人間の健康をも脅かすプラスチックごみまずはリデュースから環境カウンセラー　栗岡理子　拾ったごみの個数を調査（瀬戸内海 / 成ケ島）私は、奈良市内でレジ袋やペットボトルなどの使用を減らす活動に取り組んでいます。特にレジ袋は、減アクリルたわしの繊維も海のプラスチック汚染物質？！らす気になれば簡単に減らせること、また奈良公園の鹿が誤食し死亡原因の１つになっていることなどから、最近「もしかして、悪いのでは？」と、ささやかれ仲間とともに７年前から市や事業者に対し有料化の働始めたものに「アクリルたわし」があります。奈良ではきかけを行っています。しかし、まだ有料化は実現し県が率先し、洗剤の使用を減らして大和川の水質をていません。幾度か延期され、現在は 2015 年 9 月改善しようと「アクリルたわし作り」の講習会を実施し、有料化スタートの予定になっていますが、４月６日に普及啓発に努めています。開催される食品系スーパーマーケットとの有料化会議洗剤の使用量についてはわかりませんが、アクリルで、強く反対する店が多ければ、またずれ込む可能たわしで最近懸念されていることは、使用中に繊維が性が大です。流れ出し、下水処理場で除去できずに、マイクロプラ環境問題の解決策には「デメリットのない対策」とスチックとして海洋を汚染してしまうのではないか、というものはおそらく存在しないので、「使用量を減らすいうことです。こと」が最もメリットの大きい環境対策であると信じアクリルたわしは、使っているとだんだん痩せてくています。これまで、良かれと思って飛びつき、実はることは確かなので、繊維の脱落はあるものと思われ大して良くなかった、という苦い経験があるためです。ます。奈良市役所で撮影したポスター。死んだ鹿の胃に入っていたプラスチックごみの塊が衝撃的だ。「人間が鹿のお腹をごみ箱にした」「一頭の鹿の胃袋から３kg のゴミが出てきた」とある。目新しい「良さそうなこと」マイクロプラスチックとは、５ミリ以下のプラスチッが流行り始めると、数年後、クのことで、東京農工大の高田教授らによると起源はあるいは数十年後には、デ２つあり「一つは使用後に海洋へ流入したプラスチッメリットが指摘され始め、ク製品が紫外線、熱、風波などの物理的な力によりやがてその良さそうに見え破砕、細片化したものである。（中略）このカテゴリーたことは廃れ始めます。もには合成繊維の服を洗濯したときに発生するポリエスちろん、デメリットが少なく、テルやアクリルの繊維も含まれる。また、食器洗いな長年継続しているものもあどに使われるメラミン樹脂製スポンジも、それ自体ります。例えば、純パルプが摩耗してマイクロプラスチックとなる」（高田・山下紙よりも再生紙を優先的に 2014, p.558）とのことです。利用することなどは、用途つまり、レジ袋やペットボトルが破片化したもの、にもよりますが、異論は少アクリル繊維、消しゴムカスのような「激落ちくん」のなく、やはり古くから続いてカスなどがこれです。いる古紙リサイクルは、理もう１つは最初から５ミリ以下で作られたものです。に適っているのでしょう。歯磨き粉やスクラブ入り洗顔料の中に入っているプラ 6　ごみ・環境ビジョン 21 ＊ごみっと・ＳＵＮ 107 号スチックビーズや、プラスチックの中間材料のツブツ奈良県内のごみも漂ブで、ぬいぐるみや枕の中にも入れられているレジン着していることが指摘ペレットなどがそれです。されています。島内にこれらの微細なプラスチックは、船の塗料や畑の農降り立つと、足下には薬などから溶け出した海中に漂う有害な化学物質を色とりどりの細かいプ高濃度に吸着します。魚や海鳥がそれを食べ、食物ラスチックの破片が連鎖を経てより汚染が濃縮され、その汚染された魚散らばっていました。を食べる人間への被害も心配されています。週に 2 日ごみ拾い M.A. ブラウンらの研究によると、アクリルやポリエに来ている地元の方ステルなど合成繊維の衣類を洗濯機で洗うと約 1900 の説明の後、雨脚が強まる中、小一時間ほど海岸での繊維が排水に流れ出るとのこと。日本近海を含むごみを拾いました。その後４人が拾った分のごみだけ 18 の海域で 1 ミリ未満のプラスチック微粒子が蓄積急ぎカウント（の真似事を ) したところ、総個数 758 されており、それら汚染物質は洗濯に起因すると考え個（破片類含む）のうち、一番多いごみが発泡スチローられるそうです。ル破片 146 個（19.3％）で、破片類を除くとペットボ衣類は、ペットボトルのリサイクル品やアクリルセートルの 73 個（9.6％）が最多のごみでした。飲料缶なターよりも天然繊維のものを、そして食器洗いには、どプラスチック類以外が 12 個（1.6％）、漁具がわずアクリルたわしよりも、亀の子たわしや綿製の食器洗か３個（0.4％）で、ごみの大半がプラスチック類で、いなどを使う方が、少なくともマイクロプラスチック被そのほとんどが陸上活動の延長で出たものであるとい害の予防という見地からは良さそうです。うことが確認できました。サンゴもプラスチックを食べる？！日本の旅館でもペットボトルを無償提供　マイクロプラスチックを食べるのは、魚や海鳥だけ最近宿泊した日本の観光旅館で、ペットボトル水ではなく、サンゴも食べていることが、2015 年 2 月、を手渡されました。水道水が飲料に不適な海外のホ専門誌マリン・バイオロジーにオーストラリアの科学テルでペットボトル水を提供されたことはありますが、者らが発表しました。水道水が安全で美味しい日本でもそれをサービスと世界最大のサンゴ礁であるオーストラリアのグレー考える旅館が増えているようです。トバリアリーフのサンゴをプラスチックで汚染されたペットボトルの環境負水に入れたところ、プランクトンと同じようにプラスチッ荷や回収費用が、適正クを食べてしまったとのこと。消化されないプラスチッに価格に反映されていクで胃袋を満たすサンゴへの悪影響が懸念されていないため、このような安るそうです。易な使われ方をするのちなみに、日本の大手化粧品会社 S 社の「顆粒のではないかと思います。泡」を謳った洗顔料にもプラスチックビーズ（ポリエチプラスチックは大変レン末）が含まれています。便利で、医療用などに奈良公園の鹿と同様、サンゴもプラスチックを選んは不可欠な素材かもしで食べているわけではなく、環境中にプラスチックがれませんが、少なくともあるため、食べ物とプラスチックとを区別できずに摂レジ袋やペットボトルの食してしまう被害者なのです。ような使われ方をしてよ成ヶ島に散乱するプラスチック類成ヶ島で拾ったペットボトルいものではないでしょう。世界中でプラスチックの用瀬戸内海・成ヶ島の漂着ごみ途や回収ルールの統一基準を設けるべきであると考先日、15 人程で兵庫県成ヶ島へ漂着ごみ見学会にス（減らす ) が進むことを願っています。行ってきました。成ヶ島は淡路島から約 100m 離れた ( 船で２分程 ) 生物多様性の豊かな島で、瀬戸内海国立公園の一部です。漂着ごみの多いことでも知られ、えます。まずは、容器包装リサイクル法により、リデュー参考：高田秀重・山下麗「海洋プラスチック汚染の概況と今後の課題」『海洋と生物 36(6)』555-564, 2014. ごみ・環境ビジョン 21 ＊ごみっと・ＳＵＮ 107 号　7