63%
ABS
5,64%
Epoxy
3,24%
Glassfiber
3,24%
PA
0,41%
Ceramics
0,33%
Sn
0,30%
Ti
0,11%
Ba
0,01%
Co
0,003%
Cr
0,001%
Cu
6,40%
Fe / steel
66,4%
JIG-101 List A
JIG-101 List B
additional former List B (draft)
others
Ag
0,02%
Mg
0,01%
Au
0,004%
Pd
0,001%
Pb
0,21%
Cd
0,002%
Hg
0,0004%
PVC
1,91%
Ni
0,14% TBBA
Be
0,11%
0,003%
Sb
Bi 0,002%
0,001%
Se
0,0003%
As
0,0002%
Fig. 6: Material composition of a Pentium II Personal Computer
Summary of several chemical compounds e.g. as “copper and copper compounds” as
foreseen by JIG-101 hinders eco-design, as environmental relevancy of different copper
compounds might differ significantly. Declarations based on CAS numbers are recommended
to identify compounds exactly.
IPC 1401 Material Declaration Handbook
The material declaration Handbook IPC1401 (2004) was developed to aid Printed Circuit
Board manufacturers and users of Printed Circuit Boards. The handbook follows the guidance
and format of the Joint Industry Material Composition Guide.
The handbook requires a relatively complex data set, e.g. product data, composition data,
material characteristic data, processing data and sources or references for the data. In
addition, the material declaration handbook also specifies how to calculate the materials in the
Printed Circuit Boards (PCB) from design and process parameters. Furthermore, the
handbook also describes detailed methods for analyzing the substances.
In the handbook, steps to complete a material declaration are defined. They comprise:
reviewing and assessing request, securing product experts support, gathering necessary data,
performing calculations, converting raw material volumes to constituent contents, addressing
other product constituents, computing concentrations and completion of the material
declaration form.
IEC Guide 113
IEC Guide 113 [32] aims at assisting companies which develop materials declaration
questionnaires for products and therefore is the initial document for all following
harmonization and standardization efforts. Major aspects are still subject to negotiations
between supplier and customer. Therefore, the IEC Guide 113 gives a guideline what to
consider, not how to consider.
The IEC 113 Guideline is intended to lead to cost reduction for both requesting and answering
parties by harmonizing the various questionnaires. Therefore, the IEC Guide 113 gives points
to be considered in the contents of the questionnaires. Some of the basic requirements of the
IEC Guide 113 are listed below:
ƒ
Clear location description of the substances (where a substance is located)
ƒ
Adoption of CAS (Chemical Abstracts Service) number to identify the substances
ƒ
Definition of a threshold limit for declaration
ZVEI Umbrella Specs
The Umbrella Specs as specified by the ZVEI [33] follow the idea of common declarations for
whole product families, as the number and variety of electronic components is very large and
individual declarations would mean huge documentation efforts. The Umbrella specs are
based on its predecessor, the DIN 19220.
The Umbrella Specs require a 100% declaration of all substances. This requirement exceeds
all other common requirements. However, declarations could be given for a large range to
summarize a whole package family.
The datasheet contains general information about the package family specification, e.g.
average mass of the materials in percentage (scaling factors). The calculation of materials for
a component occurs through computing the given mass of the investigated component with
the scaling factors. In this way, the ZVEI claims that the huge documentation efforts are
reduced by a factor of more than 1000 by intelligent clustering of products.
One impact of the joint datasheet is the increasing uncertainty ranges involved.
Umbrella Specs is designed to achieve the following goals:
ƒ
Reduction of variety of data which means cost reduction
ƒ
Harmonizing declaration content
ƒ
Simplifying IT landscape
ƒ
decreasing amount of indicated chemicals
DIN 19220 / IEC 61906
The German DIN 19220 (draft) [34] is in compliance with IEC Guide 113. Transposition to
international standardisation is planned by IEC 61906 “Procedure for declaration of materials
in products of the Electrotechnical and Electronics industry” [35].
The declaration provides product information as a foundation for the database
and is intended to solve the following tasks:
ƒ
compliance with legislation
ƒ
risk management
ƒ
fulfilment of market requirements
ƒ
market information
DIN 19220 foresees up to three levels of declaration: product – product part – product
sub-part. Depending on the main product a producer supplies e.g. a assembled printed circuit
board might change from being a “product” to “product part” to “product sub-part”.
Contrary to the Joint Industry Guide no fixed list of substances to be declared is given, nor is a
100% declaration required. It is up to supplier and customer to agree upon which materials to
include in the declaration.
Fig. 7: Examples for products, parts, and sub-parts at different points in the value-added chain
(DIN 19220 [34])
IMDS International Material Data System
The International Material Data System IMDS [36] is not a standard or guideline, but a
practical implementation of business-to-business material declaration, based on advanced
requirements set by an automotive manufacturer consortium.
IPC Electronics Materials Declaration Standards and Forms
IPC [37] drafted a set of declaration standards – closely linked with the JIG – and forms,
namely:
ƒ
IPC-1751, Generic Requirements for Declaration Process Management
ƒ
IPC-1752, Materials Declaration Management
ƒ
IPC-1752-1, PDF Form for General and Class I Materials Declarations
ƒ
IPC 1752-2, PDF Form for Class II Materials Declarations
IPC-1752 [42] outlines a supply chain materials declaration format and process that provides
an approach to collecting, tracking and disclosing product material content information. The
standard establishes electronic data formats and provides standardized forms to simplify the
exchange of materials declaration information while improving efficiency and reducing costs.
The driver for IPC-1752 clearly has been the need for RoHS compliance declarations.
Suppliers and their customers can use IPC-1752 to exchange data at their choice of three
reporting levels which are organized into six reporting classes.
Tab. 2: Levels of reporting according to IPC-1752
RoHS reporting at
a homogeneous
level in yes/no
format
Class 1
Class 2
Class 3
Class 4
Class 5
Class 6
x
x
x
x
x
x
JIG (Joint
Industry
Guide)reporting
level A and B a the
homogeneous
material level and
reporting of other
substances at the
part level
x
x
x
x
x
x
reporting of other
substances at the
homogeneous
level
addition of
manufacturing
information
x
x
x
x
x
Comparison of material declaration schemes
The standards and specifications have different purposes and scopes.
All standards are designed for B2B exchange; however IEC 61906/DIN 19220 expands the
declaration functionality to the customer and recycling area.
In the product information fields, the mass information is essential; however, option to expand
the mass information into typical, minimum and maximum mass is available. In the part
information fields, the part name should be given, if available. In the material/substance
information fields, the material name, CAS number, material mass and mass unit are in all
standards required.
Tab. 3: Comparison of material declaration schemes
Supply chain coverage
yes
If
requested
yes
EIA-EICTA-JG
PSSI Joint
Industry Guide
/ JEDEC
JIG-101
yes
no
IPC Material
Declaration
Handbook
yes
ZVEI Umbrella
Specs
Sub-assem
bly
coverage
Materials
(categories)
coverage
legal
compliance
relevancy
B2Recycler
B2C
B2B
IEC Guide 113
EE products
coverage
- sub-part /
component
Not fixed
no
no
EE products;
product
packaging
excluded
All supplied
products,
components;
product
packaging
excluded
not defined
RoHS: partly
(list A, but not
suitable for
prooving
compliance)
no
no
Printed circuit
boards
yes
Not
mentioned
Not
mentioned
100% declaration
ELV
background
(recycling
quotas)
DIN 19220 /
IEC 61906
yes
yes
yes
“products” but
strong focus on
electronic
components;
product
packaging
excluded
EE products;
product
packaging
excluded
Calculations
given for
specific PCB
areas,
especially
layers
- package
(family)
- composition
part (such as
leadframe,
molding)
15 substance
categories (subject
to currently enacted
legislation, Level A)
9 substance
categories
(environmental
and/or end-of-life
implications, Level
B)
Level A and B
substance
categories plus
some PCB specific
substances
RoHS: not per
se, but
condi-tions
can be agreed
upon
IMDS
yes
no
yes
Automotive
sector (all parts
and components,
not EE only)
Materials
(categories) to be
agreed upon by
parties; usually only
materials with > 0,1
weight-% should be
declared
Approx. 450
reportable
substances
(“prohibited” and “to
be declared”)
IPC 1752
yes
no
no
EE products;
product
packaging
excluded
minimum: RoHS-6;
further materials
(such as JIG-101)
on a voluntary
basis
RoHS: yes
up to 3 levels:
product,
product part,
product
sub-part
- product
- component
semi-compon
ent
- material
- part level
homogeneous
material level
RoHS: partly
(list A, but not
suitable for
prooving
compliance)
ELV
background
(recycling
quotas)
ZVEI Umbrella Specs concentrate on family declaration of electronic components and devices,
therefore limiting the precision of the declaration. JIG allows the declaration of conformity in a
wider spectrum than a yes/no declaration. Each method performs a special
characteristic.Table 4 summarizes the pros and cons of the different declaration schemes for
eco-design.
Tab. 4: Pros and cons of declaration schemes for eco-design
Usability of related material declarations for eco-design
pros
cons
IEC Guide 113
EIA-EICTA-JGP
SSI Joint
Industry Guide /
JIG-101
IPC Material
Declaration
Handbook
ZVEI Umbrella
Specs
DIN 19220 / IEC
61906
IMDS
IPC 1752
All
• Framework for following declaration
schemes
• Broad global consensus
• Defined list of substances (level A and
level B definitions suitable for rough
material ranking)
• Linkage to legislative requirements
• Linkage between design parameters and
material composition (shows directly
environmental impacts of design
decisions, if environmental indicators are
used add-on)
• Additional substance info compared to
Joint Industry Guide
• 100% declaration
• Suggested 3 levels of product tree
structure supports comparison of design
alternatives
•
•
•
•
Close to 100% declaration
Consensus on materials to be declared
Product tree structure
RoHS compliance documentation as a
base line
• 100% declaration possible on a voluntary
basis
• Part / homogeneous material level
• Recommendation to use CAS numbers
(although other classifications are
acceptable)
• Too vague
• Restricted list of substances
• Substance categories (e.g. “lead and lead
compounds”) hinder identification of single
substances
• Certain environmentally relevant materials
(noble metals, copper) probably deleted
from lists soon
• (see Joint Industry Guide)
• Wide variation within package families
imposes large uncertainties
• Several aspects depending on parties’
agreement might hinder eco-design
(completeness of list of substances, no
100% declaration required, acceptable
variations, product families, flat bill of
materials)
• Limit to 3 levels of product tree structure
might lead to exclusion of relevant info
(see bare PCB data in fig. 3, Producer 4)
• (in case Umbrella Specs are used within
IMDS see comments above)
• BOM structure not consequently applied,
focus on homogeneous material instead of
components (the level where eco-design
should take place)
Comparative analysis of necessary material data for existing eco-assessment tools
Eco-design of electrical and electronic equipment is a sophisticated effort. For decision
making in industrial design of products and processes, technical, economical, environmental,
and further aspects have to be regarded and weighted against each other. It is hence
important to the persons involved, that all aspects can be represented in comprehensible and
traceable form. Life cycle thinking is required, but full Life Cycle Analysis (LCA) is rarely
applicable due to numerous constraints like complexity of electronics and its manufacturing,
short innovation cycles, gaps concerning specific and generic data, etc.
The implementation of Design for Environment in companies' R&D departments typically
relies on benchmarking of different design options from the environmental (and economical)
point of view: Minimum data requirements, transparent methodology, and clear design
guidance are the key requirements to assessment tools.
Hence, the application of screening methods and indicators is the first choice in supporting
decisions in electronics design. Generally, the fields of application of environmental screening
indicators for Design for Environment are, e.g.:
ƒ
measuring performance of a product, process, or company (e.g., product declaration)
ƒ
controlling of environmental policy targets
ƒ
benchmarking products, product generations, processes, production sites, or
companies
ƒ
improving design of an existing product for the next product generation (redesign)
ƒ
optimizing design of a newly developed product
ƒ
quick and early prioritizing a set of design options
ƒ
identification of priorities for future improvement efforts (product or process related)
ƒ
ranking of appropriate end-of-life options (decision for a preferred end-of-life option)
ƒ
optimization of end-of-life processes and logistics
ƒ
preparation of more detailed Life Cycle Analysis studies
The large varieties of fields of application for environmental assessments are also reflected by
the number of screening indicators developed in the last ten years: "Keep it simple and aim at
a specific design aspect" is the main idea behind these indicator developments. Thus, due to
the specific approaches, no blue chip solution is available. A decision on which indicator is the
best for a certain task depends primarily on questions such as "Which kind of decision do I
have to make? What are the basic facts?"
Overview of existing methods
The following overview – see table 1 and the following sections – is based on a selection of
assessment tools frequently applied in the electronics industry. Hence, this overview cannot
be complete and is only based on some exemplary tools. The inclusion in this study does not
mean a preference or recommendation for a tool. There are more tools on the market or
currently developed.
This overview is based on available literature. Information on the methods and tools had to be
summarized by the authors; therefore we apologize for not being able to explain all features
and details. Nevertheless, we have focused on giving a fair, neutral description of each
method.
To further shorten this overview, the numerous tools assessing energy inventories and
balances have not been included, as these are more or less based on the method of the
cumulative energy demand (see below) and mostly differ in which parts of a life cycle are
analyzed.
Basic methods
Two simplified methods for mass and energy balances have been developed that implicitly
reflect environmental impacts related to the movement of masses (MIPS) and energy
consumption/conversion (KEA). These methods form the basis for many other simplified
indicators.
Material Input Per Service Unit (MIPS): The MIPS concept [1] non-qualitatively estimates
impacts on the environment by quantifying the amount of resources used for manufacture of a
product. The different amounts of resources are then weighted using their material intensities.
These values reflect the amount of movement of biotic or abiotic raw material, water, air, and
earth in order to extract a certain amount of the desired resource from nature. Thus, all
materials and energies used in the life-cycle of a product are lead back to the corresponding
resources and necessary amount of material movement in order to extract them.
Cumulative Energy Demand (KEA): The KEA ("Kumulierter Energie Aufwand") concept [2][3]
bases on the assumption that data on energy consumption are easily measurable and
accessible. As many environmental impacts during a product’s life-cycle are related to the
emissions of energy conversion processes, the aggregated sum of all primary energy inputs
to the product’s life cycle (including those for raw material extraction and supply) is used as an
indicator for these impacts.
Comparison: Both MIPS and KEA do not directly calculate environmental effects but use
related operations (material movement and energy consumption) to implicitly reflect impacts.
Data collection is reduced to a certain extend compared to the compilation of life-cycle
inventories, but greater simplifications are achieved regarding the impact assessment.
Methods based on material intensities
These methods base on mass balances and evaluate the environmental impacts of mass
flows, generally directly or indirectly regarding the aspect of resource consumption.
Eco-Efficiency Analysis - Material Consumption (EIA-MC): Within the BASF eco-efficiency
analysis [4], the raw material consumptions of products and processes are weighted
according to the calculated raw material years of reserves, i.e., how long the particular raw
material will be producible with today’s economical methods and assumed that the
consumption stays the same.
Eco-Efficiency Potential Assessment (E2-PA) – Material Intensity, Recovery Intensity,
Duration Intensity: Based on the mass balance of the system under study (either product or
process), the E2-PA method [5] evaluates material flows regarding the calculated reserves of
resources (Total amount of resource/Production of resource per year). This is called the
Material Intensity.
Tab. 5: Overview of environmental screening assessment methods (cont. on next page)
【190401】
• Reserve of a resource
• Annual production rate of a resource
• Resource consumption of recovery processes
• Efficiency rates of recovery processes
• Reserve of a resource
• Annual production rate of a resource
• List of components of a product ("Bill of Materials") and
Fraunhofer IZM, Dept.
Relative toxicity of product
Environmental Engineering, contents and related emissions their masses
• List of material contents of components and their masses
Berlin, Germany
• Type of potential chemical emissions related to material
contents
IZM EE Toolbox - Toxic
Emissions Potential (TEP)
Single number
Single number
• R-Phrases
• Maximum tolerable workplace concentrations (MAK)
• Water pollution classes (WGK)
• Chemical structure of related emissions
Single number
• R-Phrases
• Maximum tolerable workplace concentrations (MAK)
• Water pollution classes (WGK)
• Published legislative limits of hazardous substances (e.g.
ChemVerbotsV Germany, US EPS RCRA 33/50)
Single number
Single number
Single number
Single number
Single number
Single number
Single number
Type of Result/Indicators
Single number
Eco-Efficiency Analysis Toxicity Potential
BASF AG, Ludwigshafen,
Germany
Relative toxicity of product
contents and/or process
inputs/outputs
• List of inputs and outputs of processes along the lifecycle and their masses
• Use patterns
• Exposure Route
• R-Phrases
• Total production volume of substances
Single number
IZM EE Toolbox - Simple Fraunhofer IZM, Dept.
Relative impact potential of
• List of components of a product ("Bill of Materials") and • Impact assessment methodology for emissions of complete Depending on impact
Emissions Screening (SES) Environmental Engineering, complete product incineration their masses
combustion (CO2, SOx, NOx, metal oxides, etc.), e.g. Ecoassessment methodoloy
Berlin, Germany
• List of material contents of components and their masses Indicator 99
Fraunhofer IZM, Dept.
Relative toxicity of product
Environmental Engineering, contents
Berlin, Germany
• List of components of a product ("Bill of Materials") and
their masses
• List of material contents of components (no quantities
required)
• List of components of a product ("Bill of Materials") and
their masses
• List of material contents of components and their masses
• List of components of a product ("Bill of Materials") and • Detailed knowledge on product design
their masses
• Detailed knowledge on product properties
• List of material contents of components and their masses • Selection of reduction items derived from this knowledge
• Reduction of the mass of harmful substances
• Mass balances of processes and materials
• Lifetime of the product
• Total consumption resource intensity
• List of components of a product ("Bill of Materials") and • Detailed knowledge on product design
• Detailed knowledge on product properties
their masses
• List of material contents of components and their masses • Selection of reduction items derived from this knowledge
• Reduction of material consumption
• Increase of recycled material
• Mass balances of processes and materials
• Reserve of a resource
• Annual production rate of a resource
• Database on energy balances of (up- and downstream)
processes and materials
• Calculated reserves for raw materials
• Energy balances of processes and materials
• List of raw material consumption of processes and their
masses
• Mass balances of processes and materials
Background Data Requirements
• Database on mass balances of (up- and downstream)
processes and materials
Data Input by User
• Mass balances of processes and materials ("material
intensities")
IZM EE Toolbox - Toxic
Potential Indicator (TPI)
Motorola Inc., Schaumburg Relative toxicity of product
(IL), USA
contents
Material intensity
Mitsubishi Electric, Japan
Factor X - Reduction of
Harmful Substances
Factor X - Reduction of
Resources
Environmental Management Material intensity
for Sustainability, Inc.,
Japan
Mitsubishi Electric, Japan Material intensity
E2-PA Duration Intensity
Organisation/Company
Type
Wuppertal Institute for
Material intensity
Climate, Environment, and
Energy
Cumulative energy demand VDI/Umweltbundesamt
Energy balance
(KEA)
Eco-Efficiency Analysis - BASF AG, Ludwigshafen, Material intensity
Material Consumption
Germany
E2-PA Material Intensity
Environmental Management Material intensity
for Sustainability, Inc.,
Japan
E2-PA Recovery Intensity Environmental Management Material intensity
for Sustainability, Inc.,
Japan
Name
Material Input Per Service
unit (MIPS)
Hazards by product Product Toxicity Index
contents(cont. on next
page)
Material Intensity
Class
Basic methods
Overview of environmental screening assessment methods (cont.)
The Recovery intensity expresses the saved Material Intensity due to recovery of a resource
【190401】
Eco-Design
Implementation
End-of-Life
Hazards by process
operation
Class
Hazards by product
contents(cont.)
Organisation/Company
Type
Öko-Institut e.V., Freiburg, Relative toxicity of product
Germany
contents
Darmstadt University of
Technology, Institute for
Product Development and
Machine Elements,
Germany
National Institute of
Analysis of environmental
Advanced Industrial Science impacts/issues related to
product functions
and Technology, Ibaraki,
Japan; et. al.
Eco-Value Analysis
Quality Function
Deployment for
Environment (QFDE)
Katholieke Universiteit
Leuven, Mechanical
Engineering Departmen,
Heverlee, Belgium
Eco-PaS
Analysis of environmental
impacts/issues related to
product functions ("functional
parameters") and their
fulfillment by standard
solutions
Analysis of environmental
impacts/issues related to
product functions (same for
costs)
Quotes for Environmentally TU Delft, The Netherlands End-of-life scenario analysis
Weighted Recyclability
(QWERTY)
IZM EE Toolbox Recycling Potential
Indicator (RPI)
Recyclability Evaluation
Method (REM)
• Reserve of a resource
• Annual production rate of a resource
• Resource consumption of detoxification process or
recycling process
• R-Phrases
• Maximum tolerable workplace concentrations (MAK)
• Water pollution classes (WGK)
• Detailed analysis of the product, functional structure of
the product
• Environmental impacts per component
• (Costs per component)
• Allocation of functions to components
• Detailed analysis of the product, engineering metrics of
the product
• Numerical rating of the interrelation between voice of
customer and engineering metrics ("relational strength")
• Numerical rating of the interrelation between engineering
metrics and component characteristics ("relational
strength")
• Definition of required functions
• Functional parameters (constraints)
• List of components of a product ("Bill of Materials") and
their masses
• List of material contents of components and their masses
• Definition of scenarios
Ranking based on single
number for each
recycling/disposal process
Ranking based on recycling rate
(and costs) for each
recycling/disposal process
Single number
Single number
Single number
Type of Result/Indicators
Single number
• Voices of customers and their weights (market survey)
• Knowledge on functional interrelations between product
components, engineering metrics, and customer demands
• Customers requirements and their weights
• Knowledge on functional interrelations between product
components, engineering metrics, and customer demands
• Database with known solution principles
• Expert system for technical feasibility
• Environmental assessment method
• Modelling of technical parameters depending on functional
parameters
Numbers: Matrix of
improvement rates of
engineering metrics regarding
customer requirements
Portfolio: Importance to
customer in relation to
environmental value (same for
economic value)
Ranking based on the
environmental assessment as a
function of the functional
parameters
• Transfer coefficients of materials within end-of-life
Ranking based on single
processes
number for each
• Data on environmental impacts of extraction and
recycling/disposal process
production of materials
• Data on on environmental impacts of end-of-life processes
• Characterisiation values of different air emission categories
(GWP, AP, etc.)
• Limits of wastewater regulation for calculation of critical
volumes
• Waste disposal costs for "emission" of solid waste
• Weighting factors (for aggregation to single number)
Hitachi Ltd., Japan
Disassembly and recyclability • List of components of a product ("Bill of Materials") and • Process data on disassembly operations (Costs)
of product contents
their masses
• Process data on recycling/disposal operations (Costs,
• Compilation of disassembly operations
Revenues)
• List of material contents of components (no quantities
required)
Fraunhofer IZM, Dept.
Recyclability of product
• List of components of a product ("Bill of Materials") and Process profiles of recycling and disposal processes:
Environmental Engineering, contents
their masses
• Range of desired substance concentrations
Berlin, Germany
• List of material contents of components and their masses • Range of undesired substance concentrations
• List of emissions of a process and their masses
Relative impact potentials of
emissions during life-cycle
Eco-Efficiency Analysis Emissions
BASF AG, Ludwigshafen,
Germany
• List of inputs and outputs of a process and their masses
• Mass balances of processes and materials
Data Input by User
Background Data Requirements
• List of components of a product ("Bill of Materials") and • R-Phrases
their masses
• TRGS 440 potency factor model
• List of material contents of components and their masses
IZM EE Toolbox - Process Fraunhofer IZM, Dept.
Relative toxicity of process
Toxicity (ProTox)
Environmental Engineering, inputs/outputs
Berlin, Germany
E2-PA Hazardous Material Environmental Management Material intensity
Intensity
for Sustainability, Inc.,
Japan
Name
Monoethylene Glycol
Equivalents (MEG)
after subtraction of the Material Intensity of the recovery process.
The Duration Intensity is the relation between lifetime of the product and the total material
intensity of the product, thus differs from the other E2-PA indicators as it expresses the
efficiency of the aggregated Material Intensity over the lifetime in relation to the product’s
benefit (assumed that the benefit correlates with the lifetime).
See also 0 for the Hazardous Material Intensity.
Factor X – Reduction of Resources, Reduction of harmful substances: The Factor X [6]
describes the relation between the eco-efficiency (performance improvement of
product/environmental impact improvement) before and after a change in products or
processes. Mitsubishi Electric measures the environmental impact improvement by assessing
the reduction of material and toxic material amounts consumed during the life-cycle of a
product. Energy is also assessed but has been left out in this compilation as it is done with all
methods presented.
Comparison: The EIA-MC and E2-PA methods work similar, as they relate mass flows of
resources to calculated reserves. The E2-PA method further specifies the calculation of
material intensities in the cases of material recovery, hazardous materials, and energy (not
described here, see [6]). However, both methods can be regarded as compatible. There are
similarities to the MIPS concept, though it does not include the reserves of raw materials only the scarcity of a resource via the material movement for its extraction.
The Factor X-Assessment does not relate the reduction of material consumption and
hazardous material content to the reserves of resources. However, the reductions of materials
could be assessed with the MIPS, EIA-MC or E2-PA methods. The reduction of hazardous
material content is not sorted into the methods regarding the hazardous material content of
products (section 0) as no evaluation of the toxicity is carried out.
Methods regarding hazards due to product contents
These methods evaluate the potential hazards of materials incorporated in products and thus
are only implicitly connected to physical material flows.
Product Toxicity Index: The Product Toxicity Index [7] assesses the qualitatively known
materials contained in product components using legislative threshold concentrations. Each
threshold value is related to defined reference value (e.g., 50.000 ppm). The resulting score is
multiplied with the component’s weight and all components’ scores are summarized to the
product’s toxicity index.
IZM EE Toolbox - Toxic Potential Indicator (TPI), Toxic Emissions Potential (TEP), Simple
Emissions Screening (SES): The TPI [8][9] assesses the potential hazards of the product
material content by evaluating information available in the material safety data sheets. Each
R-Phrase (see [10]), MAK, and WGK corresponds to a numerical value on a logarithmical
scale. Double counting is avoided by look up tables that list overlapping R-Phrases, MAK, and
WGK values. The different values are aggregated, transformed, and normalized to a range
from 0 (no hazard) to 100 (extreme hazard). The mass fraction of a material within the product
multiplied with its specific TPI results in the product’s TPI.
The TEP [9] assesses the hazards that may be caused by emissions formed from the
product’s material contents under different conditions during the lifetime. Using rules of thumb,
literature data, and expert knowledge, potential emissions of the product material content are
identified. These emissions are weighted according to the maximum amount that could be
formed from the material contents, grouped according to their substance classification (e.g.,
aromatic hydrocarbons, aldehydes, tin and its compounds, etc.), and aggregated according
their specific TPI values. The highest values from each substance class (potentially formed
amount times specific TPI) are then aggregated to the TEP value.
The SES [9] bases on the thought experiment of a complete combustion of the product. The
amounts of the resulting emissions can be assessed using different impact methods, e.g., the
Eco-Indicator method [11].
Eco-Efficiency Analysis – Toxicity Potential (EIA-TP): The Toxicity Potential [12] evaluates
substances using the R-Phrases of the EU classification [10]. Each R-Phrase is sorted into a
certain group depending on its toxic severity. A numerical score describing the toxic effect
corresponds to each group. Additionally, the number of persons that may be exposed to a
【190401】
substance (the use pattern), the total production volume, and the exposure route are also
numerically evaluated, thus describing the exposure. The product of toxic effect and exposure
results in the toxicity potential score of a substance. The toxicity potentials are aggregated
throughout the production of a product by multiplying the scores of upstream products with
their masses used to produce the product (see also 0).
Monoethylene Glycol Equivalents (MEG): The MEG method [13] uses R-Phrases for the
assessment of a substance. According to the TRGS 440 [14], each R-Phrase is translated into
a potency factor that corresponds to the severity of the hazard described by the R-Phrase.
This potency factor is related to a reference value (the value of Monoethylene Glycol) and
then called the Hazardous Substance Potential (HSP). The score of a product or process is
calculated by multiplying the weights of the materials contained in a product (or used in or
emitted by a process) with their specific HSP scores and summing up the results to a single
value.
Eco-Efficiency Potential Assessment (E2-PA) – Hazardous Material Intensity: Working like the
methods described in 0, the Hazardous Material Intensity [5] reflects the potential hazards
due to the toxic material contents of a product by calculating the Material Intensities of
processes necessary to detoxicate and treat the product or to safely recover the hazardous
material. It can be thus used to express the severity of the hazardous potential of the product
material contents.
Comparison: In contrast to the other methods, the Product Toxicity Index does not require the
real concentration of a substance within the product but works with threshold values.
The PTI, TPI, TEP, EIA-TP, and MEG methods use legislative data like R-Phrases or
threshold values to assess the toxicity of a substance. Especially TPI/TEP, EIA-TP, and MEG
show methodic similarities.
The TEP and SES methods exceed the usual toxic assessment of a product's material
contents by also taking account of related emissions that might emerge under different
conditions during a product's lifetime. Both methods are not limited to a certain substance
assessment (TPI or Eco-Indicator) and could therefore also be combined with other methods.
The E2-PA hazardous material intensity method covers a different aspect of hazardous
materials: While other methods focus on possible risks due to a product's material content,
this method regards the efforts of detoxification or recovery of hazardous materials during
end-of-life processes.
Methods regarding hazards due to process operations
These methods evaluate the potential hazards and damages due to process operations.
IZM EE Toolbox - Process Toxicity (ProTox): The ProTox [9] uses the specific TPI values to
assess the potential hazards of in- and outputs of processes, including emissions.
Eco-Efficiency Analysis - Emissions (EIA-Emissions): The emissions assessment within the
Eco-Efficiency Analysis [4] differentiates process related emissions to air, water, and soil.
Emissions to air are assessed using the impact assessment categories Global Warming
Potential, Ozone Depletion Potential, Photochemical Ozone Creation Potential, and
Acidification Potential. Emissions to water are characterized by calculating the necessary
dilution of the emission to meet the threshold values of the wastewater regulations. Emissions
to soil are only regarded as solid waste, and separated into three waste types: Special waste,
house waste, and building rubble. These three types are characterized using the costs for
land filling.
Comparison: The ProTox method focuses on the potential toxicity of materials that are used in
or emitted from a process. It does not include the exposure route. The EIA-Emissions method
does not account the inputs of a process but differentiates emission pathways.
Mentioned above (see 0), the EIA-Toxicity Potential method can also be used to assess the
toxicity of process in and outputs. This method has many similarities to the ProTox method
and additionally includes factors for the potential exposure.
Methods regarding End-Of-Life
These methods are used to analyze the performance of the product in end-of-life processes,
【190401】
i.e., recycling and disposal processes.
Recyclability Evaluation Method (REM): The recyclability evaluation method [15] enables the
designer to enter the disassembly procedure of product components. Subsequently, costs and
revenues of recycling processes for these components can be calculated.
IZM EE Toolbox - Recycling Potential Indicator (RPI): The Recycling Potential Indicator [9]
correlates the product material contents with the process profiles of recycling and disposal
processes. These process profiles include ranges for the mass fractions of wanted and
unwanted (or forbidden) materials contained in a product or its components. The better the
correlation with a process profiles (e.g., copper smelter) the less problems and the higher
revenues are to be expected when applying the specific process.
Quotes for Environmentally Weighted Recyclability (QWERTY): The QWERTY method [16]
starts at the point of the disposal of a product. Two standard end-of-life scenarios are
calculated and assessed using an environmental impact method (e.g., Eco-Indicator [11]):
One virtual scenario representing the recovery of all materials (thus 100% material recycling
and minimum environmental impacts) and one representing the (realistic) worst possible
end-of-life scenario, i.e. controlled landfill or incineration without energy recovery. The product
and its parts are then analyzed regarding different degrees of disassembly, pretreatment, etc.,
and distribution to different processes (“end-of-life scenarios”). These scenarios can be
compared using their scores, which lie between the scores of the two reference scenarios.
Comparison: The REM and RPI methods do not explicitly evaluate environmental impacts
during the end-of-life phase. The focus of these methods lies on the technical performance of
the product or product parts in treatment processes, i.e., the compatibility of the material
composition with these processes. The REM method also includes an analysis of
disassembly operations. Hence, both methods focus on the design for recyclability of a
product.
In contrast to this, the QWERTY method aims primarily at the whole end-of-life management
of products, using more comprehensive modeling of take-back and recycling processes to
support decision finding.
Methods for Eco-Design implementation
These methods focus on the identification of environmental (and economical) “hot-spot”
components of a product to support eco-design. This is done by analyzing the functional
relationships (quantitatively or qualitatively) between the product’s functions and
environmental impacts.
Eco-Efficiency Parametric Screening (Eco-PaS): The Eco-PaS method [17] aims at
establishing a quantitative functional relationship between the functional parameters of a
product (e.g., the isolation of rotational motion using a ball bearing and the desired maximum
rotational speed) and its environmental impacts and costs. These relationships may be
derived either empirically or theoretically. Various methods can be used for the assessment of
environmental impacts and costs. As a result, the estimated environmental impacts and costs
of different technical solutions in dependence of different functional parameters and
constraints can be compared.
Eco-Value Analysis: The Eco-Value Analysis [18] investigates a product's components
regarding their practical (i.e., necessary for technical and economical usability of the product)
and added functions (prestige gains, esthetics). The different components are allocated to the
fulfillment of practical and added functions of the product. Subsequently, the environmental
score and costs of a component (measured using an environmental impact method) are
allocated accordingly. Thus, after weighting of the results using an assessment of the
importance of each function to the customer, the contribution of each function to costs and
environmental impacts can be determined.
Portfolios that visualize the importance to the customer in relation to the environmental and
economic impacts serve for decision making on functions that have to be optimized, left out,
or implemented despite high environmental or cost impacts.
Quality Function Deployment for Environment (QFDE): The QFDE method [19] is a matrix
oriented method. First, a matrix is created reflecting the correlation between required and
desired functions (e.g., safe operation, easy to transport, low energy consumption) and the
【190401】
engineering metrics (e.g., air flow, weight, amount of energy consumption). The results are
weighted according to the customer requirements and reflect the importance of the
engineering metrics to the most desired functions. Note that environmental aspects are
included as required and desired functions; hence the correlation of these with engineering
aspects has to be already identified and known.
In the second matrix the weighted engineering metrics are correlated with the different
product components, thus identifying the components which contribute most to the desired
functions.
The third matrix lists possible improvements in the components' design regarding the
engineering metrics.
The fourth and last matrix combines the possible improvements with the correlation between
engineering metrics and desired functions and the customer weights of these functions. The
result is numerical ranking of functions that are characterized by high customer weight and
high improvement rates of correlated engineering metrics.
Comparison: The Eco-Value and QFDE methods use qualitative relationships between
environmental impacts and product functions while the aim of the Eco-PaS method is the
identification of quantitative functional relationships, either from empirical or theoretical
considerations. Hence, all three methods require expert knowledge regarding which product
functions and components are connected to environmental impacts. To evaluate these
impacts, any environmental indicator can be implemented.
Methods for Eco-Design product group studies
The EuP EcoReport methodology [38] has been developed by VHK as a contractor of the
European Commission. This methodology applies certain LCA principles and is meant to be
used during preparatory studies to give an input to the process of defining requirements for
eco-design implementing measures. The first step in considering whether and which EuP
ecodesign requirements should be set for a particular product is a preparatory study
recommending ways to improve the environmental performance of the product. The
preparatory study shall provide the necessary information to prepare for the next phases
which are the impact assessment, the consultation of the Ecodesign Forum and a possible
draft implementing measure.
Therefore the EuP EcoReport methodology has been developed for a broader application, not
as a tool for eco-design of individual products.
As this method is essential in the frame of upcoming legislation (EuP) it will be outlined in the
next chapter more in detail.
Methods in Detail
The following analysis of the status quo of eco-assessment comprises:
ƒ
characterization of material data requirements for various existing eco-assessment
tools (quantitative, qualitative, software realization)
ƒ
characterization of a simplified (screening) eco-assessment material data requirement
(Eco Indicator, Energy for Raw Materials, Toxic Potential Indicator, DfR tools etc.)
EuP Eco-Report
The EuP Eco-Report methodology requires a 100% declaration, but not down to a real
material level in all cases, partly a semi-finished product level (“Cu winding wire”), or even a
component level – for electronics specifically e.g. “large IC”, “big caps & coils” - is the required
declaration level. All figures to be given in gram. The following is the list of materials:
Material
Bulk Plastics
description
【190401】
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
LDPE
HDPE
LLDPE
PP
PS
EPS
HI-PS
PVC
SAN
ABS
TecPlastics
(incl.
Fillers, reinforcement,
additives)
PA 6
PC
PMMA
Epoxy
Rigid PUR
Flex PUR
Talcum filler
E-glass fibre
Aramid fibre
Ferro metals
St sheet galv.
St tube/profile
Cast iron
Ferrite
Stainless 18/8 coil
Non ferro metals
Al sheet/extrusion
Al diecast
Cu winding wire
Cu wire
Cu tube/sheet
CuZn38 cast
ZnAl4 cast
MgZn5 cast
Coating / plating (per g
coating)
Pre-coating coil
powder coating
Cu/Ni/Cr plating
Au/Pt/Pd
Electronics
LCD per m2 scrn
CRT per m2 scrn
Big caps & coils
slots / ext. Ports
large IC
small IC
48 SMD/ LED's avg.
49 PWB 1/2 lay 3.75kg/m2
50 PWB 6 lay 4.5 kg/m2
51 PWB 6 lay 2 kg/m2
52 Solder SnAg4Cu0.5
Miscellaneous
54 Glass for lamps
55 Bitumen
(only for heating / hot water appliances; hot water tanks)
epoxy or PUR coating (wet-paint process)
epoxy powder coating
any of these platings
includes semiconductor on glass-substrate, covered by another glass 0.7 mm
panel with colour filters
includes glass and Pb fractions plus manufacturing
components typical for power conversion functions
PWB mounted slots for RAM-chips, PCI cards + external ports
including memory chips, approx. 5 wt-% core material
small SMD-type ICs, approx. 1 wt.-% core material
mixture of capacitors (Pd based, Tantalum, ceramic; 15%), diodes / thyristors / RF
etc. (35%), resistors (50%)
standard FR4, epoxy/glassfiber; typical PWB for appliances and motor controllers
multilayer standard FR4, epoxy/glassfiber (environmental data is similar to
standard mono-/ double-sided FR4 per kg); typical PWB for PC desktop
mainboards, TVs, etc.
multilayer board with microvias, resin aramid filled; typical PWB for mobile
products (laptop, cell phone)
【190401】
56 Cardboard
57 Office paper
58 Concrete
BOM like structure vs. aggregated declaration
The EuP EcoReport methodology and declaration scheme does not provide guidance,
whether a BOM like structure or an aggregated structure might be needed. For the purpose of
analysis the whole market of a certain product category it is sufficient to give an input on an
aggregated level. For identification of (environmental) improvement potentials (“where are the
hot spots?”) a modular approach, taking the products/parts/sub-parts definition of DIN 19220 /
IEC 61906 as an orientation.
Following this BOM-structure approach an EuP EcoReport material declaration for a cable
might look like this:
Pos
nr
MATERIALS Extraction & Production
Description of component
Weight
in g
1 internal cable xyz (incl. plug)
5,0
2 internal cable xyz (incl. plug)
6,0
3 internal cable xyz (incl. plug)
3,2
Category
Material or Process
Click &select
select Category first !
4-Non-ferro 29-Cu wire
1-BlkPlastics
8-PVC
3-Ferro 25-Stainless 18/8 coil
For electronic assemblies in general it is possible to summarize e.g. all “small ICs”, but it is
recommended to list each IC separately. This kind of differentiation later on allows one to
assess design improvements.
Pos
nr
MATERIALS Extraction & Production
Description of component
Weight
in g
Category
Material or Process
Click &select
select Category first !
45 EPROM (PDIP 42)
6,3
6-Electronics 47-IC's avg., 1% Si
46 16-bit Microcontroller (PQFP144)
5,4
6-Electronics 47-IC's avg., 1% Si
47 small signal transistor (SOT-223)
0,1
6-Electronics 47-IC's avg., 1% Si
Weighting issues
Theoretical example:
A design option might be to lower the stand-by losses through more “intelligence”, meaning
more chip. The following – theoretical – example compares the environmental impacts,
according to the EuP EcoReport methodology, for 0,1 W stand-by losses for 1 year and 1g of
a large IC.
Energy
Emissions to Air
to Water
PM
Metal
EUP
g
mg Hg/20eq
mg PO4 eq
g SO2eq
mg Ni eq
AD
kg CO2eq
PAH
GWP
g
mg Ni eq
non-haz.
Waste
g
HM
haz. Waste
ltr.
ng i-Teq
water (cool)
ltr.
POP
water
(proces)
MJ
mg
feedst
MJ
VOC
Electr
MJ
Large IC, 1g
normalized
(0.1
W
stand-by for 1
year = "1,00")
Waste
GER
0,1
W
stand-by for 1
year
Water
9,20
9,20
0,00
0,61
24,53
0,21
10,66
0,40
2,37 0,00
0,06
0,16
0,02
0,05
0,06
0,28
5,58
5,41
0,00
5,07
-0,01
0,69
5,18
0,43
2,81
0,07
0,05
0,46
0,02
0,07
3,86
21,89
0,61
0,59
1,00
8,31
0,00
3,29
0,49
1,08
1,19
---
0,83
2,88
1,00
1,40
64,33
78,18
【190401】
Values > 1,00: 1g large IC causes more environmental impact
Values < 1,00: 0,1 W stand-by for 1 year causes more environmental impact
As frequently with environmental assessments there is no clear picture: In some categories
the impact of 1 g large IC is worse, in other categories 0,1 W stand-by for 1 year results in
more impacts.
For a (theoretical) decision “less stand-by” or “less IC” a weighting of the different categories
would be required – but is not provided by the EuP EcoReport methodology.
Appropriateness of basic data
The EuP EcoReport methodology differentiates between “large ICs, Si content 5%” and “small
ICs, Si content 1%”. This is a very rough differentiation and might face problems in practice
where “large” does not necessarily correspond with “5% Si”. An analysis undertaken by
Fraunhofer IZM (unpublished) in preparation of the EuP preparatory studies shows the
relation between size and Si content, based on an evaluation of material declarations given by
ST Microelectronics.
7
chip material mass in %
6
5
4
3
2
1
0
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
package size in mm²
Fig. 8: Correlation of package size and Si content for ICs (source: ST Microrelectronics)
Notice, that STM uses for their material declarations an approach, which is comparable with
the ZVEI Umbrella Specs: Partly declarations are given for a certain package type, which
might comprise several different components. Some package types differ in size, but the
material declaration gives a fix value for Si content. It is very likely, that in reality also the SI
content varies with the size of the package.
In general, large ICs tend to have a lower Si content, small ICs frequently have a higher Si
content. As for the environmental assessment the Si content – being the most prominent
indicator of environmental impacts of the manufacturing processes – is much more relevant
than the package size, the following guide is proposed to make the differentiation between
high and low Si content ICs.
Tab. 6: Proposed IC Guide for the EuP EcoReport methodology (data from STM)
chip
material
mass (in %)
Package
“Large ICs”
LBGA
LOW PROFILE BALL GRID ARRAY PACKAGES
5,9
TFBGA
THIN FINE PITCH BALL GRID ARRAY PACKAGES
5,9
【190401】
LFBGA
LOW PROFILE FINE PITCH BALL GRID ARRAY
PACKAGES
5,9
VFQFPN
VERY THIN FINE PITCH QUAD FLAT PACKAGE NO
LEAD
5,3
TQFP
THIN QUAD FLAT PACKAGES
4,1
LQFP
LOW QUAD FLAT PACKAGES
4,1
TSOP-1
THIN SMALL OUTLINE PACKAGES
4,05
VFBGA
VERY-THIN-PROFILE FINE PITCH BALL GRID ARRAY
PACKAGES
3,95
TSSOP
THIN SMALL SMALL OUTLINE PACKAGES
3,9
SO
SMALL OUTLINE PLASTIC PACKAGES
3,6
SSOP
SHRINK SMALL OUTLINE PACKAGES
3,6
PDIP
ZEROPOWER/TIMEKEEPER
3,6
PBGA
PLASTIC BALL GRID ARRAY PACKAGES
2,68
SOT / SOD
SMALL OUTLINE TRANSISTORS AND DIODES LOW
POWER
2,6
DPAK,
D2PAK,
PPAK,
P2PAK,
SPAK
IPAK, I2PAK, SOT,
TO
SURFACE MOUNT DEVICES (SMD) MEDIUM POWER
TRANSISTORS
2,6
THROUGH HOLE
TRANSISTORS
1,46
HI-QUAD
HIGH QUAD PACKAGES
1,3
POWER SO 10/16
POWER SO PACKAGES
1,26
PQFP
PLASTIC QUAD FLAT PACKAGE
1,1
P-DIP
DUAL IN LINE PLASTIC PACKAGES
1,00
PowerDIP
POWER DUAL IN LINE PLASTIC PACKAGES
1,00
PLCC
PLASTIC LEADED CHIP CARRIER
0,9
CLIPWATT
0,78
POWER
SO
20S/20/26/28/36
POWER SO PACKAGES
0,7
SOT, SOD, TOP,
DOP
SMALL OUTLINE TRANSISTORS AND DIODES HIGH
POWER
0,7
S-DIP
SHRINK DUAL IN LINE PLASTIC PACKAGES
0,63
“Small ICs”
PACKAGES
MEDIUM
POWER
【190401】
CLCC
CERAMIC LEAD CHIP CARRIER
0,62
JLCC
J LEADED CHIP CARRIER
0,62
0,56
GBU PACKAGES
CPGA
CERDIP
FLEXIWATT
0,48
CERAMIC PIN GRID ARRAY
0,47
CERAMIC DUAL IN LINE PACKAGES
0,44
SIL
SINGLE IN LINE PLASTIC PACKAGES
0,42
FDIP
FRIT-SEAL CERAMIC PACKAGE WITH BULLS–EYE
(LENS)
0,42
CQFP
CERAMIC QUAD FLAT PACKAGE
0,38
CERDIP
SIDE BRAZED CERAMIC DUAL IN LINE PACKAGES
0,35
TO-3
POWER PRODUCTS IN TO3 PACKAGES
0,25
TO 220
TO 220 PACKAGE
0,25
MULTIWATT
0,25
PENTAWATT, HEPTAWATT
0,25
TO
SMALL SIGNAL
PACKAGES
TRANSISTORS
IN
METAL
CAN
TO
SMALL SIGNAL TRANSISTORS IN TO 92 PACKAGE
0,24
0,24
IZM/EE-Toolbox
The ranking of materials based on environmental indicators helps to make comparable
different materials from an ecological point of view. There is a huge number of screening
indicators, see e.g. [9]. One of these sets of indicators is the IZM/EE-Toolbox [10], which helps
to rank materials according to potential toxicity (“Toxic Potential Indicator”), raw materials
energy consumption (aim: avoid materials with larger energy burden throughout production),
or to relate material composition with technological-economical profiles of recycling
technologies (“Recycling Potential Indicator”, aim: enhance recyclability). For such
evaluations a clear substance identification (e.g. CAS numbers), a full declaration, and
minimum data uncertainty is helpful. Additionally external data is needed e.g. hazardous
substance classifications or TPI values per weight unit of a substance. See fig. 4 for the basic
principle in screening assessments: Whereas the material declaration makes materials
comparable only by mass, the environmental screening indicator offers the possibility to
compare by environmental relevancy.
Toxic Potential Indicator (TPI)
The Toxic Potential Indicator or TPI [39] for the analysis and evaluation of products is based
on the environmental properties of the materials contained in the product after manufacturing.
Different ecological impacts are aggregated into one number, so the numerical result
【190401】
expresses the possibility of harm to both humans and the environment when the substances
in the product are released uncontrolled. Uncontrolled, fine spread release e.g. as dust or
through groundwater is assumed to be the worst impact case for each substance, even
though it might not occur in the real life cycle of the product under investigation.
Normative
Conversion
Functions
ER
fR
Overlap
Elimination Lists
EMAK
EWGK
Input
Values
f MAK
f WGK
Exponential
Scaling
Aggregation
NR
NR_MAK
NMAK
MAX
NWGK
NR_WGK
MAX
Normalisation
Scale
NStoff
Evaluation on
Normative Scale
TPI
Toxic Potential
of Mat erial
(points per g)
Fig. 9: Overview TPI calculation scheme
The TPI model is based on the legally defined values hazardous material marking with
R-phrases, maximum workplace concentration (MAK), and water hazard classes (WGK):
ƒ R-phrases are based on European legislation (Directive 67/548/EEC for the
classification of dangerous substances).
ƒ MAK is based on German legislation, but threshold limits are similar world-wide; for
the US the Threshold Limit Values (TLV) of the American Conference of Governmental
Industrial Hygienists (ACGIH) are applicable. For some substances the MAK
commission recommends stricter MAK threshold limit values, which are not legally
binding by now. In such cases the lower value should be taken as input value to
address the worst case approach. Carcinogenity is considered separately as classified
by the European Union (for the US: ACGIH classification). For carcinogenic and
mutagenic substances there are no MAK values as for these kind of impacts no
threshold value can be given. Instead TRK (technical occupational exposure limits)
are given for these substances, based on technical feasibility to minimize the
concentration at the workplace.
ƒ WGKs are based on German legislation: Substances are classified as either “not
hazardous to waters”, or WGK 1, 2 or 3. For substances which are not classified the
WGK can be calculated by considering the R-phrases.
All classifications are reviewed by experts committees frequently. A declaration is mandatory
for substances distributed within Germany and is frequently done world-wide, see MSDSs.
Each input variable is ranked with a standard scale factor NMAK, R, WGK from 0 (harmless) to 7
(extremely hazardous), e.g. WGK 3 (“severe hazard to waters”) is classified with NWGK = 7,
R 33 (“Danger of cumulative effects”) is classified with NR = 4.
【190401】
Tab. 7: Numerical and verbal scaling for standard scale factors
scaling
0
1
2
3
4
5
6
≥7
verbal description
negligible, zero impact
non-critical, minimum impact
detectable, very weak impact
clear, but still weak impact
medium impact
strong impact
very strong impact
extreme impact
This scale, reflecting the human sensation, is linear, but from a technical-scientific point of
view a logarithmic scale for calculations is needed, as this reflects the real impacts and
physics much better (see for comparison the logarithmic scale to measure sound pressure
levels). Consequently, the standard scale factors 0-7 represent order of magnitudes, not linear
dependencies.
Carcinogenity is assessed separately with NMAK standard scale factors.
Normative conversion functions for the three categories R / MAK / WGK are defined as
follows to come to NMAK, NR, NWGK:
NR
Frequently several R phrases apply for one substance. To combine these phrases to
one aggregated NR value for this substance a logarithmic aggregation is used. As
mentioned above, the verbal description has to be transferred to a logarithmic scale
via an ln-function. The e-function does not cross the y-axis at 0, but for clearness the
assessment of a row of zero-values should result in zero as well, the usual e-function
is replaced by ex – 1 and consequently the natural logarithm by ln (x + 1):
Aggr ⎛⎜ N
⎝
⎛ n N
⎞
⎜
⎟
⎞
...N
= ln ⎜ ∑ e Ri − n +1⎟
R n ⎟⎠
R1
⎜ i=1
⎟
⎝
⎠
Tab. 8: Frequently used R phrases and their standard scale factors NR
R phrase
R26
R27
R59
R28
R39
NR
7
7
7
6
6
R phrase
R45
R46
R60
R61
R23
NR
6
6
6
6
5
R phrase
R24
R35
R48
R17
R25
NR
5
5
5
4
4
R phrase
R33
R20
R21
R11
R10
NR
4
3
3
2
1
NMAK
For NMAK the following function is applied to ensure, that from the MAK concentration
values a NMAK in the range between 1 and 7 results (only if there is no MAK at all,
NMAK should be zero):
f
MAK
10 4
(x) = − log ( x) + 4 = log (
)
10
10 x
For carcinogenic substances NMAK is set 7, for substances suspected of being
cancerogenic NMAK is set 6.
NWGK
For NWGK a simple transfer table is used as follows:
WGK 0
Æ
NWGK: 0
WGK 1
Æ
NWGK: 3
WGK 2
Æ
NWGK: 5
WGK 3
Æ
NWGK: 7
Some R-phrases refer to water hazards or workplace hazards, which are already taken into
【190401】
account with WGKs and MAKs: Lists are defined to eliminate these overlaps (factors NR_WGK,
NR_MAK), meaning for example: R23 (“toxic by inhalation“) is taken into account with a scaling
factor of NR_MAK = 5. This NR_MAK is compared to the calculated NMAK of a substance and the
higher value (“max” in the function below) is taken into account for further calculations.
Usually the WGKs (and carcinogenity as well) are covered by corresponding R phrases1.
Next step is the aggregation of standard scale factors for each substance. As with the R
phrases (see above) a logarithmic aggregation is used to combine the individual standard
scale factors to one single factor:
⎛
⎛
⎞
⎛
⎞⎞
⎟⎟
⎟ , max ⎜ N
Nsubstance = Aggr ⎜⎜ N , max ⎜⎜ N
,N
,N
⎜ WGK
R
R_MAK ⎟⎠
R_WGK ⎟⎠ ⎟⎠
⎝
⎝ MAK
⎝
⎛ n N
⎞
⎜
⎟
N substance = Aggr ⎛⎜ N ...N n ⎞⎟ = ln ⎜ ∑ e i − n + 1⎟
⎝ 1
⎠
⎜ i =1
⎟
⎝
⎠
Exemplary calculation for sulfuric acid:
R-phrase: R35
Æ
NR: 5
MAK: 0,1 mg/m³ Æ
NMAK: 5
WGK: 1
Æ
NWGK: 3
N H2SO4 = Aggr (5, 5, 3)
N
H2SO4
= ln ⎛⎜⎜ e5 + e5 + e3 − 2 ⎞⎟⎟ = 5,75
⎝
⎠
The worst-case for a substance with standard scale factors of 7 for NMAK, R, WGK would result
in a maximum assessment of NSubstance = 8,1. On a logarithmic scale this would result in (e8,1 –
1) = 3,286.9. Not to have an assessment scale ranging from 0 to 3,286.9 a correction factor
(scaling factor) of 32.869 is applied to come to a more user and communication friendly scale
of 0 to 100:
TPIsubstance= (eNsubstance-1) : scaling factor
Exemplary calculation for sulfuric acid:
TPIH2SO4 = (e5,75 -1) : 32,869 = 9,55
Each material is attributed one number which describes the relative worst case ecological
impact of the material on a scale from 0 to 100. Some materials from the database are
presented in table 3. The material weights for each component are multiplied with this
evaluation to achieve the component assessment.
1
Consequence: also without knowing the WGK for a specific substance, but having a full set of R
phrases, NR_WGK (the standard scale factor from the overlap list) leads to an appropriate coverage of
WGK aspects
【190401】
Tab. 3: Exemplary Toxic Potential Indicator values
Material CAS*-No.
Al
7429-90-5
Cd
7440-43-9
Cu
7440-50-8
Fe
743 9-89-6
Hg
7439-97-6
Ni
7440-02-0
Pb
7439-92-1
PVC
Sn
7440-31-5
Zn
7440-66-6
TPI [mg-1]
0,7
68,0
1,6
0
39,5
33,5
20,8
0,5**
1,2
0,6
*Chemical Abstracts Service
** note: PVC itself is harmless, but softeners and incineration products may cause severe harm
After calculating the TPIs for the contained substances (in practice this data should be
available in a database, such as Fraunhofer IZM’s MOEWE tool already, and not
re-calculated for every project), these TPIs have to be brought in correlation with the Bill of
Materials as outlined below.
Fig. 10: From material declaration to environmental screening assessment
This visualization makes clear also the importance of keeping a BOM-like structure as
suggested by DIN 19220: Only this approach enables the designer to track back, which
Assessment result (“hot spot”) is caused by which component, being the precondition to
implement improvements on a technical level.
TPI Case Study: USB stick
The following case study of TPI application is taken from Liong and Guo [40, 41]. Based on
this example the correlation of material declaration needs and availability can be discussed.
【190401】
The description of the procedure for a TPI project facilitates further more the understanding of
the overall ecodesign process. It should be noticed, that the procedure followed below ist hat
of an independent researcher – for ecodesign projects the producer ist he key performer, who
usually has better access to real product data, depending on material data management also
on product composition.
Step 1: Inventory Analysis
In this section, the content of the USB Flash memory from the company TrekStor is
investigated. This includes disassembling the product into its subproducts and finally to its
single components. This way, the materials content of the components is determined.
Fig. 11: Analysed USB Flash Memory
Disassembling of the USB Flash memory results in a more detailed overview of the content.
The electronic components and other parts like PCB board, casing, switch and connector are
counted and weighed. The details are listed in the following table.
Tab. 9: List of Components in the USB Flash Memory
The data listed in the table contains only the functional product units. The packaging, cables,
etc. are not considered as the functional unit, i.e. the USB Flash Memory can work properly
without these components.
From the disassembling, it is observed that the USB Flash Memory contains 27 electronic
components, most of them are SMD resistors and capacitors. The most significant parts
among the electronic components are the flash controller and the flash memory. Physically,
they are the biggest parts in the assembly board. Functionally, these components dominate
the operations of the device.
【190401】
Step 2: Material content analysis
The next step after gathering the parts information is to determine the materials content of the
parts. In this step, two problems have to be dealt with:
Firstly, the difficulties in tracing the manufacturer of the parts. From the 27 electronic
components, only three components are explicitly labelled with the manufacturer’s name, i.e.
flash memory from ALCOR, flash controller from HYNIX and tantalum capacitor from KEMET.
Secondly, the remaining components are not labelled or labelled with incomprehensible
information.From the three labelled components, no declaration of materials information are
found, either as individual declaration or as family declaration. The difficulties in collecting
material data show that not all companies are ready to provide material data.
Therefore, Liong [40] proposes a migration strategy which should include:
• training the companies to become environmental-friendly by providing conformance
marking.training them to provide declaration of conformity, if they have made progress
with conformance marking.
• training them to provide material declaration of materials under supervision of the
legislation.
• training them to provide a full material declaration.
As a compensation for insufficient material information, other methods to gather the data are
used. These methods involve the use of available data of similar component or analysis from
the component itself. The methods are explained briefly below:
1. MOEWE
The MOEWE database is developed by Fraunhofer IZM/EE associated with the development
of TPI method. There are two main modules of the database, i.e. the material and the
component module. The material module contains the list of materials and their environmental
impacts characterized by the TPI value. The usage of this database will be demonstrated later
for the TPI calculation using the developed data model. The component module is the
database containing materials list of components and the TPI value from both single materials
and the whole component. This database results from the data collection whilst analysing a
great number of components, reliable literature and material data sheets and data analysis
from component dismantling.
2. Data Sheets
The next method of collecting data is using published material data sheets. In this case, the
published data sheets from ZVEI umbrella specs and ST Microelectronics are used. The data
sheets contain chemical declaration based on package family. The material masses are given
in percent in accordance with the material content. Members of the package family are
furthermore listed and given in their weight. Scaling the weight with the given percentage
resulted in the complete material declaration of the component.
3. Spectral Analysis Method
The spectral analysis works with the X-ray principle. Each element has unique spectral
characteristics, i.e. they release radiation at different intensity and wavelength. Based on this
principle, the analysis is implemented. Unknown components without sufficient data are
analyzed with this method. The spectral analysis method is able to determine the material
content in the investigated part, but is unable to determine material weight. Determination of
material weight occurs through estimation.
Material content of the components are in brief:
1. Resistors
In the USB device, six resistors are mounted. Although these resistors have different
specifications, it is assumed that the technical specification differences are not critical. Hence,
the differences are omitted and the resistors are considered as the same components. The
material content of the resistors are seized from the MOEWE Database.
2. Capacitors
【190401】
The data for capacitors are also originated from the MOEWE Database taking the same
assumption that the technical specifications do not affect the content. 16 such components
are found without further specifications.
3. Tantalum Capacitor
The data for tantalum capacitors is also extracted from the MOEWE Database. This
component is manufactured by KEMET with 10 µF capacitance.
4. Flash Memory
The Flash memory is manufactured by Hynix in TSOP48 packaging.
For this component, the data are chosen from the published material data from ST
Microelectronics.
5. Disk Controller
The disk controller is manufactured by ALCOR in LQFP48 packaging. The Data are also
taken from ST Microelectronics.
6. Resonator
The component comes from the unknown manufacturer and as no adequate information suits
this component, the estimation with spectral analysis is conducted.
7. LED
For LED, the material data is taken from MOEWE Database. The LED has a specification of
Type CL190 10-35MCD and are mounted as SMD0603.
8. PCB Board
For the assessment, PCB Board data are calculated from ZVEI PCB board calculator. The
Board has the dimension of 41mm x 18mm x 0,8mm with four layers.
Further materials are correlated with casing, switch and connector.
Most of these are dominated by plastics. The material content of these items are partially
estimated with spectral analysis. The estimated material content of the whole product is listed
in the figure below.
【190401】
Fig. 12: Material composition of USB Flash Memory
Step 3: TPI Calculation
Following the TPI calculation procedure as outlined above the TPI value per material results
in 34124 TPI per device (2,78 TPI/mg). The material split below shows the USB stick
assessment per substance. For ecodesign the split up per component / sub-assembly or
function is an inevitable information to be able to link (potential) environment impacts to
technology – otherwise there is no basis to identify and discuss improvement options.
【190401】
Fig. 13: TPI per Material of a USB Flash Memory
PCB
6,8%
solder
2,9% housing
14,6%
capacitors
2,3%
resistors
0,30%
tantalum
capacitor
0,30%
memory
2,4%
USB plug
66,6%
LED
0,01%
resonator
2,7%
controller
0,90%
switch
0,20%
Fig. 14: TPI per Component of a USB Flash Memory
Such an assessment in full is only possible based on a 100% declaration.
【190401】
Based on a JIG 101 declaration the TPI assessment would point out only the substances in
the figure below.
Of the total of 34.124 TPI only 2.083 TPI are dedicated to list A substances (6%), 7.538 TPI
are dedicated to list B sustances (22%). A JIG 101 declaration fort his USB Flash Memory
would have covered in terms of TPI 28% of the product. Obviously a lot of information gets
lost, if a JIG 101 declaration should bet he basis for ecodesign instead of a 100% declaration,
but at least a certain minimum level of ecodesign seems to be feasible with JIG 101, which
helps to figure out the materials which have to be phased out for RoHS compliance – although
the link to the critical components is not provided.
Fig. 15: TPI per Material of a USB Flash Memory – JIG-101 substances and compounds marked
The Recycling Potential Indicator (RPI)
The Recycling Potential Indicator (RPI) is part of the IZM/EE-Toolbox and describes the
suitability of a product for a particular recycling process. An RPI- Assessment compares the
【190401】
material composition of a product (e.g. electronic assembly group) with the recycling
procedure that is to be used. In other words it can be used to establish the economic and
technical feasibility of a recycling strategy to a specific product. Due to the precedence set by
the RPI it is therefore possible to choose a recycling or recovery procedure that is offers the
maximal environmental and economic benefits. Substances which are forbidden are used as
a disqualifying criterion in the analysis.
Depending on the products material composition, certain products are predestined either for
recycling while others will require pre-treatment before any recycling process. The RPI
therefore makes it possible to identify a product design that will make it profitable and easy in
the End-of-life scenarios of recycling
Issues not examined by the RPI
The RPI does not examine;
ƒ The suitability of a product or parts of it to be reused as this is not strictly recycling.
ƒ Issues related to collection, cleaning and transportation. These are factors that are
reliant on the financial expenditures which equally affect the recycling process.
ƒ All methods of waste disposal are also due to their complexity not considered in this
indicator. This is because the decision to include the different dumping scenarios or
other logistical issues before the recycling process is only useful when the products or
the waste does contain hazardous substances or due to political and economic point
of views.
ƒ The direct environmental effects of the recycling process are also not taken into
consideration
Input parameters
The input parameters represent an inventory of all the relevant data that is to be collected
before the RPI assessment; this is followed by the formulation of mathematical vectors which
enable the comparison of the vector and the material composition of a particular electronic
and electric waste. A value that represents the technical demands of the material composition
of the input materials as well as the economic targets from recycling is then derived for each
process that is considered.
Input Parameter 1: The Recycling process
There are various recycling processes that available for EEE, Table 2 shows a summary the
different recovery processes. Depending on the material quality of the EEE one has to
consider a recovery process suitable.
Tab. 10: Different Recycling Processes
Shredding/Fractioning
Milling and fractioning into ferrous, non-ferrous, plastic and other
materials. The process that is computed here assumes the
compatible recycling of each fraction
Copper Smelter Process
Pyrometallurgical splitting through an oven shaft and a converter,
while highly volatile metals (Hg, Pb ,Sn) are oxidised to gaseous
form and are collected in the filter cake. Precious metals and
Nickel go into the copper smelting phase, where through
electrolysis the precious metals accumulate on the anodes and
the nickel dissolves in the electrolyte. Less volatile metals (Fe,
Al, Mn,Cr) remain in the slug and can be sold as construction
【190401】
material. Hazardous waste has however, to be removed from
any electronic waste. Thus Hg and Cd are separated from such
slug and land filled.
Precious Metal smelting
Recovery of precious metals is done through the reduction of
their melting points and electrolysis; copper residues are further
processed in the copper smelter while slug with the remaining
non-precious metals that cannot be economically recovered (Zn,
Cd, Halogens) are collected in the air dust filters.
Iron Smelter Process
Smelting of Steel scrap in high or low shaft ovens;
Metals that are more valuable that iron impede the process or
impure the iron; the slug from this process usually contains Cu,
Pb, Cd and PCDD/PCDF that must be land filled.
Pyrolysis
This is the anaerobic burning process to reduce the waste,
potential environmental contamination and to increase metal
recovery. (e.g. the test plant in BC-Berlin 1998)
Method is useful in the environment-friendly disposal of flame
retardants on plastics. Solid residues can be used as
supplementary fuel in the copper smelter.
Household Waste
Incineration (HWI)
Used for volume reduction partly with energy recovery. The out
coming untreated slug is normally used in road work. Some of
the slug that contains metal fractions is used in the smelter
processes. Modern incinerators are only capable of reducing
PBDD, PCDD, PCDF and PVDF emissions, when the share of
WEEE is low. HWI is however not recommended for the
treatment of industrial e-scrap. The burning of toxic waste is also
very expensive for e-waste.
Aluminium Processing
There is first a classification into old aluminium metals,
aluminium dross, process residues or production wastes. This is
in accordance to their re-melting performance (casting alloys
and extrusion alloys). Foreign metals and synthetic adhesives
reduce their quality. Mixed granulates from e-scrap are not
capable of classification, thus disassembly is required.
The Requirements specification of each treatment processes arise from the specific material
limitations such as the amount of prohibited substances, technical and economical feasibility
of the process. Table 3 shows how to determine these limitations.
The Input-vectors
Tab. 11: Input vectors used in the determination of a treatment process.
Prohibited
【190401】
Substances V All prohibited substances are excluded. This is an exclusion criterion;
therefore, if such a substance is contained in the materials to be processed then one cannot
conduct an RPI.
Technological
Min content T min If the values are below the specified minimum content, then the treatment is
technically neither useful nor feasible.
Technological
Max content T max
Values above this content could interfere with the recovery process
or lead to impurities in the end product.
Economic
Min content W min
Values below the specified minimum content, make any recovery
condition (i.e. technology, productivity, market prices for raw materials) economically
infeasible
Economic
Max content W max
Values above this content are; 1st economically infeasible, if
however processed this is in conjunction with infeasible pre-treatments and cleaning
processes. It is therefore recommended that one should choose a process that is specific and
efficient for these materials. 2nd in a process where certain components are not desired then
they may attract a high penalty (e.g. if the slug has to be land filled) Thus the fractions should
not be allowed to go beyond this content for the recovery to be economically feasible.
A vector profile is then compiled for all the substances. This vector contains both the
technological as well as the economical requirements of the input parameters.
The formula for a product material component VP i of the process vector profile is
V Pi
=
0,
T max.
W max + (T max-W max)*µ,
when the substance i = 0
when T max. < W max.
when T max.> W max.
µ is a factor between 0 and 1, which compares between technological feasibility (µ=1), and
economical profitability (µ=0). With these factors the local options can be simulated.
Prohibited substances are later integrated in the simulation after the analysis of the RPI.
Diagram 1 shows a mechanical separation simulation with shredding and sorting processes.
The logarithmical depiction was chosen because it could display both high (100%) and very
low (0%) values. The removal of pollutants (PCBs, PBB, Hg, Cd) precedes the shredding
process because such pollutants are hard to remove once shredded. This is because in the
shredding process, small amounts of valuable materials could be distributed in other fractions
leading to a considerable reduction in the awaited economic gains. Due to this problem it is
usually the case that there is an automatic or manual dismantling process followed some
sorting process that classifies the dismantled parts according to their economic value based
on their metal contents.
【190401】
Mechanical Separation
%-Input-substance
100
10
1
Radioactive
Li
Sb
Cd
Hg
F
Cl
Br
PCT
PCB
Inerts
Plastics
Mn
Al
Fe
Ni
Sn
Zn
Pb
Cu
Ag
Au
Pd
Pt
0,1
Fig. 16: Typical material output in the „shredding/ sorting” process
The amount of aluminium (Al), iron (Fe), and copper (Cu) separated are decisive in the
mechanical separation. High levels of precious metals however get distributed in the different
fractions and dusts thus limiting their recovery. Mercury (Hg), Lithium (Li), and
Poly-Chlorinated Biphenyls/trephines (PCB/PCT) form part of the prohibited substances,
however, low concentrations of antimony (Sb) and cadmium (Cd) are allowed.
The values in Diagram 4 are based on a 1999 survey in several recycling companies
Input Parameter 2: Material Profile of the Product
The material profile of a product is determined by the material composition of the product and
thus the products material declaration. This profile is also the input parameter of the TPI
assessment described above. The aggregate of the material groups could however differ due
to the additional recovery assessments (i.e. Separation of each metal, oxidation, and
reduction) as well as the fractions that result thereof.
The materials must be exactly aggregated as described above not withstanding their toxicity.
Numerical Aggregation of the Recycling Potential Indicator
The RPI method uses a series of numerical values to examine the correlation between the
material composition of a product (EPi) and its suitability for a chosen recycling process (VPi).
The aim of the RPI vector (RPI i) therefore, is to establish which recycling process is suitable
for a particular material profile of a product or its fractions.
The RPI vector is calculated from the material composition of a product vector and the
recycling process vectors by a material-discrete correlation.
RPI i= σ (VPI, EP)
σ is the correlations function.
In this correlation it is important that similar substances be assigned to similar vectors.
Missing information on one side of the vector disqualifies the information being used in the
correlation.
The correlations coefficient of all the available recycling processes build the RPI vector and
the process with the greatest coefficient is the most suitable recycling process to be
undertaken for the assessed product. Similarly this vector allows for easier comparison with
other recycling processes thus giving room for the final decision.
The optimisation of the material contents of a product can be used to influence the recycling
【190401】
process that will be used. For example the reduction or removal of hazardous substances or
materials from a product would make certain pre-treatment processes such as the cleaning
before recycling or the disposal of hazardous waste unnecessary. Such expenditures are
reflected by a high W max value.
The correlations coefficient is best defined by a variance of standardised factors which range
between -1 and +1, with -1 indicating that a certain fraction is completely unsuitable for a
chosen recycling process. This can occur when for example, a substance that is prohibited in
a recycling process, or that can only be recovered with high economic expenditure is present
in a fraction. +1 on the other hand indicates that the chosen recovery process is suitable for
the products’ material components. In practise it is rare for such values to occur; typically the
values are between -0, 2 and 0, 9.
Material declaration, is therefore important for the RPI analysis since the economic losses can
be avoided with a choice of the right recovery process. This, however, requires knowledge
about the material components of EEE.
【190401】
Development of a best-practice strategy for material declaration based eco-design
Based on the in-depth analysis of the status quo of material declarations and eco-design tools
the question to be answered is: How to make eco-design feasible?
First, it has to be acknowledged, that material based eco-design only can focus on a limited
part of the overall product life cycle, see overview table below. In fact only raw material
acquisition and end-of-life2 are covered appropriately, other aspects are only covered to a
very limited extend – if at all.
Tab. 12: Life cycle thinking through material declaration based ecodesign – applicability and
limits
life cycle stage
raw material acquisition
Manufacturing
applicability of material declaration based ecodesign
ƒ covered
ƒ covered to a very limited extend (e.g. indirectly
emission potentials etc. when handling a certain
material)
ƒ link with default LCA data (see for comparison the
EuP report methodology) enables consideration of
generic impacts of manufacturing processes to a
limited extend (further information on physical /
mechanical composition required)
Retail
ƒ not covered
Use
ƒ covered to a very limited extend: e.g. emission
potentials through improper use
repair, maintenance
ƒ not covered
Reuse
ƒ not covered
end-of-life:
recycling,
ƒ covered: appropriateness of materials for certain
disposal
end-of-life scenarios, emission / toxicity potentials
transports in general
ƒ not covered
The consequence is, a material declaration based eco-design strategy makes sense only for
those products, where raw material acquisition or end-of-life are dominant life cycle phases.
Meaning, it has to be known from prior studies for this kind of product, if these are relevant life
cycle phases.
An example for such an investigation is the Integrated Product Policy Pilot Project “Life Cycle
Environmental Issues of Mobile Phones” [43]. This IPP project resulted in the development of
so-called “Key Environmental Performance Indicators” (KEPIs) [44]. The KEPIs for mobile
phones are listed below. The KEPIs, which are based on material data are in bold. “Area of
fabricated dies” refers mainly to the IC processing and its environmental impacts, but also to
the high grade silicon – therefore it is marked here: As a rule of thumb the ratio of
environmental impacts of silicon production compared to the IC processing itself is roughly 1 :
4 [45].
2
Remember, that the European End-of-Life-Vehicles directive resulted in detailed activities to foster
material declaration throughout the automotive supply chain.
【190401】
Tab. 13: Key Environmental Performance Indicators for Mobile Phones [44]
Priority
very high
high
moderate
Life Cycle Phase
Production3
ƒ Amount of precious
metals, especially
gold
ƒ Area of PWB & number
of layers
ƒ Area of fabricated dies
ƒ Amount of bromine
ƒ Area of LCD
ƒ Amount of solder
paste
ƒ Amount of copper in
charger and its cables
Transportation
Use
ƒ Stand-by power
consumption of
charger
ƒ Number of
components in
the phone
Mobile phones are a very good example of a product, where material composition is of a high
relevancy for the overall environmental impacts. In general, for the following product
categories, raw material acquisition and end-of-life aspects play a dominant role:
ƒ Mobile products, such as mobile phones, PDAs, MP3 player etc., but also notebooks
(as miniaturization of these devices has been achieved through electronics integration,
meaning usually a high ratio of precious metals and silicon; on the other hand the use
phase already has been optimized to a certain degree by improved energy
management – to achieve mobility)
ƒ Products, which are in use only occasionally, such as lady shavers, electrical toys,
USB stick (as the usually dominant use phase of EE products is of minor relevancy
due to the use patterns; meaning, in comparison other life cycle phases, such as raw
material acquisition and end-of-life get more relevancy)
The other way round: Material declaration based ecodesign will not focus on the
environmental “hotspots” for e.g. white goods and consumer electronics (long lifetime, steady
energy consumption).
There are some “grey area” products, such as printers, which might be used in a home
environment on an occasional basis (and completely switched off in the meantime) or in a
high duty office environment. In the first case, raw materials and end-of-life might be dominant,
in the latter case, the use phase with consumption of energy, ink / toner and paper will
dominate the life cycle impacts.
In general, electronics dominated products tend to be dominated by material issues.
However, even in cases where raw material acquisition and end-of-life are not the dominant
life cycle phases it might be the goal to get them covered by ecodesign, e.g. when focusing
with product policy on end-of-life issues due to the public perception of the WEEE discussion.
Material Declaration View
The current “real world” status of material declarations and the data requirements of existing
eco-design approaches are not compatible to each other yet. This might be also an
explanation, why material based eco-design is rarely practiced yet beyond some case study
activities.
Until the publication of IPC-1752 compliance documentation for RoHS was not possible
based on standardized declaration schemes.
From the view of the eco-design tools, the requirements towards material declaration are as
follows:
ƒ Declaration as complete as possible (preferably 100%, in certain cases even minor
impurities are of high relevancy – see process profiles for RPI calculations)
3
„Production“ includes raw material acquisition and manufacturing here
【190401】
ƒ
ƒ
Declaration as differentiated as possible (BOM like structure – modular approach -, for
compliance checks down to homogeneous material level)
Declaration as specific as possible (no “umbrella specifications” covering whole
component families, which makes it impossible to differentiate e.g. same types of
components from different manufacturers)
Under these conditions, the following declaration schemes are the most helpful ones for
eco-design:
ƒ BOM like structure according to DIN 19220 / IEC 61906
ƒ 100 % declaration as foreseen by IMDS / Umbrella specs, but not grouping
component families
RoHS and WEEE View
In brief, WEEE does not require material declarations, nor can a trend be observed pushed by
industry towards material declarations stimulated by the WEEE legislation (in contradiction to
the development observed in correlation with the ELV directive few years ago).
The only legislative driver for material declarations currently affecting the electronics industry
as a whole is the RoHS directive. The only standard, which takes into account in full the RoHS
requirements, is IPC-1752 (see 0). All others do not foresee to take into account strictly the
RoHS definitions (e.g. “homogeneous material”). It is expected, that IPC-1752 will achieve a
broad acceptance among manufacturers.
Anyhow, IPC-1752 in its basic form will rarely serve ecodesign needs as there will be mainly
two different product classes:
ƒ Products not containing RoHS substances at all, meaning there is no information
about the product composition besides the fact, that these RoHS-6 substances are not
contained
ƒ Products containing RoHS substances for exempted applications. On the one hand
the use of these substances for exempted applications is expected to be well less than
1% of the total product weight, meaning more than 99% of the product remains
“unknown”. Furthermore, by definition exemptions are only allowed for applications,
where there is no RoHS compliant alternative, meaning that there is just no “playing
field” for ecodesign to replace the RoHS restricted substance in this case.
The BOM structure of IPC-1752 is advantageous for ecodesign, although it is very
homogeneous material centric – as this is the major question for RoHS compliance. For
ecodesign a more detailed sub-component level instead is favourable.
Recyclability View
Recyclability is well reflected by several ecodesign tools, but to a minor degree by material
declarations. The Umbrella Specs help to come close to an assessment of (material)
recyclability and also JEDEC JIG-101 points out appropriately “where the money is” (valuable
materials) and to a certain extend but not comprehensive, where materials are, which might
hinder recyclability (e.g. Beryllium).
To cover mechanical / separation aspects through material declarations requires also a BOM
like structure to point out, which components should be separated. However, even a BOM like
material declaration rarely shows, if a separation (disassembly) of components is technical
and economically feasible.
EcoDesign Tool View
As explained before, ecodesign tools usually require data exceeding those, available through
material declarations in place. To our knowledge, there is no ecodesign tool (indicator) which
can deal with non 100% declarations per se. However, through certain modifications and
simplifications of the methodology, some indicator tools are applicable. For example, for the
TPI such a scenario could look like this:
1. Given scenario is a material declaration according to JEDEC JIG-101
【190401】
2. The TPI is applied only for list A and list B materials, all other materials are assessed
with a TPI of 0 (this is not in line with the general methodology but might be allowed as
a concession to pragmatism). It has to be kept in mind, that this kind of simplification
makes the assessment results “blind” for certain materials. The worst case would be,
that a list A or list B material is replaced by a more hazardous, non A or B, material. In
this case, the TPI would decrease, but the real or potential impact might increase.
3. An improvement target now would be to minimize the TPI absolutely as well as the
specific TPI per weight. For non-A / -B substances no statement and differentiation is
possible, which minimizes the playing field of ecodesign.
4. The most TPI relevant product constituents should be identified. For this a BOM like
structure is needed (which is not supported by JEDEC JIG-101, but in part by
IPC-1752), otherwise follow up investigations have to take place to find the hot spots.
5. These hot spots are with priority subject to discussions for improvement options.
For the Recycling Potential Indicator such a procedure is applicable with even more severe
constraints as the spectrum of list A and B substances does not reflect appropriately all
material data that is relevant to assess the appropriateness of a material mixture for a certain
recycling path (e.g. iron is wanted in the copper stream, but copper not in the iron stream –
both are not on list A and B, copper has been formerly).
Design Workflow View
Up to know, all chapters dealt with the situation that there is a physical component resp.
device for which a material declaration is or can be given. But throughout the product
development process usually the step to decide for a certain physical component comes close
to the end of the design process. The major problem is: The later ecodesign steps in as an
integrated measure within the design workflow, the more limited are the options to achieve
still improvements or to allow for changes.
The figure below shows the exemplary design work flow for micro systems devices: At several
steps within this workflow material declaration information and related screening can be used
for ecodesign. In micro systems design the following process steps are recommended
practice:
ƒ Specification
ƒ System studies
ƒ Component preselection / system implementation
ƒ System performance simulation
ƒ Concretion of the system design
ƒ System simulation including parasitic coupling
ƒ System realisation and testing
(for a detailed description of the work flow see [12]).
At early stages of the design process generic component data from other projects might be
available. At later stages more specific data from suppliers can be used. Each time
evaluations of alternatives are made environmentally weighted material data can support
decision making with an environmental perspective.
【190401】
Fig. 17: The link between materials declaration and micro systems design
However, the step where material declarations help most for ecodesign – because it is the
step where these declarations become available – is supplier selection (which is not
necessarily part of the design process but is also a business process by itself), and to a
certain degree also product redesign where component databases might be already available
for a broader range of the components to be used.
Conclusions
To summarise in short – having in mind the different levels of ecodesign –
ƒ compliance with a banned substances list
is supported in full by certain material declaration schemes
ƒ ranking of materials based on qualitative assessments and
ƒ ranking of materials based on environmental indicators
is supported partly (with or without minor adaptations of the tools)
ƒ screening LCA (life cycle assessment) and
ƒ full-scale LCA
needs much more data and product knowledge than what is provided by state of the material
declaration schemes.
The essentials of material declarations to fulfil ecodesign requirements are
ƒ a declaration close to 100%
ƒ BOM like declaration structure
In principle, state-of-the-art material declarations are very useful for ecodesign, as long as the
user has in mind, what such kind of ecodesign is able to provide as a result and what not.
The European EuP directive will foster the trend towards material declarations – not known in
detail today how – but probably not towards 100% declarations.
【190401】
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【190401】
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(3)研究開発成果の社会的含意、特記事項など
この研究は、今後新しく設計される電機電子機器に使用される材料の管理基準を共
通に認識しておく為に研究項目とした。その結果、世界の標準化活動に材料の有害性
を表示することが常識化する事が確かめられた。標準に定められた設計情報は、イン
ターネット環境により世界中からアクセス可能である。従って、リサイクルにおいて
もこの様な環境の元に管理システムを構築することは新たな障害とはならないと判断
される。
(4)研究成果の今後期待される効果
欧州、中国、日本において共通の設計環境を整えることは可能である。即ちリサイクル
技術は共通に開発できる。しかし、極端な不正は行われないとしても、誤って使用される
事態までを標準化活動では防止できない。不正使用に対するフェールセーフの仕組みは、
地域の状況により用意されなければならない。
【190401】
4.3
ライフサイクル設計とアジア循環のモデル化(モデル化研究グループ)
(1)研究開発目標
モデル化研究グループでは、統合ライフサイクル設計支援環境の提案、および、グローバル逆
流通システムのモデル化とシミュレーション、の2点について研究を実施した。
統合ライフサイクル設計支援環境の提案に関しては、個別的な分解性設計、リサイクル性設計
などのいわゆる環境配慮設計から、ライフサイクル全体を見渡した「ライフサイクル思考」に基
づく、ライフサイクル設計へのステップアップが求められていることを背景に、ライフサイクル
設計において何をどのように検討すべきかということを明らかにすることを目的として研究を実
施した。その結果、ライフサイクル設計のプロセスとライフサイクル設計を包括的、かつ、統合
的に支援するための計算機環境である「統合ライフサイクル設計支援環境」のアーキテクチャを
提案する。
阪大グループでは、このアーキテクチャの提案に加えて、具体的なサブシステムの実現例とし
てモジュール設計支援手法を開発する。すなわち、ライフサイクル設計の主課題である部品のリ
ユース性やアップグレード性向上のためには、モジュール化設計が重要な要素設計技術である。
ここでは、ライフサイクルの特性と幾何モデルを用いて、製品のモジュール構造を導出する、モ
ジュール化設計支援手法を提案する。
グローバル逆流通システムのモデル化とシミュレーションに関しては、使用済み製品が国内か
らアジア諸国に流出しているいわゆる eWaste 問題の課題と解決可能性を検討するために、ライフ
サイクルシミュレーションの考え方に基づき、アジア循環のモデルを作成し、シミュレーション
を実施する。eWaste 問題においては潜在的なリスクに特徴があり、大きな問題であるので、ここ
では、リスクを用いたモデル化を行った。例題として、デスクトップパソコンが、日本から中国
(内陸部、および、沿岸部)へ流出する場合を対象とする。結果として、アジア循環における様々
なライフサイクル・オプション(例えば、製品リユース、部品リユース、材料リサイクル)を環
境負荷、および、経済性の点から比較し、これらの点から適切なアジア循環を実現するための条
件を明らかにする。
(2)研究実施内容及び成果
ライフサイクル設計を支援するための統合環境
近年、環境配慮設計における分解性設計、リサイクル性設計などの個別的な要素設計技術は、
製造業の中で一定のレベルで実践され、今後は、ライフサイクル思考を実践する「ライフサイク
ル設計」の必要性が高まると考えられる。本節では、このライフサイクル設計を統合的に支援す
る計算機環境について議論し、その要求機能を明らかにする。
環境配慮設計支援の現状
実践としての環境配慮設計は、大企業に限れば製造業の中で相当程度浸透していると言って良
い。その中で、計算機化されているか否かを別にして、以下のような支援ツールが活用、もしく
は提案されている。
(1) 製品レベルの DfX 支援ツール:分解性設計、リサイクル性設計、エコマテリアルの選択支援
など、製品設計時に検討すべき特定の側面における設計支援。
(2) LCA ツール:ライフサイクルレベルの環境影響の評価。
(3) 情報管理システム:製品レベルで、設計に必要な情報、設計により生成された情報の管理を
支援するツール[1]。PDM (Product Data Management)、グリーン調達材料・部品データベー
ス、化学物質基本情報データベースなど。
【190401】
(4) ライフサイクル戦略策定支援ツール:近年になって研究、実用化が進んだ、ライフサイクル
レベルの戦略策定支援ツール。例えば、ライフサイクルプランニング手法[2]、QFDE[3]、廃
棄要因分析[4]などがある。
環境配慮設計の実態調査[5]によれば、現状は以下のようにまとめられる。
z
広く普及しているのは、(1)DfX 支援ツール、(2)LCA であり、(3)情報管理システムは普及途
上であり、(4)ライフサイクル戦略策定支援ツールはこれから普及が進む可能性があるという
状況である。
z
DfX 支援ツールは、必ずしも計算機支援がなされている訳ではない。早期に環境配慮設計を
実施している企業でむしろ計算機化が遅れ、後発企業において、三次元 CAD と接続された DfX
計算機支援ツールが導入されている傾向が見受けられた。
z
最も多用されていたのは、
「製品アセスメントマニュアル」
(例えば、[6])である。これが計
算機支援ツール化された事例は見受けられなかったが、これは検討すべき製品レベルの環境
側面のチェックリストと見るのが妥当であろう。
z
分解性設計においては、計算機支援ツールが導入されたものの、普及しない、廃止された例
も見受けられた。これは、支援システムが提示する問題点、改良方法がパターン化されてお
り、設計者が一端覚えてしまえば、陳腐化してしまい、使用する必要性が無くなってしまう
ことが原因だと考えられる。
z
LCA に関して言えば、CAD と接続されたツールが利用されている例もあるが、多くの場合、設
計の都度 LCA を実施するのではなく、代表製品について、設計者ではなく LCA 担当者が実施
するという運用形態が一般的であるように見受けられた。
以上をまとめると、環境配慮設計支援ツールは、表 1のように分類できる。一つは、製品レベ
ルの支援か、ライフサイクルレベルの支援かであり、普及しているのは主として製品レベルの支
援ツールである。もう一つは、分解性設計ツールのように、基本的な考え方やコンセプトを普及
させることが結果として主な役割となってしまい、コンセプトが普及した時点で使われなくなっ
てしまうツールと、コンセプトには必ずしも目新しさは無いが、具体的な設計作業を効率的に支
援してくれるツールであり、PDM、環境配慮された部品や材料のデータベースなどはこちらに該当
する。両者の中間形態として、基本的な考え方も学べ、発想の転換を促すと同時に、面倒な作業
支援も行ってくれるツールもある。設計者が LCA を体験的にでも実施し、ライフサイクルの評価
を学ぶことは重要であるし、必ずしも広く普及している訳ではないが QFD を DfE に応用したツー
ルもここに分類できる。
表 1:環境配慮設計支援ツールの分類
製品設計
対象レベル
ライフサイクル
コンセプトの普及
分解性設計
リサイクル性設計
LC プランニング
主な役割
中間
作業支援
情報管理システム
QFDE
LCA
【190401】
ライフサイクル設計支援のための課題
前節で述べた現状における最大の課題は、
「製品アセスメントマニュアル」に代表されるように、
設計支援が製品レベルの支援に留まっていることである。EuP 指令に代表されるように、
「ライフ
サイクル思考」という言葉が近年多用されるが、ライフサイクル思考=LCA ではなく、シンセシ
スとアナリシスの関係でいえば、LCA は飽くまでアナリシスであり、シンセシスの部分、つまり、
評価に足る無理のない循環を実現するライフサイクルを提案する段階を支援することである。こ
れが「ライフサイクル設計」
(図 2参照)[7]の本質であり、その支援に向けた課題はまさに、ラ
イフサイクルレベルのシンセシスを支援するツールが圧倒的に不足している、もしくは普及して
いないことにある。このとき前節で述べたように、上記の課題の解決に向けた支援ツールはいく
つか開発、提案されているものの、現状では特定の側面、もしくは側面の集合体に留まっている
点とライフサイクルレベルの検討が製品設計に繋がっていない点が課題である。すなわち、統合
的にライフサイクル設計のシンセシス面を支援することが課題である。
統合ライフサイクル設計支援環境
前節で述べた課題を解決するため、我々は、図 3に示す「統合ライフサイクル設計支援環境」
を提案する。ここでは、前節で述べたように、製品レベルのみならず、ライフサイクルレベルで
のシンセシス面を支援することを主目的としており、そのために以下の支援をすることを開発目
的としている。
(a) 様々な視点からライフサイクルを試行錯誤的に設計する共通ワークスペースの提供
(b) ビジネス設計の支援の実現
(c) 製品設計とのスムースな連携
(d) ライフサイクル全体を対象とした、環境負荷評価のみならず、経済性、マテリアルのバラン
スの評価
ライフサイクルレベルでのシンセシスを支援するためには、(a)、(c)により、製品設計におけ
るプロダクトモデルのように、ライフサイクルそのものを具体的に明示し、ライフサイクルを対
ビジネス戦略の策定
製品コンセプトの作成
環境目標の策定
技術開発成果の導入
ライフサイクル戦略の策定
製品設計
・分解性
・リサイクル性
・アップグレード性
などの要素設計技術
プロセス設計
・生産プロセス
・使用プロセス
・メンテナンスプロセス
・回収プロセス
・リサイクルプロセス
などの設計
ライフサイクル評価
(LCA、LCC,LCSなど)
実システムの実現
ライフサイクル・マネジメント
図 2:ライフサイクル設計のプロセス
【190401】
象に多面的な分析、評価を行いながら、試行錯誤しつつライフサイクルを創り上げる支援システ
ムが必要不可欠である。我々はこれを実現するため、ライフサイクルのモデルとして「ライフサ
イクル・シナリオ」[8]を用いて、これらの機能を実現する「ライフサイクル・シナリオ作成支援
システム」[9]を提案している。これは、図 2の「ライフサイクル戦略の策定」段階を支援する
ツールであり、シナリオの作成を行うワークスペースを提供している。このとき、ライフサイク
ルプランニング[2]、廃棄要因分析[4]、価値・物理寿命評価、リユース可能性を検討する限界リ
ユース率分析などの、ライフサイクルレベルの各側面を分析、評価する専用ツールと接続するこ
と、および、様々な代替案や設計根拠を管理し、試行錯誤と設計解の根拠付けを支援することを
狙っている。また、(c)に関しては、ライフサイクル・シナリオを詳細化する過程で製品設計に対
する要求項目(例えば、分解時間は 10 分以内、アップグレードに要するコストは 3000 円以下)
を記述し、その結果を図 2の製品設計/プロセス設計段階に受け渡すことにより実現しようとし
ている。
ライフサイクル設計を普及させるためには、このようにライフサイクル設計の考え方、プロセ
スを明示すると共に、ライフサイクル設計を行うことにより製品循環に関するビジネス性が高ま
ることが必要不可欠である。これが課題(b)を挙げた理由であり、本統合支援環境では、「ビジネ
スアイディア創成支援システム」[10]の構築によりこれを実現しようとしている。ここでは、既
存の環境調和型ビジネス事例を百数十収集し、ここから、TRIZ[11]のように問題解決のための基
本原則として、9 の価値実現の原則、9 のコスト削減の原則を抽出している。これら、既存のビジ
ネス事例集と 9+9 の原則を用いて、新しい循環ビジネスのアイディアの創成を支援しようという
のが、このビジネスアイディア創成支援システムである。
(d)のライフサイクルの評価、特に、環境影響評価に加えて、経済性や循環のバランスを評価す
る仕組みについては、これまで「ライフサイクル・シミュレーション(LCS)」[12]を開発してき
ており、様々なケーススタディを通じてその有効性を検証してきた。LCS 単独での使用の場合に
は、与えられたモデル評価するのみであり、問題点を解決する代替案の作成は支援対象外である
こと、モデル作成が必ずしも容易でないことといった課題があった。LCS を統合支援環境に組み
込むことによって、ビジネスアイディア創成支援システム、ライフサイクル・シナリオ作成支援
システムによって様々なライフサイクル・モデル案に作成し、それを LCS に受け渡すことにより、
LCS のモデルを簡易に作成し、かつ、総合的な評価が行えるようになる。
統合ライフサイクル設計支援環境構築上の課題
本グループでは、前節で提案した総合支援環境のプロトタイプを構築したが、この過程でいく
つかの課題も明らかになってきた。課題は以下のようにまとめられる。
z
抽象的でわかりにくい
製品設計のみならず、ライフサイクルを設計することは何をすべきことなのかを示すことを
目的として統合支援環境を提唱しているが、目に見える製品と違い、ライフサイクルとは何
Business Strategy Design Support Tool
Business Strategy Level
Life Cycle Scenario Description Tool
Life Cycle Strategy
Level
Product Design Level
Life Cycle Evaluation
Level
Disposal Cause
Analysis
Value/Physical
Life Estimation
Marginal Reuse
Rate Analysis
Others...
Design for
Upgradability
Modular Design
Tool
CAD
Other DfXs...
Life Cycle Simulation
Life Cycle Assessment
図 3:統合ライフサイクル設計支援環境のアーキテクチャ
【190401】
で、それを設計するとは具体的に何をするのか、それはなぜ必要かが依然としてわかりにく
いという批判は甘受しなければならない。
z
作業支援に至っていない
上記に関連して、本システムは表 1で言えば「コンセプトの普及」型ツールであり、それを
意図して作成している。逆に、コンセプトが普及してしまえば廃れる可能性もあるし、また、
ライフサイクル設計における作業支援としてのシステム像が描き切れていないというのが現
実である。
z
ライフサイクル・モデルの標準化
製品のライフサイクルをどのようにモデル化、表現するかという課題はこれまで充分に議論
されてこなかった。本統合支援環境においても、LCA におけるプロセスフロー表現、ライフ
サイクル・シナリオ表現、LCS におけるモデル表現などを併存させて検討を行っているのが
現状である。LCA のプロセスフロー表現では不十分であると思われるが、必要十分なライフ
サイクル・モデルの定義を与え、標準化することは、案外、ライフサイクル設計普及の早道
かも知れない。
z
開発サイクル、役割分担の明示化と連携
前述の DfE 調査[5]によると、図 2のライフサイクル設計プロセスには若干現実と一致して
いない点がある。すなわち、ルーチンワークとしての環境配慮設計は、この図の製品設計段
階のみであり、ビジネス戦略やライフサイクル戦略の策定は、個別の製品設計で常に実施さ
れている訳ではない。むしろ、ある製品カテゴリーにおいて、新規戦略製品を設計する場合
などに実施されるものであり、その実施者も、製品設計者というよりはそれを含む製品企画
チームということになるであろう。この点は、LCA が設計毎に毎回実施されるわけではなく、
代表製品に対して環境管理部門の専門家が実施するという状況に似ている。また、教科書的
設計方法論において重要性が指摘されている「概念設計」が個別の製品設計で常に行われて
いる訳ではないという状況にも似ている。
いずれにせよ、この企業内組織において、ライフサイクル設計を担当する部門と人員が明
確に切り出されていないという状況がライフサイクル設計の普及を妨げている一因になって
いる。今後は、このような開発サイクルの違いや担当セクションの違いを連携させる形で統
合設計支援環境を拡張する必要がある。また同時に、本研究の統合支援環境においては、ラ
イフサイクル設計から製品設計へ要求項目を引き渡すという形で一方向の流れのみを支援し
ているが、本質的には双方向の情報の流れをサポートしたコンカレント・エンジニアリング
的なアプローチを導入する必要がある。
第 0 章のまとめ
ライフサイクル設計を支援する際の鍵は、製品ライフサイクルという具体的な形として見えな
い設計対象をどのように視覚化し、計算機上で取り扱い可能にするかという点である。本稿では、
環境配慮設計の現状を分析し、ライフサイクル設計支援のためのニーズを抽出し、コンセプト普
【190401】
及型のツールとして「統合ライフサイクル設計支援環境」を提案し、実用化に向けたいくつかの
課題を整理した。EuP 指令に代表されるように、今後は「ライフサイクル設計」へのニーズがま
すます高まることが予想されるが、それが単なる LCA のみではなく、付加価値の向上とより高度
な循環(それに伴う大幅な環境負荷削減)を達成すべきものである。本稿では、このライフサイ
クル設計のあるべき姿を、計算機支援という視点から議論した。今後、ますますライフサイクル
設計に関する研究が活性化されることが期待される。
第 0 章の参考文献
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品設計のための QFD」, 精密工学会誌, Vol. 66, No. 4, pp. 567-571, 2000.
[4] 梅田靖, 比地原邦彦, 大野雅史, 小川康暢, 小林英樹, 服部光郎, 増井慶次郎, 深野彰:
「廃棄要因分析表を用いたライフサイクル戦略決定支援手法の提案」, 精密工学会誌, Vol.
69, No. 12, pp. 1270-1276, 2003.
[5] 増井慶次郎, 秦智之, 梅田靖: 「日本の電気電子産業における環境配慮設計の現状調査」, エ
コデザイン 2006 アジアパシフィック講演論文集, 2006(本シンポジウムにおいて講演予定)
[6] 家電製品協会: 家電製品
製品アセスメントマニュアル, 2004.
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ュファクチャリング
ハンドブック, 丸善, 2004.
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[9] 末定怜, 梅田靖, 近藤伸亮: 「ライフサイクル・シナリオ記述支援システムの開発」, Design
シンポジウム 2006 講演論文集, pp. 199-202, 2006.
[10]梅田靖, 高田祥三, 近藤伸亮, 蔵川圭, 加藤悟: 「環境調和型ビジネスの設計支援技術に向
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[11]中尾政之, 畑村洋太郎, 服部和隆: 設計のナレッジマネジメント - 創造設計原理と TRIZ,
日刊工業新聞社, 1999.
[12]Y. Umeda, A. Nonomura, and T. Tomiyama: "Study on life-cycle design for the post mass
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2000.
リユース・アップグレードを可能にするモジュール化設計方法論の提案
製品ライフサイクル設計においては、適切なライフサイクル・オプションを選択した
上で、そのライフサイクル・オプションの実現に適した製品構造を設計しなければなら
ない。
モジュール化設計手法は古くから生産性や組立性の向上を目的として様々な研究がな
されてきたが(例えば、[21])、製品ライフサイクル設計においても、アップグレード
【190401】
性、メンテナンス性、リユース性、リサイクル性など種々のライフサイクル・オプショ
ンへの適性を向上させる共通要素設計技術である[1]。例えば、リサイクル性を向上させ
るためには、各部品の素材種に着目し、同一または混合してリサイクル可能な素材種ご
とにモジュール化を行うことが考えられる。同じように、部品の信頼性や寿命の長さと
いった視点に基づいてモジュール化することで、メンテナンスやアップグレードの容易
化、それに伴う製品の長寿命化を実現することができる。
近年は、これらライフサイクル設計の観点からモジュール化を行う手法がいくつか提
案されているが(例えば、[17][18][22])、これらの既存手法には特定のライフサイクル・
オプションのみへの適性を向上させることを目的としたものが多く、また主に部品間の
接続関係や機能構造、分解手順によって製品構造を表現しており、製品や部品の幾何形
状を考慮しないがために幾何的整合性のない実現不可能なモジュール構造を導出してし
まうことがある、といった問題がある。
そこで本研究では、ライフサイクル・オプションごとに属性が類似する部品群を算出
し、その結果に基づいて製品の幾何モデルおよび部品間接続関係を参照しながらモジュ
ール化を行うことで、幾何的整合性を保ちつつ、かつ、リユースやアップグレードを中
心とした種々のライフサイクル・オプションへの適性を高め製品ライフサイクル全体に
わたる様々な要求を満足させるモジュール構造を導く手法を提案する。
モジュール化設計の現状
モジュールとは、「システムを構成する、一定機能を持つ標準化された要素」であり、
機械製品においては、「一つのパッケージに含まれるか、または1整備作業で装備できる
ように準備した組立品、部分組立品および部品の組み合わせ」として定義される[20]。
製品のモジュール化には、複数の製品間や製品世代間でのモジュールの共通化がもたら
す量産化によって、製造コストや製品開発コストの削減、リードタイムの削減を図るこ
とが出来るほか、少ない構成要素の種類で様々な機能を実現することが出来る、といっ
たメリットがある。
モジュール化設計については、これまでに様々な研究がなされてきたが、それらは主
に生産性や組立性の向上を目的とし、製品の要素間における機能、エネルギー、情報、
物質等の相互関係に着目している。例えば、Gu[3]らは部品間の機能的な相互関係の強弱
を点数化し、モジュールのインターフェイスの点数を最小にする構造を導く手法を提案
している。また、Stone[4]らは製品構造の改善を目的として、製品の機能と機能間のエネ
ルギーや作用の流れをグラフで記述し、タイプ毎に1)主要な流れを共有する機能、2)
独立した流れを共有する機能、3)エネルギーを変換する機能の3つに分類し、モジュー
ル化を行う手法を提案している。Kusiak[5]らはコストとパフォーマンスの最適化を目的
として、要素間の関連の強さと相互関係の適合性を点数化し、関連が強く、適合性の良
【190401】
い要素同士をモジュール化する手法を提案している。Otto[6]らは複数の製品間でのモジ
ュールの共有を目的として、複数の製品の機能と機能間を流れる作用やエネルギーを一
つのグラフに統合して表現し、複数の製品間において共通する機能を共通のモジュール
とする手法を提案している。Fujita[7]は製品ファミリーのコストや製造コストを最小化す
るために、1)あらかじめ定められたモジュール組合せのもとでのモジュールの属性値の
決定、2)あらかじめ属性が定められたモジュールのもとで、それらの組合せの決定、3)
モジュールの属性とモジュールの組合せの同時決定の3点について詳細な定式化を行い、
最適化する手法を提案している。Bi[8]らは消費者の要求を機能要求へマッピングし、機
能要求を設計パラメータへマッピングしてモジュールを導出する手法を提案している。
Newcomb[9]らは機能、リサイクル、エンドオブライフとサービスの視点からモジュール
化を行うことを目的として、要素間の相性を点数化し、相性の良い要素同士をモジュー
ル化し、モジュール内の要素の属性の一致度と接続関係を評価し、さらに要素の属性の
変更を行い、モジュールの評価を改善する手法を提案している。
また、近年はライフサイクルプロセスに着目したモジュール化設計手法もいくつか提
案されており、それぞれ様々な製品ライフサイクルの観点からモジュール化することを
試みている。例えば、Kimuraらは部品の共有化やライフサイクルコストに焦点を当てる
ことで、最適化を行うモジュール化設計手法を提案しており[10]、石上は製品のアップ
グレード性向上を目的として、製品の機能、挙動、実体と実体間の関係をモデル化し、
世代間での共通部分をプラットフォーム化し、それ以外を追加・削除可能なモジュール
とする手法を提案している[11]。この二つの手法は、モジュールの追加・交換によって
機能や性能をアップグレードし、製品の長寿命化を行うことを意図しているが、リサイ
クルやリユースなどのライフサイクルについては考慮していない。リサイクルやリユー
スを考慮したモジュール化設計手法もいくつか提案されているが(例えば、[12])、こ
れらも特定のライフサイクルの観点に限定している。
また、Aoyamaらは製品のライフサイクルを考慮したモジュール化の際に検討すべき内
容は、1)組立・分解作業量の最小化(組立・分解性の観点)、2)組立・分解作業頻度の
最小化(製品寿命の観点)、3)再使用・再利用モジュールの増加(製品機能の観点)の3
つであると整理し、設計者の意図を反映した全てのモジュール化案を生成した後、3
つの観点からの評価を総合化して最も良い案を選定する手法を提案している[13]。また、
妻屋らは機能や配置関係、製品ライフサイクルと関連性の強い素材種や寿命、部品取出
可能方向など、定性的な情報を利用して製品のモジュール化を支援する手法を提案して
いる[14] 。Kimuraら[15]は、製品群の製品バラエティーを減らすことなくライフサイク
ルマネージメントを向上させる製品モジュール構造の提案を目的として、類似製品の部
品接続グラフを重ね合わせ、グラフの共通部分をモジュール化する手法を提案している
以上の手法に共通するのは、いずれも製品構造を部品接続関係や機能構造によって表
【190401】
現している点であり、製品の形状や部品の位置といった幾何情報によりモジュール化の
実現可能性やモジュール構造の幾何的整合性を評価していないため、得られたモジュー
ル構造をそのまま実体を持つ製品に適用できない場合も多い。
幾何モデルと部品接続グラフを用いたモジュール化設計手法
本研究では、モジュール化対象の製品を、幾何形状を表す「幾何モデル」と、部品の
属性および部品間の接続関係を表す「部品接続グラフ」によって表現する。 部品接続グ
ラフは、部品をnode、部品どうしの接続をlinkとしたグラフ構造で表現する。各nodeには
素材種、物理寿命、価値寿命、ライフサイクル・オプション等を属性として与える。図
4に幾何モデル、図 5に部品接続グラフ、および、表 2に部品接続グラフの各nodeに
与えられた属性値の例を示す。
本手法は、大きく2つの段階から成る。まず各部品の属性に基づき全ての部品を自己組
織化マップ(Self-Organizing Map)[19]を用いてクラスタリングする。その結果、同一ク
ラスタに属する部品同士はライフサイクルにおける同じ循環経路をたどるものとして同
一モジュールを構成する部品の候補となる。 次に、各クラスタにおいて、幾何情報およ
び部品間の接続関係に基づきモジュール構造を評価しながらモジュール化を行う。
以下、「クラスタリング」「モジュール化」それぞれの段階についてその詳細を述べ
る。
図 4:幾何モデル(フィルムカメラ)
【190401】
図 5:部品間接続グラフ
表 2:部品の属性値
(ただし、Physical life timeおよびValue life timeは相対値)
life time
Part name
Phisical lif Value life tPC
巻き
5
5
バネ
6
6
固定具
6
5
バネ
7
7
バネ
5
5
シャッター
5
5
バネ
6
6
カウンタ
5
5
本体
6
6
ス トロボユニッ
5
4
1
0
1
0
0
1
0
1
1
0
material
Fe
others
recycle reuse
0
0
1
1
0
1
0
0
1
1
0
1
1
0
1
0
0
1
1
0
1
0
0
1
0
0
1
0
1
0
LCOP
upgrade
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
closed loopdestroy
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
クラスタリング
モジュールをどのような部品群で構成するかについてはその目的によって様々に異な
る。また、目的に応じてモジュール化の際に考慮する部品属性も変わってくる。製品ラ
イフサイクルの循環経路であるライフサイクル・オプション(以下LCOP)を考慮する際
に必要となるモジュール化の視点と属性は表 3のように整理できる。例えば、リサイク
ル性を向上させることを目的とする場合は、同一または混合してリサイクル可能な素材
をモジュール化する必要があり、メンテナンス性を向上させることを目的とする場合は、
物理寿命が短い部品同士をモジュール化する必要がある。つまり、モジュールを構成す
る部品は、目的毎に異なる着目属性に関して、同一または類似する属性を持つ必要があ
る。
【190401】
表 3:モジュール化の視点と属性、分解性・組立性
LCOP
リサイクル
メンテナンス
リユース
アップグレード
モジュール化の視点
同一または混合してリサイク
ル可能な素材のモジュール
化
短物理寿命部品のモジュー
ル化
長物理/価値寿命部品のモ
ジュール化
短価値寿命部品のモジュー
ル化
着目する 分解
部品属性 性
組立
性
素材種
○
物理寿命
○
○
物理/価
値寿命
○
○
価値寿命
○
○
本研究では、表 3に基づき、ライフサイクル設計の前工程で各部品に適切なLCOPが
与えられた後に、これらLCOPを満足するようなモジュール構造を導出することを目的と
する。そこで、さまざまな属性を自己組織化マップを用いて分類し、分類されたクラス
タをできるだけ反映した形でモジュールを構成するという方針をとる。ただし、表 3に
示したように、LCOP毎に注目する部品nodeの属性が異なるため、まず、LCOP毎のクラ
スタリングを行い、得られたLCOP毎のクラスタに対してさらに自己組織化マップを用い
たクラスタリングを行うことで、最終的なクラスを得るという手順を取る。
まず、LCOP毎にそのLCOPが属性として与えられた部品nodeを抽出し、表 3に示した
LCOPと部品属性の関係に基づき、着目すべき部品属性に対して重み付けを行う。例えば、
リサイクルの場合、属性として「リサイクル」を選択したnodeをすべて抽出し、これらn
odeに対して、リサイクルにおいて着目すべき属性である「素材種」に重みを与える。
次に、nodeの属性を用いて、自己組織化マップによりクラスタリングを行う。属性の
近いnode同士はマップ上において距離が近くなり、ある閾値を境に属性の近いnode同士
でクラス分けされる。以上の操作を全てのLCOPについて実施し、LCOP毎のクラスを得
る。
最後に、得られたLCOP毎のクラスの番号を全てのnodeに与え、このクラス番号を対象
に再び自己組織化マップによるクラスタリングを行う。ここで、クラスの数は設計者に
よって与えられるものとする。図 6にクラスタリングの概要を、図 7に自己組織化マ
ップの例を示す。
【190401】
2
8
6
7
9
3
1
4
5
Recycle
1
2
4
5
6
7
8
9
4
8
3
1
9
7
5
6
3
2
Reuse
Upgrade
図 6:部品の属性値によるクラスタリング
図 7:自己組織化マップ
モジュール化
本研究では、モジュールに含まれる二つの部品同士をそれらの凸包によってパッケー
ジングし、この凸包領域の和集合が単連結領域となるように組み合わせた閉領域によっ
てモジュール形状を近似的に表現するものとする。図 8(a)は4つの部品の組み合わせか
ら成る6つの凸包領域を表しており、図 8(b)はそれら凸包領域の論理和よって生成され
【190401】
る単連結領域の一つである。このような閉領域を4つの部品から構成されるモジュールの
近似形状として扱う。
また、凸包領域の体積に対する部品体積の占める割合を「モジュール密度」として定
義し、モジュール密度が大きいほど幾何的に優れたモジュールであると仮定する。
Convex hull
(a)
Approximate
module structure
(b)
図 8:凸包と近似モジュール形状
図 9の例は、いずれも2つの部品から成るモジュールを表しており、それら部品同士
の重心間の距離は同一である。しかし、図 9(a)の例では、左右のモジュールで構成部
品の大きさが異なるためにモジュール密度は左のモジュールが大きくなる。また図 9
(b)では、左右のモジュールとも同じ部品によって構成されているものの、部品同士の位
置関係が異なっており、やはりモジュール密度は左のモジュールが大きい。この例から
も分かるようにモジュール密度はモジュールのコンパクト性、幾何的独立性、緻密さを
表す指標として考えることが出来る。さらに、部品間の距離を単純にその重心間距離に
よって表すよりも、より直観的な「近さ」を表すことが出来る。
また、モジュール密度の総和を最大化することは、すなわち各モジュールの体積を最
小化することを意味する。このようなモジュールのコンパクト化は、モジュール化設計
のデメリットである製品全体の大きさの増大を抑えることにもつながる。
本研究では、組立性や分解性、また頑健性といった観点から、モジュールを構成する
部品間の距離が短く、互いに密に連結されているモジュールを優れたモジュールとして
仮定し、モジュール構造の幾何的整合性を計る指標として以下のような評価式を定義す
る。
【190401】
Component
Convex hull
Center of gravity
(a) 部品の大きさが異なる場合(左が密度大)
(b) 部品の位置関係が異なる場合(左が密度大)
図 9:同一重心間距離におけるモジュール密度の違い
まず、自己組織化マップによるクラスタリングよって得られたクラスのうち同一クラ
スに属する部品の組み合わせ xi、xj に対して、(1)式によって定義される値 Combination
を求める。
Combinatio n ( xi , x j ) = α Density ( xi , x j )
+ (1 − α ) Connection ( xi , x j )
(1)
ただし、 α は重み係数である。また、Density は2部品間のモジュール密度であり以下
のように定義される。
Density( xi , x j ) =
V ( xi ) + V ( x j )
V ( H ( xi , x j ))
(2)
ただし、H(xi,xj) は xi と xj の凸包を表し、V(xi)、V(xj) および V(H(xi,xj)) はそれぞれ
xi、xjおよび H(xi,xj) の体積を表す。また、Connection(xi,xj) は xi と xj との接続関係を
表し、部品接続グラフにおける xi、xj 間のlinkの有無によって以下のように定義する。
【190401】
⎧ 1 ( link あり)
Connection ( x i , x j ) = ⎨
⎩ 0 ( link なし )
(3)
次に、幾何モデルを用いて包含関係を発生する部品関係を検出し、組立・分解性に関
わる制約条件として、それら部品間の Combination にその情報を付与する。包含関係と
は、ある部品同士を固定することによって、他の部品が拘束され、分離が不可能な状態
となる関係であり、これに関わる部品をすべて同一モジュールとするか、あるいはこの
包含関係を解消するように強制的に別モジュール構造としなければならない。これら部
品関係に対する制約は Combination の値を0または1の固定値とすることで付与する。す
なわち、部品同士を別々のモジュールとするならば固定値0を、同一モジュールとするな
らば固定値1を割り当てる。
また、例えばギアボックス内の歯車など、設計者の意図によって同一モジュールを構
成する部品としてあらかじめ指定しておきたい部品関係があれば、これも Combination
に固定値を割り当てる。
最後に、製品全体のモジュール構造の評価値 Modularity を以下のように定義し、この
値を最大化するようにモジュール化を行う。
N
Modularity = ∑
∑ Combinatio n ( x , x
k =1 Pij ∈M k
i
j
)
(4)
ここで、N は製品を構成するモジュールの総数であり、Mk は k 番目のモジュールを
表す。また、Pij は Mk に含まれる部品 xi と xj の組み合わせを表す。ただし、各モジ
ュールはその近似形状が常に単連結領域となるように構成されるものとする。また、 M
odularity はモジュールを構成するすべての部品接続関係 Combination の総和であるた
めモジュール化の進展に伴って Modularity も逐次増加することになるが、ここで Mod
ularity の最大化とは同一モジュール数における Modularity の最大化を意味することと
する。設計者は最終モジュール数または Modularity の閾値を指定することによってモジ
ュールの粒度を調節することができる。
設計者の指定したモジュール数に対して Modularity を最大化するモジュール構造は
以下のアルゴリズムによって求めることができる。
まず、前処理として製品を構成する全ての部品の組み合わせに対して Combination を
求め、さらに、包含関係を検出してこれを解消するための制約条件を Combination に対
して与えておく。また、設計者の意図によりあらかじめ同一モジュールとして指定した
い、あるいは別々のモジュールにしたい部品間関係があれば、これも制約条件として与
【190401】
える。また、すべての部品には自己組織化マップによるクラスタリングの結果が割り当
てられているものとする。
1)
製品を構成するすべての部品間をlinkで接続した完全グラフを生成する。各部品を
nodeとし、すべてのlinkには Combination の計算結果の値を付与する。
2)
同一クラス内において Combination の値が大きいlinkから順に選択し、このlink
で結ばれた部品同士をモジュールとして連結する。ただし、この操作によって生
成されるモジュールを表すサブグラフが常に単連結グラフとなるようにし、この
条件を満たさない場合は次に Combination の値が大きいlinkを選択する。
3)
モジュール数または Modularity が設計者によって指定された値に達した時、モジ
ュール化を終了する。
上記アルゴリズムにおいては、いずれの時点においてもモジュール数に対する Modul
arity の値が常に最大化されることが保証されている。また、部品数 I に対して上記ア
ルゴリズムの計算量は O( I 2 ) である。
最後に後処理として、必要ならば部品の属するクラスの変更を行うことでモジュール
の拡大を行う。クラス変更によってModularityが最も大きくなる部品を選択し、部品の属
性情報をもとに変更が可能なクラスを特定する。
ケーススタディ
本手法をモジュール化設計支援システムとして実装し、ケーススタディによってその
有効性を検証した。
システムは製品の幾何モデル、および部品の属性値の情報をnodeに持たせた部品接続
グラフを入力情報とし、自己組織化マップによる部品のクラスタリング、包含関係の検
出を行った後、上記のアルゴリズムを用いてモジュール構造を導出する。いずれのプロ
セスもシステムによって自動的に行われるが、必要があれば設計者による制約条件の付
与やモジュール数の変更などの操作を行う。
ケーススタディとして本手法をインクジェットプリンタ(部品数166)に適用した。図
10にその幾何モデルを、表 4に部品属性の一部を示す。属性値としては、素材種、
物理寿命、機能寿命、ライフサイクル・オプションを部品に与え、部品が取りうるライ
フサイクル・オプションにはメンテナンス、リユース、リサイクル、アップグレードを
採用した。図 11、図 12、および図 13は、それぞれモジュール密度と部品接続関
係との間の重み係数である α の値を変化させモジュール化を行った結果を、幾何モデル、
および部品接続グラフ上で示したものである。幾何モデルは各モジュールを枠で囲い、
同一モジュールを同一色で表示している。部品接続グラフの各nodeの色は自己組織化マ
ップによるクラスタリングの結果を表しており、同一色のnodeは同一クラスに属する部
品を表している。node間をつなぐ黒い実線(link)は部品間の物理的接続関係を表し、色
【190401】
のついた太線はモジュールを表している。自己組織化マップによるクラスタリングの結
果および Modularityの閾値は(a)、(b)、(c)すべての場合で統一している。
図 11は α = 0 の場合であり、同一クラスに属し、かつ接続関係のある部品同士のみ
をモジュール化したものである。図 12は α = 0.5 の場合であり部品接続関係に加えモ
ジュール密度を同時に評価しながらモジュール化を行った結果である。図 13はさらに
一部の部品のクラスを変更し、評価値 Modularity をより高めるようなモジュール構造を
導出したものである。図 14に (a)、(b)、(c) それぞれの場合について、一つのモジュ
ールに着目したときのモジュール構造の変化を示す。また、図 15は (a)と(b)のそれぞ
れの場合で、いずれのモジュールにも属していない単独の部品のみを抽出したものであ
る。(a)の方がより多くの部品がモジュール化されずに残っていることが分かる。
図 10:入力幾何モデル(インクジェットプリンタ)
表 4:部品の属性値(一部抜粋)
Life time
Name
Phisical Value
Housing
5
5
Cover
5
5
Ink Absorber
6
5
Switch
6
4
Shaft
7
5
Cartridge Unit
6
2
Spring
7
5
Gear
6
5
Wire
10
9
Motor
7
8
Material
ABS
ABS
PS
PCB
Fe
PCB, Fe
SUS
PC
Cu
Fe, Cu
Life Cycle Option
recycle, reuse
recycle, reuse
recycle, reuse
reuse, upgrade
recycle,reuse,maintenance
reuse, upgrade
recycle, maintenance
recycle, maintenance
recycle, reuse
recycling, reuse
【190401】
モジュールの幾何モデル
部品接続グラフ
図 11:モジュール化の結果、(a)接続関係のみを用いた場合
モジュールの幾何モデル
部品接続グラフ
図 12:モジュール化の結果、(b)モジュール密度による評価を行った場合
【190401】
モジュールの幾何モデル
部品接続グラフ
図 13:モジュール化の結果、(c)部品のクラス変更を行った場合
考察
ケーススタディの結果より、(a)の部品接続関係のみによるモジュール化を行った場合
と(b)の部品接続関係およびモジュール密度評価によるモジュール化を行った場合とで
は大きくモジュール構造が異なることが分かる。これは、異なるクラスに属する部品同
士をモジュール化すればリサイクル性やリユース性が著しく失われてしまう、という制
約があるため、(a)ではクラスが同一で、かつ部品接続グラフにおいて接続関係のある部
品同士モジュール化せねばならず、少数の部品から成るモジュールが多数生成されてし
まうためである。さらに図 15に示したように、(a)では上記の制約により、モジュー
ル化されないままの部品が多数残存するため、設計者が指定した任意のモジュール数に
までモジュール化が進展しない、という場合もあった。
これに対し、(b)においては幾何情報を用いたモジュール密度による評価を導入するこ
とで、空間的に近く幾何的にまとまりのある部品同士ならばモジュール化することが可
能であり、設計者が意図した段階までモジュール化を進展させることが出来る。
ただし、本手法は包含関係などの実現不可能なモジュール構造を幾何情報を用いて回
避するため、(a)、(b)はともに幾何的整合性を有するモジュール構造であるといえる。
本手法は、このように接続関係のない部品同士をもモジュール化するところに特徴が
あるが、これは、モジュール化の対象となる製品の構造に対して設計改善点を示唆する
もの、として考えることが出来る。すなわち、製品のライフサイクル全体にわたる様々
な要求に対して製品構造を適応させるためには、製品の接続関係をも見直す必要があり、
現状の接続関係によらない新しい構造を示すことの出来る手法であると言える。
【190401】
(a)接続情報のみ
(b)モジュール密度による評価
(c)部品のクラスを変更
図 14:一つのモジュールに着目したときのモジュール構造の変化
【190401】
(a) 接続関係のみ
(b) モジュール密度による評価
図 15:モジュール化されなかった部品
また、(c)はモジュール構造の評価値に基づいて(b)の部品のクラス変更を行ったもので
あるが、図 14に示したように幾何的なまとまりを維持したままモジュールを修正、拡
大、連結することが可能であることが確認された。
本研究で開発されたモジュール化システムは、幾何モデルや接続関係、属性などの入
力情報に基づき、瞬時にモジュール構造案を提示することが可能である。よって、設計
者が製品の製造性や強度、製造コストといった他の様々な設計要因を考慮しながら試行
錯誤的に最適なモジュール構造を導出することもまた可能となる。
第 0 章のまとめ
本章では、素材種、物理寿命、機能寿命、ライフサイクル・オプションといった属性
値に基づき、自己組織化マップを用いて部品をクラスタリングし、その結果をもとに幾
何情報と部品接続関係を用いて幾何的整合性を保ちながらモジュール化を行う手法を提
案した。また、提案手法に基づくモジュール設計支援システムを構築し、ケーススタデ
ィによって手法の有効性を検証した。本手法は、本プロジェクト全体の目標である、製
品や部品のリユース、アップグレードを実現するための鍵となる設計技術である。
今後の展望として、本手法により導出されたモジュール構造に対して組立性・分解性
や環境性といった点から総合的に評価を行う必要がある。また、本手法によって導出さ
【190401】
れたモジュール構造を実際の製品構造に反映させるために、製品や部品の接続関係、位
置、形状などを修正するための設計支援システムを開発することが挙げられる。
第 0 章の参考文献
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Life-Cycle Engineering”, Annals of the CIRP, Vol. 46, 1997.
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Description of a Product”, Proc. of DETC98, 1998 ASME Design Engineering Technical
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Transactions on Systems, Man, and Cybernetics - Part A:Systems and Humans, VOL. 28,
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学専攻, 修士論文, 2003.
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Design and Inverse Manufacturing, 2003.
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演会講演論文集, 2004, pp.27-30.
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and Inverse Manufacturing, 2001.
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Inverse Manufacturing”, Proc. of the EcoDesign2005, 2005.
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【190401】
Design Manufacture/Integration, ASME, 1991.
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Value and Physical Lifetimes”, Proc. of EcoDesign2003:3nd International Symposium
on Environmentally Conscious Design and Inverse Manufacturing, 2003.
グローバル逆流通システムのモデル化とシミュレーション
使用済み製品が国内からアジア諸国に流出しているいわゆる eWaste 問題の課題と解決可能性を
検討するために、ライフサイクルシミュレーションの考え方に基づき、アジア循環のモデルを作
成し、シミュレーションを実施した。アジア循環においては潜在的なリスクが特徴であり、大き
な問題であるので、ここでは、リスクを用いたモデル化を行った。例題として、デスクトップパ
ソコンが、日本から中国(内陸部、および、沿岸部)へ流出する場合を対象とした。結果として、
単純な材料リサイクルでは、経済性、環境負荷ともに国内リサイクルより劣ること、製品や部品
のリユースの場合は、経済性、環境負荷削減の両面で効果を出せる可能性があることが明らかに
なった。また、逆工程のプロセスが多くなるほどリスクが高まり、その対策としてトレーサビリ
ティの確保が重要な役割を担っており、また、国内での前処理やリサイクルと組み合わせた循環
方法により、トレーサビリティの確保、経済性、環境負荷削減に効果がある可能性を示すことが
できた。
はじめに
中古製品や金属スクラップを含む多くの資源が日本とアジア諸国の間でやりとりされている。
ここでは、そのような循環を「グローバル循環」と呼ぶ。現在のところ、グローバル循環は経済
的な合理性に従って行われているが、その一方では資源の輸入国における不適切なリサイクル処
理によって、土壌汚染、水質汚濁、有害物質の投棄といった問題も生じている。しかしながら、
適切なグローバル循環は環境負荷を削減し、発展途上国における人々の生活水準を向上させられ
る可能性もある。例えば、先進国では 2 年で陳腐化して廃棄されるかもしれないパソコンが、発
展途上国ではまだ価値があり、リユース品として高い需要がある場合もある。それゆえ、グロー
バル循環を一律に禁止してしまうのではなく、持続可能なグローバル循環の構築を目指すべきで
ある。ただし、現時点では、そのような持続可能なグローバル循環の必要条件は明らかとなって
いない。
本研究の目的は、持続可能なグローバル循環の条件を明らかにすることである。そのために、
ライフサイクルシミュレーション[1]の考え方に基づいてグローバル循環をモデル化する。さらに、
そのモデル化の手法を用いてグローバル循環のさまざまなシナリオを作成し、それらを経済・環
境の両面から評価する。ここで、グローバル循環のモデル化にあたっては不確実性が生じるため、
そのような不確実性もモデルに組み込む。不確実性には、資源循環のフローにおいて予期しない
事象が起こる不確実性と、十分な実データが得られないことによるデータの不確実性の 2 種類が
ある。ここでは、これらの不確実性をそれぞれリスクおよびデータの幅により表現する。
グローバル循環の現状
現在のグローバル循環は、経済的な理由に基づいて行われている。具体的には、資源の輸出国
と輸入国に間における、経済格差、環境に関する法制度の違い、資源需要に対する需要格差が挙
げられる[2]。例えば、中国における安価な人件費を活用することにより、日本では収益が見込め
ないプラスチックのリサイクルが中国では人手を用いて行われる[3]。
しかしながら、環境の面では Kojima et al.[3]が指摘しているように、輸入国における不適切
なリサイクル処理が元となっていくつかの問題が生じている。Terazono et al.[4]によると、中
国では、輸入された再生資源は原始的に手作業でリサイクルされている。例えば、1990 年代前半
には、廃カーバッテリーなどの鉛蓄電池から鉛を回収する過程で生じる汚染が問題となった[3]。
パソコンのリサイクルでは、ケーブルを野焼きにして銅を取り出す、プリント基板を熱に溶かす
または酸に浸して金属を取り出すといった実態が報告されている。そのようなリサイクル処理は、
土壌汚染や水質汚濁、有害汚染物質の投棄を引き起こしている[5]。さらに、グローバル循環では
輸出国において価値のない資源を輸出することがあるが、それは廃棄物のやりとりと解釈される
【190401】
ために、輸出国と輸入国間での公平性を損なう可能性がある。
グローバル循環には上記のような問題点が存在するが、グローバル循環による利点も存在する。
以下に、考えられる利点を 4 つ示す。第 1 に、地域間の経済格差によって資源を最大限に有効利
用できる可能性がある。その理由は、経済格差は中古製品・部品の価値を変化させるためである。
例えば、先進国では陳腐化して廃棄されるような製品でも、発展途上国では価値が高いと見なさ
れる場合がある。このとき、中古製品・部品の寿命を引き伸ばすとともに、それらの輸入国にお
ける人々の生活水準を向上させる可能性がある。その一例として、Sasaki[6]は日本からタイに輸
出され、タイで販売されている中古パソコンについて報告している。それによると、タイで販売
されている中古パソコンは、日本では需要の小さい低スペックモデルであり、そのような低価格
の使用済みパソコンがグローバルに循環することにより、製品の長寿命化が促進され、かつ資源
の節約にともなう環境負荷の低減、E-waste の減少、digital divide の緩和といった効果が期待
できると指摘している[6]。第 2 に、グローバル循環により資源のリサイクル化コストを低減する
のに役立つことがある。例えば、発展途上国の安価な人件費を活用することにより、手分解やリ
ユース品の洗浄、プラスチックの選別など手作業によるリサイクル処理が経済的に可能となる。
このようなメリットは、リユース、リサイクルを促進する要素である。第 3 に、国際的に資源を
やりとりすることは、資源の輸出先の地域で雇用を創出し、さらにその地域での経済発展やビジ
ネスの創出を手助けすることができる[7]。第 4 に、白物家電や PC を含む製造業の製造拠点がア
ジア諸国へ移転していることを考慮すると、使用済み製品はそれらの製造地域へ送り返すことが、
閉ループの循環システムを構築するためには自然な資源の流れである。
以上のような状況を考慮すると、結論としてはグローバル循環を一律に禁止してしまうのでは
なく、環境および経済の両面から持続可能なグローバル循環を構築すべきである。そのような持
続可能なグローバル循環が成立するための条件としては、経済的に実行可能であることに加えて、
以下のような点が満足されるべきである。
z
グローバル循環の環境負荷が、それに対応する日本国内での循環における環境負荷よりも小さい
こと。
z
資源がアンダーグラウンドへ流れること、不適切に処理されることを防ぐために、資源循環のト
レーサビリティが確保されること。
z
循環に関係する地域やステークホルダー間において、公平性が確保されること。
これらの前提条件に基づいて持続可能なグローバル循環の条件を、デスクトップ型パソコンを
用いたケーススタディを通して明らかにしたい。
グローバル循環に関連した研究は、これまでにいくつか行われている。Moriguchi[8]は、マテリ
アルフロー分析(MFA)を用いてリサイクルと廃棄物処理の現状を調査している。MFA は材料、製
品、エネルギー、廃棄物、その他の排出物のフローを総合的に分析するツールであり、MFA を通
し て 環 境 問 題 と 現 在 の 社 会 経 済 活 動 と の 関 係 を 理 解 す る こ と が 可 能 と な る [8] 。 し か し 、
Moriguchi[8]の研究では、MFA を用いたフローにおける経済性評価は行われていない。van
Beukering and van den Bergh[9]は、国際的な material-product chain (MPC)の解析モデルを開発した。
このモデルは人件費、固定費、外部費用を含む経済的なコストを評価する。van Beukering and van
den Bergh は、このモデルを用いた分析結果より、地域間の経済効率の違いが国際的なリサイクル
の原動力になると指摘している。Kuwatani et al.[10]は、グローバル循環における製品のリサイク
ルを経済的に分析するための disassembly-tree model を構築した。このモデルは、製品を分解する
際に最も利益の得られるオプションの組を求める。
しかしながら、これまでの研究ではグローバル循環の不確実性は考慮されていない。グローバ
ル循環をモデル化する際には 0 節でも述べたような不確実性が不可避的に生じ、これはグローバ
ル循環のシミュレーションにおける障害となる。そこで、本研究ではこのような不確実性もモデ
ル化する。
【190401】
グローバル循環のモデル化
モデル化の手法
本研究では、不確実性の要素も含めたさまざまなグローバル循環シナリオを作成し、それらを評
価する。そのために、ライフサイクルシミュレーション(LCS)[1]の手法に基づいて、グローバル
循環をモデル化する。ただし、シミュレーション対象は製造段階を含む製品ライフサイクルでは
なく、廃棄された中古製品の循環とする。
ここでは、グローバル循環モデルを「シナリオ」として表現する。このシナリオは LCS の考え
方に基づいて、プロセスのネットワーク、製品モデル、リスクモデルを用いて記述する。ここで、
プロセスのネットワークは 14 種類のプロセスからなるプロセスモデルを用いて構成する。記述す
るシナリオの範囲は、廃棄された製品が回収される「回収プロセス」から、その製品が中古製品・
部品またはリサイクル材として売却されるか埋め立て処分されるまでとする。
ここで作成するグローバル循環シナリオの特徴のひとつは、0 節で述べたように、グローバル
循環の不確実性を表現することである。この不確実性には、発生事象の不確実性とデータの不確
実性の 2 種類がある。前者の不確実性には、通関拒否、予期しない環境汚染などの、予定外の発
生事象が含まれる。本研究では、発生事象の不確実性をリスク、データの不確実性をデータの幅
によってモデル化する。シナリオにおいては、リスクモデルによりリスクを表現する。リスクは
潜在的な経済損失を表すものであるため、それらのリスクは経済性の一部として評価する。その
一方で、データの幅はプロセスモデル、製品モデルに対して適用する。
評価指標
それぞれのグローバル循環シナリオを、経済的な利益と CO2 排出量の両面から評価する。CO2
排出量は、環境負荷の代表指標として扱う。利益は、シナリオ全体にわたる売上の合計からコス
トの合計を差し引くことによって計算する。売上は中古製品・部品およびリサイクル材の売上の
合計として計算し、コストは各プロセスにおける人件費、電気代、埋め立て費用、輸送費用、輸
入に関する費用(通関税など)に基づいて計算する。その一方で、CO2 排出量は各プロセスにおけ
る CO2 排出量の合計から計算し、輸送時に生じる CO2 排出量と電力の消費により生じる CO2 排出
量を計算する。さらに、次項 0 で示すように、中古製品・部品のリユースおよび材料のリサイク
ルによる CO2 排出量の削減効果を評価する。
プロセスネットワークとプロセスモデル
プロセスネットワークを描くために、回収、手分解、破砕、機械選別、手選別、精錬(金属のリ
サイクル)、ペレット化(プラスチックのリサイクル)、埋め立て、陸上輸送、海上輸送、輸出、輸
入、マテリアルリサイクル(リサイクル材の売却)、リユース(中古製品・部品の売却)といった 14
種類のプロセスをモデル化する。これらのプロセスをモデル化する際には、以下のような仮定を
おく。
z
シナリオのスタート地点として、回収プロセスでは使用済み製品を保持する。
z
手選別は破砕された資源を機械選別よりも正確に選別することが可能である。
z
輸出プロセスでは、輸出される資源が検査および通関手続きされた後に、船積みされる。
z
輸入プロセスでは、資源が船降ろしされて通関検査を受ける。
z
マテリアルリサイクルでは、精錬あるいはペレット化された資源が市場で売却される。
z
リユースプロセスでは、中古製品・部品が市場で売却される。
z
陸上輸送および海上輸送では、コンテナが使用される。また、積載重量とコンテナの最大積載重
量の比で定義される「積載率」を導入する。
これらのプロセスでは、コストおよび CO2 排出量を計算するための計算式を、それぞれ次のよう
な基本形式で定義する。
【190401】
Costs = unit cost * processed amount
(1)
CO2 emission = unit CO2 emission * processed amount
(2)
ただし、回収および輸出の 2 つのプロセスでは、簡単のために上記の計算式を定義しない。同
様に、リユース、リサイクルのプロセスでも式(1)、(2)に示すようなコスト、CO2 排出量の計算
式を定義しない。その代わりに、リユース、リサイクルプロセスでは、以下に示すように売上と
CO2 排出量の削減効果を評価する。
sales = unit price * sold amount
(3)
ここで、”unit price”は中古製品・部品の価格あるいはリサイクル材の価格である。
さらに、製品や部品がリユースされた場合および材料がリサイクルされた場合には、CO2 の削
減効果を評価する。リユースの効果を評価する場合には、リユースされた製品・部品が新品と同
等なのかどうかが問題となる。ここでは、リユース品の CO2 削減効果はリユース品の寿命に比例
するものと考えて、次式で定義されるようなリユース寿命比(RLR)というパラメータを導入する。
RLR = t /(t 0 + t )
(4)
ここで、 t 0 は製品・部品の最初の使用段階における寿命、 t は 2 回目の使用段階におけるリユ
ース品の寿命である。リユースの効果に加えて、リユース品にはリユース後のマテリアルリサイ
クルによる CO2 削減効果も見込める。そこで、リユース品のうちで将来的にリサイクルされる割
合を表す将来リサイクル期待値(FRE)というパラメータを導入する。結果として、リユースあるい
はマテリアルリサイクルによる CO2 削減効果をそれぞれ次式により定義する。
reduction of CO2 emission due to reuse = ( Em + E p ) * RLR + Em * FRE
(5)
reduction of CO2 emission due to recycling = Em
(6)
さらに、リユース、リサイクルの際に重要なパラメータとして、良品率(yield rate)と資源回
収率(recycling rate)をそれぞれ導入する。良品率は、故障せずに製品もしくは部品としての機
能を正常に果たすものの割合であり、次式で定義する。
良品率(%) =
動作可能な製品・部品 個数(product or part )
*100
リユースプロセスに投入される製品・部品個 数(product or part )
(7)
一方、精錬と溶融・ペレット化の 2 つのプロセスにおいては、次式で定義される資源回収率を
導入する。
資源回収率(%) =
リサイクル材として回収できる資源の重量(kg)
*100
精錬または溶融・ペレ ット化プロセスへの投 入資源重量(kg)
(8)
ここで、精錬または溶融・ペレット化においては技術格差などにより地域間における資源の回
収率は異なると考えられるため、資源回収率を地域に依存するパラメータとする。
製品モデル
本研究では廃棄された中古製品の資源循環に着目するために、製品を製品、部品、材料の 3 つ
のレベルからなるものとしてモデル化する。それぞれのレベルでは、重量、体積、価格といった
パラメータを定義する。ここで、それぞれのレベルにおける価格は地域によって異なるものであ
るので、グローバル循環シナリオをシミュレーションする際には、それらの価格は地域が変わる
ごとに変化させる。
リスクモデル
グローバル循環に含まれる 2 種類の不確実性のうち、発生事象の不確実性はリスクを用いて次
【190401】
式のようにモデル化する。
R = ∑ (Ri ) = ∑ (Pi Ci )
i
(9)
i
ここで、 Ri ,Pi ,C i はそれぞれリスク事象 i に対するリスク、発生確率、影響度(経済的損失)
である[11]。また、一般的にリスクの発生確率もしくは影響度はリスク対策(例えば、管理システ
ムの強化)によって低減させることができる。リスク対策 k がリスク事象 i に適用された場合のリ
スク R' を次のように評価する。
R' =
⎡
⎤
⎛ 100 − Ef k i ⎞
⎟ + ∑ Exk i ⎥
⎟
⎥⎦
⎝ 100 ⎠ k
∑ ⎢⎢ Ri × ∏ ⎜⎜
i
⎣
k
( )
(10)
ここで、 Ef ki (0 ≤ Ef ki ≤ 100) および Ex ki は、それぞれリスク対策 k の対策効果および対策費用であ
る。リスクは潜在的な経済損失を表すものであるので、これを経済的な指標の一部として評価す
る。
グローバル循環シミュレーションシステム
グローバル循環シナリオをシミュレーションするために、ライフサイクルシミュレーション[1]
の考え方に基づいてグローバル循環シミュレーションシステムを開発した。図 16にシステム構
成を示す。このシステムにより、さまざまなシナリオの記述および評価が可能となる。
このシステムで利用できるデータベースは、Product DB、Process DB、Regional DB、Risk DB、
LCA DB の 5 つである。Product DB には 0 節に示した製品モデルに基づいて、製品、部品、材料の
情報を格納する。Process DB には、14 種類のプロセスモデルの名称(例えば、回収プロセスなど)
とともに、各プロセスモデルで使用されるパラメータのうちで地域に依存しないもの(例えば、製
品を手分解するために要する時間)を格納する。その一方で、Regional DB には地域に依存するパ
ラメータ(例えば、人件費など)を格納する。Risk DB には、リスクとリスク対策に関する情報を
格納する。最後に、LCA DB には、LCA データベース(JEMAI[13]など)から電力消費に伴う CO2 排出
原単位などの CO2 排出原単位データをインポートする。データベースに入力する値は幅をもった
値として入力することができ、1 つのパラメータに対してそれぞれ最小値と最大値の 2 つを設定
する。このような幅をもった値として扱うことによって、価格変動のリスクなどに対応すること
ができる。
図 16:グローバル循環シミュレーションシステムの構成
データベースに Database Editor を用いてデータを入力した後は、システムを以下の手順で動
作させる。
【190401】
1.
グローバル循環シナリオを作成する。すなわち、Life Cycle Model Editor を利用しながら、
Process DB からプロセスモデルを選択しながらプロセスのネットワークを構築し、それと同
時に各プロセスに対してパラメータおよび計算式を入力する。パラメータについては、必要
に応じてデータベースを参照設定しておく。
2.
データベースを参照しながら、作成したグローバル循環シナリオをシミュレーションする。
その結果、シナリオ全体における利益および CO2 排出量といった評価結果が得られる。
ケーススタディ: デスクトップ型パソコン
グローバル循環シナリオ
アジア地域において、デスクトップ型パソコン(PC)のグローバル循環をケーススタディとして
取り上げる。このケーススタディでは、できるだけ多くのデータを論文、報告書、その他文献、
ウェブ、インタビューを通して収集し、それらを用いてさまざまなグローバル循環シナリオを作
成する。ここで、LCA データとしては 3 種類の CO2 排出原単位(電力消費、輸送、パソコン・部品
および材料の製造)を利用した。これらの LCA データは主に Fujitsu[11]および JEMAI[13]のもの
を用いた。また、リスクデータとして 23 種類のリスク事象を抽出し、それらの発生確率および影
響度を図 17のように設定した。
図 17:リスクマトリックスを用いたリスクの定量化
作成するシナリオでは、PC が日本で廃棄されてから中国へ移動することを想定し、循環の対象
地域を日本、中国沿岸部(上海)、中国内陸部(合肥)の 3 地域とする。シナリオの作成範囲は、日
本で PC が廃棄されてから、それがリユース、リサイクルあるいは埋め立て処分されるまでとする。
それぞれのシナリオは、0 節に示した枠組みを用いてモデル化し、利益と CO2 排出量の面から評
価する。
【190401】
ケーススタディで扱うシナリオを表 5に示す。シナリオ A は、日本国内の現状のリサイクルシ
ステムを表しており、PC に含まれる材料をマテリアルリサイクルする。シナリオ A は、ケースス
タディにおけるほかのシナリオに対するリファレンスシナリオとする。製品リユースシナリオ B
は、廃棄された中古 PC を日本から中国沿岸部へ輸出して売却する。部品リユースシナリオ C では、
中古 PC に含まれる部品のうち 4 つ(HDD、FDD、CD-ROM、PCB)をリユース部品として中国沿岸部へ
輸出した後で売却し、その他の部品はマテリアルリサイクルする。シナリオ C に対して、もうひ
とつの部品リユースシナリオであるシナリオ H は、PC を日本で手分解した後、4 つの部品を中国
沿岸部でリユース部品として売却し、その他の部品は日本でマテリアルリサイクルする。ここで、
日本と中国におけるマテリアルリサイクルに対して、いくつか異なる条件を設定する。すなわち、
金属のリサイクルにおいては選別のプロセスとして、日本では機械選別プロセスを導入するのに
対して、中国では手選別プロセスを導入する。さらに、プラスチックのリサイクルは、中国では
行われるのに対して、日本では行われないものと仮定する。
表 5:グローバル循環のシナリオ
Scenario
A. Domestic recycling (Japan)
B. Product reuse (coastal area in China)
C. Parts reuse and material recycling
(coastal area in China)
D. Material recycling (coastal area in
China)
E. Material recycling (inland area in
China)
F. Material recycling (Japan + coastal
area in China)
G. Material recycling (coastal area in
China、 shredded in Japan)
H. Parts reuse (coastal area in China) and
material recycling (Japan)
Description
All materials other than plastics are recycled、 while
plastics are landfilled.
Products are sold as secondhand goods.
Reusable parts are HDD、 FDD、 CD-ROM and PCB.
Others including plastics are recycled.
All materials are recycled.
All materials are recycled.
Shredded metals are recycled in Japan and then plastics
are exported and recycled in the coastal area in China.
All materials are shredded in Japan and they are
exported and recycled in the coastal area in China.
HDD、 FDD、 CD-ROM and PCB are reused in the
coastal area. Others excluding plastics are recycled in
Japan.
シナリオ A-H の記述にあたっては、以下のようなシミュレーション条件を設定した。
z
各シナリオにおいて、1 台のデスクトップ型 PC が循環する場合を想定する。
z
リユースシナリオ B、C、H において、良品率を 100%とする。
z
廃棄された PC は、日本では中古製品・部品としての価値はないが、経済格差によって、中国では
その価値があり売却できるものとする。
z
シナリオの作成においては、グローバル循環の将来の可能性を追求するために、現行の法制度に
よる影響をいくつか除外する。例えば、現在の法制度に従うと、中国にリユース目的の中古 PC を
輸出することは不可能である。
z
リユース寿命比(RLR)を 0.5 に設定する。すなわち、リユースされる製品・部品の残余寿命は、そ
れらの物理寿命の半分であると仮定する。
z
将来リサイクル期待値(FRE)を 0.5 に設定する。すなわち、リユースされた製品・部品のうち、そ
れらがリユース後にリサイクルされる割合は半分であると仮定する。
z
金属に対する資源回収率は、日本では 90%、中国では 70%とする。これは、日本と中国の間には、
特に精錬プロセスにおいてリサイクル技術に格差があると考えられるためである。
【190401】
z
プラスチックに対する資源回収率は、中国では 70%とする。一方で、日本ではプラスチックはすべ
て埋め立て処分されるものと仮定する。これは、日本と比較して、中国では安価な人件費に基づ
いて手作業によるリサイクル処理に優位性が見出されるためである。
z
リサイクル処理を含んだシナリオ A、C-H では、材料のうちでガラスおよびその他はリサイクルさ
れずにすべて埋め立て処分されるものとする。
シミュレーション結果
シナリオ分析
表 5示したグローバル循環シナリオ A-H に対するシミュレーション結果を図 18に示す。図
18において、水平軸と垂直軸はそれぞれ経済的な利益と CO2 排出量を表す。このシミュレーシ
ョン結果には不確実性としてデータの幅が含まれているが、リスクは含まれていない。リスクを
含む場合のシミュレーション結果については、次項(ii)で議論する。データの不確実性は、図 1
8ではエラーバーにより表示される。このシミュレーション結果において CO2 排出量の不確実性
が小さいのは、ケーススタディで利用した LCA データがデータの不確実性をほとんど表現してい
ないためである。
ケーススタディでは、
「グローバル循環の成立条件」として、次の 2 つの条件を設定する。
(i)
z
利益が 0 よりも大きいこと。
z
CO2 排出量が、日本国内においてリサイクルするシナリオ(シナリオ A)の CO2 排出量よりも少ない
こと。
このような成立条件をみたす領域は、図 18の網掛け部分に対応する。すなわち、シナリオ B、
C、F、H が持続可能なグローバル循環に向けて有望なシナリオである。
CO2 Emission (kgCO2)
-10
G. Material Recycling
(Coastal Area, Shredded E. Material Recycling (Inland Area)
in Japan)
D. Material Recycling (Coastal Area)
-14
A. Domestic Recycling
C. Parts Reuse + Material Recycling
(Japan)
(Coastal Area)
-18
-22
F. Material Recycling
(Japan + Coastal Area)
-26
-30
-2,000
0
2,000
H. Parts Reuse (Coastal Area)
+ Material Recycling (Japan)
B. Product Reuse
(Coastal Area)
4,000
6,000
Benefit (yen)
10,000
8,000
12,000
図 18:シミュレーション結果
CO2 排出量の評価結果をシナリオ間で比較すると、シナリオ D、E、G の CO2 排出量はシナリ
オ A よりも多くなっている。図 19に示すように、その理由は中国におけるマテリアルリサイ
【190401】
クルに基づく CO2 排出量の削減効果が小さく、その上、海上輸送に伴って CO2 が余分に排出さ
れるためである。中国のリサイクルで CO2 の削減効果が小さいのは、金属に対する日本での資源
回収率を 90%、中国での資源回収率を 70%と設定したことに基づく。実際に、金属のリサイクル
による CO2 削減効果は、日本では-18.4 kgCO2 (シナリオ A)なのに対し、中国では-14.3 kg CO2 (シ
ナリオ D、E、G)である。シナリオ A と異なる利点として、シナリオ D、E、G ではプラスチック
をリサイクルするが、これらのシナリオにおいてプラスチックのリサイクルによる CO2 の削減効
果は-0.5 kgCO2 なので、金属のリサイクル効果に対して支配的ではない。図 18の結果より、シ
ナリオの中で最も CO2 排出量が多いのは、シナリオ E、G である。図 19の結果に示されるよ
うに、シナリオ E では日本から中国内陸部まで輸送する際の陸上輸送による CO2 排出量が多く、
シナリオ G では日本で PC を破砕する際の電力消費により生じる CO2 排出量が多い。対照的に、
シナリオ B、C、F、H の CO2 排出量は、海上輸送が行われるにも関わらずシナリオ A よりも小
さい。特に、シナリオ B は製品リユースによる CO2 排出量の削減効果が部品リユース、マテリア
ルリサイクルよりも大きいため(図 19:シナリオ A-H における CO2 排出量の内訳参照)、すべ
てのシナリオの中でもっとも CO2 排出量が少ない。シナリオ C、H の CO2 排出量も、部品リユー
スによる CO2 削減効果によって比較的少なくなっている。シナリオ C とシナリオ H を比較する
と、図 19に示すように日本でリサイクルをしたほうが中国でリサイクルするよりも CO2 削減
効果が大きくなるため、シナリオ H のほうが CO2 排出量が少ない。シナリオ F ではプラスチック
のみが中国へ輸出されるため、輸出時の CO2 排出量が小さく、それゆえシナリオ D、E、G より
も CO2 排出量は少ない。さらに、シナリオ F ではプラスチックがリサイクルされるので、シナリ
オ A よりもリサイクルによる CO2 削減効果が大きい。つまり、シナリオ A と F の CO2 削減効果
の違いは、プラスチックのリサイクルに基づく効果である。
H
Electricity use
G
Marine transportation
F
Land transportation
E
CO2 reduction due to
reuse
CO2 reduction due to
recycling (metals)
CO2 reduction due to
recycling (plastics)
D
C
B
A
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
CO2 emission (kgCO2)
2
2.5
図 19:シナリオ A-H における CO2 排出量の内訳
経済的には、図 18に示すように、リユースシナリオ B、C、H の利益はリサイクルシナリオ
D-G の倍以上となった。これは、中古製品・部品の市場価格が材料と比べて高いためである。し
かしながら、リユースシナリオ B、C、H では、中古製品・部品の価格に材料価格よりも大きな不
確実性が含まれているため、利益の不確実性が大きくなっている。例えば、シナリオ B の利益の
変動幅はリサイクルシナリオ D の変動幅の 14 倍である。図 20に示すように、PC を中国へ輸出
すると、シナリオ C-E ではリサイクル処理にかかる人件費が日本でリサイクルする場合に比べて
低く抑えられる。その一方で、シナリオ B-E、G では輸送コスト、輸入コストが全体のコストを押
し上げている。
【190401】
H
G
F
E
Labor cost
Electricity charge
Transportation cost
Import cost
Landfill cost
D
C
B
A
0
100
200
300
400
Cost (yen)
500
600
700
図 20:シナリオ A-H におけるコストの内訳
以上より、製品リユースシナリオ B が利益と CO2 排出量の両面で最も期待されるシナリオであ
る。さらに、日本国内リサイクルシナリオ A、グローバル循環シナリオ F、国内とグローバル循環
を組み合わせたシナリオ F の比較より、国内循環とグローバル循環の組み合わせによって CO2 排
出量を少なくできる可能性のあることがわかった。
(ii) リスク分析
中国で生じるリスクを考慮する場合について、シナリオ A-H をそれぞれ評価する。リスクを
含む場合のシミュレーション結果を図 21に示す。図 21において、本研究ではリスクを金銭
単位をもつものとしてモデル化し、リスクを経済性と統合化して評価する。すなわち、式(9)で計
算されるリスクが利益から差し引かれる。その一方で、各シナリオにおける CO2 排出量の評価結
果はリスクによって図 18の結果から変化しない。資源が中国へ輸送されるシナリオ B-H では、
明らかに利益が図 18の結果よりも低くなるが、シナリオ B、C、F、H の利益は依然として確保
されている。それに対して、リサイクルシナリオ D、E、G は経済的に成立しない。シナリオ B、
D を比較すると、シナリオ D のリスクによる経済的な損失(2,499 yen/PC)はシナリオ B の損失(999
yen/PC)の 2.4 倍である。この違いは、リサイクル処理に多くのリスクが含まれていることが原因
である。シナリオ B では、通関拒否(refusals in customs clearance)や盗難(theft)のような、輸送や輸
出・輸入プロセスで生じるリスク事象が支配的である。シナリオ D ではそれらのリスク事象に加
えて、リサイクル処理に伴う環境汚染(environmental pollution)リスクの影響が最も大きい。しかし、
図 21の結果にみられるように、同じリサイクルシナリオでも、シナリオ F のリスクはシナリオ
D のリスクのおよそ 1/12 の大きさしかない。これは、日本国内でのリサイクル処理はリスク削減
に寄与し、国内循環とグローバル循環を組み合わせることが持続可能な資源循環に向けたリスク
マネジメントの一例になりうることを示している。
リスク対策を講じた場合のリスクは、式(10)で計算される。このようなリスク対策はリスクの影
響を抑える効果がある。図 21に示されるように、リスク対策を講じた場合の経済性は、シナリ
オ B-H においてリスク対策がない場合と比べて緩和されている。例えば、シナリオ D の手分解プ
ロセスでは、盗難リスクが監視システムの強化(reinforcement of control system)というリスク対策に
よって、72 yen から 34.4 yen まで削減されている。しかしながら、リスク対策を講じたにも関わ
らず、シナリオ D、E、G の利益は負のままである。それゆえ、リスクの影響を考慮すると、これ
らのシナリオは経済的に実行可能でないといえる。
【190401】
CO2 Emission (kgCO2)
-10
G. Material Recycling
(Coastal Area, Shredded E. Material Recycling (Inland Area)
in Japan)
D. Material Recycling (Coastal Area)
-14
A. Domestic Recycling
(Japan)
C. Parts Reuse + Material Recycling
(Coastal Area)
-18
-22
Without Risks
Incl. Risks
Incl. Risks &
C.M.s
F. Material Recycling
(Japan + Coastal Area)
H. Parts Reuse (Coastal Area)
+ Material Recycling (Japan)
-26
-30
-2,000
0
2,000
4,000
6,000
Benefit (yen)
8,000
B. Product Reuse
(Coastal Area)
10,000
12,000
図 21:リスクとリスク対策を加味したシミュレーション結果
(iii) 感度分析
グローバル循環の各シナリオにおける支配パラメータを抽出するために、シナリオ B-D、F にお
ける各パラメータの感度を分析する。地域に依存するパラメータに対しては、グローバル循環の
特徴を明らかにするという意図により、中国でのパラメータの値のみを変動させて、そのパラメ
ータの感度を分析する。すなわち、感度分析においては日本でのパラメータの値を固定する。本
節の感度分析では、(i)および(ii)では 100%に固定していた良品率も変化させて、その感度を分
析する。そのため、感度分析では 100 台の PC が各シナリオを循環することを想定する。良品率を
変化させるとき、シナリオ B、C においてリユースされない製品・部品は、シナリオ D と同様の方
法でリサイクルされるとする。
表 6は、各パラメータが 1%増加した場合の利益と CO2 排出量の感度係数を、シナリオごとに
まとめたものである。ここで利益の感度係数については、リスク対策を含んだ場合の利益をベー
スケースとして、各パラメータが 1%増加した場合の利益の変化を百分率で示す。例えば、シナリ
オ C では人件費が 1%上昇した場合、利益は 0.008%減少する。表 6の結果より、良品率と資源回
収率がそれぞれリユースシナリオ B、C、リサイクルシナリオ D での支配パラメータであることが
読み取れる。経済性の観点からは、中古製品・部品および材料の価格が大きな影響を及ぼしうる。
これらの価格は現実の循環でも時期によって変動するため、グローバル循環を行う際にはこれら
の価格に関する情報に注意を払う必要があるだろう。それと同様に、シナリオ D の利益に対して
比較的大きな感度をもつ人件費については将来的に変動する可能性があるので、人件費について
も情報収集することが望ましい。表 6に示した 4 つのシナリオを互いに比較すると、シナリオ D
の利益はリスクおよびリスク対策の費用に対して最も感度が大きい。このことは、シナリオ D が
リスクに対して経済的な不安定性をもつことを表している。その理由は、図 21に示すように、
リスクおよびリスク対策費用のもともとの利益に対する割合が、他のシナリオと比較して大きい
ためである。シナリオ D と F を比較すると、シナリオ F の感度はすべてのパラメータに対してシ
ナリオ D よりも小さい。これは、シナリオ F に含まれる中国でのリサイクル処理プロセスが、シ
ナリオ D と比べて少ないためである。利益に対して、各シナリオにおける CO2 排出量の感度は資
源回収率、良品率、RLR、FRE を除けば大きくない。その理由は、図 19に示されるように CO2
排出量の評価結果に対してはリユース・リサイクルによる CO2 削減効果が支配的なためである。
すなわち、これらの CO2 削減効果に関係しないパラメータである積載率は、CO2 排出量に与える
影響が小さい。
【190401】
表 6:シナリオ B-D、F の感度分析(%)
B
C
D
F
Parameter
Benefit
CO2
Benefit
CO2
Benefit
CO2
Benefit
CO2
Labor cost
0.000
0.000
-0.008
0.000
-0.276
0.000
0.000
0.000
Price of used products and
parts、 and materials
1.092
0.000
1.286
0.000
3.771
0.000
0.008
0.000
Transport cost
-0.003
0.000
-0.005
0.000
-0.063
0.000
0.000
0.000
Load factor
0.014
-0.001
0.022
-0.002
0.294
-0.002
0.029
-0.001
Recycling rate
0.000
0.000
0.046
-0.513
3.977
-1.064
0.010
-0.025
Yield rate
1.000
-0.513
1.075
-0.290
0.000
0.000
0.000
0.000
Reuse lifetime rate (RLR)
0.000
-0.398
0.000
-0.202
0.000
0.000
0.000
0.000
Future recycling expectation
(FRE)
0.000
-0.283
0.000
-0.148
0.000
0.000
0.000
0.000
Risk
-0.120
0.000
-0.385
0.000
-6.251
0.000
-0.028
0.000
Expense of C. M.s
-0.052
0.000
-0.154
0.000
-2.468
0.000
-0.012
0.000
(iv) 条件分析
前項(iii)の感度分析の結果に基づいて、グローバル循環の成立条件をさらに詳細に調べる。特に、
図 21で示されたように、ケーススタディで設定したグローバル循環の成立条件を最もよく満足
するリユースシナリオ B に関して、詳細な成立条件を分析する。表 6に示されたように、良品率
と資源回収率はリユースとリサイクルにおいてそれぞれ影響が大きなパラメータである。シナリ
オ B に対して、これら 2 つのパラメータを変化させた場合の各シナリオの CO2 排出量とシナリオ
A の CO2 排出量の関係を図 22に示す。このとき、リユースされない製品・部品は(iii)に記述し
たとおり、シナリオ D と同様にリサイクル処理されるものとする。すなわち、変化させるパラメ
ータの 1 つである資源回収率は、リユースされない製品・部品がリサイクルされる場合も含めて
資源が中国でリサイクルされる場合に適用される。図 22は、シナリオ B が CO2 排出量の点で
グローバル循環として成立するための条件を示している。例えば、中国における資源回収率が 70%
の場合には、良品率はおよそ 30%以上を確保すべきである。
Recycling Rate (%)
100
80
CO2 Emission of Scenario B
< that of Scenario A
60
40
CO2 Emission of Scenario B
> that of Scenario A
20
0
0
20
40
60
Yield Rate (%)
80
100
図 22:シナリオ B における良品率とリサイクル率の関係
【190401】
考察
グローバル循環のモデル化手法に関する考察
ケーススタディで示されたように、ここで提案したグローバル循環のモデル化の手法を用いる
ことにより、リユースシナリオやリサイクルシナリオを含むさまざまなグローバル循環シナリオ
を利益と CO2 排出量の観点から評価することが可能となった。このような実データを多く利用し
たケーススタディは将来のグローバル循環の研究に向けて、グローバル循環のベンチマークモデ
ルになると考える。さらに、グローバル循環のモデル化とともに開発したグローバル循環シミュ
レーションシステムは、持続可能なグローバル循環の構築に向けて、グローバル循環の成立条件
や今後解決すべき課題を明らかにするためのツールとして役立つはずである。これらの 3 点は主
な研究成果である。
また、以上ではグローバル循環の環境面での評価を簡単のために CO2 排出量のみにより行った
が、もしデータが収集・利用できるならば、その他の環境指標を統合化して、環境面での評価を
拡張することが可能である。その他の環境指標としては、例えば有害物質の影響度などが考えら
れる。
リスクは、本研究で提案したモデル化手法の特徴的な要素である。リスクの導入により、グロ
ーバル循環における発生事象の不確実性を明示的に表現することが可能となった。それと同時に、
リスクの影響を低減するためのリスク対策を、対策効果と対策費用を考慮しながら決定するため
の枠組みを提供した。その一方で、リスクおよびリスク対策を導入したことにより、それらのデ
ータに関する仮定が加わるため、シミュレーション結果の信頼度が低下する可能性がある。この
点を考慮すると、本研究はリスクの正確な定量評価を行うことよりも、むしろリスク・リスク対
策を表現してそれらのグローバル循環に対する影響および効果を議論するためのリスクモデルを
提供できたと考える。
ケーススタディに関する考察
ケーススタディにおけるシミュレーション結果より、リユースシナリオの経済性がリサイクルシ
ナリオに比べて優れており、特に製品リユースシナリオが利益と CO2 排出量の両面からみて最も
有望なシナリオである。このようなリユースシナリオのメリットは、中古製品・部品の価格が高
く、さらに新規に製品・部品を製造する必要がなくなることによって大きな CO2 排出量の削減効
果が見込めることに基づいている。その意味で、グローバル循環は地域間の経済格差によって生
じているものであると考えられる。リユースシナリオに対して、リサイクルシナリオ D、E、G で
は CO2 排出量の点でグローバル循環の成立条件を満足しなかった。これは、中国におけるマテリ
アルリサイクルによる CO2 削減効果が小さいことと、海上輸送を含む長距離の輸送に伴う CO2 の
排出があったためである。ただし、これらのリサイクルシナリオでは、中国での安価な人件費に
よりリサイクル処理におけるコストをある程度削減できるというメリットはあった。
シナリオ A の評価結果と日本における PC のリサイクル処理の現状とを比較すると、これらは矛盾
しない。例えば、Fujitsu の報告書[14]によるとデスクトップ型 PC のリサイクルによる CO2 削減
効果とリサイクル処理により生じる CO2 排出量はそれぞれ 22.2 kg CO2、0.6 kg CO2 である。こ
れらの値は、図 19に示したシナリオ A の CO2 排出量の評価結果とほぼ一致しており、ゆえに本
研究で作成したグローバル循環シナリオの妥当性を裏づけている。
図 21に示したように、リスクを含めるとシナリオ D は経済的に実行可能な循環シナリオでは
ないという結果が得られた。しかしながら、現実にはこのシナリオのような PC の循環が行われて
いる。例えば、BAN and SVTC[5]は、日本からリサイクル目的で輸出された E-waste が中国の Guiyu
で発見したことを報告している。このような、シミュレーション結果と現状との不一致の理由と
して、ここでは 2 点挙げる。1 つめは、グローバル循環には日本国内でのリサイクルに比べて大
きなリスクが含まれるものの、そのようなリスクを実際の帳簿上では考慮していない可能性があ
る。2 つめとして、ケーススタディで作成したグローバル循環シナリオでは中国におけるリサイ
クル処理プロセスを日本でのリサイクルと同等であると想定したが、現実の中国におけるリサイ
クル処理コストはもっと低く、かつ、環境に対して悪影響を及ぼすことも考えられる。
シミュレーション結果におけるリスクの評価では、リユースシナリオがリサイクルシナリオよ
【190401】
りも経済的に優位にあることが明らかになった。しかし、リサイクルシナリオ D、E、G ではリス
クを考慮すると、経済的に循環が成り立たないという結果が得られた。図 21のシナリオ F の結
果より、日本の国内循環とグローバル循環を組み合わせると、リサイクルシナリオにおけるリス
クを削減することができた。これは、リスクマネジメントの一例であると考えることができる。
リスク対策については、予想したとおりいくつかのリスク対策の導入によってリスクを削減する
ことができた。ここで、いくつかのリスク対策はグローバル循環のトレーサビリティを確保する
ために講じられるものである。例えば、盗難リスクに対する監視システムの強化というリスク対
策は、資源の流れを監視し、トレーサビリティを確保するための手段である。それゆえ、持続可
能なグローバル循環を構築する上で不可欠となるトレーサビリティは、リスクおよびリスク対策
の概念を用いて評価できると考えられる。トレーサビリティの評価手法を開発することは、本研
究の今後の課題のひとつである。
第 0 章のまとめ
持続可能なグローバル循環のための条件を明らかにするために、本研究ではグローバル循環の
モデル化を行い、さらにシミュレーションを行うためのグローバル循環シミュレーションシステ
ムを開発した。これらを用いて、グローバル循環の問題点および可能性について議論した。ケー
ススタディとして、日本と中国におけるデスクトップ型パソコンのグローバル循環を取り上げた。
このケーススタディでは、リユースシナリオ、リサイクルシナリオといったさまざまなシナリオ
を作成し、それらを経済的な利益と CO2 排出量の観点から評価した。グローバル循環をシミュレ
ーションする際には不確実性が大きな障害となるため、本研究ではそのような不確実性を、リス
クおよびデータの幅を用いて表現した。このうち、リスクは金銭単位をもつものとして定義し、
リスクを経済性と統合化して評価した。
ケーススタディにおける各シナリオのシミュレーション結果より、リユースシナリオが持続可
能なグローバル循環シナリオの構築に向けては有望である反面、リサイクルシナリオは CO2 排出
量の多いことが欠点となった。リスクの影響を考慮した場合のシミュレーション結果からは、リ
サイクルシナリオにはリユースシナリオよりも多くのリスクが含まれることがわかった。さらに
リスク対策の影響を評価すると、もし効果と費用のバランスを適切に考慮してリスク対策を選択
すれば、リスクを削減する効果が期待できる。ケーススタディの実行にあたっては、多くの実デ
ータの収集を行った。このようなケーススタディは、今後のグローバル循環に関する研究に向け
て、ひとつのベンチマークモデルになると考える。本研究の成果により、将来的に持続可能なグ
ローバル循環を構築するためのシナリオを描くための研究の促進が期待される。
0 節に示したように、トレーサビリティは持続可能なグローバル循環の構築に向けて重要な要
素である。本研究ではケーススタディを通して、このトレーサビリティがリスクおよびリスク対
策の概念を用いて評価できうることを指摘した。トレーサビリティを評価することができれば、
グローバル循環シナリオにおけるトレーサビリティの評価を通して、持続可能なグローバル循環
の条件を明らかにするために役立つと考えられる。
今後の課題としては、シミュレーション結果の信頼性を高めるために、さらなるデータの蓄積
が挙げられる。また、環境性の評価指標として CO2 排出量以外の指標を導入することも課題であ
る。さらに、リスクの概念を用いてトレーサビリティのモデル化も行いたい。
第 0 章の参考文献
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paradigm”, Artificial Intelligence for Engineering Design, Analysis and Manufacturing, Vol. 14, No. 2,
(2000), pp.149-161.
[2] Umeda, Y. and Kishita, Y., “Toward the sustainable circulation of products among Asian countries”,
Transition to a Resource-Circulating Society, Osaka University Press, Osaka, (2007), pp.65-76.
Available at: http://www.riss.osaka-u.ac.jp/jp/publication/Transition.pdf
[3] Kojima, M. et al., International trade of recyclable resources in Asia, Institute of Developing
【190401】
Economies, Japan External Trade Organization (IDE-JETRO), Chiba, (2005).
[4] Terazono, A. et al., “Material cycles in Asia: especially the recycling loop between Japan and China”,
Journal of Material Cycles and Waste Management, Vol. 6, No. 2, (2004), pp.82-96.
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Website, (2002), pp.15-22, http://ban.org/E-waste/technotrashfinalcomp.pdf
[6] Sasaki, S., "Current situation of reuse of used PC in Thailand", Proceedings of the Third NIES
Workshop on E-waste, (2006), pp. 153-161.
[7] Terazono, A. et al., “Current status and research on E-waste issues in Asia”, Journal of Material Cycles
and Waste Management, Vol. 8, No. 1, (2006), pp.1-12.
[8] Moriguchi, Y., “Recycling and waste management from the viewpoint of material flow accounting”,
Journal of Material Cycles and Waste Management, Vol. 1, No. 1, (1999), pp.2-9.
[9] van Beukering, P.J.H and van den Bergh, J.C.J.M., “Modelling and analysis of international recycling
between developed and developing countries”, Resources, Conservation and Recycling, Vol. 46, No. 1,
(2006), pp.1-26.
[10] Kuwatani, M. et al., “EcoDesign of multilateral recycling systems in Asia - 2nd report: recycling profit
analysis model”, in Environmentally Conscious Design and Inverse Manufacturing, 2005., Eco Design
2005., Fourth International Symposium on, 2005. Tokyo, Japan.
[11] Stewart, M.G. and Melchers, R.E., Probabilistic risk assessment of engineering systems, Chapman &
Hall, London, (1997).
[12] Fujitsu, Product environmental aspects declaration, JEMAI Website, (2005),
http://www.jemai.or.jp/
[13] JEMAI, JEMAI-LCA Pro Ver.2, (2005).
[14] Fujitsu Limited, Product environmental aspects declaration, (2005),
http://jp.fujitsu.com/about/csr/eco/downloads/products/bj-05-006.pdf
(3)研究開発成果の社会的含意、特記事項など
第 0 章の「ライフサイクル設計を支援するための統合環境」は、今後重要性が高まる「ライフ
サイクル設計」の基本的なプロセスとその設計作業を包括的に支援するための枠組を提案したと
いう意味において社会的な意義がある。第 0 章の「リユース・アップグレードを可能にするモジ
ュール化設計方法論の提案」は、本プロジェクトの主題である製品のリユース、アップグレード
や部品のリユースを効率的に実現するために必要不可欠なモジュール化のための設計方法論を提
案したという意味で、本プロジェクトの考え方を今後普及させる上で必要不可欠であるという意
味で社会的な意義がある。最後に、第 0 章の「グローバル逆流通システムのモデル化とシミュレ
ーション」では、本プロジェクトの主題である国際間での人工物の循環を具体的にモデル化し、
シミュレーションによりその可能性と成立要件を明らかにしたという意味で、また、今後のアジ
ア循環研究においてベンチマークになりうるデータ収集、モデル構築を行ったという意味で、社
会的な意義がある。
【190401】
(4)研究成果の今後期待される効果
類似研究の国内外の動向の詳細については、各章で触れた。
「ライフサイクル設計」は、EuP 指
令とも絡めて欧州で研究が活性化しつつある。この点で、本研究グループが世界をリードする可
能性が高い。
「モジュール化設計」についても第 0 章で述べたように既存の研究は多いが、部品間
の距離関係を SOM を用いて自動的に抽出し、さらに、幾何モデルを使用して実現可能性の高いモ
ジュール構造を導出している二点が本提案手法の特徴である。
「アジア循環」は、第 0 章で述べた
ように、近年 eWaste 問題として注目を集めている問題であり、様々な研究グループがデータ収集
や分析を行っている。本研究では、国際資源循環の本質的な課題の一つはリスクであるという認
識に立ちリスクを含めたモデル化手法を提案している点、リユースによる国際資源循環の評価を
行っている点、さらに、経済性と環境負荷の両面から評価を行っている点の三点が特徴である。
「統合ライフサイクル設計支援環境」については、今後も研究を進め、様々な設計支援モジュ
ールを統合化して、図 3で示した統合環境を具体的に実装する見込みである。これにより、
「ラ
イフサイクル設計」の方法とその効果を具体的に世に示すことが可能となり、いわゆる環境配慮
設計技術の高度化という波及効果が期待できる。
「モジュール化設計方法論」については、今後実
用性を高める研究を進めると同時に、環境配慮設計の支援ツールとして積極的に普及させる努力
を行う。これにより、本研究の主課題であるリユースやアップグレードを実施する際の技術的な
裏付けを社会に提供できるという意味での波及効果を及ぼすことが期待される。最後に、
「アジア
循環のシミュレーション」については、リスクを中心としてデータ収集、および、様々なシナリ
オ作成を含めた更なる分析を進めることにより、アジア循環の本質的な特性とそこにおけるリユ
ースの効果をより一層深いレベルで明確にする見込みである。これにより、アジア循環の議論に
ある種の裏付けデータを提供できるという意味での社会的波及効果が意外に大きいのではないか
と考えている。また、作成したデータ、およびモデルを公開することにより、この研究分野にお
ける一つのベンチマークを提供できる可能性があり、この面での研究活性化への波及効果が期待
できる。
【190401】
4.4
電球型蛍光灯(CFL)のリユース性の検討
(設計リサイクル研究サブグループ)
(1)研究開発目標
1.1
ボーダーレスサプライチェーンのひな形推進のためのひな形として、電球型
蛍光灯(CFL)をとりあげ、その可能性を検討する。
CFLの特徴として以下の三点に着目する。
・手作業に向いたサイズであり、比較的容易にリユースのためのラインの立ち上げが出
来ると想定される。
・寿命の異なる電子回路部と蛍光管から構成され、これらの分離により比較的容易に電
子回路部のリユースによる資源活用の効果が期待できる。
・炭酸ガスの削減に効果が期待され始めており、白熱電球からCFLへの置き換えが世界的
な話題となり、[8][9][10]、このことから、CFLの普及に伴う大量の電子回路基板など
の廃棄が想定される。
1.2
市場サンプルの収集と分解、測定分析
現行商品サンプルを集め、その代表的な姿や特徴を捉え、現行の製造と販売の要点を
抽出する。サンプルを手作業で分解し、電子回路部の取出しと、蛍光管の安全な切り
分け方を調べ、また電子部品の仕様を調べ、電気的動作特性を測定する。リユースを
推進して行く上で障害となる事柄を抽出し、研究成果としてそれらを解決するエコデ
ザインを描き出す。
1.3
CFLの国際的な動向調査、主な統計データの抽出
温暖化対策に白熱球禁止案も出されていることから、国際的な世論とエネルギー消費
の動向を調べる。また根拠とすべき統計データを抽出する。[5][6]
1.4
新しいCFLのエコデザインをつくる
白熱球とのコスト比較はすでに多くの調査が行われ、CFLが温暖化対策にも、家庭の支
出についても圧倒的に有利であることが判明してきている。本研究は安価なリユース
品により、CFLへの置き換えを更に促進させると共に、その先にある電子回路部分の産
業廃棄問題への取り組みも視野に入れたデザインを検討する。その際、省エネのみな
らず、家庭やオフィスでより快適な照明環境を手軽につくれるような仕掛けとするこ
とを並行して検討する。[18]
【190401】
入手した CFL サンプルの一部(2002-2007年)
(2)研究実施内容及び成果
2.1 循環型社会へ、リユース性の机上検討
リユースの採用と推進にあたっては、以下の仮説から出発し、検討結果をまとめた。すなわち、
残寿命の有効活用
残寿命のあるモノのリユースは製造されたモノの資源活用として最大の効率をあげ得ると考えられる。
この効率を損なう要因としては、リユースに係るコストであるが、そのコストを低減するためには、リユ
ースの製造完成と販売から利用までに必要な情報が完備していること、リユースの作業効率を上げ
るための設計がなされ、そのための追加コストが小さいことが求められる。部品の情報と管理には、
すでに開発が進み実用化検討の段階にあるミューチップが考えられる。[14]
ここで残寿命が見込まれ、それを活用するために製造の当初からユーザがリユースの選択もすると
いう前提をとるならば、リユースを想定しない設計と比較して、そのために生ずる追加のコストは、そ
れが全体から見て付加の規模である限り、それはリサイクルして新たに一から全部を製造するコスト
よりは十分に低くすることができる。
リユースに必要な全ての情報は最初の製造の際に揃っており、リユースに必要な効率的な部品類の
配置や分離方法とそれらの作業も、最初の製造の場面で最も良く分かっている。だから効果的なリ
ユースには、かかる情報の管理と活用が必要である。
技術の進歩による残寿命の価値の減少
パソコンに代表されるように、情報機器分野ではメモリの急速な進歩に牽引されて、まだ物理的な寿
命が十分にある機材が放置され、性能アップした新しい機材とソフトウェアが消費されている。この場
合、残寿命はあるが、その価値が急速に低くなったために、リユースするよりは不使用保存または廃
棄にして新機種に買換えが合理的とされている。
しかしこの場合でも、進歩の遅い部分についてはリユースの選択の余地は残される。つまり、メモリや
CPU など、進歩の著しい部分を交換し、本体ケースや電源部などを継続使用することがこれに該当
する。
CFL の場合、蛍光管の点灯に必要な制御と電力供給のためのエネルギーを扱うことを宗とするイン
バータ回路部分は、情報処理を宗とする回路とは異なり、その進歩は比較的緩慢である。したがって
この回路部分のリユースでは、残寿命の有効活用が見込める。たとえば、回路部分の寿命が10年、
【190401】
蛍光管の部分が3年とすると、回路部分のリユースで計3回の利用は見込むことができる。
リユースによる市場の変化
(新規製造量の減少の可能性と製造品の単価、製造の利益などの変化)
CFLは従来の白熱電球にほぼそのまま置き換えることができ、コンパクトにまとまって便利であるから、
その経済性と合わせてめざましい普及を見せている。その世界的な普及の予想ゆえに産業廃棄物
の増大が懸念される。
リユース品が市場に出回るために、新規製造品の需要が縮小する懸念が常に問題となる。資源の無
駄を減らす観点からはリユース品の市場を阻止することは主旨に反する。
新規製品を買うことの出来るユーザが資源の無駄を減らことに協力するためにリユース品も買う場合、
リユース品が安いとして、このユーザは利用するランプを増やすことや、効率や好みに応じた交換を
するができよう。製造側はこのような新たな需要に対応して市場をつくっていくことができる。すなわち、
無駄な廃棄を増やさない方法としてリユース性を高める仕掛けを活かすことにより、ユーザが自由に
回路部分と蛍光管を組み合わせて使うことができるようになり、CFLの利用が更に広がることになろ
う。
また、安価なリユース品ならば買うユーザと、リユースの事業により新たに雇用が生まれて携わる人に
より、リユース品の市場がつくられる場合、ここには新規製造品を圧迫することはない。
なお、次々に生まれて開発される改善案は第三のインタフェースにより、リユース品に応用させるよう
にすることができる。これにより、従来品を丸ごと廃棄することなく、新しい製品と同等の機能を得て利
用することができる。
リユースに際しては、もとの製品に関わった人の権利が問題となる。それらの権利の主張に関する情
報を管理し、継承していく仕組みとルールが必要である。[12][13]
ここで電子回路基板のリサイクルにふれておくと、昨今のレアメタルへの関心の高まりに対して、その
動きは鈍い。その理由としてリサイクルは銅や金の他、それぞれのメタルごとの市況に左右されること、
またそれらを扱う企業がそれぞれ独自の処理技術により専門化し、結果として回収出来ている資源
には大きな偏りが生じている。社会的なニーズ、一歩譲るとしても産業界のニーズに広く適合した動
きをすることが困難な状況である。かかる状況は改善していかなくてはならないが、それはリサイクル
の場合であり、本テーマではリサイクルよりもリユースが省資源であることを再確認したい。
2.2 グローバル逆流通モデル
以下は二つのモデル、すなわち先進的新規志向と、安価志向と、これらを並行させることにより廃棄
を減らし利用効率を高く維持するモデルを描いたものである。
照明ランプの特殊性すなわち低い効率がもたらすもの
照明ランプ類は効率がとても低いため、照明に要するコストは、電球や蛍光灯などの製造に係
るエネルギー資源コストよりも、その寿命時間に消費する電気エネルギーのコストが圧倒的に大
きい。そのため白熱球をやめて蛍光灯への声は世界的な運動に広がってきている。電球型蛍
光灯はインバータ電子回路基板を内蔵することにより、従来からの白熱球と同じ利便性を提供
するように設計され、それが消費者に受け入れられている。その構造全体は回路の構成も含め
てここ数年間、基本的には変わっていないが、その実際の性能は格段に向上してきている。点
灯の応答の速さ、明るさのアップ、その立ち上がり、色あいなどが改善され、更には従来弱点だ
った点滅回数についても寿命の延長が進んできている。それらの進歩が白熱球からの置き換え
を後押ししていると考えられる。
以上から、電球型蛍光灯の価格は日本では消費者価格が1000円以上でも十分に白熱球より
お買い得と計算される。まだ十分に使用に耐える電子回路を蛍光管の寿命と共に廃棄する一
体構造としても、利用者のコスト負担は可能になっている。しかしこれはあくまで非効率な白熱
球の電気消費量をもとに比較されて出ている計算であって、蛍光灯やLEDの間の競争となれば、
【190401】
その基礎となるコストは全く別の値となる。つまり、点灯回路内蔵の器具に蛍光管部分だけを差
して使う従来の直管やサークル管の蛍光灯と、点灯回路なしのソケットに回路内蔵の蛍光灯を
差し込んで使う方法との比較である。前者は点灯回路の寿命だけ長く使えてコスト有利である。
インバータ回路は成熟してきており、その性能向上は大幅には見込めない。後者では、点灯回
路が日進月歩であるなら蛍光管の寿命ごとに買い替えができ、それなりのメリットがある。また、
蛍光管の特性にぴったり合った制御で差があるなら、そのような専用回路内蔵の方法に利点は
あろう。しかしこれらは大きな進歩が継続して達成されていくのでない限り、蛍光管のみ差し替
えで済む方法が安上がりであり、環境負荷も小さいからインバータ回路部分の再利用は十分に
検討すべき課題である。
そこで、両者の利点つまり進歩と省資源とを併せ持つ方法として、点灯回路部分と蛍光管とを
切り離して、標準の接続環境を整えることを提案したい。これにより、従来の方法つまり蛍光灯
のコストメリットを得、かつ制御の合った組み合わせも得られる方法が得られる。
かかる仕組みによれば、消費者が自分で必要や好みに応じて点灯回路も蛍光管も自由に取り
換え、組合せを選べるのみならず、その標準仕様を活用して、リユース事業、リサイクル事業の
明快な分担と円滑化をはかることができる。
さらに、より省資源、省エネルギー、より快適な照明環境をつくるために、点灯回路の機能更新
や拡張ができるようにする外部制御用インタフェースを用意する。この方法により、現用の点灯
回路で、新しい機能やより効率の高い新製品と同等の環境が得られるようにし、電子回路基板
の寿命を延ばして利用することができる。
このように、再利用と新製品とが競争して利用者の選択の幅がひろがり、利便性が高く、しかも
省資源、省エネの仕組みをつくることができる。またその仕組みにより、グローバルに地域ごとの
状況に合った事業と消費を継続させていくことができる。
ちなみに、以前の使い捨てカメラは10000円ほどのポケットカメラとの比較でビジネスデザイン
がされたようだが、店頭では新品とリユース品とが異なる価格で並べられた。これはビジネスの
広がりを示す例として参考となろう。ポケットカメラはコストダウンが進んで3000円ほどのものが
出て、使い捨てとの選択ができるようになり、使い捨てもコストダウンを進め、リユース事業が活
躍した。
逆流通モデル 1
現行のCFLの姿そのままに、使用済みを各自治体の方法で廃品回収し、解体処理できる事業
体がグローバルに協力して最適な処理を分担してすすめる。その力学は各々得意とする専門
技術と市況に影響される利益に基づくが、加えて国際的な温暖化対策からの評価の目もここに
及ぶ。当面は国際的合意であるバーゼル条約や、RoHS,WEEE各EU指令などのルールの下に
可能な方法を選択する。
蛍光管はフィラメントの塗布酸化物が寿命を決める要素で、そのほかに蛍光塗料の劣化やガラ
ス管内面の変色などがある。破砕による方法のほか、両端を切り落としてガラス管は再利用もあ
ろう。ガラスと水銀や蛍光物質などを回収し、新しい蛍光管をつくる。
回路基板はリード線を切り離して動作チェックし、仕様を識別して二次品とする。
再アセンブルする事業体は整形プラスチックケースにエジソンキャップを付け、蛍光管を接着材
で固定し、回路を納めてケースを閉じる。ここが管と回路の仕様の整合を担う。このアセンブル
事業体は個々の製品の仕様情報を整理したデータベースに基づいてアセンブルする。
【190401】
逆流通モデル 2
現行のCFLをもとに、キャップ、経路、管を切り離した標準仕様をつくり、各企業が競争と協力関
係をもってグローバルにリサイクル、リユースのサプライチェーンを組織し稼働させる。そこには
最終利用者の賢い選択も加わる。
利用者は標準化された仕様に基づいて、自在に管や回路を差し替え、組み合わせて利用でき
る。寿命で交換するほかに、照明器具のサイズ、形状に合ったキャップや回路部を選び、また
管で色合いを変えるなどができる。なお、回路部分は再生品もあり、安価に手に入れることがで
きる。こうして白熱球よりも効率の高いCFLが先進諸国だけでなく、途上国にも利用者を増やし
て電力消費を抑えつつより明るい照明環境を得ていくことができる。更に、再生品の処理事業
は手作業で小規模でも可能であり、グローバルに諸地域で逆流通のサプライチェーンに参加
することができる。
ここにデザインする3つのインターフェースにより、各部分の寿命を最大限に使うことができると
共に、自在な組み合わせにより、より省エネかつ快適な環境をつくり、維持していくことができ
る。
【190401】
2.3
市場サンプルの収集と分析
サンプルの収集
現在のインバータ回路内蔵型の電球型蛍光灯
を良く目にするようになった2002年頃から、市中で目
に止まったサンプルを集めた。その頃から欧州のたと
えばドイツのDIY店などでは、U字型の細長いものが
格安品として1ユーロ前後で山積みとなっている光景
があった。これらは現在のものと比較すれば明るさも
落ちるし、すぐに駄目になるものも少なくなかった。し
かし、その頃から有名メーカー品は3ユーロほどで十
分に使えるものが出ていた。その頃はU字型のものが
ほとんどであった。その頃日本国内では安売りで知ら
れる量販店でも1000円以上であり、欧州のCFLの立
ち上がりが中国や東欧に支えられてきたことがうかがえ
る。米国ではかなり遅れて昨年の2006年あたりから突
然現れたごとく、WALMARTなどの店頭に見られるよ
うになったが、その後の進展は目覚ましく、ちょうど100
W電球の置き換えになる20Wほどのスパイラル型のC
FLが 4 個パック、10個パックで店頭に山積みとなり、
同じ頃から米国企業ブランド品が欧州でも欧州ブラン
ドに並んで見られるようになった。米国ではスパイラル
がほとんどであり、米国で見るこのまとめ買いで単価約
1ドルのランプは 5 年ほど前の欧州の格安品とは大きく
異なり、動作は安定し、明るさ、色ともに良く、十分に実
用になると見える。つまり白熱球との価格差が少なくな
り、点滅回数で寿命が短くなるとしても、まだ消費者と
してはおつりがくると見込まれる。頻繁な点滅なしの利
用で CFL の寿命がほぼ表示通りとすれば、23W の
CFL が単価3ドルで寿命が6000h、対して100W の白
熱球が50cで1000h、電気代が 10c/KW 程度では、日
U 字型の欧州製品(10W)
(2002年)
内
部はチップ部品を使い、管のリード線をバネで
基板のランドに接触させている。
U 字型(13W)日本製(2006年)
本の両者比較例と同様の結論が出よう。なお、放電管を
米国のスパイラル型(10W)(2007年)
欧州のスパイラル型例(25W)
(2007年)
【190401】
直線でなくて、らせんなどに曲げて全体を小さくまとめると、それだけ放射されるべき光が近接する管
に妨げられて、照明効率の低下をもたらすが、小型化の方法としては日本も含めてスパイラル型が
増えてきている。
これが世界の CO2 削減に大きく貢献することは消費者個々人の心にも良いものをもたらすことは十
分に想像できる。
手作業による分解
インバータ回路基板を収納しているスリーブ状のプラスチ
ックケースは、ちょうど箱の身と蓋からなり、身のほうにはス
クリューキャップがつながり、ふたには穴が開けられて蛍光
管の先が差し込まれ、接着材で固定されている。そこで、
この身と蓋の合わせ目あたりを切って開くと回路基板がとり
だせる。
なお、道具は帯鋸などの代りにミニルータと称する、厚さが
0.5mmほどの薄い円板のグラインダを高速回転させるも
のも使える。
身と蓋を合わせて閉じるあたりに回路基板が固定される。
けケースの嵌め合わせ構造の例
身と蓋はプラスチックケース表面の凹凸により強固に接合
され、容易には開けられないようになっている。基板はケ
ースの内側につくられた筋状の突起部分により
ケース内に水平に固定される。基板上の部品の
うち、最も大きいものは AC 電源から DC を得るた
めの電解コンデンサであり、これはちょうどスクリ
ューキャップの内側へ押し込まれるように収納さ
れている設計が多い。次に大きいのが放電のた
めの電力を供給するトランス、フィラメント電流用
のフィルムコンデンサであり、これらは電解コンデ
ンサの足元あたりに置かれる。その他の抵抗やコ
ンデンサ類はチップ部品が使われているものも
ある。従来の個別部品を基板に差してつくられた
ものは基板サイズが比較的小さく、CFL の外観
管の固定方法の例
はケースの直径が小さく細身であるのに対し、チ
ップ部品を使ったものは基板サイズが大きくなり、
けースの直径は大きくて、全体に太った形にな
る。
放熱のために蛍光管を差し込んだ蓋の中央や、
身のスクリューキャップを嵌めた首のあたりに穴
を設けているものも多い。
キャップと回路部の電気接続はすべてが半田
付けであるが、蛍光管のリード線と回路基板と
の接続は半田付、ワイヤラップ、ばね式接触、リ
ード線押込み式などが見られ、着脱が容易なば
ね式や RoHS 対応をうたった半田なしのリード線
押込み式は有望な方式である。ここに標準仕様
を設定すれば、エンドユーザ自身が管の取り換
えが出来るようになり、回路部と管の組合せもで
きるようになる。
蛍光管をケースの蓋部分で固定する方法はシリ
コンゴムや硬質の接着材が使われているが、そ
ケースの嵌め合わせ、管の固定方法の例す
【190401】
の様子は穴と管の隙間を埋めて固定するというものではなく、かなりラフであたりに大量に充填されて
いる。スパイラルの場合、管の先端部分が二本並行に垂直に差し込まれているものと、先端部分は
スパイラルの延長のまま蓋に斜めに差し込まれているものとがある。いずれも管を差し込む部分の穴
に適切なスリーブ状のガイドを施せば、接着材はごくわずかで済むことになる。またこの穴の寸法や
形状とともに、接着材の種類を決めれば、リユース作業と資源の無駄を減らす効果が上がる。
蓋と身の部分の嵌め合い方法は、円周に一様に凹凸を設けたものと、一部分だけを周囲から切り分
けて、レバー状にした部分の変形を利用してツメを噛ませて止めるものとがある。どちらもしっかかり
止められているが、一般の利用者による分解は想定されていないため、外からは外し方を分るように
した様子はない。リユースのためには、手作業でもオートメーションでも、安全確実な分解の方法が
分かるように設計することが必要である。この嵌め合いの仕様を標準化して、外側に簡単な印を付け
れば、このリユースの第一条件は満がされる。
主要部品のサイズ
蛍光管の放電に要する電力の供給のために、電解コンデンサとトランスが使われ、これらのサイズの
小型化には限界がある。しかし、現状を見ると、それば必ずしも表記のワット数とは関係なくばらつい
ている。つまり部品の採用条件として、小型化の追求にもまして、供給の確実なこと、安価で入手も
容易、などの条件が含まれていると想定される。したがって部品のサイズによる回路部全体のサイズ
の制約はまだ緩いものと考えられ、なお一層の小型化が可能であり、その方向に進むであろう。興味
ある例としては、ポルトガルで見られた中国製のスパイラル型は最も小型であり、その回路部分は従
来部品を基板に手作業でぎっしりと差し込んだものであった。
欧州で需要の多いと見られるシャンデリア用の水雷球型にするには、インバータ部分のサイズを思い
切って小さくする必要がある。使用する部品は現状より一層の小型化が必要である。幸いにシャンデ
リア用は部品が下に配置されるから、温度上昇の条件は、取り付けを逆さにする、吊下げないし天井
埋め込み式よりは楽になる。
回路基板の小型化の例、
【190401】
動作状態の個々の測定
テストベッド
電源は AC100V ラインよりトランスで絶縁し、日本国
内用 100 V、米国用 120V、欧州用 230V を
用意、
測定装置は PC に USB 接続して動作する2ch、10
MHz 帯域幅の PicoScope#3224オシロ、これにより
DC 供給電圧波形、放電駆動電圧波形、放電駆動
電圧の周波数スペクトラムを採取した。各測定結果
は JPEG 画像として保存している。
なお、本研究の要旨はリユース性の検討であり、その
ため現状の把握としてはおおまかな姿を抽出するこ
とであり、それに基づいてリユース性の高いエコデザインを描きだすことである。そのため、分析はメ
カニズム、エレクトロニクス共に概観を宗とした。本研究は照明効率を高めるような検討はなく、照度
を測る環境などは省いている。
以下に CFL の標準構造を示す。どの CFL もみなエジソン以来のスクリューキャップ部分と、インバー
タ回路基板部分と、蛍光管とからなり、回路を納めたプラスチックケースがキャップと回路と管とを結
合する方法で一体化している。
Fig.1 CFL structure
インバータ回路部分はいずれも以下のような波形が観測されるが、商用 AC 入力を両波整流して平
滑する DC 出力回路と、小型のトランスを用いて蛍光管を放電させる、点灯と放電を制御する部分を
持つ数10kHz の発娠回路からなる。前者には部品として最も大きな容積を持つ電解コンデンサがあ
り、これを小型にするために多くのサンプルでその DC 出力は図のように脈流を呈している。この電解
コンデンサの容量が低下すると脈流のディップは大きくなり、明るさの低下とちらつきにつながる。動
作中の温度上昇がアレニウスの法則に示されるように、[15][16] コンデンサの寿命に大きく係るので、
コンデンサの耐温度特性と容量の設計余裕が回路基板の性能維持の寿命を左右する要因となる。
後者では容積の大きな部品としてコア入りのトランスがある。その寿命はコイルの絶縁で決まるが、効
率向上が主要課題なので発熱の増加はなく、寿命が特に短くなる理由は考えにくい。ロスの低減と
共に、放電管の寿命を延ばす点灯制御など、機能の良さがリユースの繰り返しに耐える寿命を支え
る。
【190401】
Fig.2 CFL waveforms
全体の傾向、
電気的特性
リユース性の検討から、実装されている部品の様子を見たところでは、そのサイズなどにかなりのばら
つきが見られた。そこからは小型化やコスト削減について、まだまだ余裕があると解釈でき、個々に
かなりの改善見込めるとの感触が得られる。また見方を変えると、管のワット数の違いにかかわらず、
ほぼ同じサイズの部品が使用される場合があることは、部品の共通化によるコストダウンもあり得るこ
と、更には異なるワット数の管を差し替えられる設計にも通じるものである。
サンプルの測定結果をまとめると、以下のグラフのようになる。 主な部品である電解コンデンサとトラ
ンスの大きさなどはおおよそ以下の通り。
【190401】
電解コンデンサの体積
トランスの体積
放電駆動周波数
0.1 cm3/W
0.07 cm3/W
20 ~ 80kHz
放電駆動電圧
効率
270V/m
60lm/W
(被覆を含めた外寸である)
(これはコアのたてよこたかさを掛けたものである)
カタログ上の照明効率やトランスの測定サイズには
明確な関係は見られない)
(放電管長さ 1m あたりの電圧 op 値である)
(ほぼ 60lm/W 前後である)
Fig.3 CFLs vs Watt
【190401】
実装方法
放電管のリード線と基板回路との接続方法
半田付けが多いが、ワイヤラッピングも見受けられる。
RoHS 対応への動きでは[19]、バネを基板のランドへ圧着さ
せる方法や、リード線をランドの穴へ押し込める方法などが
見られる。これらは管と回路の分離が良く、リユースに向いた
方法である。
プラスチックケースの蓋と身の嵌合せ方法
いずれも表面に凹凸を設けて嵌め、ドライバなどでこじ開け
ようとする程度では開かないように堅固につくられている。接
着材は使わないものが多いの
で、リユースのための分解作業
には、形状の統一ないし仕様
の公開があれば容易であろう。
外形
ほとんどの CFL は白熱電球より
もインバータ回路部分が膨らん
でいるので、小型の照明器具
の中には差し込めないものがあ
り得る。しかし、プラスチックケ
ースが殆ど膨らまない形のもの
もつくられていて、差し替えは
可能である。
チップ部品を使ったものは基板
面積が大きくなりやすく、それだけケースの外径も大きく、太
った姿になるが、一方高さを低くできて、外形は平板になり、
CFL 全体の長さを短いものにできる。
従来部品では手作業とおぼしき方法で小さな基板に部品を
差し、外径を小さくまとめたものがある。
2.4
管リードと基板の接続方法、例1
管リードと基板の接続方法、例 2
CFL の国際的な動向調査、主な統計データの抽出
白熱球を禁止する案の動き
蛍光灯の利用が進んでいる日本と異なり、豊かな生活の出
来る欧米では、このはなはだ効率の悪い白熱球でもながらく
その色合いに親しんできたがために、温暖化対策の国際的
な動きが活発化して以来、急にその非効率な利用が問題視
されはじめた。
管リードと基板の接続方法、例3
【190401】
最初に流された情報はカリフォルニアからで、今年
2007年 1 月、2012年までに全廃する案を[8]、オ
ーストラリアからは2月に[10]、議会で 2010 年まで
に白熱球を禁止にもっていこうというニュースが流さ
れた。続いてカナダや欧州の中から同様の声があ
がってきた。アルゴア氏もノーベル賞受賞のスピー
チの中で白熱球から CFL へと言及しているのは周
知の通り。世界的な温暖化対策の広がりの中では
しごく当然にそれは始まったが、それを後押しする
ものとして最近の蛍光灯の品質改善の成果がある。
三波長型や電球色の蛍光材料の進歩が不自然だ
として嫌った人たちに自然な色合いを経験させ、イ
ンバータ内臓の電球型蛍光灯の進展が蛍光灯の
大きな欠点である点灯の遅さをほぼ解決して白熱球
愛好者達を説得することができつつある。ただし、最
手作業の高密度実装の例
近インターナショナルヘラルドトリビューン紙が問い
かけた CFL のだめ押しへの質問に対する米国の読
者の声からは[9]、市場の品質がいまだにかなり悪い
ものがあることが伺え、また、割ったときの水銀の健康への害を極度に恐れる声もあり、こうした声が
出ている以上、強制的な置き換えへの動きには慎重さを必要とするだろう。日本国内では、国内メー
カーの電球型蛍光灯の品質は安定しており、そのレベルは高く、品質がために CFL に反対する声
はあまり大きな問題としては出そうにない。日本ではむしろ残された課題として点灯後の立ち上がり
の微妙な推移への対応や、点滅回数の問題、更には調光機能や夜間の自動点灯機能など、一層
の品質改善により、快適さや省エネの性能アップを期待され、それはメーカーの新たな市場競争上
の課題ともなろう。[7][11][18]
無論、壊した時のための安全策と、産業廃棄の際の安全な対応は並行して十分に検討されていくこ
とを想定する。
【190401】
2.5 新しくエコデザインした CFL をつくる
リユースを前提としたデザインは、第一に部分の切り分けが明解で分離と結合が容易であることだ。
それはまたエンドユーザ(消費者)が家庭やオフィスで簡単に交換したり、組合せを変えたり自由に
出来ることにつながる。
現在市場に出回っている CFL は、切り分けはエジソン以来世界中で使われているスクリューキャッ
プ型ソケットと、円筒型プラスチックケースに納められたインバータ回路基板部分、それから同ケース
に接着剤で固定されたU字型ないし螺旋型にまとめられたガラスチューブの蛍光管に分けられる。
これら3つに分けられる部分の寿命はおおまかに数10年、10年、数年とかなり異なるから、これら
を2つの切り口で簡単に分離し、結合できるようにすれば良い。全自動の処理システムでは、マシンリ
ーダブルのマークや分解のための情報が入口で用意され、手作業を含むサイトでは目視で識別で
きる印と、簡単な工具で分解できる設計であること。エンドユーザ自身が簡単に交換できるようにする
ためには、特別な説明なしに着脱ができ、判り易くかつ確実なこと、その際に安全な絶縁対策がある
こと、仕様が異なる場合の組合せに自動識別ができることなどが必要である。無論交換や組合せの
際に互換性が確保されており、そのための仕様が標準となっていることが必要である。またリユース
処理の場のためにはケースの分解や復元の方法も標準化されていること、部品の仕様と取り扱いの
ための情報が整っていることが必要であり、それらは国際標準となっていることもほとんど必要となろ
う。
Fig.4 A reusable CFL design
第一のインタフェース(*1)は旧来のエジソン型ソケットまたは次世代のソケットとインバータ回路
基板とをつなぐためのもので、現在はリード線の半田付である。今後よりスマートなソケット仕様がつく
られることも想定した、エジソンタイプにも互換な接続仕様を決めて、誰でも簡単に交換できるように
するもの。
第二のインタフェース(*2)は回路基板と放電管をつなぐためのもので、現在はリード線の半田付
のほかにバネで接触させるもの、穴にリード線を押込むものなどがある。省資源かつ簡単で確実な方
法を決めて標準仕様とし、誰にも差し替え可能なものとする。この際、インバータ能力と放電管の容
量の整合のための識別機能を用意する。この詳細は今後の放電管の進歩に応じて追加できることを
考慮しておく必要がある。
【190401】
第三のインタフェース(*3)は外部から制御できるようにするためのもので、すでに想定されている
ニーズとして、光センサにより昼夜に応じて自動点消灯する機能や、人体を検出してする機能、明る
さを適宜絞る調光機能などがある。これらの機能を内蔵する方法は簡便さが期待されるが、外部へ
置く方法は省資源と自由度に利点がある。
この他に、特に電解コンデンサの寿命はトランスの効率がリユースの障害となる場合には、これら
部品だけを交換できるようにすることも有効である。
このような標準のインターフェースの詳細は本研究以降の課題となるが、その目的は要するにかか
る機能と寿命が異なる部分を明快に切り分け、産業界でも各家庭でも誰もが扱えるようにし、より安価
で省エネであり、快適な生活の出来る CFL をつくり、上手に利用できるようにしていくことである。
すでに市場ではメーカーそれぞれに独自の工夫をこらし、付加機能をこの小さなスペースへ実装す
る試みが始まっている。
調光機能や光センサを内蔵した例
【190401】
様々な内部接続の方法が試みられている。
【190401】
(3)研究開発成果の社会的含意、特記事項など
人々の参加で効果を上げる温暖化対策、循環型社会の一員意識
温暖化対策に多くの人々が参加し、その効果を実現していくとともに、その意味と効果を共有す
る心が伝わること。一般ユーザも家庭内の照明環境の工夫で参加できるし、手作業を含めて、リ
ユースチェーンに参加する人々も同じ心を通わせることができること。
CFL のリユースがもたらす資源の有効活用のひろがり
CFLのリユースを手始めとしたボーダーレスサプライチェーンの広がりを通じて、他の家電品や
電子機器、更には自動車などについても資源の有効活用を促すことに通じる。
CFL のリユースで技術に慣れ親しむこと
CFL の組合せや交換を通じて、各家庭内でより快適な利用環境が日常の工夫によりつくれるこ
とを、産業技術面はもとより、社会心理の面からも波及効果として期待できること。特に昨今のパ
ソコンに代表される技術のかたまりのブラックボックス化の問題への答えとして期待されることとし
て、メーカー側と利用者側に知識の乖離を埋め、使い難さを軽減し、機能の無駄や無駄な廃棄
などを低減させることが期待される。つまり、人々が個々人の好みと工夫によりモノの廃棄を減ら
し、快適な住環境をつくり、もって循環型社会への歩みを実感しつつ進めることができる。
(4)研究成果の今後期待される効果
温暖化対策の推進
安価なリユース商品が普及することにより、白熱電球から効率の良い CFL への置き換えが世界
に広く促進され、それだけ電力消費を抑えることができ、炭酸ガス排出量も低減させることができ
る。
CO2 排出量低減の計算は種々あるが、簡単な理解のために 2006 年のデータで仮に将来は全
人口約 66 憶の一人ずつに 100W の白熱球の利用を想定すれば、一日 8 時間の利用としてそ
の電力総量は年に約 1.9 兆 kWh、全電力約 16 兆 kWh の 12%ほどにもなるが、20W の CFL な
らば 2%強で済み、リユースによって促進されるであろう白熱球から CFL への置換えは約 8 億ト
ンの CO2 削減になり、全排出量230億トンの約4%の削減になる。
産業廃棄物の低減
インバータ回路部分のリユースにより、電子回路の産業廃棄物を減らし、環境負荷を軽減するこ
とができる。簡単のために約 20gの回路部分を管の寿命から 2 年ごとに 66 億個廃棄すると、年
間の廃棄量は約 66 キロトンとなるが、これをリユースで 10 年間使えば 1/5 の約 13 キロトンに軽
減される。
再利用処理チェーンの稼働
手作業ベースの比較的簡便な工場も含めた再利用のための産業チェーンを稼働させることが
でき、ボーダーレスサプライの連携を進めやすくなる。
家庭内の照明改善
家庭内でも寿命の管の交換や好みの組合せなどが簡単にでき、省エネでかつ快適な照明環境
をつくることができる。
類似研究の国内外の動向
CFL を白熱球と比較した調査例はたくさん見かけるが、CFL の次の姿を描いた例はまだ見られ
ない。
【190401】
この研究内容の成果は研究終了の本年 11 月のすぐ翌月に、おそらく世界初の提案として
EcoDesign2007 にて発表の予定。
成果の今後の展開見込
技術と普及に一歩抜きん出た日本国内メーカーを中心におき、日本のユーザーをモデルの対
象として新しい仕様の国際標準化を進め、応用製品の開発に着手し、欧米企業をリードしつつ、
中国をはじめとする諸地域との連携でボーダーレスサプライチェーンを形成していく。[1]
科学技術や社会への考えられる波及効果
エネルギーの有効利用に必要な電子制御回路装置を[2]、産業に携わる多くの人々が手にして
理解を深め、一人一人が省エネ意識を持って技術に支えられていく循環型社会を上手に生き
ていくようにできること。
文献
[1] H.Hayashi,“Incubating Industry using recycling and remanufacturing scheme”, JST-study, 7
Oct.2005
― 本研究 「ボーダーレスサプライチェーン構想」 の骨子を紹介
[2] 林秀臣、「特講」住みよい世界を作るための電子機器実装技術の課題、IEICE,CQ2007-53
― 廃棄を減らし、リサイクルを進めて豊かなくらしを問いかけた
[3] Kitamura,M, A CFL goes through the BorderLess Supply Chain, JST-study internal document,
Jul.2007 ― 本研究の英語版を要約したもの
[4] 喜多村政贊、電球型蛍光灯、(JST-study report 研究の設計リサイクル G、内部資料)11.2006
― 本研究計画の日本語サマリ-
[5] Dow,K. Downing,T.E., The Atlas of Climate Change. Univ. of California Press, 2006
― 温暖化の仕組みと影響について広く集めたデータを絵本にしたもの
[6] 世界の電気、日本の電気、電気事業連合会広報、EnergyNote,Vol.8, Feb.2006
― 照明用など用途別に世界の需要をまとめたもの
[7]Takano,S and Obata,E, An Evaluation of the Commercial Energy System on Industry
Association Table - many sectors of the economy and the growth rate of GDP ,
Univ.Muroran-Tech,vOL55,2005― 京都プロトコル計画達成に産業界個別の努力と共にその連携が必要と分析する、
[8] Woodall、B., California May Ban Conventional Lightbulbs by 2012、SGW-org, 31 January
2007
― カリフォルニアが世界で一番乗りの姿勢を示そうとしたニュース、 その後の議論では省エ
ネよりも水銀を恐れる声があった。
[9] Kanter,J Do low light energy bulbs work?, Biz of Green, International Herald Tribune
3,Oct,2007
― 温暖化対策に庶民は CFL で良いかのだめ押しを問いかけた、読者の声には CFL の故障の不
満あり
[10] Turnbull to pull plug on light bulbs, ABC news online 20,Feb.2007
ー オーストラリアで白熱球禁止の案のニュース、他に先駆けた議会のマニフェスト案を伝えた
[11] 諸富芳徳ほか、家庭の照明による電力消費について(京大)、日本 LCA 学会要旨集、12.2005
― ランプ効率の向上や住宅床面積の増加などに対して、照明用電力消費は見積以上の増加とな
っていることを紹介
[12] Kitamura,M Copyright Infomation Rev 4.0 ,DAVIC 1.4 Specification,March 1998
― 権利の主張にはその内容を配信コンテンツに添付することをおそらく世界初に標準案とした
もの
[13] 喜多村政贊、著作権処理システムの研究、IPA 公募研究、98.10.22
― 消尽しない権利の継承が Value Chain 上で安全かつ円滑に行われる仕組みを示したもの
[14] 田村 健 新時代を築く電子タグシステム
(伊藤忠商事 RFID 導入資料) Oct. 2004
-ミューチップ導入のための説明資料
[15] 金子武弘 最近の家電品包装、電機 2005-9 社、日本電機工業会
― 電子機器の保存と寿命について解説
【190401】
[16]
-
[17]
―
三洋半導体(株) 信頼性ハンドブック (2007onWeb)
部品の寿命に関し、アレニウスの法則を解説
日本工業標準調査会、ISO の組織、COPOLCO,DEVCO
国際標準化のすすめと手続きの説明
[18] 小沢孝ほか、ネットワークサービス品質の構成概念に関する一考察、EIC 大会 2007、B-11-20
- 基本機能の需要を満たすだけでは進まない消費者の姿を紹介
[19] よくわかる WEEE&RoHS 指令、日本電子(株)応用研究センター、日刊工業 2004
― EU の両指令について具体例をあげて解説している
[20] 日本鉱業協会、非鉄金属製錬の有する現状リサイクル技術情報整理及び循環型社会の更なる
構築に向けた活用策等の検討 (2004.3)
- 電子回路基板のレアメタル資源回収など解説あり
【190401】
4.5 “ 接合・分離要素技術研究グループ ”
4.5(1)研究開発目標
逆流通システムの実現にとっての重要な役割の一つが分離・解体技術の容易性
である。本研究では、1)解体性接合技術開発の特許に見られる動向調査と2)
新しい接合部分離技術の開発を行った。
4.5(2)研究実施内容及び成果
4.5(2).1 易解体性接合技術開発の特許にみられる動向調査
(園田悠太、細田奈麻絵、赤池洋剛、今井八郎、須賀唯知、林秀臣、“易解体性接合
技術開発の特許に見られる動向調査”, EcoDesign 2006 Asia Pacific Symposium
Proceedings, (2006), 327-330)
4.5 (2).1.1 はじめに
近年、大量に生産した製品を大量に消費し、大量に廃棄することによるいわゆる消費
型社会によって、資源の枯渇化、廃棄場所の不足はもとより、自然環境の汚染・破壊は、
いまや地球規模の社会問題となっている。このため、天然資源の消費をできるだけ抑制
するとともに、生産から流通、消費、廃棄に至るまで、物質の効率的な利用やリサイク
ルを進め、環境への負担をできる限り低減する循環型社会を構築していくことが今後の
大きな課題となる 1)。しかしながら、その課題への弊害となるのが特に、近年の接着技
術の発達である。1978~1998 年での接着に関する特許出願件数は特に多く、軽量化、
省力化、利便性、特に耐久性など、社会のニーズに対応して種々の接着手法・機構が開
発されてきた 2)。こうした中で、今後、必要不可欠なキーテクノロジーとなり得るのが、
易解体・分離技術である 3)。この技術の発達による資源回収の促進、簡便化が望まれる。
ボーダーレスサプライチェーンでの逆流通システムの研究の一環で、易解体・分離技
術に関する公開特許からその開発の動向を調査したところ、その手法として 1)機械的締
結の解除、2)加熱による解体・分離、3)特定の環境下での分離、といった大きく3つに
分けることができた。さらに視点を変え、接合体にとって最も重要である接合界面での
現象の特徴から解体・分離技術を調査した。
4.5(2).1.2 調査条件
4.5(2).1.2.1 調査対象資料または方法
公開特許広報フロントページ(http://www1.ipdl.ncipi.go.jp/FP1/cgi-bin/FP1INIT?110
2083417070)、
PATOLIS-J、PATORIS サーチガイド(http://www.patolis.co.jp)、特許電子図書館(IPDL)
(http:/www.ipdl.ncipi.go.jp/homepg.ipdl)
4.5(2).1.2.2 調査対象期間
1985 年 1 月~2005 年 12 月
4.5(2).1.2.3 検索式
(分離+解体+分解+剥離+はく離+はくり+剥し+剥がし+はがし+はがす+剥がす+剥す
+破壊)*(リサイクル+再利用+再使用+循環+リユース+再資源+資源回収+資源の回収
+リデュース)*(接合+締結+接着+係合)
【190401】
調査目的に応じて、(接合+締結+接着+係合)の部分は省き、検索範囲を広めるなど、
上記以外の方法で調査しなければならないこともある。
4.5(2).1.3 解体・分離手法から見る動向
4.5(2).1.3.1 機械的締結の解除
接合手法は、1)機械的締結、2)冶金的接合、3)接着剤による接着・粘着の3つに大
きく分けられるが3)、ここでは 1)機械的締結にあてはまるねじやスナップフィットな
どの解体・分離手法について述べる。スナップフィットやクリップなどの締結手法は
比較的以前から使用されているものだが、近年の締結手法では分解効率の向上を図っ
たものが増えている。具体的には、締結をより容易に解除するための開口部を設け、
機械的締結のある箇所を分かりやすくし、分解作業効率の向上に寄与している。また、
これによって分離の際の締結機構の破損も減少し、再利用が容易になるほか、破損に
よる破片が他の材料に混入し、材料の分別の妨げになることもない4)。
さらに、この機械的締結を電子実装基板へ応用した特許も複数ある。回路基板上の
回路と回路部品との電気的接続は、冶金的接合であるはんだ付けによるものが一般だ
が、この場合、機能検査によって仮に電子基板に不良があった際、取り外しには多く
の手数が必要となるため、回路部品を回路基板上に実装したまま、それらを一体して
処分しなければならなかった。しかしそれを図1 のように機械的締結箇所を設けるこ
とによって、回路基板と回路部品とを簡単に分離して、効率的な分離、再利用を可能
にしている5)。
回路基板2
リード端子
クリップ
回路基板1
図1 機械的締結構造箇所を備えた回路基板5)
4.5(2).1.3.2 加熱による解体・分離
易解体・分離に関する特許の分離手法の中でも最も多く用いられるものである。前
述の機械的締結の解除では、作業者が手または工具によって解体するという動作が必
要となり、専用の工具でも使用しない限り複数の接続部を同時に解除することもでき
ない。よって接続の解除に時間と手間を要し、製品の分解、リサイクル、リユースを
困難にするという問題点がある6)。このことから加熱によって解体・分離を実現する特
許の多くは、解体・回収の自動化を目的としている点で共通している。
【190401】
室温
加熱後
形状回復による
ねじ山の消失
脱落・分解
図2 形状記憶材料を用いた締結体の一例7)
その中でも、形状記憶材料(合金やポリマーなど)に関するものが多い。その一例を
図2 に示す。このような、締結力に温度依存性を持たせた締結体に関しては、基本的
な提案こそなされてはいるものの、未だに実用化は多くはない。これは、合金であれ
ポリマーであれ、従来試作が行われてきた材料では、その形状回復特性が小さかった
り、加工が難しかったためである。したがって十分な成形性と形状回復性とを有する
材料を見出すことが実用化に向けての第一歩となり、最終的にはコスト評価も必要と
なる。この材料選択に関して合金とポリマーを比較した場合、形状記憶特性はポリマ
ーの方が圧倒的に大きい。合金ではその特性値は通常 10%に満たないが、ポリマー
では 100%を超えるものも存在する7)。
次いで多いものは、熱可塑性樹脂による接着層を設け、解体する手法である。ノー
トパソコン、電子手帳、電話機等の携帯用機器においては、軽量化、美観性、絶縁性
等の点から樹脂が使用されている。しかし、樹脂成形品は強度及び剛性が不足すると
いう点から金属ダイキャスト品も使用される。こうした金属と樹脂との接着が必要な
環境にて、接着材に熱可塑性樹脂を含有し、その熱変形温度以上に加熱することで分
離を可能とするものである8)。また、接着層に発泡性物質を介在させ、加熱による発泡
体の発泡で接着力を低下させるものもある9)。さらに、熱可塑性樹脂に関しては、実装
基板へ応用し、自己崩壊機能回路基板が提案されている特許も多くある。その例を図
3 に示す。触媒の役割を担う崩壊材を含んだ熱可塑性樹脂の基板を加熱することによ
り、ボロボロの状態に分解される10)。電子実装関連ではこの他、はんだ接合部の Sn
の低温変態による脆化を利用して、加熱するのではなく、逆に冷却することによって、
実装部品が熱によりダメージを受けることなく、分離を可能とする11)といった特許も報
告されている。特に、鉛フリーはんだの多くは、融解温度が従来の共晶はんだと比較
して 10~30℃ほど高いため、冷却による分解は加熱と比較しても効率の良い手法と
なり得る。
【190401】
①
②
③
④
①、③、⑤:崩壊材を含む
熱可塑性樹脂基板
⑤
⑥
②、④:電気導体回路
⑥:半導電性または導電性
基板
図3 自己崩壊機能回路基板10)
他には、接合部材に加熱助剤を加え、電磁波などを用いて接合部を局部的に加熱し
解体を可能とする手法12),13)、線膨張係数の異なる材料を用いたスナップフィット結合
構造14)、金属接合部を高温保持することで接合界面に生じる、脆弱な金属間化合物層に
よる分離15)などが存在する。
4.5(2).1.3.2 特定の環境下での分離
通常使用される環境ではなく、ある特定の環境によってのみ解体を実現させる手法
である。例えば、水素吸蔵合金の水素環境下での脆化作用を利用して、水素吸蔵合金
を中間材とした接合構造物16)、水素吸蔵合金を含んだねじ17)などが特許として存在す
る。製品全体を加熱することによる分離が困難な場合や、エネルギーの浪費を避ける
ため、水中に浸漬して一定以上の時間で分離を可能とするテープ18)も開発されている。
また、ポリスチレン系樹脂からなるナットとねじを用いてねじ止めし、分解時にテル
ペン系溶剤を接触させることで簡単に分離を実現する手法もある。さらに分解時に使
用したテルペン系溶剤は、蒸留により回収し再使用可能である19)。この他、機械的締
結機構の一部に生分解性素材を使用し、使用後、生分解性環境に放置することで分解
するもの20)、また同じ手法で、先に述べた熱可塑性樹脂による実装基板の、生分解性
樹脂を接着剤とするパターン21)も存在する。
4.5(2).1.4. 接合界面から見る分離手法
易解体・分離技術について、重要となってくるのは、接合部の構造、接合界面の状
態から見ることであり、接合界面の制御はすなわち接合強度を操作することに繋がり、
この視点から解体・分離技術を創成することが効率的で画期的なリサイクル技術を生
むと考えられる。ここまでは、実際に解体・分離を実現するための作用について述べ
てきたが、ここからは先ほど挙げた特許例も含め、接合部の構造、界面の状態を基準
として述べていきたい。
【190401】
まずはじめに、接合強度を弱める操作を大きく分類すると、1)結合状態操作、欠陥
発生型、2)界面の内部応力誘起型、3)その他、負荷する力の方向転換・インターロッ
ク解除によるものがある3)。接合手法による分類で、ねじやスナップフィットなどの機
械的締結によるものは、ここでは 3)にあてはまる。また、形状記憶合金も 3)のインタ
ーロック解除に含まれる。
1)の結合状態操作、欠陥発生型については、主にここまで挙げてきた特許から見る
と、加熱によるはんだ接合部の溶融、はんだの Sn による低温変態による脆化現象11)
はそれである。また、熱可塑性樹脂などを含んでいる接着層は、加熱など何かしらの
環境により溶融し、結合状態を緩めるという現象を起こしているといえる。生分解性
素材は、材質は主にポリマーであるが20)、これは、生分解性環境にて、高分子鎖の切
断・分解が起きている。さらに、類似した現象として前述しなかったものもいくつか
ある。一つは、基材に接着剤層を介して接着されている部品としての IC タグを、IC
タグの外表面に直接、超音波振動を印加することにより、接着剤層の接着力の低下ま
たは破壊をもたらすことによる分離手法22)、また、薄膜素子の製造過程でのレーザー
光の照射による、熱影響のない分離層での分子結合の直接の切断23),24)などもある。他
に、接着テープを用いた積層接合体を剥離する際に被着体に接着剤層が残ってしまう
問題を解決するため、第1、第2の電極間に導電性組成物層を挟む積層接合体を設け
る。そしてその電極間に電圧を印加し、陽極側の電極を、陽極酸化による金属の脆弱
または消失を利用した、接着強度の低下をもたらす分離手法25)も存在する。
2)の、界面の内部応力誘起型は、水素吸蔵物質を水素環境下におくことによる体積
の膨張、発泡性物質を介在させた接着層の加熱、マイクロ波吸収発熱層の加熱収縮26)、
薄膜素子の製造過程での分離層に、窒化シリコンまたは水素吸蔵合金を用いた際のレ
ーザー光による窒素または水素の放出があてはまる。これらの現象は共通して、接合
体内部での体積膨張または収縮による内部応力誘起によって、接合強度を低下させて
いる。さらに、溶接部に脆弱な金属化合物を生成させる現象もこれにあてはまる。
2)にあてはまるもので前述しなかったものとして、低融点金属を用いて、常温また
は低い加熱温度で、はんだなど冶金的な接合部を容易に解体・分離できる手法27)があ
る。冶金的な接合は、接合強度として比較的強固な接合となり得る。しかし加熱を伴
う接合により、時として接合部以外の部分が脆化してしまう現象も起こる。そうした
現象をうまく利用したのが、前述した、接合部に脆弱な金属間化合物を生成させる手
法である。こうした接合界面で生じる現象をうまく利用することによって、図4 のよ
うに接合界面の制御から、接合体の理想的な界面での分離を可能とし、資源回収の簡
便化、再利用化が促進されるような画期的な解体・分離手法となり得る。
低融点金属を用いた接合界面分離もその一つで、低融点金属として、融点が 30℃に
満たない Ga を用い、Al や Sn などの結晶粒界へ浸透し、脆化を引き起こす液体金属
脆化現象を利用して、常温に近い温度での分離を可能とする。この分離手法は、今ま
で挙げてきた分離手法と比較しても、加熱など必要とするエネルギー量も少なく、さ
らに特別な設備も要らない。
4.5(2).1.5 おわりに
今日まで、接合技術は特に耐久性において、その必要性に応えるべく発展を遂げて
きた。しかし、現在ではリサイクルを基本とした循環型社会への転換の必要性が高ま
っており、これまでは接合強度のみに視点を置いていた技術が多かった中で、接合時
の強度だけではなく使用後の易解体・分離性まで必要とされ、相反する要求が存在す
る。そのため今後、そうした要求に応えることのできる接合技術の開発がさらに必要
【190401】
となるであろう。
5. 参考文献
1) 工業所有権総合情報館:
“平成 15 年度 特許流通支援チャート 易解体固定技術”, p.
ⅰ, 2004
2) 特許庁:“特許マップシリーズ 一般 21 接着”, 発明協会, pp.ⅰ-ⅵ, 2001
3) 細田奈麻絵:
“分離を設計した接合技術”, エレクトロニクス実装学会誌, Vol.8,No.5,
pp.416-419, 2005
4) 住友電装:“クリップ”, 特開平 11-266518
5) 太陽誘電:“回路部品の実装方法”, 特開平 6-164136
6) 日本電気:
“電子装置の筐体と実装部品との接続解除方法および接続構造ならびに電子装
置, 特開 2001-15956
7) 三菱重工業:
“形状記憶ポリマーの塑性加工方法および締結体”, 特開 2003-145564
8) 富士通:“モールド成形品及びその分離方法”, 特開平 8-72091
9) 凸版印刷:
“積層体およびその分離方法”,特開平5-269906
10) 日立製作所:
“自己崩壊機能回路基板”, 特開平7-307536
11) シャープ:“高純度 Sn 粒子を含有する接合材料、ならびに実装回路基板、実装パ
ッケージおよびそれらの解体方法”, 特開 2003-225790
12) 日本電気:“接合部材および接合体の解体方法”, 特開平 9-39098
13) アオイ電子:
“電子部品、プリント配線板、及びプリント配線板に電子部品を着脱する方
法”, 特開 2001-44616
14) 三菱電機:“スナップフィット結合構造及びその製造方法”, 特開 2001-263320
15) N.Hosoda and T.Suga:”Reversible Interconnection by Control of Interface Reactions”,
EcoDesign ’99:First International Symposium on Environmentally Conscious Design and
Inverse Manufacturing, pp.1012-1015, 1999
16) 東京大学:“分離可能な接合構造物及びその分離方法”, 特開平 10-261866
17) 日東精工:“ねじおよび製品の解体方法”, 特開 2001-241421
18) 日立化成ポリマー:“水はく離性両面テープ”, 特開 2001-226649
19) 石亭米国:“部品の接合方法および分解方法”, 特開平 7-299872
20) ソニー:“掛止機構及び組立体”, 特開 2001-12435
21) 富士ゼロックス:
“多層プリント配線基板および多層プリント配線基板製造方法”,
特開 2001-352176
22) 積水化学工業:
“部品剥離方法”, 特開 2005-281533
23) セイコーエプソン:“薄膜素子の転写方法、薄膜素子、薄膜集積回路装置、アクテ
ィブマトリクス基板および液晶表示装置”, 特開平 10-125931
24) リコー:
“薄膜デバイス装置の製造方法及び薄膜デバイス装置”,特開 2005-183616
25) 積水化学工業:“剥離方法及び剥離性接合体”, 特開 2000-319599
26) 凸版印刷:“積層体およびその分離方法”,特開平 5-138799
27) N.Hosoda, K.Halada and T.Suga:”Smart disassembly”,2004 IEEE International Symposiu
m on Electronics and the Environment & the IAER Electronics Recycling Summit, pp.66-67,
2004
4.5(3) 新しい接合部分離技術の開発
【190401】
4.5(3).1 液体 Ga によるはんだ接合部の常温分離
(園田悠太、細田奈麻絵、今井八郎、須賀唯知、“液体 Ga によるはんだ接合部の常温
分離
“、MES2007 第 17 回マイクロエレクトロニクスシンポジウム論文集、(2007),63-66)
4.5(3).1.1 はじめに
近年、大量に生産した製品を大量に消費し、大量に廃棄することによるいわゆる消
費型社会によって、資源の枯渇化、廃棄場所の不足はもとより、自然環境の汚染・破
壊は、いまや地球規模の社会問題となっている。このため、天然資源の消費をできる
だけ抑制するとともに、物質の効率的な利用やリサイクルを進め、環境への負荷を低
減する循環型社会を構築していくことが今後の大きな課題となる。さらに近年は、特
に耐久性などにおいて接着・接合技術も発達してきていることから、接合界面で無駄
なく素材ごとに回収するには困難な場合も多い。よって、今後の循環型社会へのキー
テクノロジーとなり得るのが易解体・分離技術である。
IT の普及とその利用サイクルの短さから、エレクトロニクス製品は今後大量に廃棄
されるものと思われる。それらを容易に再利用・再資源化するため、電子基板から基
板上の部品を液体 Ga により接合界面で分離可能とする手法を提案する。本研究では、
はんだの主成分である Sn の薄膜への Ga 拡散機構の解明を行う。さらに、電子基板上
のはんだ接合部を取り外すことを念頭に、はんだ付けされた銅の丸棒を対象に実験を
行った。試料温度・はんだ接合部の面積に対する Ga の塗布量などを制御して、はん
だ接合部の強度変化を引張試験にて測定し、Ga 塗布による分離条件を調べることを目
的とする。
4.5(3).1.2 液体金属脆化および Ga について
液体金属脆化(LME:liquid metal embrittlement)は、通常延性のある金属が、液
体金属と接触することによって延性の減少を引き起こすものである 3)。液体金属脆化を
引き起こす固体金属と液体金属の組み合わせは、Al-Ga、Ni-Bi、Cu-Bi など、これま
でにいくつかの報告があるが、液体金属の浸透過程の詳細のメカニズムに関しては未
だ理解に乏しく、提案されてきた理論的な模範や、実験結果の間での意見の相違がし
ばしば見られる 4)。
しかし、その中でも Al-Ga は、アルミニウム多結晶体への液体 Ga の著しく速く、
破壊的な現象として多くの注目をあびている 4)。脆化を引き起こす過程を図 1 に示す。
液体 Ga が Al 結晶体の結晶粒界へ浸透し、裂け目を形成することで、脆化を引き起こ
す 5)。この現象を利用することによって、異種材料の接合体を、特別な設備、エネル
ギーを必要とすることなく、図 2 のような理想的界面での分離を可能とし、資源回収
の簡便化、再利用化が促進されると考えられる。
【190401】
加熱による接合部以外の脆化
リサイクル困難
理想的界面での分離
リサイクルの簡便化
図1 結晶粒界へのGa浸透
図2 接合界面の制御による分離
また同じく液体金属で毒性を持つ Hg に対し、Ga は生物学的役割はなく、本来ほと
んど毒性をもたないので、健康上の危険はまずない。また、Ga は地球化学的に濃集し
ている鉱物が存在しないので、きわめて広範囲に拡散して存在している。動物や植物
に対しても環境上の脅威とはなり得ない 6)。
4.5(3).1.3 実験方法
4.5(3).1.3.1Sn 薄膜への Ga 拡散・浸透
ここでは、はんだの主成分である Sn の薄膜を、膜厚、結晶粒径、膜幅の異なる条
件で作成し、作成した各薄膜に同量の Ga を接触させることによる拡散速度の比較お
よびその拡散の様子を観察することにより、Sn 薄膜への Ga 拡散のメカニズムついて
考察することとする。スパッタ装置を用いて 0.5mm、0.8mm、1mm 幅の Sn 薄膜を、結
晶粒の大きさ、膜厚の異なった条件で作成する。各条件を表 1 に、それぞれの SEM 写
真を図 3 に示す。成膜後、薄膜の一端に Ga を接触させ、拡散速度を測定する。
表 1 各 Sn 薄膜の膜厚と結晶粒径
成膜時間
(a)5 分
(b)10 分
(c)20 分
平均膜厚(μm)
2.52
5.32
10.68
平均結晶粒径(μm)
2.15
7.81
14.33
図3 各Sn薄膜のSEM写真
4.5(3).1.3.2 引張試験
直径 4mm と 2mm の銅(99.999%)の丸棒(40mm)それぞれ 2 つを Sn-3.0wt%Ag-0.5wt%Cu
の鉛フリーはんだにて接合したものを試料として準備した。そのはんだ接合部に Ga
を 5mg もしくは 10mg 塗布し、Ga 塗布後の放置時間も 10 分から 90 分まで変化させ、
【190401】
引張試験により測定した。さらに温度環境を制御し、試料温度は 35℃と 50℃で行っ
た。
4.5(3).1.3.2Ga を用いた塗布・分離
実際に不要となった電子基板を用い、24℃の室内で基板上のチップのはんだ接合部
に Ga を塗布し、30 分後に分離を試みた。
4.5(3).1.3.2.1 実験結果および考察
4.5(3).1.3.2.2Sn 薄膜への Ga 拡散・浸透
Sn 薄膜上の Ga 拡散の結果は、結晶粒が小さく、かつ膜幅が広いほど拡散・浸透速
度は速いという結果となった。図 3(b)の試料への Ga 拡散・浸透の様子を光学顕微鏡
で観察したところ、Ga は Sn 薄膜の結晶粒界から浸透し、全体へ浸透していく様子が
確認できた。また、初期条件の影響を考慮し、測定開始後 20 分以降の拡散速度の中
央値と結晶粒径との関係を図 4 に示す。ほぼ滑らかな直線関係が得られ、拡散速度は
結晶粒径に大きく依存することが分かった。よって、結晶粒の小さい、すなわち結晶
粒界の多いもので、かつ膜幅の広いものの方が、浸透路が多く存在し、速く拡散・浸
透していくと考えられる。また、Ga が薄膜のもう一端へ拡散し終えた後、ピンセット
で Ga が拡散した Sn 薄膜に触れたところ、完全に溶融していることが分かった。
拡散速度(μm/s)
1
1mm
0.8 mm
0.5 mm
10-10.1
-2
100.01
0
2
4
6
8
10
結 晶 粒 径 (μ m)
12
14
16
図4 各膜幅における拡散速度と結晶粒径の関係
4.5(3).1.3.3 引張試験
試料形状でグラフを分け、直径 4mm の試料における結果を図 5 に、直径 2mm の試料
における結果を図 6 に示す。Ga を塗布していない場合の引張強さは、試料温度に関わ
らず直径 4mm の試料では 123MPa、直径 2mm の試料では 89MPa であった。
160
50℃、Ga10mg
50℃、Ga5mg
35℃、Ga10mg
35℃、Ga5mg
Gaなし
140
応力(MPa)
120
100
80
60
40
20
0
0
1200
2400
3600
4800
6000
放置時間(s)
図5 直径4mmの試料における各条件での引張強さ
【190401】
160
50℃、Ga10mg
50℃、Ga5mg
35℃、Ga10mg
35℃、Ga5mg
Gaなし
140
120
応力(MPa)
100
80
60
40
20
0
0
1200
2400
3600
4800
6000
放置時間(s)
図6 直径2mmの試料における各条件での引張強さ
上のグラフから直径 4mm の試料と直径 2mm の試料の結果を比較すると、どちらの試
料とも試料温度が上昇したことにより引張強さが低下していることが確認できる。し
かし、試料温度が一定で Ga の塗布量が異なる場合では、直径 2mm の試料においては
その影響を大きく受けているのに対し、直径 4mm の試料に関してはその影響は小さい
ことが分かる。
実際に各条件による接合強度低下の効果を見るため、各試料形状での Ga を塗布し
ていない場合の引張強さを基準とし、他の条件を一定とした試料温度差(ΔT=15℃)に
よる強度低下率及び Ga 塗布量差(Δm=5mg)による強度低下率を、引張試験での試料ご
との Ga 塗布後の放置時間を横軸として図 7 および図 8 に示す。
80
φ4mm,Ga10mg
φ4mm,Ga5mg
φ2mm,Ga10mg
φ2mm,Ga5mg
70
強度低下率(%)
60
50
40
30
20
10
0
0
1200
2400
3600
4800
6000
放置時間(s)
図7 各試料形状・Ga塗布量でのΔT=15℃における接合強度低下率
80
φ4mm,50℃
φ4mm,35℃
φ2mm,50℃
φ2mm,35℃
70
強度低下率(%)
60
50
40
30
20
10
0
0
1200
2400
3600
4800
6000
放置時間(s)
図8 各試料形状・試料温度でのΔm=Ga5mgにおける接合強度低下率
図 7 に示したΔT=15℃における接合強度低下率は、どの条件の試料も、塗布後の放
置時間 60 分以下で 10%以上の接合強度低下の効果が見られる。さらに、試料直径 2mm
で Ga を 10mg 塗布し 30 分放置後引張試験を行った場合以外では、直径 4mm の試料形状
の方が試料温度が上昇したことによる影響を受けやすいことが分かる。図 8 のΔ
m=Ga5mg における接合強度低下率では、試料断面積による差が顕著に表れる。直径 4mm
の試料では、Ga 塗布量による接合強度低下の効果はほとんど得られなかった。直径 2mm
の試料に関しては、試料温度 35℃で 30 分放置後引張試験を行った場合以外では、全て
が 30%付近でまとまっている。この結果から、本実験条件の範囲においては、直径が
【190401】
大きい場合は温度の影響が高く、直径が小さい場合は Ga 塗布量の影響を高く受けるこ
とが分かった。また、ΔT=15℃およびΔm=Ga5mg における接合強度低下は、どちらも
Ga を塗布後 30 分放置し引張試験行った結果において大きな効果を得ている。
4.5(3).1.3.4Ga を用いた塗布・分離
ステンレス棒で接合部に Ga を塗布後、30 分放置し、分離を試みたところ、部品と
基板の接合界面での分離が可能なことが確認できた。Ga を用いて、電子基板上の部品
をその接合部で分離することに関する適性としては良好である。
(a) 塗布
(b) 分離
図9 電子基板上のはんだ接合部へのGa塗布・分離
4.5(3).1.3.5 まとめ
本研究は、Ga を用いてはんだ接合部をその接合界面で分離するという実用性につい
て検証するため、はんだの主成分である Sn の Ga 拡散現象を解明した。さらに、鉛フ
リーはんだで接合した銅棒を試料とし、その接合面積・試料温度・Ga 塗布量・Ga 塗
布後の放置時間の各条件を変化させた接合強度を引張試験により測定し、Ga を用いた
分離に関する情報を数値化し、各条件における効果の比較を行った。得られた結果は
以下のようにまとめられる。
(1) Ga は Sn 薄膜の結晶粒界から先行して浸透し、全体へ拡散していくという拡散・浸
透機構である。また、Sn は Ga の拡散によって完全に溶融する。
(2) Ga の Sn 薄膜への拡散速度は結晶粒径に大きく依存し、結晶粒径が小さいほど Ga
浸透路は増え、拡散速度は増す。また、膜幅が広くなることによる Ga 浸透路の増
加によっても拡散速度は増す。
(3) Sn-3.0wt%Ag-0.5wt%Cu の鉛フリーはんだで接合した銅棒を試料とした引張試験に
おいて、Ga 塗布による接合強度の変化は、直径が大きい場合は温度の影響が高く、
直径が小さい場合は Ga 塗布量の影響を高く受ける。
(4) 使用済の電子基板上のはんだ接合部へ 24℃の室温で Ga 塗布し 30 分後にその接合
界面での分離を確認した。
文
献
1) N.Hosoda, K.Halada and T.Suga, “smart disassembly”, Proceedings of the 2004
IEEE International Symposium on ELECTRONICS & the ENVIRONMENT, May 2004,
pp166-167.
2) N.Hosoda and T.Suga, “A Novel Approach to Disassembly of Joined Interface”,
【190401】
3)
4)
5)
6)
4th International Symposium on Environmentally Conscious Design and Inverse
Manufacturing- EcoDesign 2005 Proceedings, CD-R
K.Ina and H,Koizumi, “Penetration of liquid metals into solid metals and
liquid metal embrittlement”, Materials Science and Engineering A 387-389
(2004),pp390
W.Ludwig,E.Pereiro-Lopez and D.Bellet, “In situ investigation of liquid Ga
penetration in Al bicrystal grain boundaries:grain wetting or liquid metal
embrittlement?”, Acta Materialia 53(2005), pp151-152
W.Ludwig,E.Pereiro-Lopez and D.Bellet, “Discontinuous penetration of liquid Ga
into grain boundaries of Al polycrystals”, Acta Materialia 52(2004), pp.331
山崎昶:元素の百科事典,丸善,2003, pp121-123
【190401】
5。研究実施体制
(1)体制
総括・サプライチェーン研究グループ(1)
NPOエコデザイン推進機構
フランホーファーIZM (ドイツ)
富士通(株)
電子工程設計院(中国)
家用電器研究院(中国)
大連工業大学(中国)
河北工業大学(中国)
嘉興学院(中国)
逆流通システム、ビジネスモデル、法制度を担当
モデル化研究グループ
研究代表者
林 秀臣
大阪大学大学院工学系研究科
梅田研究室
統合ライフサイクル設計支援環境の構築
モジュール化設計方法論
アジア循環シミュレーションを担当
設計リサイクル研究グループ
NPOエコデザイン推進機構
(株)フジクラ
電子回路のモジュール化技術
部品の小型化技術、山本還元技術の現状調査
電球型蛍光灯のリユースモデルを担当
接合・分離要素技術研究グループ
東京大学大学院工学系研究科
須賀研究室
(独)物質材料機構
エコマテリアル研究センター
接合・分離要素技術の研究を担当
【190401】
(2)メンバー表
①総括グループ・流通システム(テーマ別)
氏
名
所
属
役
職
研究項目
ビジネスモデル構築全般
リサイクル適合性調査
参加時期
林 秀臣
NPO エ コ デ ザ イ 理事
ン推進機構
喜多村政贊
同上
JST 研究 リサイクル適合性調査
員
H18,6~H19,11
大黒秀浩
同上
事務担当 研究事務補助作業
H18.6~H19.11
荒木尊弘
同上
JST 事務 研究事務補助作業
担当
H16.12~H18.4
古賀剛志
富士通
理事
H16.12~H19.11
サプライチェーン研究
H16.12~H19.11
研究協力者(海外)
カルステン・ フランホーファ 研究員
シシケ
ーIZM
欧州環境規制
H16.12~H19.11
ルッツ・シュ フランホーファ 研究員
トッベ
ーIZM
欧州環境規制
H18.6~H19.11
田
暉
中国家用電器研 責任工程 中国循環システム
究院
師
H18.9~H19.11
王
傑
大連工業大学
中国循環システム
H18.9~H19.11
沈
本尭
中国電子工程設 高級工程 中国循環システム
計院
師
H18.9~H19.11
馬
秀琴
河北工業大学
副教授
中国循環システム
H18.9~H19.11
黄
超
河北工業大学
教授
中国循環システム
H19.1~H19.11
杜
欣政
嘉興学院(中国)教授
中国循環システム
H19.8~H19.11
教授
【190401】
②モデル化研究グループ
氏
名
所
属
役
職
研究項目
参加時期
梅田靖
大阪大学
教授
モデル化研究グループの研 平成17年12月~
究全般
平成19年11月
福重真一
大阪大学
助教
木下裕介
大阪大学
学生
統合ライフサイクル設計支 平成18年4月~
平成19年11月
援環境の構築、モジュール
化設計方法論
アジア循環シミュレーショ 平成19年4月~
ン
平成19年11月
末定怜
大阪大学
学生
統合ライフサイクル設計支 平成19年4月~
援環境の構築
平成19年11月
水野有智
大阪大学
学生
アジア循環シミュレーショ 平成19年4月~
ン
平成19年11月
外池恵太
大阪大学
学生
モジュール化設計方法論
平成18年4月~
平成19年11月
井上洋一朗
大阪大学
学生
モジュール化設計方法論
平成19年4月~
平成19年11月
近藤伸亮
産総研
研究員
統合ライフサイクル設計支 平成17年12月~
援環境の構築
平成18年3月
③設計・リサイクル研究グループ
氏
名
所
属
役
林 秀臣
NPO エ コ デ ザ イ 理事
ン推進機構
喜多村政贊
同上
藤本郁夫
(株)フジクラ
職
研究項目
参加時期
(1)電子回路のモジュール H16,12~H19.11
化技術(2)部品の小型化技
術(WLP、部品内蔵)の現
状調査とリサイクル性(3)
山元還元の効率改善技術
JST 研究 同上(主に1)
H18,6~H19,11
員
理事
同上(主に1、2)
H18.6~H19.11
【190401】
④接合・分離要素技術研究グループ
氏
名
須賀唯知
所
属
東京大学
役
職
研究項目
参加時期
教授
新しい接合部分離技術
の開発, 易解体性接合
技術開発の特許にみら
れる動向調査
細田奈麻絵 物質・材料研究 主 幹 研 新 し い 接 合 部 分 離 技 術
機構
究員
の開発, 易解体性接合
技術開発の特許にみら
れる動向調査
赤池洋剛
東京大学
研究生 易 解 体 性 接 合 技 術 開 発
の特許にみられる動向
調査
園田悠太
物質・材料研究 研究生 新 し い 接 合 部 分 離 技 術
機構
の開発, 易解体性接合
技術開発の特許にみら
れる動向調査
平成16年4月~
平成19年4月
平成17年4月~
平成19年11月
平成17年12月~
平成18年 9月
平成18年2月~
平成19年11月
“研究に参加した研究者につき、期間の長短に関わらず学生も含め全員の名前、所属、、
役職、研究項目、参加時期を記載する。JSTが雇用・派遣した研究者については、所属
は「派遣先」、役職は「JST研究員」と記載し、チーム事務担当などは「研究補助員」
として記載する。”
(3)招聘した研究者等
氏
名(所属、役職)
招聘の目的
滞在先
滞在期間
“研究開始からこれまでにJSTが招聘した外国人研究者等の名前(所属、役職)、日
本での滞在先、滞在期間、招聘の目的を記載する。”
【190401】
6。成果の発信やアウトリーチ活動など
(1)ワークショップ等
年月日
名称
場所
平 成 17
年 8 月 16
日
平 成 17
年 9 月 30
日
第 1 回 ボーダーレスサプ
ライチェーンでの逆流通シ
ステムの研究会
第2回 ボーダーレスサプ
ライチェーンでの逆流通シ
ステムの研究会
東京大学武田
先端知ビル
10 名
同上
10 名
H17 年 12
月 16 日
第3回 ボーダーレスサプ
ライチェーンでの逆流通シ
ステムの研究会
同上
7名
H18 年 9
月 27 日
日中友好環境 29 名
保全センター
(中国:北京)
東京大学武田 9 名
先端知ビル
H19 年 1
月 30 日
第 1 回:中国循環型経済モ
デルの構築と電子製品市場
調査 WS
On the value creation
process
in
inverse
distribution
第 2 回:中国循環型経済モ
デルの構築 WS
H19 年 3
月 29 日
第3回:中国循環型経済モ
デルの構築 WS
20 名
中国の循環経済モデル建設に向
けた討論会
H19 年 8
月3日
日中電子機器リサイクル制
度構築フォーラム
125 名
H19 年 10
月 26 日
China-Japan
Joint
Workshop on UEEE Inverse
Distribution as a Part of
Circular Economic System
in China
概 要::中国にモデルを実装す
る場合の課題について特に法制
度面から検討する。
中古電機電子製品の流通とリサ
イクルに関する研究発表と討論
H18 年 12
月 13 日
中国電子工程
設計院(中
国:北京)
中国電子工程
設計院(中
国:北京)
日中友好環境
保全センター
(中国:北京)
Nanjing New
Era Hotel(南
京:中国)
参加人数
10 名
100 名
概要
討論内容:逆流通過程に於ける付
加価値創出と材料選択について
の討論
(1)欧州の環境規制とリサイク
ラーの実態から見た価値創造の
可能性、
(2)環境調和設計を考える:新
しい CAD システムの構築に向けて
上記 2 点に関する討論
循環系における付加価値分配を
考える:環境ビジネスと環境調
和の討論会
中国の循環経済モデル建設に向
けた中古電機電子製品の市場調
査の必要性についての討論会
使用済み電気機器の逆流通過程
で付加価値をつける方法につい
ての討論
中国の循環経済モデル建設に向
けた討論会
“ワークショップ、シンポジウム、その他外国人研究者を招聘したミーティングなどを行
った場合、月日、名称、場所、参加人数、目的や内容などの概要を記入する。”
件)
(2)論文発表(国内誌 5 件、国際誌
“著者、発表論文名、掲載誌(誌名、巻、号、発行年)等を記載する。
その際、本事業の成果として対外的に言明できるものをリストアップしてください。”
1. 細田奈麻絵、須賀唯知“デバイスインテグレーション”、エコマテリアルハンドブック、丸
2.
善、2006, 525
細田奈麻絵, "分離を設計した接合技術", エレクトロニクス実装学会誌, vol.8,
no.5, 2005, 416-420
【190401】
3.
4.
5.
細 田 奈 麻 絵 ," バ イ オ ミ メ テ ィ ッ ク 接 合 ", セ ラ ミ ッ ク デ ー タ ブ ッ ク
2006,34.88,200-201,2006
林秀臣、細田奈麻絵、青木正光、田中泰光、米田泰博、矢野昭尚、本田正実、柴
田勝司、塚越功、安食弘二,"環境調和型実装技術",エレクトロニクス実装学会
誌,1.9,35-39,2006
細 田 奈 麻 絵 ," 分 離 を 設 計 し た 接 合 技 術 ", エ レ ク ト ロ ニ ク ス 実 装 学 会 誌 ,
8.5,416-420,2005
(3)口頭発表(国際学会発表及び主要な国内学会発表)
“発表者(所属)、タイトル、学会名、場所、月日等を記載する。”
①招待講演
(国内会議
5 件、国際会議 8 件)
②口頭講演
(国内会議
14 件、国際会議 21 件)
③ポスター発表 (国内会議
2 件、国際会議
件)
1)
近藤伸亮(産総研), 島袋敦史(都立大), 梅田靖(阪大): インバース・マニュファクチ
ャリングのためのモジュール化設計手法の開発, 日本機械学会第 15 回設計工学・システム部
門講演会, 札幌, 2005.11.
2)
S. Kondoh(産総研), A. Shimabukuro(都立大), and Y. Umeda(阪大): Development of
Modular Design Method for Inverse Manufacturing, EcoDesign2005: Fourth International
Symposium on Environmentally Conscious Design and Inverse Manufacturing, Tokyo,
2005.12.
3)
S. Kondoh(産総研), Y. Nishikiori(都立大), and Y. Umeda(阪大): A Closed-loop
Manufacturing System focusing on Reuse of Components, EcoDesign2005: Fourth
International Symposium on Environmentally Conscious Design and Inverse Manufacturing,
Tokyo, 2005.12.
4)
Y. Umeda(阪大), T. Daimon(都立大), and S. Kondoh(産総研): Proposal of Decision
Support Method for Life Cycle Strategy by Estimating Value and Physical Lifetimes Case Study -, EcoDesign2005: Fourth International Symposium on Environmentally
Conscious Design and Inverse Manufacturing, Tokyo, 2005.12.
5)
梅田靖(阪大), 吉田直人(阪大), 近藤伸亮(産総研), 蔵川圭(国情研), 高田祥三(早
大): 循環ビジネス設計支援システムの開発, 2006 年度精密工学会春季大会学術講演会, 東
京, 2006.3.
6)
梅田靖(阪大): インバース・マニュファクチャリングのためのライフサイクル設計, 日本
機械学会関西支部第 81 期定時総会講演会, 京都, 2006.3.
7)
S. Kondoh(産総研), K. Kurakawa(国情研), S. Kato(阪大), Y. Umeda(阪大), S. Takata
(早大): Analysis of Key Success Factors for Eco-Business through Case Studies in Japan,
13th CIRP International Conference on Life Cycle Engineering, 場所?, 2006. ?.
8)
福重真一(阪大), 近藤伸亮(産総研), 梅田靖(阪大), 蔵川圭(国情研), 高田祥三(早
大): 循環ビジネスアイディア創成支援手法の提案, 日本機械学会第 16 回設計工学・システ
【190401】
ム部門講演会, 名古屋, 2006.11.
9)
Y. Umeda(阪大) and Y. Kishita(阪大): Toward the Sustainable Circulation of Products
among Asian Countries, Osaka University RISS International Symposium on “Strategies
to Achieve a Sustainable Closed-loop Economy in Asia,” Osaka, 2006. 11.
10) Y. Umeda (阪大): Integrated Computer Environment for Supporting Product Life Cycle
Design, Eco Design 2006 Asia Pacific Symposium, Tokyo, 2006.12.
11) Hidetaka HAYASHI(EcoDesign Promotion Network) , Tadatomo SUGA(University of Tokyo),
Lutz
STOBBE(Franhofer
IZM),Karsten
SCHSCHKE(Franhofer
IZM),
Hansjoerg
GRIESE(Franhofer IZM) “ Investigation on value increase in inverse distribution
process” EcoDesign2006 Asia Pacific Symposium Tokyo Dec. 2006.
12) Lutz
STOBBE(Franhofer
IZM),
Karsten
SCHISCHKE(Franhofer
IZM)
,
Hidetaka
HAYASHI(EcoDesign Promotion Network) , Tadatomo SUGA(University of Tokyo), Hansjoerg
GRIESE(Franhofer IZM)“Eco-Design Strategies for Electronics Supply Chains Based on
Product Material Declarations” EcoDesign2006 Asia Pacific Symposium Tokyo Dec. 2006.
13) 西岡卓哉, 福重真一, 梅田靖, 近藤伸亮, 蔵川圭, 高田祥三: プロセスフローに注目した循
環ビジネスアイディア創成支援システム, 2007 年度精密工学会春季大会学術講演会, 東京,
2007.3.
14) 外池恵大(阪大), 福重真一(阪大), 梅田靖(阪大): 幾何情報を用いたモジュール設計
手法の提案, 2007 年度精密工学会春季大会学術講演会, 東京, 2007.3.
15) 福重真一(阪大), 谷山慎悟(阪大), 梅田靖(阪大): ミニマムストラクチャの抽出によ
るリデュース設計支援手法の提案, 2007 年度精密工学会秋季大会学術講演会, 旭川, 2007.9.
16) 木下裕介(阪大), 篠原達郎(阪大), 梅田靖(阪大), 福重真一(阪大), 藤本淳(東大):
アジアにおける持続可能な資源循環の構築に向けたシナリオの作成と評価, 2007 年度精密工
学会秋季大会学術講演会, 旭川, 2007. 9.
17) Y. Umeda(阪大), T. Daimon(都立大) and S. Kondoh(産総研): Life Cycle Option Selection
Based on the Difference of Value and Physical Lifetimes for Life Cycle Design, 16th
International Conference on Engineering Design (ICED07), Paris, 2007.8.
18) Earth, Sendai, 2007.10.
19) Hidetaka Hayashi: "Guideline to Construct EEE Recycling System of China" (in Japanese)
Sino-Japan Forum on Construction of Waste Electronic/Electric Equipment Collection and
Recycling System on 3 Aug. 2007, Beijing China
20) 林 秀臣:
[特別講演]住みよい世界を作るための電子機器実装技術の課題、電子情報通信学
会 CQ/OIS/IE/ITE-ME/IEE-CMN 研究会 平成 19 年 9 月 26 日 徳島大学
21) Hidetaka Hayashi: “Reliable Products and Reliable Action,Realistic Eco-Design for
the World Majority” AEARU Joint Workshop-ICASS 2007, Oct. 26-27, 2007 Nanjing China
【190401】
Invited Speech
22) Benyao Shen: “Suggestions on the Construction of Second EEE Product Market” pp151-160
Proc. AEARU Joint Workshop-ICASS 2007, Oct. 26-27, 2007 Nanjing China
23) Hui Tian: “Study on Establishing new model of Second-hand Appliance Market in WEEE
Recycling System in China” pp161-169 Proc. AEARU ibid
24) Wang Jie, Hidetaka Hayashi, Cui Yanjuan, Sun Xiaocheng: “Study on the Best Choice of
Used or Waste EEE in China Based on the Long Chain Recycling Value Mode –Empirical
Analysis on Recycling Models of Used or Waste EEE of Dalian” pp170-175 Proc. AEARU
ibid.
25) Chao Huang, Hidetaka Hayashi, Xiuqin Ma, Miaomiao Liang, Chengwei Wang: ” Pilot Plant
for UEEE Recovery Base in the University” pp192-195 Proc. AEARU ibid.
26) 福重真一(阪大),外池恵大(阪大)
,梅田靖(阪大): 循環型製品ライフサイクル実現のた
めのモジュール設計支援手法の提案, 日本機械学会第 17 回設計工学・システム部門講演会,
仙台, 2007.11.
27) Shinichi Fukushige(阪大), Shingo Taniyama(阪大), Yasushi Umeda(阪大): A Design
Methodology for Mass Reduction of a Mechanical Product by Extracting Minimum Structure,
The 4th International Conference on Leading Edge Manufacturing in 21st Century, Fukuoka,
2007.11.
28) Keita Tonoike(阪大), Shinichi Fukushige(阪大), Yasushi Umeda(阪大): Proposal of
a Design Methodology for Modularity Using Geometric Information, The 4th International
Conference on Leading Edge Manufacturing in 21st Century, Fukuoka, 2007.11.
29) Hidetaka Hayashi "Suggestions on China's Secondhand E-product Market Control System"
Invited Speech at International Symposium on Circular Economy Development of
Electronics and Information Industry, Beijing China, 2007.11.29
30) 細田奈麻絵,"可逆的インターコネクション ー液体金属を塗って接合部を常温分
離ー”,関西 Workshop2006 年度 実装革命、新しいものづくりへの提案, 京都,2
月9日, 2007 (講演及びポスター)
31) 細田奈麻絵,須賀唯知,"落葉をモデルにしたバイオミメティック接合",新技術振
興渡辺記念会シンポジウム「分野横断的ナノミクロ構造・機能制御による実践的
材料開発 -エコマテリアル創世と普及に向けてのプランニング・ストラテジーー,
横浜,2月1日−2日,2007 (講演及びポスター)
32) Naoe
Hosoda,"Future
materials
for
removable
interconnects
in
electronics",Sustainable Product,Berlin,10.Feb,2006
33) Naoe Hosoda,"Effect of Surface fine structures on adhesion",Adhesion and
friction,Jülich, 27.Feb,2006
34) 細田奈麻絵,"自然界の接着から学んだバイオミメティック接合技術開発",日本金
属学会講演概要集,新潟 ,9月16日—18日,2006
35) Naoe Hosoda,"Biomimetic Approach to Reversible Interconnection",The 4th
【190401】
NIMS-MPI-MF Workshop,Tsukuba, 6-7 July,2006"
36) N.Hosoda,"Plan
for
research
by
Connection/Disconnect
Research
Group",Workshop on Inverse Distribution in Borderless Supply Chain,Tokyo,
16 Dec. 2005
37) 細田奈麻絵,"常温接合とインターコネクトエコデザイン",実装工学シンポジウム
常温接合の最新動向 その系譜と未来,東京,13 Sep,2005
38) Naoe Hosoda,"Challenge to a biomimetic joining technology”,NIMS mini
Workshop "Nature Inspired Materials"",Tsukuba,4 Oct. 2005
39) Naoe
Hosoda,"A
Challenge
to
a
Biomimetic
Joining
Technology",German-Japanese Workshop on Bionics and Nature-Inspired
Technologies,Nagoya,102 Oct. 2005
40) 園田悠太、細田奈麻絵、今井八郎、須賀唯知,"液体 Ga によるはんだ接合部の常温
分離",MES2007 第17回マイクロエレクトロニクスシンポジウム,神戸9月13
日−14日,2007
41) 園田悠太、細田奈麻絵、今井八郎、須賀唯知,”液体 Ga によるはんだ接合部の常温
分離",日本金属学会講演概要集,岐阜,9月19日−21日,2007
42) Yuta Sonoda, Naoe Hosoda, Hachiro Imai and Tadatomo Suga,"Easy Disassembly
of Joined Interface Using Ga",going Green EcoDesign2007,Tokyo,10-12.Dec,
2007
43) Naoe Hosoda and Tadatomo Suga, “Leaf Abscission Inspired Interconnection”,
going Green EcoDesign 2007,Tokyo,10-12.Dec, 2007
44) Naoe
Hosoda
and
Tadatomo
Suga,"Leaf
Fall
Inspired
Joining
Technology",Bionik-Kongress in Bremen Patente aus der Nature,Bremen,27-29
Oct.2006
45) 園田悠太、細田奈麻絵、赤池洋剛、今井八郎、須賀唯知、林秀臣,"易解体性接合
技術開発の特許に見られる動向調査",エコデザイン 2006 アジア・パシフィック・
シンポジウム,東京,12月11日−12日,2006
46) Naoe Hosoda and Tadatomo Suga,"A Novel Approach to Disassembly of Joined
Interface",4th International Symposium on Environmentally Conscious Design
and Inverse Manufacturing- EcoDesign 2005,Tokyo, 12-14 Dec. 2005
47) 細田奈麻絵、木村隆、須賀唯知,"液体金属を用いた界面の常温分離技術",第5回
マイクロエレクトロニクスシンポジウム MES2005,大阪,10月13日−14日,
2005
48) 細田奈麻絵、須賀唯知,"ガリウムを用いた接合部の常温接合分離技術","日本金属
学会講演概要集(第 137 回大会),広島,9月28日−30日, 2005
(4)新聞報道・投稿、受賞等
“受賞や新聞報道等について、具体的に記入する。”
①新聞報道・投稿
②受賞
③その他
【190401】
(5)特許出願
“本事業の成果に係わるものについて、出願者(研究機関、JST、その他)に係わ
らず記載する。職務規程や共同出願人との取り決めなどで記載できない情報はその
限りではありません。”
①国内出願(
件)
1.
“発明の名称、発明者、出願人、出願日、出願番号”
2.
・・・
件)
②海外出願(
1.
“発明の名称、発明者、出願人、出願日、出願番号”
2.
・・・
(6)その他特記事項
“委託開発や実施許諾実施等、技術移転や実用化に展開した例などを記載する。”
“その他、一般社会(市民)への情報発信などを実施した場合は具体的に記載する。”
7.結び
この研究の目的を要約すると、グローバルな生産と消費の行われている中で、持続
的な循環システムを可能とするビジネスモデルを提案する事及び我が国の電子機器
産業に対して技術的開発課題を示すことであった。この研究を終えるに当たって、
この目的は社会に実装するという検証を経てはいないが、達成されつつあると言え
る。特に、日本、ドイツ、中国の研究者で研究チームを編成したことは、地球規模
で問題を解決する場合に意味のある研究を遂行する上で大いに役立った。これらの
チームが一体となって研究したEU、中国、日本の電機電子製品に関わるリサイクル
ビジネスの実態調査、法制度の研究からは今後の循環モデルを研究する上での重要
な情報を纏めることが出来た。特に、今まで余り行われてこなかった「ビジネス」
即ち、収益性から循環の仕組みを研究することは隠れた非常に重要な課題を発掘す
る事に繋がったと思う。即ち、環境問題の根底には地球の大多数を占める発展途上
国の購買力の極めて乏しい多くの人々を視野に入れる事である。この様な視点は、
単にビジネスの視点でも重要視されない。この研究の非常に意義深いところは、環
境問題の本質を考える中にビジネスの視点を取り込んだことである。これにより、
先進工業地域を中心にした循環の効率を上げるという考えではなく、ものに込めら
れた「価値」を如何に「共有」するかとの視点が生まれ、その中に環境効率を高め
るシステム作りに導く方向性が出てきた。また、このような考えで工業技術を考え
ると、本来的に重要な信頼性の確保、品質の保証、エネルギー効率の絶えざる向上
という、課題が再認識される。この本来的に重要な課題を工業技術のベースにしっ
かりと据えつつ、物質消費を限りなく少なくする為の要素技術を高めるという部分
【190401】
に、電子産業の今後の重要な技術課題が再認識された。ところで、ビジネスモデル
は、研究の枠組み(意義付け)の部分である。これを実現するための設計ツール、
シミュレーションツールに関しても新たな研究成果が得られている。即ち、環境配
慮設計技術を支援するモジュール化技術、機器生産、廃棄、リサイクルの各過程が
地域を跨って行われる場合のCO2排出量を計算するシミュレーションモデルである。
これらの、成果は設計の質を向上することで効率的な循環系を構成することを可能
とした。また、商品企画の中に新たな循環系を組み込む易しいモデルとして、電球
型蛍光灯のリユース設計を加えた。この研究成果は、直ちにビジネスとして採用で
きる。また、将来に向けた革新的な要素技術として研究した接合と分離の研究はで
は、Gaによるはんだの常温分離を実証した。このように、この研究は、地球規模で
の循環の仕組みを構築するために、法制度、ビジネス、機器設計、シミュレーショ
ン、商品化モデル、要素技術と幅広く研究した。今後研究成果が社会に実装される
よう引き続き共同研究メンバーとの情報交換また新たな共同研究の体制を構築して
いきたいと考えている。補足的事項として「ボーダーレス・サプライチェーン」の
「ボーダーレス」について。この言葉は、実際に存在する国境を意識しない近年の
状況を表した言葉である。しかし、実際に国境が消滅しつつあるのは、Internet取
引や設計情報の分野である。物の移動を含む循環社会の部分では国境は厳然として
存在している。例えば、バーゼル条約の制約は国境が存在する事により機能してい
る。ボーダーレスは、設計情報や商取引の情報が国境の存在を意識せずに流通する
が、ものの移動を伴う循環の仕組みでは、経済格差が縮減しない限り「ボーダー」
を設けることにより秩序が保たれている実態を認識することが必要である。
プロジェクトは広く離れた勤務地で勤務する研究者を纏めて行ったが、十分に目
的を共有して進行することが出来た。但し、企業の研究者にとっては、課題と事業
目的との整合性に苦労があったようである。その為、情報の入手に便宜を図るとい
う以上に踏み込めなかったのは残念であった。企業からの研究者を含めることの困
難さを感じる。しかし、情報提供であっても研究成果を実装する事を含めて企業か
らのメンバーを取り込む意義は非常に大きくこのような研究は今後も企業からのメ
ンバーを組み込むことが望ましいと考えている。予算の執行に関してはビジネスモ
デルの研究を中国中心に切り替えた平成18年度の組み替えに見られたように、極め
て柔軟に対応していただけたと考えている。今後の希望を述べるとすると、NPO
のような自由ではあるが収益源の乏しい機関からの研究を支援する意味では、謝金
枠に自由度があればより円滑な運用ができるのではないかと思う。
この研究は、EcoDesignシンポジウムを初め広く成果を発信してきている。特に、
平成18年からは中国との連携を深め、中国でワークショップやシンポジウムを開催
しているが、去る平成19年10月、中国南京で開催された、東京大学、南京大学共催
【190401】
の国際シンポジウムでは、当研究会主催の特別ワークショップを開催した。下にシ
ンポジウムの終了時に撮影した写真を参考に掲げる。このような国際交流によって
お互いの地域の特性を理解することが、国際的な枠組みでの循環システムを構築す
る第一歩であると考えている。
以上
H19年10月28日 南京シンポシウムで中国側の研究者とのスナップ
i
バーゼル条約の修正を受けたサービス告示の修正
輸入禁止貨物リスト第3~5批(国家環境保護局、対外経貿部、税関 2002 年第 25 号公告) 2002 年 7 月 3 日公布、同
年 8 月 15 日施行)
ii
iii
清丸勝正「アジア地域における有害廃棄物の不法輸出入防止国際ネットワークの構築に向け
て」『環境研究』日立環境財団 No.136, 2005, pp 93-98
iv
Regulation (EC) No 1804/2003
環境省・経済産業省資料「バーゼル条約・バーゼル法の概要等」
vi
当該該非判断は、相談者から提出された資料の記載から判断するものであり、輸出しようとする貨物そのものに
判断するものではない。輸出貨物そのものの判断は、輸出貿易管理令第 5 条(税関の確認)に規定するとおり税関
が行う。
同法第 2 条の2第 1 項
廃棄物の輸出にかかる環境大臣の確認について行政手続法に基づく審査基準を制定することに関する国民意見の募
v
vii
viii
集
火力発電所から吐き出される産業廃棄物の石炭灰は国内のセメント会社に有料で引き取られセメント原料などとして活
用されてきたが、近年の景気の低迷からセメントの生産量が減少し、さらに火力発電所の新設も伴って、石炭灰を有効利
用できる処理が検討されてきた。環境省は 8 月の廃棄物輸出の審査基準を制定し、その基準を満たすことで石炭灰の“輸
出”が認められることとなったと発表した。(『県民福井新聞』 2001.9.14)
x 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成 17 年 3 月 7 日)
ix
【190401】