United Nations Nations Unies Office for the Coordination of Humanitarian Affairs 康 京和 (カン・キョンファ) カン・キョンファ) 国連事務次長補( 国連事務次長補(人道問題担当) 人道問題担当) 兼 緊急援助副調整官 相馬地域 相馬地域防災シンポジウム 地域防災シンポジウム 2015 年 3 月 16 日 相馬、日本 長さん、ご丁寧に紹介頂き誠にありがとうございます。 立谷相馬市長、ご来賓の方々、相馬市と福島県の皆様、そしてご列席の皆様、 はじめに、相馬市並びにこの重要なシンポジウムにご招待頂きましたことに心よ り感謝申しあげます。本日皆様とともにこの会に臨める事を大変嬉しく思います。 この美しい街を大地震と津波が襲ってから 4 年が経ちました。ご家族、ご友人、 ご近所、同僚の方等を亡くされた皆様に、国連人道問題調整事務所(OCHA)を 代表し改めて心より哀悼の意を表します。 私は今、第 3 回国連世界防災会議のため来日しています。この大規模な国際会 議は、日本政府主催のもと仙台で執り行われています。会議は 2015 年以降の防 災に関する 地球規模の新たな枠組みに合意することを目的としています。国連 世界防災会議はもちろん非常に重要ですが、私はぜひ時間を割いてこの地を訪れ、 短いですが一つのメッセージを皆様にお伝えしたいと思って参りました。それは 「国際社会は福島を忘れてはいない、そして国連は被災した日本の家族に寄り添 い続けている」というメッセージです。 ご列席の皆様、 東日本大震災は未曾有の規模と複雑さを伴う大災害でした。今朝、私は相馬市の 被災地を訪れ、未だに仮設住宅で避難生活を送られている方々とお話しする機会 を得ました。そこで接した皆様の忍耐強さには心を打たれました。生き延びるた めに、たくさんの方々が避難所で助け合い、少しでも多くの人命を救うべく協力 されたことを伺いました。 復興への道はやさしいものではありません。昨年末の時点で、国内で約 24 万人 もの方々が避難生活を続けており、その半分が福島県にいらっしゃると伺ってい ます 。この中には、政府による避難指示等が今も続いている福島第一原発の周 辺地域に住まれていた 8 万人の方々も含まれています。 ご列席の皆様、 私の勤める国連人道問題調整事務所(OCHA)は、大規模な危機や災害発生時に、 効率的かつ一貫した救援対応が行われるよう、国際人道支援組織と連携しその活 動を調整する役割を担っています。OCHA は約 20 年前に国連事務局の一部とし て設立されました。国際人道支援に携わる様々な組織には、 各国政府はもちろ んユニセフ、国連難民高等弁務官事務所、世界食糧計画などの国連組織、難民を 助ける会のような NGO、赤十字、民間セクターその他のパートナーが含まれま す。 こうした組織が人命を救うために協力し、最大限効果的に活動できるよう に支えるのが私たち OCHA の使命です。 2011 年の震災直後、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が相馬を訪れてい ます。そして今日、被災者の方々へ私たちの揺るぎない連帯をあらためてお伝え するよう、彼から託されて参りました。 現在、世界中 50 ヵ国で約 2,000 人の OCHA 職員が働いています。私たちは、地 震、津波、火山噴火、洪水などの自然災害がもたらす人道ニーズに対応するだけ でなく、紛争、飢饉、栄養失調などの危機に伴う人々の犠牲や苦しみを少しでも 軽減すべく活動しています。目下、私たちはシリアにおいて人道支援のアクセス を交渉する傍ら、アフリカ・サヘル地域の食糧危機に対する救援活動をサポート し、さらに人道危機が長期化するイエメン、南スーダン、コンゴ民主共和国など で苦しむ人たちへの国際支援を調整しています。 ご存知かもしれませんが、この週末にサイクロンがバヌアツの島々を直撃しまし た。これを受けて、国連災害評価調整(UNDAC)チームが急遽現地に派遣され、 被災地域のニーズを把握し、救援活動の調整メカニズムを立ち上げるため、現地 政府を支えています。 日本でも、OHCA は神戸に駐日事務所を置き、政府や国内の人道支援パートナー と緊密に連携しながら活動しています 。特にこの事務所は、日本に蓄積された 災害対応や防災に関する組織的能力、知識その他のリソースを最大限活用するこ とで、他の国々の災害緊急対応をサポートしています。 また東日本大震災の際、OCHA は日本に専門家チームを派遣して、最新かつ正確 な情報を国際社会と英語で共有する事によって日本政府による対応を支えました。 加えて東北地方に到着した各国の緊急援助隊の活動調整を支援し、海外からの援 助物資の取り扱いについても助言しました。 ご列席の皆様、 他に例のない福島の経験は、日本自身の防災への取り組みのみならず、人道危機 に対してより強靭な世界を築いていくために学ばなければならない多くの教訓を 私たちに残しました。そのいくつかをここで述べさせて頂きます。 第一に、災害の予防・軽減対策は不可欠ですが、それだけでは津波のような大規 模災害から人々を守るには足りないという事です。いざという時に緊急時対応が 十分出来るよう、事前準備を災害対応の必須要素として、社会のあらゆるレベル で推進していく必要があります。 第二に、皆様が震災で経験されたような、複合型の危機をもたらす大災害に対応 するために、より包括的な災害予測のアプローチが必要だという事です。この点 で、原発は放射能のリスクをめぐる難しい政治問題にもなり得ます。 第三に、原発事故への対応は、緊急援助や人道支援を提供する人たちにも特殊な 条件を伴うという事です。災害対応の事前準備の一環として、彼らにも重要な情 報が充分に共有され、活動に必要な設備と身を守るための装備が供与されなけれ ばなりません。 特に女性、子どもたち、 第四に、たとえ緊急事態であったとしても、被災者 お年寄り、そして障がい者といった災害の影響をもっとも受けやすい立場に置か の様々なニーズに対応していく必要があるという事です。女性 れた人たち は保護されることはもちろん、災害の前後を通じて意思決定の場に参加できるよ うな地位や機会を与えられるべきです。 最後に、福島で起きたような複合危機に対応する際、情報は重要な人道ニーズで あり、被災者とのコミュニケーションは優先課題だという事です。OCHA は各国 政府や地方政府と協力して、迅速かつ正確で的確な早期警戒やリスクコミュニケ ーションができるようサポートしています。私たちは新しいコミュニケーション の手段を常に模索しています。つい最近も、 人道危機の際被災者と救援者をよ り緊密に結び付けるべく、モバイル業界との連携を強化する人道コネクティビテ ィ憲章(Humanitarian Connectivity Charter)に署名したばかりです。新旧の技 術を組み合わせることによって、人々が緊急時でも充分な情報に基づいた判断が きちんと出来るようサポートする事が必要です。 これらの教訓は、 仙台で行われている国連世界防災会議での OCHA の主要メッ セージにも含まれています。ご列席の皆様にも同感していただける事を期待する と同時に、この後のパネルディスカッションで皆様のご意見を伺えるのを楽しみ にしています。 ご列席の皆様、 福島の原発事故は世界への警鐘でした。そこから見出された新たな課題を前に、 日本でも国際社会でも、誰ひとり全ての答えを持ち合わせていないのが現状です。 特に、放射能の即時また長期的な影響という問題は、最新技術をもってしても容 易に解決には至りません。 短期間に人命が脅かされるような緊急事態は過ぎましたが、避難生活を送られて いる方々が「持続的な解決」を見出せるまでの時間枠はまだはっきりしていませ ん。今でも多くの人々が仮設住宅で帰宅できる日を待っています。帰郷した方々 にとっても、地方経済が低迷する中で生活を再建するのは容易でないかもしれま せん。放射能の影響への懸念や教育あるいは雇用などの必要性から、たくさんの 家族が離れ離れに暮らしています。 そして震災や避難生活の心理社会的な影響も続いています。漁業や観光などの地 域経済に対する放射能の影響もなかなか十分知り得ません。 ご列席の皆様、 私たちみんながこうしたことを心配していますが、人道支援組織だけでは課題を 解決出来ません。私たちには、創造性に富んだ長期的な戦略と、政府、民間セク ターそして市民社会とのより強力なコーディネーションとパートナーシップが必 要です。 私たちは、助けを必要としている人たちに手を差しのべるという普遍の人間性を 護持し、被災者を含めたすべての人々の尊厳と権利の平等という共通の理想に専 心しなくてはなりません。国際社会が福島から学ぶ事は数多いですが、福島の 方々も、緊急援助や復興支援の国際基準あるいは成功例から学んで頂けることが あるのではないでしょうか。 最後になりますが、震災時に海岸沿いに出向いて住民を避難させるために活躍し た、勇気ある相馬市消防団のお話に触れさせていただきます。彼らの献身的な働 きのおかげで、多くのいのちが救われました。しかし、若者を含む 10 人の消防 団員は帰らぬ人となりました。この 10 人は紛れもないヒューマニタリアンヒー ローです。彼らに今日、他の多くの方々ともに、敬意を表したいと思います。 津波の後、世界が日本や福島の人々との間に見せた強い「絆」が、皆様に力を与 え続けてくれる事を願います。国外から寄せられた共感の声や多くの支援の手が 差し伸べられたことは、私たちが相互に深くつながりあった世界に生きている事 の証しだと思います。 国連と OCHA は今後も福島と東北のすべての被災者に寄り添い、必要とされる 限り連帯とサポートを続けていきます。 ご清聴ありがとうございました。ありがとうございます (日本語)。
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