2015年度雑誌会 日時:2015年6月22日(月)午後3時-午後4時30分 場所:理学部4号館2階207講義室 発表者:菅野倖太郎、成田翔平、青山 裕 発表者①:菅野倖太郎 Title: The subsurface temperature assessment by means of an indirect electromagnetic geothermometer Authors: Viacheslav Spichak1 and Olga Zakharova1 Journal: GEOPHYSICS, VOL. 77, NO. 4 (JULY-AUGUST 2012); P. 1–12, 14 FIGS. 10.1190/GEO2011-0397.1 Abstract: 間接的電磁気(EM)地質温度計に基づく地下温度推定は、進歩をみせている。使 われている手法は、他の温度推定手法に反して、電気伝導度と岩石の特性に関する予 備知識を伴わない人工ニューラルネットワーク技術に基づいている。3 つの地域 ((Tien Shan, Kyrgyzstan; Soultz-sous-Forêts,France; and Hengill, Iceland)での孔 間空間内挿法による間接的な EM 地質温度計の応用は、温度推定エラーは 4 つの要因 から引き起こされることを示す異なった地質学的要因によって特徴づけられた。4 つ の要因とは、断層活動、温度が推定されている領域と EM サイトとの距離、雨水また は地下水の流れ、横方向の地質学的異方性(適切な EM インバージョンツールが使わ れた場合この要因は制限的ではない)である。また、外挿法エラーが 2 つの要因に依 存することが証明された。2 つの要因とは、さく井と EM サイトの間隔、さく井の長 さと外挿深度の比率である。特に、さく井の 2 倍の深さでの温度外挿の相対的な正確 さは平均5%を超えなかった。間接的 EM 地質温度計を使うことで、EM サウンディ ングデータから調査地域の2D と3D 温度モデルを復元することができた。そして、 熱伝導が有意なメカニズム、流体循環経路、新しいさく井を掘るのに適した場所など に関する重要な結果を出すことができた。地熱貯留層の開発の最中に間接的 EM 地質 温度計を応用し、地上での EM モニタリングデータを基にした地下温度変化の観測や 将来の傾向を予測することが可能になるかもしれない。 発表者②:成田翔平 Title: Morphology and dynamics of explosive vents through cohesive rock formations Authors: O. Galland, G. R. Gisler, and Ø. T. Haug Journal: Journal of Geophysical Research : Solid Earth, vol.119, 4708-4728pp, 2014 Abstract: 活動的火山の浅部で起こる爆発的噴火では、しばしば様々な形態(V 字型や I 字型 など)の vent が形成されるが、それらの形成メカニズムに関しては未解明な部分が多 い。これまでに、火道の粘塑性や山体構成粒子の粘着力を無視した実験やシミュレー ションが主に行われてきたが、筆者たちは、実際にはこれらの性質が vent 形成のメカ ニズムに大きな影響を及ぼしていると考えている。 そこで、彼らは vent 形成のダイナミクスを支配するパラメータの同定を目的とし て、岩石の弾塑性や粒子の粘着力を考慮した室内実験とシミュレーションの両方を行 った。その前に、次元解析を行うことで、目的とするパラメータの候補を、vent の直 径・鉛直長さ・注入される流体の圧力・岩石密度・粒子の粘着力・降伏強度の 6 つに 絞っている。これらのパラメータを適宜変えながら実験とシミュレーションを行い、 形成された vent の形態の時間変化を観察した。 その結果、I 字型、V 字型および水平型の 3 種類の vent 形成が確認された。これら の形成を支配する量として、注入圧力と降伏強度(または粘着力)の比が関係してい ることが示唆された。 発表者③:青山 裕 Title: Volcano seismicity and ground deformation unveil the gravity-driven magma discharge dynamics of a volcanic eruption Authors: Maurizio Ripepe, Dario Delle Donne, Riccardo Genco, Giuseppe Maggio, Marco Pistolesi, Emanuele Marchetti, Giorgio Lacanna, Giacomo Ulivieri and Pasquale Poggi Journal: Nature Communications 6:6998 doi: 10.1038/ncomms7998 (2015). Abstract: イタリア・エオリア諸島の北端に位置するストロンボリ火山は、玄武岩質の溶岩片と 火山ガスを繰り返し放出するストロンボリ式噴火で知られている。ストロンボリ火山に おけるストロンボリ式噴火は、山頂の活動火口において非常に長期にわたり安定して継 続しているが、しばしばストロンボリ式噴火のシステムが崩壊し、山腹からの溶岩流出 や、”paroxysm”と呼ばれる大規模噴火に至ることがある。ストロンボリ式噴火から溶岩 流出や大規模噴火への遷移は、ストロンボリ火山におけるマグマ供給系のイメージを創 出,改良していく上で非常に重要な示唆を与えてくれる。本論文は 2007 年 2 月 27 日 に始まった溶岩流出イベントのデータに基づいて、ストロンボリ火山の浅部マグマ供給 系および溶岩流出イベントのメカニズムについて議論したものである。 一般的に、溶岩流出イベントは、地下深部からのマグマ供給率の増大が主要因とし て理解されている。しかしながら、ストロンボリ火山における溶岩流出イベントにお いては、深部からのマグマ供給率の増大の寄与はごくわずかで(流出前 0.28m^3/s, 流出期 0.7m^3/s)、山腹から流出したマグマの大部分は山頂火口直下の極浅部に蓄積 していたマグマであると考えられる。このアイデアは、長径 300m、短径 140m をも つ楕円筒形の浅部マグマ溜まりの側面に開いた流出孔から重力を駆動力として粘性流 体が流れ出るという極めて単純なモデルと、観測から得られている「マグマ流出量」 「VLP 地震の相対深さ」 「傾斜変動」の時間変化が良く一致することで確認された。 マグマ流出による火道内の圧力降下は 4.3-6.7MPa と見積もられ、この浅部の圧力降 下が 3 月 15 日の”paroxysm”で放出された深さ 7-10km からの深部マグマの上昇に寄 与したと考えられる。また、溶岩流出期を挟む 2006 年から 2013 年までの山頂火口の 標高と VLP 地震の相対深さには強い相関が認められる。VLP 地震の発生メカニズム は、波形インバージョン解析の結果から山体内部に安定して存在しているクラックの 開閉運動で説明されてきた。しかしながら、溶岩流出があっても VLP 地震は相変わら ず発生していること、火口標高と地震の深さが相関していることから、発生メカニズ ムを大きく考え直す必要があるだろう。
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