【フィンランド共和国】据置:AAA/安定的 - 日本格付研究所

13-I-0086
2014 年 3 月 27 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
フィンランド共和国
(証券コード:−)
【据置】
外貨建長期発行体格付
格付の見通し
自国通貨建長期発行体格付
格付の見通し
AAA
安定的
AAA
安定的
■格付事由
(1) 格付は、高度に発展し高い耐久力を有する経済構造、堅実な財政運営の実績、過去長年の経常黒字から築
かれた強い対外ポジションを主に評価している。格付の見通しは安定的である。フィンランド経済は、90
年台後半以後、ノキアに代表される情報通信(ICT)産業の大幅な伸張に支えられ、99∼08 年には平均
3.2%の高成長を実現し、対外・財政ポジションを大幅に改善・強化させる好循環を達成した。しかし、
ノキアの衰退と 09 年以降の世界的な景気停滞を背景にトレンドは一転。近年では、成長率が大幅に低下
し、経常・財政収支も赤字領域に転落した。政府は、新しい環境に対応すべく、包括的な財政構造改革に
着手したほか、成長基盤の再構築に向け、起業・研究開発支援、法人税率の引き下げ、外資誘致などを通
じた産業活性化に取り組んでいる。同国の強固な財政状況や対外ポジションは、大規模なショックを経て
減じつつあるものの、これまでの堅実な経済運営の蓄積もあり、依然として AAA の格付に相応する水準
にとどまっていると JCR は評価している。JCR は、財政の持続可能性を確保するための構造改革の進捗
や、新たな成長の牽引役の発達状況を注視していく。
(2) 北欧諸国唯一のユーロ導入国であるフィンランドは、名目 GDP 約 1,900 億ユーロ、人口 540 万人の小国
経済であるが、約 4 万ドルの一人当たり GDP(PPP)を有する高度に発展した経済である。輸出指向が強
いことから、近年では、欧州経済の停滞による需要減に加え、主要輸出産業の構造的変化に直面している。
過去の成長を牽引した ICT 産業は、ノキアの競争力低下や携帯電話事業の不振とともに大幅に縮小し、
伝統的に強みを有する紙・パルプ産業も生産拠点の海外移転を進めている。00 年代初頭に 25%程度あっ
た GDP に占める製造業のシェアは、足元で 15%まで低下した。こうした中、輸出や生産は国際金融危機
後の落ち込みからの回復が遅れ、依然として危機前の水準を大きく下回る状況にある。労働市場の悪化を
背景に個人消費も勢いを欠いており、13 年の実質 GDP 成長率は-1.4%と 12 年の-1.0%からさらに悪化し
た。足元では、ノキアの携帯電話製造からの撤退完了などにより ICT 産業の生産削減が一巡しつつある
中、経済は下げ止まりの兆しも見せつつある。14 年には、欧州経済の回復に支えられて若干のプラス成
長が見込まれている。
(3) 対外ポジションは、90 年代からの恒常的な経常黒字計上により大きく改善し、09 年には純対外債権国に
転じた。しかし、経常収支は近年、ICT を中心とする輸出産業の縮小や交易条件の悪化を背景に悪化し、
11 年以降は赤字が続いている。もっとも、赤字幅は最大となった 12 年でも GDP 比 1.6%、13 年は同
1.0%と、これまでのところ小幅にとどまっている。ICT 産業のリストラの一巡などから、経常収支赤字
はこれ以上の大幅な拡大は避けられる見通しである。13 年末時点でも、フィンランドは GDP 比 15%の純
対外債権国にとどまっている。
(4) 財政は、複数年の歳出シーリングの枠組みを通じて慎重に運営されており、財政収支(一般政府、
ESA95)が赤字に転じた 09 年以降も赤字を GDP 比 3%に抑えるとの EU 基準を一貫して遵守してきた。
一般政府債務は 09 年以降大幅に増加したものの 13 年末で GDP 比 57%程度(2%程度のユーロ圏の支援
の枠組みにおける負担を含む)と EU の定める上限 60%を依然下回り、ユーロ圏の中でも低い水準にある。
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http://www.jcr.co.jp
一般政府の純金融資産は、潤沢な年金基金資産を背景に GDP 比で EU 内最大の 55%(12 年末)に達して
いる。もっとも、経済の低迷や高齢化は足元で財政健全化の重しとなっており、財政赤字は 12 年に
1.8%、13 年に 2.0%と拡大した。歳入は近年の増税策を受けて安定している一方で、歳出の GDP 比は主
に社会保障費の増大により 57%台と高止まりしている。税負担が既に高水準の同国において、財政の健
全化には歳出の削減が重要と見られるが、高齢化が進む中でその実現は容易ではない。政府は、財政を持
続可能とするためには GDP 比 4.7%の構造的な赤字削減が必要として、公的部門の効率性向上や雇用率の
引き上げに向けた包括的な財政構造改革の実施に強くコミットしており、現在その具体策を検討中である。
(5) 北欧資本が高いシェアを占めるフィンランドの銀行システムは、近年の景気低迷や欧州ソブリン債務危機
の中でも、資産の質、収益性、資本バッファーなど、健全な状態を維持してきた。預貸率が高く、資金調
達の多くを海外借入に依存しているものの、ユーロ圏におけるセーフヘブンとしての位置づけを背景に、
流動性も安定的に確保されている。近年、国内の不動産価格が名目 GDP 成長率を上回る速度で上昇して
おり、その動向については一定の注意が必要であるが、銀行システムの健全性は維持されており、国内金
融システムを通じた政府偶発債務のリスクは限定的である。
(担当)仲川
■格付対象
発行体:フィンランド共和国(Republic of Finland)
【据置】
対象
外貨建長期発行体格付
自国通貨建長期発行体格付
格付
見通し
AAA
AAA
安定的
安定的
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http://www.jcr.co.jp
聡・佐伯 春奈
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2014 年 3 月 25 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:仲川 聡
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、
「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」
(2013 年 3 月 29 日)として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
フィンランド共和国(Republic of Finland)
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した経済・財政運営方針などに関する資料および説明
・ 経済・財政動向などに関し中立的な機関が公表した統計・報告
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が求める要件
を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. 非依頼格付について:
本件信用格付は格付関係者からの依頼に基づかない信用格付である。国に対する信用格付である場合を除き、依
頼に基づく格付と区別するため格付記号の後に「p」を表示している。格付関係者からは、信用評価に重要な影響を及
ぼす非公表情報を入手している。
10. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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http://www.jcr.co.jp